図面 (/)

技術 ニューレグリンに対して非競合的でアロステリックな抗ヒトHER3抗体及びその使用

出願人 アンスティチュナショナルドゥラサンテエドゥラルシェルシュメディカルウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエアンスティテュ・レジオナル・デュ・カンセール・ドゥ・モンペリエ
発明者 シャルド,ティエリーガボリ,ナデージュラルブレ,クリステルペルグラン,アンドレ
出願日 2018年7月20日 (1年11ヶ月経過) 出願番号 2018-136489
公開日 2018年11月22日 (1年7ヶ月経過) 公開番号 2018-183166
状態 特許登録済
技術分野 突然変異または遺伝子工学 微生物、その培養処理 抗原、抗体含有医薬:生体内診断剤 生物学的材料の調査,分析 ペプチド又は蛋白質 微生物による化合物の製造 化合物または医薬の治療活性
主要キーワード シエーリング 表面再構成 ベルテックス C領域 マーカー部分 再プログラム化 ステージ分 化粧張り
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年11月22日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (13)

課題

ニューレグリン(NRG)に非競合的アロステリック抗ヒトHER3抗体、および、該抗体を含む医薬組成物の提供。

解決手段

重鎖を含むニューレグリンに対して非競合的でアロステリックな抗ヒトHER3抗体であって、その可変ドメインは、それぞれ特定の配列に対して少なくとも一定の同一率を有するH−CDR1、H−CDR2、H−CDR3、L−CDR1、L−CDR2およびL−CDR3を含み、前記特定の配列を含む抗体と実質的に同じ親和性でHER3に特異的に結合する、抗体。

概要

背景

概要

ニューレグリン(NRG)に非競合的アロステリック抗ヒトHER3抗体、および、該抗体を含む医薬組成物の提供。重鎖を含むニューレグリンに対して非競合的でアロステリックな抗ヒトHER3抗体であって、その可変ドメインは、それぞれ特定の配列に対して少なくとも一定の同一率を有するH−CDR1、H−CDR2、H−CDR3、L−CDR1、L−CDR2およびL−CDR3を含み、前記特定の配列を含む抗体と実質的に同じ親和性でHER3に特異的に結合する、抗体。なし

目的

本発明の抗体は、先行技術に記載された抗HER3抗体を上回る以下の利点を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

重鎖を含むニューレグリンに対して非競合的アロステリック抗ヒトHER3抗体であって、可変ドメインは:−配列番号2として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するH−CDR1、−配列番号3として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するH−CDR2、−配列番号4として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するH−CDR3、−配列番号6として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するL−CDR1、−配列番号7として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するL−CDR2、−配列番号8として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するL−CDR3を含み、−重鎖(可変ドメインがH−CDR1については配列番号2、H−CDR2については配列番号3、及びH−CDR3については配列番号4を含む)及び軽鎖(可変ドメインがL−CDR1については配列番号6、L−CDR2については配列番号7、及びL−CDR3については配列番号8を含む)を含む抗体と実質的に同じ親和性でHER3に特異的に結合する、前記抗体。

請求項2

H−CDR1領域に配列番号2、H−CDR2領域に配列番号3、及びH−CDR3領域に配列番号4を含む重鎖可変領域;並びに、L−CDR1領域に配列番号6、L−CDR2領域に配列番号7、及びL−CDR3領域に配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1の抗体。

請求項3

前記抗体の重鎖可変領域が、配列番号1として示されるアミノ酸配列を有し、及び/又は、軽鎖可変領域が配列番号5として示されるアミノ酸配列を有する、請求項1の抗体。

請求項4

キメラ抗体、好ましくはキメラマウスヒト抗体である、請求項1の抗体。

請求項5

ヒト化抗体である、請求項1の抗体。

請求項6

請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体の断片。

請求項7

VL鎖又はVH鎖を含む、請求項6の断片。

請求項8

Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2、及びダイアボディからなる群より選択される、請求項6の断片。

請求項9

請求項1〜5のいずれか一項記載の抗体をコードする核酸配列、又は請求項5〜8のいずれか一項記載の断片。

請求項10

請求項1〜7のいずれか記載のモノクローナル抗体の重鎖又は軽鎖をコードする核酸配列。

請求項11

配列番号9又は配列番号10である、請求項10の核酸配列。

請求項12

請求項10又は11記載の核酸を含むベクター

請求項13

請求項10又は11記載の核酸又は請求項12記載のベクターを含む宿主細胞

請求項14

請求項1〜5のいずれか記載の抗体又は請求項6〜8のいずれか記載のその断片を含む医薬組成物

請求項15

薬物として使用するための、請求項1〜5のいずれか記載の抗体又は請求項6〜8のいずれか記載のその断片。

請求項16

被験者に請求項1〜7のいずれか記載の抗体又は請求項6〜8のいずれか記載のその断片を投与することを含む、被験者における癌を処置するための方法。

請求項17

癌の診断に使用するための、請求項1〜7のいずれか記載の抗体又は請求項6〜8のいずれか記載のその断片。

技術分野

0001

発明の分野:
本発明は、ニューレグリン(NRG)に非競合的アロステリック抗ヒトHER3抗体、並びに診断法及び治療法におけるその使用に関する。

0002

発明の背景
受容体チロシンキナーゼRTK)のヒト上皮増殖因子受容体ErbB/HERファミリーは、以下の4つのメンバーを含む:EGFR(ErbB1/HER1)、HER2(c−Neu、HER2)、HER3(HER3)及びHER4(HER4)。HER受容体は、1〜4で示される4つの構造ドメインからなる細胞外グリコシル化ドメイン、続いて膜貫通ドメイン、及びシグナル伝達経路への共役のためのキナーゼドメインを含有する細胞C末端部分を含む。HER3を除いて、細胞内領域は、チロシンキナーゼ活性を含有する。シグナル伝達は、リガンドにより誘発される受容体二量体化、続いてリン酸化を通して媒介され、これにより細胞質内シグナル伝達経路が活性化される。HER2は、特異的なリガンドを全く有さない。なぜなら、それは天然で「活性な」コンフォメーション下にあるからである。他のHER受容体は不活性な単量体として存在し、分子は、二量体化を妨げるように折り畳まれている。ドメイン1及び3に結合するリガンドは、大きなコンフォメーション変化誘導し、最終的には受容体のドメイン2の二量体化ループ露出させる。この二量体化ループの露出は、受容体の二量体化を可能とする。

0003

1990年に初めて記載されたHER3受容体は、内在的キナーゼ活性欠失した唯一のHERファミリーメンバーの受容体であり、下流のシグナル伝達はヘテロ二量体化を通して成し遂げられる。したがって、単量体としてのHER3受容体は「非自己」と呼ばれ、ホモ二量体を形成することができない。HER3受容体にリガンドのニューレグリン(NRG)が結合すると、HER3と他のHERファミリー受容体(優先的にはHER2)のヘテロ二量体化がトリガーされる。ヘテロ二量体内で、HER3キナーゼドメインは、そのHERファミリー対のアロステリックなアクチベーターとして作用する。

0004

HER3は、乳癌及び卵巣癌をはじめとする様々な癌の腫瘍発生関与する(Lee-Hoeflich ST, Cancer Res. 2008; McIntyre E, Breast Cancer Res Treat. 2010; Tanner B, J Clin Oncol. 2006)。HER3の発現は、悪性黒色腫及び転移における腫瘍の進行及び患者の低下した生存率相関し、卵巣癌における低下した生存率に関連する。重要なことには、乳癌においては、ハーセプチンによる処置適格ではないHER2の発現が低い腫瘍は、HER3を強く発現するように「プログラム化」されていることが多く(Smith et al. Br. J. Cancer 2004)、長期間の処置後にハーセプチンに対して抵抗性となったHER2+++腫瘍は、HER3を強く発現するように「再プログラム化」される(Narayan, Cancer Res. 2009)。肺癌(Wheeler, Oncogene 2008)及び結腸直腸癌(Lu Cancer Res 2007)におけるセツキシマブに対する抵抗性もまた、EGFRの内部移行/分解の調節不全と共に、HER3の過剰発現にも関連していた。近年、HER3の過剰発現は、結腸直腸癌の転移を有さない生存期間の悪化に有意に関連していた(Ho-Pun-Cheung, Int J Cancer 2010)。したがって、HER3の過剰発現、及びPI3K/AKT経路の活性化を通した代償的なシグナル伝達が、HER標的化療法(抗体及びTKI)による処置に対する抵抗性の発達だけでなく(Wheeeler 2008, Lu 2007, Narayan, 2009, Sergina, 2007)、IGFR標的化療法(Desbois-Mouthon, Clin Cancer Res 2009)及び化学療法剤(Kruser, Exp Cell Res 2010)による処置に対する抵抗性の発達にも関与している。

0005

これら全ての所見は、HER3を標的とする薬剤、特に抗体が、癌におけるHER3シグナル伝達の役割をさらに理解するのを助け、特に効果的な免疫療法剤として使用され得ることを示唆する。

0006

現在、治療用の抗HER3抗体は市販されていないが、科学文献は、腫瘍治療においてHER3を標的化する利点を強く強調する。2つのヒト抗体が、現在、メリマックファーマシューティカルズ社/サノフィベンティス社(MM−121抗体;PCT国際公開公報第2008/100624号)及びU3ファーマAG社/第一三共社/アムジェン社(U3−1287又はAMG−888;PCT国際公開公報第2007/077028号)によって開発中である。MM−121抗体は、非小細胞肺癌の第I相臨床試験、及びER+PR+HER2−乳癌の第I/II相試験に関わっている。U3−1287抗体は、エルロチニブとともに非小細胞肺癌の第I相にある。EGFR/HER3二重特異的抗体のMEHD7945A(ジェネンテック社;PCT国際公開公報第2010/108217号)は依然として研究開発中である。HER2/HER3二重特異的抗体のMM−111(メリマックファーマシューティカルズ;PCT国際公開公報第2005/117973号、国際公開公報第2006/091209号)は、HER2の増幅された乳癌において、単独で、又はトラスツズマブ若しくはラパチニブと組み合わせて第I/II相臨床試験に関わっている。

0007

上記の抗体は全て、HER3受容体のヘレグリン結合部位遮断するので、リガンド依存性腫瘍へのこれらの抗体による治療は低減する。HER3のヘレグリン結合部位に指向されない抗体を用いてのHER3の標的化は、HER2の増幅した抵抗性の乳癌における標的化療法若しくは化学療法に対する抵抗性を迂回させることを可能とするか、このような処置には現在適格ではないHER2の低い乳癌に対する標的化療法の適用分野を広げることを可能とするか、又は、HER3を発現しかつ標的化療法が依然として得られていない三種陰性乳癌を処置することを可能とするだろう。

0008

発明の概要
本発明は、ニューレグリン(NRG)に対して非競合的でアロステリックな抗ヒトHER3抗体、並びに診断法及び治療法におけるその使用に関する。

0009

発明の詳細な説明:
本発明者らは、リガンドのニューレグリンの存在下でHER3陽性細胞に対する独特特異性を有する、9F7−F11と命名されたマウス抗ヒトHER3抗体を特徴付けた。特に、9F7−F11/HER3の親和性はニューレグリンが存在する場合にも阻害されず(9F7−F11抗体は、ニューレグリンに対して非競合的である)、さらに、9F7−F11/HER3の親和性は、ニューレグリンがHER3陽性細胞の環境内に存在する場合にアロステリック的に高まる(9F7−F11はアロステリックな抗HER3抗体である)ことを本発明者らは示した。NRGに非競合的でアロステリックな9F7−F11抗体はMAPK、AKT及びp53経路を阻害し、細胞周期G1期を遮断し、細胞増殖を阻害し、腫瘍細胞アポトーシス回復させる。この独特な9F7−F11抗体は、NRG依存性の膵臓癌、及びHER2の増幅した乳癌又は三種陰性の乳癌の腫瘍増殖を低減させ、かつ、トラスツズマブ/ペルツズマブというHER2抗体の組合せ又は単独で使用されたHER2抗体よりも、HER2特異的抗体のペルツズマブと組み合わせた方がより効果的である。

0010

治療用9F7−F11抗体は、より限定されたHER3活性化機序に標的化する、リガンドに対して競合的な抗体又はアロステリック作用のないリガンドに対して非競合的な抗体よりも、幅広い範囲の腫瘍において臨床上の有用性を有するだろう。そのアロステリック効果により、NRGに対して非競合的な9F7−F11抗体は、ニューレグリンが腫瘍によって分泌されている場合(自己分泌)又は微小環境によって分泌されている場合(パラ分泌)、他の抗体よりも、リガンド依存性腫瘍に対してより効果的であろう。そのアロステリック効果により、9F7−F11抗体は、ニューレグリンのアップレギュレーションによって媒介される抵抗性(すなわち、結腸直腸癌におけるセツキシマブに対する抵抗性)が起こった場合により効果的であろう。そのアロステリック効果により、9F7−F11の結合は、リガンドによる活性化後に受容体がヘテロ二量体化した場合に、向上し得る。要するに、NRGに対して非競合的でアロステリックな抗ヒトHER3抗体の9F7−F11は、既存の治療用抗体臨床的に無効である容態を処置するのに使用され得る。

0011

結論すると、本発明の抗体は、先行技術に記載された抗HER3抗体を上回る以下の利点を提供する:
−それらはアロステリックな抗体である、
−それらはニューレグリンに対して非競合的である、
−それらは、より広範囲の作用を与える(リガンド非依存性癌及びリガンド依存性癌の両方に)、
−それらは、自己分泌又はパラ分泌リガンド依存性腫瘍に対してより効果的である(そのアロステリック効果による)、
−それらは、HER3リガンドのアップレギュレーションによって媒介される抵抗性(例えば、抗体又はTKI、又は化学療法、又は抗ホルモン剤に対する抵抗性)が起こった場合に、より効果的である、
−それらは、既存の治療用抗体が臨床的に無効である容態、例えば、三種陰性の乳癌、膵臓癌、他のニッチ(例えば腎細胞癌)を処置するのに使用され得る。

0012

定義:
「ニューレグリン」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、「ヘレグリン」という用語と同義語として使用されることが多い。ヘレグリンファミリーは、α、β及びγヘレグリン(Holmes et al., Science, 256: 1205-1210 (1992); 米国特許第5,641,869号;及びSchaefer et al. Oncogene 15: 1385-1394 (1997));neu分化因子(NDF)、グリア細胞増殖因子(GGF);アセチルコリン受容体誘導活性(ARIA);及び感覚及び運動ニューロン由来因子SMDF)を含む。概説については、Groenen et al. Growth Factors 11:235-257 (1994); Lemke, G. Molec. & Cell. Neurosci. 7:247-262(1996)及びLee etal. Pharm. Rev. 47:51-85 (1995); Falls and D. (2003). "Neuregulins: functions, forms, and signaling strategies." Experimental Cell Research 284(1): 14-30を参照されたい。

0013

「HER3」という用語は、Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:4905-4909(1990)に記載のようなヒトHER3受容体を指す;Kani et al., Biochemistry 44: 15842-857 (2005), Cho and Leahy, Science 297: 1330- 1333(2002)も参照されたい。HER3は「HER3」としても知られる。

0014

「抗ヒトHER3抗体」という用語は、ヒトHER3に対して指向される抗体を指す。

0015

本発明によると、「抗体」又は「免疫グロブリン」は同じ意味を有し、本発明において等価に使用される。本明細書において使用される「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。したがって、抗体という用語は、完全な抗体分子だけでなく、抗体断片、並びに、抗体及び抗体断片の変異体誘導体も含む)も包含する。天然の抗体では、2本の重鎖が互いにジスルフィド結合によって連結され、各々の重鎖は軽鎖にジスルフィド結合によって連結されている。ラムダ(l)及びカッパ(k)という2種類の軽鎖がある。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主な重鎖のクラス(又はアイソタイプ)が存在する:IgMIgDIgGIgA、及びIgE。各々の鎖は明確に異なる配列ドメインを含有する。軽鎖は、2つのドメイン、すなわち可変ドメイン(VL)及び定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は4つのドメイン、すなわち可変ドメイン(VH)及び3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3、まとめてCHと称される)を含む。軽鎖(VL)及び重鎖(VH)の両方の可変領域が、抗原に対する結合認識及び抗原に対する特異性を決定する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤移動、補体との結合、及びFc受容体(FcR)への結合などの重要な生物学的特性を付与する。Fv断片は、免疫ブログリンFab断片N末端部分であり、1本の軽鎖と1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体の結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性に存する。抗体の結合部位は、主に超可変領域又は相補性決定領域(CDR)に由来する残基から作られる。時折、非超可変領域又はフレームワーク領域(FR)に由来する残基が全体的なドメイン構造に影響を及ぼし、したがって結合部位に影響を及ぼす。相補性決定領域すなわちCDRは、天然免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性及び特異性を共に規定するアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は各々、L−CDR1、L−CDR2、L−CDR3、及びH−CDR1、H−CDR2、H−CDR3とそれぞれ称される3つのCDRを有する。それ故、抗原結合部位は、重鎖及び軽鎖の各々のV領域に由来するCDRセットを含む、6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)はCDRの間に挿入されたアミノ酸配列を指す。

0016

キメラ抗体」という用語は、9F7−F11抗体に由来する抗体のVHドメイン及びVLドメインと、ヒト抗体のCHドメイン及びCLドメインとを含む、抗体を指す。

0017

本発明によると、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体の可変領域のフレームワーク領域及び定常領域を有しているが、9F7−F11抗体のCDRを保持している、抗体を指す。

0018

Fab」という用語は、約50,000の分子量及び抗原結合活性を有し、プロテアーゼパパインでIgGを処理することによって得られた断片の中で、H鎖のN末端側の約半分及び完全なL鎖が、ジスルフィド結合を通して互いに結合している、抗体断片を示す。

0019

「F(ab’)2」という用語は、約100,000の分子量及び抗原結合活性を有し、プロテアーゼのペプシンでIgGを処理することによって得られた断片の中で、ヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合したFabよりも僅かに大きい、抗体断片を指す。

0020

「Fab’」という用語は、約50,000の分子量及び抗原結合活性を有し、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる、抗体断片を指す。

0021

一本鎖Fv(「scFv」)ポリペプチドは、ペプチドをコードするリンカーによって連結されたVHコード遺伝子とVLコード遺伝子を含む遺伝子融合体から通常発現される、共有結合で連結されたVH:VLヘテロ二量体である。「dsFv」は、ジスルフィド結合によって安定化されたVH:VLヘテロ二量体である。二価及び多価抗体断片は、一価scFvの会合によって自然発生的に形成され得るか、又は、二価sc(Fv)2のようにペプチドリンカーによって一価scFvを結合させることによって作製され得る。

0022

ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片を指し、該断片は、同じポリペプチド鎖(VH−VL)内において軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間で対を形成するには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対を形成させ、2つの抗原結合部位を作る。

0023

「精製された」及び「単離された」によって、本発明に記載の抗体又はヌクレオチド配列に言及されている場合、示された分子は、同種の他の生物学的な巨大分子の実質的な非存在下で存在することを意味する。本明細書において使用される「精製された」という用語は、同種の生物学的巨大分子が好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%存在することを意味する。特定のポリペプチドをコードする「単離された」核酸分子は、該ポリペプチドをコードしない他の核酸分子を実質的に含まない核酸分子を指すが;該分子は、該組成物の基本的な特徴に有害な影響を及ぼさないいくつかの追加の塩基又は部分を含んでいてもよい。

0024

本発明の抗体:
本発明は、単離されたニューレグリン(NRG)に対して非競合的でアロステリックな抗HER3抗体又はその断片を提供する。特に、本発明者らは、マウス抗HER3抗体(9F7−F11)を産生するハイブリドーマを生成した。本発明者らは、該9F7−F11モノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の可変ドメインをクローニングし特徴付け、したがって、表1に記載のような該抗体の相補性決定領域(CDR)ドメインを決定した。

0025

0026

それ故、本発明は、重鎖(可変ドメインが、H−CDR1については配列番号2、H−CDR2については配列番号3、及びH−CDR3については配列番号4からなる群より選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含む)を含む、HER3に対して特異性を有するモノクローナル抗体に関する。

0027

本発明はまた、軽鎖(可変ドメインが、L−CDR1については配列番号6、L−CDR2については配列番号7、及びL−CDR3については配列番号8からなる群より選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含む)を含む、HER3に対して特異性を有するモノクローナル抗体に関する。

0028

本発明のモノクローナル抗体は、重鎖(可変ドメインが、H−CDR1については配列番号2、H−CDR2については配列番号3、及びH−CDR3については配列番号4からなる群より選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含む)及び軽鎖(可変ドメインが、L−CDR1については配列番号6、L−CDR2については配列番号7、及びL−CDR3については配列番号8からなる群より選択された配列を有する少なくとも1つのCDRを含む)を含み得る。

0029

特に、本発明は、H−CDR1領域に配列番号2、H−CDR2領域に配列番号3、及びH−CDR3領域に配列番号4を含む重鎖可変領域;並びに、L−CDR1領域に配列番号6、L−CDR2領域に配列番号7、及びL−CDR3領域に配列番号8を含む軽鎖可変領域を含む、抗HER3モノクローナル抗体を提供する。

0030

1つの特定の実施態様では、該抗体の重鎖可変領域は、配列番号1として示されるアミノ酸配列を有し、及び/又は、軽鎖可変領域は、配列番号5として示されるアミノ酸配列を有する。

0031

別の実施態様では、本発明のモノクローナル抗体は、キメラ抗体、好ましくはキメラマウス/ヒト抗体である。特に、該マウス/ヒトキメラ抗体は、上記に定義されているような9F7−F11抗体の可変ドメインを含み得る。

0032

別の実施態様では、本発明のモノクローナル抗体は、ヒト化抗体である。特に、該ヒト化抗体では、可変ドメインは、ヒトアクセプターフレームワーク領域、及び場合により存在する場合にはヒト定常ドメイン、及び非ヒトドナーCDR、例えば上記に定義されているようなマウスCDRを含む。

0033

本発明はさらに、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv、scFv、sc(Fv)2及びダイアボディを含むがこれらに限定されない、HER3に対して指向される該抗体の抗HER3断片を提供する。

0034

別の態様では、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7及び配列番号8からなる群より選択された配列を有する、ポリペプチドに関する。

0035

本発明の抗体を作製する方法
本発明の抗ヒトHER3抗体は、任意の化学的技術、生物学的技術、遺伝子的技術、又は酵素的技術を単独で又は組み合わせたものを含むがこれらに限定されない、当技術分野において公知の任意の技術によって作製され得る。

0036

所望の配列のアミノ酸配列が分かれば、当業者は、標準的なポリペプチド作製技術によって、該抗体を容易に作製することができる。例えば、それらは、周知の固相法を使用して、好ましくは市販のペプチド合成装置(例えば、Applied Biosystems、フォスターシティ、カリフォルニアによって製造された装置)を使用して、製造業者説明書に従って合成され得る。あるいは、本発明の抗体は、当技術分野において周知の組換えDNA技術によって合成され得る。例えば、抗体は、抗体をコードするDNA配列発現ベクターに組み込み、このようなベクターを、所望の抗体を発現するであろう適切な真核細胞宿主又は原核細胞宿主に導入した後にDNA発現産物として得ることができ、それから後で周知の技術を使用して単離することができる。

0037

したがって、本発明のさらなる目的は、本発明に記載の抗体をコードする核酸配列に関する。

0038

1つの特定の実施態様では、本発明は、ハイブリドーマ9F7−F11から得ることのできる抗体のVHドメイン、又はハイブリドーマ9F7−F11から得ることのできる抗体のVLドメインをコードする核酸配列に関する。

0039

1つの特定の実施態様では、本発明は、配列番号9の配列を含む核酸配列に関する。

0040

1つの特定の実施態様では、本発明は、配列番号10の配列を含む核酸配列に関する。

0041

0042

典型的には、該核酸DNA分子又はRNA分子であり、これを任意の適切なベクター、例えばプラスミドコスミドエピソーム人工染色体ファージ、又はウイルスベクターに含め得る。

0043

「ベクター」、「クローニングベクター」及び「発現ベクター」という用語はビヒクルを意味し、これによってDNA配列又はRNA配列(例えば外来遺伝子)を宿主細胞に導入することができ、これにより宿主を形質転換させ、導入された配列の発現(例えば転写及び翻訳)を促進することができる。

0044

よって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。

0045

このようなベクターは、被験者への投与時に該抗体の発現を引き起こすか又は指令するための、調節配列、例えばプロモーターエンハンサー終結因子などを含み得る。動物細胞用の発現ベクターに使用されるプロモーター及びエンハンサーの例としては、SV40初期プロモーター及びエンハンサー(Mizukami T. et al. 1987)、モロニーマウス白血病ウイルスLTRプロモーター及びエンハンサー(Kuwana Y et al. 1987)、免疫グロブリンH鎖のプロモーター(Mason JO et al. 1985)及びエンハンサー(Gillies SD et al. 1983)などが挙げられる。

0046

ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を挿入し発現させることができる限りにおいて、動物細胞用のあらゆる発現ベクターを使用することができる。適切なベクターの例としては、pAGE107(Miyaji H et al. 1990)、pAGE103(Mizukami T et al. 1987)、pHSG274(Brady G et al. 1984)、pKCR(O'Hare K et al. 1981)、pSG1βd2−4—(Miyaji H et al. 1990)などが挙げられる。プラスミドの他の例としては、複製起点を含む複製プラスミド、又は、組込み用プラスミド、例えばpUC、pcDNA、pBRなどが挙げられる。ウイルスベクターの他の例としては、アデノウイルスベクターレトロウイルスベクターヘルペスウイルスベクター、及びAAVベクターが挙げられる。このような組換えウイルスは、当技術分野において公知の技術によって、例えばパッケージング細胞トランスフェクションによって、又は、ヘルパープラスミド若しくはウイルスを用いての一過性トランスフェクションによって産生され得る。ウイルスパッケージング細胞の典型例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などが挙げられる。このような複製欠陥組換えウイルスを産生するための詳細なプロトコールは例えば、国際公開公報第95/14785号、国際公開公報第96/22378号、米国特許第5,882,877号、米国特許第6,013,516号、米国特許第4,861,719号、米国特許第5,278,056号、及び国際公開公報第94/19478号に見られ得る。

0047

本発明のさらなる目的は、本発明に記載の核酸及び/又はベクターによってトランスフェクト、感染、又は形質転換された宿主細胞に関する。

0048

「形質転換」という用語は、「外来」(すなわち外因性又は細胞外)遺伝子のDNA配列又はRNA配列を宿主細胞に導入することを意味し、これによって宿主細胞は導入された遺伝子又は配列を発現して、所望の物質、典型的には導入された遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質又は酵素を産生する。導入されたDNA又はRNAを受け取り発現する宿主細胞は「形質転換」されている。

0049

本発明の核酸を使用して、適切な発現系において本発明の抗体を産生し得る。「発現系」という用語は、例えばベクターによって保有され宿主細胞に導入された外来DNAによってコードされるタンパク質の発現のために適した条件下での宿主細胞と適合性ベクターを意味する。

0050

一般的な発現系としては、E.coli宿主細胞とプラスミドベクター昆虫宿主細胞とバキュロウイルスベクター、及び哺乳動物宿主細胞とベクターが挙げられる。宿主細胞の他の例としては、以下に限定されないが、原核細胞(例えば細菌)及び真核細胞(例えば酵母細胞哺乳動物細胞昆虫細胞植物細胞など)が挙げられる。具体例としては、E.coli、クリベロマイセス又はサッカロマイセス酵母哺乳動物細胞株(例えばVero細胞CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)、並びに、初代又は樹立された哺乳動物細胞培養液(例えば、リンパ芽球線維芽細胞胚細胞上皮細胞神経細胞脂肪細胞などから産生される)が挙げられる。例としてはまた、マウスSP2/0−Ag14細胞(ATCCCRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(本明細書において以後、「DHFR遺伝子」と称される)が欠損しているCHO細胞(Urlaub G et al; 1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、本明細書において以後、「YB2/0細胞」と称される)なども挙げられる。

0051

本発明はまた、本発明に記載の抗体を発現している組換え宿主細胞を産生する方法に関し、該方法は、(i)上記のような組換え核酸又はベクターをインビトロ又はエクスビボコンピテントな宿主細胞に導入する工程、(ii)得られた組換え宿主細胞をインビトロ又はエクスビボで培養する工程、及び(iii)場合により、該抗体を発現及び/又は分泌する細胞を選択する工程を含む。このような組換え宿主細胞は、本発明の抗体の産生に使用することができる。

0052

別の特定の実施態様では、該方法は、
(i)ハイブリドーマ9F7−F11を、16D3−C1抗体の発現を可能とするに適した条件下で培養する工程;及び
(ii)発現された抗体を回収する工程
を含む。

0053

本発明の抗体は、例えば、プロテインAセファロースヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーゲル電気泳動透析、又はアフィニティクロマトグラフィーなどの、従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地から適切に分離される。

0054

1つの特定の実施態様では、本発明のヒトキメラ抗体は、以前に記載されているようにVLドメイン及びVHドメインをコードする核酸配列を得、それらを、ヒト抗体CH及びヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞用の発現ベクターに挿入することによってヒトキメラ抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを動物細胞に導入することによってコード配列を発現させることによって産生され得る。

0055

ヒトキメラ抗体のCHドメインとしては、それはヒト免疫グロブリンに属する任意の領域であり得るが、IgGクラスのものが適し、IgGクラスに属しているサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のいずれか1つを使用することができる。また、ヒトキメラ抗体のCLとしては、それはIgに属する任意の領域であり得、κクラス又はλクラスのものを使用することができる。

0056

キメラ抗体の産生法は、当技術分野において周知である従来の組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション技術を含む(Morrison SL. et al.(1984)及び特許文書の米国特許第5,202,238号;及び米国特許第5,204,244号を参照されたい)。

0057

本発明のヒト化抗体は、以前に記載されているようにCDRドメインをコードする核酸配列を得、それらを(i)ヒト抗体と同一な重鎖定常領域及び(ii)ヒト抗体と同一な軽鎖定常領域をコードする遺伝子を有する動物細胞用の発現ベクターに挿入することによってヒト化抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを動物細胞に導入することによって遺伝子を発現させることによって産生され得る。

0058

ヒト化抗体発現ベクターは、抗体重鎖をコードする遺伝子と抗体軽鎖をコードする遺伝子が別々のベクター上に存在するタイプか、又は、両方の遺伝子が同じベクターに存在するタイプ(タンデム型)のいずれかであってもよい。ヒト化抗体発現ベクターの構築のし易さ、動物細胞への導入のし易さ、動物細胞内での抗体のH鎖とL鎖の発現レベルバランスの観点では、タンデム型のヒト化抗体発現ベクターが好ましい(Shitara K et al. 1994)。タンデム型のヒト化抗体発現ベクターの例としては、pKANTEX93(国際公開公報第97/10354号)、pEE18などが挙げられる。

0059

従来の組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション技術に基づいたヒト化抗体の作製法は、当技術分野において周知である(例えば、Riechmann L. et al. 1988; Neuberger MS. et al. 1985を参照)。抗体は、例えば、CDR移植法(欧州特許第239,400号;PCT公開公報の国際公開公報第91/09967号;米国特許第5,225,539号;第5,530,101号;及び第5,585,089号)、化粧張り(veneering)法又は表面再構成(resurfacing)法(欧州特許第592,106号;欧州特許第519,596号;Padlan EA (1991);StudnickaGMet al. (1994);Roguska MA. et al.(1994))、及びチェーンシャッフリング法(米国特許第5,565,332号)などをはじめとする当技術分野において公知の様々な技術を使用してヒト化され得る。このような抗体の調製のための一般的な組換えDNA技術も公知である(欧州特許出願の欧州特許第125023号及び国際特許出願の国際公開公報第96/02576号を参照)。

0060

本発明のFabは、ヒトHER3と特異的に反応する抗体をプロテアーゼのパパインで処理することによって得ることができる。また、Fabは、抗体のFabをコードするDNAを、原核細胞発現系又は真核細胞発現系のためのベクターに挿入し、該ベクターを原核細胞又は真核細胞(適宜)に導入してFabを発現させることによっても産生され得る。

0061

本発明のF(ab’)2は、ヒトHER3と特異的に反応する抗体をプロテアーゼのペプシンで処理することによって得ることができる。また、F(ab’)2は、チオエーテル結合又はジスルフィド結合を介して下記のFab’を結合させることによっても作製され得る。

0062

本発明のFab’は、ヒトHER3と特異的に反応するF(ab’)2を、還元剤ジチオトレイトールで処理することによって得ることができる。また、Fab’は、抗体のFab’断片をコードするDNAを、原核細胞用の発現ベクター又は真核細胞用の発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核細胞又は真核細胞(適宜)に導入してその発現を行なうことによっても産生され得る。

0063

本発明のscFvは、以前に記載されているようにVHドメイン及びVLドメインをコードするcDNAを得、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核細胞用の発現ベクター又は真核細胞用の発現ベクターに挿入し、その後、該発現ベクターを原核細胞又は真核細胞(適宜)に導入してscFvを発現させることによって産生され得る。ヒト化scFv断片を作製するために、CDR移植法と呼ばれる周知の技術が使用され得、これは、ドナーscFv断片から相補性決定領域(CDR)を選択し、それらを3次元構造が公知であるヒトscFv断片フレームワークに移植することを含む(例えば、国際公開公報第98/45322号;国際公開公報第87/02671号;米国特許第5,859,205号;米国特許第5,585,089号;米国特許第4,816,567号;欧州特許第0173494号を参照)。

0064

本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列の改変が考えられる。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を向上させることが望ましい場合がある。ヒト化抗体が、非ヒト動物に由来する抗体のVH及びVL中のCDRのみを、ヒト抗体のVH及びVLのFRに単に移植することによって産生される場合、抗原結合活性は、非ヒト動物に由来する元来の抗体と比較して低下することが知られている。非ヒト抗体のCDR中だけでなくFR中の、VH及びVLのいくつかのアミノ酸残基も、抗原結合活性に直接的に又は間接的に関連していると考えられる。したがって、これらのアミノ酸残基を、ヒト抗体のVH及びVLのFRに由来する異なるアミノ酸残基で置換することにより、結合活性は減少するだろう。問題を解決するために、ヒトCDRを移植された抗体において、ヒト抗体のVH及びVLのFRのアミノ酸配列の中で、抗体との結合に直接関連しているか、又はCDRのアミノ酸残基と相互作用しているか、又は抗体の3次元構造を維持し、かつ抗原との結合に直接関連しているアミノ酸残基を同定するための試みを行なわなければならない。低下した抗原結合活性は、同定されたアミノ酸を、非ヒト動物に由来する元来の抗体のアミノ酸残基で置換することによって上昇させることができた。

0065

本発明の抗体の構造、及びそれらをコードしているDNA配列に改変及び変化を施し得、所望の特徴を有する抗体をコードする機能的分子が依然として得られるだろう。

0066

アミノ酸配列を変化させる際に、アミノ酸の疎水性指標が考慮され得る。タンパク質に相互作用的生物学的機能を付与する際のアミノ酸の疎水性指標の重要性は、一般的に当技術分野において理解されている。アミノ酸の相対的な親水性疎水性特徴は、結果として生じるタンパク質の二次構造に寄与し、次に、該タンパク質と他の分子(例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定することが認められている。各々のアミノ酸は、その疎水性及び荷電の特徴に基づいて疎水性指標を割り当てられている。それらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システインシスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);及びアルギニン(−4.5)である。

0067

本発明のさらなる目的はまた、本発明の抗体の機能保存的な変異体も包含する。

0068

機能保存的変異体」は、タンパク質又は酵素中の所与のアミノ酸残基を、ポリペプチドの全体的なコンフォメーション及び機能を改変させることなく変化させたものであり、これには、アミノ酸を、類似した特性(例えば、極性水素結合能酸性塩基性、疎水性、芳香族性など)を有するアミノ酸で置換することが挙げられるがこれに限定されない。保存されたと示されているもの以外のアミノ酸は、タンパク質内で異なっていてもよく、よって、類似の機能を有するいずれか2つのタンパク質間タンパク質配列又はアミノ酸配列の類似率は異なり得、例えば、アラインメントスキームに従って、例えばCluster法などによって決定されたところ70%〜99%であり得、類似率はMEGALIGNアルゴリズムに基づく。「機能保存的変異体」はまた、BLAST又はFASTAアルゴリズムによって決定されるアミノ酸同一率の、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%を有し、それと比較する天然タンパク質又は親タンパク質と同じ又は実質的に類似した特性又は機能を有する、ポリペプチドも含む。

0069

2つのアミノ酸配列は、アミノ酸の80%超、好ましくは85%超、好ましくは90%超が同一であるか、又は、より短い配列の完全長にわたって約90%超、好ましくは95%超が類似(機能的に同一)である場合に、「実質的に相同」又は「実質的に類似」している。好ましくは、類似の又は相同な配列は、例えばGCG(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7, Madison, Wisconsin)パイルアッププログラム、又はBLAST、FASTAなどの配列比較アルゴリズムのいずれかを使用したアラインメントによって同定される。

0070

例えば、タンパク質構造内の特定のアミノ酸を、認められ得る活性の低下を伴うことなく、他のアミノ酸で置換してもよい。タンパク質の相互作用能及び性質は、タンパク質の生物学的な機能的活性を規定するので、タンパク質配列内、および勿論そのDNAコード配列内の特定のアミノ酸の置換を行なうことができ、それにも関わらず似たような特性を有するタンパク質が得られる。したがって、認められ得るその生物学的活性の低下を伴うことなく、本発明の抗体配列、又は該抗体をコードする対応するDNA配列に様々な変化を行ない得ることが考えられる。

0071

特定のアミノ酸を、類似の疎水性指標又はスコアを有する他のアミノ酸で置換し得、それでも依然として類似した生物学的活性を有するタンパク質が得られ、すなわち、依然として生物学的に機能的に等価なタンパク質が得られるであろうことは当技術分野において公知である。

0072

それ故、上記に概略が示されているように、アミノ酸の置換は一般的に、アミノ酸の側鎖の置換基の相対的な類似性、例えばその疎水性、親水性、荷電、サイズなどに基づく。様々な前記の特徴を考慮に入れた例示的な置換は当業者には周知であり、これには、アルギニンとリジン;グルタミン酸とアスパラギン酸;セリンとトレオニン;グルタミンとアスパラギン;及びバリンとロイシンとイソロイシンが挙げられる。

0073

したがって、本発明はまた、重鎖を含む抗体を提供し、
可変ドメインは、
−配列番号2として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するH−CDR1、
−配列番号3として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するH−CDR2、
−配列番号4として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するH−CDR3、
−配列番号6として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するL−CDR1、
−配列番号7として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するL−CDR2、
−配列番号8として示される配列に対して少なくとも90%又は95%の同一率を有するL−CDR3
を含み、
−重鎖(可変ドメインが、H−CDR1については配列番号2、H−CDR2については配列番号3、及びH−CDR3については配列番号4を含む)及び軽鎖(可変ドメインが、L−CDR1については配列番号6、L−CDR2については配列番号7、及びL−CDR3については配列番号8を含む)を含む抗体と実質的に同じ親和性で、より好ましくはマウス抗HER3抗体9F7−F11と実質的に同じ親和性で、HER3に特異的に結合する。

0074

前記抗体は、当技術分野において公知の任意の方法によって特異的な結合についてアッセイされ得る。多くの異なる競合結合アッセイフォーマット(群)をエピトープビニングのために使用することができる。使用され得るイムノアッセイとしては、ウェスタンブロットラジオイムノアッセイELISA、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降素アッセイ、ゲル拡散沈降素アッセイ、免疫放射定量アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ、及び補体結合アッセイなどの技術を使用した競合アッセイステムが挙げられるがこれらに限定されない。このようなアッセイは、当技術分野において慣用的でありかつ周知である(例えば、Ausubel et al., eds, 1994 Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, John Wiley & sons, Inc., New Yorkを参照)。例えば、ビアコア登録商標)(GE Healthcare、ピスキャタウェイ、NJ)は、モノクローナル抗体のパネルをエピトープビニングするために慣用的に使用される様々な表面プラズモン共鳴アッセイフォーマットの1つである。さらに、慣用的な交差遮断アッセイ、例えばAntibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow and David Lane, 1988に記載のアッセイを行なうことができる。

0075

本発明の工学操作された抗体としては、例えば抗体の特性を向上させるために、VH及び/又はVL内のフレームワーク残基に改変が行なわれている抗体が挙げられる。典型的には、このようなフレームワークの改変は、抗体の免疫原性を減少させるために行なわれる。例えば、1つのアプローチは、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖系列上の配列へと「復帰突然変異」させることである。より具体的には、体細胞突然変異を受けた抗体は、該抗体が由来する生殖系列上の配列とは異なるフレームワーク残基を含有している可能性が高い。このような残基は、抗体のフレームワーク配列を、該抗体が由来する生殖系列上の配列と比較することによって同定され得る。フレームワーク領域の配列をその生殖系列上の配置へと戻すために、体細胞突然変異を、例えば部位突然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発によって生殖系列上の配列へと「復帰突然変異」させることができる。このような「復帰突然変異した」抗体も本発明によって包含されることを意図する。別のタイプのフレームワーク改変は、フレームワーク領域内、又はさらには1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基を突然変異させて、T細胞エピトープを除去し、これにより抗体の起こり得る免疫原性を低減させることを含む。このアプローチはまた、「脱免疫化」とも称され、Carr et alによる米国特許公開公報第20030153043号にさらに詳細に記載されている。

0076

フレームワーク又はCDR領域内に行なわれた改変に加えて又はその代わりに、本発明の抗体を、典型的には、抗体の1つ以上の機能的特性、例えば血清中半減期、補体との結合、Fc受容体への結合、及び/又は抗原依存性細胞障害などを改変させるために、Fc領域内に改変を含むように工学操作し得る。さらに、本発明の抗体は、抗体の1つ以上の機能的特性を再度改変させるために、化学的に修飾され得るか(例えば1つ以上の化学的部分を抗体に付着させることができる)、又はそのグリコシル化を改変させるために改変され得る。これらの各々の実施態様は、以下にさらに詳細に記載される。Fc領域内の残基の番号付けは、KabatのEUインデックスの番号付けである。

0077

1つの実施態様では、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が改変されるように、例えば増加又は減少するように改変されている。このアプローチは、Bodmer et alによる米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖と重鎖の会合を促進するために、又は抗体の安定性を上昇若しくは低下させるために改変されている。

0078

別の実施態様では、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的な半減期を減少させるように突然変異されている。より具体的には、抗体の、天然Fc−ヒンジドメインブドウ球菌プロテインA(SpA)への結合と比較して、SpAへの結合が損なわれるように、1つ以上のアミノ酸の突然変異が、Fc−ヒンジ断片のCH2−CH3ドメインの界面領域に導入されている。このアプローチは、Ward et alによる米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。

0079

別の実施態様では、抗体は、その生物学的半減期延ばすように改変されている。様々なアプローチが可能である。例えば、Ward et alによる米国特許第6,277,375号に記載のように、以下の1つ以上の突然変異を導入することができる:T252L、T254S、T256F。あるいは、生物学的半減期を延ばすために、抗体を、CH1又はCL領域内で改変させて、Presta et alによる米国特許第5,869,046号及び第6,121,022号に記載のように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから採用されたサルベージ受容体に結合するエピトープを含有させることができる。

0080

さらに他の実施態様では、抗体のエフェクター機能を改変させるために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することによってFc領域を改変する。例えば、1つ以上のアミノ酸を、異なるアミノ酸残基で置換することができ、これにより、抗体は、エフェクターリガンドに対して改変された親和性を有するが、親抗体の抗原結合能は保持している。エフェクターリガンド(これに対する親和性が改変される)は、例えば、Fc受容体又は補体のC1成分である。このアプローチは、どちらもWinter et alによる米国特許第5,624,821号及び第5,648,260号にさらに詳細に記載されている。

0081

別の実施態様では、アミノ酸残基から選択された1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置換することができ、これにより、抗体は、改変されたC1qへの結合及び/又は低減された若しくは消失した補体依存性細胞障害(CDC)を有する。このアプローチは、ldusogie et alによる米国特許第6,194,551号にさらに詳細に記載されている。

0082

別の実施態様では、1つ以上のアミノ酸残基を改変させて、これにより、抗体の補体への結合能を改変させる。このアプローチは、Bodmer et alによるPCT公開公報の国際公開公報第94/29351号にさらに記載されている。

0083

さらに別の実施態様では、Fc領域は、抗体依存性細胞障害ADCC)を媒介する抗体の能力を高めるために、及び/又はFc受容体に対する抗体の親和性を高めるために、1つ以上のアミノ酸を改変することによって改変されている。このアプローチは、PrestaによるPCT公開公報の国際公開公報第00/42072号にさらに記載されている。さらに、FcγRI、FcγRII、FcγRIII及びFcRnに対するヒトIgG1上の結合部位がマッピングされ、改善された結合を有する変異体が記載されている(Shields, R. L. et al., 2001 J. Biol. Chen. 276:6591-6604、国際公開公報第2010106180号を参照)。

0084

さらに別の実施態様では、抗体のグリコシル化が改変されている。例えば、脱グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち抗体はグリコシル化を欠失している)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を高めるために改変され得る。このような糖鎖の改変は、例えば、抗体配列内の1つ以上のグリコシル化部位を改変させることによって成し遂げられ得る。例えば、1つ以上の可変領域のフレームワークのグリコシル化部位を消失させ、これによりその部位におけるグリコシル化を消失させるような、1つ以上のアミノ酸の置換を行なうことができる。このような脱グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を高め得る。このようなアプローチは、Co et alによる米国特許第5,714,350号及び第6,350,861号にさらに詳細に記載されている。

0085

追加的又は代替的に、減少した量のフコシル残基を有するか若しくは全くフコシル残基を有さない低フコシル化若しくは非フコシル化抗体、又は、バイクティングGlcNac構造が増加している抗体などの、改変されたタイプのグリコシル化を有する抗体を作製することができる。このような改変されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能を高めることが実証されている。このような糖鎖の改変は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現させることによって成し遂げられ得る。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は当技術分野において記載され、これを本発明の組換え抗体を発現するための宿主細胞として使用して、これにより改変されたグリコシル化を有する抗体を産生することができる。例えば、Hang et al.による欧州特許第1,176,195号は、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞株を記載し、よって、このような細胞株において発現された抗体は低フコシル化を示すか、又は、フコシル残基を欠失している。それ故、1つの実施態様では、本発明の抗体は、低フコシル化又は非フコシル化パターンを示す細胞株、例えば、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現が欠損した哺乳動物細胞株における組換え発現によって産生され得る。PrestaによるPCT公開公報の国際公開公報第03/035835号は、フコースをAsn(297)に連結された糖鎖に付着させる能力が低下した、変異CHO細胞株であるLecl3細胞を記載し、ここでもまたその結果、その宿主細胞内で発現された抗体の低フコシル化が起こる(Shields, R.L. et al., 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。Umana et al.によるPCT公開公報の国際公開公報第99/54342号は、糖タンパク質を改変するグリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように工学操作された細胞株を記載し、よって、工学操作された細胞株において発現された抗体は、増加したバイセクティングGlcNac構造を示し、その結果、抗体のADCC活性は上昇した(Umana et al., 1999 Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。Eureka Therapeutics社はさらに、フコシル残基を欠失した改変された哺乳動物のグリコシル化パターンを有する抗体を産生することのできる遺伝子工学操作されたCHO哺乳動物細胞を記載する(http://www.eurekainc.com/a&boutus/companyoverview.html)。あるいは、哺乳動物に似たグリコシル化パターンについて工学操作されかつグリコシル化パターンとしてフコースを欠失している抗体を産生することができる、酵母又は糸状菌において本発明の抗体を産生することができる(例えば欧州特許第1297172B1号を参照)。

0086

本発明によって考えられる本明細書における抗体の別の改変は、PEG化である。例えば抗体の生物学的(例えば血清中)半減期を延ばすために、抗体をPEG化することができる。抗体をPEG化するために、抗体又はその断片を典型的には、1つ以上のPEG基が抗体又は抗体断片と付着するようになる条件下で、ポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体と反応させる。PEG化は、反応性PEG分子(又は、類似した反応性の水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって行なうことができる。本明細書において使用される「ポリエチレングリコール」という用語は、他のタンパク質を誘導体化するために使用されたあらゆる形態のPEG、例えばモノ(C1−C10)アルコキシ−又はアリールオキシ−ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール−マレイミドを包含することを意図する。特定の実施態様では、PEG化しようとする抗体は、脱グリコシル化抗体である。タンパク質をPEG化するための方法は当技術分野において公知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、Nishimura et al.による欧州特許第0154316号及びIshikawa et al.による欧州特許第0401384号を参照されたい。

0087

本発明によって考えられる抗体の別の改変は、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域と、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン又はその断片との、コンジュゲート又はタンパク質融合であり、これにより結果として生じる分子の半減期は延長される。このようなアプローチは、例えば、Ballance et al. 欧州特許第0322094号に記載されている。

0088

別の可能性は、本発明の抗体の少なくとも抗原結合領域と、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミンに結合することのできるタンパク質との融合であり、これにより結果として生じる分子の半減期は延長される。このようなアプローチは、Nygren et al.、欧州特許第0486525号に記載されている。

0089

免疫複合体
本発明の抗体を、検出可能な標識とコンジュゲートさせて、抗HER3免疫複合体を形成することができる。適切な検出可能な標識としては、例えば、放射性同位体蛍光標識化学発光標識酵素標識生物発光標識、又はコロイド金が挙げられる。このような検出可能なように標識された免疫複合体を作製及び検出する方法は当業者には周知であり、より詳細に以下に記載されている。

0090

検出可能な標識は、オートラジオグラフィーによって検出される放射性同位体であり得る。本発明の目的のために特に有用である同位体は、3H、125I、131I、35S及び14Cである。

0091

抗HER3免疫複合体は、蛍光化合物を用いても標識することができる。蛍光で標識された抗体の存在は、免疫複合体を適切な波長の光に曝し、結果として生じた蛍光を検出することによって決定される。蛍光標識化合物としては、フルオレセインイソチオシアネートローダミンフィコエリトリンフィコシアニンアロフィコシアニンo−フタルアルデヒド、及びフルオレサミンが挙げられる。

0092

あるいは、抗HER3免疫複合体は、抗体を化学発光化合物と結合させることによって検出可能なように標識され得る。化学発光でタグ化された免疫複合体の存在は、化学反応の経過中に生じる発光の存在を検出することによって決定される。化学発光標識化合物の例としては、ルミノールイソルミノール、芳香族アクリジニウムエステルイミダゾールアクリジニウム塩、及びシュウ酸エステルが挙げられる。

0093

同様に、生物発光化合物を使用して、本発明の抗HER3免疫複合体を標識することができる。生物発光は、生物学的系において見られる化学発光の一種であり、この系において触媒タンパク質は化学発光反応の効率を高める。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識に有用な生物発光化合物としては、ルシフェリンルシフェラーゼ及びエクオリンが挙げられる。

0094

あるいは、抗HER3免疫複合体は、抗ヒトHER3モノクローナル抗体を酵素に連結させることによって検出可能なように標識され得る。抗HER3抗体−酵素のコンジュゲートを適切な基質の存在下でインキュベートする場合、酵素部分は基質と反応して、化学部分を生成し、これを、例えば分光光度的な方法、蛍光定量的な方法、又は目視による方法によって検出することができる。多重特異的な免疫複合体を検出可能なように標識するために使用され得る酵素の例としては、β−ガラクトシダーゼグルコースオキシダーゼペルオキシダーゼ、及びアルカリホスファターゼが挙げられる。

0095

当業者は、本発明に従って使用され得る他の適切な標識も知っているだろう。抗ヒトHER3モノクローナル抗体へのマーカー部分の結合は、当技術分野において公知の標準的な技術を使用して成し遂げられ得る。これに関しての典型的な方法は、Kennedy et al., Clin. Chim. Acta 70:1, 1976; Schurs et al., Clin. Chim. Acta 81:1, 1977; Shih et al., Int'l J. Cancer 46:1101, 1990; Stein et al., Cancer Res. 50:1330, 1990;及びColigan、前記によって記載されている。

0096

さらに、免疫化学的な検出の簡便性及び多用途性は、アビジンストレプトアビジン、及びビオチンとコンジュゲートさせておいた抗ヒトHER3モノクローナル抗体を使用することによって増強され得る(例えば、Wilchek et al. (eds.), “Avidin-Biotin Technology,” Methods In Enzymology (Vol. 184) (Academic Press 1990); Bayer et al., “Immunochemical Applications of Avidin-Biotin Technology,” in Methods In Molecular Biology (Vol. 10) 149-162(Manson, ed., The Humana Press, Inc. 1992)を参照)。

0097

イムノアッセイを実施するための方法は十分に確立されている(例えば、Cook and Self, “Monoclonal Antibodies in Diagnostic Immunoassays,” in Monoclonal Antibodies: Production, Engineering, and Clinical Application 180-208 (Ritter and Ladyman, eds., Cambridge University Press 1995); Perry, “The Role of Monoclonal Antibodies in the Advancement of Immunoassay Technology,” in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications 107-120 (Birch and Lennox, eds., Wiley-Liss, Inc. 1995); Diamandis, Immunoassay (Academic Press, Inc. 1996)を参照)。

0098

別の態様では、本発明は、抗ヒトHER3モノクローナル抗体−薬物のコンジュゲートを提供する。本明細書において使用される「抗ヒトHER3モノクローナル抗体−薬物のコンジュゲート」は、治療剤にコンジュゲートされた本発明に記載の抗ヒトHER3モノクローナル抗体を指す。このような抗ヒトHER3モノクローナル抗体−薬物のコンジュゲートは、被験者に、例えばHER3を発現している癌を有する被験者に投与された場合、典型的には単独で、しかしまた他の治療剤と組み合わせて投与された場合でも、HER3発現細胞に対して臨床的に有益な効果をもたらす。

0099

典型的な実施態様では、抗ヒトHER3モノクローナル抗体を細胞障害性薬剤にコンジュゲートさせ、よって、結果として生じた抗体−薬物のコンジュゲートは、細胞によって取り込まれるか又は内部移行した場合に、HER3発現細胞(例えばHER3発現癌細胞)に対して細胞障害作用又は細胞静止作用を発揮する。抗体へのコンジュゲートのために特に適した部分は、化学療法剤、プロドラッグ変換酵素、放射性同位体若しくは放射性化合物、又は毒素である。例えば、抗ヒトHER3モノクローナル抗体を、化学療法剤又は毒素などの細胞障害性薬剤(例えば細胞静止剤又は細胞致死剤、例えばアブリンリシンA、シュードモナス外毒素、又はジフテリア毒素など)にコンジュゲートすることができる。

0101

個々の細胞障害性薬剤としては、例えば、アンドロゲンアントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジンアザチオプリンブレオマイシンブスルファンブチオニンスルホキシミンカンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチンBSNU)、CC−1065(Li et al., Cancer Res. 42:999-1004, 1982)、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチンシクロホスファミドシタラビンシチジンアラビノシドサイトカラシンBダカルバジンダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ダウノルビシンデカルバジンドセタキセルドキソルビシンエストロゲン5−フルオロデオキシウリジンリン酸エトポシド(VP−16)、5−フルオロウラシルグラミシジンD、ヒドロキシ尿素イダルビシンイホスファミドイリノテカンロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリンメトトレキサートミスラマイシン、マイトマイシンCミトキサントロンニトロイミダゾールパクリタキセルプリカマイシン、プロカルバジンストレプトゾトシン、テノポシド(VM−26)、6−チオグアニンチオテパトポテカンビンブラスチンビンクリスチン、及びビノレルビンが挙げられる。

0102

特に適した細胞障害性薬剤としては、例えば、ドラスタチン(例えばオーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE)、DNA小溝結合剤(例えばエンジイン及びレキシトロプシン)、デュオカルマイシン、タキサン(例えばパクリタキセル及びドセタキセル)、ピューロマイシン、ビンカアルカロイド、CC−1065、SN−38(7−エチル−10−ヒドロキシ−カンプトテシン)、トポテカン、モルホリノ−ドキソルビシン、リゾキシンシアノモルホリノ−ドキソルビシン、エキノマイシンコンブレタスタチン、ネトロプシン、エトチロンA及びB、エストラムスチンクリプトフィシン、セマドチン、メイタンシノイドディスコデルモリド、エリュテロビン、及びミトキサントロンが挙げられる。

0103

特定の実施態様では、細胞障害性薬剤は、従来の化学療法剤、例えば、ドキソルビシン、パクリタキセル、メルファラン、ビンカアルカロイド、メトトレキサート、マイトマイシンC、又はエトポシドである。さらに、CC−1065類似体カリケアマイシンメイタンシン、ドラスタチン10の類似体、リゾキシン、及びパリトキシンなどの強力な薬剤を抗HER3発現抗体に連結させることができる。

0104

具体的な変法では、細胞障害性薬剤又は細胞静止剤は、オーリスタチンE(当技術分野においてドラスタチン−10としても知られる)又はその誘導体である。典型的には、オーリスタチンE誘導体は、例えば、オーリスタチンEとケト酸との間に形成されたエステルである。例えば、オーリスタチンをパラアセチル安息香酸又はベンゾイル吉草酸と反応させて、それぞれAEB及びAEVBを生成することができる。他の典型的なオーリスタチン誘導体としては、AFP(ジメチルバリン−バリン−ドライソロイニン−ドラプロイン−フェニルアラニン−p−フェニレンジアミン)、MMAF(ドバリン−バリン−ドライソロイニン−ドラプロイン−フェニルアラニン)、及びMAE(モノメチルオーリスタチンE)が挙げられる。オーリスタチンE及びその誘導体の合成及び構造は、米国特許出願公開公報第20030083263号;国際特許公開公報第2002/088172号及び国際公開公報第2004/010957号;及び米国特許第6,884,869号;第6,323,315号;第6,239,104号;第6,034,065号;第5,780,588号;第5,665,860号;第5,663,149号;第5,635,483号;第5,599,902号;第5,554,725号;第5,530,097号;第5,521,284号;第5,504,191号;第5,410,024号;第5,138,036号;第5,076,973号;第4,986,988号;第4,978,744号;第4,879,278号;第4,816,444号;及び第4,486,414号に記載されている。

0105

他の変法では、細胞障害性薬剤は、DNA小溝結合剤である(例えば米国特許第6,130,237号を参照)。例えば、特定の実施態様では、小溝結合剤はCBI化合物である。他の実施態様では、小溝結合剤はエンジイン(例えばカリケアマイシン)である。

0106

特定の実施態様では、抗体−薬物のコンジュゲートは、抗チューブリン剤を含む。抗チューブリン剤の例としては、例えば、タキサン(例えばタキソール(登録商標)(パクリタキセル)、タキソテア(登録商標)(ドセタキセル))、T67(Tularik社)、ビンカアルカロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)、及びドラスタチン(例えばオーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)が挙げられる。他の抗チューブリン剤としては、例えば、バッカチン誘導体タキサン類似体(例えばエポチロンA及びB)、ノコダゾール、コルヒチン及びコルセミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、メイタンシノイド、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、及びエリュテロビンが挙げられる。いくつかの実施態様では、細胞障害性薬剤は、別のグループの抗チューブリン剤であるメイタンシノイドである。例えば、具体的な実施態様では、メイタンシノイドはメイタンシン又はDM−1である(ImmunoGen, Inc.;Chari et al., Cancer Res. 52:127-131, 1992も参照)。

0107

他の実施態様では、細胞障害性薬剤は代謝拮抗剤である。代謝拮抗剤は、例えば、プリン拮抗剤(例えばアザチオプリン又はミコフェノール酸モフェチル)、ジヒドロ葉酸還元酵素阻害剤(例えばメトトレキサート)、アシクロビルガンシクロビルジドブジンビダラビンリババリン、アジドチミジン、シチジンアラビノシド、アマンタジンジデオキシウリジンヨードデオキシウリジンホスカルネット又はトリフリジンであり得る。

0108

他の実施態様では、抗ヒトHER3モノクローナル抗体を、プロドラッグ変換酵素にコンジュゲートさせる。プロドラッグ変換酵素は、公知の方法を使用して抗体に組換え融合されていても又は化学的にコンジュゲートされていてもよい。例示的なプロドラッグ変換酵素はカルボキシペプチダーゼG2、β−グルクロニダーゼペニシリン−V−アミダーゼ、ペニシリン−G−アミダーゼ、β−ラクタマーゼβ−グルコシダーゼニトロレダクターゼ、及びカルボキシペプチダーゼAである。

0109

治療剤をタンパク質に、特に抗体にコンジュゲートさせるための技術は周知である(例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy,” in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy (Reisfeld et al. eds., Alan R. Liss, Inc., 1985); Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery,” in Controlled Drug Delivery (Robinson et al. eds., Marcel Deiker, Inc., 2nd ed. 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,” in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications (Pinchera et al. eds., 1985); “Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy,” in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy (Baldwin et al. eds., Academic Press, 1985);及びThorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58を参照。例えばPCT公開公報の国際公開公報第89/12624号も参照されたい)。

0110

診断用途
本発明のさらなる目的は、HER3の発現に関連した癌疾患診断及び/又はモニタリングするための本発明の抗ヒトHER3抗体に関する。HER3の発現に関連した癌疾患としては、典型的には、扁平上皮癌小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵臓癌、グリア細胞腫瘍、例えば神経膠芽腫及び神経線維腫症子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌膀胱癌肝細胞腫、乳癌、大腸癌黒色腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌唾液腺癌、腎臓(kidney)癌、腎臓(renal)癌、前立腺癌外陰癌、甲状腺癌肝細胞癌、及び様々な種類の頭頸部癌が挙げられるがこれらに限定されない。1つの特定の実施態様では、本発明の方法を使用して診断された癌は、乳癌又は卵巣癌である。1つの特定の実施態様では、本発明の抗体は、乳癌及び卵巣癌を診断するのに有用である。

0111

1つの特定の実施態様では、本発明の抗体を、検出可能な分子又は物質、例えば蛍光分子放射性分子、又は上記されているような当技術分野において公知の任意の他の標識で標識し得る。例えば、本発明の抗体を、当技術分野において公知の任意の方法によって放射性分子で標識し得る。例えば、放射性分子としては、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えばIl23、Il24、In111、Re186、Re188が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の抗体はまた、核磁気共鳴(NMR画像法磁気共鳴画像法、mirとしても知られている)のためのスピンラベル、例えばヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウムマンガン、又は鉄で標識されていてもよい。抗体の投与後、患者内の抗体の分布を検出する。任意の特定の標識の分布を検出するための方法は当業者には公知であり、任意の適切な方法を使用することができる。いくつかの非限定的な例としては、コンピューター断層撮影(CT)、ポジトロン断層撮影(PET)、磁気共鳴画像法(MRI)、蛍光、化学発光、及び超音波検査が挙げられる。

0112

本発明の抗体は、HER3の発現に関連した癌疾患のステージ分類をするのに有用であり得る(例えば放射性物質を用いた画像撮影法において)。例えば、本発明の抗体は、乳癌又は卵巣癌のステージ分類をするのに有用であり得る。それらは単独で又は他の乳癌若しくは卵巣癌マーカー(HER2、CA125、HE4及びメソテリンなどを含むがこれらに限定されない)と組み合わせて使用され得る。

0113

典型的には、該診断法は、患者から得られた生物学的試料の使用を含む。本明細書において使用される「生物学的試料」という用語は被験者から得られた様々な試料の種類を包含し、これを診断アッセイ又はモニタリングアッセイに使用することができる。生物学的試料としては、血液、及び生物学的起源の他の液体試料固体組織試料、例えば生検標本、又は組織培養液若しくはそれから得られた細胞、及びその後代が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、生物学的試料は、1つの特定の実施態様では乳房又は卵巣からのHER3発現に関連した癌疾患を有すると疑われる個体から回収された組織試料から得られた細胞を含む。それ故、生物学的試料は、臨床試料、培養液中の細胞、細胞上清細胞溶解液血清血漿生物学的液体、及び組織試料を包含する。

0114

1つの特定の実施態様では、本発明は、本発明の抗体を使用して被験者由来の細胞上でHER3を検出することによって、被験者におけるHER3の発現に関連した癌疾患を診断する方法である。特に、該診断法は、
(a)HER3の発現に関連した癌疾患を患っている可能性が高い被験者の生物学的試料を、本発明に記載の抗体と、HER3を発現する生物学的試料の細胞と該抗体が複合体を形成するに十分な条件で接触させ;
(b)該複合体を検出及び/又は定量し、これにより、該複合体の検出は、HER3の発現に関連した癌疾患を示す
ことからなる工程を含み得る。

0115

癌疾患をモニタリングするために、本発明に記載の診断法を、試料への抗体の結合が増加又は減少したかを決定するために、様々な時間間隔で繰り返し得、これにより癌疾患が進行したか又は後退したかが決定される。

0116

治療用途
本発明の抗体、断片、又は免疫複合体は、あらゆるHER3を発現している癌の処置に有用であり得る。本発明の抗体は、単独で又は任意の適切な薬剤と組み合わせて使用され得る。

0117

HER3を発現している癌の例としては、細胞癌リンパ腫芽細胞腫肉腫、及び白血病が挙げられるがこれらに限定されない。このような癌のより特定の例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵臓癌、グリア細胞腫瘍、例えば神経膠芽腫及び神経線維腫症、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、大腸癌、黒色腫、結腸直腸癌、子宮内膜癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)癌、腎臓(renal)癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞癌、及び様々な種類の頭頸部癌が挙げられる。1つの特定の実施態様では、本発明の方法を使用して処置される癌は、乳癌又は卵巣癌である。

0118

したがって、本発明の目的は、治療有効量の本発明の抗体、断片又は免疫複合体をそれを必要とする被験者に投与することを含む、HER3の発現に関連した癌を処置する方法に関する。

0119

いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、リガンド(すなわちNRG)非依存性癌及びリガンド依存性癌の処置に特に適している。

0120

いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、(そのアロステリック効果により)自己分泌又はパラ分泌リガンド依存性腫瘍の処置に特に適している。

0121

いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)、化学療法剤、又は抗ホルモン剤による処置に対して抵抗性である癌の処置に特に適している。

0122

いくつかの実施態様では、本発明の抗体は、三種陰性乳癌、膵臓癌及び腎細胞癌からなる群より選択された癌の処置に特に適している。

0123

本発明の文脈において、本明細書において使用される「処置する」又は「処置」という用語は、このような用語が適用される疾患若しくは容態、又はこのような疾患若しくは容態の1つ以上の症状を元に戻す、寛解する、その進行を阻止する、又は予防することを意味する。

0124

本発明によると、「患者」又は「それを必要とする患者」という用語は、ヒトHER3の発現を伴うヒトHER3癌の発現を伴う癌に罹患した又は罹患する可能性が高いヒト又は非ヒト哺乳動物を意味する。

0125

本発明の抗体の「治療有効量」によって、任意の医学的処置に適用可能な妥当ベネフィットリスク比で、前記の癌を処置するのに十分な量の抗体を意味する。しかし、本発明の抗体及び組成物の1日総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医師によって決定されることが理解されるだろう。任意の特定の患者についての具体的な治療有効投与量レベルは、処置される疾患及び疾患の重度;使用される具体的な抗体の活性;使用される具体的な組成、患者の年齢、体重、全般的健康状態性別及び食事;使用される具体的な抗体の投与時刻投与経路、及び排泄速度処置期間;使用される具体的な抗体と組み合わせて又は同時に使用される薬物;並びに、医学分野において周知である同様な因子をはじめとする、様々な因子に依存するだろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルで化合物の投与量を開始し、所望の効果が達成されるまで投与量を次第に増加させることは当技術分野の技能範囲内で周知である。

0126

特定の実施態様では、抗ヒトHER3モノクローナル抗体又は抗体−薬物のコンジュゲートは、疾病又は疾患の処置のための第二の薬剤と組み合わせて使用される。癌の処置に使用される場合、本発明の抗ヒトHER3モノクローナル抗体又は抗体−薬物のコンジュゲートは、従来の癌療法、例えば手術放射線療法、化学療法、又はその組合せなどと組み合わせて使用され得る。特定の態様では、本発明に記載の抗HER3抗体又は抗体−薬物のコンジュゲートとの併用癌療法に有用である他の治療剤としては、血管新生抑制剤が挙げられる。いくつかの態様では、本発明に記載の抗体又は抗体−薬物のコンジュゲートは、サイトカイン(例えば、腫瘍に対する免疫応答刺激するサイトカイン)と共投与される。

0127

いくつかの他の態様では、併用療法に有用な他の治療剤としては、腫瘍増殖に関与する特定の因子(例えばEGFR、HER2、又はHER4)の拮抗剤が挙げられる。

0128

1つの特定の実施態様では、本発明の抗ヒトHER3モノクローナル抗体又は抗体−薬物のコンジュゲートは、抗ヒトHER2モノクローナル抗体、例えばトラスツズマブ又はペルツズマブなどと組み合わせて使用される。

0129

いくつかの実施態様では、本明細書に記載されている抗ヒトHER3モノクローナル抗体又は抗体−薬物のコンジュゲートは、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)と組み合わせて使用される。BAY43−9006(ソラフェニブ、ネクサバール(登録商標))及びSU11248(スニチニブ、スーテント(登録商標))は、認可されている2つのこのようなTKIである。他のTKIとしては、メシル酸イマチニブグリベック(登録商標)、ノバルティス社);ゲフィチニブイレッサ(登録商標)、アストラゼネカ社);エルロチニブ塩酸塩タルセバ(登録商標)、ジェネンテック社);バンデタニブザクティマ(登録商標)、アストラゼネカ社)、チピファルニブ(ザーネストラ(登録商標)、ヤンセンシラグ社);ダサチニブスプセル(登録商標)、ブリストールマイヤーズスクイブ社);ロナファーニブ(Sarasar(登録商標)、シェリングプラウ社);コハク酸バタラニブ(ノバルティス社、シエーリングAG社);ラパチニブ(タイケルブ(登録商標)、グラクソスミスクライン社);ニロチニブ(ノバルティス社);レスタウルチニブ(セファロン社);パゾパニブ塩酸塩(グラクソスミスクライン社);アキシチニブファイザー社);カネルチニブ二塩酸塩(ファイザー社);ペリチニブ(米国国立癌研究所、ワイス社);タンデュチニブ(ミレニアム社);ボスチニブ(ワイス社);セマキサニブ(Sugen社、大鵬薬品);AZD−2171(アストラゼネカ社);VX−680(メルク社、ベルテックス社);EXEL−0999(エグゼリクシス社);ARRY−142886(アレイバイオファーマ社、アストラゼネカ社);PD−0325901(ファイザー社);AMG−706(アムジェン社);BIBF−1120(ベーリンガーインゲルハイム社);SU−6668(大鵬薬品);CP−547632(OSI社);AEE−788(ノバルティス社);BMS−582664(ブリストールマイヤーズスクイブ社);JNK−401(セルジーン社);R−788(ライジェル社);AZD−1152 HQPA(アストラゼネカ社);NM−3(ジェンザイムオンコロジー社);CP−868596(ファイザー社);BMS−599626(ブリストールマイヤーズスクイブ社);PTC−299(PTCセラピューティクス社);ABT−869(アボット社);EXEL−2880(エグゼリクシス社);AG−024322(ファイザー社);XL−820(エグゼリクシス社);OSI−930(OSI社);XL−184(エグゼリクシス社);KRN−951(キリンビール社);CP−724714(OSI社);E−7080(エーザイ社);HKI−272(ワイス社);CHIR−258(カイロン社);ZK−304709(シエーリングAG社);EXEL−7647(エグゼリクシス社);BAY−57−9352(バイエル社);BIBW−2992(ベーリンガーインゲルハイム社);AV−412(AVEO社);YN−968D1(Advenchen Laboratories社);ミドスタウリン(ノバルティス社);ペリフォシン(エテルナ・ゼンタリス社、ケリックス社、米国国立癌研究所);AG−024322(ファイザー社);AZD−1152(アストラゼネカ社);ON−01910Na(オンコノバ社);及びAZD−0530(アストラゼネカ社)などが挙げられるがこれらに限定されない。

0130

医薬組成物
投与のために、抗ヒトHER3モノクローナル抗体又は抗体−薬物のコンジュゲートを、医薬組成物として製剤化する。抗ヒトHER3モノクローナル抗体又は抗体−薬物のコンジュゲートを含む医薬組成物を、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができ、この方法では、治療用分子を、薬学的に許容される担体と混合物中で合わせる。組成物は、その投与がレシピエント患者によって耐容され得るならば「薬学的に許容される担体」であると言われる。無菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に許容される担体の一例である。他の適切な担体は当業者には周知である。(例えば、Gennaro (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company, 19th ed. 1995)を参照されたい)。製剤はさらに、1つ以上の賦形剤保存剤可溶化剤緩衝化剤バイアル表面上でのタンパク質の損失を防ぐためのアルブミンなどを含み得る。

0131

医薬組成物の剤形、投与経路、投与量、及び処方計画は必然的に、処置しようとする容態、病気の重度、患者の年齢、体重、及び性別などに依存する。

0132

本発明の医薬組成物は、局所投与経口投与非経口投与鼻腔内投与静脈内投与筋肉内投与皮下投与、又は眼内投与などのために製剤化され得る。

0133

好ましくは、医薬組成物は、注射することのできる製剤にとって薬学的に許容されるビヒクルを含有する。これらは、特に、等張で無菌の食塩水溶液リン酸一ナトリウム又はリン酸二ナトリウム塩化ナトリウム塩化カリウム塩化カルシウム又は塩化マグネシウムなど、あるいはこのような塩の混合物)、又は、場合に応じて滅菌水若しくは生理食塩水の添加により注射液復元が可能となる乾燥させた、特に凍結乾燥させた組成物であり得る。

0134

投与に使用される用量は、様々なパラメーター関数として、特に使用される投与形態、関連した病態、又は代替的には所望の処置期間の関数として適応させ得る。

0135

医薬組成物を調製するために、有効量の抗体を薬学的に許容される担体又は水性媒体に溶解又は分散させ得る。

0136

注射用途に適した剤形としては、無菌水溶液又は分散液;ゴマ油ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び、無菌注射溶液又は分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、シリンジが容易に扱える程度まで流動性でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物汚染作用から防腐されていなければならない。

0137

遊離塩基又は薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散液はまた、グリセロール液体ポリエチレングリコール、及びその混合物中、及び油中において調製されてもよい。通常の保存及び使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含有する。

0138

本発明の抗体は、中性又は塩の形の組成物へと製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)が挙げられ、これらは、例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は、酢酸シュウ酸酒石酸マンデル酸などのこのような有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成された塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム水酸化カリウム水酸化アンモニウム水酸化カルシウム、又は水酸化鉄などの無機塩基、及び、イソプロピルアミントリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどのこのような有機塩基から誘導され得る。

0139

担体はまた、例えば、水、エタノールポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び植物油を含有する、溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防御は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベンクロロブタノールフェノールソルビン酸チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張化剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含めることが好ましいだろう。注射用組成物の吸収延長は、組成物中に、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどを使用することによってもたらされ得る。

0140

無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、適切な溶媒中に、必要であれば上記に列挙された他の様々な成分と共に取り込み、その後、滅菌濾過することによって調製される。一般的には、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基本的な分散媒体及び上記に列挙された成分の中からの必要とされるその他の成分とを含有する無菌ビヒクルに取り込むことによって調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製法真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これにより、以前に滅菌濾過されたその溶液から活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。

0141

直接的な注射のためのより濃縮された又は非常に濃縮された溶液(溶媒としてDMSOの使用が想定される)の調製が企画され、これにより極めて急速な浸透がもたらされ、高濃度活性薬剤が小さな腫瘍領域へと送達される。

0142

製剤化時に、溶液は、投与製剤適合した様式で、治療的に効果のあるような量で投与されるだろう。製剤は、様々な剤形で、例えば上記の注射溶液のタイプで容易に投与されるが、薬物放出カプセルなどを使用してもよい。

0143

水溶液での非経口投与のために、例えば、溶液は、必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤をまず、十分な食塩水又はブドウ糖で等張とすべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、及び腹腔内投与に特に適している。これに関連して、使用され得る無菌水性媒体は、本開示を鑑みて当業者には公知であろう。例えば、1用量を等張NaCl溶液1mlに溶かし、皮下点滴療法液1000mlに加えるか又は提案された注入部位に注射し得る(例えば、"Remington's Pharmaceutical Sciences" 15th Edition, pages 1035-1038 and 1570-1580を参照)。投与量の幾分かの変更が、処置される被験者の容態に依存して必然的になされるだろう。投与責任者は、いずれの事象においても、個々の被験者にとって適切な用量を決定するだろう。

0144

本発明の抗体は、治療混合物内で、1用量あたり約0.0001〜1.0mg、又は約0.001〜0.1mg、又は約0.1〜1.0mg、又はさらには約10mgなどを含むように製剤化され得る。複数回の用量を投与してもよい。

0145

静脈内又は筋肉内注射などの非経口投与のために製剤化された化合物の他に、他の薬学的に許容される剤形としては、例えば、経口投与用錠剤又は他の固形剤徐放性カプセル剤;及び現在使用されている任意の他の剤形が挙げられる。

0146

特定の実施態様では、リポソーム及び/又はナノ粒子の使用が、抗体の宿主細胞への導入のために考えられる。リポソーム及び/又はナノ粒子の形成及び使用は当業者には公知である。

0147

ナノカプセルは、一般的に、安定かつ再現性のある方法で化合物を封入することができる。細胞内へのポリマーの過剰負荷に起因する副作用を避けるために、このような超微細粒子(サイズは約0.1μm)は一般的に、インビボで分解されることのできるポリマーを使用して設計される。これらの必要条件を満たす生分解性ポリアルキル−シアノアクリル酸ナノ粒子が、本発明における使用に考えられ、このような粒子は容易に作製され得る。

0148

リポソームは、水性媒体に分散して自発的に多重ラメラ同心状二層小胞(多重ラメラ小胞(MLV)とも称される)を形成する、リン脂質から形成される。MLVは一般的に、25nm〜4μmの直径を有する。MLVの超音波処理により、コアに水溶液を含有する、200〜500Åの範囲内の直径を有する小型単ラメラ小胞(SUV)が形成される。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、及び二価陽イオンの存在に依存する。

0149

キット
最後に、本発明はまた、本発明の少なくとも1つの抗体を含むキットを提供する。本発明の抗体を含有するキットは、HER3発現の検出に、又は治療アッセイ若しくは診断アッセイに用途を見出す。本発明のキットは、固相支持体、例えば組織培養プレート又はビーズ(例えばセファロースビーズ)に結合させた抗体を含有し得る。インビトロで、例えばELISA又はウェスタンブロットにおいてHER3を検出及び定量するための抗体を含有するキットが提供され得る。検出に有用なこのような抗体は、蛍光標識又は放射標識などの標識と共に与えられ得る。

0150

本発明は、以下の図面及び実施例によってさらに説明されるだろう。しかし、これらの実施例及び図面は、いずれにしても、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。

図面の簡単な説明

0151

図1は、細胞上のHER3受容体への結合についての、9F7−F11モノクローナル抗体とNRGのアロステリックな相互作用を示す。HER3に結合している9F7−F11は、様々な濃度のNRGを加えると、SKBR3細胞上で増加する。これに対して、抗体AはNRGの結合によって影響されず、抗体BはNRGの結合によって遮断される(パネルA)。逆に、HER3へのNRGの結合は、様々な濃度の9F7−F11モノクローナル抗体を加えると、HER2/HER3でトランスフェクトされた3T3線維芽細胞上で増加し、一方、関連性のないIgGはNRGの結合に影響を及ぼさない。これに対して、遊離NRGは、HER3への結合について標識NRGを置換する(パネルB)。
図2は、NRGの存在下又は非存在下におけるHER3受容体に対する9F7−F11の親和性を定量する。NRGの非存在下で測定された親和性と比べて(2.33±0.30nM)、6倍増加した親和性が、NRGの存在下で測定された(0.47±0.07nM)。
図3は、BxPC3膵臓癌細胞において抗HER3モノクローナル抗体の9F7−F11を使用することによる、HER2/HER3受容体のリン酸化阻害、及び下流のPI3K/AktとERKのシグナル伝達阻害を示す。
図4は、ウェスタンブロットによって実証され(A)Image Jによって定量された(B)、p53/MDM2の発現及びリン酸化に対する9F7−F11モノクローナル抗体の効果を示す。
図5は、定量PCRによって実証された、p53誘導性遺伝子p21、Cyclin A2、PERP、Puma、及びBcl−2の発現に対する9F7−F11モノクローナル抗体の効果を示す。相対的なmRNA発現は、GAPDH発現に対して標準化された。
図6は、BxPC3膵臓癌細胞の細胞周期停止に対する9F7−F11モノクローナル抗体の効果を示す。
図7は、BxPC3膵臓癌細胞のアポトーシスに対する9F7−F11モノクローナル抗体の効果を示す(A)。ミトコンドリアのアポトーシスを開始するカスパーゼ−9の開裂が、9F7−F11で処置されたBxPC3細胞の細胞溶解液のウェスタンブロットによって実証される(B)。
図8は、トラスツズマブ又はセツキシマブ単独で観察された効果と比較して、単独で又はセツキシマブ若しくはトラスツズマブと組み合わせた、9F7−F11モノクローナル抗体の、BxPC3膵臓癌細胞の増殖に対する効果を示す。
図9は、標的MDA−MB−453乳癌細胞に対する9F7−F11モノクローナル抗体対トラスツズマブのADCC作用を示す。
図10は、HER2の増幅した/PIK3CA−mutのMDA−MB−361乳癌細胞を異種移植されたヌードマウスにおける、9F7−F11モノクローナル抗体による腫瘍進行の阻止を示す。
図11は、三種陰性PTEN−mut/p53−mutのMDA−MB−468乳癌細胞を異種移植されたヌードマウスにおける、9F7−F11モノクローナル抗体による腫瘍進行の阻止を示す(A)。カプランマイヤー生存曲線を、MDA−MB−468腫瘍が2000mm3の体積に達した場合に計算した(B)。
図12は、NRG依存性でp53−mutでHER2lowのBxPC3膵臓癌細胞を異種移植され、単独で(9F7)又はペルツズマブと組み合わせて(P+9F7)使用された9F7−F11モノクローナル抗体を用いて処置された、ヌードマウスの腫瘍進行及び生存期間を、ペルツズマブ単独(P)又はビヒクル(対照)(パネルA)及びトラスツズマブとペルツズマブの組合せ(P+T)(パネルB)と比較して示す。
図13は、shHER3−又はshLuc(対照)−ノックアウトBxPC3膵臓癌細胞を異種移植されたヌードマウスにおける9F7−F11モノクローナル抗体による腫瘍進行の阻止を示す(A)。HER3サイレンシングは、処置されたマウスから回収された異種移植片に対するウェスタンブロットによって確認される(B)。

0152

実施例1:HER3への結合に対する9F7−F11のアロステリック効果
事前にニューレグリンβ1(NRG)で刺激してHER2/HER3ヘテロ二量体の形成を促進しておいた、HER2/HER3でトランスフェクトされたNIH3T3細胞株(約2×106個の細胞)を、1匹のBalb/cマウスに腹腔内注射した。免疫化マウスからの脾臓細胞を、すでに記載されているプロトコールに従って(Salhi et al. Biochem. J. 2004)、骨髄腫PX63Ag8.653を使用して融合させた。1ウェルあたり105個の融合した細胞を、ハイブリドーマの選択のためのHAT培地を含むプレート中で培養した。融合から12日後、ハイブリドーマ上清のスクリーニングを、抗原としてタンパク質HER3−Fcを使用してELISAによって行なった。対照では、スクリーニングは、識別用の抗原HER2−Fc及びFc断片のみを用いて同時に行なわれる。

0153

サイトメトリー競合実験を行なって、NRGが、SKBR3細胞をベースとしたアッセイにおいてHER3への抗体の結合を阻害する能力を定量した。この目的を達成するために、105個のSKBR3細胞を、様々な濃度の競合NRGリガンドと共に上で1.5時間プレインキュベートした。PBS−1%BSAで1回洗浄した後、最大結合の50%をもたらす濃度の選択された抗HER3モノクローナル抗体9F7−F11を氷上の各ウェルに1時間加えた。いくつかの実験では、NRGリガンドと抗HER3抗体の9F7−F11を氷上で2時間かけて共インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、氷上で45分間かけて1:60の希釈度の適切なFITCにコンジュゲートさせた二次抗体シグマ社)と共にさらにインキュベートし、その後、Quanta装置(ベックマンコールター社)でのサイトメトリー分析を行なった。FACSによる競合実験は、9F7−F11抗体がNRGと競合しないことを実証し、よって、この抗体はNRG結合部位に結合しなかったことを示唆する(図1A)。NRGに非競合的な9F7−F11抗体の結合は、NRGを添加した場合には160%まで増強さえされ、よって、HER3への結合に関する9F7−F11モノクローナル抗体のアロステリック効果が実証された。これに対して、陽性対照の抗体Aの結合は、NRGとのインキュベーションによって改変されず、陽性対照の抗体Bは、NRG依存性の結合を示した(図1A)。

0154

逆に、105個のHER3でトランスフェクトされた3T3線維芽細胞を2日間培養し、その後、飢餓状態とさせ、その後、様々な濃度の9F7−F11モノクローナル抗体と共にKREBS緩衝液中で+4℃で45分間インキュベートした。d2クリプテート色素で標識されたNRGをさらに45分間加えた。KREBSによる洗浄後、620/670nmでの蛍光を、Pherastarマイクロプレートリーダーを使用して測定した。図1Bに実証されているように、9F7−F11の結合は、HER3へのNRGの結合の増加を誘導し、一方、関連性のないIgGは誘導しなかった。対照としての、様々な濃度の遊離NRGは、HER3受容体への標識NRGの結合を置換し(図1B)、したがって、HER3への結合について9F7−F11とNRGとの間のアロステリックな相互作用が実証された。

0155

実施例2:NRGの添加は、HER3受容体に対する9F7−F11の親和性の6倍増加を誘導する
CisBio BioAssay社によって開発されたTag-Lite技術を使用して、104個のHER3のSNAPタグ化されたHEK細胞を、Lumi4−テルビウムクリプテートドナーで標識し、その後、NRG及び様々な濃度のd2アクセプター標識9F7−F11モノクローナル抗体と共インキュベートした。16時間のインキュベート後、Lumi4−テルビウム及びd2の蛍光を、PherastarFS機器で337nmでの励起時にそれぞれ620nm及び665nm(60μ秒間の時間差、400μ秒間の積分時間)で測定した。図2に実証されているように、NRGの存在下では、HER3受容体に対する9F7−F11の用量依存的な結合の増加が、NRGの非存在下で測定された低いHER3への結合と比較して観察された。HER3に対する9F7−F11の結合のKd値は、NRGとの共インキュベート後では0.47±0.07nMであると計算され、一方、Kdは、NRGの非存在下では2.33±0.30nmであると測定され、したがって、NRGの添加は、HER3受容体に対する9F7−F11の親和性の6倍増加をアロステリック的に誘導したことを実証した。

0156

実施例3:NRGに非競合的でアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11は、ERK1/2及びAKTのリン酸化の遮断と共に、HER2及びHER3のリン酸化を阻害する
500個及び1,000個のBxPC3膵臓腫瘍細胞を6ウェル培養プレートの各ウェルに37℃で24時間加えた。1%FCSを含むRPMI完全培地中で16時間かけて血清を飢餓状態とし、さらに洗浄した後、細胞を、50μg/mlの濃度の9F7−F11抗体、又は陰性対照抗体と共に37℃で15分間又は1時間プレインキュベートし、その後、洗浄し、続いて、100ng/mlのNRG希釈液を用いて刺激したか又は刺激しなかった。その後、細胞を洗浄し、剥がし、20mMトリス−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、1.5mM MgCl2、1mMEDTA、1%トリトン、10%グリセロール、0.1mMフェニルメチルスルホニルクロリド、100mMフッ化ナトリウム、1mMオルトバナジン酸ナトリウムを含有する緩衝液(シグマ・アルドリッチ社)、及び1つのコンプリートプロテアーゼインヒビター混合物タブレットロシュダイアグスティックス社、インディアナポリス、IN)を用いて溶解した。30分間のインキュベート時間後、試料から遠心分離によって不溶性画分を除去し、細胞溶解液中のタンパク質濃度ブラッドフォードアッセイによって決定した。これらのタンパク質溶解液を、Laemmli緩衝液と直接混合し(標的及び細胞株に応じて合計して1〜20μgのタンパク質)、95℃で5分間加熱した。還元条件下での7%SDS−PAGEでの電気泳動後、タンパク質をポリビニリデンジフルオライド膜(ミリポア社)に転写し、これをその後、5%無脂肪ドライミルクを含有するTNT緩衝液(トリス25mM pH7.4、NaCl 150mM、Tween0.1%)中で25℃で1時間かけて飽和させた。キナーゼ受容体又はシグナル伝達キナーゼ、及びそのリン酸化形に指向された一次抗体を、TNT−5%BSA緩衝液中で4℃で18時間インキュベートした。TNT緩衝液中で5回洗浄した後、ペルオキシダーゼにコンジュゲートさせたウサギヤギ、又はマウスポリクローナル抗体(シグマ−アルドリッチ社)を適宜、5%無脂肪ドライミルクを含有するTNT緩衝液に25℃で1時間加えた。TNT緩衝液で5回洗浄した後、ブロットを、化学発光基質(Western lightning Plus-ECLパーキンエルマー社)を使用して可視化した。

0157

顕著なことには、9F7−F11抗体は、Y1289−HER3及びY1242−HER2上でのリガンドにより誘導されるリン酸化を遮断した(図3)。同時に、アロステリックで非競合的な9F7−F11抗体は、Ser473上でのAktリン酸化の阻害、及び、Thr202/204上でのERK1/2リン酸化の阻害を誘導した。

0158

実施例4:NRGに非競合的でアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11は、p53経路の調節と一緒に、MDM2の発現及びリン酸化を阻害する
上記に記載されているのと同様に、BxPC3腫瘍細胞を、6ウェル培養プレートの各ウェルに37℃で24時間加えた。1%FCSを含むRPMI完全培地中で16時間かけて血清を飢餓状態とし、さらに洗浄した後、細胞を、50μg/mlの濃度の9F7−F11抗体、又は陰性対照の抗体と共に37℃で24時間又は72時間プレインキュベートし、その後、洗浄し、続いて100ng/mlのNRG希釈液を用いて刺激したか又は刺激しなかった。続いて、細胞をSDS−PAGE及びウェスタンブロットのために溶解するか、又は、RNAの抽出、逆転写、及び適切なプライマーを使用した定量PCRにかけた。ウェスタンブロットによって図4に実証されているように、9F7−F11による処置は、MDM2の発現及びリン酸化を阻害し、p53の発現を増加させた。これに関連して、9F7−F11による処置は、Q−PCR(図5)によって実証されているように、細胞周期及び増殖の遮断に関与するp21などのp53誘導性遺伝子の発現、並びに、アポトーシスをプラスに調節するPuma及びPERPを増加させた。これに対して、それぞれ増殖を促進し、アポトーシスを阻害する、CyclinA2及びBcl2遺伝子の発現は、NRGに非競合的でアロステリックな9F7−F11抗体による処置後に減少した(図5)。

0159

実施例5:NRGに非競合的でアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11は、細胞周期のG1期を遮断し、増殖を阻害し、アポトーシスを回復させる
細胞周期に対するHER3特異的抗体の9F7−F11の効果を、ヨウ化プロピジウムによる染色を使用して評価した。簡潔には、ウェルあたり300,000個のBxPC3腫瘍細胞を、6ウェルマイクロタイタープレート中で24時間培養し、その後、血清を飢餓状態とさせ、FCSを含まないRPMI培地中でさらに24時間かけて同期化し、その後、100μg/mlの抗HER3抗体の9F7−F11及び100ng/mlのNRGと共インキュベートした。透過処理した細胞をヨウ化プロピジウムを用いて24時間後に染色し、その後、サイトメトリー分析を行なった。増殖及びアポトーシスアッセイのために、50,000個のBxPC細胞/ウェルを飢餓の1日前に播種した(RPMI−1%FCS中)。その後、HER3特異的抗体の9F7−F11及びNRGを120時間加えた。細胞増殖を、Alexa Fluor488にコンジュゲートさせた5−エチニル−2’−デオキシウリジン(EdU)(インビトロジェン社)を培養の最後の30時間の間に取り込むことによって測定した。細胞のアポトーシスを、蛍光にコンジュゲートさせたアネキシンV及び7−アミノアクチノマイシンD(7−AAD;ベックマンコールター社)とのインキュベートによって評価した。全ての実験を三回行なった。カスパーゼ−9の分析のために、BxPC3細胞を上記のように処置し、溶解させた。細胞溶解液のSDS−PAGE及びウェスタンブロットの後、プロ酵素の開裂を通したカスパーゼ−9の活性化を、適切な抗体を使用して証明した。図6に示されているように、アロステリックな9F7−F11抗体の24時間の処置により、細胞周期のG1期は遮断され、G1細胞は、未処置の細胞又は対照の抗体で処置された細胞についての36〜38%から、9F7−F11で処置されたBxPC3細胞についての62%まで増加した。9F7−F11による処置は同時に、S期及びG2/m期のBxPC3細胞の比率を低下させた(図6)。9F7−F11モノクローナル抗体を用いてのBxPC3細胞の処置は、未処置の細胞及び対照抗体で処置された細胞と比較して(図7A)、初期(18%)及び後期(12%)アポトーシスを増加させ、同時にミトコンドリアのアポトーシスを開始するプロ−カスパーゼ−9を開裂した(図7B)。最後に、BxPCの細胞増殖は、9F7−F11抗体を用いての120時間かけての処置後に阻害された。HER2lowBxPC3細胞に対して抗HER2抗体のトラスツズマブを単独で用いても細胞増殖に対する特異的な効果は観察されず、一方、抗EGFR抗体のセツキシマブは、抗HER3抗体の9F7−F11よりも効果が低かった(図8)。これに対して、9F7−F11モノクローナル抗体とトラスツズマブの組合せは、9F7−F11/セツキシマブの組合せよりも細胞増殖を阻害する上でより効果的であり、このことは、HER2low腫瘍細胞に対してセツキシマブ/9F7−F11の組合せが相加作用であるのに対して、トラスツズマブ/9F7−F11の組合せが相乗作用である可能性を示唆する。要するに、これらの結果は、NRGに非競合的でアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11は、細胞周期のG1期を遮断し、プロ−カスパーゼ−9の開裂を通して初期及び後期のミトコンドリアのアポトーシスを回復させ、腫瘍細胞の増殖を阻害することを実証した。この場合、9F7−F11モノクローナル抗体と抗HER2抗体の組合せは、HER2low腫瘍において大きな利点があり得る。

0160

実施例6:NRGに非競合的でアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11は、乳癌細胞の抗体依存性細胞障害を誘導する
basal-like型の三種陰性乳癌から得られた、MDA−MB−453腫瘍標的細胞を、ADCCアッセイの1日前に平底96ウェルマイクロプレートにウェルあたり20,000個播種した。MDA−MB−453細胞株は、約180,000個のHER2受容体及び21,000個のHER3受容体を発現するが、EGFRの発現は全く観察されない。培養培地で洗浄した後、10μg/mlの9F7−F11モノクローナル抗体を30分間の間に加え、その後、末梢単核細胞(PBMC)から得られたエフェクター細胞を添加した。PBMCを、「フランス血液研究所(Etablissement Francais du Sang)」で入手した健康なドナーの血液試料密度勾配遠心分離によって調製した。エフェクター細胞/標的細胞(E/T)を、加湿細胞インキュベーター中で15/1のE/T比で24時間インキュベートした。MDA−MB−453標的細胞の殺滅を、細胞障害性検出キットLDH検出キット;プロメガG−1780)を使用して製造業者の説明書に従って、傷害を受けた細胞からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDL)の放出を測定することによって評価した。簡潔には、細胞上清50μlを、新たな平底96ウェルマイクロプレートに注意深く移し、キットのLDH反応混合物(50μl/ウェル)を各ウェルに加えた。37℃で30分間インキュベートした後、停止溶液(キット内にある)50μlを加え、490nmでの吸光度を測定した。各実験において以下の対照を作った:PBMCのみ、MDA−MB−453標的細胞のみ(自然発生的なLDHの放出)、PBMCと標的細胞(抗体依存的な自然発生的な放出)、溶解緩衝液と標的細胞(最大のLDHの放出)、抗体とPBMC、抗体と標的細胞。各試料の特異的溶解率を、以下の式を使用して決定した:特異的溶解率=(試料の値−自然発生的な放出)/(最大放出−自然発生的な放出)×100。図9に示されているように、9F7−F11抗体は、健康ドナー1及び2に由来するPBMCを使用してMDA−MB−453乳癌細胞の5〜10%の特異的細胞溶解を誘導した。同じ実験で、陽性対照のトラスツズマブは、MAD−MB−453がHER3受容体よりも10倍多くのHER2受容体を発現しているという事実に起因して、約40%の溶解を誘導した。

0161

実施例7:HER2の増幅したMDA−MB−361乳癌及び三種陰性MDA−MB−468乳癌を異種移植されたマウスにおける、9F7−F11の単独療法
胸腺の6〜8週令の雌BALB/cマウスを、Janvier及びチャールズリバーラボラトリーズから購入した。HER2の増幅した/PIK3CA−mutの乳癌細胞MDA−MB361(10×106個)及びHERの増幅していない/PTEN−mut/p53−mut/ER−/PR−の三種陰性乳癌細胞MDA−MB−468(3.5×106個)を、無胸腺BALB/cヌードマウスの右腹側部皮下注射した。それらは両方共に低いレベルでHER3受容体を発現していた(約10,000個の受容体/細胞)。全てのインビボでの実験は、実験動物の研究のためのフランスの指針遵守して行なわれた(同意番号第B34−172−27)。

0162

腫瘍を有するマウスを、腫瘍が約100mm3の体積に達したときに、異なる処置群無作為分類した。マウスを、HER3特異的9F7−F11抗体対ビヒクル(PBS)の腹腔内注射によって処置した。注射された抗体の量は、1回の注射につき300μg(15mg/kg)を1週間に3回、6週間連続であった(Q2D−6W)。腫瘍の寸法を週2回キャリパーを用いて測定し、体積を式D1×D2×D3/2によって計算した。腫瘍の進行を、式[(最終体積)−(最初の体積)]/(最初の体積)を使用して計算した。結果は、腫瘍が2,000mm3と決定された最終体積に達するのに要する時間を使用して、カプランマイヤー生存曲線によっても表現された。時間差の中央値は、マウスの50%が決定された体積に達した腫瘍を有する時間として定義された。

0163

図10に示されているように、本発明者らは、ビヒクルで処置されたマウスにおいて測定された平均腫瘍サイズと比較して、腫瘍の移植から55日後(抗体による処置の終了日に相当する;40日後)に9F7−F11で処置されたマウスにおけるMDA−MB−361腫瘍増殖の有意な47±5%の減少を観察した(p<0.001)。実験終了時(97日後)、より少ないが有意な21±2%の腫瘍サイズの減少が9F7−F11処置群において観察され、これはおそらく9F7−11による処置が57日後以降中止されたためであった。

0164

図11Aに示されているように、平均腫瘍体積は、対照(ビヒクル)よりも、MDA−MB−468細胞を異種移植された9F7−F11で処置されたマウスにおいて有意に低かった(9F7−F11による処置後、異種移植から105日後に35%の体積の減少)。9F7−F11抗体による処置は、MDA−MB−468細胞を異種移植された動物において、50%生存期間中央値を20日間遅延させた(実験終了時にすなわち190日後に9F7−F11処置群の一匹のマウスが安定化された;p<0.05)。要するに、これらの結果は、NRGに非競合的でアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11は、HER2の増幅した乳癌細胞株又は三種陰性の乳癌細胞株のいずれかを異種移植されたマウスにおける腫瘍増殖を遅延させた。

0165

実施例8:NRG依存性のBxPC3膵臓癌を異種移植されたマウスにおける、ペルツズマブと9F7−F11の併用療法
本発明者らは以前に、治療用抗体のトラスツズマブと他の標的化療法との組合せが、HER2発現の低い膵臓癌に対して相乗作用を示したことを実証した(Larbouret, 2007, 2010)。本発明者らは今回、HER2low膵臓癌においてアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11と抗HER2抗体のペルツズマブの併用療法を評価した。6週令の雌の無胸腺マウスの右腹側部に、ニューレグリンを分泌するHER2lowBxPC−3膵臓細胞(4.5×106個)(NRG依存性)を皮下注射した。腫瘍を有するマウスを、腫瘍が100mm3の体積に達した場合に異なる処置群に無作為に分類し(少なくとも6匹の動物/群)、その後、2又は10mg/kgのペルツズマブ、10mg/kgの9F7−F11、又はペルツズマブと9F7−F11の組合せ(10mg/kgの各々のモノクローナル抗体)で処置した。抗体を週2回4週間かけて(Q3D−4W)腹腔内(i.p.)に投与した。腫瘍の体積を式:D1×D2×D3/2によって計算した。生存期間の比較のために、腫瘍が1000mm3の体積に達した場合に屠殺した。

0166

どちらの抗体も単独で、非処置群と比較して腫瘍増殖を顕著に緩徐化させ(p<0.001)、抗HER3抗体の9F7−F11とペルツズマブとの間に有意差は観察されなかった(p=0.6488)(図12A)。50%生存期間中央値は、対照と比較して、9F7−F11で処置されたマウスにおいては17日間、及び、ペルツズマブで処置されたマウスにおいては23日間、有意に遅延された(図12A)。さらに、9F7−F11とペルツズマブを用いた共処置は、それぞれの単独の抗体よりも腫瘍増殖をはるかに阻害した(ペルツズマブ対9F7−F11/ペルツズマブ;p=0.004)。4週間の処置終了時に、腫瘍体積は、9F7−F11又はペルツズマブを単独で処置されたマウスにおいては増加し続けたが、9F7−F11/ペルツズマブの組合せを受けた動物では依然として極めて安定であった(図12A)。生存期間中央値は、対照動物(42日後のを得る;p=0.0001)又は単一の抗体を受けたマウスよりも、2つの抗体の組合せで処置された動物の方が長かった(9F7−F11/ペルツズマブ対9F7−F11 p=0.0013;9F7−F11/ペルツズマブ対ペルツズマブ p=0.0355)(図12A)。最後に、抗HER3抗体の9F7−F11とペルツズマブの組合せは、ペルツズマブ/トラスツズマブの組合せよりも顕著により効果的であり、平均生存期間は、ペルツズマブ/トラスツズマブで処置された動物(13日間)よりも、9F7−F11/ペルツズマブで処置された動物(42日間)の方が長かった(図12B)。要するに、これらの結果は、NRGに非競合的でアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11と抗HER2抗体のペルツズマブを使用した併用療法は、2つのHER2特異的抗体を使用した併用療法よりも、HER2low腫瘍に対してより効果的であることを実証した。

0167

実施例9:HER3のノックアウトは、NRG依存性のBxPC3膵臓癌を異種移植されたマウスにおいて、9F7−F11のインビボでの効力を消失させる
Lee-Hoeflich et al.(2008)の研究に基づいて、2つの短いヘアピンオリゴヌクレオチドを、サポートする材料及び方法に記載のとおり、HER3のmRNAレベルをノックダウンさせるために選択した。対照ベクター(shCTRL)pSIREN−shLucはL. Le Camによって親切にも提供され、これは以前に記載されていた(Le Cam et al., 2006)。次いで、ピューロマイシンN−アセチルトランスフェラーゼ耐性遺伝子を含有する、pSIREN−shHER3及びpSIREN−shLucを、両種指向性パッケージング細胞株AmphoPack−293(クロンテック社)にトランスフェクトした。2日後、複製欠損ウイルス粒子を含有する上清を回収し、これを使用してBxPC3細胞に感染させた。抗生物質による選択(10μg/mlのピューロマイシン)を2日後に開始した。選択から7日後に、細胞をサブクローニングし、内因性HER3タンパク質発現欠落に基づいて選択した。Harlan(Le Malcourlet、フランス)から購入した6週令の雌の無胸腺マウスの右腹側部に、上記のような親shHER3 BxPC−3細胞(3.5×106個)又は対照shLuc BxPC−3細胞(4.5×106個)を皮下注射した。腫瘍を有するマウスを、腫瘍が100mm3の体積に達した場合に異なる処置群に無作為に分類し(少なくとも6匹の動物/群)、その後、10mg/kgの9F7−F11を用いて週2回4週間かけて(Q3D−4W)腹腔内に処置した。

0168

HER3の発現と9F7−F11の治療効力との間の関係をインビボで確認するために、マウスに、shHER3 BxPC−3細胞又はshCTRL BxPC−3細胞を異種移植した(図13A)。本発明者らのインビトロでのデータと一致して、NRGに非競合的でアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11は、未処置の対照と比較して、shCTRL BxPC−3腫瘍異種移植片の増殖を有意に阻害した(p<0.0001及びp=0.0015)(図13A)。これに対して、未処置の対照と比較して、shHER3 BxPC−3癌細胞を異種移植され、9F7−F11抗体で処置されたマウスにおいては、有意な腫瘍増殖の退縮は全く観察されなかった(図13A)。実験終了時に、HER3の発現は依然として、処置されたマウスから単離されたshHER3 BxPC−3腫瘍異種移植片においてサイレンス状態であった(図13B)。これらの結果は、インビボでのHER3のノックダウンが、NRGに非競合的でアロステリックな抗HER3抗体の9F7−F11の治療効力を消失させることを示す。

0169

参考文献:
本出願全体を通して、様々な参考文献が、本発明が属する技術分野の最新技術を記載している。これらの参考文献の開示は、本開示への参照により本明細書に組み入れられる。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

関連する公募課題一覧

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ