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技術 電界撹拌方法及び電界撹拌用キャップカバー

出願人 国立大学法人秋田大学秋田県
発明者 南谷佳弘今井一博藤嶋悟志星野育赤上陽一中村竜太
出願日 2017年7月11日 (1年10ヶ月経過) 出願番号 2017-135498
公開日 2019年2月7日 (3ヶ月経過) 公開番号 2019-017253
状態 未査定
技術分野 酵素、微生物を含む測定、試験 生物学的材料の調査,分析 微生物・酵素関連装置
主要キーワード 変動電界 キャップカバー 電圧アンプ 取り付き 高圧アンプ 蒸発抑制 静電遮蔽 通常法
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (9)

課題

本発明は、液滴の蒸発を抑制することができる新たな電界撹拌方法を開発することを目的とする。

解決手段

本発明は、液滴に変動電界印加して液滴を撹拌する電界撹拌方法において、試料台(1)上に液滴(2)を形成し、 液滴(2)を覆う中空キャップカバー(4)を試料台(1)上に設け、 液滴(2)に変動電界を印加することを含む電界撹拌方法を提供する。 本発明の電界撹拌方法によれば、液滴が振動する空間を確保しつつ、液滴の周囲の空間の水蒸気分圧を高めることができるため、液滴の蒸発を効率的に抑制しつつ電界撹拌を行うことが可能となる。

概要

背景

生体組織切片等の固形生体組織中に含まれる生体分子タンパク質、DNA、RNA、多糖等)を、生体分子を抽出することなく固形の生体組織中に存在したままで検出し、その分布イメージングする方法には様々なものがある。これらの中でも、生体分子に特異的に結合する分子を利用した検出とイメージングが最も広く行われており、核酸同士の相補的結合を利用したインサイチュハイブリダイゼーション(In situ hybridization、ISH)や、特定の生体分子に特異的な抗体を用いた、いわゆる免疫組織化学(Immunohistochemistry、IHC、別名「免疫染色」とも呼ばれる。)が一般的な手法となっている。

インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や免疫組織化学(IHC)を用いれば、患者から採取した組織細胞に対して、特定の疾患に関連する特定の遺伝子やタンパク質の発現顕微鏡観察することができるので、これらの手法は病理診断にもよく使用されている。
例えば、HER2遺伝子は、ヒト乳癌症例の15〜25%で遺伝子の増幅と、HER2タンパク質の過剰発現が認められる癌遺伝子であるが、HER2遺伝子増幅/HER2タンパク過剰発現のある乳癌患者は予後不良であり、ホルモン療法及びCMF療法に対する治療抵抗性を示すとの報告がある。また、HER2遺伝子増幅/タンパク過剰発現が確認された乳癌に対しては、ハーセプチチン(登録商標、一般名トラスツズマブ)の投与により、生存期間生存率の有意な改善が認められている。
したがって、乳癌患者に対しては、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や免疫組織化学(IHC)により、HER2遺伝子/HER2タンパク質の検査を行うことが、予後の予測治療方針の決定において重要となる。

しかしながら、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や免疫組織化学(IHC)による病理診断は、ハイブリダイゼーション抗原抗体反応に長時間を要するものであった。インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)の場合には、全ての工程で通常1日〜2日程度の時間を要し、免疫組織化学(IHC)法の場合には、通常70分〜200分程度の時間を要するものであった。

そこで、本発明者らは、核酸プローブや抗体を含む反応溶液を用いてドーム状の液滴を形成し、液滴に変動電界印加して液滴を高速振動させることにより、ハイブリダイゼーションや抗原抗体反応を促進して、生体分子を迅速に検出する方法を開発した(特許文献1〜10並びに非特許文献1〜3)。この方法によれば、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)であれば、全ての工程を6時間程度で行うことが可能となり、免疫組織化学(IHC)法であれば、15〜30分程度で行うことが可能となる。このため、早期診断に基づく早期治療の有無が生死を分ける白血病のような急性疾患の病理診断を迅速に行うことが可能となり、また、癌などの手術中に患者から採取した組織を迅速に病理診断して(術中迅速病理診断)、手術の方針を決定することが可能となった。

このように液滴に変動電界を印加して撹拌させる方法は、「電界撹拌」とも呼ばれ、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や免疫組織化学(IHC)に用いれば、生体分子を検出する時間を大幅に短縮することができるため、極めて有用な方法であり、さらなる改良発展が望まれていた。

概要

本発明は、液滴の蒸発を抑制することができる新たな電界撹拌方法を開発することを目的とする。本発明は、液滴に変動電界を印加して液滴を撹拌する電界撹拌方法において、試料台(1)上に液滴(2)を形成し、 液滴(2)を覆う中空キャップカバー(4)を試料台(1)上に設け、 液滴(2)に変動電界を印加することを含む電界撹拌方法を提供する。 本発明の電界撹拌方法によれば、液滴が振動する空間を確保しつつ、液滴の周囲の空間の水蒸気分圧を高めることができるため、液滴の蒸発を効率的に抑制しつつ電界撹拌を行うことが可能となる。

目的

そこで、本発明は、上記従来の状況に鑑み、液滴の蒸発を抑制することができる新たな電界撹拌方法を開発することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

液滴に変動電界印加して前記液滴を撹拌する電界撹拌方法において、試料台上に前記液滴を形成し、前記液滴を覆う中空キャップカバーを前記試料台上に設け、前記液滴に変動電界を印加することを含む電界撹拌方法。

請求項2

前記液滴に変動電界を印加したときに前記液滴が前記キャップカバーに接触することがないように、前記液滴との間に空間を設けて前記キャップカバーを前記試料台上に設ける、請求項1に記載の電界撹拌方法。

請求項3

前記キャップカバーにより、前記液滴の周囲の空間を密閉した状態とする、請求項1又は2に記載の電界撹拌方法。

請求項4

固形生体試料中に含有される生体分子と前記生体分子に特異的な検出分子を結合させることにより、前記固形の生体試料中の前記生体分子を検出する方法において、A)試料台上に前記固形の生体試料裁置し、B)前記検出分子を含む溶液を用いて、前記固形の生体試料を覆うように、前記試料台上に液滴を形成し、C)前記液滴を覆う中空のキャップカバーを前記試料台上に設け、D)前記液滴に変動電界を印加することで前記液滴を撹拌して、前記固形の生体試料中に含まれる生体分子と前記検出分子とを結合させ、E)前記生体分子に結合した前記検出分子により、前記生体分子の存在を検出することを含む、生体分子の検出方法

請求項5

前記液滴に変動電界を印加したときに前記液滴が前記キャップカバーに接触することがないように、前記液滴との間に空間を設けて前記キャップカバーを前記試料台上に設ける、請求項4に記載の生体分子の検出方法。

請求項6

前記生体分子が核酸であり、前記検出分子が前記核酸に相補的な配列を有する核酸プローブであり、前記D)において前記核酸と前記核酸プローブとをハイブリダイズさせる、請求項4又は5に記載の生体分子の検出方法。

請求項7

前記D)において、前記液滴の温度を上昇させてハイブリダイズに適した温度に保つ、請求項6に記載の生体分子の検出方法。

請求項8

前記生体分子がタンパク質であり、前記検出分子が前記タンパク質に特異的な抗体である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の生体分子の検出方法。

請求項9

非導電性の材料により形成され、中空な蓋様の形状を有し、前記液滴に変動電界を印加して前記液滴を撹拌する電界撹拌を行うにあたり、前記液滴を覆うために用いる電界撹拌用キャップカバー。

請求項10

中空のドーム形状である、請求項9に記載の電界撹拌用キャップカバー

請求項11

透明な材料により形成されている、請求項9又は10に記載の電界撹拌用キャップカバー

請求項12

請求項9〜11のいずれかに記載の電界撹拌用キャップカバーと、撥水フレームを有する試料台とを含む、電界撹拌用キット

請求項13

前記電界撹拌用キャップカバーと前記撥水フレームとが嵌合可能に形成されている、請求項12に記載の電界撹拌用キット。

技術分野

0001

本発明は、液滴に変動電界印加して撹拌を行う電界撹拌方法、及び電界撹拌用キャップカバーに関する。
本発明は、インサイチュハイブリダイゼーション(In situ hybridization、ISH)や免疫組織化学(Immunohistochemistry、IHC)等の生体分子検出方法に好適に用いることができる技術に関する。

背景技術

0002

生体組織切片等の固形生体組織中に含まれる生体分子(タンパク質、DNA、RNA、多糖等)を、生体分子を抽出することなく固形の生体組織中に存在したままで検出し、その分布イメージングする方法には様々なものがある。これらの中でも、生体分子に特異的に結合する分子を利用した検出とイメージングが最も広く行われており、核酸同士の相補的結合を利用したインサイチュハイブリダイゼーション(In situ hybridization、ISH)や、特定の生体分子に特異的な抗体を用いた、いわゆる免疫組織化学(Immunohistochemistry、IHC、別名「免疫染色」とも呼ばれる。)が一般的な手法となっている。

0003

インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や免疫組織化学(IHC)を用いれば、患者から採取した組織細胞に対して、特定の疾患に関連する特定の遺伝子やタンパク質の発現顕微鏡観察することができるので、これらの手法は病理診断にもよく使用されている。
例えば、HER2遺伝子は、ヒト乳癌症例の15〜25%で遺伝子の増幅と、HER2タンパク質の過剰発現が認められる癌遺伝子であるが、HER2遺伝子増幅/HER2タンパク過剰発現のある乳癌患者は予後不良であり、ホルモン療法及びCMF療法に対する治療抵抗性を示すとの報告がある。また、HER2遺伝子増幅/タンパク過剰発現が確認された乳癌に対しては、ハーセプチチン(登録商標、一般名トラスツズマブ)の投与により、生存期間生存率の有意な改善が認められている。
したがって、乳癌患者に対しては、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や免疫組織化学(IHC)により、HER2遺伝子/HER2タンパク質の検査を行うことが、予後の予測治療方針の決定において重要となる。

0004

しかしながら、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や免疫組織化学(IHC)による病理診断は、ハイブリダイゼーション抗原抗体反応に長時間を要するものであった。インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)の場合には、全ての工程で通常1日〜2日程度の時間を要し、免疫組織化学(IHC)法の場合には、通常70分〜200分程度の時間を要するものであった。

0005

そこで、本発明者らは、核酸プローブや抗体を含む反応溶液を用いてドーム状の液滴を形成し、液滴に変動電界を印加して液滴を高速振動させることにより、ハイブリダイゼーションや抗原抗体反応を促進して、生体分子を迅速に検出する方法を開発した(特許文献1〜10並びに非特許文献1〜3)。この方法によれば、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)であれば、全ての工程を6時間程度で行うことが可能となり、免疫組織化学(IHC)法であれば、15〜30分程度で行うことが可能となる。このため、早期診断に基づく早期治療の有無が生死を分ける白血病のような急性疾患の病理診断を迅速に行うことが可能となり、また、癌などの手術中に患者から採取した組織を迅速に病理診断して(術中迅速病理診断)、手術の方針を決定することが可能となった。

0006

このように液滴に変動電界を印加して撹拌させる方法は、「電界撹拌」とも呼ばれ、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や免疫組織化学(IHC)に用いれば、生体分子を検出する時間を大幅に短縮することができるため、極めて有用な方法であり、さらなる改良発展が望まれていた。

0007

特開2010−119388号公報
特開2012−013598号公報
特開2014−160060号公報
特開2014−160061号公報
特開2015−155811号公報
特開2015−219109号公報
特開2016−144408号公報
特開2016−144422号公報
特開2016−144780号公報
特許第6026027号公報

先行技術

0008

Hiroshi Toda、外9名、Acta Histochemica et Cytochemica誌(略号ActaCytochem. Cytochem.)、2011年6月3日発行、vol.44、No.3、pp.133〜139
Yoshitaro Saito、外7名、Scientific Reports誌(略号Sci Rep.)、2016年7月22日発行、Vol.6、Article number: 30034
竜太、外5名、2017年度精密工学大会学術講演会講演論文集、平成29年3月1日発行、pp.365〜366

発明が解決しようとする課題

0009

従来の電界撹拌方法は、液滴に変動電界を印加することで液滴を撹拌する方法であるが、液滴の容量は通常10〜50μlと微量であり、液滴が蒸発しやすいという問題があった。電界撹拌により液滴を振動させるためには、振動するための空間が必要となることから、通常のインサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や免疫組織化学(IHC)のように、カバーガラスで反応溶液を被覆することにより蒸発を防ぐことができない。特に、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)では、液滴を加温してハイブリダイゼーションを行うため、液滴の蒸発がさらに促進されてしまい、試薬濃度が過剰に濃縮され、組織に取り付き強く染色されてしまうという問題があった。

0010

本発明者らは以前に、高価な試薬を含む反応溶液を節約するために、油性の被覆液で嵩増しする方法を発明し、これにより液滴の蒸発も抑制できることを見出した(特許文献10及び非特許文献2)。
しかしながら、油性の被覆液を用いる方法は、油性の被覆液の粘性のために電界撹拌効率が悪くなる上に、反応後の洗浄に手間がかかり、また、油性の被覆液が反応溶液と混合してハイブリダイゼーションにも影響してしまうという問題があった。

0011

そこで、本発明は、上記従来の状況に鑑み、液滴の蒸発を抑制することができる新たな電界撹拌方法を開発することを目的とする。

課題を解決するための手段

0012

上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究した結果、液滴を覆うキャップカバーを使用することにより、液滴の蒸発を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。

0013

すなわち、本発明は、電界撹拌方法に関する下記の第1の発明と、生体分子の検出方法に関する下記の第2の発明と、電界撹拌用キャップカバーに関する下記の第3の発明と、電界撹拌用キットに関する下記の第4の発明を提供する。

0014

(1) 第1の発明は、液滴に変動電界を印加して前記液滴を撹拌する電界撹拌方法に関するものであり、
試料台上に前記液滴を形成し、
前記液滴を覆う中空のキャップカバーを前記試料台上に設け、
前記液滴に変動電界を印加する
ことを含むことを特徴とする。
(2) 第1の発明の電界撹拌方法においては、前記液滴に変動電界を印加したときに前記液滴が前記キャップカバーに接触することがないように、前記液滴との間に空間を設けて前記キャップカバーを前記試料台上に設けることが好ましい。
(3) 前記いずれかの電界撹拌方法においては、前記キャップカバーにより、前記液滴の周囲の空間を密閉した状態とすることが好ましい。
(4) 第2の発明は、固形の生体試料中に含有される生体分子と前記生体分子に特異的な検出分子を結合させることにより、前記固形の生体試料中の前記生体分子を検出する方法に関するものであり、
A)試料台上に前記固形の生体試料裁置し、
B)前記検出分子を含む溶液を用いて、前記固形の生体試料を覆うように、前記試料台上に液滴を形成し、
C)前記液滴を覆う中空のキャップカバーを前記試料台上に設け、
D)前記液滴に変動電界を印加することで前記液滴を撹拌して、前記固形の生体試料中に含まれる生体分子と前記検出分子とを結合させ、
E)前記生体分子に結合した前記検出分子により、前記生体分子の存在を検出する
ことを含むことを特徴とする。
(5) 第2の発明の生体分子の検出方法においては、前記液滴に変動電界を印加したときに前記液滴が前記キャップカバーに接触することがないように、前記液滴との間に空間を設けて前記キャップカバーを前記試料台上に設けることが好ましい。
(6) 前記いずれかの生体分子の検出方法においては、前記生体分子を核酸とし、前記検出分子を前記核酸に相補的な配列を有する核酸プローブとすることができ、前記D)において前記核酸と前記核酸プローブとをハイブリダイズさせることができる。
(7) このように前記核酸と前記核酸プローブとをハイブリダイズさせる場合には、前記D)において、前記液滴の温度を上昇させてハイブリダイズに適した温度に保つことが好ましい。
(8) 前記いずれかの生体分子の検出方法においては、前記生体分子をタンパク質とし、前記検出分子を前記タンパク質に特異的な抗体とすることができる。
(9) 第3の発明は、電界撹拌用キャップカバーに関するものであり、
非導電性の材料により形成され、中空な蓋様の形状を有し、
前記液滴に変動電界を印加しても前記液滴を撹拌する電界撹拌を行うにあたり、前記液滴を覆うために用いるキャップカバーを提供する。
(10) 第3の発明の電界撹拌用キャップカバーは、中空のドーム形状とすることが好ましい。
(11) 前記いずれかの電界撹拌用キャップカバーは、透明な材料により形成することが好ましい。
(12) 第4の発明は、前記いずれかに記載の電界撹拌用キャップカバーと、撥水フレームを有する試料台とを含む、電界撹拌用キットに関する。
(13) 第4の発明の電界撹拌用キットは、前記電界撹拌用キャップカバーと前記撥水フレームとが嵌合可能に形成されていることが好ましい。

発明の効果

0015

本発明によれば、液滴を覆う中空のキャップカバーを用いるため、液滴が振動する空間を確保しつつ、液滴の周囲の空間の水蒸気分圧を高めることができるため、液滴の蒸発を効率的に抑制しつつ電界撹拌を行うことが可能となる。

図面の簡単な説明

0016

本発明の電界撹拌方法の一つの実施形態を模式的に示す図面である。図1(A)は、試料台上に液滴を形成した状態を示す図面であり、図1(B)は、液滴を覆うキャップカバーを試料台上に設けた状態を示す図面であり、図1(C)は、液滴に変動電界を印加した状態を示す図面である。
変動電界により液滴が振動する様子を模式的に示す図面である。図2(A)は、上部電極に正の電圧が供給され、下部電極に負の電圧が供給された状態を示す図面であり、図2(B)は、上部電極に負の電圧が供給されて、下部電極に正の電圧が供給された状態を示す図面である。
本発明の電界撹拌方法の他の実施形態おいて、プラス側に偏って周期的に変化する変動電界を液滴に印して電界撹拌を行う方法を模式的に示す。図3(A)は、上部電極に印加される正の電圧が最も大きくなった状態を示し、図3(B)は、上部電極に印加される正の電圧が最も小さくなった状態を示す。
本発明の生体分子の検出方法の一つの実施形態を模式的に示す図面である。図4(A)は、試料台上に固形の生体試料を裁置した状態を示す図面であり、図4(B)は、検出分子を含む溶液を用いて、固形の生体試料を覆うように液滴を形成した状態を示す図面であり、図4(C)は、液滴を覆う中空のキャップカバーを試料台上に設けた状態を示す図面であり、図4(D)は、液滴に変動電界を印加することで液滴を撹拌して、固形の生体試料中に含まれる生体分子と検出分子とを結合させた状態を示す図面である。
本発明の電界撹拌用キャップカバーの一つの実施形態を模式的に示す図面である。図5(A)は、電界撹拌用キャップカバーを試料台1上に裁置した状態を示す図面であり、図5(B)は、電界撹拌用キャップカバー内に溶液を注入する状態を示す図面であり、図5(C)は、電界撹拌用キャップカバー内で液滴を形成した状態を示す図面である。
本発明の電界撹拌用キットの一つの実施形態を模式的に示す図面である。図6(A)は、撥水フレームを有する試料台を用いて液滴を形成した状態を示す図面であり、図6(B)は、電界撹拌用キャップカバーと撥水フレームとを嵌め合わせた状態を示す図面である。
インサイチュハイブリダイゼーションを行った組織切片を顕微鏡観察した結果を示す図面に代わる写真である。図7(A)は、電界撹拌用キャップカバーを使用して電界撹拌によるハイブリダイゼーションを180分間行った場合の結果を示し、図7(B)は、電界撹拌を行わずに通常のハイブリダイゼーションを16時間行った場合の結果を示す。
液滴の蒸発量を測定した結果を示すグラフである。*印は、コントロール静置(37℃)における蒸発量に対して有意差のある蒸発量が計測されたことを示す。

0017

1.電界撹拌方法
1−1. 本発明の電界撹拌方法の概要
本発明の電界撹拌方法は、液滴に変動電界を印加して液滴を撹拌する電界撹拌方法に関するものであり、
試料台上に液滴を形成し、
液滴を覆う中空のキャップカバーを試料台上に設け、
液滴に変動電界を印加する
ことを含むことを特徴とする。

0018

本発明の電界撹拌方法は、試料台上に液滴を形成し、中空のキャップカバーを試料台上に設けて液滴を覆った状態で、液滴に変動電界を印加する。このため、液滴が振動する空間を確保しつつ液滴を被覆して、液滴の周囲の空間の水蒸気分圧を高めて、液滴の蒸発を効率的に抑制しつつ電界撹拌を行うことが可能となる。

0019

以下、本発明の電界撹拌方法の概要の理解を促すため、本発明の一例を、図面を参照しつつ説明する。
本発明の電界撹拌方法の一つの実施形態を図1に模式的に示す。
図1(A)は、試料台上に液滴を形成した状態を示す図面であり、図1(B)は、液滴を覆うキャップカバーを試料台上に設けた状態を示す図面であり、図1(C)は、液滴に変動電界を印加した状態を示す図面である。

0020

図1(A)に示されるように、試料台1上に溶液を注入することにより液滴2を形成する。液滴2は、表面張力により中央が盛り上がったドーム状の形状となる。そして、液滴2は偏極するため、液滴2の表面にはマイナス電荷3が存在している。
図1(B)に示されるように、試料台1上に中空のキャップカバー4を設けることにより、液滴2の周囲をキャップカバー4で覆うことができる。このようにキャップカバー4を設けることで、液滴2の周囲の空間を密閉に近い状態とし、液滴2の蒸発によって液滴2の周囲の空間の水蒸気分圧及び湿度が高まり、液滴2のさらなる蒸発を抑制することができる。液滴2の周囲の空間はキャップカバー4により密閉することが好ましいが、密閉しなくとも液滴2の周囲の空間の水蒸気分圧及び湿度を高めることができれば、空気が通過できる貫通孔や試料台との間に隙間があってもよい。

0021

図1(B)に示されるように、キャップカバー4の形状は液滴2の形状と同じくドーム状となっており、これにより、キャップカバー4内の空隙をできるだけ少なくしつつ、液滴2がキャップカバー4に接触することを防ぐことができる。
キャップカバー4の周囲には円周状の鍔(つば)401が設けられており、鍔401と試料台1とが密接して、キャップカバー4内を密閉に近い状態とすることができる。

0022

図1(C)に示されるように、液滴2に変動電界を印加するには、上部電極5、下部電極6、高圧アンプ7及びファンクションジェネレータ8等からなる変動電界印加装置を用いる。
液滴2を形成した試料台1を変動電界印加装置にセットすると、液滴2の上方に上部電極5が位置し、液滴2の下方に下部電極6が位置する。そして、ファンクションジェネレータ8で発生させた信号を高圧アンプ7で昇圧して上下の電極5,6に供給する。ファンクションジェネレータ8で発生させた信号は、周期的に変化する信号であり、上部電極5と下部電極6に供給する電圧の大きさと符号が周期的に変化し、変動電界が発生する。液滴2の表面にはマイナス電荷3が帯電しているため、変動電界印加装置により変動電界を発生させると、変動電界の周波数に合わせて液滴2が周期的に振動し、液滴2が撹拌される。

0023

図1(C)に示されるように、上部電極5と液滴2の間には、キャップカバー4や空隙が存在している。また、下部電極6と液滴2の間には、試料台1が存在しており、この実施形態では、試料台1は絶縁性スライドガラスとなっている。したがって、液滴2は上下の電極5,6とは絶縁されており、変動電界を印加しても液滴2に通電することはない。
図1に示す実施形態においては、キャップカバ−4として、非導電性のPET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂製のキャップカバーを用いていることから、変動電界がキャップカバー4によって遮蔽されることなく、液滴2に変動電界を問題なく印加することが可能である。また、図1に示す実施形態においては、キャップカバー4は透明な樹脂製であるため、液滴2に接触しないようにキャップカバー4を設けることが容易であり、また、液滴2が電界撹拌により振動している様子を視認することができる。

0024

次に、図1に示す実施形態において、変動電界により液滴が振動する様子を図2に示す。
図2(A)は、上部電極に正の電圧が供給され、下部電極に負の電圧が供給された状態を示し、図2(B)は、上部電極に負の電圧が供給されて、下部電極に正の電圧が供給された状態を示す。

0025

図2(A)に示されるように、上部電極5に正の電圧が供給されるときには、下部電極6には、上部電極5とは符号が逆の負の電圧が供給されるため、上部電極5にプラス電荷9が蓄積する一方、下部電極6にはマイナス電荷10が蓄積する。これにより、上部電極5から下部電極6に向かう電気力線を有する電界が発生している。この電界の中で、液滴2が帯びるマイナス電荷3は、上部電極5に蓄積したプラス電荷9に引きつけられ、下部電極6に蓄積したマイナス電荷10と反発するので、上方向にクーロン力が働く。これにより、液滴2は、上方向に引きつけられ、盛り上がった形状となっている。
一方、図2(B)に示されるように、上部電極5に負の電圧が供給され、下部電極6に正の電圧が供給されるときには、上部電極5にマイナス電荷10が蓄積し、下部電極6にプラス電荷9が蓄積する。これにより、下部電極6から上部電極5に向かう電気力線を有するに電界が発生している。この電界の中で、液滴2が帯びるマイナス電荷3は、上部電極5に蓄積したマイナス電荷10と反発し、下部電極6に蓄積したプラス電荷9に引きつけられるので、下方向にクーロン力が働く。これにより、液滴2は、下方向につぶされて、平たい形状となる。

0026

上部電極5と下部電極6に供給する電圧の大きさと符号が周期的に変化し、図2(A)の状態と図2(B)の状態の間を周期的に往復することとなるため、液滴2はこの周期に従って振動することになる。図2(B)の状態のように下方向につぶされた液滴2は、スライドガラスの反作用によりバウンドして、電界の変化にあわせてスムーズに図2(A)の状態に戻ることができる。
この液滴の周期的な振動により、液滴内部の液体は撹拌される。液滴の振幅は小さいが、液滴の振動の速度(周波数)は大きいため、液滴を効率よく撹拌することができる。
液滴2を激しく振動させると液滴2の蒸発は促進されるが、本発明においては、液滴2をキャップカバー4で覆うため、液滴2の蒸発を抑制することができる。

0027

1−2. 本発明の電界撹拌方法の詳細な条件
本発明において電界撹拌を行う「液滴」は、変動電界を印加することにより撹拌できるものであれば如何なるものであってもよく、純粋な液体を用いて液滴を形成できることができ、また、液体に他の物質が混合、分散若しくは溶解した液体を用いて液滴を形成することもできる。液体に他の物質が混合、分散又は溶解した液体としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、合成化合物天然化合物金属粒子等の化学物質、核酸、タンパク質、脂質等の生体分子、細胞、微生物ウイルス生体組織等の生物試料が、溶媒中に混合、分散又は溶解したものを用いることができる。
本発明によれば、液滴を電界撹拌することで、特殊な反応場を提供し、液滴内の化学反応生物反応等を促進することができる。例えば、抗体と抗原が結合する抗原抗体反応や、相補的な核酸が塩基対を形成するハイブリダイゼーションや、有機化合物合成反応等を電界撹拌により促進することができる。また、電界撹拌を行うことにより、液滴を用いた生体試料の洗浄等において洗浄作用を向上させることができる。さらに、電界撹拌を行うことにより、液滴内に分散した粒子分散性を高めることや、液滴のゼータ電位を制御することや、液滴内で特殊な細胞培養組織培養を行うことも可能である。

0028

液滴の量は、通常、0.1μl〜1000mlの範囲である。特許文献8(特開2016−144422号公報)に記載されている液滴形成シャーレを用いれば、大容量の液滴を形成することができ、また、特許文献9(特開2016−144780号公報)に記載されている反応デバイスを用いれば、微小な液滴を形成することができる。また、試料台上に撥水フレームを設けることにより、液滴の形成を容易とし、液滴の形状を維持し、また、液滴底面の径寸法のばらつきを抑制することができる。

0029

本発明においては、試料台上に液滴を形成するが、ここで使用する「試料台」は、液滴を形成できるものであれば如何なるものであってもよく、例えば、平板状のものや、凹凸が形成されたものを用いることができる。「試料台」の具体例としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、スライドガラス、マイクロタイタープレート、シャーレ、ビーカーや、特許文献8(特開2016−144422号公報)に記載された液体形成用シャーレや、特許文献9(特開2016−144780号公報)に記載された反応デバイス等を用いることができる。
液滴の形状は、変動電界を印加することにより撹拌できるものであれば如何なるものであってもよいが、表面張力により中央が盛り上がったドーム状の液滴を形成することが好ましい。

0030

本発明で使用する「キャップカバー」は、液滴を覆うことができ、中空となっていて液滴を振動させることができる空間を確保できるものであれば、如何なるものであってもよい。
キャップカバーとしては、中空の蓋様の形状を有するキャップカバーを用いることが好ましく、このようなキャップカバーで液滴に蓋をして、液滴の蒸発を効率的に抑制しつつ電界撹拌を行うことができる。
中空な蓋様の形状を有するキャップカバーとしては、例えば、これらに限定されるわけではないが、中空なドーム状のキャップカバーや、カップ状のキャップカバーや、円筒の蓋状のキャップカバーや、直方体又は立方体の蓋状のキャップカバー等を用いることができる。
液滴は通常ドーム状に形成されるため、中空なドーム状のキャップカバーを用いることが好ましく、キャップカバー内の空隙をできるだけ少なくしつつ、液滴がキャップカバーに接触することを防ぐことができる。

0031

キャップカバーは、電界撹拌を行ったときに液滴に接触しないように設置することが好ましい。キャップカバーを液滴に接触させないことにより、液滴の振動が阻害されず、効率的に液滴を電界撹拌することが可能である。
ただし、液滴の振動が阻害されない形態であれば、キャップカバーは液滴の一部と接触してもよい。キャップカバーが液滴の一部と接触していても、液滴が振動できる空間が確保できれば、液滴を電界撹拌することが可能である。

0032

本発明においては、キャップカバーにより液滴の周囲の空間を密閉することが好ましい。液滴の周囲の空間を密閉することにより、液滴の周囲の空間の水蒸気分圧及び湿度が高い状態を容易に維持できるため、液滴の蒸発を効率的に抑制することができる。
ただし、本発明においては、キャップカバーにより液滴の周囲の空間を密閉しなくとも、液滴の周囲の空間の水蒸気圧及び湿度を高めて液滴の蒸発を抑制できるのであれば、空気が通過できる貫通孔や試料台との間に隙間があってもよい。

0033

本発明で使用するキャップカバーは、非導電性の材料で形成されていることが好ましい。キャップカバーが導電性の材料で形成されていると、キャップカバーの外部から変動電界を印加しても、静電遮蔽が生じて、液滴に印加する変動電界が弱まってしまう。このため、導電性ではなく非導電性の材料により形成されたキャップカバーを用いることにより、効率良く変動電界を液滴に印加することが可能となる。
非導電性の材料としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、樹脂、ガラスエラストマーセラミック等を用いることができる。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂ポリエステル系樹脂ポリカーボネート系樹脂等を使用することができる。

0034

本発明で使用するキャップカバーは、透明な材料で形成することが好ましい。キャップカバーを透明な材料で形成することにより、液滴に接触しないようにキャップカバーで液滴を覆うことが容易になるとともに、液滴が電界撹拌により振動している様子を視認することもできる。
透明な材料としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、透明な樹脂や、ガラス等を使用することができる。

0035

本発明においては、液滴に変動電界を印加するが、液滴を撹拌できるものであればどのような電圧、周期、波形の変動電界であってもよい。印加する変動電界の電圧は、液滴の大きさにより異なるが、十分に撹拌効果を生じさせるためには、0.35〜2.5kv/mmとするのが好ましい。また、印加する変動電界を発生させるための信号は、0.1〜800Hzとするのが好ましい。印加する変動電界を発生させるための信号は、方形波正弦波三角波ノコギリ波などを使用することができるが、撹拌効率を高めるためには、瞬間的な変化の大きい方形波を用いるのが好ましい。また、液滴に波を生じさせるような動きにより撹拌を行う場合には、正弦波を用いることが好ましい。変動電界を発生させるための信号は、プラスとマイナスの間を反転する波形とすることもできるが、プラス側に偏って周期的に変化する波形を用いることもでき、また、マイナス側に偏って周期的に変化する波形を用いることもできる。

0036

図3は、本発明の電界撹拌方法の他の一つの実施形態を示す図面であり、プラス側に偏って周期的に変化する変動電界を液滴に印加して電界撹拌を行う方法を模式的に示す。
図3(A)は、上部電極に印加される正の電圧が最も大きくなった状態を示し、図3(B)は、上部電極に印加される正の電圧が最も小さくなった状態を示す。

0037

図3(A)に示されるように、上部電極5には高圧アンプ7から電圧が供給される。ここで、高圧アンプ7には、ファンクションジェネレータ8からプラス側に偏って周期的に変化する波形の信号が供給されることにより、高圧アンプ7から上部電極5に対して、電圧の大きさが周期的に変化する正の電圧が供給される。
図3(A)は、上部電極5に印加される正の電圧が最も大きくなった状態を示しており、上部電極5に蓄積するプラス電荷9の量は、この時点で最大となる。そして、上部電極5に蓄積したプラス電荷9により、液滴2の表面のマイナス電荷3が大きく引きつけられて、液滴2は中央が盛り上がった形状となる。

0038

図3(B)は、上部電極5に印加される正の電圧が最も小さくなった状態を示しており、上部電極5に蓄積したプラス電荷9の量は、この時点で最小となる。そして、上部電極5に蓄積したプラス電荷9が少ないため、液滴2を引きつける上向きの力が極めて弱くなり、液滴2は重力により下方向に押しつぶされて、平たい形状となる。
上部電極5に印加される正の電圧の大きさは周期的に変化して、図2(A)の状態と図2(B)の状態の間を周期的に往復することとなるため、液滴2はこの周期に従って振動することになる。
図3に示される実施形態によれば、電圧アンプ7として、上部電極5にのみ電圧を供給する電圧アンプを用いればよいため、変動電界印加装置のコストを削減することが可能となる。

0039

本発明においては、液滴に変動電界を印加して電界撹拌を行うが、液滴の振動が極めて小さく観察できないような場合でも、液滴が高速に振動することにより液滴内部において効率的に撹拌を行うことが可能である。

0040

本発明においては、図1に示す実施形態のように、液滴を形成した後に、キャップカバーを試料台に設けてもよいが、先にキャップカバーを試料台に設けて、キャップカバーと試料台の間の隙間等から溶液を注入することにより液滴を形成することもできる。
また、本発明においては、図1に示す実施形態のように、キャップカバーを試料台に設けた後に、液滴に変動電界を印加してもよいが、キャップカバーを試料台に設ける前から、液滴に対する変動電界の印加を開始することもできる。ただし、この場合には、液滴の蒸発を防ぐため、変動電界の印加を開始した後すみやかにキャップカバーを設けることが好ましい。

0041

2.生体分子の検出方法
2−1. 本発明の生体分子の検出方法の概要
本発明の生体分子の検出方法は、固形の生体試料中に含有される生体分子と生体分子に特異的な検出分子を結合させることにより、固形の生体試料中の生体分子を検出する方法に関する。
ここで、「固形の生体試料」とは、生物器官、生体組織、それらの一部、又はそれらの切片などの、固形状の生体試料を意味し、生体から抽出したタンパク質や核酸等の液体状の溶液を意味するものではない。固形の生体試料としては、生体組織の切片のように生体組織の形態を維持したものだけでなく、培養した細胞や血液、微生物等を包埋剤ゲル等でブロック状又はシート状にしたもののように、人工的に固形化した生体試料を用いてもよい。

0042

本発明において、「生体分子」とは、タンパク質、核酸、多糖類、脂質等の生体に存在する分子をいい、糖タンパク質のようにこれらの生体分子同士が結合したものも含む。
本発明において、生体分子に特異的な「検出分子」とは、これらに限定されるわけではないが、例えば、検出目的とするタンパク質に特異的な抗体、核酸に相補的な配列を有する核酸プローブ、生体分子に親和性のある低分子化合物毒素糖鎖と結合する能力を有するタンパク質であるレクチン等を用いることができる。
そして、検出分子として核酸プローブを用いることにより、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)による核酸の検出を行うことができ、また、検出分子として抗体を用いることにより、免疫組織化学(IHC)によるタンパク質の検出を行うことができる。

0043

本発明の生体分子の検出方法は、次のA)〜E)を含むことを特徴とする。
A)試料台上に固形の生体試料を裁置すること
B)検出分子を含む溶液を用いて、固形の生体試料を覆うように、試料台上に液滴を形成すること
C)液滴を覆う中空のキャップカバーを試料台上に設けること
D)液滴に変動電界を印加することで液滴を撹拌して、固形の生体試料中に含まれる生体分子と検出分子とを結合させること
E)生体分子に結合した検出分子により、生体分子の存在を検出すること

0044

以下、本発明の生体分子の検出方法の概要の理解を促すため、本発明の一例を、図面を参照しつつ説明する。
本発明の生体分子の検出方法の一つの実施形態を図4に模式的に示す。
図4(A)は、試料台上に固形の生体試料を裁置した状態を示す図面であり、図4(B)は、検出分子を含む溶液を用いて、固形の生体試料を覆うように液滴を形成した状態を示す図面であり、図4(C)は、液滴を覆う中空のキャップカバーを試料台上に設けた状態を示す図面であり、図4(D)は、液滴に変動電界を印加することで液滴を撹拌して、固形の生体試料中に含まれる生体分子と検出分子とを結合させた状態を示す図面である。

0045

図4(A)に示されるように、試料台1の上に、固形の生体試料11を裁置する。固形の生体試料11には、検出の対象となる生体分子12が含まれている。
次に、図4(B)に示されるように、検出分子13を含む溶液を用いて、固形の生体試料11を覆うように、液滴2を形成する。ここで、検出分子13は、生体分子12に特異的に結合できる分子であり、あらかじめ蛍光色素又は発色酵素などにより標識しておくことが好ましい。
液滴2は偏極するため、液滴2の表面にはマイナス電荷3が存在している。

0046

図4(C)に示されるように、試料台1上にキャップカバー4を設けることにより、液滴2の周囲をキャップカバー4で覆うことができる。キャップカバー4を設けることで、液滴2の周囲の空間を密閉に近い状態とし、液滴2の蒸発によって液滴2の周囲の空間の水蒸気分圧及び湿度が高まり、液滴2のさらなる蒸発を抑制することができる。

0047

図4(D)に示されるように、上部電極5、下部電極6、高圧アンプ7及びファンクションジェネレータ8等からなる変動電界印加装置により、液滴2に変動電界を印加する。液滴2の表面はマイナス電荷3が帯電しているため、変動電界を印加すると、図2及び3で示したのと同じ原理により、変動電界の周波数に合わせて液滴2が周期的に振動し、液滴2が撹拌される。
変動電界を印加して液滴を電界撹拌することにより、生体分子と検出分子との結合反応を促進することができる。例えば、非特許文献1及び2において実証されているとおり、電界撹拌によって、抗原と抗体の抗原抗体反応を促進し、標的核酸と核酸プローブとのハイブリダイゼーション反応を促進することができるため、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)や、免疫組織化学(IHC)の時間を短縮することや、検出感度を高めることが可能となる。

0048

液滴のイオン等の濃度やpHが変化すると、生体分子と検出分子との結合反応が抑制されることがあるが、本発明の生体分子の検出方法によれば、液滴の蒸発を抑制して、イオン等の濃度やpHの変化を防ぐことができるので、安定した条件下に生体分子と検出分子とを結合させることができる。
また、キャップカバーは、液滴の周囲の空間を覆うことにより、液滴の温度の安定化にも寄与し、安定した温度条件下に生体分子と検出分子とを結合させることができる。生体分子と検出分子との結合反応は、温度によって影響され、特に、核酸と核酸プローブとのハイブリダイゼーションを行う場合には、温度が極めて重要な条件となる。

0049

生体分子と検出分子とを結合させた後には、検出分子を含む溶液を取り除き、さらに、界面活性剤低濃度の塩を有するバッファーを用いて洗浄を行うことにより、未反応の検出分子を取り除く。
検出分子は予め蛍光色素や発色酵素等で標識した場合には、蛍光酵素による発色により、生体分子の存在を確認することが可能である。また、検出分子を直接標識せずに、検出分子に結合する標識抗体(2次抗体)を用いて、間接的に検出分子を標識して観察することも可能である。標識による発色を顕微鏡観察することにより、固形の生体試料中における生体分子の局在位置と発現量を色彩によりイメージングすることが可能となる。

0050

2−2. 本発明の生体分子の検出方法の詳細な条件
本発明の生体分子の検出方法のA)の工程においては、試料台上に、固形の生体試料を載置する。ここで、「試料台」としては、前記1−2.に記載したものを用いることができる。また、「固形の生体試料」とは、前記のとおり、生物の器官、生体組織、それらの一部、又はそれらの切片などの、固形状の生体試料を用いることができる。そして、固形の生体試料としては、生体組織の切片のように、生体組織の形態を維持したものだけでなく、培養した細胞や血液、微生物等を包埋剤やゲルでブロック状又はシート状にしたもののように、人工的に固形化した生体試料を用いることもできる。

0051

本発明の生体分子の検出方法において、「固形の生体試料」は、化学的あるいは物理的に固定されたものを用いてもよく、また、固定されていないものを用いてもよい。化学的な固定としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ホルムアルデヒドグルタールアルデヒドスベリミド酸ジメチル二塩酸塩四酸化オスミウム等を、生体組織や細胞に浸潤させ、生体組織・細胞内の高分子物質架橋することによって不動化する方法がある。また、物理的な固定としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、煮沸マイクロウェーブ照射による熱凝固や、凍結により生体組織・細胞内の高分子物質を不動化する方法がある。また、これらを組み合わせ、例えば、固形の生体試料を急速凍結後に、ホルマリンアセトン中で置換固定したものであってもよい。その他、固形の生体試料に対しては、抗原賦活化等の処理を行ってもよい。
通常、器官や生体組織の一部を固形の生体試料とする場合、そのままの大きさで顕微鏡観察することが難しいため、ある程度の厚さの切片を作製する。切片の作製方法としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、固形の生体試料をOCTコンパウンド等の凍結組織包埋剤に包埋し、凍結してから凍結ミクロトームにて薄切りする方法や、固形の生体試料を凍結せずにそのまま振動式ミクロトーム等により薄切りする方法や、固形の生体試料をパラフィンに包埋し冷却して硬くした後に、ミクロトームにて薄切りする方法などがある。

0052

本発明の生体分子の検出方法のB)の工程においては、検出分子を含む溶液を用いて、固形の生体試料を覆うように液滴を形成する。液滴は、必ずしも固形の生体試料の全面を覆う必要はなく、一部のみを覆うように形成してもよい。
ここで、「検出分子」とは、検出目的とする生体分子に特異的に結合することができる分子である。そして、「検出分子」としては、前記のとおり、抗体や、核酸プローブ等を用いることができる。核酸プローブとしては、DNA、RNAのみならず人工核酸を用いることもできる。
液滴の量や液滴の形状等については、固形の生体試料の大きさや形状に応じて適宜設定するが、前記1−2.に記載した条件と同様である。

0053

本発明の生体分子の検出方法のC)の工程においては、液滴を覆う中空のキャップカバーを試料台上に設ける。ここで使用する「キャップカバー」は、前記1−2.に記載したものと同様の形状及び材料のものを用いることができる。

0054

本発明の生体分子の検出方法においては、キャップカバーにより液滴の周囲の空間を密閉することが好ましい。液滴の周囲の空間を密閉することで、液滴の周囲の空間の水蒸気分圧及び湿度が高い状態を容易に維持できるため、液滴の蒸発を効率的に抑制することができる。
ただし、本発明の生体分子の検出方法においては、キャップカバーにより液滴の周囲の空間を密閉しなくとも、液滴の周囲の空間の水蒸気圧及び湿度を高めて液滴の蒸発を抑制できるのであれば、空気が通過できる貫通孔や試料台との間に隙間があってもよい。

0055

本発明の生体分子の検出方法においては、キャップカバーは、電界撹拌を行ったときに液滴に接触しないように設置することが好ましい。キャップカバーを液滴に接触させないことにより、液滴の振動が阻害されず、効率的に液滴を電界撹拌することが可能である。
ただし、液滴の振動が阻害されない形態であれば、キャップカバーは液滴の一部と接触してもよい。キャップカバーが液滴の一部と接触していても、液滴が振動できる空間が確保できれば、液滴を電界撹拌することが可能である。

0056

本発明の生体分子の検出方法のD)の工程においては、液滴に変動電界を印加することで液滴を撹拌して、固形の生体試料中に含まれる生体分子と検出分子とを結合させる。
ここで、液滴に印加する変動電界の電圧、周期、波形等は、前記1−2.に記載した条件と同様の条件とすることができる。
電界撹拌を行う時間は特に限定されないが、抗原抗体反応を行う場合には、通常10秒〜20分であり、ハイブリダイゼーションを行う場合には、通常1分〜60分である。

0057

ハイブリダイゼーションを行う場合には、ペルチェ素子等を用いた温度制御装置により、液滴の温度がハイブリダイゼーションに適した温度となるように上昇させて、当該温度に保つことが好ましい。ハイブリダイゼーションに適した温度は、核酸の種類やGC含量及び長さに応じて適宜設定することができ、通常30〜70℃である。
このように液滴の温度を上昇させた場合には、液滴がさらに蒸発しやすくなるが、キャップカバーを用いることにより液滴の蒸発を抑制することができる。

0058

本発明の生体分子の検出方法のE)の工程においては、生体分子に結合した検出分子により、生体分子の存在を検出する。
E)における検出は、例えば、検出分子の発色や放射線等を利用して検出することができる。検出分子を発色させる方法としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、検出分子に酵素(発色酵素)、蛍光色素、蛍光タンパク質色素等の標識をあらかじめ連結させる方法や、検出分子と生体分子が結合した後に、標識を連結した抗体等を検出分子に結合させる方法により、検出分子を発色させる方法がある。また、検出分子から放射線を発する方法としては、あらかじめ検出分子に放射性同位体を取り込ませて標識する方法を用いることができる。

0059

本発明の生体分子の検出方法において、検出分子として抗体を用いて、免疫組織化学(IHC)による検出を行うことができる。また、検出分子として目的とする核酸に相補的な配列を有する核酸プローブを用いて、インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)による検出を行うことができる。
また、他の検出方法としては、例えば、これらに限定されるわけではないが、糖タンパク質の糖鎖にレクチンを結合させて検出する方法、F—アクチンというタンパク質にファロイジンという毒素を結合させて検出する方法、核酸に結合するタンパク質を、蛍光色素で標識した核酸で検出する方法(サウスウェスタン)等がある。

0060

本発明の生体分子の検出方法のA)〜D)の工程は、必ずしもこの順に行う必要はない。例えば、試料台にキャップアカバーを設けるC)の工程の後に、キャップカバーと試料台の間の隙間から溶液を注入して液滴を形成することでB)の工程を行うことができる。また、キャップカバーを設けるC)の工程を行う前から、液滴に変動電界を印加するD)の工程を開始することもできる。

0061

3.電界撹拌用キャップカバー
本発明は、非導電性の材料により形成され、中空の蓋様の形状を有し、液滴に変動電界を印加して液滴を撹拌する電界撹拌を行うにあたり、液滴を覆うために用いる電界撹拌用キャップカバーを提供する。
本発明の電界撹拌用キャップカバーは、非導電性の材料により形成されているため、キャップカバーの外部から液滴に変動電界を印加しても、静電遮蔽により電界が遮られることなく、効率良く変動電界を液滴に印加することが可能となる。
非導電性の材料としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、樹脂、ガラス、エラストマー、セラミック等を用いることができる。樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を使用することができる。

0062

本発明の電界撹拌用キャップカバーは、透明な材料で形成することが好ましい。キャップカバーを透明な材料で形成することにより、液滴に接触しないようにキャップカバーで液滴を覆うことが容易になるとともに、液滴が電界撹拌により振動している様子を視認することもできる。
透明な材料としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、透明な樹脂や、ガラス等を使用することができる。

0063

本発明の電界撹拌用キャップカバーは、中空の蓋様の形状を有しているため、液滴を覆うことができるのと同時に、液滴の振動に必要な空間を確保することができる。
中空な蓋様の形状を有するキャップカバーとしては、これらに限定されるわけではないが、例えば、中空なドーム状のキャップカバーや、カップ状のキャップカバーや、円筒の蓋状のキャップカバーや、直方体又は立方体の蓋状のキャップカバー等を用いることができる。

0064

本発明の電界撹拌用キャップカバーは、電界撹拌を行ったときに液滴が接触しない構造とすることが好ましく、これにより液滴の振動を阻害することを防ぐことができる。
液滴は通常ドーム状に形成されるため、電界撹拌用キャップカバーの形状を中空なドーム形状とすることが好ましく、キャップカバー内の空隙をできるだけ少なくしつつ、液滴がキャップカバーに接触することを防ぐ構造とすることができる。
ただし、液滴の振動が阻害されない形態であれば、キャップカバーは液滴の一部と接触してもよい。キャップカバーが液滴の一部と接触していても、液滴が振動できる空間が確保できれば、液滴を電界撹拌することが可能である。

0065

本発明の電界撹拌用キャップカバーは、液滴の周囲の空間を密閉できる構造とすることが好ましい。そのような構造とするためには、例えば、これらに限定されるわけではないが、貫通孔を有しないキャップカバーとし、また、蓋様の形状のキャップカバーの周囲に、試料台と密接する鍔(つば)を設けることが好ましい。キャップカバーの周囲に形成された鍔と、試料台との間に、毛細管現象により微量の水を浸潤させれば、液滴の周囲の空間を完全に密閉することも可能である。
ただし、本発明の電界撹拌用キャップカバーは、液滴の周囲の空間を密閉しなくとも、液滴の周囲の空間の水蒸気圧及び湿度を高めて液滴の蒸発を抑制できるのであれば、空気が通過できる貫通孔や試料台との間に隙間があってもよい。

0066

前記のとおり、本発明の電界撹拌用キャップカバーは、液滴が接触せず、貫通孔や試料台との間に隙間を有しない構造とすることが好ましいが、そのような構造に限定されるわけではなく、用途に応じて様々な構造とすることができる。
例えば、図5は、本発明の電界撹拌用キャップカバーの一つの実施形態を示す模式図であるが、キャップカバーの中央に外部と連通する管を有する構造となっている。
図5(A)に示すように、液滴を形成する前に、キャップカバー4を試料台1上に裁置する。キャップカバー4の中央には両端が開放された管14が設けられており、管14によってキャップカバー4の内部と外部が連通している。次に、図5(B)に示すように、マイクロピペットの先端15を管14の内部に挿入して、マイクロピペットの先端15を試料台1の表面に近づけた上で、溶液16を注入する。溶液16は、マイクロピペットの先端15から流出して、試料台1上に広がる。図5(C)に示すように、溶液16の注入が完了すると液滴2が形成される。

0067

4.電界撹拌用キット
本発明は、電界撹拌用キャップカバーと、撥水フレームを有する試料台とを含む、電界撹拌用キットを提供する。
本発明の電界撹拌用キットに含まれる電界撹拌用キャップカバーは、非導電性の材料により形成され、中空の蓋様の形状を有しているものであり、前記3.に記載したものと同様のものを使用することができる。

0068

本発明の電界撹拌用キットに含まれる、撥水フレームを有する試料台は、試料台上に撥水性の材料で形成された枠(フレーム)を有しており、これにより液滴の形成を容易とし、液滴の形状を維持し、また、液滴底面の径寸法のばらつきを抑制することができる。
また、電界撹拌用キャップカバーと撥水フレームとを嵌合可能に形成することにより、電界撹拌用キャップカバーの位置ズレを防止し、また、電界撹拌用キャップカバーの内部の空間を密閉することができる。

0069

図6に、本発明の電界撹拌用キットの一つの実施形態を模式的に示す。図6(A)に示されるように、試料台1上には、リング状の撥水フレーム17が設けられている。そして、撥水フレーム17によって囲まれた円形領域の内部に溶液を注入することにより、液滴2を形成することができる。撥水フレーム17は撥水性の材料で形成されているため、撥水フレーム17ではじかれて液滴2は円形領域の内部に維持され、容量の大きな液滴でも容易に形成することができ、液滴の形状を維持し、また、液滴底面の径寸法のばらつきを抑制することができる。図6(B)に示されるように、電界撹拌用キャップカバーと撥水フレームとは嵌合可能に形成されており、電界撹拌用キャップカバー4を試料台1上に設けた場合に、電界撹拌用キャップカバー4の下端内周面と、撥水フレーム17の外周面とが密着する。これにより、電界撹拌用キャップカバー4の位置ズレを防止するとともに、電界撹拌用キャップカバー4内の空間を密閉することができる。このような電界撹拌用キットを用いることにより、液滴の蒸発を効率的に抑制しつつ、液滴を電界撹拌することが可能となる。

0070

本発明で使用する撥水フレームの形状は、液滴の形成を容易とするものであれば特に限定されないが、リング状の形状とすることが好ましい。ここでリング状とは、円形状、楕円形状、多角形状等とすることができるが、円形又は楕円状とすることが好ましい。また、撥水フレームをリング状の形状とした場合には、液滴を形成できるものであれば、一部が途切れていてもよいが、安定した液滴を形成するためには、途切れることなく連続する周を形成するリングとすることが好ましい。
また、撥水フレームに使用される撥水性の材料としては、これらに限定されるわけではないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂オルガノポリシロキサンなどのシリコン樹脂等を用いることができる。

0071

以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0072

(インサイチュハイブリダイゼーション)
本発明の電界撹拌方法を用いたインサイチュハイブリダイゼーションにより、ALK融合遺伝子の検出を行った。ALK融合遺伝子は、ALK遺伝子と他の遺伝子が融合してできた異常なガン遺伝子であり、非小細胞肺がんの患者の3〜5%に認められる。ALK遺伝子陽性の患者に対しては、ALK阻害剤による治療が有効であることから、肺癌の病理診断においてALK融合遺伝子の検出が行われている。
ALK融合遺伝子の検出には、Vysis(登録商標)ALK Break Apart FISH probe kit(Abott社)を用いた。ALK遺伝子に特異的で緑色蛍光色素で標識された核酸プローブと、ALK遺伝子に隣接する領域に特異的で赤色蛍光色素で標識された核酸プローブとを用いて、FISH(Fluorescence In Situ Hybridization)を行った。ALK遺伝子転座がない場合には、2種類の蛍光色素により染色された肺癌細胞において緑と赤のシグナル近接又は融合して黄色のシグナルとして観察される。一方、ALK遺伝子転座がある場合には、2種類の蛍光色素により染色された肺癌細胞において、緑と赤のシグナルが分離して観察される。
FISHは次の実験手順により行った。
1)キットに含まれるPretreatment Bufferを用いて、肺癌患者から摘出された組織切片の前処理を行った。
2)組織切片を洗浄した後、キットに含まれるペプシン溶液に組織切片を浸漬して、ペプシンによるプロテアーゼ処理を行った。
3)組織切片を洗浄してスライドガラス上に裁置し、キットに含まれる核酸プローブ溶液を用いて組織切片上に液滴を形成した。
4)PET(ポリエチレンテレフタレート)により製造した電界撹拌用キャップカバーを、液滴を覆うようにスライドガラス上に裁置した。
5)スライドガラスを変動電界印加装置にセットして、80℃に加熱してプローブ熱変成を行った。
6)液滴の温度が37℃となるように保温し、変動電界を印加して電界撹拌を行いつつ、180分間ハイブリダイゼーションを行った。
7)SSCバッファーを用いて組織切片を5分間洗浄した後、風乾させた。
8)風乾させた組織切片にDAPIを滴下して核染色を行った。
9)染色した組織切片を蛍光顕微鏡により観察した。

0073

比較例として、電界撹拌を行わずに、キットのプロトコールに従ったFISHを行った。
すなわち、前記6)の実験手順において、熱変成した核酸プローブ溶液を組織切片上に滴下してカバーガラスで覆い、37℃で16時間ハイブリダイゼーションを行った。
その他の実験手順は、上記と同様に行った。

0074

(インサイチュハイブリダイゼーションの結果)
インサイチュハイブリダイゼーションを行った組織切片を、顕微鏡観察した結果を図7に示す。
図7(A)は、電界撹拌用キャップカバーを使用して電界撹拌によるハイブリダイゼーションを180分間行った場合の結果を示し、図7(B)は、電界撹拌を行わずに通常のハイブリダイゼーションを16時間行った場合の結果を示す。
図7に示されるように、電界撹拌により短時間でハイブリダイゼーションを行った場合には、より短時間で従来のハイブリダイゼーションを行った場合と同等のシグナル強度が得られた。

0075

(免疫組織化学)
本発明の電界撹拌方法を用いた免疫組織化学(免疫染色)により、HER2タンパク質の検出を行った。被検試料として、乳癌患者から摘出された組織切片を用い、1次抗体としてHER2抗体を用いた。使用するHER2抗体は通常50倍希釈で用いられるが、検出限界感度を確認するため、1000倍に希釈して使用した。PET(ポリエチレンテレフタレート)により製造した電界撹拌用キャップカバーにより液滴を覆い、室温にて電界撹拌を行いつつ、抗原抗体反応を行った。免疫染色は、次の表に示す実験手順により行った。

0076

0077

比較例として、前記手順の7.と9.において、通常法として電界撹拌を行わず室温で静置して抗原抗体反応を行う免疫染色を行った。
検出限界を確認するために行った1000倍希釈実験においては、免疫染色を行った組織切片を顕微鏡観察すると、電界撹拌を行わずに静置して免疫染色を行った場合には、染色は認められなかった。一方、電界撹拌により免疫染色を行った場合には、染色が認められた。
この結果から、電界撹拌を追加すれば、抗体試薬を1000倍に希釈しても、免疫染色を行うことが可能であることが明らかとなった。

0078

(液滴の蒸発量測定)
1次抗体希釈液(Dako製 Dako REAL Antibody Diluent)を用いて、実施例2の実験手順7により電界撹拌を行った場合における、液滴の蒸発量の測定を行った。電界撹拌用キャップカバーや電界撹拌の有無、そして温度による蒸発量への影響を調べるため、次の各条件により電界撹拌の前後における液滴の重量変化を測定することにより、液滴の蒸発量を測定した。
1)コントロール静置(37℃): 37℃の条件下に電界撹拌を行わない。
2) R−IHC(37℃): 37℃の条件下に電界撹拌を行う。
3) R−IHC(30℃): 30℃の条件下に電界撹拌を行う。
4) R−IHC+キャップカバー(37℃): 37℃の条件下に電界撹拌用キャップカバーを用いて電界撹拌を行う。
5) R−IHC+キャップカバー(30℃): 30℃の条件下に電界撹拌用キャップカバーを用いて電界撹拌を行う。
6) R−IHC(室温): 室温下に電界撹拌を行う。
7) R−IHC+キャップカバー(室温): 室温下に電界撹拌用キャップカバーを用いて電界撹拌を行う。

実施例

0079

図8は、前記各条件にて液滴の蒸発量を測定した結果を示すグラフである。図8中、*印は、コントロール静置(37℃)における蒸発量に対して有意差のある蒸発量が計測されたことを示す。
図8に示されるように、室温下に電界撹拌を行っても液滴の蒸発量は静置の場合と大差ないが、37℃又は30℃の条件下に電界撹拌を行うと蒸発量が格段に大きくなることが明らかとなった。37℃はHER2 FISHでハイブリダイゼーションを行う際に最適な温度であるが、かかる条件下に電界撹拌を行うと、液滴が蒸発して抗体が濃縮され、偽陽性をもたらす恐れがある。
一方、37℃又は30℃の条件下でも、キャップカバーを用いることにより、蒸発量を抑制できることが明らかとなった。免疫染色を行う場合や、それよりも長時間の電界撹拌を要するインサイチュハイブリダイゼーションを行う場合には、電界撹拌用キャップカバーによる蒸発抑制が極めて重要であることが明らかとなった。

0080

本発明の電界撹拌方法、生体分子の検出方法、電界撹拌用キャップカバー、及び電界撹拌用キットは、化学反応、生化学反応等を行うあらゆる産業分野で有用であり、特に、臨床検査臨床検査用試薬、及び臨床検査装置の産業分野で有用である。

0081

1試料台
2 液滴
3マイナス電荷
4キャップカバー
401 キャップカバーの鍔(つば)
5 上部電極
6 下部電極
7高圧アンプ
8ファンクションジェネレータ
9プラス電荷
10 マイナス電荷
11固形の生体試料
12生体分子
13検出分子
14 管
15マイクロピペットの先端
16溶液
17 撥水フレーム

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