図面 (/)

技術 液晶色消し位相変調器

出願人 エシロール・アンテルナシオナル株式会社ニコン
発明者 リン,イーシンチェン,フンシャンチェン,ミンシュアン
出願日 2015年1月9日 (4年11ヶ月経過) 出願番号 2017-536594
公開日 2018年1月18日 (1年10ヶ月経過) 公開番号 2018-501524
状態 特許登録済
技術分野 液晶1(応用、原理) 液晶2(構造一般、スペーサ、注入口及びシール材)
主要キーワード 位相測定器 シュノーケリング 保護ゴーグル スキューバ 駆動電気信号 変化動作 可視光波長範囲 液晶素子基板
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年1月18日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (18)

課題・解決手段

入射光位相変調して出射する色消し位相変調器であって、入射光の光路上に直列に配置された複数の液晶素子と、入射光を色消し位相変調するように、複数の液晶素子に駆動電気信号印加する制御部と、を備え、複数の液晶素子は、少なくとも、第1の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第1液晶素子グループと、第2の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第2液晶素子グループからなり、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは実質的に等しく、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料の厚さは実質的に等しい。

概要

背景

近年、液晶素子を用いた位相変調に関する開発が盛んに進められている。例えば、デジタルホログラム記録装置画像情報ソースとして透過型空間光変調素子を用いることが開示されている(特許文献1)。この発明においては、位相と光強度の変調用にネマティック型液素子が用いられており、それにより、入射光としての偏光光偏光面が回転されずに出力されることが開示されている。また、入射光の偏光状態に関わりなく位相変調が可能な液晶位相変調器が開示されている(非特許文献1)。

概要

入射光の位相を変調して出射する色消し位相変調器であって、入射光の光路上に直列に配置された複数の液晶素子と、入射光を色消し位相変調するように、複数の液晶素子に駆動電気信号印加する制御部と、を備え、複数の液晶素子は、少なくとも、第1の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第1液晶素子グループと、第2の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第2液晶素子グループからなり、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは実質的に等しく、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料の厚さは実質的に等しい。

目的

本発明によれば、入射光が非偏光光であっても、広い波長域に対して色消し位相変調を行うことが可能な色消し位相変調器を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

入射光位相変調して出射する色消し位相変調器であって、前記入射光光路上に直列に配置された複数の液晶素子と、前記入射光を色消し位相変調するように、前記複数の液晶素子に駆動電気信号印加する制御部と、を備え、前記複数の液晶素子は、少なくとも、第1の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第1液晶素子グループと、第2の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第2液晶素子グループからなり、前記第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは実質的に等しく、前記第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料の厚さは実質的に等しい、色消し位相変調器。

請求項2

請求項1に記載の色消し位相変調器において、前記第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のうち、一方の液晶素子の液晶分子配向方向は、前記入射光の進行方向に平行な第1配向方向と、前記第1配向方向に直行する第2配向方向とを含む面内において変化させることが可能であり、他方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、前記第1配向方向と、前記第1配向方向および前記第2配向方向の両方に直交する第3配向方向と、を含む面内において変化させることが可能であり、前記第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のうち、一方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、前記第1配向方向と前記第1配向方向に直交する第4配向方向とを含む面内において変化させることが可能であり、他方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、前記第1配向方向と、前記第1配向方向および前記第4配向方向の両方に直交する第5配向方向と、前記第1配向方向とを含む面内において変化させることが可能である、色消し位相変調器。

請求項3

請求項2に記載の色消し位相変調器において、前記複数の液晶素子のそれぞれに印加する電気駆動電気信号に応じて、前記複数の液晶素子毎に個別に、前記液晶分子の配向方向を変化させることにより、第1変調量を実現する第1変調状態と、前記第1変調量とは異なる第2変調量を実現する第2変調状態とを設定することが可能であり、任意の波長について、前記第1液晶素子グループおよび第2液晶素子グループのいずれか一方においては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が前記第1変調状態における場合の方が前記第2変調状態における場合より大きく、前記第1液晶素子グループおよび第2液晶素子グループの他の一方においては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が前記第1変調状態における場合の方が前記第2変調状態における場合より小さい、色消し位相変調器。

請求項4

請求項2または3に記載の色消し位相変調器において、前記駆動電気信号が印加されない状態では、前記第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のそれぞれの前記液晶分子の配向方向は、共に前記第1配向方向であり、前記第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のそれぞれの前記液晶分子の配向方向は、一方は前記第4配向方向であり他方は前記第5配向方向である、色消し位相変調器。

請求項5

請求項2〜4のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、前記第2配向方向と前記第4配向方向とは同一であり、前記第3配向方向と前記第5配向方向とは同一である、色消し位相変調器。

請求項6

請求項2に記載の色消し位相変調器において、前記複数の液晶素子は、さらに、前記入射光の光路上に直列に配置され、第3の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第3液晶素子グループからなり、前記第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のうち、一方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、前記第1配向方向と、前記第1配向方向に直交する第6配向方向とを含む面内において変化させることが可能であり、他方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、前記第1配向方向と、前記第1配向方向および前記第6配向方向の両方に直交する第7配向方向と、を含む面内において変化させることが可能であり、前記第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料の厚さは実質的に等しい、色消し位相変調器。

請求項7

請求項6に記載の色消し位相変調器において、前記複数の液晶素子のそれぞれの前記液晶分子に印加する前記駆動電気信号に応じて、前記複数の液晶素子毎に個別に、前記液晶分子の配向方向を、第1変調量を実現する第1変調状態と、前記第1変調量とは異なる第2変調量を実現する第2変調状態とを設定することが可能であり、任意の波長について、前記第1液晶素子グループ、第2液晶素子および前記第3液晶素子グループのうちの二つのグループにおいては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が前記第1変調状態における場合の方が前記第2変調状態における場合より大きく、残りの一つの液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が前記第1変調状態における場合の方が前記第2変調状態における場合より小さいか、または、前記第1液晶素子グループ、第2液晶素子および前記第3液晶素子グループのうちの一つのグループにおいては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が前記第1変調状態における場合の方が前記第2変調状態における場合より大きく、残りの二つの液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が前記第1変調状態における場合の方が前記第2変調状態における場合より小さい、色消し位相変調器。

請求項8

請求項6または7に記載の色消し位相変調器において、前記駆動電気信号が印加されない状態では、前記第1液晶素子グループ、前記第2液晶素子グループおよび前記第3液晶素子グループのすべてにおいて、それぞれの液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の前記液晶分子の配向方向は、すべて前記第1配向方向である、色消し位相変調器。

請求項9

請求項6〜8のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、前記第2配向方向、前記第4配向方向および前記第6配向方向のうち少なくとも二つの配向方向は同一であり、前記第3配向方向、前記第5配向方向および前記第7配向方向のうち少なくとも二つの配向方向は同一である、色消し位相変調器。

請求項10

請求項1〜9のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、前記制御部は、それぞれの前記液晶素子グループにおいて、構成する一組の液晶素子に対して実質的に同じ制御電気信号を印加する、色消し位相変調器。

請求項11

請求項1〜10のいずれか一項に記載の色消し位相変調器において、前記入射光の波長は可視範囲であり、前記液晶素子はいずれもネマティック液晶素子である、色消し位相変調器。

請求項12

請求項1〜11のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、少なくとも一つの前記液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子は、互いに隣り合って配置されている、色消し位相変調器。

請求項13

請求項1〜12のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、少なくとも一つの前記液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子は、互いに密着して構成されている、色消し位相変調器。

請求項14

請求項1〜13のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、少なくとも一つの前記液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子は、一組の基板と前記基板の間の中央に位置してそれにより前記一組の液晶素子のそれぞれを隔てる層を有する一体型液晶素子グループを構成する、色消し位相変調器。

請求項15

請求項14に記載の色消し位相変調器において、前記一体型液晶素子グループには一系統の駆動電気信号が印加される、色消し位相変調器。

請求項16

請求項1〜15のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、前記液晶素子の前記液晶材料層の厚さは、前記液晶素子のそれぞれに印加する前記駆動電気信号を制御することによりゼロと最大位相変調の範囲の全ての位相変調ができるように設定される、色消し位相変調器。

請求項17

請求項1〜16のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、前記駆動電気信号は電圧である、色消し位相変調器。

請求項18

請求項1〜17のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、前記それぞれの液晶素子グループを構成する一組の前記液晶素子の前記液晶材料層の厚さは、いずれも30μm以下である、色消し位相変調器。

請求項19

請求項1〜18のいずれか1項に記載の色消し位相変調器において、前記液晶素子はそれぞれ、二次元配列された複数の部分液晶領域に分割されており、前記液晶素子に配列された前記部分液晶領域は、別の前記液晶素子の前記部分液晶領域と対応し、前記制御部はそれぞれの前記部分液晶領域に個別に駆動電気信号を印加するように制御する、色消し位相変調器。

請求項20

請求項1〜19のいずれか1項に記載の色消し位相変調器からなる光学用具。

請求項21

請求項20に記載の光学用具であって、ヘイズが2%以下である光学用具。

技術分野

0001

本発明は、液晶素子を用いて入射光位相変調して出力する色消し位相変調器に関する。

背景技術

0002

近年、液晶素子を用いた位相変調に関する開発が盛んに進められている。例えば、デジタルホログラム記録装置画像情報ソースとして透過型空間光変調素子を用いることが開示されている(特許文献1)。この発明においては、位相と光強度の変調用にネマティック型液素子が用いられており、それにより、入射光としての偏光光偏光面が回転されずに出力されることが開示されている。また、入射光の偏光状態に関わりなく位相変調が可能な液晶位相変調器が開示されている(非特許文献1)。

0003

日本国特開2009-14778号公報

先行技術

0004

Yi-Hsin Lin, Yung-Hsun Wu, Yue Zhao, Jiyu Fang, Zhibing Ge, and Shin-Tson Wu; “Polarization-independent liquid crystal phase modulator using polymer-separated double layered structure”; Optics Express; (USA); The Optical Society; October 31, 2005; Vol.13, No.22; p. 8746-8752

発明が解決しようとする課題

0005

特許文献1に記載された位相変調器は、非偏光光の入射光を直線偏光に変換してから位相変調を行うが、入射光の波長により位相変調量は変化する。また、非特許文献1に記載された位相変調器は、偏光状態には左右されずに位相変調が可能であるものの、入射光の波長により位相変調量は変化する。すなわち、これらの先行技術文献に開示された位相変調器においては、入射光の波長が変わると、それに伴って位相変調量が変化する。従って、使用できる入射光は単一波長のものに限られ、これらの位相変調器では、例えば、白色光光源としたカラー画像の位相変調を行うことは不可能であった。このような状況において、可視光波長域のような広い波長域内の全ての波長の光に対して実質的に同一の位相変調量を得ることが可能な色消し位相変調器が求められていた。

課題を解決するための手段

0006

本発明の第1の態様によると、入射光の位相を変調して出射する色消し位相変調器であって、入射光の光路上に直列に配置された複数の液晶素子と、入射光を色消し位相変調するように、複数の液晶素子に駆動電気信号印加する制御部と、を備え、複数の液晶素子は、少なくとも、第1の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第1液晶素子グループと、第2の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第2液晶素子グループからなり、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは実質的に等しく、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料の厚さは実質的に等しい。
本発明の第2の態様によると、第1の態様の色消し位相変調器において、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のうち、一方の液晶素子の液晶分子配向方向は、入射光の進行方向に実質的に平行な第1配向方向と、第1配向方向に直行する第2配向方向とを含む面内において変化させることが可能であり、他方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、第1配向方向と、第1配向方向および第2配向方向の両方に直交する第3配向方向と、を含む面内において変化させることが可能であり、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のうち、一方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、第1配向方向と第1配向方向に直交する第4配向方向とを含む面内において変化させることが可能であり、他方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、第1配向方向と、第1配向方向および第4配向方向の両方に直交する第5配向方向と、第1配向方向とを含む面内において変化させることが好ましい。
本発明の第3の態様によると、第2の態様の色消し位相変調器において、複数の液晶素子のそれぞれに印加する電気駆動電気信号に応じて、複数の液晶素子毎に個別に、液晶分子の配向方向を変化させることにより、第1変調量を実現する第1変調状態と、第1変調量とは異なる第2変調量を実現する第2変調状態とを設定することが可能であり、任意の波長について、第1液晶素子グループおよび第2液晶素子グループのいずれか一方においては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が第1変調状態における場合の方が第2変調状態における場合より大きく、第1液晶素子グループおよび第2液晶素子グループの他の一方においては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が第1変調状態における場合の方が第2変調状態における場合より小さいことが好ましい。
本発明の第4の態様によると、第2または3のいずれか一つの態様の色消し位相変調器において、駆動電気信号が印加されない状態では、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のそれぞれの液晶分子の配向方向は、共に第1配向方向であり、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のそれぞれの液晶分子の配向方向は、一方は第4配向方向であり他方は第5配向方向であることが好ましい。
本発明の第5の態様によると、第2〜4のいずれか1つの態様の色消し位相変調器において、第2配向方向と第4配向方向とは同一であり、第3配向方向と第5配向方向とは同一であることが好ましい。
本発明の第6の態様によると、第2の態様の色消し位相変調器において、複数の液晶素子は、さらに、入射光の光路上に直列に配置され、第3の屈折率波長依存性を有する液晶材料からなる一組の液晶素子により構成される第3液晶素子グループからなり、第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のうち、一方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、第1配向方向と、第1配向方向に直交する第6配向方向とを含む面内において変化させることが可能であり、他方の液晶素子の液晶分子の配向方向は、第1配向方向と、第1配向方向および第6配向方向の両方に直交する第7配向方向と、を含む面内において変化させることが可能であり、第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料の厚さは実質的に等しいことが好ましい。
本発明の第7の態様によると、第6の態様の色消し位相変調器において、複数の液晶素子のそれぞれの液晶分子に印加する駆動電気信号に応じて、複数の液晶素子毎に個別に、液晶分子の配向方向を、第1変調量を実現する第1変調状態と、第1変調量とは異なる第2変調量を実現する第2変調状態とを設定することが可能であり、任意の波長について、第1液晶素子グループ、第2液晶素子および第3液晶素子グループのうちの二つのグループにおいては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が第1変調状態における場合の方が第2変調状態における場合より大きく、残りの一つの液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が第1変調状態における場合の方が第2変調状態における場合より小さいか、または、第1液晶素子グループ、第2液晶素子および第3液晶素子グループのうちの一つのグループにおいては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が第1変調状態における場合の方が第2変調状態における場合より大きく、残りの二つの液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子の屈折率の平均値が第1変調状態における場合の方が第2変調状態における場合より小さいことが好ましい。
本発明の第8の態様によると、第6または7の態様の色消し位相変調器において、駆動電気信号が印加されない状態では、第1液晶素子グループ、第2液晶素子グループおよび第3液晶素子グループのすべてにおいて、それぞれの液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶分子の配向方向は、すべて第1配向方向であることが好ましい。
本発明の第9の態様によると、第6〜8のいずれか1つの態様の色消し位相変調器において、第2配向方向、第4配向方向および第6配向方向のうち少なくとも二つの配向方向は同一であり、第3配向方向、第5配向方向および第7配向方向のうち少なくとも二つの配向方向は同一であることが好ましい。
本発明の第10の態様によると、第1〜9のいずれか一つの態様の色消し位相変調器において、制御部は、それぞれの液晶素子グループにおいて、構成する一組の液晶素子に対して実質的に同じ制御電気信号を印加することが好ましい。
本発明の第11の態様によると、第1〜10のいずれか一つの態様の色消し位相変調器において、入射光の波長は可視範囲であり、液晶素子はいずれもネマティック液晶素子であることが好ましい。
本発明の第12の態様によると、第1〜11のおずれか一つの態様の色消し位相変調器において、少なくとも一つの液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子は、互いに隣り合って配置されていることが好ましい。

本発明の第13の態様によると、第1〜12のおずれか一つの態様の色消し位相変調器において、少なくとも一つの液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子は、互いに密着して構成されていることが好ましい。 本発明の第14の態様によると、第1〜13のいずれか一つの態様の色消し位相変調器において、少なくとも一つの液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子は、一組の基板基板の間の中央に位置してそれにより一組の液晶素子のそれぞれを隔てる層を有する一体型液晶素子グループを構成することが好ましい。
本発明の第15の態様によると、第14の態様の色消し位相変調器において、一体型液晶素子グループには一系統の駆動電気信号が印加されることが好ましい。
本発明の第16の態様によると、第1〜15のいずれか一つの態様の色消し位相変調器において、液晶素子の液晶材料層の厚さは、液晶素子のそれぞれに印加する駆動電気信号を制御することによりゼロと最大位相変調の範囲の全ての位相変調ができるように設定されることが好ましい。
本発明の第17の態様によると、第1〜16のいずれか一つの態様の色消し位相変調器において、駆動電気信号は電圧であることが好ましい。
本発明の第18の態様によると、第1〜17のいずれか一つの態様の色消し位相変調器において、それぞれの液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは、いずれも30μm以下であることが好ましい。
本発明の第19の態様によると、第1〜18のいずれか一つの態様の色消し位相変調器において、液晶素子はそれぞれ、二次元配列された複数の部分液晶領域に分割されており、液晶素子に配列された部分液晶領域は、別の液晶素子の部分液晶領域と対応し、制御部はそれぞれの部分液晶領域に個別に駆動電気信号を印加するように制御することが好ましい。
本発明の第20の態様によると、光学用具であって、第1〜19のいずれか一つの態様の色消し位相変調器からなる。
本発明の第21の態様によると、第20の光学用具において、ヘイズは2%以下であることが好ましい。

0007

本発明は、このような色消し位相変調器からなる光学装置にも関する。光学装置としては、眼鏡レンズ接眼バイザー照準光学系のいずれかでよく、眼鏡レンズは、眼の保護および/または視度矯正適合するように設計されるが、非矯正(平面または無限焦点)であってもよいし矯正眼鏡レンズであってもよい。矯正レンズは、単焦点、二焦点、三焦点、あるいは累進焦点レンズであってもよい。接眼用バイザーは、マスクゴーグルヘルメット、あるいはその他のヘッドギアに備えられるものであり、眼の前方に配置されるように設計される。ゴーグルやマスクとしては、スキーゴーグルやスキューバまたはシュノーケリング用マスク、保護ゴーグル、その他の類似の用具が挙げられる。

0008

本発明に係る光学用具は曲面を有する眼鏡レンズとして用いることが可能である。本発明に係る光学用具のヘイズは2%以下であり、0.4%以下であることが好ましい。ヘイズ値は、透過光測定器であるBYK-Gardner 社製のHaze-Guard Plus(c)ヘイズメータ色差計)を用いてASTMD1003-00に準拠して測定され、これは、その全体はここに参照して組み込まれる。本明細書における全ての「ヘイズ」値はこの基準による。測定器は、まずメーカーの指示に従って佼成し、次に、試料を佼成前の透過光線上に配置して、3つの資料位置におけるヘイズ値を記録し測定し、その平均値を求める。

発明の効果

0009

本発明によれば、入射光が非偏光光であっても、広い波長域に対して色消し位相変調を行うことが可能な色消し位相変調器を提供することが可能である。

図面の簡単な説明

0010

図1は、液晶分子の配向方向の変化を模式的に示す説明図である。
図2は、液晶材料の屈折率波長依存性を模式的に示す説明図である。
図3は、液晶素子グループを構成する一組の液晶素子における液晶分子の配向方向の位相変調時の変化について模式的に示す説明図である。
図4は、2種類の屈折率波長依存性を説明するグラフである。
図5は、二組の液晶素子グループにより構成した本発明の一実施の形態に係る色消し位相変調器の概略構成図である。
図6は、二組の液晶素子グループにより構成した色消し位相変調器で位相変調を行う際の、それぞれの液晶素子における液晶分子の配向方向変化を示す説明図である。
図7は、三組の液晶素子グループにより構成した本発明の一実施の形態に係る色消し位相変調器の概略構成図である。
図8は、液晶材料の屈折率波長依存性の幾つかの例を示すグラフである。
図9は、二組の液晶素子グループによる位相変調のシミュレーション結果を示す図である。
図10は、二組の液晶素子グループによる位相変調誤差のシミュレーション結果を示す図である。
図11は、三組の液晶素子グループによる位相変調のシミュレーション結果を示す図である。
図12は、三組の液晶素子グループによる位相変調誤差のシミュレーション結果を示す図である。
図13は、液晶素子に印加する電圧を設定するために用いる位相測定器の概略構成図である。
図14は、位相変調器による位相変調を測定するためのマッハツェンダ干渉測定装置の概略構成図である。
図15は、一体型液晶素子グループにより構成した色消し位相変調器を示す説明図である。
図16は、液晶材料を隔てる層を有する一体型液晶素子グループにより構成した色消し位相変調器を示す説明図である。
図17は、部分液晶領域を有する液晶素子を用いて構成した色消し位相変調器を示す説明図である。

実施例

0011

以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態の実施形態について説明する。本発明の上記実施の形態に係る位相変調器は、入射光の進行方向に複数の液晶素子を直列に配置して構成される。それぞれの液晶素子において、駆動電気信号の印加状態に応じて、液晶分子の配向方向を、基板に垂直な方向と基板に平行な一方向とを含む平面内において変化させることができる。このような液晶素子を垂直配向液晶素子と呼ぶ。垂直配向液晶素子としては、ゼロツイストネマティック液晶素子が好ましい。

0012

垂直配向液晶素子の動作について、図1(a)および図1(b)を参照して説明する。図1(a)および図1(b)において、X軸は紙面に垂直な方向、Y軸は紙面に平行な方向、Z軸は入射光の進行方向に設定される。図1(a)および図1(b)は液晶素子の断面を表わしており、1および2はそれぞれ基板と液晶材料を表し、3で示した長円は液晶分子を表わす。液晶分子は、基板に垂直な方向と基板に平行な一方向とを含む平面内において変化し、これらの二方向の間の任意の方向に配向させることができる。

0013

図1(a)は、ネガティブ誘電方性液晶材料による液晶素子(N型液晶素子)の動作を示しており、図1(b)は、ポジティブ誘電異方性液晶材料による液晶素子(P型液晶素子)を示している。

0014

図1(a)に示すN型液晶素子においては、駆動電気信号(例えば電圧)を印加しない状態では、液晶分子は基板面に垂直な方向に配向する。一方、充分な駆動電気信号(例えば充分に高い電圧)を印加した状態では、液晶分子は基板面に平行な一方向に配向する。

0015

図1(b)に示すP型液晶素子においては、駆動電気信号を印加しない状態では、液晶分子は基板面に平行な一方向に配向する。一方、充分な駆動電気信号を印加した状態では、液晶分子は基板面に垂直な方向に配向する。

0016

入射直線偏光の液晶材料における屈折率は液晶分子のチルト角度に依存して変化する。具体的には、液晶素子の液晶分子が基板面に垂直な方向に配向している場合と、基板面に平行な一方向に配向している場合とで、入射直線偏光の液晶素子における屈折率は異なる。一般に、波長λの光について、液晶材料における常光屈折率no(λ)は異常光屈折率ne(λ)より小さい。有効屈折率は直線偏光が液晶材料を通過する際の屈折率に依存し、その値はno(λ)とne(λ)の間である。本明細書では、波長λの光に関して、液晶分子が基板面に垂直な方向に配向している場合の常光屈折率をno(λ)、基板面に平行な一方向に配向している場合の異常光屈折率をne(λ)と記載する。no(λ)およびne(λ)は共に波長λに応じて変化する。このような波長に依存した屈折率の変化状態について、本明細書では屈折率波長依存性と呼ぶ。屈折率波長依存性は液晶材料に依存する。図2に屈折率波長依存性を模式的に示す。図2からわかる通り、波長λが長いほどno(λ)とne(λ)は共に小さくなり、また、これらの差であるne(λ)−no(λ)も波長λが長いほど小さい。

0017

次に、本発明の一実施の形態に係る位相変調器について説明する。本発明の上記実施の形態に係る位相変調器は、少なくとも、第1の屈折率波長依存性を有する一組の液晶素子により構成される第1液晶素子グループと、第2の屈折率波長依存性を有する一組の液晶素子により構成される第2液晶素子グループを有する。すなわち、本発明の上記実施の形態に係る位相変調器は、少なくとも4個の液晶素子を有する。第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは実質的に等しく、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さも実質的に等しい。

0018

第1液晶素子グループにおいて、一組の液晶素子の液晶分子は、それぞれの配向方向の変化面が互いに直交するように配置される。すなわち、第1液晶素子グループにおいて、一方の液晶素子における液晶分子の配向方向は、基板に垂直な第1配向方向と基板に平行な第2配向方向とを含む平面内において変化し、他方の液晶素子における液晶分子の配向方向は、第1配向方向と、基板に平行、同時に、第2配向方向と直交する第3配向方向とを含む平面内において変化する。

0019

図3は、液晶素子グループを構成する一組の液晶素子における液晶分子の配向方向の位相変調時の変化について模式的に示したものである。図3(a)および図3(b)は、第1液晶素子グループの一組の液晶素子をN型液晶素子で構成した場合を示している。図3(a)および図3(b)において、X軸は紙面に垂直な方向、Y軸は紙面に平行な方向、Z軸は入射光の進行方向に設定される。図3(a)は、それぞれの液晶素子には共に駆動電気信号が印加されていない場合を示している。この場合には、それぞれの液晶分子は共に第1配向方向に配向される。一方、図3(b)は、それぞれの液晶素子に十分な大きさの駆動電気信号が印加された場合を示している。この場合には、それぞれの液晶分子は第2配向方向および第3配向方向に配向される。第1配向方向、第2配向方向および第3配向方向は互いに直交する。なお、図3(b)の左側の液晶素子の円は、液晶分子の配向方向が紙面に垂直であることを示したものである。

0020

図3(c)および図3(d)は、第1液晶素子グループの一組の液晶素子をP型液晶素子で構成した場合を示している。図3(d)は、それぞれの液晶素子には共に十分な大きさの駆動電気信号が印加された場合を示している。この場合には、それぞれの液晶分子は共に第1配向方向に配向される。一方、図3(c)は、それぞれの液晶素子には共に駆動電気信号が印加されない場合を示している。この場合には、それぞれの液晶分子は第2配向方向および第3配向方向に配向される。

0021

第2液晶素子グループにおいても、一組の液晶素子の液晶分子は、それぞれの液晶分子の配向方向の変化面が互いに直交するように配置される。すなわち、第2液晶素子グループにおいて、一方の液晶素子における液晶分子の配向方向は、第1配向方向と基板に平行な第4配向方向とを含む平面内において変化し、他方の液晶素子における液晶分子の配向方向は、基板に垂直な第1配向方向と、基板に平行、かつ、第4配向方向と直交する第5配向方向とを含む平面内において変化するように配置される。すなわち、第2液晶素子グループにおいて、第1配向方向、第4配向方向および第5配向方向は互いに直交する。

0022

なお、図3(b)および図3(c)においては、左側の液晶素子における液晶分子の配向方向は紙面に垂直であり、右側の液晶素子における液晶分子の配向方向は紙面に平行であるように表している。しかし、第2配向方向と第3配向方向とは互いに直交し、かつ、第1配向方向に直交していればよく、それぞれが紙面に対して垂直または平行である必要はない。また、第4配向方向と第5配向方向とは互いに直交し、かつ、第1配向方向に直交していればよく、それぞれが紙面に対して垂直または平行である必要はない。

0023

第2配向方向は第4配向方向または第5配向方向に一致してもよいし一致しなくてもよい。また、第3配向方向は第5配向方向または第4配向方向に一致してもよいし一致しなくてもよい。すなわち、第1液晶素子グループおよび第2液晶素子グループにおいて、一組の液晶素子の間の関係が満足されていればよく、基板面が第1配向方向に垂直である限り、第1液晶素子グループと第2液晶素子グループとの角度関係に制限はない。

0024

第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の配置は、互いに隣り合っていてもよいし隣り合っていなくてもよい。また、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の配置も、互いに隣り合っていてもよいし隣り合っていなくてもよい。

0025

第1液晶素子グループを構成一組の液晶素子が互いに隣り合う場合、これらの液晶素子は互いに密着して配置されてもよい。また、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子が互いに隣り合う場合、これらの液晶素子は互いに密着して配置されてもよい。このような場合、密着して配置される2個の液晶素子の間に空気層が存在をしないように接着剤等を充填して配置されてもよい。また、一組の液晶素子を互いに隔てる基板は1個でもよい。

0026

第1液晶素子グループおよび第2液晶素子グループのそれぞれを構成する一組の液晶素子は、一組の液晶素子の間の中央に位置する層を有する1個の一体型液晶素子により構成されてもよい。液晶材料を隔てる層は、両側の液晶材料のそれぞれを互いに直交する方向に配向させるための異方性を有するような二層からなる高分子材料層ポリマー層)を用いることができる。このような構成の場合、一体型液晶素子の一組の液晶素子は一系統の駆動電気信号により、これらの液晶分子の配向方向を制御することができる。

0027

次に、一組の液晶素子グループに入射光として入射光を入射させた場合の作用について説明する。一組の液晶素子としては、図3(a)および図3(b)に示すN型液晶素子が用いられる。

0028

図3(a)の状態では、どちらの液晶素子にも駆動電気信号は印加されないので、これらの液晶分子の配向方向は共に第1配向方向、すなわち、入射光の方向となる。この状態では、一組の液晶素子の液晶分子の配向方向は共に入射光の進行方向と同じなので、任意の方向の偏光面の直線偏光について、波長λの光の屈折率はno(λ)となる。従って、一組の液晶素子グループにおける液晶材料層の合計の厚さをd、すなわち、それぞれの液晶素子における液晶材料層の厚さをd/2とした場合、これら一組の液晶素子を通過した光の位相変化φoは、
φo(λ)=2π(d/2)no(λ) /λ+2π(d/2)no(λ) /λ=2πdno(λ) /λ (1)
となる。すなわち、一組の液晶素子グループが図3(a)に示す状態の際に通過した非偏光光には、複屈折が発生せず、その位相変化量は(1)式に従う。

0029

次に、図3(b)の状態では、すなわち、どちらの液晶素子にも充分に大きな駆動電気信号を印加した場合について説明する。この場合、一組の液晶素子の液晶分子の配向方向は、それぞれ第2配向方向および第3配向方向となる。説明を簡単にするために、図3(b)の左側の液晶素子の液晶分子の配向方向を第2配向方向、右側の液晶素子の液晶分子の配向方向を第3配向方向とし、第2配向方向にX軸、第3配向方向にY軸を設定する。

0030

図3(b)の左側の液晶素子において、直線偏光について、X軸方向の屈折率をnx1(λ)、Y軸方向の屈折率をny1(λ)として、この液晶素子の作用W1をジョーンズ行列(Jones matrix)で表現すると、偏光面方向が任意の直線偏光に対しても次の通り表せる。



図3(b)の右側の液晶素子において、直線偏光について、X軸方向の屈折率をnx2(λ)、Y軸方向の屈折率をny2(λ)として、この液晶素子の作用W2をジョーンズ行列で表現すると、偏光面方向が任意の直線偏光に対しても次の通り表せる。



従って、図3(b)に示した一組の液晶素子グル−プを構成する2個の液晶素子の作用W12をジョーンズ行列で表現すると、偏光面方向が任意の直線偏光に対しても次の通り表せる。



ここで、一組の液晶素子の液晶材料は同じなので、nX1(λ) = nY2(λ) およびnY1(λ) = nX2(λ)である。一組の液晶素子に偏光面がX軸方向の入射直線偏光が入射する際、入射光に対する屈折率は、第1の液晶素子の通過においてはnX1(λ) = ne (λ)、第2の液晶素子の通過においてはnX2(λ) = no(λ)である。また、一組の液晶素子に偏光面がY軸方向の入射直線偏光が入射する際、入射光に対する屈折率は、第1の液晶素子の通過においてはnY1(λ) = no (λ)、第2の液晶素子の通過においてはnY2(λ) = ne(λ)である。よって、偏光面が任意の方向の直線偏光について、一組の液晶素子を通過における屈折率は、no(λ) + ne(λ)であり、
(nx1(λ)+ ny1(λ))/2=(nx2(λ)+ ny2(λ))/2=ne(λ)
とすると次に示す(2)式が得られる。



(2)
式(2)から、それぞれの厚さがd/2の一組の液晶素子は、厚さdで平均屈折率が(ne(λ) + no(λ))/2の単一液晶素子のように振る舞うことが推定される。

0031

(2)式から、X軸方向とY軸方向の振幅成分は等しいので、偏光面が任意の方向の直線偏光について、波長λの光の屈折率は(ne(λ) + no(λ))/2となる。従って、一組の液晶素子を通過した後の光の位相は、その偏光状態に無関係である。(2)式から、入射光の位相変化φe(λ)は次の(3)式で表される。
φe(λ)= 2πne(λ) d/λ (3)
(3)式より、位相変化φe(λ)は、X軸方向の屈折率nx(λ)とY軸方向の屈折率ny(λ)の平均値がne(λ)であって、厚さがdの液晶素子を入射光が通過した場合の位相変化に相当することがわかる。また、入射光が入射する順序は、液晶分子の配向方向が第2配向方向となる液晶素子が先でも、液晶分子の配向方向が第3配向方向となる液晶素子が先でも、同じ結果となることがわかる。

0032

以上の説明に基づいて、一組の液晶素子グループが図3(a)の状態から図3(b)の状態に変化した場合の位相変調Δφ(λ)は、
Δφ(λ)=φe(λ)−φo(λ)=2πd(ne(λ)−no(λ))/λ (4)
となる。

0033

上記説明は、二つの特定の状態の間、すなわち、一組の液晶素子のそれぞれの屈折率が、偏光面方向が任意の直線偏光に対する屈折率はno(λ)およびne(λ)である特定の状態であり、かつ、中間状態における(偏光方向に依存した)有効屈折率も入射光の波長λに応じてno(λ)およびne(λ)と同様に変化する場合の位相変調に関するものである。一組の液晶素子のうち、一方の液晶分子の配向方向は、第1配向方向と第2配向方向の間であって、かつ、光の入射方向に対するチルト角がα、同時に、他方の液晶分子の配向方向は、第1配向方向と第3配向方向の間であって、かつ、光の入射方向に対するチルト角がαである場合、波長λの光の有効屈折率は、どちらの液晶素子においても、
neff(λ,α)=1/√[(sin2(α)/ne(λ)+(cos2(α)/no (λ))] (5)
と表せる。

0034

このような状態における一組の液晶素子グループを構成する2個の液晶素子に光を通過させた場合の作用W12(α)をジョーンズ行列で表記すると次の通りとなる。



ここで、一組の液晶素子の液晶材料は同じであり、液晶分子のそれぞれの配向方向は、入射光の進行方向とX軸方向を含む面内、または、入射光の進行方向とY軸方向を含む面内にあるので、
nX1(λ, α) = nY2(λ, α)かつnY1(λ, α) = nX2(λ, α)
となる。一組の液晶素子に偏光面がX軸方向の入射直線偏光が入射する際、入射光に対する屈折率は、第1の液晶素子の通過においてはnX1(λ, α) = neff (λ, α)、第2の液晶素子の通過においてはnX2(λ)=no(λ)である。また、一組の液晶素子に偏光面がY軸方向の入射直線偏光が入射する際、入射光に対する屈折率は、第1の液晶素子の通過においてはnY1(λ)=no(λ)、第2の液晶素子の通過においてはnY2(λ)=neff(λ, α)である。よって、偏光面方向が任意の直線偏光について、一組の液晶素子を通過における屈折率は、neff(λ, α) + no(λ)であり、式(6)が推定される。



(6)
(6)式から、それぞれの厚さがd/2の一組の液晶素子は、厚さdで平均屈折率が(neff(λ,α) + no(λ))/2の単一液晶素子のように振る舞うことが推定される。

0035

(6)式から、X軸方向とY軸方向の振幅成分は等しいので、任意の方向の偏光面の直線偏光について、波長λの光の屈折率は(neff(λ, α)+no(λ))/2となる。 (6)式から、波長λの光の位相変化φe(λ)は、次の(7)式で表される。
φe(λ,α)= πd(neff (λ,α) +no(λ))/λ (7)

0036

すなわち、一組の液晶素子グループにおいて、構成する2個の液晶素子のそれぞれの液晶分子の光の入射方向に対するチルト角が共に等しい場合、一組の液晶素子を共に通過した後の光の位相は、その偏光状態に無関係である。

0037

次に、位相変化Δφ(λ) を表す(4)式に目する。それぞれの液晶素子の液晶分子の配向方向が、図3(a)の状態から図3(b)の状態に変化した場合、波長λが大きくなるにつれて右辺分母は増加する。一方、図2から明らかなように、波長λが大きくなるにつれて、ne(λ)とno(λ)の差は小さくなるので、式(4)右辺の分子は減少する。従って、位相変調Δφ(λ)は波長λの増加と共に小さくなる。すなわち、位相変調Δφの値は波長に依存することになり、一組の液晶素子グループでは色消し位相変調は成立しないことがわかる。

0038

以上の説明は、一組の液晶素子の液晶分子の配向方向が、図3(c)に示した状態と図3(d)に示した状態の間で変化する場合についても適用できる。

0039

次に、異なる二つの屈折率波長依存性について次に説明する。図4(a)および図4(b)は、異なる屈折率波長依存性を有する液晶材料のそれぞれの2種類の屈折率と波長の関係を模式的に示すグラフである。これらのグラフにおいて、下側の実線は液晶分子の配向方向が第1配向方向の場合の常光屈折率no(λ)、上側の実線は液晶分子の配向方向が第2配向方向または第3配向方向の場合の異常光屈折率ne(λ)を示す。

0040

図4(a)に示された通り、液晶材料1では、屈折率no(λ)とne(λ)は、共に波長λが変化してもそれに伴う変化は比較的小さい。従って、ne(λ)とno(λ)の差は波長λの変化に伴って大きく変化することはない。一方、図4(b)に示された通り、液晶材料2では、波長λの変化に伴う常光屈折率no(λ)と異常光屈折率ne(λ)の変化は、液晶材料1のそれらの変化に比べて大きい。特にne(λ)は波長λの変化に伴って大きく変化する。このため、波長λが大きくなるに従ってne(λ)とno(λ)の差は大きく減少する。

0041

本発明の一実施の形態に係る色消し位相変調器は、上記のように、少なくとも、第1の屈折率波長依存性を有する液晶材料による一組の液晶素子による第1液晶素子グループと、第2の屈折率波長依存性を有する液晶材料による一組の液晶素子による第2液晶素子グループより構成される。すなわち、本発明の上記実施の形態に係る色消し位相変調器は少なくとも4個の液晶素子により構成される。第1液晶素子グループおよび第2液晶素子グループのそれぞれにおいて、一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは互いに実質的に等しい。液晶材料1の厚さの合計はd1とし、液晶材料2の厚さの合計はd2とする。

0042

図5に、上記のように構成した位相変調器の例を示す。図5において、X軸は紙面に垂直な方向、Y軸は紙面に平行な方向、Z軸は入射光の進行方向に設定される。位相変調器100は、液晶材料1を用いた液晶素子一組による第1液晶素子グループと、液晶材料2を用いた液晶素子一組による第2液晶素子グループが、直列に配置されて構成される。第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは共にd1/2、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは共にd2/2である。液晶素子のそれぞれには、これらの液晶素子にそれぞれ印加する駆動電気信号を供給するための電源14が接続される。電源14からそれぞれの液晶素子に印加される駆動電気信号は制御装置15により制御される。なお、それぞれの液晶素子の配置順序制約はない。つまり、入射光がどの液晶素子に先に入射するようにしても構わない。

0043

既に説明した通り、それぞれの液晶素子は、印加される駆動電気信号に応じて、液晶分子の配向方向を、実質的に入射光の進行方向である第1配向方向と、第1配向方向と直交する第2配向方向との間、または、第1配向方向と、第1配向方向および第2配向方向に共に直交する第3配向方向との間で、変化させることが可能である。

0044

色消し位相変調を実現するには、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子と第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子では、有効屈折率の変化が逆向きである必要がある。すなわち、位相変調を行う際、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の有効屈折率を増加させる場合には、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の有効屈折率は減少させ、逆に、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の有効屈折率を減少させる場合には、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の有効屈折率は増加させる必要がある。このときの液晶分子の配向方向の変化動作の一例を図6(a)及び図6(b)に示す。図6(a)および図6(b)において、X軸は紙面に垂直な方向、Y軸は紙面に平行な方向、Z軸は入射光の進行方向に設定される。

0045

図6(a)の状態において、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子は一組の液晶素子1−1および1−2として示している。また、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子は一組の液晶素子2−1および2−2として示している。液晶素子1−1の液晶分子の配向方向は、第1配向方向からわずかに第3配向方向に変位した状態を表わしている。液晶素子1−2の液晶分子の配向方向は、第1配向方向からわずかに第2配向方向に変位した状態を表わしている。液晶素子1−1と液晶素子1−2で、それぞれの液晶分子の配向方向の光の入射方向に対するチルト角は互いに等しい。液晶素子2−1の液晶分子の配向方向は、第2配向方向からわずかに第1配向方向に変位した状態を表わしている。液晶素子2−2の液晶分子の配向方向は、第3配向方向からわずかに第1配向方向に変位した状態を表わしている。液晶素子2−1と液晶素子2−2で、それぞれの液晶分子の配向方向の光の入射方向に対するチルト角は互いに等しい。

0046

図6(b)の状態において、液晶素子1−1の液晶分子の配向方向は、第3配向方向からわずかに第1配向方向に変位した状態を表わしている。液晶素子1−2の液晶分子の配向方向は、第2配向方向からわずかに第1配向方向に変位した状態を表わしている。液晶素子1−1と液晶素子1−2で、それぞれの液晶分子の配向方向の光の入射方向に対するチルト角は互いに等しい。液晶素子2−1の液晶分子の配向方向は、第1配向方向からわずかに第2配向方向に変位した状態を表わしている。液晶素子2−2の液晶分子の配向方向は、第1配向方向からわずかに第3配向方向に変位した状態を表わしている。液晶素子2−1と液晶素子2−2で、それぞれの液晶分子の配向方向の光の入射方向に対するチルト角は互いに等しい。

0047

これらの液晶素子に印加する駆動電気信号を制御して、これらの液晶分子の配向方向を、図6(a)の状態から図6(b)の状態に変化させることで色消し位相変調を行う場合について次に説明する。

0048

それぞれの液晶素子の有効屈折率の変化について、図4(a)および図4(b)を用いて説明する。波長λ1の光に対する有効屈折率に関して、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子については共にn11(λ1)からn12(λ1)に増加し、一方、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子については共にn21(λ1)からn22(λ1)に減少する。これらの有効屈折率の変化について、図4(a)および図4(b)にx1およびy1として矢印で示す。

0049

同時に、波長λ1より長い波長λ2の光に対する有効屈折率に関して、液晶素子1を構成する一組の液晶素子については共にn11(λ2)からn12(λ2)に増加し、液晶素子2を構成する一組の液晶素子についてはn21(λ2)からn22(λ2)に減少する。これらの有効屈折率変化について、図4(a)および図4(b)にx2およびy2として矢印で示す。

0050

入射光が第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子を共に通過すると、入射光の波長λ1の成分に対して発生する位相変調Δφ1(λ1)は、それぞれの液晶素子の液晶材料層の厚さがd1/2であることから、
Δφ1(λ1)=2π[(n12(λ1)−n11(λ1))d1] /λ1
となる。同様に、入射光が第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子を共に通過すると、入射光の波長λ1の成分に対して発生するにより位相変調Δφ2(λ1)は、それぞれの液晶素子の液晶材料層の厚さがd2/2であることから、
Δφ2(λ1)=2π[(n22(λ1)−n21(λ1))d2] /λ1
となる。従って、これらの位相変調の合計位相変調Δφ(λ1)は、
Δφ(λ1)=Δφ1(λ1)+Δφ2(λ1)
=2π[(n12(λ1)−n11(λ1))d1+(n22(λ1)−n21(λ1))d2] /λ1
=2π(x1d1+y1d2) /λ1 (8)
となる。同様に、入射光の波長λ2の成分に対して発生する合計位相変調Δφ(λ2)は、
Δφ(λ2)=2π[(n12(λ2)−n11(λ2))d1+(n22(λ2)−n21(λ2))d2] /λ2
=2π(x2d1+y2d2) /λ2 (9)
となる。なお、既に説明した通り、本実施形態における2種類の液晶材料においてはλ1<λ2なので、
x1=n12(λ1)−n11(λ1) > 0
y1=n22(λ1)−n21(λ1) < 0
x2=n12(λ2)−n11(λ2) > 0
y2=n22(λ2)−n21(λ2) < 0
である。また、
x1−x2> 0
y1−y2< 0
である。

0051

図4(a)および図4(b)から明らかなように、x1とx2との差は小さく、それに比べてy1とy2との差は大きい。従って、
x1+y1<x2+y2
が成り立つ条件が存在する。ここで、x2とy1をそれぞれ移項すると、
x1−x2<y2−y1
となる。この式より、
(x1−x2)d1<(y2−y1)d2 (10)
が成り立つように、第1の屈折率波長依存性を示す液晶材料層の厚さd1と第2の屈折率波長依存性を示す液晶材料層の厚さd2を設定し得ることがわかる。すなわち、
(x1−x2)/(y2−y1)<d2/d1
となるようにd1およびd2を設定できる。

0052

(10)式より、(8)式の(x1d1+y1d2)に比べて(9)式の(x2d1+y2d2)は大きいことがわかる。すなわち、短い波長(小さいλ1)における位相変調を表わす式(8)の分子に比べて、長い波長(大きいλ2)における位相変調を表わす式(9)の分子の方が大きい。従って、(x1d1+y1d2) /(x2d1+y2d2)がλ1/λ2と等しくなるように、x1、y1、x2、y2、d1およびd2を設定することが可能なので、2種類の液晶材料と2種類の設計波長を選択して2つの未知数に対して2元連立方程式解くことで、
(x1d1+y1d2) /(x2d1+y2d2)=λ1/λ2 (11)
を実現できる。(11)式が成り立つことは、Δφ(λ1)=Δφ(λ2)であることを意味する。すなわち、少なくとも2波長に対して色消し位相変調が成立することを示す。

0053

上記説明した通り、第1液晶素子グループおよび第2液晶素子グループのそれぞれの液晶素子の液晶材料の屈折率波長依存性とそれらの層の厚さ、それらの液晶素子の有効屈折率変化を適当に設定することで、色消し位相変調を実現することができる。なお、液晶素子の有効屈折率変化量は、例えば、液晶素子に印加する電圧を制御することにより設定する。

0054

上記説明は、波長がλ1およびλ2の特定の二通りの場合に基づく色消し位相変調について説明したが、より多くの波長に基づいて実質的に色消し位相変調が実現できる。例えば、400〜700nmの可視光波長範囲での波長による最大位相シフト量ラジアンに対して位相変調誤差を0.1πラジアン以内に抑えた色消し位相変調を実現することが可能となる。

0055

液晶素子グループ数を増やして位相変調器を構成することにより、より良好に色消し位相変調を実現できる可能性もある。例えば、液晶素子グループ数を3とすることで、波長の違いによる位相変調の誤差をより小さく抑えた色消し位相変調器を実現できる可能性がある。この場合、位相変調を行う際に、二組の液晶素子グループをそれぞれ構成する液晶素子と、残る一組の液晶素子グループを構成する液晶素子とで、有効屈折率変化の方向が互いに逆になるように制御する。すなわち、二組の液晶素子グループを構成する液晶素子について有効屈折率を増加させるように制御する場合には、残る一組の液晶素子グループを構成する液晶素子については有効屈折率を減少させるように制御する。逆に、二組の液晶素子グループを構成する液晶素子について有効屈折率を減少させるように制御する場合には、残る一組の液晶素子グループを構成する液晶素子については有効屈折率を増加させるように制御する。

0056

図7に、例として、三組の液晶素子グループによる合計6個の液晶素子により構成した色消し位相変調器200を示す。図7において、X軸は紙面に垂直な方向、Y軸は紙面に平行な方向、Z軸は入射光の進行方向に設定される。位相変調器200は、液晶素子1−1、1−2、2−1、2−2、3−1および3−2による三組の液晶素子グループを有する。液晶素子のそれぞれには、これらの液晶素子にそれぞれ印加する電圧を供給するための電源214が接続される。電源214からそれぞれの液晶素子に印加される電圧は制御装置215により制御される。なお、これらの液晶素子の配置順序に制約はない。つまり、入射光がどの液晶素子に先に入射するようにしても構わない。

0057

第1液晶素子グループを構成する液晶素子1−1と1−2の液晶材料層の厚さを共にd1/2、第2液晶素子グループを構成する液晶素子2−1と2−2の液晶材料層の厚さを共にd2/2、第3液晶素子グループを構成する液晶素子3−1と3−2の液晶材料層の厚さを共にd3/2とする。入射光の波長λ1の成分に対する屈折率を、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子においては共にn11(λ1)からn12(λ1)に、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子においては共にn21(λ1)からn22(λ1)に、第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子においては共にn31(λ1)からn32(λ1)に変化させることにより位相変調を行う場合、三組の液晶素子グループを構成する6個の液晶素子による入射光の位相変調Δφ(λ1)は、
Δφ(λ1)=2π(x1d1+y1d2+z1d3) /λ1 (12)
となる。ここで、
x1=n12(λ1)−n11(λ1)
y1=n22(λ1)−n21(λ1)
z1=n32(λ1)−n31(λ1)
とする。

0058

このとき、三組の液晶素子グループを構成する6個の液晶素子による入射光の波長λ2の成分の位相変調Δφ(λ2)は、
Δφ(λ2)=2π(x2d1+y2d2+z2d3) /λ2 (13)
ここで、
x2=n12(λ2)−n11(λ2)
y2=n22(λ2)−n21(λ2)
z2=n32(λ2)−n31(λ2)
となる。

0059

同時に、三組の液晶素子グループを構成する6個の液晶素子による入射光の波長λ3の成分の位相変調Δφ(λ3)は、
Δφ(λ3)=2π(x3d1+y3d2+z3d3) /λ2 (14)
ここで、
x3=n12(λ3)−n11(λ3)
y3=n22(λ3)−n21(λ3)
z3=n32(λ3)−n31(λ3)
となる。

0060

(12)式、(13)式および(14)式から、x1、y1、z1、x2、y2、z2、x1、x2、およびx3のそれぞれについて、色消し位相変調が実現するように設定した場合には(3つの未知数に対して3元連立方程式を解くことで)、下記(15)式が満足される。
(x1d1+y1d2+z1d3) /λ1 =(x2d1+y2d2+z2d3) /λ2 =(x3d1+y3d2+z3d3) /λ3 (15)
式(15)が満足される場合、Δφ(λ1)=Δφ(λ2)=Δφ(λ3)となり、このことは、色消し位相変調が少なくとも三つの波長に関して達成されることを意味する。なお、三組の液晶素子グループを構成する6個の液晶素子の配置はどのような順序でも構わない。

0061

(実施例1:二組の液晶素子グループによる色消し位相変調器のシミュレーション)
<液晶材料の選定
多種類のネマティック液晶材料を用意する。これらの液晶材料の屈折率波長依存性は、液晶分子が光の進行方向に平行な方向に配向された状態の常光屈折率no(λ)と、液晶分子が光の進行方向に垂直な方向に配向された状態の異常光屈折率ne(λ)の両方に依存する。これら屈折率波長依存性はコーシーの分散公式(Cauchy’s dispersion formula)により示される。このようにして求めた屈折率波長依存性の一例を、図8に模式的に示す。

0062

次に、これらの複数の液晶材料から2種類の液晶材料を選択し、それぞれの液晶材料による一組の液晶素子をそれぞれ第1液晶素子グループおよび第2液晶素子グループとして位相変調器を構成したと仮定し、この位相変調器で最大位相変調2πラジアンを得る場合の液晶材料層の厚さを計算により求める。

0063

具体的には、二組の液晶素子グループのうち、一方の液晶素子グループを構成する一組の液晶素子においては、屈折率がno(λ)からne(λ)に変化し、他方の液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶分子屈折率がne(λ)からno(λ)に変化する。このとき、例えば、λ=400nmおよび600nmの二つの設計波長において、最大位相変調2πラジアンを得る下記(16)式が成り立つように、第1の屈折率波長依存性および第2の屈折率波長依存性を有する液晶材料層の厚さの合計であるd1およびd2を算出する。
2π(Δn1(λ)d1+Δn2(λ)d2) /λ=2π (16)
ここで、
Δn1(λ)=n1 e(λ)−n1 o(λ) または n1 o(λ) −n1 e(λ)
Δn2(λ)=n2 e(λ)−n2 o(λ) または n2 o(λ) −n2 e(λ)
n1 e(λ)−n1 o(λ)およびn2 e(λ)−n2 o(λ)はいずれも正であり、n1 o(λ) −n1 e(λ)およびn2 o(λ) −n2 e(λ)はいずれも負である。

0064

d1およびd2は、それぞれ第1の屈折率波長依存性および第2の屈折率波長依存性を有する液晶材料層の厚さの合計である。すなわち、d1/2は第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子それぞれの液晶材料層の厚さ、d2/2は第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子それぞれの液晶材料層の厚さである。

0065

図8から明らかなように、波長が長いほどΔn1(λ) とΔn2(λ)の絶対値は共に小さくなる。このことは、(16)式左辺の分母λが増加するほど、Δn1(λ)とΔn2(λ)の絶対値も共に減少することを意味する。従って、Δn1(λ)とΔn2(λ)がいずれも正の場合、または、いずれも負の場合には、λが大きいほど位相変調が小さくなるので、(16)式が満たされることはない。一方、Δn1(λ) およびΔn2(λ)のうちの一方は正で他方は負の場合には (16)式が成り立つ条件が存在する。このことに関しては、図4Aおよび図4Bを用いて既に説明した通りである。

0066

d1およびd2を求めるために、400nmおよび600nmの2通りの波長とこれらの波長におけるΔn1(λ)およびΔn2(λ)を(16)式に代入することにより、d1およびd2について次に示す2つの式を得る。
(Δn1(400)d1+Δn2(400)d2)=400(nm) (17)
(Δn1(600)d1+Δn2(600)d2)=600(nm) (18)
Δn1(400)、Δn2(400)、Δn1(600)、およびΔn2(600)については、既に記載した通り、コーシーの分散公式から計算により求められるので、(17)式および(18)式からd1およびd2が求まる。このようにして、2種類の液晶材料の様々な組み合わせにおけるそれぞれの液晶材料層の厚さを求めることができる。

0067

これらの様々な組み合わせの中から、次の条件を満たす2種類の液晶材料の組み合わせとそれぞれの液晶材料層の厚さを選定する。
(i)可視光400nm〜700nmの範囲で、2πラジアンに設定した最大位相変調に対して位相変調誤差が8%以下であること。
(ii) 全ての液晶素子において液晶材料層の厚さが30μmを超えないこと。すなわち、d1およびd2が共に30μmを超えないこと。
なお、(ii)の条件は、液晶材料層の厚さが厚い場合には位相変調する際の応答時間が長くなることから設定されたものである。

0068

上記条件を満たす組み合わせのうち、色消し位相変調器の第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子に用いる液晶材料としてMDA-02-2359(メルク社製)、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子に用いる液晶材料としてE7(メルク社製)を選択した。これらの液晶材料の屈折率波長依存性は図8に示した通りである。これら2種類の液晶材料層の合計厚さは、MDA-02-2359が28.33μm(d1)、E7が11.06μm(d2)である。すなわち、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは共に14.165μm、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは共に5.53μmである。

0069

第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(MDA-02-2359)の液晶分子の配向方向がそれぞれ、第1配向方向から第2配向方向、および第1配向方向から第3配向方向に変化する際の屈折率変化は、
Δn1(λ)=n1 e(λ)−n1 o(λ) >0
である。また、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(E7)の液晶分子の配向方向がそれぞれ、第2配向方向から第1配向方向、および第3配向方向から第1配向方向に変化する際の屈折率変化は、
Δn2(λ)=n2 o(λ) −n2 e(λ) <0
である。

0070

第1変調状態と第2変調状態の二つの位相変調状態の間で位相変調を行う場合について以下説明する。第1変調状態において、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(MDA-02-2359)の液晶分子の配向方向は共に第1配向方向であり、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(E7)の液晶分子の配向方向はそれぞれ第2配向方向と第3配向方向とする。MDA-02-2359はネガティブ誘電異方性(N型)を有し、E7はポジティブ誘電異方性(P型)を有する液晶素子用の液晶材料であるため、第1変調状態においてはいずれの液晶素子に対しても電圧の印加は必要ない。

0071

第2変調状態においては、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(MDA-02-2359)の液晶分子の配向方向はそれぞれ第2配向方向と第3配向方向であり、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(E7)の液晶分子の配向方向は共に第1配向方向とする。制御部は、それぞれの液晶素子グループにおいて、構成する一組の液晶素子に対して実質的に同じ制御電気信号を印加する。すなわち、制御部は、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のそれぞれに実質的に同じ駆動電気信号を印加する。同様に、制御部は、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のそれぞれに実質的に同じ駆動電気信号を印加する

0072

<シミュレーション>
二組の液晶素子グループを構成する合計4個の液晶素子を直列に配置した位相変調器におけるそれぞれの液晶素子の制御について次に説明する。ゼロから最大位相変調2πラジアンまでの間において特定の位相変調を実現するために必要なそれぞれの液晶素子の有効屈折率変化は、波長変化による位相変調誤差を最小とするように繰り返し計算して決定される。このような液晶素子の有効屈折率変化を決定するための方法は複数ある。例えば、液晶分子のあらゆる配向方向における液晶素子の有効屈折率変化を計算することができる(式(5)を参照)。具体的には、ゼロから最大位相変調2πラジアンまでの間のどのような特定の位相変調ΔOkに対しても、第1変調状態は同じ条件とする、すなわち、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(MDA-02-2359)の液晶分子の配向方向は共に第1配向方向であり、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(E7)液晶分子の配向方向はそれぞれと第2配向方向と第3配向方向である。この第1変調状態を初期状態と呼ぶ。

0073

特定の位相変調ΔOkのための第2変調状態を決定するには、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子と第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のそれぞれの最適有効屈折率を、400nmと600nmの波長の光に対して位相変調誤差が最小となるように計算することで行う。このとき、それぞれの液晶素子グループを構成する一組の液晶素子においては、光の入射方向に対する液晶分子の配向方向のチルト角は互いに等しくする。すなわち、屈折率は互いに等しい。第1変調状態における液晶分子の配向状態はいずれの位相変調についても同様の状態とすると、その状態から第2変調状態に変化することにより得られる位相変調ΔOkは、次の式(19)により表せる。
2π(Δn1(λ,α1)d1+Δn2(λ,α1)d2) /λ=ΔOk (19)
ここで、
Δn1(λ)=n1eff(λ,α1)−n1o(λ) > 0
Δn2(λ)=n2eff(λ,α2)−n2e(λ) < 0

0074

α1は第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の第2変調状態における光の入射方向に対する液晶分子のチルト角であり、α2は第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の第2変調状態における光の入射方向に対する液晶分子のチルト角である。有効屈折率neff(λ,α)は式(5)で表される。位相変調誤差は、2π(Δn1(λ,α1)d1+Δn2(λ,α1)d2) /λと式(18)のΔOkとの差である。実際には、400nmと600nmの設計波長に対して位相変調誤差が最小となるように繰り返し計算を行う。第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子および第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子液晶素子のそれぞれの有効屈折率の最適化は、液晶分子のチルト角α1およびα2により行う。

0075

上記のように算出した液晶材料と液晶材料層の厚さの組み合わせにおける位相変調について400〜700の波長域の種々の波長の光に対してシミュレーションを行う。最大位相変調である2πラジアンに対しては、既にコーシーの分散公式により求めた常光屈折率noと異常光屈折率ne(図8参照)を用いる。最大位相変調である2πラジアン以外の種々の位相変調については、有効屈折率を繰り返し変化させる計算を行って、位相変調誤差を最小とする。このようにして、400〜700nmの波長域について、0πラジアンから2πラジアンまで0.2πラジアン刻みで位相変調を計算した結果を図9に示す。また、位相変調誤差の算出値図10に示す。有効屈折率の最適化は400nmと600nmの波長において行ったが、位相変調の増加の違いによる位相の絶対誤差は、400nmから700nmの波長範囲で0.1πラジアンを超えない。

0076

(実施例2:三組の液晶素子グループによる色消し位相変調器のシミュレーション)
<液晶材料の選定>
実施例1において説明したように、屈折率波長依存性がわかっている複数のネマティック液晶材料から、3種類の液晶材料を選択する。これらの3種類の液晶材料を用いてそれぞれ2個ずつの三組の液晶素子グループからなる、合計6個の液晶素子により位相変調器を構成したと仮定し、この位相変調器で最大位相変調を得る場合のそれぞれの液晶素子グループを構成する液晶素子の液晶材料層の厚さを計算により求める。

0077

具体的には、三組の液晶素子グループのうち、二組の液晶素子グループをにおいては、それぞれを構成する一組の液晶素子の屈折率がno(λ)からne(λ)に変化し、残る一組の液晶素子グループにおいては、構成する一組の液晶素子の屈折率がne(λ)からno(λ)に変化する。このとき、例えば、λ=400nm、λ=500nmおよび660nmの三つの設計波長において、Δn1(λ)、Δn2(λ)およびΔn3(λ)の値は既知なので、最大位相変調2πを得る下記(20)式が成り立つように、d1、d2およびd3を算出する。
2π(Δn1(λ)d1+Δn2(λ)d2+Δn3(λ)d3) /λ=2π (20)
ここで、
Δn1(λ)=n1 e(λ)−n1 o(λ) または n1 o(λ) −n1 e(λ)
Δn2(λ)=n2 e(λ)−n2 o(λ) または n2 o(λ) −n2 e(λ)
Δn3(λ)=n3 e(λ)−n3 o(λ) または n3 o(λ) −n3 e(λ)
n1 e(λ)−n1 o(λ)、n2 e(λ)−n2 o(λ)およびn3 e(λ)−n3 o(λ)はいずれも正であり、n1 o(λ) −n1 e(λ)、n2 o(λ) −n2 e(λ)およびn3 o(λ) −n3 e(λ)はいずれも負である。

0078

d1、d2およびd3は、それぞれ第1の屈折率波長依存性、第2の屈折率波長依存性および第3の屈折率波長依存性を有する液晶材料層の厚さの合計である。すなわち、d1/2は第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子それぞれの液晶材料層の厚さ、d2/2は第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子それぞれの液晶材料層の厚さ、d3/2は第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子それぞれの液晶材料層の厚さである。

0079

(19)式において、Δn1(λ)、Δn2(λ)およびΔn3(λ)が全て正の場合、または、全て負の場合には、λが大きいほど位相変調が小さくなるので、このような場合には(20)式が満たされることはない。この点については、実施例1において既に説明した通りである。一方、Δn1(λ)、Δn2(λ)およびΔn3(λ)のうちの1つまたは2つは正、残りの2つまたは1つは負の場合には、2種類の液晶材料に関して図4Aおよび図4Bを用いて行った説明と同様な考え方により、(20)式が成り立つ条件が存在する。

0080

d1、d2およびd3を求めるには、例えば、400nm、500nmおよび660nmの3通りの波長とこれらの波長におけるΔn1(λ)、Δn2(λ)およびΔn3(λ)を(20)式に代入することにより、d1、d2およびd3について次に示す3つの式を得る。
Δn1(400)d1+Δn2(400)d2+Δn3(400)d3=400(nm) (21)
Δn1(500)d1+Δn2(500)d2+Δn3(500)d3=500(nm) (22)
Δn1(660)d1+Δn2(660)d2+Δn3(600)d3=660(nm) (23)
Δn1(400)、Δn2(400)、Δn3(400)、Δn1(500)、Δn2(500)、Δn3(500)、Δn1(660)、Δn2(660)およびΔn3(660)については、既に記載した通り、コーシーの分散公式から計算により求められているので、(21)〜(23)式からd1、d2およびd3が求まる。このようにして、様々な3種類の液晶材料の組み合わせに対するそれぞれの液晶材料層の厚さを求めることができる。

0081

これらの様々な組み合わせの中から、次の条件により3種類の液晶材料の組み合わせとそれぞれの液晶材料層の厚さを選定する。
(i) 2πラジアンの位相変調誤差が7%以下であること。
(ii) 全ての液晶素子において液晶材料層の厚さが30μmを超えないこと。

0082

上記条件を満たす組み合わせのうち、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子に用いる液晶材料としてMDA-02-2359(メルク社製)、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子に用いる液晶材料としてMLC-6608(メルク社製)、および第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子に用いる液晶材料としてZLI-4788(メルク社製)を選択した。これらの液晶材料の屈折率波長依存性は図8に示した通りである。これらの液晶材料はいずれもネガティブ誘電異方性(N型)を有する。これら3種類の液晶材料層の合計厚さd1、d2およびd3は、MDA-02-2359が23.78μm、MLC-6608が14.31μm、ZLI-4788が18.71μmである。すなわち、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは共に11.89μm、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは共に7.155μm、第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の液晶材料層の厚さは共に9.355μmである。

0083

これらの3組の液晶素子グループにより位相変調を行う場合、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子と第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子において有効屈折率が変化する方向と、第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子において有効屈折率が変化する方向は逆向きとなるように制御を行う。即ち、第1および第2液晶素子グループにおいて有効屈折率を増加させる場合には、第3液晶素子グループにおいては有効屈折率を減少させる。あるいは、第1および第2液晶素子グループにおいて有効屈折率を減少させる場合には、第3液晶素子グループにおいては有効屈折率を増加させる。

0084

具体的には、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(MDA-02-2359を使用)の液晶分子の配向方向が、第1配向方向から第2配向方向、または第1配向方向から第3配向方向に変化する際の屈折率変化は、
Δn1(λ)=n1e (λ)−n1 o (λ) >0
である。また、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(MMC-6608を使用)の液晶分子の配向方向が、第1配向方向から第2配向方向、または第1配向方向から第3配向方向に変化する際の屈折率変化は、
Δn2(λ)=n2 e (λ) −n2 o (λ) >0
である。また、第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子(ZLI-4788を使用)の液晶分子の配向方向が、第2配向方向から第1配向方向、または第3配向方向から第1配向方向に変化する際の屈折率変化は、
Δn3(λ)=n3 o(λ) −n3 e(λ) <0
である。

0085

第1変調状態においては、第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子と第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子における液晶分子の配向方向は全て第1配向方向であり、第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子における液晶分子の配向方向は、一方は第2配向方向であり、他方は第3配向方向である。

0086

<シミュレーション>
上記のように算出した材料と厚さの組み合わせにおける位相変調について400〜700の波長域の種々の波長の光に対してシミュレーションを行う。最大位相変調である2πラジアンに対しては、既にコーシーの分散公式により求めた常光屈折率no(λ)と異常光屈折率ne(λ)(図8参照)を用いる。最大位相変調である2πラジアン以外の種々の位相変調については、有効屈折率の変化量を繰り返し変化させる計算を行って、位相変調誤差を最小とする。このようにして、400〜700nmの波長域について、0πラジアンから2πラジアンまで0.2πラジアン刻みで位相変調を計算した結果を図11に示す。また、位相変調誤差の算出値を図12に示す。位相変調の増加の違いによる位相シフトの絶対誤差は、400nmから700nmの波長範囲で0.035πラジアンを超えない。より具体的には、液晶分子の配向が、第1変調状態に維持された状態から第2変調状態に変化することによる位相変調ΔOkは、次の式(24)により表せる。
2π(Δn1(λ,α1)d1+Δn2(λ,α1)d2+Δn3(λ,α3)d3) /λ=ΔOk (24)
ここで、
Δn1(λ)=n1eff(λ,α1)−n1o(λ) > 0
Δn2(λ)=n2eff(λ,α2)−n2o(λ) > 0
Δn3(λ)=n2eff(λ,α3)−n3e(λ) < 0

0087

ここで、α1、α2およびα3はそれぞれ第1液晶素子グループ、第2液晶素子グループおよび第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子の第2変調状態における光の入射方向に対する液晶分子のチルト角である。有効屈折率neff(λ,α)は式(5)で表される。実際には、400nm、500nmおよび660nmの設計波長に対して位相変調誤差が最小となるように繰り返し計算を行う。第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子、第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子および第3液晶素子グループを構成する一組の液晶素子のそれぞれの有効屈折率の最適化は、液晶分子のチルト角α1、α2およびα3により行う。

0088

<液晶素子の作製方法の例>
液晶素子の作製方法の一例について次に説明する。一組のガラス基板のそれぞれの一方の表面に、ITO(酸化インジウムスズ)とポリイミドをそれぞれコーティングして電極層配向層を形成する。ポリイミドを用いることにより、ホモジニアス配向あるいはホメオトロピック配向が可能となる。ホモジニアス配向の場合、配向層は、その近傍で液晶分子をガラス基板に平行、かつ、数°の微小プレチルト角ラビング方向に配向させるために、一方向にラビングを行なうことが可能である。ホメオトロピック配向の場合、その近傍で液晶分子をガラス基板にほぼ垂直、かつ、ラビングプレチルト角を85〜89°とするために、ポリイミド層を一方向に静かにラビングすることが可能である。

0089

一組のガラス基板を、形成された配向層が対向するように固定する。配向層がホモジニアス配向で反平行ラビング方向の場合には、ポジティブ誘電異方性液晶材料をガラス基板の隙間に注入することで、反平行配向の電気制御複屈折(ECB)液晶素子が形成される。配向層がホメオトロピック配向で反平行ラビング方向の場合には、ネガティブ誘電異方性液晶材料をガラス基板の隙間に注入することで、垂直配向(VA)電気制御複屈折(ECB)液晶素子が形成される。ガラス基板の隙間の大きさは、液晶素子を作製した際の液晶材料層が所望の厚さとなるように設定する。液晶材料を封止した後、電極層にリード線を固定して液晶素子を作製する。

0090

印加電圧設定方法の例>
それぞれの液晶素子に所望の屈折率変化を発生させるために、それぞれの液晶素子に印加する電圧を設定する方法の一例について次に説明する。液晶素子による位相変調を測定するために図13に示す位相測定器500を用意する。図13に示す位相測定器500は、波長632.8nmの光を出射するレーザ光源10と、その出射光の光路上に、透過軸が互いに直交するように配置した2個の偏光板(第1の偏光板11と第2の偏光板12)と光強度検出器13を配置して構成される。第1の偏光板偏光板11および第2の偏光板12の間に位相変調を測定する液晶素子を配置する。液晶素子には電圧を印加できるように電源14を接続し、制御装置15により電源14が液晶素子に印加する電圧を制御する。液晶素子は液晶分子の配向方向が基板面に対して平行になった際の配向方向が、2個の偏光板のそれぞれの透過軸と45°の角度となるように配置する。

0091

レーザ光源から出射した光は第1の偏光版11を透過して直線偏光となり、液晶素子に入射する。液晶素子の液晶分子の配向がレーザ光の入射方向に平行な場合には、液晶素子において複屈折は発生しないので、直線偏光の偏光方向は変化しない。従って、液晶素子を透過した直線偏光は第2の偏光板12を透過しないので光強度検出器13による検出光強度はほぼゼロである。一方、液晶素子の液晶分子の配向方向が基板面に平行となった場合には、第1の偏光版11の透過軸と液晶分子の配向方向は45°をなすので、液晶素子により複屈折が発生する。その結果、直線偏光は楕円偏光(あるいは円偏光)となり、光の一部は第2の偏光板12を透過して光強度検出器に13到達する。その結果、光強度検出器13において光強度が検出される。

0092

そこで、液晶素子に印加する電圧を液晶分子の配向方法がレーザ光の入射方向に平行な状態(基板に垂直な状態)から基板に平行な状態の間で変化するように制御装置15により電源14から液晶素子への印加電圧を制御しながら、光強度検出器による検出光強度を測定することにより、液晶素子への印加電圧Vと光強度I’の関係が求める。即ち、
I’=f(V) (25)
を求める。液晶素子による位相遅れと光強度との間には次の関係が成り立つ。
I’(Δφ)=(1/2)sin2(Δφ/2) (26)
従って、液晶素子への印加電圧と位相遅れの関係が求まる。また、液晶素子の液晶分子の配向方向を、第1配向方向から第1配向方向と第2配向方向の間の特定の状態に変化させるように印加電圧を制御した場合、有効屈折率変化と位相変調の間には次式が成り立つ。
Δφ=2πd(neff(λ)−no(λ)) /λ (27)

0093

ここで、n(λ)effは、液晶分子の配向方向が、レーザ光の入射方向に平行な状態と基板に平行な状態との間の所定の状態における波長λの光に対する有効屈折率を表わす。従って、(25)〜(27)式から、液晶素子の中間屈折率neff(λ)と印加電圧Vの関係が求まる。このようにして、位相変調器を構成するために選択した液晶素子のそれぞれについて、中間屈折率n(λ)effと印加電圧Vとの関係を求める。一つの液晶素子グループは実質的に同じ構成の一組の液晶素子で構成されているので、液晶素子グループにおける位相変調は構成する液晶素子1個の位相変調の2倍となる。また、一組の液晶素子に印加する電圧も実質的に同じとなる。

0094

以上により、ゼロから2πラジアンの間の種々の位相変調量に対応して、位相変調器を構成するそれぞれの液晶素子に印加すべき電圧の値が求まる。これらの電圧の値を所望の位相変調量に対応させて、印加電圧データテーブルとして制御装置の記憶部(不図示)に記憶する。

0095

<色消し位相変調器の例>
既に説明したように、図5は、二組の液晶素子グループによる色消し位相変調器の例として色消し位相変調器100の例を示す。2組の液晶素子グループを構成する各液晶素子は、これらに印加される電圧を供給するための電源14と接続される。制御装置15により電源14から各液晶素子に印加する電圧を制御する。なお、各液晶素子の配置順序に制約はない。入射光がそれぞれの液晶素子グループを構成する液晶素子を通過することで、入射光の位相は色消し位相変調される。

0096

また、図7に、三組の液晶素子グループを直列に配置して構成する色消し位相変調器の一例として色消し位相変調器200を模式的に示す。三組の液晶素子グループを構成するそれぞれの液晶素子には、それぞれに印加する電圧を供給するための電源214が接続される。制御装置215は電源214からそれぞれの液晶素子に印加する電圧を制御する。なお、三組の液晶素子グループを構成する液晶素子の配置順序に制約はない。入射光がそれぞれの液晶素子を順次通過することで、入射光の位相は色消し位相変調される。

0097

<位相変調誤差の測定方法の例>
位相変調器の位相変調を測定する方法の一例について次に説明する。図14に示すように、マッハ・ツェンダ(Mach-Zehnder)干渉装置600に、位相変調器100(図5)または200(図7)を配置して位相変調の測定を行う。図14は、位相変調器として図5に示す位相変調器100が配置されているところを示す。レーザ光源31から出射した非偏光光はビームスプリッタ32に入射する。ビームスプリッタ32から出射した光はL1とL2の2つの光路に分離される。光路L1には位相変調器100が配置され、位相変調器100を透過した光は二組の液晶素子グループを構成するそれぞれの液晶素子を通過する際、それぞれの液晶素子に印加された電圧に応じて位相が変調される。変調された光は反射ミラー33で反射されビームスプリッタ35に入射する。光路L2を進む光は反射ミラー34で反射されビームスプリッタ35に入射する。ビームスプリッタ35において、L1とL2の二つの光路は重なった後、必要に応じてレンズにより拡大されてスクリーンSに投影される。ビームスプリッタ35から出射した光は、位相変調された光路L1の光と位相変調されない光路L2の光が重なるために干渉が発生し、スクリーンS上に干渉縞が現れる。

0098

なお、図14に示すマッハ・ツェンダ干渉装置600に、位相変調器として図7に示す位相変調器200が配置された場合には、位相変調器200は位相変調器100に代わって光路L1に配置され、光は各液晶素子グループを構成するそれぞれの液晶素子を通過して位相変調される。

0099

レーザ光源31としては、例えば波長632.8nmのHe-Neレーザを用いることができる。制御装置15または215(図5または図7を参照)の記憶部に記憶された印加電圧データテーブルに基づいてそれぞれの液晶素子への電圧が印加されるように電源14または214を制御する。このようにして、例えば、ゼロ(0πラジアン)、0.5πラジアン、1πラジアン、1.5πラジアンおよび2πラジアン等の目標とする位相変調に対応するそれぞれの液晶素子への印加電圧を制御する。それぞれの場合にスクリーンSに投影された干渉縞をカメラCのCMOSイメージセンサ撮影し、干渉縞の変化を記録する。記録された干渉縞のシフトに基づき、計算により実際に発生した位相変調を求める。

0100

次に、レーザ光源31を、例えば波長543.5のHe-Neレーザに変更し、同様の要領で0πラジアン、0.5πラジアン、1πラジアン、1.5πラジアンおよび2πラジアンのそれぞれの目標とする位相変調に対応するそれぞれの液晶素子への印加電圧を制御する。それぞれの場合にスクリーンSに投影された干渉縞をカメラCのCMOSイメージセンサで撮影し干渉縞の変化を記録する。記録された干渉縞のシフトに基づき、計算により実際の位相変調を求める。さらに、上記波長以外の波長を有する光源に変更して同様の手順により測定を行うことで、より多くの波長の光に対する位相変調誤差を測定することが可能となる。

0101

以上説明した実施の形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)上記実施の形態に係る位相変調器は、複数の液晶素子を直列に配置して構成される。これらの液晶素子は少なくとも二組の液晶素子グループを構成し、異なる液晶素子グループの液晶材料の素子屈折率波長依存性は互いに異なる。第1液晶素子グループを構成する一組の液晶素子と第2液晶素子グループを構成する一組の液晶素子では、有効屈折率の変化が逆向きである。これら複数の液晶素子にそれぞれ所定の駆動電気信号を印加するように制御して入射光の位相変調を行う。これにより、広い波長域の光に対して偏光状態に関わりなく色消し位相変調を行うことが可能となり、このような波長範囲の非偏光光の色消し位相変調を行うことができる。
(2)上記実施の形態に係る位相変調器においては、液晶素子として液晶分子を所定の方向に配向可能なネマティック液晶素子を用いる。このような構成により、簡易な構成により、色消し位相変調器を実現することができる。
(3)上記実施の形態に係る位相変調器においては、各液晶素子にそれぞれ印加する駆動電気信号に応じて、第1変調状態と第2変調状態の様々な組み合わせを設定することが可能である。このような構成により、簡易な制御により色消し位相変調器を実現することができる。

0102

以上説明した実施形態は、次のように変形して実施できる。

0103

(変形例1)
本明細書に記載した実施の形態においては、それぞれの液晶素子グループを構成する一組の液晶素子は互いに離れて配置されているものとして説明した。しかし、液晶素子グループにおいて液晶素子は互いに接触するように配置されてもよい。また、異なる液晶素子グループに属する2個の液晶素子が互いに接触するように配置されてもよい。

0104

(変形例2)
隣り合う液晶素子同志が空気層を介さずに互いに密着して固定されるように構成されてもよい。さらに、密着した2個の液晶素子が1個の基板を共有する構成としてもよい。このような構成の色消し位相変調器300を図15に示す。図15において、X軸は紙面に垂直な方向、Y軸は紙面に平行な方向、Z軸は入射光の進行方向に設定される。

0105

(変形例3)
それぞれの液晶素子グループを構成する一組の液晶素子は、一組の基板とそれぞれの液晶素子を隔てる隔離層を中央に有する一体型液晶素子グループとして構成されてもよい。隔離層は互いに直交する方向に異方性を持たせた二層のポリマー層で構成する。このような構成により、一体型液晶素子において、ポリマー層の両側の液晶分子を互いに直交する方向に容易に配向させることができる。このような構成の色消し位相変調器400を図16に示す。図16において、X軸は紙面に垂直な方向、Y軸は紙面に平行な方向、Z軸は入射光の進行方向に設定される。

0106

(変形例4)
本明細書に記載した実施の形態においては、それぞれの液晶素子について、最大屈折率変化量、すなわち、液晶分子の配向方向が、液晶素子基板面に垂直である場合の常光屈折率no(λ)と液晶素子基板面に平行である場合の異常光屈折率ne(λ)の差に基づいて液晶材料層の厚さを求めた。しかし、本発明はこの例に限定されず、常光屈折率no(λ)に相当する方向と異常光屈折率ne(λ)に相当する方向の間の任意の二つの液晶分子の配向方向における有効屈折率差に基づいて液晶材料層の厚さを求めてもよい。

0107

(変形例5)
本明細書に記載した実施の形態においては、それぞれの液晶素子は一体として機能するものとして説明した。しかし、それぞれの液晶素子は二次元配列された複数の部分液晶領域に分割されたものであってもよい。この場合、これらの部分液晶領域に対しては個別に印加電圧を制御できるものとし、さらに、それぞれの液晶基板の部分液晶領域は互いに対応するように構成される。このような構成の色消し位相変調器700を図17に示す。図17において、X軸は紙面に垂直な方向、Y軸は紙面に平行な方向、Z軸は入射光の進行方向に設定される。図17の色消し位相変調器700において、一つの液晶素子に形成されたそれぞれの部分液晶領域701は、別の液晶素子に形成されたそれぞれの部分液晶領域702〜704と対応し、対応関係にある一連の部分液晶領域を光が伝播し、対応関係のない他の部分液晶領域には光が伝播しないように構成される。なお、図17においては、電源や制御装置は省略して図示している。

0108

(変形例6)
本明細書に記載した実施の形態においては、2組ないし3組の液晶素子グループを用いて色消し位相変調器を構成したが、3組を超える液晶素子グループを用いて構成してもよい。

0109

以上説明した実施形態や変形例は例示に過ぎず、発明の特徴が損なわれない限り本発明はこれらの内容に限定されない。また、以上で説明した実施の形態や変形例は発明の特徴が損なわれない限り組み合わせて実行してもよい。

0110

1基板
2液晶材料
10、31レーザ光源
11、12偏光板
13光強度検出器
14、214、314、414電源
15、215、315、415制御装置
32、35ビームスプリッタ
33、34反射ミラー
100、200、300、400、700位相変調器
701、702、703、704 部分液晶領域
500位相測定器
600マッハ・ツェンダ干渉装置

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ