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技術 リン酸エステル油の劣化抑制方法及びリン酸エステル油の劣化抑制装置

出願人 日本特殊陶業株式会社国立大学法人福井大学
発明者 川瀬広樹梶谷昌弘伊藤正也吉見泰治本田知己
出願日 2016年10月14日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-202600
公開日 2018年4月19日 (3年1ヶ月経過) 公開番号 2018-062598
状態 未査定
技術分野 潤滑剤
主要キーワード 押圧金具 不活性ガス発生装置 金属継手 全酸価値 マグネットスターラ 銅コイル 劣化抑制装置 コイル形
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

リン酸エステル油劣化を抑制できるリン酸エステル油の劣化抑制方法及びリン酸エステル油の劣化抑制装置を提供すること。

解決手段

貯蔵や使用等によって生成したフェノール誘導体とフェノール誘導体から生成したキノン種とを含むリン酸エステル油に対して、水素供給モジュール13から活性水素を供給して、キノン種に対する水素添加を行うことにより、リン酸エステル油の劣化を抑制することができる。つまり、キノン種に水素添加して還元することによってフェノール誘導体に戻すことができるので、リン酸エステル油中のキノン種の量を低減することができる。その結果、フェノール誘導体とキノン種との反応によってポリマーが生成することを抑制できるので、リン酸エステル油の劣化を抑制することができる。

概要

背景

例えばタービンに供給される潤滑油油圧制御に用いられる油圧油油圧作動油油圧作動油)は、循環等により繰り返し使用されるが、使用に伴う熱や酸化ストレスや水分によって、主成分の有機化合物酸化加水分解により連鎖的に分解され劣化していく。これを防止するため、潤滑油及び油圧油には酸化防止剤が一般に添加される。

酸化防止剤は、例えば自身が酸化することによって有機化合物の酸化を防止するものであり、使用に伴って酸化防止機能を有する酸化防止剤の量は減少し、潤滑油や油圧油の劣化(即ち油としての機能低下)も大きくなっていく。

つまり、酸化防止剤は、潤滑油や油圧油の貯蔵又は使用中に、その機能が低下し、最後にはその能力を失うことが知られている。従って、酸化防止剤に頼らず、潤滑油や油圧油の劣化を防止するシステムが望まれている。

この対策として、近年では、不活性ガス発生装置から不活性ガスを発生させ、その不活性ガスを潤滑油貯蔵装置内に供給することにより、潤滑油の酸化を防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。

概要

リン酸エステル油の劣化を抑制できるリン酸エステル油の劣化抑制方法及びリン酸エステル油の劣化抑制装置を提供すること。貯蔵や使用等によって生成したフェノール誘導体とフェノール誘導体から生成したキノン種とを含むリン酸エステル油に対して、水素供給モジュール13から活性水素を供給して、キノン種に対する水素添加を行うことにより、リン酸エステル油の劣化を抑制することができる。つまり、キノン種に水素添加して還元することによってフェノール誘導体に戻すことができるので、リン酸エステル油中のキノン種の量を低減することができる。その結果、フェノール誘導体とキノン種との反応によってポリマーが生成することを抑制できるので、リン酸エステル油の劣化を抑制することができる。

目的

従って、酸化防止剤に頼らず、潤滑油や油圧油の劣化を防止するシステムが望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

フェノール誘導体キノン種とを含むリン酸エステル油劣化を抑制する、リン酸エステル油の劣化抑制方法において、前記キノン種に対して水素添加を行う、リン酸エステル油の劣化抑制方法。

請求項2

前記リン酸エステル油に、活性水素を供給することによって、前記キノン種に対して水素添加を行う、請求項1に記載のリン酸エステル油の劣化抑制方法。

請求項3

前記リン酸エステル油に、水素含有ガスから水素を選択的に透過させる水素分離金属を含む水素分離金属層を介して水素を供給して、前記キノン種に対する水素添加を行う、請求項2に記載のリン酸エステル油の劣化抑制方法。

請求項4

フェノール誘導体とキノン種とを含むリン酸エステル油に対して、活性水素を供給する水素供給部を備えた、リン酸エステル油の劣化抑制装置

請求項5

前記リン酸エステル油の流路に、前記フェノール誘導体を含む有機酸を除去する酸除去フィルターを備えた、請求項4に記載のリン酸エステル油の劣化抑制装置。

請求項6

前記水素供給部は、多孔質部材と、前記多孔質部材の内部及び外面の少なくとも一方に設けられ、パラジウム又はパラジウム合金を含む水素分離金属層とを有する、請求項4又は請求項5に記載のリン酸エステル油の劣化抑制装置。

技術分野

0001

本開示は、例えば油圧油潤滑油に用いられるリン酸エステル油劣化を抑制するリン酸エステル油の劣化抑制方法及びリン酸エステル油の劣化抑制装置に関する。

背景技術

0002

例えばタービンに供給される潤滑油や油圧制御に用いられる油圧油(油圧作動油油圧作動油)は、循環等により繰り返し使用されるが、使用に伴う熱や酸化ストレスや水分によって、主成分の有機化合物酸化加水分解により連鎖的に分解され劣化していく。これを防止するため、潤滑油及び油圧油には酸化防止剤が一般に添加される。

0003

酸化防止剤は、例えば自身が酸化することによって有機化合物の酸化を防止するものであり、使用に伴って酸化防止機能を有する酸化防止剤の量は減少し、潤滑油や油圧油の劣化(即ち油としての機能低下)も大きくなっていく。

0004

つまり、酸化防止剤は、潤滑油や油圧油の貯蔵又は使用中に、その機能が低下し、最後にはその能力を失うことが知られている。従って、酸化防止剤に頼らず、潤滑油や油圧油の劣化を防止するシステムが望まれている。

0005

この対策として、近年では、不活性ガス発生装置から不活性ガスを発生させ、その不活性ガスを潤滑油貯蔵装置内に供給することにより、潤滑油の酸化を防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。

先行技術

0006

特開2007−40318号公報

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、例えば発電機において、高温となる部位に油圧油として用いられるリン酸エステル油については、その劣化を防止するためには、上述した従来技術では十分ではない。

0008

詳しくは、リン酸エステル油は、貯蔵又は使用しているうちに、図4に示すように、加水分解によってフェノール誘導体リン酸誘導体とに分解し、さらにフェノール誘導体が酸化してキノン種が生成することがある。

0009

この場合には、さらにフェノール誘導体とキノン種とが反応して、ポリマーが生成し、このポリマーが沈殿物スラッジ)となってリン酸エステル油の色や機能が低下してしまう。つまり、ポリマーが生成すると、油圧油としての粘度等の性能が低下してしまう(即ち劣化してしまう)。

0010

また、フェノール誘導体は、リン酸エステル分解反応に対して触媒作用を有するので、坏土等を用いた酸除去フィルターによって浄化することが考えられるが、一度キノン種が発生すると、酸除去フィルターではキノン種を除去できない。

0011

そのため、残留するキノン種と油中で発生したフェノール誘導体(即ち酸除去フィルターで除去する前のフェノール誘導体)とが反応すると、上述のようにポリマーが発生して、リン酸エステル油が劣化してしまう。

0012

本開示の一局面は、リン酸エステル油の劣化を抑制できるリン酸エステル油の劣化抑制方法及びリン酸エステル油の劣化抑制装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0013

(1)本開示の一態様は、フェノール誘導体とキノン種とを含むリン酸エステル油の劣化を抑制するリン酸エステル油の劣化抑制方法に関するものである。このリン酸エステル油の劣化抑制方法では、キノン種に対して水素添加を行うことによって、リン酸エステル油の劣化を抑制する。

0014

この構成によれば、貯蔵や使用等によってリン酸エステルから生成したフェノール誘導体と、フェノール誘導体から生成したキノン種とを含むリン酸エステル油(即ち劣化したリン酸エステル油)に対して、例えば活性水素を供給してキノン種に対して水素添加を行うことによって、リン酸エステル油の劣化を抑制することができる。

0015

つまり、キノン種に水素添加して還元することによってフェノール誘導体に戻すことができるので、リン酸エステル油中のキノン種の量を低減することができる。その結果、フェノール誘導体とキノン種との反応によってポリマーが生成することを抑制できるので、リン酸エステル油の劣化(即ち油としての粘度等の性能の低下)を抑制することができる。

0016

また、キノン種に対して水素添加を行うことによって、リン酸エステル油の着色を抑制してもよい。
リン酸エステル油中に存在するキノン種が多いほど、リン酸エステル油の色が濃くなる傾向にある。

0017

つまり、キノン種に対して水素添加を行うことによって、キノン種を還元してフェノール誘導体とするので(即ちキノン種の量を低減できるので)、リン酸エステル油の色を薄くすることができる。

0018

(2)本開示の一態様では、リン酸エステル油に、活性水素を供給することによって、キノン種に対して水素添加を行ってもよい。
本態様は、キノン種に対する水素添加の好適な方法を例示したものである。リン酸エステル油に反応性富む活性水素を供給することによって、キノン種に対する水素添加を効率良く行うことができる。

0019

(3)本開示の一態様では、リン酸エステル油に、水素含有ガスから水素を選択的に透過させる水素分離金属を含む水素分離金属層を介して水素を供給して、キノン種に対して水素添加を行ってもよい。

0020

本態様は、キノン種に対する水素添加の好適な方法を例示したものである。本態様では、水素分離金属を含む水素分離金属層を介して水素(詳しくは活性水素)を供給することにより、キノン種に対する水素添加を効率良く行うことができる。

0021

(4)本開示の一態様は、リン酸エステル油の劣化抑制装置に関するものである。このリン酸エステルの劣化抑制装置では、フェノール誘導体とキノン種とを含むリン酸エステル油に対して、活性水素を供給する水素供給部を備えている。

0022

この構成によれば、貯蔵や使用等によってリン酸エステル油から生成したフェノール誘導体とフェノール誘導体から生成したキノン種とを含むリン酸エステル油(即ち劣化したリン酸エステル油)に対して、水素供給部から活性水素を供給して、キノン種に対して水素添加を行うことによって、リン酸エステル油の劣化を抑制することができる。

0023

つまり、キノン種に水素添加して還元することによってフェノール誘導体に戻すことができるので、リン酸エステル油中のキノン種の量を低減することができる。その結果、フェノール誘導体とキノン種との反応によってポリマーが生成することを抑制できるので、リン酸エステル油の劣化を抑制することができる。

0024

(5)本開示の一態様では、リン酸エステル油の流路に、フェノール誘導体を含む有機酸を除去する酸除去フィルターを備えていてもよい。
本態様では、リン酸エステル油の流路に酸除去フィルターを備えているので、リン酸エステル油に含まれるフェノール誘導体等の有機酸を除去することができる。

0025

リン酸エステル油にフェノール誘導体が含まれる場合には、フェノール誘導体とキノン種とが反応して、ポリマーが生成するが、酸除去フィルターによってフェノール誘導体を除去することによって、フェノール誘導体とキノン種とが反応してポリマーが生成することを抑制できる。その結果、リン酸エステル油が劣化することを効果的に抑制できる。

0026

(6)本開示の一態様では、水素供給部は、多孔質部材と、多孔質部材の内部及び外面の少なくとも一方に設けられ、パラジウム又はパラジウム合金を含む水素分離金属層とを有していてもよい。

0027

このような水素供給部を用いることにより、リン酸エステル油に好適に水素(詳しくは活性水素)を供給することができる。
なお、本開示の他の態様として、リン酸エステル油を収容する槽と、槽とリン酸エステルを用いる装置との間でリン酸エステルを循環させる循環路と、を備え、槽に水素供給部を配置してもよい。

0028

また、フェノール誘導体を含む有機酸を除去する酸除去フィルターを、リン酸エステル油を水素供給部を配置した装置からリン酸エステル油を用いる装置に供給する流路に備えていてもよい。

0029

<以下に、本開示の各構成について説明する>
リン酸エステル油とは、有機リン化合物のうち、リン酸アルコール脱水縮合したエステルを指すもの(即ち油)であり、リン酸が持つ3個の水素の全てまたは一部が有機基で置き換わった構造を持つ。このリン酸エステル油としては、リン酸モノエステルリン酸ジエステルリン酸トリエステルが挙げられる。

0030

フェノール誘導体とは、芳香環水素原子ヒドロキシ基置換した化合物であり、1価フェノール、2価フェノール、3価フェノール、6価フェノール等が挙げられる。ここでは、リン酸エステル油の加水分解によって生成するフェノール誘導体が挙げられる。

0031

キノン種とは、ベンゾキノン誘導体であり、このキノン種としては、1,4−ベンゾキノン、1,2−ベンゾキノン、4−メチレンシクロヘキサ−2,5−ジエノン、2−メチレンシクロヘキサ−2,5−ジエノンなどが挙げられる。ここでは、フェノール誘導体の酸化によって生成するキノン種が挙げられる。

0032

水素分離金属層は、多孔質部材の内部及び表面の少なくとも一方に水素分離金属が層状に形成された部分であり、その水素分離金属層の厚み方向の一方から他方に水素を選択して透過させることが可能である。

0033

なお、水素分離金属が多孔質部材の細孔に充填されている場合には、その充填部分が全体として層状に広がって水素分離金属層が形成されている。詳しくは、水素分離金属は、多孔質部材の構造体以外の部分を繋ぐようにして、多孔質部材の表面に対して深さ方向に広がる(例えば表面に露出して又は表面に露出しないで広がる)とともに、表面に沿って層状に広がって水素分離金属層が形成されている。

図面の簡単な説明

0034

実施形態の劣化抑制装置を備えた発電システムの模式図である。
(a)は図1の劣化抑制装置に用いる水素供給モジュールの模式的断面図であり、(b)は水素供給モジュールに金属継手を接続した状態を示す模式的正面図である。
図2の水素供給モジュールの部分拡大断面図である。
リン酸エステル油に関する反応を示す説明図である。
実施例及び比較例で用いた試験装置の模式図である。

実施例

0035

以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.実施形態]
ここでは、発電システムの油圧油として用いられるリン酸エステル油の劣化抑制方法と、このリン酸エステル油の劣化抑制方法に用いるリン酸エステル油の劣化抑制装置について説明する。

0036

[1−1.発電システムの全体構成]
まず、本実施形態のリン酸エステル油の劣化抑制装置(以下、単に「劣化抑制装置」ともいう。)が用いられる発電システムについて説明する。

0037

図1に示すように、発電システム1は、油圧油(即ち油圧作動油)としてリン酸エステル油が用いられるタービン発電機3と、リン酸エステル油の劣化抑制を行う劣化抑制装置5と、タービン発電機3と劣化抑制装置5との間で油圧油を循環させる循環路7と、循環路7に配置されて油圧油を一時的に蓄えるオイルタンク9とを備えている。なお、オイルタンク9は、循環路7の一部とされている。

0038

この発電システム1では、タービン発電機3にて使用された油圧油は、タービン発電機3から第1供給配管7aを介してオイルタンク9に供給され、オイルタンク9から第2供給管路7bを介して劣化抑制装置5の還元槽11に供給されるように構成されている。

0039

また、劣化抑制装置5にて劣化が抑制された油圧油は、劣化抑制装置5の還元槽11から第1戻し管路7cを介してオイルタンク9に戻され、オイルタンク9から第2戻し配管7dを介してタービン発電機3に戻されるように構成されている。

0040

なお、循環路7には、第1供給配管7a、第2供給管路7b、第1戻し管路7c、第2戻し配管7dが含まれている。
従って、例えばタービン発電機3の作動中(即ち発電中)などには、油圧油は、タービン発電機3、循環路7(オイルタンク9を含む)、劣化抑制装置5の間を循環しており、一定期間使用された後に交換及び廃棄される。

0041

なお、本実施形態では、タービン発電機3に用いられる油圧油(詳しくはリン酸エステル油)を対象とするが、本開示は、潤滑油(いわゆるタービン油)等を対象としてもよい。

0042

[1−2.劣化抑制装置の全体構成]
次に、劣化抑制装置5の全体構成について説明する。
劣化抑制装置5は、油圧油であるリン酸エステル油の貯蔵中や使用中に、加水分解によって生成したフェノール誘導体とフェノール誘導体の酸化によって生成したキノン種とからポリマーが生成する反応を、キノン種に水素を添加することによって抑制して、油圧油の寿命を向上させる長寿命化装置である。

0043

この劣化抑制装置5は、油圧油を溜める容器である還元槽11と、還元槽11内に配置されて油圧油に水素を供給する水素供給モジュール13と、第1戻し管路7cに配置されて、フェノール誘導体及びリン酸誘導体を含む有機酸を除去する酸除去フィルター15とを備えている。

0044

以下、各構成等について詳細に説明する。
[1−3.水素供給モジュール]
次に、水素供給モジュール13について説明する。

0045

水素供給モジュール13は、図2(a)、図3に示すように、多数の細孔を内部に有する多孔質支持体25と、多孔質支持体25の外面に支持され、水素分離金属であるパラジウム又はパラジウム合金を含む水素分離金属層27とを有する。この水素供給モジュール17の多孔質支持体25の内部空間29に水素含有ガスGを供給することで、水素分離金属層27の外面に強い還元力を示すHラジカル(つまり、活性水素)が発生する。

0046

水素供給モジュール13の多孔質支持体25は、その長手方向(図2の上下方向)に沿って内部空間29を有するとともに、軸方向の一方(先端側:図2の下方)が閉塞され、他方(後端側:図2の上方)に開口31を有する有底円筒状の部材である。

0047

詳しくは、多孔質支持体25は、他方の端部に開口32を有する有底円筒状の多孔質基部33と、この多孔質基部33の開口32側の端部に接続される円筒状の緻密部35と、多孔質基部33と緻密部35の一部とにまたがって外面全体被覆する多孔質層37(図3参照)とを有する。

0048

多孔質基部33及び多孔質層37は、多孔質であるので、水素分離金属が充填されていない部分では、水素含有ガスGを透過する性質(つまり、ガス透過性)を有する。一方、緻密部35は、ガス透過性を有さない。

0049

なお、水素含有ガスGとしては、天然ガス水蒸気とを触媒に接触させて生成した改質ガスや、純粋な水素ガスなどが挙げられるが、ここでは、例えば水素ガスを用いる。
多孔質支持体25の構成材料としては、セラミックや金属を用いることができる。好適なセラミックとしては、例えばジルコニアアルミナマグネシアセリアドープドセリアガラス等が挙げられる。これらの中でも、パラジウム又はパラジウム合金と熱膨張係数近似し、かつパラジウム又はパラジウム合金との反応性も低いジルコニアが特に好ましい。なお、ジルコニアを用いた多孔質セラミックとしては、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が挙げられる。

0050

多孔質支持体25の平均厚さの下限としては、100μmが好ましく、500μmがより好ましく、1mmがさらに好ましい。また、上記平均厚さの上限としては、2mmが好ましい。上記平均厚さが上記下限より小さいと、モジュール全体の機械的強度が不十分となって水素分離金属層27を厚くせざるを得なくなるおそれがある。

0051

多孔質基部33及び多孔質層37の気孔率の下限としては、10%が好ましく、30%がより好ましい。一方、上記気孔率の上限としては、90%が好ましく、50%がより好ましい。また、多孔質基部33及び多孔質層37の比表面積は、50cm2/g以上400cm2/g以下が好ましい。

0052

上記気孔率又は比表面積が上記下限より小さいと、細孔の割合が小さくなり、ガス透過率が低下するおそれがある。逆に、上記気孔率又は比表面積が上記上限より大きいと、多孔質支持体25の機械的強度が低下し、破損しやすくなるおそれがある。なお、多孔質基部33と多孔質層37とは、厚み方向(つまり、半径方向)にかけて材質や気孔率等が異なっていてもよい。

0053

水素分離金属層27は、水素含有ガスの水素を選択的に透過させる層であり、パラジウム(Pd)又はパラジウム合金を含む。具体的には、水素分離金属層27はパラジウム又はパラジウム合金から形成されることが好ましい。パラジウムを用いることで、水素を効率よく透過させることができる。また、水素脆化抑制の観点からは、パラジウム合金を用いることが好ましい。

0054

パラジウム合金としては、パラジウムを主成分とし、さらに金、銀、銅又はこれらの組合せを含むものが好ましく、具体的には、パラジウム銀合金PdAg合金)、パラジウム銅合金(PdCu合金)、パラジウム金合金(PdAu合金)等が挙げられ、水素の透過性に優れるパラジウム銀合金が特に好ましい。また、パラジウム合金は、これらの金属以外に、パラジウム以外の白金族金属白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os))、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)等を含んでもよい。

0055

水素分離金属層27の平均厚さの下限としては、1μmが好ましい。一方、上記平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、15μmがより好ましい。上記平均厚さが上記下限よりも小さいと、ピンホールが生じやすくなり、緻密性が不十分となるため、活性水素だけでなく、ピンホールを介して水素がガスとして供給されるおそれがある。逆に、上記平均厚さが上記上限より大きいと、水素の透過性が低下するおそれや、コストが高くなるおそれがある。

0056

また、水素分離金属層27は、図3に示すように、多孔質層37の外面側の細孔を塞ぐように構成されてもよい。或いは、多孔質層37の細孔内に水素分離金属を充填して、多孔質層37の表面に、水素分離金属が露出しないようにしてもよい。

0057

水素供給モジュール13は、図3に示すように、水素分離金属層27の外面にさらに触媒金属層39を有してもよい。この触媒金属層39は、パラジウムを含み、水素分離金属層27から発生する水素の付加反応(即ち水素添加の反応)を促進する。そのため、この触媒金属層39を有することで、キノン種の水素添加を促進することができる。なお、触媒金属層39は、水素分離金属層27の外面に分散するように配置してもよい。

0058

また、水素供給モジュール13は、図2(b)に示すように、緻密部35に、取付金具押圧金具シール材固定金具等からなる金属継手41が螺着される。また、金属継手41を介して水素含有ガスGを導入するための導入管43が接続される。

0059

水素供給モジュール13の配置場所は、特に限定されず、上記実施形態では、還元槽11に水素供給モジュール13を配置していたが、例えば還元槽11と同様にオイル貯留する場所であるオイルタンク9内に水素供給モジュール13を配置してもよい。

0060

[1−4.酸除去フィルター]
次に、酸除去フィルター15について説明する。
前記図1に示すように、第1戻し配管7cには、フェノール誘導体やリン酸誘導体を含む有機酸を除去する周知の酸除去フィルター15が配置されている。

0061

なお、酸除去フィルター15は、油圧油からフェノール誘導体等を除去できればよいので、酸除去フィルター15を配置する位置は、第1戻し配管7cに限定されることなく、油圧油が流れる各種の流路など(例えば他の配管7a、7b、7dやオイルタンク9や還元槽11等)に配置することができる。

0062

この酸除去フィルター15としては、例えばドライタイプ弱塩基性イオン交換樹脂を充填した脱酸フィルターを採用できる。また、活性白土フィルターを採用してもよい。
なお、その他の構成として、タービン発電機3と劣化抑制装置5との間には、図示しないが、例えば熱交換器遠心分離機等の公知の機器が適宜配設される。

0063

[1−5.リン酸エステル油の反応]
次に、本実施形態におけるリン酸エステル油が劣化する際の反応と、その劣化を抑制する反応等について説明する。

0064

例えば図4に示すように、リン酸エステル油と水とが反応して(即ち加水分解して)、酸性物質であるフェノール誘導体とリン酸誘導体とが生成する。
そして、フェノール誘導体が酸化されることによって、周知のキノン種が生成する。

0065

このキノン種は、フェノール誘導体と反応してポリマーが生成し、このポリマーがスラッジとしてリン酸エステル油中にて沈殿する。
つまり、上述した反応によって、リン酸エステル油が劣化する。

0066

本実施形態では、このようなフェノール誘導体とキノン種とを含むリン酸エステル油に対して、水素供給モジュール13から水素(詳しくは活性水素)を供給することによって、図4に示すように、キノン種に水素添加を行って(即ちキノン種の還元を行って)、フェノール誘導体に戻す処理を行っている。

0067

具体的には、例えば図4に示すキノン種の「R基」とは異なる位置の「O」に対して水素を添加して「OH」とすることによって、キノン種からフェノール誘導体に戻す還元処理を行っている。

0068

これによって、リン酸エステル油の加水分解によってフェノール誘導体が発生した場合でも、フェノール誘導体と反応するキノン種自体が減少しているので、結果として、フェノール誘導体とキノン種との反応が抑制されて、ポリマーの生成が抑制される。

0069

なお、リン酸エステル油としては、例えば、キシレノールクレゾールエチルフェノールを含むアルキルフェノールとのホスフェートやそれらの混合物が挙げられる(下記化学式(1)参照)。

0070

また、フェノール誘導体としては、例えば、キシレノール、クレゾール、エチルフェノールを含むアルキルフェノールが挙げられる。また、リン酸誘導体としては、例えば、ジアルキルフェノールリン酸エステルやモノアルキルフェノールリン酸エステルが挙げられる。

0071

さらに、キノン種としては、例えば、1,4−ベンゾキノン、1,2−ベンゾキノン、4−メチレンシクロヘキサ−2,5−ジエノン、2−メチレンシクロヘキサ−2,5−ジエノン誘導体が挙げられる。

0072

[1−6.実施形態の効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本実施形態では、貯蔵や使用等によって生成したフェノール誘導体とフェノール誘導体が酸化したキノン種とを含むリン酸エステル油(即ち劣化したリン酸エステル油)に対して、水素供給モジュール13から活性水素を供給して、キノン種に対して水素添加を行うことにより、リン酸エステル油の劣化を抑制することができる。

0073

つまり、キノン種に水素添加して還元することによってフェノール誘導体に戻すことができるので、リン酸エステル油中のキノン種の量を低減することができる。その結果、フェノール誘導体とキノン種との反応によってポリマーが生成することを抑制できるので、リン酸エステル油の劣化(即ち油圧油等の油としての性能の低下等)を抑制することができる。

0074

(1b)本実施形態では、キノン種に対して水素添加を行うことによって、キノン種を還元してフェノール誘導体とするので(即ちキノン種の量を低減できるので)、リン酸エステル油の色を薄くすることができる。

0075

(1c)本実施形態では、リン酸エステル油の循環路7に、フェノール誘導体を含む有機酸を除去する酸除去フィルター15を備えているので、リン酸エステル油に含まれるフェノール誘導体を除去することができる。

0076

つまり、酸除去フィルター15によってフェノール誘導体を除去することによって、フェノール誘導体とキノン種とが反応してポリマーが生成することを抑制できる。その結果、リン酸エステル油が劣化することを効果的に抑制できる。

0077

[1−7.文言対応関係
ここで、本開示と実施形態との文言の対応関係について説明する。
本実施形態の、劣化抑制装置5、水素供給モジュール13、酸除去フィルター15、多孔質支持体25、水素分離金属層27は、それぞれ、本開示の、劣化抑制装置、水素供給部、酸除去フィルター、多孔質部材、水素分離金属層の一例に相当する。

0078

[2.実施例及び比較例]
(実施例)
次に、本開示の効果を確認するために行った実施例について説明する。

0079

本実施例では、油圧油として、リン酸エステル系の油圧油を使用した。具体的には、下記化学式(2)に示すように、キシレノールのホスフェートとクレゾールのホスフェートとを、重量比で80:20の割合で含む油圧油を用いた。

0080

この試験前の油圧油の色相ASTMD1500−12で規定されるASTMカラースケール)は0.5であり、全酸価値は0.02mgKOH/gである。

0081

本実施例では、触媒を配置し熱を加えた容器に空気を送り込むことで容器内の油圧油の加水分解や酸化を促進する酸化槽と、加水分解等が行われた油圧油に含まれるキノン種を還元する(即ち水素添加する)還元槽とを設け、各槽間をポンプで循環させることで試験を行った。

0082

より具体的には、図5のような試験装置を用いた。酸化槽51には丸底フラスコを用いており、この丸底フラスコをマグネットスターラ—付ヒーター53にセットした。ヒーター53によって酸化槽51内の温度(即ち油圧油(J)の温度)が135℃になるように設定されており、酸化槽51内の油圧油の状況が均一となるよう撹拌子(図示省略)にて撹拌を行った。

0083

また、酸化槽51内には、油圧油の酸化を促進する触媒として、φ1mm、長さ3mの銅線コイル形状に成形した銅コイル57を配置した。そして、空気導入管55よって、油圧油内に空気を1L/minで導入し、油圧油の加水分解及び酸化を行った。酸化槽51にて加水分解及び酸化された油圧油は、ポンプ59により引き抜かれて、還元槽61に送られる。

0084

還元槽61も酸化槽51と同様、丸底フラスコを用い、マグネットスターラ—付ヒーター63にセットした。ヒーター63によって、還元槽61内の温度(即ち油圧油の温度)が120℃になるように設定されており、還元槽61内の油圧油の状況が均一となるよう撹拌子(図示省略)にて撹拌を行った。

0085

また、還元槽61には、有底管形状多孔質セラミックスチューブ上にPdAg膜を被覆した(前記実施形態と同様な)水素供給モジュール13が挿入されている。そして、水素供給モジュール13の開口31より水素ガスを20kPaGの圧力で供給し、水素供給モジュール13表面のPdAg膜を介して油圧油に水素(即ち活性水素)を供給した。

0086

これにより、油圧油中にて生成されたフェノール誘導体が酸化されたキノン種を還元した(即ちキノン種に水素添加した)。還元槽61でキノン種が還元された油圧油は、ポンプ65にて酸化槽51に再び送られる。

0087

そして、この試験装置により、上述した条件にて、25時間にわたりキノン種の還元の試験を行った。
そして、試験後のリン酸エステル油を調べたところ、色相は1.0であり、全酸価値は0.02mgKOH/gであった。

0088

なお、色相は目視で調べ、全酸価値は指示薬滴定法により求めた。
(比較例)
次に、本開示とは異なる比較例について説明する。

0089

比較例の試験装置及び試験条件は、水素供給モジュール13から水素を供給しないこと以外は、前記実施例で使用した試験装置及び試験条件と同様である。
そして、この試験装置により、25時間にわたり試験を行った。

0090

そして、試験後の油圧油を調べたところ、色相は2.0であり、全酸価値は0.41mgKOH/gであった。
上述した実施例及び比較例の試験結果から、実施例では、25時間の試験後でも、油圧油の色相は1.0と色が薄く、全酸価値は0.02mgKOH/gと酸化の程度が低い値であった。

0091

これにより、水素供給モジュール13から水素を供給し、リン酸エステル油中のキノン種の還元を行った実施例では、リン酸エステル油の劣化がそれほど進んでいないことが分かる。

0092

一方、比較例では、500時間の試験後では、油圧油の色相は2.0と色が濃く、全酸価値は0.41mgKOH/gと酸化の程度が高い値であった。
これにより、水素供給モジュール13から水素を供給しない比較例では、油圧油の劣化が進んでいることが分かる。

0093

[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態等について説明したが、本開示は、上記実施形態等に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。

0094

(3a)例えば、前記水素供給モジュール以外の他の水素供給装置を採用できる。つまり、キノン種に水素添加するために、活性水素を供給する水素供給装置として、例えば還元触媒としてパラジウムブラック(PdB)を用いた装置が挙げられる。

0095

ここでPdBとは、パラジウムの表面積を増加させるために、例えば微粒子状のパラジムに対して、例えば塩化パラジウムによる表面処理などを行って表面に多数の凹凸を形成したもの(即ち表面積を増加させたもの)である。

0096

このPdBを用いる場合には、例えばリン酸エステル油を貯留した貯留槽内にPdBを配置し、外部から水素ガスを供給してバブリングすることによって、PdBの触媒作用によって、水素ガスから活性水素を発生させることができる。

0097

(3b)さらに他の水素供給装置として、例えば特開平9−184086号公報に記載の還元装置を採用できる。
この還元装置とは、陽極及び水素吸蔵材料からなるしきり板状の陰極を有する水電解槽において、陰極の陽極との反対面に有機化合物を接触させながら電解を行い、陰極で発生する活性水素を吸蔵し、且つ、陰極の陽極との反対面側に透過させた活性水素により、有機化合物の水素化を行うものである。

0098

(3c)また、水素供給モジュールに供給するガスとしては、水素ガスに限らず、水素を含む各種の水素含有ガス(例えば天然ガスなどの混合ガスやその改質ガスなど)が挙げられる。

0099

(3d)水素供給モジュールから水素を供給する対象の油としては、油圧油(作動油)に限らず、各種の潤滑油等が上げられる。
(3e)水素供給モジュールは、油圧油に対して水素分離金属層を介して水素を供給できるように配置すれば良いので、還元槽に限らず、オイルタンクなどに配置してもよい。

0100

(3f)水素供給モジュールとしては、油圧油や潤滑油に対して水素分離金属層を介して水素を供給できる各種の水素供給モジュールを採用できる。
例えば多孔質支持体としては、多孔質基部の表面に多孔質層を備えていない構成を採用できる。また、水素分離金属層を、多孔質支持体の表面ではなく、多孔質支持体の内部に設けてもよい。さらに、水素分離金属も、パラジウムやパラジウム合金に限定されるものではない。また、水素分離金属層の表面に触媒金属層を備えていなくともよい。

0101

(3g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。

0102

3…タービン発電機
5…劣化抑制装置
7…循環路
9…オイルタンク
11、61…還元槽
13…水素供給モジュール
15…酸除去フィルター
25…多孔質支持体
27…水素分離金属層
G…水素含有ガス

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