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図面 (20)

課題

被験者への負担をより低減させた方法により、ストレスを定量的に評価することが可能なストレス測定装置を提供する。

解決手段

本発明は、被験者のストレス状態を評価するためのストレス評価装置であって、被験者の前頭部に取り付けられた1つの電極から脳電位信号を取得する信号取得手段と、信号取得手段により所定時間内において取得された脳電位信号からパワースペクトルを算出し、δ波帯域を含む第1の周波数帯域内の各周波数パワー合計値の、該第1の周波数帯域より高い周波数帯域を含み該第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の各周波数のパワーの合計値に対する比率を計算することによりストレス状態評価のための指標値を決定し、当該指標値と、予め設定された基準となる指標値である基準指標値とに基づいて被験者のストレス状態を評価する演算手段と、を備える。

概要

背景

従来、労務管理等の現場従業員精神的ストレス推定する方法としては、問診票によりチェックする方法が主に用いられてきた。しかしながら、問診票によるチェックは主観的要素が強いため、被験者の打算によりストレス被害を装う場合やストレス被害を隠蔽する場合には、誤った判断がなされるという問題があり、より客観的評価方法の開発が望まれている。

脳が悲しみ恐怖といった精神的ストレスを受けると、情動中枢である大脳辺縁系に大きな影響が及ぶが、一次的な情動反応は、主として、扁桃体部分で生成されると考えられる。例えば、非特許文献1には、ペットを亡くした20名の被験者に当該ペットに関連する言語的タスクを課してfMRI活動部位調査した結果、悲しみや忌避に対応して扁桃体を中心とした部分に優位活性観測されることが開示されている。この一次的な神経活動は、同じく大脳辺縁系の中にある視床下部神経核働きかけ交換神経及び副交感神経からなる自律神経系を介して、二次的な生理反応(例えば血圧や、脈拍瞳孔反応等)を惹き起こすことが知られている。また二次的な反応は前頭部にもおよび、側坐核を中心とした「喜びの中枢」としての自己報酬系の活動を抑制することが知られている。更には、精神疾患により喜びの感情が低下した被験者では、側坐核の活動低下とともに、前帯皮質脳波EEG)のδ成分が増加することが知られている(非特許文献2)。

このような、ストレスに関係した脳内活動の生理学的な変化をPETやfMRI法で観測すれば、ストレスの客観的評価がより正確に行えるものと期待される。しかし同位元素を使ったPETでは、装置が大がかりなことのみならず、測定に放射線被曝を伴うため、繰り返しの測定が必要なストレス検査には不向きである。また、fMRI法では、強磁場および高周波電磁界に被験者をさらすため、ペースメーカや、金属製補綴材等を体内に有する被験者には使用できないのみならず、強磁場発生のための大がかりな装置が必要であり、使用環境が大幅に限定される。これらの測定法の代わりに用いることができるMEG(Magneto-encephalogram)法においても、強固な磁気シールドが必要であるのみならず、超電導を実現するための冷却装置を必要とするなど、大規模かつ高価な測定装置が必要である。

これに対して、頭皮上から観測される脳電位(脳波)による脳内活動の生理学的な変化の測定は、大がかりな装置を必要としないため、広く臨床現場で使用されてきた。

頭皮上の電位分布を多数の電極によって観測する一般的な臨床現場では、国際10-20法における19個の電極を用いて観測される脳電位を、ペンレコーダあるいはコンピュータ内のメモリに記録することが行われてきた。例えば、頭皮上で観測される脳電位を脳内部に仮定した等価ダイポール電源によって生成されるものと仮定し、頭皮上の脳電位分布から、等価ダイポール電源の位置、方向、電流値を逆推定する「ダイポール推定法」によって等価表現する方式が開発されてきた(非特許文献3)。この方法においては、頭皮上の電位分布から脳内部のダイポールを逆推定するため、多次元空間内での探索作業を伴う大規模な演算を必要とするのみならず、安定な解を得るために多数の電極数を必要としていた。

他方、頭皮上に配置した10個の電極から観測される脳電位を用いて、被験者の感性状態を推定する方法も行われてきた(非特許文献6、7)。具体的には、各2電極間で観測される電位間の相関を10C2=45個の相互相関関数で評価し、更にこれを脳電位のθ、α、βのそれぞれの帯域ごとに評価し、合計45×3=135個のパラメータ表現する方式が用いられてきた。しかしながら、この方法においても、最低10個の電極を必要とするため、計測中に電極の接触を安定に保つことが困難であった。

概要

被験者への負担をより低減させた方法により、ストレスを定量的に評価することが可能なストレス測定装置を提供する。本発明は、被験者のストレス状態を評価するためのストレス評価装置であって、被験者の前頭部に取り付けられた1つの電極から脳電位信号を取得する信号取得手段と、信号取得手段により所定時間内において取得された脳電位信号からパワースペクトルを算出し、δ波帯域を含む第1の周波数帯域内の各周波数パワー合計値の、該第1の周波数帯域より高い周波数帯域を含み該第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の各周波数のパワーの合計値に対する比率を計算することによりストレス状態評価のための指標値を決定し、当該指標値と、予め設定された基準となる指標値である基準指標値とに基づいて被験者のストレス状態を評価する演算手段と、を備える。

目的

しかしながら、問診票によるチェックは主観的要素が強いため、被験者の打算によりストレス被害を装う場合やストレス被害を隠蔽する場合には、誤った判断がなされるという問題があり、より客観的な評価方法の開発が望まれている

効果

実績

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請求項1

被験者ストレス状態を評価するためのストレス評価装置であって、前記被験者の前頭部に取り付けられた1つの電極から脳電位信号を取得する信号取得手段と、前記信号取得手段により所定時間内において取得された脳電位信号からパワースペクトルを算出し、δ波帯域を含む第1の周波数帯域内の各周波数パワー合計値の、該第1の周波数帯域より高い周波数帯域を含み該第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の各周波数のパワーの合計値に対する比率を計算することによりストレス状態評価のための指標値を決定し、当該指標値と、予め設定された基準となる指標値である基準指標値とに基づいて前記被験者のストレス状態を評価する演算手段と、を備えるストレス評価装置。

請求項2

前記基準指標値は、複数の被験者の安静時及びストレス時の脳電位信号に基づいて決定された前記指標値の安静時及びストレス時のそれぞれの平均値及び標準偏差であり、前記演算手段は、安静時及びストレス時のそれぞれの平均値及び標準偏差を用いて、前記被験者の脳電位信号に基づいて決定された前記指標値のZスコアをそれぞれ算出し、それぞれのZスコアの大きさの組み合わせから前記被験者のストレス状態を評価する、請求項1に記載のストレス評価装置。

請求項3

前記基準指標値は、過去に前記被験者の脳電位信号に基づいて算出された複数の前記指標値であり、前記演算手段は、前記被験者の脳電位信号に基づいて決定された前記指標値を、過去に前記被験者の脳電位信号に基づいて決定された複数の前記指標値と比較することによりストレス状態を評価する、請求項1に記載のストレス評価装置。

請求項4

前記第1の周波数帯域は1〜4Hzであり、前記第2の周波数帯域は4〜20Hzである、請求項1から3のいずれか1項に記載のストレス評価装置。

請求項5

前記信号取得手段は、前記被験者の国際10−20法におけるF7の部位又は該部位の半径30mm以内に取り付けられた1つの電極から脳電位信号を取得する、請求項1から4のいずれか1項に記載のストレス評価装置。

請求項6

被験者のストレス状態を評価するためのストレス評価方法であって、前記被験者の前頭部に取り付けられた1つの電極から脳電位信号を取得するステップと、前記信号取得手段により所定時間内に取得された脳電位信号からパワースペクトルを算出するステップとδ波帯域を含む第1の周波数帯域内の各周波数のパワーの合計値の、該第1の周波数帯域より高い周波数帯域を含み該第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の各周波数のパワーの合計値に対する比率を計算することによりストレス状態評価のための指標値を決定するステップと、前記指標値と、予め設定された基準となる指標値である基準指標値とに基づいて前記被験者のストレス状態を評価するステップと、を有するストレス評価方法。

技術分野

0001

本発明は、ストレス評価装置及び方法に関し、特に脳電位に基づいてストレス状態を評価するストレス評価装置及び方法に関する。

背景技術

0002

従来、労務管理等の現場従業員精神的ストレス推定する方法としては、問診票によりチェックする方法が主に用いられてきた。しかしながら、問診票によるチェックは主観的要素が強いため、被験者の打算によりストレス被害を装う場合やストレス被害を隠蔽する場合には、誤った判断がなされるという問題があり、より客観的評価方法の開発が望まれている。

0003

脳が悲しみ恐怖といった精神的ストレスを受けると、情動中枢である大脳辺縁系に大きな影響が及ぶが、一次的な情動反応は、主として、扁桃体部分で生成されると考えられる。例えば、非特許文献1には、ペットを亡くした20名の被験者に当該ペットに関連する言語的タスクを課してfMRI活動部位調査した結果、悲しみや忌避に対応して扁桃体を中心とした部分に優位活性観測されることが開示されている。この一次的な神経活動は、同じく大脳辺縁系の中にある視床下部神経核働きかけ交換神経及び副交感神経からなる自律神経系を介して、二次的な生理反応(例えば血圧や、脈拍瞳孔反応等)を惹き起こすことが知られている。また二次的な反応は前頭部にもおよび、側坐核を中心とした「喜びの中枢」としての自己報酬系の活動を抑制することが知られている。更には、精神疾患により喜びの感情が低下した被験者では、側坐核の活動低下とともに、前帯皮質脳波EEG)のδ成分が増加することが知られている(非特許文献2)。

0004

このような、ストレスに関係した脳内活動の生理学的な変化をPETやfMRI法で観測すれば、ストレスの客観的評価がより正確に行えるものと期待される。しかし同位元素を使ったPETでは、装置が大がかりなことのみならず、測定に放射線被曝を伴うため、繰り返しの測定が必要なストレス検査には不向きである。また、fMRI法では、強磁場および高周波電磁界に被験者をさらすため、ペースメーカや、金属製補綴材等を体内に有する被験者には使用できないのみならず、強磁場発生のための大がかりな装置が必要であり、使用環境が大幅に限定される。これらの測定法の代わりに用いることができるMEG(Magneto-encephalogram)法においても、強固な磁気シールドが必要であるのみならず、超電導を実現するための冷却装置を必要とするなど、大規模かつ高価な測定装置が必要である。

0005

これに対して、頭皮上から観測される脳電位(脳波)による脳内活動の生理学的な変化の測定は、大がかりな装置を必要としないため、広く臨床現場で使用されてきた。

0006

頭皮上の電位分布を多数の電極によって観測する一般的な臨床現場では、国際10-20法における19個の電極を用いて観測される脳電位を、ペンレコーダあるいはコンピュータ内のメモリに記録することが行われてきた。例えば、頭皮上で観測される脳電位を脳内部に仮定した等価ダイポール電源によって生成されるものと仮定し、頭皮上の脳電位分布から、等価ダイポール電源の位置、方向、電流値を逆推定する「ダイポール推定法」によって等価表現する方式が開発されてきた(非特許文献3)。この方法においては、頭皮上の電位分布から脳内部のダイポールを逆推定するため、多次元空間内での探索作業を伴う大規模な演算を必要とするのみならず、安定な解を得るために多数の電極数を必要としていた。

0007

他方、頭皮上に配置した10個の電極から観測される脳電位を用いて、被験者の感性状態を推定する方法も行われてきた(非特許文献6、7)。具体的には、各2電極間で観測される電位間の相関を10C2=45個の相互相関関数で評価し、更にこれを脳電位のθ、α、βのそれぞれの帯域ごとに評価し、合計45×3=135個のパラメータ表現する方式が用いられてきた。しかしながら、この方法においても、最低10個の電極を必要とするため、計測中に電極の接触を安定に保つことが困難であった。

先行技術

0008

Peter J. Freed, Ted K.Yanagihara, Joy Hirsch, and J. John Mann, “Neural mechanism of grief regulation”, Biol. Psychiatry, vol.66, no.1, pp.33-40, July 2009.
Jan Wacker, Daniel G. Dillon, Diego A. Pissagalli, “The role of the nucleus accumbens and rostral anterior cingulate cortex in anhedonia: Integration of restingEEG, fMRI, and Volumetric Techniques, Neuroimage, vol.46, no.1, pp.327-337, May 2009.
J. Hara, W. R. Shankle and T. Musha, Cortical Atrophy in Alzheimer's Disease Unmasks Electrically Silent Sulci and Lowers EEG Dipolarity,IEEE Trans. Biomed. Eng., vol.46, no.8, 905-910, 1999.
武者利光「「こころ」を測る」日経サイエンス4月号 20-29(1996)
T. Musha, Y. Terasaki, H. A. Haque, and G. A. Ivamitsky, “Feature extraction from EEGs associated with emotions,” Artif. Life Robot., 1(1): 15-19, 1997.

発明が解決しようとする課題

0009

このように精神的なストレスを評価する装置としては、比較的簡易に構成可能な脳電位に基づいてストレスを評価する装置が好ましいが、上記のアプローチは、いずれも頭皮上に多数の電極を必要とするものであり、被験者への大きい負担となっていた。

0010

本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、被験者への負担をより低減させた方法により、ストレスを定量的に評価することが可能なストレス評価装置を提供することを主目的とする。

課題を解決するための手段

0011

上記の課題は以下の特徴を有する本発明によって解決される。すなわち、本発明の一態様としてのストレス評価装置は、被験者のストレス状態を評価するためのストレス評価装置であって、前記被験者の前頭部に取り付けられた1つの電極から脳電位信号を取得する信号取得手段と、前記信号取得手段により所定時間内において取得された脳電位信号からパワースペクトルを算出し、δ波帯域を含む第1の周波数帯域内の各周波数パワー合計値の、該第1の周波数帯域より高い周波数帯域を含み該第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の各周波数のパワーの合計値に対する比率を計算することによりストレス状態評価のための指標値を決定し、当該指標値と、予め設定された基準となる指標値である基準指標値とに基づいて前記被験者のストレス状態を評価する演算手段と、を備えることを特徴とする。

0012

また、本発明の一態様として、好ましくは、前記基準指標値は、複数の被験者の安静時及びストレス時の脳電位信号に基づいて決定された前記指標値の安静時及びストレス時のそれぞれの平均値及び標準偏差であり、前記演算手段は、安静時及びストレス時のそれぞれの平均値及び標準偏差を用いて、前記被験者の脳電位信号に基づいて決定された前記指標値のZスコアをそれぞれ算出し、それぞれのZスコアの大きさの組み合わせから前記被験者のストレス状態を評価する。

0013

また、本発明の一態様として、好ましくは、前記基準指標値は、過去に前記被験者の脳電位信号に基づいて算出された複数の前記指標値であり、前記演算手段は、前記被験者の脳電位信号に基づいて決定された前記指標値を、過去に前記被験者の脳電位信号に基づいて決定された複数の前記指標値と比較することによりストレス状態を評価する。

0014

また、本発明の一態様として、好ましくは、前記第1の周波数帯域は1〜4Hzであり、前記第2の周波数帯域は4〜20Hzである。

0015

また、本発明の一態様として、好ましくは、前記信号取得手段は、前記被験者の国際10−20法におけるF7の部位又は該部位の半径30mm以内に取り付けられた1つの電極から脳電位信号を取得する。

0016

本発明の一態様としてのストレス評価方法は、被験者のストレス状態を評価するためのストレス評価方法であって、前記被験者の前頭部に取り付けられた1つの電極から脳電位信号を取得するステップと、前記信号取得手段により所定時間内に取得された脳電位信号からパワースペクトルを算出するステップとδ波帯域を含む第1の周波数帯域内の各周波数のパワーの合計値の、該第1の周波数帯域より高い周波数帯域を含み該第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の各周波数のパワーの合計値に対する比率を計算することによりストレス状態評価のための指標値を決定するステップと、前記指標値と、予め設定された基準となる指標値である基準指標値とに基づいて前記被験者のストレス状態を評価するステップと、を有することを特徴とする。

発明の効果

0017

本発明によれば、被験者への負担をより低減させた方法により、ストレスを定量的に評価することができる。

図面の簡単な説明

0018

本発明の第1の実施形態のストレス評価装置の概略構成図である。
本発明の実施形態による脳電位センサの電極の取り付け位置を示す図である。
本発明の第1の実施形態のストレス評価装置の機能ブロック図である。
本発明の第1の実施形態の電子装置120がストレス状態を評価する情報処理を示すフローチャートである。
評価対象脳電位データの1つの例示である。
評価対象脳電位データから算出されたパワースペクトルの1つの例示である。
F7の電極における安静開眼1のパワーをベースラインとした4つの状態(タスク1、タスク2、安静開眼2、安静開眼3)のパワーの周波数ごとの被験者20名の平均値と標準偏差を示す図である。
F7の電極におけるストレス状態のパワーと安静状態のパワーの差を標準化したパワースペクトルを示す図である。
図2に示す21電極において、各被験者におけるタスク1のパワーから安静開眼1のパワーを引いた値を各周波数で算出し、周波数及び電極配置位置ごとに、算出された値の被験者20名の平均値を示す図である。
図2に示す21電極における図7のパワースペクトルを、周波数及び電極配置位置ごとに示す図である。
第2の実施形態の他の実施例によるストレス評価装置100の概略構成図である。
本発明の第2の実施形態の他の実施例によるストレス評価装置100の帽子装着型電極外観概要図である。
図12に示すストレス評価装置100の基準電位測定用導電性ゴム電極概要図を示す図である。
中心部にダイポール電流源を持つ均一球モデル表面の電位を示す図である。
中心部にダイポール電流源を持つ均一球モデル表面の電位を示す図である。
中心部にダイポール電流源を持つ均一球モデル表面の電位を示す図である。
中心部にダイポール電流源を持つ均一球モデル表面の電位を示す図である。
遅延パラメータ空間上のプロットを示す図である。
中心部にダイポール電流源を持つ均一球モデル表面における各電極A、B、Cの電位の時間発展を示す図である。
本発明の第2の実施形態の電子装置120が3重相関値Sを算出する情報処理を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態の電子装置120により作成された、2つの遅延パラメータ(τ1、τ2)が形成する特徴空間上における被験者Aの3重相関値分布疑似次元表示を示す図である。
本発明の第2の実施形態の電子装置120により作成された、2つの遅延パラメータ(τ1、τ2)が形成する特徴空間上における被験者Bの3重相関値分布の疑似3次元表示を示す図である。
図21の3次元表示の図を上から見た図であって、3つの信号が同符号をとる領域を白で表し、3つの信号のいずれか1つの符号が異なる領域を黒で表した図である。
図22の3次元表示の図を上から見た図であって、3つの信号が同符号をとる領域を白で表し、3つの信号のいずれか1つの符号が異なる領域を黒で表した図である。
図23図24より指標SDを算出するときの白の四角形領域間縦横方向の各距離dxi(i=1、2、…、m)、dyj(j=1、2、…、n)を説明する図である。

実施例

0019

以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるストレス評価装置について説明する。

0020

[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態の技術的特徴の1つは、β波帯域(13Hz以上)ではなく、δ波帯域(1〜4Hz)やθ波帯域(4〜8Hz)のような低い周波数帯の脳波を用いてストレス状態を評価することである。一般的に、後頭部において、ストレス時にはβ波が増大し、リラックス時にはθ波、α波が増大していると言われているが、後頭部の脳波は、髪の毛が邪魔をするため、脳波計測不慣れな一般の人には、ノイズのない綺麗な脳波を測定することは困難である。そこで、本発明の第1の実施形態のストレス評価装置は、前頭部(好ましくはF7)に当接した1つの電極から観測されるδ波帯域(又はδ波帯域及びθ波帯域の下部帯域)の相対パワーの大小によりストレス状態を評価する。ここで相対パワーとは、例えば、θ波帯域〜β波帯域を含む広帯域の脳波のパワーに対する、δ波帯域のパワーの比率である。以下に具体的な構成等を説明する。

0021

[装置概要]
図1は、本発明の第1の実施形態のストレス評価装置100の概略構成図である。ストレス評価装置100は、脳電位センサ110と、電子装置120と、を含む。

0022

脳電位センサ110は、1つの電極111と、電極111で測定された脳電位信号(脳波データ)を電子装置120へ送信する通信部(図示せず)とを含む。電極111は、頭部に接触して取り付けられ、脳機能活動に基づく脳電位信号を測定する。好ましくは、脳電位センサ110は、図1に示すように、被験者が頭部に装着したときに前頭部に電極が当接するように予め電極が配置されたヘッドギア型の脳電位センサである。例えば、脳電位センサ110は、MUSE社製の脳波計である。脳電位センサ110は、予め電極が配置されたキャップヘルメット型等であってもよい。また脳電位センサ110は、基準電極(図示せず)を更に含む。基準電極は不感電極として使用され、例えば耳朶に取り付けられる電極である。

0023

本発明の実施形態においては、図2に示すような国際10−20法の電極配置にFpz(Fp1、Fp2の中間点として定義)、Oz(O1、O2の中間点として定義)を加えた電極配置のうちのいずれかの位置に電極111は配置される。後述するように、好ましくは、脳電位センサ110は、被験者が頭部に脳電位センサ110を装着したときに、電極111が国際10−20法におけるF7の部位又はF7の部位の近傍半径30mm以内に配置されるように構成される。この場合、電極111は、被験者のF7の部位又はF7の部位の半径30mm以内から取得される脳電位信号を取得する。

0024

通信部は無線通信を行い、電極111で取得された脳電位信号を電子装置120へ送信する。ただし、イーサネット登録商標ケーブルUSBケーブル等を用いた有線通信を行うこともできる。脳電位センサ110は複数の電極111を有し、そのうちの1つの電極111で測定された脳電位信号を、通信部が電子装置120へ送信するように構成することもできる。

0025

電子装置120は処理部121、表示部122、入力部123、記憶部124、及び通信部125を備える。これらの各構成部はバス126によって接続されるが、それぞれが必要に応じて個別に接続される形態であってもかまわない。

0026

電子装置120は、好ましくはスマートフォンであるが、一般的なコンピュータやタブレット型コンピュータなどとすることもできる。

0027

処理部121は、電子装置120が備える各部を制御するプロセッサ(例えばCPU)を備えており、記憶部124(例えばメインメモリ)をワーク領域として各種処理を行う。表示部122は、処理部121の制御に従って、ユーザに対して画面を表示するものであり、例えば液晶ディスプレイから構成される。

0028

入力部123は、電子装置に対するユーザからの入力を受け付けるものであり、例えば、タッチパネルタッチパッドキーボード、又はマウスである。記憶部124は、ハードディスク、メインメモリ、及びバッファメモリを含む。ハードディスクにはプログラムが記憶される。ただしハードディスクは、情報を格納できるものであればいかなる不揮発性ストレージ又は不揮発性メモリであってもよく、着脱可能なものであっても構わない。また例えば電子装置120がスマートフォンである場合はROM及びRAMを含む。記憶部124には、プログラムや当該プログラムの実行に伴って参照され得る各種のデータが記憶される。

0029

通信部125は無線通信を行い、脳電位センサからの脳電位信号を受信し、記憶部124に格納する。ただし、イーサネット(登録商標)ケーブル、USBケーブル等を用いた有線通信を行うこともできる。

0030

図3は本発明の第1の実施形態のストレス評価装置100の機能ブロック図である。ストレス評価装置100は、信号取得手段301と、演算手段302とを備える。

0031

信号取得手段301は、被験者の頭部に取り付けられた電極を用いて脳からの脳電位信号を取得する機能を有するものであり、脳電位センサ110は1つの例示である。信号取得手段301は、好ましくは、被験者の前頭部に取り付けられた1つの電極から脳電位信号を取得する機能を有する。

0032

演算手段302は、信号取得手段301により取得された脳電位信号に基づいてストレス状態を評価する機能を有する。演算手段302は、プログラムを電子装置120に実行させることで実現される。1つの例では、電子装置120がスマートフォンである場合、プログラムである専用のアプリダウンロードされて起動されると、演算手段302の機能が実現される。

0033

[情報処理]
図4は、本発明の第1の実施形態の電子装置120がストレス状態を評価する情報処理を示すフローチャートである。ここでは、脳電位センサ110はF7の部位に取り付けられる1つの電極111を有し、電子装置120は当該電極111において取得される脳電位信号を受信する。

0034

ステップ401において、ストレス状態を評価する対象の時間(評価対象時間)内において脳電位センサから受信される脳電位信号を、評価対象脳電位データ(デジタルデータ)として記憶部124に記憶する。評価対象時間を分けることにより、評価対象時間に応じた複数の評価対象脳電位データを記憶することができるが、ここでは1つの評価対象脳電位データについて説明する。評価対象時間は2分以上とすることが好ましく、2分とすることもできるし、5分とすることもできる。

0035

なお、本ステップにおいて、電子装置120は、脳電位センサ110から受信された脳電位信号から公知の方法により瞬き等による脳波以外の過大生体ノイズを除去した後で記憶する。好ましくは、これらのノイズ除去後に、所定の周波数帯域、例えば0〜50Hzを抽出し、評価対象脳電位データを記憶する。図5は、評価対象脳電位データの1つの例示であり、横軸は時間であり、縦軸電圧である。

0036

続いてステップ402において、評価対象脳電位データに対して離散フーリエ変換を行い、各離散フーリエ係数の2乗(2乗平均値)を計算することにより、パワースペクトルを算出する。

0037

図6は、評価対象脳電位データから算出されたパワースペクトルの1つの例示であり、横軸は周波数であり、縦軸はパワーである。パワースペクトルにおいては、周波数分解能Δfの整数倍周波数点ごとに、離散的に値(パワー)を有する。1つの例では、Δf=1.56Hzである。

0038

パワースペクトルは、δ波と、θ波〜β波領域の少なくとも一部を含む広帯域脳波とを含む周波数帯域において算出される。1つの例では、パワースペクトルは0〜20Hzで算出され、Δf=1.56Hzである場合、1.56Hz、3.12Hz、4.68Hz、…、及び18.72Hz(1.56Hz〜18.72Hz)においてパワーを有するパワースペクトルが算出される。

0039

続いてステップ403において、δ波帯域を含む第1の周波数帯域内の各周波数のパワー(離散フーリエ係数の2乗)の合計値の、第1の周波数帯域より高い周波数帯域を含み第1の周波数帯域とは異なる第2の周波数帯域内の各周波数のパワーの合計値に対する比率を算出する。算出された比率からストレス状態評価のための指標値を決定(算出)する。例えば、算出された比率の値そのものを指標値とすることもできるし、算出された比率の百分率を指標値とすることもできるし、又は算出された比率の値の対数を指標値とすることもできる。

0040

1つの例では、第1の周波数帯域はδ波帯域に対応する1〜4Hzであり、第2の周波数帯域はθ波〜β波領域の周波数帯域に対応する4〜20Hzである。この場合、1〜4Hzの各周波数のパワーの合計値の、4〜20Hzの各周波数のパワーの合計値に対する比率を算出する。例えば、Δf=1.56Hzである場合、第1の周波数帯域内の1.56Hz及び3.12Hzの周波数のパワーの合計値の、第2の周波数帯域内の4.68Hz、6.24Hz、7.8Hz、…、及び18.72Hzのパワーの合計値に対する比率を算出することにより、ストレス状態評価のための指標値を算出する。

0041

他の例では、第1の周波数帯域はδ波帯域及びθ波帯域とし、第2の周波数帯域はθ波帯域〜β波帯域とすることもできる。

0042

続いてステップ404において、算出された指標値と、基準指標値とに基づいてストレス状態を評価する。ここで、基準指標値は、本フローチャートが実行される前に予め設定され、記憶部124に記憶されているものであり、算出された指標値からストレス状態を評価する際に基準として用いる指標値である。

0043

1つの例では、ストレス評価装置100(電子装置120)は、以下のとおり、基準指標値を取得し、ストレス状態を評価する。

0044

まず基準指標値の算出について説明する。予め複数の被験者、例えば20名の被験者に対して、ストレス評価装置100を用いることにより、ステップ403に対応する指標値を取得する。本実施形態においては、基準指標値を取得するために、電子装置120は、ステップ401からステップ403に対応する情報処理を実行することができ、取得された指標値を記憶部124に記憶することができる。

0045

指標値は、それぞれの被験者ごとに、ストレス時と安静時の2つのパターンにおいて取得する。ストレス時とは、例えば被験者が監視者の前で難読漢字を大声で読むことを強制されているときであり、安静時とは、例えば目を開けて安静にしているときである。いずれの場合も、好ましくは、少なくとも2分間の脳電位信号を取得する。

0046

続いて、取得された脳電位信号を用いて算出された被験者の数量分のストレス時における複数の指標値(データ群1)の平均値AVE1と標準偏差SD1を算出する。同様にして、被験者の数量分の安静時における複数の指標値(データ群2)の平均値AVE2と標準偏差SD2を算出する。この場合、基準指標値は、AVE1、SD1、AVE2、SV2の4つである。

0047

次に、ストレス状態の評価方法について説明する。電子装置120は、評価対象脳電位データに基づいてステップ403で算出された指標値(ストレス評価の対象の指標値)の、データ群1におけるZスコア(偏差値)Z1及びデータ群2におけるZスコアZ2を算出する。ストレス評価の対象の指標値をXとすると、Z1とZ2はそれぞれ、Z1=(X−AVE1)/SD1、Z2=(X−AVE2)/SD2と表される。

0048

電子装置120は、Z1とZ2の大きさの組み合わせから、被験者のストレス状態を評価する。この場合、Z1が0に近ければ近いほど被験者のストレスは大きく、Z2が0に近ければ近いほど被験者のストレスは小さい。例えば、電子装置120は、被験者のストレス状態を複数の段階やパーセンテージで判定し、判定結果を表示部122に表示する。このような構成とすることにより、本実施形態では、被験者のストレス状態を、他の被験者のストレス時及び安静時のストレス状態と比較して評価する。これにより、定量的なストレス評価を行うことが可能となる。

0049

本実施例における他の例では、基準指標値は、AVE1及びSD1のみ、又はAVE2及びSV2のみとすることもできる。この場合、電子装置120は、Z1又はZ2の大きさから、被験者のストレス状態を評価する。例えば、電子装置120がZ2の大きさから被験者のストレス状態を評価する場合、|Z2|≦0.25ならストレスレベル「0」、0.25<|Z2|≦0.52ならストレスレベル「1」、0.52<|Z2|≦0.84ならストレスレベル「2」、0.84<|Z2|≦1.28ならストレスレベル「3」、1.28<|Z2|ならストレスレベル「4」などと判定することができる。

0050

本実施例における他の例では、基準指標値は、AVE1及びAVE2のみとすることもできる。この場合、電子装置120は、X−AVE1及びX−AVE2の大きさから、被験者のストレス状態を評価する。ただし、これらの例示に限定されない。

0051

他の例では、ストレス評価装置100(電子装置120)は予め基準指標値を取得せずに、ストレス状態を評価する。

0052

この場合、被験者が所定回数(例えば5回)ストレス評価装置100を用いて初めて、すなわちストレス評価装置100が指標値の算出を所定回数行って初めて、電子装置120は、当該被験者の脳電位信号に基づいて算出された指標値から基準指標値を生成する。基準指標値は、例えば当該ストレス評価の直前5回に算出された指標値である。

0053

電子装置120は、ストレス評価の対象の指標値と、直前5回に算出された指標値とを比較することにより、被験者のストレス状態を評価する。例えば、徐々に指標値が上昇している場合は、ストレス状態が高まっていると評価することができる。このような構成とすることにより、本実施形態では、被験者のストレス状態を、当該被験者の過去のストレス状態と比較して評価する。これにより、ストレス評価装置100を用いる被験者のストレスの高まり具合又は緩和具合の評価を行うことが可能となる。

0054

本実施例における他の例では、基準指標値は、例えばストレス評価の対象の指標値を算出する前までに算出された指標値の一部又は全部におけるデータ群3における平均値及び標準偏差である。電子装置120は、ストレス評価の対象の指標値の、データ群3におけるZスコアの大きさから、被験者のストレス状態を評価する。

0055

[実施例]
以下の実験結果により、本発明の第1の実施形態によるストレス評価装置100を用いて、ストレス状態を評価できることを説明する。

0056

本実験においては、被験者20名のそれぞれに対し、安静開眼1(120s)、タスク1(380s)、安静開眼2(120s)、タスク2(380s)、安静開眼3(120s)の状態に順次なってもらい、それぞれの状態における脳電位信号を取得した。このとき被験者に対しては図2に示す21電極を頭皮上に設置し、21電極から脳電位信号を取得した。本実験において用いた電極は、ストレス評価装置100における電極111と同等のものである。

0057

ここで、タスク1、2とは、被験者が監視者の前で難読な漢字を大声で読むことを強制された状態(ストレス状態)であり、安静開眼1、2、3とは、被験者が目を開けて安静にしている状態(安静状態)である。

0058

なお、取得された脳電位信号には(特に前頭部の電極から取得される脳電位信号には)瞬き等による脳波以外の過大生体ノイズが混入するため、脳電位信号の解析を行う前に、これらのノイズを除去し、更に0〜50Hzの周波数帯域を抽出した。

0059

ここで、ある1つの電極における脳電位信号の解析について説明する。以下では、1つの電極をF7の部位に配置するものとするが、他の部位に配置された電極についても同様である。上記の5つの状態のそれぞれにおいて、被験者ごとに、電極から取得された脳電位信号に対して離散フーリエ変換を行い、各離散フーリエ係数の2乗(パワー)を計算することにより、パワースペクトルを算出した。

0060

次に、各被験者のタスク1のパワーから安静開眼1のパワーを引いた値(パワー)を各周波数で算出し、算出された値の被験者20名の平均値と標準偏差をそれぞれの周波数において算出した。安静開眼2、タスク2、及び安静開眼3についても、タスク1と同様にして、それぞれのパワーから安静開眼1のパワーを引いた値を各周波数で算出し、算出された値の被験者20名の平均値と標準偏差をそれぞれの周波数において算出した。タスク1、安静開眼2、タスク2、及び安静開眼3のそれぞれのパワーから安静開眼1のパワーを引いた値を用いたのは、最初の安静開眼1を本実験の測定におけるベースラインとするためである。

0061

図7は、上記のとおり算出された4つの状態(タスク1、タスク2、安静開眼2、安静開眼3)のパワーの周波数ごとの被験者20名の平均値と標準偏差を示す図である。図7は、平均値をプロットし、標準偏差をエラーバーで表示したものである。図7から、5Hz以下において、ストレス状態と安静状態において、大きく差が出ていることが確認できる。

0062

次に、ストレス状態と安静状態の差を電極間で比較できるように、タスク1、2(ストレス状態)のパワーと安静開眼2、3(安静状態)のパワーの差を、標準偏差で割ることにより標準化した。具体的には、各被験者におけるタスク1とタスク2の平均値から安静開眼2と安静開眼3の平均値を引いた値を各周波数で算出し、算出された値の被験者20名の平均値と標準偏差をそれぞれの周波数において算出した。次に、周波数ごとに、それぞれの周波数で算出された平均値をそれぞれの周波数で算出された標準偏差で割ることにより標準化を行った。

0063

図8は、上記のとおりストレス状態のパワーと安静状態のパワーの差を標準化したパワースペクトルを示す図である。図7においても、5〜6Hz以下において、ストレス状態と安静状態において、大きく差が出ていることが確認できる。

0064

本実験においては、上記の解析をすべての電極において実施した。図9は、図2に示す21電極において、各被験者におけるタスク1のパワーから安静開眼1のパワーを引いた値を各周波数で算出し、周波数及び電極配置位置ごとに、算出された値の被験者20名の平均値を示す図(トポグラフィー)である。図10は、図2に示す21電極における図7のパワースペクトルを、周波数及び電極配置位置ごとに示す図である。各図において、1.56、3.13等の数値は、1.56Hz、3.13Hz等を示し、トポグラフィーの色は、白く表示されるほど値が大きく、黒く表示されるほど値が小さい。

0065

図9、10から確認できるように、1.56Hz等の低周波数帯域の前頭部部分、特にF7の部位及びF7の部位の近傍半径30mm以内で、ストレス状態と安静状態において顕著な差が出ている。したがって、本実験から、第1の実施形態のストレス評価装置100を用いて、ストレス状態が評価できることが考えられる。

0066

次に、第1の実施形態によるストレス評価装置100の作用効果について説明する。本実施形態では、前頭部に取り付けられた1つの電極111より取得される脳電位信号からパワースペクトルを算出し、θ波からβ波領域を含む広帯域(例えば4〜20Hz)の脳波のパワーの合計値に対する、δ波を含む低周波数帯(例えば1〜4Hz)の脳波のパワーの比率を算出することにより、被験者のストレス状態を評価する。これにより、被験者はストレス状態を評価したい場合に、後頭部よりも電極が取り付けやすい前頭部に電極を1つ取り付ければよいので、被験者への負担をより低減させることが可能となる。また、ストレスを定量的に評価することが可能となる。

0067

[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態の技術的特徴の1つは、国際出願番号PCT/JP2016/057041に脳の深部の状態を観測する脳機能評価方法として開示されているdNAT法を用いることである。前頭部に配置した3つの電極により発生する前頭部の自己報酬系の抑制を表すδ波の強度を取得し、dNAT法により解析を行うことにより、ストレスに伴う脳内活性をより的確に捉えることが可能となる。以下に具体的な構成等を説明する。

0068

[装置概要]
本発明の第2の実施形態のストレス評価装置100の概略構成図は、第1の実施形態のストレス評価装置100と同様であるため、主として相違点について説明する。脳電位センサ110は、3つの電極111と、当該電極111で測定された脳電位信号を電子装置120へ送信する通信部(図示せず)とを含む。通信部は、3つの電極111のそれぞれから取得された脳電位信号と、基準電極から得られた信号とを電子装置120へ送信し、電子装置120が3つの電極111のそれぞれと基準電極との差分を計算し、3つの脳電位信号の入力とする。あるいは、通信部は、3つの電極111のそれぞれと基準電極との差分の信号3つを脳電位信号として電子装置120へ送信する。

0069

本実施形態においては、前頭葉深部のδ波を観測するための3電極を用いるため、前頭部に3つの電極を配置111する。好ましくは、3つの電極は国際10−20法におけるFp1、Fp2、F8の部位に取り付けられる。例えば脳電位センサ110は、図1に示すように、被験者が頭部に装着したときにFp1、Fp2、F8の部位に電極が当接するように予め電極が配置されたヘッドギア型の脳電位センサである。

0070

図11は、第2の実施形態の他の実施例によるストレス評価装置100の概略構成図である。ストレス評価装置100は、3つの電極111及び基準電極112を含む頭部装着部113と、3つの電極111と信号ケーブルで接続された3ch増幅器帯域フィルタ130と、3ch増幅器・帯域フィルタ130と信号ケーブルで接続された電子装置120と、を有する。

0071

基準電極112は、基準電位測定用の電極であり、不感電極として使用され、好ましくは耳朶接続用クリップ電極である。基準電極112は、3ch増幅器・帯域フィルタ130に接続される。

0072

3つの電極111は、固定具114によって固定される。頭部装着部113は、3つの電極111を固定する固定具114を含む。頭部装着部113は、例えばヘルメットから切り出したブーメランプラスティック製装着部であってもよいし、図1に示すようなヘッドギア形状の装着部であってもよい。頭部装着部113は、好ましくは、被験者が頭部装着部113を装着した場合に、3つの電極が国際10−20法におけるFp1、Fp2、F8の部位に当接するように電極が配置されている。電極111は、好ましくは生理食塩水を含んだ多孔質ファイバー電極であり、電極111上部は導線接続金属円筒で構成される。

0073

図12は、第2の実施形態の他の実施例によるストレス評価装置100の帽子装着型電極の外観概要図である。図13は、基準電位測定用の導電性ゴム電極の外観概要図である。頭部装着部113は、メッシュ状帽子に測定用の電極111が3つ取り付けられたものである。電極111はプリアンプ115と接続されたシールドケーブル116と接続され、好ましくは食塩水を含んだ多孔質導電性ゴムが使用される。

0074

プリアンプ115は、3ch増幅器・帯域フィルタ130の増幅器の機能を有するものであり、帯域フィルタを経由して電子装置120に接続される。基準電極112は、プリアンプ115と電気的に接続された導電性ゴム電極117であり、これによって耳朶接続用クリップ電極は不要となる。ここで、導電性ゴム状の電位均一化と、プリアンプ115からのケーブル接続の際の接触抵抗の低減を図るため、円周状の導電性ゴム電極117と帽子の間には金属フィルム118が設置される。

0075

第2の実施形態のストレス評価装置100は、前述のとおり、前頭部(好ましくはFp1、Fp2、F8)からδ波帯域(1〜4Hz)を抽出した脳電位信号を取得し、取得された脳電位信号から3重相関値と指標値(dNAT値)を算出する。ストレス評価装置100は、算出された3重相関値と指標値を用いて、ストレス状態を評価する。次に測定原理について説明し、続いて3重相関値と指標値の算出するために実行するストレス評価装置100の情報処理について説明する。

0076

[測定原理]
本実施形態における測定においては、脳深部に等価ダイポール電源を仮定している。ここで、このダイポール電位活動を解析するための電位分布測定を、頭皮上に配置した3つの異なる場所に配置された電極に限定して行う場合を考える。脳深部に電源がある場合には、これら3つの電極で観測される電位波形には、強い位相関係が存在するという事実に基づいて、この位相関係を評価する。このようにして、脳深部に仮定した等価ダイポール電源の時間的な挙動近似的に推定する。これは、地震波に例えれば、表層震源を持つ地震波が観測地点ごとに大きく異なるのに比し、深部に震源を持つ地震波では、近い距離をおいて配置された地震計ではほぼ同じ振幅位相P波が観測されることと同等な現象である。

0077

本実施形態における測定においては、脳深部の活動に基づいて表面に現れる電位波形は近い距離離れた表面においてはほぼ同位相であることから、3つの電位の符号が同一であるデータのみを加算する方式を定義する。すなわち同一符号のデータのみを演算の対象とすることで、相関を有するデータを抽出することができる。ただし、すべてのデータを演算の対象とすることもできる。

0078

具体的な情報処理としては、まず3つの電位信号が入力されると、3つの電位が同符号の信号を選択する。1つの例では、電位の符号を判定する際の基準電位は皮質活動を直接反映しない耳朶が用いられるが、帯域フィルタやデジタルフィルタ直流分遮断される場合、それぞれの電極ごとの時間平均から見た正負の符号を判定する。

0079

続いて3重相関値を算出する。3重相関値は、3つの電極からの低周波帯域の電位信号をそれぞれEVA(t)、EVB(t)、EVC(t)としたとき、1つの電極の電位信号に対し、τ1、τ2の時間ずれのある信号との積を使用する。以下に示す式1は3重相関値Stの1つの例示である。ここでTは3重相関値の演算対象時間であり、Δtは各電位信号のデータサンプリング周期であり、Nは規格化するための定数であって、例えば3つの信号の積の計算回数である。

0080

ここで、上述の演算で得られる遅延パラメータ空間上の3重相関プロットが、脳深部の等価ダイポール電源の挙動とどのような関係にあるかを、均一媒質からなる球状モデルを用いて説明する。以下では、説明の便宜上、球モデル各部の呼称を地球になぞらえ、北極(NP)、南極(SP)、赤道等と記載する。

0081

脳深部の活動は、等価的に、深部に微小電流源があるように脳の表面上で観測されることから、球の中心部に、南極から北極に向かう方向に微小電流源を仮定する。この電流源が球表面上につくる電位分布は、図14に示すように、北半球では+、南半球では−、赤道上ではゼロ電位となる。また、この電流源は、赤道上180度経度の異なる点P1、P2と、NP、SPを含む面内で、周期T秒で時計方向に回転する。回転角度90度ごとに各時点での球表面電位分布は、図15図16図17のように逐次変化する。この電位変化を球の表面上に、面P1、NP、P2、SPに平行な三角形頂点に、3つの電極A、B、Cを配置する。各電極から測定された電位波形は、式1により相関値が計算され、計算結果図18の遅延パラメータ空間上にプロットされる。

0082

A、B、Cの各電極の電位の時間発展は図19グラフのようになり、各電極は位相差1/3Tの関係で周期Tの正弦波で変化をする。電極Aを基準にみるとこれらの電極の符号が最も一致するτ1、τ2の値はそれぞれ1/3+kと2/3+k(kは整数)であり、結果として図5における縦横方向に黒丸のプロットで示されるような、周期Tでピークを持つ特性が得られる。またこれらのピークからいずれかの電極が半周期ずれるような位置は、1つの電極が必ず他の2つの電極と逆位相になるため電極の符号が一致することはない。そのため白丸のプロットで示されるような位置は値がプロットされない。

0083

上述のように、脳深部の等価ダイポール電源の回転を2次元の遅延パラメータ空間上のプロットとして観測することができる。図19などは、単一の等価ダイポール電源が球状の脳深部で滑らかに回転した場合について記載する。しかしながら、ダイポールが複数ある場合や回転が滑らかでない場合には、図18上のプロットは、同符号条件を満たす個々のケースが複雑に分布し、遅延パラメータ空間上に細かい凹凸となって現れる。

0084

[情報処理]
ここでは、図1に示すような概略構成を有する第2の実施形態のストレス評価装置100を用いるものとする。

0085

頭部に取り付けられた3つの電極をEA、EB、ECとすると、電子装置120は、各電極から取得される脳電位信号と、基準電極との差として、電位信号VA(t)、VB(t)、VC(t)を取得する。続いて、電子装置120は、デジタルフィルタ等のバンドパスフィルタにより特定の周波数帯(好ましくはδ波帯域)を抽出する。電子装置120は、抽出された電位信号に対して、図20のフローチャートに示す情報処理を実行する。

0086

図20は、本実施形態による電子装置120が3重相関値Sを算出する情報処理を示すフローチャートである。図20は、i秒からi+1秒における3重相関値Si(i=1、2、…、T)を算出する処理のフローチャートを示す。なお本フローチャートは、趣旨を逸脱しない範囲において変更することができる。

0087

ステップ2001において3つの信号が入力されると、ステップ2002において、それぞれの電極の電位ごとに標準偏差(σA、σB、σC)で割って規格化(EVA(t) =VA(t)/σA、EVB(t) =VB(t)/σB、EVC(t) =VC(t)/σC)する。この規格化処理は1秒ごとに行うのが好ましいが、これに限定されない。また上記3つの信号は、電極EAに対し、電極EBはτ1、電極ECはτ2の時間のずれを有している。

0088

なお前述の周波数抽出処理は、規格化処理後に行われてもよい。また規格化処理の前には、ノイズ処理を行うのが好ましい。ノイズ処理は、例えば、1)±100μV以上のセグメントを除く、2)フラットな電位(25msec以上一定の電位だった場合)を除く、3)±1μV以内の電位が1秒以上続く場合は除く、という処理から構成される。

0089

続いてステップ2003において、3つの信号の符号がすべて正(EVA(t)>0、EVB(t-τ1)>0、EVC(t-τ2)>0)、又はすべて負(EVA(t)<0、EVB(t-τ1)<0、EVC(t-τ2)<0)の信号のみを計算対象とする処理をする。

0090

ステップ2004において、時間ずれのある3つの電位信号の積を加算することで、3重相関値(3重相関値の1要素)を算出する。3重相関値の算出は、tがt=i+1秒となるまでΔt秒ずつずらして行う(S2006,S2007)。例えば、電位データサンプリング周波数をfs(Hz)とすると、fs=200Hzの場合はΔt=1/fs=0.005秒ずつずらして、3つの電位信号の積を算出する。本フローチャートにおいては3重相関値を算出するとともに3つの信号が正または負になった時の回数Nを求め(S2005)、最後に割る(S2008)。

0091

ステップ2003〜ステップ2007では、3つの信号の符号がすべて同符号である場合のtについて、以下に示す式2を計算することにより、3重相関値Siを算出する。



(i=1、2、…、T、τ1=Δt、2Δt、…、1(秒)、τ2=Δt、2Δt、…、1(秒))

0092

このようにして、1秒ごとにSiを全データT秒まで算出する(S1、S2、・・・、ST)。T(秒)は好ましくは10(秒)である。上記のとおり、3重相関値は、全データ(T秒)について一度に算出されるのではなく、所定時間ごとに、例えば1秒ごとに算出される。最終的に算出される3重相関値Sは、T個の3重相関値Siの平均値である。

0093

時間ずれτ1、τ2についても、Δt秒ずつずらして3重相関値Sを算出する。τ1及びτ2の取りうる値はΔtの整数倍に等しい1秒以下の時間であるが、これらの値の大きさの最大値は1秒に限定されない。なお3重相関値は、3つの信号の符号判定を行わずに、式2によって算出することもできる。

0094

更に電子装置120は、遅延時間τ1、τ2をそれぞれ、Δt秒、2Δt秒、…、1秒ずつずらして算出された3重相関値Sを、2つの遅延パラメータ(τ1、τ2)が形成する特徴空間上にプロットする機能を有する。これにより、2つの遅延パラメータ(τ1、τ2)が形成する特徴空間上にプロットされた3重相関値分布の疑似3次元表示をすることができる。

0095

図21は、被験者Aから取得される脳電位信号に基づく3重相関値分布の疑似3次元表示であるが、相関を有しないデータの影響を排除するため、予め定められたtの値、例えばt=i+1、においてEVA(t)、EVB(t−τ1)及びEVC(t−τ2)のすべてが同符号であったSi(τ1,τ2)のみをプロットしたものである。プロットするSiをこのように限定することにより、ノイズを除去し、より良い精度で3重相関値分布の疑似3次元表示を示すことができる。

0096

図22は、図21と同様にして、被験者Bから取得される脳電位信号に基づく3重相関値分布の疑似3次元表示である。図21の特徴空間内の3重相関分布は滑らかであるのに対して、図22の特徴空間内の3重相関分布は細かいピークが複雑に分布する場合が多いことが確認できる。

0097

更に電子装置120は、上記の3重相関値分布の疑似3次元表示を用いて、指標値SDを算出する機能を有する。図21及び図22で示したように、2つの遅延時間パラメータ空間内で、被験者Aのデータでは樹木状の分布が規則的に並ぶのに対し、被験者Bのデータでは樹木状の分布の不規則性が大きい。この差を定量的に表現するために、図23に示すように、樹木の列がτ1、τ2軸に平行となるように、座標軸を回転する。図23は、図21に示す3次元表示を上から見た図で、3つの波形が同符号をとる領域を白で表示し、3信号のどれか1つ符号が異なる領域を黒で表す。このような表示をすると、被験者Aの場合には規則的な格子縞となるのに対して、被験者Bの場合には、図24に示すように、格子縞が乱れることが確認できる。この乱れを定量化した指標が指標値SDである。

0098

図23及び図24に示すように白い四角形の領域は、隣接する白い四角形の領域と、縦横方向にそれぞれ間隔を有する。その間隔を図25に示すように、dxi(i=1,2、…、m)、dyj(j=1,2、…、n)とする。このdxiとdyjがτ1方向とτ2方向において、それぞれ白い四角形の縦横が均等に並んでいるか、又は白い四角形が乱れて並んでいるかを判断することで乱れ具合を定量化することができる。

0099

具体的には式3、式4に示すように、m個のdxiの標準偏差Std_dxとn個のdyjの標準偏差Std_dyを算出する。

0100

指標値SDは、式5に示すように、2つの標準偏差の平均値である。

0101

ストレス評価装置100は、指標値SDを3重相関値Sで割ることにより算出される値により、被験者のストレス状態を評価する。例えば、算出されるSD/Sが小さいほど被験者のストレスが大きいと判断する。

0102

他の例では、電子装置120は、式2で算出された1秒ごとの3重相関値の変動の度合いを定量化することにより、指標値Ssを算出する機能を有する。

0103

ここでは、式2の標準偏差をstd_Siとし、i=1、2、…、10までの10個の標準偏差を算出する。更に、この10個の標準偏差の標準偏差std_Sと10個の標準偏差の平均値ave_Sを算出する。

0104

指標値Ssは、式9に示すように、標準偏差と平均値の比である。

0105

次に、第2の実施形態によるストレス評価装置100の作用効果について説明する。本実施形態では、前頭部に取り付けられた3つの電極111より取得される脳電位信号から3重相関値及び指標値を算出することにより、被験者のストレス状態を評価する。これにより、被験者はストレス状態を評価したい場合に、後頭部よりも電極が取り付けやすい前頭部に電極111を3つ取り付ければよいので、被験者への負担をより低減させることが可能となる。また、ストレスを定量的に評価することが可能となる。

0106

以上に説明してきた各実施例は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各実施例は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて本発明の任意の実施形態に適用することができる。すなわち本発明は、その要旨を逸脱しない限り、種々の形態で実施することができる。

0107

100ストレス評価装置
110脳電位センサ
111電極
112基準電極
113頭部装着部
114固定具
115プリアンプ
116シールドケーブル
117導電性ゴム電極
118金属フィルム
120電子装置
121 処理部
122 表示部
123 入力部
124 記憶部
125通信部
126バス
130 3ch増幅器・帯域フィルタ
301信号取得手段
302演算手段

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