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技術 アシネトバクター(Acinetobacter)O−オリゴサッカリルトランスフェラーゼおよびその使用

出願人 ヴァックスニューモエルエルシー
発明者 フェルドマンマリオナスルモハメドアデル
出願日 2016年2月26日 (4年10ヶ月経過) 出願番号 2017-545671
公開日 2018年3月22日 (2年9ヶ月経過) 公開番号 2018-507693
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理 化合物または医薬の治療活性 ペプチド又は蛋白質 突然変異または遺伝子工学 微生物による化合物の製造 酵素・酵素の調製 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤
主要キーワード 負荷体 スキャンイベント 制限オーバー MSモジュール 未処理ファイル バイオフィルム形成能 補足資料 大注入
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

本願は、ワクチンを作製するための方法およびO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(O−OTase)の使用を提供する。本願は特に、PglLComPO−OTaseを用いるピリン様タンパク質ComPのグリコシル化を含む、糖タンパク質合成方法を提供する。このほか、PglLComPO−OTaseを用いるComPのグリコシル化によって合成した糖タンパク質の、特にストレプトコッカス(Streptococcus)に対するワクチンを含めたワクチンの調製などへの使用が提供される。

概要

背景

アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)およびA.ノソコミアリス(A.nosocomialis)は、アシネトバクター・カルコセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)−A.バウマンニ(A.baumannii)(Acb)複合体の臨床的に重要なメンバーであり、重要な日和見性の院内病原菌である(Wisplinghoffら,2012)。両菌株とも、消毒、乾燥に対する顕著な耐性のほか、いずれも病院での菌の生存率を高める多剤耐性表現型を獲得する能力を示すことなどの理由から、厄介な病原菌として出現した。さらに、世界中の病院でAcb内に汎耐性菌株が分離される例が後を絶たない(Arroyoら,2009;Gottigら,2014)。Acbのメンバーの抗生物質耐性機序が精力的に研究されている(Gordonら,2010)が、その病原性機序に関してはよくわかっていない。特定されている病原性因子としては、外膜タンパク質A(OmpA)、バイオフィルム形成能菌体外多糖リポ多糖LPS)、タンパク質グリコシル化系および莢膜が挙げられる(Choiら,2008;Choiら,2009;Gordonら,2010;Iwashkiwら,2012;Lees−Millerら,2013)。このほかVI型分泌系(T6SS)が特定されているが、病理発生機序での役割は明らかにされていない(Carruthersら,2013;Weberら,2013)。

A.バイリイ(A.baylyi)は、アシネトバクター(Acinetobacter)属の非病原性のメンバーであり、遺伝子が取り扱いやすく天然コンピテンスを示すことを特徴とする。このような特性から、A.バイリイ(A.baylyi)はアシネトバクター(Acinetobacter)属の分子学的研究および遺伝学的研究のモデル微生物として広く用いられている(Vaneechoutteら,2006;de Berardinisら,2008;Brzoskaら,2013)ほか、バイオレメディエーションにも利用されている(Abd−El−Haleemら,2002;Maraら,2012)。アシネトバクター(Acinetobacter)属のメンバーはいずれも、その病原性に関係なく、タンパク質グリコシル化系を有する(Iwashkiwら,2012)。

炭水化物部分タンパク質基質共有結合であるタンパク質グリコシル化は、最も多くみられるタンパク質翻訳後修飾であり(Varki,1993)、生命のあらゆる領域で起こる(Neuberger,1938;Sleytr,1975;MescherおよびStrominger,1976)。タンパク質グリコシル化の主な種類にはN−グリコシル化およびO−グリコシル化がある。両過程とも、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OTase)依存性のものとOTase非依存性のものとに分けられる(NothaftおよびSzymanski,2010;Iwashkiwら,2013)。OTasesは、細胞質内グリコシルトランスフェラーゼGT)によって予めウンデカプレニルピロリン酸脂質キャリア上に集合したグリカン標的タンパク質への転移触媒する酵素である。高感度分析技術の開発によって、多数の細菌種にOTase依存性タンパク質グリコシル化が確認されている。このような細菌種としては、カンピロバクター(Campylobacter)属、ナイセリア(Neisseria)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、フランシセラ(Francisella)属、ビブリオ(Vibrio)属、バークホルデリア(Burkholderia)属およびバクテロイデス(Bacteroides)属が挙げられる(Szymanskiら,1999;Faridmoayerら,2007;Egge−Jacobsenら,2011;Balonovaら,2012;Gebhartら,2012;Coyneら,2013;Lithgowら,2014)。グリコシル化は一般に、タンパク質の安定性、細菌の接着鞭毛繊維の集合、バイオフィルムの形成および病原性に影響を及ぼすことが多い(Logan,2006;Iwashkiwら,2013)。最近、アシネトバクター(Acinetobacter)属にOTase依存性で遍在性O結合タンパク質グリコシル化系が発見されている。この系は、A.バウマンニ(A.baumannii)のバイオフィルム形成および病原性に必要なものであった(Iwashkiwら,2012)。A.バウマンニ(A.baumannii)のいくつかの菌株では、グリカン構造の特徴も明らかにされているほか、多岐にわたる炭水化物多様性が確認されている(Scottら,2014)。

O−グリコシル化に関与するOTase(O−OTase)は一次アミノ酸配列に高い相同性共有しないが、O−Otaseには例外なくWzy_Cスーパーファミリードメインが含まれている(PowerおよびJennings,2003)。PglLの汎用的な90のO−OtaseおよびWaaL O−抗原リガーゼオルソログは、Wzy_C スーパーファミリーの最もよく特徴付けられた2種類の酵素である。O−OTaseとWaaLリガーゼは類似した反応、すなわち、脂質結合グリカンをそれぞれアクセプタータンパク質またはリピドAに転移させる反応を触媒するため、バイオインフォマテクス法のみに基づいてO−OTaseを同定するのは困難であることが明らかにされている(HugおよびFeldman,2011)。大腸菌(E.coli)のO−抗原リガーゼ(H337)と髄膜炎菌(N.meningitidis)のO−OTase(H349)のトポロジーが類似した保存されたヒスチジン残基に変異を誘発するとグリカン転移活性消失することから、上記の2つの酵素は進化的にも機構的にも近縁であると思われる(Perezら,2008;Ruanら,2012;Musumeciら,2014)。最近、PglL O−OTaseのオルソログとWzy_C スーパーファミリーの他の酵素とを上手く分けるPglL_AおよびPglL_Bの隠れマルコフモデル(HMM)が明らかにされた(Powerら,2006;Schulzら,2013)。

O−OTaseは多くの場合、そのコグネイト標的タンパク質の下流にコードされている。この遺伝子配置はIV型線毛(Tfp)系をコードするグラム陰性微生物によくみられ、この場合、主要ピリンサブユニット遺伝子はコグネイトOTase遺伝子のすぐ5’側にある(Schulzら,2013)。例えば、緑膿菌(P.aeruginosa)1244菌株の主要ピリンであるPilAは、pilAのすぐ下流にコードされているO−OTase、PilO(のちにTfpOに改名)によってグリコシル化される(Castric,1995;Kusら,2004)。グリコシル化欠失変異株は、マウス呼吸器感染症モデルでは収縮運動が低下し、野生型によって打ち負かされることから、この修飾は病原性に何らかの役割を担っているものと考えられる(Kusら,2004;Smedleyら,2005)。P.シリンガエ(P.syringae)にもこれと同じ遺伝子配置およびグリコシル化表現型がみられる(Nguyenら,2012)。

アシネトバクター(Acinetobacter)種にはこのほか、ピリンの翻訳後修飾が確認されている。A.バイリイ(A.baylyi)ADP1では、ゲノム内にWzy_Cスーパーファミリードメイン含有タンパク質2種類がコードされている。一方の遺伝子は、ピリン様タンパク質ComPをコードする遺伝子のすぐ下流にみられるのに対し、もう一方の遺伝子は遠位のグリカン生合成遺伝子クラスター内にみられる。comP遺伝子の下流にコードされていると予測されるOTaseの変異がComPの電気泳動移動度に影響を及ぼしたことから、この遺伝子がComP特異的OTaseをコードしている可能性が示唆される(Porstendorferら,2000;Schulzら,2013)。さらに、医学的に重要なA.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株によるTfpの機能的産生を明らかにしたこれまでの研究の過程ではほかにも、見かけの分子量が異なる2種類の分子形態のPilAが同定され、Acbメンバーのピリンも翻訳後修飾を受けるとする仮説を立てるに至った(Hardingら,2013;Carruthersら,2013)。

OTaseは糖鎖工学コンジュゲートワクチンの強力なツールとなる。酵素によるグリカンとタンパク質と結合には、糖の化学的結合に比べていくつかの利点がある。OTaseは緩い特異性を示すが、現時点で知られているOTaseにはいくつかの制約がある。例えば、PglBおよびPglLなどの既知の酵素はいずれも、還元末端グルコースを含むグリカンの転移に成功を収めた例がない。PglBは還元末端にアセチル化糖が必要であることがわかっている(Wackerら,2006)。PglLでは還元末端にガラクトースを有する糖を転移させることができたが(Faridmoayerら,2008)、還元末端にグルコースを含む糖をタンパク質に転移させることは示されていない。このことは、ストレプトコッカス(Streptococcus)に対するワクチンの合成に極めて重要である。ストレプトコッカス(Streptococcus)の莢膜多糖体は、ほとんどが還元末端にグルコースを含むものである(Bentleyら,2006)。Prevnar 13などの認可されている肺炎球菌(S.pneumoniae)のワクチンには莢膜血清型が最大13種類含まれている。さらに多くの血清型を含む優れたワクチンが必要とされている。現在用いられているOTaseで、還元末端にグルコースを含む上記の細菌の莢膜を含有するコンジュゲートの作製に有用なものはなく、このため、ストレプトコッカス(Streptococcus)に対するワクチンの生産への用途はほとんどない。

以上の背景に関する情報は、本出願者が本発明と関連する可能性があると考える既知の情報を提供することを目的として記載したものである。上記の情報がいずれも本発明に対する先行技術をなすものであることを認めることが、必ずしも意図されることも、そのように解釈されるべきであることもない。

概要

本願は、ワクチンを作製するための方法およびO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(O−OTase)の使用を提供する。本願は特に、PglLComPO−OTaseを用いるピリン様タンパク質ComPのグリコシル化を含む、糖タンパク質合成方法を提供する。このほか、PglLComPO−OTaseを用いるComPのグリコシル化によって合成した糖タンパク質の、特にストレプトコッカス(Streptococcus)に対するワクチンを含めたワクチンの調製などへの使用が提供される。なし

目的

本発明と関連する可能性があると考える既知の情報を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

PglLComPO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼを用いるComPのグリコシル化を含む、糖タンパク質合成方法

請求項2

前記ComPを任意選択で第二のタンパク質アジュバントまたはキャリアと融合させる、請求項1に記載の方法。

請求項3

グラム陰性菌で実施する、請求項1または2に記載の方法。

請求項4

前記細菌がアシネトバクター(Acinetobacter)または大腸菌(E.coli)である、請求項3に記載の方法。

請求項5

前記グリコシル化が、O−グリコシル化、N−グリカンO抗原または莢膜多糖体に由来する糖を用いるものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

前記莢膜多糖体がストレプトコッカス(Streptococcus)の莢膜である、請求項5に記載の方法。

請求項7

前記ストレプトコッカス(Streptococcus)がストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcuspneumoniae)である、請求項6に記載の方法。

請求項8

前記N−グリカンが、カンピロバクター(Campylobacter)に由来するものである、請求項5に記載の方法。

請求項9

前記N−グリカンがカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacterjejuni)のN−七糖である、請求項8に記載の方法。

請求項10

前記アシネトバクター(Acinetobacter)が、A.バイリイ(A.baylyi)、A.バウマンニ(A.baumannii)、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)またはA.カルコセティカス(A.calcoaceticus)である、請求項4に記載の方法。

請求項11

ComPのグリコシル化のためのO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。

請求項12

前記グリコシル化をグラム陰性菌で組換えにより生じさせる、請求項11に記載のO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。

請求項13

前記細菌がアシネトバクター(Acinetobacter)または大腸菌(E.coli)である、請求項12に記載のO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。

請求項14

前記グリコシル化が、O−グリコシル化、N−グリカン、O抗原または莢膜多糖体に由来する糖を用いるものである、請求項11〜13のいずれか1項に記載のO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。

請求項15

前記莢膜多糖体が、ストレプトコッカス(Streptococcus)由来のものである、請求項14に記載のO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。

請求項16

前記ストレプトコッカス(Streptococcus)がストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcuspneumoniae)である、請求項15に記載のO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。

請求項17

前記N−グリカンが、カンピロバクター(Campylobacter)に由来するものである、請求項14に記載のO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。

請求項18

前記N−グリカンがカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacterjejuni)のN−七糖である、請求項17に記載のO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。

請求項19

PglLComPである、請求項13〜18のいずれか1項に記載のO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ。

請求項20

請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法に従って合成した糖タンパク質を含む、ワクチン

請求項21

ストレプトコッカス(Streptococcus)ワクチンである、請求項20に記載のワクチン。

請求項22

前記ストレプトコッカス(Streptococcus)がストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcuspneumoniae)である、請求項21に記載のワクチン。

請求項23

ComPまたはグリコシル化部位を有するComPのフラグメントを含む融合タンパク質である、糖タンパク質。

請求項24

タンパク質のグリコシル化へのPglLComPの使用。

請求項25

ストレプトコカス(Streptoccocus)莢膜によるタンパク質のグリコシル化への請求項24に記載の使用。

請求項26

前記ストレプトコッカス(Streptococcus)がストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcuspneumoniae)である、請求項25に記載の使用。

技術分野

0001

本願は分子微生物学の分野に関する。より具体的には、本願はO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ、具体的にはワクチン用途へのPglLComPO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼの使用に関する。

背景技術

0002

アシネトバクターバウマンニ(Acinetobacter baumannii)およびA.ノソコミアリス(A.nosocomialis)は、アシネトバクター・カルコセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)−A.バウマンニ(A.baumannii)(Acb)複合体の臨床的に重要なメンバーであり、重要な日和見性の院内病原菌である(Wisplinghoffら,2012)。両菌株とも、消毒、乾燥に対する顕著な耐性のほか、いずれも病院での菌の生存率を高める多剤耐性表現型を獲得する能力を示すことなどの理由から、厄介な病原菌として出現した。さらに、世界中の病院でAcb内に汎耐性菌株が分離される例が後を絶たない(Arroyoら,2009;Gottigら,2014)。Acbのメンバーの抗生物質耐性機序が精力的に研究されている(Gordonら,2010)が、その病原性機序に関してはよくわかっていない。特定されている病原性因子としては、外膜タンパク質A(OmpA)、バイオフィルム形成能菌体外多糖リポ多糖LPS)、タンパク質グリコシル化系および莢膜が挙げられる(Choiら,2008;Choiら,2009;Gordonら,2010;Iwashkiwら,2012;Lees−Millerら,2013)。このほかVI型分泌系(T6SS)が特定されているが、病理発生機序での役割は明らかにされていない(Carruthersら,2013;Weberら,2013)。

0003

A.バイリイ(A.baylyi)は、アシネトバクター(Acinetobacter)属の非病原性のメンバーであり、遺伝子が取り扱いやすく天然コンピテンスを示すことを特徴とする。このような特性から、A.バイリイ(A.baylyi)はアシネトバクター(Acinetobacter)属の分子学的研究および遺伝学的研究のモデル微生物として広く用いられている(Vaneechoutteら,2006;de Berardinisら,2008;Brzoskaら,2013)ほか、バイオレメディエーションにも利用されている(Abd−El−Haleemら,2002;Maraら,2012)。アシネトバクター(Acinetobacter)属のメンバーはいずれも、その病原性に関係なく、タンパク質グリコシル化系を有する(Iwashkiwら,2012)。

0004

炭水化物部分タンパク質基質共有結合であるタンパク質グリコシル化は、最も多くみられるタンパク質翻訳後修飾であり(Varki,1993)、生命のあらゆる領域で起こる(Neuberger,1938;Sleytr,1975;MescherおよびStrominger,1976)。タンパク質グリコシル化の主な種類にはN−グリコシル化およびO−グリコシル化がある。両過程とも、オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(OTase)依存性のものとOTase非依存性のものとに分けられる(NothaftおよびSzymanski,2010;Iwashkiwら,2013)。OTasesは、細胞質内グリコシルトランスフェラーゼGT)によって予めウンデカプレニルピロリン酸脂質キャリア上に集合したグリカン標的タンパク質への転移触媒する酵素である。高感度分析技術の開発によって、多数の細菌種にOTase依存性タンパク質グリコシル化が確認されている。このような細菌種としては、カンピロバクター(Campylobacter)属、ナイセリア(Neisseria)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、フランシセラ(Francisella)属、ビブリオ(Vibrio)属、バークホルデリア(Burkholderia)属およびバクテロイデス(Bacteroides)属が挙げられる(Szymanskiら,1999;Faridmoayerら,2007;Egge−Jacobsenら,2011;Balonovaら,2012;Gebhartら,2012;Coyneら,2013;Lithgowら,2014)。グリコシル化は一般に、タンパク質の安定性、細菌の接着鞭毛繊維の集合、バイオフィルムの形成および病原性に影響を及ぼすことが多い(Logan,2006;Iwashkiwら,2013)。最近、アシネトバクター(Acinetobacter)属にOTase依存性で遍在性O結合タンパク質グリコシル化系が発見されている。この系は、A.バウマンニ(A.baumannii)のバイオフィルム形成および病原性に必要なものであった(Iwashkiwら,2012)。A.バウマンニ(A.baumannii)のいくつかの菌株では、グリカン構造の特徴も明らかにされているほか、多岐にわたる炭水化物多様性が確認されている(Scottら,2014)。

0005

O−グリコシル化に関与するOTase(O−OTase)は一次アミノ酸配列に高い相同性共有しないが、O−Otaseには例外なくWzy_Cスーパーファミリードメインが含まれている(PowerおよびJennings,2003)。PglLの汎用的な90のO−OtaseおよびWaaL O−抗原リガーゼオルソログは、Wzy_C スーパーファミリーの最もよく特徴付けられた2種類の酵素である。O−OTaseとWaaLリガーゼは類似した反応、すなわち、脂質結合グリカンをそれぞれアクセプタータンパク質またはリピドAに転移させる反応を触媒するため、バイオインフォマテクス法のみに基づいてO−OTaseを同定するのは困難であることが明らかにされている(HugおよびFeldman,2011)。大腸菌(E.coli)のO−抗原リガーゼ(H337)と髄膜炎菌(N.meningitidis)のO−OTase(H349)のトポロジーが類似した保存されたヒスチジン残基に変異を誘発するとグリカン転移活性消失することから、上記の2つの酵素は進化的にも機構的にも近縁であると思われる(Perezら,2008;Ruanら,2012;Musumeciら,2014)。最近、PglL O−OTaseのオルソログとWzy_C スーパーファミリーの他の酵素とを上手く分けるPglL_AおよびPglL_Bの隠れマルコフモデル(HMM)が明らかにされた(Powerら,2006;Schulzら,2013)。

0006

O−OTaseは多くの場合、そのコグネイト標的タンパク質の下流にコードされている。この遺伝子配置はIV型線毛(Tfp)系をコードするグラム陰性微生物によくみられ、この場合、主要ピリンサブユニット遺伝子はコグネイトOTase遺伝子のすぐ5’側にある(Schulzら,2013)。例えば、緑膿菌(P.aeruginosa)1244菌株の主要ピリンであるPilAは、pilAのすぐ下流にコードされているO−OTase、PilO(のちにTfpOに改名)によってグリコシル化される(Castric,1995;Kusら,2004)。グリコシル化欠失変異株は、マウス呼吸器感染症モデルでは収縮運動が低下し、野生型によって打ち負かされることから、この修飾は病原性に何らかの役割を担っているものと考えられる(Kusら,2004;Smedleyら,2005)。P.シリンガエ(P.syringae)にもこれと同じ遺伝子配置およびグリコシル化表現型がみられる(Nguyenら,2012)。

0007

アシネトバクター(Acinetobacter)種にはこのほか、ピリンの翻訳後修飾が確認されている。A.バイリイ(A.baylyi)ADP1では、ゲノム内にWzy_Cスーパーファミリードメイン含有タンパク質2種類がコードされている。一方の遺伝子は、ピリン様タンパク質ComPをコードする遺伝子のすぐ下流にみられるのに対し、もう一方の遺伝子は遠位のグリカン生合成遺伝子クラスター内にみられる。comP遺伝子の下流にコードされていると予測されるOTaseの変異がComPの電気泳動移動度に影響を及ぼしたことから、この遺伝子がComP特異的OTaseをコードしている可能性が示唆される(Porstendorferら,2000;Schulzら,2013)。さらに、医学的に重要なA.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株によるTfpの機能的産生を明らかにしたこれまでの研究の過程ではほかにも、見かけの分子量が異なる2種類の分子形態のPilAが同定され、Acbメンバーのピリンも翻訳後修飾を受けるとする仮説を立てるに至った(Hardingら,2013;Carruthersら,2013)。

0008

OTaseは糖鎖工学コンジュゲートワクチンの強力なツールとなる。酵素によるグリカンとタンパク質と結合には、糖の化学的結合に比べていくつかの利点がある。OTaseは緩い特異性を示すが、現時点で知られているOTaseにはいくつかの制約がある。例えば、PglBおよびPglLなどの既知の酵素はいずれも、還元末端グルコースを含むグリカンの転移に成功を収めた例がない。PglBは還元末端にアセチル化糖が必要であることがわかっている(Wackerら,2006)。PglLでは還元末端にガラクトースを有する糖を転移させることができたが(Faridmoayerら,2008)、還元末端にグルコースを含む糖をタンパク質に転移させることは示されていない。このことは、ストレプトコッカス(Streptococcus)に対するワクチンの合成に極めて重要である。ストレプトコッカス(Streptococcus)の莢膜多糖体は、ほとんどが還元末端にグルコースを含むものである(Bentleyら,2006)。Prevnar 13などの認可されている肺炎球菌(S.pneumoniae)のワクチンには莢膜血清型が最大13種類含まれている。さらに多くの血清型を含む優れたワクチンが必要とされている。現在用いられているOTaseで、還元末端にグルコースを含む上記の細菌の莢膜を含有するコンジュゲートの作製に有用なものはなく、このため、ストレプトコッカス(Streptococcus)に対するワクチンの生産への用途はほとんどない。

0009

以上の背景に関する情報は、本出願者が本発明と関連する可能性があると考える既知の情報を提供することを目的として記載したものである。上記の情報がいずれも本発明に対する先行技術をなすものであることを認めることが、必ずしも意図されることも、そのように解釈されるべきであることもない。

発明が解決しようとする課題

0010

本発明の目的は、ワクチン用途のための糖タンパク質の作製へのO−OTaseの使用を提供することである。

課題を解決するための手段

0011

本発明の一態様では、PglLComPO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼを用いるComPのグリコシル化を含む、糖タンパク質の合成方法が提供される。この方法は、(例えばA.バイリイ(A.baylyi)、A.バウマンニ(A.baumannii)、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)またはA.カルコアセティカス(A.calcoaceticus)を含めた)アシネトバクター(Acinetobacter)または大腸菌(E.coli)などのグラム陰性菌で実施することができる。グリコシル化には、O−グリコシル化により得られる糖、N−グリカン、O抗原、莢膜多糖体などを用いることができる。特定の一実施形態では、N−グリカンはカンピロバクター(Campylobacter)に由来するもの、例えばカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)のN−ヘパサッカリド(hepatasaccharide)などである。これまでに知られているOTaseとは異なり、PglLComPを用いて還元末端にグルコースを含有する莢膜多糖体とタンパク質キャリアとを効率的に結合させることができる。このような莢膜はストレプトコッカス(Streptococcus)属によくみられる。本願は、PglLComPの活性により得られ適切なキャリアと結合させた肺炎球菌(S.pneumoniae)由来莢膜を含有する糖タンパク質を用いる、マウスの免疫応答の発生を提供する。別の実施形態では、ComPを任意選択で第二のタンパク質、アジュバントまたはキャリアと融合させることができる。本発明の別の態様では、タンパク質のグリコシル化、例えば、特にストレプトコッカス(Streptococcus)がストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)であるストレプトコカス(Streptoccocus)莢膜によるタンパク質のグリコシル化へのPglLComPの使用が提供される。

0012

本発明の別の態様では、ComPのグリコシル化のためのO−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(O−OTase)が提供される。グリコシル化は、(例えばA.バイリイ(A.baylyi)、A.バウマンニ(A.baumannii)、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)またはA.カルコアセティカス(A.calcoaceticus)を含めた)アシネトバクター(Acinetobacter)または大腸菌(E.coli)などのグラム陰性菌で組換えにより生じさせることができる。グリコシル化には、O−グリコシル化により得られる糖、N−グリカン、O−抗原、莢膜多糖体などを用いることができる。特定の一実施形態では、N−グリカンはカンピロバクター(Campylobacter)に由来するもの、例えばカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)のN−ヘパタサッカリド(hepatasaccharide)またはストレプトコッカス(Streptococcus)由来の莢膜多糖体などである。特定の一実施形態では、O−OTaseはPglLComPである。別の実施形態では、莢膜多糖体はストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)などのストレプトコッカス(Streptococcus)の莢膜である。したがって、本願はストレプトコッカス(Streptococcus)、より具体的にはストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)に対するワクチンを提供する。

0013

本発明のさらなる態様では、本明細書に記載される方法に従って合成した糖タンパク質を含む、ワクチンを提供する。

0014

本発明のさらなる態様では、ComPまたはグリコシル化部位を有するComPのフラグメントを含む融合タンパク質である、糖タンパク質が提供される。

0015

本発明ならびにそのほかの態様およびさらなる特徴の理解をさらに深めるため、添付図面とともに用いる以下の説明を参照する。

図面の簡単な説明

0016

アシネトバクター(Acinetobacter)菌種の2つのOTase遺伝子をコードする推定O−OTaseのゲノムおよびドメインの構造を示す図である。(A)A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株の染色体がコードするOTaseのゲノムコンテキスト。(B)TfpOM2およびPglLM2に存在するWzy_Cスーパーファミリー(cl04850)およびDUF3366のドメイン。(C)A.バイリイ(A.baylyi)ADP1の染色体がコードするOTaseのゲノムコンテキスト。(D)PglLComPおよびPglLADP1に存在するWzy_Cスーパーファミリー(cl04850)およびDUF3366のドメイン。PglLComPの下の長方形はDUF3366ドメインの一部分を表す。
(HexNAc)2、ヘキソースおよびN−アセチルデオキシヘキソースを含有する四糖によるTfpO依存性のPilAM2グリコシル化を示す図である。(A)材料および方法に記載される通りに、図示される菌株の表面タンパク質を剪断によって調製し、次いで、全細胞溶解物のSDS−PAGEによる分離およびウエスタンブロット解析を実施した。ウサギ抗PilAM2を用いてM2菌株のPilAM2を同定した。M2ΔtfpO::kan変異株のPilAM2は低分子形態としてのみ存在し、PilAM2の翻訳後修飾にはTfpOが必要であることが示された。M2 pilA+菌株およびM2 tfpO+菌株は、それぞれ補完されたpilA変異株およびtfpO変異株であった。「Gly」はグリコシル化型のタンパク質を表す。(B)M2菌株および超線毛型変異株の表面からPilAM2を剪断し、沈降させ、SDS−PAGEによって分離し、クーマシー染色により可視化した。PilAM2によるバンド切り出し、トリプシン処理してMS/MS解析に供した。
PilAM2様グリコシル化の保存されたカルボキシ末端セリンへの依存性を示す図である。(A)緑膿菌(P.aeruginosa)1244菌株および選択したアシネトバクター(Acinetobacter)菌株のPilAタンパク質のカルボキシ末端領域アライメント。tfpOホモログをコードするアシネトバクター(Acinetobacter)菌株はいずれも、それぞれのPilAタンパク質にカルボキシ末端セリンが含まれている。(B)PilAM2発現および電気泳動移動度を調べた全細胞抽出物のウエスタンブロット解析。PilA[S132A]およびPilA[S136A]を発現するM2菌株誘導体構築し、抽出物の特徴を明らかにした。セリン132はグリコシル化に不要であったが、C末端セリンであるセリン136はグリコシル化に必要であった。(C)M2菌株の自然形質転換にはピリングリコシル化は必要ではない。PilAM2をグリコシル化することができなかった変異株でも自然形質転換が可能であった。
ピリングリコシル化には主要多糖抗原遺伝子座(MPA)が必要であったことを示す図である。(A)M2菌株の保存されたfkpA遺伝子とlldP遺伝子との間に位置するMPA遺伝子座の遺伝子構成。Huら,2013を改変。(B)MPA遺伝子座変異株のPilAM2発現および電気泳動移動度を調べた全細胞抽出物のウエスタンブロット解析。ΔweeH::kan変異株のPilAM2はtfpO::kan変異株のPilAM2と同じ電気泳動移動度で泳動し、これがグリコシル化ではないことが示された。ほかの3種類のグリコシルトランスフェラーゼの欠失では、PilAM2タンパク質の電気泳動移動度は中間の値であった。WT PilAに最も近い移動度で移動したのはwafY::kan変異株のPilAであり、wafZ::kan変異株のPilA、wagB::kan変異株のPilAがこれに次いだ。補完された変異株はいずれもPilAM2をグリコシル化した。
PglLM2は汎用O−OTaseであり、TfpOM2と同じ脂質結合グリカンドナーを用いることを示す図である。(A)OmpA−His発現および電気泳動移動度を調べた全細胞抽出物のウエスタンブロット解析。OmpA−Hisは、M2菌株ならびに同系のtfpOM2::kan変異株およびpglLM2::kan変異株によるグリコシル化のベイトタンパク質としての役割を果たした。いずれの菌株もOmpA−Hisを発現したが、pglLM2::kan変異株のOmpA−Hisは高い電気泳動移動度で泳動し、グリコシル化がみられないことが示された。(B)ニッケルアフィニティークロマトグラフィーを用いてグリコシル化OmpA−Hisを可溶化膜から精製し、SDS−PAGEによって分離し、クーマシー染色によって可視化した。OmpA−Hisをゲルから切り取り、MS/MS解析によって特徴を明らかにした。
A.バイリイ(A.baylyi)ADP1のO−OTaseの活性を示す図である。(A)A.バイリイ(A.baylyi)ADP1ならびに同系のΔpglLComP変異株およびΔpglLADP1変異株の全細胞溶解物のComP−His発現を調べたウエスタンブロット解析。ΔpglLComP変異株にComP−Hisの電気泳動移動度の増大がみられ、この菌株にはピリングリコシル化が起こらないことがわかる。(B)バイリイ(A.baylyi)ADP1、同系のΔpglLComP変異株およびΔpglLADP1変異株ならびに青枯病菌(Ralstonia solanacearum)から得たLPSの銀染色。青枯病菌(R.solanacearum)LPSに観察されたラダー形成がないことからわかるように、A.バイリイ(A.baylyi)にはO抗原がない。(C、D)hisタグ化タンパク質であるDsba1(C)またはOmpA−His(D)を組換え発現するA.バイリイ(A.baylyi)ADP1、同系のΔpglLComP変異株およびΔpglLADP1変異株の全細胞溶解物のウエスタンブロット解析。ΔpglLADP1バックグランドで産生されるHisタグ化タンパク質相対移動度が増大していることから、PglLADP1の発現にはこれらのタンパク質のグリコシル化が必要であったことがわかる。
大腸菌(E.coli)でのTfpOおよびPglL OTaseの異種発現を示す図である。図のようにA.バイリイ(A.baylyi)またはA.バウマンニ(A.baumannii)ATCC19606 OTaseとともにC.ジェジュニ(C.jejuni)脂質結合オリゴ糖(CjLLO)およびHisタグ化DsbA1を発現する大腸菌(E.coli)CLM24の全細胞溶解物のウエスタンブロット解析。ポリクローナル抗his抗体(緑色)を用いてHisタグ化DsbA1を検出し、hR6抗体(赤色)を用いてCjLLOを検出した。黄色に見える両シグナルの共局在は、カンピロバクター(Campylobacter)オリゴ糖によるDsbA1のグリコシル化を示している。これは、大腸菌(E.coli)CLM24にPglLADP1またはPglL19606がCjLLOおよびHisタグ化DsbA1とともに発現した場合にのみ認められる。
A.バイリイ(A.baylyi)ADP1糖タンパク質のZIC−HILIC濃縮を用いて同定されたO−グリカン構造を示す図である。ITMSCIDで断片化することによって、ほぼもっぱらA.バイリイ(A.baylyi)ADP1糖ペプチドのグリカン断片化が起こり、以下のものに対応する複数のタンパク質基質に関して固有のグリカンが4種類同定することが可能である;AおよびD)286−217−HexNAc3からなる五糖(1112.41Da、Q6FCV1_ACIADの92DAAHDAAASVEK103);B、FおよびG)286−217−245−HexNAc2および286−217−HexNAc−245−HexNAcからなる2つの同重体グリコフォーム(1154.41Da、Q6F814_ACIADの344NTAASSVAATHKK356)ならびにCおよびE)286−217−2452−HexNAcからなる五糖(1196.41Da、Q6F814_ACIADの344NTAASSVAATHKK356)。
PglLComPはそのコグネイトピリンタンパク質に対して特異的であるが、TfpOM2はそうではないことを示す図である。(A)異種PilAM2発現および電気泳動移動度を調べた全細胞抽出物のウエスタンブロット解析。A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC19606およびA.バウマンニ(A.baumannii)27413はともにtfpOホモログをコードし、PilAM2がグリコシル化された。tfpOホモログを欠く菌株(A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978およびA.バイリイ(A.baylyi)ADP1)はPilAM2をグリコシル化することができなかった。(B)異種ComP−His発現および電気泳動移動度を調べたウエスタンブロット解析。ComP−Hisが修飾されたのはA.バイリイ(A.baylyi)ADP1のみであり、PglLComPがComPに特異的であることが示された。(C)異種PilA17978発現および電気泳動移動度を調べたウエスタンブロット解析。PilA17978は、その天然の菌株ではPglL17978によってグリコシル化され、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1ではPglLADP1によってグリコシル化されたが、PglLComPによってグリコシル化されることはなかった。
A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株の脂質結合オリゴ糖の合成、TfpOM2依存性ピリングリコシル化およびPglLM2による一般的なO−グリコシル化のモデルを示す図である。主要多糖抗原遺伝子座の遺伝子がコードするタンパク質がウンデカプレニル脂質キャリア上に四糖(HexNAc)−(ヘキサ)−(デオキシ−ヘキサ)−(HexNAc)を合成し、次いで、これが周辺質に転移される。次いで、脂質結合オリゴ糖は、ピリン特異的OTaseであるTfpOによって主要なピリンタンパク質であるPilAに転移されるか、汎用OTaseであるPglLM2によってさらにプロセシングされてOmpAなどのほかのタンパク質に転移され得る。
本願に用いたグリカンの構造を示す図である。構造はFaridmoayerら,2008およびvan Selmら,2003を改変したものである。
PglLComPがC.ジェジュニ(C.jejuni)LLOおよび大腸菌(E.coli)O7抗原をComPに転移させることを示す図である。(A)C.ジェジュニ(C.jejuni)LLOおよび(B)大腸菌(E.coli)O7抗原を共発現したPglLComPを伴って、または伴わずにComPを発現する全大腸菌(E.coli)CLM24の全細胞溶解物に関するウエスタンブロット解析。レーン1は、OTaseを共発現しない非グリコシル化ComPに対応する。レーン2では、ComPとPglLComPが共発現している。(A)抗his抗体および抗グリカン抗体に反応し電気泳動移動度の小さいバンドは、C.ジェジュニ(C.jejuni)LLOによるComPのグリコシル化を示している。(B)抗hisに反応し電気泳動移動度の小さいバンドは、大腸菌(E.coli)O7抗原サブユニットによるグリコシル化を示している。プロテイナーゼKで消化すると糖タンパク質シグナルが消失する(レーン3)。モノクローナル抗his抗体を用いて発現を調べた。
PglLComPは肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型14由来のCPSサブユニットをComPに転移させることができるが、NmPglLもCjPglBもこれを転移させることができないことを示す図である。hisタグ化した(A)ComPを発現する大腸菌(E.coli)CLM24の細胞溶解物(レーン1)のウエスタンブロット解析。レーン2は、肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型14のCPS合成遺伝子座とPglLComPを共発現する大腸菌(E.coli)CLM24由来のNi−NTA精製タンパク質に対応する。パネルAにおいて、抗His抗体と抗グリカン抗体の両方に反応しレーン1と比較して電気泳動移動度が小さいレーン2のバンドは、ComPがCPSサブユニットによってPglLComP依存性にグリコシル化されたことを示している。
PglLComPは肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型14由来のCPSサブユニットをComPに転移させることができるが、NmPglLもCjPglBもこれを転移させることができないことを示す図である。hisタグ化した(B)DsbAおよび(C)AcrAを発現する大腸菌(E.coli)CLM24の細胞溶解物(レーン1)のウエスタンブロット解析。レーン2は、肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型14のCPS合成遺伝子座とPglLComPを共発現する大腸菌(E.coli)CLM24由来のNi−NTA精製タンパク質に対応する。パネルBおよびCのレーン2にはレーン1と比較して電気泳動移動度が小さいバンドはみられず、NmPglLおよびCjPglBがCPSサブユニットをそれぞれDsbA1およびAcrAに転移させることができないことを示している。モノクローナル抗his抗体およびポリクローナル抗グリカン抗体を用いて発現を調べた。
21日後に採取した免疫後マウス血清に実施した全細胞ELISA視覚的結果を示す図である。ELISAは、(A)非グリコシル化タンパク質に感作させ、二次HRPコンジュゲートIgM抗体で調べたマウス、(B)グリコシル化タンパク質に感作させ、二次HRPコンジュゲート抗IgM抗体で調べたマウスまたは(C)非グリコシル化タンパク質に感作させ、二次HRPコンジュゲート抗IgG抗体で調べたマウスの血清を用いて実施した。
CPSコンジュゲートComPを注射し、肺炎球菌(S.pneumoniae)全細胞に対して反応させた場合のマウスの血清のグラフである。熱で死滅させ固定化した全細胞肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型14を含む96ウェルプレートウェルでマウス10個体(免疫前および免疫後第21日)の血清をインキュベートした。陰性対照として、非グリコシル化タンパク質を注射したマウス10個体の血清を試験した。使用した二次HRPコンジュゲート抗体は、非グリコシル化タンパク質を注射したマウスのマウスIgG抗体またはCPSコンジュゲートComPを注射したマウスのマウスIgM抗体およびマウスIgG抗体に対するものであった。次いで、発色基質TMBによる処理を実施した。HRPコンジュゲートマウスIgG抗体で調べたマウスの血清では、非グリコシル化タンパク質を注射したマウスと比較して650nmでの吸光度値の増大がみられた。
免疫応答を表すグラフである。パネル(A)は、マウス血清に対する全細胞ELISAのデータをまとめて示したものである。パネル(B)は、TMB処理陰性対照(一次抗体無し)または陽性対照(肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型14の莢膜多糖体に対する市販のウサギ抗体)のウェルの650nmでの吸光度値を示したものである。
観察されたIgG免疫応答が肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型14由来のCPSに対するものであることを示す図である。マウス血清、次いで二次蛍光マウス抗IgG抗体を用いて肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型14のCPSの発現を調べた大腸菌(E.coli)CLM37から得たLPSのウエスタンブロット解析。(A)非グリコシル化タンパク質を注射した陰性対照マウスの血清はCPSに対する反応を示さなかった。(B)CPSコンジュゲートComPに感作させたマウスから採取しELISAプレートで反応させた血清は、ウエスタンブロットでCPSに対する反応を示した。陽性対照として市販の抗CPSウサギ抗体を用いた。
現時点でCjPglBおよびNmPglLによってアクセプタータンパク質に転移されることがわかっているグリカンをPglLComPと比較してまとめたものを示す図である。
A.バイリイ(A.baylyi)ADP1 WT、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLADP1およびA.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLcomPにジメチル標識を用いたグリコシル化の定量解析を示す図である。ジメチル標識およびZIC−HILICを用いて、個々の糖ペプチドのグリコシル化を担うO−OTaseを確認した。A.バイリイ(A.baylyi)ADP1 WTに由来し軽い標識で標識された糖ペプチドとA.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLcomPに由来し重い標識で標識された糖ペプチドがほぼ1:1のレベルで観察されたのに対し、中間の重さの標識で標識されたA.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLADP1の糖ペプチドは試料中に検出されなかった。これとは逆に、非グリコシル化ペプチドは全3種類の菌株にほぼ1:1:1のレベルで観察された。AおよびD)糖ペプチド113KLAEPAASAVADQNSPLSAQQQLEQK138(Q6F825_ACIAD)および非グリコシル化ペプチド166AQSVANYLSGQGVSSSR182(Q6FDR2_ACIAD)の軽い同位体置換分子、中間の重さの同位体置換分子および重い同位体置換分子のMSスペクトルによって、全3種類の菌株のグリコシル化を比較することができた。ADP1ΔpglLADP1では、糖ペプチドは観察されなかったが、非グリコシル化ペプチドはほぼ1:1:1の比で観察された。BおよびE)軽い同位体置換分子、中間の重さの同位体置換分子および重い同位体置換分子の抽出イオンクロマトグラムを比較することにより、ADP1ΔpglLADP1由来糖ペプチドが存在せず、非グリコシル化ペプチドが1:1:1の比であることが裏付けられる。C)糖ペプチド113KLAEPAASAVADQNSPLSAQQQLEQK138の重い同位体置換分子の同定を裏付け、同分子がADP1ΔpglLcomPに由来することを裏付けるHCD断片化。F)非グリコシル化ペプチド166AQSVANYLSGQGVSSSR182の中間の重さの同位体置換分子の同定を裏付け、同分子がADP1ΔpglLADP1に由来することを裏付けるHCD断片化。
(A)A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978および(B)A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC19606のOTase(1つまたは複数)のゲノム構造を示す図である。
A.バイリイ(A.baylyi)ADP1で同定された定量的糖ペプチドを示す図である。
A.バイリイ(A.baylyi)ADP1で同定された定量的糖ペプチドを示す図である。

0017

(詳細な説明)
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語はいずれも、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。

0018

本明細書および請求項で使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別の意味を表す場合を除き、複数形の指示対象包含する。

0019

本明細書で使用される「含む」という用語は、後に列挙されるものが非網羅的なものであり、必要に応じて、ほかにも任意の適切な追加の項目、例えば1つまたは複数のさらなる特徴(1つまたは複数)、構成要素(1つまたは複数)および/または成分(1つまたは複数)が含まれても、含まれなくてもよいことを意味することが理解されよう。

0020

配列決定されたアシネトバクター(Acinetobacter)菌種のゲノムの解析(遺伝情報解明)から、アシネトバクター(Acinetobacter)属には、OTaseを2種類コードする菌株がA.バイリイ(A.baylyi)ADP1に加えて複数存在することが明らかになっている。本願では、OTaseは2種類とも機能的であり、その一方の酵素がピリン特異的OTaseとして作用するのに対し、もう一方のOTaseは多岐にわたるタンパク質をグリコシル化することが可能であったことを示す遺伝学的技術およびプロテオミクス技術を提供する。さらに、質量分析を用いて、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株のグリカン構造の特徴を明らかにし、A.バイリイ(A.baylyi)のグリコプロテオームを明らかにした。

0021

近年、細菌のグリコシル化経路が多数確認されている。用いる経路に関係なく、グラム陰性グラム陽性菌ともにN−グリカンおよびO−グリカンの両方が細胞表面アドジンを修飾する場合が多い。グリコシル化された表面結合タンパク質の例としては、大腸菌(E.coli)のAIDA−IおよびTibAのO−グリコシル化(Charbonneauら,2007;Coteら,2013)、シュードモナス(Pseudomonas)、ナイセリア(Neisseria)、ディロバクターノドサス(Dichelobacter nodosus)およびフランシセラ・ツラレンシス(Fransicella tularensis)のIV型ピリン(Castricら,1995、Aasら,2006;Faridmoayerら,2007、Voisinら,2007、Cagatayら,2008、Egge−Jacobsenら,2011)、複数の細菌種のフラジェリン(NothaftおよびSzymanski,2010;Iwashkiwら,2013)、ストレプトコッカス(Streptococcus)菌種のセリンリッチアドヘジン(ZhouおよびWu,2009)ならびにヘモフィルス(Haemophilus)(Grossら,2008)およびアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans)(TangおよびMintz,2010)のHMWGのN−グリコシル化が挙げられる。医学的に重要なAcbメンバーも例外ではなく、これまでの研究のほか本願でも、ピリンおよび複数の外膜タンパク質がO−グリコシル化され、細菌集団内での宿主細胞への付着または非生物表面への付着に有利になり得ることを示す。しかし、これまでのところ、アシネトバクター(Acinetobacter)のピリンサブユニットのグリコシル化が担う生物学的役割は明らかにされていない。特に、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株ΔtfpO::kan変異株は、親菌株と同程度に形質転換が可能であり(図3C)、親菌株と同じ収縮運動表現型を示したほか、表面428露出PilAも同レベルで含まれていた(データ不掲載)。このほか、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1が非生物表面に付着したり、バイオフィルムを形成したりする条件は明らかにされていない。

0022

既に記載したように、緑膿菌(P.aeruginosa)およびP.シリンガエ(P.syringae)では、それぞれPilOおよびTfpOを介するピリングリコシル化が運動性、バイオフィルム形成および毒性に不可欠なものであった(Smedleyら,2005;Nguyenら,2012)。ピリングリコシル化は、A.バイリイ(A.baylyi)(Porstendorferら,2000)でもA.ノソコミアリス(A.nosocomialis)でも、天然のコンピテンスに影響を及ぼすことはなかった(図3C)。とはいえ、O結合タンパク質のグリコシル化がアシネトバクター(Acinetobacter)属に遍在するという性質から、この翻訳後修飾には重要ではあるが未だ明らかにされていない役割があることが示唆される。

0023

本明細書に記載されるように、一部のアシネトバクター(Acinetobacter)菌株はOTaseホモログを2種類コードし、そのうちの一方は一般的なO−グリコシル化を必要とするものであり、もう一方はピリンを特異的に修飾するものである。A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株を含めた医学的に重要なアシネトバクター(Acinetobacter)菌株の大部分は、IVa型主要ピリンサブユニット遺伝子のすぐ下流に位置する連続した2種類のOTaseをコードする。本出願の時点で、全ゲノムを有するA.バウマンニ(A.baumannii)分離株の76%がカルボキシ末端セリンを含むPilAタンパク質をコードしていた。カルボキシ末端セリンを有するPilAタンパク質をコードする遺伝子を含む分離株はいずれも、pilAのすぐ下流にあるtfpOホモログもコードしている。この知見は、緑膿菌(P.aeruginosa)にみられるグループIピリン(PilAI)で報告されている知見(Kusら,2004)と一致する。したがって、ピリン遺伝子には複数の系統、具体的には、カルボキシ末端セリンを有するPilAをコードする対立遺伝子と下流のアクセサリー遺伝子tfpOとを含む系統およびTfpO様活性によってグリコシル化されない系統があるものと思われる。ATCC17978を含めた主要ピリンタンパク質にカルボキシ末端セリンがない分離株はいずれもtfpOホモログをコードせず、アシネトバクター(Acinetobacter)のピリン系統が別々に進化したことと一致する。

0024

医学的に重要なアシネトバクター(Acinetobacter)菌種のOTaseが連続して構成されているのに対し、環境分離株A.バイリイ(A.baylyi)ADP1の2種類のOTaseは染色体上の遠く離れた位置にある。Schulzら(2013)は、comPに隣接してコードされるOTaseホモログのpglLComPがComP修飾を担っていることを明らかにした。in vivoグリコシル化アッセイと組み合わせた変異解析およびグリコプロテオームの特徴付けから、pglLComPがComP特異的OTaseであることがわかっている。一方、2つ目のOTaseであるPglLADP1は、以前示唆されたO抗原リガーゼではなく、複数のタンパク質標的をグリコシル化する汎用O−OTaseである。

0025

本願には、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2がOmpA−Hisをグリコシル化することが可能であることから、M215_10475がコードするPglLM2は、他のあらゆるA.バウマンニ(A.baumannii)菌株にみられる汎用O−OTaseであるPglLが認識するものと同じモチーフを認識することが可能であることを記載する。A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株のPglLM2およびTfpOM2はともに、その標的タンパク質を修飾するのに同じ脂質結合四糖を用いる。本願には、PglLM2がグリカンの2つのサブユニットを転移させることが可能であったのに対し、TfpOM2は単一のグリカン鎖のみを転移させたことを記載する。これまでの研究では、汎用OTaseによってグリカンの2つのサブユニットが転移され(Scottら,2014)、TfpOは長い糖鎖を緑膿菌(P.aeruginosa)ピリンに転移させることができない(Faridmoayerら,2007)ことが明らかにされている。さらに、MPA遺伝子座は、共通の脂質結合四糖の合成を担うタンパク質をコードする遺伝子の供給源であることが確認されている。図10に、MPAクラスターによってO−グリカンが合成されることおよびTfpOM2とPglLM2がこの脂質結合グリカンを共通に用いていることを図示する例示的なモデルを示す。

0026

これまでに多数のタンパク質グリコシル化系が確認されているが、O−OTase、例えばA.バウマンニ(A.baumannii)、ナイセリア(Neisseria)菌種およびバークホルデリア(Burkholderia)菌種のO−OTaseなどがそのタンパク質標的のアクセプター配列を認識する仕組みは未だ明らかにされていない。OTaseがセリン、アラニンおよびプロリン富む複雑性領域(LCR)を認識することが確認されている(Vikら,2009)。ここに記載されているピリン特異的TfpO酵素は、セリン残基およびプロリン残基を多数含む約15個のアミノ酸からなるペプチドを認識する。緑膿菌(P.aeruginosa)のTfpOと同じように、本願によれば、PilAM2のカルボキシ末端セリンがTfpOM2依存性グリコシル化の部位としての役割を果たすことがうかがえる。これまでにPglL−汎用OTaseおよびピリン特異的OTaseといった2種類の機能的O−OTaseを有する細菌種は確認されていない。TfpOはシュードモナス(Pseudomonas)にみられる唯一のOTaseであり(Smedleyら,2005;Nguyenら,2012)、PglLはNeisseria(Faridmoayerら,2007)、A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978(Iwashkiwら,2012)、B.セノセパシア(B.cenocepacia)K56−2(Lithgowら,2014)および青枯病菌(R.solanacearum)(Elhenawyら,submitted)で確認されている唯一のOTaseである。コレラ菌(V.cholerae)ではO−OTaseと考えられるものが3種類確認されているが、このうち大腸菌(E.coli)で活性が示されたのは1種類のみであり(Gebhartら,2012)、糖タンパク質はコレラ菌(V.cholerae)では確認されていない。髄膜炎菌(N.meningitidis)および淋菌(N.gonorrhoeae)では、OTaseのPglLがピリンおよび数種類の他のタンパク質をグリコシル化することが可能である(Aasら,2006;Faridmoayerら,2007)。大腸菌(E.coli)で系を再構築させると、PglLはピリンの3つのグリコシル化部位を認識することができるが、その部位のうち残りのナイセリア(Neisseria)糖タンパク質にみられる典型的なLCRドメインを含むものはなく、PglLが2つ以上のモチーフを認識し得ることがわかる(Musumeciら,2014)。

0027

フランシセラ(Francisella)菌種では、OTaseはPilO/TfpOと近縁であり、ピリングリコシル化および一般的なグリコシル化の両方担っているものと思われる(Balonovaら,2012)。A.バウマンニ(A.baumannii)の一部の病原性菌株は、最適なバイオフィルム形成および毒性に必要なPglLを1種のみ有することから、アシネトバクター(Acinetobacter)菌株がピリンをはじめとするタンパク質をグリコシル化するのに2種類の異なるOTaseを必要とする理由は未だ明らかにされていない(Iwashkiwら,2012)。非病原性A.バイリイ(A.baylyi)ADP1もO−OTaseを2種類有することに留意することが重要である。しかし、A.バイリイ(A.baylyi)のComP特異的OTaseであるPglLComPおよび医学的に重要なアシネトバクター(Acinetobacter)菌種のピリン特異的OTaseであるTfpOとの間にはいくつか違いがある両OTaseともそのコグネイトタンパク質アクセプターのすぐ下流にコードされている(図1のパネルAおよびC)が、カルボキシ末端のセリンがアラニンになっている点変異株はグリコシル化ピリンを産生することができなかったことから、TfpO OTaseはPilAに存在するカルボキシ末端セリンに特異的であるとする仮説が立てられる。tfpO遺伝子ホモログをコードするアシネトバクター(Acinetobacter)の菌株はいずれも、それぞれのPilA配列にカルボキシ末端セリンも含まれているのは興味深い。さらに、本願では、試験した各tfpOコード菌株によってPilAM2が修飾された(図9A)ことから、アシネトバクター(Acinetobacter)TfpOホモログには機能的に互換性があることがわかる。PilAM2の電気泳動移動度に差があるのは、これらの菌株間でグリカンが異なっていることに起因する可能性がある(Scott,ら,2014)。

0028

ComPグリコシル化の部位は特定されていないが、ComPがカルボキシ末端セリンも翻訳後修飾に関連するいかなるカルボキシ末端残基も含まないことから、内部残基にあると予想される。このほか、ComP特異的OTaseのBLAST解析から、PglLComPがTfpOよりも汎用OTaseであるPglLM2に近縁であることが明らかになった。ピリン特異的TfpO OTaseはカルボキシ末端セリンを含む様々なピリンを交差的にグリコシル化することが可能であったが、PglLComPはTfpOによって認識されるピリンをグリコシル化することができなかった。

0029

本願によれば、アシネトバクター(Acinetobacter)には3種類の異なるクラスのOTase、つまり、カルボキシ末端セリン残基を含むピリンをグリコシル化するピリン特異的TfpO酵素、複数のタンパク質のLCRを認識する汎用PglL OTaseおよびもっぱらComPのグリコシル化を担うと思われるPglLComPが存在する。これらの酵素は生化学的特徴が異なっており、生物工学に応用される新規複合糖質の合成に関する有用な情報が得られる。これらの酵素間の差はわずかなものとは言えず、pfamドメインの存在だけで正確に予測できるものではない。例えば、配列類似性が最も高く、機能的にも相同ではあるものの、緑膿菌(P.aeruginosa)1244菌株のPilO/TfpOにはpfam04932ドメインが含まれているのに対し、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株のtfpOにはpfam13425ドメインが含まれている。さらに、M2菌株およびA.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978を含めた医学的に重要なアシネトバクター(Acinetobacter)菌種の汎用PglL OTaseにはpfam04932ファミリーのドメインが含まれており、A.バイリイ(A.baylyi)の汎用PglLADP1 OTaseにはpfam13425ドメインが含まれている。問題をさらに複雑にしているのが、医学的に重要なアシネトバクター(Acinetobacter)菌種の汎用PglL OTaseとA.バイリイ(A.baylyi)のComP特異的PglLComPは同じpfam04932ドメインを含んでいるが、認識するシークオンが異なるという事実である。さらに、このpfamドメインはWaaLO抗原リガーゼに存在する。バイオインフォマティクス解析は、最初にグリカン転移事象に関与することが予想されるタンパク質をコードするORFをその位置とともに特定するのに強力なツールとなり得るが、本願は、バイオインフォマティクスによって同定したO−OTaseの活性を実験的に求める必要があり、これにより細菌O−OTaseの複雑で興味深い進化の道筋が明らかになるという考えを補強するものである。

0030

本願によれば、既知のOTaseとは異なり、PglLComPを用いて、還元末端にグルコース残基を含む莢膜多糖体をComPなどの担体タンパク質に効率的に結合させることができる。このような莢膜はストレプトコッカス(Streptococcus)属によくみられるものである。肺炎球菌(S.pneumoniae)由来のComPおよび莢膜多糖体を発現するプラスミドの存在下で大腸菌(E.coli)にPglLComPを発現させたところ、前記多糖体によるComPのグリコシル化がみられた。この糖タンパク質をマウスに注射したところ、莢膜多糖体に対する特異的IgG免疫応答が生じ、PglLComPをストレプトコッカス(Streptococcus)に対する組換えコンジュゲートワクチンの作製に応用可能であることが示された。

0031

本明細書に記載される本発明がさらに理解されるように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は単に例示を目的とするものであることを理解するべきである。したがって、これらがいかなる形でも本発明の範囲を限定することがあってはならない。

0032

実施例1:
材料および方法
菌株、プラスミドおよび増殖条件。
本明細書で使用した細菌株およびプラスミドを以下に挙げる。

0033

0034

0035

0036

0037

0038

特に言及されない限り、いずれの細菌もL寒天またはLBブロスで37℃にて増殖させた。必要に応じて、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)またはA.バウマンニ(A.baumannii)の培養物抗生物質を添加し、その濃度は特に言及されない限り以下の通りであった:100μgアンピシリン/mL,20μgカナマイシン/mLまたは12.5μgクロラムフェニコール/mL。必要に応じて、大腸菌(E.coli)培養物に抗生物質を以下の濃度で添加した:pGEM誘導体以外のプラスミドを含む大腸菌(E.coli)菌株に50μgアンピシリン/mL、pGEM誘導体を含む大腸菌(E.coli)菌株に100μgアンピシリン/mL、または20μgカナマイシン/mL。青枯病菌(R.solanacearum)はBG培地で30℃にて増殖させた(Boucherら,1985)。

0039

アシネトバクター(Acinetobacter)OTaseのバイオインフォマティクス解析。
NCBIのBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)を用いてアシネトバクター(Acinetobacter)特異的OTaseのタンパク質配列を解析し、タンパク質のアノテーションにConserved Domain Databaseを用いてタンパク質ドメインを同定した(Marchler−Bauerら,2004、Marchler−Bauerら,2009、Marchler−Bauerら,2011)。

0040

pilAのインフレーム欠失を有する菌株の作製。本発明者らのグループが既に公開した方法論(Hardingら,2013)に従い、pilAのインフレーム欠失を生じさせてΔpilA変異株を構築した。プライマーセット1および2を使用し、これらは補足資料プライマーの表に記載されている。

0041

tfpO::kan変異株の構築。tfpO::kan変異株は既に構築されている(Hardingら,2013)が、当時の遺伝子の名称はtfpO遺伝子ではなくpgyA遺伝子であった。

0042

ΔtfpO::kan変異株の補完。ΔtfpO::kan変異株を補完するため、tfpO遺伝子を予測pilAプロモーターとともに、既に記載したミニTn7エレメントクローン化した。簡潔に述べれば、ΔpilA変異株由来のgDNAを鋳型とし、プライマーセット3とともに用いて、予測pilAプロモーター、pilAオープンリーディングフレーム開始コドンATG、FLP痕、pilAの最後の21bp、53bpの遺伝子間領域およびtfpOオープンリーディングフレーム全体を含むアンプリコンを作製した。既に記載されている通りに、4ペアレンタルメイティング戦略を用いて、予測pilAプロモーターから離れたところで駆動されるtfpOを含むミニTn7エレメントをΔtfpO::kan変異株に導入した(Hardingら,2013)。シーケンシングによって正しいクローンを検証し、tfpO+補完と命名した。

0043

プラスミドの構築および大腸菌(E.coli)への移入。プライマーセット4を用いてM2菌株由来のpilA遺伝子をPCRによりgDNAから増幅し、pWH1266のEcoRV部位にクローン化した。制限消化およびシーケンシングによりpWH−pilAM2プラスミドを含む正しいクローンを検証した。プラスミドを保有する大腸菌(E.coli)からpWH−pilAM2を精製し、次いでアシネトバクター(Acinetobacter)分離株内にエレクトロポレートした。既に記載されている方法(Arandaら,2010)に従ってアシネトバクター(Acinetobacter)分離株をエレクトロコンピテントにした。プライマーセット32を用いてpBAV−comP−Hisプラスミドを構築した。付着末端アンプリコンをそれぞれの制限酵素で消化し、ベクターpBAVmcsの同じ部位にライゲートした。次いで、ライゲート産物をDH5α−E内にエレクトロポレートし、カナマイシンを添加したL寒天プレート上で形質転換細胞を選択した。プライマーセット33、34、35および36を用いて、それぞれpEXT−pglLComP、pEXT−pglLADP1、pEXT−tfpO19606およびpEXT−pglL19606のプラスミドを構築した。得られたアンプリコンをBamHIおよびSalIで消化し、pEXT20の同じ部位に挿入した。ライゲート産物をDH5α−E内にエレクトロポレートし、アンピシリンを添加したL寒天プレート上で形質転換細胞を選択した。

0044

pWH−pilA17978−Hisの構築およびウエスタンブロット解析。プライマーセット37を用いてA.バウマニイ(A.baumanii)ATCC17978由来のpilA対立遺伝子をPCRで増幅した。PCR産物を精製し、End−itで修復して5’末端リン酸化した。ベクターpWH1266をEcoRI直線化し、End−itで修復した後、アルカリホスファターゼで処理した。直線化したpWH1266とPCRで精製したpilA対立遺伝子をライゲートし、DH5α内に形質転換し、アンピシリンを添加したL寒天上で形質転換細胞を選択した。pWH−pilA17978プラスミドをシーケンシングにより検証し、これを逆PCRの鋳型とし、プライマーセット38を用いてC末端ヘキサ−ヒスチジンタグを付加した。PCR産物を精製し、DpnIで処理し、End−itで修復した後、ライゲートした。ライゲーション産物をDH5α内にエレクトロポレートし、アンピシリンを添加したL寒天プレート上で形質転換細胞を選択した。本発明者らが既に記載したA.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株を形質転換させる方法に従って、pWH−pilA17978−Hisを既に記載したA.バウマンニ(A.baumannii)菌株内にエレクトロポレートし、自然にA.バイリイ(A.baylyi)菌株に形質転換させた。アンピシリンを添加したL寒天上でアシネトバクター(Acinetobacter)の形質転換細胞を選択した。以下に記載する点を除き、上記の通りに全細胞溶解物のウエスタンブロット解析を実施した。菌株はNaClを含まないLBブロスで増殖させ、OD600=2.0に正規化した。

0045

M2菌株のΔpglL::kan変異株の構築。プライマーセット6を用いて、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株由来のpilA−tfpO−pglL遺伝子座全体を約1kbの隣接DNAとともに増幅した。PCR産物をpCC1(Epicentre社)にライゲートし、大腸菌(E.coli)EPI300内に形質転換した。制限消化およびシーケンシングによりpCC1−pilA−tfpO−pglLベクターを含む正しいクローンを検証した。pglL遺伝子をカナマイシンカセット置換するため、既に記載されている改変リコンニアリングプロトコル(Hardingら,2013)を用いた。A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株に変異を導入するため、プラスミドpCC1−Δpgl::kanを直線化し、自然形質転換により形質転換させた。カナマイシンを添加したL寒天上で形質転換細胞を選択した。変異株のM2ΔpglL::kan領域をシーケンシングにより検証した。

0046

M2菌株のpilAに点変異を有する菌株の作製。M2菌株のpilA遺伝子にカルボキシ末端のセリンからアラニンへの点変異を有する菌株を作製するため、カルボキシ末端のセリンがアラニンに変異したpilA対立遺伝子のバリアントを含むミニTn7エレメント(pRSM3510−pilA[S136A])でM2ΔpilA変異株を補完した。Quikchange Site Directed Mutagenesis Kit(Stratagene社)を製造業者のプロトコルに従って用い、プライマーセット8を用いてpRSM3510−pilA[S136A]プラスミドを構築した。制限消化およびシーケンシングによりpRSM3510−pilA[S136A]プラスミドを保有する正しいクローンを検証した。既に上に記載した4ペアレンタルメイティング戦略により、pilA[S136A]対立遺伝子を含むミニTn7構築物をM2菌株のattTn7内に転位させた。プライマーセット39を用いた以外は同じプロトコルを用いてpilA[S132A]を作製した。

0047

M2菌株バックグラウンドのグリコシルトランスフェラーゼ変異株の作製。各グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子をカナマイシン耐性カセットで置換するため、In−Fusion HD EcoDryクローニングキットを製造業者のプロトコル(ClonTech社)に従って用いた。各グリコシルトランスフェラーゼ変異株にはM2ΔweeH::kan変異の構築を説明した以下のプロトコルを用いた。ただし、それぞれの遺伝子の5’隣接領域および3’隣接領域を増幅したプライマーに15bpのオーバーハングを付加した。簡潔に述べれば、weeH付近の隣接DNA領域上流および下流をそれぞれプライマーセット9および10を用いてPCRで増幅した。Tn5カナマイシンカセットおよびpGEMベクターを、それぞれプライマーセット11および12を用いて組み換えるDNAに相同な15bpのオーバーハングとともにPCRで増幅した。PCRアンプリコンをゲル抽出し、エタノール沈殿させた。各産物100ナノグラムをIn−fusion EcoDryクローニングチューブに製造業者のプロトコルに従って加え、37℃で15分間、次いで50℃で15分間インキュベートした。新たに作製したベクターを化学的にコンピテントなStellar細胞(Clontech社)内に製造業者のプロトコルに従って形質転換させた。カナマイシンを添加したL寒天プレート上で形質転換細胞を選択した。pGEM−weeH::kanプラスミドを含む正しいクローンの配列を検証した。weeH::kanカセットをプライマーセット9の順方向プライマーおよびプライマーセット10の逆方向プライマーを用いてPCRで増幅した。アンプリコンをDpnIで処理し、エタノールで沈殿させた後、既に公開されている方法論に従ってM2菌株内に形質転換した。M2ΔweeH::kanと命名される正しいクローンの配列を検証した。

0048

プライマーセット17および18を用いてwafYの上流および下流の領域を増幅し、直線化したpGEMをプライマーセット15を用いて増幅し、カナマイシンカセットをプライマーセット16で増幅した。上記のプロトコルを用いて全4種類のPCR産物にIn−Fusionを実施した。pGEM−wafY::kanをEcoRIで直線化し、既に記載した自然形質転換によりA.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株に導入した。M2wafY::kanと命名される正しいクローンの配列を検証した。

0049

プライマーセット19および20を用いてwafZの上流および下流の領域を増幅し、プライマーセット21および22を用いてwagBの上流および下流の領域を増幅した。次いで、wafY変異株について記載した通りに変異株を構築した。M2ΔwafZ::kanおよびM2 wagB::kanと命名されるクローンを同定し、配列を検証した。

0050

pRSM4063の構築。pRSM4063ベクターを作製するため、最初に空のミニTn7エレメントを既に記載した4ペアレンタルメイティング戦略によりM2菌株に導入した。空のミニTn7エレメントのattTn7内への転位を配列により検証し、M2菌株attTn7::MCS_Emptyを得た。この菌株からゲノムDNAを精製し、プライマーセット13を用いたPCRの鋳型として使用した。プライマーセット13の順方向プライマーはミニTn7エレメントの約2kb上流にあり、プライマーセット13の逆方向プライマーはミニTn7エレメントの約2kb下流にある。得られたPCR産物をpSMART−LCKanベクター内にライゲートし、配列を検証し、pRSM4063と命名した。

0051

weeH補完変異株の構築。weeH::kan変異株を補完するため、プライマーセット14を用いてweeHと375bpの上流DNAをPCRで増幅した。アンプリコンをXmaIおよびKpnIで消化し、pRSM4063にクローン化し、DH5α内にエレクトロポレートした。ΔweeH::kan変異株を補完するため、pRSM4063−weeHをNdeIで直線化し、既に公開されている手順(Hardingら,2013)に従って自然形質転換によりM2ΔweeH::kanに導入した。

0052

wafY補完変異株、wafZ補完変異株およびwagB補完変異株の構築。各グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子の発現を駆動する明らかなプロモーターがなく、オープンリーディングフレームが重複していることを考慮し、3種類の遺伝子の発現をそれぞれ駆動するのに上流wxyプロモーターを選択した。予測wxyプロモーターから離れたところで駆動される欠失遺伝子をミニTn7系を用いて染色体に戻すことによって各グリコシルトランスフェラーゼ変異株を補完した。簡潔に述べれば、プライマーセット23を用いてグリコシルトランスフェラーゼ遺伝子座をPCRで増幅し、End−Itで修復し(Epicentre社)、pCC1(Epicentre社)にライゲートした。クロラムフェニコールで形質転換細胞を選択し、pCC1−GTプラスミドを制限消化により検証した。pCC1−GTプラスミドにはwxy遺伝子の予測プロモーター(329bp上流)、wxy、wafY、wafZ、wagA、gnaBおよびwagBが含まれていた。

0053

wxyプロモーター−wafY構築物を作製するため、逆PCR戦略にプライマーセット24および鋳型のpCC1−GTを用いて、wxy遺伝子を除去し、wxyプロモーターをwafY遺伝子の開始コドンATGに連結した。得られたPCR産物をEnd−Itで修復し(Epicentre社)、それ自体にライゲートし、pCC1−wxyP−wafY構築物を得た。プライマーセット27を用いて、XmaIおよびKpnIの制限オーバーハングが含まれるwxyP−wafYDNAフラグメントをPCRで増幅した。PCR産物を消化し、予め消化したpRSM3510にライゲートした後、EC100D細胞内に形質転換した。カナマイシンを添加したL寒天上で形質転換細胞を選択した。既に記載した4ペアレンタルメイティング戦略を用いて、wxyPwafYを含むミニTn7エレメントをM2ΔwafY::kan変異株に導入した。

0054

プライマーセット25およびプライマーセット28を用いた以外は同じ工程を用いて、pRSM3510−wxyP−wafYを作製した。4ペアレンタルメイティング戦略によりwxyP−wafYを含むミニTn7エレメントをM2wafZ::kan変異株に導入した。プライマーセット26およびプライマーセット29を用いてwxyP−wagBフラグメントを作製したが、pRSM4063にクローン化した。pRSM4063−wxyP−wagBベクターをXhoIで直線化し、既に記載した自然形質転換によりM2ΔwagB::kanに導入した。

0055

p4063−A1S_1193−5Xの構築およびアシネトバクター(Acinetobacter)菌株への移入。プライマーセット30を用いて、C末端5×HisタグのほかにもXmaIおよびKpnIの制限オーバーハングを含むように、A1S_1193オープンリーディングフレームをその予測プロモーターとともにPCRで増幅した。PCR産物を消化し、予め消化したpRSM4063にライゲートした。pRSM4063−A1S_1193−5XベクターをXhoIで直線化し、既に記載した自然形質転換によりアシネトバクター(Acinetobacter)菌株に導入した。

0056

pET−15b−rsPilAM2の構築。A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株由来のgDNAを鋳型とし、PilAタンパク質の最初の28個のアミノ酸を欠失させるプライマーセット31とともに用いて、pilAの短縮Hisタグ化組換え可溶性誘導体(rsPilAM2)を増幅した。次いでこのPCR産物を、プライマーセット15の順方向プライマーがNdeI部位を含み、逆方向プライマーがpET−15bへの指向性クローン化を補助するBamHI部位を含む第二のPCRの鋳型として使用した。アンプリコンをNdeIおよびBamHIで消化した後、発現ベクターpET−15b内にライゲートし、これをNdeIおよびBamHIで消化し、T7プロモーターから離れたところで駆動され、N末端Hisタグの後にトロンビン切断部位が続く第一のコドン融合体を作製した。ライゲーション産物をDH5α−E(Invitrogen社)内にエレクトロポレートし、形質転換細胞をサブクローン化し、制限消化およびシーケンシングによりインサートを有するベクターを含むかどうかを検証した。正しいクローンを大腸菌(E.coli)Origami B菌株(DE3)(Novagen社)に形質転換し、組換えタンパク質を発現させた。

0057

rsPilAM2の精製。pET15b−rsPilAM2を含むOrigami B(DE3)(Millipore社)をLBブロス100mLにA600nmの吸光度0.05まで播種し、37℃、180rpmで対数中期まで増殖させ、その時点で、最終濃度500μMのIPTGでrsPilAM2発現を誘導した。細胞を180rpmで19℃まで移行させ、18時間増殖させた。細胞を遠心分離により回収して2つの等しいペレットにし、プロテアーゼ阻害剤(Roche社)を含む1×Ni−NTA Bind Buffer(Novagen社)4mL中でそれぞれ分解した。再懸濁したペレットをTeenPrep Lysing matrix Bチューブ(MP Biomedicals社)15mLに加え、Fast Prep 24ホモジナイザー(MP Biomedicals社)により6.0m/秒で40秒間、2ラウンドで溶解させ、各ラウンドの間に上での5分間のインキュベーションを実施した。4000rpm、4℃で10分間の遠心分離により、溶解していない細菌および溶解マトリックスから上清を分離した。100,000×g、4℃で1時間の超遠心分離により上清をさらに清澄化した。清澄化した上清をNi−NTA His結合レジン(Novagen社)1mLと4℃で2時間、穏やかに振盪しながらインキュベートした後、1×Ni−NTA洗浄緩衝液4mLで2回洗浄した。Ni−NTA溶離緩衝液で3回洗浄してHisタグrsPilAM2をレジンから溶離させ、リン酸緩衝生理食塩水で一晩透析した。rsPilAM2のN末端Hisタグを0.04単位/μLのビオチン化トロンビン(Novagen社)により室温で2時間、トロンビン切断した。ビオチン化トロンビンをストレプトアビジンアガロースビーズで30分間捕捉し、500×gで5分間、スピンフィルターで遠心分離してrsPilAM2を収集した。切断されたHisタグまたは未切断のHisタグrsPilAM2を含む小さいペプチドを除去するため、ろ液をNi−NTA結合レジンに流し、フロースルーを純粋な切断rsPilAM2として収集した。50%グリセロールを含むリン酸緩衝生理食塩水で純粋なタンパク質を透析した後、BCA総タンパク質アッセイキット(Pierce社)を用いて1mg/mLに正規化した。

0058

rsPilAM2に対するポリクローナル抗血清の作製。本発明者らが既に記載した方法(Actisら,1985)に従ってrsPilAM2に対するポリクローナル抗血清を作製した。簡潔に述べれば、フロイント完全アジュバントミリリットル乳化させた精製rsPilAM2100μgを6か月齢雌ニュージーランド白ウサギ(Charles River Laboratories International社、ウィルミントンマサチューセッツ州)の臀部の皮内10か所に23ゲージ針を用いて注射した。次いで、フロイント不完全アジュバントに乳化させたrsPilAM2100μgからなる注射を15日間隔で実施し、最初の注射から10日間隔で血清を採取した。SDS−PAGEによりタンパク質をサイズ分画した後、rsPilAM2とA.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株の全細胞溶解物のイムノブロッティングにより、抗rsPilAM2抗体の特異性および反応性を確認した。

0059

形質転換効率アッセイ。既に記載されている通りに(Hardingら,2013)、自然形質転換をアッセイした。形質転換細胞のCFUを総CFUで除することにより形質転換効率を算出した。実験を別個に少なくとも3回実施した。

0060

A.バイリイ(A.baylyi)ADP1膜抽出物の定量的ジメチル化。既に概略が記載されている通りに(Boersemaら,2009)、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1、ADP1ΔpglLComP変異株およびADP1pglLADP1変異株のライセートの定量的ジメチル化を実施した。簡潔に述べれば、各菌株のペプチドライセート1mgを100mM臭化テトラエチルアンモニウム30μlに再懸濁させ、以下の200mMホルムアルデヒド(30μl)と1Mナトリウムシアノボロヒリド(sodium cyanoborohyride)(3μl)同位体置換分子の組合せと混合した:ADP1試料を軽いホルムアルデヒド(CH2O)および軽いナトリウムシアノボロヒリド(sodium cyanoborohyride)(NaBH3CN)で標識し、ADP1ΔpglLADP1試料を中間の重さのホルムアルデヒド(CD2O)および軽いナトリウムシアノボロヒリド(sodium cyanoborohyride)で標識し、ADP1ΔpglLComPを重いホルムアルデヒド(13CD2O)および重いシアノ重水素化ホウ素ナトリウム(NaBD3CN)で標識した。試薬を混合し、試料を室温で1時間インキュベートした。アミン基が全部標識されるようにジメチル化反応を2回繰り返した。1M NH4Cl 30μlを室温で20分間加えることによりジメチル化反応を停止させた。5%(v/v)酢酸を加えることにより試料を酸性化し、暗所で1時間平衡化させた後、3種類の試料を1:1:1の比でプールした。次いで、プールした試料をSTAGEチップで精製し、凍結乾燥させ、−20℃で保管した。

0061

ウエスタンブロット解析。
既に記載されている方法論(Hardingら,2013)に従ってウエスタンブロット解析を実施した。使用した一次抗体は抗rsPilAM2またはペンタ−His抗体(Qiagen社)であった。使用した二次抗体ヤギ抗ウサギIgG(H+L)、アルカリホスファターゼ抗体(Molecular Probes社)およびヤギ抗マウスIgG(H+L)、アルカリホスファターゼ抗体(Molecular Probes社)であった。BCIP/NBTLiquid Substrate System(Sigma社)で膜を発色させた。

0062

線毛剪断調製物
既に記載されているものに以下の修正を加えて線毛剪断調製物を調製した。簡潔に述べれば、寒天表面から菌叢を取り出し、1×プロテアーゼ阻害剤(Roche社)を添加した氷冷DPBS5mLに再懸濁させた。細菌懸濁液をA600nmでの吸光度70に正規化した。表面に露出したタンパク質を剪断するため、細菌懸濁液を高速で1分間ボルテックス処理した。細菌を10,000×g、4℃で10分間ペレット化した。上清を収集し、再び10,000×g、4℃で10分間遠心分離した。上清を収集し、20,000×g、4℃で5分間遠心分離することによりさらに清澄化した。剪断された表面タンパク質を最終濃度30%の硫酸アンモニウムで沈殿させた。沈殿したタンパク質を20,000×g、4℃で10分間遠心分離することによりペレット化した。上清を捨て、ペレットを1×Laemmli緩衝液100μLに再懸濁させた。調製物を10分間煮沸し、SDS−PAGEで泳動し、クーマシー染色を実施し、バンドを切り出し、Shevchenkoら(2006)に従って質量分析用に調製した。簡潔に述べれば、バンドを水で洗浄し、アセトニトリル(ACN)で繰り返し脱水した。ジスルフィド結合を37℃で60分間、50mM NH4HCO3に溶かした10mM DTTで還元した後、室温の暗所で60分間、50mM NH4HCO3に溶かした50mMヨードアセトアミドシステインチオール基アルキル化した。次いで、ゲル片を50mM NH4HCO3で洗浄し、100%ACNで脱水し、乾燥させた。ピリンを37℃で16時間、50mM NH4HCO3に溶かした0.02mg/mLトリプシン(Promega社)で消化した。100%ACNおよび水でペプチドを溶離し、凍結乾燥させた。トリプシンペプチドを0.1%トリフルオロ酢酸に再懸濁させ、C18 ZipTip(Millipore社、米国)で脱塩した。60%ACNを用いてペプチドを溶離し、これをspeedvacで乾燥させ、0.1%ギ酸に再懸濁させた。既に記載されている通りに(Wangら,2007)、nanoACQUITY(Waters社)超高速液体クロマトグラフィーシステムと接続したQ−TOF Premier(Waters社、マンチェスター、イギリス)を用いて解析を実施した。MassLynx、v.4.1(Waters社)を用いてデータを解析した。M2菌株からOmpA−Hisを精製し、上記のようにESI−QTOF MS/MS解析用に調製した。

0063

LPSの抽出および銀染色
既に記載されているTRI試薬法(YiおよびHackett,2000)により、A.バイリイ(A.baylyi)および青枯病菌(R.solanacearum)のLPSを一晩培養物から抽出した。既に記載されている通りに(TsaiおよびFrasch,1982)、等量のLPSを12.5%SDS−PAGEゲルに負荷してLPSを分離した後、銀染色を実施した。

0064

大腸菌(E.coli)でのDsbA1グリコシル化
大腸菌(E.coli)CLM24細胞を3種類のプラスミド、すなわち、C.ジェジュニ(C.jejuni)のグリコシル化遺伝子座をコードするプラスミド、単一のO−OTase遺伝子をコードするプラスミドおよびdsbA1−HisをコードするプラスミドpAMF22で形質転換した。プラスミドを選択するため、必要に応じてアンピシリン(100μg/ml)、トリメトプリム(50μg/ml)およびクロラムフェニコール(10μg/ml)を添加した。細胞を37℃でOD600が0.4〜0.6になるまで増殖させ、次いで0.1mMIPTGおよび/または0.2%アラビノースで誘導した。アラビノース誘導を必要とする培養物には、4時間後に2回目の誘導を実施した。定常期に全細胞溶解物を入手し、ウエスタンブロット解析を用いてDsbA1の修飾を判定した。

0065

A.バイリイ(A.baylyi)ADP1の膜濃縮試料の消化
若干修正を加えたLithgowら(2014)に従って、糖ペプチド濃縮および定量解析に供するペプチドライセートを調製した。簡潔に述べれば、乾燥させた膜濃縮タンパク質試料2mgを6M尿素、2Mチオウレア、40mM NH4HCO3で可溶化し、10mMジチオスレイトール(DTT)で還元した。還元し可溶化したペプチドを光の不在下、25mMヨードアセトアミド(IAA)で1時間アルキル化した。得られたアルキル化タンパク質混合物を25℃で4時間、Lys−C(1/100 w/w)で消化し、40mM NH4HCO3で1:5に希釈した後、25℃で一晩、トリプシン(1/50 w/w)で消化した。1%トリフルオロ酢酸(TFA)を加えて消化を停止させた。C18 empore(Sigma−Aldrich社セントルイス、ミズーリ州)STop And Go Extraction(STAGE)チップ(Rappsilberら,2007)を用いて一級アミドおよび塩を除去し、ペプチド消化物を精製した。

0066

ZIC−HILIC精製を用いたA.バイリイ(A.baylyi)ADP1糖ペプチドの濃縮
若干修正を加えた(Scottら,2011)に従ってZIC−HILIC濃縮を実施した。1mm2に切り取ったC8 Empore(商標ディスク(Sigma社)を含むp10チップに充填した10μm ZIC−HILICレジン(Sequant社、ウメオ、スウェーデン)からなるマイクロカラムベッド長が0.5cmになるまで充填した。使用前、カラム超純水、次いで95%アセトニトリル(ACN)で洗浄し、次いで80%ACNおよび5%ギ酸(FA)で平衡化した。試料を80%ACN/5%FAに再懸濁させ、16,100×g、4℃で5分間遠心分離することにより不溶性物質を除去した。試料の濃度を3μg/μLに調整し、ペプチド物質150μgをカラムに負荷し、10負荷体積の80%ACN、5%FAで洗浄した。未結合画分を収集してプールし、真空遠心分離により乾燥させた。ZIC−HILIC結合ペプチドを3負荷体積の超純水で溶離させ、真空遠心分離を用いて濃縮した。新たに調製した試薬を用いて、別個にバイオロジカルレプリケートをZIC−HILIC濃縮に供した。

0067

逆相LC−MS、CID MS−MSおよびHCD MS−MSを用いた糖ペプチドの同定
精製した糖ペプチド/ペプチドを緩衝液A(0.5%酢酸)に再懸濁させ、糖ペプチドの定性分析にはLTQ−Orbitrap Velos(Thermo Scientific社、サンノゼ、カリフォルニア州)と接続したAgilent 1290 SeriesHPLC(Agilent Technologies社、ミシサガ、オンタリオ州)、定量試験にはQ−exactiveと接続したEASY−nLC1000システム逆相クロマトグラフィーを用いて分離した。A.バイリイ(A.baylyi)ADP1糖ペプチドの定性分析には、社内で充填した20cm、内径75μm、外径360μmのReproSil−Pur C18 AQ1.9μm(Dr.Maisch社、アンマーブーフ−エントリゲン、ドイツ)カラムを用いた。定量試験には、社内で充填した45cm、内径50μm、外径360μmのReproSil−Pur C18 AQ1.9μmカラムを用いた。両システムとも、試料をトラップカラム、すなわち、社内で充填した2cm、内径100μm、外径360μmでAqua 5μm C18を含むカラム(Phenomenex社、トーランス、カリフォルニア州)に5μL/分で負荷した後、グラジエント分離を実施し、質量分析用に注入した。0%の緩衝液B(80%ACN、0.5%酢酸)から32%のBまで140分、次いで32%のBから40%のBまで5分、次いで100%のBまで2.5分かけて上昇させ、100%のBで2.5分間保持し、次いで、さらに20分かけて0%のBまで低下させる180分間のグラジエントをかけた。ZIC−HILIC糖ペプチド濃縮で得た未結合画分を糖ペプチドの定性分析と同じ機器設定を用いた分析に供した。両機器とも、定性分析には、既に記載されている通りに(Scottら,2011)、Xcalibur v2.2(Thermo Scientific社)を用いて、MS、CID MS−MSおよびHCD MS−MSの間で自動的に切り替わるデータ依存モードでキャピラリー温度275℃にて稼働させ、定量試験には、MS(分解能70k、AGC標的1×106)とHCD MS−MSイベント(分解能17.5k、AGC標的1×106、最大注入時間60ミリ秒、20%ステップのNCE28)との間で切り替わる上位10のデータに依存する方法を用いて稼働させた。

0068

A.バイリイ(A.baylyi)ADP1糖ペプチドの同定
定性的グリコシル化分析の未処理ファイルを既に記載されている通りに(Scottら,2011,2012)処理した。簡潔に述べれば、Proteome Discoverer v.1.2(Thermo Scientific社)を用い、得られた糖ペプチドに関するデータをA.バイリイ(A.baylyi)ADP1のデータベース(UNIPROT、http://www.uniprot.org/、681 2014−06−10から入手、Taxon識別番号:3263個のタンパク質配列を含む62977)にMASCOT v2.4を用いて検索した。以下のパラメータ:ペプチド質量精度20ppm;フラグメント質量精度0.02Da;酵素特異性無し、固定修飾(カルバミドメチル)、可変修飾(メチオニン酸化および脱アミドN、Q)を用いてMascot検索を実施した。以前の研究でHCDスペクトル内に四極子様断片化が示されていることから(Olsenら,2007)、MALDI−QUAD−TOFの機器設定を選択した。MASCOT検索からペプチドが同定されなかったスキャンイベントをMicrosoft Excel(Microsoft社、レイモンド、ワシントン州)にエクスポートした。エクスポートしたマッチしないスキャンの中に糖ペプチドの可能性のある物質を同定するため、「mgfグラフ」と称するGPMAW8.2のMS−MSモジュールを用いて、204.08m/zのHexNAcのオキソニウムが含まれるHCDスキャンイベントを洗い出した。オキソニウム204.08m/zイオンが含まれる全スキャンイベントを手動で調べ、糖ペプチドの可能性のある物質を同定した。糖ペプチドの帰属を容易にするため、204.08オキソニウムが含まれるHCDスキャンイベントを手動で調べ、脱グリコシル化ペプチドイオンの可能性のある物質を同定した。Xcalibur v2.2のスペクトルリスト機能を用いて、これらのHCDスキャンのうち、脱グリコシル化ペプチドの質量を下回る質量に対応するMS特性(m/z、電荷および強度)を抽出した。検出されたMS特性に関して得られた数値をmgfファイルに書き込み、ペプチドの質量を脱グリコシル化ペプチドの質量に設定した。次いで、上記のMASCOT設定を用いて、得られたmgfファイルを検索した。デコイオプション起動して全スペクトルを検索したところ、このデータベースにマッチするものは検出されず、発見率(FDR)は0%であった。

0069

ジメチル化A.バイリイ(A.baylyi)ADP1および変異株糖ペプチドの定量解析を既に報告されている通りに(Lithgowら,2014)実施した。簡潔に述べれば、ジメチル化A.バイリイ(A.baylyi)ADP1糖ペプチドを上記の通りに同定し、Xcalibur v2.2.Triplexを用いてモノアイソトピックピーク曲線下面積を手動で抽出することにより定量化した(野生型ADP1対ADP1ΔpglLComP対ADP1ΔpglLADP1)。

0070

結果
アシネトバクター(Acinetobacter)がコードする2種類のOTaseホモログは異なるpfamドメインを含む
これまでに、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1がWzy_Cスーパーファミリーのドメインを含むタンパク質を2種類コードすることが報告されている(Schulzら,2013)。本発明者らはバイオインフォマティクス解析により、主要IVa型ピリンサブユニットpilAのすぐ下流に進化的に関係のあるWzy_Cスーパーファミリーのドメインを含むタンパク質をコードすると予想される2つのオープンリーディングフレーム(ORF)を有するアシネトバクター(Acinetobacter)菌種を数種類同定した(図1、パネルA)。

0071

A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株では、pilA遺伝子が2種類の遺伝子、M215_10480およびM215_10475のすぐ上流にあり、これらの遺伝子はともにWzy_Cスーパーファミリーのメンバーをコードするものである。M215_10480およびM215_10475にはそれぞれpfam13425ドメインおよびpfam04932ドメインが含まれている(図1、パネルAおよびB)。この研究の時点で、同じ遺伝子配置がみられたのは、A.バウマンニ(A.baumannii)菌株では17の全ゲノムのうち12ゲノム、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)では8ゲノムのうち7ゲノム、A.ピッティ(A.pittii)では5ゲノムのうち3ゲノムであり、医学的に重要なAcb複合体のメンバーの間でこの遺伝子座が保存されていることがわかった(データ不掲載)。本発明者らは以前、pfam13425ドメインを含むタンパク質(ORF M215_10480)をコードする遺伝子を推定グリコシラーゼA(pgyA)と命名した(Hardingら,2013)。本発明者らは、M215_10480をコードする遺伝子がpilAのすぐ下流にあることと、このタンパク質がピリングリコシラーゼであることを示す本明細書に記載の機能データとを考慮に入れ、ORF M215_10480をコードする遺伝子を4型ピリン特異的O−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ遺伝子(tfpO)に改名した。

0072

第二のORFであるM215_10475は、pfam04932ファミリーのドメインであって、これまでに特徴が明らかにされている全PglLオルソログおよびO抗原リガーゼにみられるドメインを含む予測タンパク質をコードする。PglL_AドメインおよびPglL_BドメインはM215_10475でも確認されている。このタンパク質はPglL汎用OTaseのオルソログの1つであると思われるため、本発明者らはORF M215_10475をpglLM2と命名した(図1、パネルAおよびB)。

0073

RNA−seqを用いて対数中期M2細胞のトランスクリプトーム解析を実施した(データ不掲載)。pilAM2の転写は容易に観察された。tfpOM2の転写も観察されたが、そのレベルはpilAM2とtfpOM2の間の遺伝子間領域から急激に低下していた。tfpOM2の開始コドンATGのすぐ上流には予測Rho非依存性ターミネーターがある。pilAM2とtfpOM2は、1つのオペロンの中に漏出性転写ターミネーターによって隔てられて存在する可能性がある。以上の知見は、緑膿菌(P.aeruginosa)1244のpilAおよびpilO(tfpO)の転写に関する研究(Castric,1995)と一致する。tfpOM2遺伝子の下流にpglLM2遺伝子がある。両OTaseをコードする遺伝子は極めて接近しており、同じ脂質結合オリゴ糖を基質に用いることから、これらの遺伝子は同時に転写されるものと推測された。何らかの転写リードスルーが確かに存在するものと思われるが、pglLM2遺伝子の転写産物レベルはtfpOM2のレベルよりも著明に高く、tfpOM2とpglLM2の間の遺伝子間領域にはプロモーターが含まれており、これもpglLM2の転写を駆動することが示唆される。

0074

A.バイリイ(A.baylyi)ADP1ゲノムでは、ピリン様タンパク質をコードするcomP遺伝子の後に、SchulzらがpglLと命名した(2013)pfam04932含有OTase様タンパク質をコードするACIAD3337が存在する。これは、comPに近接している(図1、パネルCおよびD)ほか、ComPによる翻訳後修飾が必要であることを示す証拠がこれまでに報告されている(Schulzら,2013)ことから、ACIAD3337と同時にpglLComPとも呼ばれている。

0075

このほか、WaaLリガーゼオルソログをコードすると予測されるORF(ACIAD0103)を含む第二のpfam13425ドメインが同定された。ACIAD0103の位置はピリン遺伝子ホモログの近くではなかったが、代わりにグリカン生合成遺伝子座の中にみられた。本明細書では、これをACIAD0103と同時にpglLADP1とも命名する(図1、パネルCおよびD)。A.バイリイ(A.baylyi)は、隣接する遺伝子がコードしないWzy_Cスーパーファミリーのドメインを有するタンパク質をコードする遺伝子を2種類含む唯一の菌株であった。

0076

グリコシル化に関して十分に研究されている菌株、A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978では、汎用O−OTaseが1種のみ同定され、これは既にPglLと命名されている(Iwashkiwら,2012;Lees−Millerら,2013)。

0077

A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株ではピリンの翻訳後修飾にTfpOが必要である。
図2Aは、同系のpilA変異株であるM2菌株の全細胞溶解物のウエスタンブロット解析を示しており、その補完されたpilA変異菌株から、PilAが見かけの分子量の異なる2つの分子形態で存在するという本発明者らのそれまでの知見が裏付けられた。存在量が多く分子量が大きい方の形態のPilAは翻訳後修飾されたPilA種であると考えられ、分子量が小さい方の形態のPilAは未修飾種であった。TfpOがPilAの翻訳後修飾に及ぼす影響を明らかにするため、同系のtfpO変異株を構築し、PilAの発現を調べた。tfpOを欠く菌株のPilAは分子量が小さい方の形態でのみ存在していた(図2A)。PilAの電気泳動移動度の増大と翻訳後修飾の喪失とで一致がみられる。さらに、補完されたtfpO変異菌株のPilAは主として分子量の大きい方の形態で存在し、PilAの翻訳後修飾にはTfpOが必要であることが裏付けられた。

0078

M2菌株のtfpOのすぐ下流にはpglLM2が存在し、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)およびN.メニンギジティス(N.meningiditis)の多くの膜結合タンパク質のグリコシル化を担う汎用O−OTaseのホモログをコードしている(Vikら,2009;Borudら,2011)。PglLM2もPilAの翻訳後修飾に何らかの役割を担っているかどうかを明らかにするため、pglLM2を欠く同系変異菌株を作製した。pglLM2変異株の全細胞溶解物のウエスタンブロット解析から、PilAが主として修飾型で存在することが明らかになり、PilAの翻訳後修飾には観察されたようにPglLM2を必要としないことがわかる(図2A)。

0079

PilAM2が(HexNAc)2、ヘキソースおよびN−アセチル−デオキシヘキソースを含む四糖によりTfpOM2依存性にグリコシル化された。
PilAがTfpOによってグリコシル化されることを裏付けるため、M2菌株、超線毛型M2ΔpilT変異株および超線毛型M2ΔtfpO::kanΔpilT::strep変異株の表面剪断調製物からPilAを精製した。pilT遺伝子は予測収縮ATPアーゼをコードし、したがって、pilTを欠く変異株は超線毛型の表現型を呈し、表面に露出したPilAの量が多くなる。剪断調製物中のタンパク質をSDS−PAGEによって分離し、クーマシー染色を実施し、切出し、質量分析に供した。図2Bは、M2およびM2ΔpilTの両菌株のPilAのMS/MS解析により、PilAにHexNAc残基2つ、ヘキソースおよびN−アセチルデオキシヘキソースからなる四糖が存在することが確認されたことを示している。MS/MS解析から、この四糖がカルボキシ末端のトリプシン119NSGTDTPVELLPQSFVAS136ペプチド上に存在することがわかった。M2ΔtfpO::kanΔpilT::strep変異株のPilAには修飾がみられず、PilAグリコシル化にはTfpOが必要であることが裏付けられた(データ不掲載)。

0080

ピリン修飾にはPilAM2のカルボキシ末端セリン136が必要とされた。
緑膿菌(P.aeruginosa)1244では、ピリンタンパク質PilAがTfpO依存性にグリコシル化される(Castric,1995)。のちにグリコシル化部位がカルボキシ末端セリン148の位置にあることが明らかにされた(Comerら,2002)。A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2を含めたアシネトバクター(Acinetobacter)菌種のPilAタンパク質のアミノ酸配列を緑膿菌(P.aeruginosa)1244 PilAと比較した。配列の相同性は低いが、M2菌株のPilA配列にもC末端セリンが含まれており、これはMSによって同定された糖ペプチドに含まれていたものである(図2B)。

0081

図3Aは、実際に、O−OTaseホモログをコードする2種類の連続する遺伝子を含むアシネトバクター(Acinetobacter)菌種はいずれも、それぞれのPilAアミノ酸配列にカルボキシ末端セリンが含まれていることを示している。

0082

カルボキシ末端セリン136がPilAの翻訳後修飾に必要であるかどうかを明らかにするため、M2(pilA[S136A])+菌株を作製した。最初に、下流のtfpO遺伝子の転写が影響を受けないように、pilA遺伝子のインフレーム欠失がある菌株を作製した。次いで、カルボキシ末端のセリンがアラニン残基に変異したpilAの対立遺伝子遺伝子でM2ΔpilA菌株を補完し、M2(pilA[S136A])+菌株を作製した。

0083

図3BはM2(pilA[S136A])+菌株の全細胞溶解物のウエスタンブロット解析を示しており、この解析から、PilAが未修飾で分子量が小さい方の形態でのみ存在することが明らかになり、PilAの翻訳後修飾にはカルボキシ末端セリンが必要であることがわかった。高度に保存されたセリンがほかにも132位にみられた。この部位もグリコシル化に必要であるかどうかを明らかにするため、本発明者らはM2(pilA[S132A])+菌株を構築した。M2(pilA[S132A])+菌株の全細胞溶解物のウエスタンブロット解析から、PilAが修飾形態で存在することが明らかになり、セリン132はグリコシル化に必要ではないことがわかった(図3B)。M2(pilA[S136A])+菌株は自然形質転換が可能であり(図3C)、親菌株と同じ収縮運動を示した(データ不掲載)ことから、カルボキシ末端のセリンからアラニンへの点変異はTfpの機能に影響を及ぼすことはなかった。

0084

PilAM2の翻訳後修飾には主要多糖抗原(MPA)遺伝子座が必要である。
Huらは最近、主要多糖抗原(MPA)遺伝子座を含むアシネトバクター(Acinetobacter)菌種の血清型を分子レベルで判定するスキームを開発した。保存されたfkpA遺伝子とlldP遺伝子の間に存在するMPA遺伝子座は、研究対象に含めシーケンシングを実施した全アシネトバクター(Acinetobacter)菌株に確認されたほか、A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株にもみられた(Huら,2013,Carruthersら,2013)。A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株のMPA遺伝子座には、予測グリコシルトランスフェラーゼ3種類(wafY、wafZおよびwagBと呼ばれる)および予測開始グリコシルトランスフェラーゼ1種類(weeHまたはpglCと呼ばれる)が含まれている(図4A)。MPA遺伝子座がPilAM2の翻訳後修飾に必要であるかどうかを明らかにするため、予測グリコシルトランスフェラーゼをそれぞれ欠く同系変異株を個別に構築した。図4BはweeHを欠く菌株の全細胞溶解物のウエスタンブロット解析を示しており、この解析から、PilAが分子量の小さい方の形態で存在することが明らかになり、PilAのグリコシル化にはWeeHが必要であることがわかった。ほかの3種類のグリコシルトランスフェラーゼの欠失では、中間の電気泳動移動度を示すPilAタンパク質が得られた。wafY::kan変異株のPilAはWT PilAの移動度に最も近い位置に移動し、これにwafZ::kan変異株のPilA、wagB::kan変異株のPilAがこの順に次いだ(図4B)。wafZ::kan変異株およびwagB::kan変異株のバックグラウンドから部分的に修飾された形態および未修飾の形態のPilAがともに同定されたのは興味深い。いずれの変異菌株も補完に成功し、完全に修飾されたPilAの産生にはwafY遺伝子、wafZ遺伝子、wagB遺伝子およびweeH遺伝子の産物がいずれも必要であることがわかった。

0085

A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株では、pglLM2がPglL様O−OTaseをコードし、一般的なタンパク質グリコシル化のドナーとして同じ四糖前駆物質を用いる。
図2Aでは、Wzy_Cドメインを含む第二のORFであるpglLM2はピリングリコシル化に必要ではないことが示された。pglLM2は、A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978で既に特徴が明らかにされているPglLと同じように汎用O−OTaseであり、ピリン以外の標的タンパク質をグリコシル化するのではないかと考えられる。本発明者らは最近、タンパク質OmpAをコードするA1S_1193−Hisが様々な菌株PglLによって認識されることから、アシネトバクター(Acinetobacter)菌株特異的グリカンを単離および同定するベイトアクセプタータンパク質としての役割を果たす可能性があることを明らかにした(Scottら,2014)。本発明者らは、菌株M2、M2ΔtfpO::kan、M2ΔpglL::kanおよびM2ΔweeH::kanの各菌株でカルボキシ末端Hisタグを含むOmpA−Hisを発現させた。

0086

図5Aは、4菌株ともOmpA−Hisを発現したことを示すウエスタンブロット解析であるが、M2ΔpglL::kanおよびM2ΔweeH::kanのバックグラウンドのOmpA−Hisは高い電気泳動移動度で移動し、翻訳後修飾がみられないことと一致している。M2菌株から精製したOmpA−HisのESI−TOF−MS/MS解析では、分岐四糖の2つのサブユニットによるグリコシル化が明らかになった。以上の結果は、M215_10475が汎用O−OTaseであることを示唆するものであり、PglLM2という名称の機能的証拠となる。さらに、この分岐四糖はPilAにみられたものと同じ四糖であり、TfpOM2およびPglLM2がともに同じ脂質結合グリカン前駆物質をタンパク質グリコシル化の基質として用いることがわかった(図5B)。この観察結果は、PilAの翻訳後修飾にもOmpA−Hisの翻訳後修飾にもWeeHが必要であることを考慮し予測されたものであり、共通のグリカン前駆物質経路の存在を示している。

0087

ACIAD0103はWaaLO抗原リガーゼではなく、ComPの修飾に必要なものでもない。
上記の通り、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1のゲノムでは、Wzy_Cスーパーファミリーのドメインを含むOTase様タンパク質が2種類コードされている。そのうちの1つであるpglLComP(ACIAD3337)はcomPに隣接している。Schulzら(2013)は、ComPの修飾にpglLComP(ACIAD3337)が必要であることを明らかにしており、これとは別に本発明者らもこれを確認している(図6A)。さらに、同系のpglLADP1(ACIAD0103)変異菌株のComP−His発現を調べたウエスタンブロット解析では、ComPの翻訳後修飾にPglLADP1は必要ではないことが明らかになった(図6A)。

0088

Schulzら(2013)は、もう一方のWzy_Cスーパーファミリードメイン含有タンパク質、PglLADP1(ACIAD0103)がWaaLO抗原リガーゼをコードすると推測した。LPS生合成の際には、内膜細胞質側にあるO−グリカンと同じ脂質キャリア上にO抗原反復単位が順次集合し、周辺質へ反転し、重合してO抗原鎖を形成し、O抗原リガーゼによってリピドAコア多糖に転移される(HugおよびFeldman,2011)。LPS分子中のO抗原サブユニット反復の数の差がLPS銀染色のラダー様のバンドパターンとして現れる(Whitfield,1995)。pglLADP1がO抗原リガーゼとして作用するかどうかを明らかにするため、本発明者らは、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1、ADP1ΔpglLComP::kan変異株およびADP1ΔpglLADP1::kan変異株からLPSを精製し、SDS PAGEで分離した調製物を銀染色した。

0089

図6Bに示されるように、LPSの銀染色SDSポリアクリルアミドゲルは同じバンドパターンを示し、植物病原菌である青枯病菌(Ralstonia solanacearum)から得たO抗原含有LPSと比較してもLOSにO抗原サブユニットは観察されなかった。PglLADP1がO抗原リガーゼとして作用しなかったことを考えると、PglLADP1は第二のO−OTaseをコードしている可能性がある。

0090

A.バイリイ(A.baylyi)ADP1ではACIAD0103が汎用O−OTaseであるPglLADP1をコードする。
髄膜炎菌(N.meningitidis)のDsbA1およびA.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978のOmpAは、それぞれの菌株で汎用O−OTaseによっても修飾され、以前はグリコシル化を研究するためのモデルとして用いられた(Vikら,2009;Iwashkiwら,2012;Gebhartら,2012;Lithgowら,2014)ものであり、PglLADP1がこれをグリコシル化することができるかどうかを検討した。この2種類のタンパク質を野生型、ΔpglLComPおよびΔpglLADP1のA.バイリイ(A.baylyi)菌株で別個に発現させた。DsbA1−His(図6C)およびOmpA−His(図6D)は、野生型およびΔpglLComPバックグラウンドよりもΔpglLADP1バックグラウンドの方が電気泳動移動度が大きかった。以上の実験は、PglLADP1が汎用O−OTaseとしての役割を果たすことを裏付けるものである。

0091

大腸菌(E.coli)を用いてPglLADP1のOTase活性をさらに裏付けるin vivoのグリコシル化アッセイが実施されている(Gebhartら,2012)。本発明者らは大腸菌(E.coli)CLM24を用いた。この菌株はWaaLO抗原リガーゼを欠くため、脂質結合グリカン前駆物質が蓄積して、異種O−OTase活性の基質としての役割を果たすことができる(Feldmanら,2005)。既に記載されている通りに(Faridmoayerら,2007;IelminiおよびFeldman,2011)、アクセプタータンパク質(DsbA1)、グリカンドナー(カンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)の脂質結合オリゴ糖(CjLLO))および1種類のOTaseをコードするプラスミドで大腸菌(E.coli)CLM24を形質転換させた。本発明者らはほかにもPglLComPを含めたほか、A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC19606のピリン特異的O−OTaseおよび汎用O−OTaseをコードするTfpO19606およびPglL19606を対照として用いた。抗ヒスチジン抗体でDsbAl−Hisを検出し、C.ジェジュニ(C.jejuni)七糖に反応するhR6抗体を用いてグリコシル化を検出した。

0092

図7に示されるように、両抗体と反応しC.ジェジュニ(C.jejuni)七糖によって修飾されたDsbA1−Hisに対応するバンドがみられたのは、DsbA1−His、CjLLOおよびPglLADP1または汎用O−OTaseのPglL19606を共発現する大腸菌(E.coli)に限られた。このデータからも、PglLADP1の汎用O−OTaseとしての役割が裏付けられる。

0093

A.バイリイ(A.baylyi)ADP1の野生型菌株、ΔpglLComP菌株およびΔpglLADP1菌株の比較プロテオーム解析
A.バイリイ(A.baylyi)のADP1グリコシル化での両推定O−OTaseの役割を明らかにするため、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1のグリコプロテオームをADP1ΔpglLComP変異株またはAPD1ΔpglLADP1変異株のいずれかと比較した。糖ペプチド濃縮のためのZIC−HILIC(Iwashkiwら,2012;Nothaftら,2012;Scottら,2014;Lithgowら,2014)および複数のMS/MS断片化法(Scottら,2011)を用いて、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1に8種類のタンパク質基質に由来する21種類の固有の糖ペプチドが360個同定された。ほかのアシネトバクター(Acinetobacter)菌種に観察されている多様性(Scottら,2014)と同じく、286−217−HexNAc3(1112.41Da、図8Aおよび8D)、286−217−245−HexNAc2(1154.41Da、図8Bおよび8F)、286−217−HexNAc−245−HexNAc(1154.41Da、図8Bおよび8G)および286−217−2452−HexNAc(1196.41Da、図8Cおよび8E)からなる4種類の五糖グリコフォームのうちの1種類で修飾された糖ペプチドを有する固有のグリカンがA.バイリイ(A.baylyi)ADP1で得られた。A.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLComPの膜タンパク質の糖ペプチド解析によって同じ糖ペプチドが同定され、グリコプロテオームはこの遺伝子の欠失による影響を受けないことが示唆された。これに対し、野生型A.バイリイ(A.baylyi)ADP1に観察された21種類の糖ペプチドのうちA.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLADP1の抽出物中に検出されたものはなく、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1ではpglLADP1が一般的なタンパク質グリコシル化を担っていることが示唆された。

0094

糖ペプチドの定量的標識
図19は、ジメチル標識を用いたA.バイリイ(A.baylyi)ADP1 WT、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLADP1およびA.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLComPのグリコシル化の定量解析を示している。

0095

定量的ジメチル化標識により、全3種類の菌株を同時に比較して糖ペプチド濃縮の内部陽性対照を得ることができ、糖ペプチドが7種類検出された(表2)。グリコシル化にPglLADP1が必要であるのと同じく、ΔpglLADP1変異株由来の糖ペプチド(図19A〜19C)は検出されなかったが、試料中の非グリコシル化ペプチドが約1:1:1の比で観察された(図19D〜19E、表2)。ΔpglLComPでは野生型(範囲46%〜170%、図21)と比較してグリコシル化がほぼ1:1の比で観察され、MS/MSによる同定から、糖ペプチドがΔpglLComP菌株に由来することが確認された(図19C)。以上のデータから、PglLADP1は汎用O結合OTaseであり、PglLComPはグリコプロテオームの特異的サブセットのグリコシル化を担っていることが示唆され、このことが検出されなかったのは、用いた方法の感度によるものであると考えられる。

0096

ジメチル標識およびZIC−HILICを用いて、個々の糖ペプチドのグリコシル化を担うO−OTaseを確認した。A.バイリイ(A.baylyi)ADP1 WTに由来し軽い標識で標識された糖ペプチドとA.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLComPに由来し重い標識で標識された糖ペプチドがほぼ1:1のレベルで観察されたのに対し、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1ΔpglLADP1に由来し中間の重さの標識で標識された糖ペプチドは試料中に検出されなかった。これとは逆に、非グリコシル化ペプチドは全3種類の菌株にほぼ1:1:1のレベルで観察された。AおよびD)糖ペプチド113KLAEPAASAVADQNSPLSAQQQLEQK138(Q6F825_ACIAD)および非グリコシル化ペプチド166AQSVANYLSGQGVSSSR182(Q6FDR2_ACIAD)の軽い同位体置換分子、中間の重さの同位体置換分子および重い同位体置換分子のMSスペクトルによって、全3種類の菌株のグリコシル化を比較することができた。ADP1ΔpglLADP1では、糖ペプチドは観察されなかったが、非グリコシル化ペプチドはほぼ1:1:1の比で観察された。BおよびE)軽い同位体置換分子、中間の重さの同位体置換分子および重い同位体置換分子の抽出イオンクロマトグラムを比較することにより、ADP1ΔpglLADP1由来糖ペプチドが存在せず、非グリコシル化ペプチドが1:1:1の比であることが裏付けられる。C)糖ペプチド113KLAEPAASAVADQNSPLSAQQQLEQK138の重い同位体置換分子の同定を裏付け、同分子がADP1ΔpglLComPに由来することを裏付けるHCD断片化。F)非グリコシル化ペプチド166AQSVANYLSGQGVSSSR182の中間の重さの同位体置換分子の同定を裏付け、同分子がADP1ΔpglLADP1に由来することを裏付けるHCD断片化。

0097

表2に、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1で同定されたジメチル化糖ペプチドを示す。A.バイリイ(A.baylyi)ADP1の野生型(軽)およびOTase変異株(重)で同定されたジメチル化糖ペプチド。識別番号は対応するUniprot番号に従って分類されている。同定された各糖ペプチドのタンパク質名、親m/z、荷電状態、グリカンの質量、ペプチドの質量、グリカンの組成、ペプチドの配列およびmascotイオンスコアが記載されている。同定された各ペプチドには、観察された糖ペプチドを野生型(ジメチルN末端およびKを含む)および補完(ジメチルN末端2H(6)13C(2)およびK2H(6)13C(2)を含む)と区別できるように、観察されたジメチル化が記載されている。

0098

0099

0100

0101

図21(配列番号:79〜82)は、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1で同定された定量的糖ペプチドを示している。A.バイリイ(A.baylyi)ADP1の野生型(軽)およびOTase変異株(重)で同定されたジメチル化糖ペプチド。識別番号は対応するUniprot番号に従って分類されている。同定された各糖ペプチドのタンパク質名、親m/z、荷電状態、グリカンの質量、ペプチドの質量、グリカンの組成、ペプチドの配列およびmascotイオンスコアが記載されている。同定された各ペプチドには、観察された糖ペプチドを野生型(ジメチルN末端およびKを含む)および補完(ジメチルN末端2H(6)13C(2)およびK2H(6)13C(2)を含む)と区別できるように、観察されたジメチル化が記載されている。

0102

PglLComPアクセプタータンパク質の特異性によって同タンパク質がTfpOおよび汎用O−OTaseと区別される
アシネトバクター(Acinetobacter)染色体上の主要IVa型ピリン遺伝子と下流のO−OTase遺伝子との間に強い遺伝的連鎖があることから、これらのO−OTaseがそのコグネイトピリンタンパク質に対して特異的でるかどうかを明らかにしようとした。A.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2菌株のPilAM2を発現するプラスミドを異なるアシネトバクター(Acinetobacter)種で発現させた後、ウエスタンブロット解析を実施し、ピリンタンパク質の発現および電気泳動移動度を調べた。分子量が大きい方の形態のPilAM2および分子量が小さい方の形態のPilAM2の両方が存在することからわかるように、PilAM2は、ともにtfpOホモログおよび末端セリン残基を含むピリンをコードするA.バウマンニ(A.baumannii)ATCC19606および臨床分離株のA.バウマンニ(A.baumannii)27413によって修飾された(図9A)。A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC19606のグリカンは、A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978で同定された五糖と同じものであることがわかった。A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC19606で発現したPilAM2は電気泳動の移動速度が最も遅く、大きいグリカンがPilAM2と結合していることが示された(Scottら,2014)。tfpOホモログを欠くA.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978およびA.バイリイ(A.baylyi)ADP1はともに、PilAM2をグリコシル化することができなかった。

0103

これとは対照的に、ComP−Hisを様々なアシネトバクター(Acinetobacter)菌種で異種発現させたところ、A.バイリイ(A.baylyi)ADP1でのみComP−Hisがグリコシル化されることがわかった。tfpOホモログをコードする菌株はComP−Hisを修飾することができなかったが、A.バウマンニ(A.baumannii)ATCC19606は例外で、ComP−Hisを修飾する限界の能力を有するものと思われた(図9B)。PglLComPが、末端セリン残基を持たないA.バウマンニ(A.baumannii)ATCC17978のピリンを修飾することができるかどうかを明らかにするため、PglLComPを分析した。PilA17978はPglLComPによってグリコシル化されることはなかったが、そのコグネイトPglL17978およびPglLADP1汎用O−OTaseの両方によってグリコシル化された。以上の結果から、PglLComPは、末端セリン残基を認識するほかのピリン特異的TfpO OTaseおよび汎用PglL O−OTaseから区別される。PglLComPの配列はPglL様OTaseの方が類似しているが、その活性は末端セリン残基を持たないピリン様タンパク質であるComPに特異的であるのは意外なことである。PglLComPはO−OTaseの新たなクラスに属するものと思われる。

0104

アシネトバクター(Acinetobacter)属には、世界中で重要性増しつつある日和見性の院内病原菌が複数存在する。これらの細菌が用いる病原性因子にIV型線毛およびタンパク質O−グリコシル化系がある。グリコシル化は、グリカンを脂質キャリアから標的タンパク質に転移させる酵素、O−オリゴサッカリルトランスフェラーゼ(O−OTase)を介するものである。O−OTaseは、LPS合成の最終段階を触媒するWaaLリガーゼに類似しているため同定するのが難しい。バイオインフォマティクス解析から、アシネトバクター(Acinetobacter)属のほとんどの菌株に推定O−OTaseまたはWaaLリガーゼをコードする遺伝子が2種類存在することが明らかにされている。本願では、モデル系にA.ノソコミアリス(A.nosocomialis)M2およびA.バイリイ(A.baylyi)ADP1を用いて、上記の遺伝子が2種類のO−OTaseをコードすることを記載し、一方のO−OTaseはIV型ピリンを特異的に担うものであり、もう一方のO−OTaseは複数のタンパク質のグリコシル化を担うものである。ADP1を除くアシネトバクター(Acinetobacter)のピリン特異的OTaseは、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のTfpO/PilO O−Otaseに類似している。ADP1では代わりに、この2種類のO−OTaseは、最初にナイセリア(Neisseria)で発見された汎用O−OTaseであるPglLと深く関係している。しかし、一方のO−OTaseは、もっぱらピリン様タンパク質であるComPのグリコシル化を担っている。

0105

A.バイリイ(A.baylyi)ADP1野生型で同定された糖ペプチドを表3に示す。識別番号は対応するUniprot番号に従って分類されている。同定された各糖ペプチドのタンパク質名、親m/z、荷電状態、グリカンの質量、ペプチドの質量、グリカンの組成、ペプチドの配列およびmascotイオンスコアが記載されている。

0106

0107

実施例2
材料および方法:
菌株およびプラスミド
本研究に使用した細菌株およびプラスミドを表4に記載する。DNeasy blood and tissue kit(Qiagen社)を用いてA.バイリイ(A.baylyi)のゲノムDNAを単離した。遺伝子aciad3337(pglLComP)およびその上流の非コード領域の増幅には、プライマーigrF(ACTGGTCGACTAGTAGTACTATATGGCTTTAAA;配列番号89)およびigrR(ACTGCTGCAGTTAATATTCTATTGAACAAAATTTTAAC;配列番号90)を用いた。得られたPCR産物をSalIおよびPstIで消化しpEXT20の同じ部位に挿入してpMN8を作製した。ComPをpBAV−ComP−hisからpEXT20のBamHIおよびSalI部位にサブクローン化することによってプラスミドpMN1を構築した。pglLComPおよびその上流領域をpMN8のSalIおよびPstI部位からpMN1にサブクローン化することによってプラスミドpMN2を構築した。

0108

0109

0110

大腸菌(E.coli)でのグリコシル化
Dowerらによって記載されているプロトコル(Dowerら,1988)に従って、エレクトロコンピテントな大腸菌(E.coli)CLM24、CLM37またはSDB1を調製した。グリカン合成遺伝子座、アクセプタータンパク質およびOTaseをコードするプラスミドで細胞を形質転換させた。プラスミドの選択には、アンピシリン(100μg/ml)、テトラサイクリン(20μg/ml)、トリメトプリム(50μg/ml)、クロラムフェニコール(12.5μg/ml)、カナマイシン(20μg/ml)およびスペクチノマイシン(80μg/ml)を必要に応じて添加した。細胞をLBブロス中、37℃でOD6000.4〜0.6まで増殖させ、必要に応じて0.05mMもしくは0.1mMIPTGまたは0.2%アラビノースで誘導し、37℃で一晩放置した。アラビノース誘導が必要な培養物には4時間後に2回目のアラビノース投与を実施した。定常期に全細胞溶解物を入手し、そのうち0.1ODを12.5%SDS−PAGEゲルに負荷し、次いでニトロセルロース膜に転写した。ウエスタンブロット解析を用いてタンパク質修飾を判定した。使用した抗体を表5にまとめる。Odyssey Infrared Imaging System(LiCor Biosciences社、米国)を用いてニトロセルロース膜を可視化した。

0111

0112

膜調製物
リフィックブロス中37℃で一晩増殖させた細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液で洗浄し、同緩衝液に再懸濁させた。フレンチプレスを20kpsi(1.4×105kPa)で用いて細胞の破壊を2回実施した後、プロテアーゼインヒビターカクテル(Roche社)を加えることにより細胞を溶解させた。ライセートを10000×gで30分間遠心分離して細胞残屑を除去し、次いで上清を100000×gで60分間超遠心分離して全膜をペレット化した。PBS 10mlに0.1%Triton×100または1%n−ドデシル−β−D−マルトシドDDM)を含有する緩衝液にペレットを再懸濁させ、一晩回転させることにより膜タンパク質を可溶化した。この懸濁液に等体積のPBSを加えて界面活性剤の濃度を低下させ、100000Gで60分間超遠心分離した。可溶化膜タンパク質に対応する上清をニッケルアフィニティータンパク質精製用のカラムに負荷した。

0113

ニッケルアフィニティータンパク質精製
ニッケルアフィニティークロマトグラフィーにより可溶化全膜からヘキサ−ヒスチジンタグ化タンパク質を精製した。簡潔に述べれば、20mMイミダゾールを含有する緩衝液で予め平衡化させたニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)アガロースカラム(Qiagen社)に全膜を負荷した。未結合タンパク質を除去するため、カラムを4回、それぞれ20mMイミダゾールを含有する緩衝液および30mMイミダゾールを含有する緩衝液で洗浄した。250mMイミダゾールを含有する溶離緩衝液でカラムに結合したHisタグ化タンパク質を6つの画分に溶離させた。

0114

別法として、AKTA purifier(Amersham Biosciences社、スウェーデン)をタンパク質精製に用いた。最初に可溶化膜タンパク質を0.45μmフィルターおよび0.22μmフィルターでろ過し、次いで、20mMイミダゾールを含有する緩衝液で予め平衡化させたHis−Trap HPカラム(GE Healthcare社)に負荷した。カラムを10回、それぞれ20mMイミダゾールを含有する緩衝液および30mMイミダゾールを含有する緩衝液で洗浄することにより、未結合タンパク質を除去した。カラムに結合したタンパク質の溶離には、溶離緩衝液のイミダゾール濃度を漸増させた勾配溶離を用いた。

0115

マウスの免疫感作
透析を一晩実施した後、0.25%DDMを含有するPBS250mlからなる透析緩衝液で2時間の透析を2回実施することによりイミダゾールを除去した。DCキット(biorad社)を用いてタンパク質を定量化した後、試料を約6μg/mlに希釈し、マウス1匹当たり0.6μg注射した。マウス10匹からなる2つのグループに非グリコシル化ComPまたはCPSコンジュゲートComPのいずれかを注射した。免疫感作前および免疫感作から7日後と21日後にマウスから血清を採取した。第14日に追加免疫を実施した。

0116

全細胞ELISA。
肺炎球菌(S.pneumoniae)血清型14(Statens Serum Institut社、デンマーク)をBHIブロス中、37℃、5%CO2好気条件下で一晩増殖させた。細胞を1×PBSで洗浄し、ODを0.6に調節した。次いで、細胞を60℃で2時間インキュベートすることによって熱不活化した後、Corning高結合96ウェルプレートに固定化した(50μL/ウェル)。プレートを4℃で一晩インキュベートした。翌日、ウェルを1×PBS(100μL/ウェル)で3回洗浄した後、5%脱脂乳で2時間ブロックした。ウェルをPBSで3回洗浄した。次いで、PBSTに溶かした2.5%脱脂乳で1:500に希釈したマウス血清(100μL/ウェル)をプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。陽性対照には、血清型14のCPSに対する市販のウサギポリクローナル抗体を用いた(Statens Serum institute社)。陰性対照ウェルは一次抗体の代わりに脱脂乳で処理した。一次抗体とインキュベートした後、ウェルをPBSで3回洗浄した。次いで、二次HRPコンジュゲート抗体(100μL/ウェル)と1時間インキュベートした。使用した抗体は、PBSTに溶かした2.5%脱脂乳で希釈した抗マウスIgM(1:10000)、抗マウスIgG(1:10000)および抗ウサギ(1:5000)HRPコンジュゲート抗体であった。インキュベーション後、ウェルをPBSで3回洗浄し、各ウェルに発色基質TMB(Cell Signaling Technology社)100μLを加え、プレートを室温で5分間インキュベートした後、BioTek(商標)プレートリーダーを用いて650nmでの吸光度を測定した。

0117

莢膜多糖体(CPS)およびO抗原などの細菌表面グリカンは、グリカン特異的防御を生じさせることが明らかにされていることから、優れたワクチン候補である。前記グリカンを単独で使用すると、T細胞依存性免疫応答が誘発されるが記憶細胞は形成されず、防御を維持するにはのちに追加免疫を実施する必要がある。その結果、55未満の成人にグリカン単独ワクチンの効果が十分に報告されている。しかし、5歳未満の小児のこれらのワクチンに対する応答は、仮にあるとしても不十分なものであり、これは、この年齢では脾臓および血液中B細胞表面のCD21発現量が少ないことが原因であると考えられている。高齢者では、生理的な加齢に伴って造血組織および一次リンパ器官萎縮し、B細胞およびT細胞の産生の低下が起こるため、多糖体ワクチンの効果が減少する(Griffioenら,1991;Simellら,2008)(Paceによる概説,2013)。

0118

表面グリカンと免疫原性タンパク質とを結合させたコンジュゲートワクチンでは、グリカン単独のワクチンと比較して疾患の発生率の大幅な低下が認められている。コンジュゲートワクチンは、表面グリカンが免疫原性タンパク質とコンジュゲートされており、これにより、のちの感染に対して記憶細胞の発生にも関連するより強力な免疫応答であるT細胞依存性免疫応答が誘発される。コンジュゲートワクチンは5歳未満の小児にその効果が認められており、これは、幼児のT細胞が、成人の免疫表現型を呈し、コンジュゲートワクチン抗原に対して同程度に堅固な免疫応答を示すことに起因するものと考えられる(Timensら,1989)。以上の理由から、コンジュゲートワクチンはワクチン市場で勢いを増している(Paceによる概説,2013)。

0119

現在市場に出ているコンジュゲートワクチンの大部分は、グリカンとタンパク質とを化学的にコンジュゲートさせることによって合成されるものであるが、その工程には費用が掛かり、多数の欠点がみられる(DickおよびBeurret,1989;Peetersら,2003;Leesら,2006)。ワクチンの製造コストを削減し工程の効率を向上させる方法の1つとして、OTaseを利用してこのコンジュゲーションを細菌で実施することが提案されている(Terraら,2012)。細菌発現系(通常、設計された大腸菌(Escherichia coli)菌株)で異種発現させたOTaseにより脂質結合グリカンをアクセプタータンパク質に転移させた後、糖タンパク質を精製する。OTaseコンジュゲートワクチンの例としては、特に限定されないが、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、野兎病菌(Francisella tularensis)、類鼻疽菌(Burkholderia pseudomallei)、シゲラフレックスネリ(Shigella flexneri)および志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)に対するワクチンが挙げられる(Horzempaら,2008;Cuccuiら,2013;Garcia−Quintanillaら,2014;Kampfら,2015;Ravenscroftら,2015)。

0120

コンジュゲートワクチンを作製するためOTaseのうち現時点で最も特徴が明らかにされているものとして、カンピロバクター(Campylobacter)N−OTase PglB(CjPglB)のほか、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のO−OTases TfpO/PilOおよび髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)のNmPglLがある。上に挙げたOTaseは、転移されるグリカンおよびそれがグリコシル化する範囲のアクセプタータンパク質に対して特異的であることがわかっている。

0121

アクセプタータンパク質に関して、CjPglBは、グリカンをアクセプタータンパク質のシークオンD/EX1NX2S/T内にあるAsn残基に転移させ、ここでは、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸であり、−2位の残基は酸性アミノ酸、すなわちグルタミン酸(D)またはアスパラギン酸(E)である(Kowarikら,2006)。CjPglBのグリコシル化にはDQNATシークオンが最適なものであることが明らかにされている(Chenら,2007)。この「グリコタグ」と呼ばれるシークオンを大腸菌(E.coli)マルトース結合タンパク質MalEなどの非グリコシル化タンパク質のN末端またはC末端に挿入することにより、CjPglBによるグリコシル化が誘導された(Fisherら,2010)。

0122

これまでにO−OTaseのグリコシル化部位のコンセンサス配列は確認されていない。代わりに、同定されたグリコシル化残基は低複雑性領域にあり、セリン残基、プロリン残基およびアラニン残基が多数含まれている(Vikら,2009)。このことは、アクセプタータンパク質はO−OTaseの天然の基質に限定されることを意味し、TfpOの場合、緑膿菌(P.aeruginosa)1244菌株のIV型ピリンPilAであり、NmPglLの場合、様々なタンパク質であるということになる。しかし、N−グリコシル化グリコタグに対する同様の考え方が緑膿菌(P.aeruginosa)に用いられており、この場合、TfpOは、PilAのC末端の15残基(グリコシル化部位がある場所)をタンパク質のC末端に融合してほかのタンパク質をグリコシル化することができた(Qutyanら,2010)。

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