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技術 加工装置及び加工方法

出願人 株式会社ジェイテクト
発明者 張琳大谷尚中野浩之
出願日 2017年7月21日 (2年11ヶ月経過) 出願番号 2017-142177
公開日 2019年2月7日 (1年4ヶ月経過) 公開番号 2019-018335
状態 未査定
技術分野 歯車加工
主要キーワード 基準円直径 アプローチ距離 工具費用 各移動距離 直進軸 インボリュート曲線形状 工具設計 交差角φ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

ねじれ角が異なる溝を有する加工物の溝の加工時間の短縮化を図れる加工装置及び加工方法を提供する。

解決手段

制御装置100は、少なくとも二つの溝のそれぞれについて、溝の切削加工アプローチ位置から切削開始位置を通って切削完了位置に至るまでの距離、及び溝のねじれ角に基づいて、加工物115の回転位相に対する補正角を算出する補正角算出部104と、加工物115の回転軸線加工用工具42の回転軸線との交差角所定値に設定し、加工用工具と加工物の同期回転が、一つの溝の補正角分だけずれるように制御して一つの溝を切削加工し、このときの同期回転時の加工用工具42と加工物115の回転位相を基準回転位相として記憶し、加工用工具42と加工物115の同期回転が、基準回転位相に対し残りの溝の補正角分だけずれるように制御して残りの溝を切削加工する加工制御部101と、を備える。

概要

背景

車両に用いられるトランスミッションには、円滑な変速操作を行うためにシンクロメッシュ機構が設けられる。図16に示すように、キー式のシンクロメッシュ機構110は、メーンシャフト111、メーンドライブシャフト112、クラッチハブ113、キー114、スリーブ115、メーンドライブギヤ116、クラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118等を備える。

メーンシャフト111とメーンドライブシャフト112は、同軸配置される。メーンシャフト111には、クラッチハブ113がスプライン嵌合され、メーンシャフト111とクラッチハブ113は共に回転する。クラッチハブ113の外周の3か所には、キー114が図略のスプリングで支持される。スリーブ115の内周には、内歯(スプライン)115aが形成され、スリーブ115はキー114とともにクラッチハブ113の外周に形成される図略のスプラインに沿って回転軸線LL方向に摺動する。

メーンドライブシャフト112には、メーンドライブギヤ116が嵌合され、メーンドライブギヤ116のスリーブ115側には、テーパコーン117bが突設されたクラッチギヤ117が一体形成される。スリーブ115とクラッチギヤ117の間には、シンクロナイザーリング118が配置される。クラッチギヤ117の外歯117a及びシンクロナイザーリング118の外歯118aは、スリーブ115の内歯115aと噛み合わせ可能に形成される。シンクロナイザーリング118の内周は、テーパコーン117bの外周と摩擦係合可能なテーパ状に形成される。

次に、シンクロメッシュ機構110の動作を説明する。図17Aに示すように、図略のシフトレバーの操作により、スリーブ115及びキー114が図示矢印の回転軸線LL方向に移動する。キー114は、シンクロナイザーリング118を回転軸線LL方向に押して、シンクロナイザーリング118の内周をテーパコーン117bの外周に押し付ける。これにより、クラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118及びスリーブ115は、同期回転を開始する。

そして、図17Bに示すように、キー114は、スリーブ115に押し下げられてシンクロナイザーリング118を回転軸線LL方向にさらに押し付けるので、シンクロナイザーリング118の内周とテーパコーン117bの外周との密着度増し、強い摩擦力が発生してクラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118及びスリーブ115は同期回転する。クラッチギヤ117の回転数とスリーブ115の回転数が完全に同期すると、シンクロナイザーリング118の内周とテーパコーン117bの外周との摩擦力が消滅する。

そして、スリーブ115及びキー114が図示矢印の回転軸線LL方向にさらに移動すると、キー114はシンクロナイザーリング118の溝118bに嵌って止まるが、スリーブ115はキー114の凸部114aを越えて移動し、スリーブ115の内歯115aがシンクロナイザーリング118の外歯118aと噛み合う。そして、図17Cに示すように、スリーブ115は図示矢印の回転軸線LL方向にさらに移動し、スリーブ115の内歯115aがクラッチギヤ117の外歯117aと噛み合う。以上により変速が完了する。

以上のようなシンクロメッシュ機構110においては、走行中におけるクラッチギヤ117の外歯117aとスリーブ115の内歯115aとのギヤ抜け防止のため、図18及び図19に示すように、スリーブ115の内歯115aには、テーパ状のギヤ抜け防止部120が設けられ、クラッチギヤ117の外歯117aには、ギヤ抜け防止部120とテーパ嵌合するテーパ状の図略のギヤ抜け防止部が設けられる。なお、以下の説明では、スリーブ115の内歯115aの図示左側の側面115Aを左側面115Aといい、スリーブ115の内歯115aの図示右側の側面115Bを右側面115Bという。

そして、スリーブ115の内歯115aの左側面115Aは、左歯面115bと、この左歯面115bとねじれ角が異なる歯面121(以下、左テーパ歯面121という)及び歯面131(以下、左チャンファ面取り)歯面131という)を有する。また、スリーブ115の内歯115aの右側面115Bは、右歯面115cと、この右歯面115cとねじれ角が異なる歯面122(以下、右テーパ歯面122という)及び歯面132(以下、右チャンファ(面取り)歯面132という)を有する。

本例では、左歯面115bのねじれ角は0、左テーパ歯面121のねじれ角はθf、左チャンファ歯面131のねじれ角はθLであり、右歯面115cのねじれ角は0、右テーパ歯面122のねじれ角はθr、右チャンファ歯面132のねじれ角はθRである。そして、左テーパ歯面121、この左テーパ歯面121と左歯面115bを繋ぐ歯面121a(以下、左サブ歯面121aという)及び左チャンファ歯面131、並びに右テーパ歯面122、この右テーパ歯面122と右歯面115cを繋ぐ歯面122a(以下、右サブ歯面122aという)及び右チャンファ歯面132が、ギヤ抜け防止部120を構成する。なお、ギヤ抜け防止は、左テーパ歯面121とクラッチギヤ117のギヤ抜け防止部とがテーパ嵌合することにより達成される。また、左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132は、クラッチギヤ117のギヤ抜け防止部との噛み合わせをスムーズに行うためのものである。

このように、スリーブ115の内歯115aの構造は複雑であり、また、スリーブ115は大量生産が必要な部品であるため、一般的に、スリーブ115の内歯115aの左歯面115b及び右歯面115c、つまり左歯面115bと右歯面115cの間の溝(以下、単に「歯溝115g」という)は、ブローチ加工ギヤシェーパ加工等により形成され、ギヤ抜け防止部120の左テーパ歯面121及び右テーパ歯面122、つまり左テーパ歯面121と右テーパ歯面122の間の溝(以下、単に「左テーパ歯溝121g、右テーパ歯溝122g」という)は、ローリング加工(特許文献1参照)により形成され、ギヤ抜け防止部120の左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132、つまり左チャンファ歯面131と右チャンファ歯面132の間の溝(以下、単に「左チャンファ歯溝131g、右チャンファ歯溝132g」という)は、エンドミル加工(特許文献2参照)やパンチ加工(特許文献3参照)により形成される。

概要

ねじれ角が異なる溝を有する加工物の溝の加工時間の短縮化をれる加工装置及び加工方法を提供する。制御装置100は、少なくとも二つの溝のそれぞれについて、溝の切削加工アプローチ位置から切削開始位置を通って切削完了位置に至るまでの距離、及び溝のねじれ角に基づいて、加工物115の回転位相に対する補正角を算出する補正角算出部104と、加工物115の回転軸線と加工用工具42の回転軸線との交差角所定値に設定し、加工用工具と加工物の同期回転が、一つの溝の補正角分だけずれるように制御して一つの溝を切削加工し、このときの同期回転時の加工用工具42と加工物115の回転位相を基準回転位相として記憶し、加工用工具42と加工物115の同期回転が、基準回転位相に対し残りの溝の補正角分だけずれるように制御して残りの溝を切削加工する加工制御部101と、を備える。

目的

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ねじれ角が異なる溝を有する加工物の溝の加工時間の短縮化を図れる加工装置及び加工方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
0件

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請求項1

加工物回転軸線に対し傾斜した回転軸線を有する加工用工具を用い、前記加工用工具を前記加工物と同期回転させながら前記加工物の回転軸線方向に相対的に送り操作して前記加工物の周面を切削加工する制御装置を備える加工装置であって、前記加工物の周面は、互いのねじれ角が異なる少なくとも二つの溝を有し、前記加工用工具は、一つの前記溝の切削加工が可能なように、前記一つの溝のねじれ角に対応する前記加工用工具の工具刃の刃すじのねじれ角を有し、前記制御装置は、前記少なくとも二つの溝のそれぞれについて、前記溝の切削加工のアプローチ位置から切削開始位置を通って切削完了位置に至るまでの距離、及び前記溝のねじれ角に基づいて、前記加工物の回転位相に対する補正角を算出する補正角算出部と、前記加工物の回転軸線と前記加工用工具の回転軸線との交差角所定値に設定し、前記加工用工具と前記加工物の同期回転が、前記一つの溝の前記補正角分だけずれるように制御して前記一つの溝を切削加工し、このときの同期回転時の前記加工用工具と前記加工物の回転位相を基準回転位相として記憶し、前記加工用工具と前記加工物の同期回転が、前記基準回転位相に対し残りの前記溝の前記補正角分だけずれるように制御して前記残りの溝を切削加工する加工制御部と、を備える加工装置。

請求項2

前記加工装置の加工対象は、内歯車内周歯又は外歯車外周歯である、請求項1に記載の加工装置。

請求項3

前記一つの溝は、前記内周歯の歯溝又は外周歯の歯溝であり、前記残りの溝は、前記内周歯又は外周歯に形成されるテーパ歯面である、請求項2に記載の加工装置。

請求項4

前記一つの溝は、前記内周歯の歯溝又は外周歯の歯溝であり、前記残りの溝は、前記内周歯又は外周歯に形成されるチャンファ歯面である、請求項2又は3に記載の加工装置。

請求項5

加工物の回転軸線に対し傾斜した回転軸線を有する加工用工具を用い、前記加工用工具を前記加工物と同期回転させながら前記加工物の回転軸線方向に相対的に送り操作して前記加工物の周面を切削加工する加工方法であって、前記加工物の周面は、互いのねじれ角が異なる少なくとも二つの溝を有し、前記加工用工具は、一つの前記溝の切削加工が可能なように、前記一つの溝のねじれ角に対応する前記加工用工具の工具刃の刃すじのねじれ角を有し、前記加工方法は、前記少なくとも二つの溝のそれぞれについて、前記溝の切削加工のアプローチ位置から切削開始位置を通って切削完了位置に至るまでの距離、及び前記溝のねじれ角に基づいて、前記加工物の回転位相に対する補正角を算出する算出工程と、前記加工物の回転軸線と前記加工用工具の回転軸線との交差角を所定値に設定する設定工程と、前記加工用工具と前記加工物の同期回転が、前記一つの溝の前記補正角分だけずれるように制御して前記一つの溝を切削加工する第一切削工程と、このときの同期回転時の前記加工用工具と前記加工物の回転位相を基準回転位相として記憶する記憶工程と、前記加工用工具と前記加工物の同期回転が、前記基準回転位相に対し残りの前記溝の前記補正角分だけずれるように制御して前記残りの溝を切削加工する第二切削工程と、を備える加工方法。

技術分野

0001

本発明は、加工装置及び加工方法に関する。

背景技術

0002

車両に用いられるトランスミッションには、円滑な変速操作を行うためにシンクロメッシュ機構が設けられる。図16に示すように、キー式のシンクロメッシュ機構110は、メーンシャフト111、メーンドライブシャフト112、クラッチハブ113、キー114、スリーブ115、メーンドライブギヤ116、クラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118等を備える。

0003

メーンシャフト111とメーンドライブシャフト112は、同軸配置される。メーンシャフト111には、クラッチハブ113がスプライン嵌合され、メーンシャフト111とクラッチハブ113は共に回転する。クラッチハブ113の外周の3か所には、キー114が図略のスプリングで支持される。スリーブ115の内周には、内歯(スプライン)115aが形成され、スリーブ115はキー114とともにクラッチハブ113の外周に形成される図略のスプラインに沿って回転軸線LL方向に摺動する。

0004

メーンドライブシャフト112には、メーンドライブギヤ116が嵌合され、メーンドライブギヤ116のスリーブ115側には、テーパコーン117bが突設されたクラッチギヤ117が一体形成される。スリーブ115とクラッチギヤ117の間には、シンクロナイザーリング118が配置される。クラッチギヤ117の外歯117a及びシンクロナイザーリング118の外歯118aは、スリーブ115の内歯115aと噛み合わせ可能に形成される。シンクロナイザーリング118の内周は、テーパコーン117bの外周と摩擦係合可能なテーパ状に形成される。

0005

次に、シンクロメッシュ機構110の動作を説明する。図17Aに示すように、図略のシフトレバーの操作により、スリーブ115及びキー114が図示矢印の回転軸線LL方向に移動する。キー114は、シンクロナイザーリング118を回転軸線LL方向に押して、シンクロナイザーリング118の内周をテーパコーン117bの外周に押し付ける。これにより、クラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118及びスリーブ115は、同期回転を開始する。

0006

そして、図17Bに示すように、キー114は、スリーブ115に押し下げられてシンクロナイザーリング118を回転軸線LL方向にさらに押し付けるので、シンクロナイザーリング118の内周とテーパコーン117bの外周との密着度増し、強い摩擦力が発生してクラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118及びスリーブ115は同期回転する。クラッチギヤ117の回転数とスリーブ115の回転数が完全に同期すると、シンクロナイザーリング118の内周とテーパコーン117bの外周との摩擦力が消滅する。

0007

そして、スリーブ115及びキー114が図示矢印の回転軸線LL方向にさらに移動すると、キー114はシンクロナイザーリング118の溝118bに嵌って止まるが、スリーブ115はキー114の凸部114aを越えて移動し、スリーブ115の内歯115aがシンクロナイザーリング118の外歯118aと噛み合う。そして、図17Cに示すように、スリーブ115は図示矢印の回転軸線LL方向にさらに移動し、スリーブ115の内歯115aがクラッチギヤ117の外歯117aと噛み合う。以上により変速が完了する。

0008

以上のようなシンクロメッシュ機構110においては、走行中におけるクラッチギヤ117の外歯117aとスリーブ115の内歯115aとのギヤ抜け防止のため、図18及び図19に示すように、スリーブ115の内歯115aには、テーパ状のギヤ抜け防止部120が設けられ、クラッチギヤ117の外歯117aには、ギヤ抜け防止部120とテーパ嵌合するテーパ状の図略のギヤ抜け防止部が設けられる。なお、以下の説明では、スリーブ115の内歯115aの図示左側の側面115Aを左側面115Aといい、スリーブ115の内歯115aの図示右側の側面115Bを右側面115Bという。

0009

そして、スリーブ115の内歯115aの左側面115Aは、左歯面115bと、この左歯面115bとねじれ角が異なる歯面121(以下、左テーパ歯面121という)及び歯面131(以下、左チャンファ面取り)歯面131という)を有する。また、スリーブ115の内歯115aの右側面115Bは、右歯面115cと、この右歯面115cとねじれ角が異なる歯面122(以下、右テーパ歯面122という)及び歯面132(以下、右チャンファ(面取り)歯面132という)を有する。

0010

本例では、左歯面115bのねじれ角は0、左テーパ歯面121のねじれ角はθf、左チャンファ歯面131のねじれ角はθLであり、右歯面115cのねじれ角は0、右テーパ歯面122のねじれ角はθr、右チャンファ歯面132のねじれ角はθRである。そして、左テーパ歯面121、この左テーパ歯面121と左歯面115bを繋ぐ歯面121a(以下、左サブ歯面121aという)及び左チャンファ歯面131、並びに右テーパ歯面122、この右テーパ歯面122と右歯面115cを繋ぐ歯面122a(以下、右サブ歯面122aという)及び右チャンファ歯面132が、ギヤ抜け防止部120を構成する。なお、ギヤ抜け防止は、左テーパ歯面121とクラッチギヤ117のギヤ抜け防止部とがテーパ嵌合することにより達成される。また、左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132は、クラッチギヤ117のギヤ抜け防止部との噛み合わせをスムーズに行うためのものである。

0011

このように、スリーブ115の内歯115aの構造は複雑であり、また、スリーブ115は大量生産が必要な部品であるため、一般的に、スリーブ115の内歯115aの左歯面115b及び右歯面115c、つまり左歯面115bと右歯面115cの間の溝(以下、単に「歯溝115g」という)は、ブローチ加工ギヤシェーパ加工等により形成され、ギヤ抜け防止部120の左テーパ歯面121及び右テーパ歯面122、つまり左テーパ歯面121と右テーパ歯面122の間の溝(以下、単に「左テーパ歯溝121g、右テーパ歯溝122g」という)は、ローリング加工(特許文献1参照)により形成され、ギヤ抜け防止部120の左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132、つまり左チャンファ歯面131と右チャンファ歯面132の間の溝(以下、単に「左チャンファ歯溝131g、右チャンファ歯溝132g」という)は、エンドミル加工(特許文献2参照)やパンチ加工(特許文献3参照)により形成される。

先行技術

0012

実用新案登録第2547999号公報
特開2004−76837号公報
特公平3−55215号公報

発明が解決しようとする課題

0013

上述のように、スリーブ115の加工は、ブローチ加工、ギヤシェーパ加工、ローリング加工、エンドミル加工、パンチ加工と多岐にわたり、さらに加工精度を高めるには、発生したバリを除去する別工程が必要であるため、加工時間が長くなる傾向にある。

0014

本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ねじれ角が異なる溝を有する加工物の溝の加工時間の短縮化を図れる加工装置及び加工方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0015

本発明の加工装置は、加工物の回転軸線に対し傾斜した回転軸線を有する加工用工具を用い、前記加工用工具を前記加工物と同期回転させながら前記加工物の回転軸線方向に相対的に送り操作して前記加工物の周面を切削加工する制御装置を備える加工装置である。そして、前記加工物の周面は、互いのねじれ角が異なる少なくとも二つの溝を有し、前記加工用工具は、一つの前記溝の切削加工が可能なように、前記一つの溝のねじれ角に対応する前記加工用工具の工具刃の刃すじのねじれ角を有する。

0016

そして、前記制御装置は、前記少なくとも二つの溝のそれぞれについて、前記溝の切削加工のアプローチ位置から切削開始位置を通って切削完了位置に至るまでの距離、及び前記溝のねじれ角に基づいて、前記加工物の回転位相に対する補正角を算出する補正角算出部と、前記加工物の回転軸線と前記加工用工具の回転軸線との交差角所定値に設定し、前記加工用工具と前記加工物の同期回転が、前記一つの溝の前記補正角分だけずれるように制御して前記一つの溝を切削加工し、このときの同期回転時の前記加工用工具と前記加工物の回転位相を基準回転位相として記憶し、前記加工用工具と前記加工物の同期回転が、前記基準回転位相に対し残りの前記溝の前記補正角分だけずれるように制御して前記残りの溝を切削加工する加工制御部と、を備える。

0017

本発明の加工方法は、加工物の回転軸線に対し傾斜した回転軸線を有する加工用工具を用い、前記加工用工具を前記加工物と同期回転させながら前記加工物の回転軸線方向に相対的に送り操作して前記加工物の周面を切削加工する加工方法である。そして、前記加工物の周面は、互いのねじれ角が異なる少なくとも二つの溝を有し、前記加工用工具は、一つの前記溝の切削加工が可能なように、前記一つの溝のねじれ角に対応する前記加工用工具の工具刃の刃すじのねじれ角を有する。

0018

そして、前記加工方法は、前記少なくとも二つの溝のそれぞれについて、前記溝の切削加工のアプローチ位置から切削開始位置を通って切削完了位置に至るまでの距離、及び前記溝のねじれ角に基づいて、前記加工物の回転位相に対する補正角を算出する算出工程と、前記加工物の回転軸線と前記加工用工具の回転軸線との交差角を所定値に設定する設定工程と、前記加工用工具と前記加工物の同期回転が、前記一つの溝の前記補正角分だけずれるように制御して前記一つの溝を切削加工する第一切削工程と、このときの同期回転時の前記加工用工具と前記加工物の回転位相を基準回転位相として記憶する記憶工程と、前記加工用工具と前記加工物の同期回転が、前記基準回転位相に対し残りの前記溝の前記補正角分だけずれるように制御して前記残りの溝を切削加工する第二切削工程と、を備える。

0019

本発明の加工装置及び加工方法では、交差角が一定の状態で加工用工具と加工物の同期回転が、補正角分だけずれるように制御して切削加工を行うので、加工用工具と工作物位相合わせを行う必要がない。さらに、一つの加工用工具による切削加工のみを行えばよいので、工具交換が不要となり、発生したバリの除去も可能である。よって、加工時間を大幅に短縮できる。

図面の簡単な説明

0020

本発明の実施の形態に係る加工装置の全体構成を示す図である。
図1の制御装置による加工用工具の工具設計処理を説明するためのフローチャートである。
図1の制御装置による工具状態設定処理を説明するためのフローチャートである。
図1の制御装置による内歯歯面及びチャンファ歯面の加工制御処理を説明するためのフローチャートである。
図1の制御装置によるテーパ歯面及び内歯歯面の加工制御処理を説明するための図4続きのフローチャートである。
加工用工具の概略構成工具端面側から回転軸線方向に見た図である。
図6Aの加工用工具の概略構成を径方向に見た一部断面図である。
図6Bの加工用工具の工具刃の拡大図である。
加工用工具の刃先幅及び刃厚を求める際に使用する加工用工具の各部位を示す図である。
左歯面を加工する際のアプローチ距離及び切削距離を説明するための図である。
左テーパ歯面を加工する際のアプローチ距離及び切削距離を説明するための図である。
右チャンファ歯面を加工する際のアプローチ距離及び切削距離を説明するための図である。
左歯面を加工する際の補正角を説明するための図である。
左テーパ歯面を加工する際の補正角を説明するための図である。
右チャンファ歯面を加工する際の補正角を説明するための図である。
内歯歯面、テーパ歯面及びチャンファ歯面のねじれ角、加工用工具のねじれ角及び各歯面を加工用工具で加工するときの補正角を示す図である。
テーパ歯面及びチャンファ歯面のねじれ角が大きく、左右テーパ歯面のねじれ角が同じで左右チャンファ歯面のねじれ角が同じときの、内歯歯面、テーパ歯面及びチャンファ歯面のねじれ角、加工用工具のねじれ角及び各歯面を加工用工具で加工するときの補正角を示す図である。
テーパ歯面及びチャンファ歯面のねじれ角が大きく、左右テーパ歯面のねじれ角が異なり左右チャンファ歯面のねじれ角が異なるときの、内歯歯面、テーパ歯面及びチャンファ歯面のねじれ角、加工用工具のねじれ角及び各歯面を加工用工具で加工するときの補正角を示す図である。
加工用工具の回転軸線の方向の工具位置を変更するときの加工用工具と加工物との位置関係を示す図である。
軸線方向位置を変更したときの加工状態を示す第一の図である。
軸線方向位置を変更したときの加工状態を示す第二の図である。
軸線方向位置を変更したときの加工状態を示す第三の図である。
加工物の回転軸線に対する加工用工具の回転軸線の傾斜を表す交差角を変更するときの加工用工具と加工物との位置関係を示す図である。
交差角を変更したときの加工状態を示す第一の図である。
交差角を変更したときの加工状態を示す第二の図である。
交差角を変更したときの加工状態を示す第三の図である。
加工用工具の回転軸線方向位置及び交差角を変更するときの加工用工具と加工物との位置関係を示す図である。
軸線方向位置及び交差角を変更したときの加工状態を示す第一の図である。
軸線方向位置及び交差角を変更したときの加工状態を示す第二の図である。
内歯歯面を荒・中仕上げ加工したときのバリの発生状態を径方向に見た図である。
チャンファ歯面を加工したときのバリの発生状態を径方向に見た図である。
テーパ歯面を加工したときのバリの発生状態を径方向に見た図である。
内歯歯面を仕上げ加工したときのバリの除去状態を径方向に見た図である。
左テーパ歯面を加工する前の加工用工具の位置を径方向に見た図である。
左テーパ歯面を加工するときの加工用工具の位置を径方向に見た図である。
左テーパ歯面を加工した後の加工用工具の位置を径方向に見た図である。
加工物であるスリーブを有するシンクロメッシュ機構を示す断面図である。
図16のシンクロメッシュ機構の作動開始前の状態を示す断面図である。
図16のシンクロメッシュ機構の作動中の状態を示す断面図である。
図16のシンクロメッシュ機構の作動完了後の状態を示す断面図である。
加工物であるスリーブのギヤ抜け防止部を示す斜視図である。
図18のスリーブのギヤ抜け防止部を径方向から見た図である。

実施例

0021

(1.加工装置の機械構成
本実施形態では、加工装置の一例として、5軸マシニングセンタを例に挙げ、図1を参照して説明する。つまり、当該加工装置1は、駆動軸として、相互に直交する3つの直進軸(X,Y,Z軸)及び2つの回転軸(X軸線に平行なA軸、A軸線に直角なC軸)を有する装置である。

0022

図1に示すように、加工装置1は、ベッド10と、コラム20と、サドル30と、回転主軸40と、テーブル50と、チルトテーブル60と、ターンテーブル70と、加工物保持具80と、制御装置100等とから構成される。なお、図示省略するが、ベッド10と並んで既知自動工具交換装置が設けられる。

0023

ベッド10は、ほぼ矩形状からなり、床上に配置される。このベッド10の上面には、コラム20をX軸線に平行な方向に駆動するための、図略のX軸ボールねじが配置される。そして、ベッド10には、X軸ボールねじを回転駆動するX軸モータ11cが配置される。

0024

コラム20のY軸線に平行な側面(摺動面)20aには、サドル30をY軸線に平行な方向に駆動するための、図略のY軸ボールねじが配置される。そして、コラム20には、Y軸ボールねじを回転駆動するY軸モータ23cが配置される。

0025

回転主軸40は、加工用工具42を支持し、サドル30内に回転可能に支持され、サドル30内に収容された主軸モータ41により回転される。加工用工具42は、図略の工具ホルダに保持されて回転主軸40の先端に固定され、回転主軸40の回転に伴って回転する。また、加工用工具42は、コラム20及びサドル30の移動に伴ってベッド10に対してX軸線に平行な方向及びY軸線に平行な方向に移動する。なお、加工用工具42の詳細は後述する。

0026

さらに、ベッド10の上面には、テーブル50をZ軸線に平行な方向に駆動するための、図略のZ軸ボールねじが配置される。そして、ベッド10には、Z軸ボールねじを回転駆動するZ軸モータ12cが配置される。

0027

テーブル50の上面には、チルトテーブル60を支持するチルトテーブル支持部63が設けられる。そして、チルトテーブル支持部63には、チルトテーブル60がA軸線に平行な軸線回りで回転(揺動)可能に設けられる。チルトテーブル60は、テーブル50内に収容されたA軸モータ61により回転(揺動)される。

0028

チルトテーブル60には、ターンテーブル70がC軸線に平行な軸線回りで回転可能に設けられる。ターンテーブル70には、加工対象であるスリーブ115を保持する加工物保持具80が装着される。ターンテーブル70は、スリーブ115及び加工物保持具80とともにC軸モータ62により回転される。

0029

制御装置100は、加工制御部101と、工具設計部102と、工具状態演算部103と、補正角算出部104と、記憶部105等とを備える。ここで、加工制御部101、工具設計部102、工具状態演算部103、補正角算出部104及び記憶部105は、それぞれ個別のハードウエアにより構成することもできるし、ソフトウエアによりそれぞれ実現する構成とすることもできる。

0030

加工制御部101は、C軸モータ62を制御して加工物としてスリーブ115の回転軸線Lwと加工用工具42の回転軸線Lとを所定の交差角φ図8A参照)に設定し、主軸モータ41及びA軸モータ61を制御して加工用工具42及びスリーブ115を同期回転させる。そして、X軸モータ11c、Z軸モータ12c、及びY軸モータ23cを制御して、スリーブ115と加工用工具42とをX軸線に平行な方向、Z軸線に平行な方向、及びY軸線に平行な方向に相対移動することにより、スリーブ115の切削加工を行う。

0031

工具設計部102は、詳細は後述するが、加工用工具42の工具刃42aのねじれ角β(図6C参照)等を求めて加工用工具42を設計する。
工具状態演算部103は、詳細は後述するが、スリーブ115に対する加工用工具42の相対的な位置及び姿勢である工具状態を演算する。

0032

補正角算出部104は、詳細は後述するが、スリーブ115の内歯115aの歯面115b,115c(歯溝115g)を切削加工する際の同期回転時の加工用工具42とスリーブ115の回転位相を基準回転位相(0度)としたとき、ギヤ抜け防止部120のチャンファ歯面131,132(チャンファ歯溝131g,132g)、ギヤ抜け防止部120のテーパ歯面121,122(テーパ歯溝121g,122g)を切削加工する際の加工用工具42とスリーブ115の基準回転位相(0度)に対する補正角σf,σr,σL,σR(図10A参照)を算出する。

0033

記憶部105には、加工用工具42に関する工具データ、すなわち刃先円直径da、基準円直径d、刃末のたけha、モジュールm、転位係数λ、圧力角α正面圧力角αt及び刃先圧力角αa、及びスリーブ115の切削加工を行うための加工データは予め記憶される。また、記憶部105は、加工用工具42を設計する際に入力される工具刃42aの刃数Z等を記憶し、また、工具設計部102で設計される加工用工具42の形状データや工具状態演算部103で演算される工具状態を記憶し、また、補正角算出部104で算出されるスリーブ115の回転位相の補正角σf,σr,σL,σRを記憶する。

0034

(2.加工用工具)
加工用工具42を設計する場合について説明する。加工用工具42は、内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cの形状に基づいて設計される。図6Aに示すように、加工用工具42を工具端面42A側から工具軸線(回転軸線)L方向に見たときの工具刃42aの形状は、本例ではインボリュート曲線形状同一形状に形成される。

0035

そして、図6Bに示すように、加工用工具42の工具刃42aには、工具端面42A側に工具軸線Lと直角な平面に対し、角度γ傾斜したすくい角が設けられ、工具周面42B側に工具軸線Lと平行な直線に対し、角度δ傾斜した前逃げ角が設けられる。そして、図6Cに示すように、工具刃42aの刃すじ42bは、工具軸線Lと平行な直線に対し、角度β傾斜したねじれ角を有する。

0036

この工具刃42aの設計には、先ず、内歯115aの左歯面115b及び右歯面115c(歯溝115g)のねじれ角と交差角φ(図8A参照)の和から工具刃42aのねじれ角βを求める。本例では、左歯面115b及び右歯面115c(歯溝115g)のねじれ角は0度であるため、工具刃42aのねじれ角βは交差角φと同一になる。

0037

次に、工具刃42aの刃先幅Sa(図7参照)及び工具刃42aの基準円Cb図7参照)上の刃厚Ta(図7参照)を求める。以上の処理により、左歯面115b及び右歯面115c(歯溝115g)を切削加工するための最適の工具刃42aを有する加工用工具42を設計する。以下に、工具刃42aの刃先幅Sa及び工具刃42aの基準円Cb上の刃厚Taを求めるための演算例を説明する。

0038

図7に示すように、工具刃42aの刃先幅Saは、刃先円直径da及び刃先円刃厚の半角Ψaで表される(式(1)参照)。

0039

0040

刃先円直径daは、基準円直径d及び刃末のたけhaで表され(式(2)参照)、さらに、基準円直径dは、工具刃42aの刃数Z、工具刃42aの刃すじ42bのねじれ角β及びモジュールmで表され(式(3)参照)、刃末のたけhaは、転位係数λ及びモジュールmで表される(式(4)参照)。

0041

0042

0043

0044

刃先円刃厚の半角Ψaは、工具刃42aの刃数Z、転位係数λ、圧力角α、正面圧力角αt及び刃先圧力角αaで表される(式(5)参照)。なお、正面圧力角αtは、圧力角α及び工具刃42aの刃すじ42bのねじれ角βで表すことができ(式(6)参照)、刃先圧力角αaは、正面圧力角αt、刃先円直径da及び基準円直径dで表すことができる(式(7)参照)。

0045

0046

0047

0048

また、工具刃42aの刃厚Taは、基準円直径d及び刃厚Taの半角Ψで表される(式(8)参照)。

0049

0050

基準円直径dは、工具刃42aの刃数Z、工具刃42aの刃すじ42bのねじれ角β及びモジュールmで表される(式(9)参照)。

0051

0052

刃厚Taの半角Ψは、工具刃42aの刃数Z、転位係数λ及び圧力角αで表される(式(10)参照)。以上の加工用工具42の設計は、制御装置100の工具設計部102において行われるものであり、その処理の詳細は後述する。

0053

0054

(3.回転位相の補正角)
ここで、背景技術で述べたように、スリーブ115の加工は多岐にわたり、さらに加工精度を高めるには、発生したバリを除去する別工程が必要であるため、加工時間が長くなる傾向にある。上述の加工装置1では、スリーブ115の回転軸線Lwを加工用工具42の回転軸線Lに対し交差角φで傾斜させ、加工用工具42をスリーブ115と同期回転させながらスリーブ115の回転軸線Lw方向に送り操作し、スリーブ115の内歯115aの歯面115b,115c(歯溝115g)を切削加工する。そして、このときの同期回転時の加工用工具42とスリーブ115の回転位相を基準回転位相(0度)とする。

0055

そして、交差角φを一定に保った状態で、同期回転時の加工用工具42とスリーブ115の回転位相を基準回転位相(0度)に対し補正角σf,σr,σL,σR(図10A参照)で補正することで、一つの加工用工具42でギヤ抜け防止部120の左右チャンファ歯面131,132(左右チャンファ歯溝131g,132g)、ギヤ抜け防止部120の左右テーパ歯面121,122(左右テーパ歯溝121g,122g)を切削加工できることを本発明者は見い出した。以下、この切削加工について説明する。

0056

前述のように、加工用工具42は、内歯115aの左歯面115b及び右歯面115c(歯溝115g)の切削加工が可能なように、左歯面115b及び右歯面115c(歯溝115g)のねじれ角、本例では0度に対応する工具刃42aの刃すじ42bのねじれ角βを有している。このような加工用工具42が交差角φでスリーブ115と同期回転している場合、図8Aに示すように、左歯面115bを切削加工するときの工具刃42aの刃先42cは、所定のアプローチ位置U11から切削開始位置U12(左歯面115bの一端(図示下端))を通って切削完了位置U13(左歯面115bの他端(図示上端))に至るスリーブ115の回転軸線Lwと平行な直線状の移動軌跡ML1をとる。なお、アプローチ位置U11は、切削開始位置U12から加工用工具42側に左歯面115bの歯すじ方向に延びる直線上の所定位置になる。

0057

以上の点を踏まえると、同一の加工用工具42により一定の交差角φで左テーパ歯面121(左テーパ歯溝121g)を切削加工するためには、図8Bに示すように、工具刃42aの刃先42cの移動軌跡ML2が、上述のアプローチ位置U11から切削開始位置U22(左テーパ歯面121の一端(図示下端))を通って切削完了位置U23(左テーパ歯面121の他端(図示上端))に直線状に至るように、加工用工具42とスリーブ115の同期回転を制御すればよい。すなわち、アプローチ位置U11は、切削開始位置U22から加工用工具42側に左テーパ歯面121の歯すじ方向に延びる直線上に位置するようにすればよく、移動軌跡ML2は、スリーブ115の回転軸線Lwに対し左テーパ歯面121のねじれ角θf分傾斜した直線と平行になる。なお、右テーパ歯面122(右テーパ歯溝122g)を切削加工する場合も同様である。

0058

同様に、同一の加工用工具42により一定の交差角φで右チャンファ歯面132(右チャンファ歯溝132g)を切削加工するためには、図8Cに示すように、工具刃42aの刃先42cの移動軌跡ML3が、上述のアプローチ位置U11から切削開始位置U32(右チャンファ歯面132の一端(図示下端))を通って切削完了位置U33(右チャンファ歯面132の他端(図示上端))に直線状に至るように、加工用工具42とスリーブ115の同期回転を制御すればよい。すなわち、アプローチ位置U11は、切削開始位置U32から加工用工具42側に右チャンファ歯面132の歯すじ方向に延びる直線上に位置するようにすればよく、移動軌跡ML3は、スリーブ115の回転軸線Lwに対し右チャンファ歯面132のねじれ角θR分傾斜した直線と平行になる。なお、左チャンファ歯面131(左チャンファ歯溝131g)を切削加工する場合も同様である。

0059

以上から、図8Aに示すように、左歯面115bを切削加工するときは、左歯面115bのねじれ角が0であるため、工具刃42aの刃先42cがアプローチ位置U11から切削開始位置U12を通って切削完了位置U13に至るまでに、工具刃42aの刃先42cはスリーブ115の径方向に移動しない。一方、図8B及び図8Cに示すように、左テーパ歯面121及び右チャンファ歯面132を切削加工するときは、左テーパ歯面121及び右チャンファ歯面132のねじれ角がθf,θRであるため、工具刃42aの刃先42cがアプローチ位置U11から切削開始位置U22,U32を通って切削完了位置U23,U33に至るまでに、工具刃42aの刃先42cはスリーブ115の径方向に距離M1,M2だけ移動する。

0060

そこで、図8A図9Aに示すように、左歯面115bを切削加工するときの同期回転時の加工用工具42とスリーブ115の回転位相、すなわちアプローチ位置U11と切削開始位置U12と切削完了位置U13が、スリーブ115の回転軸線Lwと平行な直線上にあるときの回転位相を基準回転位相(0度)とする。そして、図8B図9B及び図8C図9Cに示すように、左テーパ歯面121及び右チャンファ歯面132を切削加工するときの同期回転時の加工用工具42とスリーブ115の回転位相を、基準回転位相(0度)に対しスリーブ115の径方向への各移動距離M1,M2に対応するスリーブ115の回転位相(補正角σf,σR)だけ補正する。これにより、工具刃42aの刃先42cを上述の移動軌跡ML2,ML3で移動させることができる。

0061

補正角σf,σRは、アプローチ位置U11から切削開始位置U22,U32までの第一距離M11,M21、及び切削開始位置U22,U32から切削完了位置U23,U33までの第二距離M12,M22の和と、左テーパ歯面121及び右チャンファ歯面132のねじれ角θf,θRにより次式(11)及び次式(12)で表される。

0062

0063

0064

そして、交差角φが一定の状態で加工用工具42とスリーブ115の同期回転が、基準回転位相(0度)に対し補正角σf,σR分だけずれるように制御して切削加工を行う。この同期回転制御は、加工用工具42の回転速度とスリーブ115の回転速度を調整することで可能となる。なお、右テーパ歯面122及び左チャンファ歯面131を切削加工する場合も同様である。これにより、加工装置1では、加工用工具42とスリーブ115の位相合わせを行う必要がない。さらに、一つの加工用工具42による切削加工のみを行えばよいので、工具交換が不要となり、発生したバリの除去も可能である。よって、加工時間を大幅に短縮できる。

0065

(4.加工装置における加工用工具の工具状態)
次に、設計した加工用工具42を加工装置1に適用し、加工用工具42の工具状態として加工用工具42の工具軸線Lの方向の工具位置(以下、加工用工具42の軸線方向位置という)や加工用工具42の交差角φを変化させて、左テーパ歯面121を切削加工したときの加工精度について検討する。なお、加工用工具42で内歯115aの左歯面115b、右歯面115c、右テーパ歯面122、左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132を切削加工したときの加工精度も同様であるので、詳細な説明は省略する。

0066

例えば、図11Aに示すように、加工用工具42の軸線方向位置、すなわち加工用工具42の工具端面42Aと工具軸線Lとの交点Pが、スリーブ115の回転軸線Lw上に位置する場合(オフセット量0)、加工用工具42の工具軸線L方向に距離+kだけオフセットした場合(オフセット量+k)、及び加工用工具42の工具軸線L方向に距離−kだけオフセットした場合(オフセット量−k)で左テーパ歯面121を加工した。なお、加工用工具42の交差角φは全て一定とした。

0067

その結果、左テーパ歯面121の加工状態は、図11B図11C図11Dに示すようになった。なお、図中、太い実線Eは、設計上の左テーパ歯面121のインボリュート曲線を直線に変換して表したもので、ドット部分Dは、切削除去部分を表す。

0068

図11Bに示すように、オフセット量0では、加工された左テーパ歯面121は、設計上のインボリュート曲線に近い形状で加工される。一方、図11Cに示すように、オフセット量+kでは、加工された左テーパ歯面121は、設計上のインボリュート曲線に対し、図示右方向(点線矢印方向)、すなわち時計回りピッチ円方向にずれた形状で加工され、図11Dに示すように、オフセット量−kでは、加工された左テーパ歯面121は、設計上のインボリュート曲線に対し、図示左方向(点線矢印方向)、すなわち反時計回りのピッチ円方向にずれた形状で加工される。よって、左テーパ歯面121の形状は、加工用工具42の工具軸線L方向位置を変更することにより、ピッチ円方向にずらすことができる。

0069

また、例えば、図12Aに示すように、加工用工具42の交差角が、角度φ、φf、φffの各場合で左テーパ歯面121を加工した。なお、各角度の大小関係は、φ>φf>φffである。その結果、左テーパ歯面121の加工状態は、図12B図12C図12Dに示すようになった。

0070

図12Bに示すように、交差角φでは、加工された左テーパ歯面121は、設計上のインボリュート曲線に近い形状で加工される。一方、図12Cに示すように、交差角φfでは、加工された左テーパ歯面121は、設計上のインボリュート曲線に対し、歯先の幅がピッチ円方向(実線矢印方向)に狭まり、歯元の幅がピッチ円方向(実線矢印方向)に拡がった形状で加工され、図12Dに示すように、交差角φffでは、加工された左テーパ歯面121は、設計上のインボリュート曲線に対し、歯先の幅がピッチ円方向(実線矢印方向)にさらに狭まり、歯元の幅がピッチ円方向(実線矢印方向)にさらに拡がった形状で加工される。よって、左テーパ歯面121の形状は、加工用工具42の交差角を変更することにより、歯先のピッチ円方向の幅及び歯元のピッチ円方向の幅を変更できる。

0071

また、例えば、図13Aに示すように、加工用工具42の軸線方向位置、すなわち加工用工具42の工具端面42Aと工具軸線Lとの交点Pが、スリーブ115の回転軸線Lw上に位置し(オフセット量0)、且つ加工用工具42の交差角が、φの場合、及び加工用工具42の工具軸線L方向に距離+kだけオフセットし(オフセット量+k)、且つ交差角φfの場合で左テーパ歯面121を加工した。その結果、左テーパ歯面121の加工状態は、図13B図13Cに示すようになった。

0072

図13Bに示すように、オフセット量0且つ交差角φでは、加工された左テーパ歯面121は、設計上のインボリュート曲線に近い形状で加工される。一方、図13Cに示すように、オフセット量+k且つ交差角φfでは、加工された左テーパ歯面121は、設計上のインボリュート曲線に対し、図示右方向(点線矢印方向)、すなわち時計回りのピッチ円方向にずれ、且つ歯先の幅がピッチ円方向(実線矢印方向)に狭まり、歯元の幅がピッチ円方向(実線矢印方向)に拡がった形状で加工される。よって、左テーパ歯面121の形状は、加工用工具42の軸線方向位置、及び加工用工具42の交差角を変更することにより、ピッチ円方向にずらし、歯先の周方向の幅及び歯元のピッチ円方向の幅を変更できる。

0073

以上により、加工用工具42は、加工装置1においてオフセット量0且つ交差角φでセットされることで、左テーパ歯面121を高精度に切削加工できる。加工用工具42の工具状態の設定は、制御装置100の工具状態演算部103において行われるものであり、その処理の詳細は後述する。

0074

(5.制御装置の工具設計部による処理)
次に、制御装置100の工具設計部102による加工用工具42の設計処理について、図2図6A図6B及び図6Cを参照して説明する。なお、加工用工具42に関するデータ、すなわち刃数Z、刃先円直径da、基準円直径d、刃末のたけha、モジュールm、転位係数λ、圧力角α、正面圧力角αt及び刃先圧力角αaは記憶部105に予め記憶されているものとする。

0075

制御装置100の工具設計部102は、記憶部105から左歯面115bのねじれ角(本例では、0度)を読み込む(図2のステップS21)。そして、工具設計部102は、作業者により入力される左歯面115bを切削加工するときの加工用工具42の交差角φと、読み込んだ左歯面115bのねじれ角(0度)との差を、加工用工具42の工具刃42aの刃すじ42bのねじれ角β(=φ)として求める(図2のステップS22)。

0076

工具設計部102は、記憶部105から加工用工具42の刃数Z等を読み込み、読み込んだ加工用工具42の刃数Z等及び求めた工具刃42aの刃すじ42bのねじれ角βに基づいて、工具刃42aの刃先幅Sa及び刃厚Taを求める(図2のステップS23)。そして、工具設計部102は、求めた工具刃42aの刃すじ42bのねじれ角β等に基づいて、加工用工具42の形状を決定し(図2のステップS24)、決定した加工用工具42の形状データを記憶部105に記憶し(図2のステップS25)、全ての処理を終了する。以上により、最良の工具刃42aを有する加工用工具42が設計される。

0077

(6.制御装置の工具状態演算部による処理)
次に、制御装置100の工具状態演算部103による処理について、図3を参照して説明する。この処理は、公知の歯車創成理論に基づいて、加工用工具42の工具刃42aの軌跡を演算するシミュレーション処理であるため、実加工は不要であり、低コスト化を図ることができる。

0078

制御装置100の工具状態演算部103は、記憶部105から左テーパ歯面121の切削加工を行うときの加工用工具42の軸線方向位置等の工具状態を読み込み(図3のステップS31)、シミュレーション回数nとして1回目であることを記憶部105に記憶し(図3のステップS32)、加工用工具42を読み込んだ工具状態に設定する(図3のステップS33)。

0079

そして、工具状態演算部103は、記憶部105から読み込んだ加工用工具42の形状データに基づいて、左テーパ歯面121を加工するときの工具軌跡を求め(図3のステップS34)、加工後の左テーパ歯面121の形状を求める(図3のステップS35)。そして、工具状態演算部103は、求めた加工後の左テーパ歯面121の形状と、設計上の左テーパ歯面121の形状とを比較し、形状誤差を求めて記憶部105に記憶し(図3のステップS36)、シミュレーション回数nに1を加算する(図3のステップS37)。

0080

そして、工具状態演算部103は、シミュレーション回数nが予め設定した回数nnに達したか否かを判断し(図3のステップS38)、シミュレーション回数nが設定回数nnに達していないときは、加工用工具42の工具状態のうち例えば加工用工具42の軸線方向位置を変更し(図3のステップS39)、ステップS34に戻って上述の処理を繰り返す。一方、シミュレーション回数nが設定回数nnに達したときは、工具状態演算部103は、記憶した形状誤差のうち最小の誤差となる加工用工具42の軸線方向位置を選択して記憶部105に記憶し(図3のステップS40)、全ての処理を終了する。

0081

なお、上述の処理では、複数回のシミュレーションを行って最小の誤差となる加工用工具42の軸線方向位置を選択するようにしたが、予め許容形状誤差を設定しておき、ステップS36において算出した形状誤差が許容形状誤差以下となったときの加工用工具42の軸線方向位置を選択してもよい。また、ステップS39においては、加工用工具42の軸線方向位置を変更する代わりに、加工用工具42の交差角φを変更し、もしくは加工用工具42の軸線回り方向位置を変更し、又は、交差角、軸線方向位置、軸線回り方向位置の任意の組み合わせを変更するようにしてもよい。

0082

(7.制御装置の加工制御部による処理)
次に、制御装置100の加工制御部101及び補正角算出部104による処理(加工方法)について、図4及び図5を参照して説明する。ここで、作業者は、工具設計部102で設計した加工用工具42の形状データに基づいて、加工用工具42を製作しているものとする。そして、加工用工具42は、加工装置1の回転主軸40に装着され、スリーブ115は、加工装置1の加工物保持具80に装着されているものとする。

0083

また、各テーパ歯面121,122のねじれ角θf,θr、各チャンファ歯面131,132のねじれ角θL,θR、各テーパ歯面121,122のアプローチ位置U11から切削開始位置までの第一距離と切削開始位置から切削完了位置までの第二距離の和は、記憶部105に予め記憶されているものとする。また、以下の説明では、各歯溝115g、121g、122g,131g,132gの標記は省略し、各歯面115b,115c,121,122,131,132の標記のみとする。

0084

制御装置100の補正角算出部104は、各テーパ歯面121,122及び各チャンファ歯面131,132を切削加工する際の各補正角σf,σr,σL,σRを算出して記憶部105に記憶する(図4のステップS41、本発明の「算出工程」に相当)。そして、加工制御部101は、交差角φを所定値に設定し(図4のステップS42、本発明の「設定工程」に相当)、加工用工具42をアプローチ位置U11に配置する(図4のステップS43)。

0085

そして、加工制御部101は、加工用工具42をスリーブ115と同期回転させながら加工用工具42をスリーブ115の回転軸線Lw方向に1回もしくは複数回送り操作し、スリーブ115の内周を荒切削加工して内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cを形成し、さらに形成した内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cを中仕上げ切削加工する(図4のステップS44、本発明の「第一切削工程」に相当)。中仕上げ切削加工は、荒切削加工時の工具送り速度よりも小さい工具送り速度にすることで行われる。この中仕上げ切削加工により、図14Aに示すように、内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cにおける加工用工具42の切削終了側の端部には、バリB1が発生する。

0086

そして、加工制御部101は、内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cの切削加工が完了したら(図4のステップS45)、このときの同期回転時の加工用工具42とスリーブ115の回転位相を基準回転位相として記憶部105に記憶する(図4のステップS46、本発明の「記憶工程」に相当)。そして、交差角φは維持した状態で、加工用工具42をアプローチ位置U11に配置する(図4のステップS47)。

0087

加工制御部101は、基準回転位相及び左チャンファ歯面131の補正角σLに基づいて、加工用工具42をスリーブ115と同期回転させながら、加工用工具42をスリーブ115の回転軸線Lw方向に1回もしくは複数回送り操作し、内歯115aを切削加工して内歯115aの左歯面115bに左チャンファ歯面131を形成する(図4のステップS48、本発明の「第二切削工程」に相当)。そして、左チャンファ歯面131の切削加工が完了したら(図4のステップS49)、交差角φは維持した状態で、加工用工具42をアプローチ位置U11に配置する(図4のステップS50)。

0088

そして、基準回転位相及び右チャンファ歯面132の補正角σRに基づいて、加工用工具42をスリーブ115と同期回転させながら、加工用工具42をスリーブ115の回転軸線Lw方向に1回もしくは複数回送り操作し、内歯115aの右歯面115cを切削加工して内歯115aの右歯面115cに右チャンファ歯面132を形成する(図4のステップS51、本発明の「第二切削工程」に相当)。なお、右チャンファ歯面132を切削加工後に左チャンファ歯面131を切削加工してもよい。この切削加工により、図14Bに示すように、左チャンファ歯面131における加工用工具42の切削終了側の端部及び右チャンファ歯面132における加工用工具42の切削終了側の端部には、バリB2が発生する。

0089

そして、加工制御部101は、右チャンファ歯面132の切削加工が完了したら(図5のステップS52)、交差角φは維持した状態で、加工用工具42をアプローチ位置U11に配置する(図5のステップS53)。そして、基準回転位相及び左テーパ歯面121の補正角σfに基づいて、加工用工具42をスリーブ115と同期回転させながら、加工用工具42をスリーブ115の回転軸線Lw方向に1回もしくは複数回送り操作し、内歯115aを切削加工して左サブ歯面121aを含む左テーパ歯面121を形成する(図5のステップS54、本発明の「第二切削工程」に相当)。

0090

すなわち、図15A図15Cに示すように、加工用工具42は、スリーブ115の回転軸線Lw方向への1回もしくは複数回の切削動作で、内歯115aに左サブ歯面121aを含む左テーパ歯面121を形成する。このときの加工用工具42は、送り動作及び送り動作と反対方向の戻し動作を行う必要があるが、図15Cに示すように、この反転動作慣性力が働く。このため、加工用工具42の送り動作は、左サブ歯面121aを含む左テーパ歯面121を形成できる左テーパ歯面121の歯すじ長ffより所定長短い点Qにおいて終了し、戻し動作に移行する。この送り終了点Qは、センサなどによって計測して求めることができるが、必要な加工精度に対して、送り量の精度が十分な場合には、計測しなくても送り量で調整することができる。つまり、点Qまで加工できるように送り量などを調整して、切削加工をすることで、精度良く加工できる。

0091

そして、加工制御部101は、左テーパ歯面121の切削加工が完了したら(図5のステップS55)、交差角φは維持した状態で、加工用工具42をアプローチ位置U11に配置する(図5のステップS56)。そして、基準回転位相及び右テーパ歯面122の補正角σrに基づいて、加工用工具42をスリーブ115と同期回転させながら、加工用工具42をスリーブ115の回転軸線Lw方向に1回もしくは複数回送り操作し、内歯115aを切削加工して右サブ歯面122aを含む右テーパ歯面122を切削形成する(図5のステップS57、本発明の「第二切削工程」に相当)。

0092

なお、右テーパ歯面122を切削加工後に左テーパ歯面121を切削加工してもよい。この切削加工により、図14Cに示すように、左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132に発生していたバリB2は除去され、左テーパ歯面121及び右テーパ歯面122における加工用工具42の切削終了側の端部には、バリB3が発生する。

0093

そして、加工制御部101は、右テーパ歯面122の切削加工が完了したら(図5のステップS58)、交差角φは維持した状態で、加工用工具42をアプローチ位置U11に配置する(図5のステップS59)。そして、基準回転位相の状態に戻して加工用工具42をスリーブ115と同期回転させながら、加工用工具42をスリーブ115の回転軸線Lw方向に1回送り操作し、内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cを仕上げ切削加工する(図5のステップS60)。仕上げ切削加工は、中仕上げ切削加工時の工具送り速度よりも小さい工具送り速度にすることで行われる。

0094

そして、加工制御部101は、内歯1115aの左歯面115b及び右歯面115cの仕上げ切削加工が完了したら(図5のステップS61)、全ての処理を終了する。この仕上げ切削加工により、図14Dに示すように、内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cに発生していたバリB1、並びに左テーパ歯面121及び右テーパ歯面122に発生していたバリB3は除去される。なお、仕上げ切削加工後にもバリは発生するが、非常に小さいため、後処理(例えば、ブラッシング)により除去可能である。

0095

上述のように、加工装置1では、先ずスリーブ115の内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cの間の溝115gを荒切削加工及び中仕上げ切削加工し、次にギヤ抜け防止部120の左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132の間の溝131gを切削加工する。次にギヤ抜け防止部120の左テーパ歯面121及び右テーパ歯面122の間の溝121gを切削加工し、最後にスリーブ115の内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cの間の溝115gを仕上げ切削加工する。これにより、工具交換及び加工用工具42と加工物Wの位相合わせが不要な切削加工のみで全ての歯面115b,115c,121,122,131,132を加工でき、さらに各切削加工で発生するバリを順に除去でき、特に最後に発生するバリは仕上げ切削加工で除去できるので、従来よりも加工時間を大幅に短縮できる。

0096

仮に、左テーパ歯面121及び右テーパ歯面122を切削加工してから左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132を切削加工すると、内歯115aを仕上げ切削加工では左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132に接触する機会が無く、左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132で生じたバリを除去できないからである。以上のように、ギヤ抜け防止部120は、切削加工のみで形成でき、発生したバリを切削加工と同時に除去できるので、従来のようにローリング加工、エンドミル加工、パンチ加工の加工時間よりも大幅に短縮できる。

0097

(8.その他)
上述の例では、加工用工具42は、内歯115aの左歯面115b及び右歯面115cの切削加工に対応するように設計され、ギヤ抜け防止部120の左テーパ歯面121、右テーパ歯面122、左チャンファ歯面131、右チャンファ歯面132の切削加工には非対応であるため、補正角σf,σr,σL,σRを用いて切削加工に対応するようにした。しかし、左テーパ歯面121、右テーパ歯面122、左チャンファ歯面131、右チャンファ歯面132の何れか一つの切削加工に対応するように加工用工具42を設計する場合、残りの切削加工は補正角を用いて対応可能である。

0098

また、上述の例では、歯溝115g、テーパ歯溝121g、チャンファ歯溝131gを加工する場合を説明したが、特に歯溝に限定されるものではなく、溝であれば同様に加工可能である。また、内歯車内周歯に対し加工する場合を説明したが、外歯車外周歯に対しても同様に加工可能である。また、加工物としてシンクロメッシュ機構110のスリーブ115としたが、歯車のように噛み合う歯部を有するものや円筒形状、円盤形状の加工物でもよく、内周(内歯)、外周(外歯)のいずれか一方又は両方に複数の歯面(異なる複数の歯すじ、歯形(歯先、歯元))を同様に加工可能である。また、クラウニングレリービングなどの連続変化する歯すじ、歯形(歯先、歯元)も同様に加工可能であり、噛み合いを最適化(良好な状態)にすることができる。

0099

また、上述の例では、5軸マシニングセンタである加工装置1は、スリーブ115をA軸旋回可能とするものとした。これに対して、5軸マシニングセンタは、縦形マシニングセンタとして、加工用工具42FをA軸旋回可能とする構成としてもよい。また、本発明をマシニングセンタに適用する場合を説明したが、歯車加工専用機に対しても同様に適用可能である。また、歯車の歯底の加工を例に説明したが、一般的な円筒工作物の周面の溝の加工に適用可能である。

0100

また、上述の例では、一つの加工用工具42で6か所の加工部位、すなわち加工物(スリーブ115)の内歯115aの左歯面115b、右歯面115c、及びギヤ抜け防止部120の左テーパ歯面121、右テーパ歯面122、左チャンファ歯面131、右チャンファ歯面132の切削加工に対応する場合を説明した。しかし、加工物(スリーブ115)の隣り合う内歯115aの歯溝115g(左歯面115bと右歯面115c)の幅が狭い場合や、左テーパ歯面121及び右テーパ歯面122のねじれ角度が大きい場合、左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132のねじれ角度が大きい場合は、加工用工具42と加工物(スリーブ115)とが干渉することがある。このような場合は、複数の加工用工具42で加工することで、上記干渉を防止できる。

0101

例えば、図10Bに示すように、左テーパ歯面121のねじれ角度θf1と右テーパ歯面122のねじれ角度θr1が同じで、左チャンファ歯面131のねじれ角度θL1と右チャンファ歯面132のねじれ角度θR1が同じ場合を想定する。この場合、左テーパ歯面121及び右テーパ歯面122は、同一のねじれ角度β1を有する加工用工具42で交差角φを一定に保った状態で、同期回転時の加工用工具42とスリーブ115の回転位相を基準回転位相(0度)に対し補正角σf1及びσr1とすることで加工できる。また、左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132は、同一のねじれ角度β2を有する加工用工具42で交差角φを一定に保った状態で、同期回転時の加工用工具42とスリーブ115の回転位相を基準回転位相(0度)に対し補正角σL1及びσR1とすることで加工できる。

0102

このように、6か所の加工部位に対して加工用工具42を3本にできるので、工具交換頻度を抑えることができ、加工時間の短縮及び工具費用の削減が可能となる。また、6か所の加工部位に対して交差角を一定φにできるので、加工用工具42の加工位置(位相等)の再調整は不要となり、加工時間の短縮が可能となる。また、調整が容易な補正角σf1,σr1,σL1及びσR1を変更するだけでよいので、加工時間の短縮が可能となる。

0103

また、例えば、図10Cに示すように、左テーパ歯面121のねじれ角度θf1と右テーパ歯面122のねじれ角度θr1が異なり、左チャンファ歯面131のねじれ角度θL1と右チャンファ歯面132のねじれ角度θR1が異なる場合を想定する。この場合、左テーパ歯面121、右テーパ歯面122、左チャンファ歯面131及び右チャンファ歯面132は、異なるねじれ角度β3、β4、β5、β6を有する加工用工具42で交差角φを一定に保った状態で、同期回転時の加工用工具42とスリーブ115の回転位相を基準回転位相(0度)に対し補正角σf2,σr2,σL2及びσR2とすることで加工できる。

0104

このように、6か所の加工部位に対して交差角を一定φにできるので、加工用工具42の加工位置(位相等)の再調整は不要となり、加工時間の短縮が可能となる。また、調整が容易な補正角σf2,σr2,σL2及びσR2を変更するだけでよいので、加工時間の短縮が可能となる。また、場合によっては、加工工程(歯面の種類)において、交差角を一部変更することで、工具交換頻度を抑制できることもあり、加工時間の短縮が可能となる。

0105

1:加工装置、 42:加工用工具、 42a:工具刃、 42b:刃すじ、 100:制御装置、 101:加工制御部、 102:工具設計部、 103:工具状態演算部、 104:補正角算出部、 105:記憶部、 115:スリーブ(加工物)、 121:左テーパ歯面、 122:右テーパ歯面、 131:左チャンファ歯面、 132:右チャンファ歯面、 β:刃すじのねじれ角、 θf,θr,θL,θR,θf1,θr1,θL1,θR1,θf2,θr2,θL2,θR2:歯面のねじれ角、 φ:交差角、 σf,σr,σL,σR,σf1,σr1,σL1,σR1,σf2,σr2,σL2,σR2:補正角

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