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技術 多層アークPVDコーティングを有する工具

出願人 ヴァルターアーゲー
発明者 アルベール,ウルリヒシーア,ファイト
出願日 2016年5月19日 (4年9ヶ月経過) 出願番号 2017-560507
公開日 2018年8月9日 (2年6ヶ月経過) 公開番号 2018-521862
状態 特許登録済
技術分野 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット 穴あけ工具 物理蒸着
主要キーワード 寿命距離 金属機械加工 硬質材料コーティング 最高動作温度 穴あけ深さ 試験経路 形成機械 鋳物材料
関連する未来課題
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課題・解決手段

多層アークPVコーティングを有する工具硬質金属サーメットセラミック、鋼又は高速度鋼基体と、PVD法によって基体上に堆積された多層摩耗保護コーティングとを有する工具であって、摩耗保護コーティングが以下のコート: a) 基体上に堆積され、組成TiaAl(1−a)N(式中、0.4≦a≦0.6)と0.5μm〜4μmのコーティング厚とを有する第1のコート(1)、 b) 第1のコート上に堆積され、互いに交互に重なって配置された第1の層(2a)及び第2の層(2b)の各々10〜80ずつのシーケンスからなる第2のコート(2)であって、第1及び第2の層(2a、2b)の各々が5nm〜100nmの層厚を有する第2のコートを含むことを特徴とし、ここで第1の層(2a)は元素Ti、Al、Cr及びSiの窒化物を含み、かつ、第2の層(2b)はTixAl(1−x)N(式中、0.4≦x≦0.6)の組成を有し、摩耗保護コーティングは第2のコート(2)の上にさらに硬い材料のコートを含むことができ、本発明の製造方法による第1及び第2のコートは10at%までのさらなる金属、B、C及び/又はOを各層における不純物として含むことができる工具。

概要

背景

切削工具、特にチップ成形金属機械加工用の工具は、例えば硬質金属サーメットセラミック、鋼又は高速度鋼で作られた本体からなる。工具寿命を延ばしたり、切削特性を改善するために、硬質材料で作られた単層又は多層摩耗保護コーティングが、CVD又はPVD法によって本体にしばしば適用される。PVD法には、マグネトロンスパッタリングアーク蒸着アークPVD)、イオンプレーティング電子ビーム蒸着、及びレーザアブレーションのような複数の異なる変形形態がある。マグネトロンスパッタリング及びアーク蒸着は、工具のコーティングのために最も頻繁に使用されるPVD法である。各個別のPVD法にもやはり、例えば非パルス若しくはパルスマグネトロンスパッタリング又は非パルス若しくはパルスアーク蒸着等の様々な変形形態が含まれる。

アーク蒸着(アークPVD)では、アークは、ターゲットにおいて約数千℃の非常に高い温度を発生させ、その結果基材上への堆積のための、ターゲット材料の望ましい蒸発又は昇華がそれぞれ生じる。低温アーク領域衝撃点付近、例えば500から1000℃の領域において、いくつかのターゲット金属、特にアルミニウムなどの低融点金属の場合、マクロ粒子の脱離、いわゆる液滴が生じ、これも基材上に共堆積される。このような液滴は、例えばマグネトロンスパッタリングによって作製されたコーティングと比較して、堆積されたコーティングが望ましくない粗さになる。加えて、液滴は一般に、純金属から主に構成され、それゆえ比較的低い硬度酸化増加傾向を示すため、コーティングの軟化をもたらす。したがって、PVDアーク蒸着法における液滴形成を低減することが望ましい。

例えばフライス加工旋削及びドリル加工等の特定の金属加工作業では、工具に対する要求度が特に高い。このような工具の重要なパラメータは、高硬度、高弾性率弾性率、ヤング率)及び低い表面粗さである。記載された用途のための既知の切削工具は、典型的には400GPa未満の弾性率及び3,500HVまでのビッカース硬度を有する、PVD法で堆積されたTiAlNコーティングを含む。このようなTiAlNコーティングがアーク蒸着法によって堆積される場合、該コーティングは、アルミニウムの低い溶融温度に起因してコーティング上及びその中に液滴を形成する傾向があり、これはコーティングの性能に不利な影響を及ぼす。堆積プロセスのパラメータを適切に選択することによってPVDコーティングの硬度及び弾性率を高めることができるが、これは一般に、3GPaをかなり上回るほどの高い残留圧縮応力をもたらし、切れ刃の安定性に不利な影響を及ぼす。高荷重下では、このような切れ刃は、早期のチッピング、ひいては工具の急速な磨耗につながる傾向がある。

TiN及びTiAlNの第1の多層コート、並びにTiSeN及びAlCrNの第2の多層コートを含むPVDコーティングを有する市販の工具がある。このコーティングは、十分なコーティング厚を達成するために、2つの後続する堆積プロセスによって堆積される。コーティングされた基材は、第1の堆積プロセスにおける第1の多層コートの堆積の後に冷却され、次に第2の多層コートがさらなる堆積プロセスで堆積される前に第1のコートの残留圧縮応力を変化させる機械的処理に供される。このコーティングは高い硬度を示すが、同時に、3GPaを大幅に上回る非常に高い残留圧縮応力も有し、これは切れ刃の安定性、切れ刃の均一な被覆、及び工具の性能に不利な影響を及ぼす。

国際公開第2006/041367号には、硬質金属基材と、PVD法で堆積し、1.5〜5μmの厚さ及び4〜6GPaより大きい残留圧縮応力を有する少なくとも1のTiAlNのコーティングを含むコーティングとからなるコーティング切削工具が記載されている。TiAlNコートは、既知のコートと比較して、基材により効果的に接着すると言われている。しかしながら、その非常に高い残留圧縮応力は、切れ刃の安定性に不利な影響を及ぼす。

欧州特許出願公開第2298954号には、硬質材料コーティング、例えばTiAlN又はTiAlCrNがPVD法によって基材に適用され、基材のバイアス電圧が堆積プロセス中に変化するコーティング切削工具を製造する方法が記載されている。この方法は、工具の耐摩耗性の改善及び耐用年数延長をもたらすと言われている。

目的
本発明の目的は、従来技術と比較して、高い硬度、高い破壊靱性、高い弾性率及び良好な高温耐性の他、改善された切削特性及び摩擦化学的摩耗に対する改善された耐性のコーティングを有する、材料の切屑形成機械加工、特に鋳鉄、非合金及び低合金鋼等の鉄材料のドリル加工のためのコーティング工具を提供することであった。

本発明のさらなる目的は、アーク蒸着による基材のコーティングにおいて、従来技術と比較して液滴の形成が低減され、ゆえに工具の改善された特性が得られ、このコーティングに続いて表面を平滑にする後処理に要する労力が比較的少なく、切屑形成金属機械加工に適した条件を達成する、本発明の工具のPVDコーティングを製造するための方法を提供することであった。

概要

多層アークPVDコーティングを有する工具硬質金属、サーメット、セラミック、鋼又は高速度鋼の基体と、PVD法によって基体上に堆積された多層摩耗保護コーティングとを有する工具であって、摩耗保護コーティングが以下のコート: a) 基体上に堆積され、組成TiaAl(1−a)N(式中、0.4≦a≦0.6)と0.5μm〜4μmのコーティング厚とを有する第1のコート(1)、 b) 第1のコート上に堆積され、互いに交互に重なって配置された第1の層(2a)及び第2の層(2b)の各々10〜80ずつのシーケンスからなる第2のコート(2)であって、第1及び第2の層(2a、2b)の各々が5nm〜100nmの層厚を有する第2のコートを含むことを特徴とし、ここで第1の層(2a)は元素Ti、Al、Cr及びSiの窒化物を含み、かつ、第2の層(2b)はTixAl(1−x)N(式中、0.4≦x≦0.6)の組成を有し、摩耗保護コーティングは第2のコート(2)の上にさらに硬い材料のコートを含むことができ、本発明の製造方法による第1及び第2のコートは10at%までのさらなる金属、B、C及び/又はOを各層における不純物として含むことができる工具。なし

目的

本発明の目的は、従来技術と比較して、高い硬度、高い破壊靱性、高い弾性率及び良好な高温耐性の他、改善された切削特性及び摩擦化学的摩耗に対する改善された耐性のコーティングを有する、材料の切屑形成機械加工、特に鋳鉄、非合金及び低合金鋼等の鉄材料のドリル加工のためのコーティング工具を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

硬質金属サーメットセラミック、鋼又は高速度鋼基体と、PVD法によって基体上に堆積された多層摩耗保護コーティングとを有し、摩耗保護コーティングが以下のコート:a)基体上に堆積され、組成TiaAl(1−a)N(式中、0.4≦a≦0.6)と0.5μm〜4μmのコーティング厚とを有する第1のコート(1)、b)第1のコート上に堆積され、互いに交互に重なって配置された各々10〜80ずつの第1の層(2a)と第2の層(2b)とのシーケンスからなる第2のコート(2)であって、第1及び第2の層(2a、2b)の各々が5nm〜100nmの層厚を有する第2のコートであり、第1の層(2a)は元素Ti、Al、Cr及びSiの窒化物を含み、かつ、第2の層(2b)はTixAl(1−x)N(式中、0.4≦x≦0.6)の組成を有するコートを含むことを特徴とし、摩耗保護コーティングは第2のコート(2)の上にさらに硬い材料のコートを含むことができ、製造方法に因って、第1及び第2のコートは10at%までのさらなる金属、B、C及び/又はOを各層における不純物として含むことができる工具

請求項2

PVD法がアーク蒸着アークPVD)であることを特徴とする、請求項1に記載の工具。

請求項3

第1のコート(1)が単層からなり、及び/又は1〜3μm、好ましくは1.5〜2μmの範囲内の層厚を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の工具。

請求項4

第2のコート(2)が互いに交互に重なって配置された各々15〜70ずつ、好ましくは20〜60ずつの第1の層(2a)と第2の層(2b)とのシーケンスからなり、及び/又は第2のコート(2)の第1及び第2の層(2a、2b)の各々が10nm〜60nm、好ましくは20nmから50nmの層厚を有し、及び/又は第2のコート(2)が0.5μm〜10μm、好ましくは2μm〜6μmのコーティング厚を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の工具。

請求項5

摩耗保護コーティングが、第2のコート(2)の上に堆積され、かつ、組成ibSi(1−b)N(式中、0.70≦b≦0.98)を有し、0.05μm〜1μm、好ましくは0.1μm〜0.5μmの厚さを有する第3のコート(3)を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の工具。

請求項6

第2のコート(2)の第1の層(2a)が、各々2〜40ずつ、好ましくは3〜10ずつ互いに交互に重なって堆積されている、それぞれ組成TiySi(1−x)N(式中、0.70≦y≦0.98)及びAlzCr(1−z)N(式中、0.6≦z≦0.8)の副層を含み、各副層が0.5nm〜15nmの厚さを有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の工具。

請求項7

それぞれ組成TiySi(1−x)N及びAlzCr(1−z)Nの副層からなる第1の層(2a)がX線ディフラクトグラムにおいて検証可能な立方体面心立方結晶構造を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の工具。

請求項8

工具の切れ刃に10〜100μm、好ましくは20〜60μmの範囲内の半径を有する切れ刃丸みが施されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の工具。

請求項9

摩耗保護コーティングが3000〜4500、好ましくは3300から4000のビッカーズ硬度HV及び/又は>380GPa、好ましくは>420GPaの弾性率(弾性率)を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の工具。

請求項10

摩耗保護コーティングが、10μmの長さに沿って測定して、≦1.0μm、好ましくは≦0.5μmの平均表面粗さを有することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の工具。

請求項11

工具が硬質金属製の基体を備え、硬質金属が好ましくは5〜15at%、より好ましくは7〜12at%のCo、0〜2at%、より好ましくは0.5〜1.5at%のCr、0〜3at%、より好ましくは0.5〜2at%の周期律の第4A族、第5A族及び第6A族に属する元素の炭化カルシウム、窒化物、炭窒化物オキシカーバイド酸窒化物及び/又は炭窒酸化物と、残部WCとを含有することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の工具。

請求項12

鉄材料、好ましくはISOP材料、ISOK材料及びISOM材料の機械加工ための超硬質金属ドリルとして、又は割出し可能な切削インサートとして、好ましくは割出し可能なドリル切削インサートとして設計されていることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の工具。

請求項13

硬質金属、サーメット、セラミック、鋼又は高速度鋼製の基体上に、PVD法によって、好ましくはアーク蒸着によって多層摩耗保護コーティングが堆積されており、(a)基体の表面に、組成TiAlN(式中、0.4≦a≦0.6)と0.5μm〜4μmのコーティング厚とを有する第1のコート(1)が堆積されており、(b)第1のコート上に、互いに交互に重なって堆積された各々5〜100ずつの第1の層(2a)と第2の層(2b)とのシーケンスからなる第2のコート(2)であって、第1及び第2の層(2a、2b)の各々が5nm〜100nmの層厚を有する第2のコートが堆積されており、ここで、第1の層(2a)の堆積は組成TiySi(1−y)N(式中、0.70≦y≦0.98)及びAlzCr(1−z)N(式中、0.6≦z≦0.8)をそれぞれ有する、各々0.5nm〜15nmの厚さの副層が互いに交互に重なって堆積されることにより行われ、第2の層(2b)は組成TixAl(1−x)N(式中、0.4≦x≦0.6)を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の工具の製造方法。

請求項14

第2のコート(2)の上に、組成ibSi(1−b)N(式中、0.70≦b≦0.98)を有し、0.05μm〜1μm、好ましくは0.1μm〜0.5μmの厚さの第3のコート(3)が堆積されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。

請求項15

摩耗保護コーティングの堆積後に、工具が以下の後処理工程:(a)工具の少なくとも主切れ刃に、ブラッシングにより切れ刃丸みを施す、及び/又は(b)研磨剤湿式ブラスト、好ましくはコランダム粒子を用いる研磨剤湿式ブラストによって、すくい面又は溝の表面を平滑化する、及び/又は(c)研磨剤若しくは圧縮乾式ブラストにより、好ましくはコランダム粒子を用いる研磨剤乾式ブラストにより、又は酸化ジルコニウムビーズを用いる圧縮乾式ブラストにより、すくい面又は溝の表面を平滑化する、及び/又は(d)ドラッグ仕上げにより、すくい面又は溝の表面を平滑化する、(e)工具を湿式化学的洗浄するの1以上に付されることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。

請求項16

金属材料、好ましくは鉄材料、より好ましくはISOP材料、ISOK材料及びISOM材料のドリル加工のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の工具の使用。

技術分野

0001

本発明の主題
本発明は、硬質金属サーメットセラミック、鋼又は高速度鋼製の本体と、PVD法によってその上に適用される多層摩耗保護コーティングとを有する工具に関する。摩耗保護コーティングは、第1のTiAlNコートと、その上の元素Ti、Al、Cr及びSiの窒化物を含む第2の多層コートとを含む。本発明はさらに、本発明の工具の製造方法及びその使用に関する。

背景技術

0002

切削工具、特にチップ成形金属機械加工用の工具は、例えば硬質金属、サーメット、セラミック、鋼又は高速度鋼で作られた本体からなる。工具寿命を延ばしたり、切削特性を改善するために、硬質材料で作られた単層又は多層の摩耗保護コーティングが、CVD又はPVD法によって本体にしばしば適用される。PVD法には、マグネトロンスパッタリングアーク蒸着アークPVD)、イオンプレーティング電子ビーム蒸着、及びレーザアブレーションのような複数の異なる変形形態がある。マグネトロンスパッタリング及びアーク蒸着は、工具のコーティングのために最も頻繁に使用されるPVD法である。各個別のPVD法にもやはり、例えば非パルス若しくはパルスマグネトロンスパッタリング又は非パルス若しくはパルスアーク蒸着等の様々な変形形態が含まれる。

0003

アーク蒸着(アークPVD)では、アークは、ターゲットにおいて約数千℃の非常に高い温度を発生させ、その結果基材上への堆積のための、ターゲット材料の望ましい蒸発又は昇華がそれぞれ生じる。低温アーク領域衝撃点付近、例えば500から1000℃の領域において、いくつかのターゲット金属、特にアルミニウムなどの低融点金属の場合、マクロ粒子の脱離、いわゆる液滴が生じ、これも基材上に共堆積される。このような液滴は、例えばマグネトロンスパッタリングによって作製されたコーティングと比較して、堆積されたコーティングが望ましくない粗さになる。加えて、液滴は一般に、純金属から主に構成され、それゆえ比較的低い硬度酸化増加傾向を示すため、コーティングの軟化をもたらす。したがって、PVDアーク蒸着法における液滴形成を低減することが望ましい。

0004

例えばフライス加工旋削及びドリル加工等の特定の金属加工作業では、工具に対する要求度が特に高い。このような工具の重要なパラメータは、高硬度、高弾性率弾性率、ヤング率)及び低い表面粗さである。記載された用途のための既知の切削工具は、典型的には400GPa未満の弾性率及び3,500HVまでのビッカース硬度を有する、PVD法で堆積されたTiAlNコーティングを含む。このようなTiAlNコーティングがアーク蒸着法によって堆積される場合、該コーティングは、アルミニウムの低い溶融温度に起因してコーティング上及びその中に液滴を形成する傾向があり、これはコーティングの性能に不利な影響を及ぼす。堆積プロセスのパラメータを適切に選択することによってPVDコーティングの硬度及び弾性率を高めることができるが、これは一般に、3GPaをかなり上回るほどの高い残留圧縮応力をもたらし、切れ刃の安定性に不利な影響を及ぼす。高荷重下では、このような切れ刃は、早期のチッピング、ひいては工具の急速な磨耗につながる傾向がある。

0005

TiN及びTiAlNの第1の多層コート、並びにTiSeN及びAlCrNの第2の多層コートを含むPVDコーティングを有する市販の工具がある。このコーティングは、十分なコーティング厚を達成するために、2つの後続する堆積プロセスによって堆積される。コーティングされた基材は、第1の堆積プロセスにおける第1の多層コートの堆積の後に冷却され、次に第2の多層コートがさらなる堆積プロセスで堆積される前に第1のコートの残留圧縮応力を変化させる機械的処理に供される。このコーティングは高い硬度を示すが、同時に、3GPaを大幅に上回る非常に高い残留圧縮応力も有し、これは切れ刃の安定性、切れ刃の均一な被覆、及び工具の性能に不利な影響を及ぼす。

0006

国際公開第2006/041367号には、硬質金属基材と、PVD法で堆積し、1.5〜5μmの厚さ及び4〜6GPaより大きい残留圧縮応力を有する少なくとも1のTiAlNのコーティングを含むコーティングとからなるコーティング切削工具が記載されている。TiAlNコートは、既知のコートと比較して、基材により効果的に接着すると言われている。しかしながら、その非常に高い残留圧縮応力は、切れ刃の安定性に不利な影響を及ぼす。

0007

欧州特許出願公開第2298954号には、硬質材料コーティング、例えばTiAlN又はTiAlCrNがPVD法によって基材に適用され、基材のバイアス電圧が堆積プロセス中に変化するコーティング切削工具を製造する方法が記載されている。この方法は、工具の耐摩耗性の改善及び耐用年数延長をもたらすと言われている。

0008

目的
本発明の目的は、従来技術と比較して、高い硬度、高い破壊靱性、高い弾性率及び良好な高温耐性の他、改善された切削特性及び摩擦化学的摩耗に対する改善された耐性のコーティングを有する、材料の切屑形成機械加工、特に鋳鉄、非合金及び低合金鋼等の鉄材料のドリル加工のためのコーティング工具を提供することであった。

0009

本発明のさらなる目的は、アーク蒸着による基材のコーティングにおいて、従来技術と比較して液滴の形成が低減され、ゆえに工具の改善された特性が得られ、このコーティングに続いて表面を平滑にする後処理に要する労力が比較的少なく、切屑形成金属機械加工に適した条件を達成する、本発明の工具のPVDコーティングを製造するための方法を提供することであった。

0010

この目的は、硬質金属、サーメット、セラミック、鋼又は高速度鋼から作られた基体(4)と、PVD法によって基体上に堆積された多層摩耗保護コーティングとを含み、摩耗保護コーティングが、
a) 基体上に堆積され、組成TiaAl(1−a)N(式中、0.4≦a≦0.6)と0.5μm〜4μmのコーティング厚とを有する第1のコート(1)、
b) 第1のコート上に堆積され、互いに交互に重なって配置された各々10〜80ずつの第1の層(2a)と第2の層(2b)とのシーケンスからなる第2のコート(2)であって、第1及び第2の層(2a、2b)の各々が5nm〜100nmの層厚を有する第2のコート
であり、
第1の層(2a)は元素Ti、Al、Cr及びSiの窒化物を含み、かつ、
第2の層(2b)はTixAl(1−x)N(式中、0.4≦x≦0.6)の組成を有する
コートを含むことを特徴とし、
摩耗保護コーティングは第2のコート(2)の上にさらに硬い材料のコートを含むことができ、本発明の製造方法による第1及び第2のコートは10at%までのさらなる金属、B、C及び/又はOを各層における不純物として含むことができる
工具によって解決される。

0011

本明細書において、説明のために括弧に入れた参照番号は、図1に添付の本発明のコーティングの例示的な概略図を引用している。

0012

有利には、多層摩耗保護コーティングを工具基材に適用するPVD法は、アーク蒸着(アークPVD)である。ただ、他のPVD法も適用可能であるが、アーク蒸着によって堆積されたコーティングは、他の方法によって堆積されたコーティングよりも利点を有する。アーク蒸着では、蒸発した原子は高度にイオン化される。このイオンは、基材上のコーティングの非常に良好な接着力をもたらし、コーティングの成長中に多くのエネルギーを導入して、非常に良好な機械的特性を有する非常に緻密なコーティングの生成をもたらす。アーク蒸着自体の方法は、比較的信頼性が高くかつ確立されており、とりわけ、真空系及びその周囲に対する要求がHIPIMS法などのスパッタリング法よりもかなり低い。

0013

本発明の工具は、特に有利な切断特性及び耐摩耗性、並びに切屑形成作業、特にISO Pの用途群の材料(the application group ISO-P)(強靭な鉄材料、非合金及び低合金鋼)及びISO Kの用途群の材料(鋳鉄)のドリル加工作業における長い工具寿命によって特徴付けられる。従来技術と比較して、本発明の工具は、改善された切削特性及び硬度を、同時に切れ刃の高い安定性及びインテグリティと共に示す。本発明の工具はさらに、摩擦化学磨耗に対して高い耐性を示し、非常に良好な破壊靭性及び高温耐性を示す。本発明の工具のコーティングは、例えば堆積したコートを冷却し、それらを中間処理に供するためにコートの堆積間、特に第1及び第2のコートの間のプロセスを中断する必要なしに、アーク蒸着により1回のPVD法で実施することができる。これは、本発明の製造方法の重要な経済優位性である。

0014

さらに、アーク蒸着によって堆積されたアルミニウム含有コーティングを有する工具と比較して、本発明の工具は、コーティング後により少ない数の液滴を示し、その結果コーティング後の表面を平滑化することによる処理後の労力が比較的少なく、切屑成形金属加工に適した条件を達成することができる。これは、従来技術に対する本発明のもう一つの重要な経済的優位性である。ただし、本発明の工具の表面の後処理をして残存する液滴を除去することが、特に超硬質金属ツイストドリルの場合、ドリル加工工具の溝の切屑除去を改善するために推奨される。さらに、ブラスト処理による後処理は、表面を平滑にすることに加えて、残留圧縮応力をコーティングに、場合によっては基材中にさらに導入することができ、それにより工具の性能のさらなる改善が得られる。

0015

本発明の好ましい実施態様において、本発明のコーティングの第1のコート(1)は、単層からなる。単層であるか多層であるかにかかわらず、本発明によれば第1のコートは、0.5〜4μm、好ましくは1〜3μm、特に好ましくは1.5〜2μmの範囲の層厚を有する。第1のコートが厚すぎると、工具の性能の向上は認められないが、コーティングが剥がれる確率が高くなる。さらに、コーティングの製造プロセスの持続時間が長くなり、これは経済的不利益である。第1のコートが薄すぎると、その上に堆積された第二のコートのための支持コートとしての機能が損なわれる。特に、第1のコートが薄すぎると、該コートの接着に対する第2のコートからの残留圧縮応力の影響をもはや十分に低減することができない。

0016

本発明の別の好ましい実施態様では、第2のコート(2)は、互いに交互に重なって堆積された各々15〜70、好ましくは20〜60ずつの第1の層(2a)と第2の層(2b)とのシーケンスからなる。

0017

本発明の別の実施態様では、第2のコート(2)の第1及び第2の層(2a、2b)の各々は、10nm〜60nm、好ましくは20nm〜50nmの層厚を有する。

0018

第2のコート(2)は、好ましくは0.5μm〜10μm、特に好ましくは2μm〜6μmのコーティング厚を有する。第1のコートが厚すぎると、工具の性能の向上は認められないが、コーティングが剥がれる確率が高くなり、コートの製造加工時間が長くなり、経済的不利益をもたらす。第2のコートが薄すぎると、比較的速く摩耗する。

0019

本発明の別の実施態様では、摩耗保護コーティングは、第2のコート(2)の上に堆積された第3のコート(3)を含む。この第3のコートは、0.05μm〜1μm、好ましくは0.1μm〜0.5μmの厚さを有する装飾コート及び/又は摩耗表示コートとして提供される薄い硬質材料コートとすることができる。特に好ましくは、そのような第3のコート(3)は、TibSi(1−b)N(式中、0.70≦b≦0.98)の組成を有する。

0020

本発明の別の実施態様では、第2のコート(2)の第1の層(2a)は、各々が0.5nm〜15nmの厚さであり、かつ、組成TiySi(1−x)N(式中、0.70≦y≦0.98)及びAlzCr(1−z)N(式中、0.6≦z≦0.8)を有する、互いに交互に重なって堆積された2〜20、好ましくは3〜10の副層を含む。

0021

第1の層(2a)が好ましくは作製される組成TiySi(1−y)N及びAlzCr(1−z)Nの副層は各々、X線ディフラクトグラムにおいて検証可能な立方体面心立方結晶構造を有するのが好ましい。わずか数ナノメートルの薄さである組成TiySi(1−y)N及びAlzCr(1−z)Nの個々の副層から離隔して、又は同じくわずか数ナノメートルの薄さである個々の第1の層(2a)から離隔してX線ディフラクトグラムを作成するのは不可能であることは、当業者にとって自明である。したがって、組成TiySi(1−y)N及びAlzCr(1−z)Nの副層がX線ディフラクトグラムにおいて検証可能な立方体の面心立方結晶構造を有することが本明細書に示されている場合、これは、層の集合体全体にわたって測定され、立方体の面心立方結晶構造のみが観察されたが、例えば六方晶構造のような他の構造は何も観察されなかった。

0022

本発明の工具における立方体の面心立方結晶構造を有する第1の層(2a)は、他の結晶構造を有する層と比較して特に高い硬度及び強度を示し、工具の性能に有利であることが判明した。この利点は、結晶構造内の特に高い空間密度に起因すると考えられる。この層の利点はまた、立方格子が恒久的に乱れている結晶格子一般構造なしに原子層が互いに対して摺動することができる複数の摺動面を提供し、結晶破壊されることなく一定の限界内で塑性変形を受けることができるという事実に起因する。

0023

本発明の別の実施態様では、工具の切れ刃には、10〜100μm、好ましくは20〜60μmの範囲内の半径を有する切れ刃丸み(cutting edge rounding)が施されている。切れ刃半径が小さすぎると、刃が急速に破損する怖れがある。大きすぎる切れ刃半径は、工具の耐用年数及び切屑の形状に不都合な影響を及ぼす非常に高い切削力をもたらす。

0024

本発明の別の実施態様において、本発明の摩耗保護コーティングは、3000〜4500、好ましくは3300〜4000のビッカース硬度HVを有する。幾何学的に決定された切れ刃を使用する分離手順の中で、これらの機械加工操作は硬度、靱性、耐摩耗性及び耐温度性に関して切削材料に対する要求が最も高いものであるため、本発明のコーティングの高い硬度は、金属加工、特にドリル、旋削及びフライス加工において特に有利である。硬度が低すぎると、コーティングの耐摩耗性が低下するという欠点がある。高すぎる硬度は、コーティングの靭性が低下し、コーティングが脆くなり、特に切れ刃のインテグリティが弱いという欠点を有する。

0025

本発明の別の実施態様において、本発明の摩耗保護コーティングは、>380GPa、好ましくは>420GPaの弾性率(弾性率)を有する。チッピング作業中の外側からの工具の応力づけの間に、コーティング及び基材中に機械的応力が発生し、その量は、弾性率によって導入された弾性変形に関係する。コーティングの弾性率が低すぎる場合、使用中の工具の機械的変形中にコーティングに低応力が発生し、これは、コーティングがチッピング力の低い部分のみを吸収するという欠点を伴う。しかしながら、弾性率が高すぎる場合、これは、機械的変形の下であまりにも高い力がコーティングを介して偏向され、コーティングの早期破壊を招きかねないという欠点を有する。

0026

特にドリル、旋削及びフライス加工の場合、高硬度と高弾性率との組み合わせが特に有利である。高い硬度は、高い耐摩耗性をもたらす。しかし、高い硬度は通常、脆性の増加を伴う。同時に、弾性率の高さにより、材料はより低い脆性を示し、高い機械的負荷をさらに上手く相殺することができる。本発明のコーティングシーケンスによって、工具の摩耗保護コーティング全体にこれらの有利な特性が備わる。

0027

本発明の工具の別の好ましい実施態様では、摩耗保護コーティングは、10μmの長さに沿って測定して、≦1.0μm、好ましくは≦0.5μmの平均表面粗さRaを有する。本発明の方法及び本発明のコーティングシーケンス、並びにPVD法における堆積パラメータの適切な選択を適用することによって、堆積されたコートの液滴頻度の著しい低下を達成することができ、それにより既に堆積したままのコーティングは、低い平均表面粗さRaを受ける。したがって、後続の表面平滑化手順の際の大幅に軽減された労力でも、コーティング後に機械加工のための最適条件を達成するのに十分である。相応硬質かつ微細な材料を用いる、既知のブラスト法研磨又はブラシ法は、コートの堆積後に工具の表面を平滑にするのに適している。

0028

工具の表面を平滑にする好適な方法は、例えば、70〜110μmの直径を有する50%ガラスビーズと40〜70μmの直径を有する50%ガラスビーズからなるブラスト媒体を用いる、ガラスビーズによる約2.5barの圧力での湿式ブラスト法である。適切なブラスト持続時間は、所望の表面平滑性を調べることによって決定される。10mmの直径を有する超硬質金属製フライス工具の場合の加工時間は、例えば約10秒である。

0029

工具の表面を平滑にするためのさらに好適な方法は、ドラッグ仕上げである。好適な研磨剤は、例えば、研磨剤及び接着油としてダイヤモンド微粉を有するココナッツシェル粒状材料である。

0030

また、例えばグリットサイズが280/320及び液体中のブラスト研磨剤濃度が約18%のコランダムを用いる湿式ブラスト処理は、後処理に特に適している。ここでは、約1.5〜2barの吹き付け圧力が好都合に使用され、吹付け方向及び角度は、工具のタイプ及びサイズに応じて設定される。

0031

本発明のさらなる実施態様において、工具は、硬質金属の基体を有し、硬質金属は、好ましくは5〜15at%、特に好ましくは7〜12at%のCo、0〜2at%、特に好ましくは0.5〜1.5at%のCr、0〜3at%、特に好ましくは0.5〜2at%の周期表第4A族、第5A族及び第6A族に属する元素の炭化カルシウム、窒化物、炭窒化物オキシカーバイド酸窒化物及び/又は炭窒酸化物と、残部WCとを含む。

0032

これらの組成の硬質金属は、鉄材料のフライス加工及びドリル加工のための工具製造用下地材として特に有用であることが分かった。これらの用途の場合、これらの硬質金属は、硬度及び靭性の特に有利な比、ひいては亀裂形成及び亀裂伝播に対する良好な耐性を示す。

0033

Cr含有量は、硬質金属の焼結中の粒成長を抑制することにつながる。前述の用途、すなわち鉄材料のフライス加工及びドリル加工のための工具では、ここでも靱性と硬度との間のバランスの取れた関係を達成するため、また、工具の即時の故障なしに個々の粒子の破損に耐えることができる工具の能力を得るために、切れ刃の寸法に比べてWCの粒径を小さくするべきである。一般に、超硬質金属ドリルの硬質金属のWC粒径は、割出し可能な切削インサートに使用される硬質金属よりも小さくするべきである。

0034

好都合なことに、本発明の工具は、超硬質金属ドリル又は割出し可能な切削インサートとして、好ましくは割出し可能なドリル切削インサートとして設計されている。さらに、本発明の工具は、上述したように、強靭な鉄材料、好ましくはISOP材料、ISO K材料及びISO M材料、特にISO K材料(鋳物材料)のドリル加工作業において特定の利点を有する。

0035

本発明はまた、PVD法で、好ましくはアーク蒸着によって、硬質金属、サーメット、セラミック、鋼又は高速度鋼の基体上に多層摩耗保護コーティングを堆積させる、本発明の工具の製造方法を含み、この場合、
a) 基体の表面に、組成TiAlN(式中、0.4≦a≦0.6)と0.5μm〜4μmのコーティング厚とを有する第1のコート(1)が堆積され、
(b) 第1のコート(1)上に、互いに交互に重なって堆積された各々5〜100ずつの第1の層(2a)と第2の層(2b)とのシーケンスからなり、第1及び第2の層(2a、2b)の各々が5nm〜100nmの層厚を有する第2のコート(2)が堆積され、
ここで、第1の層(2a)の堆積は、組成TiySi(1−y)N(式中、0.70≦y≦0.98)及びAlzCr(1−z)N(式中、0.6≦z≦0.8)を有する、各々0.5nm〜15nmの厚さの副層が互いに交互に重なって堆積されることにより行われ、
第2の層(2b)は、組成TixAl(1−x)N(式中、0.4≦x≦0.6)を有する。

0036

本発明の方法の好ましい実施態様では、第2のコート(2)の上に、組成ibSi(1−b)N(式中、0.70≦b≦0.98)を有し、0.05μm〜1μm、好ましくは0.1μm〜0.5μmの厚さの第3のコート(3)が堆積される。

0037

本発明の方法はさらに、摩耗保護コーティングの堆積後に、工具を以下の後処理工程の1以上に付すことが好ましい。
a) 工具の少なくとも主切れ刃に、ブラッシングにより切れ刃丸みを施す、及び/又は
b)研磨剤湿式ブラスト、好ましくはコランダム粒子を用いた研磨剤湿式ブラストによって、すくい面又は溝の表面を平滑化する、及び/又は
c) 研磨剤若しくは圧縮乾式ブラスト(compacting dry-blasting)により、好ましくはコランダム粒子を用いた研磨剤乾式ブラストにより、又は酸化ジルコニウムビーズを用いた圧縮乾式ブラストにより、すくい面又は溝の表面を平滑化する、及び/又は
d)ドラッグ仕上げにより、すくい面又は溝の表面を平滑化する、及び/又は
e) 工具を湿式化学的洗浄する。

0038

最後に、本発明はまた、金属材料、好ましくはISOP材料(強靭性鉄材料、非合金及び低合金鋼)、ISO K材料(鋳鉄)及びISO−M 材料(ステンレス鋼)のドリル加工のための本発明の工具の使用を含む。

図面の簡単な説明

0039

硬質金属、サーメット、セラミック、鋼又は高速度鋼の基体4上の本発明のコーティング及び第1のコート1と、互いに交互に重なって配置された第1の層2aと第2の層2bとのシーケンスからなる第2のコート2と、ここではカバーコートとして形成された硬質材料コートとで作られ、PVD法で基体上に堆積された多層摩耗保護コーティングの概略図を示す。図1の上側の図中で「A」で示された円は、図1の下側の図で拡大して実質的にTiSiN副層及びAlCrN副層からなる第1の層2aを描いたものであり、これらの副層は各々、互いに交互に重なって配置され、ここでは各々「TiSiN−Sub」及び「AlCrN−Sub」と表す。
実施例に記載した本発明のコーティングERF2のX線ディフラクトグラムを示し、このX線ディフラクトグラムは、Bragg−Brentano配置(シータ−2シータ)で記録されている。測定された反射は、純粋な立方晶構造に期待されるものに正確に対応する。

0040

定義と方法
硬度及び弾性率の測定
硬度及び弾性率(より正確には、いわゆる損失(reduced)弾性率)は、ナノインデンテーション法で測定される。この測定では、ビッカースによるダイヤモンド試験体を層内に押し込み、測定中に力経路曲線を記録する。この曲線から、試験体の機械的特性値、とりわけ硬度及び(損失)弾性率を算出することが可能になる。本発明の層の硬度及び弾性率を測定するために、ドイツ、ジンデルフィンゲンのHelmut Fischer GmbH製のFischerscope(登録商標)Picodentor HM500 XYpを使用した。押し込み深さ(impression depth)は、層厚の10%を超えてはならないことに留意されたい。さもなくば、基材の特性が測定値を誤らせる可能性がある。測定は、15mNの試験荷重を用いて行っている。第1の工程では試験荷重を20秒以内に直線的に上昇させ、その後試験荷重を10秒間維持し、第3の工程で試験荷重を再び20秒以内にゼロに低下させ、試験体を持ち上げる。

0041

表面粗さの測定
表面粗さは、ドイツ、ジンデルフィンゲンのHelmut Fischer GmbH製の測定装置Hommel−ETAMICTURBO WAVEV7.32(プローブ:TKU300−96625_TKU300/TS1;測定範囲:80μm;試験経路:4.8mm;速度:0.5mm/s)を用い、研磨された試験表面で測定された。

0042

実施例1
本発明の工具及び比較工具の製造
本実施例では、超硬質金属(SHM)ドリル(SUB1)用基材及び硬質金属割出し可能な切削インサート(SUB2)用基材に、本発明のコーティング及び従来技術の比較コーティングを施した。
[超硬質金属(SHM)ドリル(SUB1)の仕様]
直径: 8.5mm
標準穴あけ深さ: 5xd
切れ刃の数: 2
切れ刃の長さ: 直径の50%
溝の螺旋角: 約30°
先端角度: 140°
基材材料: 90at%のWC、9.2at%のCo及び0.8at%のCrを含み、0.7μmの平均WC粒径を有する硬質金属
[硬質金属割出し可能な切削インサート(SUB2)の仕様]
形状: P6001
基材材料: 88at%のWC、10.5at%のCo及び1.5at%の混合炭化物(TiC、TaC及びNbC)を含み、約5μmの平均WC粒径を有する硬質金属
[硬質金属割出し可能な切削インサートホルダ(SUB2)の仕様]
直径: 18mm
標準穴あけ深さ: 5xd
切れ刃の数: 2
切れ刃の長さ: 直径の50%
溝の螺旋角: 約20°
先端角度: 140°

0043

[基材の前処理及び後処理]
基材のコーティングの前に、主切れ刃をブラッシングにより半径20〜60μmに丸め、コランダムを用いる湿式ブラストにより溝を平滑化し、基材を湿式化学的に洗浄した。基材のコーティング後、コランダムを用いる湿式ブラストにより溝を平滑化した。前処理及び後処理は、本発明に従ってコーティングされた工具及び比較工具について同じ方法で実施された。

0044

[本発明のコーティング(ERF1及びERF2)の製造]
コーティング全体は、堆積プロセスを中断することなく、1回の試験でアーク蒸着によって堆積された。
第1のコート:まず、1.7μm厚の単層の第1のTiAlNコート(1)を、2つのTiAl混合ターゲットから基材表面上に堆積させた(Ti:Al=50:50)(バイアス:50V DC;4Paの窒素;各160Aの蒸発器電流堆積温度:550℃)。
第2のコート:第1のコートの上に、互いに交互に重なって配置された各々40ずつのTiAlCrSiNの第1の層(2a)とTiAlNの第2の層(2b)とのシーケンスからなる多層の第2のコート(2)が堆積された。
第1のTiAlCrSiN層(2a)の各々は、互いに交互に重なって堆積された4つのTiSiN副層と4つのAlCrN副層とからなっていた。TiSiN副層は2つのTiSi混合ターゲット(Ti:Si=85:15)から堆積され、AlCrN副層は2つのAlCr混合ターゲット(Al:Cr=70:30)から堆積された(バイアス:60V DC;4Paの窒素;各160Aの蒸発器電流;堆積温度550℃)。第1のTiAlCrSiN層(2a)の各々が約40nmの厚さを有するように、個々の副層の厚さは約5nmであった。
第2のTiAlN層(2b)は、2つのTi−Al混合ターゲット(Ti:Al=50:50)から堆積された(バイアス:60V DC;4Paの窒素;各160Aの蒸発器電流;堆積温度550℃)。第2のTiAlN層(2b)の各々の厚さは、約40nmであった。
第3のコート:第1の本発明のコーティング(ERF1)の場合、2つのTi−Si混合ターゲット(Ti:Si=85:15)から0.2μmの厚さを有する装飾コートとして、単層の第3のTiSiNコート(3)が第2のコートの上に堆積された(バイアス:30V DC;3.5Paの窒素;各180Aの蒸発器電流;堆積温度480℃)。このコートの堆積の場合、堆積温度は、冷却プロセス加速し、かつ総プロセス時間を少し短縮するために、先のコートよりもわずかに低い温度が選択された。
第2の本発明のコーティング(ERF2)は、第1のコート(1)と第2のコート(2)のみを含み、第3のコート(3)は含まなかった。第2のコート(2)の測定、例えば硬度測定又はX線構造分析には、第1のコート(1)及びその上に堆積された第2のコート(2)のみを有し、第3のコート(3)は有しない第2の本発明のコーティング(ERF2)を有するコーティング工具が使用される。機械加工試験の場合、本発明のコーティングのうちのいずれ(ERF1又はERF2)が使用されたかが個別に示される。
PVD法における堆積温度は、コーティング前の基材の清浄度に大きな影響を及ぼす。温度が高いほど、前の作業工程から工具についた不純物がより多く除去されるか、又は単に蒸発するだけである。HSS鋼製の基材の場合、堆積温度は、十分な洗浄と基材への熱損傷の回避との間の折衷であることが多い。硬質金属基材の場合、そのような折衷をする必要はない。

0045

[比較コーティング(VGL1、VGL2及びVGL3)の製造]
比較コーティング1(VGL1):
基材表面上に、接着力向上のためのプライマー層系が最初に堆積され、この系は、TiN層とTiAlN層とからなる。TiN層は、2つのTiターゲットから堆積された(バイアス:200V DC;0.8Paの窒素;各180Aの蒸発器電流;堆積温度:450℃)。TiN層の厚さは、約100nmであった。TiAlN層は、2つのTi−Al混合ターゲット(Ti:Al=50:50)から堆積された(バイアス:40V DC;3.2Paの窒素;200Aの蒸発器電流(Tiターゲット)、210Aの蒸発器電流(TiAlターゲット);堆積温度:450℃)。TiAlN層の厚さは、約40nmであった。
続いて、TiAlNとTiNとからなる層の各々11ずつのシーケンスからなる多層コートが、互いに交互に重なって堆積された。TiAlN層は、2つのTi−Al混合ターゲット(Ti:Al=50:50)と2つのTiターゲットから堆積され、TiN層は、2つのTiターゲットから堆積された(バイアス:40V DC;3.2Paの窒素;200Aの蒸発器電流(Tiターゲット)、210Aの蒸発器電流(TiAlターゲット);堆積温度:450℃)。各TiAlN層の厚さは約200nmであり、各TiN層の厚さは約100nmであり、その結果コーティングは約3,300nmの全厚を有した。
2つのTiターゲットからのカバー層として、より高いAl含有量を有するTiAlNのコートが堆積された(バイアス:40V DC;3.2Paの窒素;210Aの蒸発器電流;堆積温度:450℃)。TiAlN層の厚さは、約500nmであった。

0046

比較コーティング2(VGL2):
基材表面には、接着力を向上させるためにプライマー層が最初に堆積された。このプライマー層のパラメータは、4つのAlCr混合ターゲット(Al:Cr=70:30);蒸発器電流:各160A;圧力:3.5Paの窒素;50V DCのバイアス;温度:480℃;層厚:約100nmであった。
続いて、互いに交互に重なって堆積されたTiSiNとAlCrNの層の各々10ずつのシーケンスからなる多層コートが堆積された。これらの層の各々は、4つの副層からなっていた。第1の副層は、180Aの蒸発器電流を有する2つのTiSi混合ターゲット(Ti:Si=85:15)と、150Aの蒸発器電流を有する4つのAlCr混合ターゲット(Al:Cr=70:30)とから製造された。残りのパラメータは、圧力:3.5Paの窒素;30VDCバイアス;温度:480℃;副層の厚さ:約50nmであった。第2の副層は、180Aの蒸発器電流を有する2つのTiSi混合ターゲット(Ti:Si=85:15)から製造された。残りのパラメータは、圧力:3.5Paの窒素;バイアス:30V DC;温度:480℃;副層の厚さ:約50nmであった。第3の副層は、第1の層と同じ構造及び同じコーティング厚を有していた。第4の副層は、4つのAlCr混合ターゲット(Al:Cr=70:30)を用いて製造された。パラメータは、蒸発器電流:160A;圧力:3.5Paの窒素;バイアス:40V DC;温度:480℃;副層の厚さ:約200nmであった。
さらに、カバー層が、多層系上に堆積された。このカバー層のパラメータは、2つのTiSi混合ターゲット(Ti:Si=85:15);蒸発器電流:各180A;圧力:3.5Paの窒素;バイアス;50V DC;温度:480℃;層厚:約300nmであった。

0047

比較コーティング3(VGL3):
比較コーティング3(VGL3)は、比較コーティング1と2の組み合わせであった。まず、比較コーティング1(VGL1)を上記の方法に従って基材表面に堆積させた。続いて、コーティングされた基体を冷却し、コーティング反応器から取り出し、溝内での湿式ブラストにより平滑化し、最後にコーティング反応器に再導入して、上述の方法に従って比較コーティング2(VGL2)を堆積させた。

0048

[コーティングの機械的性質]
本発明のコーティングERF2(第3のコート(3)なし)、比較コーティングVGL1及びVGL2の硬度及び弾性率を上記のように測定し、以下の表1に示す。
なお、コーティング工具の最高動作温度は、文献指示に基づいて推定した。動作の多くの場合、既知のTiAlNコーティングは、最大900℃の動作温度を有する。
表1

0049

実施例2
機械加工試験
実施例1に従って製造された工具を機械加工試験(ドリル加工)において比較した。
機械加工試験1
コーティングERF2、VGL1、VGL2、VGL3をそれぞれ有する超硬質金属ドリル(SUB1)を用い、850N/mm2の強度を有する合金鋼材42 CrMo4(EN10027−2によると1.7225)に深さ18mmの止まり穴を形成した(vc=120m/分;f=0.23mm/U;KSS5%、20barでの内部冷却)。
Vb>0.2mmの平均逃げ面摩耗又は最大逃げ面摩耗Vbmax>0.25mmで機械加工を終了し、それまで達した工具の寿命距離を決定した。結果を3回の試験の平均工具寿命距離として、以下の表2に示す。
表2

本発明のコーティングを有する工具は、比較コーティングを有する工具よりも著しく長い平均工具寿命距離に達した。

0050

機械加工試験2
コーティングERF2及びVGL3をそれぞれ有する超硬質金属ドリル(SUB1)を用い、600N/mm2の強度を有する非合金鋼材(EN10020によるとC45E、DIN17200によるとCk 45に相当)に深さ40mmの止まり穴を形成した(vc=175m/分;f=0.3mm/U;KSS5%、20barでの内部冷却)。
Vb>0.2mmの平均逃げ面摩耗又は最大逃げ面摩耗Vbmax>0.25mmで機械加工を終了し、それまで達した工具の寿命距離を決定した。結果を3回の試験の平均工具寿命距離として、以下の表3に示す。
表3

本発明のコーティングを有する工具は、比較コーティングを有する工具よりも著しく長い平均工具寿命距離に達した。本発明によりコーティングされた工具の結果間のばらつきも、比較工具の場合よりも低かった。

0051

機械加工試験3
コーティングERF2及びVGL3をそれぞれ有する割出し可能な切削インサート(SUB2)及び上記のホルダを用い、鋳鉄材(EN1561によるとEN−GJL−250、DIN1691によるとGG25に相当)に深さ52mmの止まり穴を形成した(vc=160m/分;f=0.28mm/U;KSS5%、20barでの内部冷却)。
Vb>0.3mmの平均逃げ面摩耗又は最大逃げ面摩耗Vbmax>0.4mmで機械加工を終了し、それまで達した工具の寿命距離を決定した。結果を3回の試験の平均工具寿命距離として、以下の表4に示す。
表4

本発明のコーティングを有する工具は、比較コーティングを有する工具よりも有意に長い平均工具寿命距離に達した。

0052

機械加工試験4
コーティングERF1、ERF2及びVGL3をそれぞれ有する超硬質金属ドリル(SUB1)を用い、600N/mm2の強度を有する非合金鋼材(EN10020によるとC45E、DIN17200によるとCk 45に相当)に深さ20mmの止まり穴を形成した(vc=170m/分;f=0.3mm/U;KSS5%、20barでの内部冷却)。
Vb>0.25mmの平均逃げ面摩耗又は最大逃げ面摩耗Vbmax>0.3mmで機械加工を終了し、それまで達した工具の寿命距離を決定した。結果を以下の表5に示す。
表5

本発明のコーティングを有する工具は、比較コーティングを有する工具よりも有意に長い平均工具寿命距離に達した。本発明によりコーティングされた工具の結果間のばらつきも、比較工具の場合よりも、特に本発明のコーティングERF1を有する工具の場合よりも低かった。

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