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技術 有機化合物の還元装置

出願人 日本特殊陶業株式会社
発明者 川瀬広樹梶谷昌弘伊藤正也
出願日 2016年10月14日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-202626
公開日 2018年4月19日 (3年1ヶ月経過) 公開番号 2018-062602
状態 拒絶査定
技術分野 触媒 有機低分子化合物及びその製造 潤滑剤 水素、水、水素化物 半透膜を用いた分離
主要キーワード 押圧金具 金属継手 全酸価値 専用ポンプ マグネットスターラ 銅コイル 使用直後 劣化生成物
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

専用のポンプを用いることなく、潤滑油又は油圧油中の酸化防止剤再生できる有機化合物還元装置を提供する。

解決手段

本開示の有機化合物の還元装置は、水素供給モジュールを備える。水素供給モジュールは、酸化防止剤を含む潤滑油又は油圧油に水素を供給する。また、水素供給モジュールは、水素含有ガスから水素を選択的に透過させる水素分離金属を含む水素分離層を有し、水素分離層を介して潤滑油又は油圧油に水素を供給する。

概要

背景

例えばタービンに供給される潤滑油や、油圧制御に用いられる油圧油は、循環等により繰り返し使用されるが、使用に伴う熱や酸化ストレスによって、主成分の有機化合物酸化により連鎖的に分解され劣化していく。これを防止するため、潤滑油及び油圧油には酸化防止剤が一般に添加される。

酸化防止剤は、化学反応により有機化合物の酸化を防止するものであり、使用に伴い酸化防止機能を有する酸化防止剤の量は減少し、潤滑油又は油圧油の劣化も大きくなっていく。そこで、酸化後の酸化防止剤を活性水素により還元し、酸化防止剤の機能を回復させる方法が提案されている(特許文献1参照)。

概要

専用のポンプを用いることなく、潤滑油又は油圧油中の酸化防止剤を再生できる有機化合物の還元装置を提供する。本開示の有機化合物の還元装置は、水素供給モジュールを備える。水素供給モジュールは、酸化防止剤を含む潤滑油又は油圧油に水素を供給する。また、水素供給モジュールは、水素含有ガスから水素を選択的に透過させる水素分離金属を含む水素分離層を有し、水素分離層を介して潤滑油又は油圧油に水素を供給する。

目的

本開示の一局面は、専用のポンプを用いることなく、潤滑油又は油圧油中の酸化防止剤を再生できる有機化合物の還元装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

酸化防止剤を含む潤滑油又は油圧油水素を供給する水素供給モジュールを備え、前記水素供給モジュールは、水素含有ガスから水素を選択的に透過させる水素分離金属を含む水素分離層を有し、前記水素分離層を介して前記潤滑油又は油圧油に水素を供給すると共に、前記潤滑油又は油圧油の貯蔵タンクと前記潤滑油又は油圧油の使用機器とを接続する配管内に配置される、有機化合物還元装置

請求項2

前記配管は、前記使用機器から前記貯蔵タンクへの前記潤滑油又は油圧油の戻り配管である、請求項1に記載の有機化合物の還元装置。

請求項3

前記配管内に配置されるフィルターをさらに備える、請求項1又は請求項2に記載の有機化合物の還元装置。

請求項4

前記水素供給モジュールの前記水素分離層は、円筒状の部分を有し、前記円筒状の部分の長手方向が前記配管の中心軸と平行に配置される、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の有機化合物の還元装置。

請求項5

前記酸化防止剤は、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の少なくとも一方を含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の有機化合物の還元装置。

請求項6

前記水素供給モジュールは、多孔質体からなる多孔質支持体をさらに備え、前記水素分離層は、前記多孔質支持体の外面及び内部の少なくとも一方に支持され、パラジウム又はパラジウム合金を含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の有機化合物の還元装置。

技術分野

0001

本開示は、有機化合物還元装置に関する。

背景技術

0002

例えばタービンに供給される潤滑油や、油圧制御に用いられる油圧油は、循環等により繰り返し使用されるが、使用に伴う熱や酸化ストレスによって、主成分の有機化合物が酸化により連鎖的に分解され劣化していく。これを防止するため、潤滑油及び油圧油には酸化防止剤が一般に添加される。

0003

酸化防止剤は、化学反応により有機化合物の酸化を防止するものであり、使用に伴い酸化防止機能を有する酸化防止剤の量は減少し、潤滑油又は油圧油の劣化も大きくなっていく。そこで、酸化後の酸化防止剤を活性水素により還元し、酸化防止剤の機能を回復させる方法が提案されている(特許文献1参照)。

先行技術

0004

特開2009−263263号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかしながら、特許文献1の構成では、潤滑油又は油圧油を液体槽に移した上で水素を供給している。そのため、この移送に専用のポンプが必要であり、設備コスト及び運転コストが従来よりも増大するという不都合がある。

0006

本開示の一局面は、専用のポンプを用いることなく、潤滑油又は油圧油中の酸化防止剤を再生できる有機化合物の還元装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0007

(1)本開示の一態様は、水素供給モジュールを備える有機化合物の還元装置である。水素供給モジュールは、酸化防止剤を含む潤滑油又は油圧油に水素を供給する。また、水素供給モジュールは、水素含有ガスから水素を選択的に透過させる水素分離金属を含む水素分離層を有し、水素分離層を介して潤滑油又は油圧油に水素を供給する。さらに、水素供給モジュールは、潤滑油又は油圧油の貯蔵タンクと潤滑油又は油圧油の使用機器とを接続する配管内に配置される。

0008

このような構成によれば、水素供給モジュールから供給される活性水素によって酸化防止剤を効果的に再生できる。さらに、水素供給モジュールが、潤滑油又は油圧油の貯蔵タンクと潤滑油又は油圧油の使用機器とを接続する配管内に配置されるため、水素供給モジュールに潤滑油又は油圧油を供給するためのポンプを省くことができる。

0009

(2)本開示の一態様は、配管は、使用機器から貯蔵タンクへの潤滑油又は油圧油の戻り配管であってもよい。このような構成によれば、使用直後の熱やストレスが加わった状態の潤滑油又は油圧油に対し、酸化防止剤を速やかに再生できるので、潤滑油又は油圧油の酸化をより確実に防止することができる。

0010

(3)本開示の一態様は、配管内に配置されるフィルターをさらに備えてもよい。このような構成によれば、油中に含まれる異物に起因する水素供給モジュールや使用機器の不具合を防止できる。

0011

(4)本開示の一態様は、水素供給モジュールの水素分離層は、円筒状の部分を有し、円筒状の部分の長手方向が配管の中心軸と平行に配置されてもよい。このような構成によれば、円筒状の水素分離層の長手方向に対し潤滑油又は油圧油の流れが平行になるので、配管の圧損の上昇を抑制しつつ、効率よく潤滑油又は油圧油に活性水素を供給することができる。

0012

(5)本開示の一態様は、酸化防止剤は、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤の少なくとも一方を含んでもよい。このような構成によれば、酸化防止剤の再生効果を高めることができ、ひいては潤滑油の寿命向上効果を促進できる。

0013

(6)本開示の一態様は、水素供給モジュールは、多孔質体からなる多孔質支持体をさらに備え、水素分離層は、多孔質支持体の外面及び内部の少なくとも一方に支持され、パラジウム又はパラジウム合金を含んでもよい。このような構成によれば、活性水素を効率よく供給できるので、酸化防止剤の再生効果を高めることができる。また、水素供給モジュールの単位体積当たりの水素供給量を高められるので、径の小さい配管等にも好適に設置することができる。

図面の簡単な説明

0014

第1実施形態の有機化合物の還元装置を用いた発電ステムの模式図である。
図2Aは図1の有機化合物の還元装置に用いる水素供給モジュールの模式的断面図であり、図2Bは水素供給モジュールに金属継手を接続した状態を示す模式的正面図である。
図2Aの水素供給モジュールの部分拡大断面図である。
第2実施形態の有機化合物の還元装置を用いた発電システムの模式図である。
実施例で用いた装置の模式図である。

実施例

0015

以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.装置の全体構成]
図1に示す有機化合物の還元装置(以下、単に「還元装置」ともいう。)1は、潤滑油又は油圧油中に存在する酸化防止機能を失った酸化防止剤を、水素を用いた還元により再生することで、潤滑油又は油圧油の寿命を向上させる装置である。還元装置1は、図1に示すように、酸化防止剤を含む潤滑油又は油圧油に水素を供給する水素供給モジュール2を備える。

0016

本実施形態では、発電機のタービンに用いられる潤滑油(いわゆるタービン油)を対象とする。潤滑油にはエンジン油等も含まれる。また、本開示は油圧油を対象としてもよい。油圧油には金属加工油も含まれる。潤滑油又は油圧油の種別としては、鉱油でも合成油でも部分合成油でもよい。

0017

図1に示すように、潤滑油は供給対象、つまり潤滑油の使用機器であるタービン10と、潤滑油の貯蔵タンク11との間を接続する供給配管12及び戻り配管13による循環流路内を循環する。なお、貯蔵タンク11は、循環流路の一部とされている。貯蔵タンク11の潤滑油は、供給配管12を介してタービン10に供給される。タービン10にて使用された潤滑油は、戻り配管13を介して貯蔵タンク11に戻される。タービン10と貯蔵タンク11との間には、ポンプ、熱交換器遠心分離機等の公知の機器が適宜配設される。潤滑油は、一定期間使用された後に交換及び廃棄される。

0018

なお、図1に示されるタービン10と、貯蔵タンク11と、供給配管12及び戻り配管13と、還元装置1とは、タービン発電機による発電システムを構成する。
潤滑油及び油圧油は、使用に伴い、酸素、熱、金属イオン紫外線等の照射エネルギー燃焼等により発生するフリーラジカルなどにより、いわゆる自動酸化と呼ばれる連鎖反応を引き起こす。これにより、劣化生成物が発生し、粘度増加、スラッジ生成、金属の腐食泡立ち、退色、フィルター閉塞などの弊害が発生する。特に、タービンなどにおいて高温条件下で金属に接触する潤滑油では、酸化が著しい。このような酸化を防止するため、潤滑油及び油圧油には一般に酸化防止剤が添加される。

0019

本実施形態の還元装置1で用いる酸化防止剤としては、連鎖防止剤又は過酸化物分解剤分類されるものが好ましい。連鎖防止剤は、ペルオキシラジカルを生成することで、酸化反応の連鎖を抑制する。連鎖防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチルパラクレゾール(DBPC)、P,P’−ジオクチルジフェニルアミン等が挙げられる。過酸化物分解剤は、酸化反応中に生成されるヒドロペルオキシド(ROOH)を安定な化合物に分解することで、酸化反応の連鎖を抑制する。過酸化物分解剤としては、例えばジアルキルジチオリン酸亜鉛ジベンジルサルファイド(DBDS)等が挙げられる。

0020

また、酸化防止剤としては、潤滑油又は油圧油の酸化防止効果が高く、また活性水素による還元反応が生じやすいアミン系又はフェノール系の酸化防止剤が好ましい。アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤としては、下記式(1)〜(6)に示すものが好適に使用できる。

0021

0022

アミン系酸化防止剤の具体例としては、例えばP,P’−ジオクチルジフェニルアミン等が挙げられる。また、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン、DBPC、DBDS等が挙げられる。なお、酸化防止剤の添加量は、一般に潤滑油又は油圧油に対し0.01質量%以上1質量%以下である。

0023

[1−2.水素供給モジュール]
水素供給モジュール2は、図2A、図3に示すように、多数の細孔を内部に有する多孔質体からなる多孔質支持体21と、多孔質支持体21の外面に支持され、パラジウム又はパラジウム合金を含む水素分離層22とを有する。水素供給モジュール2の多孔質基部21Aの内部に水素含有ガスGを供給することで、水素分離層22の外面に強い還元力を示すHラジカル(つまり、活性水素)が発生する。つまり、水素供給モジュール2は水素分離層22を介して潤滑油又は油圧油に水素を供給する。

0024

水素供給モジュール2の多孔質支持体21は、一方の端部に開口21Cを有する有底円筒状の多孔質基部21Aと、この多孔質基部21Aの開口21C側の端部に接続される円筒状の緻密部21Bとを有する。多孔質基部21Aは、水素含有ガスを透過する性質(つまり、ガス透過性)を有する。一方、緻密部21Bは、ガス透過性を有さない。なお、水素含有ガスには、天然ガス水蒸気とを触媒に接触させて生成した改質ガスや、純粋な水素ガスなどが含まれる。

0025

多孔質支持体21の構成材料としては、セラミックや金属を用いることができる。好適なセラミックとしては、例えばジルコニアアルミナマグネシアセリアドープドセリアガラス等が挙げられる。これらの中でも、パラジウム又はパラジウム合金と熱膨張係数近似し、かつパラジウム又はパラジウム合金との反応性も低いジルコニアが特に好ましい。なお、ジルコニアを用いた多孔質セラミックとしては、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が挙げられる。

0026

多孔質支持体21の平均厚さの下限としては、100μmが好ましく、500μmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。また、上記平均厚さの上限としては、2mmが好ましい。上記平均厚さが上記下限より小さいと、モジュール全体の機械的強度が不十分となって水素分離層22を厚くせざるを得なくなるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限より大きいと、水素供給モジュール2の配管内への配置が困難になるおそれや、配管の圧損が増大するおそれがある。

0027

多孔質基部21Aの気孔率の下限としては、10%が好ましく、30%がより好ましい。一方、上記気孔率の上限としては、90%が好ましく、50%がより好ましい。また、多孔質基部21Aの比表面積は、50cm2/g以上400cm2/g以下が好ましい。上記気孔率又は比表面積が上記下限より小さいと、細孔の割合が小さくなり、ガス透過率が低下するおそれがある。逆に、上記気孔率又は比表面積が上記上限より大きいと、多孔質支持体21の機械的強度が低下し、破損しやすくなるおそれがある。なお、図3点線で分割して示すように、多孔質基部21Aは、厚み方向(つまり、半径方向)にかけて材質や気孔率等が変化する領域を有してもよい。

0028

水素分離層22は、水素含有ガスから水素を選択的に透過させる水素分離金属を含む円筒状の部分を含む層である。水素分離金属としては、パラジウム(Pd)又はパラジウム合金が好ましい。具体的には、水素分離層22はパラジウム又はパラジウム合金から形成されることが好ましい。パラジウムを用いることで、水素を効率よく透過させることができる。また、水素脆化抑制の観点からは、パラジウム合金を用いることが好ましい。

0029

パラジウム合金としては、パラジウムを主成分とし、さらに金、銀、銅又はこれらの組合せを含むものが好ましく、具体的には、パラジウム銀合金PdAg合金)、パラジウム銅合金(PdCu合金)、パラジウム金合金(PdAu合金)等が挙げられ、水素の透過性に優れるパラジウム銀合金が特に好ましい。また、パラジウム合金は、これらの金属以外に、パラジウム以外の白金族金属白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os))、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)等を含んでもよい。

0030

水素分離層22の平均厚さの下限としては、1μmが好ましい。一方、上記平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、15μmがより好ましい。上記平均厚さが上記下限よりも小さいと、緻密性が不十分なピンホールのある層となり、活性水素だけでなくピンホールを介して水素がガスとして潤滑油に供給されるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限より大きいと、水素の透過性が低下するおそれや、コストが高くなるおそれがある。また、水素分離層22は、図3に示すように、多孔質基部21Aの外面側の細孔を塞ぐように構成されてもよい。

0031

水素供給モジュール2は、図3に示すように、水素分離層22の外面にさらに触媒金属層23を有してもよい。この触媒金属層23は、パラジウムを含み、水素分離層22から発生する水素の付加反応を促進する。そのため、この触媒金属層23を有することで、酸化防止剤の再生を促進することができる。

0032

また、水素供給モジュール2は、図2Bに示すように、緻密部21Bに、取付金具押圧金具シール材固定金具等からなる金属継手41が螺着される。また、金属継手41を介して水素含有ガスを導入するための導入管42が接続される。

0033

水素供給モジュール2は、潤滑油の使用機器であるタービン10から貯蔵タンク11への潤滑油の戻り配管13内に配置されている。また、水素供給モジュール2は、水素分離層22の円筒状部分の長手方向が戻り配管13の中心軸と平行に配置されている。つまり、水素供給モジュール2は、水素分離層22からHラジカルが発生する方向である径方向又は厚み方向が、戻り配管13の径方向と平行になるよう配置されている。ここで、「平行」とは、厳密に平行である必要はなく、略平行であればよい。還元すれば、戻り配管13の圧損の上昇を抑制することができれば、円筒状部分の長手方向が戻り配管13の中心軸に対し多少傾斜していてもよい。

0034

なお、図1では、水素供給モジュール2の水素含有ガスの導入口(つまり、導入管42の接続側)が潤滑油の流路の下流側となる向きに設置しているが、水素含有ガスの導入口が潤滑油の流路の上流側となる向きに設置してもよい。ここで、「潤滑油の流路の下流側」とは、分岐した流路も含めて、ある点よりも潤滑油の流れる方向の側を意味する。「潤滑油の流路の上流側」とは、分岐した流路も含めて、ある点よりも潤滑油の流れる方向と逆側を意味する。

0035

[1−3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)水素供給モジュール2が、潤滑油又は油圧油の貯蔵タンク11と潤滑油又は油圧油の使用機器であるタービン10とを接続する戻り配管13内に配置されるため、潤滑油又は油圧油の循環流路に付随するポンプ等により潤滑油又は油圧油が水素供給モジュール2に供給される。その結果、水素供給モジュール2へ潤滑油又は油圧油を供給するためのポンプを省くことができる。

0036

(1b)戻り配管13内に水素供給モジュール2が配置されることで、タービン10から排出直後の熱やストレスが加わった状態の潤滑油又は油圧油に対し、酸化防止剤を速やかに再生できるので、潤滑油又は油圧油の酸化をより確実に防止することができる。

0037

(1c)水素供給モジュール2の水素分離層22の円筒状部分の長手方向が戻り配管13の中心軸と平行に配置されることで、水素分離層22の存在やHラジカルの供給圧による戻り配管13の圧損の上昇を抑制することができる。また、効率よくHラジカルを潤滑油又は油圧油に供給することができる。

0038

[2.第2実施形態]
[2−1.装置の全体構成]
図4に示す還元装置1Aは、潤滑油又は油圧油中に存在する酸化防止機能を失った酸化防止剤を、水素を用いた還元により再生することで、潤滑油又は油圧油の寿命を向上させる装置である。還元装置1Aは、タービン発電機による発電システムを構成している。還元装置1Aは、図4に示すように、水素供給モジュール2と、フィルター3とを備える。なお、図4において、図1と同様の構成には同一符号を付して説明を省略する。

0039

[2−2.フィルター]
フィルター3は、油に混入した異物を除去する。フィルター3は、戻り配管13内に配置されている。具体的には、フィルター3は、戻り配管13における潤滑油の流路のうち、水素供給モジュール2よりも上流側に配置されている。フィルター3は、水素供給モジュール2の近傍に設けることが好ましい。

0040

フィルター3は、潤滑油に含まれる異物を除去し、水素供給モジュール2の水素分離層22等を保護する機能を奏する。フィルター3としては、潤滑油又は油圧油に用いられる公知のフィルターが使用でき、例えばメッシュフィルターが例示できる。

0041

[2−3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)フィルター3により、潤滑油又は油圧油に含まれる異物の水素供給モジュール2への衝突を回避することで、水素供給モジュール2の汚染や破損を防止できる。その結果、メンテナンス性等を低下させずに酸化防止剤の再生を行うことができる。

0042

[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。

0043

(3a)上記実施形態の還元装置1、1Aにおいて、水素供給モジュール2は戻り配管13に配置されているが、水素供給モジュール2は、貯蔵タンク11とタービン10とを接続する配管、つまり循環流路内に設置されれば、戻り配管13以外に配置されてもよい。例えば、水素供給モジュール2は供給配管12内に配置されてもよい。なお、上記第2実施形態の還元装置1Aにおいて水素供給モジュール2が供給配管12内に配置される場合は、フィルター3も供給配管12内に設置される。

0044

(3b)上記第2実施形態の還元装置1Aにおいて、フィルター3は、水素供給モジュール2と同一の配管内に配置されればよい。つまり、フィルター3の配置箇所は水素供給モジュール2の上流側に限定されず、フィルター3は水素供給モジュール2よりも下流側に配置されてもよい。また、フィルター3は水素供給モジュール2よりも上流側及び下流側の両方に配置されてもよい。

0045

水素供給モジュール2の下流側に配置されるフィルターは、振動等によって水素供給モジュール2の水素分離層22等が破損した際に、水素分離層22の破片が貯蔵タンク11やタービン10に混入することを防止できる。また、水素供給モジュール2の下流側に配置されるフィルターに気泡除去機能を持たせてもよい。これにより、水素供給モジュール2から供給される水素に起因して発生した気泡を除去して、潤滑油又は油圧油の性状低下を防止することができる。

0046

(3c)上記実施形態の還元装置1,1Aにおいて、水素供給モジュール2の水素分離層22は円筒状でなくてもよい。例えば、水素分離層22は平板状であってもよい。水素分離層22が円筒状でない場合でも、水素供給モジュール2を配置する配管の圧損が小さくなる向きに水素分離層22を配置することが好ましい。

0047

(3d)上記実施形態の還元装置1、1Aにおいて、水素供給モジュール2の水素分離層22は、多孔質支持体21の内部に配置されてもよい。また、水素分離層22は、ガス中の水素を選択的に透過できる水素分離金属を含んでいれば、パラジウム又はパラジウム合金を含んでいなくてもよい。

0048

(3e)上記実施形態の還元装置1、1Aは、潤滑油の使用機器としてタービン10を用いたが、本開示における潤滑油又は油圧油の使用機器はこれに限定されない。タービン以外の使用機器としては、例えば、エンジン等の内燃機関の他、各種の輸送機器プラントなどが挙げられる。

0049

(3f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。

0050

[4.実施例]
次に、本開示の効果を確認するために行った実施例について説明する。
(実施例1)
潤滑油としてタービン油などに使用される一般的な鉱物油(すなわち、パラフィン系鉱物油)を使用した。具体的には、潤滑油として「RIXタービン46」を使用した。この潤滑油には、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエンが0.107質量%含まれている。

0051

本実施例では触媒を配置し熱を加えた容器に空気を送り込むことで容器内の潤滑油の酸化を促進する酸化槽と、酸化した潤滑油を還元する還元槽とを設け、各槽間で潤滑油を循環させることで試験を行った。

0052

より具体的には、図5のような試験装置を用いた。酸化槽101の容器には丸底フラスコを用いており、この丸底フラスコをマグネットスターラ—付ヒーター102にセットした。酸化槽101内の温度が100℃になるようにヒーター102は設定しており、酸化槽101内の潤滑油の状況が均一となるよう撹拌子(図示省略)にて撹拌を行った。また、空気を空気導入菅103より1L/minで導入すると共に、潤滑油の酸化を促進する触媒としてφ1mm、長さ3mの銅線コイル形状に成形した銅コイル104を容器内に配置した。酸化槽101にて酸化された潤滑油はポンプ105により引き抜かれ還元槽111に送られる。

0053

還元槽111は、内側管111Aと外側管111Bとが底壁111Cで繋がっている2重管構造を有する。酸化槽101から送られた潤滑油は内側管111Aに底面から供給される。内側管111Aが潤滑油で満たされると、潤滑油は内側管111Aの外壁に沿って外側管111Bに流れ込む。外側管111Bの底面には穴が開いている。還元槽111は、酸化槽101の上方に配置されており、外側管111Bの底面の穴から酸化槽101に潤滑油が自重で流れ込む。

0054

また、還元槽111の内側管111Aには有底管形状多孔質セラミックスチューブ上に円筒状のPdAg膜を被覆した水素供給モジュール2が挿入されている。この水素供給モジュール2の開口部より水素ガスを20kPaGの圧力で供給することで、水素供給モジュール2表面のPdAg膜を介して潤滑油に水素を供給した。これにより、潤滑油中の酸化後の酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエン)を還元し、潤滑油を再生した。

0055

本試験を500時間行った潤滑油を分析したところ、色相は0.5であり、全酸価値は0.02であった。また、GC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)により測定した酸化防止剤の濃度は、0.095質量%であった。なお、「色相」は、ASTMD1500に規定されるASTMカラーを意味する。色相が小さいほど、油の劣化が小さいと判断できる。また、「全酸価値」は、JIS−K2501:2003に準拠して測定される値である。

0056

(比較例1)
実施例1と同様の装置と条件で潤滑油の酸化及び再生を行った。ただし、比較例1では、水素供給モジュール2に水素ガスを供給しなかった。本試験を500時間行った潤滑油を分析したところ、色相は2.0であり、全酸価値は0.15であり、酸化防止剤の濃度は0.000質量%であった。つまり、比較例1では、実施例1よりも色相及び全酸価値が共に増加し、かつ酸化防止剤が検出不可能な量まで減少していた。

0057

(考察)
以上の結果から、潤滑油の循環流路内に水素供給モジュールを配置し、潤滑油に水素を供給することで、専用ポンプを追加することなく、潤滑油中の酸化防止剤を再生し、潤滑油を長寿命化できることがわかる。

0058

1、1A…還元装置、2…水素供給モジュール、3…フィルター、10…タービン、11…貯蔵タンク、12…供給配管、13…戻り配管、21…多孔質支持体、21A…多孔質基部、21B…緻密部、21C…開口、22…水素分離層、23…触媒金属層、41…金属継手、42…導入管、101…酸化槽、102…ヒーター、103…空気導入管、104…銅コイル、105…ポンプ、111…還元槽、111A…内側管、111B…外側管、111C…底壁、G…水素含有ガス。

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