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技術 溶鋼の精錬方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 峰田暁木村祐哉工藤進竹島怜爾
出願日 2017年2月27日 (3年10ヶ月経過) 出願番号 2017-035057
公開日 2018年9月13日 (2年3ヶ月経過) 公開番号 2018-141194
状態 特許登録済
技術分野 溶融状態での鋼の処理
主要キーワード 急速降下 臨界流速 盛上り 前半処理 LF処理 後半処理 ガス吹込み口 上昇管側
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年9月13日)のものです。
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図面 (5)

課題

真空脱ガス処理の復圧時、非定常時に生じる溶鋼スラグ巻込みを抑制して、鋼中のCaO含有介在物の量と大きさを低減し、清浄性の高い鋼を製造する。

解決手段

C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する取鍋内の溶鋼に、真空槽に浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施した後、真空槽内の圧力を、減圧状態の圧力P1[Pa]から大気圧P0[Pa]へ復圧し、溶鋼の精錬を終了する精錬方法において、(i)上記圧力P1から、下記式(1)で定義する圧力P2まで、真空槽内の溶鋼の下降速度を0.20m/秒以上に維持して復圧し、次いで、(ii)圧力P2から大気圧P0まで、浸漬管内の溶鋼の下降速度を0.15m/秒以下に維持して復圧することを特徴とする溶鋼の精錬方法。P2=P0−ρ・g・(h−d)・・・(1) ρ:溶鋼密度[kg/m3] g:重力加速度[m/秒2] h:取鍋内の溶鋼浴面から真空槽内の溶鋼浴面までの高さ[m] d:真空槽内の溶鋼浴浸[m]

概要

背景

近年、機械装置高性能化や機械部品の小型化を図るため、機械特性に優れる鋼が求められている。鋼は、一般に、転炉で、溶鋼脱珪処理脱燐処理、さらに、脱炭処理を行った後、二次精錬工程にて、溶鋼の成分組成を調製し、溶鋼中の介在物を低減し、次いで、連続鋳造して製造されるが、機械特性を高めるためには、溶鋼中の介在物をできるだけ低減する必要がある。

例えば、軸受鋼においては、鋼中の介在物の量や大きさが、転動疲労寿命を決定するので、二次精錬工程にて、溶鋼に、取鍋スラグ精錬処理(以下「LF処理」ということがある。)や、真空脱ガス処理(以下「RH処理」ということがある。)を施し、溶鋼中の介在物の低減を図っている。

RH処理は、取鍋中の溶鋼に、二本の浸漬管を浸漬し、浸漬管に繋がる真空槽減圧して、大気圧との差圧で溶鋼を真空槽内に吸い上げ、溶鋼環流ガスを、一方の浸漬管から溶鋼内に供給し、溶鋼を真空槽内と取鍋の間で環流させて、脱ガスや、介在物の低減を図る処理である。

RH処理では、溶鋼を強撹拌することになるので、介在物の除去は促進されるが、一方で、溶鋼中へのスラグ巻込みが発生するので、溶鋼の環流制御が重要で、これまで、環流制御に関する技術が数多く提案されている。

例えば、特許文献1には、塩基度3以上のスラグで還元精錬を実施した後、環流式脱ガス装置によって、処理時間の2/3を高環流、1/3を弱環流にして真空脱ガス精錬を行なうことを特徴とする軸受鋼の製造方法が提案されている。

特許文献2には、アーク溶解炉又は転炉で製造した溶鋼を取鍋に移注して精錬する際、取鍋における精錬を60分以下とし、環流式脱ガス装置による溶鋼の環流量を全溶鋼の8倍以上として脱ガスを25分以上行なうことを特徴とする高清浄鋼の製造方法が提案されている。

特許文献3には、転炉又は電気炉から出鋼した溶鋼を取鍋精錬装置で精錬した後、環流式真空脱ガス装置で精錬して高清浄度鋼を製造する際、環流式真空脱ガス装置で行なう精錬処理でのスラグ塩基度を6.5以上13.5以下とし、環流式真空脱ガス装置の全処理時間の1/3〜1/2の前半処理では、溶鋼環流量180ton/min以上、210ton/min以下の高環流状態とし、後半処理では、溶鋼環流量110ton/min以上、140ton/min以下の弱環流状態とすることを特徴とする高清浄度鋼の製造方法が提案されている。

特許文献4には、溶鋼の真空精錬処理終了時に真空槽内に窒素ガスを導入して、真空から常圧に復圧する真空精錬装置復圧方法において、溶鋼浴表面にはアルゴンガス等の不活性ガスを導入して、溶鋼の吸窒を防止する復圧方法が提案されている。

特許文献5には、真空槽内にスラグを持ち込まない状態で、真空槽内の真空度に応じて攪拌用ガスを供給することを特徴とする高清浄度低炭素鋼の製造方法が提案されている。

概要

真空脱ガス処理の復圧時、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻込みを抑制して、鋼中のCaO含有介在物の量と大きさを低減し、清浄性の高い鋼を製造する。C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する取鍋内の溶鋼に、真空槽に浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施した後、真空槽内の圧力を、減圧状態の圧力P1[Pa]から大気圧P0[Pa]へ復圧し、溶鋼の精錬を終了する精錬方法において、(i)上記圧力P1から、下記式(1)で定義する圧力P2まで、真空槽内の溶鋼の下降速度を0.20m/秒以上に維持して復圧し、次いで、(ii)圧力P2から大気圧P0まで、浸漬管内の溶鋼の下降速度を0.15m/秒以下に維持して復圧することを特徴とする溶鋼の精錬方法。P2=P0−ρ・g・(h−d)・・・(1) ρ:溶鋼密度[kg/m3] g:重力加速度[m/秒2] h:取鍋内の溶鋼浴面から真空槽内の溶鋼浴面までの高さ[m] d:真空槽内の溶鋼浴浸[m]

目的

本発明は、従来技術の現状に鑑み、溶鋼の真空脱ガス処理の復圧時、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻込みを抑制して、鋼中のCaO含有介在物の量と大きさを低減し、清浄性の高い鋼を製造することを課題とし、該課題を解決する溶鋼の精錬方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する取鍋内の溶鋼に、真空槽に浸漬管を備える脱ガス装置真空脱ガス処理を施した後、真空槽内の圧力を、減圧状態の圧力P1[Pa]から大気圧P0[Pa]へ復圧し、溶鋼の精錬を終了する精錬方法において、(i)上記圧力P1から、下記式(1)で定義する圧力P2まで、真空槽内の溶鋼の下降速度を0.20m/秒以上に維持して復圧し、次いで、(ii)圧力P2から大気圧P0まで、浸漬管内の溶鋼の下降速度を0.15m/秒以下に維持して復圧することを特徴とする溶鋼の精錬方法。P2=P0−ρ・g・(h−d)・・・(1)ρ:溶鋼密度[kg/m3]g:重力加速度[m/秒2]h:取鍋内の溶鋼浴面から真空槽内の溶鋼浴面までの高さ[m]d:真空槽内の溶鋼浴浸[m]

請求項2

前記真空脱ガス処理をRH式真空脱ガス装置で行なうことを特徴とする請求項1に記載の溶鋼の精錬方法。

請求項3

前記RH式真空脱ガス装置で復圧を行なう際、復圧用ガスを、溶鋼環流ガスを吹き込む部位、及び、真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から供給することを特徴とする請求項2に記載の溶鋼の精錬方法。

請求項4

前記復圧用ガスが不活性ガスであることを特徴とする請求項3に記載の溶鋼の精錬方法。

請求項5

前記溶鋼が、質量%で、C:1.20%以下、Si:3.00%以下、Mn:1.60%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶鋼の精錬方法。

請求項6

前記溶鋼が、さらに、質量%で、Al:0.20%以下、Cr:3.50%以下、Mo:0.85%以下、Ni:4.50%以下、Nb:0.20%以下、V:0.45%以下、W:0.30%以下、B:0.006%以下、N:0.060%以下、Ti:0.25%以下、Cu:0.50%以下、Pb:0.45%以下、Bi:0.20%以下、Te:0.010%以下、Sb:0.20%以下、Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下、O:0.003%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項5に記載の溶鋼の精錬方法。

技術分野

0001

本発明は、清浄性の高い溶鋼を製造する精錬方法、特に、真空脱ガス精錬を終了する時の精錬方法に関するものである。

背景技術

0002

近年、機械装置高性能化や機械部品の小型化を図るため、機械特性に優れる鋼が求められている。鋼は、一般に、転炉で、溶鋼を脱珪処理脱燐処理、さらに、脱炭処理を行った後、二次精錬工程にて、溶鋼の成分組成を調製し、溶鋼中の介在物を低減し、次いで、連続鋳造して製造されるが、機械特性を高めるためには、溶鋼中の介在物をできるだけ低減する必要がある。

0003

例えば、軸受鋼においては、鋼中の介在物の量や大きさが、転動疲労寿命を決定するので、二次精錬工程にて、溶鋼に、取鍋スラグ精錬処理(以下「LF処理」ということがある。)や、真空脱ガス処理(以下「RH処理」ということがある。)を施し、溶鋼中の介在物の低減を図っている。

0004

RH処理は、取鍋中の溶鋼に、二本の浸漬管を浸漬し、浸漬管に繋がる真空槽減圧して、大気圧との差圧で溶鋼を真空槽内に吸い上げ、溶鋼環流ガスを、一方の浸漬管から溶鋼内に供給し、溶鋼を真空槽内と取鍋の間で環流させて、脱ガスや、介在物の低減を図る処理である。

0005

RH処理では、溶鋼を強撹拌することになるので、介在物の除去は促進されるが、一方で、溶鋼中へのスラグ巻込みが発生するので、溶鋼の環流制御が重要で、これまで、環流制御に関する技術が数多く提案されている。

0006

例えば、特許文献1には、塩基度3以上のスラグで還元精錬を実施した後、環流式脱ガス装置によって、処理時間の2/3を高環流、1/3を弱環流にして真空脱ガス精錬を行なうことを特徴とする軸受鋼の製造方法が提案されている。

0007

特許文献2には、アーク溶解炉又は転炉で製造した溶鋼を取鍋に移注して精錬する際、取鍋における精錬を60分以下とし、環流式脱ガス装置による溶鋼の環流量を全溶鋼の8倍以上として脱ガスを25分以上行なうことを特徴とする高清浄鋼の製造方法が提案されている。

0008

特許文献3には、転炉又は電気炉から出鋼した溶鋼を取鍋精錬装置で精錬した後、環流式真空脱ガス装置で精錬して高清浄度鋼を製造する際、環流式真空脱ガス装置で行なう精錬処理でのスラグ塩基度を6.5以上13.5以下とし、環流式真空脱ガス装置の全処理時間の1/3〜1/2の前半処理では、溶鋼環流量180ton/min以上、210ton/min以下の高環流状態とし、後半処理では、溶鋼環流量110ton/min以上、140ton/min以下の弱環流状態とすることを特徴とする高清浄度鋼の製造方法が提案されている。

0009

特許文献4には、溶鋼の真空精錬処理終了時に真空槽内に窒素ガスを導入して、真空から常圧に復圧する真空精錬装置復圧方法において、溶鋼浴表面にはアルゴンガス等の不活性ガスを導入して、溶鋼の吸窒を防止する復圧方法が提案されている。

0010

特許文献5には、真空槽内にスラグを持ち込まない状態で、真空槽内の真空度に応じて攪拌用ガスを供給することを特徴とする高清浄度低炭素鋼の製造方法が提案されている。

先行技術

0011

特開昭62−063650号公報
特開2001−342516号公報
特開2008−133505号公報
特開平05−331526号公報
特開平08−199225号公報

発明が解決しようとする課題

0012

前述したように、鋼の機械特性に、鋼中に存在する介在物、主に、酸化物系介在物の量と大きさが大きく影響する。鋼中の酸化物系介在物のうち、特に、数10μm程の粗大な介在物は、CaO含有低融点介在物(以下「CaO含有介在物」ということがある。)である。

0013

粗大なCaO含有介在物は、精錬で使用する取鍋スラグが、溶鋼中に巻き込まれて発生するスラグ系介在物スラグ中のCaOが還元されて溶鋼に混入し、溶鋼中のAl2O3やMgO−Al2O3と反応して生成する介在物、さらに、これらの介在物が溶鋼中の介在物を取り込んで粗大化した介在物である。

0014

粗大なCaO含有介在物は、品質管理指標極値統計値や、製品特性疲労寿命を悪化させるので、その量と大きさを低減する必要があるが、そのためには、凝集合体の起点となる低融点介在物の量と大きさを低減するとともに、低融点介在物に取り込まれる溶鋼中の介在物の量と大きさ低減することが有効である。

0015

これら介在物の量と大きさを低減するためには、製造の各工程(取鍋精錬−RH処理−連続鋳造)において、溶鋼中への介在物の混入を防止する、又は、溶鋼中の介在物を除去する等の介在物低減対策が必要である。

0016

溶鋼中への取鍋スラグの巻込みは、RH処理において、溶鋼流速が大きい場合や、スラグ/溶鋼界面の擾乱が激しい場合に、その頻度が大きくなり、混入するスラグ系介在物の量と大きさが、ともに増大する。

0017

RH処理の終了後は、真空槽内の溶鋼を取鍋に戻すため、真空槽内の減圧状態を大気圧へ戻す「復圧」を実施するが、復圧時には、真空槽内に吸い上げられていた溶鋼、及び、浸漬管内に貯留していた溶鋼が、急激に降下して取鍋内に戻るので、急激に降下する溶鋼が誘起する溶鋼の下降流速は非常に大きく、スラグ/溶鋼界面が激しく搖動し、スラグが溶鋼に巻き込まれるとともに、巻き込まれたスラグは取鍋内溶鋼の深部まで引き込まれることになる。

0018

また、復圧時の溶鋼環流ガス流量が、RH処理中の溶鋼環流ガス流量と同じ強環流条件であれば、溶鋼は、復圧中も、スラグ巻込みの臨界溶鋼流速を超える流速で環流することになるので、真空槽内のスラグは、常に、溶鋼中に巻き込まれ易い状態におかれることとなる。さらに、スラグ/溶鋼界面において、スラグ巻込みの臨界流速を超える溶鋼流速が存在し、スラグと溶鋼の接触時間が長いと、真空槽内のスラグが溶鋼中に巻き込まれ易い状態が続くので、溶鋼中のスラグ系介在物の量は増大することになる。

0019

特許文献1の方法では、環流式脱ガス処理の前半2/3を高環流とし、後半1/3を弱環流としているが、特許文献1に、復圧時の環流条件は記載されていない。また、環流式脱ガス処理の後半を弱環流にすると、溶鋼中の全酸素量T.Oを十分に低減できない可能性がある。

0020

特許文献2の方法では、取鍋における精錬を60分以下とし、環流式脱ガス装置による溶鋼の環流量を、全溶鋼の8倍以上として脱ガスを25分以上行なうが、特許文献2に、復圧時の環流条件は記載されておらず、また、溶鋼中へのスラグ巻込みに影響する環流条件も不明瞭である。

0021

特許文献3の方法では、環流式真空脱ガス装置の全処理時間の1/3〜1/2の前半を高環流状態とし、後半を弱環流状態としているが、特許文献1の方法と同様に、復圧時の環流条件は記載されておらず、また、後半を弱撹拌とするので、溶鋼の全酸素量T.Oを十分に下げることができない恐れがある。

0022

特許文献4の方法では、復圧時のガス種等が規定されているが、特許文献4に、真空槽内及び取鍋内にて溶鋼のスラグ巻き込みを抑制する復圧条件は記載されていない。特許文献5の方法では、真空槽内の圧力に応じた適切な撹拌ガス流速が規定されているが、特許文献5に、真空槽内及び取鍋内において、溶鋼中へのスラグ巻込みを抑制する復圧条件は記載されていない。

0023

そこで、本発明は、従来技術の現状に鑑み、溶鋼の真空脱ガス処理の復圧時、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻込みを抑制して、鋼中のCaO含有介在物の量と大きさを低減し、清浄性の高い鋼を製造することを課題とし、該課題を解決する溶鋼の精錬方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0024

本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意検討した。その結果、真空脱ガス処理の復圧時、真空槽内の圧力を制御して、真空槽内及び浸漬管内の溶鋼の下降速度を最適化すれば、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻込み、及び、スラグ系介在物の取鍋内溶鋼の深部への浸入を抑制でき、スラグに起因して鋼中に残存するCaO含有介在物の量と大きさを大幅に低減できることを見いだした。この点については後述する。

0025

本発明は、上記の知見に基づいてなされたもので、その要旨は次の通りである。

0026

(1)C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する取鍋内の溶鋼に、真空槽に浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施した後、真空槽内の圧力を、減圧状態の圧力P1[Pa]から大気圧P0[Pa]へ復圧し、溶鋼の精錬を終了する精錬方法において、
(i)上記圧力P1から、下記式(1)で定義する圧力P2まで、真空槽内の溶鋼の下降速度を0.20m/秒以上に維持して復圧し、次いで、
(ii)圧力P2から大気圧P0まで、浸漬管内の溶鋼の下降速度を0.15m/秒以下に維持して復圧する
ことを特徴とする溶鋼の精錬方法。

0027

P2=P0−ρ・g・(h−d) ・・・(1)
ρ:溶鋼密度[kg/m3]
g:重力加速度[m/秒2]
h:取鍋内の溶鋼浴面から真空槽内の溶鋼浴面までの高さ[m]
d:真空槽内の溶鋼浴浸[m]

0028

(2)前記真空脱ガス処理をRH式真空脱ガス装置で行なうことを特徴とする前記(1)に記載の溶鋼の精錬方法。

0029

(3)前記RH式真空脱ガス装置で復圧を行なう際、復圧用ガスを、溶鋼環流ガスを吹き込む部位、及び、真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から供給することを特徴とする前記(2)に記載の溶鋼の精錬方法。

0030

(4)前記復圧用ガスが不活性ガスであることを特徴とする前記(3)に記載の溶鋼の精錬方法。

0031

(5)前記溶鋼が、質量%で、C:1.20%以下、Si:3.00%以下、Mn:1.60%以下、P:0.05%以下、S:0.05%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶鋼の精錬方法。

0032

(6)前記溶鋼が、さらに、質量%で、Al:0.20%以下、Cr:3.50%以下、Mo:0.85%以下、Ni:4.50%以下、Nb:0.20%以下、V:0.45%以下、W:0.30%以下、B:0.006%以下、N:0.060%以下、Ti:0.25%以下、Cu:0.50%以下、Pb:0.45%以下、Bi:0.20%以下、Te:0.010%以下、Sb:0.20%以下、Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下、O:0.003%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(5)に記載の溶鋼の精錬方法。

発明の効果

0033

本発明によれば、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻込み、及び、スラグ系介在物の取鍋内溶鋼の深部への浸入を抑制でき、スラグに起因して鋼中に残存するCaO含有介在物の量と大きさを大幅に低減できるので、清浄性が高く、機械特性に優れた鋼を提供することができる。

図面の簡単な説明

0034

真空槽の浸漬上昇管と浸漬下降管を溶鋼とスラグに浸漬し、真空槽内を減圧し、真空槽内に溶鋼とスラグを吸い上げた態様を示す図である。
真空脱ガス処理中の溶鋼とスラグの態様を示す図である。
通常の復圧時における浸漬上昇管と浸漬下降管内の溶鋼とスラグの態様を示す図である。
本発明の復圧時における浸漬上昇管と浸漬下降管内の溶鋼とスラグの態様を示す図である。

0035

本発明の溶鋼の精錬方法(以下「本発明精錬方法」ということがある。)は、
C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する取鍋内の溶鋼に、真空槽に浸漬管を備える脱ガス装置で真空脱ガス処理を施した後、真空槽内の圧力を、減圧状態の圧力P1[Pa]から大気圧P0[Pa]へ復圧し、溶鋼の精錬を終了する精錬方法において、
(i)上記圧力P1から、下記式(1)で定義する圧力P2まで、真空槽内の溶鋼の下降速度を0.20m/秒以上に維持して復圧し、次いで、
(ii)圧力P2から大気圧P0まで、浸漬管内の溶鋼の下降速度を0.15m/秒以下に維持して復圧する
ことを特徴とする。

0036

P2=P0−ρ・g・(h−d) ・・・(1)
ρ:溶鋼密度[kg/m3]
g:重力加速度[m/秒2]
h:取鍋内の溶鋼浴面から真空槽内の溶鋼浴面までの高さ[m]
d:真空槽内の溶鋼浴浸[m]

0037

以下、本発明精錬方法について、溶鋼にRH式真空脱ガス処理を施す場合を例にとって説明する。

0038

図1図3に、RH式真空脱ガス処理の態様を示す。図1に、真空槽の浸漬上昇管と浸漬下降管を溶鋼とスラグに浸漬し、真空槽内を減圧し、真空槽内に溶鋼とスラグを吸い上げた態様を示し、図2に、真空脱ガス処理中の溶鋼とスラグの態様を示し、図3に、通常の復圧時における浸漬上昇管と浸漬下降管内の溶鋼とスラグの態様を示す。

0039

図1に示すように、溶鋼に真空脱ガス処理を施す際には、浸漬上昇管2aと浸漬下降管2bを備え、排気管4を介し排気装置(図示なし)に接続されている真空槽1を降下させ、又は、取鍋2を上昇させ、浸漬上昇管2aと浸漬下降管2bを、スラグ6aを通して溶鋼5aに浸漬し、真空槽1内の大気を排気管4から排気して、真空槽1内を減圧し、真空槽1内に溶鋼5aとスラグ6aを吸い上げる。

0040

取鍋2内の溶鋼5aはスラグ6aに覆われているので、真空槽1内には溶鋼5aとスラグ6aが吸い上げられ、吸い上げられた溶鋼5bは、同様に、スラグ6bで覆われる。溶鋼5bがスラグ6bで覆われている状態で、浸漬上昇管2aに設けた溶鋼環流ガス吹込み口3から、浸漬上昇管2a内の溶鋼に、溶鋼環流ガス3a(アルゴン窒素などの不活性ガス)を吹き込む。

0041

図2に示すように、溶鋼環流ガス3aの吹込みで生じるポンプ作用によって、浸漬上昇管2a内の溶鋼5bが上昇し、真空槽1内において、溶鋼5bの盛上り5cが形成され、真空槽1内の溶鋼5bは、所要の溶鋼流速5dで浸漬下降管2bへ向かって流動し、浸漬下降管2bから取鍋2へ環流する(図2中「矢印」参照)。

0042

溶鋼5bの盛上り5cが、真空槽1の減圧雰囲気に曝されて、溶鋼5bに対する脱ガス処理が進行し、溶鋼5bが環流する間、溶鋼5aに対する真空脱ガス処理が進行する。

0043

溶鋼5bを覆うスラグ6bは、溶鋼流速5dが速い場合、また、スラグ/溶鋼界面での擾乱が大きい場合に、取鍋2へ環流する溶鋼5b中に巻き込まれるので、真空槽1内の減圧状態を大気圧へ復圧して真空脱ガスを終了する時、取鍋2へ環流する溶鋼5bの挙動と、真空脱ガス処理の間、浸漬下降管2bの上部に偏って滞留するスラグ6bの挙動が、溶鋼5bが取鍋2へ環流した後の溶鋼5aの清浄性に大きく影響する。

0044

真空槽1内の減圧状態を大気圧にむけて復圧していくと、真空槽1内の溶鋼5bの盛上り5cの高さは低くなっていき、それに伴い、浸漬上昇管2a近傍に存在するスラグ6bは浸漬上昇管2a側に流動するので、真空槽1内の溶鋼5bとスラグ6bは、図3に示すように、浸漬上昇管2aと浸漬下降管2bから取鍋2へ降下する。

0045

通常、復圧中も、浸漬上昇管2aの溶鋼環流ガス吹込み口3から溶鋼環流ガス3aを供給するので、浸漬上昇管2a側の溶鋼5bとスラグ6bは強撹拌されるとともに、溶鋼還流が継続する。

0046

強撹拌によりスラグ6bが懸濁した溶鋼5bが浸漬管上昇管2aから取鍋2へ降下すると、溶鋼5a中にスラグ6bが懸濁した溶鋼域が形成され、該溶鋼域が取鍋2内の溶鋼5aの深部に浸入し、真空脱ガス処理を施した溶鋼の清浄性が低下する。

0047

また、溶鋼環流が継続すると、浸漬下降管2b側に偏って存在するスラグ6bの下面には、浸漬上昇管2a側から浸漬下降管2b側に向かう溶鋼流速5dが存在することになり、真空槽1内のスラグ6bは、スラグ/溶鋼界面にて、上記溶鋼流速に巻き込まれ易い状態におかれることになる。

0048

復圧時、溶鋼環流ガス3aの流量が、RH処理中の溶鋼環流ガスの流量と同じ場合、溶鋼の還流量は減少するが、真空槽1内での溶鋼流速5dは大きくなり、溶鋼流速5dが、スラグ巻込みの臨界溶鋼流速を超えると、真空槽1内のスラグは、常に、溶鋼5b中に巻き込まれ易い状態におかれることになる。

0049

さらに、浸漬下降管2b側に偏って存在するスラグ6bの下面に形成される、浸漬上昇管2a側から浸漬下降管2b側に向かう溶鋼流速5dが、スラグ巻込みの臨界流速を超えかつ、スラグ6bと溶鋼5bの接触時間が長くなると、真空槽1内のスラグ6bが溶鋼5bに巻き込まれ易い状態が続き、溶鋼5a中のスラグ系介在物の量が増大する。

0050

また、復圧時、真空槽1内の溶鋼5bとスラグ6bが急激に降下するので、取鍋2内のスラグ/溶鋼界面が激しく搖動し、溶鋼5aがスラグ6aを巻き込む可能性が増大するし、さらに、この急激な溶鋼5bとスラグ6bの降下により、スラグ/溶鋼界面近傍で、溶鋼流速がスラグ巻込み臨界流速を超えて、その状態が長時間続くと、溶鋼5a中に巻き込まれるスラグ系介在物の量が増大する。

0051

前述したように、鋼中の非金属介在物のうち、特に、CaO含有介在物の量及び大きさの増大は、鋼の機械特性、特に、延性靱性疲労特性等を阻害する。

0052

そこで、本発明者らは、上記のことを踏まえ、CaO含有介在物の量及び大きさの増大を抑制する、又は、該量及び大きさを低減するためには、
(x)溶鋼環流が継続(溶鋼流速が存在)するスラグ/溶鋼界面において、スラグと溶鋼の接触時間を短縮すること、及び、
(y)真空槽内及び浸漬管内の溶鋼とスラグの降下に伴うスラグ/溶鋼界面の搖動を抑制し、溶鋼中へのスラグ巻込みを低減すること
が有効であると発想し、該発想を実現する手法について鋭意検討した。

0053

その結果、復圧初期の減圧状態(図2、参照)の圧力P1から、真空槽内の溶鋼の浴浸(図2中「d」、参照)が0mとなる、上記式(1)で定義する圧力P2[Pa]まで、真空槽内の溶鋼の下降速度を0.20m/秒以上に維持して急速に復圧すると、
(a)真空槽内の溶鋼の盛上りの高さが急速に低くなり、浸漬上昇管近傍に存在するスラグが浸漬上昇管側に流動する前に、溶鋼が浸漬上昇管内へ降下し、スラグの浸漬上昇管内への流入が抑制されるとともに、
(b)浸漬下降管側に偏って存在するスラグの下面に、浸漬上昇管側から浸漬下降管側に向かう溶鋼流速が存在する時間、即ち、溶鋼流速の存在下におけるスラグと溶鋼の接触時間が短縮され、取鍋に環流する溶鋼のスラグ巻き込みが抑制される
ことを見いだした。

0054

さらに、真空槽内の溶鋼の浴浸が0mとなる圧力P2[Pa]まで急速に復圧した後、浸漬管内の溶鋼の下降速度を0.15m/秒以下に維持して、ゆっくりと復圧すると、
(c)取鍋内におけるスラグ/溶鋼界面の搖動が抑制されて、溶鋼中へのスラグ巻込みが減少するとともに、
(d)スラグ系介在物の取鍋内溶鋼の深部への浸入が抑制される
ことを見いだした。

0055

本発明精錬方法は、上記知見に基づいてなされたもので、スラグに起因して鋼中に残存するCaO含有介在物の量と大きさを大幅に低減し、清浄性が高く、機械特性に優れた鋼を製造できるものである。

0056

以下、本発明精錬方法の復圧(減圧状態の圧力P1から圧力P2[Pa]までの復圧と、この復圧に続いて行う、圧力P2[Pa]から大気圧P0[Pa]までの復圧)について、図面に基づいて詳細に説明する。

0057

図4に、本発明精錬方法の復圧時における、浸漬上昇管と浸漬下降管内の溶鋼とスラグの態様を示す。

0058

図4に示すように、復圧初期の減圧状態(図2、参照)から、真空槽内の溶鋼の浴浸(図2中「d」、参照)が0mとなる圧力P2まで急速に復圧(以下「急速復圧」ということがある。)する。

0059

急速復圧により、浸漬上昇管2aの上部の溶鋼5bは浸漬上昇管2a内へ急速に降下するので、上記溶鋼5bの盛上り5c(図2、参照)の高さは急速に低くなるとともに、浸漬下降管2b側では、スラグ6と溶鋼5bが、浸漬下降管2b内に急速に降下する。

0060

この浸漬下降管2b側でのスラグ6と溶鋼5bの急速降下に伴い、浸漬上昇管2a近傍に存在するスラグ6bは浸漬上昇管2a側に流動しないので、浸漬上昇管2aの上部の溶鋼5bの盛上り5cは、スラグ6bに覆われずに浸漬上昇管2a内へ急速に降下する。それ故、浸漬上昇管2a内で、溶鋼のスラグ巻込みは生じない。

0061

また、急速復圧により、浸漬下降管側に偏って存在するスラグの下面に、浸漬上昇管側から浸漬下降管側に向かう溶鋼流速が存在する時間、即ち、溶鋼流速の存在下でスラグと溶鋼が接触する時間が短縮されて、取鍋に環流する溶鋼のスラグ巻込みが抑制される。

0062

真空槽内における溶鋼の浴浸(図2中「d」、参照)が0mとなる状態を形成する圧力P2[Pa]は、下記式(1)で定義することができる。

0063

P2=P0−ρ・g・(h−d) ・・・(1)
P0:大気圧[Pa]
ρ:溶鋼密度[kg/m3]
g:重力加速度[m/秒2]
h:取鍋内の溶鋼浴面から真空槽内の溶鋼浴面までの高さ[m]
d:真空槽内の溶鋼浴浸[m]

0064

圧力P2は、真空槽内の溶鋼の浴浸が0mとなるときの圧力、即ち、真空槽内で、スラグ上面が真空槽の底面と同じ高さになるときの圧力であり、大気圧P0と真空槽内の溶鋼の静圧(ρ・g・(h−d))で決まる圧力である(図2中「h」と「d」、参照)。

0065

復圧初期の圧力P1から、上記式(1)で定義する圧力P2まで急速復圧する際、真空槽内の溶鋼の下降速度を0.20m/秒以上とする。真空槽内の溶鋼の下降速度が0.20m/秒未満であると、真空槽内の溶鋼の浴浸が0mとなるまでの時間、即ち、スラグと溶鋼が接触する時間が長くなり、溶鋼のスラグ巻込みが発生して、粗大なスラグ系介在物が鋼材まで残留するので、上記下降速度は0.20m/秒以上とする。好ましくは0.40m/秒以上である。溶鋼の下降速度は、真空脱ガス装置の容量や、復圧のために真空槽内へ供給するガスの供給速度に依るので、上限は特に限定しない。

0066

操業によれば、真空槽内の溶鋼の浴浸が0.35m程度の場合、圧力P2まで1〜2秒程度で復圧することができる。この点を考慮し、実現可能な溶鋼の下降速度として、真空槽内の溶鋼の下降速度を0.20m/秒以上に設定した。

0067

さらに、真空槽内の溶鋼の浴浸が0mとなる圧力P2[Pa]まで急速復圧した後、浸漬管内の溶鋼の下降速度を0.15m/秒以下に維持して、大気圧まで、ゆっくりと復圧する(以下「緩速復圧」ということがある。)。緩速復圧により、取鍋内におけるスラグ/溶鋼界面の搖動が減少するので、溶鋼中へのスラグ巻き込みが抑制され、また、スラグ系介在物の取鍋内溶鋼の深部への浸入が抑制される。

0068

緩速復圧において、浸漬管内の溶鋼の下降速度が0.15m/秒を超えると、取鍋内におけるスラグ/溶鋼界面の搖動が大きくなり、溶鋼中へのスラグ巻込みが増大し、また、スラグ系介在物が取鍋内溶鋼の深部へ浸入し、粗大なスラグ系介在物が鋼材まで残留するので、浸漬管内の溶鋼の下降速度は0.15m/秒以下とする。好ましくは0.05m/秒以下である。

0069

例えば、実操業において、浸漬管内の溶鋼の下降速度を0.05m/秒にして緩速復圧を実施した場合、緩速復圧が終了するまでの時間は30秒程度であるので、本発明精錬方法は、実操業において、無理なく実施できるものである。

0070

溶鋼の下降速度は、生産性を考慮して適宜設定すればよいので、下限は特に限定しない。

0071

本発明精錬方法において、真空脱ガス処理に供する、C、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼は、通常の精錬工程(一次精錬)で精錬した、通常の成分組成の溶鋼でよい。なお、溶鋼の好ましい成分組成については後述する。

0072

一次精錬に続いて行なう真空脱ガス処理(二次精錬)を、RH式真空脱ガス装置を用いて行ない、真空脱ガス処理の終了後の復圧時、上記式(1)で定義する圧力P2まで、真空槽内の溶鋼の下降速度を0.20m/秒以上に維持して復圧し、次いで、圧力P2から大気圧まで、浸漬管内の溶鋼の下降速度を0.15m/秒以下に維持して復圧し、復圧後、溶鋼を鋳造する。鋳造は、通常の鋳造でよいが、連続鋳造が好ましい。

0073

例えば、転炉で一次精錬を行ない、次いで、転炉外で二次精錬を行なう精錬工程において、本発明精錬方法を適用すれば、溶鋼中へのスラグ巻込みを極力抑制できるので、本発明精錬方法は、高い清浄性が求められる鋼、例えば、軸受用鋼の製造に好適である。

0074

復圧時、真空槽内に供給する復圧用ガスは、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位及び真空槽内に直接供給する部位の一方又は両方から供給する。復圧用ガスを両方の部位から供給する場合、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量を、真空脱ガス処理時の溶鋼環流ガスの流量より少なくすることが好ましい。

0075

復圧時、溶鋼環流用ガスを吹き込む部位から供給する復圧用ガスの流量を、真空脱ガス処理時の溶鋼環流ガスの流量より少なくすることにより、真空槽内における溶鋼のスラグ巻込みを、より抑制することができる。復圧用ガスは、溶鋼の汚染を防止する観点から、アルゴンや窒素などの、溶鋼と反応し難い不活性ガスが好ましい。

0076

真空脱ガス処理を施す溶鋼は、通常の成分組成の溶鋼、即ち、鋼の基本元素のC、Si、Mn、P、及び、Sを含有する溶鋼であれば、溶鋼中へのスラグ巻込みが抑制されて、本発明精錬方法の介在物低減効果を得ることができるので、特定の成分組成の溶鋼に限定されないが、上記介在物低減効果が顕著に発現する溶鋼の好ましい成分組成について、以下に説明する。以下、%は質量%を意味する。

0077

C:1.20%以下
Cは、焼入れ後の鋼の強度や硬さを確保するのに有効な元素である。1.20%を超えると、焼入れ時に割れが発生し、また、硬くなりすぎて、切削工具寿命が低下するので、Cは1.20%以下が好ましい。より好ましくは1.00%以下である。

0078

強度又は硬さをそれほど必要としない鋼種では、Cを必ずしも必要としないので、下限は特に限定しないが、Cは、鋼の基本元素であり、0%にすることは困難であるので、下限は0%を含まない。所要の強度や硬さを確保する点で、Cは0.001%以上が好ましい。

0079

Si:3.00%以下
Siは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。3.00%を超えると、硬くなりすぎて、切削工具の寿命が低下するので、Siは3.00%以下が好ましい。より好ましくは2.50%以下である。

0080

強度又は硬さをそれほど必要としない鋼種では、Siを必要としないので、下限は特に定めないが、Siは、鋼の基本元素であり、0%にすることは困難であるので、下限は0%を含まない。所要の強度や硬さを確保する点で、Siは0.001%以上が好ましい。

0081

Mn:1.60%以下
Mnは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。1.60%を超えると、焼入れ時に割れが発生し、また、硬くなりすぎて、切削工具の寿命が低下するので、Mnは1.60%以下が好ましい。より好ましくは1.20%以下である。

0082

強度又は硬さをそれほど必要としない鋼種は、Mnを必要としないので、下限は特に定めないが、Mnは、鋼の基本元素であるので、下限は0%を含まない。所要の強度や硬さを確保する点で、Mnは0.01%以上が好ましい。

0083

P:0.05%以下
Pは、不純物元素であり、靱性を阻害する元素である。Pが0.05%を超えると、靭性が著しく低下するので、Pは0.05%以下が好ましい。より好ましくは0.03%以下である。下限は0%を含むが、Pを0.0001%以下に低減すると、精錬コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。

0084

S:0.05%以下
Sは、Pと同様に、不純物元素であり、靱性を阻害する元素である。Sが0.05%を超えると、靭性が著しく低下するので、Sは0.05%以下が好ましい。より好ましくは0.03%以下である。下限は0%を含むが、Sを0.0001%以下に低減すると、精錬コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。

0085

好ましい成分組成の溶鋼は、鋼の機械特性及び/又は化学特性を阻害しない範囲で、上記基本元素以外に、Al:0.20%以下、Cr:3.50%以下、Mo:0.85%以下、Ni:4.50%以下、Nb:0.20%以下、V:0.45%以下、W:0.30%以下、B:0.006%以下、N:0.060%以下、Ti:0.25%以下、Cu:0.50%以下、Pb:0.45%以下、Bi:0.20%以下、Te:0.01%以下、Sb:0.20%以下、Mg:0.010%以下、Ca:0.010%以下、REM:0.010%以下、O:0.003%以下の1種又は2種以上を含有してもよい。

0086

Al:0.20%以下
Alは、脱酸元素であり、また、結晶粒微細化する元素である。0.20%を超えると、粗大な酸化物系介在物が生成し、靭性及び延性が低下するので、Alは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.15%以下である。結晶粒の微細化効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。

0087

Cr:3.50%以下
Crは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。3.50%を超えると、靱性及び延性が低下するので、3.50%以下が好ましい。より好ましくは2.50%以下である。Crの添加効果を確保する点で、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましい。

0088

Mo:0.85%以下
Moは、焼入れ性を高めて強度や硬さの確保に有効な元素である。また、Moは、炭化物を形成して、焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.85%を超えると、過冷組織が生じ、靱性及び延性が低下するので、Moは0.85%以下が好ましい。より好ましくは0.65%以下である。Moの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。

0089

Ni:4.50%以下
Niは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。4.50%を超えると、靱性及び延性が低下するので、Niは4.50%以下が好ましい。より好ましくは3.50%以下である。Niの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。

0090

Nb:0.20%以下
Nbは、炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化抑制や焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.20%を超えると、靱性及び延性が低下するので、Nbは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.10%以下である。Nbの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。

0091

V:0.45%以下
Vは、炭化物、窒化物、及び/又は、炭窒化物を形成し、結晶粒の粗大化抑制や焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.45%を超えると、靱性及び延性が低下するので、Vは0.45%以下が好ましい。より好ましくは0.35%以下である。Vの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。

0092

W:0.30%以下
Wは、焼入れ性を高めて、強度や硬さの確保に有効な元素である。また、Wは、炭化物を形成して、焼戻し軟化抵抗の向上に寄与する元素である。0.30%を超えると、過冷組織が生じ、靱性及び延性が低下するので、Wは0.30%以下が好ましい。より好ましくは0.25%以下である。Wの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。

0093

B:0.006%以下
Bは、焼入れ性を高め、強度の向上に寄与する元素である。また、Bは、オーステナイト粒界偏析して、Pの粒界偏析を抑制し、疲労強度の向上に寄与する元素である。0.006%を超えると、靱性が低下するので、Bは0.006%以下とする。好ましくは0.004%以下である。Bの添加効果を確保する点で、0.0005%以上が好ましく、0.0010%以上がより好ましい。

0094

N:0.060%以下
Nは、微細な窒化物を形成して結晶粒を微細化し、強度及び靭性の向上に寄与する元素である。0.060%を超えると、窒化物が過剰に生成して、靱性が劣化するので、Nは0.060%以下が好ましい。より好ましくは0.040%以下である。Nの添加効果を確保する点で、0.001%以上が好ましく、0.005%以上がより好ましい。

0095

Ti:0.25%以下
Tiは、微細なTi窒化物を形成して結晶粒を微細化し、強度及び靭性の向上に寄与する元素である。0.25%を超えると、Ti窒化物が過剰に生成し、靱性が低下するので、Tiは0.25%以下が好ましい。より好ましくは0.15%以下である。Tiの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。

0096

Cu:0.50%以下
Cuは、耐食性の向上に寄与する元素である。0.50%を超えると、熱間延性が低下し、割れや疵が発生するので、Cuは0.50%以下が好ましい。より好ましくは0.30%以下である。Cuの添加効果を確保する点で、0.01%以上が好ましく、0.05%以上がより好ましい。

0097

Pb:0.45%以下
Pbは、快削性の向上に寄与する元素である。0.45%を超えると、靱性が低下するので、Pbは0.45%以下が好ましい。より好ましくは0.30%以下である。Pbの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。

0098

Bi:0.20%以下
Biは、快削性の向上に寄与する元素である。0.20%を超えると、靱性が低下するので、Biは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.16%以下である。Biの添加効果を確保する点で、0.005%以上が好ましく、0.010%以上がより好ましい。

0099

Te:0.010%以下
Teは、快削性の向上に寄与する元素である。0.010%を超えると、靱性が低下するので、Teは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.006%以下である。Teの添加効果を確保する点で、0.001%以上が好ましく、0.002%以上がより好ましい。

0100

Sb:0.20%以下
Sbは、耐硫酸性及び耐塩酸性主体とする耐食性の向上、及び、快削性の向上に寄与する元素である。0.20%を超えると、靱性が低下するので、Sbは0.20%以下が好ましい。より好ましくは0.15%以下である。Sbの添加効果を確保する点で、0.01%以上が好ましく、0.03%以上がより好ましい。

0101

Mg:0.010%以下
Mgは、快削性の向上に寄与する元素である。0.010%を超えると、靱性が低下するので、Mgは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.006%以下である。Mgの添加効果を確保する点で、0.0005%以上が好ましく、0.0010%以上がより好ましい。

0102

Ca:0.010%以下
Caは、脱酸元素であり、脱酸反応で、凝集合し易い低融点のCaO−Al2O3系介在物を形成する元素である。0.010%を超えると、Al2O3系介在物が、低融点のCaO−Al2O3系介在物に複合化して粗大化し、粗大化したCaO−Al2O3系介在物は、圧延温度で液相化せず、粗大なまま鋼中に残存するので、Caは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.006%以下である。

0103

Caは、少ないほど好ましいので、下限は限定しないが、不可避的に0.0001%程度は残存するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。

0104

REM:0.010%以下
REM(希土類元素、La、Ce、Pr、及び、Ndの1種又は2種以上)は、Al又はAl−Siで十分に脱酸した溶鋼において、溶鋼中のCaOや、介在物中のCaOを還元して、CaO−Al2O3系介在物を改質する作用をなす元素である。0.010%を超えると、介在物中に、REM濃度の高い低融点の化合物相出現し、介在物の凝集合が助長されて、粗大な介在物が生成するので、REMは0.010%以下が好ましい。より好ましくは0.007%以下である。

0105

Al又はAl−Siで十分に脱酸した溶鋼において、REMの添加効果を確保する点で、0.0005%以上が好ましく、0.0010%以下がより好ましい。

0106

O:0.003%以下
Oは、酸化物を形成する元素である。0.003%を超えると、粗大な酸化物が生成し、転動疲労寿命が低下するので、Oは0.003%以下が好ましい。より好ましくは0.002%以下である。下限は0%を含むが、Oを0.0001%以下に低減すると、精錬コストが大幅に上昇するので、実用鋼上、0.0001%が実質的な下限である。

0107

溶鋼の成分組成において、残部はFe及び不可避的不純物である。不可避的不純物は、鋼原料から及び/又は製鋼過程で不可避的に混入する元素であり、溶鋼の特性、さらに、溶鋼を鋳造した鋼の特性を阻害しない範囲で許容される元素である。

0108

次に、本発明の実施例について説明する。ただし、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例である。そのため、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

0109

(実施例)
表1に示す成分組成の溶鋼に、転炉による一次精錬、LF処理及び/又はRH処理による二次精錬を施した後、該溶鋼を連続鋳造し、該連鋳片を分塊圧延して鋼片を製造した。

0110

具体的には、270トン転炉で、上記成分組成の溶鋼を溶製し、出鋼時に、Si、Mn、Alのいずれか1種又は2種以上にて脱酸し、次いで、所定のスラグ組成にて取鍋精錬を行い、RH式真空脱ガス装置を用いて、成分調整清浄化処理を行い、復圧後、連続鋳造して鋳片とし、該鋳片を、加熱炉加熱保持した後、分塊圧延に供し鋼片とした。

0111

上記鋼片において、極値統計法により、予測面積30000mm2における非金属介在物の極値統計最大予測径[μm]を推定した。極値統計による介在物の最大予測径(√area(max)の推定は、例えば、「金属疲労微小欠陥と介在物の影響」(上敬宜著、養賢堂、1993年発行、p.223−239)に記載の方法による。用いた方法は、二次元検査により、一定面積内で観察される最大介在物径を推定するという二次元的手法である。

0112

上記極値統計法を用いて、鋼片のL断面(ルーズ面の中心線と、この対向面の中心線、及び、鋳片の中心線を含む断面)のルーズ面側の1/4の位置から試料採取して、光学顕微鏡撮像した非金属介在物の画像から、検査基準面:100mm2(10×10mm)、検査視野:16、予測を行う面積30000mm2の介在物の最大予測径√area(max)を算出した。

0113

具体的には、観察で得られた介在物の最大径の16個のデータ(16視野のデータ)を上記文献に記載の方法に従い、極値確率用紙にプロットして、最大介在物分布直線(最大介在物と極値統計基準化変数一次関数)を求め、最大介在物分布直線を外挿することにより、面積:30000mm2における介在物の最大予測径√area(max)を推定した。

0114

0115

表1に、溶鋼の成分組成、復圧条件(P1、P2、P2までの溶鋼下降速度、P2から大気圧までの溶鋼下降速度)、及び、極値統計予測最大径[μm]を併せて示す。

0116

発明例13〜32では、真空脱ガス処理時、復圧初期の圧力P1から圧力P2までを0.20m/秒以上の溶鋼下降速度で復圧し、圧力P2から大気圧までを0.15m/秒以下の溶鋼下降速度で復圧したので、極値統計予測最大径が23μm以下である。

0117

比較例1〜12では、真空脱ガス処理時、復圧初期の圧力P1から圧力P2までの溶鋼下降速度、圧力P2から大気圧までの溶鋼下降速度の一方又は両方が本発明の範囲外であり、極値統計予測最大径が51μmを超えている。

実施例

0118

以上のとおり、発明例では、比較例に比較し、スラグに起因する粗大な介在物の大きさが低減され、高清浄性で機械特性に優れた鋼が得られることが解る。

0119

前述したように、本発明によれば、非定常時に生じる溶鋼のスラグ巻込み、及び、スラグ系介在物の取鍋内溶鋼の深部への浸入を抑制でき、スラグに起因して鋼中に残存するCaO含有介在物の量と大きさを大幅に低減できるので、清浄性が高く、機械特性に優れた鋼を提供することができる。よって、本発明は、鉄鋼産業において利用可能性が高いものである。

0120

1真空増
2取鍋
2a 浸漬上昇管
2b 浸漬下降管
3溶鋼環流ガス吹込み口
3a 溶鋼環流ガス
4排気管
5a、5b溶鋼
5c盛上り
5d溶鋼流速
6 6a、6b スラグ

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