図面 (/)
課題・解決手段
概要
背景
概要
本発明は、胆管前駆細胞(CP)の効率的な生成に関する。前腸幹細胞(FSC)を、骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地中で培養して、肝芽細胞集団を生成する。次いで、肝芽細胞を、線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地中で培養して、胆管前駆細胞(CP)集団を生成する。胆管前駆細胞(CL)を、総胆管(CBD)胆管細胞の機能的特性を示す胆管細胞様細胞(CLC)へと成熟させ得る。方法、キット、細胞集団、及びこれらの細胞集団の使用を提供する。
目的
本発明の態様は、
(i)骨形成タンパク質(BMP)とTGFβシグナル伝達阻害剤とを含む肝細胞誘導培地中で前腸幹細胞(FSC)集団を培養して、肝芽細胞集団を生成する工程、及び
(ii)線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地中で肝芽細胞を培養して、胆管前駆細胞(CP)集団を生成する工程
を含む、胆管前駆細胞(CP)集団を生成するための方法を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
(i)骨形成タンパク質(BMP)とTGFβシグナル伝達阻害剤とを含む肝細胞誘導培地中で前腸幹細胞(FSC)集団を培養して、肝芽細胞集団を生成する工程、及び(ii)線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地中で肝芽細胞を培養して、胆管前駆細胞(CP)集団を生成する工程を含む、胆管前駆細胞(CP)集団を生成するための方法。
請求項2
請求項3
肝細胞誘導培地が、骨形成タンパク質BMP及びTGFβシグナル伝達阻害剤の追加された基礎培地からなる、化学的に定義された栄養培地である、請求項2記載の方法。
請求項4
TGFβシグナル伝達阻害剤が、SB−431542である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
請求項5
FSCが、肝細胞誘導培地中で2〜6日間培養される、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
請求項6
請求項7
胆管細胞誘導培地が、FGF、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む、化学的に定義された栄養培地である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
請求項8
胆管細胞誘導培地が、線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸及びTGFβリガンドの追加された化学的に定義された栄養培地からなる、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
請求項9
TGFβリガンドがアクチビンである、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
請求項10
HBが、胆管細胞誘導培地中で2〜6日間培養される、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
請求項11
CPがCK19、HNF1B及びSox9を発現する、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
請求項12
請求項13
CPが、胆管細胞成熟培地中、3次元培養で培養される、請求項12記載の方法。
請求項14
請求項15
請求項16
胆管細胞成熟培地が、足場マトリックスと、EGFの追加された化学的に定義された栄養培地からなる、請求項14又は請求項15記載の方法。
請求項17
CLCが、胆管細胞成熟培地中で1つ以上のオルガノイドを形成する、請求項12〜16のいずれか一項記載の方法。
請求項18
CLCが、CK7、CK18、CK19、HNF1B、ガンマグルタミル−トランスフェラーゼ(GGT)、Jagged1(JAG1)、ノッチ2、CFTR、SCR、SSTR2、頂端側塩及び胆汁輸送体(ASBT)、アクアポリン1及び陰イオン交換体2を発現する、請求項12〜17のいずれか一項記載の方法。
請求項19
CLCが、ALP活性、GGT活性、MDR1により媒介される分泌、セクレチン及びソマトスタチンに対する生理学的応答、胆汁酸の排出、CFTRにより媒介される塩化物イオンの輸送、ATP及びアセチルコリンに対する生理学的応答、及びVEGFに応答した増加した増殖を示す、請求項12〜18のいずれか一項記載の方法。
請求項20
FSC集団が、(a)TGFβリガンド、線維芽細胞増殖因子(FGF)、Wntシグナル伝達活性化因子、骨形成タンパク質(BMP)、及びPI3K阻害剤を含む内胚葉誘導培地中で多能性幹細胞(PSC)集団を培養して、胚体内胚葉細胞(DEC)集団を生成する工程;(b)TGFβリガンドを含む前腸誘導培地中でDECを培養し、前腸幹細胞(FSC)集団を生成する工程を含む方法によって生成される、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
請求項21
PSCがヒトPSC細胞である、請求項20記載の方法。
請求項22
PSCがIPSCである、請求項20又は請求項21記載の方法。
請求項23
iPSCが、個体から得られた前駆細胞から誘導される、請求項22記載の方法。
請求項24
内胚葉誘導培地が、TGFβリガンド、線維芽細胞増殖因子(FGF)、GSK−3β阻害剤、骨形成タンパク質(BMP)及びPI3K阻害剤の追加された化学的に定義された栄養培地からなる、請求項20〜23のいずれか一項記載の方法。
請求項25
TGFβリガンドがアクチビンであり、GSK−3β阻害剤がCHIR99021であり、及び/又はPI3K阻害剤がLY294002である、請求項24記載の方法。
請求項26
DECが、以下の1つ以上の内胚葉関連マーカー:Sox17、foxA2、GSC、Mixl1、Lhx1、CXCR4、GATA4、エオメソデルミン(エオメス)、Mixl1、HNF−3β、ケルベロス、OTX4、グーセコイド、C−kit、CD99、及びHexを発現する、請求項20〜25のいずれか一項記載の方法。
請求項27
前腸誘導培地が、TGFβリガンドの追加された化学的に定義された栄養培地からなる、請求項20〜26のいずれか一項記載の方法。
請求項28
TGFβリガンドがアクチビンである、請求項27記載の方法。
請求項29
FSCが、以下の1つ以上のマーカー:SOX2、HHEX、HOXA3、HNF4α、SOX17、CXCR4、EpCAM、HNF1β、GATA4、Cer、HNF6を発現する、請求項20〜28のいずれか一項記載の方法。
請求項30
請求項31
CP集団又はCLC集団を増やす工程を含む、請求項1〜30のいずれか一項記載の方法。
請求項32
CP集団又はCLC集団を培養又は維持する工程を含む、請求項1〜31のいずれか一項記載の方法。
請求項33
CP集団又はCLC集団を保存する工程を含む、請求項1〜32のいずれか一項記載の方法。
請求項34
請求項35
請求項1〜34のいずれか一項記載の方法によって生成される単離されたCP集団又はCLC集団。
請求項36
CLCがオルガノイドの形態である、請求項35記載の単離された集団。
請求項37
CLCが、CK7、CK18、CL19、HNF1B、ガンマグルタミル−トランスフェラーゼ(GGT)、Jagged1(JAG1)、ノッチ2、CFTR、SCR、SSTR2、頂端側塩及び胆汁輸送体(ASBT)、アクアポリン1及び陰イオン交換体2を発現する、請求項35又は請求項36記載の単離された集団。
請求項38
CLCが、ALP活性、GGT活性、MDR1により媒介される分泌、セクレチン及びソマトスタチンに対する生理学的応答、胆汁酸の排出、CFTRにより媒介される塩化物イオンの輸送、ATP及びアセチルコリンに対する生理学的応答、及びVEGFに応答した増加した増殖を示す、請求項35〜37のいずれか一項記載の単離された集団。
請求項39
請求項40
前記の単離されたCP又はCLCが、該CLC集団における異常な胆汁酸輸送;ATP又はアセチルコリンに対する異常な応答;増加したアポトーシス;異常な遺伝子発現;VEGFに対する異常な応答;タンパク質凝集又は重合;小胞体へのタンパク質の捕捉;ALP活性又はGGT活性;セクレチン又はソマトスタチンに対する異常な応答;低減した又は異常なオルガノイド形成;異常なCFTR活性又は異常なMDR1活性、の1つ以上を示す、請求項39記載の単離された集団。
請求項41
請求項42
請求項43
請求項35〜40のいずれか一項記載のCP集団又はCLC集団を試験化合物と接触させる工程、及び;該CP又はCLCに対する試験化合物の効果及び/又は試験化合物に対する該CP又はCLCの効果を決定する工程を含む、化合物をスクリーニングする方法。
請求項44
増殖、ALP活性、GGT活性、MDR1により媒介される分泌、セクレチン及び/又はソマトスタチンに対する応答性、胆汁酸の排出、CFTRにより媒介される塩化物イオンの輸送、並びにATP、アセチルコリン、及びVEGFに対する応答性、の1つ以上に対する試験化合物の効果、請求項43記載の方法。
請求項45
個体から得られた細胞の試料からiPSC集団を生成する工程、請求項1〜34のいずれか一項の方法を使用してiPSCから単離されたCP集団又はCLC集団を生成する工程;及び単離されたCP又はCLCの表現型を決定する工程を含む、胆管障害について個体を試験する方法であって、単離されたCP又はCLCにおける胆管障害に関連した表現型の存在は、該個体が胆管障害を有することを示す、該方法。
請求項46
異常な胆汁酸の輸送;ATP又はアセチルコリンに対する異常な応答;増加したアポトーシス;オルガノイド形成又は管形成の欠如;異常な遺伝子発現;VEGFに対する異常な応答;タンパク質凝集又は重合;小胞体へのタンパク質の捕捉;ALP活性又はGGT活性;セクレチン又はソマトスタチンに対する異常な応答;正常な細胞と比較して異常なCFTR活性又は異常なMDR1活性、の1つ以上の存在が、単離されたCP又はCLCにおいて決定される、請求項45記載の方法。
請求項47
骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地、線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地、並びに場合により上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地を含む、CP集団又はCLC集団の生成のためのキット。
請求項48
培養培地のセットが、骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞培養培地、線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地、並びに場合により上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地を含む、CP又はCLCの生成のための培養培地のセットの使用。
技術分野
0002
背景
胆管細胞は、遺伝性胆管症(嚢胞性線維症を伴う胆管症)、発達性胆管症(アラジール症候群)、自己免疫性胆管症(原発性胆汁性肝硬変)から、薬物又は毒素により誘発される疾患(1)にわたる、胆管症として知られる多種多様な胆管障害群の主な標的を成す。胆管症は著しい罹患率及び死亡率を有し、成人肝移植の最大3分の1及び小児肝移植の70%超の主な原因となる(2)。それらの影響にも関わらず、原発組織に近づきにくいこと、インビトロにおいて一次胆管細胞を培養及び維持することが困難であること、並びに動物モデルの生理学的限界により、胆管症の病態生理への洞察は制限される(3)。
0003
ヒト人工多能性幹細胞(hIPSC)は、このような難題を克服するための独特な機会を提示する(4)。実際に、それらがインビトロにおいて無限に増殖しそして広範な細胞型へと分化することができることにより、それらはインビトロにおける疾患モデリングにとって理想的なものとなる(5)。しかしながら、胆管障害の研究のためのhIPSCの橋渡し能は、hIPSC由来の胆管細胞の生成における難題によって有意に制限される。実際に、現在のプロトコールは低い分化効率(31%未満)を示し(6)、一方、全遺伝子発現分析は、hIPSC由来の胆管細胞と一次胆管組織との間のかなりの差を強調する(6)。さらに、インビトロで生成された胆管細胞は、酵素(ガンマグルタミル−トランスフェラーゼ(GGT)及びアルカリホスファターゼ(ALP))活性、ホルモン刺激(セクレチン及びソマトスタチン)に対する応答、及び塩化物イオン輸送(CFTR機能)などの、それらのインビボにおける相当物の重要な機能を再現できない(6〜8)。これらの特性は、胆管症の病気発生を再現するために又は治療剤の効果を研究するために必須である。最後に、現在の系はインビボにおける胆管の発生を制御する生理学的経路から逸脱し(6〜8)、これが胆管の特異化及び分化の機序を調べる発生研究におけるそれらの価値を制限する。結果として、疾患モデリング及び薬物スクリーニングに対するhIPSC由来胆管細胞の医学的及び薬学的適用はまだ可能ではない。
0005
本発明の態様は、
(i)骨形成タンパク質(BMP)とTGFβシグナル伝達阻害剤とを含む肝細胞誘導培地中で前腸幹細胞(FSC)集団を培養して、肝芽細胞集団を生成する工程、及び
(ii)線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地中で肝芽細胞を培養して、胆管前駆細胞(CP)集団を生成する工程
を含む、胆管前駆細胞(CP)集団を生成するための方法を提供する。
0006
本発明の別の態様は、(i)TGFβリガンド、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、Wntシグナル伝達活性化因子、及びPI3K阻害剤を含む内胚葉誘導培地中で多能性幹細胞(PSC)集団を培養して、胚体内胚葉細胞(DEC)集団を生成する工程;
(ii)TGFβリガンドを含む前腸細胞誘導培地中でDECを培養し、前腸幹細胞(FSC)集団を生成する工程、
(iii)骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地中でFSC集団を培養し、肝芽細胞(HB)集団を生成する工程、並びに
(iv)線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地中でHB集団を培養して、CP集団を生成する工程
を含む、胆管前駆細胞(CP)集団を生成するための方法を提供する。
0007
前記方法はさらに、胆管前駆細胞(CP)を胆管細胞様細胞(CLC)へと成熟させる工程を含み得る。
0008
本発明の別の態様は、
(i)骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地中でFSC集団を培養し、肝芽細胞集団を生成する工程、
(ii)線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地中で肝芽細胞を培養し、CP集団を生成する工程、並びに
(iii)上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地中でCPを培養し、CLC集団を生成する工程
を含む、胆管細胞様細胞(CLC)集団を生成するための方法を提供する。
0009
集団中のCLCは、胆管細胞成熟培地中で1つ以上のオルガノイドを形成し得る。
0010
好ましくは、CPを、胆管細胞成熟培地中で3次元培養で培養する。
0011
本発明の別の態様は、本明細書に記載の方法によって生成されたCP集団又はCLC集団を提供する。
0012
本明細書に記載の方法によって生成されたCP又はCLCは、正常な表現型、又は胆管障害の1つ以上の病態、特徴、若しくは特色を含む表現型を示し得る。
0013
本発明の別の態様は、胆管障害の処置に使用するための、本明細書に記載の方法によって生成されたCP集団又はCLC集団を提供する。
0015
本発明の別の態様は、
本明細書に記載の方法によって生成されたCP集団又はCLC集団を試験化合物と接触させる工程、並びに;
該CP若しくはCLCに対する試験化合物の効果、及び/又は試験化合物に対する該CP若しくはCLCの効果を決定する工程
を含む、化合物をスクリーニングする方法を提供する。
0016
本発明の別の態様は、
個体から得られた細胞の試料からiPSC集団を生成する工程、
上記に示された本発明の態様の方法を使用してiPSCから単離されたCP集団又はCLC集団を生成する工程、及び
単離されたCP又はCLCの表現型を決定する工程
を含む、胆管障害について個体を試験する方法を提供する。
0017
胆管障害に関連した表現型を有する単離されたCP又はCLCの存在は、個体が胆管障害を有することを示し得る。
0018
本発明の別の態様は、骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地、
線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地、並びに場合により
上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地
を含む、CP又はCLCの生成のためのキットを提供する。
0019
本発明の別の態様は、
培養培地のセットが、
骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地、
線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地、並びに場合により
上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地
を含む、CP又はCLCの生成のための培養培地のセットの使用を提供する。
図面の簡単な説明
0020
図1は、hIPSCを胆管細胞様細胞(CLC)へと分化させるために使用されるプロトコールの概観を示す。DE:胚体内胚葉、FP:前腸前駆細胞、HB:肝芽細胞、HC:CP又はCLC、SB:SB431542、RA:レチノイン酸。
図2は、胆管細胞の重要な分化段階におけるhIPSC由来細胞及び一次胆管細胞(PC)の遺伝子発現プロファイルを示す。各分化段階においてn=4の生理学的複写物。PCにおいてはn=3の独立した試料。エラーバーは、標準偏差を示す。アステリスクはHBとCPとCLCとの間の統計学的有意差を示す(多重比較のためにチューキー補正された一元分散分析)。
図3は、(左)CLCオルガノイドの管腔を横断するMDR1の蛍光基質であるローダミン123の蛍光強度測定値、及び、(右)ベラパミルの存在下(+VER)又は非存在下(−VER)においてバックラウンドに対して正規化された管腔内蛍光強度平均値を示す。n=599回の測定、P=2.99×10−5(両側t検定)。
図4は、(左)CLCオルガノイドの管腔を横断する蛍光胆汁酸コリル−リシル−フルオレセイン(CLF)の蛍光強度測定値、及び、(右)バックグラウンドに対して正規化された管腔内蛍光強度平均値を示す。n=1163回の測定、P<1×10−18(両側t検定)。示されたデータは、3回の異なる実験の代表である。
図5は、カルシウム指示薬のFluo−4のローディングされたCLCオルガノイドの蛍光強度測定値を示し、これはATP及びアセチルコリンを用いての刺激後の細胞内カルシウムレベルの上昇を実証する。ATPを用いて刺激された播種された一次胆管細胞を陽性対照として使用する。灰色の領域は1SD(n=3)を示す。
図6は、VEGFの存在下及び非存在下における開始時の細胞数に対する変化倍数を示し、これはVEGFがCLCの増殖を促進することを実証する。Prim.Chol.播種された一次胆管細胞、n=10、p=4.77×10−17(CLC)、p=4.63×10−17(Prim.Chol.)(両側t検定)。
図7は、CLCオルガノイドによって示されるGGT活性を示す。MEF:マウス胚フィーダー、n=3、全ての比較においてp<0.0001(多重比較のためのダネット補正を含む一元分散分析)。
図8は、SB−431542の存在下及び非存在下においてマトリゲル中でCPを培養した後のCLCオルガノイドの数を示し、これはアクチビンシグナル伝達阻害に続発したオルガノイド形成の抑制を実証する。エラーバーはSDを示す(n=4)。
図9は、CLCオルガノイド対L−685,458の存在下においてマトリゲル中で培養されたCPにおける、JAG1、ノッチ2、及びノッチの下流標的であるHES1の発現の定量PCR分析を示し、これはL−685,458に応答したこのマーカーの減少した発現を実証する。n=4。エラーバーは標準偏差を示す。****P<0.0001(両側t検定)。
図10は、L−685,458の存在下及び非存在下においてマトリゲル中でCPを培養した後のCLCオルガノイドの数を示し、これはノッチシグナル伝達阻害後のオルガノイド形成の有意な減少を実証する。エラーバーは標準偏差を示す。n=4。
図11は、CLCオルガノイド直径に対する、セクレチン(SC)、ソマトスタチン(SST)、オクトレオチド(OCT)及びセクレチンとオクトレオチドの組合せの効果を示す。エラーバーは標準誤差を示す。n=8、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001(多重比較のためのダネット補正を含む一元分散分析)。
図12は、セクレチンによる処置は、CLCオルガノイド中のcAMPレベルを増加させるが、ソマトスタチン及びオクトレオチドによる処置は減少させることを示す。エラーバーは標準誤差を示す。n=3。アステリスクは、統計学的有意差を示す(多重比較のためのダネット補正を含む一元分散分析)。
図13は、PLD−CLCにおける胆管マーカーの発現を実証した定量PCRを示す。アステリスクはHBとCPとCLCとの間の統計学的有意差を示す(多重比較のためのテューキー補正を含む一元分散分析)。
図14は、オクトレオチド又はセクレチンとオクトレオチドの組合せを用いての処置前及び処置後におけるPLD−CLCオルガノイドの直径の測定を示す。****P<0.0001(多重比較のためのダネット補正を含む一元分散分析)。示されたデータは3回の異なる実験の代表である。
図15は、嚢胞性線維症(CF)患者から得られたhIPSCを使用した、インビトロにおけるCF肝疾患のモデリングを示す。左パネルは、CF−hIPSCから生成されたCLCオルガノイド(CF−CLC)の定量PCR分析を示し、これは胆管マーカーの発現を実証する。アステリスクはHBとCPとCLCとの間の統計学的差を示す(多重比較のためのテューキー補正を含む一元分散分析)。右パネルはCF−CLCオルガノイドがGGT活性を示すことを示す。****P<0.0001(多重比較のためのダネット補正を含む一元分散分析)。
図16は、最も低い強度値に対して正規化されたMQAEの蛍光強度を示す。MQAEの蛍光は塩化物イオンの存在下で消光するが、硝酸イオンによっては影響を受けない。細胞外塩化物イオンレベルに応答した細胞内又は管腔内塩化物イオンレベルの変化は、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の機能の存在に依存する。MQAEの蛍光は、細胞外塩化物イオンを枯渇させる硝酸イオンの負荷に応答して増加し、VX809を用いて処置されたwt−及びCF−CLCにおいては塩化物イオンに応答して減少し、しかしながら、CF−CLC、及びVX809+CFTR阻害剤−172を用いて処置されたCF−CLCにおいては両方の負荷に応答しない。
図17は、オルガノイド直径平均値に対するVX809による処置の効果を示す。エラーバーは標準偏差を示す。n=8。P=0.001、(両側t検定)。トリミングされた画像は1つの嚢胞を含むが、代表である。示された全てのデータは3回の異なる実験の代表である。
図18は、(右)ATP又はアセチルコリンを通したカルシウム刺激に応答したCLCの比率を示す。n=4。エラーバーは、標準偏差、及び(左)セクレチン又はソマトスタチンによる刺激に応答したCLCオルガノイドの比率を示す。n=4。エラーバーは標準偏差を示す。
図19は、各々の重要なCLC分化段階についての適切なマーカーを発現している細胞の数を示し、1×106個のhIPSCの出発集団から57.8×106個の成熟した(CK7+/Sox9+)CLCが生成されたことを実証する。
0021
詳細な説明
本発明は、インビトロにおける前腸幹細胞(FSC)からの胆管前駆細胞(CP)の生成に関する。
0022
FSC集団は慣用的な入手源から得ることができるか、又はインビトロにおいて多能性幹細胞集団から生成され得る。FSCを、骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地中での培養によって肝芽細胞へと分化させる。次いで、得られた肝芽細胞を、線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地中での培養によってCPへと分化させる。得られたCPを胆管細胞様細胞(CLC)へと成熟させ得る。
0023
各工程における細胞集団の分化は、一連の分化因子の追加された培養培地中において細胞を培養することによって誘導される。各培養培地について列挙された分化因子のセットは好ましくは網羅的であり、そして培地は、他の分化因子を欠いていてもよい。
0024
分化因子は、哺乳動物細胞における分化を媒介するシグナル伝達経路を調節する、例えば促進又は阻害する因子である。分化因子としては、増殖因子、サイトカイン、及びアクチビン/ノダル、FGF、Wnt又はBMPシグナル伝達経路の1つ以上を調節する阻害剤が挙げられ得る。分化因子の例としては、FGF、BMP、レチノイン酸、TGFβリガンド、GDF、LIF、IL、GSK−3阻害剤、及びホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害剤が挙げられる。
0025
本明細書に記載の1つ以上の培地に使用される分化因子としては、TGFβリガンド、線維芽細胞増殖因子(FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、PI3K阻害剤、TGFβシグナル伝達阻害剤、Wntシグナル伝達活性化因子、及びレチノイン酸が挙げられる。分化因子は、本明細書に記載の培地中に、培地中で培養された細胞のシグナル伝達経路を調節するのに有効な量で存在し得る。
0026
各工程の最中における細胞集団の分化度は、分化中の細胞の集団における1つ以上の細胞マーカーの発現をモニタリング及び/又は検出することによって決定され得る。例えば、より分化した細胞型に特徴的なマーカーの発現の上昇、又はあまり分化していない細胞型に特徴的なマーカーの発現の減少を決定し得る。細胞マーカーの発現は、免疫細胞化学法、免疫蛍光法、RT−PCR、イムノブロット、蛍光活性化細胞選別(FACS)、及び酵素的分析をはじめとする任意の適切な技術によって決定され得る。
0027
各工程後に、その工程によって生成された部分的に分化した細胞の集団は、他の細胞型を全く含まなくても又は実質的に含まなくてもよい。例えば、該集団は、培地中での培養後に、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上の部分的に分化した細胞を含有し得る。好ましくは、細胞集団は、他の細胞型を十分に含まず、よって精製は全く必要とされない。必要であれば、部分的に分化した細胞の集団を、FACSなどの任意の慣用的な技術によって精製してもよい。
0028
本明細書に記載の方法の工程によって生成された部分的に分化した細胞の集団は、次の分化工程の前に培養、維持、又は増やすことができる。部分的に分化した細胞を、任意の慣用的な技術によって増殖させ得る。
0029
細胞は、特記されない限り、フィブロネクチン、ラミニン、又はコラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質でコーティングされた基材上で、フィーダー細胞の非存在下において、単層で培養され得る。例えば、いくつかの実施態様では、細胞を足場マトリックスに包埋し、そして胆管細胞成熟のために3次元培養条件下で培養し得る。細胞培養に適した技術は、当技術分野において周知である(例えば、Basic Cell Culture Protocols, C. Helgason, Humana Press Inc. U.S. (15 Oct 2004) ISBN: 1588295451; Human Cell Culture Protocols (Methodsin Molecular Medicine S.) Humana Press Inc., U.S. (9 Dec 2004) ISBN: 1588292223; Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique, R. Freshney, John Wiley & Sons Inc (2 Aug 2005) ISBN: 0471453293, Ho WY et al J Immunol Methods. (2006) 310:40-52, Handbook of Stem Cells (ed. R. Lanza) ISBN: 0124366430) Basic Cell Culture Protocols’ by J. Pollard and J. M. Walker (1997), ‘Mammalian Cell Culture: Essential Techniques’ by A. Doyle and J. B. Griffiths (1997), ‘Human Embryonic Stem Cells’ by A. Chiu and M. Rao (2003), Stem Cells: From Bench to Bedside’ by A. Bongso (2005), Peterson & Loring (2012)Human Stem Cell Manual: A Laboratory Guide Academic Press and ‘Human Embryonic Stem Cell Protocols’ by K. Turksen(2006)を参照されたい)。培地及びその成分は業者(例えばギブコ社、ロシュ社、シグマ社、Europa bioproducts社、R&Dシステムズ社)から得ることができる。上記の培養工程のための標準的な哺乳動物細胞培養条件、例えば、37℃、21%酸素、5%二酸化炭素を使用し得る。培地は好ましくは、2日間毎に交換し、そして細胞を重力によって沈殿させた。
0030
本明細書に記載の方法において、CP及びCLCの集団は、前腸幹細胞(FSC)から生成される。FSCは、膵臓、肝臓及び肺の系統の内胚葉細胞へと分化するその能力において前方原腸管の多能性細胞に似ている自己再生する細胞である。
0031
いくつかの好ましい実施態様では、FSCは、インビトロにおいて多能性幹細胞(PSC)から生成される。適切な方法は当技術分野において公知である(国際公開公報第2015052143号;Hannan et al Stem Cell Reports, 1:293-306(2013)参照)。
0032
多能性幹細胞(PSC)は、インビトロにおいて自己再生することができ、そして未分化の表現型を示し、そして潜在的には3つのいずれかの胚葉(内胚葉、中胚葉、及び内胚葉)の胎仔又は成体のいずれかの細胞型へと分化することができる。多能性幹細胞は全能性幹細胞とは異なり、そして胚外細胞系統を生じることはできない。PSC集団はクローン性であり得、すなわち、単一の共通した祖先細胞に由来する遺伝子的に同一な細胞であり得る。
0033
PSCは、以下の1つ以上の多能性に関連したマーカーを発現し得る:Oct4、Sox2、アルカリホスファターゼ、POU5f1、SSEA−3、Nanog、SSEA−4、Tra−1−60、KLF−4、及びc−myc、好ましくはPOU5f1、NANOG及びSOX2の中の1つ以上。PSCは、Bra、Sox17、FoxA2、αFP、Sox1、NCAM、GATA6、GATA4、Hand1及びCDX2などの特定の分化運命に関連したマーカーを欠失していてもよい。特に、PSCは、内胚葉運命に関連したマーカーを欠失していてもよい。
0034
好ましくは、PSCは、ヒトPSCである。
0035
PSCとしては、胚性幹細胞(ESC)及び非胚性幹細胞、例えば胎仔幹細胞、成体幹細胞、羊水幹細胞、臍帯幹細胞、及び人工多能性幹細胞(iPSC)が挙げられ得る。いくつかの実施態様では、PSCは、ヒト胚性幹細胞ではない。いくつかの実施態様では、PSCはヒト胚性細胞ではない。
0036
PSCを生成するための適切な技術は当技術分野において周知である。
0037
好ましくは、PSCはiPSCであり、より好ましくはヒトIPSC(hiPSC)である。
0038
iPSCは、非多能性の完全に分化した祖先細胞又は前駆細胞から誘導された、多能性細胞である。適切な祖先細胞としては、成体線維芽細胞及び末梢血細胞などの体細胞が挙げられる。祖先細胞は典型的には、Oct4、Sox2、及びSox1などの多能性遺伝子又はタンパク質を細胞に導入することによって初期化される。遺伝子又はタンパク質は、プラスミド若しくはより好ましくはウイルスによるトランスフェクション又は直接的なタンパク質送達をはじめとする、任意の適切な技術によって、分化した細胞に導入され得る。他の遺伝子、例えばKif遺伝子、例えばKif−1、−2、−4及び−5;Myc遺伝子、例えばC−myc、L−myc、及びN−myc;nanog;及びLin28も細胞に導入されることにより、導入効率を高めることができる。多能性遺伝子又はタンパク質の導入後、祖先細胞を培養し得る。多能性マーカーを発現している細胞を単離及び/又は精製することにより、iPSC集団を生成し得る。iPSCの生成技術は当技術分野において周知である(Yamanaka et al Nature 2007; 448:313-7; Yamanaka 6 2007 Jun 7; 1(1):39-49; Kim et al Nature.2008 Jul 31; 454(7204):646-50; Takahashi Cell.2007 Nov 30; 131(5):861-72. Park et al Nature. 2008 Jan 10; 451(7175):141-6; Kimet et al Cell Stem Cell. 2009 Jun 5;4(6):472-6; Vallier, L., et al. Stem Cells, 2009. 9999(999A): p. N/A)。
0039
iPSCは、正常な(すなわち疾患に関連していない)遺伝子型を有する線維芽細胞などの体細胞、例えば正常な遺伝子的バックグラウンドを有する個体、例えば遺伝子障害を有さない個体から得られた細胞から導かれ得る。iPSCを使用して、正常な(すなわち疾患に関連していない)遺伝子型を有するFSCを生成し得る。これらのFSCを、例えば治療、モデリング、スクリーニング、又は他の適用のために使用するために、本明細書に記載のようなCP及びCLCへとさらに分化させ得る。
0040
いくつかの実施態様では、iPSCは、明確に異なる遺伝子的バックグラウンドを有する個体から得られた体細胞又は他の前駆細胞から導かれ得る。例えば、iPSCは、疾患容態を有する個体、高いリスクの疾患容態を有する個体、及び/又は低いリスクの疾患容態を有する個体の細胞から生成され得る。疾患容態としては、胆管障害、例えば胆管症、又は胆管上皮に関連した他の障害が挙げられ得る。明確に異なる遺伝子的バックグラウンドを有する個体から得られた細胞から生成されたiPSCを使用してFSCを生成し、これをさらに、遺伝子的バックグラウンドを有するCP及びCLCに分化させ得る。これらのCP及びCLCは、胆管障害などの疾患容態の機序を研究するのに、及び治療標的を同定するのに有用であり得る。
0041
慣用的な技術を、PSCの培養及び維持に使用し得る(Vallier, L. et al Dev. Biol. 275, 403-421 (2004), Cowan, C.A. et al. N. Engl. J. Med. 350, 1353-1356 (2004), Joannides, A. et al. Stem Cells 24, 230-235 (2006) Klimanskaya, I. et al. Lancet 365, 1636-1641 (2005), Ludwig, T.E. et al. Nat. Biotechnol. 24, 185-187 (2006))。本発明の方法に使用するためのPSCを、規定の条件において又はフィーダー細胞上で増殖させ得る。例えば、PSCは、培養皿において、適切な密度(例えば105〜106個の細胞/60mm皿)の放射線照射されたマウス胚性線維芽細胞(MEF)などのフィーダー細胞層上で、又はフィーダー馴化培地若しくは限定培地を有する適切な基材上で慣用的に培養され得る。本発明の方法に使用するための多能性細胞を、酵素的又は力学的手段によって継代させ得る。
0042
好ましい実施態様では、本発明に使用するためのPSCは、化学的に定義された培地(CDM)中で培養され得る。化学的に定義された培地(CDM)は、特定の成分のみ、好ましくは化学構造が既知である成分のみを含有している、細胞培養のための栄養溶液である。CDMは、未知組成の成分、又は未知組成の成分を含む構成成分、例えば、フィーダー細胞、間質細胞、血清、血清アルブミン、及び複合細胞外マトリックス、例えばマトリゲル(商標)を欠失している。いくつかの実施態様では、化学的に定義された培地はヒト化されている。ヒト化化学的に定義された培地は、ヒト以外の動物に由来するか又はそれから単離された成分若しくは補助物質、例えばウシ胎児血清(FBS)及びウシ血清アルブミン(BSA)、並びにマウスフィーダー細胞を欠失している。馴化培地は、培養細胞に由来する未知組成の成分を含み、そして化学的に定義されていない。
0043
CDMは、無血清培地補助物質及び/又は1つ以上の追加成分、例えばトランスフェリン、1−チオグリセロール、組成が明らかな脂質、L−グルタミン又は代用物、例えばグルタマックス−1(商標)、ニコチンアミド、デキサメタゾン、セレニウム、ピルビン酸塩、緩衝液、例えばHEPES、重炭酸ナトリウム、グルコース及び抗生物質、例えばペニシリン及びストレプトマイシン、及び場合によりポリビニルアルコール;ポリビニルアルコール及びインシュリン;血清アルブミン;又は血清アルブミン及びインシュリンの追加された化学的に定義された基礎培地を含み得る。
0044
適切な化学的に定義された基礎培地、例えばアドバンストダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Price et al Focus (2003) 25 3-6)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、ウィリアムズE培地及びRPMI−1640(Moore, G.E. and WoodsL.K., (1976) Tissue Culture Association Manual. 3, 503-508;表3参照)が当技術分野において公知であり、そして業者(例えばシグマ−アルドリッチ社、MI州、米国;ライフテクテクノロジーズ社、米国)から入手できる。他の適切な化学的に定義された基礎培地は当技術分野において公知であり、そして業者(例えばシグマアルドリッチ社、MI州、米国;ライフテクテクノロジーズ社、米国)から入手できる。
0045
適切な無血清培地補助物質としては、B27(Brewer et al Brain Res (1989) 494 65-74; Brewer et al J. Neurosci Res 35 567-576 (1993); Brewer et al Focus 16 1 6-9; Brewer et al (1995) J. Neurosci. Res. 42:674-683; Roth et al J Trace Elem Med Biol (2010) 24 130-137)及びNS21(Chen et al J. Neurosci Meths (2008) 171 239-247)が挙げられる。無血清培地補助物質、例えばB27及びN21は当技術分野において周知であり、そしていろいろな場所で市販されている(例えばインビトロジェン社;シグマアルドリッチ社)。
0046
適切な化学的に定義された培地としては、ポリビニルアルコール、インシュリン、トランスフェリン、及び組成の明らかな脂質の追加された基礎培地を含む、CDM−PVA(Johansson and Wiles (1995) Mol Cell Biol 15, 141-151)が挙げられる。例えば、CDM−PVA培地は、50%イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)と、グルタマックス−1(商標)を含む50%Ham’s F12、又は50%F12 NUT−MIX(ギブコ社、1%の化学的に定義された脂質濃縮物、450μM 1−チオグリセロール、15μg/mlトランスフェリン、1mg/mlポリビニルアルコール、7μg/mlインシュリンが追加されている)からなり得る。他の適切な化学的に定義された栄養培地としては、PVAを5mg/mlBSAで置き換えた上記のCDM−PVAと同一であるhESC用維持培地(CDMA);並びにB27及びアクチビン(少なくとも50ng/ml)の追加されたRPMI基礎培地が挙げられる。CDM−PVA培地は、Vallier et al 2009PLoS ONE 4: e6082. doi: 10.1371; Vallier et al 2009 Stem Cells 27: 2655-2666, Touboul 2010 51: 1754-1765. Teo et al 2011 Genes & Dev. (2011) 25: 238-250 and Peterson & Loring Human Stem Cell Manual: A Laboratory Guide (2012) Academic Pressに記載されている。
0047
PSCは、PSCから胚体内胚葉細胞(DEC)への分化、続いてDECからFSCへの分化を含む2工程プロセスでFSCへと分化され得る。適切な方法は、国際公開公報第2015052143号;Hannan et al Stem Cell Reports, 1:293-306(2013)に記載されている。例えば、PSCは、TGFβリガンド、線維芽細胞増殖因子(FGF)、Wntシグナル伝達活性化因子、骨形成タンパク質(BMP)及びPI3K阻害剤を含む内胚葉誘導培地中で培養することによってDECへと分化され得る。得られたDECは、TGFβリガンドを含む前腸誘導培地中で培養することによってFSCへと分化され得る。
0048
CP集団を生成するための方法は、
(i)TGFβリガンド、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、Wntシグナル伝達活性化因子、骨形成タンパク質(BMP)、及びPI3K阻害剤を含む内胚葉誘導培地中でPSC集団を培養して、胚体内胚葉細胞(DEC)集団を生成する工程、
(ii)TGFβリガンドを含む前腸誘導培地中でDECを培養し、FSC集団を生成する工程、
(iii)骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地中でFSCを培養して、肝芽細胞(HB)集団を生成する工程、及び
(iv)線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地中でHBを培養して、CP集団を生成する工程
を含み得る。
0049
いくつかの実施態様では、前記方法はさらに、(v)上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地中でCP集団を培養して、成熟したCLC集団を生成する工程を含み得る。
0050
好ましい実施態様では、内胚葉誘導培地は、TGFβリガンド、線維芽細胞増殖因子(FGF)、Wntシグナル伝達活性化因子、骨形成タンパク質(BMP)及びPI3K阻害剤を含む、化学的に定義された培地である。
0051
TGFβリガンドは、哺乳動物細胞においてSMAD2及びSMAD3により媒介される細胞内シグナル伝達経路を刺激するTGFβスーパーファミリーのペプチドである。TGFβスーパーファミリーのメンバーは特徴的な構造を有し、そして当技術分野において周知である。適切なTGFβリガンドとしては、アクチビン、TGFβ、ノダル、又はGDF3が挙げられる。好ましくは、TGFβリガンドはアクチビンである。
0052
アクチビン(アクチビンA:NCBI遺伝子ID:3624、核酸参照配列NM_002192.2GI:62953137、アミノ酸参照配列NP_002183.1 GI:4504699)は、アクチビン/ノダル経路の刺激を介して一連の細胞内効果を発揮する二量体ポリペプチドである(Vallier et al., Cell Science118:4495-4509 (2005))。アクチビンは、業者(例えばステムジェント社、MA州、米国)から容易に入手できる。簡便には、本明細書に記載の培地中のアクチビンの濃度は、10〜1000ng/ml、好ましくは約100ng/mlであり得る。
0053
TGFβ(NCBI 遺伝子ID:7040、核酸参照配列NM_000660.4GI:260655621、アミノ酸参照配列NP_000651.3 GI:63025222)は、増殖及び分化を調節するホモ二量体ポリペプチドである(Watabe, T. et al (2009). Cell Res. 19:103-115)。組換えヒトTGFβは、業者(例えばステムジェント社、MA州、米国)から容易に入手できる。簡便には、培地中のTGFβの濃度は、10〜1000ng/ml、好ましくは約100ng/mlであり得る。
。
0054
GDF3(NCBI 遺伝子ID:9573、核酸参照配列NM_020634.1GI:10190669、アミノ酸参照配列NP_065685.1 GI:10190670)は、多塩基タンパク質分解プロセシング部位(これは切断されて7個の保存されたシステイン残基を含有している成熟GDF3タンパク質を生じる)によって特徴付けられるTGFβスーパーファミリーのメンバーである。簡便には、培地中のGDF3の濃度は、10〜1000ng/ml、好ましくは約100ng/mlであり得る。
0055
ノダル(NCBI 遺伝子ID:4838、核酸参照配列NM_018055.4GI:222352097、アミノ酸参照配列NP_060525.3 GI:222352098)は、分化を調節するTGFβスーパーファミリーのメンバーである(Hamada et al Nat. Rev. Genet. 3 (2): 103-13)。ノダルは、業者(例えばアブカム社、英国)から容易に入手できる。簡便には、培地中のノダルの濃度は、10〜1000ng/ml、好ましくは約100ng/mlであり得る。
0056
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)に結合することによって、細胞の成長、増殖、及び細胞の分化を刺激するタンパク質因子である。適切な線維芽細胞増殖因子としては、FGFファミリーの任意のメンバー、例えばFGF1からFGF14及びFGF15からFGF23のいずれか1つが挙げられる。
0057
好ましくは、FGFは、FGF2(bFGFとしても知られる、NCBI 遺伝子ID:2247、核酸配列NM_002006.3GI:41352694、アミノ酸配列NP_001997.4 GI:41352695);FGF7(ケラチノサイト増殖因子(又はKGF)としても知られる、NCBI 遺伝子ID:2247、核酸配列NM_002006.3 GI:41352694、アミノ酸配列NP_001997.4 GI:41352695);又はFGF10(NCBI 遺伝子ID:2247、核酸配列NM_002006.3 GI:41352694、アミノ酸配列NP_001997.4 GI:41352695)である。最も好ましくは、線維芽細胞増殖因子はFGF10又はFGF2である。
0058
線維芽細胞増殖因子、例えばFGF2、FGF7、及びFGF10は、日常的な組換え技術を使用して生成され得るか、又は業者(例えばR&Dシステムズ社、ミネアポリス、MN州;ステムジェント社、米国)から入手できる。
0059
いくつかの実施態様では、FGFは、上皮増殖因子(EGF;NCBI 遺伝子ID:1950、核酸配列NM_001178130.1GI:296011012;アミノ酸配列NP_001171601.1 GI:296011013)によって置き換えられ得る。上皮増殖因子は、上皮増殖因子受容体(EGFR)に結合することによって、細胞の成長、増殖及び細胞の分化を刺激するタンパク質因子である。EGFは、日常的な組換え技術を使用して生成され得るか、又は業者(例えばR&Dシステムズ社、ミネアポリス、MN州;ステムジェント社、米国)から入手できる。
0060
骨形成タンパク質(BMP)は骨形成タンパク質受容体(BMPR)に結合し、そしてSMAD1、SMAD5、及びSMAD9によって媒介される経路を通して細胞内シグナル伝達を刺激する。適切な骨形成タンパク質としては、BMPファミリーの任意のメンバー、例えばBMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7が挙げられる。好ましくは第二のTGFβリガンドはBMP2(NCBI 遺伝子ID:650、核酸配列NM_001200.2GI:80861484;アミノ酸配列NP_001191.1 GI:4557369)又はBMP4(NCBI 遺伝子ID:652、核酸配列NM_001202.3 GI:15726592;アミノ酸配列NP_001193.2 GI:157276593)である。適切なBMPとしてはBMP4が挙げられる。簡便には、本明細書に記載の培地中の骨形成タンパク質、例えばBMP2又はBMP4の濃度は、1〜500ng/ml、好ましくは約10ng/mlであり得る。
0061
BMPは、日常的な組換え技術を使用して生成され得るか、又は業者(例えばR&Dシステムズ社、ミネアポリス、米国;ステムジェント社、米国)から入手できる。
0062
PI3K阻害剤は、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ、例えばホスファチジルイノシトール-4,5−ビスホスフェート3−キナーゼ(EC2.7.1.153)の活性を阻害する。適切なPI3K阻害剤としては、ウォルトマンニン;LY301497(17−b−ヒドロキシウォルトマンニン);LY294002(2−モルホリン−4−イル−8−フェニルクロメン−4−オン:Maclean et al (2007) Stem Cells 25 29-38);CLB1309(KN309:(±)−2−({1−[7−メチル−2−(モルホリン−4−イル)−4−オキソ−ピリド[1,2−a]ピリミジン−9−イル]エチル}アミノ)安息香酸);PX−866((1E,4S,4aR,5R,6aS,9aR)−5−(アセチルオキシ)−1−[(ジ−2−プロペン−1−イルアミノ)メチレン]−4,4a,5,6,6a,8,9,9a—オクタヒドロ−11−ヒドロキシ−4−(メトキシメチル)−4a,6a—ジメチルシクロペンタ[5,6]ナフト[1,2−c]ピラン−2,7,10(1H)−トリオン);IC87114(キノロンピローロピリミジン);GDC−0941(2−(1H−インダゾール−4−イル)−6−[[4−(メチルスルホニル)−1−ピペラジニル]メチル]−4−(4−モルホリニル)−チエノ[3,2−d]ピリミジン);TGX−221(7−メチル−2−(4−モルホリニル)−9−[1−(フェニルアミノ)エチル]−4H−ピリド[1,2−a]ピリミジン−4−オン)、ケルセチン;BEZ235;XL147;XI765;PX−866;ZSTK474(2−(2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン);及びSF1126(2−[2−メトキシエチルアミノ]−8−フェニル−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)が挙げられる。他のPI3K阻害剤は当技術分野において入手できる。いくつかの好ましい実施態様では、PI3K阻害剤はLY294002である。簡便には、培地は、1〜100μM、好ましくは約10μMのPI3K阻害剤、例えばLY294002を含有し得る。
0063
適切なPI3K阻害剤は、業者(例えばカルバイオケム社、CA州、米国)から入手できる。
0064
TGFβシグナル伝達阻害剤は、哺乳動物細胞においてSMAD2及びSMAD3により媒介される細胞内シグナル伝達経路を遮断するアクチビン/TGFβのアンタゴニストである。SB431542(4−(5−ベンゾール[1,3]ジオキソール−5−イル−4−ピリジン−2−イル−1H−イミダゾール−2−イル)−ベンズアミド水和物;シグマ社、トクリスバイオサイエンス社、ブリストール社、英国)、SB−505124(2−(5−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−イル−2−tert−ブチル−3H−イミダゾール−4−イル)−6−メチルピリジン塩酸塩)及び可溶性タンパク質因子、例えばlefty(例えばヒトlefty2:NP_003231.2GI:27436881)、ケルベロス(例えばヒトケルベロス1:NP_005445.1 GI:4885135)又はフォリスタチン(例えばヒトフォリスタチン:NP_006341.1 GI:5453652)をはじめとする、多くのTGFβシグナル伝達阻害剤が公知である。簡便には、培地中のTGFβシグナル伝達阻害剤の濃度は1〜100μM、好ましくは約10μMであり得る。
0065
TGFβシグナル伝達阻害剤は、業者(例えばシグマアルドリッチ社、米国;ステムジェント社、米国)から入手できる。
0066
レチノイン酸((2E,4E,6E,8E)−3,7−ジメチル−9−(2,6,6−トリメチルシクロヘキセン−1−イル)ノナ−2,4,6,8−テトラエン酸)は、レチノイン酸受容体(RAR)への結合を通して転写を調節し、そして様々な細胞型における分化を調節する、ビタミンAの代謝物である。好ましくは、全てトランスのレチノイン酸が本明細書に記載の培地中に使用される。簡便には、培地中のレチノイン酸の濃度は、1〜10μM、好ましくは約2μMであり得る。
0067
レチノイン酸は、業者(例えばシグマアルドリッチ社、米国;ステムジェント社、米国)から入手できる。
0068
Wntシグナル伝達活性化因子は、哺乳動物細胞において古典的な細胞内Wntシグナル伝達経路を刺激する(Logan and Nusse (2004), Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 20, 781-810、及びWodarz and Nusse (1998), Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 14, 59-80)。適切なWntシグナル伝達活性化因子としては、Wntリガンド、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(GSK3β)阻害剤;β−カテニン、及びβ−カテニンの活性化因子が挙げられる。
0069
Wntシグナル伝達活性化因子としては、(ヘテロ)アリールピリミジン(Gilbert et al Bioorg Med Chem Lett. 2010 Jan 1;20(1):366-70)、WAY−316606(Bodine et al Bone. 2009 Jun;44(6):1063-8)、IQ1(Miyabayashi et al PNAS USA 2007 104(13) 5668-5673)、QS11(Zhang et al (2007) PNAS USA 104(18) 7444-7448)、及び2−アミノ−4−[3,4−(メチレンジオキシ)ベンジル−アミノ]−6−(3−メトキシフェニル)ピリミジン(Liu et al Angew Chem Int Ed Engl. 2005 Mar 18;44(13):1987-90)が挙げられ得る。
0070
いくつかの好ましい実施態様では、Wntシグナル伝達活性化因子は、GSK3β阻害剤である。GSK3β阻害剤は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3βの活性を阻害する(遺伝子ID2932:EC2.7.11.26)。適切な阻害剤としては、CHIR99021(6−((2−((4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)ピリミジン−2−イル)アミノ)エチル)アミノ)ニコチノニトリル;Ring D. B. et al., Diabetes, 52:588-595 (2003))、アルステルパウロン、ケンパウロン、BIO(6−ブロモインジルビン−3’−オキシム(Sato et al Nat Med. 2004 Jan;10(1):55-63)、SB216763(3−(2,4−ジクロロフェニル)−4−(1−メチル−1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン)、及びSB415286(3−[(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ]−4−(2−ニトロフェニル)−1H−ピロール−2,5−ジオン;Coghlan et al Chem Biol. 2000 Oct;7(10):793-803)が挙げられる。
0071
いくつかの好ましい実施態様では、GSK3β阻害剤はCHIR99021である。
0072
適切なグリコーゲンシンターゼキナーゼ3β阻害剤は、業者(例えばステムジェント社、MA州、米国;ケイマンケミカル社、MI州、米国)から入手できる。例えば、内胚葉誘導培地は、0.3〜30μM、好ましくは約3μMのGSK3β阻害剤、例えばCHIR99021を含有し得る。
0073
内胚葉誘導培地は、TGFβリガンド、線維芽細胞増殖因子(FGF)、Wntシグナル伝達活性化因子、骨形成タンパク質(BMP)及びPI3K阻害剤以外の分化因子を欠失していてもよい。
0074
例えば、内胚葉誘導培地は、有効量のTGFβリガンド、線維芽細胞増殖因子(FGF)、Wntシグナル伝達活性化因子、骨形成タンパク質(BMP)及びPI3K阻害剤の追加された化学的に定義された栄養培地からなり得る。TGFβリガンドはアクチビンであり得、Wntシグナル伝達活性化因子はCHIR99021であり得、及び/又はPI3K阻害剤はLY294002であり得る。内胚葉誘導培地は、アクチビン、線維芽細胞増殖因子(FGF)、CHIR99021、骨形成タンパク質(BMP)及びLY294002の追加された、化学的に定義された栄養培地、例えばCDM−PVAからなり得る。
0075
化学的に定義された栄養培地は、化学的に定義された基礎培地を含み得る。適切な化学的に定義された基礎培地は上記されており、そしてこれにはイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、Ham’s F12、アドバンストダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Price et al Focus (2003), 25 3-6)、ウィリアムズE(Williams, G.M. et al Exp. Cell Research, 89, 139-142 (1974))、及びRPMI−1640(Moore, G.E. and WoodsL.K., (1976) Tissue Culture Association Manual. 3, 503-508)が挙げられる。
0076
基礎培地は、内胚葉誘導培地中の無血清培養培地補助物質及び/又は追加の成分によって追加され得る。適切な補助物質及び追加の成分は上記されており、そしてこれにはL−グルタミン又は代用物、例えばグルタマックス−1(商標)、組成の明らかな脂質、アルブミン、1−チオグリセロール、ポリビニルアルコール、インシュリン、ニコチンアミド、デキサメタゾン、セレニウム、ピルビン酸塩、緩衝液、例えばHEPES、重炭酸ナトリウム、グルコース、抗生物質、例えばペニシリン及びストレプトマイシン、及びトランスフェリンが挙げられ得る。
0077
内胚葉誘導培地に使用するための適切な化学的に定義された栄養培地としては、上記のようなCDM−PVA及びCDM−BAが挙げられる。
0078
好ましい内胚葉誘導培地は、アクチビン−A(10ng/mLから1μg/mL、好ましくは100ng/mL)、BMP4(1〜100ng/mL、好ましくは10ng/mL)、bFGF(2〜200ng/ml、好ましくは20ng/mL)、CHIR99021(0.3〜30μM、好ましくは3μM)、及びLY294002(1〜100μM、好ましくは10μM)の追加された上記のようなCDM−PVAからなり得る。
0079
PSCを、内胚葉誘導培地中で1〜6日間、好ましくは約3日間培養することにより、DEC集団を生成し得る。
0080
DECは、Sox17、foxA2、GSC、Mixl1、Lhx1、CXCR4、GATA4、エオメソデルミン(エオメス)、Mixl1、HNF−3β、ケルベロス、OTX4、グーセコイド、C−kit、CD99、及びHexの1つ以上、好ましくは全てを発現し得る。典型的には、DECはCXCR4及びSox17の発現によって特徴づけられる。
0081
DECは、特定の内胚葉系統に関連したマーカー、例えば腸、膵臓、肝臓、又は肺のマーカーを欠失していてもよい。例えば、DECは、SOX2(前腸)、CDX2(中腸−後腸)、PDX1、PTF1a(膵臓)、AFP(肝臓)、Nkx2.1又はTBX1(肺)を発現していなくてもよい。DECはまた、多能性に関連したマーカー、例えばOct4、Sox2、アルカリホスファターゼ、POU5f1、SSEA−3、Nanog、SSEA−4、Tra−1−60、KLF−4、及びc−myc、並びに、胚外、中胚葉、又は神経外胚葉細胞系統に関連したマーカーを欠失していてもよい。
0082
DEC集団を、前腸誘導培地中で培養して、FSC集団を生成する。
0083
好ましい実施態様では、前腸誘導培地は、TGFβリガンドを含む化学的に定義された培地である。
0084
前腸誘導培地は、TGFβリガンド以外の分化因子を欠失していてもよい。例えば、前腸誘導培地は、有効量のTGFβリガンドの追加された化学的に定義された栄養培地からなり得る。いくつかの実施態様では、前腸誘導培地は、アクチビンなどのTGFリガンドの追加された化学的に定義された栄養培地からなり得る。
0085
適切な化学的に定義された栄養培地は、上により詳細に記載されている。例えば、前腸誘導培地は、B27などの無血清培地補助物質の追加された、RPMIなどの基礎培地を含み得る。
0086
TGFβリガンドは、培地中に、有効量で、例えば5〜500ng/mL、好ましくは50ng/mLで存在し得る。
0087
好ましい前腸誘導培地は、B27及び50ng/mLのアクチビン−Aの追加されたRPMI基礎培地からなり得る。
0088
DECを、前腸誘導培地中で5〜7日間、好ましくは6日間培養して、DECをFSCへと分化させ得る。
0089
FSCは、HNF4α、SOX17、CXCR4、EpCAM、HNF1β、GATA4、Cer、HNF6、HNF1β、SOX2、HHEX、及びHOXA3の1つ以上、好ましくは全てを発現し得る。例えば、集団中の細胞の少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70%がSOX2、HHEX、及びHOXA3を発現し得る。
0090
FSCは、CDX2又はHOXC5の発現を欠失していてもよい。FSCはまた、Oct4、Sox2、アルカリホスファターゼ、SSEA−3、Nanog、SSEA−4、Tra−1−60、KLF−4、及びPOU5f1などの多能性マーカー、並びに内胚葉又は中胚葉系統に関連したマーカーを欠失していてもよい。FSCは、内胚葉組織マーカー、例えば肺内マーカー、例えばNKX2.1、肝細胞マーカー、例えばAFP、又は膵臓マーカー、例えばPDX1マーカーの発現を欠失していてもよい。
0091
本発明の方法は、インビトロにおけるFSCからCPへの分化に関する。FSCは、2段階プロセスでCPへと分化する。まず、FSC集団を誘導して、肝芽細胞(HB)集団へと分化させる。次いで、HBを誘導してCPへと分化させる。
0092
肝芽細胞(HB)集団を生成するために、FSC集団を、骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地中で培養する。
0093
好ましい実施態様では、肝細胞誘導培地は、BMP及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む、化学的に定義された培地である。
0094
肝細胞誘導培地は、BMP及びTGFβシグナル伝達阻害剤以外の分化因子を欠失していてもよい。
0095
肝細胞誘導培地は、有効量のBMP及びTGFβシグナル伝達阻害剤の追加された、化学的に定義された栄養培地からなり得る。例えば、肝細胞誘導培地は、BMP4及びSB−431542の追加された化学的に定義された栄養培地からなり得る。
0096
化学的に定義された栄養培地は、上記されているような1つ以上の追加の組成の明らかな成分の追加された、RPMI、アドバンストDMEM、又はHCM(商標)肝細胞培養培地(ロンザ社、米国)などの基礎培地を含み得るか又はからなり得る。肝細胞誘導培地に使用するための適切な化学的に定義された基礎培地は上記されており、そしてこれには、B27などの無血清培地補助物質の追加されたRPMIが挙げられる。好ましい肝細胞誘導培地は、上記のようなB27などの無血清培地補助物質の追加された、SB−431542(1〜100μM、好ましくはμM)及びBMP4(1〜100ng/mL、好ましくは50ng/mL)の追加されたRPMIからなり得る。
0097
FSCを肝細胞誘導培地中で2〜6日間、好ましくは約4日間培養して、HB集団を生成し得る。
0098
HBは、以下の1つ以上、好ましくは全てのマーカーを発現し得る:AFP、HNF4A、HNF1B、TBX3、及びCK19。好ましくは、HBは二分化能を有し、そして肝臓系統又は胆管系統へと分化することができる。
0099
CP集団を生成するために、HB集団を、線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む、胆管細胞誘導培地中で培養する。
0100
好ましい実施態様において、胆管細胞誘導培地は、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む、化学的に定義された培地である。
0101
胆管細胞誘導培地は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンド以外の分化因子を欠失していてもよい。例えば、胆管細胞誘導培地は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドの追加された化学的に定義された栄養培地からなり得る。好ましくは、TGFβリガンドはアクチビンである。
0102
化学的に定義された栄養培地は、1つ以上の追加の組成の明らかな成分、例えばポリビニルアルコール、1−チオグリセロール、インシュリン、トランスフェリン、及び組成の明らかな脂質、又は無血清培地補助物質、例えば上記のようなB27の追加された、基礎培地を含み得るか又はからなり得る。胆管細胞誘導培地に使用するのに適した化学的に定義された基礎培地は上記されており、そしてこれには、RPMI、ウィリアムズE、アドバンストDMEM、DMEM、又はDMEM/F12が挙げられる。
0103
好ましい胆管細胞誘導培地は、上記のようなB27などの無血清培地補助物質の追加され、そしてさらにFGF10(1〜100ng/ml、好ましくは50ng/ml)、アクチビン(1〜100ng/ml、好ましくは50ng/ml)及びRA(0.3μM〜30μM、好ましくは3μM)の追加された、RPMIからなり得る。
0104
HBを胆管細胞誘導培地中で2〜6日間、好ましくは約4日間培養して、胆管前駆細胞(CP)集団を生成し得る。
0105
好ましくは、CP集団は、同質又は実質的に同質である。例えば、集団中の細胞の50%超、60%超、又は70%超が、肝細胞誘導培地中での培養後にCPであり得る。
0106
CPは、以下の1つ以上、好ましくは全てのマーカーを発現し得る:CK19、HNF1B、Sox9、ノッチ2、及びHes1。
0107
CPは、以下の1つ以上、好ましくは全てのマーカーの発現を欠失し得る:AFP、HNF4A、及びTBX3。
0108
CPは、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)活性を示し得る。
0109
生成後、CP集団は、慣用的な技術を使用して維持、増殖、又は保存され得る。
0110
CP集団は、例えば、細胞療法のために又は下記のような初期胆管細胞の発生のモデリングのために有用であり得る。
0111
本発明の方法はさらに、上記のように生成されたCPを成熟させて、胆管細胞様細胞(CLC)集団を生成する工程を含み得る。
0112
CPを、上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地中で培養して、CLC集団を生成し得る。
0113
好ましくは、CPを、胆管細胞成熟培地中、3次元細胞培養で成熟させて、CLC集団を生成する。
0114
例えば、胆管細胞様細胞(CLC)集団を生成するための方法は、
(i)骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤(アクチビン/TGFβアンタゴニスト)を含む肝細胞誘導培地中で前腸幹細胞(FSC)集団を培養して、肝芽細胞集団を生成する工程、
(ii)線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地中で肝芽細胞を培養して、胆管前駆細胞(CP)集団を生成する工程、及び
(iii)CPを、上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地中で3次元培養で培養して、CLC集団を生成する工程
を含み得る。
0117
いくつかの実施態様では、胆管細胞成熟培地は、化学的に定義された培地であり得る。他の実施態様では、胆管細胞成熟培地は、化学的に定義されたではない1つ以上の成分を含み得る。例えば、培地は、複合タンパク質ヒドロゲルなどの化学的に定義されたではない足場マトリックスを含み得る。
0118
好ましい実施態様では、胆管細胞成熟培地は、上皮増殖因子の追加された栄養培地を含み得る。
0119
場合により、胆管細胞成熟培地はさらに、ノッチリガンド及びTGFβリガンドを含み得る。いくつかの実施態様では、培地に、ノッチリガンド及びTGFβリガンドが追加されていてもよい。他の実施態様では、ノッチリガンド及びTGFβリガンドが、組成の明らかではない足場マトリックス、例えば複合タンパク質ヒドロゲル、例えばマトリゲル(商標)に存在し得る。
0120
例えば、栄養培地は、上皮増殖因子(EGF)の追加された基礎培地からなり得る。
0121
適切な基礎培地は、1つ以上の追加の成分、例えばニコチンアミド、重炭酸ナトリウム、ホスホ−L−アスコルビン酸三ナトリウム塩、ピルビン酸ナトリウム、グルコース、HEPES、インシュリン、ヒトトランスフェリン、リノール酸、及びセレン酸(例えばITS+プレミックス)、デキサメタゾン、グルタミン又はL−アラニル−L−グルタミン(例えばグルタマックス(商標))及び抗生物質、例えばペニシリン及びストレプトマイシンの追加された、アドバンストDMEM又はウィリアムズE培地などの標準的な基礎培地を含み得るか又はからなり得る。
0122
例えば、基礎培地に、10mMニコチンアミド、17mM重炭酸ナトリウム、0.2mM 2−ホスホ−L−アスコルビン酸三ナトリウム塩、6.3mMピルビン酸ナトリウム、14mMグルコース、20mMHEPES、6μg/mlインシュリン、6μg/mlヒトトランスフェリン、6ng/mlセレン酸、5μg/mlリノール酸、0.1μMデキサメタゾン、2mM L−アラニル−L−グルタミン、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを追加し得る。
0123
好ましくは、胆管細胞成熟培地中の基礎培地は、ウィリアムズE培地である。好ましい栄養培地は、上記の補助物質を含むウィリアムズE培地からなり得、そしてさらに上皮増殖因子(EGF)(2〜200ng/ml、好ましくは20ng/ml)が追加され得る。
0124
CPを、胆管細胞成熟培地中で2次元培養で培養し得る。より好ましくは、CPを、胆管細胞成熟培地中で3次元培養で培養する。
0125
3次元細胞培養のために、胆管細胞成熟培地はさらに、3次元の細胞の成長及び増殖を支持しそしてオルガノイドの形成を可能とする足場マトリックスを含み得る。
0126
適切な足場マトリックスは当技術分野において周知であり、そしてこれには、ヒドロゲル、例えばコラーゲン、コラーゲン/ラミニン、圧縮コラーゲン(例えばRAFT(商標)、TAPバイオシステムズ社)、アルギネート、アガロース、複合タンパク質ヒドロゲル、例えば基底膜抽出物、及び合成ポリマーヒドロゲル、例えばポリグリコール酸(PGA)ヒドロゲル、及び不活性マトリックス、例えば多孔性ポリスチレンが挙げられる。
0127
足場マトリックスは、圧縮コラーゲンヒドロゲルのように化学的に定義されていてもよく、又は、複合タンパク質ヒドロゲルのように化学的に定義されていなくてもよい。
0128
好ましくは、胆管細胞成熟培地中の足場マトリックスは、複合タンパク質ヒドロゲルである。適切な複合タンパク質ヒドロゲルは、細胞外マトリックス成分、例えばラミニン、コラーゲンIV、エナクチン、及びヘパリン硫酸プロテオグリカンを含み得る。
0129
適切な複合タンパク質ヒドロゲルとしては、エンゲルブルス・ホルム・スウォーム(EHS)マウス肉腫細胞由来の細胞外マトリックスタンパク質のヒドロゲルが挙げられ得る。適切な複合タンパク質ヒドロゲルは業者から入手でき、そしてこれにはマトリゲル(商標)(コーニングライフサイエンシーズ社)又はカルトレックス(Cultrex)(商標)BME2RGF(Amsbio(商標)社)が挙げられる。
0130
胆管細胞成熟培地は、足場マトリックス、及び上記のような上皮増殖因子の追加された栄養培地からなり得る。
0131
CPを、胆管細胞成熟培地中で5〜15日間、好ましくは約10日間培養して、胆管細胞様細胞(CLC)集団を生成し得る。
0132
好ましくは、CLC集団は、同質又は実質的に同質である。例えば、集団中の細胞の50%超、60%超、又は70%超が、該培養後にCLCであり得る。
0133
好ましくは、CLC集団は、成熟中に1つ以上のオルガノイドを形成する。
0134
成熟後、CLC集団によって形成された1つ以上のオルガノイドを、2次元細胞培養液に播種し得る。
0135
いくつかの実施態様では、1つ以上のオルガノイドを破壊して、CLCの単離を可能とし得る。これは、本明細書に記載のような、FACS分析に有用であり得る。適切なオルガノイドの破壊法は、当技術分野において周知である。
0136
CLCはSox9及びCK7、好ましくはSSTR2、ALP、CK7、CK19、GGT、及びSOX9を発現する。
0137
CLCは、以下の1つ以上、好ましくは全ての成熟胆管マーカーを発現し得る:CK7、CK18、CK19、HNF1B、ガンマグルタミル−トランスフェラーゼ(GGT)、Jagged1(JAG1)、ノッチ2、CFTR、SCR、SSTR2、頂端側塩及び胆汁輸送体(ASBT)、アクアポリン1、及び陰イオン交換体2。CLCによって発現される他の胆管マーカーを表2に示す。
0138
好ましくは、CLCは、初代総胆管(CBD)胆管細胞に相当するレベルで成熟胆管マーカーを発現する。
0139
CLCは、初代総胆管(CBD)胆管細胞の遺伝子発現プロファイルに酷似している遺伝子発現プロファイルを示し得る。例えば、表2に示された重要な胆管マーカーである21個の胆管細胞特異的遺伝子の発現は、CLCと初代総胆管(CBD)胆管細胞において類似したレベルであり得る。
0140
特許請求された方法によって生成されたCLC集団は、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70%の大きさのCLCを含有し得る(Glaser et al 2006 World J Gastroenterol., 12:3523-36)。
0141
CLC集団における1つ以上のCLCマーカーの発現をモニタリング及び/又は検出し得る。例えば、CLC集団中の上記に示された1つ以上の成熟胆管マーカーの発現又は生成を決定し得る。これは、CLC集団中の分化度を決定及び/又はモニタリングすることを可能とする。
0142
本明細書に記載のように生成されたCLCは、一次総胆管(CBD)胆管細胞の1つ以上の機能的特性を示し得る。例えば、CLCは、表1に示されそして以下に記載されている1つ以上、好ましくは全ての特性を示し得る。
0143
CLCは、一次総胆管(CBD)胆管細胞の形態又は生理学的特徴を示し得る。CLCオルガノイドは、線毛状及び/又は管状の構造を含み得る。形態及び生理学的特徴は、標準的な顕微鏡手順によって決定され得る。
0144
CLCは、胆汁酸の輸送、アルカリホスファターゼ(ALP)活性及び/又はガンマ−グルタミル−トランスペプチダーゼ(GGT)活性を示し得る。ALP活性及びGGT活性の量は、一次総胆管(CBD)胆管細胞によって示されるALP活性及びGGT活性の量に相当し得る。ALP活性及びGGT活性は、例えば、本明細書に記載のように決定され得る。
0145
CLCは、能動的な分泌、例えば多剤耐性タンパク質−1(MDR1)によって媒介される分泌を示し得る。これは、本明細書に記載のように、MDR1阻害剤のベラパミルの存在下及び非存在下においてCLCオルガノイドの管腔内へのローダミン123などのMDR1蛍光基質の蓄積を測定することによって決定され得る。
0146
CLCは、セクレチン及びソマトスタチンに対する応答を示し得る。例えば、CLCは、セクレチンに応答して増加した分泌活性、及びソマトスタチンに応答して減少した活性を示し得る。これは、CLCオルガノイドのサイズの変化を測定することによって決定され得る。例えば、セクレチンは、CLCオルガノイドのサイズを増加させ得、そしてソマトスタチンは減少させ得る。
0147
CLCは、胆汁酸の能動輸送、例えば頂端側塩及び胆汁輸送体(ASBT)によって媒介される輸送を示し得る。胆汁酸輸送活性は、例えば、本明細書に記載のように、FITCなどの別の蛍光化合物と比較して、CLFなどの蛍光胆汁酸塩の能動輸送を測定することによって決定され得る。
0148
CLCは、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)活性を示し得る。CFTR活性は、例えば本明細書に記載のような塩化物イオン蛍光指示薬であるN−(6−メトキシキノリル)アセトエチルエステル(MQAE)などの塩化物イオンを様々な濃度で含む培地に応答した細胞内及び管腔内塩化物イオン濃度を測定することによって決定され得る。
0149
CLCは、ATP及びアセチルコリンに対する応答を示し得る。例えば、CLC内の細胞内Ca2+レベルは、ATP又はアセチルコリンに応答して増加し得る。細胞内Ca2+レベルは、標準的な技術を使用して決定され得る。
0151
CLCは、ルマカフトール(VX809)などの薬物に対する応答を示し得る。例えば、CLC内のオルガノイドサイズ、CFTR活性、及び/又は管腔内液分泌は、ルマカフトールに応答して増加し得る。ルマカフトールに対する応答を決定するための適切な方法は、以下に記載されている。
0152
特許請求された方法によって生成されるCLCの応答及び/又は活性の量は、一次総胆管(CBD)胆管細胞によって示される応答及び/又は活性の量に相当し得る。
0153
上記のように、胆管障害を有する個体に由来するiPSCを使用して、胆管障害に関連した表現型を示すCLCを生成し得る。例えば、CLCは、アラジール症候群に関連した未分化表現型を示し得る。未分化表現型は、オルガノイド形成又は管形成の欠如によって特徴付けられ得る。
0154
いくつかの実施態様では、胆管障害に関連した表現型を有するCLCを生成する方法は、
胆管障害に特異的なiPSCから生成されたFSC集団を準備する工程、
インビトロにおいてFSCからCPへの胆管細胞の分化を誘導する工程、及び
本明細書に記載のように、CPをCLCへと成熟させる工程、
これにより、胆管障害に関連した表現型を有するCLC集団を生成する工程
を含み得る。
0155
他の実施態様では、胆管障害に関連した表現型を有するCLCを生成する方法は、
正常なiPSCから生成されたFSC集団を準備する工程、
インビトロにおいてFSCからCPへの胆管細胞の分化を誘導する工程、及び
本明細書に記載のように、CPをCLCへと成熟させる工程、及び
CLCを、細胞内において胆管障害に関連した表現型を誘導する化合物を用いて処置する工程、
これにより、胆管障害に関連した表現型を有するCLC集団を生成する工程
を含み得る。
0156
胆管障害に関連した表現型を誘導する化合物は、胆管障害に関連した細胞内経路を調節、例えば活性化又は阻害し得る。
0157
いくつかの実施態様では、CLCを1つ以上の他の細胞型と共培養して、胆管障害に関連した表現型を誘起し得る。例えば、CLCをT細胞などの免疫細胞と共培養して、原発性胆汁性肝硬変(PBC)などの自己免疫性胆管障害に関連した表現型を誘起し得る。
0158
胆管障害に関連した表現型を有するCLCは、一旦生成されると、例えばスクリーニングに使用するために、培養、増殖、及び維持され得る。
0159
胆管障害に関連した表現型を有するCLCは、胆管障害に特徴的な1つ以上の特性、特色、又は病態を示し得る。
0160
胆管障害としては、胆管症、例えば遺伝性胆管症、発達性胆管症、自己免疫性胆管症、及び環境により誘発される胆管症、例えば嚢胞性線維症に関連した胆管症、アラジール症候群、多嚢胞肝疾患、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、エイズ関連胆管症、消失胆管症候群、及び胆道閉塞症が挙げられ得る。
0161
上記のような胆管障害に関連した表現型を有するCLC集団を生成した後に、方法は、集団内の1つ以上の疾患−病態を検出又は測定する工程を含み得る。
0162
疾患病態は、異常な胆汁酸輸送;ATP又はアセチルコリンに対する異常な応答;増加したアポトーシス;オルガノイド形成又は管形成の欠如;異常な遺伝子発現;VEGFに対する異常な応答;タンパク質凝集又は重合;小胞体へのタンパク質の捕捉;ALP活性又はGGT活性;セレクチン又はソマトスタチンに対する異常な応答;正常な細胞と比較して、異常なCFTR活性又は異常なMDR1活性、の1つ以上を含み得る。
0163
機能的な特性及び疾患病態を測定するに適した方法は本明細書の何処かに記載されている。
0164
本明細書に記載のように生成されたCP集団又はCLC集団は、実質的に他の細胞型を含まない場合がある。例えば、該集団は、培地中での培養後に、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上のCP又はCLCを含有し得る。該集団中のCP又はCLCの存在又は比率は、上記のような胆管マーカーの発現を通して決定され得る。
0165
好ましくは、CP集団又はCLC集団は、十分に他の細胞型を含まず、よって全く精製が必要とされない。必要であれば、CP集団又はCLC集団を、FACSをはじめとする任意の慣用的な技術によって精製してもよい。
0166
本明細書に記載のように生成されたCLC集団は、オルガノイド又は個々の細胞の形態であり得る。
0167
本明細書に記載のように生成されたCP又はCLCが1つ以上の胆管細胞の機能を遂行する能力をモニタリング及び/又は決定し得る。例えば、細胞が1つ以上のMDR1機能(胆汁酸の輸送;VEGF、アセチルコリン、又はATPに対する応答;CFTRにより媒介される塩化物イオンの輸送;又はセクレチン若しくはソマトスタチンに対する応答)を遂行する能力をモニタリング及び/又は決定し得る。
0168
本明細書に記載のように生成されたCP、CLC及びCLC−オルガノイドは、標準的な哺乳動物細胞培養技術を使用して増殖、培養、又は維持され得る。
0170
CP集団又はCLC集団を、他の試薬、例えば緩衝液、担体、希釈剤、保存剤、薬学的に許容される賦形剤、及び/又は生分解性の細胞用足場と混合し得る。適切な試薬は以下により詳細に記載されている。本明細書に記載の方法は、CP集団又はCLC集団を治療的に許容される賦形剤及び/又は生分解性の細胞用足場と混合する工程を含み得る。
0171
本発明の別の態様は、本明細書に記載の方法によって生成された単離されたCP集団若しくはCLC集団、又は本明細書に記載の方法によって生成されたCLCを含むオルガノイドを提供する。
0172
前記集団は、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、又は95%以上のCP又はCLCを含有し得る。
0173
本明細書に記載のように生成されたCLCは、オルガノイド又は単離された細胞の形態であり得る。
0174
本明細書に記載の方法によって生成されたCLCは、一次総胆管の胆管細胞に特異的な1つ以上の機能又は機能的特徴を示し得る。例えば、CLCは、一次総胆管の胆管細胞の、MDR1機能(胆汁酸の輸送;VEGF、アセチルコリン、又はATPに対する応答;CFTRにより媒介される塩化物イオンの輸送;ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)活性、アルカリホスファターゼ(ALP)活性;セクレチン若しくはソマトスタチンに対する応答、又は薬物に対する応答)を示し得る。
0175
治療的適用のために、CP又はCLCは好ましくは臨床等級の細胞である。処置に使用するためのCLC集団は、化学的に定義された胆管細胞成熟培地を使用して、本明細書に記載のようなCPから好ましくは生成される。個体に投与されるCPは、インビボにおいてCLCへと分化し得る。
0176
CP集団又はCLC集団を、個体に移植、注入、又は別の方法で投与し得る。好ましくは、CP又はCLCを、投与のための生分解性の足場に組み込む。適切な技術は当技術分野において周知である。
0177
CP集団又はCLC集団は、個体(すなわち自己細胞)から得られた細胞から誘導されたiPSCから生成され得る。いくつかの実施態様では、iPSC内の疾患関連突然変異又は遺伝子異常を、上記のように、CP又はCLCへと分化する前に修正し得る。
0178
本発明の態様は、ヒト又は動物の体の処置法に、例えば胆管症などの胆管障害の処置に使用するためのCP集団又はCLC集団;例えば上記の胆管障害などの胆管障害の処置に使用するための医薬品の製造におけるCP集団又はCLC集団の使用を提供し;そして、胆管障害の処置法は、単離されたCP集団又はCLC集団をそれを必要とする個体に投与する工程を含み得る。
0179
本発明の態様はまた、本明細書に記載のように生成されたCP又はCLCを含む医薬組成物、医薬品、薬物、又は他の組成物、このようなCP又はCLCを例えば上記のような胆管障害の処置(これは予防的処置を含み得る)のために患者に投与する工程を含む方法、及びこのようなCP又はCLCを薬学的に許容される賦形剤、ビヒクル、担体、又は生分解性の足場、及び場合により1つ以上の他の成分と混合する工程を含む医薬組成物を製造する方法に拡張される。
0180
特に、胆管障害としては、胆管への損傷又は破壊、異常な胆管又は胆管の欠如、例えば消失性胆管症候群、胆道閉塞症、又はアラジール症候群によって特徴付けられる障害が挙げられ得る。
0181
本発明に従って生成されたCP又はCLCを含有している医薬組成物は、1つ以上の追加の成分を含み得る。医薬組成物は、CP又はCLCに加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、生分解性の足場、又は当業者には周知である他の材料を含み得る。このような材料は無毒性であるべきであり、そしてCP又はCLCの活性を妨害すべきではない。担体又は他の材料の正確な性質は、投与経路に依存するだろう。
0182
液状医薬組成物は、一般的に、液状担体、例えば水、石油、動物油又は植物油、鉱油、又は合成油を含む。生理食塩水、組織培養培地又は細胞培養培地、デキストロース又は他のサッカリド溶液又はグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、又はポリエチレングリコールも含められ得る。
0183
前記組成物は、発熱物質非含有でかつ適切なpH、等張度及び安定性を有する、非経口的に許容される水溶液の形態であり得る。当業者は、例えば等張性ビヒクル、例えば塩化ナトリウム、リンゲル注射液、又は乳酸リンゲル注射液を使用して、適切な溶液を良好に調製することができる。組成物は、人工的な脳脊髄液を使用して調製されてもよい。
0184
CP若しくはCLC又はCP若しくはCLCを含む足場を、当技術分野において公知である任意の技術によって患者に埋め込み得る(例えば、Lindvall, O. (1998) Mov. Disord. 13, Suppl. 1:83-7; Freed, C.R., et al., (1997) Cell Transplant, 6, 201-202; Kordower, et al., (1995) New England Journal of Medicine, 332, 1118-1124; Freed, C.R.,(1992) New England Journal of Medicine, 327, 1549-1555, Le Blanc et al, Lancet 2004 May 1;363(9419):1439-41)。特に、細胞懸濁液を、患者の胆管、門脈、及び肝臓に注射し得る。
0185
本発明による組成物の投与は好ましくは「予防有効量」又は「治療有効量」であり(場合によっては、予防は治療であると判断され得る)、これは、個体に利点を示すのに十分である。投与される実際の量、並びに投与速度及び時間経緯は、処置される個体の性質及び重症度に依存するだろう。処置の処方、例えば投与量の決断などは、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内である。
0186
CP又はCLCを含む組成物は、処置しようとする容態に依存して、単独で又は他の処置と併用して、同時に又は順次のいずれかで投与され得る。
0187
いくつかの実施態様では、本明細書に記載のように生成された集団内のCP又はCLCは、正常な表現型を示し得る。例えば、細胞を、胆管障害を有する個体から得ることができ、これを使用してiPS細胞を生成することができる。いくつかの実施態様では、iPS細胞は突然変異又は遺伝子異常を含有し得、そしてこの突然変異又は異常を、慣用的な組換え技術を使用して修正して、正常な表現型を有するiPS細胞を生成することができる。あるいは、正常な表現型を有するiPS細胞を、胆管障害を有する個体から得ることができる。正常な表現型を有するCP又はCLCを、本明細書に記載のようなこれらのiPS細胞から生成し得、そしてこれを患者に埋め込んで、障害を修復又は寛解することができる。
0188
他の実施態様では、本明細書に記載のように生成された集団中のCP又はCLCは、疾患表現型を示し得る。例えば、細胞を、胆管障害を有する個体から得ることができ、そしてこれを使用して疾患特異的なiPS(ds−IPS)細胞を生成することができる。疾患表現型を有するCP前駆細胞又はCLC前駆細胞を、本明細書に記載のようなこれらのiPS細胞から生成し得る。次いで、これらの細胞を処置することにより、正常な表現型を回復させることができる。例えば、疾患表現型に関与する遺伝子突然変異又は遺伝子異常をインビトロにおいて修正し得る。単離された哺乳動物細胞内の遺伝子突然変異又は遺伝子異常を修正するために様々な技術を利用することができる。一旦異常又は突然変異が修正されそして正常な表現型が回復されれば、CP又はCLCを患者に埋め込むことにより、障害を修復又は寛解することができる。
0189
上記のように生成された単離されたCP集団又はCLC集団は、試験化合物と胆管細胞の相互作用をモデリングするのに、例えば毒性スクリーニングに、胆管障害のモデリングに、又は治療効果を有する可能性がある化合物についてスクリーニングするのに有用であり得る。
0190
モデリング及びスクリーニングに使用するためのCLCは、オルガノイド、又は例えばCLCオルガノイドの破壊によって生成された単離された細胞の形態であり得る。
0191
スクリーニング及びモデリングに使用するのに適した単離されたCP又はCLCとしては、正常な遺伝子型及び表現型を有する細胞、並びに疾患に関連した遺伝子型又は表現型、例えば胆管障害に関連した遺伝子型又は表現型を有する細胞が挙げられる。
0192
化合物をスクリーニングする方法は、
本明細書に記載のように生成された単離されたCP集団又はCLC集団を、試験化合物と接触させる工程、並びに;
該CLC若しくはCPに対する試験化合物の効果、及び/又は試験化合物に対する該CLC若しくはCPの効果を決定する工程
を含み得る。
0194
分化、増殖、成長、生存能、又は1つ以上の細胞機能を遂行する能力の減少は、前記化合物が毒性作用を有することを示し、そして成長、生存能、又は1つ以上の細胞機能を遂行する能力の増加は、該化合物がCP又はCLCに対して寛解効果を有することを示す。
0195
CP又はCLCは、正常な表現型又は疾患表現型を示し得る。
0196
遺伝子発現は、試験化合物の非存在下と比較して存在下において決定され得る。例えば、表2に列挙された1つ以上の遺伝子の発現が決定され得る。発現の複合減少は、前記化合物が毒性作用を有するか又はCP若しくはCLCの機能的状態を改変し得ることを示す。遺伝子発現は、例えばRT−PCRによって核酸レベルで、又は例えばELISAなどの免疫学的技術によって、若しくは活性アッセイによってタンパク質レベルで決定され得る。チトクロムp450アッセイ、例えば発光アッセイ、蛍光アッセイ、又は発色アッセイは当技術分野において周知であり、そして業者から入手できる。
0197
いくつかの実施態様では、PSCなどの胆管障害についてリスクのある遺伝子座の発現が決定され得る。
0198
CP又はCLCによる試験化合物の代謝、分解、又は崩壊が決定され得る。いくつかの実施態様では、試験化合物及び/又は該試験化合物の代謝物の量又は濃度の変化が、経時的に、連続的又は1つ以上の時点においてのいずれかで決定又は測定され得る。例えば、試験化合物の量若しくは濃度の減少、及び/又は該試験化合物の代謝物の量若しくは濃度の増加が決定又は測定され得る。いくつかの実施態様では、試験化合物及び/又は代謝物の量又は濃度の速度変化が決定され得る。試験化合物又は代謝物の量を測定するのに適した技術としては質量分析が挙げられる。
0200
CP又はCLCの1つ以上の機能は、試験化合物の非存在下と比較して存在下において決定及び/又は測定され得る。例えば、CLCが1つ以上のMDR1機能(胆汁酸の輸送;VEGF、アセチルコリン又はATPに対する応答;CFTRにより媒介される塩化物イオンの輸送;GGT活性、ALP活性、又はセレクチン若しくはソマトスタチンに対する応答)を遂行する能力が決定及び/又は測定され得る。CPがCLC又はCLC−オルガノイドへと成熟する能力が決定され得る。
0201
試験化合物の非存在下と比較して存在下において、CLC又はCPが1つ以上のこれらの機能を遂行する能力の減少は、該化合物が毒性作用を有することを示す。試験化合物の非存在下と比較して存在下において、CLC又はCPが1つ以上のこれらの機能を遂行する能力の増加は、該化合物が胆管誘発効果を有する(例えばそれは胆管の特異化を促進する)ことを示す。例えば、胆管障害に関連した遺伝子異常を有するCLC又はCPにおいて、胆管誘発効果を有する試験化合物が同定され得る。
0202
胆管障害の処置に有用な化合物をスクリーニングする方法は、
上記のように生成されたCLC集団又はCP集団を試験化合物と接触させる工程、及び;
該CLC又はCPに対する試験化合物の効果を決定する工程
を含み得る。
0203
CLC又はCPは、胆管障害表現型を示し得る。CLC又はCPにおける1つ以上の疾患病態に対する試験化合物の効果が決定され得る。例えば、細胞増殖、遺伝子発現、オルガノイド形成若しくは管形成、タンパク質凝集若しくは重合;GGT活性、ALP活性、MDR1機能;胆汁酸の輸送;VEGF、アセチルコリン若しくはATPに対する応答;CFTRにより媒介される塩化物イオンの輸送;セクレチン若しくはソマトスタチンに対する応答、又はCLC若しくはCPによる抗原提示、の1つ以上に対する試験化合物の効果が決定され得る。試験化合物の効果を決定するのに適した技術は当技術分野において周知であり、そしてこれには免疫染色法、質量分析法、ウェスタンブロット、及び酵素的アッセイが挙げられる。
0204
好ましくは、CLC集団を試験化合物と接触させる。
0205
試験化合物の非存在下と比較して存在下において、CP又はCLCにおける1つ以上の疾患病態の減少又は寛解は、試験化合物が胆管障害の処置に有用であり得ることを示す。胆管障害の例は上記に提供される。
0206
いくつかの実施態様では、CP集団又はCLC集団におけるCFTRにより媒介される塩化物イオン輸送の増加は、試験化合物が嚢胞性線維症又はCF関連胆管症の処置に有用であり得ることを示す。
0207
いくつかの実施態様では、CP集団における胆管への特異化の増加は、試験化合物がアラジール症候群(AGS)などの胆管の発達の減少に関連した胆管障害の処置に有用であり得ることを示す。
0208
本明細書に記載のような方法は、CLC又はCPにおける1つ以上の疾患病態を減少又は寛解する試験化合物を同定する工程を含み得る。疾患病態を減少させる化合物は、胆管障害の処置用の治療薬の開発において有用であり得る。
0209
他の実施態様では、CLC又はCPは正常な表現型を示し得、そしてこれは例えば、一般的な集団と比較して、胆管障害の高いリスクを有するか又は高い易罹患性を有する個体に由来し得る。細胞増殖、又は例えば表2に示された遺伝子の発現などの遺伝子発現の1つ以上に対する試験化合物の効果が決定され得る。CLCの1つ以上の機能に対する試験化合物の効果が決定され得る。例えば、CLCがMDR1機能;胆汁酸の輸送;VEGF、アセチルコリン、又はATPに対する応答;CFTRにより媒介される塩化物イオンの輸送;及びセクレチン又はソマトスタチンに対する応答の1つ以上を遂行する能力が、試験化合物の非存在下と比較して存在下において決定及び/又は測定され得る。
0210
試験化合物の非存在下と比較して存在下における、遺伝子発現、増殖、オルガノイド形成効率及び/又は1つ以上の機能の増加は、該化合物が胆管障害の処置に有用であり得ることを示し得る。
0211
CLCにおける1つ以上の疾患病態を減少又は寛解する化合物の同定後、該化合物を改変してその薬学的特性を最適化し得る。これは、当技術分野において周知であるモデリング技術を使用して実施され得る。
0212
1回以上の初期の選別を使用して、CLCにおける1つ以上の疾患病態を減少又は寛解する能力を有するとして同定された試験化合物をさらに、1回以上の二次選別を使用して評価し得る。二次選別は、インビトロ及び/又はインビボにおいて、例えば動物モデルにおいて生物学的機能又は活性について試験することを含み得る。例えば、疾患動物モデルにおける胆管障害に関連した1つ以上の症状又は病態を試験化合物が減少又は寛解する能力が決定され得る。
0213
CLC又はCPにおける1つ以上の疾患病態を減少又は寛解する試験化合物を同定した後、該化合物を単離及び/若しくは精製しても、又は代替的にはそれを、慣用的な組換え発現技術若しくは化学合成を使用して合成してもよい。さらに、それは製造され得、及び/又は調製に、すなわち、医薬品、医薬組成物若しくは薬物などの組成物の製造若しくは製剤化に使用され得る。これらは胆管障害の処置のために個体に投与され得る。
0214
上記のように生成された単離されたCP集団又はCLC集団はまた、例えば個体における胆管障害の存在を同定するための、診断検査法において有用であり得る。
0215
胆管障害について個体を試験する方法は、
個体から得られた細胞の試料からiPSC集団を生成する工程、
上記の方法を使用してiPSCから単離されたCP集団又はCLC集団を生成する工程;及び
単離されたCP又はCLCの表現型を決定する工程
を含み得る。
0216
CP又はCLCにおける疾患関連表現型の存在は、個体が胆管障害又は他の障害を有することを示し得る。例えば、細胞増殖、遺伝子発現、タンパク質凝集若しくは重合;オルガノイド形成若しくは管形成、GGT活性、ALP活性、MDR1機能;胆汁酸の輸送;VEGF、アセチルコリン若しくはATPに対する応答;CFTRにより媒介される塩化物イオンの輸送;セクレチン若しくはソマトスタチンに対する応答、又は抗原提示、の1つ以上における欠損症又は異常の存在は、個体が胆管障害を有することを示し得る。いくつかの実施態様では、PBCについてリスクのある遺伝子座における遺伝子発現が決定され得る。
0217
いくつかの実施態様では、前記方法は、出生前スクリーニングに有用であり得る。例えば、アラジール症候群についての出生前検査法は、
出生していない胎児から得られた細胞の試料からiPSC集団を生成する工程、
上記の方法を使用してiPSCから単離されたCP集団又はCLC集団を生成する工程;及び
単離されたCP又はCLCがオルガノイドを形成する能力を決定する方法
を含み得る。
0219
本発明の他の態様は、上記の方法を使用してCP集団及びCLC集団を生成するために使用するキット及び試薬を提供する。
0220
CP又はCLCの生成のためのキットは
骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地、
線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地、並びに場合により
上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地
を含み得る。
0221
キットはさらに、上記のような内胚葉誘導培地及び前腸誘導培地を含み得る。
0222
キットはさらに、足場マトリックス、例えばマトリゲル(商標)を含み得る。足場マトリックスは、胆管細胞成熟培地の一部として提供されても、又は別々に提供されてもよい。
0223
本発明の態様はまた、CLCの生成のための培養培地のセットの使用を提供し、培地のセットは、
骨形成タンパク質(BMP)及びTGFβシグナル伝達阻害剤を含む肝細胞誘導培地、
線維芽細胞増殖因子(FGF)、レチノイン酸、及びTGFβリガンドを含む胆管細胞誘導培地、並びに場合により
上皮増殖因子を含む胆管細胞成熟培地
を含む。
0224
培地のセットはさらに、上記のような内胚葉誘導培地及び前腸誘導培地を含み得る。
0225
適切な肝細胞誘導培地、胆管細胞誘導培地、胆管細胞成熟培地、内胚葉誘導培地、及び前腸誘導培地が上により詳細に記載されている。
0226
培地に、本明細書の何処かで記載されているような、上記に示された分化因子の有効量が追加され得る。
0227
1つ以上の培養培地は、脱イオンし蒸留した水中で製剤化され得る。1つ以上の培地は典型的には、使用前に、例えば紫外線、加熱、放射線照射、又はろ過により滅菌されることにより、汚染が防止されるだろう。1つ以上の培地は、保存又は輸送のために凍結(例えば−20℃又は−80℃)され得る。1つ以上の培地は、汚染を防止するために1つ以上の抗生物質を含有し得る。
0228
1つ以上の培地は、1倍の製剤又はそれ以上濃縮された製剤、例えば2倍から250倍の濃縮培地製剤であり得る。1倍の製剤では、培地中の各成分は、細胞培養を目的とした濃度であり、例えば上記に示された濃度である。濃縮製剤では、1つ以上の成分が、細胞培養を目的としたものよりも高い濃度で存在する。濃縮培養培地は当技術分野において周知である。培養培地は、公知の方法を使用して、例えば塩沈降又は選択的ろ過によって濃縮され得る。濃縮培地は、使用のために水(好ましくは脱イオンし蒸留した水)又は任意の適切な溶液、例えば食塩水溶液、水性緩衝液、又は培養培地で希釈され得る。
0229
キット内の1つ以上の培地は、密封容器に含有され得る。密封容器は、汚染を防止するために、培養培地の輸送又は保存に好ましくあり得る。容器は、任意の適切な容器、例えばフラスコ、プレート、瓶、広口瓶、バイアル、又はバッグであり得る。
0230
ルマカフトール(VX809)は本明細書において胆管障害の状況においてCF疾患表現型を救出することが示されている。
0231
本発明の別の態様は、必要とする個体における、胆管障害、例えばCF関連胆管症などの胆管症の処置に使用するための、ルマカフトール(VX809;3−{6−{[1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)シクロプロパンカルボニル]アミノ}−3−メチルピリジン−2−イル}安息香酸)を提供する。
0232
胆管障害は、上により詳細に記載されている。個体は、嚢胞性線維症又はCFTR活性に関連した他の障害を患っている可能性がある。
0233
本発明の他の態様及び実施態様は、「含んでいる」という用語が「からなる」という用語に置き換えられた上記の態様及び実施態様、並びに「含んでいる」という用語が「実質的にからなる」という用語に置き換えられた上記の態様及び実施態様を提供する。
0234
本出願は、特記されない限り、上記の態様及び上記の実施態様のいずれかと互いとの全ての組合せを開示すると理解されたい。同様に、本出願は、特記されない限り、好ましい特色及び/又は任意選択の特色の全ての組合せを、単独で又は他のいずれかの態様と一緒に開示する。
0235
上記の実施態様の改変、さらに他の実施態様及びその改変は、本開示を読めば当業者には明らかであり、したがって、これらは本発明の範囲内である。
0237
本明細書において使用する場合の「及び/又は」は、2つの各々の明記された特色又は成分が、一緒に又は他方を伴わずに具体的に開示されていると捉えられる。例えば「A及び/又はB」は、ちょうど各々が本明細書に個々に示されているかのように、(i)A、(ii)B、及び(iii)AとB、のそれぞれが具体的に開示されていると捉えられる。
0238
本発明の特定の態様及び実施態様はこれから、実施例を用いて及び上記の図面を参照して説明されるだろう。
0239
表1は、Dianatet al(6)によって生成されたCLCとhESC−Chol細胞との間の比較の要約を示す。「CBD」は総胆管の胆管細胞を意味する。
0240
表2は、Dianatet al(6)によって生成されたCLCとhESC−Cholにおける重要な胆管マーカーについての21個の遺伝子の発現の順位付けを示し、これは、CLCにおけるより高い発現を示す(最も高い発現:順位=1)。
0241
実験
方法
hIPSC株の生成
使用された全てのhIPSC株は、本発明者らの研究室(9)によって以前に誘導されそして特徴付けられ、それ故、本研究のために新規なhIPSC株を全く誘導しなかった。簡潔に言えば、使用された株は、以前に記載されているように、山中アプローチ(4、9)を使用して、ヒト皮膚線維芽細胞及び末梢血から生成した(それぞれ、倫理審査委員会による参照番号08/H0311/201及び09/H0304/77)。CF線維芽細胞をコーリエル細胞レポジトリから入手した。株は、SNIPアレイを使用して確証され、そしてマイコプラズマ汚染について定期的に検査され陰性であった。
0242
hIPSCの培養
ヒトiPS細胞を、アクチビン−A(10ng/ml)及びb−FGF(12ng/ml)を使用して、以前に記載されているような(9、10、46)規定の培養条件で維持した。
0243
hIPSCから胆管前駆細胞への分化
hIPSCを、以前に記載(46)されているように前腸前駆細胞(EP)へと分化した。SB−431542(10μM、トクリスバイオサイエンス社)及びBMP4(50ng/ml)の追加されたRPMI(ギブコ社、インビトロジェン社)+B27中でFPを4日間培養することによって、二分化能を有する肝芽細胞を生成した。胆管への特異化を誘導するために、肝芽細胞を、FGF10(50ng/ml、ペプロテック社)、アクチビン−A(50ng/ml)及びRA(3μM、シグマアルドリッチ社)の追加されたRPMI(ギブコ社、インビトロジェン社)+B27の存在下でさらに4日間培養した。
0244
胆管前駆細胞から胆管細胞様細胞への成熟及び3次元培養におけるオルガノイドの形成
ヒトCPを、細胞解離緩衝液(ギブコ社、ライフテクノロジーズ社)を使用して継代し、そして10mMニコチンアミド(シグマアルドリッチ社)、17mM重炭酸ナトリウム(シグマアルドリッチ社)、0.2mM 2−ホスホ−L−アスコルビン酸三ナトリウム塩(シグマアルドリッチ社)、6.3mMピルビン酸ナトリウム(インビトロジェン社)、14mMグルコース(シグマアルドリッチ社)、20mMHEPES(インビトロジェン社)、ITS+プレミックス(BDバイオサイエンシーズ社)、0.1μMデキサメタゾン(R&Dシステムズ社)、2mMグルタマックス(インビトロジェン社)、100μg/mlストレプトマイシン毎に100U/mlペニシリン、及び20ng/ml EGF(R&Dシステムズ社)の追加された、40%マトリゲル(BDバイオサイエンシーズ社、カタログ番号:356237)及び60%ウィリアムズE培地(ギブコ社、ライフテクノロジーズ社)の混合物中に、8×104個の細胞/mlの密度で懸濁した。50μLの液滴の細胞懸濁液を、24ウェルプレートのそれぞれのウェルの中心に加え;ゲルを37℃で2時間かけて固化させ、次いで、補助物質を含むウィリアムズE培地で覆った。培地を48時間毎に交換し、そして細胞を計10日間培養した。重要なことには、同じ方法を使用して、本発明者らは6から96ウェルプレートまでの複数のフォーマットにCLCオルガノイドを培養することができた。多数のCLCオルガノイドを生成するために、数回の50μLの液滴を、6ウェルプレートのウェルに又は10cm皿に加えた。ハイスループットスクリーニング及び大規模実験に適合した多数のウェルを提供するために、30μLの液滴を96ウェルプレートのウェルに加えた。両方の場合において、ゲルを37℃で2時間かけて固化させ、そして次いで補助物質を含むウィリアムズE培地で覆った。
0245
3次元培養におけるアクチビン及びノッチシグナル伝達の阻害、並びにオルガノイド形成の評価
ヒトCPを、上記のような補助物質を含む40%マトリゲル及び60%ウィリアムズE培地(ギブコ社、ライフテクノロジーズ社)の混合物中で、8×104個の細胞/mlの密度で懸濁した。細胞懸濁液を3つの等容量の分取液へと分配した。1つの分取液はさらに他の補助物質を全く受けず、そしてこれを陽性対照として使用した。第二の分取液に、TGFβ/アクチビンシグナル伝達の阻害のために10μM SB−431542をさらに追加した。50μM L−685,458(トクリスバイオサイエンシーズ社)を、ノッチシグナル伝達阻害のために第三の分取液に加えた。各分取液を24ウェルプレートフォーマットに分配した。同じ濃度の阻害剤を、1日1回、マトリゲルを覆っている培地に加えた。3次元培養で計10日間の後、24ウェルプレートの中の4つの無作為に選択したウェルにおける嚢胞の総数は、ブラインド化されている研究者によって各条件について計数された。エラーバーは標準偏差を示す。
0246
フローサイトメトリー分析
HIPSC、FP、HB、及びCPを、細胞解離緩衝液(ライフテクノロジーズ社)を使用して単一の細胞へと解離した。続いて、細胞を血球計を使用して計数し、そして4%PFAを使用して4℃で20分間かけて固定した。細胞染色及びフローサイトメトリー分析を、以前に記載(47)されている通りに実施した。
0247
CLCオルガノイドをPBSを用いて1回洗浄し、そして24ウェルプレートの1ウェルあたり1mlの氷冷ディスパーゼを加えた。マトリゲルを力学的に解離させ、ファルコンチューブに移し、そして氷上に保持して、低温とディスパーゼによる消化の組合せによりマトリゲルの液化を可能とした。10分後、細胞を1600rpmで3分間遠心分離にかけ、そして上清を吸引した。ペレットをPBSを用いて1回洗浄し、そして遠心分離工程を繰り返した。上清を吸引し、そしてオルガノイドが解離して単一の細胞となるまで、1mlのTrypIE(ライフテクノロジーズ社)を3〜5分間かけて加えた。最後に、単一細胞懸濁液を1600rpmで3分間遠心分離にかけ、そして4%PFAを使用して4℃で20分間かけて固定した。細胞染色及びフローサイトメトリー分析を、以前に記載(47)されている通りに実施した。
0248
初代胆管細胞
総胆管に由来する凍結させた初代ヒト胆管細胞を、セルプロジェン社(カタログ番号36755−11)から入手した。細胞を製造業者の説明書に従って解凍し、そしてRNA抽出のために溶解した。
0249
初代胆管組織
初代胆管組織(胆管)を臓器ドナーから入手した。ドナーからの肝臓及び膵臓を移植のために回収した。ドナーの家族から書面による同意を得た後、胆管の切片を多臓器回収手術中に切り出した(REC参照番号:09/H0306/73)。組織を組織ホモジナイザーを使用してホモジナイズし、そしてRNAを以前に記載(9)されている通りに抽出した。
0250
免疫蛍光法、RNA抽出、及び定量リアルタイムPCR
免疫蛍光法、RNA抽出、及び定量PCRを以前に記載(7)されている通りに実施した。使用された一次抗体及び二次抗体の完全なリストを補足表5に提供する。使用されたプライマーの完全なリストを、補足表6に提供する。全ての定量PCRデータは、4回の独立した生物学的複写物の平均値として提示されるが、セルプロジェン社製の初代CDB胆管細胞を除く(ここでは3回の独立した試料が使用された)。エラーバーは標準偏差を示す。
0251
3次元マトリゲル培養における免疫蛍光法のために、オルガノイドを4%PFAを含むマトリゲル中で室温で20分間かけて固定し、マトリゲルの液化を回避した。試料に透過性処理を行ない、そしてそれぞれ0.1%トリトン−X及び10%ロバ血清を用いて30分間かけて遮断し、そして1%ロバ血清中の一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。翌日、試料をPBSを用いて1回あたり45分間かけて3回洗浄し、1%ロバ血清中の二次抗体と共に室温で60分間インキュベートし、そしてPBSで再度3回洗浄した。ヘキスト33258を1回目の洗浄に加えた。3次元マトリゲル培養液におけるRNAの抽出のために、オルガノイドをPBSを用いて1回洗浄し、そして24ウェルプレートの1ウェルあたり1mlの氷冷ディスパーゼを加えた。マトリゲルを力学的に解離させ、ファルコンチューブに移し、そして氷上に保持して、低温とディスパーゼによる消化の組合せによりマトリゲルの液化を可能とした。10分後、細胞を1600rpmで3分間遠心分離にかけ、そして上清を吸引した。ペレットをPBSを用いて1回洗浄し、そして遠心分離工程を繰り返した。最後に、上清を吸引し、そしてRNA溶解緩衝液350μLをペレットに加えた。RNAを、製造業者の説明書に従って、キット(シグマアルドリッチ社)を使用して溶解液から抽出した。
0252
マイクロアレイ
全細胞RNA 500ngを増幅し、そしてイルミナトータルプレップ−96RNA増幅キット(ライフテクノロジーズ社)を使用して製造業者の説明書に従って精製した。各条件につき3つの生物学的複写物を分析した。次いで、ビオチンで標識されたcRNAを150ng/μlの濃度に対して正規化し、そして750ngをイルミナヒト−12v4ビーズチップに58℃で16時間(一晩)かけてハイブリダイズさせた。ハイブリダイズ後、ビーズチップを洗浄し、そしてストレプトアビジン−Cy3(GEヘルスケア社)を用いて染色した。次いで、ビーズチップを、ビーズアレイ解読器を使用して走査し、そして次いで画像データをゲノムスタジオソフトウェア(イルミナ社)を使用して処理した。生のマイクロアレイデータ及び処理されたマイクロアレイデータは、アレイエクスプレス(アクセッション番号:E−MTAB−2965)において入手可能である。
0253
マイクロアレイ分析
全てのアレイに対するプローブサマリーは、「プローブサマリーの作成」法を使用して生データから得られた。これらの数値は(分散安定化)変換され、そしてR/Bioconductorパッケージlumi(47)を使用して分位数正規化された。標準的なlumiQC手順を適用し、そして外れ値は全く同定されなかった。条件の対の間の発現差を、R/Bioconductorパッケージlimma(48)を使用して評価した。線形モデルフィットを適用し、そして上位の発現差を有する遺伝子を、各々を対比するために、Benjamini及びHochbergの方法を使用して表にして、p値を修正した(49)。両方の条件においてバックグラウンドを上回り蛍光を発生しなかったプローブは除去された。発現差を有するプローブは、調整済みp値が0.01未満及び絶対変化倍数が2倍超のカットオフ値を使用して選択された。hIPSCとCLC、又はhIPSCとHB(CLC及びHBの凝集物の転写「サイン」を示す)との間で発現差を有するプローブを、Perseusソフトウェア(MaxQuant)を使用してユークリッド階層的クラスタリングのために選択した。様々な条件間の対数正規化されたプローブ発現値の標準的なスコア(zスコア)を計算し、そしてこの分析のために使用した。
0254
ローダミン123の輸送アッセイ
CLCオルガノイドを、100μM ローダミン123(シグマアルドリッチ社)と共に37℃で5分間インキュベートし、そしてウィリアムズE培地を用いて3回洗浄した。補助物質を含む新鮮なウィリアムズE培地を、3回目の洗浄後に加えた。オルガノイドを37℃でさらに40分間インキュベートした。ローダミン123の輸送が実際に、膜チャネル多剤耐性タンパク質1(MDR1)の活性を反映したことを実証するために、CLCを10μMベラパミル(シグマアルドリッチ社)と共に37℃で30分間インキュベートし、そしてローダミンアッセイを繰り返した。各実験の完了後、共焦点顕微鏡を使用して画像を撮影した。オルガノイドの内部と外部の間で複数回(約1000回)の蛍光測定を行なった。オルガノイド管腔におけるローダミン123の蛍光を、周辺の外部領域において測定されたバックグラウンドに対して正規化した。各実験を3回繰り返した。エラーバーは標準偏差を示す。蛍光強度平均値の比較を、両側スチューデントt検定を使用して実施した。
0255
コリル−リシル−フルオレセイン輸送アッセイ
CLCオルガノイドに、5μM コリル−リシル−フルオレセイン(CLF、コーニングインコーポレイテッド社)を37℃で30分間かけてローディングし、そしてライボビッツ培地(ライフテクノロジーズ社)を用いて3回洗浄した。3回目の洗浄の完了後、共焦点顕微鏡を使用してコマ撮り撮影を10分間かけて撮影した。観察されたCLF蛍光強度の変化が、オルガノイド管腔からのCLFの能動的排出に続発して起こったことを実証するために、実験を、5μMのコンジュゲートしていないフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(シグマアルドリッチ社)を対照として用いて繰り返した。オルガノイドの内部と外部との間で複数回(約1000回)の蛍光測定を行なった。オルガノイド管腔内の蛍光を、周辺の外部領域において測定されたバックグラウンドに対して正規化した。各実験を3回繰り返した。エラーバーは標準偏差を示す。蛍光強度平均値の比較を、両側スチューデントt検定を使用して実施した。
0256
細胞内カルシウムレベルの測定
アセチルコリン及びATPなどの刺激によって調節される細胞内カルシウムシグナル伝達は、胆管細胞のための重要な二次メッセンジャーをなす(18)。CLCオルガノイドを25μMのカルシウム指示薬のFluo−4AM(ライフテクノロジーズ社)と共に37℃で60分間インキュベートし、そしてウィリアムズE培地を用いて3回洗浄した。補助物質を含む新鮮なウィリアムズE培地を、3回目の洗浄後に加えた。オルガノイドを、1μM アセチルコリン(シグマアルドリッチ社)又は30μM ATP(シグマアルドリッチ社)を用いて刺激し、その間にコマ撮り画像を撮影した。各測定を3回繰り返した。刺激に応答する細胞数を計算するために、Fluo−4AMをローディングされた細胞数を、実験開始前に2人の異なる研究者によって計数した。ATP又はアセチルコリンを用いて刺激した後、応答している細胞の数(蛍光の増加)も計数し、そして応答性をFluo−4AMをローディングされた細胞の総数に対する応答している細胞の比として表現した。データを平滑化しそして信頼限界のためにバンドをプロットするための統計学的アプローチについては「統計学的分析」を参照下さい。
0257
増殖アッセイ
50μlの液滴のマトリゲル(各々、40,000個の細胞を含有している)を、24ウェルプレートの中の20ウェルに分配した。50ng/mlの濃度のVEGFをウェルの半分に加え、どの培地も交換した。5日間培養した後、マトリゲルを上記のように(RNA抽出の章)ディスパーゼを用いて消化し、そしてオルガノイドを力学的に解離して単一の細胞とした。次いで、各ウェルの細胞数を血球計を使用して計数した。ブラインド化された研究者によって25回の異なる測定が行なわれた。12ウェルプレートの中の6ウェルに分配された一次胆管細胞を陽性対照として使用した。3つのウェルが、50ng/mlの濃度のVEGFを受け、どの培地も5日間で交換し、その後、各ウェルの細胞数を上記のように計数した。エラーバーは標準偏差を示す。細胞数平均値の比較を、両側スチューデントt検定を使用して実施した。
0258
GGT活性
GGT活性を、製造業者の説明書に基づいてマックスディスカバリー(商標)ガンマ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)酵素アッセイキット(バイオサイエンティフィック社)を使用して3回測定した。マウス胚性フィーダーを陰性対照として使用した。等価な血清中GGT活性(IU/L)を、製造業者の説明書に従って、10分間にわたる吸光度増加の平均値に353を乗じることによって計算した。エラーバーは標準偏差を示す。複数の吸光度平均値の比較(CLC対基質、CLC対MEF、CLC対ヒト血清)を、多重比較のためのダネット補正を有する一元分散分析を使用して実施した。
0259
アルカリホスファターゼ染色
アルカリホスファターゼを、製造業者の説明書に従ってBCIP/NBT発色基質(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−ホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム)(プロメガ社)を使用して実施した。
0260
オルガノイドサイズに対する、セクレチン、ソマトスタチン、オクトレオチド、及びVX809の効果
CLCオルガノイドの画像を、セクレチン(100nM、シグマアルドリッチ社)、ソマトスタチン(100nM、シグマアルドリッチ社)、オクトレオチド(100nM、シグマアルドリッチ社)、陰性対照としての役目を果たす胚移植用水を0.5〜2分間隔で添加する前及び添加した後に、オルガノイドのサイズが安定化するまで、5倍の拡大率を使用して撮影した。セレクチンの効果に対するオクトレオチドの影響を探索するために、細胞をオクトレオチドと共に3〜10分間プレインキュベートした。続いて、100nMのセクレチン(シグマアルドリッチ社)を培地に加え、そして実験を上記のように実施した。オルガノイドサイズに対するVX809の効果を評価するために、VX809(30mM、セレック社)又は陰性対照としての役目を果たす胚移植用水の添加前及び添加から6時間後に画像を撮影した。処置前及び処置後に8つの無作為に選択されたオルガノイドについて3つの無作為に選択された直径を測定した。グラフ測定値は、オルガノイド直径平均値の差の比率を示す。エラーバーは標準偏差を示す。統計学的有意性は、多重比較のためのダネット補正を有する一元分散分析を使用して計算された。オンライン補足データとして入手可能なビデオが、オルガノイドサイズが安定化されるまで、2分間間隔で処置前及び処置後に画像を撮影することによって作成された。
0261
cAMPレベル
cAMPレベルを、製造業者の説明書に基づいたcAMP−Gloアッセイキット(プロメガ社)及びP450−グロマックス96マイクロプレートルミノメーター(プロメガ社)を使用して3回測定した。エラーバーは標準偏差を示す。統計学的有意性は、多重比較のためのダネット補正を有する一元分散分析を使用して計算された。
0262
CFTR活性
CFTR活性を以前に記載のように測定した。簡潔に言えば、MQAEは、塩化物イオンの存在によって消光するが、他の陰イオン又はpH変化によっては影響されない蛍光色素である(36)。胆管細胞の細胞膜を横断する塩化物イオンの輸送は、主にCFTRによって調節される。それ故、機能的CFTRを有する細胞は、細胞内(及びオルガノイドの場合には管腔内)塩化物イオン濃度を急速に上昇させ、これによりMQAE蛍光を消光することによって塩化物イオンによる負荷に応答するだろう。硝酸塩イオン溶液を使用した塩化物イオンの枯渇は、逆の作用を有するだろう。細胞を、8mM MQAE蛍光色素(ライフテクノロジーズ社)及び5μMフォルスコリンと共に37℃で4時間インキュベートした。MQAEの蛍光は、塩化物イオンの存在下において消光する。NaCl、KCl、CaCl、MgCl、グルコース、及びhepesを含有している標準的なリンゲル液を使用して、機能的CFTRの存在下において細胞内塩化物イオンレベルを上昇させることが予想される塩化物イオンの負荷を与えた。NaNO3、KNO3、CaNO3、MgNO3、グルコース、及びhepesからなる改変リンゲル液を使用して、塩化物イオンの流出を促進し、そして細胞内塩化物イオンを枯渇させた。各溶液が添加されると1分毎にライブ写真を撮影した。CFTRの機能に対するVX809の効果を実証するために、CLCオルガノイドを30mMのVX809(セレック社)と共に48時間インキュベートした。アッセイを上記のように7μMのCFTR阻害剤−172(シグマアルドリッチ社)の存在下及び非存在下において繰り返し、CFTRに対する化合物の特異性を確認した。ImageJソフトウェアを使用して各オルガノイドの壁から無作為に選択された3つの領域の細胞内蛍光強度を測定し、そして各領域についての最小蛍光値に対して正規化した。エラーバーは標準偏差を示す。
0263
チトクロムp450活性
Cyp3A4活性を、製造業者の説明書に記載のp450−Gloアッセイキット(プロメガ社)及びP450−グロマックス96マイクロプレートルミノメーター(プロメガ社)を使用して測定した。
0264
CLCオルガノイドに対する実験の時期
CLCに関する全ての実験及び特徴付けは、特記されない限り、10日間の3次元培養後にCLC−オルガノイドに対して実施された。
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成