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技術 上吹きランス及びそれを用いた転炉吹錬方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 田村鉄平小野慎平山田義博
出願日 2017年4月14日 (3年8ヶ月経過) 出願番号 2017-080461
公開日 2018年11月15日 (2年1ヶ月経過) 公開番号 2018-178204
状態 未査定
技術分野 炭素鋼又は鋳鋼の製造
主要キーワード 動圧変動 非定常解析 乱流モデル 動圧分布 火点位置 傾斜角γ 傾斜角δ 流体解析
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年11月15日)のものです。
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図面 (8)

課題

上底吹き転炉型精錬容器において、ランスを回転させる以外の方法で、吹錬中に連続的に火点を移動させることが可能な上吹きランスおよびそれを用いた転炉吹錬方法を提供する。

解決手段

上吹きランスのノズル部に形成された複数の噴出孔はそれぞれ、ノズルの中心軸に垂直な断面が円形である2つのノズルが合流して共有する噴出孔であり、第1のノズルのねじれ角をα、第2のノズルのねじれ角をβ、前記第1のノズルの傾斜角をγ、前記第2のノズルの傾斜角をδ、とした場合に、γ=δ、10°≦γ、δ≦30°、かつ(α+β)×sinγ≧20の条件を満たす。

概要

背景

従来、高炉生産された溶銑中炭素を除去するために、上底吹き転炉型精錬容器が広く使用されている。脱炭処理では、転炉型精錬容器に溶銑装入し、底吹き羽口から攪拌用のガスを吹き込んで溶銑を攪拌しながら、上吹きランスから酸素を上吹きし、溶銑中の炭素を酸化して除去する。また、生産性を増加させて溶鋼を製造するコストを下げるために、上吹き酸素流量を増加させて高速に吹錬を行うことが挙げられる。ところが、無理に酸素流量を増加させて吹錬を行うと、地金等のスプラッシュ飛散する量および飛散する距離が増大し、ランスや炉体、あるいは、スカートフードに地金が大量に付着(以下、スピッティング)し、冷却水漏れ等のトラブルを引き起こす。その結果、地金の除去や設備修理のための非稼働時間が増大し、生産性が低下してコストも多くかかってしまう。

そこで、このようなスピッティングを抑制するために、上吹きランスを回転させることによって、上吹きランスから噴出されるジェット溶銑浴面衝突する火点を移動させ、ジェットの運動量が溶銑面広範囲に分散されるようにする技術が提案されている。上吹きランスを回転させて吹錬を行う技術としては、例えば特許文献1及び2に開示されている。

概要

上底吹き転炉型精錬容器において、ランスを回転させる以外の方法で、吹錬中に連続的に火点を移動させることが可能な上吹きランスおよびそれを用いた転炉吹錬方法を提供する。上吹きランスのノズル部に形成された複数の噴出孔はそれぞれ、ノズルの中心軸に垂直な断面が円形である2つのノズルが合流して共有する噴出孔であり、第1のノズルのねじれ角をα、第2のノズルのねじれ角をβ、前記第1のノズルの傾斜角をγ、前記第2のノズルの傾斜角をδ、とした場合に、γ=δ、10°≦γ、δ≦30°、かつ(α+β)×sinγ≧20の条件を満たす。

目的

したがって、上吹きランスを回転させる方法以外で、火点を移動させながらスピッティングを抑制しつつ、脱炭吹錬を高速化できる方法が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

先端面にガス噴出する複数の噴出孔を有するノズル部を備えた上吹きランスであって、前記複数の噴出孔は、ランス中心軸に同心の円上で円周方向に等間隔に配置されており、前記複数の噴出孔はそれぞれ、ノズルの中心軸に垂直な断面が円形である2つのノズルが合流して共有する噴出孔であり、前記2つのノズルは第1のノズル及び第2のノズルであり、前記第1のノズルの中心軸を前記ランス中心軸に垂直な平面に投影した直線と前記第2のノズルの中心軸を前記ランス中心軸に垂直な平面に投影した直線との交点と、当該平面と前記ランス中心軸との交点とを通過する直線に対して、前記第1のノズルの中心軸を前記ランス中心軸に垂直な平面に投影した直線との角度をα、前記第2のノズルの中心軸を前記ランス中心軸に垂直な平面に投影した直線との角度をβ、とし、前記ランス中心軸と平行でかつ前記第1のノズルの中心軸を含む平面において、前記ランス中心軸と平行な直線と前記第1のノズルの中心軸とのなす鋭角をγ、前記ランス中心軸と平行でかつ前記第2のノズルの中心軸を含む平面において、前記ランス中心軸と平行な直線と前記第2のノズルの中心軸とのなす鋭角をδ、とした場合に、γ=δ、10°≦γ、δ≦30°、かつ(α+β)×sinγ≧20の条件を満たし、さらに前記第1のノズル及び前記第2のノズルには、それぞれ別個に前記ガスを運搬するための配管が結合されていることを特徴とする上吹きランス。

請求項2

前記第1のノズルの中心軸と前記第2のノズルの中心軸とのなす角度をθとした場合に、θが38°以下であることを特徴とする請求項1に記載の上吹きランス。

請求項3

さらに、α=βであることを特徴とする請求項1又は2に記載の上吹きランス。

請求項4

請求項1〜3のいずれか1項に記載の上吹きランスを用いて吹錬を行う転炉吹錬方法であって、前記第1のノズルから噴出させる酸素ガス流量Aと前記第2のノズルから噴出させる酸素ガス流量Bとのガス流量の割合:RA=A/(A+B)を周期的に変化させることを特徴とする転炉吹錬方法。

請求項5

1秒あたりの火点移動距離Lと火点直径Dとの比L/Dを1.3以上とすることを特徴とする請求項4に記載の転炉吹錬方法。

技術分野

0001

本発明は、上底吹き転炉型精錬容器を用いて溶銑脱炭処理を行う際に使用される転炉用の上吹きランス、およびそれを用いた転炉吹錬方法に関する。

背景技術

0002

従来、高炉生産された溶銑中炭素を除去するために、上底吹き転炉型精錬容器が広く使用されている。脱炭処理では、転炉型精錬容器に溶銑を装入し、底吹き羽口から攪拌用のガスを吹き込んで溶銑を攪拌しながら、上吹きランスから酸素を上吹きし、溶銑中の炭素を酸化して除去する。また、生産性を増加させて溶鋼を製造するコストを下げるために、上吹き酸素流量を増加させて高速に吹錬を行うことが挙げられる。ところが、無理に酸素流量を増加させて吹錬を行うと、地金等のスプラッシュ飛散する量および飛散する距離が増大し、ランスや炉体、あるいは、スカートフードに地金が大量に付着(以下、スピッティング)し、冷却水漏れ等のトラブルを引き起こす。その結果、地金の除去や設備修理のための非稼働時間が増大し、生産性が低下してコストも多くかかってしまう。

0003

そこで、このようなスピッティングを抑制するために、上吹きランスを回転させることによって、上吹きランスから噴出されるジェット溶銑浴面衝突する火点を移動させ、ジェットの運動量が溶銑面広範囲に分散されるようにする技術が提案されている。上吹きランスを回転させて吹錬を行う技術としては、例えば特許文献1及び2に開示されている。

先行技術

0004

特開昭62−130211号公報
特開2016−74954号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかし、上吹きランスを回転させるためには、上吹きランス本体を回転させるモーターベアリング等が備わる設備へ変更しなければならない。さらにメンテナンスという観点でも、上吹きランスが長尺物であることから簡単に行うことができない。したがって、上吹きランスを回転させる方法は、それらの設備課題の克服が困難なため、現在では実用化することが困難である。したがって、上吹きランスを回転させる方法以外で、火点を移動させながらスピッティングを抑制しつつ、脱炭吹錬を高速化できる方法が望まれている。

0006

本発明は、前述の問題点を鑑み、上底吹き転炉型精錬容器において、ランスを回転させる以外の方法で、吹錬中に連続的に火点を移動させることが可能な上吹きランスおよびそれを用いた転炉吹錬方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

ランス中心軸を中心に上吹きランスを回転させた場合には、浴面中心を中心として円周方向に火点が移動するが、上吹きランスを回転させずに火点を円周方向に移動させるためには、ジェットの噴射方向を変化させることが必要である。ここで、ジェットの噴射方向を変化させるためには、上吹きランス先端ノズルの向きを機械的に変化させる方法も考えられるが、転炉内高温場ダストや地金が飛散する状況で、ノズルの向きを機械的に変化させる機構を設けることは非常に困難である。したがって、上吹きランス先端のノズルにおいては機械的な変化を与えないで、ジェットの噴射方向を変化させる必要がある。

0008

そこで本発明者らは、例えば図1及び図2に示すように、2系統ガス流路ノズル出口合体する二股のノズルを有する上吹きランスを見出した。そして、その上吹きランスの2系統の流路ガス流量比を制御することにより、その上吹きランスから噴出されるジェットの方向を調整して、火点を円周方向に移動させる方法を見出した。

0009

本発明は、以下の通りである。
(1)先端面にガスを噴出する複数の噴出孔を有するノズル部を備えた上吹きランスであって、
前記複数の噴出孔は、ランス中心軸に同心の円上で円周方向に等間隔に配置されており、
前記複数の噴出孔はそれぞれ、ノズルの中心軸に垂直な断面が円形である2つのノズルが合流して共有する噴出孔であり、
前記2つのノズルは第1のノズル及び第2のノズルであり、
前記第1のノズルの中心軸を前記ランス中心軸に垂直な平面に投影した直線と前記第2のノズルの中心軸を前記ランス中心軸に垂直な平面に投影した直線との交点と、当該平面と前記ランス中心軸との交点とを通過する直線に対して、前記第1のノズルの中心軸を前記ランス中心軸に垂直な平面に投影した直線との角度をα、前記第2のノズルの中心軸を前記ランス中心軸に垂直な平面に投影した直線との角度をβ、とし、
前記ランス中心軸と平行でかつ前記第1のノズルの中心軸を含む平面において、前記ランス中心軸と平行な直線と前記第1のノズルの中心軸とのなす鋭角をγ、前記ランス中心軸と平行でかつ前記第2のノズルの中心軸を含む平面において、前記ランス中心軸と平行な直線と前記第2のノズルの中心軸とのなす鋭角をδ、とした場合に、
γ=δ、10°≦γ、δ≦30°、かつ(α+β)×sinγ≧20の条件を満たし、さらに前記第1のノズル及び前記第2のノズルには、それぞれ別個に前記ガスを運搬するための配管が結合されていることを特徴とする上吹きランス。
(2)前記第1のノズルの中心軸と前記第2のノズルの中心軸とのなす角度をθとした場合に、θが38°以下であることを特徴とする上記(1)に記載の上吹きランス。
(3)さらに、α=βであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の上吹きランス。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の上吹きランスを用いて吹錬を行う転炉吹錬方法であって、
前記第1のノズルから噴出させる酸素ガス流量Aと前記第2のノズルから噴出させる酸素ガス流量Bとのガス流量の割合:RA=A/(A+B)を周期的に変化させることを特徴とする転炉吹錬方法。
(5)1秒あたりの火点移動距離Lと火点直径Dとの比L/Dを1.3以上とすることを特徴とする上記(4)に記載の転炉吹錬方法。

発明の効果

0010

本発明によれば、上底吹き転炉型精錬容器において、ランスを回転させる以外の方法で、吹錬中に連続的に火点を移動させて、高速吹錬中にスピッティングの発生を抑制することができる。

図面の簡単な説明

0011

本発明の実施形態に係る上吹きランス先端のノズルの形状を説明するための図である。
本発明の実施形態に係る上吹きランス内のガスの流路を説明するための図である。
円筒管Aと円筒管Bとからジェットを噴射した場合の火点の移動軌跡を説明するための図である。
円筒管Aと円筒管Bとのなす角θ動圧変動幅との関係を示す図である。
周波数Fを変化させた場合の脱炭吹錬実験において得られた炉口に付着した地金の厚みの結果を示す図である。
火点直径D(mm)と1秒あたりの火点移動距離L(mm/s)との比L/Dを変化させた場合の脱炭吹錬実験において得られた炉口に付着した地金の厚みの結果を示す図である。
火点直径D(mm)と火点移動可能距離K(mm)との比K/Dを変化させた場合の脱炭吹錬実験において得られた炉口に付着した地金の厚みの結果を示す図である。

0012

以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る上吹きランス先端のノズルの形状を説明するための図である。以下、図1に示す2つのノズル(1組のノズル)をそれぞれ「円筒管A」と「円筒管B」として説明する。上吹きガスを流す際には、図2に示すガス流路から円筒管Aと円筒管Bとに上吹きガスを流すが、円筒管Aと円筒管Bとの合計のガス流量は一定とし、円筒管Aと円筒管Bとの上吹きガスの流量比を変化させることによって、ジェットの方向を変更できる。

0013

図3は、円筒管Aと円筒管Bとからジェットを噴射した場合の火点の移動軌跡を説明するための図である。
例えば、ガスの流量比を円筒管A:円筒管B=100:0とすると、円筒管Aのみに上吹きガスが流れ、この円筒管Aの中心軸の方向に沿ってジェットは噴出される。また、ガスの流量比を円筒管A:円筒管B=0:100とすると、円筒管Bのみに上吹きガスが流れ、この円筒管Bの中心軸の方向に沿ってジェットは噴出される。この流量比を変化させることによって、図3に示すように、円筒管Aの中心軸方向と円筒管Bの中心軸方向との間においてジェットの進行方向を制御することができる。

0014

次に、ノズルの形状の詳細な条件について説明する。図1に示すように、円筒管A及び円筒管Bの噴出孔が、上吹きランスの中心軸に同心の円状に円周方向に等間隔に配置されている。そして、円筒管A及び円筒管Bは、それぞれねじれ角α、βで傾いたまま合体した形状となっており、また、図1に示すように、円筒管A及び円筒管Bの中心軸に直交する断面は円形であり、上吹きガスの出口である噴出孔は、円筒管A及び円筒管Bが合流して共有する噴出孔となっている。さらに合体した部分(重なった部分)は、ノズル壁を有していない。

0015

図1に示すように、上吹きランスの中心軸であるz軸と垂直な平面をxy平面とした場合、ねじれ角α、βは、それぞれ円筒管A及び円筒管Bの中心軸をxy平面に投影した直線が、xy平面上で噴出孔の中心と座標原点(上吹きノズルの中心点)とを結ぶ直線(図1のy軸)との間でなす角度を表している。このねじれ角α、βによって、ガスの流量比を制御して火点を移動させる範囲が決まる。ねじれ角α、βの範囲については後述する。

0016

さらに、図1に示すように、円筒管Aは、円筒管Aの噴出孔の中心を通り上吹きランスの中心軸(図1のz軸)に平行な直線と円筒管Aの中心軸との間に、(0)−(0)'面上で鋭角の傾斜角γが設けられている。同様に、円筒管Bも鋭角の傾斜角δが設けられている。なお、(0)−(0)'面は、円筒管Aの中心軸を含み、且つz軸に平行な平面である。この傾斜角γ、δによって、上吹きランス真下の位置から火点までの距離が決まる。傾斜角γ、δの範囲については後述する。

0017

なお、図1及び図2に示す例では、上吹きノズルには、3組の円筒管A及び円筒管Bを設けた例について説明したが、円筒管A及び円筒管Bの組数は特に限定するものではないが、ノズル及びガス流路の製造の手間及びコストを考慮して、3〜4組程度とすることが好ましい。また、ガス流路についても図2に示した例に限定されない。

0018

次に、ねじれ角α、βおよび傾斜角γ、δの範囲について説明する。なお、本実施形態では、ノズルの径はランス高さHに比べて小さい値となるため、計算上ノズルの径は無視するものとする。また、円筒管Aの傾斜角γ及び円筒管Bの傾斜角δは略同じ角度とし、計算上γ=δとみなして計算するものとする。

0019

傾斜角γ、δは10°以上30°以下とする。傾斜角γ、δが10°未満である場合には、ジェット同士が合体してしまう恐れがある。また、傾斜角γ、δが30°超であると、ジェットが炉壁に接近し過ぎてしまう。

0020

一方、ねじれ角α、βについては、ねじれ角の和(α+β)で上限及び下限を規定することができるが、傾斜角γ、δによって上限及び下限が異なってくる。以下、ねじれ角α、βの範囲について説明する。

0021

まず、ねじれ角の和の上限については、以下の数値流体解析の結果から求めた。下記の数値流体解析によって、円筒管Aと円筒管Bとが出口で重なる形状のノズルから酸素ガスを流した場合のジェットの挙動などについて確認した。円筒管A及び円筒管Bの形状については、直径8.0mmのストレートノズルとし、ねじれ角α、βが5〜60°の範囲で、傾斜角γ、δが10〜30°のノズルの形状とした。数値流体解析はk−ε乱流モデルを用いた非定常解析で行い、境界条件として、円筒管Aと円筒管Bの酸素ガス総流量を12.0Nm3/min一定で、円筒管Aに流す割合RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを連続的、かつ周期的に行った。RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを1周期と定義し、その周波数を3Hz一定に保持した。

0022

酸素ガスを流し始めて5秒後以降の流れが一定のパターン落ち着いた後に、ノズル先端から500mmのランス軸に垂直な面の動圧分布を測定した。なお、その最大動圧の箇所は溶銑に酸素を吹き付けた際のランス高さH=500mmの条件における火点であり、その動圧は火点の動圧とみなせるものとした。結果を以下の表1及び図4に示す。なお、数値流体解析では、α=β、γ=δとした。

0023

0024

ここで、θは、円筒管Aと円筒管Bのそれぞれの中心軸のなす鋭角を表しており、動圧変動幅は、|瞬間動圧値−平均動圧値|/平均動圧値×100とした。解析の結果、いずれの条件においてもランス高さH=500mmの条件における火点位置は、3Hzで周期的に円筒管Aに酸素ガスを流す割合RAを変化させることにより、3Hzで円周方向に移動できることが確認できた。ただし、その火点動圧の安定性は条件によって異なることも確認した。

0025

火点動圧が安定しないと、不安定なジェットの二次燃焼をもたらし、耐火物局所溶損などをもたらす恐れがある。表1に示すように、α、β、γ、δの角度の大きさが大きくなるほど、ジェットの不安定性が大きくなるが、それは円筒管Aと円筒管Bのそれぞれの中心軸のなす角θが大きくなり、その角度が大きくなると酸素ガスの円筒管Aと円筒管Bの重なる箇所でのガスの乱れが大きくなるためと推測される。許容しうる平均動圧からの動圧変動幅を5%とした場合、図4に示すようにθは38°まで許容できることが確認できた。なお、θは、γ=δとした場合にα、β、γとの関係で以下の式(1)によって定義できる。
θ=2×arctan(tan((α+β)/2)・sin(arctan(tanγ・cos((α+β)/2))))
・・・(1)

0026

以上のようにθは38°以下であることが好ましいことから、ねじれ角の和(α+β)の好ましい上限は、傾斜角γとの関係で式(1)の右辺が38°以下という条件によって定義される。

0027

次に、ねじれ角の和(α+β)の下限について説明する。図3に示すように、ねじれ角の和(α+β)が小さいと、火点移動可能距離Kが小さくなる。火点移動可能距離Kは、以下の式(2)によって算出することができる。また、火点の直径Dは、ジェットの拡がり半角をφとした場合、以下の式(3)によって算出される。
K=2π×H×tanγ×(α+β)/360 ・・・(2)
D=2H/cosγ×tanφ ・・・(3)

0028

ここで、スピッティングを抑制するためには、火点の範囲のすべてが移動によって重ならないようにすることが必要である。つまり、後述する図7に示した実験結果からもわかるとおり、火点移動可能距離K(mm)と火点直径(mm)との比を1.0以上とする必要がある。つまり、ジェットの拡がり半角φ=10°として、K/D≧1.0の条件および上述の式(2)及び式(3)から、以下の式(4)の条件が算出される。
(α+β)×sinγ≧20 ・・・(4)

0029

以上のようにスピッティングを抑制するためには、式(4)の条件を満たす必要があることから、ねじれ角の和(α+β)の下限は、傾斜角γとの関係で式(4)によって定義される。また、ねじれ角α、βは、製造コストの関係から同じ角度であることが好ましい。ねじれ角α、βが同じである場合は、ジェットの拡がり角度との関係でα、β≧5°であることが好ましい。

0030

次に、前述した形状のノズルを備えた上吹きランスを用いて脱炭吹錬を行う好適な条件について説明する。さらに、上記の方法にて円筒管Aおよび円筒管Bのガス流量比制御の周波数の好適な範囲を調査するため、試験転炉を用いて脱りん後の溶銑の脱炭吹錬実験を実施した。また、脱りん後の溶銑の脱炭吹錬実験では、上記の方法での高速吹錬時のスピッティング低減に好適なガス流量比制御方法についても調査した。

0031

[溶銑の脱炭実験]
まず、溶銑2.0tを転炉に装入し、最大粒径が20mmの塊生石灰10.0kgと硅石2.5kgとを添加した後、上吹きランスから酸素を溶銑に吹き付けて脱炭吹錬を行い、地金飛散の多少について調査する実験を行った。なお、塊生石灰中のCaO濃度は92%であった。
溶銑は、温度1300℃、[%C]=3.5質量%、[%Si]=0.01質量%、[%Mn]=0.10質量%、[%P]=0.02質量%、[%S]=0.001質量%の条件にて2.0tを転炉に装入した。浴深は385mmであった。

0032

上吹きランスは、一般的なノーマルランス、および本実施形態の二股のノズルを有するランスを用いて脱炭吹錬を行い、炉口に付着した地金の厚みをもって地金飛散の多少について評価した。
ノーマルランスは、傾斜角20°、直径8.0mmのストレートノズルを同一円周上に等間隔に3孔配したものを用いた。一方、本実施形態の二股のノズルを有する上吹きランスは、ノズル部において、直径が8.0mmの2つの円筒管A及び円筒管Bからなり、円筒管Aのねじれ角α、および円筒管Bのねじれ角βは同じ45°で、円筒管Aの傾斜角γ、および円筒管Bの傾斜角δは同じ20°とした。つまり、円筒管Aと円筒管Bとのなす角度θが28.0°である二股のノズルを3組、同一円周上に等間隔に配したものを用いた。

0033

上吹き酸素流量は、12.0Nm3/min一定とし、吹錬時間は6.0minとした。また、ランスの高さHは500mm一定とした。さらに、溶銑の撹拌のために底吹きガスによる撹拌も行い、底吹きは4本羽口とし、脱炭吹錬中に各底吹き羽口からArガスを0.2Nm3/minで流した。

0034

本実施形態の二股のノズルを有する上吹きランスを用いる際には、酸素ガス総流量は12.0Nm3/min一定で、かつ、円筒管Aと円筒管Bとのうち、円筒管Aに流す割合RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを連続的、かつ周期的に行った。RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを1周期と定義し、その周波数を0.1〜10Hzで一定に保持した。図5には、周波数Fを変化させた場合の脱炭吹錬実験において得られた炉口に付着した地金の厚みの結果を示す。なお、図5に示す縦軸の数値は、ノーマルランスを用いた条件にて付着した地金の厚みを1.0とした場合の比を表しており、その他の結果については、このノーマルランスを用いた条件の計測値で割った値で比較・評価した。

0035

本実施形態の上吹きランスを使用する条件では、ガス流量比制御の周波数を上げることによって炉口に付着した地金の厚みが小さくなり、0.5Hz以上とすることにより、ノーマルランスに比べて地金の厚みが半分にまで小さくなった。これは、高速のジェットが溶銑に衝突して飛散していた地金が、火点が移動することにより、ジェットの運動量が溶銑に分散することで、地金の飛散が抑制されたためと考えられる。

0036

但し、スピッティングの低減効果はガス流量比制御の周波数だけでは決まらず、ランス形状、吹錬条件にも依存すると考えられる。そこで、まず、火点直径D(mm)と1秒あたりの火点移動距離L(mm/s)との比L/Dで評価することとした。前述したように、γ=δとし、火点直径D(mm)は前述した式(3)により求められる。また、1秒あたりの火点移動距離L(mm/s)は、式(2)に示した火点移動可能距離K(mm)とガス流量制御の周波数F(Hz)とを用いて以下の式(5)で求められる。
L=2×K×F ・・・(5)

0037

図6は、図5の結果をL/Dで評価しなおした結果を示している。図6に示すように、L/D≧1.3(1/s)、つまり、1秒間で火点が直径の1.3倍分移動すればノーマルランスに比べて地金の厚みが半分となることがわかった。

0038

但し、L/D≧1.3(1/s)であっても、上吹きノズルの条件が前述の式(4)を満たさない場合は、火点が殆ど移動せずに狭い範囲を高速移動していることになり、スピッティングを抑制することができない。そこで、DおよびL/Dを固定して、K/Dを変えて同様の実験を行った。その際、L/Dは2.0(1/s)になるよう、ねじれ角と周波数とを変更し、それ以外の条件は前の実験と同様とした。その結果を図7に示す。図7に示すように、火点移動可能距離K(mm)と火点直径D(mm)との比が1.0以上とすることにより、地金が減ることが確認できた。つまり、上吹きランスのノズルが式(4)の条件を満たす必要があることが確認できた。

0039

次に、本発明を実施例に基づいて更に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

0040

300t/heatの上底吹き転炉において、脱りん後の溶銑の脱炭吹錬を行い、本発明の効果を確認した。まず、脱りん後の溶銑とスクラップとを合計290〜300t転炉に装入し、最大粒径が30mmの塊生石灰を3.0〜4.0t、最大粒径が30mmの塊硅石を0.8〜1.2t、MgO煉瓦屑を0.2〜0.3t、鉄鉱石を1.5〜2.0t添加した後、溶銑浴面から約3000mm上に設置した上吹きランスから1800Nm3/minにて酸素を溶銑に吹き付け、処理後の[%C]が0.04質量%となるよう、吹錬時間を調整した。評価は、上記条件に適合する10Chの平均鉄分歩留りで行った。鉄分歩留りは、吹錬前に転炉内へ装入した溶銑、スクラップ中の鉄分に対する、吹錬後の取鍋内の溶鋼中の鉄分の重量比から求めた。

0041

(比較例1)
まず、上吹きランスに、スロート径が80mmでノズル傾斜角が20°のノズルが同一円周上に等間隔で配置された4孔のノーマルランスを用いて実験を行った。この実験では、ランスの高さHは溶銑の静止湯面から3000mmで一定とした。実験の結果、吹錬中のスプラッシュの発生規模が大きく、スピッティングが炉口から炉外へ頻繁に流出する様子がみられた。このノーマルランスを用いた場合の10Chの平均鉄歩留り(%)を算出し、これを基準として、他条件との比較を行った。

0042

(比較例2)
この実験では、上吹きランスには、二股のノズルを有する上吹きランスを用いた。実験に用いた上吹きランスは、ノズル部において、直径が80mmの2つの円筒管A、円筒管Bからなり、円筒管Aのねじれ角α、および円筒管Bのねじれ角βは同じ25°で、円筒管Aの傾斜角γ、および円筒管Bの傾斜角δは同じ20°で、円筒管Aと円筒管Bとのなす角θが16.6°である二股のノズルを4組、同一円周上に等間隔に配したランスである。

0043

酸素ガス総流量は一定として、円筒管Aと円筒管Bとのうち、円筒管Aに流す割合RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを連続的、かつ周期的に行った。RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを1周期と定義し、その周波数Fを1.0Hzで一定に保持した。また、ランスの高さHは溶銑の静止湯面から3000mmで一定とした。上記条件から、L/Dは1.7(1/s)であったが、K/Dは0.8であり、計算の結果、(α+β)×sinγ=17.1の条件であった。

0044

実験の結果、上吹きランスの形状が(4)式の条件を満たしていなかったため、吹錬中のスプラッシュの発生規模は小さくなっておらず、スピッティングが炉口から炉外へ流出する頻度は比較例1と比較して同程度であった。このことから、10Chの平均鉄歩留り(%)を算出した結果、比較例1にてノーマルランスを用いた場合の平均鉄歩留り(%)に対して、変化が認められなかった。一方、円筒管Aと円筒管Bとのなす角θは16.6°で38°以下であったため、動圧変動幅は小さく、耐火物の大きな溶損など、ジェットが乱れることで生じうる影響などはなかった。

0045

(比較例2)
この実験では、上吹きランスには、二股のノズルを有するランスを用いた。実験に用いた上吹きランスは、ノズル部において、直径が80mmの2つの円筒管A、円筒管Bからなり、円筒管Aのねじれ角α、および円筒管Bのねじれ角βは同じ45°で、円筒管Aの傾斜角γ、および円筒管Bの傾斜角δは同じ20°で、円筒管Aと円筒管Bとのなす角θが28.0°である二股のノズルを4組、同一円周上に等間隔に配したランスである。

0046

酸素ガス総流量は一定として、円筒管Aと円筒管Bとのうち、円筒管Aに流す割合RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを連続的、かつ周期的に行った。RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを1周期と定義し、その周波数を0.25Hzで一定に保持した。また、ランスの高さHは溶銑の静止湯面から3000mmで一定とした。K/Dは1.5で(α+β)×sinγ=30.8の条件であったが、上記条件から、L/Dは0.76(1/s)であった。

0047

実験の結果、L/Dが1.3以上でなかったため、吹錬中のスプラッシュの発生規模は小さくならず、スピッティングが炉口から炉外へ流出する頻度は比較例1と比較し同程度であった。このことから、10Chの平均鉄歩留り(%)を算出した結果、比較例1にてノーマルランスを用いた場合の平均鉄歩留り(%)に対して、変化が認められなかった。一方、円筒管Aと円筒管Bとのなす角θは28.0°で38°以下であったため、動圧変動幅は小さく、耐火物の大きな溶損など、ジェットが乱れることで生じうる影響などはなかった。

0048

(実施例1)
この実験では、上吹きランスには、二股のノズルを有するランスを用いた。実験に用いた上吹きランスは、ノズル部において、直径が80mmの2つの円筒管A、円筒管Bからなり、円筒管Aのねじれ角α、および円筒管Bのねじれ角βは同じ45°で、円筒管Aの傾斜角γ、および円筒管Bの傾斜角δは同じ20°で、円筒管Aと円筒管Bとのなす角θが28.0°である二股のノズルを4組、同一円周上に等間隔に配したランスである。

0049

酸素ガス総流量は一定として、円筒管Aと円筒管Bとのうち、円筒管Aに流す割合RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを連続的、かつ周期的に行った。RAを0.0から1.0まで増加させ、その後0.0まで減少させることを1周期と定義し、その周波数を1.0Hzで一定に保持した。また、ランスの高さHは溶銑の静止湯面から3000mmで一定とした。上記条件から、L/Dは3.1(1/s)で、K/Dは1.5、(α+β)×sinγ=30.8の条件であった。

実施例

0050

実験の結果、吹錬中のスプラッシュの発生規模は小さく、スピッティングが炉口から炉外へ流出する頻度は比較例1と比較して減少した。このことから、本実施例での10Chの平均鉄歩留り(%)を算出した結果、比較例1にてノーマルランスを用いた場合の平均鉄歩留り(%)に対して、0.13%増加した。また、円筒管Aと円筒管Bとのなす角θは28.0°で38°以下であったため、動圧変動幅は小さく、耐火物の大きな溶損など、ジェットが乱れることで生じうる影響などはなかった。

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