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課題・解決手段

本発明は、血液眼関門への及び血液眼関門を渡る治療剤の標的化された薬物送達の手段及び方法に関する。特に、本発明は、網膜疾患処置するための治療剤としての環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログに関する。グルタチオンベースリガンドによる血液眼関門に対して標的化されたcGMPSにより、血液眼関門に存在するグルタチオントランスポーターへの特異的結合及びグルタチオントランスポーターによる増強された内在化が促進される。グルタチオンベースリガンドは、cGMPSを封入するリポソームなどのナノ容器コンジュゲートされている。

概要

背景

網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa、RP)は、重度障害遺伝性神経変性疾患群の1つである。典型的に、暗所条件下で見ることを可能にする桿体光受容体細胞が、疾患過程の最初で変性する。次いで、桿体の喪失により、明所高解像度色覚の源である錐体光受容体細胞二次的変性が引き起こされ、最後には、完全な失明に至る。

網膜色素変性症は、広範な異種セットの変異によって引き起こされ、現在、70を超える遺伝子が特定されている(参考:retinal information network:https://sph.uth.edu/retnet)。原因となる変異の多くが明らかにされてきた一方で、後の変性機構についての情報は依然として非常にわずかしかない。これまでに知られる詳細は、ほとんどがヒト網膜色素変性症患者コホートと類似の遺伝子変異を示すモデル動物(通常は、齧歯類系である)に対する試験から得られたものである。

網膜色素変性症で変異している遺伝子は、大抵が光受容体機能と関連しているが、細胞機能全体に関係している遺伝子もある(Kennanら、2005、TrendsGenet.21、103−110)。分子cGMP(cyclic guanosine−monophosphate、環状グアノシンモノホスフェート)は、光受容体細胞が光を受けたときに同細胞内で生じる光伝達カスケードにおいて直接的な役割を果たしている。多くの場合に、網膜色素変性症の変異により、例えば、光受容体cGMP代謝に関与する酵素の遺伝子が影響を受ける状況において、光受容体にcGMPの過剰な蓄積が生じる(Arango−Gonzalezら、2014PLoS One.9、e112142)。この状況は、cGMPをGMP加水分解する光受容体酵素であるホスホジエステラーゼ6(錐体光受容体に関する遺伝子PDE6B、PDE6A、PDE6G及びPDE6C、PDE6Hによってサブユニットがコードされている)の変異に当てはまる。Pde6b遺伝子は、多くの実験で良く研究されているrd1網膜色素変性症モデルマウスにおいて変異している。推定される一連事象において、PDE6B変異網膜におけるcGMPの蓄積は、実際の遺伝子欠損の直接的結果として生じ、したがって初期の機構的に根本的な変性要素とみられうる。次の(1つ又は複数の)工程において、増加したcGMPは、以下の4つの標的のうちの少なくとも1つを有すると予想されうる:1)cGMPにより活性化されたときに特定のタンパク質リン酸化するcGMP依存性プロテインキナーゼプロテインキナーゼGPKG)、2)cGMPにより活性化されたときNa+及びCa2+のcGMP制御流入を可能にする環状ヌクレオチド開口性イオンチャネル(CNGC)、3)ホスホジエステラーゼ(PDE)、並びに4)過分極活性化環状ヌクレオチド開口性(HCN)チャネル。最初の2つのcGMP標的は、光受容体変性に直接的に関連しているが(Paquet−Durandら、2009、J.Neurochem.108、796−810;Paquet−Durandら、2011、Hum.Mol.Genet.20、941−947)、他は既知のcGMP標的であり、したがって潜在的に変性過程に関与している。初期の事象に直接的に関連していることから、PKG及びCNGCは、たとえ下流の機構が依然としてほとんど解明されていなくても(Trifunovicら、2012、Curr.Mol.Med.12、598−612)、疾患駆動因子と考えることができる。

網膜色素変性症に対する様々な実験的処置アプローチが現在研究されており、様々な開発段階にあり、例えば、遺伝子治療幹細胞研究、光遺伝学が挙げられる。しかしながら、現在のところ、臨床的承認された利用可能な処置はない。

従前において、ある特定のcGMP由来PKG阻害剤、例えば、Rp−8−Br−cGMPSが、in vitro及びin vivo網膜色素変性症モデルマウスの両方において、rd1及びrd2光受容体にいくらかの保護を与えることが見出された(Paquet−Durandら、2009)。しかしながら、これらのPKG阻害剤は、テノン嚢下又は硝子体内注射によるPKG阻害剤の頻繁な再投与(つまり、2日ごと)を必要とすると考えられ、慢性疾患に対して実用的なものではない。

概要

本発明は、血液眼関門への及び血液眼関門を渡る治療剤の標的化された薬物送達の手段及び方法に関する。特に、本発明は、網膜疾患を処置するための治療剤としての環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログに関する。グルタチオンベースリガンドによる血液眼関門に対して標的化されたcGMPSにより、血液眼関門に存在するグルタチオントランスポーターへの特異的結合及びグルタチオントランスポーターによる増強された内在化が促進される。グルタチオンベースリガンドは、cGMPSを封入するリポソームなどのナノ容器コンジュゲートされている。 なし

目的

本発明の目的は、網膜色素変性症を処置及び予防するための新規手段及び方法を提供する

効果

実績

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請求項1

cGMP作動性細胞標的の調節不全に関連する病理、状態又は障害処置又は診断するための治療剤又は診断剤を含む、薬学的に許容されるナノ容器であって、好ましくは前記標的が、cGMP依存性プロテインキナーゼPKG)、過分極活性環状ヌクレオチド開口性(HCN)チャネルホスホジエステラーゼ(PDE)、及びcGMP開口性チャネル(CNGC)のうちの少なくとも1つである、ナノ容器。

請求項2

グルタチオントランスポーターに対するリガンドコンジュゲートされている、請求項1に記載のナノ容器。

請求項3

治療剤が、式I:(式中、R6及びR7の両方が水素であり、X1が−CF3又は−NR9R10若しくは−SR11基であり、R9が水素であり、R10及びR11の両方が末端NH2若しくはOH基を有するアルキル基であるか、又はR11がに示すように置換基Qを4位に有するフェニル基であり、Qが、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−SH、NH2、NO2、−OCH3、CH3若しくはCF3であり、又はR9及びR10の両方が互いに接続して環を形成するアルキル基であり、R8が水素、(トリアルキルシリル基又はアシル基であり、Lが酸素硫黄ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であって、MがOHであるか、又はLがOHであって、Mが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であり、Kat+が、プロトン又は別の生理学的に許容される金属カチオン若しくはトリアルキルアンモニウムイオンであり、或いは、R6及びR7が一緒になって、スチリレン基であり、式II:による縮合三環式環系を形成し、X2が、水素、−F、−Cl、−Br、−I、CF3、又は−NR9R10若しくは−SR11基又は4−クロロフェニルチオ基であり、R9が水素であり、R10及びR11の両方が末端NH2又はOH基を有するアルキル基であり、R8が水素、(トリ)アルキルシリル基、又はアシル基であり、Lが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であって、MがOHであるか、又はLがOHであって、Mが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であり、Kat+が、プロトン又は別の生理学的に許容される金属カチオン若しくはトリアルキルアンモニウムイオンである)の環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログである、請求項1又は2に記載のナノ容器。

請求項4

環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログが、式III:若しくは式IV:の環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログ、又は式III及びIVのアナログのナトリウム塩以外の他の薬学的に許容される塩である、請求項3に記載のナノ容器。

請求項5

リガンドが、グルタチオン、S−(p−ブロモベンジル)グルタチオン、ガンマ−(L−ガンマ−アザグルタミル)−S−(p−ブロモベンジル)−L−システイニルグリシン、S−ブチルグルタチオン、S−デシルグルタチオン、還元型グルタチオンエチルエステル、グルタチオンスルホン酸、S−ヘキシルグルタチオン、S−ラクトイルグルタチオン、S−メチルグルタチオン、S−(4−ニトロベンジル)グルタチオン、S−オクチルグルタチオン、S−プロピルグルタチオン、n−ブタノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、エタノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、ヘキサノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、オクタノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、ドデカノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、GSHモノイソプロピルエステル(N−(N−L−グルタミル−L−システイニルグリシン1−イソプロピルエステル硫酸一水和物)、並びに式V:(式中、Z=CH2及びY=CH2、又はZ=O及びY=C=Oであり、Ri及びR2が独立して、H、直鎖若しくは分岐アルキル(1〜25C)、アラルキル(6〜26C)、シクロアルキル(6〜25C)、複素環(6〜20C)、エーテル又はポリエーテル(3〜25C)からなる群から選択され、ここでR1−R2は一緒になって、2〜20C原子を有し、式VIの残部と共に大環状分子を形成し、R3が、H及びCH3からなる群から選択され、R4が、6〜8Cアルキルベンジルナフチル及び治療的に活性な環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエートからなる群から選択され、R5が、H、フェニル、CH3−及びCH2−フェニルからなる群から選択される)のグルタチオン誘導体又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択され、好ましくは式1の誘導体において、R3がHであり、R4がベンジルであり、R5がフェニルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ容器。

請求項6

ナノ容器が、治療剤又は診断剤を封入するリポソームであり、グルタチオントランスポーターに対するリガンドは、コンジュゲーション剤の1端に結合されたビタミンE誘導体若しくはリン脂質とコンジュゲーション剤の他端に結合されたグルタチオントランスポーターに対するリガンドとを含む二官能性コンジュゲーション剤を介してリポソームにコンジュゲートされており、好ましくは、コンジュゲーション剤が約6〜210の重合数(n)を有するポリエチレングリコールであり、より好ましくは、ポリエチレングリコールが1,000〜5,000Daの分子量を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のナノ容器。

請求項7

コンジュゲーション剤が、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド(DSPE−PEG−MAL)を、マレイミド反応性チオール基を有するグルタチオン受容体に対するリガンドと反応させることにより取得可能であり、好ましくは、DSPE−PEG−MALが約2,000Daの分子量を有する、請求項6に記載のナノ容器。

請求項8

グルタチオン受容体に対するリガンドが、グルタチオンである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のナノ容器。

請求項9

請求項1〜8のいずれか一項に記載のナノ容器と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物

請求項10

医薬として使用するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載のナノ容器。

請求項11

cGMP作動性細胞標的の調節不全に関連する病理、状態又は障害の処置に使用するためのナノ容器であって、好ましくは標的が、PKG及びCNGCのうちの少なくとも1つである、請求項1〜8のいずれか一項に記載のナノ容器。

請求項12

a)網膜色素変性症又は別の遺伝性網膜疾患、b)代謝性又は神経変性疾患症候群又は眼疾患の結果としての続発性網膜色素変性症、c)糖尿病性網膜症加齢性黄斑変性症黄斑円孔パッカー、眼悪性病変網膜芽腫網膜剥離及び河川盲目症を含む網膜疾患、d)神経性又は神経変性障害嗅覚脱失炎症性及び神経障害性疼痛軸索再生及び脊髄損傷後回復、e)マラリアアフリカ睡眠病及びシャーガス病などの寄生虫疾患、並びに、f)心血管疾患高血圧低血圧狭心症肺高血圧症勃起不全虚血発作アテローム性動脈硬化がん又は急性ショックのうちの少なくとも1つの処置に使用するための、請求項1〜8のいずれか一項に記載のナノ容器。

請求項13

全身又は局所的に投与される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の使用のためのナノ容器。

請求項14

a)硝子体内静脈内、腹腔内及び動脈経路のうちの少なくとも1つによる注射又は注入、並びにb)表面適用又は眼適用のうちの少なくとも1つにより投与される、請求項13に記載の使用のためのナノ容器。

請求項15

0.1〜1000mg/kgの用量で、1又は2日あたり1回投与される、請求項10〜14のいずれか一項に記載の使用のためのナノ容器。

請求項16

0.0005〜0.02mg/kgの用量で、2週間に1回又は6週間に1回、硝子体内投与される、請求項10〜14のいずれか一項に記載の使用のためのナノ容器。

技術分野

0001

本発明は、医学及び薬学の分野に関する。特に本発明は、標的化された薬物送達の分野に関する。本発明は、血液眼関門への及び血液眼関門を渡る、増強された結合、エンド−又はトランスサイトーシスを特異的に媒介する、グルタチオントランスポーターに対するリガンド任意選択で連結された、ナノ容器に含まれた医薬品有効成分のコンジュゲートに関する。これらのコンジュゲートは、好ましくは、網膜の疾患を処置又は予防する方法に使用される。

背景技術

0002

網膜色素変性症(Retinitis pigmentosa、RP)は、重度障害遺伝性神経変性疾患群の1つである。典型的に、暗所条件下で見ることを可能にする桿体光受容体細胞が、疾患過程の最初で変性する。次いで、桿体の喪失により、明所高解像度色覚の源である錐体光受容体細胞二次的変性が引き起こされ、最後には、完全な失明に至る。

0003

網膜色素変性症は、広範な異種セットの変異によって引き起こされ、現在、70を超える遺伝子が特定されている(参考:retinal information network:https://sph.uth.edu/retnet)。原因となる変異の多くが明らかにされてきた一方で、後の変性機構についての情報は依然として非常にわずかしかない。これまでに知られる詳細は、ほとんどがヒト網膜色素変性症患者コホートと類似の遺伝子変異を示すモデル動物(通常は、齧歯類系である)に対する試験から得られたものである。

0004

網膜色素変性症で変異している遺伝子は、大抵が光受容体機能と関連しているが、細胞機能全体に関係している遺伝子もある(Kennanら、2005、TrendsGenet.21、103−110)。分子cGMP(cyclic guanosine−monophosphate、環状グアノシンモノホスフェート)は、光受容体細胞が光を受けたときに同細胞内で生じる光伝達カスケードにおいて直接的な役割を果たしている。多くの場合に、網膜色素変性症の変異により、例えば、光受容体cGMP代謝に関与する酵素の遺伝子が影響を受ける状況において、光受容体にcGMPの過剰な蓄積が生じる(Arango−Gonzalezら、2014PLoS One.9、e112142)。この状況は、cGMPをGMP加水分解する光受容体酵素であるホスホジエステラーゼ6(錐体光受容体に関する遺伝子PDE6B、PDE6A、PDE6G及びPDE6C、PDE6Hによってサブユニットがコードされている)の変異に当てはまる。Pde6b遺伝子は、多くの実験で良く研究されているrd1網膜色素変性症モデルマウスにおいて変異している。推定される一連事象において、PDE6B変異網膜におけるcGMPの蓄積は、実際の遺伝子欠損の直接的結果として生じ、したがって初期の機構的に根本的な変性要素とみられうる。次の(1つ又は複数の)工程において、増加したcGMPは、以下の4つの標的のうちの少なくとも1つを有すると予想されうる:1)cGMPにより活性化されたときに特定のタンパク質リン酸化するcGMP依存性プロテインキナーゼプロテインキナーゼGPKG)、2)cGMPにより活性化されたときNa+及びCa2+のcGMP制御流入を可能にする環状ヌクレオチド開口性イオンチャネル(CNGC)、3)ホスホジエステラーゼ(PDE)、並びに4)過分極活性化環状ヌクレオチド開口性(HCN)チャネル。最初の2つのcGMP標的は、光受容体変性に直接的に関連しているが(Paquet−Durandら、2009、J.Neurochem.108、796−810;Paquet−Durandら、2011、Hum.Mol.Genet.20、941−947)、他は既知のcGMP標的であり、したがって潜在的に変性過程に関与している。初期の事象に直接的に関連していることから、PKG及びCNGCは、たとえ下流の機構が依然としてほとんど解明されていなくても(Trifunovicら、2012、Curr.Mol.Med.12、598−612)、疾患駆動因子と考えることができる。

0005

網膜色素変性症に対する様々な実験的処置アプローチが現在研究されており、様々な開発段階にあり、例えば、遺伝子治療幹細胞研究、光遺伝学が挙げられる。しかしながら、現在のところ、臨床的承認された利用可能な処置はない。

0006

従前において、ある特定のcGMP由来PKG阻害剤、例えば、Rp−8−Br−cGMPSが、in vitro及びin vivo網膜色素変性症モデルマウスの両方において、rd1及びrd2光受容体にいくらかの保護を与えることが見出された(Paquet−Durandら、2009)。しかしながら、これらのPKG阻害剤は、テノン嚢下又は硝子体内注射によるPKG阻害剤の頻繁な再投与(つまり、2日ごと)を必要とすると考えられ、慢性疾患に対して実用的なものではない。

発明が解決しようとする課題

0007

現在のところ、網膜色素変性症に対して利用可能な承認された予防又は処置方法はない。したがって、網膜色素変性症の適切な処置、特に投与様式のより簡便な処置が、当該分野で依然として必要とされている。したがって、本発明の目的は、網膜色素変性症を処置及び予防するための新規手段及び方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0008

第1の態様では、本発明は、cGMP作動性細胞標的の調節不全に関連する病理、状態又は障害を処置又は診断するための治療剤又は診断剤を含む、薬学的に許容されるナノ容器であって、好ましくは、上記標的が、cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)、過分極活性化環状ヌクレオチド開口性(HCN)チャネル、ホスホジエステラーゼ(PDE)、及びcGMP開口性チャネル(CNGC)のうちの少なくとも1つである、ナノ容器に関する。ナノ容器は、グルタチオントランスポーターに対するリガンドにコンジュゲートされていることが好ましい。本発明によるナノ容器では、治療剤は、好ましくは、環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログであり、より好ましくは、式I:




(式中、R6及びR7の両方が水素であり、X1が−CF3又は−NR9R10若しくは−SR11基であり、R9が水素であり、R10及びR11の両方が末端NH2若しくはOH基を有するアルキル基であるか、又はR11が、




に示すように置換基Qを4位に有するフェニル基であり、
Qが、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−SH、NH2、NO2、−OCH3、CH3若しくはCF3であり、又は
R9及びR10の両方が互いに接続して環を形成するアルキル基であり、R8が水素、(トリアルキルシリル基又はアシル基であり、
Lが酸素硫黄ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であって、MがOHであるか、又は
LがOHであって、Mが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であり、
Kat+が、プロトン又は別の生理学的に許容される金属カチオン若しくはトリアルキルアンモニウムイオンであり、或いは、
R6及びR7が一緒になって、スチリレン基であり、式II:




による縮合三環式環系を形成し、
X2が、水素、−F、−Cl、−Br、−I、CF3、−NR9R10若しくは−SR11基又は4−クロロフェニルチオ基であり、R9が水素であり、R10及びR11の両方が末端NH2又はOH基を有するアルキル基であり、
R8が水素、(トリ)アルキルシリル基、又はアシル基であり、
Lが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であって、MがOHであるか、又は
LがOHであって、Mが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であり、
Kat+が、プロトン又は別の生理学的に許容される金属カチオン若しくはトリアルキルアンモニウムイオンである)
の環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログである。

0009

特に式III:




若しくは式IV:




の環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログ、又は式III及びIVのアナログのナトリウム塩以外の他の薬学的に許容される塩が好ましい。

0010

本発明によるナノ容器では、グルタチオントランスポーターに対するリガンドは、好ましくは、グルタチオン、S−(p−ブロモベンジル)グルタチオン、ガンマ−(L−ガンマ−アザグルタミル)−S−(p−ブロモベンジル)−L−システイニルグリシン、S−ブチルグルタチオン、S−デシルグルタチオン、還元型グルタチオンエチルエステル、グルタチオンスルホン酸、S−ヘキシルグルタチオン、S−ラクトイルグルタチオン、S−メチルグルタチオン、S−(4−ニトロベンジル)グルタチオン、S−オクチルグルタチオン、S−プロピルグルタチオン、n−ブタノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、エタノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、ヘキサノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、オクタノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、ドデカノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン、GSHモノイソプロピルエステル(N−(N−L−グルタミル−L−システイニルグリシン1−イソプロピルエステル硫酸一水和物)、並びに式V:




(式中、Z=CH2及びY=CH2、又はZ=O及びY=C=Oであり、
Ri及びR2が独立して、H、直鎖若しくは分岐アルキル(1〜25C)、アラルキル(6〜26C)、シクロアルキル(6〜25C)、複素環(6〜20C)、エーテル又はポリエーテル(3〜25C)からなる群から選択され、ここでRi−R2が一緒になって、2〜20C原子を有し、式VIの残部と共に大環状分子を形成し、
R3が、H及びCH3からなる群から選択され、
R4が、6〜8Cアルキルベンジルナフチル及び治療的に活性な環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエートからなる群から選択され、
R5が、H、フェニル、CH3−及びCH2−フェニルからなる群から選択される)
のグルタチオン誘導体又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるリガンドであり、式Iの誘導体において、R3がHであり、R4がベンジルであり、R5がフェニルであることが好ましい。

0011

本発明による好ましいナノ容器は、治療剤又は診断剤を封入するリポソームであり、ここでグルタチオントランスポーターに対するリガンドが、コンジュゲーション剤の1端に結合されたビタミンE誘導体若しくはリン脂質とコンジュゲーション剤の他端に結合されたグルタチオントランスポーターに対するリガンドとを含む二官能性コンジュゲーション剤を介してリポソームにコンジュゲートされていることが好ましく、コンジュゲーション剤が約6〜210の重合数(n)を有するポリエチレングリコールであることがさらに好ましく、ポリエチレングリコールが1,000〜5,000Daの分子量を有することが最も好ましい。ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド(DSPE−PEG−MAL)を、マレイミド反応性チオール基を有するグルタチオン受容体に対するリガンドと反応させることにより取得されうるコンジュゲーション剤が特に好ましく、DSPE−PEG−MALが、約2,000Daの分子量を有することが好ましい。グルタチオン受容体の好ましいリガンドは、グルタチオンである。

0012

第2の態様では、本発明は、本発明によるナノ容器と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。

0013

第3の態様では、本発明は、医薬として使用するための、本発明によるナノ容器又はナノ容器を含む医薬組成物に関する。

0014

第4の態様では、本発明は、cGMP作動性細胞標的の調節不全に関連する病理、状態又は障害の処置に使用するための、本発明によるナノ容器又はナノ容器を含む医薬組成物であって、好ましくは、上記標的はcGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)、過分極活性化環状ヌクレオチド開口性(HCN)チャネル、ホスホジエステラーゼ(PDE)及びcGMP開口性チャネルのうちの少なくとも1つである、ナノ容器又はナノ容器を含む医薬組成物に関する。上記ナノ容器又は組成物は、a)網膜色素変性症又は別の遺伝性網膜疾患、b)代謝性又は神経変性疾患、症候群又は眼疾患の結果としての続発性網膜色素変性症、c)糖尿病性網膜症加齢性黄斑変性症黄斑円孔パッカー、眼悪性病変網膜芽腫網膜剥離及び河川盲目症を含む網膜疾患、d)神経性又は神経変性障害嗅覚脱失炎症性及び神経障害性疼痛軸索再生及び脊髄損傷後回復、e)マラリアアフリカ睡眠病及びシャーガス病などの寄生虫疾患、並びにf)心血管疾患高血圧低血圧狭心症肺高血圧症勃起不全虚血発作アテローム性動脈硬化がん又は急性ショックのうちの少なくとも1つの処置に使用することが好ましい。

0015

医薬として使用するための又は本発明による処置として使用するためのナノ容器又はナノ容器を含む医薬組成物は、全身的又は局所的に投与されることが好ましく、ここでナノ容器又はナノ容器を含む医薬組成物は、a)硝子体内静脈内、腹腔内、及び動脈経路のうちの少なくとも1つによる注射若しくは注入、並びにb)表面適用又は眼適用、のうちの少なくとも1つにより投与されることが好ましい。

0016

本発明による処置は、ナノ容器又はナノ容器を含む医薬組成物の全身又は局所投与を含むことが好ましく、a)硝子体内、静脈内、腹腔内、及び動脈内経路のうちの少なくとも1つによる注射若しくは注入、並びにb)表面適用又は眼適用、のうちの少なくとも1つにより投与されることが好ましい。

0017

ナノ容器は、好ましくは、0.1〜1000mg/kgの用量で、1又は2日あたり1回投与される。代替的に、眼疾患に関して、ナノ容器は、コンジュゲートされた標的化リガンドを伴って又は伴わずに、2週間あたり1回又は6週間あたり1回、硝子体内注射されてもよい。

図面の簡単な説明

0018

DF003(Rp−8−Br−PET−cGMPS)及びLP−DF003(実施例1に記載の通りに調製されたGSH−コンジュゲートリポソームに封入されたRp−8−Br−PET−cGMPS)のin vitro保護効果を示す。DF003は、100nMもの低濃度でrd1光受容体様細胞死を有意に減少させた。この効果は、LP−DF003によって増加し、10nMのDF003に相当する用量を得るために使用されたときも依然として有効であった。同時に、野生型(wt)光受容体様細胞は、使用された最も高い濃度(50μM)でさえ、DF003又はLP−DF003のいずれによっても影響を受けなかった。b)同様に、DF003は、器官型rd1網膜外植培養において光受容体死を減少させ、一方でwt外植培養において毒性の徴候は示されなかった。
DF003(Rp−8−Br−PET−cGMPS)及びLP−DF003(実施例1に記載の通りに調製されたGSH−コンジュゲートリポソームに封入されたRp−8−Br−PET−cGMPS)のin vitro保護効果を示す。DF003は、100nMもの低濃度でrd1光受容体様細胞死を有意に減少させた。この効果は、LP−DF003によって増加し、10nMのDF003に相当する用量を得るために使用されたときも依然として有効であった。同時に、野生型(wt)光受容体様細胞は、使用された最も高い濃度(50μM)でさえ、DF003又はLP−DF003のいずれによっても影響を受けなかった。b)同様に、DF003は、器官型rd1網膜外植培養において光受容体死を減少させ、一方でwt外植培養において毒性の徴候は示されなかった。
LP−DF003は、3種の様々な網膜色素変性症モデル動物において光受容体を保護する。光受容体の生存を、3種の異なるin vivo網膜色素変性症モデルマウス、つまり生後日数(post−natal day、PN)でPN14のrd1マウス、並びにPN30のrd2及びrd10マウスで評価した。緑色のバーは、野生型(wt)の状況、赤色のバーは未処置変異体の状況を表す。a)遊離DF003で処置したrd1動物は、未処置rd1と比較するとき、光受容体の生存に何らの改善も示さなかった。対照的に、LP−DF003処置は、PN14でrd1光受容体を顕著に保存していた。b)PN30でrd2マウスでは網膜色素変性症によりおよそ15%の光受容体が消失し、一方で、同じ生後日数のrd10の網膜では、およそ80%が失われる。rd2及びrd10動物の両方において、LP−DF003を用いた処置は、生存光受容体の数を著しく増加させた。
LP−DF003は、3種の様々な網膜色素変性症モデル動物において光受容体を保護する。光受容体の生存を、3種の異なるin vivo網膜色素変性症モデルマウス、つまり生後日数(post−natal day、PN)でPN14のrd1マウス、並びにPN30のrd2及びrd10マウスで評価した。緑色のバーは、野生型(wt)の状況、赤色のバーは未処置変異体の状況を表す。a)遊離DF003で処置したrd1動物は、未処置rd1と比較するとき、光受容体の生存に何らの改善も示さなかった。対照的に、LP−DF003処置は、PN14でrd1光受容体を顕著に保存していた。b)PN30でrd2マウスでは網膜色素変性症によりおよそ15%の光受容体が消失し、一方で、同じ生後日数のrd10の網膜では、およそ80%が失われる。rd2及びrd10動物の両方において、LP−DF003を用いた処置は、生存光受容体の数を著しく増加させた。
LP−DF003は、in vivoでrd10動物における光受容体の生存度及び機能を保存する。マウスにおいて、網膜色素変性症は、中心(視神経=0°)から周辺(90°)へ進行する。a)LP−DF003は、周辺部網膜の背側部分におけるrd10光受容体(ONL)を救済し、遅い疾患進行を示した。b)未処置(赤色)及びLP−DF003処置(オレンジ色)rd10動物における代表的網膜電図検査(electroretinographic、ERG応答である。成体野生型のトレース(緑色)を比較のために示している。棒グラフは、平均(n=7)b波ERG振幅が、処置されたrd10動物において4〜5倍大きいことを示す。
LP−DF003は、in vivoでrd10動物における光受容体の生存度及び機能を保存する。マウスにおいて、網膜色素変性症は、中心(視神経=0°)から周辺(90°)へ進行する。a)LP−DF003は、周辺部網膜の背側部分におけるrd10光受容体(ONL)を救済し、遅い疾患進行を示した。b)未処置(赤色)及びLP−DF003処置(オレンジ色)rd10動物における代表的網膜電図検査(electroretinographic、ERG)応答である。成体野生型のトレース(緑色)を比較のために示している。棒グラフは、平均(n=7)b波ERG振幅が、処置されたrd10動物において4〜5倍大きいことを示す。
LP−DF003は、in vivoでrd10動物における光受容体の生存度及び機能を保存する。マウスにおいて、網膜色素変性症は、中心(視神経=0°)から周辺(90°)へ進行する。a)LP−DF003は、周辺部網膜の背側部分におけるrd10光受容体(ONL)を救済し、遅い疾患進行を示した。b)未処置(赤色)及びLP−DF003処置(オレンジ色)rd10動物における代表的網膜電図検査(electroretinographic、ERG)応答である。成体野生型のトレース(緑色)を比較のために示している。棒グラフは、平均(n=7)b波ERG振幅が、処置されたrd10動物において4〜5倍大きいことを示す。
DF003及びLP−DF003の薬物動態成体ラットにおける薬物動態試験から、遊離DF003に対してLP−DF003のin vivo半減期の大幅な延長が示された。遊離DF003のin vivo半減期は約15分である一方、LP−DF003はおよそ24時間の半減期を示した。
in vivoのSLOイメージングにより、網膜への送達成功が実証される。生後日数(PN)10日で蛍光標識リポソーム薬物送達系を注射したマウスを、in vivoで走査レーザー検眼鏡(scanning laser ophthalmoscopy、SLO)を使用して、PN14及びPN20に解析した。表面適用(図示せず)並びに硝子体内(a)及びテノン嚢下(b)注射では、標識の有意な網膜取込みは示されなかった。しかしながら、静脈内(c)及び腹腔内(d)注射では、両方とも、PN14、つまり適用後4日で、網膜血管及び神経網膜の強力な蛍光標識がもたらされた。PN20で、ほとんどの標識は消失したが、腹腔内注射後、一定の網膜パッチは依然としていくらかの蛍光を示した。
in vivoのSLOイメージングにより、網膜への送達成功が実証される。生後日数(PN)10日で蛍光標識リポソーム薬物送達系を注射したマウスを、in vivoで走査レーザー検眼鏡(scanning laser ophthalmoscopy、SLO)を使用して、PN14及びPN20に解析した。表面適用(図示せず)並びに硝子体内(a)及びテノン嚢下(b)注射では、標識の有意な網膜取込みは示されなかった。しかしながら、静脈内(c)及び腹腔内(d)注射では、両方とも、PN14、つまり適用後4日で、網膜血管及び神経網膜の強力な蛍光標識がもたらされた。PN20で、ほとんどの標識は消失したが、腹腔内注射後、一定の網膜パッチは依然としていくらかの蛍光を示した。
in vivoのSLOイメージングにより、網膜への送達成功が実証される。生後日数(PN)10日で蛍光標識リポソーム薬物送達系を注射したマウスを、in vivoで走査レーザー検眼鏡(scanning laser ophthalmoscopy、SLO)を使用して、PN14及びPN20に解析した。表面適用(図示せず)並びに硝子体内(a)及びテノン嚢下(b)注射では、標識の有意な網膜取込みは示されなかった。しかしながら、静脈内(c)及び腹腔内(d)注射では、両方とも、PN14、つまり適用後4日で、網膜血管及び神経網膜の強力な蛍光標識がもたらされた。PN20で、ほとんどの標識は消失したが、腹腔内注射後、一定の網膜パッチは依然としていくらかの蛍光を示した。
in vivoのSLOイメージングにより、網膜への送達成功が実証される。生後日数(PN)10日で蛍光標識リポソーム薬物送達系を注射したマウスを、in vivoで走査レーザー検眼鏡(scanning laser ophthalmoscopy、SLO)を使用して、PN14及びPN20に解析した。表面適用(図示せず)並びに硝子体内(a)及びテノン嚢下(b)注射では、標識の有意な網膜取込みは示されなかった。しかしながら、静脈内(c)及び腹腔内(d)注射では、両方とも、PN14、つまり適用後4日で、網膜血管及び神経網膜の強力な蛍光標識がもたらされた。PN20で、ほとんどの標識は消失したが、腹腔内注射後、一定の網膜パッチは依然としていくらかの蛍光を示した。

0019

第1の態様では、本発明は、血液眼関門への及び血液眼関門を渡る治療的に活性な薬剤及び/又は診断剤を標的化するためのナノ容器に関する。本発明のナノ容器は、cGMP作動性細胞標的の調節不全に関連する病理、状態又は障害を処置又は診断するための治療剤又は診断剤を含むことが好ましく、上記標的が、cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)、過分極活性化環状ヌクレオチド開口性(HCN)チャネル、ホスホジエステラーゼ(PDE)、及びcGMP開口性チャネル(CNGC)のうちの少なくとも1つであることが好ましい。治療剤又は診断剤は、有機小分子、タンパク質、例えば、酵素若しくは抗体、又は核酸、例えば、遺伝子治療ベクターでありうる。本発明によるナノ容器に含まれることになる好ましい治療剤は、環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログである。

0020

好ましい実施形態では、本発明によるナノ容器は、グルタチオントランスポーターに対するリガンドにコンジュゲートされている。

0021

「コンジュゲート」は、本明細書において、一緒に結合された2つの実体から構成されるとして定義される。2つの実体は、非特異的又は特異的タンパク質タンパク質相互作用共有結合非共有結合配位化学結合、及び/又は疎水性相互作用により、コンジュゲートされていることが好ましい。本発明の文脈において、第1の実体は、本明細書で下記に定義する治療剤又は診断剤を含む薬学的に許容される担体でありえ、一方で、第2の実体は、通常、本明細書で下記に定義する標的細胞上の受容体に対するリガンドである。

0022

環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログ
本発明のナノ容器に含まれる環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート(cGMP)アナログは、好ましくは、式I:




の環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート(cGMP)アナログである。

0023

R6及びR7の両方が水素であり、X1が−CF3又は−NR9R10若しくは−SR11基であり、R9が水素であり、R10及びR11の両方が、末端NH2若しくはOH基を有するアルキル基であるか、又はR11が、




に示すように置換基Qを4位に有するフェニル基であり、
Qが、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、−SH、NH2、NO2、−OCH3、CH3若しくはCF3であり、又は
R9及びR10の両方が互いに接続して環を形成するアルキル基であり、R8が水素、(トリ)アルキルシリル基又はアシル基であり、
Lが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であって、MがOHであるか、又は
LがOHであって、Mが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であり、
Kat+が、プロトン又は別の生理学的に許容される金属カチオン若しくはトリアルキルアンモニウムイオンであり、或いは、
R6及びR7が一緒になって、スチリレン基であり、式II:




による縮合三環式環系を形成し、
X2が、水素、−F、−Cl、−Br、−I、CF3、又は−NR9R10若しくは−SR11基又は4−クロロフェニルチオ基であり、R9が水素であり、R10及びR11の両方が末端NH2又はOH基を有するアルキル基であり、R8が水素、(トリ)アルキルシリル基、又はアシル基であり、
Lが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であって、MがOHであるか、又は
LがOHであって、Mが酸素、硫黄、ボラノ(BH3)若しくはさらに置換されたボラノ基であり、
Kat+が、プロトン又は別の生理学的に許容される金属カチオン若しくはトリアルキルアンモニウムイオンである。

0024

疎水性芳香族置換基を8位に有する式Iの環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート化合物が好ましい。フェニルチオ基、例えば4−クロロフェニルチオ−又は4−ヒドロキシフェニルチオ基により8位が置換された化合物が、特に好ましい。

0025

核酸塩基の8位にハロゲン又は4−クロロフェニルチオ基を有する式IIによる構造も同様に好ましい。

0026

好ましい金属カチオンは、Na+、K+、Li+、Ca2+及びMg2+である。

0027

環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート化合物は、米国特許第5,625,056号に記載されるように、さらに修飾されてもよい。

0028

さらに、本発明のナノ容器のための環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートは、米国特許第5,625,056号、国際公開第2012/130829号、Sekharら(1992、Mol.Pharmacol.、42:103〜108)及びMillerら(1973、Biochemistry 12:5310〜5319)に記載されるように取得してもよい。

0029

エクアトリアル残基Lが硫黄である場合、対応する環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエート化合物(cGMPS)は、リンにおいてRp配置であり、エクアトリアル残基Lがボラノ基である場合、対応する環状グアノシン−3’,5’−モノボラノホスフェート化合物(cGMPB)は、リンにおいてSp配置である。

0030

アキシアル残基Mが硫黄である場合、対応する環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエート化合物は、リンにおいてSp配置であり、アキシアル残基Mがボラノ基である場合、対応する環状グアノシン−3’,5’−モノボラノホスフェート化合物は、リンにおいてRp配置である。

0031

本発明によるSp配置cGMPS化合物及びRp配置cGMPB化合物を含む環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートは、プロテインキナーゼGアイソザイム並びに環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート開口性イオンチャネルの活性化因子と考えられる。

0032

本発明によるRp配置cGMPS化合物及びSp配置cGMPB化合物は、プロテインキナーゼGアイソザイムの阻害剤及び環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート開口性イオンチャネルの活性化因子と考えられる。

0033

本発明によれば、式IIの化合物は、環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート開口性イオンチャネルの阻害剤と考えられる。

0034

本発明によれば、式IIによるSp配置cGMPS化合物及び式IIによるRp配置cGMPB化合物は、プロテインキナーゼGアイソザイムの活性化因子である一方で、環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート開口性イオンチャネルの阻害剤と考えられる。

0035

本発明によれば、式IIによるRp配置cGMPS化合物及び式IIによるSp配置cGMPB化合物は、プロテインキナーゼGアイソザイム及び環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート開口性イオンチャネルの両方の阻害剤と考えられる。

0036

本発明の好ましいナノ容器では、環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエートは、Rp配置であり、式III:




(式中、ナトリウムカチオンは、任意の他の薬学的に許容されるカチオンでありえ、例えば、プロトン又は別の生理学的に許容される金属カチオン若しくはトリアルキルアンモニウムイオンでありうる)の環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエートである。式IIIは、「β−フェニル−1,N2−エテノ」(PET)修飾を有する化合物も例示している。

0037

この好ましい環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエートは、略式科学的名称のRp−8−Br−PET−cGMPSとして、又は本明細書の実施例におけるDF003としても参照される。完全な科学的名称は、IUPAC命名法に従って求められるナトリウム、3−[(4aR,6R,7R,7aS)−7−ヒドロキシ−2−オキシド−2−スルファニリデン−4a,6,7,7a−テトラヒドロ−4H−フロ[3,2−d][1,3,2]ジオキサホスフィニン−6−イル]−2−ブロモ−6−フェニル−5H−イミダゾ[1,2−a]プリン−9−オンである。Rp−8−Br−PET−cGMPSは、BIOLOG Life Science Institute GmbH、Bremen、ドイツ、から市販される(カタログ番号:P007CAS番号:[172806−20−1])。好ましい実施形態では、Rp−8−Br−PET−cGMPSは、遠隔装填によりリポソーム内に封入されており、Ca2+が、リポソーム内部の対カチオンとして最も好ましい(下記参照)。

0038

本発明の別の好ましいナノ容器では、環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエートは、Rp配置であり、式IV:




の環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエートである。

0039

この好ましい環状グアノシン−3’,5’−モノホスホロチオエートは、略式の科学的名称のRp−8−pCPT−PET−cGMPSとしても参照される。Rp−8−pCPT−PET−cGMPSは、BIOLOG Life Science Institute GmbH、Bremen、ドイツ、から市販される(カタログ番号:C046、CAS番号:[1262749−62−1])。

0040

本発明によれば、ナノ容器は、環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート化合物で装填される。

0041

好ましい実施形態からの化合物の選択は、調節される(1つ又は複数の)標的結合タンパク質によって支配される。

0042

環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート依存性プロテインキナーゼの活性化が本発明による課題である場合には、ナノ容器の好ましい装填は、リンにおいて何ら修飾を有しないcGMP化合物、又はSp配置cGMPS化合物若しくはRp配置cGMPB化合物である。

0043

環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート依存性プロテインキナーゼの阻害が本発明による生物学的課題である場合には、ナノ容器の好ましい装填は、Rp配置cGMPS化合物又はSp配置cGMPB化合物である。

0044

環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート開口性イオンチャネルの活性化が本発明による課題である場合は、ナノ容器の好ましい装填は、何らPET修飾を有しないcGMP化合物又はcGMPS化合物若しくはcGMPB化合物である。

0045

環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート依存性プロテインキナーゼ及び環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート開口性イオンチャネルの同時活性化が本発明による課題である場合は、ナノ容器の好ましい装填は、cGMP化合物又は何らPET修飾を有しないSp配置cGMPS化合物若しくはRp配置cGMPB化合物である。

0046

環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート依存性プロテインキナーゼ及び環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェート開口性イオンチャネルの同時阻害が本発明による課題である場合は、ナノ容器の好ましい装填は、PET修飾を有するRp配置cGMPS化合物又はPET修飾を有するSp配置cGMPB化合物である。

0047

活性化環状グアノシン−3’,5’−モノホスフェートアナログのさらなる例としては、8−ブロモグアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−Br−cGMP)、8−(2,4−ジヒドロキシフェニルチオ)グアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−o,pDHPT−cGMP)、8−(2−アミノフェニルチオ)グアノシン−3’,5’−モノホスフェート(8−APT−cGMP)、8−(4−ヒドロキシフェニルチオ)グアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−pHPT−cGMP)、8−(4−アミノフェニルチオ)グアノシン−3’,5’−モノホスフェート(8−pAPT−cGMP)、8−(4−クロロフェニルチオ)−β−フェニル−1,N2−エテノグアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−pCPT−PET−cGMP)、8−(4−クロロフェニルチオ)グアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−pCPT−cGMP)、8−(2,4−ジクロロフェニルチオ)グアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−o,pDClPT−cGMP)、8−(4−メトキシフェニルチオ)グアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−pMeOPT−cGMP)、8−ブロモ−β−フェニル−1,N2−エテノグアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−Br−PET−cGMP)、8−ブロモ−(2−ナフチル−1,N2−エテノ)グアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−Br−(2−N)ET−cGMP)、8−(4−ヒドロキシフェニルチオ)−β−フェニル−1,N2−エテノグアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−pHPT−PET−cGMP)、8−(4−クロロフェニルチオ)−β−フェニル−1,N2−エテノグアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(8−pCPT−PET−cGMP)、2−ナフチル−1,N2−エテノグアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート((2−N)ET−cGMP)、β−フェニル−1、N2−エテノグアノシン−3’,5’−環状モノホスフェート(PET−cGMP)、4−メトキシ−β−フェニル−1,N2−エテノグアノシン−3’,5’−モノホスフェート(pMeO−PET−cGMP)及びその薬学的に許容される塩が挙げられ、ここでカチオンは、任意の生理学的に許容される金属カチオン又はトリアルキルアンモニウムイオンでありえ、例えば、ナトリウム又はカルシウム塩でありうる。

0048

グルタチオントランスポーターに対する標的化のためのリガンド
本発明によるナノ容器は、トランスポーター発現している細胞へ、細胞内へ及び/又は細胞を渡してナノ容器を標的化するための、グルタチオン(GSH)トランスポーターに対するリガンドを含む。したがって、GSHトランスポーターは、リガンド及びリガンドを含むナノ容器の、トランスポーターを発現している標的細胞内への及び/又は同細胞を通じた特異的結合エンドサイトーシス及びトランスサイトーシスのうちの少なくとも1つを媒介することが好ましい。トランスポーター又は受容体媒介送達は、近年開発された有望な標的化薬物送達技術の1つである。この技術は、薬物又は薬物担体にコンジュゲートされるリガンドに対する受容体/トランスポーターを発現している標的細胞に特異性の高い送達を行うという潜在的利点を有する。低分子量でポリペプチド及び核酸ベースの治療剤又は診断剤並びにこれらの治療剤又は診断剤を含むナノ容器の、細胞及び組織への特異的標的化は、トランスポーター/受容体媒介送達の使用を介して大きく増強されうる。

0049

一実施形態では、本発明のナノ容器におけるリガンドは、血液組織関門、例えば、血液眼関門、つまり網膜及び虹彩毛様体上皮及び網膜色素上皮(RPE)の毛細血管内皮によって生成されている関門の内皮細胞に発現しているGSHトランスポーターに対するリガンドである。血液組織関門は、以下を含む:血液水性関門(blood−aqueous barrier)、虹彩の毛様体上皮及び毛細血管、血液網膜関門(BRB):網膜循環の非有窓性毛細血管、脈絡毛細血管から網膜への大分子の通過を抑制する網膜色素上皮細胞間のタイトジャンクション血液精巣関門血液胎盤関門、並びに血液CNS関門、例えば、血液脳関門、血液脳脊髄液CSF)関門、軟膜血管CSF関門、脳室上皮及びグリア境界膜血液神経関門、及び血液脊髄関門。好ましいリガンドは、血液網膜関門の内皮細胞に発現しているGSHトランスポーターに対するリガンドである。リガンドの使用により、網膜疾患の処置のための、網膜へ標的化された薬剤の特異的送達又は特異的に増強された送達が可能になる。さらに受容体媒介標的化は、薬物動態及び薬物体分布特性を大きく向上させるために非特異的薬物送達系タンパク質コンジュゲート、PEG化、ナノ粒子、リポソームなど)と組み合わせてもよく、これにより、薬物が受容体発現細胞、組織及び器官、例えば、網膜、CNS、血液脳関門(BBB)、胎盤及び精巣などの特別な血液組織関門に保護されている細胞、組織及び器官へ、特異的に顕著に再指向化される。

0050

したがって、好ましい実施形態では、本発明のナノ容器に組み込まれることになるリガンドは、標的細胞の内在性GSHトランスポーターに対するリガンドである。リガンドは、好ましくは脊椎動物標的細胞のGSHトランスポーター、より好ましくは哺乳動物標的細胞のGSHトランスポーター、最も好ましくはヒト標的細胞のGSHトランスポーターに対するリガンドである。リガンドは、GSHトランスポーターに特異的に結合するリガンドであることが好ましい。リガンドは、Kannanら(2000、Brain Res.852(2):374−82)に記載のヒト脳血管性内皮細胞に存在するようなNa依存性GSHトランスポーターに特異的に結合することがより好ましい。用語「特異的結合」、例えば、リガンドのトランスポーターに対する特異的結合は、本明細書で使用するとき、非特異的相互作用測定可能に異なっている結合を意味する。特異的結合は、例えば、分子(リガンド)の結合を、対照分子(対照リガンド)の結合と比較して決定することにより測定することができ、ここで、対照分子(対照リガンド)は、一般に、同様の構造を有するが結合活性を有しない分子であり、例えば、同様の大きさであるが特異的結合配列を欠失しているペプチドである。特異的結合は、リガンドが、受容体に対して、対照リガンドが有する親和性よりも測定可能に高い親和性を有する場合に存在する。結合の特異性は、例えば、標的に対する結合が既知の対照リガンドとの競合によって、決定することができる。用語「特異的結合」は、本明細書で使用するとき、低親和性及び高親和性特異的結合の両方を含む。特異的結合は、例えば、少なくとも約10−4MのKdを有する低親和性標的化剤によって示すことができる。例えば、受容体が、リガンドに対して2以上の結合部位を有する場合、低親和性を有するリガンドは、微小血管内皮を標的化するために有用でありうる。また特異的結合は、高親和性リガンド、例えば、少なくとも約10−7M、少なくとも約10−8M、少なくとも約10−9M、少なくとも約10−10MのKdを有するリガンドによって示すこともでき、少なくとも約10−11M又は10−12M以上のKdを有しうる。低親和性及び高親和性標的化リガンドの両方が、本発明のナノ容器に組み込まれるために有用である。

0051

トランスポーターへのリガンドの特異的結合は、好ましくは、本明細書で上記に定義される通りである。別の実施形態では、リガンドは、Gaillardら(2001、Eur J Pharm Sci.12(3):215−222)に記載されるようなBBBの細胞培養モデル(初代単離ウシ脳毛細血管内皮細胞(BCEC)を使用)、又はWisniewska−Krukら(2012、Exp Eye Res.96(1):181−90))に記載されるようなBRBの細胞培養モデル(初代単離ウシ網膜内毛血管内皮細胞(BREC)を使用)、又は、例えば、ヒト大脳毛細血管内皮細胞株(hCMEC/D3)、RBE4細胞、又はMDCK細胞を標的細胞として使用する同様のモデルによりアッセイすることができる、標的細胞内へ及び/又は標的細胞を通じてエンドサイトーシス及び/又はトランスサイトーシスされるリガンドである。標的細胞内へ及び/又は標的細胞を通じてエンドサイトーシス及び/又はトランスサイトーシスされるリガンドは、本明細書において、BCEC又はMDCK標的細胞に対してリガンドを添加した後15、30又は60分又は1、2、4、8又は18時間以下で測定するとき、a)GSHトランスポーターの発現が欠失している細胞、b)過剰な遊離GSHで前処置されている細胞、及びc)GSH部分を欠く参照化合物から選択される対照条件と比較して、少なくとも5、10、20又は50%増強された速度で、標的細胞内へ及び/又は標的細胞を通じてエンドサイトーシス及び/又はトランスサイトーシスされるリガンドと定義される。代替的に、GSHトランスポーター標的化リガンドのエンドサイトーシス及び/又はトランスサイトーシスは、例えばリガンドにコンジュゲートされる近赤外色素又は放射活性標識を使用したin vivo生体イメージング技術により、所与時間点でのリガンドのCNS滞留面積(関心領域(region of interest、ROI画素定量に基づく)が、適当な対照条件と比較(例えば、GSH部分を欠く参照化合物と比較)して、少なくとも10、20又は50%増強されることでアッセイされうる。

0052

本発明に従って使用するための、GSHトランスポーターに結合する好ましいリガンドとしては、例えば、グルタチオン(GSH又はガンマ−グルタミルシステイニルグリシン)、S−(p−ブロモベンジル)グルタチオン、ガンマ−(L−ガンマ−アザグルタミル)−S−(p−ブロモベンジル)−L−システイニルグリシン、S−ブチルグルタチオン、S−デシルグルタチオン、還元型グルタチオンエチルエステル、グルタチオンスルホン酸、S−ヘキシルグルタチオン、S−ラクトイルグルタチオン、S−メチルグルタチオン、S−(4−ニトロベンジル)グルタチオン、S−オクチルグルタチオン、S−プロピルグルタチオン、n−ブタノイルガンマ−グルタミルシステイニルグリシン(略称GSH−C4でも知られる)又はそのエタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル若しくはドデカノイル誘導体(それぞれ略称GSH−C2、GSH−C6、GSH−C8及びGSH−C12でも知られる)、GSHモノイソプロピルエステル(N−(N−L−グルタミル−L−システイニル)グリシン1−イソプロピルエステル硫酸塩一水和物又はYM737でも知られる)並びに米国特許第6,747,009号に記載の式V:




(式中、Z=CH2及びY=CH2、又はZ=O及びY=C=Oであり、
Ri及びR2が独立して、H、直鎖若しくは分岐のアルキル(1〜25C)、アラルキル(6〜26C)、シクロアルキル(6〜25C)、複素環(6〜20C)、エーテル又はポリエーテル(3〜25C)からなる群から選択され、ここでR1−R2は一緒になって、2〜20C原子を有し、式1の残部と共に大環状分子を形成し、
R3が、H及びCH3からなる群から選択され、
R4が、6〜8Cアルキル、ベンジル、ナフチル及び治療的に活性な化合物からなる群から選択され、
R5が、H、フェニル、CH3−及びCH2−フェニルからなる群から選択される)
のGSH誘導体又はその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるリガンドが挙げられる。

0053

好ましい実施形態では、上記式におけるR3がHである。さらに好ましい実施形態では、上記式IVにおけるR4がベンジルである。またさらに好ましい実施形態では、上記式IVにおけるR5がフェニルである。

0054

本発明の好ましい一実施形態では、リガンドは、N末端アミノ酸残基、つまりグルタミン酸残基アミン基を介してコンジュゲート又は合成される。

0055

本発明の別の好ましい実施形態では、リガンドは、C末端アミノ酸残基、つまりグリシン残基カルボキシル基を介してコンジュゲート又は合成される。

0056

本発明のさらに別の好ましい一実施形態では、リガンドは、システイン残基チオール(SH)基を介してコンジュゲート又は合成される。

0057

ナノ容器
本発明のナノ容器内のリガンドは、好ましくは、治療剤又は診断剤を含む薬学的に許容されるナノ容器にコンジュゲートされる。そのようなコンジュゲートでは、治療剤又は診断剤は、例えば、ナノ粒子、リポソーム又はナノゲルなどのナノ容器内に封入されていてもよく、リガンドは、そのようなナノ容器に、好ましくはコンジュゲートして結合されている。ナノ容器へのコンジュゲーションは、直接的であってもよく、又は周知のポリマーコンジュゲーション剤、例えば、スフィンゴミエリン、ポリエチレングリコール(PEG)若しくは他の有機ポリマーのいずれかを介するものであってもよい。硝子体内注射ナノ容器では、コンジュゲートされるリガンドを有しないナノ容器も使用することができる。標的化(PEG)リポソームを含む医薬組成物の製造の詳細は、例えば、米国特許第6,372,250号に記載されている。したがって、好ましい実施形態では、本発明によるナノ容器は、担体タンパク質、リポソーム、ポリプレックスシステムリポプレックスシステム、及びポリエチレングリコールのうちの少なくとも1つである。

0058

本発明による治療剤又は診断剤の封入及びリガンドへのコンジュゲーションのための好ましいナノ容器は、リポソームである。本発明のナノ容器で使用するために適切なリポソームとしては、ベシクル形成脂質で主に構成されているリポソームが挙げられる。リン脂質によって例示されるベシクル形成脂質は、水中で、生理学的pH及び温度で、自発的に二重層ベシクルに形成される。リポソームは、内部、つまり二重膜疎水性領域と接触する疎水性部分と、外部、つまり二重膜の極性表面の方に向けられた頭部基部分とを有する、脂質二重層に組み込まれた他の脂質を含んでもよい。ベシクル形成脂質は、好ましくは、2つの炭化水素鎖、典型的にはアシル鎖と、極性又は非極性の頭部基とを有する。様々なジアシル合成ベシクル形成脂質及び天然ベシクル形成脂質があり、例えば、リン脂質、ジグリセリド、二脂肪鎖(dialiphatic)糖脂質、単一脂質、例えばスフィンゴミエリン及びスフィンゴ糖脂質コレステロール及びそれらの誘導体があり、単独又は組合せ、及び/又はリポソーム膜硬化剤を含むもの又は含まないものがある。本明細書で定義されるとき、「リン脂質」は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルセリン(PS)、スフィンゴミエリン、プラスマロゲン及びホスファチジルコリン脂質誘導体を含み、ここで2つの炭化水素鎖は、典型的に約14〜22個の炭素原子長であり、様々な不飽和度を有する。

0059

高転移温度を有する脂質の使用並びにコレステロール(CHOL)及び脂質コンジュゲート、例えば、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミンポリエチレングリコール(DSPE−PEG)の組込みにより、血液循環中又は細胞外環境における封入薬物の漏出が顕著に低下する。さらに脂質は、リポソームと血清タンパク質オプソニン)との間の非特異的相互作用を減少させ、したがって細網内皮系(RES)の細胞によるリポソームクリアランスを防止し、系と標的細胞との相互作用を最適化する循環時間を増加させる(Allen、1987;Gabizon、1992)。37℃以上の相転移温度を有するリン脂質の例としては、例えば、水素添加精製ホスファチジルコリン(HEPC;相転移温度:50〜60℃)、水素添加精製大豆ホスファチジルコリン(HSPC;相転移温度:およそ55℃)、ジパルミトイルホスファチジルコリンDPPC;相転移温度:およそ41℃)、及びジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC;相転移温度:およそ58℃)が挙げられる。これらのうちで、HSPCがより好ましい。これらのリン脂質は、単独で又は2種以上の組合せで使用してもよい。本発明で使用するリポソームは、さらに安定化剤、例えばコレステロール又はコレステロール誘導体を含んでもよい。コレステロール誘導体とリン脂質との間のモル比は、好ましくは1:0.3〜3、より好ましくは1:1〜2.5、最も好ましくは1:1.2〜1.8、又は約1:1.5である。

0060

リポソームの平均の大きさは、好ましくは50〜200nm、より好ましくは80〜150nm、最も好ましくは100〜120nmであり、多分散度(polydispersity、PdI)は、0.2、0.15又は0.1未満である。

0061

リポソームは、2つの方法、つまり、受動及び能動(遠隔)装填により、有効成分を装填することができる。リポソーム脂質二重層は、半透過性の関門であり、荷電分子及び大きい非荷電の分子の拡散を阻止する一方で、小さい非荷電の物質を自由に透過させることができる。受動装填では、膜不透過性薬物は、リポソーム製造工程の間に水和液に溶解される。水溶液脂質混合物に添加されると、脂質二重層が生じ、部分的に薬物溶液を封入してリポソームを形成する。薬物溶液のほとんどは外部溶液に残り、透析又はクロマトグラフィーにより除去する必要がある。受動封入は、リポソーム捕捉体積及び薬物溶解性により制限される。したがって、封入効率(EE)が低く、通常5%を超えない。しかし、原理的に、あらゆる有効成分を受動装填により封入することができる。それゆえ、能動(遠隔)装填が好ましい。能動装填では、例えば欧州特許第0825852号に記載されているように、薬物は、リポソームの形成後に能動的方法で封入され、これにより、100%に近い効率での捕捉が可能となる。しかしながら、両親媒性弱酸又は塩基性の薬物のみが遠隔装填に適する。これらの分子の封入は、イオン化された分子が、イオン化されていない種と比較して、膜透過しにくいという事実に基づく。それゆえ、pH勾配により薬物のリポソーム内イオン化を誘発し、化合物の捕捉を生じさせ、高いリポソーム内外薬物濃度比を導く。本明細書の実施例に示されるように、Rp−8−Br−PET−cGMPSは、能動装填により、リポソーム内に効率的に封入させることができる。

0062

リガンドは、本発明のナノ容器に、直接的に、又は任意のコンジュゲーション剤、好ましくはポリマーコンジュゲーション剤を介して、コンジュゲートさせることができる。ポリエチレングリコール(PEG)は、好ましいコンジュゲーション剤である。PEGは、好ましくは、約6〜210の重合数(n)を有する。コンジュゲーション剤の分子量は、好ましくは300〜50,000Da、より好ましくは750〜10,000Da、最も好ましくは1,000〜5,000Da、例えば、約2000Daである。

0063

好ましいコンジュゲーション剤は、一端に脂質、他端にGSHトランスポーターに対するリガンドを有する二官能性コンジュゲーション剤である。PEGの脂質端は、脂質二重層との相互作用により及び/又は脂質二重層内への挿入により、コンジュゲーション剤をリポソームへ付着させる。コンジュゲーション剤の脂質端は、ビタミンE誘導体又はリン脂質を含むことができる。好ましいビタミンE誘導体は、例えば、欧州特許第05292820号に記載されている。コンジュゲーション剤の脂質端でのリン脂質は、以下の式を有しうる:

0064

式(VI)では、Aiが、スフィンゴシンであり、Riが、オクタノイル又はパルミトイルを含みうる。式(VII)では、A2が、ホスホエタノールアミンであり、R2及びR3が、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル又はオレオイルを含みえ、R2及びR3が、同じであっても異なってもよい。PEGが、式(VI)によって表されるリン脂質誘導体に結合するとき、好ましくは約750〜5,000Daの分子量を有し、PEGが、式(VII)によって表されるリン脂質誘導体に結合するとき、好ましくは約350〜5,000Daの分子量を有する。

0065

脂質端の反対側の端において、PEGは、好ましくは、GSHトランスポーターに対するリガンドに共有結合的に連結するためのカルボン酸、マレイミド又はアミドを含むように誘導体化される。好ましいコンジュゲーション剤は、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−ポリエチレングリコール−マレイミド(DSPE−PEG−MAL)を、マレイミド反応性チオール基を有するGSH受容体に対するリガンドと反応させることにより取得される。DSPE−PEG−マレイミドは、例えば1,000、2,000、3,400、5,000、10,000及び20,000の分子量で市販されており、中でもDSPE−PEG(2000)−マレイミドが好ましい。

0066

5〜1000のコンジュゲーション剤が、各リポソームにコンジュゲートされることが好ましい。少なくともおよそ10、20、30又は40のコンジュゲーション剤、及び200、100又は50を超えないコンジュゲーション剤が、各リポソームにコンジュゲートされることがより好ましい。

0067

ナノ容器の使用
さらなる態様では、本発明のナノ容器は、医薬として使用する。
本発明のナノ容器は、好ましくは、cGMP作動性細胞標的の調節不全に関連する病理、状態又は障害の処置及び/又は予防のために使用され、好ましくは、標的は、cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)及びcGMP開口性チャネル(CNGC)のうちの少なくとも1つである。Schlossmann and Schinner(2012、Arch Pharmacol、385:243−252)及びWolfertstetterら(2013、Pharmaceuticals 2013、6:269−286)は、PKG及びCNGCのうちの少なくとも1つ又は両方の阻害又は活性化が、特定の病理、状態又は障害の処置における適切な生物学的課題であるかを検討している。これに従って、様々なアナログに対して、上記に示した生物学的課題を実施することができるcGMPアナログが選択されうる。本明細書において、病理、状態又は障害の処置は、特に他のことが指示されない限り、明確に言及されていない場合でも、病理、状態又は障害の予防も含まれると理解されるべきである。

0068

本発明のナノ容器は、網膜の疾患又は状態の処置又は予防のために使用することが好ましい。網膜の疾患及び状態は、PKG及びCNGCのうちの少なくとも1つ、例えば、Rp−8−Br−PET−cGMPS及びRp−8−pCPT−PET−cGMPSを阻害するcGMPアナログを含む本発明のナノ容器で処置されることが好ましい。網膜の疾患及び状態としては、網膜の希少遺伝性疾患、例えば、網膜色素変性症、スターガルト(Stargardt)病、黄色斑眼底若年性ベスト病成人性卵黄ジストロフィー(adult vitelliform foveomacular dystrophy)(成人性卵黄様変性(adult vitelliform degeneration))、家族性ドルーゼンノースカロライナ黄斑ジストロフィー)、ビエッティ(Bietti)結晶状ジストロフィー、進行性錐体ジストロフィー、アルポート(Alport)症候群、家族性良性網膜色素レーバー(Leber)先天性黒内障、先天性単色型色覚及び遺伝性黄斑ジストロフィーが挙げられる。

0069

加えて、本発明のこれらのナノ容器、好ましくはPKG及びCNGCのうちの少なくとも1つ、例えば、Rp−8−Br−PET−cGMPS及びRp−8−pCPT−PET−cGMPSなどを阻害するcGMPアナログを含むナノ容器は、いくつかの代謝性及び神経変性疾患、様々な症候群、及び他の眼疾患で生じる続発性網膜色素変性症を処置するために使用することができ、例えば、網膜色素変性症及び聴覚損失は、特有全身症状を有するアッシャー(Usher)症候群、ワールデンブルグ(Waardenburg)症候群、アルストレム(Alstrom)症候群、アルポート症候群レフサム(Refsum)症候群及び他の全身状態とも関連しており、低身長腎機能不全及び多指症は、色素性網膜症と関連するとき、バルデ・ビードル(Bardet−Biedl)症候群又はローレンス・ムーン(Laurence−Moon)症候群の一部の徴候であり、ムコ多糖症は、網膜色素変性症と関連している場合があり(例えば、ハーラー(Hurler)症候群、シャイエ(Scheie)症候群、サンフィリッポ(Sanfilippo)症候群)、並びにミトコンドリア障害カーンズ・セイヤー(Kearns−Sayre)症候群が挙げられる。上記で言及した疾患に加えて、フリードライヒ運動失調症、ムコ多糖症、筋ジストロフィー筋緊張性ジストロフィー)、バッテン(Batten)症候群、バッセンコーンツヴァイク(Bassen−Kornzweig)症候群、ホモシスチン尿症シュウ酸症、眼及び網膜の外傷、網膜色素上皮変化を有する緑内障末期クロロキン網膜症、末期チオリダジン網膜症、末期梅毒性視神経網膜炎、並びにがん関連網膜症が含まれる。本発明のこれらのナノ容器は、網膜の他の一般的疾患、例えば、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、黄斑円孔/パッカー、眼悪性病変、例えば網膜芽腫、網膜剥離及び河川盲目症/オンコセルカ症を処置するために使用することもできる。

0070

さらに、本発明のナノ容器は、cGMP依存性プロテインキナーゼ(PKG)及びcGMP開口性チャネル(CNGC)のうちの少なくとも1つの調節不全に関わる全く異なる状態、例えば、神経性又は神経変性障害、嗅覚脱失、炎症性及び神経障害性疼痛、軸索再生及び脊髄損傷後回復(Henkinら、2008、Clin Invest Med.31:E78−84;Schmidtkoら、2008、J Neurosci.28:8568−76;Ter−Avetisyanら、2014、J Neurosci.34:737−47;Senturkら、2014:Br J Neurosurg.7:1−6)を処置するために使用することができる。また心血管疾患、高血圧(PKG活性化剤)、低血圧(PKG阻害剤)、狭心症、肺高血圧症、勃起不全、虚血発作、アテローム性動脈硬化、急性ショック、及びがん(例えば、Wangら、2012、J.Cell.Biochem.113:3587−3598;Karakhanovaら、2014、Pancreas、43:784−794;Francisら、2010、Pharmacol Rev.62:525−63を参照)を処置するために使用することもできる。さらに、寄生虫の生存がPKG活性に決定的に依存する特定の寄生虫疾患、例えばマラリア、睡眠疾患(アフリカ睡眠病)及びシャーガス病(Taylorら、2010、Eukaryot Cell.9:37−45)が挙げられる。

0071

別の態様では、本発明は、本発明のナノ容器(を含む医薬組成物)の治療的又は予防的有効量を、予防又は治療を必要とする対象に投与することによる、上記病理、状態又は障害のいずれかを処置又は予防する方法に関する。

0072

本発明のナノ容器の、血液眼関門への及び血液眼関門を渡るGSH標的化により、ナノ容器の全身投与並びに治療剤及び/又は診断剤の網膜への効率的な送達が可能となる。したがって、本発明のナノ容器は、好ましくは、全身的に又は血流を通して投与される。代替的に、又は加えて、本発明のナノ容器は、局所的に投与されうる。

0073

本発明のナノ容器は、非経口的に投与されることが好ましい。ナノ容器の投与のための非経口経路は、既知の方法に従い、例えば、好ましくは静脈内、腹腔内又は動脈内経路による注射又は注入である。代替的に、不必要な全身曝露を予防するために、ナノ容器、例えばリポソームを、例えば眼の後ろの脈絡毛細血管に直接送達させる上脈絡膜又は眼球後注射を使用してもよい。非経口投与の別の代替的経路は、硝子体内直接注射である。この場合に、GSH−コンジュゲートされたナノ容器を使用してもよいが、標的化リガンドを有しないナノ容器、例えばPEG化リポソームを利用してもよく、その理由は、そのような場合にナノ容器は貯蔵所として作用し、封入された薬物を作用部位でゆっくりと放出することができ、それにより反復投与の必要性を減少させ、又は反復投与の頻度を減少させることを可能にする。

0074

代替的に、又は加えて、ナノ容器は、表面適用又は眼適用により投与される。ナノ容器は、従来の点眼剤を使用して投与されることが好ましい。

0075

さらなる態様では、本発明は、医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、本明細書で上記に定義されるナノ容器を含む。組成物は、好ましくはさらに、当該分野で一般的に知られる薬学的に許容される担体、媒体又は送達ビヒクルを含む。薬学的に許容される溶媒、安定化剤、浸透圧剤緩衝剤分散剤なども、医薬組成物に組み込むことができる。好ましい形態は、意図する投与様式及び治療適用に依存する。薬学的担体は、有効成分、つまり、本発明のナノ容器を、患者又は対象に送達させるために適切な任意の適合性のある非毒性物質でありうる。

0076

非経口投与のためのナノ容器を用いた調製は、無菌でなければならない。滅菌は、凍結乾燥及び再構成前又は後の、無菌濾過膜を通じた濾過により容易に達成される。ナノ容器は、注入又はボーラス注射により連続的に投与される。静脈内注入のための典型的組成物は、任意選択で20%アルブミン溶液により補足された10〜500mlの無菌0.9%NaCl又は5%グルコースと、必要量のナノ容器とを含むように構成されうる。代替的に、ナノ容器は、リン酸緩衝生理食塩水PBS)に溶解させてもよい。静脈内、腹腔内又は動脈内注射のための典型的な医薬組成物は、例えば、1〜10mlの無菌の生理学的緩衝水溶液と、必要量の本発明のナノ容器とを含むように構成される。非経口的に投与可能な組成物を調製する方法は、当該分野で周知であり、様々な情報源において、例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(Ed.AR Gennaro、20th edition、2000、Williams&Wilkins、PA、USA;参照によりその全体が全ての目的のために組み込まれる)において詳細に記載されている。

0077

本発明のナノ容器は、好ましくは、0.1〜1000mg/kgの用量で、1又は2日あたり1回投与される。投与範囲は、1又は2日あたり1回で、少なくとも0.1、0.2、0.5、1、2、10、20、50若しくは100mg/kgの下限、及び1又は2日あたり1回で1000、500、200若しくは100mg/kg以下の上限を有することが好ましい。示された用量は、ナノ容器に含まれる治療剤(例えば、cGMPアナログ)の量に相当し、ナノ容器組成物全体には相当しない。代替的に、本発明のナノ容器は、2週間に1回又は6週間に1回、硝子体内投与される。硝子体内注射のための投与範囲は、6週間に1回で、少なくとも25μl(2mg/ml)の下限、及び2週間に1回で、200μl(4mg/ml)以下の上限を有することが好ましい。

0078

治療適用について、本発明のナノ容器を含む医薬組成物を、上記の病理、状態又は障害に苦しむ患者に、症状の重症度を減少させる及び/又は症状のさらなる発生を予防若しくは停止させるために十分な量で投与する。これを達成するために十分な量は、「治療的」又は「予防的」有効量として定義される。有効量は、状態の重症度及び患者の健康の全身状態に依存する。

0079

本明細書及び特許請求の範囲において、動詞「を含む」及びその結合語は、その後に続く項目が含まれるが、詳細に言及されていない項目が排除されないことを意味する、非限定的な観念で使用される。加えて、不定詞「a」又は「an」による要素への参照は、明確に要素が1つであること及び要素の1つのみであることを文脈が要求していない限り、2以上の要素が存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。

0080

本明細書で引用される全ての特許及び参照文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。

0081

以下の実施例は、例証の目的でのみ提供するものであり、本発明の範囲を限定することを何ら意図していない。

0082

1.材料及び方法
1.1cGMPSを封入するGSH−コンジュゲートされたリポソームの製造
最初に、DSPE−PEG2000−マレイミド(NOF、Grobbendonk、ベルギー、36.72mLのDI水中916mg)とグルタチオン(Sigma−Aldrich、Zwijndrecht、オランダ、4.42mLのDI水中144mg)と(モル比1:1.5)を室温で2時間混合することによって、ミセルを調製した。次いで、ミセルを酢酸カルシウム水和物(57.36mLのDI水中4094mg、最終濃度200mM)に加え、60℃で30分間維持した。

0083

2808mgのHSPC(水素添加大豆ホスファチジルコリン、最終濃度28mM)及び912mgのコレステロール(最終濃度18.6mM)を、血清ボトル中の30.96mLのエタノールに溶解し、撹拌しながらミセルと混合し、水浴中で30分間、60℃でインキュベートした。最後に、リポソームを0.2/0.2μmPC膜(2回)、0.2/0.1μmPC膜(2回)及び0.1/0.1μmPC膜(2回)を使用して60℃で押し出し、4℃で保存した。リポソームの大きさを、1mlのPBSで希釈した10μLのリポソーム懸濁液を用いて、動的光散乱法(Zetasizer Nano ZS、Malvern、Worcestershire、UK)により測定した。リポソームバッチの平均サイズは、100〜120nm、PdI<0.1であった。大きさを測定した後、酢酸カルシウムリポソームを、非封入酢酸カルシウム水和物から、透析システムFF(Millipore Cogent μScale及びMillipore Pelliconカセット50cm2)を使用して精製した。リポソームを、7体積の生理食塩水(0.9%NaCl)に対して透析した。バッチを、TFFシステムを用いた透析を使用して、初期体積120mLまで濃縮し、脂質含量及び大きさを解析した。

0084

酢酸カルシウムGSH−PEG−リポソームにDF003(Rp−8−Br−PET−cGMPS)を薬物/リン脂質モル比0.3で遠隔装填することにより、LP−DF003を生成した。装填について、MilliQ(40mg/mL)に溶解した1体積のDF003を9体積のリポソーム(HSPC20mg/mL、両方とも60℃で事前に加温)と混合し、60℃で45分間インキュベートした。次いでバッチを4℃で保存し、精製し、解析した。精製は、TFFシステムを使用した透析によって行った。LP−DF003リポソームを、10体積の生理食塩水に対して透析し、3mg/mLのDF003濃度に濃縮し、0.2μmフィルターで無菌濾過(Corning無菌シリンジフィルター)し、4℃で保存した。封入されたDF003、つまりLP−DF003及び他のリポソーム成分をHPLCにより解析した。

0085

Sp−8−Br−PET−cGMPS及び8−Br−PET−cGMPの遠隔装填による封入について、上述のLP−DF003の封入と本質的に同じ手順を適用する。

0086

DF001(Rp−8−Br−cGMPS)、DF002(Rp−8−pCPT−cGMPS)及びRp−8−pCPT−PET−cGMPSの遠隔装填による封入も試験し、いくつかの実験条件(例えば、薬物−脂質比、外部リポソームpH、内部リポソームpH、及び内部リポソーム酢酸カルシウム濃度)の使用を選別して、これらの薬物の封入を促進及び持続させた。DF003とは対照的に、DF001、DF002及びRp−8−pCPT−PET−cGMPSを遠隔装填により封入することはできなかった。

0087

Rp−8−Br−cGMPS、Rp−8−pCPT−cGMPS、Rp−8−Br−PET−cGMPS(DF003)及びRp−8−pCPT−PET−cGMPSは、BIOLOG Life Science Institute GmbH、Bremen、ドイツから取得した。

0088

1.2 in vitro網膜外植培養及びin vivo試験のための動物
初代網膜細胞培養物の調製のための動物は、モデナ・レッジョ・エミリア(Modena and Reggio Emilia)大学のCSSI(Centra Servizi Stabulario Interdipartimentale)で飼育されたものであった。手順は、モデナ・レッジョ・エミリア大学の倫理委員会(Prot.N.106 22/11/2012)及びイタリア衛生省(Italian Ministero della Salute)により承認を受けた。in vitro網膜外植試験のための動物は、ルンド(Lund)大学の臨床化学部門(department for clinical sciences)で飼育されたものであった。我々は、rd1及びrd2網膜色素変性症モデルマウスと共に対応する野生型(wt)対照も使用した。動物は、標準的な白色周期性照明下(white cyclic lighting)に飼育され、食事及び水は自由に摂取可能とし、性別に関係なく使用した。全ての手順は、スウェーデン動物実験及び倫理委員会(Swedish animal care and ethics committee)に従って実施した。使用した動物の数を維持し、動物の苦痛が最小になるように努めた。

0089

in vivo試験のための動物は、テュービンゲン眼科学研究所(Tubingen Institute for Ophthalmic Research)の所内動物収容施設で、標準的な白色周期性照明下に飼育されたもので、食事及び水は自由に摂取可能とし、性別に関係なく使用した。C3H rd1/rd1(rd1)及び対照C3H野生型(wt)マウスを最初にin vivo試験に用いた。rd1動物で成功裡に試験された後、in vivo試験を、交差モデル検証のために、さらにRDモデル動物へ拡張した。これらのさらなるモデル動物は、C3H rd2/rd2(rd2又はrds)、C57Bl6J rd10/rd10(rd10)、C57Bl6J cpfl1/cpfl1(cpfl1)マウス、並びにRho P23Hラットであった。全てのin vivo手順は、テュービンゲン大学(Tubingen University)学内倫理委員会(§4登録29−04−10;30−06−10;11−03−11より;動物許可AK5/12)及び眼科視覚研究における動物の使用についてのARV宣言(ARVO statement for the use of animals in ophthalmic and visual research)に従って実施した。

0090

1.3 初代網膜細胞培養の調製、分化、及び処置
様々な用量のDF003及びLP−DF003を、rd1モデルマウス由来の網膜細胞の初代培養物に対してin vitroで試験した。初代細胞の約20〜30%が、桿体光受容体(Demontisら、2012、PLoS One.7、e33338;Giordanoら、2007、Mol.Vis.13、1842−1850)に分化されうる。成体wt及びrd1マウス由来網膜幹細胞を、2mg/mlのディスパーゼ(20分)、続いて1.33mg/mlのトリプシン、0.67mg/ml、ヒアルロニダーゼ、及び0.13mg/mlのキヌレン酸(10分)で処置した後の毛様体上皮から単離し、DMEM−F12中に20ng/mlの塩基性FGF、2μg/mlのヘパリン、0.6%グルコース、N2ホルモンミックスを含む無血清培地で1週間培養し、ニューロスフェア(Giordanoら、2007、上掲)を形成させた。次いで、網膜ニューロスフェアを、20ng/mlのFGFを補足したDMEM−F12中細胞外マトリックス(ECM、Sigma)で被覆したガラススライド上で4日間平板培養した。1%FBSを補足したDMEM−F12中で細胞を分化させた。rd1分化網膜細胞は、先に開示されているように(Sangesら、2006、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103、17366−17371)、分化の11日目で細胞死プログラムを活性化させた。分化の10日目(細胞死経路の活性化の1日前)に、細胞を様々な用量のLP−DF003に曝露させた。LP−DF003を用いた処置の16時間後、細胞を、4%パラホルムアルデヒドを用いて室温で10分間固定した。細胞死は、2μMのエチジウムホモダイマーを用いて細胞を2分間染色し、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、Sigma)を用いて核を対比染色することにより評価した。スライドを、mowioll 4−88(Sigma)を用いてマウントし、Zeiss Axioskop40蛍光顕微鏡で解析した。エチジウムホモダイマー陽性細胞を、各スライドで計数し、1スライドあたりの全細胞数DAPI染色)に対する割合(%)として表した。対応Studentt検定分析により、少なくとも3種の異なる未処置及び少なくとも3種の異なる処置rd1網膜細胞から誘導されたデータを比較した。

0091

1.4器官型網膜外植培養
生化学解析並びにモデル及びwt組織間の比較について、我々は、典型的に、網膜変性の開始に相当する時期からの材料を使用している。網膜組織を、生後5日目(PN5)の動物から取得し、屠殺後、眼を眼球摘出し、網膜を網膜外植として培養する。簡単に述べると、網膜色素上皮(RPE)がまだ付着している網膜を単離し、続いてMillicell培養皿フィルターインサート(Millipore AB、Solna、スウェーデン;PIHA03050)に移し、RPE層培養膜に向ける。次いで、外植をカスタムメードのR16栄養培地中37℃でインキュベートする。栄養培地は、1皿あたり1.5mlの体積とし、培養期間中、通常(実際の培養パラダイム別途要求しない限り)2日ごとに新鮮培地に置き換える。

0092

PN5外植を、in vitroで2日間(DIV)の培養条件とするように構成し、次いで目的の処置にかけた。この点で、処置パラダイムは、試験化合物の培地添加、2日ごと、4日間からなり、PN11(短期処置として標識:PN5+2DIV+4DIVとして標識)又はPN19(長期処置:PN5+2DIV+12DIV)と同等になる。

0093

外植培養期間の最後に、検体を、リン酸緩衝塩溶液中4%パラホルムアルデヒドを用いて4℃で約2時間固定した。そのように固定した眼を、ソレンセン(Sorensen)スクロース緩衝液凍害保護し、クリオトームを使用して組織学切片とし、12μmの凍結切片顕微鏡スライド上に集めた。

0094

1.5 in vivo RDモデル動物に対する薬物試験
薬物又は薬物/DDS組合せで処置する前に、動物をジエチルエーテル麻酔した。全身処置では、リポソームDDS/薬物製剤を含有する0.9%NaCl溶液を、麻酔動物の尾静脈内(尾部静脈;静脈内;i.v.;50μl)又は腹膜内(腹腔内;i.p.;200μl)のいずれかで注射した。rd10マウスでは、局所硝子体内(IVT)処置も試験した。ここで動物は、一方の眼の硝子体内に0.5μlの注射を受け、他方の眼は未処置のまま、対側性対照とした。i.p.及びIVT処置の両方で、DF003を含まないリポソーム製剤(つまり「空の」リポソーム)をさらなる対照として使用した。

0095

in vivo処置では、最初にrd1動物で実施し、後に他のモデル動物(rd2、rd10、cpfl1、Rho P23H)まで拡張した。異なるRDモデルでは網膜変性の開始及び進行が異なることから、各モデルに応じた処置パラダイムとするように構成する必要があった。これらの処置パラダイムの詳細については、表1を参照。

0096

処置後の様々な時間点(表1参照)で、in vivo光干渉断層撮影OCT)及び走査レーザー検眼鏡(SLO)解析を使用して、網膜形態(OCT)及び蛍光標識薬物(SLO)又は薬物/DDS組合せの直接的非侵襲的イメージングを行い、網膜における薬物の分布及び取込みを測定した。加えて、網膜機能を、網膜電図検査(ERG)記録を使用して評価した。非侵襲性in vivo実験後で処置後1〜12日の間に、実験動物二酸化炭素窒息により屠殺した。眼はすぐに眼球摘出し、4%PFA中で2時間固定し、凍結切片又はホールマウント調製用に調製した。

0097

1.6光受容体細胞死及び生存の定量
in vitro及びin vivo処置実験についての読取りは、標準の組織化学組織染色で見られるように、細胞死マーカーTUNELで陽性染色された光受容体細胞の定量及び/又は生存光受容体の列の計数で構成した。いずれの場合においても、結果を顕微鏡及びデジタルカメラで取り、手動又は半自動で解析し、次いで、先に開示された原理(Arango−Gonzalezら、2014、PLoS One.9、e112142)で、記録されたデータの統計学有意性について計算した。

0098

2.結果
2.1LP−DF003による光受容体のin vitro及びin vivo保護
200を超える新規cGMPアナログを生成し、このうち140を、無細胞アッセイでPKGに結合する能力について試験した(Zegzoutiら、2009、Assay.Drug Dev.Technol.7、560−572)。これらのうち、強力なPKG結合を示した33の化合物を、網膜色素変性症変異マウスから誘導された661W細胞株及び光受容体様細胞培養(Sangesら、2006、上掲)でさらにin vitro解析して選択した。この細胞ベーススクリーニングアッセイにより、網膜色素変性症変異により引き起こされる細胞死を減少させることができ、したがって光受容体保護活性を示した、11の化合物を特定した。次いで、これらの11の化合物を、野生型、rd1(Sanyal and Bal 1973、Z.Anat.Entwicklungsgesch.142、219−238)又はrd2マウス(Sanyal and Jansen 1981、Neurosci.Lett.21、23−26)のいずれかから誘導された器官型網膜外植培養(Sahabogluら、2013、Cell Death & Disease 4)でさらに試験した。網膜組織培養により、有望な神経保護効果を有するcGMPアナログの数を、in vitroでrd1及びrd2光受容体の細胞死を顕著に減少させることが分かった4つの化合物に絞り込んだ。

0099

次いで、これらの4つの化合物を、in vivoでrd1マウスにおいて試験し、これらの化合物のうちの1つをリポソーム(LP)送達系と組み合わせた。LP−DF003は、rd1動物で最も顕著な保護効果を示し、次いで、2つの他のin vivo網膜色素変性症モデルマウス(rd2及びrd10マウス)で試験にかけた。別の長期試験(4ヶ月間)を、第4の網膜色素変性症モデルのP23Hラットで実施した(データ示さず)。

0100

異なる試験系で、DF003は、以下の結果を生じた:DF003は、細胞及び器官型網膜組織培養において疾患rd1光受容体の生存度を保存した(図1a、1b)。両方の系で、野生型(wt)光受容体は、DF003処置による影響を受けず、DF003が最大50μMの濃度までこれらの細胞に毒性がないことが示された。LP−DF003は、網膜色素変性症変異マウスから誘導された光受容体様細胞培養において、DF003と比較して低い(lowed)濃度で、改善された保護効果を示した(図1a)。

0101

器官型網膜外植において、DF003の内部網膜における毒性の根拠は見出されなかった(データ示さず)。またDF003は、2つの他のモデル、つまり、1つはより遅く変性するrd10モデルであり、Pde6b変異を有するがrd1モデルとは別の位置に変異を有するモデル、並びに非常に異なった変異を保有しているにもかかわらず、さらに遅く変性するrd2モデルマウス、における網膜外植における光受容体死も防止した。(データは示していないが、rd10及びrd1のin vivoデータについて図2a及び2bを参照)。これらのモデルのさらなる詳細について下記も参照されたい。Sp−8−Br−PET−cGMPSについても同様の観察がなされた。

0102

DF003のin vivoのバイオアベイラビリティは、リポソーム製剤LP−DF003で使用したとき、劇的に改善された(参考.項2.3;図4)。Sp−8−Br−PET−cGMPSのバイオアベイラビリティも、リポソームに封入するときに改善される。

0103

LP−DF003のin vivoでの効果を評価するために、我々は、ヒト網膜色素変性症変異と類似の遺伝子欠失を保有する3種の異なる網膜色素変性症モデル動物を使用した。rd1マウスは、生後(PN)18日まで桿体光受容体の急速な細胞死を生じるPde6b遺伝子機能喪失を有する網膜色素変性症モデル動物である(Sanyal and Bal 1973、上記参照)。PN14で、rd1の網膜は、wtと比較して、光受容体の列の50%超を失う(図2a)。DF003の腹腔内注射(50mg/kg、1日1回)を介した全身投与は、rd1光受容体生存に効果を示さないが、同じ濃度のLP−DF003を用いた処置は、rd1光受容体の生存度を顕著に増加させた。

0104

rd2(rds)マウスは、別の網膜色素変性症モデルであり、生後最初の3ヶ月で桿体及び錐体光受容体の比較的遅い喪失が生じるPrph2遺伝子変異を有する(Sanyal and Jansen 1981、上記参照)。PN30で、約15%のrd2光受容体が失われる。既にこの日数で、LP−DF003(50mg/kg、2日ごと)で処置したrd2動物は、生存光受容体の列数の顕著な増加を示した(図2b)。

0105

使用した第3のモデル動物は、Pde6b遺伝子に点変異を保有するrd10マウスであった。このマウスにおいて、変性は、rd1変異網膜と比較して遅く、桿体光受容体の喪失はPN18に開始し、PN30で約80%が失われる。rd10動物においても、LP−DF003の腹腔内注射を介した全身投与(i.p.;50mg/kg、1日1回)により、PN30での光受容体生存が顕著に増加した(図2b)。DF003を含まない対照リポソーム(「空の」リポソーム)を用いたrd10マウスの同じi.p.処置では、未処置rd10動物との有意な差異は何ら生じなかった。

0106

図2a及び2bに示されるデータから、光受容体の生存が、全体的に、LP−DF003処置により改善されたことが確認された。齧歯類の網膜色素変性症モデルでは、光受容体の変性は中心から周辺に向けて進行するので、保護効果は、周辺でより顕著であった。この効果を、視神経、つまり網膜の中心からの離心率(eccentricity)の関数として生存光受容体の量を示すいわゆるスパイダーダイアグラムで評価した。斯くして、LP−DF003処置rd10動物の網膜周辺では、生存光受容体が、未処置対照物の約2倍多く存在した(図3a)。

0107

より重要なことに、i.p.LP−DF003は、rd10動物におけるERG記録によって評価されたように、網膜のin vivo機能性を強く改善した。ERGにおいて、光への電気的応答陰性振れ、いわゆるa波は、光受容体の一次応答を反映する。後の陽性の振れ、いわゆるb波は、内部網膜の応答及び二次神経の活性化に相当する。成体wt動物は、−350μV(a波)から600μV(b波)の範囲のERG応答を示すが、未処置のrd10動物のERGは、PN30でほとんど消失する(最大b波応答約35μV)(図3b)。対照的に、i.p.LP−DF003は、強力に及び非常に有意にrd10のERGb波応答を改善し(約180μV)、この改善は網膜機能の改善の4〜5倍に相当した。

0108

rd10動物を、硝子体内注射(IVT)を介してLP−DF003で処置したとき、同様の結果が得られた。注射された眼は、生存光受容体の列数の顕著な増加を示した(処置4.66±0.45SEM、対側:1.57±0.17SEM、n=8、p=0.0002)。この増加は、機能的ERG応答の対応する増加を反映しており、PN30は、処置された眼で、約250μVへの非常に顕著な増加を示した。

0109

全体として、様々な網膜色素変性症モデル動物におけるLP−DF003処置の結果は非常に勇気づけられるものであり、ヒト網膜色素変性症の数種の異なる形態に対する変異非依存的な処置の開発におけるLP−DF003の有望性を強く際立たせるものである。

0110

リポソームに封入されたSp−8−Br−PET−cGMPSのin vivo効果を、通常のSp−8−Br−PET−cGMPSと上記モデル動物において比較するとき、Sp−8−Br−PET−cGMPSの封入による生物学的能力の改善が、DF003とLP−DF003との比較で見られた改善と同様に観察される。

0111

2.2薬理学
活性化合物DF003は、cGMPのアナログであり、PKG活性を非常に特異的に阻害する。この阻害は特にPKG1a及びPKGipアイソフォームに当てはまる一方で、PKG2はあまり阻害されない。2つの他の潜在標的CNGC及びプロテインキナーゼA(PKA)アイソフォーム1及び2の阻害定数は、PKGアイソフォームの阻害定数よりも2〜3log単位高い(表2)。cGMP及びそのアナログは、PKG及びCNGCを標的とするが、PKA、PDE又はさらにHCNチャネル活性も干渉しうる。表に、これらの標的に対するDF003の阻害定数(K)及び(入手可能な場合に)IC50値を示す。

0112

2.3薬物動態
遊離DF003又はLP−DF003のいずれかの単回注射を初回用量20mg/kgで受けた成体ラット(3ヶ月齢)において、薬物動態試験を実施した。結果を図4に示す。遊離DF003は、非常に迅速に血流から排出されるが(推定半減期:10〜15分)、LP−DF003を投与したときは、DF003が高レベルで血流内に留まる。ここで推定半減期は、90〜100倍の半減期延長に相当する24時間であった。

0113

リポソーム(例えば、DF003含有)の網膜への最適な送達を確保するために、マウス及びラットの両方において、リポソーム薬物送達系に封入された化合物を、様々な適用パラダイムで試験した。これらのパラダイムには、表面適用(点眼剤)、眼内への硝子体内注射、眼周囲のテノン嚢内へのテノン嚢下注射、腹腔内注射、及び静脈内注射が含まれた。リポソーム送達系内において蛍光トレーサー化合物を使用することにより、化合物の送達を、走査レーザー検眼鏡(SLO;図5a〜5d)を使用して直接的に追跡することが可能であった。マウス及びラットにおいて、静脈内に適用された蛍光トレーサー(例えば、フルオレセイン)は、別様では数時間以内に血流から排除される。

0114

注目すべきことに、眼への又は眼内への直接適用では、薬物は網膜へ全く又はほとんど全く送達されないが、理由はおそらく、リポソームが眼の非網膜構造(例えば、硝子体)に強く接着するためである。対照的に、リポソームの全身投与では、静脈内注射及び腹腔内注射のいずれも、網膜における化合物の強力な取込みに至った。この理由は、一方で、血流中の循環が延長されたことにより(参考.図4)、及び他方で、血液眼関門を渡って神経網膜内に入る標的化されたトランスサイトーシスが促進されたことにより、説明されうる。リポソーム製剤を与えたマウスでは、蛍光トレーサーは、単回腹腔内注射後少なくとも4日間、SLOを介して網膜で直接的に視覚化することができ(図5a〜5d)、ラットでは(図示せず)、トレーサーは、注射後少なくとも10日間、検出可能であった。

0115

2.4.毒性学
最大2ヶ月間LP−DF003(i.p.)で処置したマウス及びラット並びに未処置対照を、in vivoで死後ルーチン的検査したが、薬物の毒性作用について何ら肉眼的証拠は見られなかった。

0116

in vivo処置動物は、挙動(例えば、感情鈍麻円背亀背)、被毛外観(例えば、脱毛、油性被毛)、又は皮膚(例えば、変色、出血)において、何ら変化は示されなかった。in vivoの眼の試験で、異常(例えば、水晶体混濁白内障)は見られなかったが、機能的ERG試験では、LP−DF003処置動物において、未処置対照と比較して良好な性能が明らかにされた。重要なことに、処置及び未処置動物は、生後の最初2ヶ月の間に正常な体重増加を示し、全体的に互いに区別できなかった(データ示さず)。同様に、内臓器官心臓肝臓腎臓、脳)の肉眼による死後検査において、LP−DF003処置マウス及びラットに異常(器官の大きさ及び形態、呈色/還流)は見られなかった。マウスを最も高い用量のLP−DF003(200μl i.p.、毎日)で処置したとき、一部の動物の脾臓が対照よりも大きく見えたが、脂質の投与に関連する現象でありうる。この現象は動物に負の影響を与えていないようであったが、さらに評価し、薬物製剤における脂質濃度をこの現象を考慮して構成しうる。

実施例

0117

まとめるに、これらの予備データに基づいて、使用した実験条件下で動物に何らかの明確な及び強力な毒性学的作用があるとの根拠になるものはない。特に、ヒト適用において硝子体内注射が想定される場合には、適用されるLP−DF003の用量は、マウス及びラット実験で使用した用量の少なくとも400〜1000分の1の用量でありうる。

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