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技術 塗装金属板およびその製造方法

出願人 日新製鋼株式会社
発明者 佐藤正樹鈴木成寿杉田修一
出願日 2017年12月28日 (2年2ヶ月経過) 出願番号 2017-254240
公開日 2018年12月13日 (1年2ヶ月経過) 公開番号 2018-196877
状態 特許登録済
技術分野 流動性材料の適用方法、塗布方法 積層体(2) 塗料、除去剤
主要キーワード 上金属板 重力下方 コンプレッサーエアー 燃焼ガス供給源 火炎照射 ヒドロキシアルキルエステル基 混合酸溶液 フレーム処理後
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年12月13日)のものです。
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図面 (10)

課題

雨筋汚れ性、および耐傷付き性が高く、さらに良好な外観を有する塗装金属板の製造方法を提供することを課題とする。

解決手段

上記課題を解決するため、塗装金属板の製造方法は、金属板の表面に、シリコーンレジンを含む塗料を塗布および硬化させて塗膜を形成する工程と、前記塗膜にフレーム処理を行う工程と、を有する。前記シリコーンレジンは、Si原子総モル数に対して、5〜50モル%のシラノール基を含む。

概要

背景

屋外建造物土木構造等には、塗装金属板が多く用いられている。このような塗装金属板では、自動車排気ガス工場からの煤煙等に含まれるカーボン系汚染物質(以下、「疎水性カーボン」とも称する)の付着による汚れが問題となっている。汚れの中でも特に、雨筋に沿って付着する汚れ(以下、「雨筋汚れ」とも称する)が目立ちやすい。従来の塗装金属板では、このような雨筋汚れが比較的短時間のうちに目立つようになることが避けられず、雨筋汚れが発生し難い塗装金属板が求められていた。

近年、塗膜対水接触角を60°以下、つまり親水性にすることで、雨筋汚れを防止することが提案されている。対水接触角が低い親水性の塗膜表面では、雨水によって疎水性カーボンが浮き上がりやすく、浮き上がった疎水性カーボンが洗い流されると考えられる。塗装金属板表面を親水化する手法の一つとして、テトラアルコキシシランまたはその縮合物(以下、これらを「オルガノシリケート」とも称する)を含む塗料金属板表面に塗布する方法が挙げられる(特許文献1)。また、ビニル基含有ポリシロキサン樹脂等を含む塗料を金属板に塗布し、当該塗膜に、コロナ放電処理を施す方法(特許文献2)も提案されている。さらに、ポリエステル樹脂を含む塗料を金属板に塗布し、当該塗膜に200W/m2/分以上のコロナ放電処理を施す方法(特許文献3)等も提案されている。さらに、オルガノシリケート等を含む塗料を金属板に塗布し、当該塗膜にフレーム処理や、プラズマ処理、コロナ放電処理等を施すことも提案されている(特許文献4)。

概要

耐雨筋汚れ性、および耐傷付き性が高く、さらに良好な外観を有する塗装金属板の製造方法を提供することを課題とする。上記課題を解決するため、塗装金属板の製造方法は、金属板の表面に、シリコーンレジンを含む塗料を塗布および硬化させて塗膜を形成する工程と、前記塗膜にフレーム処理を行う工程と、を有する。前記シリコーンレジンは、Si原子総モル数に対して、5〜50モル%のシラノール基を含む。なし

目的

本発明は、耐雨筋汚れ性、および耐傷付き性が高く、さらに良好な外観を有する塗装金属板、およびその製造方法の提供を目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

金属板の表面に、シリコーンレジンを含む塗料を塗布および硬化させて塗膜を形成する工程と、前記塗膜にフレーム処理を行う工程と、を有し、前記シリコーンレジンは、Si原子総モル数に対して、5〜50モル%のシラノール基を含む、塗装金属板の製造方法。

請求項2

前記シリコーンレジンは、Si原子の総モル数に対して、トリアルコキシシラン由来のSi原子を50〜100モル%含む、請求項1に記載の塗装金属板の製造方法。

請求項3

前記シリコーンレジンは、Si原子に直接結合するアルキル基モル数に対する、Si原子に直接結合するアリール基のモル数の割合が20〜80%である、請求項1または2に記載の塗装金属板の製造方法。

請求項4

前記塗料がポリエステル樹脂またはアクリル樹脂をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗装金属板の製造方法。

請求項5

金属板と、前記金属板上に形成された塗膜と、を有し、前記塗膜が、シリコーンレジンの硬化物を含み、前記塗膜の表面を、X線源としてAlKα線を用いてX線電子分光分析法分析したときの、Si原子、N原子、C原子、O原子、およびTi原子の合計量に対するSi原子の割合をSiaとし、C原子の量に対するO原子の量の割合をxとすると、Siaおよびxが、以下の式をそれぞれ満たし、Sia≧8atm%x≧0.8前記X線電子分光分析法による分析で得られるX線光電子分光スペクトルのC1sピークトップを285eVに補正して、Si2pスペクトルを103.5eVに相当するピークおよび102.7eVに相当するピークに分離したとき、Si2pスペクトル全体のピーク面積Si2pに対する103.5eVのピーク面積Si無機の割合yとすると、yが下記式を満たす、y≧0.6塗装金属板。

請求項6

前記塗膜表面ヨウ化メチレン転落角が15°以上50°以下である、請求項5に記載の塗装金属板。

請求項7

前記シリコーンレジンの硬化物が、メチルトリアルコキシシランまたはフェニルトリアルコキシシラン由来の構造を含む、請求項5または6に記載の塗装金属板。

請求項8

前記塗膜が、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂を含む、請求項5〜7のいずれか一項に記載の塗装金属板。

請求項9

前記金属板が、亜鉛系めっき鋼板である、請求項5〜8のいずれか一項に記載の塗装金属板。

技術分野

0001

本発明は、塗装金属板およびその製造方法に関する。

背景技術

0002

屋外建造物土木構造等には、塗装金属板が多く用いられている。このような塗装金属板では、自動車排気ガス工場からの煤煙等に含まれるカーボン系汚染物質(以下、「疎水性カーボン」とも称する)の付着による汚れが問題となっている。汚れの中でも特に、雨筋に沿って付着する汚れ(以下、「雨筋汚れ」とも称する)が目立ちやすい。従来の塗装金属板では、このような雨筋汚れが比較的短時間のうちに目立つようになることが避けられず、雨筋汚れが発生し難い塗装金属板が求められていた。

0003

近年、塗膜対水接触角を60°以下、つまり親水性にすることで、雨筋汚れを防止することが提案されている。対水接触角が低い親水性の塗膜表面では、雨水によって疎水性カーボンが浮き上がりやすく、浮き上がった疎水性カーボンが洗い流されると考えられる。塗装金属板表面を親水化する手法の一つとして、テトラアルコキシシランまたはその縮合物(以下、これらを「オルガノシリケート」とも称する)を含む塗料金属板表面に塗布する方法が挙げられる(特許文献1)。また、ビニル基含有ポリシロキサン樹脂等を含む塗料を金属板に塗布し、当該塗膜に、コロナ放電処理を施す方法(特許文献2)も提案されている。さらに、ポリエステル樹脂を含む塗料を金属板に塗布し、当該塗膜に200W/m2/分以上のコロナ放電処理を施す方法(特許文献3)等も提案されている。さらに、オルガノシリケート等を含む塗料を金属板に塗布し、当該塗膜にフレーム処理や、プラズマ処理、コロナ放電処理等を施すことも提案されている(特許文献4)。

先行技術

0004

国際公開第1994/6870号
特開平5−59330号公報
特開2000−61391号公報
特開2006−102671号公報

発明が解決しようとする課題

0005

上記特許文献1には、メチルシリケートや、エチルシリケート等、オルガノシリケートを含む塗料を、金属板表面に塗布することが記載されている。当該塗料を金属板表面に塗布すると、オルガノシリケートが表面側に移動する。そして、当該塗料の硬化膜(塗膜)の表面で、オルガノシリケートが空気中の水分等と反応し、塗膜表面にシラノール基シロキサン結合が生じる。これにより、塗膜表面が親水化すると考えられる。

0006

しかしながら、メチルシリケートは、塗料に含まれる樹脂等との相溶性が高い。そのため、塗料を塗布した際に、メチルシリケートが表面側に移動し難く、塗膜表面の親水性が十分に高まり難い。またこの場合、塗膜表面の硬度も十分に高まり難い。一方、エチルシリケートは、塗料に含まれる樹脂等との相溶性が低い。そのため、塗料を金属板表面に塗布すると、エチルシリケートは表面側にある程度移動する。しかしながら、エチルシリケートは、塗膜表面で加水分解され難く、塗膜表面を親水化するためには時間がかかる。したがって、塗膜が十分に親水化するまでの間に雨筋汚れが発生してしまう。

0007

つまり、いずれのオルガノシリケートによっても、十分に雨筋汚れの発生を抑制することは難しかった。また上述のように、オルガノシリケートの硬化物を含む塗膜では、表面の硬度が十分に高まり難いことから、耐傷付き性が低く、さらには、オルガノシリケートの硬化物が塗膜全体に含まれることで、膜が割れやすくなり、曲げ加工性も低くなるとの課題があった。

0008

また、上記オルガノシリケート(メチルシリケートやエチルシリケート)を含む塗料では、塗料からなる膜を加熱乾燥させる際に、オルガノシリケートが溶剤と共に蒸発しやすく、加熱装置の壁面等に付着し、シリカを生成する。そして、当該シリカが加熱中の膜と接触したり、加熱装置から剥がれ落ちて膜表面に付着したりすることで、得られる塗装金属板に外観不良が発生しやすかった。

0009

一方、上述の特許文献2〜4の技術によっても、雨筋汚れを十分に防止することが難しかった。例えば、特許文献2および3の技術では、塗料を金属板表面に塗布した後、コロナ放電処理を行っている。しかしながら、コロナ放電処理を行っただけでは、塗膜表面を均一に親水化することが難しかった。各種塗膜をコロナ放電処理すると、塗膜表面に親水性の領域および疎水性の領域が形成される。そして、疎水性の領域に疎水性カーボンが強固に付着する。一方で、親水性の領域では、雨水によって疎水性カーボンが浮き上がる。そして、浮き上がった疎水性カーボンは、疎水性の領域に付着した疎水性カーボンに引き寄せられ、疎水性の領域を基点に疎水性カーボンが徐々に堆積する。つまり、コロナ放電処理によっては、耐雨筋汚れ性の高い塗装金属板を得ることが難しかった。

0010

さらに、特許文献4では、エチルシリケートを含む塗料を塗布した後、当該塗膜にフレーム処理、プラズマ処理、またはコロナ放電処理を施している。上述のように、エチルシリケートを含む塗料では、塗料からなる膜の加熱乾燥時にエチルシリケートが溶剤と共に蒸発しやすく、得られる塗装金属板に外観不良が発生しやすい、との課題があった。さらに、オルガノシリケートの硬化物を含む塗膜では、各種処理を行ったとしても、耐傷付き性や曲げ加工性を十分に高めることが難しいとの課題もあった。

0011

本発明は、このような状況を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、耐雨筋汚れ性、および耐傷付き性が高く、さらに良好な外観を有する塗装金属板、およびその製造方法の提供を目的とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明の第1は、以下の塗装金属板の製造方法に関する。
[1]金属板の表面に、シリコーンレジンを含む塗料を塗布および硬化させて塗膜を形成する工程と、前記塗膜にフレーム処理を行う工程と、を有し、前記シリコーンレジンは、Si原子総モル数に対して、5〜50モル%のシラノール基を含む、塗装金属板の製造方法。

0013

[2]前記シリコーンレジンは、Si原子の総モル数に対して、トリアルコキシシラン由来のSi原子を50〜100モル%含む、[1]に記載の塗装金属板の製造方法。
[3]前記シリコーンレジンは、Si原子に直接結合するアルキル基モル数に対する、Si原子に直接結合するアリール基のモル数の割合が20〜80%である、[1]または[2]に記載の塗装金属板の製造方法。
[4]前記塗料がポリエステル樹脂またはアクリル樹脂をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の塗装金属板の製造方法。

0014

本発明の第2は、以下の塗装金属板に関する。
[5]金属板と、前記金属板上に形成された塗膜と、を有し、前記塗膜が、シリコーンレジンの硬化物を含み、前記塗膜の表面を、X線源としてAlKα線を用いてX線電子分光分析法分析したときの、Si原子、N原子、C原子、O原子、およびTi原子の合計量に対するSi原子の割合をSiaとし、C原子の量に対するO原子の量の割合をxとすると、Siaおよびxが、以下の式をそれぞれ満たし、
Sia≧8atm%
x≧0.8
前記X線電子分光分析法による分析で得られるX線光電子分光スペクトルのC1sピークトップを285eVに補正して、Si2pスペクトルを103.5eVに相当するピークおよび102.7eVに相当するピークに分離したとき、Si2pスペクトル全体のピーク面積Si2pに対する103.5eVのピーク面積Si無機の割合yとすると、yが下記式を満たす、
y≧0.6
塗装金属板。

0015

[6]前記塗膜表面のヨウ化メチレン転落角が15°以上50°以下である、[5]に記載の塗装金属板。
[7]前記シリコーンレジンの硬化物が、メチルトリアルコキシシランまたはフェニルトリアルコキシシラン由来の構造を含む、[5]または[6]に記載の塗装金属板。
[8]前記塗膜が、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂を含む、[5]〜[7]のいずれかに記載の塗装金属板。
[9]前記金属板が、亜鉛系めっき鋼板である、[5]〜[8]のいずれかに記載の塗装金属板。

発明の効果

0016

本発明の塗装金属板は、耐雨筋汚れ性が高く、耐傷付き性や曲げ加工性も良好である。またさらに、本発明の製造方法によれば、耐雨筋汚れ性、および耐傷付き性が高く、さらに良好な外観を有する塗装金属板を製造可能である。

図面の簡単な説明

0017

図1Aはフレーム処理用バーナーバーナーヘッドの側面図であり、図1Bは、当該バーナーヘッドの正面図であり、図1Cは、当該バーナーヘッドの底面図である。
図2Aはフレーム処理用バーナーのバーナーヘッドの側面図であり、図2Bは、当該バーナーヘッドの底面図である。
図3は、本発明の塗装金属板の概略断面図である。
図4は、塗装金属板の塗膜の部分拡大断面図である。
実施例19で作製した塗膜をXPS法で分析したときのO1sピークのグラフである。
実施例24で作製した塗膜をXPS法で分析したときのO1sピークのグラフである。
実施例19で作製した塗膜の組成比デプスプロファイルカーブを示すグラフである。
実施例24で作製した塗膜の組成比のデプスプロファイルカーブを示すグラフである。
比較例14で作製した塗膜の組成比のデプスプロファイルカーブを示すグラフである。
比較例17で作製した塗膜の組成比のデプスプロファイルカーブを示すグラフである。

0018

1.塗装金属板の製造方法について
本発明の塗装金属板の製造方法は、金属板の表面に、シリコーンレジンを含む塗料を塗布し、これを硬化させて塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」とも称する)と、前記塗膜にフレーム処理を行う工程(以下、「フレーム処理工程」とも称する)と、を含む。

0019

前述のように、従来、金属板の表面に、オルガノシリケート等を含む塗料を塗布することによって、塗装金属板に生じる雨筋汚れを防止することが試みられている。オルガノシリケートは、金属板表面に塗布されると表面側に移動する。そして、これらが加水分解され、シラノール基やシロキサン結合が生じることで、耐雨筋汚れ性が発現すると考えられる。しかしながら、オルガノシリケートは、その種類によって表面に均一に濃化し難かったり、表面に濃化してもシラノール基やシロキサン結合が生じるまでに時間がかかったりすることがあった。そのため、オルガノシリケートを塗布しただけでは、塗装金属板の耐雨筋汚れ性を十分に高めることが難しかった。また、オルガノシリケートの塗膜表面における濃度が均一に高まらない場合には、塗膜表面の硬度が十分に高まり難かった。さらに、オルガノシリケートは、塗料からなる膜を加熱乾燥させる際に溶剤と共に蒸発しやすく、加熱装置の壁面にシリカを生成する。そして、当該シリカが硬化中の膜と接触したり、剥がれ落ちたシリカが膜に付着したりすることで、得られる塗装金属板の外観性が不良になりやすいとの課題もあった。

0020

一方、オルガノシリケート等を含む塗料の塗膜を、コロナ処理すること等も検討されているが、コロナ処理では、塗膜表面を均一に親水化させることは難しかった。

0021

これに対し、本発明の塗装金属板の製造方法では、特定のシリコーンレジン(Si原子の総モル数に対して、5〜50モル%のシラノール基を含む)を含む塗料を塗布し、塗膜を形成する工程と、当該塗膜にフレーム処理を行う工程と、を行う。ここで、本明細書における「シリコーンレジン」とは、アルコキシシラン部分加水分解縮合した化合物であって、三次元状架橋型構造を主体とするが、ゲル化までには至らず、有機溶剤に可溶なポリマーである。シリコーンレジンが含む三次元状の架橋型構造は特に制限されず、例えば、カゴ状梯子状、またはランダム状のいずれであってもよい。なお、本明細書において、テトラアルコキシシラン、およびテトラアルコキシシランのみを加水分解縮合させた縮合物(オルガノシリケート)は、シリコーンレジンに含まないものとする。

0022

シリコーンレジンは、三次元状の架橋型構造を含むため、塗料を金属板表面に塗布すると、膜の表面側に移行しやすく、当該膜の表面に沿って均一に並びやすい。そして、このような塗膜にフレーム処理を行うと、シリコーンレジンが含む有機基(例えば、メチル基フェニル基等)がムラなく除去されて、塗膜表面にシラノール基やシロキサン結合が導入される。その結果、塗装金属板の表面の親水性が均一に高くなり、耐雨筋汚れ性が非常に良好となる。また、シリコーンレジンが塗膜表面に均一に並ぶことで、塗膜の耐傷付き性も良好になる。

0023

また、上記塗料に含まれるシリコーンレジンは、シラノール基をシリコーンレジン中のSi原子の総モル数に対して、5〜50モル%含む。シラノール基量がSi原子の総モル数に対して5〜50モル%であるシリコーンレジンは、反応性が適度であり、塗料に含まれる水分によって過度に縮合し難い。したがって、シリコーンレジンが塗料中で反応し難く、塗料の保存安定性が非常に良好となる。また、シラノール基が、塗料の他の成分と適度に水素結合するため、膜(塗料)を硬化させる際に、シリコーンレジンが蒸発し難い。したがって、塗料を加熱乾燥させる際に加熱装置を汚染し難く、さらに加熱装置に付着したシリカによって、塗装金属板の外観不良が発生することも少ない。

0024

なお、本発明の塗装金属板の製造方法には、上記塗膜形成工程およびフレーム処理工程以外の工程が含まれていてもよい。以下、本発明の塗装金属板の製造方法の各工程について説明する。

0025

(1)塗膜形成工程
本工程では、金属板に、特定のシリコーンレジンを含む塗料を塗布し、これを硬化させて塗膜を得る。金属板の表面に塗料を塗布する方法は特に制限されず、公知の方法から適宜選択することが可能である。塗料の塗布方法の例には、ロールコート法や、カーテンフロー法、スピンコート法エアースプレー法エアーレススプレー法および浸漬引き上げ法が含まれる。これらの中でも、効率よく所望の厚みを有する塗膜を得やすいとの観点からロールコート法が好ましい。

0026

また、塗料の硬化方法は、塗料中の樹脂の種類等に応じて適宜選択され、例えば加熱による焼き付け等とすることができる。焼付け処理時の温度は、塗料中の樹脂等の分解を防止し、かつ均質な塗膜を得るとの観点から、120〜300℃であることが好ましく、150〜280℃であることがより好ましく、180〜260℃であることがさらに好ましい。焼付け処理時間は特に制限されず、上記と同様の観点から、3〜90秒であることが好ましく、10〜70秒であることがより好ましく、20〜60秒であることがさらに好ましい。

0027

また、塗料の焼き付け時には、短時間で塗料を硬化させるため、板面風速が0.9m/s以上となるように風を吹き付けてもよい。上述の塗料中では、シリコーンレジンと他の成分とが水素結合する。そのため、風を吹き付けながら塗料を硬化させても、シリコーンレジンが蒸発し難く、加熱装置を汚染し難い。

0028

ここで、金属板上に形成する塗膜の厚みは、塗装金属板の用途等に応じて適宜選択されるが、通常3〜30μmの範囲内である。当該厚みは、焼付け塗膜比重、およびサンドブラスト等による塗膜除去前後の塗装金属板の重量差から重量法によって求められる値である。塗膜が薄すぎる場合、塗膜の耐久性および隠蔽性が不十分となることがある。一方、塗膜が厚すぎる場合、製造コストが増大するとともに、焼付け時ワキが発生しやすくなることがある。

0029

ここで、塗料を塗布する金属板としては、一般的に建築板として使用されている金属板を使用することができる。このような金属板の例には、溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板等のめっき鋼板普通鋼板やステンレス鋼板等の鋼板;アルミニウム板銅板等が含まれる。金属板には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その表面に化成処理皮膜下塗り塗膜等が形成されていてもよい。さらに、当該金属板は、本発明の効果を損なわない範囲で、エンボス加工絞り成形加工等の凹凸加工がなされていてもよい。

0030

金属板の厚みは特に制限されず、塗装金属板の用途に応じて適宜選択される。例えば、塗装金属板を金属サイディング材に使用する場合には、金属板の厚みは0.15〜0.5mmとすることができる。

0031

ここで、塗膜を形成するための塗料には、特定のシリコーンレジンが少なくとも含まれていればよいが、シリコーンレジンの他に、樹脂や硬化剤、樹脂や硬化剤、無機粒子有機粒子着色顔料溶媒等が含まれていてもよい。

0032

シリコーンレジンは、上述のように、アルコキシシランを部分加水分解縮合させた化合物であり、その分子鎖には通常、下記一般式で表される、トリアルコキシシラン由来のT−1単位〜T−3単位(これらを総称して「T単位」とも称する)のいずれか1つ、または2つ以上が含まれる。

0033

上記一般式において、R1は置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。また、X1は水素原子、または炭化水素基を表す。シリコーンレジンには、上記R1やX1の種類が異なる複数種類のT単位が含まれていてもよい。

0034

R1は炭素数1〜12の炭化水素基であることが好ましく、その具体例には、メチル基、エチル基プロピル基ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基キシリル基ナフチル基等のアリール基;シクロヘキシル基シクロブチル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基;等が含まれる。これらの中でも特に好ましくは、メチル基およびフェニル基である。

0035

一方、X1は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、当該炭化水素基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;シクロヘキシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基;等が含まれる。これらの中でも特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。

0036

また、シリコーンレジンの分子鎖には、下記一般式で表される、ジアルコキシシラン由来のD−1単位およびD−2単位(これらを総称して「D単位」とも称する)のいずれか一方または両方が含まれていてもよい。

0037

上記一般式において、R2およびR3はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。また、X2は、水素原子、または炭化水素基を表す。なお、シリコーンレジンには、上記R2やR3、X2の種類が異なる複数種類のD単位が含まれていてもよい。

0038

R2およびR3はそれぞれ、炭素数1〜12の炭化水素基であることが好ましく、その具体例には、上述のT単位のR1と同様の基が含まれる。一方、X2は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、その具体例には、上述のT単位のX1と同様の基が含まれる。

0039

さらに、シリコーンレジンの分子鎖には、下記一般式で表されるテトラアルコキシシラン由来のQ−1単位〜Q−4単位(これらを総称して「Q単位」とも称する)のいずれか1つ、または2つ以上が含まれていてもよい。

0040

上記一般式において、X3は水素原子、または炭化水素基を表す。なお、シリコーンレジンには、上記X3の種類が異なる複数種類のQ単位が含まれていてもよい。

0041

X3は水素原子または炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、その具体例には、上述のT単位のX1と同様の基が含まれる。

0042

シリコーンレジンは、上記T単位、D単位、および/またはQ単位が三次元的に結合した構造を有する。前述のように、シリコーンレジン中のシラノール基の量(モル数)は、Si原子の総モル数に対して、5〜50モル%であり、15〜40モル%であることがより好ましい。シラノール基の量がSi原子の総モル数に対して50モル%を超えると、シリコーンレジンの反応性が高くなり、塗料の保存安定性が低くなることがある。一方、シラノール基の量がSi原子の総モル数に対して5モル%未満であると、シリコーンレジンと塗料中の他の成分(例えば、エポキシ樹脂等)とが水素結合し難くなり、塗料の硬化時に、シリコーンレジンが蒸発しやすくなる。さらに、シラノール基の量が5モル%未満であると、塗料を硬化させたときに、シリコーンレジンが十分に架橋し難く、塗膜の耐傷付き性が十分に高まらないことがある。

0043

これに対し、シリコーンレジン中のシラノール基量が上記範囲であると、前述のように、塗料の保存安定性が高まるだけでなく、塗料からなる膜の硬化時に、シリコーンレジンが蒸発し難くなる。さらには、塗料からなる塗膜の耐傷付き性が良好になる。

0044

シリコーンレジンが含むSiのモル数、およびシリコーンレジンが含むシラノール基の量は、29Si−NMRによる分析、および1H−NMRによる分析により特定することができる。また、シリコーンレジンにおけるシラノール基の量は、T単位、D単位、およびQ単位の仕込み比や、縮合反応の程度によって調整することができる。例えば、トリアルコキシシランを用いてシリコーンレジンを調製する場合、縮合反応時間を長くしたりすること等で、T−3単位が多くなり、シラノール基の量が少なくなる。

0045

また、シリコーンレジンは、シリコーンレジンが含むSi原子の総モル数に対して、トリアルコキシシラン由来のSi原子、すなわちT単位を構成するSi原子を50〜100モル%含むことが好ましく、60〜100モル%含むことがより好ましい。T単位量が50モル%未満である(特にD単位量が50モル%より多くなる)と、シリコーンレジンがミセル構造を形成しやすくなり、塗膜表面にシリコーンレジンが海島状に濃化しやすくなる。その結果、塗膜表面の親水性や硬度を均一に高めることが難しくなり、塗膜の耐傷付き性や耐雨筋汚れ性にムラが生じやすくなる。なお、シリコーンレジンが塗膜表面で海島状に濃化していることは、フレーム処理後の塗膜表面をAFM(原子間力顕微鏡)で分析することで確認することが可能である。例えば、フレーム処理によるエッチング深度は塗膜表面の海部分と島部分で異なる。そこで、塗膜表面の凹凸によって、シリコーンレジンの海島分布を確認することが可能である。

0046

これに対し、T単位量が50モル%以上であると、シリコーンレジンがミセル構造を形成し難くなり、塗膜表面にシリコーンレジンが均一に濃化しやすくなる。その結果、得られる塗装金属板の耐雨筋汚れ性が良好になったり、塗膜の耐傷付き性が良好になる。T単位を構成するSi原子の割合は、29Si−NMRによる分析によって特定することができる。

0047

また、シリコーンレジンのSi原子に直接結合するアルキル基のモル数に対する、シリコーンレジンのSi原子に直接結合するアリール基のモル数、すなわちアリール基/アルキル基の割合は20〜80%であることが好ましく、30〜70%であることがより好ましい。アリール基のモル比が多いほど、塗料中の他の成分にシリコーンレジンが溶解しやすくなる。ただし、アリール基の割合が過剰になると、塗膜形成時の反応速度が大幅に低下して、十分な架橋密度が得られ難くなることがある。上記アルキル基とアリール基との比は、1H−NMRによる分析によって特定することができる。

0048

ここで、シリコーンレジンの重量平均分子量は好ましくは700〜50000であり、より好ましくは1000〜10000である。シリコーンレジンの重量平均分子量が700未満になると、塗料からなる膜の硬化時に、シリコーンレジンが蒸発しやすくなり、加熱装置を汚染したり、塗膜表面のシリコーンレジンの濃度が小さくなる。一方、重量平均分子量が50000を超えると、塗料の粘度が高まりやすくなり、保存安定性が低くなる。なお、上記シリコーンレジンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算量である。

0049

塗料には、その固形分100質量部に対して、シリコーンレジンが1〜10質量部含まれることが好ましく、2〜7質量部含まれることがより好ましく、2〜6質量部含まれることがさらに好ましく、3〜6質量部含まれることがさらに好ましい。塗料にシリコーンレジンが当該範囲含まれることで、得られる塗膜表面の親水性を十分に高めることが可能となり、雨筋汚れが生じ難くなる。また、塗膜表面の硬度も高くなる。

0050

上述のシリコーンレジンは、トリアルコキシシラン等を加水分解重合させて調製することができる。具体的には、トリアルコキシシラン等のアルコキシシランやその部分縮合物を水やアルコール等の溶剤に分散させる。そして、当該分散液のpHを好ましくは1〜7、より好ましくは2〜6に調整し、アルコキシシラン等を加水分解させる。その後、加水分解物どうしを所定時間脱水縮合させる。これにより、シリコーンレジンが得られる。脱水縮合時間等によって、得られるシリコーンレジンの分子量等を調整することができる。また、加水分解物の縮合は、上記加水分解と連続して行うことが可能であり、加水分解により生成したアルコールや、水を留去することで、縮合反応を促進させることができる。

0052

ジアルコキシシランの例には、メチルハイドロジェンジメトキシシラン、メチルハイドロジェンジエトキシシランジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランメチルエチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルプロピルジメトキシシラン、メチルプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等が含まれる。

0053

さらに、テトラアルコキシシランの例には、テトラメトキシシランテトラエトキシシランテトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が含まれる。

0054

なお、シリコーンレジン調製の際には、上記トリアルコキシシランやジアルコキシシラン、テトラメトキシシランの部分縮合物を原料として用いてもよい。

0055

一方、塗料に含まれる樹脂は、塗膜のバインダとなる成分であればよい。当該樹脂の例には、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂アミノ−ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アミノ−アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂フェノール樹脂フッ素樹脂等の高分子化合物が含まれる。これらの中でも、汚れ付着性が低いことから、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アミノ−ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アミノ−アクリル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂が好ましく、特に耐候性が高いことから、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂が好ましい。

0056

ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸および多価アルコール重縮合させた公知の樹脂とすることができる。多価カルボン酸の例には、テレフタル酸イソフタル酸フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類及びこれらの無水物;コハク酸アジピン酸アゼライン酸セバシン酸ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類及びこれらの無水物;γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン類トリメリット酸、トリメジン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸類;等が含まれる。ポリエステル樹脂は、上記多価カルボン酸由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。

0057

多価アルコールの例には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコールトリエチレングリコール、1,2−ドデカンジオール、1,2−オクタデカジオールネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールビスフェノールアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールSアルキレンオキシド付加物等のグリコール類トリメチロールプロパングリセリンペンタエリスリトール等の3価以上の多価アルコール類等が含まれる。ポリエステル樹脂は、上記多価アルコール由来の構造を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。

0058

上記樹脂が、ポリエステル樹脂である場合、GPCで測定される数平均分子量(ポリスチレン換算)は、2,000〜8,000であることが好ましい。数平均分子量が2,000より小さくなると塗装金属板の加工性が低下することがあり、塗膜ワレが発生しやすくなることがある。また、数平均分子量が8,000より大きくなると、得られる塗膜の架橋密度が低くなる。そのため、塗膜の耐候性が低下することがある。加工性と耐候性のバランスから数平均分子量は3,000〜6,000であることが特に好ましい。

0059

一方、アクリル樹脂は、(メタアクリル酸エステルモノマー成分として含む樹脂であればよく、(メタ)アクリル酸エステルと共に、他のモノマー成分を一部に含んでいてもよい。本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。アクリル樹脂を構成するモノマー成分の例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−、i−、またはt−ブチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル等の炭素数1〜18のエステル基を有する(メタ)アクリルエステルまたは(メタ)アクリルシクロアルキルエステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の炭素数2〜8のヒドロキシアルキルエステル基を有する(メタ)アクリルヒドロキシエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド系モノマースチレンビニルトルエン、2−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸;グリシジル(メタ)アクリレート等が含まれる。アクリル樹脂は、これらのモノマー成分を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。

0060

上記樹脂がアクリル樹脂である場合、GPCで測定される数平均分子量(ポリスチレン換算)は特に制限されないが、塗膜硬度および耐候性に優れた塗膜を得る観点から、1,000〜200,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがより好ましく、10,000〜50,000であることがさらに好ましい。

0061

塗料に含まれる樹脂の量は、塗料の用途や、樹脂の種類に応じて適宜選択される。得られる塗膜の強度等の観点から、塗料には、その固形分100質量部に対して、上記樹脂が25〜60質量部含まれることが好ましく、30〜50質量部含まれることがより好ましい。

0062

一方、塗料には、硬化剤が含まれていてもよい。硬化剤は、塗膜の性状や物性(例えば塗膜表面硬度や耐久性)等を調整するための成分であり、硬化剤の一例として、上記樹脂を架橋可能な化合物が挙げられる。硬化剤は、樹脂の種類に応じて適宜選択される。例えば、上記樹脂がポリエステル樹脂である場合、硬化剤は、メラミン系硬化剤であることが好ましい。メラミン系硬化剤の例には、メチロールメラミンメチルエーテル等のメチル化メラミン系樹脂硬化剤;メチロールメラミンブチルエーテル等のn−ブチルメラミン系樹脂硬化剤;メチルとn−ブチルとの混合エーテル化メラミン樹脂硬化剤等が含まれる。

0063

塗料に含まれる硬化剤の量は、塗料の用途や、樹脂の種類に応じて適宜選択される。塗料には、上記樹脂100質量部に対して、上記硬化剤が5〜20質量部含まれていることが好ましく、7〜15質量部含まれていることがより好ましい。硬化剤の量が上記範囲であると、塗料から得られる塗膜の硬化性が良好になる。

0064

また、塗料には、無機粒子や有機粒子が含まれていてもよい。塗料にこれらが含まれると、得られる塗膜の表面粗さ等が調整されやすくなる。ここで、無機粒子または有機粒子の平均粒子径は4〜80μmであることが好ましく、10〜60μmであることがより好ましい。無機粒子や有機粒子の平均粒子径は、コールターカウンター法で測定される値である。なお、無機粒子や有機粒子の形状は特に制限されないが、得られる塗膜の表面状態を調整しやすいとの観点から、略球状であることが好ましい。

0065

無機粒子の例には、シリカ、硫酸バリウムタルク炭酸カルシウムマイカガラスビーズガラスフレークが含まれる。また、有機粒子の例には、アクリル樹脂やポリアクリロニトリル樹脂からなる樹脂ビーズが含まれる。これらの樹脂ビーズは、公知の方法を用いて製造したものであってもよく、市販品であってもよい。市販のアクリル樹脂ビーズの例には、東洋紡株式会社製の「タフチック AR650S(平均粒径18μm)」、「タフチック AR650M(平均粒径30μm)」、「タフチック AR650MX(平均粒径40μm)」、「タフチック AR650MZ(平均粒径60μm)」、「タフチックAR650ML(平均粒径80μm)」が含まれる。また、市販のポリアクリロニトリル樹脂ビーズの例には、東洋紡株式会社製の「タフチック A−20(平均粒径24μm)」、「タフチック YK−30(平均粒径33μm)」、「タフチック YK−50(平均粒径50μm)」および「タフチック YK−80(平均粒径80μm)」等が含まれる。

0066

塗料に含まれる無機粒子および/または有機粒子の量は、所望の塗膜の表面状態等に応じて適宜選択される。通常、塗料の固形分100質量部に対する無機粒子および/または有機粒子の合計量は、1〜40質量部とすることができる。

0067

またさらに、塗料は、必要に応じて着色顔料が含まれていてもよい。着色顔料の平均粒子径は、例えば0.2〜2.0μmとすることができる。このような着色顔料の例には、酸化チタン酸化鉄黄色酸化鉄フタロシアニンブルーカーボンブラックコバルトブルー等が含まれる。なお、塗料に着色顔料が含まれる場合、その量は、塗料の固形分100質量部に対して、20〜60質量部であることが好ましく、30〜55質量部であることがより好ましい。

0068

また、塗料には、必要に応じて有機溶剤が含まれていてもよい。当該有機溶剤は、上記シリコーンレジンや樹脂、硬化剤、無機粒子や有機粒子等を十分に溶解、または分散させることが可能なものであれば特に制限されない。有機溶剤の例には、トルエンキシレン、Solvesso(登録商標)100(商品名、エクソンモービル社製)、Solvesso(登録商標)150(商品名、エクソンモービル社製)、Solvesso(登録商標)200(商品名、エクソンモービル社製)等の炭化水素系溶剤メチルエチルケトンメチルイソブチルケトンシクロヘキサノンイソホロン等のケトン系溶剤酢酸エチル酢酸ブチルエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤メタノールイソプロピルアルコールn−ブチルアルコール等のアルコール系溶剤エチレングリコールモノエチルエーテルジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテルアルコール系溶剤;等が含まれる。塗料には、これらが1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。これらの中でも、樹脂との相溶性等の観点から、好ましくはキシレン、Solvesso(登録商標)100、Solvesso(登録商標)150、シクロヘキサノン、n−ブチルアルコールである。

0069

上記塗料の調製方法は特に制限されない。公知の塗料と同様に、上記材料を混合し、攪拌もしくは分散することで、調製することができる。なお、シリコーンレジンは、他の成分と予め混合してもよい。また、シリコーンレジン以外の材料を予め混合しておき、シリコーンレジンを後から混合してもよい。

0070

(2)フレーム処理工程
上記塗膜の形成後、上記塗膜をフレーム処理する。これにより、塗膜表面に濃化したシリコーンレジンの炭化水素基(例えばメチル基やフェニル基等)が分解されて、シラノール基やシロキサン結合が生じ、塗膜表面の親水性が高まる。

0071

フレーム処理は、塗膜を形成した金属板を、ベルトコンベア等の搬送機に載置し、一定方向に移動させながら、フレーム処理用バーナーで塗膜に火炎放射する方法等とすることができる。

0072

ここで、フレーム処理量は、30〜1000kJ/m2であることが好ましく、100〜600kJ/m2であることがより好ましい。なお、本明細書における「フレーム処理量」とは、LPガス等の燃焼ガス供給量を基準として計算される塗装金属板の単位面積当たりの熱量である。当該フレーム処理量は、フレーム処理用バーナーのバーナーヘッドと塗膜表面との距離、塗膜の搬送速度等によって調整できる。フレーム処理量が30kJ/m2未満では、処理にムラが生じることがあり、塗膜表面を一様に親水化することが難しい。一方、フレーム処理量が1000kJ/m2を超えると、塗膜が酸化して黄変することがある。

0073

以下、本発明のフレーム処理工程に使用可能なフレーム処理用バーナーの一例を説明するが、フレーム処理方法は当該方法に限定されない。

0074

フレーム処理用バーナーは、燃焼性ガスを供給するためのガス供給管と、当該ガス供給管から供給された燃焼性ガスを燃焼させるバーナーヘッドと、これらを支えるための支持部材と、を有する。図1に、フレーム処理用バーナーのバーナーヘッドの模式図を示す。図1Aはバーナーヘッドの側面図であり、図1Bは、当該バーナーヘッドの正面図であり、図1Cは、当該バーナーヘッドの底面図である。なお、便宜上、図1Aおよび図1Bでは炎口22bに該当する部分を太線で強調して記載しているが、実際、炎口22bは側面および正面から視認されない。

0075

バーナーヘッド22は、ガス供給管23と接続された略四角柱状筐体22aと、当該筐体の底面に配置された炎口22bとを有し、ガス供給管23から供給された燃焼性ガスを炎口22bで燃焼させる。

0076

バーナーヘッド22の筐体22a内部の構造は、一般的なフレーム処理用バーナーと同様の構造とすることができ、例えばガス供給管23から供給された燃焼性ガスを炎口22bに流動させるための流路等が形成されていてもよい。また、正面視したときの筐体22aの幅は、フレーム処理する塗膜の幅に合わせて適宜選択される。また、側面視したときの筐体22aの幅は、炎口22bの塗膜の搬送方向の幅(図1AにおいてLで表される幅)等に合わせて適宜選択される。

0077

一方、炎口22bは、筐体22aの底面に設けられた貫通孔である。炎口22bの形状は特に制限されないが、矩形状や丸穴形状とすることができる。ただし、フレーム処理を塗膜の幅方向に均一に行うとの観点から、矩形状であることが特に好ましい。また、炎口22bの塗膜の搬送方向に垂直方向の幅(図1BにおいてWで表される幅)は、フレーム処理する塗膜の幅と同等もしくは大きければよく、例えば60〜150cm程度とすることができる。一方、炎口22bの塗膜の搬送方向の幅(図1AにおいてLで表される幅)は、燃焼性ガスの吐出安定性等に応じて適宜設定することができ、例えば1〜8mm程度とすることができる。

0078

ガス供給管23は、一方がバーナーヘッド22と接続され、他方がガス混合部(図示せず)と接続されたガスの流路である。ガス混合部は、燃焼ガスボンベ等の燃焼ガス供給源(図示せず)と、空気ボンベ酸素ボンベコンプレッサーエアーブロアーによるエアー等の助燃ガス供給源(図示せず)と接続されており、燃焼ガスと助燃ガスとを予め混合するための部材である。なお、ガス混合部からガス供給管23に供給される燃焼性ガス(燃焼ガスと助燃ガスとの混合ガス)中の酸素の濃度は一定であることが好ましく、ガス混合部は、必要に応じてガス供給管23に酸素を供給するための酸素供給器具備していることが好ましい。

0079

上記燃焼ガスの例には、水素液化石油ガスLPG)、液化天然ガスLNG)、アセチレンガスプロパンガス、およびブタン等が含まれる。これらの中でも所望の火炎を形成しやすいとの観点から、LPG又はLNGが好ましく、特にLPGが好ましい。一方、上記助燃ガスの例には、空気または酸素が含まれ、取扱性等の面から、空気であることが好ましい。

0080

ガス供給管23を介してバーナーヘッド22に供給される燃焼性ガス中の燃焼ガスと助燃ガスとの混合比は、燃焼ガス及び助燃ガスの種類に応じて適宜設定することができる。例えば、燃焼ガスがLPG、助燃ガスが空気である場合、LPGの体積1に対して、空気の体積を24〜27とすることが好ましく、25〜26とすることがより好ましく、25〜25.5とすることがさらに好ましい。また、燃焼ガスがLNG、助燃ガスが空気である場合、LNGの体積1に対して、空気の体積を9.5〜11とすることが好ましく、9.8〜10.5とすることがより好ましく、10〜10.2とすることがさらに好ましい。

0081

当該フレーム処理用バーナーでは、塗膜を移動させながら、塗膜のフレーム処理を行う。このとき、バーナーヘッド22の炎口22bから、塗膜に向けて燃焼性ガスを吐出しつつ、当該燃焼性ガスを燃焼させることで、上記フレーム処理を行うことができる。バーナーヘッド22と塗膜との距離は、前述のように、フレーム処理量に応じて適宜選択されるが、通常10〜120mm程度とすることができ、25〜100mmとすることが好ましく、30〜90mmとすることがより好ましい。バーナーヘッドと塗膜との距離が近すぎる場合には、金属板の反り等によって、塗膜とバーナーヘッドとが接触してしまうことがある。一方、バーナーヘッドと塗膜との距離が遠すぎる場合には、フレーム処理に多大なエネルギーが必要となる。なお、フレーム処理時には、フレーム処理用バーナーから塗膜表面に対して垂直に火炎を放射してもよいが、塗膜表面に対して一定の角度を成すように、フレーム処理用バーナーから塗膜表面に対して火炎を放射してもよい。

0082

また、塗膜の移動速度は、前述のフレーム処理量に応じて適宜選択されるが、通常5〜120m/分であることが好ましく、10〜80m/分であることがより好ましく、20〜60m/分であることがさらに好ましい。塗膜を5m/分以上の速度で移動させることにより、効率的にフレーム処理を行うことができる。一方で、塗膜の移動速度が速すぎる場合には、塗膜の移動によって気流が生じやすく、フレーム処理を十分に行うことができないことがある。

0083

なお、上記では、筐体22aに一つのみ炎口22bを有するバーナーヘッド22を示したが、バーナーヘッド22の構造は、上記構造に限定されない。例えば、図2に示すように、バーナーヘッド22は、炎口22bと平行に補助炎口22cを有していてもよい。図2Aはバーナーヘッドの側面図であり、図2Bは、当該バーナーヘッドの底面図である。なお、便宜上、図2Aでは炎口22bや補助炎口22cに該当する部分を太線で強調して記載しているが、実際、炎口22bや補助炎口22cは側面から視認されない。ここで、炎口22bと補助炎口22cとの間隔は、2mm以上であることが好ましく、例えば2mm〜7mmとすることができる。このとき、筐体22aは、補助炎口22cから非常に微量の燃焼性ガスが通過するような構造を有する。補助炎口22cから吐出される燃焼性ガスの量は、炎口22bから吐出される燃焼性ガスの5%以下であることが好ましく3%以下であることが好ましい。補助炎口22cで生じる火炎は、塗膜の表面処理に殆ど影響を及ぼさないが、補助炎口22cを有することで、炎口22bから吐出される燃焼性ガスの直進性増し揺らぎが少ない火炎が形成される。

0084

また、上述のフレーム処理前に、塗膜表面を40℃以上に加熱する予熱処理を行ってもよい。熱伝導率が高い金属板(例えば、熱伝導率が10W/mK以上の金属板)表面に形成された塗膜に、火炎を照射すると、燃焼性ガスの燃焼によって生じた水蒸気が冷やされて水となり、一時的に塗膜の表面に溜まる。そして、当該水がフレーム処理時のエネルギーを吸収して水蒸気となることで、フレーム処理が阻害されることがある。これに対し、塗膜表面(金属板)を予め加熱しておくことで、火炎照射時の水の発生を抑えることができる。

0085

塗膜を予熱する手段は特に限定されず、一般に乾燥炉と呼ばれる加熱装置を使用することができる。例えば、バッチ式の乾燥炉(「金庫炉」とも称する。)を使用することができ、その具体例には、株式会社いす製作所社製低温恒温器型式ミニカタリーナMRLV−11)、株式会社東上熱学社製自動排出乾燥器(型式ATO−101)、および株式会社東上熱学社製簡易防爆仕様乾燥器(型式 TNAT−1000)等が含まれる。

0086

以上のように、本発明の塗装金属板の製造方法によれば、塗膜表面にシリコーンレジンをムラなく濃化させることができ、均一に親水性を高めることができる。また、本発明の塗装金属板の製造方法によれば、加熱装置を汚染することが少なく、得られる塗装金属板の外観性も良好になりやすい。したがって、本発明によれば、各種建築物外装建材等に適用可能な、雨筋汚れ等が生じ難い塗装金属板を効率よく製造することができる。

0087

2.塗装金属板について
本発明の塗装金属板100は、図3に示すように、金属板1と、当該金属板1上に形成された、シリコーンレジンの硬化物を含み、以下の塗膜2と、を有する。当該塗装金属板100は、例えば、上述の塗装金属板の製造方法により製造することができる。

0088

上述のように、シリコーンレジンは、三次元状の架橋型構造を含む。そのため、前述の塗装金属板の製造方法で説明したように、シリコーンレジンを含む塗料を金属板1の表面に塗布すると、シリコーンレジンが当該膜の表面に沿って均一に並びやすい。そして、シリコーンレジンの硬化膜が親水化処理(フレーム処理)されると、当該硬化膜表面に含まれる有機基がムラなく除去されて、シラノール基やシロキサン結合が導入される。その結果、塗装金属板100の表面(塗膜2表面)の親水性が均一に高くなり、耐雨筋汚れ性が非常に良好となる。また、当該塗膜2においてシリコーンレジンの硬化物が表面に均一に並んでいるため、塗装金属板100の耐傷付き性が高い。さらに、当該塗膜2の内側に含まれるシリコーンレジンの硬化物の量が少なく、塗膜2の内側(金属板1側)の柔軟性が高い。したがって、塗装金属板100の曲げ加工性が良好となる。

0089

ここで、上記のように作製される塗膜2は、その表面をX線電子分光分析法(以下、XPS法とも称する)で分析したとき、以下のような値を示す。まず、塗膜表面について、X線源としてAlKα線を使用してXPS法で測定したとき、Si原子、N原子、C原子、O原子、およびTi原子の合計量に対するSi原子の割合Siaが8atm%以上となる。Siaは、10atm%以上であることがより好ましく、14atm%以上であることがさらに好ましい。Siaは、塗膜表面へのシリコーンレジンの濃化量に比例し、Siaが8atm%以上であると、塗膜の耐傷つき性が高くなる。また、Siaが大きくなると、相対的に塗膜内部におけるシリコーンレジン由来の構造の量が少なくなり、Siaが8atm%以上であると、塗装金属板の曲げ加工性も高くなる。

0090

また、上記XPS法で測定したときの、C原子の量に対するO原子の量の割合(O原子の量/C原子の量)をxとすると、xが0.8以上となる。xは、1.0以上であることがより好ましく、1.4以上であることがさらに好ましい。xは、塗膜表面に存在する有機基由来のC原子の量に対する、シロキサン結合やシラノール基由来のO原子の量の割合を表す。つまり、上述のフレーム処理によって、シリコーンレジン由来の有機基が除去されて、シロキサン結合やシラノール基が導入されると、xが大きくなる。そして、xが0.8以上であると、塗膜表面の親水性(塗装金属板の耐雨筋汚れ性)が特に良好になる。

0091

また、上記塗膜表面をXPS法で分析した際に得られるX線電子分光スペクトルのC1sピークトップを285eVに補正して、Si2pスペクトルを103.5eVに相当するピークおよび102.7eVに相当するピークに分離したとき、Si2pスペクトル全体のピーク面積Si2pに対する103.5eVのピーク面積Si無機の割合(Si無機/Si2p)をyとすると、yが0.6以上となる。yは、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることがより好ましい。

0092

Si2pスペクトルは、X線電子分光スペクトルのC1sピークトップを285eVに補正したとき、101〜106eV近傍に観測されるスペクトルであり、Si原子全体、すなわち炭素が結合した有機系のSi原子のピーク(102.7eV)と、酸素が結合した(シロキサン結合もしくはシラノール基を構成している)無機系のSi原子のピーク(103.5eV)との両方を含むスペクトルである。つまり、yは、塗膜表面のSiの全体量に対する、無機系のSi原子(シロキサン結合やシラノール基を構成するSi原子)の割合を表し、Si無機/Si2pが0.6以上になると、塗膜表面の親水性(塗装金属板の耐雨筋汚れ性)が特に良好になる。

0093

ここで、XPS法による塗膜表面の組成(Si原子、N原子、C原子、O原子、およびTi原子の量)の分析は、X線源としてAlKαを用いた、一般的なXPS法による分析と同様とすることができるが、例えば以下の測定装置測定条件で行うことができる。
(測定装置および測定条件)
測定装置:KRATOS社製 AXIS−NOVA走査型X線光電子分光装置
X線源:AlKα 1486.6eV
分析領域700×300μm

0094

また、上述のSi2pスペクトルを103.5eVに相当するピークおよび102.7eVに相当するピークに分離する方法としては、以下のような方法が挙げられる。まず、X線電子分光スペクトルのC1sピークトップを285eVに補正する。その後、101〜106eV近傍に観測されるSi2pスペクトルをLinear法でバックグラウンド除去する。そして、バックグラウンド除去されたスペクトルを、ガウス関数およびローレン関数複合関数で処理し、有機系Si原子のピーク(102.7eV)と、無機系Si原子のピーク(103.5eV)とに分離する。

0095

ここで、上記塗膜は、上記XPS法で測定した場合、以下のような値も示すことが好ましい。図4に塗装金属板の塗膜2の部分拡大断面図を示す。以下、塗膜2の表面から金属板1に向かって深さが0nm以上10nm未満の領域を塗膜2の最表層2xとし、塗膜2の表面から金属板1に向かって深さが10nm以上100nm未満の領域を塗膜2の表層2yとし、塗膜2の表面から金属板1に向かって深さが100nm以上金属板側表面までの領域を塗膜2の本体層2zとする。そして、上述のXPS法で測定したときの、最表層におけるSi原子、N原子、C原子、O原子、およびTi原子の合計量に対するSi原子の割合をSixとすると、Sixは8atm%以上であり、10atm%以上35atm%以下であることが好ましく、15atm%以上30atm%以下であることがより好ましい。

0096

最表層2xのSi原子の含有割合を示すSixが8atm%以上となる、つまり、シリコーンレジンが最表層2x側に濃化していると、塗膜の表面硬度が高くなる。なお、塗膜2が、シリコーンレジンの硬化物ではなく、メチルシリケートの硬化物を含む場合、メチルシリケートは表面に濃化し難いことから、Sixの値は通常、8atm%より小さい値となる。

0097

また当該塗膜2は、X線源としてAlKα線を使用してXPS法で測定したときの、最表層2xにおけるC原子の量に対するO原子の量の割合(Ox/Cx)をαx、表層2yにおけるC原子の量に対するO原子の量の割合(Oy/Cy)をαy、本体層2zにおけるC原子の量に対するO原子の量の割合(Oz/Cz)をαzとすると、αx、αy、およびαzがそれぞれ以下の式を満たす。
αx≧0.8
αx>αz>αy

0098

αx≧0.8かつαx>αy>αzであることは、塗膜2表面がフレーム処理(親水化処理)されていること、つまり塗膜2の表面の親水性が高いことを表す。そして、これらが満たされると、塗装金属板100の耐雨筋汚れ性が非常に高くなる。なお、上記αxは、1.2〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.5であることがより好ましい。またαyは、0.07〜0.25であることがより好ましく、0.10〜0.20であることがさらに好ましい。また、αzは、0.3〜0.6であることがより好ましく、0.35〜0.5であることがさらに好ましい。

0099

塗膜2表面がフレーム処理(親水化処理)されている場合に、αx≧0.8かつαx>αz>αyとなる理由を、以下説明する。前述のように、シリコーンレジンを含む塗料を金属板1表面に塗布すると、シリコーンレジンが膜の表面に移行し、膜の表面に沿って均一に並ぶ。したがって、シリコーンレジンの硬化物を含む塗膜では、通常、最表層2xにシリコーンレジン由来の有機基が多く含まれ、最表層2x、表層2y、および本体層2zの順にC濃度が高い。ただし、この状態では通常、最表層2xにおける、C原子の量に対するO原子の量の比(以下、「O/C比」とも称する)αxは0.8より小さくなる。これに対し、シリコーンレジンの硬化物を含む膜がフレーム処理(親水化処理)されると、最表層2xのシリコーンレジンのSi原子に結合した有機基が分解されて、OH基等が導入されたり、シロキサン結合が生成したりする。したがって、最表層2xではC濃度が低下し、O濃度が上昇する。つまり、最表層2xにおけるO/C比が非常に大きくなり、0.8以上となる。一方、表層2yおよび本体層2zは、フレーム処理(親水化処理)の影響を受け難く、O原子およびC原子の濃度が変化しない。そしてこれらを比較すると、C原子の濃度の高い表層2yのほうが、C原子の濃度の低い本体層2zと比較してO/C比が小さくなり、O/C比の極小値が表層2yで観測される。つまり、αx>αz>αyとなる。

0100

なお、最表層2aにおけるO原子の量は、塗膜2中に含まれる他の成分(例えば、TiO2の無機粒子)由来のO原子の量に影響され難い。その理由を以下、説明する。図5および図6はそれぞれ、後述の実施例19および24で作製した、TiO2を含む塗膜のXPS法で特定されるO1sピークのグラフである。図5および図6にはそれぞれ、塗膜2の表面から金属板1に向かって深さ0nm、10nm、50nm、100nm、200nm、300nmおよび500nmの位置におけるO1sピークを示す。ここで、TiO2由来のO1sピークは通常530eV近傍に見られ、当該領域以外の位置に見られるピークは、シリコーンレジン等、他の成分由来のピークである。図5および図6に示されるように、いずれの塗膜2においても、最表層2x(塗膜2の表面から0nm以上10nm未満の領域)では、530eVより高エネルギー側にピークが見られる。これに対し、塗膜2の表層2yおよび本体層2z(塗膜2の表面から金属板1に向かって10nm以上の位置)では、530eV近傍にピークが見られる。つまり塗膜2において、TiO2等の無機粒子は主に表層2yおよび本体層2zに含まれており、最表層2xのO原子濃度には影響を及ぼし難い。

0101

ここで、XPS法で最表層2x、表層2y、および本体層2zにおけるSi原子、N原子、C原子、O原子、およびTi原子の量をそれぞれ測定する場合、塗膜2をエッチングしながら以下の条件で分析することができる。
(測定条件)
測定装置:アルバックファイ製VersaprobeII走査型X線光電子分光装置
X線源:AlKα (モノクロ:50W、15kV) 1486.6eV
分析領域0.2mmφ
帯電中和利用(電子銃イオン中和
エッチング条件
エッチング条件:Arイオン加速電圧4kV
エッチングレート:8.29nm/min(SiO2換算)10nm毎に測定

0102

なお、本発明の塗装金属板100では、塗膜2表面のヨウ化メチレン転落角が15°以上50°以下であることが好ましく、35°以下であることがより好ましい。前述のように、本発明の塗装金属板100の塗膜2はフレーム処理(親水化処理)が行われているが、親水化処理が不十分であると、十分な耐雨筋汚れ性が得られ難くなる。ここで、ヨウ化メチレン転落角は、塗膜2表面の親水性が高い場合や、塗膜2表面の粗度が粗い場合に高くなる。ただし、塗膜2表面の親水性が不均一である場合には過度に高くなる。例えば、コロナ処理で表面処理されている場合には、ヨウ化メチレン転落角が50°超となる。これに対し、フレーム処理が行われている場合には、表面が均一に親水化されており、ヨウ化メチレン転落角が50°以下となる。

0103

なお、コロナ放電処理等によって、塗膜表面の親水性が不均一となった場合に、ヨウ化メチレン転落角が50°より大きくなる理由は、以下のように考えられる。表面に親水基および疎水基をそれぞれ同数ずつ有する2種類の塗膜が有り、一方は親水基と疎水基との分布に偏りが無く、他方は親水基と疎水基との分布に偏りが有ると仮定する。このとき、両者の静的接触角は、親水基および疎水基の分布に左右され難く、略同一となる。これに対し、両者の動的接触角(ヨウ化メチレン転落角)は、親水基および疎水基の分布によって左右され、異なる値となる。ヨウ化メチレン転落角を測定する際、親水基および疎水基の分布が不均一であると、親水基の密度が高い部分にヨウ化メチレン滴が吸着される。つまり、親水基と疎水基との分布に偏りが有ると、分布ムラがない場合と比較してヨウ化メチレン滴が動き難くなり、転落角が大きくなる。したがって、コロナ放電処理のように、塗膜表面に親水基が多数導入されるものの、その分布にはムラがある場合には、ヨウ化メチレン転落角が50°を超える高い値となる。

0104

なお、ヨウ化メチレン転落角は、以下のように測定される値である。まず、塗膜2上に2μlのヨウ化メチレンを滴下する。その後、接触角測定装置を用いて、2度/秒の速度で塗膜2の傾斜角度重力に垂直な平面と塗膜とが成す角度)を大きくする。このとき、接触角測定装置に付属しているカメラによって、ヨウ化メチレンの液滴を観察する。そして、ヨウ化メチレンの液滴が転落する瞬間の傾斜角度を特定し、5回の平均値を当該塗膜2のヨウ化メチレン転落角とする。なお、ヨウ化メチレンの液滴が転落する瞬間とは、ヨウ化メチレン(液滴)の重力下方向の端点および重力上方向の端点の両方が動き出す瞬間とする。

0105

ここで、本発明の塗装金属板100が含む金属板1は、上述の塗装金属板の製造方法で説明した金属板と同様とすることができる。金属板1には、本発明の効果を阻害しない範囲で、その表面に化成処理皮膜や下塗り塗膜等が形成されていてもよい。さらに、当該金属板1は、本発明の効果を損なわない範囲で、エンボス加工や絞り成形加工等の凹凸加工がなされていてもよい。特に金属板1が、コストおよび長期耐久性のバランスの観点から、亜鉛系めっき鋼板であることが好ましい。

0106

一方、塗膜2は、上述のようにシリコーンレジンの硬化物を少なくとも含み、かつ上述の特定を満たすものであれば特に制限されない。シリコーンレジンの硬化物は、上述の塗装金属板の製造方法に記載の塗料が含むシリコーンレジンの硬化物とすることができる。また特に、メチルトリアルコキシシランまたはフェニルトリアルコキシシラン由来の構造を有するシリコーンレジンの硬化物であることが好ましい。メチルトリアルコキシシラン由来のメチル基や、フェニルトリアルコキシシラン由来のフェニル基は、表面の親水化処理(フレーム処理)の際に除去されやすい。したがって、シリコーンレジンの硬化物が、当該構造を有すると、塗膜2表面の親水性が高くなりやすく、塗装金属板100の耐雨筋汚れ性が高まりやすくなる。塗膜2が含むシリコーンレジンの硬化物が、メチルトリアルコキシシランまたはフェニルトリアルコキキシシラン由来の構造を有するか否かは、表層2bの元素分析構造分析等を行うことで、特定することができる。

0107

また、塗膜2が含むシリコーンレジンの硬化物の量は、塗装金属板100の種類等に応じて適宜選択されるが、塗膜2の全質量100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、2〜7質量部であることがより好ましく、2〜6質量部であることがさらに好ましく、3〜6質量部であることが特に好ましい。塗膜2が含むシリコーンレジンの硬化物量が当該範囲であると、塗膜2の表面におけるSi原子の割合(上述のSia)が十分に高まり、雨筋汚れが生じ難く、耐傷付き性や曲げ加工性が良好な塗装金属板とすることができる。また特に、シリコーンレジンの硬化物の量を1質量部以上とすることで、上述の表面におけるSi原子の含有割合Siaを8atm%以上となりやすい。一方、シリコーンレジンの硬化物の含有量を10質量部以下とすることで、塗膜が過度に硬くなり難く、曲げ加工性が良好になりやすい。

0108

また、塗膜2は、シリコーンレジンの硬化物の他に樹脂を含んでいてもよく、無機粒子や有機粒子、着色顔料等をさらに含んでいてもよい。これらの樹脂や、無機粒子、有機粒子、着色顔料等は、上述の塗装金属板の製造方法に記載の塗料が含む成分と同様とすることができる。なお、塗膜2が含む樹脂の量は、塗装金属板100の用途や、樹脂の種類に応じて適宜選択されるが、塗膜2の強度等の観点から、塗膜2の全質量に対する樹脂の量が25〜60質量部であることが好ましく、30〜50質量部であることがより好ましい。

0109

一方、塗膜2が含む無機粒子および/または有機粒子の量は、塗膜2の表面状態等に応じて適宜選択される。通常、塗膜2の質量100質量部に対する無機粒子および有機粒子の合計量は、1〜40質量部とすることができる。またさらに、着色顔料の量は、塗膜2の全質量に対して、20〜60質量部であることが好ましく、30〜55質量部であることがより好ましい。

0110

また、塗膜2の厚みは、塗装金属板100の用途等に応じて適宜選択されるが、通常3〜30μmの範囲内である。当該厚みは、焼付け塗膜の比重、およびサンドブラスト等による塗膜2除去前後の塗装金属板100の重量差から重量法によって求められる値である。塗膜2が薄すぎる場合、塗膜2の耐久性および隠蔽性が不十分となることがある。一方、塗膜2が厚すぎる場合、製造コストが増大するとともに、焼付け時にワキが発生しやすくなることがある。

0111

以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されない。

0112

1.塗料の調製(1)
以下の方法により、各塗料を調製した。

0113

1−1.メチル系シリコーンレジンの合成1
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン408g(3.0モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液180〜216g(10.0〜12.0モル)を5〜25℃で、20〜40分間かけて滴下した。滴下終了後、5〜25℃で0.6〜6時間攪拌し、加水分解および脱水縮合を完了させた。これにより、シラノール基の含有量が異なる7種のメチル系シリコーンレジンA〜Gを含む調製液を得た。なお、メチル系シリコーンレジンA〜Gのシラノール基量や構成単位量は、上記反応時間(攪拌時間)および反応温度、および塩酸水溶液の添加量で調整した。

0114

その後、当該調製液から、加水分解によって生成したメタノールを、70℃、60mmHgで1時間減圧留去した。メタノール留去後の調製液は白濁しており、一晩静置することで、2層に分離した。下層は、水に不溶となって沈降したシリコーンレジンである。当該調製液に、メチルイソブチルケトン(MIBK)469gを加え、室温で1時間攪拌した。これにより、沈降したシリコーンレジンを完全にMIBKに溶解させた。そして、当該調製液を静置し、水層とMIBK層とを分離させた。その後、コック付きフラスコにて下層の水層を取り除き、固形分が50質量%、かつ無色透明シリコーンレジン溶液を得た。

0115

得られたメチル系シリコーンレジンAの構造を、29Si−NMRによって測定したところ、2本のブロードシグナルが観測された。これらの化学シフトは、(1)δ=−54〜−58ppm、(2)δ=−62〜−68ppmであった。当該化学シフトは、以下の式で表されるTm単位のうち、Tm−2単位およびTm−3単位のケイ素原子にそれぞれ帰属する。つまり、当該メチル系シリコーンレジンAには、Tm−1単位は含まれていなかった。また、メチル系シリコーンレジンAについて1H−NMR分析を行ったところ、メチルトリメトキシシラン由来のメトキシ基は全て加水分解され、水酸基となっていた。

0116

0117

さらに、以下の条件でGPC分析(ポリスチレン換算)を行い、シリコーンレジンAの重量平均分子量Mwと、分子量分布Mw/Mnとを測定した。
測定機種:東ソー社製 HLC−8320GPC
カラム:Shodex K・G+K・805L×2本+K・800D
溶離液クロロホルム
温度:カラム恒温槽40.0℃
流速:1.0mL/min
濃度:0.2質量/体積%
注入量:100μl
溶解性完全溶解
前処理:0.45μmフィルターでろ過
検出器示差屈折計RI

0118

同様に、メチル系シリコーンB〜Gについても、29Si−NMRおよび1H−NMR分析により、構造を特定した。また、GPC分析により、重量平均分子量Mwと、分子量分布Mw/Mnとを測定した。メチル系シリコーンA〜Gの分析結果を以下の表1に示す。

0119

0120

1−2.メチル系シリコーンレジンの合成2
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン286〜163g(2.1〜1.2モル)およびジメチルジメトキシシラン108〜216g(0.9〜1.8モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液180〜216g(10.0〜12.0モル)を5〜25℃で20〜40分間かけて滴下した。滴下終了後、5〜25℃で0.6〜6時間攪拌して加水分解および脱水縮合を行った。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンの合成1と同様の操作を行い、固形分約50質量%の3種のメチル系シリコーンレジンH〜Jを含むシリコーンレジン溶液を得た。なお、メチル系シリコーンレジンH〜Jのシラノール基や構成単位量は、上記反応時間(攪拌時間)、反応温度、塩酸水溶液の添加量、および仕込み量で調整した。

0121

得られたメチル系シリコーンH〜Jについて、29Si−NMRおよび1H−NMR分析により、構造を特定した。さらに、GPC分析により、重量平均分子量Mwと、分子量分布Mw/Mnとを測定した。メチル系シリコーンH〜Jの分析結果を以下の表2に示す。なお、表2におけるDm−1単位およびDm−2単位は、それぞれ以下の式で表される構造単位である。

0122

0123

1−3.メチル/フェニル系シリコーンレジンの合成3
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン326〜41g(2.4〜0.3モル)とフェニルトリメトキシシラン119〜535g(0.6〜2.7モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液180〜216g(10.0〜12.0モル)を5〜25℃で20〜40分間かけて滴下した。滴下終了後、5〜25℃で0.6〜6時間攪拌し、加水分解および脱水縮合を完了させた。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンの合成1と同様の操作を行い、固形分約50質量%の5種のメチル/フェニル系シリコーンレジンK〜Oを含む調製液を得た。なお、メチル/フェニル系シリコーンレジンK〜Oのシラノール基量や構成単位量は、上記反応時間(攪拌時間)、反応温度、塩酸水溶液の添加量、および仕込み量で調整した。

0124

得られたメチル系シリコーンK〜Oについて、29Si−NMRおよび1H−NMR分析により、構造を特定した。なお、メチル/フェニル系シリコーンレジンLの構造を29Si−NMRによって測定したところ、4本のブロードなシグナルが観測された。これらの化学シフトは、(1)δ=−52〜−61ppm、(2)δ=−62〜−71ppm、(3)δ=−67〜−75ppm、(4)δ=−75〜−83ppm、であり、それぞれ下記式で表されるTm単位およびTf単位のうち、Tm−2単位、Tm−3単位、Tf−2単位、およびTf−3単位のケイ素原子に帰属する。また、当該メチル/フェニル系シリコーンレジンLについて1H−NMR分析を行ったところ、メチルトリメトキシシランおよびフェニルトリメトキシシラン由来のメトキシ基が全て加水分解され、水酸基となっていた。さらに、GPC分析により、重量平均分子量Mwと、分子量分布Mw/Mnとを測定した。分析結果を表3に示す。

0125

0126

0127

1−4.メチル/フェニル系シリコーンレジンの合成4
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン109〜27g(0.8〜0.2モル)、フェニルトリメトキシシラン198g(1.0モル)、およびジメチルジメトキシシラン144〜216g(1.2〜1.8モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液180〜216g(10.0〜12.0モル)を5〜25℃で20〜40分間かけて滴下し、5〜25℃で0.6〜6時間攪拌して加水分解および脱水縮合を完了させた。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンの合成1と同様の操作を行い、固形分約50質量%の3種のメチル/フェニル系シリコーンレジンP〜Rを含むシリコーンレジン溶液を得た。なお、メチル/フェニル系シリコーンレジンP〜Rのシラノール基量や構成単位量は、上記反応時間(攪拌時間)、反応温度、塩酸水溶液の添加量、および仕込み量で調整した。

0128

得られたメチル系シリコーンP〜Rについて、29Si−NMRおよび1H−NMR分析により、構造を特定した。さらに、GPC分析により、重量平均分子量Mwと、分子量分布Mw/Mnとを測定した。分析結果を表4に示す。

0129

0130

1−5.メチルシリケートおよびエチルシリケートの準備
メチルシリケートおよびエチルシリケートとして、以下の市販品を用いた。
[メチルシリケートS]
メチルシリケート53A(コルコート社製、テトラメトキシシランの縮合物)重量平均分子量(Mw):840、数平均分子量(Mn):610、Mw/Mn=1.4

0131

[エチルシリケートT]
エチルシリケート48(コルコート社製、テトラエトキシシランの縮合物)重量平均分子量(Mw):1300、数平均分子量(Mn):850、Mw/Mn=1.5

0132

1−6.塗料の調製
数平均分子量5,000、ガラス転移温度30℃、水酸基価28mgKOH/gの高分子ポリエステル樹脂(DIC社製)と、メトキシ基90モル%メチル化メラミン樹脂硬化剤(三井サイテック社製サイメル(登録商標)303)とを混合し、ベースとなるポリエステル樹脂とメラミン樹脂硬化剤とを含む組成物を得た。ポリエステル樹脂とメチル化メラミン樹脂硬化剤との配合比は70/30とした。

0133

上記組成物に触媒として、ドデシルベンゼンスルフォン酸を、上記組成物の固形分量に対して1質量%加えた。さらに、ジメチルアミノエタノールを加えた。なお、ジメチルアミノエタノールの添加量は、ドデシルベンゼンスルフォン酸の酸当量に対してアミン当量が1.25倍となる量とした。

0134

さらに、表5に示すように、上述のメチル系シリコーンレジン、メチル/フェニル系シリコーンレジン、メチルシリケート、またはエチルシリケートを、それぞれ塗料の総固形分量に対して5質量%となるように添加した。さらに、メチルシリケートまたはエチルシリケートを添加した塗料については、オルトギ酸トリエチルを、塗料の総固形分量に対して5質量%となるように添加した。

0135

1−7.金属板の準備
板厚0.27mm、A4サイズ(210mm×297mm)、片面当りめっき付着量90g/m2の溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板を金属板として準備し、表面をアルカリ脱脂した。その後、当該表面に、塗布型クロメート処理液(日本ペイント株式会社製 NRC300NS)を、Crの付着量が50mg/m2となるように塗布した。さらに、エポキシ樹脂系プライマー塗料(日本ファインコーティングス株式会社製 700P)を、硬化膜厚が5μmとなるようにロールコーターで塗布した。続いて、基材最高到達板温215℃となるように焼き付け、プライマー塗膜を形成しためっき鋼板(以下、単に「めっき鋼板」とも称する)を得た。

0136

2.塗装金属板の製造(1)
実施例1〜16、および比較例1、2、11、および12では、以下の塗膜形成工程およびフレーム処理工程を行い、塗装金属板を得た。また、比較例6〜8では、以下の塗膜形成工程およびコロナ放電処理工程を行い、塗装金属板を得た。一方、比較例3〜5、9、および10では、以下の塗膜形成工程のみを行い、塗装金属板を得た。

0137

2−1.塗膜形成工程
表5および表6に示す種類の塗料を、硬化膜厚が18μmとなるように上述のめっき鋼板にロールコーターで塗布し、最高到達板温225℃、板面風速0.9m/sで45秒間焼き付けた。なお、塗料の安定性を確認するため、塗料を調製していから24時間後に塗布した。

0138

2−2.フレーム処理工程(実施例1〜16、比較例1、2、11、および12)
上述の塗膜形成工程で形成した塗膜をフレーム処理した。フレーム処理用バーナーには、Flynn Burner社(米国)製のF−3000を使用した。また、燃焼性ガスには、LPガス(燃焼ガス)と、クリーンドライエアーとを、ガスミキサーで混合した混合ガス(LPガス:クリーンドライエアー(体積比)=1:25)を使用した。また、各ガスの流量は、バーナーの炎口の1cm2に対してLPガス(燃焼ガス)が1.67L/分、クリーンドライエアーが41.7L/分となるように調整した。なお、塗膜の搬送方向のバーナーヘッドの炎口の長さ(図1AにおいてLで表される長さ)は4mmとした。一方、バーナーヘッドの炎口の搬送方向と垂直方向の長さ(図1BにおいてWで表される長さ)は、450mmとした。さらに、バーナーヘッドの炎口と塗膜表面との距離は、所望のフレーム処理量に応じて50mmとした。さらに、塗膜の搬送速度を30m/分とすることで、フレーム処理量を212kJ/m2に調整した。

0139

2−3.コロナ放電処理工程(比較例6〜8)
コロナ放電処理には、電機株式会社製の下記の仕様コロナ放電処理装置を使用した。
(仕様)
電極セラミック電極
電極長さ 430mm
・出力 310W
また、塗膜のコロナ放電処理回数は、いずれも1回とした。コロナ放電処理量は、処理速度によって調整した。具体的には、3.8m/分で処理することにより、コロナ放電処理量200W・分/m2とした。

0140

3.試験(1)
実施例および比較例で作製した塗装金属板、もしくは実施例および比較例で使用した塗料を用いて作製した試験片について、以下の試験を行った。結果を表5および表6に示す。

0141

(1)シリコーンレジン又はシリケートの蒸発量
厚さ0.5mmのアルミ板(JIS A5052)の表面に膜厚が18μmになるように、各実施例および比較例で使用した塗料を塗布し、塗膜を形成した。そして、塗膜を形成した塗装アルミ板を10cm×10cm角に切り出し、フッ化水素酸塩酸硝酸混合酸溶液に溶かし、さらにマイクロ波を照射して加熱分解した。その後、超純水で定容して検液を調製した。当該検液中のSiを、島津製作所製 ICPE−9820型ICP−AES分析装置を用いて、定量分析した。

0142

一方、シリコーンレジンまたはシリケートを添加しなかった以外は、実施例および比較例と同様に塗料を調製し、当該塗料を用いて塗膜を形成した。そして、上記と同様に検液中のSiを定量分析した。

0143

これらを比較し、各塗膜中のシリコーンレジンまたはシリケート由来のSi量を求めた。また、シリコーンレジンまたはシリケートが全く蒸発しなかったと仮定した場合の塗膜中のSi量を計算で求めた。そして、全く蒸発しなかった場合のSi量と、実施例または比較例で作製した塗膜のSi量との比から、塗膜形成時のシリコーンレジンまたはシリケートの蒸発量を以下の基準で評価した。
×:蒸発量が20%以上
△:10%以上20%未満
〇:3%以上10%未満
◎:3%未満
なお、△、○、◎を合格とした。

0144

(2)塗料の貯蔵安定性評価
実施例および比較例で使用した塗料を40℃の恒温室中で保存し、15日後の塗料粘度をB型粘度計で測定した。そして、保存前後の粘度を比較し、以下の基準で強化した。
×:恒温室放置15日以内にゲル化
△:恒温室保存前後で塗料粘度上昇率が100%以上
○:恒温室保存前後で塗料粘度上昇率が30%以上、100%未満
◎:恒温室保存前後で塗料粘度上昇率が30%未満
なお、△、○、◎を合格とした。

0145

(3)鉛筆硬度評価方法
JIS K5600−5−4(ISO/DIS 15184)に準拠して、塗膜表面の耐傷付き性を評価する鉛筆硬度試験を行った。当該塗膜表面の耐傷付き性は、以下の基準で評価した。
○:H以上
△:B〜HB
×:2B以下
なお、△以上を合格と評価した。

0146

(4)対水接触角の測定
実施例および比較例で作製した塗装金属板の塗膜表面の対水接触角を測定した。測定は気温23±2℃、相対湿度50±5%の恒温恒湿度室で0.01ccの精製水水滴を形成して、協和界面科学株式会社製の接触角計DM901を使用して測定した。

0147

(5)耐雨筋汚れ性の評価
耐雨筋汚れ性は、以下のように評価した。
まず、垂直暴露台に実施例および比較例で作製した塗装金属板をそれぞれ取り付けた。さらに、当該塗装金属板の上部に、地面に対して角度20°となるように、波板を取り付けた。このとき、雨水が塗装金属板表面を筋状に流れるように、波板を設置した。この状態で、屋外暴露試験を6ヶ月間行い、汚れの付着状態を観察した。耐雨筋汚れ性の評価は、暴露前後の塗装金属板の明度差(ΔL)で、以下のように評価した。
×:ΔLが2以上の場合(汚れが目立つ)
△:ΔLが1以上2未満の場合(雨筋汚れは目立たないが視認できる)
〇:ΔLが1未満の場合(雨筋汚れがほとんど視認できない)
◎:ΔLが1未満で、かつ雨筋汚れが全く視認できない。
なお、△、○、◎を合格とした。

0148

0149

0150

上記表5および表6に示されるように、シリコーンレジンを含む塗料により塗膜を形成しただけでは、いずれのシリコーンレジンを用いた場合にも、塗膜の対水接触角が高く、塗装金属板の耐雨筋汚れ性が悪かった(比較例3〜5)。また、塗膜の形成工程後、コロナ放電処理を行った場合にも、対水接触角が高く、耐雨筋汚れ性が不十分であった(比較例6〜8)。コロナ放電処理では、ムラなく親水化処理することが難しかったと推察される。

0151

これに対し、Si原子の量(モル数)に対する、シラノール基の量(モル数)が、5〜50モル%であるシリコーンレジンを含む塗料により塗膜を形成し、フレーム処理を行った塗装金属板では、対水接触角が十分に低く、耐雨筋汚れ性が合格レベルとなった(実施例1〜16)。シラノール基の量が上記範囲であるシリコーンレジンは、塗膜表面に均一に濃化しすい。また、一般的にSi原子に結合したフェニル基は、一般的な表面処理(例えばコロナ放電処理)では除去され難いが(例えば、比較例7および8)、フレーム処理によれば、メチル基だけでなくフェニル基も除去することが可能であり、塗膜表面にシラノール基等を導入することが可能である(例えば、実施例9〜16)。また、フレーム処理によれば、塗膜表面を一様に親水化させることが可能であった。

0152

また、シリコーンレジンを含む塗料では、蒸発性評価が良好であった。つまり、塗料の硬化時にシリコーンレジンが蒸発し難く、加熱装置に付着したシリカ等によって、塗膜が汚染され難く、外観が良好な塗装金属板が得られた。

0153

一方、シラノール基の量が少なすぎる(5モル%未満である)シリコーンレジンを含む塗料で塗膜を形成した場合には、フレーム処理を行ったとしても、耐雨筋汚れ性が不十分であった(比較例1)。シラノール基の量が5モル%未満になると、シリコーンレジンの分子量が大きくなりやすく、多少の反応で、シリコーンレジンが高分子化する。そのため、シリコーンレジンが表面に均一に濃化し難く、海島状になりやすかった。その結果、フレーム処理を行っても、塗装金属板表面を均一に親水化することができず、耐雨筋汚れ性が十分に高まらなかったと推察される。

0154

これに対し、シラノール基の量が過剰である(50モル%超である)シリコーンレジンを含む塗料で塗膜を形成した場合、耐雨筋汚れ性が十分に高まらなかった(比較例2)。シラノール基の量が過剰である場合、塗料の調製から塗布までの時間が長いと、シリコーンレジンが反応してしまい、塗装金属板表面を均一に親水化することが難しかったと考えられる。

0155

また、メチルシリケートやエチルシリケート等、オルガノシリケートを含む塗料では、貯蔵安定性が十分でなく、さらに塗膜の硬化時に塗料が蒸発しやすかった(比較例9〜12)。さらに、メチルシリケートを含む塗料を用いて作製した塗装金属板では、傷付き性が低く、フレーム処理を行ったとしても、耐雨筋汚れ性も低かった(比較例9および11)。当該塗料では、塗布時に、膜表面にメチルシリケートが濃化し難かっただけでなく、膜の硬化時にメチルシリケートが蒸発してしまったと推察される。

0156

4.塗料の調製(2)
以下の方法により、各塗料を調製した。

0157

4−1.メチル系シリコーンレジンUの合成
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン408g(3.0モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液216g(12.0モル)を5℃で、40分間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で6時間攪拌し、加水分解および脱水縮合を完了させた。これにより、メチル系シリコーンレジンUを含む調製液を得た。

0158

その後、当該調製液から、加水分解によって生成したメタノールを、70℃、60mmHgで1時間減圧留去した。メタノール留去後の調製液は白濁しており、一晩静置することで、2層に分離した。下層は、水に不溶となって沈降したシリコーンレジンである。当該調製液に、メチルイソブチルケトン(MIBK)469gを加え、室温で1時間攪拌した。これにより、沈降したシリコーンレジンを完全にMIBKに溶解させた。そして、当該調製液を静置し、水層とMIBK層とを分離させた。その後、コック付きフラスコにて下層の水層を取り除き、固形分が50質量%、かつ無色透明のシリコーンレジン溶液を得た。

0159

得られたメチル系シリコーンレジンUの構造を、29Si−NMRによって測定したところ、2本のブロードなシグナルが観測された。これらの化学シフトは、(1)δ=−54〜−58ppm、(2)δ=−62〜−68ppmであった。当該化学シフトは、以下の式で表されるTm単位のうち、Tm−2単位およびTm−3単位のケイ素原子にそれぞれ帰属する。つまり、当該メチル系シリコーンレジンUには、Tm−1単位は含まれていなかった。また、メチル系シリコーンレジンUについて1H−NMR分析を行ったところ、メチルトリメトキシシラン由来のメトキシ基は全て加水分解され、水酸基となっていた。

0160

0161

さらに、以下の条件でGPC分析(ポリスチレン換算)を行い、シリコーンレジンUの重量平均分子量Mwと、分子量分布Mw/Mnとを測定した。結果を表7に示す。
測定機種:東ソー社製 HLC−8320GPC
カラム:Shodex K・G+K・805L×2本+K・800D
溶離液:クロロホルム
温度:カラム恒温槽40.0℃
流速:1.0mL/min
濃度:0.2質量/体積%
注入量:100μl
溶解性:完全溶解
前処理:0.45μmフィルターでろ過
検出器:示差屈折計(RI)

0162

4−2.メチル系シリコーンレジンVの合成
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン286g(2.1モル)およびジメチルジメトキシシラン108g(0.9モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液198g(11.0モル)を5〜25℃で20分間かけて滴下した。滴下終了後、15℃で6時間攪拌して加水分解および脱水縮合を行った。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンUの合成と同様の操作を行い、固形分約50質量%のメチル系シリコーンレジンVを含むシリコーンレジン溶液を得た。

0163

得られたメチル系シリコーンレジンVについて、29Si−NMRおよび1H−NMR分析により、構造を特定した。さらに、GPC分析により、重量平均分子量Mwと、分子量分布Mw/Mnとを測定した。メチル系シリコーンVの分析結果を表7に示す。なお、表7におけるDm−1単位およびDm−2単位は、それぞれ以下の式で表される構造単位である。

0164

0165

4−3.メチル/フェニル系シリコーンレジンWの合成
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン272g(2.0モル)とフェニルトリメトキシシラン119g(1.0モル)とを仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液198g(11.0モル)を5〜25℃で30分間かけて滴下した。滴下終了後、10℃で6時間攪拌し、加水分解および脱水縮合を完了させた。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンUの合成と同様の操作を行い、固形分約50質量%のメチル/フェニル系シリコーンレジンWを含む調製液を得た。

0166

得られたメチル/フェニル系シリコーンレジンWについて、29Si−NMRおよび1H−NMR分析により、構造を特定した。なお、メチル/フェニル系シリコーンレジンWの構造を29Si−NMRによって測定したところ、4本のブロードなシグナルが観測された。これらの化学シフトは、(1)δ=−52〜−61ppm、(2)δ=−62〜−71ppm、(3)δ=−67〜−75ppm、(4)δ=−75〜−83ppm、であり、それぞれ下記式で表されるTm単位およびTf単位のうち、Tm−2単位、Tm−3単位、Tf−2単位、およびTf−3単位のケイ素原子に帰属する。また、当該メチル/フェニル系シリコーンレジンWについて1H−NMR分析を行ったところ、メチルトリメトキシシランおよびフェニルトリメトキシシラン由来のメトキシ基が全て加水分解され、水酸基となっていた。さらに、GPC分析により、重量平均分子量Mwと、分子量分布Mw/Mnとを測定した。分析結果を表8に示す。

0167

0168

4−4.メチル/フェニル系シリコーンレジンXの合成
2Lのフラスコにメチルトリメトキシシラン109g(0.8モル)、フェニルトリメトキシシラン198g(1.0モル)、およびジメチルジメトキシシラン144g(1.2モル)を仕込み、10℃以下で水800gを加え、よく混合させた。次いで、氷冷下、0.05Nの塩酸水溶液216g(12.0モル)を5〜25℃で40分間かけて滴下し、10℃で6時間攪拌して加水分解および脱水縮合を完了させた。滴下終了後、メチル系シリコーンレジンUの合成と同様の操作を行い、固形分約50質量%のメチル/フェニル系シリコーンレジンXを含むシリコーンレジン溶液を得た。

0169

得られたメチル/フェニル系シリコーンレジンXについて、29Si−NMRおよび1H−NMR分析により、構造を特定した。さらに、GPC分析により、重量平均分子量Mwと、分子量分布Mw/Mnとを測定した。分析結果を表8に示す。

0170

0171

4−5.メチルシリケートおよびエチルシリケートの準備
メチルシリケートYおよびエチルシリケートZとして、以下の市販品を用いた。
[メチルシリケートY]
メチルシリケート53A(コルコート社製、テトラメトキシシランの縮合物)重量平均分子量(Mw):840、数平均分子量(Mn):610、Mw/Mn=1.4

0172

[エチルシリケートZ]
エチルシリケート48(コルコート社製、テトラエトキシシランの縮合物)重量平均分子量(Mw):1300、数平均分子量(Mn):850、Mw/Mn=1.5

0173

4−6.塗料の調製
数平均分子量5,000、ガラス転移温度30℃、水酸基価28mgKOH/gの高分子ポリエステル樹脂(DIC社製)と、メトキシ基90モル%メチル化メラミン樹脂硬化剤(三井サイテック社製サイメル(登録商標)303)とを混合し、ベースとなるポリエステル樹脂とメラミン樹脂硬化剤とを含む組成物を得た。ポリエステル樹脂とメチル化メラミン樹脂硬化剤との配合比は70/30とした。さらに塗料の固形分量に対してそれぞれ、平均粒径0.28μmの酸化チタン((顔料)、JR−603、テイカ株式会社)が45質量%、平均粒径5.5μmの疎水性シリカA(サイシリア456、富士シリシア化学株式会社)が4質量%、平均粒径12μmの疎水性シリカB(サイリシア476、富士シリシア化学株式会社)が3質量%となるように添加した。

0174

上記組成物に触媒として、ドデシルベンゼンスルフォン酸を、塗料の総固形分量に対して1質量%となるように加えた。さらに、ジメチルアミノエタノールを加えた。なお、ジメチルアミノエタノールの添加量は、ドデシルベンゼンスルフォン酸の酸当量に対してアミン当量が1.25倍となる量とした。

0175

さらに、上述のメチル系シリコーンレジン、メチル/フェニル系シリコーンレジン、メチルシリケート、またはエチルシリケートを、それぞれ塗料の総固形分量に対して表9に示す割合となるように添加した。当該塗料を、20〜30℃で15日間保管した。また、メチルシリケートY、またはエチルシリケートZを添加した塗料については塗料調製時に、脱水剤としてオルトギ酸トリエチルを、塗料の総固形分量に対して5質量%となるように添加した。

0176

4−7.金属板の準備
板厚0.27mm、A4サイズ(210mm×297mm)、片面当りめっき付着量90g/m2の溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板を金属板として準備し、表面をアルカリ脱脂した。その後、当該表面に、塗布型クロメート処理液(日本ペイント株式会社製 NRC300NS)を、Crの付着量が50mg/m2となるように塗布した。さらに、エポキシ樹脂系プライマー塗料(日本ファインコーティングス株式会社製 700P)を、硬化膜厚が5μmとなるようにロールコーターで塗布した。続いて、基材の最高到達板温215℃となるように焼き付け、プライマー塗膜を形成しためっき鋼板(以下、単に「めっき鋼板」とも称する)を得た。

0177

5.塗装金属板の製造(2)
実施例17〜26、ならびに比較例13、16、21、および22では、以下の塗膜形成工程およびフレーム処理工程を行い、塗装金属板を得た。一方、比較例14、15、および17〜20では、以下の塗膜形成工程のみを行い、塗装金属板を得た。

0178

5−1.塗膜形成工程
表9に示す種類の塗料(いずれも、塗料調製から15日保管後の塗料)を、硬化膜厚が18μmとなるように上述のめっき鋼板にロールコーターで塗布し、最高到達板温225℃、板面風速0.9m/sで45秒間焼き付けた。

0179

5−2.フレーム処理工程(実施例17〜26、および比較例13、16、21、22)
上述の塗膜形成工程で形成した塗膜をフレーム処理した。フレーム処理用バーナーには、Flynn Burner社(米国)製のF−3000を使用した。また、燃焼性ガスには、LPガス(燃焼ガス)と、クリーンドライエアーとを、ガスミキサーで混合した混合ガス(LPガス:クリーンドライエアー(体積比)=1:25)を使用した。また、各ガスの流量は、バーナーの炎口の1cm2に対してLPガス(燃焼ガス)が1.67L/分、クリーンドライエアーが41.7L/分となるように調整した。なお、塗膜の搬送方向のバーナーヘッドの炎口の長さ(図1AにおいてLで表される長さ)は4mmとした。一方、バーナーヘッドの炎口の搬送方向と垂直方向の長さ(図1BにおいてWで表される長さ)は、450mmとした。さらに、バーナーヘッドの炎口と塗膜表面との距離は、所望のフレーム処理量に応じて50mmとした。さらに、塗膜の搬送速度を20m/分とすることで、フレーム処理量を319kJ/m2に調整した。

0180

6.試験(2)
実施例および比較例で作製した塗装金属板、もしくは実施例および比較例で使用した塗料を用いて作製した試験片について、以下の測定および評価を行った。結果を表9に示す。

0181

(1)XPS測定
KRATOS社製 AXIS−NOVA走査型X線光電子分光装置にて、塗膜表面のXPS測定を行った。そして、塗膜表面のSi原子、N原子、C原子、O原子、およびTi原子の量に対するSi原子の割合Sia、および塗膜表面におけるC原子の量に対するO原子の量の割合xをそれぞれ特定した。また、得られたX線光電子分光スペクトルのC1sピークトップを285eVに補正して、Si2pスペクトルを103.5eVに相当するピークおよび102.7eVに相当するピークに分離した。そして、Si2pスペクトル全体のピーク面積Si2pに対する、103.5eVのピーク面積Si無機の割合yも算出した、なお、XPS測定の最の測定条件は、以下の通りとした。また、Si2pスペクトルは、Linear法でバックグラウンド除去した後、当該スペクトルを、ガウス関数およびローレンス関数の複合関数で処理することで、有機系Si原子のピーク(102.7eV)と、無機系Si原子のピーク(103.5eV)とに分離した。

0182

(測定条件)
X線源:AlKα 1486.6eV
分析領域700×300μm

0183

(2)鉛筆硬度評価
JIS K5600−5−4(ISO/DIS 15184)に準拠して、塗膜表面の耐傷付き性を評価する鉛筆硬度試験を行った。当該塗膜表面の耐傷付き性は、以下の基準で評価した。
○:2H以上
△:HB〜H
×:F以下
なお、△以上を合格と評価した。

0184

(3)曲げ加工性評価
気温23±2℃、相対湿度50±5%の恒温恒湿度環境で、塗装金属板4枚分の厚さを有する板を挟み込むように、塗装金属板の180°曲げを行った。そして、曲げ加工部の塗膜表面をルーペ倍率:10倍)および目視で観察した。曲げ加工性は、以下の基準で評価した。
○:ルーペ観察でクラックなし
△:目視観察でクラックなし
×:目視観察でクラックあり
なお、○を合格と評価した。

0185

(4)ヨウ化メチレン転落角測定
水平に保持した塗膜上に2μlのヨウ化メチレンを滴下した。その後、接触角測定装置(協和界面科学社製DM901)を用いて、2度/秒の速度で塗膜の傾斜角度(水平面と塗膜とが成す角度)を大きくした。このとき、接触角測定装置に付属しているカメラによって、ヨウ化メチレンの液滴を観察した。そして、ヨウ化メチレンの液滴が転落する瞬間の傾斜角度を特定し、5回の平均値を当該塗膜のヨウ化メチレン転落角とした。なお、ヨウ化メチレンの液滴が転落する瞬間とは、ヨウ化メチレンの液滴の重力下方向の端点および重力上方向の端点の両方が移動し始める瞬間とした。

0186

(5)耐雨筋汚れ性評価
耐雨筋汚れ性は、以下のように評価した。
まず、垂直暴露台に実施例および比較例で作製した塗装金属板をそれぞれ取り付けた。さらに、当該塗装金属板の上部に、地面に対して角度20°となるように、波板を取り付けた。このとき、雨水が塗装金属板表面を筋状に流れるように、波板を設置した。この状態で、屋外暴露試験を6ヶ月間行い、汚れの付着状態を観察した。耐雨筋汚れ性の評価は、暴露前後の塗装金属板の明度差(ΔL)で、以下のように評価した。
×:ΔLが2以上の場合(汚れが目立つ)
△:ΔLが1以上2未満の場合(雨筋汚れは目立たないが視認できる)
〇:ΔLが1未満の場合(雨筋汚れがほとんど視認できない)
◎:ΔLが1未満で、かつ雨筋汚れが全く視認できない
なお、△、○、◎を合格とした。

0187

0188

上記表9に示されるように、Siaが8.0atm%以上であり、かつ上記xが0.8以上であり、さらにyが0.6以上である場合には、鉛筆硬度、曲げ加工性、および耐雨筋汚れ性のいずれの結果も良好であった(実施例17〜26)。これに対し、Si原子の割合Siaが8.0atm%未満である場合には、耐雨筋汚れ性が低かった(比較例13、16、および19)。塗膜表面に十分な量のSi原子が含まれないため、塗膜表面のシロキサン結合やシラノール基の量が十分に高まり難く、親水性を高めることが難しかったと推察される。

0189

また、Si原子の割合Siaが8.0atm%以上であったとしても、xが0.8未満である場合や、yが0.6未満である場合にも、耐雨筋汚れ性が悪かった(比較例14、15、17、18、20〜22)。xが0.8未満である場合やyが0.6未満である場合には、シリコーンレジン由来の有機基や、オルガノシリケート由来の有機基が、十分に脱離していないと考えられ、有機基が表面に多く残ったことで十分に親水性が高まらなかったと推察される。

0190

また特に、オルガノシリケートを含む場合には、塗装金属板の曲げ加工性や鉛筆硬度の評価が低くなった(比較例19〜22)。オルガノシリケートは、表面に濃化し難かったり、塗膜内部にもオルガノシリケートが多く残存しやすいため、曲げ加工性等が低下したと推察される。

0191

7.参考試験(3)
上述の実施例17〜26および比較例14、15、17〜22で作製した塗装金属板、もしくは実施例および比較例で使用した塗料を用いて作製した試験片について、以下のXPS測定を行った。結果を表10に示す。

0192

・XPS測定
アルバック・ファイ製VersaprobeII走査型X線光電子分光装置にて、以下の条件でエッチングしながら、XPS測定を行った。そして、最表層におけるSi原子、N原子、C原子、O原子、およびTi原子の量に対するSi原子の割合Six、ならびに、最表層におけるC原子の量に対するO原子の量の割合αx、表層におけるC原子の量に対するO原子の量の割合αy、および本体層におけるC原子の量に対するO原子の量の割合αzをそれぞれ特定した。さらに、αx>αz>αyが満たされるか否かも確認した。実施例19および実施例24の塗膜の組成比のデプスプロファイルカーブを、それぞれ図7および図8に示す。また、併せて、比較例14および比較例17の塗膜の組成比のデプスプロファイルカーブを、それぞれ図9および図10に示す。

0193

(測定条件)
X線源:AlKα (モノクロ:50W、15kV) 1486.6eV
分析領域0.2mmφ
帯電中和利用(電子銃+イオン中和銃)
(エッチング条件)
Arイオン加速電圧4kV
エッチングレート:8.29nm/min(SiO2換算)10nm毎に測定

0194

0195

上記表9および表10に示されるように、Sixが8.0atm%以上であり、かつ上記αxが0.8以上であり、さらにαx、αy、およびαzがαx>αz>αyを満たす場合に、塗膜の硬度(鉛筆硬度)や、曲げ加工性、耐雨筋汚れ性がいずれも良好になった(実施例17〜26)。これに対し、Si原子の割合Sixが8.0atm%未満である場合には、耐雨筋汚れ性が低かった(比較例19および21)。塗膜表面に十分な量のSi原子が含まれないため、塗膜表面のO原子の量が十分に高まり難く、親水性を高めることが難しかったと推察される。

実施例

0196

また、Si原子の割合Sixが8.0atm%以上であったとしても、αxが0.8未満である場合にも、耐雨筋汚れ性が悪かった(比較例14、15、17、18、20、および22)。塗膜表面におけるO原子量が少なく、十分に親水性が高まらなかったと推察される。

0197

本発明の塗装金属板の製造方法によれば、耐雨筋汚れ性、および耐傷付き性が高く、さらに良好な外観を有する塗装金属板を製造可能である。したがって、当該塗装金属板の製造方法、および当該方法により得られる塗装金属板は、各種建築物の外装建材への適用が可能である。

0198

22バーナーヘッド
22a筐体
22b炎口
22c補助炎口
23 ガス供給管

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