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技術 異常活性化細胞検出による悪性腫瘍の検査方法および異常活性化細胞除去環流返血治療装置

出願人 国立大学法人岡山大学
発明者 岡剛史藤田洋史吉野正
出願日 2018年6月7日 (7ヶ月経過) 出願番号 2018-109331
公開日 2018年10月4日 (3ヶ月経過) 公開番号 2018-153195
状態 未査定
技術分野 酵素、微生物を含む測定、試験 蛍光または発光による材料の調査,分析 生物学的材料の調査,分析 体外人工臓器
主要キーワード 濃度調整器 推定用データ 適用除外 字コネクタ 連結ライン 液滴形成後 人工透析装置 光動力学
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (13)

課題

液中の異常活性化細胞、特に異常活性化白血球あるいは白血病前駆細胞を除去することにより白血病の発症を抑制または治療するための異常活性化細胞除去環流返血治療装置を提供する。

解決手段

プロトポルフィリンIXを高濃度蓄積させることにより識別可能とした血液中の白血病細胞など異常活性化細胞を除去する異常活性化白血球除去環流返血治療装置であって、一端に採血用の穿刺針を備えた採血用ラインと、この採血用ラインによって送給された血液から白血球分画を分離する遠心分離器と、分離された白血球分画に対してセルソーターによって異常活性化細胞を除去するセルソーターと、異常活性化細胞が除去された正常白血球分画に対して所定波長の光を照射する光照射器と、白血球分画以外の血液成分からなる環流返血液と環流返血用の正常白血球分画とを環流返血する環流返血用ラインとを備えた異常活性化細胞除去環流返血治療装置とする。

概要

背景

昨今、日本国においては、白血病発生率が年々増加する傾向にある。白血病を原因とする死亡者数は、2008年において約11,156人であり、人口10万人あたり8.8人(男性10.5人、女性7.1人)となっている。

特に、成人T細胞白血病リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma: ATLL)は難治性白血病・リンパ腫であることが知られている。その原因ウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルスI型(Human T-cell leukemia virus type I:HTLV-I)のキャリアーの中から日本で年間約700例が発症している。特に、HTLV-Iのキャリアー1,000人あたりの年間ATLL発症率は、男性で1.0〜1.5人、女性で0.5〜0.7人であり、さらには、30以上のHTLV-Iのキャリアーにおける生涯発症率は、男性で4〜7%、女性で2%台である。現在、日本で約108万人、世界では約2,000万人のキャリアーが存在する。

ATLLは、HTLV-IがCD4陽性細胞に感染し、細胞−細胞間で感染し、長い潜伏期間の中で免疫機構から逃れたクローンが遺伝子異常、染色体異常エピジェネティック異常などを集積して、細胞を腫瘍化させることで発症すると考えられている。HTLV-Iのキャリアーの3〜5%が、HTLV-I感染後40〜60年してATLLを発症する。また、感染経路は主として母乳感染、輸血性交である。

ATLLは1991年に予後因子解析臨床病態の特徴から、白血化、臓器浸潤、高LDH血症、高Ca血症の有無と程度により急性型、リンパ腫型慢性型、くすぶり型の4病型分類提唱され、最近の報告による生存期間中央値は急性型11ヶ月、リンパ腫型20ヶ月、慢性型24ヶ月、くすぶり型では3年以上である。最近の化学療法と同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)による治療成績は改善しているが、他の白血病と比べると依然予後不良である。ATLL患者の臨床病型別生存曲線によると、急性型およびリンパ腫型ATLLの患者の生存率は、観察開始から1年以内に50%以下にまで低下する。患者は男性にやや多く、日本での発症年齢中央値は67歳であり、40歳未満での発症は稀である。

このような難治性のATLLの従来の診断方法は、患者の末梢血におけるHTLV-I感染腫瘍細胞の同定の他、リンパ節腫脹肝脾腫高カルシウム血症皮膚病変が多く日和見感染症合併が多いなどATLLに特異的な臨床症状を基準とするものである。

しかし、このような方法では、特に急性型やリンパ腫型ATLLでは、発症し症状が出始めた段階にならなければ診断ができず、それゆえ早期にこれらを診断することができないため、治療が手遅れになってしまう可能性がある。また抗癌剤による治療に抵抗性で予後不良である。

ATLLの予後を推定するためのデータの収集において、末梢血単核球(PBMC)の特定の遺伝子群について、それらの遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島メチル化状態を測定する方法について開示がある(特許文献1)。当該遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化プロファイルを作成するとともに、予後因子としてCIMP(CpG island methylator phenotype)を算出し、メチル化遺伝子、メチル化遺伝子数およびCIMP値から算出されるATLL発症/進展危険度スコアによる危険度の階層化および/または特定の遺伝子のメチル化状態を表示することにより、HTLV-Iのキャリアーの発症またはindolent型(緩徐進行型)であるくすぶり型および慢性型ATLLがaggressive型(高悪性型)である急性型およびリンパ腫型ATLLへの進展を予測することを可能とするATLL予後推定用データを作成する方法に関するものである。

高悪性度の急性型やリンパ腫型ATLLおよび予後不良因子を有する慢性型ATLLは、化学療法の適応であるが、非ホジキンリンパ腫標準的治療法(CHOP療法)などに抵抗性であるため、G-CSF顆粒球コロニー刺激因子)を併用して短い治療間隔で強力な化学療法が繰り返して行われる。

一方、低悪性度のくすぶり型や、予後不良因子を有さない慢性型ATLLは、皮膚病変には局所的に対処し、慢性リンパ性白血病などの疾患と同様に急性転化するまでは化学療法をせずに経過観察することが原則とされるが、その長期予後は良好ではない。近年、allo-HSCTでは宿主片対ATL効果により長期生存が期待でき、検討されるべき治療法であるものの、通常のallo-HSCTでは治療が難しい宿主や疾患も存在し、高齢者等では胸腺が委縮しているためT細胞の産生能が低く、免疫不全間質性肺炎を起こしやすいなどの問題もある。同種移植を受けた場合にしばしばみられる合併症で、ドナー由来リンパ球が患者の臓器を自分のものでないとみなして攻撃し、排除しようとする、移植片対宿主病(GVHD)の危険性の問題もある。また、今後抗体医薬などの新規治療法の開発が期待されるものの、予後が優れた効果的な治療方法の開発が望まれている。

光感受性物質ポルフィリン関連化合物生理的前駆体である5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid(5-ALA))の投与により、ヘム代謝経路を経てプロトポルフィリンIX(PpIX)が組織球性リンパ腫培養細胞に多量に蓄積され、強い蛍光を発生が報告されている。この性質を利用して、5-ALA投与により強いPpIX蛍光を発する白血病細胞健常細胞から識別することが可能となることが検討され、5-ALA依存性光動力学的治療法(PDT:Photo-Dynamic Therapy)では、標的腫瘍細胞に蓄積したPpIXへ の光照射で生成する一重項酸素などの活性酸素種(ROS)が、特異的に腫瘍細胞の細胞死誘導できると考えられることが報告されている(非特許文献1)。

一方、白血病ではないが、血液中不水溶性間接非抱合型ビリルビン代謝不全の患者に対して、人工透析の際に人体から取り出した血液に所定波長の光を照射することにより水溶性直接ビリルビンに変換して不水溶性の間接ビリルビンの濃度を低下させる方法が開示されている(特許文献2)。体内ヘモグロビンから形成される不水溶性の間接ビリルビンは、通常肝臓で水溶性の直接(抱合型)ビリルビンへと変換されて腎臓を介して排出されているが、肝機能不全等が生じると水溶性の直接ビリルビンへの変換が行われず、血中の不水溶性の間接ビリルビンの濃度が上昇することが知られている。不水溶性の間接ビリルビンは、所定波長の光の照射によって水溶性の直接ビリルビンに変換可能であり、肝機能不全等によって不水溶性の間接ビリルビンの濃度が上昇した患者に対して、当該光を照射することにより水溶性の直接ビリルビンに変換して不水溶性の間接ビリルビンの濃度を低下させることができる。

ATLL発症の危険性の高いHTLV-Iキャリアーおよび慢性型ATLLやくすぶり型ATLLの様な低悪性度ATLLのなかで高悪性度の急性型およびリンパ腫型ATLLへ急性転化(進展)する可能性の高い患者や予後不良因子を有する慢性型ATLL患者に関し、早期に発症/進展の危険度を検出する方法、また発症後も予後不良を回避可能な有効な治療方法の開発が望まれている。この方法の開発は発症可能性の低いHTLV-Iキャリアーおよび病態進展の可能性の低い低悪性度ATLL患者に対しては発症/進展の不安を可能な限り取り除き、生活の質(QOL)の改善にもつながる。

概要

血液中の異常活性化細胞、特に異常活性化白血球あるいは白血病前駆細胞を除去することにより白血病の発症を抑制または治療するための異常活性化細胞除去環流返血治療装置を提供する。プロトポルフィリンIXを高濃度蓄積させることにより識別可能とした血液中の白血病細胞など異常活性化細胞を除去する異常活性化白血球除去環流返血治療装置であって、一端に採血用の穿刺針を備えた採血用ラインと、この採血用ラインによって送給された血液から白血球分画を分離する遠心分離器と、分離された白血球分画に対してセルソーターによって異常活性化細胞を除去するセルソーターと、異常活性化細胞が除去された正常白血球分画に対して所定波長の光を照射する光照射器と、白血球分画以外の血液成分からなる環流返血液と環流返血用の正常白血球分画とを環流返血する環流返血用ラインとを備えた異常活性化細胞除去環流返血治療装置とする。

目的

また、今後抗体医薬などの新規治療法の開発が期待されるものの、予後が優れた効果的な治療方法の開発が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

以下の工程を含む、血液検体から異常活性化細胞を除去する方法:1)採取した血液検体を波長350〜490nmおよび/または600〜700nmの光で照射し、検体中に存在するプロトポルフィリンIX陽性細胞をプロトポルフィリンIX特異蛍光により検出する工程;2)当該検出されたプロトポルフィリンIX陽性細胞を、前記波長350〜490nmおよび/または600〜700nmの光照射により細胞死を誘発することで、検体から異常活性化細胞を除去する。

請求項2

請求項1に記載の処理工程を経て波長350〜490nmおよび/または600〜700nの光照射された血液検体を、透析装置に通す工程を含む、請求項1に記載の異常活性化細胞を除去する方法。

請求項3

異常活性化細胞が、悪性腫瘍細胞慢性炎症性細胞、免疫異常細胞のいずれかである、請求項1または2に記載の異常活性化細胞を除去する方法。

請求項4

悪性腫瘍造血器腫瘍であり、異常活性化細胞が異常活性化白血球である、請求項3に記載の異常活性化細胞を除去する方法。

請求項5

造血器腫瘍が、成人T細胞白血病リンパ腫である請求項4に記載の異常活性化細胞を除去する方法。

請求項6

以下のa)〜d)を含み、請求項1〜5のいずれかに記載の異常活性化細胞を除去する方法を実施するための、異常活性化細胞除去環流返血治療装置:a)一端に採血用の穿刺針を備えた採血用ラインと、b)当該採血用ラインによって送給された血液検体から異常活性化細胞および/または腫瘍マーカー陽性細胞を分離除去するセルソーターと、c)前記b)の異常活性化細胞および/または腫瘍マーカー陽性細胞を分離除去した血液検体に対して波長350〜490nmおよび/または600〜700nmの光を照射し、異常活性化細胞の細胞死を誘発することで、前記血液検体から異常活性化細胞を除去するための光照射器と、d)前記b)およびc)で異常活性化細胞および/または腫瘍マーカー陽性細胞と異常活性化細胞が分離除去されたのちの血液検体を環流返血する環流返血用ライン。

請求項7

前記異常活性化細胞除去環流返血治療装置において、上記d)の環流返血用ラインに、さらにe)人工透析装置が連結されている、請求項6に記載の異常活性化細胞除去環流返血治療装置。

請求項8

採取した血液検体のドナーヒトT細胞白血病ウイルスI型キャリアーまたは成人T細胞白血病・リンパ腫患者であり、悪性腫瘍の検査が、成人T細胞白血病・リンパ腫発症危険度予測進展予測および/または進展確認のための検査である、成人T細胞白血病・リンパ腫の発症危険度予測、進展予測および/または進展確認の検査のための解析方法

技術分野

0001

本発明は、異常活性化細胞検出による悪性腫瘍検査方法および異常活性化細胞除去環流返血治療装置に関する。より詳しくは、異常活性化細胞を除去することにより白血病発症を抑制または治療するための異常活性化細胞除去環流返血治療装置に関する。

0002

本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願、特願2013−130758号優先権を請求する。

背景技術

0003

昨今、日本国においては、白血病の発生率が年々増加する傾向にある。白血病を原因とする死亡者数は、2008年において約11,156人であり、人口10万人あたり8.8人(男性10.5人、女性7.1人)となっている。

0004

特に、成人T細胞白血病リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma: ATLL)は難治性白血病・リンパ腫であることが知られている。その原因ウイルスであるヒトT細胞白血病ウイルスI型(Human T-cell leukemia virus type I:HTLV-I)のキャリアーの中から日本で年間約700例が発症している。特に、HTLV-Iのキャリアー1,000人あたりの年間ATLL発症率は、男性で1.0〜1.5人、女性で0.5〜0.7人であり、さらには、30以上のHTLV-Iのキャリアーにおける生涯発症率は、男性で4〜7%、女性で2%台である。現在、日本で約108万人、世界では約2,000万人のキャリアーが存在する。

0005

ATLLは、HTLV-IがCD4陽性細胞に感染し、細胞−細胞間で感染し、長い潜伏期間の中で免疫機構から逃れたクローンが遺伝子異常、染色体異常エピジェネティック異常などを集積して、細胞を腫瘍化させることで発症すると考えられている。HTLV-Iのキャリアーの3〜5%が、HTLV-I感染後40〜60年してATLLを発症する。また、感染経路は主として母乳感染、輸血性交である。

0006

ATLLは1991年に予後因子解析臨床病態の特徴から、白血化、臓器浸潤、高LDH血症、高Ca血症の有無と程度により急性型、リンパ腫型慢性型、くすぶり型の4病型分類提唱され、最近の報告による生存期間中央値は急性型11ヶ月、リンパ腫型20ヶ月、慢性型24ヶ月、くすぶり型では3年以上である。最近の化学療法と同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)による治療成績は改善しているが、他の白血病と比べると依然予後不良である。ATLL患者の臨床病型別生存曲線によると、急性型およびリンパ腫型ATLLの患者の生存率は、観察開始から1年以内に50%以下にまで低下する。患者は男性にやや多く、日本での発症年齢中央値は67歳であり、40歳未満での発症は稀である。

0007

このような難治性のATLLの従来の診断方法は、患者の末梢血におけるHTLV-I感染腫瘍細胞の同定の他、リンパ節腫脹肝脾腫高カルシウム血症皮膚病変が多く日和見感染症合併が多いなどATLLに特異的な臨床症状を基準とするものである。

0008

しかし、このような方法では、特に急性型やリンパ腫型ATLLでは、発症し症状が出始めた段階にならなければ診断ができず、それゆえ早期にこれらを診断することができないため、治療が手遅れになってしまう可能性がある。また抗癌剤による治療に抵抗性で予後不良である。

0009

ATLLの予後を推定するためのデータの収集において、末梢血単核球(PBMC)の特定の遺伝子群について、それらの遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島メチル化状態を測定する方法について開示がある(特許文献1)。当該遺伝子のプロモーター領域におけるCpG島のメチル化プロファイルを作成するとともに、予後因子としてCIMP(CpG island methylator phenotype)を算出し、メチル化遺伝子、メチル化遺伝子数およびCIMP値から算出されるATLL発症/進展危険度スコアによる危険度の階層化および/または特定の遺伝子のメチル化状態を表示することにより、HTLV-Iのキャリアーの発症またはindolent型(緩徐進行型)であるくすぶり型および慢性型ATLLがaggressive型(高悪性型)である急性型およびリンパ腫型ATLLへの進展を予測することを可能とするATLL予後推定用データを作成する方法に関するものである。

0010

高悪性度の急性型やリンパ腫型ATLLおよび予後不良因子を有する慢性型ATLLは、化学療法の適応であるが、非ホジキンリンパ腫標準的治療法(CHOP療法)などに抵抗性であるため、G-CSF顆粒球コロニー刺激因子)を併用して短い治療間隔で強力な化学療法が繰り返して行われる。

0011

一方、低悪性度のくすぶり型や、予後不良因子を有さない慢性型ATLLは、皮膚病変には局所的に対処し、慢性リンパ性白血病などの疾患と同様に急性転化するまでは化学療法をせずに経過観察することが原則とされるが、その長期予後は良好ではない。近年、allo-HSCTでは宿主片対ATL効果により長期生存が期待でき、検討されるべき治療法であるものの、通常のallo-HSCTでは治療が難しい宿主や疾患も存在し、高齢者等では胸腺が委縮しているためT細胞の産生能が低く、免疫不全間質性肺炎を起こしやすいなどの問題もある。同種移植を受けた場合にしばしばみられる合併症で、ドナー由来リンパ球が患者の臓器を自分のものでないとみなして攻撃し、排除しようとする、移植片対宿主病(GVHD)の危険性の問題もある。また、今後抗体医薬などの新規治療法の開発が期待されるものの、予後が優れた効果的な治療方法の開発が望まれている。

0012

光感受性物質ポルフィリン関連化合物生理的前駆体である5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid(5-ALA))の投与により、ヘム代謝経路を経てプロトポルフィリンIX(PpIX)が組織球性リンパ腫培養細胞に多量に蓄積され、強い蛍光を発生が報告されている。この性質を利用して、5-ALA投与により強いPpIX蛍光を発する白血病細胞健常細胞から識別することが可能となることが検討され、5-ALA依存性光動力学的治療法(PDT:Photo-Dynamic Therapy)では、標的腫瘍細胞に蓄積したPpIXへ の光照射で生成する一重項酸素などの活性酸素種(ROS)が、特異的に腫瘍細胞の細胞死誘導できると考えられることが報告されている(非特許文献1)。

0013

一方、白血病ではないが、血液中不水溶性間接非抱合型ビリルビン代謝不全の患者に対して、人工透析の際に人体から取り出した血液に所定波長の光を照射することにより水溶性直接ビリルビンに変換して不水溶性の間接ビリルビンの濃度を低下させる方法が開示されている(特許文献2)。体内ヘモグロビンから形成される不水溶性の間接ビリルビンは、通常肝臓で水溶性の直接(抱合型)ビリルビンへと変換されて腎臓を介して排出されているが、肝機能不全等が生じると水溶性の直接ビリルビンへの変換が行われず、血中の不水溶性の間接ビリルビンの濃度が上昇することが知られている。不水溶性の間接ビリルビンは、所定波長の光の照射によって水溶性の直接ビリルビンに変換可能であり、肝機能不全等によって不水溶性の間接ビリルビンの濃度が上昇した患者に対して、当該光を照射することにより水溶性の直接ビリルビンに変換して不水溶性の間接ビリルビンの濃度を低下させることができる。

0014

ATLL発症の危険性の高いHTLV-Iキャリアーおよび慢性型ATLLやくすぶり型ATLLの様な低悪性度ATLLのなかで高悪性度の急性型およびリンパ腫型ATLLへ急性転化(進展)する可能性の高い患者や予後不良因子を有する慢性型ATLL患者に関し、早期に発症/進展の危険度を検出する方法、また発症後も予後不良を回避可能な有効な治療方法の開発が望まれている。この方法の開発は発症可能性の低いHTLV-Iキャリアーおよび病態進展の可能性の低い低悪性度ATLL患者に対しては発症/進展の不安を可能な限り取り除き、生活の質(QOL)の改善にもつながる。

0015

特開2009−254357号公報
特開2004−358243号公報

先行技術

0016

岡山学院大学・岡山短期大学紀要34, 1-14, 2011

発明が解決しようとする課題

0017

本発明は、悪性腫瘍の検査方法を提供することを課題とする。そして、血液検体からの異常活性化細胞の除去方法、異常活性化細胞除去環流返血治療装置、並びに異常活性化細胞除去環流返血治療装置を用いる腫瘍の治療方法を提供することを課題とする。

0018

造血器腫瘍のうち、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATLL)はきわめて予後不良の難治性白血病・リンパ腫である。同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)や新規抗体医薬などの新規治療法の開発が進みつつあるが、高齢者に発症頻度が高いという特徴を持つ本疾患の場合、移植幹細胞の供給の問題や患者に負担の大きい治療法は適用除外となる場合も稀ではなく治療抵抗性患者も多いという問題がある。

0019

本発明は、低侵襲性で患者の負担が小さく白血病細胞を特異的に高効率で取り除くことが可能な異常活性化細胞除去環流返血治療装置を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0020

上記課題を解決するために、本発明者らはPpIXを血液中の白血病細胞など異常活性化細胞に蓄積させることにより、当該異常活性化細胞を識別可能とすることに着目し、鋭意研究を重ねた結果、血液中の白血病細胞など異常活性化細胞を特異的に除去する異常活性化細胞除去環流返血治療装置に係る発明を完成するに至った。

0021

本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置は、一端に採血用の穿刺針を備えた採血用ラインと、この採血用ラインによって送給された血液から白血球分画を分離する遠心分離器と、この遠心分離器で分離された白血球分画から異常活性化細胞を除去するセルソーターと、このセルソーターにより異常活性化細胞が除去された正常血球分画に対して所定波長の光を照射する光照射器と、遠心分離器で分離された白血球分画以外の血液成分からなる環流返血液と光照射器で光が照射された環流返血用の正常白血球分画とを返血する環流返血用ラインとを備えてなる。

0022

また、本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置では、採血用ラインを介して採取される血液には患者に2〜48時間前、好ましくは2〜12時間前に5-ALAが投与されていることで、腫瘍細胞を含む異常活性化細胞にPpIXを蓄積させ、光照射器で異常活性化細胞を含む血液に波長350〜490nmまたは600〜700nmの光を照射することを特徴とするものである。

0023

すなわち本発明は以下よりなる。
1.以下の工程を含む、血液検体から異常活性化細胞を除去する方法:
1)採取した血液検体を波長350〜490nmおよび/または600〜700nmの光で照射し、検体中に存在するプロトポルフィリンIX陽性細胞をプロトポルフィリンIX特異蛍光により検出する工程;
2)当該検出されたプロトポルフィリンIX陽性細胞を、前記波長350〜490nmおよび/または600〜700nmの光照射により細胞死を誘発することで、検体から異常活性化細胞を除去する。
2.請求項1に記載の処理工程を経て波長350〜490nmおよび/または600〜700nの光照射された血液検体を、透析装置に通す工程を含む、請求項1に記載の異常活性化細胞を除去する方法。
3.異常活性化細胞が、悪性腫瘍細胞慢性炎症性細胞、免疫異常細胞のいずれかである、請求項1または2に記載の異常活性化細胞を除去する方法。
4.悪性腫瘍が造血器腫瘍であり、異常活性化細胞が異常活性化白血球である、請求項3に記載の異常活性化細胞を除去する方法。
5.造血器腫瘍が、成人T細胞白血病リンパ腫である請求項4に記載の異常活性化細胞を除去する方法。
6.以下のa)〜d)を含み、請求項1〜5のいずれかに記載の異常活性化細胞を除去する方法を実施するための、異常活性化細胞除去環流返血治療装置:
a)一端に採血用の穿刺針を備えた採血用ラインと、
b)当該採血用ラインによって送給された血液検体から異常活性化細胞および/または腫瘍マーカー陽性細胞を分離除去するセルソーターと、
c)前記b)の異常活性化細胞および/または腫瘍マーカー陽性細胞を分離除去した血液検体に対して波長350〜490nmおよび/または600〜700nmの光を照射し、異常活性化細胞の細胞死を誘発することで、前記血液検体から異常活性化細胞を除去するための光照射器と、
d)前記b)およびc)で異常活性化細胞および/または腫瘍マーカー陽性細胞と異常活性化細胞が分離除去されたのちの血液検体を環流返血する環流返血用ライン。
7.前記異常活性化細胞除去環流返血治療装置において、上記d)の環流返血用ラインに、さらにe)人工透析装置が連結されている、請求項6に記載の異常活性化細胞除去環流返血治療装置。
8.採取した血液検体のドナーがヒトT細胞白血病ウイルスI型のキャリアーまたは成人T細胞白血病・リンパ腫患者であり、悪性腫瘍の検査が、成人T細胞白血病・リンパ腫発症危険度予測、進展予測および/または進展確認のための検査である、成人T細胞白血病・リンパ腫の発症危険度予測、進展予測および/または進展確認の検査のための解析方法

発明の効果

0024

本発明の検査方法によれば、効果的に悪性腫瘍細胞を検出することができる。悪性腫瘍についてフローサイトメトリープロファイルを確認することにより、腫瘍の発展/進展の危険度を把握することができる。

0025

本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置によれば、セルソーターによって白血病細胞など異常活性化細胞を除去するだけでなく、光照射器による光の照射によって残存した悪性腫瘍細胞、慢性炎症性細胞や自己免疫疾患における自己抗原反応細胞などの免疫異常細胞などの異常活性化細胞に細胞死を誘導することで、異常活性化細胞の残存のおそれを極限まで低減できる。つまり、本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置によれば、例えば成分輸血のように患者から採取した血液から異常活性化細胞だけを除去して正常血球成分血小板血漿を再度患者に戻すことができ、例えば白血病治療に貢献しうる。

0026

特に、本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置によれば、遠心分離器およびセルソーターによる分離において、PpIXからの蛍光強度カットオフ値の設定によって原理的に異常活性化細胞をほぼ除去することができる。仮に正常細胞分画に紛れ込んだ異常活性化細胞が混在しても、更に光照射することにより98.7%の異常活性化細胞を細胞死誘導により取り除くことができ、両者を連続的に行うことにより高効率にほとんどの異常活性化細胞を除去することが可能である。

図面の簡単な説明

0027

TLOm1(ATLL白血病細胞株)に1 mMの5-ALAを投与した後のPpIX蓄積の時間経過測定結果を示す図である。(参考例1)
健常人の末梢血単核球(PBMC)、TLOm1(ATLL白血病細胞株)およびED-40515(ATLL白血病細胞株)について、1 mMの5-ALAを添加後48時間培養後のPpIX蓄積をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図である。(参考例1)
接触性皮膚炎患者の末梢血単核球(PBMC)、CD3/CD28 immuno-beads(Dynabeads(R) human T-cell activator CD3/CD28 (Invitrogen, Oregon, USA))で刺激活性化した接触性皮膚炎患者の末梢血単核球(PBMC)、TLOm1(ATLL白血病細胞株)およびED-40515(ATLL白血病細胞株)について、1 mMの5-ALAを投与後48時間培養後のPpIX蓄積をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図である。(参考例1)
(1)健常者、(2)低危険度HTLV-Iキャリアー、(3)中危険度HTLV-Iキャリアー、(4)高危険度HTLV-Iキャリアー、(5)くすぶり型ATLL患者、(6)慢性型ATLL患者および(7)急性型ATLL患者由来の末梢血について、PpIX蛍光強度と白血病マーカーであるTSLC1発現強度細胞分布パターンをフローサイトメトリーで解析した結果を示す図である。(実施例2)
本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置の概念を示す図である。(実施例1)
本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置に透析装置を連結した場合の概念を示す図である。(実施例1)
1 mM 5-ALA存在下で48時間培養した後にNa-Liランプによる光を照射することによる光動力学的治療法を行ったTLOm1(ATLL白血病細胞株)または慢性型ATLL患者の末梢血単核球(PBMC)を、PI(Propidium iodide)染色およびAnnexin-V-FITC染色の二重染色によりフローサイトメトリーによる細胞死パターンを調べた結果を示す図である。(実施例3)
実施例1の装置を用いて慢性型ATLL患者の末梢血を5-ALA処理したときの結果を示す図である。慢性型ATLL患者血液から分離した末梢血単核球(PBMC)に1 mM 5-ALA存在下で48時間培養した後にNa-Liランプによる光を照射することによる光動力学的治療法を行った場合の特異的細胞死誘導のフローサイトメトリー解析結果を示す。この処理により正常末梢血単核球(PBMC)の生存率は77.5%であるのに対しATLL白血病細胞の生存率は1.3%となりATLL白血病細胞特異的に細胞死がおこっていることを示す(実施例4)
慢性型ATLL患者の末梢血全血に1 mMの5-ALAを添加し48時間培養した後Na-Liランプによる光を照射することによる光動力学的治療法を行った場合の特異的細胞死誘導のフローサイトメトリー解析結果を示す。慢性型ATLL白血病分画と正常単核球分画をPpIX蛍光強度と白血病マーカーであるTSLC1発現強度の細胞分布パターンをフローサイトメトリーで解析した結果、この処理により98.83%のATLL白血病細胞が細胞死により除かれたことにより99.50%が正常細胞により構成される末梢血単核球(PBMC)になったことを示す。(実施例5)
種株化培養造血器腫瘍細胞について、PpIX陽性細胞と腫瘍マーカーの発現に係る細胞分布パターンをフローサイトメトリーで解析した結果を示す図である。(実施例6)
各種株化培養悪性腫瘍細胞について、PpIX陽性細胞と腫瘍マーカーの発現に係る細胞分布パターンをフローサイトメトリーで解析した結果を示す図である。(実施例6)
各種株化培養癌細胞について、PpIX陽性細胞と腫瘍マーカーの発現に係る細胞分布パターンをフローサイトメトリーで解析した結果を示す図である。(実施例6)

0028

本発明の悪性腫瘍の検査は、以下の1)〜3)工程により行うことができる。
1)採取した血液検体についてPpIX陽性細胞を検出する工程;
2)採取した血液検体について腫瘍マーカー陽性細胞を検出する工程;
3)前記1)および2)で各々得られたPpIX陽性細胞および腫瘍マーカー陽性細胞の分布パターンを解析する工程。

0029

「PpIX(プロトポルフィリンIX)」とは、光感受性物質のひとつであり、ミトコンドリア内でポルフィリン関連化合物の生理的前駆体より合成される物質である。「ポルフィリン関連化合物の生理的前駆体」とは、例えばヘム合成の前駆体物質であるアミノ酸であるところの5-ALA(5-アミノレブリン酸)が挙げられるが、特にこれに限定されるものではなく、光感受性物質で強い蛍光を発生する生理的前駆体であればよい。

0030

本明細書において、「PpIX陽性細胞」とは、5-ALAなどのポルフィリン関連化合物の生理的前駆体を外部から過剰投与することによりPpIXが蓄積された細胞をいう。PpIXは悪性腫瘍細胞、慢性炎症性細胞や自己免疫疾患における自己抗原反応細胞などの免疫異常細胞に選択的に蓄積し、特に悪性腫瘍細胞に選択的に高濃度蓄積することが知られている。PpIXは波長350〜490nm、好ましくは波長400〜490nmまたは波長600〜700nm、好ましくは波長610〜640nmにピークを持つ励起光を照射することにより、波長600〜700nm、好ましくは波長620〜650nm、より好ましくは波長635nmにピークを持つ赤色蛍光を呈する性質を有し、幅広い領域で腫瘍組織光線力学的診断(Photodynamic diagnosis; PDD)に臨床応用されている。図1は、TLOm1(ATLL白血病細胞株)に1 mMの5-ALAを投与した後のPpIX陽性細胞の蓄積の時間経過の測定結果を示す図である。投与後、48時間経過にPpIX濃度が上限に達していることが分かる。
図2は健常人の末梢血単核球(PBMC)、TLOm1(ATLL白血病細胞株)およびED-40515(ATLL白血病細胞株)について、1 mMの5-ALAを投与後48時間培養後のPpIX蛍光強度をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図である。図1〜3の結果、5-ALA投与により、腫瘍特異的にPpIXの蓄積が観察された。また、図3は接触性皮膚炎患者の末梢血単核球(PBMC)、CD3/CD28 immuno-beads(Dynabeads(R) human T-cell activator CD3/CD28 (Invitrogen))で刺激し活性化した接触性皮膚炎患者の末梢血単核球(PBMC)、TLOm1(ATLL白血病細胞株)およびED-40515(ATLL白血病細胞株)について、1 mMの5-ALAを投与後48時間培養後のPpIX蓄積をフローサイトメトリーで解析した結果を示す図である。これにより接触性皮膚炎患者の末梢血単核球(PBMC)においては、正常末梢血単核球(PBMC)画分と少し活性化しPpIX蛍光強度の高い画分が存在することが判る。更にCD3/CD28 immuno-beadsを用いてT細胞に強い刺激を与えると更にPpIX蛍光強度の強い分画が誘導されることが判る。図1〜3の結果、5-ALA投与により、腫瘍細胞および活性化されたリンパ球特異的にPpIXの強い蓄積が観察された。

0031

本明細書において、「異常活性化細胞」とは、病的な細胞をいい、例えば悪性腫瘍細胞、慢性炎症性細胞や自己免疫疾患における自己抗原反応細胞などの免疫異常細胞が挙げられる。本明細書では、5-ALAの添加や投与による5-ALA存在下で強いPpIX蛍光を発する細胞を「異常活性化細胞」ともいう。上記において、「悪性腫瘍」とは「造血器腫瘍」または「癌腫上皮腫:carcinoma)、肉腫(sarcoma)」のいずれであってもよく、特に限定されないが、好ましくは「造血器腫瘍」が挙げられる。「造血器腫瘍」としては、白血病やリンパ腫が挙げられる。白血病は、急性白血病および慢性白血病に大別され、それぞれ骨髄系細胞から発生する骨髄性白血病と、リンパ球系細胞から発生するリンパ性白血病に分けられる。具体的には、急性骨髄性白血病(Acute Myeloid Leukemia:AML) 、急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia:ALL)、慢性骨髄性白血病(Leukemia:CML)、慢性リンパ性白血病(Chronic Lymphoblastic Leukemia:CLL)などが挙げられる。また、ATLLはその他の白血病として挙げられる。本明細書において、特に検査および治療の対象となるのは、ATLLである。ATLLは、背景技術の欄でも示したように、HTLV-Iが原因ウイルスとなっている。

0032

本発明において、検査や治療のために採取する検体は血液検体である。採取した血液検体は、そのまま光照射してもよいが、以下の工程により処理するのが好ましい。
1)採取した血液検体を遠心分離操作により赤血球分画と白血球分画を分離する。
2)当該分離された白血球分画について、波長350〜490nmまたは600〜700nmの光で照射する。
3)光照射後、集積したPpIX陽性細胞を検出する。本明細書において、白血病細胞など造血器腫瘍を含む異常増殖能を示す白血球を「異常活性化白血球」ともいう。

0033

本明細書において、腫瘍マーカーとは腫瘍に対して特定される腫瘍マーカーであればよく、特に限定されない。例えば造血器腫瘍に対しては患者末梢血単核球(PBMC)または多核白血球分画では、細胞表面マーカーとしてのTSLC1の他、CD3、CD13、CD19、CD20、CD10、CD13、CD7、CD56、HLA-DR等の免疫学的マーカーが挙げられる。ATLL白血病細胞特異的に発現が亢進する細胞表面マーカーとしてはTSLC1が挙げられる。癌腫(上皮腫)、肉腫の腫瘍マーカーとしては自体公知サイトケラチン19-9(CA19-9)、CEA、NSE、PSA、EMA、AFP、SCC、PTHTSHが挙げられるが特に限定されるものではない。

0034

本発明の「PpIX陽性細胞の検出」および「腫瘍マーカー陽性細胞の検出」を組み合わせた検査方法によれば、各々単独で行うよりもより確実に悪性腫瘍化した細胞を検出することができる。「PpIX陽性細胞」および「腫瘍マーカー陽性細胞」をフローサイトメトリーを用いて行い、細胞分布パターン(フローサイトメトリー・プロファイル)を確認することで、悪性腫瘍の発症/進展について予測または進行度を把握することができる。

0035

例えば、図4はATLL患者由来の末梢血について、PpIX測定値と腫瘍マーカーであるTSLC1の測定値から細胞分布パターンをフローサイトメトリーで解析した結果を示す図である。(1)の健常人の場合には左下方面に細胞が集積するTSLC1(-)/PpIX(-)パターンであるのに対し、HTLV-Iキャリアーにおいては、(2)ほとんど健常人と変わらないTSLC1(-)/PpIX(-)パターンの低危険度HTLV-Iキャリアー、(3)TSLC1(+)/PpIX(-)の分画が増えてきつつある中危険度HTLV-Iキャリアーから、(4)ほとんどくすぶり型ATLLのパターンと差がない高危険度HTLV-Iキャリアーへと発症危険度が高まってくるにつれて、細胞分布パターンに変化が認められる。特に高危険度HTLV-IキャリアーではTSLC1(+)/PpIX(+)の白血病細胞特有プロファイルを示す細胞群が多数存在していることを意味し、免疫監視機構の状態が悪化すれば発症危険度が高いことが判る。このようにキャリアーの場合は、血液検体中の細胞分布パターン(フローサイトメトリー・プロファイル)を確認することでATLL発症を予測することができ、早期に病態の進展に応じた先制治療を開始することができる。

0036

また、ATLLのくすぶり型、慢性型、または急性型についても図4の(5)〜(7)のパターンのように徐々に変化し、TSLC1(+)/PpIX(-)細胞の増加からTSLC1(+)/PpIX(+)白血病細胞への移行が認められる。くすぶり型、慢性型の様な低悪性度ATLLもTSLC1(+)/PpIX(-)細胞からTSLC1(+)/PpIX(+)白血病細胞への移行をモニターすることにより高悪性度ATLLへの急性転化(進展)を早期に検出することが可能となる。各々の患者検体パターン解析をすることより、ATLL発症/進展の危険度および進行度、疾病の型を詳細に把握することができ先制医療施行することにより発症/進展予防の可能性も展望できる。

0037

悪性腫瘍の発症/進展の危険度や進行度は、例えば以下を指標として予測または把握することができる。悪性腫瘍の発症/進展の危険度や進行度の指標をRF(RF:Risk Factor)とすると、RF値は以下のように導き出すことができる。例えば図4に示すフローサイトメトリー・プロファイルについて、以下のように考えられる。
(A)LL: Lower Left (PpIX (-), TSLC1(-)) (下左)領域の細胞数
(B)LR: Lower Right (PpIX (-), TSCLC1(+))(下右) 領域の細胞数
(C)UR: Upper Right (PpIX (+), TSLC1(+)) (上右)領域の細胞数
RF = 0.01×(LL/total count)+ 10×(LR/total count) + 100×(UR/total count)
総細胞数(total count): 10,000 cells
健常人:LL=100% RF = 0.01
中危険度HTLV-Iキャリアー: LL=50%, LR=50%の場合RF=5.05
高危険度HTLV-Iキャリアー: LL=50%, LR=45%, UR=5%の場合 RF=9.55
急性型ATLL患者: UR=100%の場合 RF=100
なお、上記RF値は例示であって、(A)(B)(C)の細胞数から適宜決定することができる。悪性腫瘍の発症/進展の危険度や進行度の指標RF(RF:Risk Factor)はATLLの場合以下の範囲で評価することができる。
健常人:0.01低危険度HTLV-Iキャリアー:0.01中危険度HTLV-Iキャリアー:2.00高危険度HTLV-Iキャリアー:3.50くすぶり型ATLL:4.00慢性型ATLL: 5.00急性型ATLL: 20.00

0038

また、本発明は悪性腫瘍細胞の除去方法にも及ぶ。悪性腫瘍細胞の除去方法における「悪性腫瘍」とは造血器腫瘍、癌腫または肉腫のいずれであってもよいが、特に好適には造血器腫瘍である。採取した検体について、波長350〜490nmまたは600〜700nmの光で照射し、PpIX陽性細胞を検出し、当該陽性細胞を前記光照射により細胞死を誘発することで、悪性腫瘍細胞を除去することができる。PpIX陽性細胞を検出するために、ポルフィリン関連化合物の生理的前駆体、具体的には5-ALAを含む検体であることが好ましい。5-ALAを含む検体は、検体を採取する前にあらかじめ投与していてもよいし、検体を採取した後に検体に投与してもよいが、検体を採取する前にあらかじめ投与するのが好適である。5-ALAは、経口投与静脈注射に用いても安全性が高いことが証明されている。あらかじめ患者に5-ALAを投与しておくことにより、白血病細胞など異常活性化細胞へのPpIXの蓄積を生じさせておくことができる。白血病細胞など異常活性化細胞にPpIXが蓄積されるには多少の時間を要するために、検査の2日前、少なくとも2時間前には5-ALAを投与しておくことが望ましい。

0039

本発明は、採取した血液検体から造血器腫瘍を含む異常活性化細胞を除去するための異常活性化細胞除去環流返血治療装置にも及ぶ。本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置は、血液中の異常活性化細胞を除去する装置であり、特に、PpIXを蓄積させることにより悪性腫瘍細胞、慢性炎症性細胞や免疫異常細胞に選択的に蓄積し、特に悪性腫瘍細胞などの異常活性化細胞、例えば白血病細胞あるいは白血病前駆細胞を識別可能として、効果的に除去することができる。

0040

本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置は以下の構成よりなる。
a)一端に採血用の穿刺針を備えた採血用ラインと、
b)当該採血用ラインによって送給された血液から赤血球分画と白血球分画を分離する遠心分離器と、
c)当該遠心分離器で分離された前記白血球分画から前記異常活性化細胞を除去するセルソーターと、
d)前記c)のセルソーターにより前記異常活性化細胞が除去された正常白血球分画に対して所定波長の光を照射するための光照射器と、
f)前記遠心分離器で分離された前記白血球分画以外の血液成分からなる環流返血液と前記光照射器で光が照射された環流返血用の正常白血球分画とを環流返血する環流返血用ライン。
さらにg)人工透析装置が連結されていてもよい(図6参照)。

0041

本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置について、より詳細に説明する。本発明の装置は、血液中の腫瘍細胞、慢性炎症性細胞または免疫異常細胞など異常活性化細胞を除去する装置であり、特に、PpIXを蓄積させることにより異常活性化細胞と正常な細胞を識別可能として、効果的に除去する異常活性化細胞除去環流返血治療装置である。異常活性化細胞は、腫瘍細胞に関し、造血器腫瘍にみられる白血病細胞の他、癌腫(上皮腫)、肉腫等から血液中に脱落した腫瘍細胞なども挙げられる。血液中に脱落した腫瘍細胞を除去することで、癌や肉腫などの悪性腫瘍の転移を抑制することができる。本発明において異常活性化細胞は特に好適には白血病細胞など異常活性化白血球である。本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置は、特に異常活性化白血球あるいは白血病前駆細胞を識別可能として、効果的に除去する異常活性化細胞除去環流返血治療装置である。

0042

光感受性物質のポルフィリン関連化合物の生理的前駆体である5-ALAの投与により、異常活性化細胞においてポルフィリン代謝経路を経てPpIXが特異的に高濃度に蓄積されるとともに波長350〜490nmまたは600〜700nmの励起光照射により強い蛍光を発生させるため、異常活性化細胞が識別可能となる。

0043

光感受性物質のポルフィリン関連化合物の生理的前駆体である5-ALAは、特にこれに限定されるものではなく、光感受性物質で強い蛍光を発生する生理的前駆体であればよい。

0044

5-ALAは、あらかじめ患者に投与しておくことにより、異常活性化細胞へのPpIXの蓄積を生じさせておくことができる。異常活性化細胞にPpIXが蓄積されるには多少の時間を要するために、異常活性化細胞除去環流返血治療装置の使用の2〜48時間前、好ましくは2〜12時間前に5-ALAを投与しておくことが望ましい。

0045

以下に、本発明の理解を深めるために、実施例を用いて本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置について説明する。本発明を完成させるために行なった実験結果についても具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。

0046

(実施例1)異常活性化細胞除去環流返血治療装置
異常活性化細胞除去環流返血治療装置は、図5に示すように、一端に採血用の穿刺針(図示せず)を備えた採血用ライン10と、この採血用ライン10によって送給された血液検体から白血球分画を分離する遠心分離器20と、この遠心分離器20で分離された白血球分画に対して白血病細胞など異常活性化細胞を除去するセルソーター30と、このセルソーター30により白血病細胞など異常活性化細胞が除去された正常白血球分画に対して所定波長の光を照射する光照射器40と、遠心分離器20で分離された白血球分画以外の血漿成分、赤血球分画および血小板分画など血液成分からなる環流返血液と光照射器40で光が照射された環流返血用の白血球液と白血球分画以外の血漿成分、赤血球分画および血小板分画など血液成分を返血する環流返血用ライン50とで構成されている。
ここでは、「異常活性化細胞」は波長488nmの励起光を照射した際に出るPpIX特異蛍光により検出することができ、検出されたPpIX(+)白血球はセルソーターで除去することができる。

0047

採血用ライン10は、一般的な成分献血で用いられている採血用ラインを利用することができる。この採血用ライン10の一端には採血用の穿刺針が装着されており、他端は遠心分離器20に接続可能としている。

0048

遠心分離器20も成分献血で用いられている連続遠心分離器を使用することができる。採血用ライン10によって送給された血液検体について、遠心分離器20による遠心分離操作で白血球分画を分離して、血漿成分、赤血球分画および血小板分画は環流返血液として、環流返血用ライン50の第1環流返血用ライン51に送出することができる。

0049

遠心分離器20で血液から分離された白血球分画は、第1連結ライン61を介してセルソーター30に送給される。

0050

セルソーター30は、通常は、細胞分析分離装置として使用されており、微細粒子個々の細胞を流体中に分散させ、その流体を細く流して個々の粒子細胞に特定波長レーザー光励起し、発生する特異蛍光を光学的に分析してフローサイトメトリーを実行し、液滴形成後に特定の光学的特性をもつ細胞を含む液滴を帯電させて、荷電を持った偏向板により帯電している液滴に含まれる細胞を分離するセルソーティングを実行する装置である。

0051

本実施形態のセルソーター30は、遠心分離器20から送給された白血球分画において多量のPpIX蓄積により強い蛍光を発している白血病細胞など異常活性化細胞を検知するとともに、この白血病細胞など異常活性化細胞を分取することにより白血病細胞など異常活性化細胞を除去している。

0052

セルソーター30では、遠心分離器20で分離された白血球分画にシース液等のバッファ液を混合して、白血球を個別に識別可能な程度に希釈しているため、セルソーター30での白血病細胞など異常活性化細胞の除去後には、シース液に含まれている余分な成分の除去や適宜な濃縮を行っている。すなわち、図示しないが、セルソーター30には、遠心分離器等を利用した濃縮器や、生理食塩水等による濃度調整器等を接続して、成分および濃度等を適宜調整して、白血病細胞など異常活性化細胞が除去された環流返血用の正常白血球液を生成している。環流返血用の正常白血球分画は、第2連結ライン62を介して光照射器40に送給している。

0053

セルソーター30による分離において、PpIXからの蛍光強度のカット・オフ値の設定によって原理的にほぼ100%白血病細胞などの異常活性化細胞を除去可能である。

0054

セルソーター30によって除去された異常活性化細胞は、そのまま廃棄してもよいし、検査に利用してもよい。特に、除去された白血病細胞など異常活性化細胞の数から白血病の早期検査や病態モニタリングにも利用することができる。図5中、63はセルソーター30によって除去された白血病細胞など異常活性化細胞が排出される排出ラインである。

0055

第2連結ライン62を介して送給された環流返血用の正常白血球分画には、光照射器40によって所定波長の光を照射し、この光によって環流返血用の正常白血球分画中に残存している白血病細胞に細胞死を生じさせることとしている。

0056

すなわち、光照射器40は、本実施例では、環流返血用の正常白血球分画を送給する送給管41と、この送給管41に向けて光を照射する光源42とで構成しており、送給管41は透明または半透明配管で構成して、この配管内を送給される正常白血球分画に光を照射可能としている。光源42は、ナトリウムリチウム封入したメタルハライドランプ(Na-Liランプ)としている。なお、光源42は、350〜490nmまたは600〜700nmの波長を照射できるLEDランプまたはレーザー光を含む別の光源でもよい。なお、環流返血用の正常白血球分画をスムーズに送給可能とするために、例えば第2連結ライン62の中途部に送給用のポンプを設けてもよいし、光照射器40内に送給用のポンプを設けてもよい。また光照射により発生する熱を冷却する冷却装置を送給管41に設けてもよい。

0057

本実施形態では、照射時間が10分以上となるように、送給管41の長さおよび環流返血用の正常白血球分画の送給速度を調整している。図5の実施態様では、光源42を1つとしているが、複数の光源を用いてもよい。

0058

光照射器40では、環流返血用の正常白血球分画にNa-Liランプによって350〜490nmまたは600〜700nmの波長の光を照射することにより、特に波長630nmの光を照射することにより、例えばPpIXが蓄積しているにもかかわらずセルソーター30で除去されなかった白血病細胞など異常活性化細胞に対して、光照射によるPpIXの励起を生じさせ、この励起にともなって酸素から一重項酸素を生じさせ、この一重項酸素による強い細胞破壊作用により細胞死を誘導している。なお、この装置において、図6に示すように透析装置を連結していてもよい。

0059

(参考例1)株化細胞を用いたPpIXの蓄積の確認
本参考例では、TLOm1(ATLL白血病細胞株)の培養液に1 mMの5-ALAを添加した後の細胞内PpIXの蓄積について時間経過を確認した。その結果、5-ALA添加後、48時間経過後も細胞内PpIXが十分存在していることが確認された(図1)。また、健常人の末梢血単核球(PBMC)、CD3/CD28 immuno-beads(Dynabeads(R) human T-cell activator CD3/CD28 (Invitrogen))で細胞を刺激し、活性化させた末梢血単核球(PBMC)、TLOm1およびED-40515(ATLL白血病細胞株)について、1 mMの5-ALAを投与後48時間目の細胞のPpIXの蓄積をフローサイトメトリーで解析した。その結果、活性化T細胞および腫瘍特異的にPpIXの蓄積が確認された(図2、3)。

0060

(実施例2)単核球のフローサイトメトリー・プロファイルの確認
本実施例では、健常人、HTLV-IのキャリアーまたはATLL患者の末梢血より分離した末梢血単核球(PBMC)についてフローサイトメトリー・プロファイルの確認を行った。各末梢血単核球(PBMC)を含む培養液に1 mMの5-ALAを添加して48時間培養し、これらの細胞についてPpIXの蓄積およびTSLC1の発現を確認し、フローサイトメトリーによる細胞分布パターンの解析を行なった。その結果、(1)健常者、(2)低危険度HTLV-Iキャリアー、(3)中危険度HTLV-Iキャリアー、(4)高危険度HTLV-Iキャリアー、(5)くすぶり型ATLL患者、(6)慢性型ATLL患者および(7)急性型ATLL患者由来の末梢血単核球(PBMC)について、各々独特の細胞分布パターンが確認された(図4)。HTLV-Iキャリアーが生涯においてATLLを発症する危険性は5%程度であるが、HTLV-IキャリアーにとってはATLL発症の危険性を知ることはHTLV-Iキャリアーの生活の質(QOL)にとって非常に重要である。本発明の方法より、(3)および(4)のリスクパターンである中危険度および高危険度HTLV-Iキャリアーのパターンを認識することで、発症直前または発症初期に適切な治療方法を選択することができる。

0061

悪性腫瘍の発症/進展の危険度や進行度の指標をRF(RF:Risk Factor)とすると、RF値は以下のように導き出した。例えば図4に示すフローサイトメトリー・プロファイルについて、以下のように考えられる。
(A)LL: Lower Left (PpIX (-), TSLC1(-)) 領域の細胞数
(B)LR: Lower Right (PpIX (-), TSCLC1(+)) 領域の細胞数
(C)UR: Upper Right (PpIX (+), TSLC1(+)) 領域の細胞数
RF = 0.01×(LL/total count)+ 10×(LR/total count) + 100×(UR/total count)
総細胞数(total count): 10,000 cells
健常人:LL=100% RF = 0.01
中危険度HTLV-Iキャリアー: LL=50%, LR=50% RF = 5.05
高危険度HTLV-Iキャリアー: LL=50%, LR=45%, UR=5% RF = 9.55
急性型ATLL患者: UR = 100% RF = 100
本実施例の場合、健常者:RF=0.014、低危険度HTLV-Iキャリアー:RF=0.99、中危険度HTLV-Iキャリアー:RF=3.49、高危険度HTLV-Iキャリアー:RF=6.17、くすぶり型ATLL:RF=4.68、慢性型ATLL:RF=72.11、急性型ATLL:RF=29.49となる。

0062

(実施例3)
本実施例では、TLOm1(ATLL白血病細胞株)または慢性型ATLL患者の末梢血単核球(PBMC)の培養液に1 mM 5-ALAを添加して48時間培養し、10分間Na-Liランプ(29 mW/cm2)照射した。その後PI(Propidium iodide)染色およびAnnexin-V-FITC染色の二重染色によりフローサイトメトリーによる細胞死パターンを調べた。対照として、5-ALAを加えていない細胞についても同様の解析を行った。その結果、TLOm1においては1 mM 5-ALA存在下で48時間培養した後のNa-Liランプによる光を照射による光動力学的治療法により、ほぼ100%の細胞がAnnexinV(+)/PI(-)(アポトーシス)かAnnexinV(+)/PI(+)(壊死)による細胞死を起こしていることが明らかとなった。一方、0 mM 5-ALA存在下で培養した対照群のTLOm1はAnnexinV(-)/PI(-)ですべて生存していた。慢性型ATLL患者の末梢血単核球(PBMC)については、AnnexinV(+)/PI(-)(アポトーシス)かAnnexinV(+)/PI(+)(壊死)の分画の細胞死を起こしている細胞群とAnnexinV(-)/PI(-)で生存している細胞群に分離された(図7)。この細胞死を起こしている分画と生存している分画がどのような細胞で構成されているか確認するために実施例4を行った。

0063

(実施例4)
本実施例は、実施例1の装置を用いて慢性型ATLL患者の末梢血単核球(PBMC)に1 mMの5-ALAを投与して48時間培養し、10分間Na-Liランプ(29mW/cm2)照射した。その後Annexin-V-FITC、PI、TSLC1-Alexa647による3重染色を行いフローサイトメトリーによる細胞死分画の詳細な解析を行った。その結果、TSLC1(+)/ AnnexinV(+)のATLL白血病細胞が細胞死を起こしている分画(右上方)の細胞が、全ATLL白血病細胞(TSLC1(+))分画の98.7%に至り、正常単核球生存分画(TSLC1(-)/ AnnexinV(-))(左下方)では全正常単核球(TSLC1-)の77.5%が生存していることが確認された(図8)。この結果より白血病細胞特異的に細胞死が誘導されていることが示された。

0064

慢性型ATLL患者の末梢血単核球(PBMC)に1 mMの5-ALAを添加して48時間処理した後にNa-Liランプによる光を照射することによる光動力学的治療法(PDT)を行った後のATLL白血病分画および正常末梢血単核球(PBMC)の存在を解析した(図8)。図8のAに示すように、98.7%(66.31%/(0.88%+66.31%)=98.7%)のATLL白血病細胞(ATLL白血病マーカーTSLCI(+); UL2, UR2)に細胞死(PI(+))が誘導された。細胞死の内訳は、図8のBに示すように、壊死78.5%(Annexin V(+), PI(+); UR3)で、アポトーシス21.5%(Annexin V(+), PI(-); UL3)であった。それに対して、正常末梢血単核球(PBMC)は、図8のAに示すように77.5%(LL2)が生存しており、高い特異性で白血病細胞の細胞死が誘導されていることを示している。すなわち、図4の光照射器40による方法は、低侵襲性で、高い効率で白血病細胞死を誘導できる方法であることを示している。

0065

したがって、セルソーター30で除去されなかった白血病細胞など異常活性化細胞は、光照射器40によって細胞死させられることにより、環流返血用の正常白血球分画に白血病細胞など異常活性化細胞の残存のおそれがなく、健常な白血球のみを患者に戻すことができる。

0066

なお、細胞死を引き起こした白血病細胞など異常活性化細胞は、環流返血用の正常白血球分画とともに患者に戻しても、患者の肝臓・脾臓の貪色機能を利用して除去することが可能であるが、必要に応じて濾過器等によって細胞死した白血病細胞など異常活性化細胞成分を除去し腫瘍崩壊症候群の発症を防止してもよい。

0067

本実施形態では、光照射器40から送出される環流返血用の正常白血球分画は、光照射器40に一端を接続した環流返血用ライン50の第2環流返血用ライン52に送出され、第1環流返血用ライン51と第2環流返血用ライン52とを図示しないY字コネクタで連結することにより、遠心分離器20で分離された白血球分画以外の正常血液成分からなる環流返血液と、光照射器40で光が照射された環流返血用の正常白血球分画とを混合している。

0068

Y字コネクタの出口側には、一端に送血用の穿刺針(図示せず)を備えた第3環流返血用ライン53の他端を接続し、白血球分画以外の血液成分からなる環流返血液と、環流返血用の正常白血球分画との混合液を患者に戻している。

0069

このように、本発明の特異的異常活性化細胞除去環流返血治療装置では、セルソーター30によって白血病細胞など異常活性化細胞を除去するだけでなく、光照射器40による光の照射によって白血病細胞など異常活性化細胞の残存のおそれを解消することができる。

0070

本発明の特異的異常活性化細胞除去環流返血治療装置は、白血病細胞など異常活性化細胞除去の治療として用いるだけでなく、セルソーター30で除去した白血病細胞など異常活性化細胞の数のカウントや病態解析への利用が可能であることから、上述したように白血病の早期検査や病態モニタリングにも利用することができる。

0071

さらには、本発明の異特異的常活性化白血球除去環流返血治療装置は、ATLL以外のリンパ性白血病、骨髄性白血病を含む骨髄増殖性疾患等の他、他家臓器移植に対する患者免疫の移植臓器に対する拒絶反応、あるいは造血幹細胞移植や骨髄移植の後に発生する急性GVHD(移植片対宿主病)や慢性GVHDによるドナーのリンパ球による患者臓器への攻撃において、攻撃性活性化リンパ球クローンの除去にも利用可能であると考えられる。さらには、各種の自己免疫疾患、あるいはアレルギー疾患などの活性化特異的クローンの異常増殖に伴う諸疾患に広く利用できる可能性がある。また血行性転移をしつつある血液中の上皮性癌腫細胞および肉腫細胞の分離/除去による転移抑制にも利用可能であると考えられる。

0072

(実施例5)
本実施例では、慢性型ATLL患者の末梢血全血に1 mMの5-ALAを投与して48時間培養した後Na-Liランプによる光を照射することによる光動力学的治療法を行った場合の特異的細胞死誘導についてフローサイトメトリー解析した。慢性型ATLL白血病分画(TSLC1(+))と正常単核球分画(TSLC1(-))をPpIX蛍光強度と白血病マーカーであるTSLC1発現強度の細胞分布パターンをフローサイトメトリーで解析した結果、この処理により98.83%のATLL白血病細胞が細胞死により除かれた。その結果99.50%の末梢血単核球(PBMC)が正常細胞になったことが示された。本実施例よりATLL白血病分画と正常単核球分画を高精度に分離できることが明らかであり、PpIXの蛍光強度の設定により、100%のATLL白血病細胞を除くことができると考えられた(図9)。

実施例

0073

(実施例6)
本実施例では、各種株化悪性腫瘍培養細胞について1 mMの5-ALAを投与して48時間培養し、これらの細胞について腫瘍マーカーおよびPpIX蓄積を確認した。
各株化細胞としては、造血器腫瘍由来細胞としてRamos細胞(Burkittリンパ腫(悪性リンパ腫))、K562細胞(慢性骨髄性白血病)およびBALL1細胞(急性Bリンパ球性白血病)であり、各細胞については腫瘍マーカーとしてTSLC1の発現も確認した(図10)。さらに、Jurkat細胞(T-リンパ球性白血病)、FL18(瀘胞性リンパ腫(悪性リンパ腫))についても同様に確認した(図11)。この結果、1 mMの5-ALAを投与することで、造血器腫瘍由来細胞のPpIXの蓄積およびTSLC1の発現について、フローサイトメトリーによりPpIX陽性細胞および腫瘍マーカー陽性細胞の分布パターン(PpIX(+)/TSLCV1(+))が正常細胞(PpIX(-)/TSLC1(-))と明らかに異なることが確認された。また、固形癌では、MCF7細胞(乳癌)やHS-OS1細胞(骨肉腫)についても1 mMの5-ALAの投与によりPpIXの蓄積が認められた(図11)。 さらに、A549細胞(肺癌)、SCCKN細胞舌癌)およびLK79細胞(肺癌)についても1 mMの5-ALAの投与によりPpIXの蓄積が認められ、PpIX陽性細胞および腫瘍マーカー(CK19-9)陽性上皮性癌細胞の分布パターン(PpIX(+)/CK19-9(+))が正常細胞(PpIX(-)/CK19-9(-))と異なることが確認された(図12)。
上記の結果より、造血器腫瘍および固形癌について、PpIX陽性細胞と腫瘍マーカー陽性細胞の分布パターンを解析することで正常細胞とは異なる細胞分布が確認され、腫瘍細胞について光照射等の処理による光動力学的治療を行うことで、腫瘍細胞を除去できるものと考えられた。

0074

10採血用ライン
20遠心分離器
30セルソーター
40光照射器
41 送給管
42光源
50環流返血用ライン
51 第1環流返血用ライン
52 第2環流返血用ライン
53 第3環流返血用ライン
61 第1連結ライン
62 第2連結ライン
63 排出ライン

0075

以上詳述したように、本発明の検査方法によれば、効果的に悪性腫瘍細胞を検出することができる。悪性腫瘍についてフローサイトメトリー・プロファイルを確認することにより、腫瘍の発症/進展の危険度を把握することができる。例えば、悪性腫瘍がATLLの場合には、HTLV-Iキャリアーについて、ATLL発症/進展の危険度を予測することができる。ATLLは(A)くすぶり型、(B)慢性型、(C)急性型、および(D)リンパ腫型に分類されるが、フローサイトメトリー・プロファイルを確認することにより、ハイリスクHTLV-Iキャリアーの同定や病態進展が予想される低悪性度ATLL患者の病態を詳細にモニタリングできることより、発症/進展前に、より適切な先制治療法を行うことができる。

0076

本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置によれば、例えば成分輸血のように患者から採取した血液から白血病細胞など異常活性化細胞だけを除去して正常血球成分、血小板、血漿を再度患者に戻すことができ、白血病治療に貢献しうる。本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置によれば、遠心分離器およびセルソーターによる分離において、PpIXからの蛍光強度のカット・オフ値の設定によって原理的に白血病細胞をほぼ除去することができる。仮に正常細胞分画に紛れ込んだ白血病細胞が混在しても、更に光照射することにより98.7%の白血病細胞を細胞死誘導により取り除くことができ、両者を連続的に行うことにより高効率にほとんどの白血病細胞を除去することが可能である。

0077

また、本発明の異常活性化細胞除去環流返血治療装置は、ATLL以外のリンパ性白血病、骨髄性白血病を含む骨髄増殖性疾患等の他、他家臓器移植に対する患者免疫の移植臓器に対する拒絶反応、あるいは造血幹細胞移植や骨髄移植の後に発生する急性GVHD(移植片対宿主病)や慢性GVHDによるドナーのリンパ球による患者の臓器への攻撃において、攻撃性のリンパ球クローンの除去にも利用可能であると考えられる。さらには、各種の自己免疫疾患、あるいはアレルギー疾患などの特異的クローンの異常増殖に伴うリンパ増殖性疾患など諸疾患に広く利用できる可能性がある。また血行性転移をしつつある血液中の上皮性癌腫細胞および肉腫細胞の分離/除去による転移抑制にも利用可能であると考えられる。

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