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技術 パルス電源装置

出願人 ニチコン株式会社
発明者 青木孝典
出願日 2016年9月20日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2016-182537
公開日 2018年3月29日 (3年7ヶ月経過) 公開番号 2018-050094
状態 特許登録済
技術分野 特殊素子を用いたパルス発生器 粒子加速器 その他の放射線取扱い 衝撃電圧、衝撃電流の発生他
主要キーワード 時間差制御 設定指令信号 最下レベル 時間軸目盛 類似波形 目盛値 パルス変成器 マイナスレベル
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図面 (11)

課題

負荷電磁石電流波形不連続部分をなくして波形全体を連続したものへと回復変形し、負荷電磁石電流を台形状に類似した高対称性波形に近づけながら、そのフラットトップ部における平坦度を改善する。

解決手段

コンデンサC1と一方向スイッチS1の直列回路で負荷電磁石の両端を結ぶ初段の充放電回路21と、コンデンサC2と一方向スイッチS2と波形調整コイルL2の直列回路で負荷電磁石または初段のコンデンサの両端を結ぶ1以上の後続段の充放電回路22と、各コンデンサの充電電圧設定値を調整可能な充電器40を備える。互いに独立したトリガ信号送出して初段の一方向スイッチと後続段の一方向スイッチを閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路30を備える。さらに、初段の充放電回路21には可変抵抗体VR1が挿入されている。

概要

背景

10億電子ボルトを超えるような高エネルギー荷電粒子加速器においては、荷電粒子ビーム真空容器の壁面等に衝突して生ずる放射線による、真空容器材質等の放射化の問題が深刻となる。荷電粒子ビームの軌道を正確に保持するには、電磁石電源に対して電流値相対精度をほぼ0.01%以下の高精度に制御する必要があり、さらには可及的に精度を高めたいという要求がある。

図6は特許文献1に記載された従来例のパルス電源装置の構成を示す回路図である。このパルス電源装置は、負荷電磁石10の回路部に対して台形類似波形パルス電流を供給するものであって、主に次の4つの構成要素を備えている。それは、
(1)初段のコンデンサC1と初段の一方向スイッチS1の直列回路からなるもので、初段のコンデンサC1の充電電力を負荷電磁石10の回路部に放電可能な初段の充放電回路21、
(2)後続段のコンデンサC2と後続段の一方向スイッチS2と波形調整コイルL2の直列回路からなるもので、後続段のコンデンサC2の充電電力を負荷電磁石10の回路部に放電可能な後続段の充放電回路22、
(3)初段のコンデンサC1および後続段のコンデンサC2を充電するもので、その充電電圧設定値を調整可能な充電器40、
(4)互いに独立したトリガ信号送出して初段の一方向スイッチS1と後続段の一方向スイッチS2を閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路30
である。

負荷電磁石10の回路部はインダクタンス成分11と抵抗成分12とを含んでいる。初段の充放電回路21は負荷電磁石10の両端間に接続されている。後続段の充放電回路22も負荷電磁石10の両端間に接続されている。すなわち、負荷電磁石10に対して初段の充放電回路21と後続段の充放電回路22とが並列に接続されている。一方向スイッチS1,S2としては、電流方向の反転に伴って自動的に消弧するサイリスタが用いられている。

トリガ制御回路30は、トリガタイミング調整回路31、初段のゲート駆動回路32、初段の一方向スイッチS1を閉成するための初段のパルス変成器33、後続段のゲート駆動回路34、後続段の一方向スイッチS2を閉成するための後続段のパルス変成器35を含んでいる。トリガタイミング調整回路31は、荷電粒子ビーム装置におけるタイミングシステムから励磁トリガ信号Strを受け取ると、初段のゲート駆動回路32と後続段のゲート駆動回路34に対して時間差TS2(数μ秒〜数十μ秒)をもってトリガ信号T1,T2を送出するように構成されている。トリガタイミング調整回路31は、まず初段のゲート駆動回路32に対してトリガ信号T1を出力し、所定の時間差TS2をおいて後続段のゲート駆動回路34に対してトリガ信号T2を出力する。

出力電圧可変型の充電器40の正極端子が初段の充電用抵抗器R1を介して初段のコンデンサC1の正極端子に接続され、そのコンデンサC1の負極端子が充電器40の負極端子に接続されている。また、充電器40の正極端子が後続段の充電用抵抗器R2を介して後続段のコンデンサC2の正極端子に接続され、そのコンデンサC2の負極端子が充電器40の負極端子に接続されている。D1は保護ダイオードである。

次に、上記のように構成されたパルス電源装置の動作を図7を用いて説明する。図7は従来例のパルス電源装置の各部の電圧電流波形および負荷電磁石に流れるパルス電流波形を示す波形図である。

初段のコンデンサC1および後続段のコンデンサC2が充電器40によって同じ電圧に充電される。

次いで、励磁トリガ信号Strが入力されたトリガタイミング調整回路31は、初段のゲート駆動回路32と後続段のゲート駆動回路34に対して所定の時間差TS2をもって順次にトリガ信号T1,T2を送出する。

初段のゲート駆動回路32はトリガ信号T1の入力タイミングで初段の一方向スイッチS1をターンオンする。後続段のゲート駆動回路34は、所定の時間差TS2の後のトリガ信号T2の入力タイミングで後続段の一方向スイッチS2をターンオンする。

以下、負荷電磁石10に流れるパルス電流のフラットトップ部F(図7参照)での波形の変化について説明する。

負荷電磁石10の抵抗成分12の抵抗値の変化の影響に関しては、充電器40に与える充電電圧設定指令信号を増加することにより負荷電磁石電流i13のピーク値の低下を補償するという考え方がある。しかしながら、温度上昇に伴って電流が立ち下がる方向の傾きが大きくなり、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度が悪化するという問題がある。温度変化に伴って負荷電磁石10における抵抗成分12の抵抗値(給電ケーブルの抵抗値も含む)が変動し、フラットトップ部Fでの電流波形の変化をもたらす。

そこで、2つのトリガ信号T1,T2に対して調整可能な時間差TS2を設けるトリガタイミング調整回路31を装備させている。その時間差TS2を温度上昇に伴って大きくなるように調整することにより、フラットトップ部Fにおける電流の傾きを調整(修正)するようにしている。

パルス電源装置の各部の電圧・電流波形および負荷電磁石10に流れるパルス電流波形の変化を示す例えば図7のように、負荷電磁石10の回路の抵抗値が20mΩから、20.9mΩ、21.8mΩへと増加するのに伴い、後続段の一方向スイッチS2を点弧させるタイミングの時間差TS2(図7(c)では「TS2」と表記)を0μsから2μs、4μsへと徐々に増加させ、同時に充電器40の充電電圧を969.00Vから971.56V、974.12Vへと徐々に増加させることにより、パルス電流波形の変化幅を0.1A以下に抑えることができる。これは基準値3000[A]に対する割合が約0.003%に相当するもので、十分に小さい値となっている(動作の一例)。

以上のように図6に示す従来例においては、温度上昇に従って、充電器40の充電電圧の上昇とともに時間差TS2を増加するようにしたので、温度上昇に伴う電流減少を抑制して、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度を改善することができる。

この図6に示す従来例は、実は、以下のような歴史変遷を経て開発されてきたものである。

旧来の考え方では、コンデンサC1,C2に対する充電電圧を可変するだけのものであった。この場合、パルス電流波形のピーク値の変化(昇温によりピーク値が低下する)を抑制することが可能と考えられていた。

ところが、単に充電電圧を調整するだけであるので、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度の変化までは補償できない。すなわち、温度上昇に伴って抵抗値が増大化し、電流が立ち下がる方向での傾きが大きくなって、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度が悪化してしまう。

上記した図6に示す従来例は、温度変化に起因するパルス電流波形の変化を抑制するために、上記のとおり、コンデンサC1,C2に対する充電電圧を可変するとともに、一方向スイッチS1,S2のターンオンタイミングに時間差をもたせてその時間差を調整する。その結果、図7(c)に示すように、電流波形がA→B′→C′と変化するにつれて、旧来の上記2つの問題点(ピーク値の低下および電流波形自体の変形(低下勾配の変化)を解決する。

概要

負荷電磁石電流の波形に不連続部分をなくして波形全体を連続したものへと回復変形し、負荷電磁石電流を台形状に類似した高対称性波形に近づけながら、そのフラットトップ部における平坦度を改善する。コンデンサC1と一方向スイッチS1の直列回路で負荷電磁石の両端を結ぶ初段の充放電回路21と、コンデンサC2と一方向スイッチS2と波形調整用コイルL2の直列回路で負荷電磁石または初段のコンデンサの両端を結ぶ1以上の後続段の充放電回路22と、各コンデンサの充電電圧設定値を調整可能な充電器40を備える。互いに独立したトリガ信号を送出して初段の一方向スイッチと後続段の一方向スイッチを閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路30を備える。さらに、初段の充放電回路21には可変抵抗体VR1が挿入されている。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

負荷電磁石回路部に対して台形類似波形パルス電流を供給するパルス電源装置であって、初段のコンデンサと初段の一方向スイッチ直列回路からなり、前記初段のコンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な初段の充放電回路と、後続段のコンデンサと後続段の一方向スイッチと波形調整コイルの直列回路からなり、前記後続段の前記コンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な後続段の充放電回路を1以上備えるとともに、前記初段のコンデンサおよび前記後続段のコンデンサを充電するもので、その充電電圧設定値を調整可能な充電器と、互いに独立したトリガ信号送出して前記初段の一方向スイッチと前記後続段の一方向スイッチを閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路とを備えたパルス電源装置であって、前記初段の充放電回路に可変抵抗体を挿入してあることを特徴とするパルス電源装置。

請求項2

負荷電磁石の回路部に対して台形状類似波形のパルス電流を供給するパルス電源装置であって、初段のコンデンサと初段の一方向スイッチの直列回路からなり、前記初段のコンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な初段の充放電回路と、後続段のコンデンサと後続段の一方向スイッチと波形調整用コイルの直列回路からなり、前記後続段の前記コンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な後続段の充放電回路を1以上備えるとともに、前記初段のコンデンサおよび前記後続段のコンデンサを充電するもので、その充電電圧設定値を調整可能な充電器と、互いに独立したトリガ信号を送出して前記初段の一方向スイッチと前記後続段の一方向スイッチを閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路とを備えたパルス電源装置であって、前記初段の充放電回路における前記初段の一方向スイッチに対して逆並列に一方向通電素子を接続してあることを特徴とするパルス電源装置。

請求項3

負荷電磁石の回路部に対して台形状類似波形のパルス電流を供給するパルス電源装置であって、初段のコンデンサと初段の一方向スイッチの直列回路からなり、前記初段のコンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な初段の充放電回路と、後続段のコンデンサと後続段の一方向スイッチと波形調整用コイルの直列回路からなり、前記後続段の前記コンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な後続段の充放電回路を1以上備えるとともに、前記初段のコンデンサおよび前記後続段のコンデンサを充電するもので、その充電電圧設定値を調整可能な充電器と、互いに独立したトリガ信号を送出して前記初段の一方向スイッチと前記後続段の一方向スイッチを閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路とを備えたパルス電源装置であって、前記初段の充放電回路に可変抵抗体が挿入されるとともに、前記初段の充放電回路における前記初段の一方向スイッチに対して逆並列に一方向通電素子が接続されていることを特徴とするパルス電源装置。

請求項4

前記初段の充放電回路と前記後続段の充放電回路との接続点と前記負荷電磁石との間には、前記接続点から前記負荷電磁石へ向かう方向の一方向通電素子が挿入されている請求項2または請求項3に記載のパルス電源装置。

技術分野

0001

本発明は、荷電粒子ビームパルス状にして加速するための加速器などに用いられる電源であって、複数段PFN(Pulse Forming Network:パルス形成回路網)を備えたパルス電源装置に関する。

背景技術

0002

10億電子ボルトを超えるような高エネルギー荷電粒子加速器においては、荷電粒子ビームが真空容器の壁面等に衝突して生ずる放射線による、真空容器材質等の放射化の問題が深刻となる。荷電粒子ビームの軌道を正確に保持するには、電磁石電源に対して電流値相対精度をほぼ0.01%以下の高精度に制御する必要があり、さらには可及的に精度を高めたいという要求がある。

0003

図6は特許文献1に記載された従来例のパルス電源装置の構成を示す回路図である。このパルス電源装置は、負荷電磁石10の回路部に対して台形類似波形パルス電流を供給するものであって、主に次の4つの構成要素を備えている。それは、
(1)初段のコンデンサC1と初段の一方向スイッチS1の直列回路からなるもので、初段のコンデンサC1の充電電力を負荷電磁石10の回路部に放電可能な初段の充放電回路21、
(2)後続段のコンデンサC2と後続段の一方向スイッチS2と波形調整コイルL2の直列回路からなるもので、後続段のコンデンサC2の充電電力を負荷電磁石10の回路部に放電可能な後続段の充放電回路22、
(3)初段のコンデンサC1および後続段のコンデンサC2を充電するもので、その充電電圧設定値を調整可能な充電器40、
(4)互いに独立したトリガ信号送出して初段の一方向スイッチS1と後続段の一方向スイッチS2を閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路30
である。

0004

負荷電磁石10の回路部はインダクタンス成分11と抵抗成分12とを含んでいる。初段の充放電回路21は負荷電磁石10の両端間に接続されている。後続段の充放電回路22も負荷電磁石10の両端間に接続されている。すなわち、負荷電磁石10に対して初段の充放電回路21と後続段の充放電回路22とが並列に接続されている。一方向スイッチS1,S2としては、電流方向の反転に伴って自動的に消弧するサイリスタが用いられている。

0005

トリガ制御回路30は、トリガタイミング調整回路31、初段のゲート駆動回路32、初段の一方向スイッチS1を閉成するための初段のパルス変成器33、後続段のゲート駆動回路34、後続段の一方向スイッチS2を閉成するための後続段のパルス変成器35を含んでいる。トリガタイミング調整回路31は、荷電粒子ビーム装置におけるタイミングシステムから励磁トリガ信号Strを受け取ると、初段のゲート駆動回路32と後続段のゲート駆動回路34に対して時間差TS2(数μ秒〜数十μ秒)をもってトリガ信号T1,T2を送出するように構成されている。トリガタイミング調整回路31は、まず初段のゲート駆動回路32に対してトリガ信号T1を出力し、所定の時間差TS2をおいて後続段のゲート駆動回路34に対してトリガ信号T2を出力する。

0006

出力電圧可変型の充電器40の正極端子が初段の充電用抵抗器R1を介して初段のコンデンサC1の正極端子に接続され、そのコンデンサC1の負極端子が充電器40の負極端子に接続されている。また、充電器40の正極端子が後続段の充電用抵抗器R2を介して後続段のコンデンサC2の正極端子に接続され、そのコンデンサC2の負極端子が充電器40の負極端子に接続されている。D1は保護ダイオードである。

0007

次に、上記のように構成されたパルス電源装置の動作を図7を用いて説明する。図7は従来例のパルス電源装置の各部の電圧電流波形および負荷電磁石に流れるパルス電流波形を示す波形図である。

0008

初段のコンデンサC1および後続段のコンデンサC2が充電器40によって同じ電圧に充電される。

0009

次いで、励磁トリガ信号Strが入力されたトリガタイミング調整回路31は、初段のゲート駆動回路32と後続段のゲート駆動回路34に対して所定の時間差TS2をもって順次にトリガ信号T1,T2を送出する。

0010

初段のゲート駆動回路32はトリガ信号T1の入力タイミングで初段の一方向スイッチS1をターンオンする。後続段のゲート駆動回路34は、所定の時間差TS2の後のトリガ信号T2の入力タイミングで後続段の一方向スイッチS2をターンオンする。

0011

以下、負荷電磁石10に流れるパルス電流のフラットトップ部F(図7参照)での波形の変化について説明する。

0012

負荷電磁石10の抵抗成分12の抵抗値の変化の影響に関しては、充電器40に与える充電電圧設定指令信号を増加することにより負荷電磁石電流i13のピーク値の低下を補償するという考え方がある。しかしながら、温度上昇に伴って電流が立ち下がる方向の傾きが大きくなり、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度が悪化するという問題がある。温度変化に伴って負荷電磁石10における抵抗成分12の抵抗値(給電ケーブルの抵抗値も含む)が変動し、フラットトップ部Fでの電流波形の変化をもたらす。

0013

そこで、2つのトリガ信号T1,T2に対して調整可能な時間差TS2を設けるトリガタイミング調整回路31を装備させている。その時間差TS2を温度上昇に伴って大きくなるように調整することにより、フラットトップ部Fにおける電流の傾きを調整(修正)するようにしている。

0014

パルス電源装置の各部の電圧・電流波形および負荷電磁石10に流れるパルス電流波形の変化を示す例えば図7のように、負荷電磁石10の回路の抵抗値が20mΩから、20.9mΩ、21.8mΩへと増加するのに伴い、後続段の一方向スイッチS2を点弧させるタイミングの時間差TS2(図7(c)では「TS2」と表記)を0μsから2μs、4μsへと徐々に増加させ、同時に充電器40の充電電圧を969.00Vから971.56V、974.12Vへと徐々に増加させることにより、パルス電流波形の変化幅を0.1A以下に抑えることができる。これは基準値3000[A]に対する割合が約0.003%に相当するもので、十分に小さい値となっている(動作の一例)。

0015

以上のように図6に示す従来例においては、温度上昇に従って、充電器40の充電電圧の上昇とともに時間差TS2を増加するようにしたので、温度上昇に伴う電流減少を抑制して、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度を改善することができる。

0016

この図6に示す従来例は、実は、以下のような歴史変遷を経て開発されてきたものである。

0017

旧来の考え方では、コンデンサC1,C2に対する充電電圧を可変するだけのものであった。この場合、パルス電流波形のピーク値の変化(昇温によりピーク値が低下する)を抑制することが可能と考えられていた。

0018

ところが、単に充電電圧を調整するだけであるので、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度の変化までは補償できない。すなわち、温度上昇に伴って抵抗値が増大化し、電流が立ち下がる方向での傾きが大きくなって、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度が悪化してしまう。

0019

上記した図6に示す従来例は、温度変化に起因するパルス電流波形の変化を抑制するために、上記のとおり、コンデンサC1,C2に対する充電電圧を可変するとともに、一方向スイッチS1,S2のターンオンタイミングに時間差をもたせてその時間差を調整する。その結果、図7(c)に示すように、電流波形がA→B′→C′と変化するにつれて、旧来の上記2つの問題点(ピーク値の低下および電流波形自体の変形(低下勾配の変化)を解決する。

先行技術

0020

特開2016−100680号公報

発明が解決しようとする課題

0021

しかし、図6に示す従来例にあっては、実際には、初段のコンデンサC1、後続段のコンデンサC2の静電容量、波形調整用コイルL2および配線の抵抗成分・インダクタンス成分の総合的影響(相互干渉的影響)のために、図8に示すように、初段の充放電回路21を流れる電流(初段電流)i11と後続段の充放電回路22を流れる電流(後続段電流)i12の各波形が乱れやすく、負荷電磁石10の回路部に流れる電流(合成電流)i13(=i11+i12)の波形対称性および平坦度に悪影響を与えるという新たな問題が生じてきた。

0022

すなわち、図8に示すように、初段電流i11についても後続段電流i12についても理想に近い状態を示す図7の波形に比べて歪が生じ(対称性が失われ)、それらを合成した負荷電磁石電流i13の波形は、前半部では立ち上がりがより急激となり、後半部では立ち下がりがより遅いものとなって、対称性が大きく損なわれてしまう。つまり、台形状に類似した理想的な高対称性波形から大きく変形した波形となって平坦度が大幅に低下してしまう。

0023

ちなみに、この図8の場合の平坦度(時間幅10μsでの平坦度)を求めてみると、次のようになる。

0024

負荷電磁石電流i13のピーク値は21215[A]、ピーク値を示すタイミングが262.159[μs]。ピーク値タイミングから前後に5[μs]ずつの10μs幅に相当する電流値までのピーク値からの降下電流値が4.5[A]。

0025

よって、平坦度は、
4.5/21215=212×10-6=212[ppm]
となる。平坦度はその値が小さいほど好ましいものであり、近年、10億電子ボルトを超えるような最先端の高エネルギー荷電粒子加速器用のパルス電源装置においては、212[ppm]では大きすぎ、これをさらに小さくするすなわち平坦度をさらに向上する(2分の1以下にする)ことが強く要請されている。

0026

この平坦度改善の対策として、図6に示す従来例において、初段電流i11の立ち上げタイミングからの後続段電流i12の立ち上げタイミングの遅延時間である時間差TS2を調整し、図7の場合(2[μs]と4[μs])に比べてさらに大幅に長くして、例えば60[μs]とした場合には図9に示すような結果を得た。図10図9図8の差を明示している。

0027

図8(a)と図9(a)と図10(a)とは横軸縦軸が互いに一致している。図10(a)は図8(a)から図9(a)の変化を表している。図10(a)において、初段電流i11(図8)は図8(a)の初段電流i11と同じであり、初段電流i11(図9)は図9(a)の初段電流i11と同じである。図8(a)にかかわる波形は細線で示し、図9(a)にかかわる波形は太線で示している。

0028

図10(a)において、間隔の狭い点線の細線で示される山1つ形の後続段電流i12(図8)はその立ち上がりタイミングが0[μs]となっているのに対して、間隔の狭い点線の太線で示される山1つ形の後続段電流i12(図9)はその立ち上がりタイミングが遅くされ、遅延時間は60[μs]となっている。また、間隔の広い点線の細線で示される山2つ形の初段電流i11(図8)は370[μs]付近極小値を示すが、そこの前後にわたる微分係数の変化は連続したものとなっている。すなわち、波形変化が滑らかなものとなっている。これに対して、間隔の広い点線の太線で示される山2つ形初段電流i11(図9)は300[μs]付近で0レベルとなり、300[μs]付近から370[μs]付近まで0レベルが続き、370[μs]付近以降で0レベルから緩やかに立ち上がっている。すなわち、この初段電流i11(図9)は、その微分係数が不連続で、波形変化における滑らかさが失われている。

0029

次に、山2つ形の初段電流i11における図8から図9への変化と、山1つ形の後続段電流i12における図8から図9への変化とを比較するとともに、それが、負荷電磁石電流i13における図8から図9への変化に及ぼす影響を検討する。

0030

ほぼ130〜300[μs]の範囲では、細線の初段電流i11(図8)から太線の初段電流i11(図9)への変化は減少(変位ベクトルは下向き)であり、その減少の大きさは、細線の後続段電流i12(図8)から太線の後続段電流i12(図9)への増加(変位ベクトルは上向き)の大きさよりも大きいものとなっている。その結果として、太線の負荷電磁石電流i13(図9)は、ほぼ60〜300[μs]の範囲において、細線の負荷電磁石電流i13(図8)よりも下方へ沈み込む形状変化を見せている。これは、前半部での波形変化である。

0031

また、ほぼ400〜600[μs]の範囲では、細線の初段電流i11(図8)から太線の初段電流i11(図9)へは増加(変位ベクトルは上向き)しているのに対して、細線の後続段電流i12(図8)から太線の後続段電流i12(図9)へはほとんど変化していない。その結果として、太線の負荷電磁石電流i13(図9)は、ほぼ370〜770[μs]の範囲において、細線の負荷電磁石電流i13(図8)よりも上方へ膨らむ形状変化を見せている。これは、後半部での波形変化である。

0032

負荷電磁石電流i13につき、以上の前半側での沈み込みと後半側での膨らみとの相乗により、細線の負荷電磁石電流i13(図8)に比べて、太線の負荷電磁石電流i13(図9)は、台形状に類似した高対称性波形により近づいた形を呈することになる。

0033

しかしながら、負荷電磁石電流の平坦度については、立ち上がりタイミングを60[μs]遅くした場合には、遅くする前よりも悪化するということが分かった。この点を、図8(b)、図9(b)および図10(b)を用いて以下に説明する。

0034

目盛スケールについて、前述のとおり図8(a)と図9(a)と図10(a)とでは横軸も縦軸もが同じとなっているのに対して、図8(b)と図9(b)とでは、横軸も縦軸も目盛のスケールが異なっている。一方、図9(b)と図10(b)とでは、横軸も縦軸も目盛の間隔が同じとなっていて、時間軸は230〜380[μs]の範囲(全150[μs])で目盛値が共通であるが、電流軸は目盛値が異なる。図8(b)における時間軸目盛は250〜280[μs]の範囲(全30[μs])であり、図9(b)における時間軸目盛は230〜380[μs]の範囲(全150[μs])である。後者の方がより細かい目盛となっている。図8(b)における電流軸目盛は21.208〜21.218[kA]の範囲(全0.01[kA]=10[A])であり、図9(b)における電流軸目盛は20.100〜20.400[kA]の範囲(全0.3[kA]=300[A])である。これも、後者の方がより細かい目盛となっている。

0035

図10(b)は図9(b)と縦軸横軸とも同じスケールの目盛のグラフに、図9(b)の負荷電磁石電流i13(図9)と図8(b)の負荷電磁石電流i13(図8)とを描いたものである。縦軸である電流軸は相対的な目盛となっている。これは、負荷電磁石電流i13(図9)と負荷電磁石電流i13(図8)につき、形状変化を表すことを意図したもので、絶対的な電流値は無関係なものとなっている。

0036

図8図9図10から明かなように、初段電流i11に対して後続段電流i12を60[μs]遅延させて立ち上げると、図9(a)のように初段電流i11は0レベルが一定時間続く不連続なものになり、これに伴って負荷電磁石電流i13は図9(a)、図10(a)に示すように、その波形が全体として台形状に類似した高対称性波形により近づいたものになる反面、図8(b)と図9(b)との比較で示すように、あるいは図10(b)に示すように、そのフラットトップ部Fで不連続な2山形の波形を呈し、平坦度が極端に悪化してしまう。

0037

なお、図10(b)における負荷電磁石電流i13(図8)の波形についてであるが、その太い実線部分が図8(b)に図示されたほぼ256〜268[μs]の範囲の負荷電磁石電流i13に対応している。細い破線部分は、範囲を広げても1山形であることを示している。

0038

後続段電流i12を遅延して立ち上げた場合の図10(b)に示す負荷電磁石電流i13(図9)は、微分係数がマイナスから一気にプラスに変化する不連続な2山形の波形となっていて、要求された瞬時電流値の範囲を逸脱してしまい、これでは、荷電粒子ビームの軌道を正確に保持することができなくなってしまう。

0039

本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、パルス電源装置に関して、負荷電磁石電流の波形において、不連続部分をなくして波形全体を連続したものへと回復形することにより、負荷電磁石電流を台形状に類似した高対称性波形に近づけながら、そのフラットトップ部における平坦度をさらに改善することを目的としている。

課題を解決するための手段

0040

本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。

0041

〈1〉本発明による第1のパルス電源装置は、
負荷電磁石の回路部に対して台形状類似波形のパルス電流を供給するパルス電源装置であって、
初段のコンデンサと初段の一方向スイッチの直列回路からなり、前記初段のコンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な初段の充放電回路と、
後続段のコンデンサと後続段の一方向スイッチと波形調整用コイルの直列回路からなり、前記後続段の前記コンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な後続段の充放電回路を1以上備えるとともに、
前記初段のコンデンサおよび前記後続段のコンデンサを充電するもので、その充電電圧設定値を調整可能な充電器と、
互いに独立したトリガ信号を送出して前記初段の一方向スイッチと前記後続段の一方向スイッチを閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路とを備えたパルス電源装置であって、
前記初段の充放電回路に可変抵抗体を挿入してあることを特徴とする。

0042

〈2〉本発明による第2のパルス電源装置は、
負荷電磁石の回路部に対して台形状類似波形のパルス電流を供給するパルス電源装置であって、
初段のコンデンサと初段の一方向スイッチの直列回路からなり、前記初段のコンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な初段の充放電回路と、
後続段のコンデンサと後続段の一方向スイッチと波形調整用コイルの直列回路からなり、前記後続段の前記コンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な後続段の充放電回路を1以上備えるとともに、
前記初段のコンデンサおよび前記後続段のコンデンサを充電するもので、その充電電圧設定値を調整可能な充電器と、
互いに独立したトリガ信号を送出して前記初段の一方向スイッチと前記後続段の一方向スイッチを閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路とを備えたパルス電源装置であって、
前記初段の充放電回路における前記初段の一方向スイッチに対して逆並列に一方向通電素子を接続してあることを特徴とする。

0043

〈3〉本発明による第3のパルス電源装置は、
負荷電磁石の回路部に対して台形状類似波形のパルス電流を供給するパルス電源装置であって、
初段のコンデンサと初段の一方向スイッチの直列回路からなり、前記初段のコンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な初段の充放電回路と、
後続段のコンデンサと後続段の一方向スイッチと波形調整用コイルの直列回路からなり、前記後続段の前記コンデンサの充電電力を前記負荷電磁石の回路部に放電可能な後続段の充放電回路を1以上備えるとともに、
前記初段のコンデンサおよび前記後続段のコンデンサを充電するもので、その充電電圧設定値を調整可能な充電器と、
互いに独立したトリガ信号を送出して前記初段の一方向スイッチと前記後続段の一方向スイッチを閉路させるもので、各トリガ信号どうし間の時間差を調整可能なトリガ制御回路とを備えたパルス電源装置であって、
前記初段の充放電回路に可変抵抗体が挿入されるとともに、前記初段の充放電回路における前記初段の一方向スイッチに対して逆並列に一方向通電素子が接続されていることを特徴とする。

0044

〈1A〉上記〈1〉の構成のパルス電源装置においては、初段の充放電回路に挿入した可変抵抗体の抵抗値を調整することによって初段電流の波高値やレベルを制御し、初段電流の最下レベル部に認められた平坦部をなくして、波形全体を滑らかに変化するものに調整する。すなわち、波形の不連続部分をなくすようにして、波形全体を連続したものへと回復変形する。これにより、初段電流と遅延させた後続段電流との合成よりなる負荷電磁石電流を台形状に類似した高対称性波形に近づけながら、そのフラットトップ部における平坦度を改善することが可能となる。

0045

〈2A〉上記〈2〉の構成のパルス電源装置においては、初段の充放電回路における初段の一方向スイッチに対して逆並列に一方向通電素子を接続している。その結果、一旦上昇した初段電流が降下して、その最下位レベルに近づいたときに、逆並列の一方向通電素子の存在によって初段電流はマイナスレベルへ進むことが可能である。すなわち、従来例の場合のような0レベルを下限とするリミット作用が効かない。このように初段電流の最下位レベルでの連続性が回復するため、初段電流と遅延させた後続段電流との合成よりなる負荷電磁石電流を台形状に類似した高対称性波形に近づけながら、そのフラットトップ部における平坦度を大きく改善することが可能となる。

0046

〈3A〉上記〈3〉の構成のパルス電源装置においては、初段の充放電回路に可変抵抗体を挿入するとともに、初段の一方向スイッチに対して逆並列に一方向通電素子を接続している。これにより、さらにフラットトップ部における平坦度の改善を図ることができる。

0047

上記構成の本発明のパルス電源装置には、次のような好ましい変化・変形の態様がある。すなわち、それは、前記初段の充放電回路と前記後続段の充放電回路との接続点と前記負荷電磁石との間には、前記接続点から前記負荷電磁石へ向かう方向の一方向通電素子が挿入されている、という態様である。

0048

これにより、初段電流のマイナスレベルへの滑らかなシフトを確実化することが可能となる。

発明の効果

0049

本発明によれば、負荷電磁石電流の波形における不連続部分をなくして波形全体を連続したものへと回復変形するための調整要素を増やすことにより、負荷電磁石電流を台形状に類似した高対称性波形に充分に近づけながら、そのフラットトップ部における平坦度を改善することができる。

図面の簡単な説明

0050

本発明の第1の実施例におけるパルス電源装置の構成を示す回路図
本発明の第1の実施例におけるパルス電源装置の初段と後続段の各充放電回路および負荷電磁石に流れるパルス電流波形を示す波形図
本発明の第2の実施例におけるパルス電源装置の構成を示す回路図
本発明の第2の実施例におけるパルス電源装置の初段と後続段の各充放電回路および負荷電磁石に流れるパルス電流波形を示す波形図
本発明の変形例におけるパルス電源装置の構成を示す回路図
従来例におけるパルス電源装置の構成を示す回路図
従来例におけるパルス電源装置の各部の電圧・電流波形および負荷電磁石に流れるパルス電流波形を示す波形図
従来例におけるパルス電源装置の問題点を指摘するための波形図
従来例におけるパルス電源装置の問題点を指摘するための波形図
従来例におけるパルス電源装置の問題点を指摘するための波形図

実施例

0051

以下、上記構成の本発明のパルス電源装置につき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。

0052

〔第1の実施例〕
図1は本発明の第1の実施例におけるパルス電源装置の構成を示す回路図、図2はそのパルス電源装置の初段と後続段の各充放電回路および負荷電磁石に流れるパルス電流波形を示す波形図である。

0053

図1において、10は荷電粒子ビーム装置における負荷電磁石、11は負荷電磁石10の回路部に含まれるインダクタンス成分、12は負荷電磁石10の回路部に含まれる抵抗成分、21は初段のコンデンサC1と初段の一方向スイッチS1と可変抵抗体VR1とを直列接続して負荷電磁石10(インダクタンス成分11および抵抗成分12の直列回路)の両端間に接続された初段の充放電回路、22は後続段のコンデンサC2と後続段の一方向スイッチS2と波形調整用コイルL2を直列接続して負荷電磁石10の両端間に接続された後続段の充放電回路である。可変抵抗体VR1は、抵抗値が数mΩ〜数十mΩと非常に小さく、例えば銅バーケーブル等により構成され抵抗値が調整される。本実施例の場合、後続段の充放電回路22の段数は1段となっている。一方向スイッチS1,S2については、本実施例では電流方向の反転に伴って自動的に消弧するサイリスタが用いられているが、他の制御スイッチング素子に変えてもよい。

0054

初段の充放電回路21においては、負荷電磁石10に負極端子が接続された初段のコンデンサC1の正極端子にサイリスタからなる初段の一方向スイッチS1の陽極端子アノード)が接続され、その一方向スイッチS1の陰極端子カソード)に可変抵抗体VR1が接続されている。また、後続段の充放電回路22においては、負荷電磁石10に負極端子が接続された後続段のコンデンサC2の正極端子にサイリスタからなる後続段の一方向スイッチS2の陽極端子(アノード)が接続され、その一方向スイッチS2の陰極端子(カソード)に波形調整用コイルL2が接続されている。可変抵抗体VR1の一端と波形調整用コイルL2の一端が互いに接続され、その接続点が負荷電磁石10に接続されている。

0055

30はトリガ制御回路、31はトリガタイミング調整回路、32は初段のゲート駆動回路、33は初段の一方向スイッチS1を閉成するための初段のパルス変成器、34は後続段のゲート駆動回路、35は後続段の一方向スイッチS2を閉成するための後続段のパルス変成器である。トリガ制御回路30におけるトリガタイミング調整回路31は、荷電粒子ビーム装置におけるタイミングシステムから励磁トリガ信号Strを受け取ると、初段のゲート駆動回路32と後続段のゲート駆動回路34に対して時間差TS2(数μ秒〜数十μ秒)をもってトリガ信号T1,T2を送出するように構成されている。

0056

トリガタイミング調整回路31は、まず初段のゲート駆動回路32に対してトリガ信号T1を出力し、所定の時間差TS2をおいて後続段のゲート駆動回路34に対してトリガ信号T2を出力する。

0057

また、図1において、40は出力電圧が調整可能な(出力電圧可変型の)充電器、D1は保護ダイオード、R1,R2は充電用抵抗器である。保護ダイオードD1は充電器40の両端間に接続されている。充電器40の正極端子が初段の充電用抵抗器R1を介して初段のコンデンサC1の正極端子に接続され、そのコンデンサC1の負極端子が充電器40の負極端子に接続されている。また、充電器40の正極端子が後続段の充電用抵抗器R2を介して後続段のコンデンサC2の正極端子に接続され、そのコンデンサC2の負極端子が充電器40の負極端子に接続されている。

0058

上記の構成は、図6に示す従来例との対比において、初段の充放電回路21に可変抵抗体VR1を挿入したことに、その特徴がある。なお、初段の充放電回路21における可変抵抗体VR1の挿入箇所については、波形調整用コイルL2と初段の一方向スイッチS1との間とする以外に、初段のコンデンサC1と初段の一方向スイッチS1との間であってもよい。

0059

次に、上記のように構成された本実施例のパルス電源装置の動作を説明する。

0060

充電器40から初段の充電用抵抗器R1を介して初段のコンデンサC1を充電するとともに、後続段の充電用抵抗器R2を介して後続段のコンデンサC2を充電する。これら両コンデンサC1,C2は同じ電圧に充電される。

0061

次いで、荷電粒子ビーム装置のタイミングシステムにおいて所定のタイミングで生成された励磁トリガ信号Strがトリガタイミング調整回路31に入力されると、トリガタイミング調整回路31は初段のゲート駆動回路32と後続段のゲート駆動回路34に対して所定の時間差TS2をもって順次にトリガ信号T1,T2を送出する。

0062

トリガ信号T1を入力した初段のゲート駆動回路32は初段のパルス変成器33を介して初段の一方向スイッチS1にゲートパルスを出力し、初段の一方向スイッチS1をターンオンする。また、所定の時間差TS2の後に、トリガ信号T2を入力した後続段のゲート駆動回路34は後続段のパルス変成器35を介して後続段の一方向スイッチS2にゲートパルスを出力し、後続段の一方向スイッチS2をターンオンする。初段の一方向スイッチS1のターンオンのタイミングと後続段の一方向スイッチS2のターンオンのタイミングとは、両者間に前記の所定の時間差TS2が開けられる。

0063

前記のトリガタイミング調整回路31に対する励磁トリガ信号Strの出力タイミングは次のように定められる。それは、荷電粒子ビーム装置において、磁場の印加対象である荷電粒子ビームが負荷電磁石10を通過するタイミングで負荷電磁石10に流れるパルス電流がピーク値に達するようなタイミングである。すなわち、負荷電磁石電流i3 の電流波形のフラットトップ部F(図2参照)は、荷電粒子ビームが負荷電磁石10を通過する期間に対応する。

0064

以下、フラットトップ部Fでの電流波形の変化について説明する。

0065

負荷電磁石10の回路部分の抵抗成分12の抵抗値は、温度変化に伴って変動し、フラットトップ部Fでの電流波形の変化をもたらす。抵抗成分12の抵抗値には、パルス電源装置から負荷電磁石10に給電するためのケーブルの抵抗値が含まれている。給電ケーブルとしては、パルス大電力伝送する場合に通常は同軸ケーブルが使用されるが、絶縁コスト上の観点から水冷導体を使用できない場合が多く、温度上昇を生起する。特に、パルス状かつ断続的に荷電粒子ビームを加速する加速器用途においては、実効電流によるジュール熱のために導体温度が数十℃上昇する場合がある。そのような場合には、抵抗成分12の抵抗値が10%程度増加する。

0066

負荷電磁石10の抵抗成分12の抵抗値の変化の影響に関しては、従来例における問題点として説明したように、充電器40に与える充電電圧設定指令信号を増加することにより負荷電磁石電流i3 のピーク値の低下を補償するという考え方がある。しかしながら、温度上昇に伴って電流が立ち下がる方向の傾きが大きくなり、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度が悪化するという問題があった。

0067

そこで、トリガタイミング調整回路31において、初段の一方向スイッチS1と後続段の一方向スイッチS2とを各々閉路させる2つのトリガ信号T1,T2に対して調整可能な時間差TS2を設け、両トリガ信号T1,T2の時間差TS2を温度上昇に伴って大きくなるように調整することにより、フラットトップ部Fにおける電流の傾きを調整(修正)し、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度の改善が試みられる。

0068

しかしながら、〔発明が解決しようとする課題〕の欄で説明したように、初段・後続段のコンデンサC1,C2の静電容量、波形調整用コイルL2や配線の抵抗成分・インダクタンス成分の総合的影響(相互干渉的影響)のために、2つのトリガ信号T1,T2の立ち上がりタイミングの時間差TS2を様々に調整してみても、フラットトップ部Fにおける電流の平坦度の向上が容易には実現できなかった。

0069

すなわち、負荷電磁石電流i3 の波形について、理想的な台形状類似波形に近づけること(前半部と後半部との対称性を向上させること)が可能ではあっても、フラットトップ部Fでの厳密な波形を観察すると、初段電流i1 の波形がその微分係数において不連続なものとなり、それが波及して負荷電磁石電流i3 の波形もその微分係数において不連続な2山形になってしまうという不都合事態を招来していた(図8図9および図10参照)。

0070

これに対して、本発明の第1の実施例においては、初段の充放電回路21に可変抵抗体VR1を挿入して、上記不都合の原因となっている初段電流i1 の波形における微分係数の不連続性(0レベルの一定時間継続)を解消し、その波形を滑らかなものとすることができる。

0071

図2(b)は図2(a)のフラットトップ部Fの近傍を拡大したものであり、図6に示す従来例の場合の図9図10と比べて、負荷電磁石電流i3 における連続性および対称性の改善、平坦度の向上を認めることができる。

0072

すなわち、
(1)初段のコンデンサC1および後続段のコンデンサC2を充電する充電器40を、充電電圧設定値を調整可能な可変型にした構成、
(2)初段の一方向スイッチS1と後続段の一方向スイッチS2に対する2つのトリガ信号T1,T2どうし間に立ち上がりタイミングの時間差TS2をもたせ、その時間差TS2を調整可能にしたトリガ制御回路30の構成、
(3)初段の充放電回路21に可変抵抗体VR1を挿入した構成
の以上3つの構成により、負荷電磁石電流i3 の波形調整の自由度を増やしている。

0073

その結果として、負荷電磁石電流i3 の波形について、台形状に類似した理想的な高対称性波形に近づけ(前半部と後半部との対称性を向上させ)、かつ、フラットトップ部Fでの初段電流i1 の波形ひいては負荷電磁石電流i3 の波形の微分係数を厳密に連続的なものとし(従来例の場合の不連続な2山形を解消し)、負荷電磁石電流i3 の波形を滑らかなものとすることができるようになった。

0074

〔第2の実施例〕
図3は本発明の第2の実施例におけるパルス電源装置の構成を示す回路図、図4はそのパルス電源装置の初段と後続段の各充放電回路および負荷電磁石に流れるパルス電流波形を示す波形図である。図3図4において、第1の実施例の図1図2で用いたのと同一符号は同一の構成要素を指すものとし、詳しい説明は省略する。

0075

第2の実施例が第1の実施例と異なる構成は次のとおりである。すなわち、第2の実施例においては、その初段の充放電回路21には第1の実施例における可変抵抗体VR1の代わりに初段の一方向スイッチS1に対して逆並列に第1の一方向通電素子D2を接続している。ここでは、第1の一方向通電素子D2としてダイオードを用いている。第1の一方向通電素子D2が初段の一方向スイッチS1に逆並列接続されているというのは、ダイオードD2のアノードがサイリスタS1のカソードに接続され、ダイオードD2のカソードがサイリスタS1のアノードに接続されているということである。

0076

また、初段の一方向スイッチS1と波形調整用コイルL2との接続点と負荷電磁石10の入力端子との間に第2の一方向通電素子D3が挿入されている。この第2の一方向通電素子D3としてもダイオードが用いられている。

0077

第1の一方向通電素子D2と第2の一方向通電素子D3とは、次のような関係性をもっている。第1の実施例の場合には、後続段の充放電回路22から出力される後続段電流i2 が初段の充放電回路21に流入することは想定していない。このことは、図9(a)、図10(a)において、降下する初段電流i1 の最下位レベルが0レベルであることに反映されている。

0078

これに対して、第2の実施例においては、初段の一方向スイッチS1に第1の一方向通電素子D2を逆接続することにより、後続段の充放電回路22から出力される後続段電流i2 を初段の充放電回路21に流入させようとしている。つまり、初段のコンデンサC1を逆充電するためである。これにより、初段のコンデンサC1は、そのハイサイド端子低電位側で、ローサイド端子高電位側となる充放電状態許容されることになる。すなわち、初段電流i1 がマイナスレベルとなることを許容することが可能となっている。

0079

そして、第2の一方向通電素子D3の挿入理由であるが、これは、上記のように、ハイサイド端子が低電位側で、ローサイド端子が高電位側となった初段のコンデンサC1が、負荷電磁石10に対して正規とは逆方向に電流を流すことを阻止するためである。

0080

すなわち、本実施例は、第1の一方向通電素子D2の追加によって初段電流i1 のマイナスレベルへのシフトを許容しながら、第2の一方向通電素子D3の追加によって、マイナスレベルシフトにもかかわらず、負荷電磁石10での逆電流を回避するものとなっている。

0081

その他の構成については第1の実施例の場合と同様である。

0082

図4(a)に示すように、まず初段電流i1 が立ち上がって増加し、次いで所定の時間差TS2で遅延して後続段電流i2 が立ち上がる。後続段電流i2 が次第に増加するにつれて初段電流i1 が次第に減少してゆく。後続段電流i2 が増加してその最上位レベルに近づくにつれて、初段電流i1 はその最下位レベルに近づく。初段電流i1 がその最下位レベルに近づき、0レベルに達すると、逆並列の一方向通電素子の存在によって初段電流i1 はマイナスレベルへ進むことが可能である。すなわち、後続段の充放電回路22の波形調整用コイルL2を出た後続段電流i2 の一部が第1の一方向通電素子D2を介して初段のコンデンサC1に流入する。このように、第2の実施例においては、図6に示す従来例の場合のような0レベルを下限とするリミット作用が働かない。

0083

後続段電流i2 が滑らかに上昇し、その最上位レベルに達し、引き続いて滑らかなカーブを描いて減少に転じる。この間、初段電流i1 は滑らかに降下し、0レベルを通過してマイナスレベルに入るも引き続いて滑らかなカーブを描いて降下し、その最下位レベルに達し、引き続いて滑らかなカーブを描いて上昇に転じる。

0084

後続段電流i2 も初段電流i1 もともにその全体、とりわけ極点(最上位レベル、最下位レベル)付近においても、滑らかに連続して変化するので、後続段電流i2 と初段電流i1 を合成した負荷電磁石電流i3 も滑らかに連続して変化するものとなる。

0085

図4(b)は図4(a)のフラットトップ部Fの近傍を拡大したものであり、図6に示す従来例の場合の図9図10と比べて、負荷電磁石電流i3 における連続性および対称性の改善、平坦度の向上を認めることができる。さらに、図1に示す第1の実施例の場合の図2と比べても、平坦度の大幅な向上を認めることができる。

0086

このようにして、初段電流i1 の最下位レベルでの連続性が回復するため、負荷電磁石電流i3 を台形状に類似した高対称性波形に近づけながら、そのフラットトップ部Fにおける平坦度を大きく改善することが可能となる。

0087

その他の動作については第1の実施例の場合と同様である。

0088

〔変形例〕
なお、本発明は上記実施例に限らず、以下のように変形することができる。例えば、上記第2の実施例では、第1の実施例における可変抵抗体VR1に代えて、第1の一方向通電素子D2と第2の一方向通電素子D3とを用いているが、これに限定されず、図5に示すように可変抵抗体VR1とともに、第1の一方向通電素子D2と第2の一方向通電素子D3とを用いてもよい。これにより、さらにフラットトップ部Fにおける平坦度の改善を図ることができる。

0089

本発明は、荷電粒子ビームの加速器などに用いられるもので、複数段のパルス形成用回路網(PFN)を備えたパルス電源装置に関して、温度変化に伴う回路定数の変化に起因するパルス電流波形の変動現象に対して、パルス電流波形のフラットトップ部での波高値および波形要部の傾きの変化打ち消して、生成するパルス電流の波形を最適化する技術として有用である。特に、負荷電磁石電流の波形で不連続部分をなくして波形全体を連続したものへと回復変形し、負荷電磁石電流を台形状に類似した高対称性波形に近づけながら、そのフラットトップ部における波形のさらなる平坦度改善にとって有用である。

0090

10負荷電磁石
21 初段の充放電回路
22後続段の充放電回路
30トリガ制御回路
31トリガタイミング調整回路
32 初段のゲート駆動回路
33 初段のパルス変成器
34 後続段のゲート駆動回路
35 後続段のパルス変成器
40充電電圧設定値を調整可能な充電器
51電流波形測定器
52 電流波形記録手段
53 電流波形演算手段
54充電電圧制御回路
55時間差制御回路
C1 初段のコンデンサ
C2 後続段のコンデンサ
D2逆並列接続の第1の一方向通電素子
D3 第2の一方向通電素子
L2波形調整用コイル
S1 初段の一方向スイッチ
S2 後続段の一方向スイッチ
VR1 可変抵抗体

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