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技術 高強度鋼

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 高知琢哉
出願日 2016年10月6日 (4年2ヶ月経過) 出願番号 2016-198165
公開日 2018年4月12日 (2年8ヶ月経過) 公開番号 2018-059159
状態 未査定
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 歪エネルギ 等温保持温度 的要望 小片サンプル 昇温分析 Cr元素 大気圧イオン化質量分析計 繰返し応力
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (1)

課題

疲労特性に優れる高強度鋼を提供する。

解決手段

本発明の高強度鋼は、Cが0.38質量%以上0.48質量%以下、Siが1.6質量%以上2.4質量%以下、Mnが0.1質量%以上0.4質量%以下、Crが0.8質量%以上1.2質量%以下、Cuが0.1質量%以上0.6質量%以下、Niが0.1質量%以上0.6質量%以下、P及びSが0質量%超0.020質量%以下、Alが0質量%超0.040質量%以下、Tiが0.05質量%以上0.15質量%以下、Vが0.1質量%以上0.3質量%以下、Nが0質量%超0.0040質量%以下、Oが0質量%超0.0015質量%以下、残部が鉄及び不可避的不純物フェライト組織の分率が10%以下、パーライト組織ラメラ間隔が100nm以上255nm以下、水素含有量が0質量ppm超0.5質量ppm以下である。

概要

背景

自動車等の輸送機器では、軽量化、小型化、高サイクル化の観点から高強度化が進められている。また、自動車のエンジン足回り部品等は繰り返し荷重を受けるため、高い疲労特性が要求される。疲労強度鋼材引張強度が高くなれば高くなることが知られているが、疲労強度の上昇は引張強度の上昇に比して小さいため、疲労限度比(疲労強度/引張強度)は高強度になるに従って低下する。このため、高強度鋼の疲労強度の向上は、低強度鋼に比べて困難である。その一方で、疲労特性に対する工業的要望は高く、このような要望に対して、様々なアプローチで疲労特性を向上させることが試みられており、引張強度を確保しつつ疲労特性の向上するための技術としては、例えば特許文献1〜6に記載のものがある。

特許文献1(特開2013−166983号公報)には、非金属介在物サイズを規定した熱間鍛造用圧延棒鋼が開示されている。しかし、この熱間鍛造用圧延棒鋼の引張強度は1100MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

特許文献2(特開2010−270346号公報)には、金属組織フェライトパーライト及びベイナイトとし、それらの体積分率を規定すると共にフェライト粒径を制御した熱間鍛造用非調質鋼が開示されている。しかし、この熱間鍛造用非調質鋼の引張強度は1000MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

特許文献3(特開2010−7143号公報)には、金属組織をフェライト及びパーライトを主体とし、旧オーステナイト粒径細粒化した機械構造用鋼が開示されている。しかし、この機械構造用鋼の引張強度は1200MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

特許文献4(特開2008−127596号公報)には、フェライト中微細なNb含有析出物及びTi含有析出物を有する高強度冷間鍛造用非調質鋼が開示されている。しかし、この高強度冷間鍛造用非調質鋼の引張強度は1200MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

特許文献5(特開2004−277848号公報)には、金属組織をフェライト及びパーライトとし、フェライトを硬化した非調質鋼が開示されている。しかし、この非調質鋼の引張強度は1200MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

特許文献6(特開2001−262267号公報)には、金属組織をフェライト及びパーライトとし、フェライト相の割合を規定すると共にフェライト粒度を微細化した非調質鋼材が開示されている。しかし、この非調質鋼材の105サイクルまでの疲労特性(疲労限度比)は良好なものの、それ以上のサイクル特性、例えば107サイクルの疲労特性は保証されていない。

このように、特許文献1〜6に記載の鋼材は、いずれも引張強度及び疲労特性を両立できるものではないため、引張強度及び疲労特性の両立を図るためには未だ改善の余地がある。

概要

疲労特性に優れる高強度鋼を提供する。本発明の高強度鋼は、Cが0.38質量%以上0.48質量%以下、Siが1.6質量%以上2.4質量%以下、Mnが0.1質量%以上0.4質量%以下、Crが0.8質量%以上1.2質量%以下、Cuが0.1質量%以上0.6質量%以下、Niが0.1質量%以上0.6質量%以下、P及びSが0質量%超0.020質量%以下、Alが0質量%超0.040質量%以下、Tiが0.05質量%以上0.15質量%以下、Vが0.1質量%以上0.3質量%以下、Nが0質量%超0.0040質量%以下、Oが0質量%超0.0015質量%以下、残部が鉄及び不可避的不純物フェライト組織の分率が10%以下、パーライト組織ラメラ間隔が100nm以上255nm以下、水素含有量が0質量ppm超0.5質量ppm以下である。なし

目的

本発明は、上記不都合に鑑みてなされたものであり、疲労特性に優れる高強度鋼を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

C:0.38質量%以上0.48質量%以下、Si:1.6質量%以上2.4質量%以下、Mn:0.1質量%以上0.4質量%以下、Cr:0.8質量%以上1.2質量%以下、Cu:0.1質量%以上0.6質量%以下、Ni:0.1質量%以上0.6質量%以下、P:0質量%超0.020質量%以下、S:0質量%超0.020質量%以下、Al:0質量%超0.040質量%以下、Ti:0.05質量%以上0.15質量%以下、V:0.1質量%以上0.3質量%以下、N:0質量%超0.0040質量%以下、及びO:0質量%超0.0015質量%以下を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、フェライト組織の分率が10%以下、パーライト組織ラメラ間隔が100nm以上255nm以下、水素含有量が0質量ppm超0.5質量ppm以下である高強度鋼

技術分野

0001

本発明は、高強度鋼に関する。

背景技術

0002

自動車等の輸送機器では、軽量化、小型化、高サイクル化の観点から高強度化が進められている。また、自動車のエンジン足回り部品等は繰り返し荷重を受けるため、高い疲労特性が要求される。疲労強度鋼材引張強度が高くなれば高くなることが知られているが、疲労強度の上昇は引張強度の上昇に比して小さいため、疲労限度比(疲労強度/引張強度)は高強度になるに従って低下する。このため、高強度鋼の疲労強度の向上は、低強度鋼に比べて困難である。その一方で、疲労特性に対する工業的要望は高く、このような要望に対して、様々なアプローチで疲労特性を向上させることが試みられており、引張強度を確保しつつ疲労特性の向上するための技術としては、例えば特許文献1〜6に記載のものがある。

0003

特許文献1(特開2013−166983号公報)には、非金属介在物サイズを規定した熱間鍛造用圧延棒鋼が開示されている。しかし、この熱間鍛造用圧延棒鋼の引張強度は1100MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

0004

特許文献2(特開2010−270346号公報)には、金属組織フェライトパーライト及びベイナイトとし、それらの体積分率を規定すると共にフェライト粒径を制御した熱間鍛造用非調質鋼が開示されている。しかし、この熱間鍛造用非調質鋼の引張強度は1000MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

0005

特許文献3(特開2010−7143号公報)には、金属組織をフェライト及びパーライトを主体とし、旧オーステナイト粒径細粒化した機械構造用鋼が開示されている。しかし、この機械構造用鋼の引張強度は1200MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

0006

特許文献4(特開2008−127596号公報)には、フェライト中微細なNb含有析出物及びTi含有析出物を有する高強度冷間鍛造用非調質鋼が開示されている。しかし、この高強度冷間鍛造用非調質鋼の引張強度は1200MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

0007

特許文献5(特開2004−277848号公報)には、金属組織をフェライト及びパーライトとし、フェライトを硬化した非調質鋼が開示されている。しかし、この非調質鋼の引張強度は1200MPa未満であり、疲労強度(疲労限度比)も決して高くはない。

0008

特許文献6(特開2001−262267号公報)には、金属組織をフェライト及びパーライトとし、フェライト相の割合を規定すると共にフェライト粒度を微細化した非調質鋼材が開示されている。しかし、この非調質鋼材の105サイクルまでの疲労特性(疲労限度比)は良好なものの、それ以上のサイクル特性、例えば107サイクルの疲労特性は保証されていない。

0009

このように、特許文献1〜6に記載の鋼材は、いずれも引張強度及び疲労特性を両立できるものではないため、引張強度及び疲労特性の両立を図るためには未だ改善の余地がある。

先行技術

0010

特開2013−166983号公報
特開2010−270346号公報
特開2010−7143号公報
特開2008−127596号公報
特開2004−277848号公報
特開2001−262267号公報

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、上記不都合に鑑みてなされたものであり、疲労特性に優れる高強度鋼を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0012

本発明者は、高強度を確保しつつ疲労特性の向上を図ることを目的として鋭意研究を重ねた結果、フェライト組織パーライト組織との強度差の低減が疲労強度向上に重要であるとの知見を得た。

0013

すなわち、上記課題を解決するためになされた本発明は、C:0.38質量%以上0.48質量%以下、Si:1.6質量%以上2.4質量%以下、Mn:0.1質量%以上0.4質量%以下、Cr:0.8質量%以上1.2質量%以下、Cu:0.1質量%以上0.6質量%以下、Ni:0.1質量%以上0.6質量%以下、P:0質量%超0.020質量%以下、S:0質量%超0.020質量%以下、Al:0質量%超0.040質量%以下、Ti:0.05質量%以上0.15質量%以下、V:0.1質量%以上0.3質量%以下、N:0質量%超0.0040質量%以下、及びO:0質量%超0.0015質量%以下を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物からなり、フェライト組織の分率が10%以下、パーライト組織のラメラ間隔が100nm以上255nm以下、水素含有量が0質量ppm超0.5質量ppm以下である。

0014

本発明によれば、パーライト組織に比べて軟質で疲労ひずみが集中しやすいフェライト組織の分率が10%以下とされており、フェライト組織への疲労ひずみが集中による疲労特性の低下を抑制できる。さらに、パーライト組織のラメラ間隔が100nm以上255nm以下であることで、すなわちパーライト組織が微細であることで、パーライト組織の強度が向上し、フェライト組織との強度差を小さくできる。このようにパーライト組織とフェライト組織との強度差を小さくすることで、疲労特性が向上する。また、水素含有量を0.5質量ppm以下とすることで、繰り返し応力が作用したときに水素が放出されることによる疲労特性の低下を抑制することができる。これらの結果、当該高強度鋼は、高強度を有すると共に疲労特性に優れる。

発明の効果

0015

本発明によれば、疲労特性に優れる高強度鋼を提供できる。従って、本発明は自動車のエンジンや足回り部品等の繰り返し荷重を受ける部品に好適に用いることができると共に、自動車等の輸送機器の軽量化、小型化、高サイクル化等に寄与できる。

図面の簡単な説明

0016

疲労限を測定するためのテーパー型試験片を示す模式図である。

0017

以下、本発明に係る高強度鋼を詳説する。

0018

[高強度鋼]
当該高強度鋼は、自動車のエンジンや足回り部品等の繰り返し荷重を受ける部品に好適に用いられるものである。この高強度鋼は、添加すべき化学元素及びその含有量を規定すると共に、フェライトとパーライトの強度差を低減したところに特徴がある。このような特徴に基づき、当該高強度鋼は高強度を有すると共に疲労特性に優れる。

0019

当該高強度鋼は、フェライト組織の分率を10%以下、パーライト組織のラメラ間隔を100nm以上255nm以下とすることで、フェライト組織とパーライト組織との強度差を低減している。好ましくは、当該高強度鋼(TS)は、引張強度が1100MPa以上1400MPa以下であり、疲労限度比(σw/TS)が、0.65以上である。

0020

<フェライト組織の分率>
フェライト組織は、パーライト組織に比べて軟質であり、疲労ひずみが集中しやすい。本発明ではひずみ集中の回避のためフェライト組織の割合を極力低減し、その分率の上限値を10%とする。フェライト組織の分率の上限値としては、8%が好ましく、5%がより好ましく、0%であってもよい。なお、「分率」とは面積分率を意味する。

0021

<フェライト組織及びパーライト組織の合計分率
当該高強度鋼は基本的にはフェライトパーライト二相組織であり、このフェライトパーライト二相組織は熱間鍛造後の冷却中に変態する。そして、当該高強度鋼のようにTi元素やV元素を含有する場合、変態時にそれらの炭窒化物を形成し、析出強化により強度が上昇する。ベイナイトでは変態強化はするが、炭窒化物による析出強化は得られないため、フェライトパーライト二相組織とし、Ti元素やV元素を含有することで炭窒化物による析出強化で疲労強度が向上する。そのため、当該高強度鋼は、全面フェライトパーライト二相組織であることが理想的である。一方、鋼中には介在物炭化物、窒化物等も含むため、全面フェライトパーライト二相組織を得ることは困難であることから、フェライト組織及びパーライト組織の合計分率は製造上制御できる事実上の上限である95%以上とすることが好ましい。

0022

<パーライト組織のラメラ間隔>
フェライトパーライトの相組織では、これらの組織の強度差の低減が疲労特性向上に有効である。特にフェライト組織はV元素やTi元素の炭窒化物の微細析出により強化されるため、パーライト組織も同等程度に強化することが重要である。パーライト組織の強度はラメラ間隔に依存し、ラメラ間隔が小さいほど(パーライト組織が微細なほど)高い強度が得られる。そのため、パーライト組織のラメラ間隔は、所望とする強度(例えば引張強度で1100MPa以上1400MPa以下)を得るには255nm以下にする必要がある。一方、ラメラ間隔にばらつきがあるとパーライト組織間に強度差が生じ、ひずみ集中を助長する。よって、パーライト組織のラメラ間隔は、その下限値を100nmに制御する。パーライト組織のラメラ間隔の下限値としては、120nmが好ましく、140nmがより好ましい。一方、パーライト組織のラメラ間隔の上限値としては、220nmが好ましく、180nmがより好ましい。

0023

<水素含有量>
水素は、鋼の水素脆化を引き起こすため製鋼プロセスで極力低減されるが、製鋼プロセスでは完全な除去はできない。そのため、水素は製鋼プロセスの後工程で鋼から大気中に自然放出される。しかし、一部の水素は金属組織の欠陥や介在物等にトラップされ、放出されず残存する。通常、トラップされた水素は悪影響が無いとされているが、疲労のような繰返し応力歪エネルギ)が作用する場合、強固にトラップされた水素(特に介在物にトラップされた水素)がトラップサイトから放出され、引張強度や疲労強度等の機械的特性劣化させる悪影響を及ぼす。そのため、疲労向上のためには水素含有量は極微量に管理する必要があり、当該高強度鋼では水素含有量が0.5質量ppm以下とされる。水素含有量の上限値としては、0.35質量ppmが好ましく、0.2質量ppmがより好ましい。但し、水素含有量の下限値は0質量ppm超とされる。なお、水素含有量は、昇温分析法により測定した値である。また、水素含有量は、製鋼プロセスで、例えば真空脱ガス処理等の脱水素処理により0.5質量ppm以下となるように管理され、製鋼プロセスの後工程においても自然放出されて低減する。

0024

<引張強度(TS)>
当該高強度鋼の引張強度(TS)としては、上述のように950MPa以上1300MPa以下が好ましい。当該高強度鋼の引張強度(TS)の下限値としては、1000MPaがより好ましく、1050MPaがさらに好ましい。一方、当該高強度鋼の引張強度(TS)の上限値としては、1275MPaがより好ましく、1250MPaがさらに好ましい。当該高強度鋼の引張強度(TS)が上記範囲であることで、当該高強度鋼は自動車のエンジンや足回り部品等の繰り返し荷重を受ける部品に好適に用いることができると共に自動車等の輸送機器の軽量化、小型化、高サイクル化等に寄与できる。なお、引張強度(TS)は、JIS−Z2241:2011に準じて常温にて測定した値である。

0025

<疲労限度比(σw/TS)>
当該高強度鋼の疲労限度比(σw/TS)としては、上述のように0.65以上が好ましい。このように疲労限度比(σw/TS)が上記範囲であることで、当該高強度鋼は自動車のエンジンや足回り部品等の繰り返し荷重を受ける部品に好適に用いることができると共に自動車等の輸送機器の軽量化、小型化、高サイクル化等に寄与できる。ここで、疲労限度比(σw/TS)は、サイクル数107回を上限として回転曲げ試験を行ったときの疲労限(σw)を、引張強度(TS)で除した値である。なお、疲労限(σw)の下限値としては、650MPaが好ましく、660MPaがより好ましく、670MPaがさらに好ましい。疲労限(σw)を上記範囲とすることで、疲労強度を十分に確保しつつ疲労特性を向上させることができる。

0026

<化学元素及びその含有量>
当該高強度鋼は、以下の化学元素を所定範囲で含有する。

0027

C:0.38質量%以上0.48質量%以下
Si:1.6質量%以上2.4質量%以下
Mn:0.1質量%以上0.4質量%以下
Cr:0.8質量%以上1.2質量%以下
Cu:0.1質量%以上0.6質量%以下
Ni:0.1質量%以上0.6質量%以下
P:0質量%超0.020質量%以下
S:0質量%超0.020質量%以下
Al:0質量%超0.040質量%以下
Ti:0.05質量%以上0.15質量%以下
V:0.1質量%以上0.3質量%以下
N:0質量%超0.0040質量%以下
O:0質量%超0.0015質量%以下
残部:鉄及び不可避的不純物

0028

(C(炭素)元素の含有量)
C元素は、鉄鋼材料を高強度化するものである。このC元素は、パーライト組織中で主にセメンタイトとして存在し、C元素量の増加に伴いフェライト分率が低下し、パーライト分率が増加する。当該高強度鋼において所望とする引張強度を得るため、当該高強度鋼にはC元素を0.38質量%以上含有させる必要があり、その含有量の下限値としては0.40質量%が好ましく、0.42質量%がより好ましい。一方、当該高強度鋼におけるC元素含有量が過剰になると、残留オーステナイト量が多くなりすぎ疲労特性が劣化する。そのため、当該高強度鋼におけるC元素の含有量の上限値は0.48質量%とされ、好ましくは0.46質量%、より好ましくは0.44質量%とされる。

0029

(Si(ケイ素)元素の含有量)
Si元素は、マトリックスの固溶強化のために有用な元素である。このSi元素は、フェライト組織とパーライト組織との強度差を低減することで局所的なひずみ集中を軽減し、疲労特性の向上に寄与する。このような作用を発揮させるためには、当該高強度鋼にSi元素を1.6質量%以上含有させる必要があり、その含有量の下限値としては1.7質量%が好ましく、1.8質量%がより好ましい。一方、Si元素はフェライト生成元素であるため、Si元素の含有量が過剰になるとフェライト量が過剰になり、疲労特性が低下するため、当該高強度鋼におけるSi元素の含有量の上限値は2.4質量%とされ、好ましくは2.2質量%、より好ましくは2.0質量%とされる。このようなSi元素の含有量は、先行技術文献として記載した特許文献1〜6よりも多い。

0030

(Mn(マンガン)元素の含有量)
Mn元素は、有害元素であるS元素をMn化合物として固定することで害を軽減する。また、Mn元素は、焼入れ性(変態の冷却速度依存性)を向上させるために有用な元素である。これら効果を得るためには、当該高強度鋼においてMn元素が少なくとも0.1質量%必要である。当該高強度鋼におけるMn元素の含有量の下限値としては、0.15質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。一方、Mn元素が過剰であると、凝固偏析により金属組織や材質不均一性を招き、このような悪影響は高強度鋼ほど顕著になる。従って、当該高強度鋼におけるMn元素の含有量の上限値は0.4質量%以下とされ、好ましくは0.35質量%、より好ましくは0.3質量%とされる。このようなMn元素の含有量は、先行技術文献として記載した特許文献1〜6よりも多い。

0031

(Cr(クロム)元素の含有量)
Cr元素は、焼入れ性向上させフェライト分率の低下に有効である。このような作用を発揮させるためには、Cr元素を0.8質量%以上含有させる必要があり、その含有量の下限値としては0.9質量%が好ましく、1.0質量%がより好ましい。一方、Cr元素はセメンタイトに固溶するが、セメンタイトへのCr固溶量が高くなりすぎるとセメンタイトの硬化を招き、疲労特性を劣化させる。従って、当該高強度鋼におけるCr元素の含有量は1.2質量%以下とされ、好ましくは1.1質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下とされる。

0032

(Cu(銅)元素の含有量)
Cu元素は、焼入れ性を向上させるためフェライト分率低減に有効であり、セメンタイトに固溶しない元素であるためセメンタイトの硬化による特性劣化させない。これらの効果を得るためには、当該高強度鋼においてCu元素が0.1質量%以上必要であり、その含有量の下限値としては0.15質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。一方、Cu元素の過剰添加はベイナイトやマルテンサイト等の組織生成を助長するため、Cu元素の含有量の上限値は0.6質量%とされ、好ましくは0.5質量%、より好ましくは0.4質量%とされる。

0033

(Ni(ニッケル)元素の含有量)
N元素は、Cu元素と同様に焼入れ性を向上させるためフェライト分率低減に有効であり、セメンタイトに固溶しない元素であるためセメンタイトの硬化による特性劣化させない。これらの効果を得るためには、当該高強度鋼においてNi元素が0.1質量%以上必要であり、その含有量の下限値としては0.15質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。一方、Cu元素の過剰添加はベイナイトやマルテンサイト等の組織生成を助長するため、Ni元素の含有量の上限値は0.6質量%であり、0.5質量%が好ましく、0.4質量%がより好ましい。

0034

(P(リン)元素の含有量)
P元素は、偏析部での靭性加工性を低下させるため0.020質量%以下とされる。P元素の含有量の上限値としては、0.015質量%が好ましく、0.010質量%がより好ましい。但し、P元素の含有量の下限値は0質量ppm超とされる。

0035

(S(硫黄)元素の含有量)
S元素は、P元素と同様に偏析部での靭性や加工性を低下させるため0.020質量%以下とされ、その含有量の上限値は0.015質量%が好ましく、0.010質量%がより好ましい。但し、S元素の含有量の下限値は0質量ppm超とされる。

0036

(Al(アルミニウム)元素の含有量)
Al元素は、脱酸元素として使用され酸化物として鋼中に含まれる。しかし、Al酸化物疲労破壊の起点となる可能性があるため、Al元素の含有量は0.040質量%以下とされる。Al元素の含有量の上限値としては、0.035質量%が好ましく、0.030質量%がより好ましい。但し、Al元素の含有量の下限値は0質量ppm超とされる。

0037

(Ti(チタン)元素の含有量)
Ti元素は、炭窒化物を形成し組織微細化や炭窒化物の析出を強化させ、疲労特性向上に寄与するものであり、その炭窒化物が水素原子補足することで水素原子の放出による機械的特性の劣化等の悪影響を低減する。これらの効果を得るために当該高強度鋼におけるTi元素の含有量は0.05質量%以上とされる。Ti元素の含有量の下限値としては、0.06質量%が好ましく、0.07質量%がより好ましい。一方、当該高強度鋼へのTi元素の過剰添加は粗大な炭窒化物の形成を助長し、疲労破壊の起点となる。よって、当該高強度鋼におけるTi元素の上限値は、0.15質量%とされる。Ti元素の含有量の上限値としては、0.12質量%が好ましく、0.10質量%がより好ましい。

0038

(V(バナジウム)元素の含有量)
V元素は、Ti元素と同様に、炭窒化物を形成し組織微細化や炭窒化物の析出を強化させ、疲労特性向上に寄与するものであり、その炭窒化物が水素原子を補足することで水素原子の放出による機械的特性の劣化等の悪影響を低減する。これらの効果を得るために当該高強度鋼におけるV元素の含有量は0.1質量%以上とされる。V元素の含有量の下限値としては、0.12質量%が好ましく、0.15質量%がより好ましい。一方、当該高強度鋼へのV元素の過剰添加は粗大な炭窒化物の形成を助長し、疲労破壊の起点となる。よって、当該高強度鋼におけるV元素の上限値は、0.3質量%とされる。V元素の含有量の上限値としては、0.25質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。

0039

(N(窒素)元素の含有量)
N元素は、不可避的に含まれ、Ti元素及びV元素と窒化物を形成する。N元素の増加は粗大な窒化物形成を助長し、疲労特性を劣化させる。よって、当該高強度鋼におけるN元素の含有量の上限値は0.0040質量%とされ、好ましくは0.0030質量%、より好ましくは0.0025質量%とされる。但し、N元素の含有量の下限値は0質量ppm超とされる。

0040

(O(酸素)元素の含有量)
O元素は、酸化物として不可避的に存在するが、粗大酸化物や過剰量の酸化物は疲労特性を劣化させるため制御が必要である。当該高強度鋼では、O元素の含有量を0.0015質量%以下とすることで、疲労特性の劣化を回避する。当該高強度鋼におけるO元素の含有量の上限値としては、0.0012質量%が好ましく、0.0010質量%がより好ましく、0.0007質量%がさらに好ましい。但し、O元素の含有量の下限値は0質量ppm超とされる。

0041

(残部)
以上が本発明で規定する含有元素であって、残部は鉄及び不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えば原料資材製造設備等の状況によって持ち込まれるSn、As、Pb等が挙げられるが、これらの元素に限定されるものではない。

0042

<高強度鋼の製造方法>
本発明の高強度鋼は、上記化学成分量を満たす鋼材を鍛造工程及び冷却工程を含む製造プロセスによって、フェライト/パーライト組織の高強度を有する疲労特性に優れるものとして得ることができる。このプロセスは、例えば予備熱処理工程、仕上げ鍛造工程及び冷却工程を含む非調質プロセスである。非調質プロセスでは焼入れ工程及び焼戻し工程が省略されるため、省エネルギ及び低コスト化を実現できる。

0043

(予備熱処理工程)
予備熱処理工程は水素を低減する工程である。この予備熱処理工程は、鋼を600℃以上800℃以下で加熱した状態で、0.5時間以上3時間以下保持するにより水素を低減することができる。水素低減には予備処理は0.5時間以上必要である。予備処理が長時間なほど水素が低減されるが、脱炭生産性の問題があるため、上限を設けるのであれば3時間とする。

0044

(仕上げ鍛造工程)
この仕上げ鍛造工程は、鋼材を1200℃以上1300℃以下で加熱した後、鍛造を行う熱間鍛造として行われる。鍛造温度は、旧オーステナイト粒径への影響を通じて焼入れ性(変態の冷却速度依存性)に影響を与えることから、800℃以上950℃以下が好ましい。鍛造温度の下限値としては850℃がより好ましく、上限値としては900℃がより好ましい。

0045

(冷却工程)
冷却工程は、熱間鍛造後の冷却によりベイナイト組織とすると共に、残留オーステナイトの生成を制御するために行う。この冷却工程は、例えば冷却速度を10℃/s以上80℃/s以下として500℃以上800℃以下まで急冷した後、この温度で500秒以上1500秒以下の間、等温保持することで行われる。このように急冷後に等温保持することで、フェライト組織の分率が10%以下で、フェライト組織及びパーライト組織の合計分率が95%以上であるフェライトパーライトの2相組織を有する高強度鋼が得られる。冷却速度の下限値としては20℃/sがより好ましく、30℃/sがさらに好ましい。一方、冷却速度の上限値としては75℃/sがより好ましく、70℃/sがさらに好ましい。また、等温保持温度の下限値としては550℃がより好ましく、600℃がさらに好ましい。一方、等温保持温度の上限値としては750℃がより好ましく、700℃がさらに好ましい。等温保持時間の下限値としては、550秒がより好ましく、600秒がさらに好ましい。一方、等温保持時間としては1300秒がより好ましく、1200秒がさらに好ましい。

0046

次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。

0047

<試験片>
下記表1に示す化学成分組成の直径が14cmの丸棒を表2に示すプロセスにより高強度化し丸棒試験片(14A号試験片)を作成した。各丸棒試験片については以下の評価を行った。

0048

0049

0050

評価方法
下記手順に従い、フェライト分率、パーライト組織のラメラ間隔、鋼中の水素含有量、引張強度及び疲労特性を評価した。評価結果は表3に示した。

0051

<フェライト分率の測定>
フェライト分率は、ナイターエッチングした試験片について、光学顕微鏡にて400倍の倍率で金属組織を3視野観察し、点算法にてそれぞれの視野にて測定したフェライト分率を平均することで算出した。

0052

<パーライト組織のラメラ間隔の測定>
パーライト組織のラメラ間隔は、ピクラールエッチング試験片について、走査型電子顕微鏡(SEM)にて3000倍〜5000倍の倍率で金属組織を3視野観察し、観察視野からラメラ間隔の狭いパーライトを選んで2か所ずつ測定し、それらの平均とした算出した。

0053

<水素含有量の測定>
水素含有量は、鋼中水素量は下記の通り測定した。まず、鋼材から小片サンプル採取し、大気圧イオン化質量分析計API−MS)を用いて、アルゴン流中(1atm(1000ml/min))にてサンプルを室温から720℃まで12℃/minで加熱し、放出される水素量積算値を測定した。

0054

<引張強度>
引張強度(TS)は、丸棒試験片を用いて、JIS−Z2241:2011に準じて常温にて測定した。ひずみ速度は10−3s−1とした。

0055

<疲労特性>
疲労特性は、疲労限(σw)を引張強度(TS)で除することで算出した。疲労限(σw)は、山本金属製作所製の4連式回転曲げ疲労試験機を用いて疲労試験を実施することで測定した。具体的には、鋼材から図1に示すテーパー型試験片を切削加工し、テーパー部を#180〜2000までのエメリー紙研磨した後、更に1〜15μmのダイヤモンドペーストを用いて研磨し、鏡面に仕上げた。サイクル数107回を上限としてこの試験片に対し回転曲げ疲労試験を行い、この時の応力で疲労限(σw)を評価した。

0056

0057

表3に示すように、実施例1〜19の試験片は、所定の化学組成を有し、フェライト組織の分率が10%以下、パーライト組織のラメラ間隔が100nm以上255nm以下、水素含有量が0質量ppm超0.5質量ppm以下であることで、引張強度が950MPa以上1300MPa以下という高強度を有し、疲労限度比(σw/TS)が、0.65以上であるという優れた疲労特性を発揮することが確認できた。

実施例

0058

これに対し、本発明で規定する組成を満たさない比較例7〜22(鋼種No.B1〜B16)は、疲労限度比(σw/TS)が0.65未満であり疲労特性を満たすものではなかった。また、実施例1〜19と同様に本発明で規定する組成を満たす場合であっても、比較例1〜6はフェライト組織の分率、パーライト組織のラメラ間隔、水素含有量及び引張強度のうちの少なくとも1つを満たさないばかりか、比較例1〜6の全ての疲労限度比(σw/TS)が0.65未満であり疲労特性を満たすものではなかった。

0059

以上のように、本発明の高強度鋼は、高強度を有すると共に疲労特性に優れる。従って、本発明の高強度鋼は、自動車のエンジンや足回り部品等の繰り返し荷重を受ける部品に好適に用いることができると共に自動車等の輸送機器の軽量化、小型化、高サイクル化等に寄与できる。

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