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技術 マルチビーム電子線描画装置における露光強度分布を求める方法および装置

出願人 大日本印刷株式会社
発明者 下村剛哉大川洋平
出願日 2017年9月7日 (4年2ヶ月経過) 出願番号 2017-171637
公開日 2018年4月12日 (3年7ヶ月経過) 公開番号 2018-061013
状態 特許登録済
技術分野 電子ビーム露光
主要キーワード 集積値 アパーチャープレート 縦方向距離 二次元画素配列 空画素 スポットサイズφ 代表セル 逆三角関数
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図面 (20)

課題

被成形層についての露光強度分布を高精度で、かつ、短時間に求める。

解決手段

電子ビーム各照射位置の強度を画素値とする画素P(i,j)をピッチdで配列した描画データをマルチビーム電子線描画装置に与えたときの露光強度分布を演算で求める。各画素P(i,j)を縦横5分割し、幅gをもつセルC(m,n)を定義し、多数のセルC(m,n)の集合体により、電子線照射強度分布を示す照射強度マトリックスを作成する。各画素の中心の代表セルには、当該画素の画素値を与え、それ以外のセルには値0を与える。中心位置から周囲への影響の度合いの分布を示す点拡がり関数psfに対応する点拡がりマトリックスを作成し、両マトリックスを用いた畳み込み積分により露光強度分布を求める。点拡がり関数psfとして、電子線描画装置のアパーチャー開口サイズに応じた幅をもつ平坦部Hを有する関数を用いる。

概要

背景

半導体デバイスの製造プロセスなど、特定の材料層に対して微細パターニング加工を施す必要がある分野において、電子線描画装置を利用したパターニング方法が広く利用されている。電子線描画装置を用いると、与えられた描画データに基づいて、被成形層微細パターン露光することができるので、極めて細い線状パターンを形成することが可能になる。たとえば、下記の特許文献1には、シングルビーム方式VSB方式:Variable Shape Beam)の電子線描画装置および当該装置を用いて所望のパターンを描画する描画方法が開示されている。

一方、最近では、同時に複数の電子ビーム照射することが可能なマルチビーム方式の電子線描画装置も実用化されている。たとえば、特許文献2には、広げた電子ビームを複数の開口部を有するアパーチャープレートを通すことにより複数の電子ビームを生成し、これらをブランキングプレートを用いて個別にON/OFF制御しながら試料表面に所定のパターンを描画するマルチビーム方式の電子線描画装置が開示されている。また、特許文献3には、このようなマルチビーム方式の電子線描画装置を用いて、試料表面の同一箇所に複数回のビーム露光を行うことにより、階調をもったグレースケールパターンを描画する方法が開示されている。

ただ、この電子線描画装置を利用したパターニング方法には、近接効果と呼ばれる要因により、実際に形成されるべきパターンの寸法に変動が生じることが知られている。この近接効果は、レジスト層などから構成される被成形層に電子ビームを照射したときに、質量の小さい電子が、レジスト内で分子散乱されながら拡がっていく現象前方散乱)や、レジスト層の下にある金属基板などの表面付近で散乱されて跳ね返ってきた電子がレジスト層内拡散してゆく現象(後方散乱)として説明される。

したがって、精度の高いパターニングを行うためには、電子線描画装置に与える描画データに対して、この近接効果を考慮した補正を施す必要がある。このような補正を行うためには、特定の描画データを用いて被成形層に電子線描画を行った場合に実際に生じるであろう露光強度分布を、コンピュータシミュレーションによって推定する方法が有効である。シミュレーションの結果、露光強度分布に誤差が生じているようであれば、当該誤差を解消するように描画データに対する適切な補正を加えることができる。たとえば、特許文献4には、近接効果を考慮して、実際に生じるであろう露光強度分布をコンピュータシミュレーションによって求める方法が開示されている。

概要

被成形層についての露光強度分布を高精度で、かつ、短時間に求める。電子ビームの各照射位置の強度を画素値とする画素P(i,j)をピッチdで配列した描画データをマルチビーム電子線描画装置に与えたときの露光強度分布を演算で求める。各画素P(i,j)を縦横5分割し、幅gをもつセルC(m,n)を定義し、多数のセルC(m,n)の集合体により、電子線照射強度分布を示す照射強度マトリックスを作成する。各画素の中心の代表セルには、当該画素の画素値を与え、それ以外のセルには値0を与える。中心位置から周囲への影響の度合いの分布を示す点拡がり関数psfに対応する点拡がりマトリックスを作成し、両マトリックスを用いた畳み込み積分により露光強度分布を求める。点拡がり関数psfとして、電子線描画装置のアパーチャー開口サイズに応じた幅をもつ平坦部Hを有する関数を用いる。

目的

本発明は、マルチビーム方式の電子線描画装置において、電子線照射面についての露光強度分布を高精度で求めることが可能なシミュレーション方法を提供し、また、当該方法を実施できる露光強度分布演算装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

マルチビーム電子線描画装置を用いて被成形層に所定のパターン露光描画する際の露光強度分布を求めるシミュレーション方法であって、電子線照射領域内に定義された多数の参照点について、電子線照射強度を示す関数と当該参照点が周囲へ及ぼす影響の度合いを示す点拡がり関数との畳み込み積分を行うことにより、個々の評価点における総露光強度演算する過程を含み、前記点拡がり関数として、電子線描画装置のアパーチャー開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータを含む関数を用いることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項2

請求項1に記載のシミュレーション方法において、電子線の照射面として二次元xy直交座標系のxy平面を定義し、座標(x,y)に位置する評価点V(x,y)に対して、座標(x′,y′)に位置する参照点T(x′,y′)が及ぼす影響を、参照点T(x′,y′)についての電子線照射強度を示す関数D(x′,y′)と、X=x′−x、Y=y′−yとして定義された点拡がり関数psf(X,Y)と、についてのx軸方向およびy軸方向に関する畳み込み積分によって算出し、点拡がり関数psf(X,Y)として、変数X,Yに加えて、電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータBを含む関数を用いることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項3

請求項2に記載のシミュレーション方法において、点拡がり関数psf(X,Y)として、開口サイズパラメータBによりグラフ平坦部の幅が左右される関数を用いることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項4

請求項3に記載のシミュレーション方法において、点拡がり関数psf(X,Y)として、開口サイズパラメータBに加えて、グラフの傾斜部の傾きを左右するパラメータσを含む関数を用いることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項5

請求項4に記載のシミュレーション方法において、点拡がり関数として、誤差関数erfを含む、psf(X,Y)=1/4・(erf((B/2−X)/σ)−erf((−B/2−X)/σ))・(erf((B/2−Y)/σ)−erf((−B/2−Y)/σ))なる関数を用いることを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項6

請求項4に記載のシミュレーション方法において、点拡がり関数として、逆三角関数arctanを含む、psf(X,Y)=1/4・(arctan((B/2−X)/σ)−arctan((−B/2−X)/σ))・(arctan((B/2−Y)/σ)−arctan((−B/2−Y)/σ))なる関数を用いることを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項7

請求項4に記載のシミュレーション方法において、点拡がり関数として、誤差関数erf、所定の定数C、後方散乱パラメータβ近接効果補正パラメータηを含む、psf(X,Y)=C/(1+η)・(1/4σ2・(erf((B/2−X)/σ)−erf((−B/2−X)/σ))・(erf((B/2−Y)/σ)−erf((−B/2−Y)/σ))+η/β2・exp(−(X2+Y2)/β2))なる関数を用いることを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項8

請求項1〜7のいずれかに記載のシミュレーション方法において、電子線描画装置のアパーチャーの開口部が円形をしている場合は、当該円の直径をアパーチャーの開口サイズとし、開口部が正方形をしている場合は、当該正方形の一辺の長さをアパーチャーの開口サイズとし、この開口サイズに、電子線描画装置のプロジェクションレンズによる縮小倍率を乗じた値を、アパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータとして用いることを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項9

請求項1〜8のいずれかに記載のシミュレーション方法において、コンピュータが、電子線描画装置が描画するパターンを示すデータであって、ビーム各照射位置照射強度を示す画素値を有する画素の配列からなる描画データを入力する描画データ入力段階と、コンピュータが、電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータを設定するパラメータ設定段階と、コンピュータが、前記描画データの各画素を複数に分割することにより得られる演算用セル集合体からなる2組の空の演算用マトリックスを用意し、第1の演算用マトリックスの各セルには、当該セルを含む画素の画素値に基づく所定のセル値を与えることにより、電子線照射強度の平面分布を示す照射強度マトリックスを作成し、第2の演算用マトリックスの各セルには、前記開口サイズパラメータを含む所定の点拡がり関数に応じたセル値を与えることにより、前記点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスを作成する演算用マトリックス作成段階と、コンピュータが、前記照射強度マトリックスと前記点拡がりマトリックスとを用いた畳み込み積分を行い、個々の評価点における総露光強度を求める畳み込み演算段階と、を有することを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項10

請求項9に記載のシミュレーション方法において、演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、特定の代表セルについてのみ当該画素の画素値に基づいて定められる所定の値をセル値として与え、それ以外の非代表セルについてはセル値0を与えることを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項11

請求項10に記載のシミュレーション方法において、演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心に位置する1つもしくは複数の演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとすることを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項12

請求項11に記載のシミュレーション方法において、演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、描画データの各画素を縦横それぞれ奇数に分割し、各画素の中心に位置する1つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、前記代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値をセル値として与え、前記非代表セルについてはセル値0を与えることを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項13

請求項11に記載のシミュレーション方法において、演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、描画データの各画素を縦横それぞれ偶数に分割し、各画素の中心に位置する4つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、前記代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値の1/4の値をセル値として与え、前記非代表セルについてはセル値0を与えることを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項14

請求項10に記載のシミュレーション方法において、演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心から所定方向に所定のオフセット量だけ変位した位置に存在する演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、演算用マトリックス作成段階で点拡がりマトリックスを作成する際に、前記所定方向とは逆方向に前記オフセット量だけ補正した点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスを作成することを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項15

請求項9〜14のいずれかに記載のシミュレーション方法において、畳み込み演算段階で、照射強度マトリックスをフーリエ変換することにより、照射強度周波数マトリックスを作成する第1の演算段階と、点拡がりマトリックスをフーリエ変換することにより、点拡がり周波数マトリックスを作成する第2の演算段階と、前記照射強度周波数マトリックスと前記点拡がり周波数マトリックスとの対応する演算用セルの積をセル値とする露光強度周波数マトリックスを作成する第3の演算段階と、前記露光強度周波数マトリックスを逆フーリエ変換することにより、個々の評価点における総露光強度の平面分布を示す露光強度マトリックスを作成する第4の演算段階と、を実行することを特徴とするマルチビーム電子線画装置における露光強度分布を求めるシミュレーション方法。

請求項16

請求項9〜15のいずれかに記載のシミュレーション方法における描画データ入力段階と、パラメータ設定段階と、演算用マトリックス作成段階と、畳み込み演算段階と、をコンピュータに実行させるプログラム

請求項17

マルチビーム電子線描画装置を用いて被成形層に所定のパターンを露光描画する際の露光強度分布を求める演算を行う露光強度分布演算装置であって、電子線描画装置が描画するパターンを示すデータであって、ビームの各照射位置の照射強度を示す画素値を有する画素の配列からなる描画データを入力する描画データ入力部と、電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータを設定するパラメータ設定部と、前記描画データの各画素を複数に分割することにより得られる演算用セルの集合体からなる空の演算用マトリックスを用意し、各演算用セルに、当該セルを含む画素の画素値に基づく所定のセル値を与えることにより、電子線照射強度の平面分布を示す照射強度マトリックスを作成する照射強度マトリックス作成部と、前記空の演算用マトリックスの各演算用セルに、前記開口サイズパラメータを含む所定の点拡がり関数に応じたセル値を与えることにより、前記点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスを作成する点拡がりマトリックス作成部と、前記照射強度マトリックスと前記点拡がりマトリックスとを用いた畳み込み積分を行い、個々の評価点における総露光強度を求める畳み込み演算実行部と、を備えることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置に用いる露光強度分布演算装置。

請求項18

請求項17に記載の露光強度分布演算装置において、点拡がりマトリックス作成部が、点拡がり関数として、開口サイズパラメータBによりグラフの平坦部の幅が左右される関数を用いることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置に用いる露光強度分布演算装置。

請求項19

請求項18に記載の露光強度分布演算装置において、点拡がりマトリックス作成部が、点拡がり関数として、開口サイズパラメータBに加えて、グラフの傾斜部の傾きを左右するパラメータσを含む関数を用いることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置に用いる露光強度分布演算装置。

請求項20

請求項17〜19のいずれかに記載の露光強度分布演算装置において、照射強度マトリックス作成部が、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、特定の代表セルについてのみ当該画素の画素値に基づいて定められる所定の値をセル値として与え、それ以外の非代表セルについてはセル値0を与えることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置に用いる露光強度分布演算装置。

請求項21

請求項20に記載の露光強度分布演算装置において、照射強度マトリックス作成部が、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心に位置する1つもしくは複数の演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとすることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置に用いる露光強度分布演算装置。

請求項22

請求項21に記載の露光強度分布演算装置において、照射強度マトリックス作成部が、描画データの各画素を縦横それぞれ奇数に分割し、各画素の中心に位置する1つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、前記代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値をセル値として与え、前記非代表セルについてはセル値0を与えることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置に用いる露光強度分布演算装置。

請求項23

請求項21に記載の露光強度分布演算装置において、照射強度マトリックス作成部が、描画データの各画素を縦横それぞれ偶数に分割し、各画素の中心に位置する4つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、前記代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値の1/4の値をセル値として与え、前記非代表セルについてはセル値0を与えることを特徴とするマルチビーム電子線描画装置に用いる露光強度分布演算装置。

請求項24

請求項20に記載の露光強度分布演算装置において、照射強度マトリックス作成部が、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心から所定方向に所定のオフセット量だけ変位した位置に存在する演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、点拡がりマトリックス作成部が、前記所定方向とは逆方向に前記オフセット量だけ補正した点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスを作成することを特徴とするマルチビーム電子線描画装置に用いる露光強度分布演算装置。

請求項25

請求項17〜24のいずれかに記載の露光強度分布演算装置において、畳み込み演算部が、照射強度マトリックスをフーリエ変換することにより、照射強度周波数マトリックスを作成する第1の演算部と、点拡がりマトリックスをフーリエ変換することにより、点拡がり周波数マトリックスを作成する第2の演算部と、前記照射強度周波数マトリックスと前記点拡がり周波数マトリックスとの対応する演算用セルの積をセル値とする露光強度周波数マトリックスを作成する第3の演算部と、前記露光強度周波数マトリックスを逆フーリエ変換することにより、個々の評価点における総露光強度の平面分布を示す露光強度マトリックスを作成する第4の演算部と、を有することを特徴とするマルチビーム電子線描画装置に用いる露光強度分布演算装置。

請求項26

請求項17〜25のいずれかに記載の露光強度分布演算装置としてコンピュータを機能させるプログラム。

技術分野

0001

本発明は、マルチビーム電子線描画装置における露光強度分布を求める方法および装置に関し、特に、マルチビーム電子線描画装置を用いて被成形層に所定のパターン露光描画する際の露光強度分布をコンピュータシミュレーションによって求める技術に関する。

背景技術

0002

半導体デバイスの製造プロセスなど、特定の材料層に対して微細パターニング加工を施す必要がある分野において、電子線描画装置を利用したパターニング方法が広く利用されている。電子線描画装置を用いると、与えられた描画データに基づいて、被成形層に微細パターン露光することができるので、極めて細い線状パターンを形成することが可能になる。たとえば、下記の特許文献1には、シングルビーム方式VSB方式:Variable Shape Beam)の電子線描画装置および当該装置を用いて所望のパターンを描画する描画方法が開示されている。

0003

一方、最近では、同時に複数の電子ビーム照射することが可能なマルチビーム方式の電子線描画装置も実用化されている。たとえば、特許文献2には、広げた電子ビームを複数の開口部を有するアパーチャープレートを通すことにより複数の電子ビームを生成し、これらをブランキングプレートを用いて個別にON/OFF制御しながら試料表面に所定のパターンを描画するマルチビーム方式の電子線描画装置が開示されている。また、特許文献3には、このようなマルチビーム方式の電子線描画装置を用いて、試料表面の同一箇所に複数回のビーム露光を行うことにより、階調をもったグレースケールパターンを描画する方法が開示されている。

0004

ただ、この電子線描画装置を利用したパターニング方法には、近接効果と呼ばれる要因により、実際に形成されるべきパターンの寸法に変動が生じることが知られている。この近接効果は、レジスト層などから構成される被成形層に電子ビームを照射したときに、質量の小さい電子が、レジスト内で分子散乱されながら拡がっていく現象前方散乱)や、レジスト層の下にある金属基板などの表面付近で散乱されて跳ね返ってきた電子がレジスト層内拡散してゆく現象(後方散乱)として説明される。

0005

したがって、精度の高いパターニングを行うためには、電子線描画装置に与える描画データに対して、この近接効果を考慮した補正を施す必要がある。このような補正を行うためには、特定の描画データを用いて被成形層に電子線描画を行った場合に実際に生じるであろう露光強度分布を、コンピュータシミュレーションによって推定する方法が有効である。シミュレーションの結果、露光強度分布に誤差が生じているようであれば、当該誤差を解消するように描画データに対する適切な補正を加えることができる。たとえば、特許文献4には、近接効果を考慮して、実際に生じるであろう露光強度分布をコンピュータシミュレーションによって求める方法が開示されている。

先行技術

0006

特開2009−253124号公報
特開2014−003279号公報
特開2010−123966号公報
特許第5864424号公報

発明が解決しようとする課題

0007

上述したとおり、電子線描画装置を用いて精度の高いパターニングを行うためには、描画データに対して、電子ビームの近接効果を考慮した補正が必要になる。そして、そのような補正を行うためには、被成形層に形成される露光強度分布を正確に推定する手法が必要である。前掲の特許文献4には、このような露光強度分布をコンピュータシミュレーションによって求める方法が開示されている。この方法では、レジスト層に照射された電子がガウス誤差関数で示される強度分布に応じて分布するものと仮定して、畳み込み演算を行うことにより、レジスト層全体についての露光強度分布を求めるシミュレーションが実行される。

0008

上述したとおり、近年はマルチビーム方式の電子線描画装置も普及してきている。しかしながら、前掲の特許文献4に開示された従来の方法は、基本的には、シングルビーム方式の電子線描画装置に適した方法であり、当該方法をそのままマルチビーム方式の電子線描画装置に適用した場合、露光強度分布を正確に推定することができない。また、マルチビーム方式の場合、ビームの数が膨大になるため、従来の方法をそのまま適用した場合、演算負担が重くなり、シミュレーションに多大な演算時間が必要になる。

0009

そこで本発明は、マルチビーム方式の電子線描画装置において、電子線照射面についての露光強度分布を高精度で求めることが可能なシミュレーション方法を提供し、また、当該方法を実施できる露光強度分布演算装置を提供することを目的とする。更に、本発明は、そのような露光強度分布を求める演算を短時間で行うことが可能なシミュレーション方法を提供し、また、当該方法を実施できる露光強度分布演算装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

(1) 本発明の第1の態様は、マルチビーム電子線描画装置を用いて被成形層に所定のパターンを露光描画する際の露光強度分布を求めるシミュレーション方法において、
電子線照射領域内に定義された多数の参照点について、電子線照射強度を示す関数と当該参照点が周囲へ及ぼす影響の度合いを示す点拡がり関数との畳み込み積分を行うことにより、個々の評価点における総露光強度を演算するようにし、
点拡がり関数として、電子線描画装置のアパーチャー開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータを含む関数を用いるようにしたものである。

0011

(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係るシミュレーション方法において、
電子線の照射面として二次元xy直交座標系のxy平面を定義し、
座標(x,y)に位置する評価点V(x,y)に対して、座標(x′,y′)に位置する参照点T(x′,y′)が及ぼす影響を、参照点T(x′,y′)についての電子線照射強度を示す関数D(x′,y′)と、X=x′−x、Y=y′−yとして定義された点拡がり関数psf(X,Y)と、についてのx軸方向およびy軸方向に関する畳み込み積分によって算出し、
点拡がり関数psf(X,Y)として、変数X,Yに加えて、電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータBを含む関数を用いるようにしたものである。

0012

(3) 本発明の第3の態様は、上述した第2の態様に係るシミュレーション方法において、
点拡がり関数psf(X,Y)として、開口サイズパラメータBによりグラフ平坦部の幅が左右される関数を用いるようにしたものである。

0013

(4) 本発明の第4の態様は、上述した第3の態様に係るシミュレーション方法において、
点拡がり関数psf(X,Y)として、開口サイズパラメータBに加えて、グラフの傾斜部の傾きを左右するパラメータσを含む関数を用いるようにしたものである。

0014

(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係るシミュレーション方法において、
点拡がり関数として、誤差関数erfを含む、
psf(X,Y)=1/4・(erf((B/2−X)/σ)−erf((−B/2−X)/σ))・(erf((B/2−Y)/σ)−erf((−B/2−Y)/σ))なる関数を用いるようにしたものである。

0015

(6) 本発明の第6の態様は、上述した第4の態様に係るシミュレーション方法において、
点拡がり関数として、逆三角関数arctanを含む、
psf(X,Y)=1/4・(arctan((B/2−X)/σ)−arctan((−B/2−X)/σ))・(arctan((B/2−Y)/σ)−arctan((−B/2−Y)/σ))なる関数を用いるようにしたものである。

0016

(7) 本発明の第7の態様は、上述した第4の態様に係るシミュレーション方法において、
点拡がり関数として、誤差関数erf、所定の定数C、後方散乱パラメータβ近接効果補正パラメータηを含む、
psf(X,Y)=C/(1+η)・(1/4σ2・(erf((B/2−X)/σ)−erf((−B/2−X)/σ))・(erf((B/2−Y)/σ)−erf((−B/2−Y)/σ))+η/β2・exp(−(X2+Y2)/β2))
なる関数を用いるようにしたものである。

0017

(8) 本発明の第8の態様は、上述した第1〜第7の態様に係るシミュレーション方法において、
電子線描画装置のアパーチャーの開口部が円形をしている場合は、当該円の直径をアパーチャーの開口サイズとし、開口部が正方形をしている場合は、当該正方形の一辺の長さをアパーチャーの開口サイズとし、この開口サイズに、電子線描画装置のプロジェクションレンズによる縮小倍率を乗じた値を、アパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータとして用いるようにしたものである。

0018

(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第8の態様に係るシミュレーション方法において、
コンピュータが、電子線描画装置が描画するパターンを示すデータであって、ビームの各照射位置照射強度を示す画素値を有する画素の配列からなる描画データを入力する描画データ入力段階と、
コンピュータが、電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータを設定するパラメータ設定段階と、
コンピュータが、描画データの各画素を複数に分割することにより得られる演算用セル集合体からなる2組の空の演算用マトリックスを用意し、第1の演算用マトリックスの各セルには、当該セルを含む画素の画素値に基づく所定のセル値を与えることにより、電子線照射強度の平面分布を示す照射強度マトリックスを作成し、第2の演算用マトリックスの各セルには、開口サイズパラメータを含む所定の点拡がり関数に応じたセル値を与えることにより、点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスを作成する演算用マトリックス作成段階と、
コンピュータが、照射強度マトリックスと点拡がりマトリックスとを用いた畳み込み積分を行い、個々の評価点における総露光強度を求める畳み込み演算段階と、
を行うようにしたものである。

0019

(10) 本発明の第10の態様は、上述した第9の態様に係るシミュレーション方法において、
演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、特定の代表セルについてのみ当該画素の画素値に基づいて定められる所定の値をセル値として与え、それ以外の非代表セルについてはセル値0を与えるようにしたものである。

0020

(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係るシミュレーション方法において、
演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心に位置する1つもしくは複数の演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとするようにしたものである。

0021

(12) 本発明の第12の態様は、上述した第11の態様に係るシミュレーション方法において、
演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、描画データの各画素を縦横それぞれ奇数に分割し、各画素の中心に位置する1つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値をセル値として与え、非代表セルについてはセル値0を与えるようにしたものである。

0022

(13) 本発明の第13の態様は、上述した第11の態様に係るシミュレーション方法において、
演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、描画データの各画素を縦横それぞれ偶数に分割し、各画素の中心に位置する4つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値の1/4の値をセル値として与え、非代表セルについてはセル値0を与えるようにしたものである。

0023

(14) 本発明の第14の態様は、上述した第10の態様に係るシミュレーション方法において、
演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心から所定方向に所定のオフセット量だけ変位した位置に存在する演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、
演算用マトリックス作成段階で点拡がりマトリックスを作成する際に、上記所定方向とは逆方向に上記オフセット量だけ補正した点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスを作成するようにしたものである。

0024

(15) 本発明の第15の態様は、上述した第9〜第14の態様に係るシミュレーション方法において、
畳み込み演算段階で、
照射強度マトリックスをフーリエ変換することにより、照射強度周波数マトリックスを作成する第1の演算段階と、
点拡がりマトリックスをフーリエ変換することにより、点拡がり周波数マトリックスを作成する第2の演算段階と、
照射強度周波数マトリックスと点拡がり周波数マトリックスとの対応する演算用セルの積をセル値とする露光強度周波数マトリックスを作成する第3の演算段階と、
露光強度周波数マトリックスを逆フーリエ変換することにより、個々の評価点における総露光強度の平面分布を示す露光強度マトリックスを作成する第4の演算段階と、
を実行するようにしたものである。

0025

(16) 本発明の第16の態様は、上述した第9〜第15の態様に係るシミュレーション方法における描画データ入力段階と、パラメータ設定段階と、演算用マトリックス作成段階と、畳み込み演算段階と、をコンピュータにプログラムを組み込んで実行させるようにしたものである。

0026

(17) 本発明の第17の態様は、マルチビーム電子線描画装置を用いて被成形層に所定のパターンを露光描画する際の露光強度分布を求める演算を行う露光強度分布演算装置において、
電子線描画装置が描画するパターンを示すデータであって、ビームの各照射位置の照射強度を示す画素値を有する画素の配列からなる描画データを入力する描画データ入力部と、
電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータを設定するパラメータ設定部と、
描画データの各画素を複数に分割することにより得られる演算用セルの集合体からなる空の演算用マトリックスを用意し、各演算用セルに、当該セルを含む画素の画素値に基づく所定のセル値を与えることにより、電子線照射強度の平面分布を示す照射強度マトリックスを作成する照射強度マトリックス作成部と、
上記空の演算用マトリックスの各演算用セルに、開口サイズパラメータを含む所定の点拡がり関数に応じたセル値を与えることにより、点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスを作成する点拡がりマトリックス作成部と、
照射強度マトリックスと点拡がりマトリックスとを用いた畳み込み積分を行い、個々の評価点における総露光強度を求める畳み込み演算実行部と、
を設けるようにしたものである。

0027

(18) 本発明の第18の態様は、上述した第17の態様に係る露光強度分布演算装置において、
点拡がりマトリックス作成部が、点拡がり関数として、開口サイズパラメータBによりグラフの平坦部の幅が左右される関数を用いるようにしたものである。

0028

(19) 本発明の第19の態様は、上述した第18の態様に係る露光強度分布演算装置において、
点拡がりマトリックス作成部が、点拡がり関数として、開口サイズパラメータBに加えて、グラフの傾斜部の傾きを左右するパラメータσを含む関数を用いるようにしたものである。

0029

(20) 本発明の第20の態様は、上述した第17〜第19の態様に係る露光強度分布演算装置において、
照射強度マトリックス作成部が、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、特定の代表セルについてのみ当該画素の画素値に基づいて定められる所定の値をセル値として与え、それ以外の非代表セルについてはセル値0を与えるようにしたものである。

0030

(21) 本発明の第21の態様は、上述した第20の態様に係る露光強度分布演算装置において、
照射強度マトリックス作成部が、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心に位置する1つもしくは複数の演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとするようにしたものである。

0031

(22) 本発明の第22の態様は、上述した第21の態様に係る露光強度分布演算装置において、
照射強度マトリックス作成部が、描画データの各画素を縦横それぞれ奇数に分割し、各画素の中心に位置する1つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値をセル値として与え、非代表セルについてはセル値0を与えるようにしたものである。

0032

(23) 本発明の第23の態様は、上述した第21の態様に係る露光強度分布演算装置において、
照射強度マトリックス作成部が、描画データの各画素を縦横それぞれ偶数に分割し、各画素の中心に位置する4つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値の1/4の値をセル値として与え、非代表セルについてはセル値0を与えるようにしたものである。

0033

(24) 本発明の第24の態様は、上述した第20の態様に係る露光強度分布演算装置において、
照射強度マトリックス作成部が、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心から所定方向に所定のオフセット量だけ変位した位置に存在する演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、
点拡がりマトリックス作成部が、上記所定方向とは逆方向に上記オフセット量だけ補正した点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスを作成するようにしたものである。

0034

(25) 本発明の第25の態様は、上述した第17〜第24の態様に係る露光強度分布演算装置において、
畳み込み演算部が、
照射強度マトリックスをフーリエ変換することにより、照射強度周波数マトリックスを作成する第1の演算部と、
点拡がりマトリックスをフーリエ変換することにより、点拡がり周波数マトリックスを作成する第2の演算部と、
照射強度周波数マトリックスと点拡がり周波数マトリックスとの対応する演算用セルの積をセル値とする露光強度周波数マトリックスを作成する第3の演算部と、
露光強度周波数マトリックスを逆フーリエ変換することにより、個々の評価点における総露光強度の平面分布を示す露光強度マトリックスを作成する第4の演算部と、
を有するようにしたものである。

0035

(26) 本発明の第26の態様は、上述した第17〜第25の態様に係る露光強度分布演算装置を、コンピュータにプログラムを組み込むことにより構成したものである。

発明の効果

0036

本発明に係る露光強度分布のシミュレーション方法および露光強度分布演算装置によれば、描画データに基づいて生成された電子線の照射強度分布関数と、周囲への影響の度合いを示す点拡がり関数と、の畳み込み積分を行うことにより、被成形層に生じる露光強度分布を求めることができる。しかも、点拡がり関数として、電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータを含む関数を用いるようにしたため、マルチビーム方式の電子線描画装置に最適のシミュレーションを行うことができ、露光強度分布を高精度で求めることが可能になる。

0037

また、電子線の照射強度分布を示す照射強度マトリックスとして、代表セル以外のセル値を0にしたマトリックスを用いた演算を行うようにすれば、畳み込み積分の演算負担を大幅に軽減することができ、露光強度分布を求める演算を短時間で行うことが可能になる。

図面の簡単な説明

0038

一般的なマルチビーム方式の電子線描画装置の基本構造およびその描画原理を示す正面図である(一部は断面図)。
一般的な電子ビームのエネルギー密度(強度)の分布を示すグラフである。
描画データを構成する二次元画素配列と、当該描画データに基づいて照射される電子ビームの強度分布との関係を示す平面図(上段(a) )およびグラフ(下段(b) )である。
画素値に応じた回数だけビーム照射を行うことにより、段階的な露光強度の制御を行う原理を示すグラフである。
画素ピッチdと個々の電子ビームのスポット径φとの関係により、重複露光が生じる状態の一例を示す平面図(上段(a) )および個々の電子ビームについての強度分布を示すグラフ(下段(b) )である。
x軸方向の幅Daをもつパターンの平面図(上段(a) )および当該パターンをマルチビームにより露光する原理を示すグラフ(下段(b) )である。
x軸方向の幅Da=25nmをもつ線状パターンの平面図(上段(a) )および当該線状パターンを露光するための描画データを構成する画素配列を示す図(下段(b) )である。
x軸方向の幅Da=27nmをもつ線状パターンの平面図(上段(a) )および当該線状パターンを露光するための描画データを構成する画素配列を示す図(下段(b) )である。
同じパターンを、シングルビーム方式で描画する手順(図(a) )とマルチビーム方式で描画する手順(図(b) )とを比較する図である。
シングルビーム方式で描画を行う際の任意の評価点V(x,y)における総露光強度の演算原理を示す平面図である。
図10に示す演算原理に用いる演算式の一例を示す図である。
マルチビーム方式で描画を行う際の任意の評価点V(x,y)における総露光強度の演算原理を示す平面図である。
図12に示す演算原理に用いる演算式の一例を示す図である。
マルチビーム方式で描画を行う際に、本発明に係るシミュレーション方法で露光強度分布を求める演算に用いる演算式の一例を示す図である。
図14の式(3)に示す点拡がり関数psf(X,Y)の一例を示す一次元グラフである。
図14の式(3)に用いるのに適した別な点拡がり関数psf(X,Y)の式を示す図である。
図14の式(3)に用いるのに適した更に別な点拡がり関数psf(X,Y)の式を示す図である。
本発明に係るシミュレーション方法の基本手順を示す流れ図である。
図18のステップS30による照射強度マトリックスD(x′,y′)の具体的な作成例を示す図である。
図18のステップS30により作成された照射強度マトリックスD(x′,y′)と点拡がりマトリックスpsf(X,Y)との対応関係を示す図である。
図19(a) に示す描画データに基づいて、図18のステップS40による畳み込み演算を行うプロセスの概念を示す図である。
図18のステップS30により作成される照射強度マトリックスD(x′,y′)と点拡がりマトリックスpsf(X,Y)の変形例を示す図である。
図22に示す例について、図18のステップS40による畳み込み演算を行うプロセスの概念を示す図である。
図18のステップS30により作成される照射強度マトリックスD(x′,y′)の別な変形例を示す図である。
図18のステップS30により作成される照射強度マトリックスD(x′,y′)の更に別な変形例を示す図である。
図18のステップS40による畳み込み演算を、フーリエ変換を利用して行う原理を示す図である。
代表セルを定めてフーリエ変換を利用した畳み込み演算を行うことにより、演算負担が軽減される原理を示す図である。
本発明に係る露光強度分布演算装置の基本構成を示すブロック図である。
本発明に係るシミュレーション方法によって得られた露光強度分布の第1の実例を示す図である。
本発明に係るシミュレーション方法によって得られた露光強度分布の第2の実例を示す図である。

実施例

0039

以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。

0040

<<< §1.マルチビーム電子線描画装置による描画原理>>>
本発明は、マルチビーム電子線描画装置における露光強度分布を求める技術を前提とするものである。そこで、まず、説明の便宜上、一般的なマルチビーム電子線描画装置による描画原理を簡単に説明しておく。図1は、マルチビーム電子線描画装置の基本構造およびその描画原理を示す正面図である(一部は断面図)。

0041

図示のとおり、電子銃10から照射された電子ビーム20は、電磁気的な作用を施すコンデンサレンズ30によって拡大され、アパーチャープレート40(図では、断面図として示す)に照射される。アパーチャープレート40には、多数の開口部41が形成されており、この開口部41を通過した電子ビーム21のみが、やはり電磁気的な作用を施すプロジェクションレンズ50を通して下方の試料基板60へと縮小投影され、その上面に形成されている被成形層(通常はレジスト層)61の露光対象面に照射される。試料基板60は、移動ステージ70の上に載置され、図の左右方向および図の奥行き方向に移動させることができる。

0042

最近では、512×512の二次元マトリックス状に配置された開口部41をもったアパーチャープレート40を用い、25万本以上の電子ビーム21によって被成形層61の上面を同時に露光して微細パターンを描画する機能をもった装置も実用化されている。通常、アパーチャープレート40の下面には、ブランキングプレート(図示省略)が配置されており、開口部41を通過した個々の電子ビーム21を個別にON/OFF制御する機能が設けられる。

0043

アパーチャープレート40に形成された個々の開口部41は、通常、円形断面を有しており、開口部41を通過した個々の電子ビーム21の断面は円形になる。場合によっては、矩形断面を有する開口部が用いられることもあるが、以下、開口部41が円形断面を有するものとし、被成形層61の上面(露光対象面)には、1本の電子ビーム21の照射により円形の照射スポットが形成されるものとして説明を行う。たとえば、開口部41が直径4μmの円であり、プロジェクションレンズ50の縮小倍率が1/200であったとすると、露光対象面には、直径20nm程度の円形の照射スポット(厳密には、若干大きなスポットになる)が形成される。

0044

一般的な電子ビームのエネルギー密度は、その中心軸ピークとしたガウスの誤差関数に応じた分布になるとされている。後述するように、本発明では、開口部41を通った1本の電子ビーム21のエネルギー密度を示す関数として、ガウスの誤差関数の代わりに特殊な関数を用いることになるが、ここでは、この電子ビーム21のエネルギー密度がガウスの誤差関数に応じた分布になるものとして、以下の説明を行う。

0045

このような前提では、1本の電子ビーム21によって被成形層61の露光対象面に形成される円形の照射スポットのエネルギー密度E(電子ビームの照射強度)は、図2のグラフMに示すようなガウスの誤差関数に応じた分布になる。このグラフの横軸は、nmの単位で示される一次元方向の位置を示しており、横軸上の数値0の位置は、1本の電子ビーム21の中心軸が照射される位置に対応する。実際には、露光対象面上には二次元的な広がりをもつ円形の照射スポットが形成され、そのエネルギー密度Eを示すグラフは、図2に示すグラフMを、その中心軸まわりに回転させた回転体になる。

0046

図2のグラフにおける横軸上の寸法φは、こうして露光対象面上に形成される円形の照射スポットの直径に相当する。したがって、図2に示すようなエネルギー密度Eをもった1本の電子ビームが照射された場合、露光対象面上では直径φの円形内が露光することになり、各部の照射強度は中心から周囲に向かってガウスの誤差関数に応じた分布で減少する。通常、ビームの大きさは、図2のグラフの半値幅の値を示すビーム径として示されるが、ここでは説明の便宜上、図2に示す寸法φをスポット径と呼び、ビーム径に対応する数値として取り扱うことにする。

0047

シングルビーム方式(VSB方式:Variable Shape Beam)の電子線描画装置の場合、試料基板60上には1本の電子ビームしか照射されないので、その断面形状を矩形等の任意形状に加工し、任意の強度に調節した状態で照射することが可能である。ところが、マルチビーム方式の電子線描画装置の場合、多数の電子ビーム21を用いて極めて高速な描画を行うことができるメリットを有しているが、個々のビームの断面形状を個別に制御したり、個々のビームの強度を個別に制御したりすることは困難である。実際、25万本ものビームを生成する装置の場合、微細なアパーチャープレートの開口部41を通過した個々の電子ビームを個別に成形したり、個別に強度調節したりする機構を設けることはできない。

0048

結局、現在利用されている一般的なマルチビーム方式の電子線描画装置では、露光対象面上に直径φをもった多数の円形の照射スポットを形成することができるものの、照射スポットを任意の形状に成形することはできず、個々の電子ビームのON/OFF制御により描画を行う方法を採らざるを得ない。そこで、このマルチビーム方式の電子線描画装置の描画制御を行うために、二次元画素配列によって構成される描画データ(量子化マップとも呼ばれている)が利用される。

0049

図3(a) は、この描画データを構成する二次元画素配列と、当該描画データに基づいて照射される電子ビームの強度分布との関係を示す平面図(上段(a) )およびグラフ(下段(b) )である。いま、露光対象面上にxy二次元座標系を定義し、この座標系上に図3(a) の右上隅ハッチングを施して示すような正方形状の画素Pを縦横に配置した二次元画素配列を定義する。ここでは、個々の画素Pの横方向(x軸方向)および縦方向(y軸方向)の幅がいずれもdであるものとする。この幅dは、画素Pの横方向および縦方向のピッチに相当する。

0050

ここで、個々の画素Pの中心位置に照射基準点Qを定義し、画素Pの画素値として、当該照射基準点Qに照射すべき電子線の強度を示す値を与えることにする。このような画素配列からなる描画データをマルチビーム方式の電子線描画装置に与えたとすれば、描画装置は、当該描画データに基づいて、露光対象面上に所定の強度分布をもった電子線露光を行うことができる。たとえば、図3に示す画素P1の中心に定義された照射基準点Q1に照射された電子ビームにより、露光対象面(xy平面)上には、円形の照射スポットS1による露光が行われ、画素P2の中心に定義された照射基準点Q2に照射された電子ビームにより、露光対象面(xy平面)上には、円形の照射スポットS2による露光が行われる。

0051

この場合、照射スポットS1による露光強度は画素P1のもつ画素値E1に基づいて決定され、照射スポットS2による露光強度は画素P2のもつ画素値E2に基づいて決定される。たとえば、個々の画素値E1,E2が、ガウスの誤差関数に応じた分布のピーク値を示しているものとすると、図3(a) に示す照射スポットS1,S2によるx軸方向に関する露光強度分布は、図3(b) に示すグラフのようになる。すなわち、照射基準点Q1を中心として照射された電子ビームによる露光強度分布はグラフM1のような幅φをもった山になり、照射基準点Q2を中心として照射された電子ビームによる露光強度分布はグラフM2のような幅φをもった山になる。ここで、幅φは、前述したとおり、円形の照射スポットの直径である。

0052

なお、図3では、説明の便宜上、2つの画素P1,P2の照射基準点Q1,Q2について、それぞれ照射スポットS1,S2が形成されている状態を示すが、もちろん、実際には、すべての画素Pの中心位置にそれぞれ照射基準点Qが定義され、各照射基準点Qに対してそれぞれ電子ビームの照射が行われることになる。ここで、照射基準点Qの縦横の配置ピッチは、画素Pの縦横の配置ピッチと同様にピッチdということになる。

0053

ところで、マルチビーム方式の電子線描画装置では、多数の電子ビームの強度を個別に制御することはできない。したがって、図3に示す例において、照射基準点Q1に照射される電子ビームも、照射基準点Q2に照射される電子ビームも、同じ強度の電子ビームにならざるを得ない。ただ、ブランキングプレートを制御することにより、個々の電子ビームを個別にON/OFFすることは可能である。そこで、個々の照射基準点Qごとに、それぞれ照射する電子ビームを個別にON/OFF制御し、露光時間を変えることにより露光強度を変える方法を採る。上例の場合、照射基準点Q1への照射時間を照射基準点Q2への照射時間よりも長く設定することにより、図3(b) のグラフに示すような露光強度分布が得られることになる。

0054

このような露光時間の制御は、実際には、露光回数の制御という形で行われる。これは、図1に示すように、実際には、移動ステージ70を二次元的(図1の左右方向および奥行き方向)に移動させながら、多数の電子ビーム21を被成形層61上で二次元的に走査しながら描画を行うためである。

0055

たとえば、数ナノ秒程度の露光時間を1回の電子ビーム照射時の単位露光時間と定めておき、1回の電子ビーム照射が完了するたびに、移動ステージ70をx軸方向にピッチdだけ移動させ、次の回の電子ビーム照射を行うようにすれば、特定の照射基準点Qに対しては、毎回異なる電子ビーム(隣接する電子ビーム)によって単位露光時間分の露光が行われることになる。このとき、毎回、個々の電子ビームごとに個別のON/OFF制御を行えば、段階的ではあるものの、個々の照射基準点Qごとに固有の露光強度を設定することが可能になる。

0056

具体的には、たとえば、照射基準点Q1に対して10回の露光を行うことにより、図3(b) のグラフM1のような露光強度分布が得られるのであれば、照射基準点Q2に対して5回の露光を行うことにより、図3(b) のグラフM2のような露光強度分布が得られることになる。

0057

図4は、このように、個々の照射基準点Qごとに露光回数を変えることにより、16通りの段階的な露光強度の制御を行う原理を示すグラフである。ここでは、図示の便宜上、段階0,5,10,15の4通りの段階についての例のみが示されているが、実際には、これらの間の中間段階も設定され、段階0〜15までの全16通りの段階が設定される。図4に示す露光強度分布グラフM(15),M(10),M(5)は、それぞれピーク強度E(15),E(10),E(5)をもち、同一のスポット径φの広がりをもったガウスの誤差関数に応じた分布のグラフになっている。

0058

たとえば、画素P(15),P(10),P(5),P(0)の画素値pがそれぞれp=15,p=10,p=5,p=0であった場合、これらの画素の中心位置に定義された照射基準点Q(15),Q(10),Q(5),Q(0)の近傍には、図4に示す露光強度分布グラフM(15),M(10),M(5),M(0)に相当する強度分布をもった露光が行われることになる。各露光強度分布グラフのピーク値は、それぞれの照射基準点位置における露光回数(=画素値p)に対応した値になる。

0059

すなわち、画素値p=0に対応する照射基準点Q(0)には、電子ビームの照射は1回も行われず、グラフM(0)は、実際には実体のある山状のグラフにはならない。一方、画素値p=5に対応する照射基準点Q(5)には、電子ビームの照射が5回行われ、グラフM(5)は、ピーク強度E(5)をもった山になる。同様に、画素値p=10に対応する照射基準点Q(10)には、電子ビームの照射が10回行われ、グラフM(10)は、ピーク強度E(10)をもった山になり、画素値p=15に対応する照射基準点Q(15)には、電子ビームの照射が15回行われ、グラフM(15)は、ピーク強度E(15)をもった山になる。

0060

ところで、図3では、互いに十分に離れた位置にある2つの画素P1,P2に、それぞれ別個の電子ビームを照射した例を述べた。この例のように、スポット径φ以上に離れた2つの照射基準点Q1,Q2に照射された電子ビームは、相互に干渉を及ぼすことはない。しかしながら、スポット径φに満たない距離に近接配置されている複数の照射基準点に照射された電子ビームについては、相互に干渉が生じることになる。通常、画素ピッチd(照射基準点Qのピッチ)は、電子ビームのスポット径φよりも小さな値に設定される。この場合、露光対象面は、複数の電子ビームによる重畳露光を受けることになる。

0061

図5(a) は、画素ピッチdと個々の電子ビームのスポット径φとの関係により、露光対象面上に重畳露光が生じる状態の一例を示す平面図であり、図5(b) は、このような重畳露光が生じている場合の個々の電子ビームについての露光強度分布を示すグラフである。ここに示す例は、画素ピッチd(照射基準点Qのピッチ)と電子ビームのスポット径φとの間に、φ=4dとなるような関係を設定した場合の例である。図5(a) には、x軸方向に隣接して配置された5つの画素P1〜P5と、これら各画素の中心位置に定義された5つの照射基準点Q1〜Q5に対して照射された電子ビームによって形成される5つの円形照射スポットS1〜S5が示されている。図示のとおり、各円形照射スポットS1〜S5は相互に重なりを生じており、露光対象面の各部は、複数の照射スポットによる重畳露光を受けることになる。

0062

図5(b) に示す露光強度分布グラフM1〜M5は、それぞれ照射スポットS1〜S5についてのx軸方向に関する露光強度分布を示している。個々の照射スポットS1〜S5が部分的に重なりを生じているため、個々の露光強度分布グラフM1〜M5も部分的に重なりを生じることになり、各部の実際の露光強度分布は、これら個々の露光強度分布グラフM1〜M5の総和として与えられる。たとえば、図に太線で示されている画素P3内の照射基準点Q3には、円形照射スポットS3を生じさせる電子ビームが照射されることになる。この円形照射スポットS3の露光強度分布はグラフM3で示すような山になるが、図示のとおり、画素P3内には、隣接する別なグラフM1,M2,M4,M5の山の裾野も位置しているため、結局、画素P3内の総露光強度は、これらすべての山を重ね合わせた強度ということになる。

0063

マルチビーム方式の電子線描画装置は、このような原理に基づいて、被成形層上に階調をもったグレースケールパターンを描画することができ、露光を受けた被成形層を現像することにより、所望の形状をもったパターン形成を行うことができる。

0064

図6(a) は、x軸方向の幅Daをもつパターンの平面図であり、図6(b) は、当該パターンをマルチビームにより露光する原理を示すグラフである。図6(b) に横軸として示されているx軸は、図6(a) の横方向を示すx軸に対応するものであり、図6(b) のグラフは、図6(a) に示すパターンを描画する際のx軸方向に関する露光強度分布を示している。

0065

図6(b) には、小さな山からなる9つの露光強度分布グラフM1〜M9(以下、小山と呼ぶ)と、大きな山からなる1つの露光強度の分布グラフMM(以下、大山と呼ぶ)とが示されている。小山M1〜M9は、それぞれ照射基準点Q1〜Q9に照射される個別の電子ビームに基づく露光強度分布を示すものであり、図5(b) に示す例と同様に、互いに裾野に重なりを生じている。照射基準点Q1〜Q9は、図示されていない画素P1〜P9の中心点として定義される点であり、所定ピッチdで配置されている。そして、各小山M1〜M9の高さ(ピーク強度)は、個々の画素P1〜P9の画素値に応じた値になる。

0066

図4に示す例の場合、画素値pは0〜15の16段階、すなわち、4ビットのデータで表現され、p=0〜15とすることにより、それぞれ高さが異なる16通りの小山M(p)を定義することができる。そして、小山M(p)に応じた強度分布を形成するために、合計p回の露光が行われる。図6(b) に示す小山M1〜M9は、この16段階の小山のいずれかである。たとえば、両端の画素P1,P9の画素値がp=7、中間の画素P2〜P8の画素値がp=15であった場合、図示のとおり、両端の小山M1,M9は中程度の高さをもった山になり、中間の小山M2〜M8は最大の高さをもった山になる。

0067

一方、図6(b) に示す大山MMは、すべての小山M1〜M9を重畳したときに得られる総露光強度の分布を示すグラフであり、小山M1〜M9の総和に相当するグラフということになる(図示の便宜上、正確な総和を示すものにはなっていない)。結局、照射基準点Q1〜Q9に対して、それぞれ画素P1〜P9の画素値に応じた回数の露光を実行すると、露光対象面上には、x軸方向に関して、大山MMによって示される総露光強度分布が得られることになる。

0068

被成形層61に対して、このような露光を行うための電子線照射プロセスが完了すると、続いて、被成形層61に対する現像プロセスが実行される。被成形層61は、電子線照射によって組成変化を生じるレジスト層によって構成されており、一般的なレジストの場合、照射されるエネルギー密度が所定の臨界値を越えると、急激に組成変化を生じる非線形性を有している。したがって、図示する大山MMのように、なだらかな総露光強度分布が得られた場合であっても、被成形層61における総露光強度が所定の閾値Eth以上となる領域を露光領域a、総露光強度が所定の閾値Eth未満となる領域を非露光領域bとすれば、露光領域aの組成は非露光領域bの組成に比べて大きく変化する。このため、被成形層61に対する現像プロセスを行うと、露光領域aと非露光領域bとの相違に基づくパターン形成を行うことができる。

0069

具体的には、レジスト層としてポジ型レジスト材料を用いた場合、現像プロセスにより、被成形層61の露光領域aのみが現像液に溶解し、残存した非露光領域b内の被成形層によりパターン形成が行われ、レジスト層としてネガ型レジスト材料を用いた場合、現像プロセスにより、被成形層61の非露光領域bのみが現像液に溶解し、残存した露光領域a内の被成形層によりパターン形成が行われる。図6には、大山MMを、閾値Ethに相当するレベルで切ったときの幅Daに応じた幅を有する露光領域aが形成された例が示されている。

0070

もちろん、グラフの縦軸スケーリングや閾値Ethの値は、照射する電子ビームの強度(エネルギー密度)や1回の露光時間といった露光条件と、用いるレジスト材料や現像液の種類といった現像条件とによって変化することになるが、これらの条件を固定しておけば、グラフの縦軸上の閾値Ethも固定された値になる。したがって、得られるパターン幅Daは、大山MMの形状によって制御することができる。上述したように、大山MMは、小山M1〜M9の総和として得られるものであるので、結局、個々の画素P1〜P9の画素値を定義した描画データによって、パターン幅Daの制御が可能になる。

0071

なお、これまでの説明では、便宜上、被成形層に対するx軸方向に関するパターニングの原理を述べたが、実際のパターニングプロセスは、xy平面上に広がる被成形層に対して行われ、y軸方向に関しても同様のパターニングが行われることになる。すなわち、図6(b) に示す大山MMは、x軸方向に関する露光強度分布を示すものであるが、描画データは、二次元画素配列として与えられるため、y軸方向に関しても同様の露光強度分布が得られることになる。そして、図6(a) に示すパターンの上下方向の幅は、このy軸方向に関する露光強度分布に基づいて決定されることになる。

0072

以上、従来用いられている一般的なマルチビーム電子線描画装置による描画原理を説明したが、もちろん、上述の説明は、マルチビーム電子線描画装置の一例を用いた説明であり、本発明を実施するにあたって用いるマルチビーム電子線描画装置は、上述の説明に用いた例に限定されるものではない。

0073

<<< §2.線状パターンを描画するための描画データ >>>
ここでは、§1で述べた描画原理に基づいて線状パターンを描画する場合に用いられる具体的な描画データについての説明を行う。図7(a) は、x軸方向の幅Da=25nmをもつ線状パターンの平面図であり、図7(b) は、当該線状パターンを露光するための描画データを構成する画素配列を示す図である。半導体デバイスの製造プロセスでは、配線層など、微小線幅をもった線状パターンを多数形成する必要がある。図7(a) に示す線状パターン(ハッチング部分)は、そのようなプロセスで用いられる微小な線幅をもった細長いパターンである。なお、実際の線状パターンは、線幅(図のx軸方向に関する幅)に比べて、線長(図のy軸方向に関する長さ)は極めて大きくなり、文字通り「1本の線」として把握されるべきパターンであるが、本願では、図示の便宜上、線長を大幅に縮小した線状パターン(図7(a) のハッチング部分のように「矩形」として把握されるパターン)を例にとった説明を行うことにする。

0074

図7(b) に示す描画データは、被成形層上に図7(a) に示すような線状パターンを形成するために、マルチビーム電子線描画装置に与えるデータであり、それぞれの画素に所定の画素値pが定義された二次元画素配列によって構成される。既に§1で説明したとおり、この二次元画素配列を構成する個々の画素Pは、被成形層上の露光対象面に縦横にそれぞれ所定ピッチdで配置された多数の照射基準点Qに照射すべき電子線強度を示す画素値pを有している。以下、この二次元画素配列の縦方向および横方向の画素ピッチdをd=5nmに設定した例について説明を行うことにする。したがって、照射基準点Qの縦方向および横方向のピッチdも同じくd=5nmに設定される。

0075

図7(b) に示す描画データは、露光対象面(xy平面)上にこのような二次元画素配列を定義し、個々の画素にそれぞれ所定の画素値を付与したものである。この例の場合、個々の画素値pとして、p=0〜15の範囲の数字を付与しているため、この描画データは、いわば4ビットの階調値をもったグレースケールの画像データということになり、個々の画素は、図4に示すような16通りの露光強度分布のうちの1つをその画素値pによって指定する役割を果たす。

0076

なお、図7(b) に示す描画データの場合、個々の画素の画素値pは、p=0(最小値)もしくはp=15(最大値)のいずれかをとっており、中間の画素値p=1〜14をとる画素は存在しない。これは、図7(a) に示す線状パターンの輪郭線が、画素の輪郭に一致しているため、中間の画素値を用いなくても、線状パターンの形成が可能になるためである。すなわち、図示の例の場合、線状パターン内に完全に含まれる画素については画素値p=15(最大値)を与え、線状パターンを全く含まない画素については画素値p=0(最小値)を与えることにより、描画データが構成されている。

0077

このような描画データを電子線描画装置に与えると、画素値p=0をもつ画素に対応する照射基準点位置には電子ビームの照射は1回も行われず、画素値p=15をもつ画素に対応する照射基準点位置には電子ビームの照射が15回行われることになる。その結果、図4に示す小山M(15)を足し合わせることにより、大山MMが形成され、露光対象面上には、所定の閾値Ethを基準にして、図7(a) に示すような露光領域a(総露光強度が閾値Eth以上となる領域)と非露光領域b(総露光強度が閾値Eth未満となる領域)とが形成されることになる。

0078

図7(a) に示す例のように、線状パターンの輪郭線が、画素の輪郭に一致するような設計を行うと、二次元画素配列上に線状パターンを配置したときに、線状パターン内に完全に含まれる画素(以下、完全画素と呼ぶ)と、線状パターンを全く含まない画素(以下、空画素と呼ぶ)との2種類の画素のみが定義されることになる。そこで、完全画素については画素値p=15(最大値:電子ビームを最大回数だけ照射することを示す画素値)を与え、空画素については画素値p=0(最小値:電子ビームを1回も照射しないことを示す画素値)を与えるようにすれば、図7(b) に示すような描画データが得られる。

0079

一般的なマルチビーム電子線描画装置を用いたパターニングプロセスの場合、通常、輪郭線が画素の輪郭に一致するような線状パターンを示す描画データを与えた場合に、寸法誤差のない正確なパターンが形成されるような標準パターニング条件を設定した運用が行われる。したがって、一般に、線幅Daが、画素の線幅方向ピッチdの整数倍となるような線状パターンを形成する場合、当該線状パターンの輪郭線が、画素の輪郭に一致するような位置合わせを行った設計を行えば、標準パターニング条件により、寸法誤差のない正確なパターン形成を行うことができる。

0080

図7に示す例の場合、画素ピッチd=5nmであり、しかも線状パターンの線幅Daは25nmであるため、線幅Daは、画素ピッチdのちょうど5倍になっている。したがって、線状パターンの設計時には、左右両側の輪郭線が画素の輪郭に一致するような設計を行うことが可能である。そのような設計を行い、上記標準パターニング条件でパターン形成処理露光処理および現像処理)を行えば、設計どおりの寸法をもった物理的パターンが得られる。すなわち、露光領域aとして残存する被成形層(被成形層がネガ型レジストの場合)、もしくは、非露光領域bとして残存する被成形層(被成形層がポジ型レジストの場合)によって、線幅25nmをもった物理的なパターンを形成することができる。

0081

一方、画素ピッチdに満たないサブピクセルレベル端数寸法の線幅をもった線状パターンを形成する場合には、輪郭線の内側直近部における当該端数寸法に相当する画素について、中間的な画素値を与えるようにすればよい。図8(a) は、x軸方向の幅Da=27nmをもつ線状パターンの平面図であり、図8(b) は、当該線状パターンを露光するための描画データを構成する画素配列を示す図である。図7に示す線状パターンの線幅DaがDa=25nmであったのに対して、図8に示す線状パターンの線幅DaはDa=27nmであり、2nmだけ幅が広くなっている。図示の例の場合、画素ピッチdは5nmであるので、この2nmの幅増加分は、画素ピッチdに満たないサブピクセルレベルの端数寸法ということになる。

0082

そこで、図8(b) に示す描画データでは、この2nmの幅増加分を、画素値pとして、p=6という中間的な階調値をもった画素列を設けることにより補填している。すなわち、図8に示す例の場合、Da=27nmなる線幅をもつ線状パターンについて、その左側の輪郭線が画素の輪郭に一致するような設計を行っているため、第3列目〜第7列目までの画素列については、図7に示す例と同様に、画素値p=15(最大値)が付与されているが、第8列目の画素列には、画素値p=6が付与されている。これは、この第8列目の画素列が、線状パターンを部分的に含む画素(以下、不完全画素と呼ぶ)であるため、当該線状パターンの含有率に応じて定まる階調値を画素値pとして与えた結果である。

0083

上述したとおり、ここに示す例の場合、線状パターン内に完全に含まれる完全画素(第3列目〜第7列目までの画素)については最大画素値p=15を与え、線状パターンを全く含まない空画素(第1,2,9,10列目の画素)については最小画素値p=0を与えることになる。そして、線状パターンを部分的に含む不完全画素(第8列目の画素)については、線状パターンの含有率「4/10」を最大画素値p=15に乗じることにより得られる積6を画素値として与えている。

0084

この図8(b) に示す描画データを電子線描画装置に与えれば、画素値p=0をもつ画素に対応する照射基準点位置には電子ビームの照射は1回も行われず、画素値p=6,p=15をもつ画素に対応する照射基準点位置には、電子ビームの照射が、それぞれ6回,15回行われることになる。そして、これらの各露光処理によって形成される露光強度分布の小山を足し合わせることにより得られる大山MMについて、所定の閾値Ethを基準にした区分けを行うことにより、図8(a) に示すような露光領域a(総露光強度が閾値Eth以上となる領域)と非露光領域b(総露光強度が閾値Eth未満となる領域)とが形成され、実際に現像を行えば、線幅Da=27nmをもった物理的な線状パターンが形成されることになる。

0085

<<< §3. 本発明における露光強度分布の推定原理>>>
既に述べたとおり、電子線描画装置を利用したパターニングでは、近接効果により、実際に形成されるべきパターンに寸法変動が生じる。そのため、実用上は、特定の描画データを用いて被成形層に電子線描画を行った場合に、実際に得られるであろう露光強度分布をコンピュータシミュレーションによって推定し、その結果に基づいて元の描画データを補正する必要がある。

0086

前掲の特許文献4には、このような露光強度分布の推定方法の一例として、シングルビーム方式の電子線描画装置に適した方法が開示されている。そこで、ここでは、シングルビーム方式とマルチビーム方式とを対比しながら、本発明に係る露光強度分布の推定方法の基本原理を説明する。

0087

図9は、同じパターンを、シングルビーム方式で描画する手順とマルチビーム方式で描画する手順とを比較する図であり、図9(a) はシングルビーム方式で描画する手順を示し、図9(b) はマルチビーム方式で描画する手順を示している。いずれも露光対象面上に「L字状」のパターンを描画する手順を示しているが、両者は大きく相違する。

0088

まず、図9(a) に示すシングルビーム方式で描画する手順では、合計2回の露光作業を行うだけで済む。シングルビーム方式は、VSB方式(Variable Shape Beam)とも呼ばれ、成形した1本の電子ビームを任意の強度で照射して露光を行う方式を採用するものであり、1回の露光作業で、所望の形状(通常は、任意の矩形形状)の領域を露光することができる。図9(a) に示す例は、正方形に成形した1本の電子ビームを用いて矩形領域A1に対する露光作業を行い、続いて、長方形に成形した1本の電子ビームを用いて矩形領域A2に対する露光作業を行った例である。

0089

この例の場合、図にx印で示すような評価点V1,V2を定義すると、矩形領域A2に含まれる評価点V1は、2回目の露光作業時に電子ビームの直接照射を受けた点ということになり、評価点V2は、電子ビームの直接照射を全く受けなかった点ということになる。当然、評価点V1の露光強度の方が評価点V2の露光強度よりも高くなる。しかしながら、近接効果の影響により、評価点V1には、矩形領域A1を対象とした第1回目の露光作業時にも若干のエネルギー蓄積することになる。同様に、評価点V2には、合計2回の露光作業時に、若干のエネルギーが蓄積することになる。

0090

したがって、評価点V1の総露光強度は、第1回目の露光作業時における近接効果で蓄積されたエネルギーと第2回目の露光作業時における直接照射で蓄積されたエネルギーとの和になる。同様に、評価点V2の総露光強度は、合計2回の露光作業時における近接効果で蓄積されたエネルギーの和になる。このような近接効果が生じるため、露光対象面上に実際に得られる露光強度分布は、図9(a) に示すような単純な「L字状」のパターンにはならず、境界部分が外側に広がったものになる。

0091

このため、実際に2回の露光作業を行うときには、近接効果を考慮して、電子ビームの形状や照射強度を補正する必要がある。たとえば、近接効果がなければ、矩形領域A1,A2ともに照射強度を255に設定して露光作業を行えばよいところを、実際には、矩形領域A1を対象とする第1回目の露光作業時には照射強度を255とし、矩形領域A2を対象とする第2回目の露光作業時には照射強度を230とする、といった補正処理が行われることになる。

0092

一方、図9(b) は、図9(a) に示す「L字状」のパターンを、マルチビーム方式の電子線描画装置を用いて露光する際に、当該電子線描画装置に与える描画データを示している。この描画データは、図7(b) や図8(b) に示す描画データと同様に、二次元画素配列によって構成されている。この描画データの各画素は、マルチビーム電子線描画装置によって照射される個々の電子ビームに対応し、各画素値は当該電子ビームの照射強度を示している。

0093

図9(a) に破線で示す輪郭線は、図9(b) に示す二次元画素配列の輪郭線に対応する。§2で述べた描画データの役割を考慮すれば、図9(b) に示す描画データを用いることにより、図9(a) に示す「L字状」のパターンと同様のパターンが形成できることが容易に理解できよう。§2で述べたとおり、画素値p=15をもつ画素に対応する照射位置には電子ビームの照射が15回行われ、画素値p=7をもつ画素に対応する照射位置には電子ビームの照射が7回行われ、画素値p=4をもつ画素に対応する照射位置には電子ビームの照射が4回行われることになり、各照射位置には、照射回数に応じたエネルギーが蓄積される。

0094

もちろん、1本の電子ビームは、1つの画素に対応する領域にのみ照射されるわけではなく、図5に示すように、隣接する画素にも重畳して照射されることになるので、露光対象面上に定義した1つの評価点には、多数の電子ビームからのエネルギーが蓄積されることになる。その上、評価点からかなり離れた位置に照射された電子ビームからも、近接効果によるエネルギー供給がなされることになるので、露光対象面上に定義された各評価点について、最終的な蓄積エネルギー量(総露光強度)を求めるプロセスはかなり複雑にならざるを得ない。

0095

ここでは、説明の便宜上、前掲の特許文献4に開示されている露光強度分布の推定方法の基本概念を簡単に述べておく。この推定方法は、シングルビーム方式の電子線描画装置に適した方法であり、露光対象面に照射された電子が、ガウスの誤差関数で示される強度分布で周囲に広がるものと仮定して、畳み込み演算を行うことにより、レジスト層全体についての露光強度分布が算出される。

0096

図10は、シングルビーム方式で描画を行う際の任意の評価点V(x,y)における総露光強度の演算原理を示す平面図である。ここでは、図9(a) に示す矩形領域A1に対する第1回目の露光作業が行われた際に、任意の評価点V(x,y)に蓄積されるエネルギー量を考えてみる。いま、図示のとおり、露光対象面上にxy二次元直交座標系を定義し、矩形領域A1が、当該座標系上において正則な位置に配置されているものとしよう。具体的には、矩形領域A1の左辺座標値x=l(leftの意)の位置に配置され、右辺は座標値x=r(rightの意)の位置に配置され、上辺は座標値y=t(topの意)の位置に配置され、下辺は座標値y=b(bottomの意)の位置に配置されているものとする。

0097

第1回目の露光作業では、矩形領域A1に対して、矩形状に成形された1本の電子ビームが照射され、矩形領域A1内の各部に電子が照射される。ただ、図示の評価点V(x,y)のように、矩形領域A1の外側の位置にも、前方散乱や後方散乱といった近接効果によって電子が到達することになるので、その影響を受けてエネルギーの蓄積が生じることになる。そこで、ここでは、電子ビームの照射対象となる矩形領域A1内の座標(x′,y′)の位置に参照点T(x′,y′)を定義し、第1回目の露光作業において、この参照点T(x′,y′)に照射された電子により、評価点V(x,y)の蓄積エネルギー量にどの程度の影響が及ぶかを考えてみる。

0098

この場合、参照点T(x′,y′)に照射された電子が周囲へ及ぼす影響の度合いは、参照点T(x′,y′)からの距離に依存した関数になり、評価点V(x,y)が参照点T(x′,y′)に近いほど、参照点T(x′,y′)に照射された電子から受ける影響が大きくなる。したがって、図10に示す例の場合、評価点V(x,y)が参照点T(x′,y′)から受ける影響の度合いは、両点間の距離Rの関数になる。もちろん、評価点V(x,y)の蓄積エネルギー値は、図示の参照点T(x′,y′)だけでなく、矩形領域A1内のすべての点に照射された電子からの影響を受けることになる。また、実際には、複数N個の領域に対して、順番に露光作業が繰り返されることになる(図9に示す例の場合は、N=2として、矩形領域A1,A2の2つの領域)。

0099

したがって、図10に示す任意の評価点V(x,y)における最終的な蓄積エネルギー量(総露光強度)であるv(x,y)は、図11の式(1−1)によって求めることができる(本願では、評価点を大文字Vで示し、その蓄積エネルギー量を小文字vで示す。)
。ここで、関数psf(R)は、一般に点拡がり関数(point spread function)と呼ばれる関数であり、ある参照点Tが周囲へ及ぼす影響の度合いを示す関数である。通常、参照点Tからの距離Rが大きくなるほど、影響の度合いは低減する傾向を示す。

0100

式(1−1)の右辺における二重積分の項は、図10に示す参照点T(x′,y′)についての点拡がり関数psf(R)を、x座標値l〜rまで(矩形領域A1の左端から右端まで)、かつ、y座標値b〜tまで(矩形領域A1の下端から上端まで)積分するための項であり、Diは、第i番目の矩形領域Aiに対する露光作業における電子ビームの照射強度(ドーズ量)である。また、σは、電子線描画装置の電子加速電圧やレジストの材質などによって定まる前方散乱パラメータである。

0101

式(1−1)の右辺先頭サメションΣは、複数N個の領域に対して行われる露光作業による結果を加算するためのものである。図9(a) に示す例の場合、N=2に設定し、第1回目の露光作業(i=1として矩形領域A1に対して行われる露光作業)によって蓄積されるエネルギー量と、第2回目の露光作業(i=2として矩形領域A2に対して行われる露光作業)によって蓄積されるエネルギー量との和が、評価点V(x,y)の総露光強度v(x,y)ということになる。

0102

図10に示すとおり、R=√((x′−x)2+(y′−y)2)であるから、図11の式(1−1)は、式(1−2)のように書き直すことができる。ここで、x′−x=X,y′−y=Yとおけば、点拡がり関数psf(R)は、X,Yの関数としてpsf(X,Y)と表現できるので、式(1−2)は式(1−3)のように表すことができる。点拡がり関数psf(X,Y)は、特定の参照点Tから、x軸方向に距離Xだけ離れ、y軸方向に距離Yだけ離れた位置にある評価点Vにおける影響の度合いを示す関数である。前掲の特許文献4には、この点拡がり関数psf(X,Y)として、二次元のガウスの誤差関数を用いた例が示されている。

0103

そこで、ここではまず、図11の各式で示すシングルビーム方式を前提とした露光強度分布の演算方法を、マルチビーム方式に適用することを考えてみる。図12は、マルチビーム方式で描画を行う際の任意の評価点V(x,y)における総露光強度の演算原理を示す平面図である。図10に示すシングルビーム方式の場合と比較すると、矩形領域A1を画素P(i,j)に置き換えた点が異なっている。

0104

図10に示すシングルビーム方式における演算では、第i番目の矩形領域Aiの範囲内で参照点T(x′,y′)を移動させて畳み込みを行う演算を、i=1〜Nについて行うことにより、評価点V(x,y)における総露光強度v(x,y)を算出する処理が、図11の式に基づいて行われる。したがって、図12に示すマルチビーム方式における演算では、第i行第j列目の画素P(i,j)の範囲内で参照点T(x′,y′)を移動させて畳み込みを行う演算を、描画データを構成する全画素について行うことにより、評価点V(x,y)における総露光強度v(x,y)を算出する処理を行えばよい。

0105

図13は、図12に示す演算原理に用いる演算式の一例を示す図である。図12に示す任意の評価点V(x,y)における最終的な蓄積エネルギー量(総露光強度)であるv(x,y)は、図13の式(2−1)によって求めることができる。この式(2−1)は、図11の式(1−1)に対応するものであり、式(1−1)のサメーションΣを積分に置き換えたものである。前述したとおり、最近では、25万本以上の電子ビームを照射可能なマルチビーム電子線描画装置が利用されており、そのような電子線描画装置に与える描画データは、25万個以上の画素をもった画素配列になる。したがって、図11の式(1−1)では、Nが25万以上という膨大な値になる。

0106

そこで、図13の式(2−1)では、サメーションΣを積分に置き換え、描画データを構成する全画素について積分を行う形式で、総露光強度v(x,y)を算出している。ここで、関数psf(R)は、前述したとおり点拡がり関数であり、ある参照点Tが周囲へ及ぼす影響の度合いを示している。一方、D(x′,y′)は、座標(x′,y′)で示される参照点T(x′,y′)の位置における電子ビームの照射強度(ドーズ量)であり、画素P(i,j)の画素値pに基づいて決定される値になる。なお、積分範囲は、x軸方向およびy軸方向ともに、マイナス無限大〜プラス無限大の範囲をとっているが、これは露光対象面全体を演算対象としたためである。

0107

結局、図13の式(2−1)は、電子線照射領域内に定義された多数の参照点T(x′,y′)について、電子線照射強度を示す関数D(x′,y′)と当該参照点T(x′,y′)が周囲へ及ぼす影響の度合いを示す点拡がり関数psf(R)との畳み込み積分を行うことにより、個々の評価点V(x,y)における総露光強度v(x,y)を演算する式ということができる。

0108

ここでも、図12に示すとおり、R=√((x′−x)2+(y′−y)2)であるから、図13の式(2−1)は、式(2−2)のように書き直すことができる。ここで、x′−x=X,y′−y=Yとおけば、点拡がり関数psf(R)は、X,Yの関数としてpsf(X,Y)と表現できるので、式(2−2)は式(2−3)のように表すことができる。ここでも、点拡がり関数psf(X,Y)は、特定の参照点Tから、x軸方向に距離Xだけ離れ、y軸方向に距離Yだけ離れた位置にある評価点Vにおける影響の度合いを示す関数である。

0109

<<< §4. 本発明に係るシミュレーション方法の特徴 >>>
本発明は、マルチビーム電子線描画装置を用いて被成形層に所定のパターンを露光描画する際の露光強度分布を求める新たなシミュレーション方法を提案するものである。ここでは、この新たなシミュレーション方法の特徴を説明する。

0110

まず、第1の特徴は、図13に示す式(2−3)に基づいて、座標(x,y)に位置する任意の評価点V(x,y)における総露光強度v(x,y)を算出する点にある。そして、第2の特徴は、この式(2−3)における点拡がり関数psf(X,Y)として、電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータを含む関数を用いる点にある。

0111

図14は、マルチビーム方式で描画を行う際に、本発明に係るシミュレーション方法で露光強度分布を求める演算に用いる演算式の一例を示す図である。以下、図示されている式(3),(4),(5)について説明する。

0112

まず、式(3)は、図13に示す式(2−3)と全く同じ式であり、本発明に係るシミュレーション方法に用いられる基本式になる。上述したとおり、左辺のv(x,y)は、座標(x,y)に位置する任意の評価点V(x,y)における総露光強度であり、すべての座標位置について値v(x,y)を算出すれば、露光対象面上の露光強度分布が得られる。この式(3)は、上述したとおり、電子線照射領域内に定義された参照点T(x′,y′)についての電子線照射強度を示す関数D(x′,y′)と、当該参照点T(x′,y′)が周囲へ及ぼす影響の度合いを示す点拡がり関数psf(X,Y)と、の畳み込み積分を示す式である。前述したとおり、X=x′−x、Y=y′−yである。

0113

結局、本発明に係るシミュレーション方法では、電子線の照射面として二次元xy直交座標系のxy平面を定義した場合に、座標(x,y)に位置する評価点V(x,y)に対して、座標(x′,y′)に位置する参照点T(x′,y′)が及ぼす影響を、参照点T(x′,y′)についての電子線照射強度を示す関数D(x′,y′)と、X=x′−x、Y=y′−yとして定義された点拡がり関数psf(X,Y)と、についてのx軸方向およびy軸方向に関する畳み込み積分によって算出する処理が行われることになる。しかも、点拡がり関数psf(X,Y)として、変数X,Yに加えて、電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズKに基づいて定まる開口サイズパラメータBを含む関数が用いられる。

0114

式(4)は、式(3)に用いる点拡がり関数psf(X,Y)の具体的な一例を示す式である。この式(4)に含まれている関数erfは、式(5)に示すガウスの誤差関数erf(ξ)であるが、変数ξの部分が、パラメータB,σを用いた式に置き換えられている。ここで、パラメータBは、上述した本発明の第2の特徴にかかわる開口サイズパラメータであり、電子線描画装置のアパーチャー41の開口サイズKに基づいて定まる値になる。一方、パラメータσは、前方散乱パラメータであり、電子線描画装置の電子加速電圧やレジストの材質などによって定まる値になる。

0115

図15は、図14の式(4)に示す点拡がり関数psf(X,Y)の一例を示す一次元グラフであり、横軸はX軸、縦軸はエネルギー密度Eを示す。このグラフは、X=0の位置を中心として照射された電子ビームが周囲へ及ぼす影響の度合いを示している。図2も同種のグラフであるが、図2のグラフが純然たるガウスの誤差関数のグラフであるのに対して、図15のグラフは、開口サイズパラメータBを含む点拡がり関数のグラフであるため、中央部分に幅wをもった平坦部Hが形成された台形状をしている点が特徴になる。

0116

式(4)の開口サイズパラメータBは、図15に示すグラフの平坦部Hの幅wを左右するパラメータになり、パラメータBが大きいほど、幅wも大きくなる。一方、式(4)の前方散乱パラメータσは、図15に示すグラフの左右の傾斜部U1,U2の傾きを左右するパラメータになり、パラメータσが大きいほど、傾斜部U1,U2の傾きは緩やかになる。なお、図15は、横軸にX軸をとった一次元の分布グラフを示すものであるが、実際には、Y軸方向に関しても同じ形状の分布グラフが得られる。したがって、式(4)に示す点拡がり関数psf(X,Y)のグラフは、実際には、XY平面上にそびえる三次元の台地状のグラフになり、頂上部分には、縦横の幅がwの平坦部Hが形成され、その周囲に傾斜部が形成されていることになる。

0117

要するに、本発明に係るシミュレーション方法では、点拡がり関数psf(X,Y)として、開口サイズパラメータBと前方散乱パラメータσとを含む関数が用いられることになる。ここで、開口サイズパラメータBは、グラフの平坦部Hの幅を左右するパラメータになり、前方散乱パラメータσは、グラフの傾斜部U1,U2の傾きを左右するパラメータになる。

0118

前掲の特許文献4に開示されたシミュレーション方法は、シングルビーム方式の電子線描画装置を前提としたものであり、図11の式(1−3)に示す点拡がり関数psf(X,Y)として、図2のグラフに示すような一般的なガウスの誤差関数を用いるものである。しかしながら、本願発明者が行った種々の実験によると、シングルビーム方式の電子線描画装置を前提とした場合は、図2のグラフに示すような点拡がり関数psfを用いたシミュレーションが適切であるが、マルチビーム方式の電子線描画装置を前提とした場合は、図15のグラフに示すような平坦部Hを有する点拡がり関数psfを用いた方が好ましいことが判明した。

0119

しかも、平坦部Hの幅wを、用いる電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズKに応じた値に設定するのが好ましい。別言すれば、アパーチャーの開口部41が大きければ、それだけ平坦部Hの幅wが大きくなるような点拡がり関数psfを用いるのが好ましい。これは、図1に示すようなマルチビーム電子線描画装置の場合、電子銃10で生成された電子ビーム20の断面のエネルギー密度分布は、図2のグラフに示すような一般的なガウスの誤差関数に応じた分布になるが、アパーチャーの開口部41を通った個々の電子ビームを被成形層61に照射した場合、被成形層61内の近接効果を考慮した露光強度分布は、図15のグラフに示すような平坦部Hを有する分布になるためと考えられる。

0120

ここで、アパーチャーの開口サイズKは、開口部41を通った個々の電子ビームの断面サイズ(円形断面の場合は直径、正方形断面の場合は一辺の長さ)を左右する値になるので、結局、式(3)に用いる点拡がり関数psf(X,Y)としては、開口部41を通った個々の電子ビームの断面サイズに応じた幅wをもった平坦部Hを有するグラフで示される関数を用いるのが好ましいことになる。

0121

したがって、本発明を実施する際には、電子線描画装置のアパーチャーの開口部41が円形をしている場合は、当該円の直径をアパーチャーの開口サイズKとして用い、開口部41が正方形をしている場合は、当該正方形の一辺の長さをアパーチャーの開口サイズとして用いればよい。そして、この開口サイズKに、電子線描画装置のプロジェクションレンズ50による縮小倍率mを乗じた値を、アパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータBとして用いるようにすればよい。

0122

具体的には、図1に示す電子線描画装置の場合は、アパーチャーの開口サイズKにプロジェクションレンズ50による縮小倍率mを乗じた値m・Kに基づいて、開口サイズパラメータBを、B=m・Kなる式で定義すればよい。たとえば、アパーチャーの開口部41が直径4μmの円形をしており、プロジェクションレンズ50による縮小倍率が1/200であった場合、B=20nmなる値に定めることができる。この場合、開口サイズパラメータBは、露光対象面上に形成される1本の電子ビームのビーム径もしくはスポット径φに対応した値になる。したがって、たとえば、式(4)における「erf((B/2−X)/σ)」なる項は、電子ビームの半径B/2と距離Xとの差を前方散乱パラメータσで除した値を変数とするガウスの誤差関数に相当する。

0123

このように、式(4)には、開口サイズパラメータBの他に、前方散乱パラメータσも含まれているので、演算を行う際には、パラメータσの値も決定する必要がある。この前方散乱パラメータσは、前述したとおり、電子線描画装置の電子加速電圧やレジストの材質などによって定まる値であるので、実用上は、特定の材質のレジストに対して特定の加速電圧で電子を飛ばしたときの露光分布を実測し、この実測結果に基づく逆算によって、当該特定の材質のレジストと当該特定の加速電圧との組み合わせについての前方散乱パラメータσの値を決定する作業を行っておけばよい。

0124

図14の式(4)は、アパーチャーの開口サイズKに基づいて定まる開口サイズパラメータBを含む点拡がり関数psf(X,Y)の一例であり、psf(X,Y)=1/4・(erf((B/2−X)/σ)−erf((−B/2−X)/σ))・(erf((B/2−Y)/σ)−erf((−B/2−Y)/σ))なる誤差関数erfを含む関数である。この関数のグラフは、図15に示すように、照射される電子ビームのスポットサイズφに応じた幅wをもった平坦部Hを有する台地状のグラフになる。もっとも、このような特徴をもつ点拡がり関数psf(X,Y)は、図14の式(4)で示される関数に限定されるものではない。

0125

たとえば、図16の式(6)は、図14の式(3)における点拡がり関数psf(X,Y)として用いるのに適した別な関数の例を示す図であり、psf(X,Y)=1/4・(arctan((B/2−X)/σ)−arctan((−B/2−X)/σ))・(arctan((B/2−Y)/σ)−arctan((−B/2−Y)/σ))なる逆三角関数arctanを含む関数である。図14の式(4)では、ガウスの誤差関数erfが用いられていたが、図16の式(6)は、その代わりに逆三角関数arctanを用いたものである。形状が若干異なるものの、本質的には、図15に示すように、開口サイズパラメータBに応じた幅wをもった平坦部Hと、前方散乱パラメータσに応じた傾斜をもった傾斜部U1,U2と、を有するグラフが得られる。

0126

また、図17の式(7)は、図14の式(3)における点拡がり関数psf(X,Y)として用いるのに適した更に別な関数の例を示す図であり、誤差関数erf、所定の定数C、後方散乱パラメータβ、近接効果補正パラメータηを含む、psf(X,Y)=C/(1+η)・(1/4σ2・(erf((B/2−X)/σ)−erf((−B/2−X)/σ))・(erf((B/2−Y)/σ)−erf((−B/2−Y)/σ))+η/β2・exp(−(X2+Y2)/β2))なる関数を示している。

0127

この図17の式(7)では、図14の式(4)と同様にガウスの誤差関数erfが用いられているが、パラメータとして、開口サイズパラメータBおよび前方散乱パラメータσに加えて、更に、後方散乱パラメータβおよび近接効果補正パラメータηが用いられている。後方散乱パラメータβは、図1における被成形層(レジスト層)61の下にある試料基板60の表面付近で散乱されて跳ね返ってきた電子がレジスト層61内で拡散してゆく後方散乱の程度を示すパラメータであり、近接効果補正パラメータηは、電子ビームの前方散乱によるレジストの感光量と後方散乱によるレジストの感光量との比を示すパラメータである。なお、Cは所定の定数である。パラメータβ,ηは、たとえば、前掲の特許文献4などに開示されている公知のパラメータであるため、ここでは詳しい説明は省略する。

0128

やはり図17の式(7)も、形状が若干異なるものの、図15に示すように、開口サイズパラメータBに応じた幅wをもった平坦部Hを有するグラフを示す式になるので、本発明において、点拡がり関数psf(X,Y)として用いるのに適した関数の一例を示す式になる。

0129

<<< §5. 本発明に係るシミュレーション方法の手順 >>>
本発明に係るシミュレーション方法は、実際には、コンピュータを用いた演算処理によって実行される。ここでは、このシミュレーション方法をコンピュータを用いて実行する際の具体的な手順を述べる。

0130

図18は、本発明に係るシミュレーション方法の基本手順を示す流れ図である。図示のとおり、この基本手順は、描画データ入力段階S10、パラメータ設定段階S20、演算用マトリックス作成段階S30、畳み込み演算段階S40の各ステップを有している。各ステップは、いずれも専用のプログラムに基づいて、コンピュータによって実行される。

0131

まず、ステップS10の描画データ入力段階では、描画データを入力する処理が行われる。この描画データは、電子線描画装置が描画するパターンを示すデータであり、たとえば、図9(b) に例示するように、ビームの各照射位置の照射強度を示す画素値を有する画素の配列からなるデータになる。ここで行われるシミュレーションの目的は、このような描画データを電子線描画装置に与えて被成形層に対する露光処理を行ったとした仮定した場合に、得られるであろうと推定される被成形層の露光強度分布を求めることにある。

0132

続く、ステップS20のパラメータ設定段階では、電子線描画装置のアパーチャーの開口サイズに基づいて定まる開口サイズパラメータBの設定が行われる。たとえば、前述した例のように、アパーチャーの開口部41が直径4μmの円形をしており、プロジェクションレンズ50による縮小倍率が1/200であった場合、B=20nmなる値が設定される。この開口サイズパラメータBは、露光対象面上に形成される1本の電子ビームのビーム径もしくはスポット径φに相当するものであり、ステップS40の畳み込み演算段階における演算式で利用されることになる。

0133

アパーチャーの開口部41およびプロジェクションレンズ50による縮小倍率が固定の電子線描画装置のシミュレーションを行う場合は、開口サイズパラメータBの値として固定値を設定しておけばよいが、これらが可変の電子線描画装置のシミュレーションを行う場合は、その都度、開口サイズパラメータBの値を入力して設定する必要がある。

0134

ステップS30の演算用マトリックス作成段階は、ステップS40の畳み込み演算段階の準備段階であり、ここでは照射強度マトリックスと点拡がりマトリックスとを作成する作業が行われる。これらのマトリックスは、コンピュータが図14の式(3)の演算を実行するために用いる行列データであり、照射強度マトリックスは、式(3)のD(x′,y′)に相当し、電子線照射強度の平面分布を示す行列データになる。一方、点拡がりマトリックスは、式(3)のpsf(X,Y)に相当し、所定の点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す行列データになる。以下、説明の便宜上、照射強度マトリックスについては、式(3)の関数D(x′,y′)と同じ「D(x′,y′)」なる符号を用い、点拡がりマトリックスについては、式(3)の関数psf(X,Y)と同じ「psf(X,Y)」なる符号を用いて示すことにする。

0135

図14の式(3)は、関数D(x′,y′)と関数psf(X,Y)との畳み込み積分を示す理論式であり、ステップS40の畳み込み演算段階では、この理論式に基づく演算が行われる。ただ、コンピュータによる演算であるため、実際には、連続的な変数を用いた演算ではなく、離散値を用いた演算を行わざるを得ない。照射強度マトリックスD(x′,y′)は、変数x′,y′として所定の離散値を採用した場合の関数D(x′,y′)の値を示す演算用マトリックスであり、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)は、変数X,Yとして所定の離散値を採用した場合の関数psf(X,Y)の値を示す演算用マトリックスである。実際の演算は、これら2組の演算用マトリックスを用いて実行される。

0136

変数x′,y′や変数X,Yの離散値としてのサンプル間隔は、演算によって求める露光強度分布の解像度に応じて定めればよい。図12を用いて説明したように、本発明では、露光平面上の所定の評価点V(x,y)の蓄積エネルギー量を、多数の参照点T(x′,y′)からの影響の度合いの集積値として算出する。そして、多数の評価点V(x,y)について求めた蓄積エネルギー量の空間的な分布が、最終的に求める露光強度分布ということになる。したがって、たとえば、評価点V(x,y)を縦横1nmの間隔で定義した解像度をもつ露光強度分布を求めたい場合は、変数x′,y′や変数X,Yの離散値として、縦横1nmの間隔でサンプリングした値を設定する必要がある。この場合、照射強度マトリックスD(x′,y′)および点拡がりマトリックスpsf(X,Y)としては、セルの縦横のピッチを1nmに想定したマトリックスを用意する必要がある。

0137

本発明に係るシミュレーション方法で求めた露光強度分布は、実際の露光処理に用いる描画データに対する補正に利用される。たとえば、図8(b) に示す描画データは、図8(a) に示すように、Da=27nmの幅をもった線状パターンを形成するために用意された描画データである。したがって、シミュレーションの結果、Da=27nmの幅をもった線状パターンが形成される露光強度分布(現像した場合に、Da=27nmの幅をもった部分が残存すると想定される分布)が得られた場合は、特に補正は必要ない。ところが、形成される線状パターンの幅が、たとえば、Da=28nmになると想定される露光強度分布が得られた場合には、第8列目の画素の画素値「6」を若干減少させる必要がある。

0138

図8に示す実施例の場合、描画データを構成する画素のピッチdはd=5nmであるが、線幅Daの予想値は、この画素ピッチdに比べて小さな精度(たとえば、1nmの単位)で求める必要がある。すなわち、シミュレーションによって求める露光強度分布の解像度は、画素のピッチdよりも小さく設定する必要があり、ステップS30で作成する演算用マトリックスを構成するセルのピッチgは、画素のピッチdよりも小さく設定しなければならない。そこで、以下、演算用セルのピッチgを、画素のピッチdの整数分の1に設定する実施例を述べることにする。

0139

ここで述べる実施例の場合、ステップS30の演算用マトリックス作成段階では、まず、描画データの各画素を複数に分割することにより演算用セルを定義し、この演算用セルの集合体からなる2組の空の演算用マトリックスを用意する。そして、第1の演算用マトリックスの各セルには、当該セルを含む画素の画素値に基づく所定のセル値を与えることにより、電子線照射強度の平面分布を示す照射強度マトリックスD(x′,y′)を作成する。一方、第2の演算用マトリックスの各セルには、ステップS20で設定した開口サイズパラメータBを含む所定の点拡がり関数に応じたセル値を与えることにより、当該点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスpsf(X,Y)を作成する。

0140

ここでは、図19を参照しながら、照射強度マトリックスD(x′,y′)を作成する具体的な手順を説明しよう。いま、図19(a) に示すように、5行5列の画素配列からなる単純な描画データに基づくシミュレーションを行う例を考えてみる。この描画データを構成する各画素には、それぞれ所定の画素値p(図示の例の場合は、12もしくは15)が与えられており、各画素値pは、各画素の位置に照射される電子ビームの照射強度を示している。ここでは、この描画データを構成する画素のピッチdが、d=5nmであるものとし、各演算用マトリックスを構成する演算用セルのピッチgをg=1nmに設定したものとしよう。

0141

このように、演算用セルのピッチgをg=1nmに設定すると、図19(a) の右下に示すように、露光対象面上に定義される各評価点V(x,y)の縦方向および横方向のピッチも1nmに設定することができる。すなわち、横方向(x軸方向)に隣接して配置された評価点V11,V12の間隔は1nmになり、縦方向(y軸方向)に隣接して配置された評価点V11,V21の間隔も1nmになる。したがって、図19に示す実施例の場合、縦横1nmの間隔で格子状に並んだ評価点について、それぞれ総露光強度を求めることができ、1nmの解像度をもった露光強度分布を得ることができる。

0142

図19(b) は、図19(a) に示す描画データを構成する画素配列の第i行第j列目の画素P(i,j)を縦横にそれぞれ5分割して、合計25個の演算用セルC(m,n)を生成した状態を示している。5×5nmのサイズの画素を25分割して25個の演算用セルを定義しているため、各セルのサイズは1×1nmになる。こうして、25個の空の演算用セルを定義した後、個々のセルに、当該セルを含む画素の画素値に基づく所定のセル値を与える。図19(b) の左側に示す例の場合、25個の演算用セルのすべてに、当該セルを含む画素P(i,j)の画素値「12」をそのままセル値として与えており、25個の全演算用セルのセル値は「12」になっている。

0143

実際には、図19(a) に示す25個の画素Pのすべてがそれぞれ25分割されるため、この描画データに対応する演算用マトリックスは、625個の演算用セルによって構成されることになり、各演算用セルには、当該セルを含む画素の画素値(図示の例の場合、12もしくは15)が与えられることになる。すなわち、図示の例の場合、照射強度マトリックスD(x′,y′)は、25行25列の演算用セルの配列によって構成され、第m行n列の演算用セルC(m,n)には、当該セルを含む画素の画素値に基づく所定のセル値が与えられていることになる。結局、この照射強度マトリックスD(x′,y′)は、露光対象面上における電子線照射強度の平面分布を、演算用セルのピッチg(この例ではg=1nm)の解像度で示す行列データということになる。

0144

もちろん、原理的には、図19(b) の左側に示す例のように、すべてのセルに当該セルを含む画素の画素値をそのままセル値として与えて照射強度マトリックスD(x′,y′)を作成してもよいが、実用上は、ステップS40における演算負担を軽減するための工夫を施すようにするのが好ましい。図19(b) の右側に示す例は、このような工夫を施した例である。

0145

具体的には、図19(b) の右側に示す例の場合、図19(b) の左側に示すマトリックスの25個のセルのうち、図に太線枠で示す中央の1セル以外の24個のセルについて、セル値を0にする修正が行われている。ここでは、中央のセルを代表セルと呼び、それ以外の24個のセルを非代表セルと呼ぶことにする。代表セルについては、当該セルを含む画素P(i,j)の画素値「12」がそのままセル値として与えられ、非代表セルについては、セル値「0」が与えられていることになる。このような工夫により、ステップS40における演算負担が軽減される理由については後述する。

0146

一方、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)は、露光対象面上における点拡がり関数psf(X,Y)によって示される影響の度合いの平面分布を、演算用セルのピッチgの解像度で示す行列データであり、ここで述べる実施例の場合、g=1nmとして、縦横1nmのピッチで配列された演算用セルの集合体によって構成される。各演算用セルのセル値は、当該セルの位置(縦方向の位置Xと横方向の位置Y)に応じて、図14の式(4)に基づいて決定される(もちろん、図16の式(6)や図17の式(7)を用いてもよい)。セル値の分布は、図15のグラフに応じたものになり、一般的に、マトリックスの中心に近いセルほど、大きなセル値が与えられる。

0147

こうして、ステップS30の演算用マトリックス作成段階において、照射強度マトリックスD(x′,y′)と点拡がりマトリックスpsf(X,Y)とが作成されると、ステップS40の畳み込み演算段階において、照射強度マトリックスD(x′,y′)と点拡がりマトリックスpsf(X,Y)とを用いた畳み込み積分を行い、座標(x,y)に位置する個々の評価点V(x,y)における総露光強度(蓄積エネルギー量)v(x,y)が求められる。

0148

上述したように、ここで述べる実施例の場合、照射強度マトリックスD(x′,y′)および点拡がりマトリックスpsf(X,Y)として、各セルのピッチg=1nmに設定したマトリックスを用意しているので、縦横のピッチ1nmの解像度で個々の評価点V(x,y)の総露光強度v(x,y)の分布を示す露光強度分布が得られることになる。実際には、こうして得られた露光強度分布に基づいて、被成形層61(レジスト層)を現像した場合に残存するであろうパターンの寸法を推定し、必要に応じて、元の描画データの各画素値に対する補正を行うことになる。ここでは、このような補正方法についての説明は省略する。

0149

<<< §6.畳み込み演算の具体的な処理 >>>
ここでは、図18の流れ図におけるステップS40の畳み込み演算段階の具体的な処理を説明する。上述したとおり、この処理は、照射強度マトリックスD(x′,y′)と点拡がりマトリックスpsf(X,Y)という2組の演算用マトリックスを用いた畳み込み積分の処理であり、理論的には、図14の式(3)に示す演算式に基づく畳み込み演算を行うことになる。なお、演算用マトリックスは、離散的に定義された演算用セル(上述の例の場合、縦横1nmのピッチで配置されたセル)の集合体であるから、厳密に言えば、ステップS40で行われる演算は「畳み込み積分」ではなく、「畳み込み和」を求める演算ということになるが、実用上は、膨大な数の演算用セルを用いた演算になるため、本願では便宜上、「畳み込み積分」という文言を用いることにする。

0150

図20は、図18のステップS30により作成された照射強度マトリックスD(x′,y′)と点拡がりマトリックスpsf(X,Y)との対応関係を示す図である。図20の上段には、図19(a) に示す描画データに基づいて作成された照射強度マトリックスD(x′,y′)を構成する演算用セルの配置が示されている。図に示す太線枠で囲まれた領域は、描画データを構成する1つの画素P(i,j)を示し、細線枠で囲まれた領域は、1つの演算用セルC(m,n)を示している。

0151

前述したとおり、画素P(i,j)は一辺が5nmの正方形からなり、演算用セルC(m,n)は一辺が1nmの正方形からなる。したがって、1つの画素P(i,j)には、25個の演算用セルC(m,n)が含まれており、この照射強度マトリックスD(x′,y′)には、合計625個の演算用セルが含まれている。そして、個々の演算用セルには、それぞれ当該セルを含む画素の画素値に基づく所定のセル値が与えられる(図20では、各演算用セルのセル値の表示は省略)。

0152

ただ、ここで述べる実施例の場合、演算負担を軽減するための工夫として、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、特定の代表セルについてのみ当該画素の画素値に基づいて定められる所定の値をセル値として与え、それ以外の非代表セルについてはセル値0を与えるようにしている。

0153

図20に示す例は、各画素の中心に位置する1つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとした例であり、代表セルのみを黒塗りにして示してある。したがって、図に黒塗りで示されている代表セルには、図19(a) の対応位置にある画素の画素値(12もしくは15)と同じ値がセル値として与えられ、図に白塗りで示されている非代表セルには、いずれもセル値0が与えられることになる。結局、ステップS30で作成された照射強度マトリックスD(x′,y′)は、図20の上段に示されている黒塗りのセルに12もしくは15なるセル値を与え、白塗りのセルに0なるセル値を与えたセル配列ということになる。

0154

一方、図20の下段に示すグラフpsfは、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)の特定の行(たとえば、縦方向の中央に位置する行)に配置された各演算用セルのセル値を示している。図15に示すとおり、本発明で用いる点拡がり関数psf(X,Y)は、開口サイズパラメータBに応じた幅wをもった平坦部Hと、前方散乱パラメータσに応じた傾斜をもった傾斜部U1,U2と、を有する台形状の関数になる。したがって、図20の下段に示すグラフpsfも、平坦部Hと傾斜部U1,U2とを有するグラフになっている。結局、ステップS30で作成された点拡がりマトリックスpsf(X,Y)は、図20の下段に示されているグラフpsfに応じたセル値分布をX軸方向およびY軸方向に有するセル配列ということになる。

0155

図14の式(3)に示す畳み込み演算は、図20の上段に示す照射強度マトリックスD(x′,y′)に対して、図20の下段のグラフpsfに応じたセル値分布を有する点拡がりマトリックスpsf(X,Y)を、1nmピッチで二次元的に移動させながら、両マトリックスの対応位置にあるセルのセル値の積を累積加算してゆく処理によって行うことができる。図20の下段には、第i行第j列目の画素P(i,j)の中心に配置された照射強度マトリックスの演算用セルC(m,n)の中心位置に、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)の中心位置を重ね合わせた場合のグラフpsfが描かれている。

0156

図21は、図19(a) に示す描画データに基づいて畳み込み演算を行うプロセスの概念を示す図である。以下、この図21を参照しながら、畳み込み演算の基本プロセスを説明する。まず、図21(a) は、図19(a) に示す描画データの第3行目の5つの画素の画素値Dを示すグラフであり、横軸にはx軸、縦軸には画素値Dがとられている。図示のとおり、両端の画素P(3,1),P(3,5)には画素値D=12が与えられ、これらに挟まれた3つの画素P(3,2),P(3,3),P(3,4)には画素値D=15が与えられている。ここで、各画素値Dは、当該画素位置に照射される電子ビームの照射強度を示している。

0157

図21(b) は、1つの画素を25分割して得られる各演算用セルのセル値を示すグラフであり、やはり横軸にはx軸、縦軸にはセル値Dがとられている。横軸上には25個の演算用セルが並んでいるが、これらの各セルは、図19(a) に示す描画データの第3行目の5つの画素を切断したときに得られるセルであり、全25行25列のセル配列のうち、第13行目の第1〜25列目のセルC(13,1)〜C(13,25)に相当する。この例は、図19(b) の左側に示す例に相当するものであり、すべてのセルに対して、当該セルを含む画素(図21(a) の対応位置にある画素)の画素値Dと同じセル値(すなわち、12もしくは15)が与えられている。

0158

これに対して、図21(c) は、図19(b) の右側に示す例に相当するものであり、第13行目に並んだ25個のセルのうち、各画素の中心に位置する代表セルについてのみ、当該セルを含む画素の画素値Dと同じセル値を与え、それ以外の非代表セルについては、セル値0を与えたものである。具体的には、第13行目の代表セルC(13,3),C(13,8),C(13,13),C(13,18),C(13,23)に対しては、セル値12もしくは15が与えられ、その他の非代表セルについては、セル値0が与えられている。

0159

一方、図21(d) は、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)に相当する点拡がり関数pfsのグラフfの1つの配置を示している。畳み込み演算では、このグラフfを演算用セルのピッチg(この例ではg=1nm)の単位で二次元的に移動させながら、対応位置にある2組のセル(照射強度マトリックスのセルと点拡がりマトリックスのセル)のセル値の積を累積加算してゆくことになる。図21(d) に示すグラフf(13,13)は、グラフfを、その中心が図21(c) に示す代表セルC(13,13)の中心位置に一致するように配置した状態を示している。このような配置では、図21(c) に示す5つの代表セルのセル値(12もしくは15)と、図21(d) に示すグラフf(13,13)の各代表セルと同じ座標位置における関数値fとの積が求められることになる。

0160

図21(e) は、図21(d) に示すグラフf(13,13)を左右に移動させながら、各位置でのセル値の積を累積加算してゆくことにより得られる総露光強度の分布グラフFを示している。ここで、破線で示すグラフf(13,3)は、グラフfを代表セルC(13,3)の中心位置に一致するように配置した状態を示し、一点鎖線で示すグラフf(13,8)は、グラフfを代表セルC(13,8)の中心位置に一致するように配置した状態を示し、実線で示すグラフf(13,13)は、グラフfを代表セルC(13,13)の中心位置に一致するように配置した状態を示し、一点鎖線で示すグラフf(13,18)は、グラフfを代表セルC(13,18)の中心位置に一致するように配置した状態を示し、破線で示すグラフf(13,23)は、グラフfを代表セルC(13,23)の中心位置に一致するように配置した状態を示している。

0161

図21(e) に示すグラフFは、このような畳み込み演算を行うことによって得られる総露光強度の分布グラフであり、図14の式(3)に示す総露光強度v(x,y)を示すグラフに相当する。なお、図21(b) に示すように、すべてのセルに対して画素値Dと同じセル値を与えて照射強度マトリックスD(x′,y′)を作成した場合は、すべてのセルについて積を求める演算を行う必要があるが、図21(c) に示すように、各画素の中心に位置する代表セルについてのみ画素値Dと同じセル値を与えて照射強度マトリックスD(x′,y′)を作成した場合は、非代表セルについての積は0になるので、実質的に、非代表セルについての演算は省略することができる。

0162

図20および図21に示す実施例は、描画データを構成する各画素の中心に位置する演算用セルを代表セルとした例であるが、代表セルは、必ずしも各画素の中心に位置するセルにする必要はなく、任意のセルを代表セルに設定してもかまわない。図22は、各画素の左下に位置する演算用セルを代表セルとした変形例を示す図である。

0163

図22(a) には、図20の上段の図と同様に、照射強度マトリックスD(x′,y′)を構成する演算用セルの配置が示されている。図に示す太線枠で囲まれた一辺d=5nmのサイズをもった正方形の領域は、描画データを構成する1つの画素P(i,j)を示し、細線枠で囲まれた一辺d=1nmのサイズをもった正方形の領域は、1つの演算用セルC(m,n)を示している。ここで、図に黒塗りで示されているセルは代表セルであり、図に白塗りで示されているセルは非代表セルである。図20の上段に示す実施例では、各画素の中心に黒塗りの代表セルが配置されているが、図22(a) に示す変形例では、各画素の左下に黒塗りの代表セルが配置されている。

0164

図22(b) は、図22(a) に示す1つの画素P(i,j)を25分割することによって演算用セルを定義し、各演算用セルに所定のセル値を与えた状態を示す図である。図に太線枠で示す左下のセルが代表セルになるため、この代表セルにはセル値「12」(画素P(i,j)の画素値)が与えられ、それ以外の非代表セルにはセル値「0」が与えられる。図19(b) の右側に示す実施例と、図22(b) に示す変形例とを対比すれば、後者では、代表セルの位置が、画素P(i,j)の中心位置から左下位置へ所定のオフセット量(この例の場合、2√2nm)だけ変位していることがわかる。

0165

別言すれば、図22に示す変形例は、ステップS30の演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスD(x′,y′)を作成する際に、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心から所定方向に所定のオフセット量だけ変位した位置に存在する演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとした例であり、各代表セルには、当該セルを含む画素の画素値をそのままセル値として与え、各非代表セルには、セル値0を与えた例ということができる。

0166

このように、照射強度マトリックスD(x′,y′)を作成する際に、代表セルの位置を画素の中心から所定方向に所定のオフセット量だけ変位させる変形例を採用する場合には、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)を作成する際にも、当該オフセット量を考慮した修正を行うようにするのが好ましい。これは、個々の電子ビームが、各画素の中心を照射目標として照射されるため、図20の下段のグラフに示すとおり、点拡がり関数psfのグラフは、その中心が各画素の中心に一致するように配置するのが好ましいためである。

0167

したがって、この図22に示す変形例のように、代表セルを、画素の中心から所定方向に所定のオフセット量だけ変位した位置に設定する場合には、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)を作成する際に、上記所定方向とは逆方向に上記オフセット量だけ補正した点拡がり関数psf(X,Y)を定義し、当該点拡がり関数によって示される影響の度合いの平面分布を示す点拡がりマトリックスを作成するようにすればよい。

0168

具体的には、図14の式(4)に示す点拡がり関数psf(X,Y)の代わりに、図22(c) の式(4′)に示す点拡がり関数psf(X,Y)を用いて点拡がりマトリックスを作成すればよい。式(4′)の右辺は、式(4)の右辺における変数Xを変数「X+Δx」に置き換え、変数Yを変数「Y+Δy」に置き換えたものである。ここで、Δxは、x軸方向に関するオフセット量、Δyは、y軸方向に関するオフセット量であり、図22に示す例の場合、Δx=2nm、Δy=2nmということになる。

0169

図23は、図22に示す変形例を採用した場合の畳み込み演算を行うプロセスの概念を示す図である。ここで、図23(a) は図21(a) と全く同じ図であり、描画データを構成する5つの画素の画素値Dを示すグラフである。また、図23(b) は図21(b) と全く同じ図であり、すべての演算用セルに、当該セルを含む画素の画素値をそのままセル値として与えた例を示すグラフである。

0170

これに対して、図23(c) は、図22(a) ,(b) に示すように、各画素の左下のセルを代表セルとして、この代表セルについてのみ、当該セルを含む画素の画素値Dと同じセル値を与え、それ以外の非代表セルについては、セル値0を与えたものである。具体的には、第15行目の代表セルC(15,1),C(15,6),C(15,11),C(15,16),C(15,21)に対しては、セル値12もしくは15が与えられ、その他の非代表セルについては、セル値0が与えられている。図21(c) と図23(c) とを比較すると、後者では、代表セルのセル値を示すバーの位置が、左側に2セル分(x軸方向に関するオフセット量Δx)だけシフトしていることがわかる。

0171

一方、図23(d) は、図21(d) と同様に、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)に相当する点拡がり関数pfsのグラフfの1つの配置を示している。図23(d) に示すグラフf(15,11)は、グラフfを、その中心が図23(c) に示す代表セルC(15,11)に応じた位置に配置した状態を示している。ただ、グラフf(15,11)の中心位置は、代表セルC(15,11)の中心位置には一致せず、x軸方向に関するオフセット量Δxだけ右へシフトした位置になっている。図には現れていないが、y軸方向に関してもオフセット量Δyだけシフトしている。その結果、グラフf(15,11)の中心位置は、非代表セル(13,13)の中心位置に一致することになる。

0172

結局、図23(d) に示すグラフf(15,11)の位置は、図21(d) に示すグラフf(13,13)の位置と一致することになり、グラフf(15,11)は、画素P(3,3)の中心を照射目標として照射された電子ビームが照射点から周囲へ及ぼす影響の度合いを示す点拡がり関数psfのグラフとして適切なグラフになる。図22(c) の式(4′)において、オフセット量Δx,Δyを用いた補正が行われているのは、適切な位置に配置された点拡がりマトリックスpsf(X,Y)を用いた畳み込み演算が行われるようにするためである。

0173

図23(e) は、図21(e) と同様に、グラフf(15,11)を左右に移動させながら、各位置でのセル値の積を累積加算してゆくプロセスを示しており、更に、当該プロセスにより最終的に得られる総露光強度の分布グラフFを示している。やはり、各画素の左下に位置する代表セルについてのみ画素値Dと同じセル値を与えて照射強度マトリックスD(x′,y′)を作成したため、非代表セルについての積は0になるので、実質的に、非代表セルについての演算は省略することができる。

0174

このように、個々の画素に含まれる複数の演算用セルのうち、特定の代表セルについてのみ当該画素の画素値に応じたセル値を与え、それ以外の非代表セルについてはセル値0を与える方法を採用すると、多くの演算プロセスを省略することができ、演算時間を短縮することができる。

0175

なお、これまで述べてきた実施例では、1つの画素に含まれる複数の演算用セルのうち、いずれか1つだけを代表セルに設定し、残りのセルを非代表セルとしているが、1つの画素について、複数の代表セルを設定することも可能である。したがって、演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、各画素の中心に位置するセルを代表セルに設定する、という基本方針を採る場合には、同一画素に含まれる複数の演算用セルのうち、当該画素の中心に位置する1つもしくは複数の演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとすればよい。

0176

一般に、演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスを作成する際に、描画データの各画素を縦横それぞれ奇数に分割した場合には、各画素の中心に位置する1つの演算用セルを代表セルとし、それ以外の演算用セルを非代表セルとし、代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値を与え、非代表セルについてはセル値0を与えるようにすればよい。図20に示す実施例は、各画素を縦横それぞれ5つに分割した例であり、各画素の中心に位置する1つの演算用セルが代表セルに設定されている。

0177

これに対して、描画データの各画素を縦横それぞれ偶数に分割した場合には、各画素の中心には4つの演算用セルが配置されることになる。このような場合は、この4つの演算用セルを代表セルに設定し、それ以外の演算用セルを非代表セルとすればよい。そして、4つの代表セルには当該代表セルを含む画素の画素値の1/4の値を与え、非代表セルについてはセル値0を与えるようにすればよい。

0178

図24(a) は、縦横のピッチd=10nmで、3行3列に配置された9個の画素の画素配列からなる描画データについて、各画素P(i,j)を縦横それぞれ10分割することにより、演算用セルC(m,n)を作成した例である。各画素が縦横それぞれ偶数分割されているため、各画素の中心には4つの演算用セルが配置される。そこで、この4つの演算用セルをすべて当該画素についての代表セルに設定している。すなわち、図24(a) において黒塗りで示されているセルは代表セルであり、図に白塗りで示されているセルは非代表セルである。各代表セルには、当該代表セルを含む画素の画素値の1/4の値が与えられ、非代表セルについてはセル値0が与えられる。

0179

図24(b) は、図24(a) に示す1つの画素P(i,j)に含まれる合計100個の演算用セルC(m,n)のそれぞれに、所定のセル値を与えた状態を示す図である。図に太線枠で示す4組の代表セルには、それぞれセル値「3」が与えられているが、これは、画素P(i,j)のもつ画素値pが「12」であった場合の例である。すなわち、各代表セルには、当該代表セルを含む画素の画素値「12」の1/4の値「3」がセル値として与えられる。また、非代表セルについては、すべてセル値0が与えられている。

0180

このように、1つの画素について複数の代表セルを設定すると、これら複数の代表セルのそれぞれについての演算が必要になるが、やはり非代表セルについての演算を省略することができるので、演算時間を短縮する効果が得られる。もちろん、このように1つの画素について複数の代表セルを設定する場合にも、各代表セルの位置を、画素の中心から所定方向に所定のオフセット量だけ変位させるようにしてもかまわない。

0181

もっとも、偶数分割した場合、必ずしも複数の代表セルを設定する必要はなく、1つの画素に単一の代表セルのみを設定するようにしてもかまわない。偶数分割した場合は、単一の代表セルを画素の中心に配置することはできないので、当該代表セルは、画素の中心から必ず所定方向に所定のオフセット量だけずれた位置に配置されることになる。この場合、図22に示す例と同様に、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)を作成する際に、逆方向に上記オフセット量だけ補正した関数psf(X,Y)を定義するようにすればよい。

0182

図24(b) に示す例では、1つの画素を100個のセルに偶数分割し、中心付近に4つの代表セルを定義して、それぞれに対して、画素値「12」の1/4の値「3」をセル値として与えている。これは、代表セルを画素の中心に配置するための配慮であるが、図22に示す例と同様に、所定のオフセット量だけ関数psf(X,Y)に対する補正を行う手法を採用すれば、単一の代表セルを任意の位置に配置することも可能である。

0183

たとえば、図25(a) に示す例は、図24(a) に示す例と同様に、1つの画素を100個のセルに偶数分割した例であるが、中心付近ではなく、図に黒塗りで示した左下隅のセルだけを単一の代表セルとした例である(右上画素の代表セルについては、オフセット量を示す矢印を描く便宜上、黒塗りは省略した)。図25(b) は、図25(a) に示す1つの画素P(i,j)に含まれる合計100個の演算用セルC(m,n)のそれぞれに、所定のセル値を与えた状態を示す図である。図に太線枠で示す左下隅の代表セルには、セル値「12」が与えられているが、これは、画素P(i,j)のもつ画素値pが「12」であった場合の例である。また、残りの99個の非代表セルについては、すべてセル値0が与えられている。

0184

図25(a) の右上の画素について矢印で示されているとおり、左下隅の代表セルの中心は、画素の中心から左下方向に所定のオフセット量(横にΔx=4.5nm,縦にΔy=4.5nm)だけずれた位置に配置されているため、関数psf(X,Y)については右上方向に同じオフセット量だけ補正を施すようにすればよい。具体的には、図14の式(4)に示す点拡がり関数psf(X,Y)の代わりに、図22(c) の式(4′)に示す点拡がり関数psf(X,Y)を用いて点拡がりマトリックスを作成すればよい。式(4′)の右辺は、式(4)の右辺における変数Xを変数「X+Δx」に置き換え、変数Yを変数「Y+Δy」に置き換えたものであり、符号を考慮すると、上例の場合、Δx=−4.5nm,Δy=−4.5nmとして式(4′)を適用すればよい。

0185

<<< §7.フーリエ変換を利用した畳み込み演算>>>
§6では、図18の流れ図におけるステップS40の畳み込み演算段階の具体的な処理として、照射強度マトリックスD(x′,y′)と点拡がりマトリックスpsf(X,Y)という2組の演算用マトリックスを用いた畳み込み積分の処理の手順を説明した。ここでは、この畳み込み積分を、フーリエ変換を利用して行う演算を説明する。

0186

一般に、2つの関数f(A),f(B)の畳み込み積分を計算する演算には、フーリエ変換を利用した演算方法を適用すると、演算時間を短縮できることが知られている。原理的には、まず、関数f(A),f(B)をそれぞれフーリエ変換することにより、空間周波数値を変数とする関数f′(A),f′(B)を求め、その積として、関数f′(C)=f′(A)×f′(B)を算出し、最後に、関数f′(C)を逆フーリエ変換して関数f(C)を求めれば、当該関数f(C)は、2つの関数f(A),f(B)の畳み込み積分を示すものになる。

0187

そこで、本発明を実施する際にも、実用上は、フーリエ変換を利用した畳み込み演算を行うようにするのが好ましい。図18のステップS40には、第1の演算段階S41,第2の演算段階S42,第3の演算段階S43,第4の演算段階S44という4段階の処理が記載されているが、これは、この§7で述べるフーリエ変換を利用した畳み込み演算を行うための処理に他ならない。

0188

図26は、図18のステップS40による畳み込み演算を、フーリエ変換を利用して行う原理を示す図である。図26の式(8)は、図14に示す式(3)と全く同じ式であり、ステップS40で行われる畳み込み演算の本質を示す式である。ここで述べるフーリエ変換を利用した畳み込み演算を利用する場合は、次のような手順によって、式(8)と等価な演算を行い、露光強度分布v(x,y)を算出することになる。

0189

まず、第1の演算段階S41において、式(9)に示すように、照射強度マトリックスD(x′,y′)をフーリエ変換することにより、照射強度周波数マトリックスD′(f,g)を作成する。照射強度マトリックスD(x′,y′)が、横方向(x′軸方向)および縦方向(y′軸方向)に関する照射強度値の空間的な分布を示す行列であるのに対して、照射強度周波数マトリックスD′(f,g)は、横方向にx′軸方向に関する空間周波数を示すf軸、縦方向にy′軸方向に関する空間周波数を示すg軸をとった行列であり、照射強度マトリックスD(x′,y′)のx′軸方向およびy′軸方向に関する空間周波数成分を示す複素数の行列になる。

0190

次に、第2の演算段階S42において、式(10)に示すように、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)をフーリエ変換することにより、点拡がり周波数マトリックスpsf′(f,g)を作成する。点拡がりマトリックスpsf(X,Y)が、横方向(X軸方向)および縦方向(Y軸方向)に関する影響の度合いの空間的な分布を示す行列であるのに対して、点拡がり周波数マトリックスpsf′(f,g)は、横方向にX軸方向に関する空間周波数を示すf軸、縦方向にY軸方向に関する空間周波数を示すg軸をとった行列であり、点拡がりマトリックスpsf(X,Y)のX軸方向およびY軸方向に関する空間周波数成分を示す複素数の行列になる。

0191

続いて、第3の演算段階S43において、式(11)に示すように、照射強度周波数マトリックスD′(f,g)と点拡がり周波数マトリックスpsf′(f,g)とについて、それぞれ対応する演算用セルの複素数の積を求め、当該積をセル値とする露光強度周波数マトリックスv′(f,g)を作成する。

0192

そして、最後の第4の演算段階S44において、式(11)により求めた露光強度周波数マトリックスv′(f,g)を逆フーリエ変換することにより、露光強度マトリックスv(x,y)を作成する。この露光強度マトリックスv(x,y)は、座標(x,y)で示される個々の評価点における総露光強度の平面分布を示す行列、すなわち、本発明に係るシミュレーションによって求めるべき露光強度分布を示す行列になる。

0193

なお、§6で述べたように、ステップS30の演算用マトリックス作成段階で照射強度マトリックスD(x′,y′)を作成する際に、代表セルについてのみ画素値に応じたセル値を与え、非代表セルについてはセル値0を与える方法を採用すると、式(9)および式(10)に示すフーリエ変換処理の演算負担を大幅に軽減することができ、演算時間を短縮することができる。

0194

図27は、フーリエ変換処理の演算負担が軽減される原理を説明する図であり、式(9)に示すフーリエ変換処理の具体的な手順が示されている。まず、図27(a) は、照射強度マトリックスD(x′,y′)のセル配置を示す図である。個々のセルには、元の描画データの画素値に応じたセル値が収容されている。

0195

式(9)に従って、この照射強度マトリックスD(x′,y′)に対してフーリエ変換を行い、照射強度周波数マトリックスD′(f,g)を求めるには、まず、横方向(x′軸方向)に並んだセル値に対してフーリエ変換を行い、その空間周波数を求め、図27(b) に示すような照射強度中間マトリックスD''(f,y)を作成する処理が行われる。照射強度中間マトリックスD''(f,y)は、横軸が周波数f軸、縦軸がy′軸であり、元の照射強度マトリックスD(x′,y′)の各セル値についてのx′軸方向の空間周波数成分を示す行列になる。

0196

たとえば、図27(a) に横方向に伸びた太線枠で囲って示す1行目のセルには、それぞれ所定のセル値が収容されているが、このセル値の一次元的な並びについての空間周波数成分を抽出し、抽出した各成分の値を周波数f軸上にセル値として配置すれば、図27(b) に横方向に伸びた太線枠で囲って示す1行目のセルが得られる。この1行目のセルは、周波数f軸に沿った一次元配列であり、左から右へゆくにしたがって、空間周波数fのより高い成分の値がセル値として収容されている。

0197

続いて、この照射強度中間マトリックスD''(f,y)について、縦方向(y′軸方向)に並んだセル値に対してフーリエ変換を行い、その空間周波数を求めれば、図27(c) に示すような照射強度周波数マトリックスD′(f,g)が得られる。この照射強度周波数マトリックスD′(f,g)は、横軸が周波数f軸、縦軸が周波数g軸であり、元の照射強度マトリックスD(x′,y′)の各セル値についてのx′軸方向およびy′軸方向の空間周波数成分を示す行列になる。

0198

たとえば、図27(b) に縦方向に伸びた太線枠で囲って示す2列目のセルには、それぞれ所定のセル値が収容されているが、このセル値の一次元的な並びについての空間周波数成分を抽出し、抽出した各成分の値を周波数g軸上にセル値として配置すれば、図27(c) に縦方向に伸びた太線枠で囲って示す2列目のセルが得られる。この2列目のセルは、周波数g軸に沿った一次元配列であり、上から下へゆくにしたがって、空間周波数gのより高い成分の値がセル値として収容されている。

0199

セル値の一次元的な並びについて、フーリエ変換を行うことにより、その空間周波数成分を抽出する具体的な処理は、FFT(Fast Fourier Transform)などの手法が公知であるため、ここでは詳しい説明は省略するが、照射強度マトリックスD(x′,y′)が、特定の代表セルについてのみ画素値に応じたセル値を有し、それ以外の非代表セルについてはセル値0を有するマトリックスであれば、フーリエ変換処理の演算負担は大幅に軽減される。これは、図27(a) に示す照射強度マトリックスD(x′,y′)を図27(b) に示す照射強度中間マトリックスD''(f,y)に変換する際に、セル値0しか含まれていない行については、演算を省略することができるためである。

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