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技術 充電式バッテリ用のリチウム遷移金属酸化物カソード物質の前駆体

出願人 ユミコアユミコア・コリア・リミテッド
発明者 リアン・ジュランディ・ドゥ・パルマスン・ジュン・チョ
出願日 2017年8月9日 (1年11ヶ月経過) 出願番号 2017-153946
公開日 2018年3月29日 (1年3ヶ月経過) 公開番号 2018-049815
状態 特許登録済
技術分野 電池の電極及び活物質 重金属無機化合物(II)
主要キーワード 上部線 主ステップ 窓範囲 バッテリセット 電力バッテリ ピーク構造 局部歪 CO型
関連する未来課題
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図面 (9)

課題

カソードのDCR抵抗を改善し、バッテリの長期間の動作中に、DCRが増加するのを抑制する。

解決手段

一般式NixMnyCozAaOv(OH)wを有し、(0.15<v<0.30;v+w=2;0.30≦x≦0.75;0.10≦y≦0.40;0.10≦z≦0.40;Aはドーパント;a≦0.05;x+y+z+a=1)2θ=38±0.5°でツインピークを有するXRDパターンを有する結晶構造からなり、ツインピークはピーク強度ILを有する左側ピーク及びピーク強度IRを有する右側ピークを有し、ピーク強度比R=IR/ILはR>0.7であり、XRDパターンはスピネル及びオキシ水酸化物化合物のうちいずれか一方又は両方に属するピークを含まない、リチウムイオンバッテリ正極活物質用粒子状前駆体化合物。

概要

背景

充電式リチウム及びリチウムイオンバッテリは、高エネルギ密度であるため、携帯電話ラップトップコンピュータデジタルカメラ及びビデオカメラなどの多種多様携帯用電子機器用途で使用することができる。市販のリチウムイオンバッテリは、通常、グラファイト系アノード及びLiCoO2系カソード物質からなる。しかしながら、LiCoO2系カソード物質は高価であり、通常その容量は、およそ150mAh/gと比較的低い。LiCoO2系カソード物質に対する代替品は、LNMCO型カソード物質を含む。LNMCOとは、リチウム−ニッケルマンガンコバルト酸化物を意味する。この組成はLiMeO2(式中、Meは金属を表すが、ドープ材料にも範囲が及ぶ)又はLi1+x’Me1−x’O2(式中、MeはNixCoyMnzAm(これは、より一般的に「NMC」と称され、Aは1つ以上のドーパントである)である)。LNMCOは、LiCoO2と類似した層状結晶構造空間群R−3m)を有する。LNMCOカソードの利点は、純粋なCoに対する組成Mの非常に安い原料費である。Niの添加によって放電容量が増加するが、Ni含有量が増加するにつれての熱安定性が減少するために制限される。この問題を補うためにMnが構造安定化元素として添加されるが、これと同時に一部の容量が失われる。

目標リチウム含有複合酸化物は、一般には、前駆体物質(最終カソード物質が有するものと同じ金属組成を有する)としてのニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物リチウム化合物と混合し、この混合物焼成することによって合成される。セル特性は、ニッケル、コバルト及びマンガンの一部を、Al、Mg、Zr、Ti、Sn及びFeなどの他の金属元素で置き換えることによって改善することができる。好適な置換量は、ニッケル、コバルト及びマンガン原子の総量の0.1〜10%である。

一般に、複雑な組成のカソード物質の製造のためには、混合遷移金属水酸化物NixCoyMnz(OH)2などの特別な前駆体が使用される。その理由は、高性能なLi−M−O2が、十分混合された遷移金属カチオンを必要とするからである。「過焼結する」(リチウム前駆体、通常はLi2CO3又はLiOHとともに長時間にわたって高温焼結する)ことなく、このことを達成するためには、カソード前駆体は、遷移金属を、混合遷移金属水酸化物において提供されるようによく混合された形態(原子レベルで)で含有する必要がある。好適なサイズ及び形態の混合水酸化物は、通常、(1)制御されたpH下で、NaOH流及び混合金属塩流を用いて反応器内で混合水酸化物を沈殿させるステップ、(2)前駆体懸濁液を除去及び濾過するステップ、(3)濾過したウェットケークを規定された条件下で乾燥させるステップ、により、沈殿反応によって達成される。

米国特許第8980475号において、リチウム混合金属酸化物を調製するためのプロセスが開示されており、これは、
a)中間体(B)として示される混合物を調製するステップであって、(B)が本質的に、リチウム含有混合金属水酸化物とリチウム含有混合金属酸化物水酸化物とを含み、
−ここで、マンガン、コバルト及びニッケルは、(1−a−b):a:bの比で含まれ、マンガン、コバルト及びニッケルのすべてのイオンにわたって平均化された酸化状態は、少なくとも4−1.75a−1.75bであり、式中、0≦a≦0.5及び0.1≦b≦0.8であり、
−少なくとも1つの遷移金属化合物と少なくとも1つのリチウム塩(L)とを含む混合物(A)を、連続的に混合しながら、かつ酸素の存在下で熱処理することによるものであり、この間Lが融解しない、ステップと、
b)中間体(B)を、混合することなく、かつ酸素の存在下で熱処理するステップと、を含む。

米国特許第8394299号は、リチウム−遷移金属複合酸化物の調製で用いられる遷移金属前駆体としての、M(OH1−x)2として表される複合遷移金属化合物を含む遷移金属前駆体を開示しており、式中、Mは、Ni、Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr及び元素の周期表における第2周期の遷移金属からなる群から選択される2つ以上であり、0<x<0.5である。

米国特許第7384706号において、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン含有複合酸化物LipNixMn1−x−yCoyO2−qFq(式中、0.98≦p≦1.07、0.3≦x≦0.5、0.1≦y≦0.38、及び0≦q≦0.05)を製造するための方法が開示されており、この方法は、ニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物の凝集粒子を合成するためのステップであって、ニッケル−コバルト−マンガン塩水溶液アルカリ金属水酸化物の水溶液、及びアンモニウムイオンドナーを連続的又は断続的に反応系に供給することによる、ニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物を沈殿させることによって得られる一次粒子凝集され、二次粒子を形成する、ステップと、当該凝集複合水酸化物粒子に対して酸化体を作用させることによって、ニッケル−コバルト−マンガン複合オキシ水酸化物の凝集粒子を合成するためのステップと、少なくとも当該凝集複合オキシ水酸化物粒子及びリチウム塩を乾燥配合し、この混合物を酸素含有雰囲気において焼成するためのステップと、を含む。

米国特許出願公開第2009/0302267号は、前駆体NibM1cM2d(O)x(OH)yを開示しており、式中、M1は、Fe、Co、Mg、Zn、Cu及び/又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの元素を表し、M2は、Mn、Al、B、Ca、Cr及び/又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの元素を表し、b≦0.8、c≦0.5、d≦0.5であり、xは、0.1〜0.8の数であり、yは、1.2〜1.9の数であり、x+y=2である。

米国特許第7585432号は、高密度コバルト−マンガン共沈殿ニッケル水酸化物(Ni(1−x−y)CoxMny)(OH)2粒子(式中、1/10≦x<1/3及び1/20≦y≦1/3である)の製造のためのプロセスを開示しており、このプロセスは、コバルト塩とマンガン塩とを含有するニッケル塩の水溶液、錯化剤、及びアルカリ金属水酸化物を、不活性ガス雰囲気において、又は還元剤の存在下においてのいずれかで、反応器内に連続的に供給するステップと、当該粒子の結晶を連続的に成長させるステップと、当該粒子の結晶を当該反応器から連続的に取り出すステップと、を含む。

将来、リチウムバッテリ市場は、ますます自動車用途によって支配されると予想される。自動車用途は、高価である非常に大型のバッテリを必要とし、できるだけ低い費用生産されなければならない。費用のうちのかなりの部分は、カソード、すなわち正極に由来する。これらの電極を安価なプロセスで提供することは、低コスト化及び市場での受け入れを促進する。自動車市場は、様々な主用途を含む。EV(純電気自動車)用のバッテリは、数百キロメートル運転距離範囲のためのエネルギ貯蔵する必要があり、セルが非常に大型かつ重いことが必要となる。明らかに、これは、バッテリができるだけ高い容積エネルギ密度を有することを必要とする。セル設計及びアノードエネルギ密度の他にも、このようなバッテリにおけるカソード物質は、現実的な割合で高容量を有する必要もある。EV用途のためのバッテリセットは、大量のNMCカソード物質を含む。1つのセルの破滅的な発熱反応は、バッテリ内連鎖反応を引き起こし、したがって過去に起きたように事故を起こし得る。バッテリの安全性は、すべてのその種々の態様において最適化される必要があり、カソード物質はそのうちの1つである。EV用途は、通常、10年間にわたって使用されるバッテリを必要とし、この時間枠内でバッテリ容量は、80%よりも高いままでなければならない。毎日使用する間に、バッテリの直流抵抗(DCR)はサイクル中に増加する。重要なDCR増加は、ますます多くのエネルギが充電中に失われ、運転中に利用可能な電力がますます少なくなることを意味する。DCRの増加の割合を低いまま保持することが、EV用途のためのカソード物質開発の手掛かりの1つである。

DCR抵抗が小さいならば、充放電サイクルは高効率であり、少量の抵抗熱しか発生しない。これらの高電力要件を得るために、バッテリは、薄型電極を備えたセルを含む。これにより、(1)Liは短い距離のみを拡散し、(2)電流密度電極面積当たりの)は小さくなり、高電力かつ低DCR抵抗に寄与する。このような高電力バッテリは、カソード物質に厳しい要件を置き、すなわち、これらは、全体のバッテリDCRに可能な限りわずかに寄与することによって、非常に高い放電又は充電速度持続することが可能でなければならない。これまで、国際公開第2015/132647号において議論されているように、カソードのDCR抵抗を改善することは課題であった。更に、バッテリの長期間の動作中に、DCRが増加するのを抑制することは課題であった。

概要

カソードのDCR抵抗を改善し、バッテリの長期間の動作中に、DCRが増加するのを抑制する。一般式NixMnyCozAaOv(OH)wを有し、(0.15<v<0.30;v+w=2;0.30≦x≦0.75;0.10≦y≦0.40;0.10≦z≦0.40;Aはドーパント;a≦0.05;x+y+z+a=1)2θ=38±0.5°でツインピークを有するXRDパターンを有する結晶構造からなり、ツインピークはピーク強度ILを有する左側ピーク及びピーク強度IRを有する右側ピークを有し、ピーク強度比R=IR/ILはR>0.7であり、XRDパターンはスピネル及びオキシ水酸化物化合物のうちいずれか一方又は両方に属するピークを含まない、リチウムイオンバッテリの正極活物質用粒子状前駆体化合物。

目的

本発明は、充電式バッテリ用のリチウム遷移金属酸化物の前駆体であって、自動車用途など、要求の多い技術のために優れたバッテリ材料を提供する

効果

実績

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請求項1

リチウムイオンバッテリにおける正極活物質として使用するためのリチウム遷移金属酸化物粉末を製造するための粒子状前駆体化合物であって、前記前駆体は一般式NixMnyCozAaOv(OH)wを有し、式中、0.15<v<0.30、v+w=2、0.30≦x≦0.75、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40であり、Aはドーパントであり、a≦0.05であり、x+y+z+a=1であり、前記前駆体は2θ=38±0.5°でツインピークを有するXRDパターンを有する結晶構造からなり、前記ツインピークはピーク強度ILを有する左側ピーク及びピーク強度IRを有する右側ピークを有し、ピーク強度比R=IR/ILはR>0.7であり、前記XRDパターンはスピネル及びオキシ水酸化物化合物のうちいずれか一方又は両方に属するピークを含まない、粒子状前駆体化合物。

請求項2

前記前駆体は2θ=38±0.5°でツインピークを有するXRDパターンを有し、前記ツインピークは左側ピーク及び右側ピークを有し、前記左側ピークがβ(II)−Me(OH)2構造のXRDパターンに属し、前記右側ピークが酸化β(II)−Me(OH)2構造のXRDパターンに属し、前記前駆体中の前記β(II)−Me(OH)2構造の重量%が、0重量%超かつ48重量%未満である、請求項1に記載の粒子状前駆体化合物。

請求項3

前記前駆体が、2θ=33±0.5°及び52±0.5°において追加のツインピークを有するXRDパターンを有する、請求項1又は2に記載の粒子状前駆体化合物。

請求項4

R<+∞である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粒子状前駆体化合物。

請求項5

前記前駆体中の前記酸化β(II)−Me(OH)2構造の重量%が<95重量%である、請求項4に記載の粒子状前駆体。

請求項6

一般式NixMnyCozOv(OH)wを有し、式中、0.30≦x≦0.60、0.20≦y≦0.35、0.20≦z≦0.35、及びx+y+z=1である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の粒子状前駆体化合物。

請求項7

請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子状前駆体化合物を調製するための方法であって、Ni、Mn、Co及びAを含む金属塩溶液を用意するステップと、アルカリ水酸化物化合物を前記金属塩溶液に添加するステップと、これによって純粋な水酸化物結晶構造を有し、かつある量のH2Oを含む湿った粒子状前駆体化合物を沈殿させるステップと、真空中における130℃〜160℃の温度での熱処理の間に、前記湿った粒子状前駆体化合物を乾燥させ、これによってH2O含有量を1重量%未満に低下させるステップと、乾燥させた前記前駆体化合物に対して熱処理を続け、これによって、純粋な水酸化物前駆体モルあたり0.15〜0.30モルのH2を除去するステップと、前記乾燥させた粒子状前駆体化合物を真空下で室温まで冷却するステップと、を含む方法。

請求項8

前記乾燥させた粒子状前駆体化合物を室温まで冷却する前記ステップが乾燥空気下で行われる、請求項7に記載の粒子状前駆体化合物を調製する方法。

請求項9

リチウムイオンバッテリにおける正極活物質として使用するためのリチウム遷移金属酸化物粉末を製造するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の粒子状前駆体化合物の使用。

技術分野

0001

本発明は、充電式バッテリ用のリチウム遷移金属酸化物の前駆体であって、自動車用途など、要求の多い技術のために優れたバッテリ材料を提供するための特有の特性を有する、前駆体に関する。

背景技術

0002

充電式リチウム及びリチウムイオンバッテリは、高エネルギ密度であるため、携帯電話ラップトップコンピュータデジタルカメラ及びビデオカメラなどの多種多様携帯用電子機器用途で使用することができる。市販のリチウムイオンバッテリは、通常、グラファイト系アノード及びLiCoO2系カソード物質からなる。しかしながら、LiCoO2系カソード物質は高価であり、通常その容量は、およそ150mAh/gと比較的低い。LiCoO2系カソード物質に対する代替品は、LNMCO型カソード物質を含む。LNMCOとは、リチウム−ニッケルマンガンコバルト酸化物を意味する。この組成はLiMeO2(式中、Meは金属を表すが、ドープ材料にも範囲が及ぶ)又はLi1+x’Me1−x’O2(式中、MeはNixCoyMnzAm(これは、より一般的に「NMC」と称され、Aは1つ以上のドーパントである)である)。LNMCOは、LiCoO2と類似した層状結晶構造空間群R−3m)を有する。LNMCOカソードの利点は、純粋なCoに対する組成Mの非常に安い原料費である。Niの添加によって放電容量が増加するが、Ni含有量が増加するにつれての熱安定性が減少するために制限される。この問題を補うためにMnが構造安定化元素として添加されるが、これと同時に一部の容量が失われる。

0003

目標リチウム含有複合酸化物は、一般には、前駆体物質(最終カソード物質が有するものと同じ金属組成を有する)としてのニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物リチウム化合物と混合し、この混合物焼成することによって合成される。セル特性は、ニッケル、コバルト及びマンガンの一部を、Al、Mg、Zr、Ti、Sn及びFeなどの他の金属元素で置き換えることによって改善することができる。好適な置換量は、ニッケル、コバルト及びマンガン原子の総量の0.1〜10%である。

0004

一般に、複雑な組成のカソード物質の製造のためには、混合遷移金属水酸化物NixCoyMnz(OH)2などの特別な前駆体が使用される。その理由は、高性能なLi−M−O2が、十分混合された遷移金属カチオンを必要とするからである。「過焼結する」(リチウム前駆体、通常はLi2CO3又はLiOHとともに長時間にわたって高温焼結する)ことなく、このことを達成するためには、カソード前駆体は、遷移金属を、混合遷移金属水酸化物において提供されるようによく混合された形態(原子レベルで)で含有する必要がある。好適なサイズ及び形態の混合水酸化物は、通常、(1)制御されたpH下で、NaOH流及び混合金属塩流を用いて反応器内で混合水酸化物を沈殿させるステップ、(2)前駆体懸濁液を除去及び濾過するステップ、(3)濾過したウェットケークを規定された条件下で乾燥させるステップ、により、沈殿反応によって達成される。

0005

米国特許第8980475号において、リチウム混合金属酸化物を調製するためのプロセスが開示されており、これは、
a)中間体(B)として示される混合物を調製するステップであって、(B)が本質的に、リチウム含有混合金属水酸化物とリチウム含有混合金属酸化物水酸化物とを含み、
−ここで、マンガン、コバルト及びニッケルは、(1−a−b):a:bの比で含まれ、マンガン、コバルト及びニッケルのすべてのイオンにわたって平均化された酸化状態は、少なくとも4−1.75a−1.75bであり、式中、0≦a≦0.5及び0.1≦b≦0.8であり、
−少なくとも1つの遷移金属化合物と少なくとも1つのリチウム塩(L)とを含む混合物(A)を、連続的に混合しながら、かつ酸素の存在下で熱処理することによるものであり、この間Lが融解しない、ステップと、
b)中間体(B)を、混合することなく、かつ酸素の存在下で熱処理するステップと、を含む。

0006

米国特許第8394299号は、リチウム−遷移金属複合酸化物の調製で用いられる遷移金属前駆体としての、M(OH1−x)2として表される複合遷移金属化合物を含む遷移金属前駆体を開示しており、式中、Mは、Ni、Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr及び元素の周期表における第2周期の遷移金属からなる群から選択される2つ以上であり、0<x<0.5である。

0007

米国特許第7384706号において、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン含有複合酸化物LipNixMn1−x−yCoyO2−qFq(式中、0.98≦p≦1.07、0.3≦x≦0.5、0.1≦y≦0.38、及び0≦q≦0.05)を製造するための方法が開示されており、この方法は、ニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物の凝集粒子を合成するためのステップであって、ニッケル−コバルト−マンガン塩水溶液アルカリ金属水酸化物の水溶液、及びアンモニウムイオンドナーを連続的又は断続的に反応系に供給することによる、ニッケル−コバルト−マンガン複合水酸化物を沈殿させることによって得られる一次粒子凝集され、二次粒子を形成する、ステップと、当該凝集複合水酸化物粒子に対して酸化体を作用させることによって、ニッケル−コバルト−マンガン複合オキシ水酸化物の凝集粒子を合成するためのステップと、少なくとも当該凝集複合オキシ水酸化物粒子及びリチウム塩を乾燥配合し、この混合物を酸素含有雰囲気において焼成するためのステップと、を含む。

0008

米国特許出願公開第2009/0302267号は、前駆体NibM1cM2d(O)x(OH)yを開示しており、式中、M1は、Fe、Co、Mg、Zn、Cu及び/又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの元素を表し、M2は、Mn、Al、B、Ca、Cr及び/又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの元素を表し、b≦0.8、c≦0.5、d≦0.5であり、xは、0.1〜0.8の数であり、yは、1.2〜1.9の数であり、x+y=2である。

0009

米国特許第7585432号は、高密度コバルト−マンガン共沈殿ニッケル水酸化物(Ni(1−x−y)CoxMny)(OH)2粒子(式中、1/10≦x<1/3及び1/20≦y≦1/3である)の製造のためのプロセスを開示しており、このプロセスは、コバルト塩とマンガン塩とを含有するニッケル塩の水溶液、錯化剤、及びアルカリ金属水酸化物を、不活性ガス雰囲気において、又は還元剤の存在下においてのいずれかで、反応器内に連続的に供給するステップと、当該粒子の結晶を連続的に成長させるステップと、当該粒子の結晶を当該反応器から連続的に取り出すステップと、を含む。

0010

将来、リチウムバッテリ市場は、ますます自動車用途によって支配されると予想される。自動車用途は、高価である非常に大型のバッテリを必要とし、できるだけ低い費用生産されなければならない。費用のうちのかなりの部分は、カソード、すなわち正極に由来する。これらの電極を安価なプロセスで提供することは、低コスト化及び市場での受け入れを促進する。自動車市場は、様々な主用途を含む。EV(純電気自動車)用のバッテリは、数百キロメートル運転距離範囲のためのエネルギ貯蔵する必要があり、セルが非常に大型かつ重いことが必要となる。明らかに、これは、バッテリができるだけ高い容積エネルギ密度を有することを必要とする。セル設計及びアノードエネルギ密度の他にも、このようなバッテリにおけるカソード物質は、現実的な割合で高容量を有する必要もある。EV用途のためのバッテリセットは、大量のNMCカソード物質を含む。1つのセルの破滅的な発熱反応は、バッテリ内連鎖反応を引き起こし、したがって過去に起きたように事故を起こし得る。バッテリの安全性は、すべてのその種々の態様において最適化される必要があり、カソード物質はそのうちの1つである。EV用途は、通常、10年間にわたって使用されるバッテリを必要とし、この時間枠内でバッテリ容量は、80%よりも高いままでなければならない。毎日使用する間に、バッテリの直流抵抗(DCR)はサイクル中に増加する。重要なDCR増加は、ますます多くのエネルギが充電中に失われ、運転中に利用可能な電力がますます少なくなることを意味する。DCRの増加の割合を低いまま保持することが、EV用途のためのカソード物質開発の手掛かりの1つである。

0011

DCR抵抗が小さいならば、充放電サイクルは高効率であり、少量の抵抗熱しか発生しない。これらの高電力要件を得るために、バッテリは、薄型電極を備えたセルを含む。これにより、(1)Liは短い距離のみを拡散し、(2)電流密度電極面積当たりの)は小さくなり、高電力かつ低DCR抵抗に寄与する。このような高電力バッテリは、カソード物質に厳しい要件を置き、すなわち、これらは、全体のバッテリDCRに可能な限りわずかに寄与することによって、非常に高い放電又は充電速度持続することが可能でなければならない。これまで、国際公開第2015/132647号において議論されているように、カソードのDCR抵抗を改善することは課題であった。更に、バッテリの長期間の動作中に、DCRが増加するのを抑制することは課題であった。

先行技術

0012

米国特許第8980475号
米国特許第8394299号
米国特許第7384706号
米国特許出願公開第2009/0302267号
米国特許第7585432号
国際公開第2015/132647号

発明が解決しようとする課題

0013

本発明は、安価なプロセスによって作製される、中程度から高いNi含有量を有する正極用のリチウム遷移金属カソード物質の改善された前駆体、及び二次バッテリにおけるサイクル時に低減した不可逆容量Qirrを有するカソード物質を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0014

第1の態様から見ると、本発明は、以下の前駆体実施形態を提供することができる。

0015

実施形態1:リチウムイオンバッテリにおける正極活物質として使用するためのリチウム遷移金属酸化物粉末を製造するための粒子状前駆体化合物であって、前駆体は一般式NixMnyCozAaOv(OH)wを有し、式中、0.15<v<0.30、v+w=2、0.30≦x≦0.75、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40であり、Aはドーパントであり、a≦0.05であり、x+y+z+a=1であり、前駆体は2θ=38±0.5°でツインピークを有するXRDパターンを有する結晶構造からなり、ツインピークはピーク強度ILを有する左側ピーク及びピーク強度IRを有する右側ピークを有し、ピーク強度比R=IR/ILはR>0.7であり、XRDパターンはスピネル及びオキシ水酸化物化合物のうちいずれか一方又は両方に属するピークを含まない、粒子状前駆体化合物。ピーク強度比Rは、>0.7から無限(+∞)まで変化してもよく、後者は、酸化β(II)−Me(OH)2(Meは金属組成Ni−Mn−Co−Aを表す)のみからなる前駆体に相当する。

0016

本発明の異なる実施形態において、Aは、Al、Sn、Fe、Ga、B、Ti、Mg、W、Zr、Cr及びVからなる群の元素のいずれか1つ以上である。好適な置換量は、ニッケル、コバルト及びマンガン原子の総量の0.1〜5%であり得る。

0017

ドーピング剤とも呼ばれるドーパントは、この場合には前駆体から作製される最終製品電気特性又は光学特性を変更するために、物質中に(非常に低濃度で)挿入される微量不純物元素である。

0018

実施形態2:前駆体は、2θ=38±0.5°でツインピークを有するXRDパターンを有し、ツインピークは左側ピーク及び右側ピークを有し、左側ピークがβ(II)−Me(OH)2構造のXRDパターンに属し、右側ピークが酸化β(II)−Me(OH)2構造のXRDパターンに属し、前駆体中のβ(II)−Me(OH)2構造の重量%は、0重量%超かつ48重量%未満である。

0019

実施形態3:前駆体は、2θ=33±0.5°及び52±0.5°において追加のツインピークを有するXRDパターンを有する。

0020

実施形態4:前駆体は、R<+∞の値を有する。

0021

実施形態5:前駆体について、前駆体中の酸化β(II)−Me(OH)2構造の重量%は、<95重量%である。R=+∞の場合、望ましくないβ(III)−MeOOH構造の形成又は更により酸化されたスピネル構造Me3O4の形成のリスクが高い。したがって、前駆体中の酸化β(II)−Me(OH)2構造の重量%は、95重量%未満であり得る。

0022

実施形態6:前駆体は、一般式NixMnyCozOv(OH)wを有し、式中、0.30≦x≦0.60、0.20≦y≦0.35、0.20≦z≦0.35、及びx+y+z=1である。

0023

本明細書で上述された個々の前駆体実施形態のそれぞれは、その前に記載された前駆体実施形態の1つ以上と組み合わせることができる。

0024

第2の態様から見ると、本発明は、以下の方法実施形態を提供することができる。

0025

実施形態7:本発明による粒子状前駆体化合物を調製するための方法であって、
−Ni、Mn、Co及びAを含む金属塩溶液を用意するステップと、
アルカリ水酸化物化合物を金属塩溶液に添加するステップと、これによって
−純粋な水酸化物結晶構造を有し、かつある量のH2Oを含む湿った粒子状前駆体化合物を沈殿させるステップと、
真空中における130℃〜160℃の温度での熱処理の間に、湿った粒子状前駆体化合物を乾燥させ、これによってH2O含有量を1重量%未満に低下させるステップと、
−乾燥させた前駆体化合物に対して熱処理を続け、これによって、純粋な水酸化物前駆体モルあたり0.15〜0.30モルのH2を除去するステップと、
−乾燥させた粒子状前駆体化合物を真空下で室温まで冷却するステップと、を含む方法。冷却ステップは、酸化又は水の取り込みを防止するために、真空中で行われる。この実施形態において、Ni、Mn、Co及びAの量は一般式NixMnyCozAaに相当し、式中、0.30≦x≦0.75、0.10≦y≦0.40、0.10≦z≦0.40であり、Aはドーパントであり、a≦0.05であり、x+y+z+a=1である。

0026

沈殿が、純粋な水酸化物結晶構造を有する湿った粒子状前駆体化合物をもたらすこと、及びこの水酸化物の部分的酸化又は還元乾燥ステップの前には起こらないことが理解される。

0027

乾燥水酸化物前駆体から除去された水素の量は、Mettler Toledo Autotitrator DL70ESにおける滴定などの既知の方法によって、前駆体中のNMC金属の原子価状態を判定することによって算出することができる。水酸化物前駆体1モル当たり0.15モル未満の水素が除去されるとき、酸化β−Me(OH)2構造の重量画分は非常に低く、劣ったコインセル及びフルセルの性能を有するリチウム化材料をもたらすであろう理想β(II)−Me(OH)2に近い構造を得る。水酸化物前駆体1モル当たり0.30モル超の水素が除去されるとき、β(III)−MeOOH構造の形成又は前駆体内部の更により酸化されたスピネル構造Me3O4の形成は回避できず、これら両方により、リチウム化最終製品の性能は劣ったものとなる。

0028

実施形態8:粒子状前駆体化合物を調製する方法であって、乾燥させた粒子状前駆体化合物を室温まで冷却するステップが乾燥空気下で行われる、方法。

0029

第3の態様から見ると、本発明は、以下の使用実施形態9:リチウムイオンバッテリの正極活物質として使用するためのリチウム遷移金属酸化物粉末を製造するための、本発明による粒子状前駆体化合物の使用、を提供することができる。

0030

第4の態様から見ると、本発明は、リチウムイオンバッテリの正極活物質として使用可能なリチウム遷移金属系酸化物粉末を製造するための方法であって、
−本発明の第1の態様による結晶性水酸化物前駆体化合物を提供するステップと、
−前駆体をリチウム前駆体化合物と混合するステップと、
−混合物を750〜1000℃の温度で焼結するステップと、を含む方法を提供することができる。一実施形態において、この混合物は、少なくとも5kgの負荷かけられたトレイ内で焼結される。

図面の簡単な説明

0031

選択された説明的実施例のXRDパターンである。
ピーク強度比(R)の順でのNMC532前駆体のXRDパターンである。
NMC532製品の、対応するNMC532前駆体のピーク強度比(R)に対するコインセルの第1サイクルの0.1C放電容量である。
NMC532製品の、対応するNMC532前駆体のピーク強度比(R)に対するコインセルのレート性能(0.1CレートでのDQを超える3CレートでのDQ)である。
NMC111前駆体(実施例20、実施例21)及びNMC622前駆体(実施例22、実施例23)のXRDパターンである。
実施例2−I、実施例2−II、実施例10−I及び実施例10−IIについてのサイクル中の25℃のサイクル寿命上部線及び右側軸)並びにDCRの増加(底部線及び左側軸)である。
実施例2−I、実施例2−II、実施例10−I及び実施例10−IIについてのサイクル中の45℃のサイクル寿命(上部線及び右側軸)並びにDCRの増加(底部線及び左側軸)である。
選択された実施例のLn(CPSスケールプロットされたXRDパターンである。

実施例

0032

本発明の前駆体は、リチウムイオンバッテリの正極活物質として使用されるリチウム遷移金属酸化物粉末を製造するための粒子状オキシ−)水酸化物前駆体化合物であり、以下の一般式
NixCoyMnzAaOv(OH)w F1
を有し、
式中、0.15<v<0.30、v+w=2、0.30≦x≦0.75、0.10≦y≦0.40、及び0.10≦z≦0.40であり、Aはドーパントであり、a≦0.05であり、x+y+z+a=1である。Ni、Mn及びCoをモル比x:y:zで含む前駆体は、通常、(1)制御されたpH下で、NaOH流及び混合金属塩流を用いて反応器内で混合水酸化物を沈殿させるステップと、(2)前駆体懸濁液を除去及び濾過するステップと、(3)濾過したウェットケークを乾燥させるステップと、により、沈殿反応によって混合型で調製される。ステップ(1)において、混合塩混合硫酸塩であってもよく、pHは、通常11〜12であってもよい。効率的な前駆体乾燥は、大部分の水分を除去するために、通常100℃超で、ある時間、行われる。乾燥後の典型的な水分含有量は1重量%未満であり、周知の、250℃でのカールフィッシャー滴定法によって(ASTMD6869)測定することができる。乾燥の前には、前駆体は、純粋又は理想水酸化物結晶構造を有する(空間群P−3m1を有する)。ある温度での乾燥中に、物理的に付着した水分は蒸発し、一方で前駆体もH2Oを水酸化物結晶構造から放出する傾向があり、したがって、理想的な水酸化物構造と対比して水素が欠乏した前駆体を形成し(F1中、w<2)、その結果、2つの相、すなわち「理想」水酸化物相と「酸化」水酸化物相との完全混和物(原子レベルで)をもたらし、これらは、実施例で示すように、XRDパターンで明確に区別することができる。

0033

前駆体が受けるリチウム化プロセスにおいて、水酸化物前駆体中の水素は固相反応において除去され、目標とするLi−Me−O2遷移金属複合酸化物が得られる。以下のF2に示す概略的平衡反応によれば、1モルの純粋な水酸化物前駆体は、反応中に0.25モルのO2を必要とし、1/2モルのCO2及び1モルのH2Oを放出する。前者は空気流から得る必要があり、一方で後者の2つは除去される必要がある。ガス移送に必要とされる量は、実際には、使用されるリチウム源、例えばLi2CO3又はLiOHからは独立している(F2〜F3を参照)。したがって、動力学の観点から、より少ないガス移送は、実際には、より少ない空気流、より少ない焼成時間、より低い焼成温度及びおそらく焼成プロセスにおいてリチウム化されるより多くの材料を意味する。この効果は、小スケールのリチウム化については特定され得ないが、製造業者処理能力及び生産効率を改善する方法を探し求めているカソード量産にとって、これは極めて重要であろう。材料性能の観点から、より少ないガス移送は、より容易な反応、及び良好なカソード性能を可能にする完全な層状構造を形成するのに十分な時間を意味する。リチウム前駆体との反応の前に沈殿した水酸化物前駆体から水素を除去することが、リチウム化金属酸化物の形成に特に有効であることを結論付けることができる。
NixCoyMnz(OH)2+1/2 Li2CO3+1/4 O2⇔LiNixCoyMnzO2+1/2 CO2+H2O F2
NixCoyMnz(OH)2+LiOH+1/4 O2⇔LiNixCoyMnzO2+3/2 H2O F3

0034

本発明による方法において、水酸化物前駆体の乾燥は、温度、ガス雰囲気及び時間などの明確に定義された条件において注意深く行うことができ、この明確に定義された条件は相互作用することができ、例えば、より高温乾燥温度は、所望の製品を得るために、特に大量生産スケールについて、より少ない時間を要する。一方、真空又は保護ガス下で低温にて乾燥するNMC前駆体は、水素を除去することが効率的でない場合もあるが、他方では、酸化雰囲気下で高温にて乾燥するNMC前駆体は、複数のNi−、Mn−及びCo−酸化物又は−オキシ水酸化物への相分離を確実に引き起こすであろう。相分離は、共沈プロセスによって原子レベルで十分に混合された前駆体を得るように促すことに逆らうものである。前駆体における相分離は、完全なLi−M−O2層状構造を得るために、より高温及びその後のより長時間でのリチウム化の必要性を引き起こす。相分離はまた、異なる相の境界において局部歪みを作出する可能性も高いと思われ、したがって、沈殿結晶構造は崩壊し得る。このことが、より長い時間及びより高温のリチウム化プロセスの必要性を更に引き起こす。

0035

概して言えば、前駆体乾燥温度、雰囲気及び乾燥時間の制御は、相分離を生じることなく、できるだけ少ない量の水素を含む前駆体を得るために極めて重要であり得る。

0036

実施例における試験条件の説明:X線回折試験
本発明において、乾燥させた前駆体化合物を特性決定するためにXRDが適用される。本発明による特有なXRD特徴を有するNMC前駆体化合物は、得られたNMCカソード物質が、低不可逆容量Qirr及び高放電容量DQを有することを保証することが見出されている。X線回折は、Cu(K−アルファ陽極X線管及び回折ビームモノクロメータ装備したRigaku D/Max2200PC回折計を用いて、15〜85度の2−シータ(θ)の範囲で室温にて行われる。異なる相の格子パラメータは、完全パターン整合及びリートベルト精密化法を用いて、X線回折パターンから算出される。以下のことが既知である。
−NMC水酸化物前駆体の構造モデル(F1中、w=2)が、βII−Ni(OH)2構造(空間群P−3m1、no.164)であること。
−NMCオキシ水酸化物前駆体の構造モデル(F1中、w=1)が、βIII−NiOOH構造(空間群R−3m、no.166)であること。
−スピネルMe3O4の構造が、空間群Fd−3mZ、no.227に属すること。

0037

カソード物質調製の説明
本発明において、コインセルにおける電気化学挙動を評価するために、代表的MP(大量生産)スケールでの従来の高温焼結を用いて、本発明による前駆体化合物からカソード物質を調製する。Li2CO3(Chemetall)又はLiOH(SQM)を、ブレンダを用いて、前駆体化合物と、ある特定のLi:Mのモル比で30分間乾燥混合する。この混合物を、大量生産スケールの設備を用いて、空気下で高温(>900℃)にて10時間反応させる。このLi:Mモルの配合比及び焼結温度標準であるが、これらは、異なるNi含有量を有する前駆体に関して異なり、各々の個々の実施例で特定化されるであろう。焼成後に、焼結ケーク粉砕し、分類し、ふるいにかけて、前駆体のものと同様な平均粒径D50を有する非凝集粉末を得る。

0038

試験条件の説明:ピーク強度比
本発明は、NMC前駆体が、約38°の、好ましくは更に約33°及び52°の2θでツインピークを有し、38°におけるツインピーク間強度比が特定の範囲内にあるXRDパターンを有するときに、最終NMC製品の放電容量が最適化され、このXRDパターンが、スピネル及びオキシ水酸化物化合物のうちのいずれか1つ又は両方に属するピークを含まないことを観測している。ツインピーク形成の理由は、以下の説明的実施例において議論される。異なる条件下で乾燥される前駆体に対して、これらの2θ位置におけるツインピークの強度比は変化する。したがって、本発明では、ピーク強度比が算出され、乾燥NMC前駆体を特性化するためにパラメータとして適用される。例えば、ピーク分割を用いて、35.5°〜43°のXRDパターンがピークフィッティング及びピーク強度比算出用にカットされる。数値的ピークフィッティングは、同じG/L比を有し、かつ同じ半値全幅FWHM)を有するガウス関数及びローレンツ関数の2つのセットを用いる最小自乗法を用いることによって行われる。強度(フィッティングピーク下面積)を用いてピーク強度比を算出する:R=(右側ピークの面積)/(左側ピークの面積)。

0039

試験条件の説明:コインセルの作製
電極を以下の通りに作製した:約27.27重量%の電極活物質、1.52重量%のポリフッ化ビニリデンポリマー(KFポリマーL#9305、Kureha America Inc.)、1.52重量%の導電性カーボンブラック(Super P(登録商標)、Erachem Comilog Inc.)及び69.70重量%のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)(Sigma−Aldrichから)を、高速ホモゲナイザによって均質に混合する。次いで、このスラリを、テープ成形法によって、アルミホイル上に薄層に広げる(通常、100マイクロメートルの厚さ)。NMP溶媒を120℃で3時間蒸発させた後に、キャストフィルムを、40マイクロメートルのギャップを備えた2つの定回転するロールを通して加工する。14mmの直径を測る円形ダイカッターを用いて、電極をフィルムから打ち抜く。次いで、電極を90℃で一晩乾燥する。その後、電極を量し、活物質充填量を判定する。通常、電極は、活物質の約17mg(約11mg/cm2)の充填重量で、90重量%の活物質を含有する。次いで、電極をアルゴン充填グローブボックス内に配置し、2325型コインセル本体に組み立てる。アノードは、500マイクロメートルの厚さを有するリチウム箔であり(供給元:Hosen)、セパレータは、Tonen 20MMSミクロ孔質ポリエチレンフィルムである。コインセルを、エチレンカーボネート及びジメチルカーボネートの1:2体積比の混合物中に溶解したLiPF6の1M溶液(供給元:Techno Semichem Co.)で満たす。各々のセルを、Toscat−3100コンピュータ制御電流サイクリングステーション(Toyoから)を用いて、4.3〜3.0V/Li金属窓範囲内の異なるレートで25℃でサイクルさせる。初期充電容量CQ1及び放電容量DQ1を、0.1Cレートにおいて定電流モード(CC)で測定する。不可逆容量Qirrは、下記のように%で表される。
QIrr.=((CQ1−DQ1))/CQ1×100(%)

0040

試験条件の説明:フルセルの作製
スラリを、NMP(n−メチル2−ピロリドン溶液中に、1000gのLi−Me−O2を、NMP、32.61gのsuper P(登録商標)(Timcalの導電性カーボンブラック)、10.87gのグラファイト及び434.78gの10重量%PVDF結合剤と混合することによって、調製する。この混合物を、遊星ミキサ内で2.5時間、混合する。混合中、追加のNMPを添加する。混合物を分散ミキサ移送し、更にNMPを添加して1.5時間混合する。典型的な使用されるNMPの総量は、585.28gである。スラリ内の最終固体含有量は約65重量%である。このスラリをコーティングラインに移送し、ここで、スラリを集電体の両側にコーティングし、滑らかな表面及び13.4mg/cm2の充填量を有する電極を結果として得る。電極を、ロール圧縮機によって圧縮し、約3.25g/cm3の電極密度を得た。加えて、スラリ粘度を、ブルックフィールド粘度計によって測定する。典型的なスラリ粘度は、約2000〜4000cpsである。低スラリ粘度は、大抵は、スラリコティング品質を保証するために好ましい。

0041

パウチセル型フルセルを作製するために、正極(カソード)が、典型的にはグラファイトタイプのカーボンである負極(アノード)、及び多孔性電気的絶縁膜(セパレータ)とともに組み立てられる。フルセルは、以下の主ステップによって作製される:(1)電極を切断する、(2)タブを装着する、(3)電極を乾燥させる、(4)ジェリーロールとして巻く、及び(5)パッケージングする:
(1)電極を切断する:電極活物質を電極上にコーティングした後、これは、切断機によって切断され得る。電極の幅及び長さは、バッテリ用途により決定される。
(2)タブを装着する:2種類のタブがある。アルミニウムタブは正極(カソード)に取り付けられ、銅タブは負極(アノード)に取り付けられる。
(3)電極を乾燥させる:準備されたカソード及びアノードは、85℃〜120℃で8時間、真空炉において乾燥される。
(4)ジェリーロールとして巻く:電極を乾燥後、ジェリーロールを、巻き線機を使用して作製する。ジェリーロールは少なくとも負極(アノ−ド)、多孔性電気的絶縁膜(セパレータ)、及び正極(カソード)からなる。
(5)パッケージングする:準備されたジェリーロールが、アルミニウム積層フィルムパッケージとともに360mAhのセルに組み込まれ、パウチセルになる。ジェリーロールは、その後電解質で含浸される。電解質の量は、正極及び負極、並びに多孔性セパレータの多孔性及びサイズによって計算される。最終的に、パッケージ化されたフルセルは、封止機械によって封止される。パッケージ化されたフルセルは、脇のガス室を含み、これは、事前充電中にガス収集する。
(6)事前充電及び脱気を行う:準備されたセルが、定電流(CC)モードを用いて0.25Cレートで、予想されるセル容量の15%まで事前充電される。1Cレートは、充電セルを1時間以内に放電する電流に相当する(例えば、3Cは、3倍速く放電され、0.25Cは、4倍遅く放電されることになる)。セルを48時間エージングさせ、次いでセルガス室部分を除去する。
(7)形成を行う:次いでセルが、定電流−定電圧(CCCV)モードで0.25Cレートにて4.2V(終止電流1/120C)まで充電される。10分間休ませた後に、これをCCモードで0.5Cレートにて2.7Vまで放電させる。10分間休ませた後に、これを、CCCVモードで0.5Cレートにて4.2V(終止電流1/20C)まで充電させる。この形成サイクル中のセル放電容量は記録され、フルセル比容量算出のために使用される。
(8)エージングし最終充電を行う:形成後のセルが、開回路電圧OCVチェックのために、25℃で7日間エージングされる。次いでセルを、最初に、回復容量チェックのためにCCモードで0.5Cレートにて放電させる。10分間休ませた後に、これを、CCCVモードで1Cレートにて4.2V(終止電流1/20C)まで充電させる。10分間休ませた後に、これをCCモードで0.2Cレートにて2.7Vまで放電させる。10分間休ませた後に、これを、最後にCCCVモードで1Cレートにてセル容量の50%まで充電させる。セルは、すべての種類のフルセル試験に準備が整った状態になる。

0042

試験条件の説明:−20℃におけるフルセル温度試験
最終充電(8)後のセルを、温度試験に用いる。試験に先立って、セルを2.7V〜4.2Vで2サイクルにわたって充放電させる。放電は、CCモードで0.5Cレートにて2.7Vの低終止電圧まで行われ、一方充電は、CCCVモードで1Cレートにて4.2Vの上限終止電圧(終止電流1/20C)まで行われる。充電された状態のセルを、−20℃のチャンバ中に2時間配置し、その後、CCモードで0.5Cレートにて2.7Vまで放電させる。放電容量を、「−20℃におけるセル保存容量」として記録する。

0043

試験条件の説明:フルセルホットボックス試験
最終充電(8)後のセルを、ホットボックス試験に用いる。セルを、最初にCCモードで0.5Cレートにて2.7Vまで放電させ、次いでCCCVモードで1Cレートにて4.2Vまで完全に充電させる。完全に充電されたセルを、ホットボックスチャンバ中に配置し、これを約0.5℃/分で180℃まで加熱する。チャンバの温度及びセルの電圧の両方を同時に監視する。セルが故障したときに、その電圧は即座に降下する。故障時のホットボックスチャンバ温度を記録する。

0044

試験条件の説明:フルセルサイクル試験
形成サイクル(7)後のセルを、フルセルサイクル試験に用いる。各サイクルに対して、放電がCCモードで1Cレートにて2.7Vまで行われ、一方充電が、CCCVモードで1Cレートにて4.2V(終止電流1/20C)まで行われる。充放電中セル温度に及ぼすセルの自己加熱の影響を回避するために、各充放電ステップ後に10分間の緩和時間を適用する。各サイクルの保存容量を記録する。百サイクル毎に、放電直流抵抗(DCR)をチェックする。セルをCCCVモードで1Cレートにて4.2Vまで充電させ、ここで、3Cレートにての10秒間の放電が適用される。パルス放電中の電圧における差及び3Cレートの電流を用いて、100%の充電状態(SOC)における放電DCRを算出する。

0045

以下の実施例は、本発明をより詳細に例証する。

0046

説明的実施例
EEX1〜EEX6
モル比が60:20:20のニッケル−マンガン−コバルト−水酸化物前駆体(NMC622)のウェットケークを、大量生産沈殿から回収する。「ウェットケーク」とは、洗浄及び濾過を行った後であるが乾燥を行っていない沈殿前駆体を指す。ウェットケークを、バッチ当たり約10kgのパイロフラムトレイに分け、表1Aに示すような乾燥雰囲気冷却雰囲気、乾燥温度及び乾燥時間を含む異なる定義された条件下にて、実験室で乾燥させる。この目的は、異なるXRD特性を有する前駆体を得るためである。

0047

表1Bに示すように、150℃で乾燥させ、N2下で冷却されたEEX1は、空間群P−3m1を有する理想βII−Me(OH)2水酸化物結晶構造を有する。a軸の長さは、XRD構造精密化によって判定されるとおり、3.1596Åである。無機結晶構造データベース(ICSD)によれば、P−3m1構造を備えるNi(OH)2(ICSD−13684)、Mn(OH)2(ICSD−13410)及びCo(OH)2(ICSD−58655)についてのa軸の長さは、それぞれ、3.130Å、3.322Å及び3.186Åである。これらの値を用いて算出された、NMC622前駆体の加重平均長は3.180Åであり、これは、我々がEEX1で判定したものと非常に近い。真空下で150℃にて乾燥され、乾燥空気(すなわち、<1g/m3の絶対水分含有量を有する)下で冷却されたEEX4もまた、典型的なβII−Me(OH)2水酸化物結晶構造に属するXRDパターンを示す。しかしながら、図1に示すように、すべてのXRDピークは、EEX1のものと比べてより高い2θ角度に移動する。a軸の長さは3.0823Åであり、これはEEX1のものよりも非常に短い。我々はこれを、水素欠陥又は水素枯渇に応じて酸化された、酸化βII−Me(OH)2と呼ぶ。135℃で乾燥され、真空下で冷却されたEEX2のXRDパターンは、約33°、38°及び52°の2θにおいてツイン又はスプリットピークを示す。スプリットピークの位置は、それぞれEEX1及びEEX4のそれらの特徴的なピークと非常によく適合し、EEX2が、理想βII−Me(OH)2及び酸化βII−Me(OH)2構造の両方を含むことを明確に示唆している。XRDパターンに関して、両構造の共存は、左側ピークが理想β(II)−Me(OH)2構造に相当し、一方右側ピークが酸化β(II)−Me(OH)2構造に相当する、33°、38°及び52°の2θにおけるこれらのツインピークによって最もよく反映される。両構造についてのa軸の長さは、リートベルト構造精密化によって得られる。

0048

EEX3もまた、EEX2と同様に、理想βII−Me(OH)2及び酸化βII−Me(OH)2構造の両方を含むが、異なる重量パーセントを有する。空気中150℃で乾燥され、空気中で冷却されたEEX5は、大部分の酸化βII−Me(OH)2構造及び少量のβIII−MeOOH欠陥を有する。後者は、38°及び48°において特徴的なピークを有する。EEX5よりも高温で空気中で乾燥されたEEX6は、更により顕著なβIII−MeOOH欠陥及びそれほどはっきりしないβII−Me(OH)2構造を示す。図1において、EEX5及びEEX6の矢印は、β(III)−MeOOH欠陥の形成を示唆し、これは、同じXRDパターンがLn(CPS)スケールでプロットされている図8でより良好に示される。まとめると、いくつかの主な特徴的な構造は、説明的実施例EEX1〜6において前駆体の乾燥中に捕捉される。

0049

EEX7〜12
表1A及びBで示すように、EEX7、EEX8、EEX9及びEEX10において、実験の同様なセットを、モル比が50:30:20のニッケル−マンガン−コバルト−水酸化物前駆体(NMC532)で繰り返す。一般に、NMC532前駆体は、同じ条件下で乾燥されたそれらのNMC622対応物と比べて異なる乾燥温度において同じ特徴的な構造を正確に示す。すべての詳細は、表1A及びBに示される。

0050

加えて、モル比が34:33:33の、2つのニッケル−マンガン−コバルト−水酸化物前駆体(NMC333)を、EEX11では150℃で、EEX12では200℃で乾燥し、真空下で冷却させた。XRDパターンは、NMC333前駆体が150℃〜200℃で真空下で乾燥されるときに、スピネルMe3O4欠陥が形成される傾向にあることを示している。図1及び図8において、EEx12の矢印は、スピネルMe3O4についてのXRDピークを指し示す

0051

すべての説明的実施例について、a軸の平均長さが、理想βII−Me(OH)2及び酸化βII−Me(OH)2構造の両方のa軸の加重平均から算出されるが、Me3O4及びβIII−MeOOHなどの少量の欠陥からは算出されない。

0052

[実施例]
EX1〜EX17
一連のNMC532前駆体を、NMC532カソード生産のための大量生産(MP)現場において共沈させる。NMC532前駆体を反応器タンクから連続して取り出し、洗浄し、濾過して、ウェットケークを得る。その後、これらを、真空下で大型回転式乾燥機内において数トンのスケールでバッチ方式で10時間乾燥させ、その後同様に真空下で冷却する。回転式乾燥機のシェルを、135℃の目標の乾燥温度で水蒸気で加熱する。すべての前駆体を15°〜85°の範囲の2θでXRDによってスキャンする。XRDパターンは、市販のソフトウェアのTopasによってリートベルト構造精密化される。図2は、前駆体の大部分が、約33°、38°及び52°の2θでツインピークを含むが、ピーク強度比が異なることを示す。ロット間の差は、すでに乾燥されたケークの熱分解によって除去された水素の量における差に起因すると判定されている。大量生産回転式乾燥設備の効率は、目標の乾燥温度を乾燥される材料の量、回転式乾燥時間及び沈殿したウェットケークの水分含有量の関数として設定することによって、微調整することができる。Ex1〜Ex6については、除去された1モルの純粋な水酸化物前駆体当たりのHのモル量は、0.15モル/モル未満であり、Ex17、Ex18及びEx21については、これは0.30モル/モル超であった。

0053

Ex1〜Ex16は、すべてが、理想β(II)−Me(OH)2及び酸化β(II)−Me(OH)2構造の組み合わせを有する(表2Aを参照)。両構造は、わずかに異なる格子パラメータ、すなわち、a、c軸の長さを有する、同じ空間群に属する。表2Aに示すように、理想β(II)−Me(OH)2構造についてのa軸の長さが、その重量画分の減少とともに減少する傾向があり、一方で酸化β(II)−Me(OH)2構造のものではその重量画分の増加とともに減少する傾向がある。このa軸の連続変化は、NMC532前駆体の乾燥中の理想β(II)−Me(OH)2構造内の酸化β(II)−Me(OH)2の連晶プロセスを示唆している。Ex17は、主として、酸化β(II)−Me(OH)2構造を含み、理想β(II)−Me(OH)2構造についてのピークを含まない。その代わりに、少量のβ(III)−MeOOHが特定され、これは、EEX5及びEEX6における相に相当するオキシ水酸化物相の形成を示唆している。

0054

理想β(II)−Me(OH)2構造内部の酸化β(II)−Me(OH)2の連晶が、両者が同じ空間群に属するために原則的にコヒーレントであり、したがって、結晶構造に有害ではあり得ないことに留意するべきである。しかしながら、立方晶オキシ水酸化物β(III)−MeOOH相の形成は、その異なる格子配列のために、酸化β(II)−Me(OH)2構造に対して格子不整を生じ、したがって、高い局部歪みを作出する。適用された乾燥温度において、この歪みの存在により、六方晶相から立方晶相に至る段階的な相変化の間に結晶サイズを維持することが非常に難しくなる。これは、EEX5及びEEX6におけるすべての特徴的なピークのピーク強度が減少することによって証明され得る。これらの前駆体の結晶化度が不良であると、リチウム化後の格子配列はより不完全になり、これは明らかに好ましいものではない。

0055

EX1〜EX16はすべて、100ピーク(2θ約33°)、101ピーク(2θ約38°)、102ピーク(2θ約52°)のツイン分割を含み、38°におけるピークは、強度が最も高く、分割が最も明確である。これらの位置のそれぞれにおいて、わずかに高い2θ角度を有するピーク(右側ピーク)は酸化β(II)−Me(OH)2に属し、一方でわずかに低い角度を有するピーク(左側ピーク)は理想β(II)−Me(OH)2に属する。本発明において、前に記載された方法を用いて、35.5°〜43°のXRDパターンがピーク強度比算出用に抽出される。わずかに低い2θ角度におけるピークは「左側ピーク」とみなされ、わずかに高い2θ角度におけるピークは「右側ピーク」とみなされる。算出されたピーク強度比(R)は、表2Bに列記されている。EX17については、そのピーク強度比は、理想β(II)−Me(OH)2構造が存在しないために無限に近いと考えられる。図2において、矢印は、EX17におけるβ(III)−MeOOH欠陥の形成を示唆し、これは、同じXRDパターンがLn(CPS)スケールでプロットされている図8でより良好に示される。EX1〜EX16は、実際には、(R)が小さいものから大きいものまで配置されている。

0056

すべてのNMC532前駆体は、従来の高温焼結プロセスを用いてリチウム化される。Li2CO3(Chemetall)を、ブレンダを用いて、前駆体化合物と、約1.02のLi:Mモル比で30分間乾燥混合する。この混合物を、大量生産スケールの設備を用いて、空気の下でトレイ内で925℃にて10時間反応させる。焼成後に、焼結ケークを粉砕し、分類し、ふるいにかけて、前駆体のものと同様な平均粒径D50、すなわち、約11μmを有する非凝集粉末を得る。EX1〜EX16から作製されたすべてのNMC532について、第1サイクル0.1Cコインセル放電容量は、初めにピーク強度比とともに増加し、その後、表2B及び図3に示すように、程度の差はあるにしても安定化するようになる。

0057

充電容量は、EX1〜EX16で同じであるために、DQにおける差は、第1のサイクル中のQirrにおける差からのものである。加えて、3Cレート性能もまた、ピーク強度比とともに増加し、その後、図4で分かるように程度の差はあるにしても安定化するようになる。3Cレートパーセントは、0.1Cにおける放電容量にわたって正規化された3Cレートにおける放電容量に等しい。3Cにおける放電容量の最大差は、本研究では8mAh/g程度の高さである。XRDパターンで単一ピークのみを有するEX17については、これは第1のサイクル中の容量の非常に高い損失、より低いDQ及びより低い3Cレート性能を有し、その高ピーク強度比(無限に近い)によって支援されていない。β(III)−MeOOHの形成が、リチウム化後に決して完全ではない結晶構造を生じさせ、これがカソード性能を悪化させることをむしろ示している。したがって、前駆体構造及び欠陥構成が、例えばガス平衡を得るために要する時間、完全な結晶構造を得るために要する時間などの反応動力学にとって、現実的に重要であると考えられる。結論として、本発明による、約38°で特徴的なツインピーク構造を有し、R>0.7のピーク強度比を有する(しかし、スピネル及びオキシ水酸化物化合物のうちのいずれか1つ又は両方に対応するピークが存在しない)NMC532前駆体が好ましい。

0058

EX18〜EX19
NMC532前駆体と同じ生産ラインを用いることによって、NMC111前駆体を、NMC111カソード生産のためのMPスケールで共沈させる。洗浄し濾過した後に、NMC111前駆体もまた、真空下で大型回転式乾燥機内において数トンのスケールでバッチ方式で10時間乾燥させ、その後真空下で冷却する。回転式乾燥機のシェルを、135℃の目標の乾燥温度で水蒸気で加熱する。前駆体を15°〜85°の範囲の2θでXRDによってスキャンし、これらの結果を表2Aに示す。Ex18は、理想β(II)−Me(OH)2構造及び酸化β(II)−Me(OH)2構造の両方を示す。しかしながら、これは、スピネル不純物が強調されている図5及び8に示すように、スピネルMe3O4不純物を含有する。Ex19は、酸化β(II)−Me(OH)2構造の大画分及び理想β(II)−Me(OH)2の小画分を含有するが、いかなる不純物も含有しない。算出されたピーク強度比は、約3である。2つのNMC111前駆体間の変動は、NMC532前駆体についてのものと同じ理由に起因するものと考える。

0059

両方のNMC111前駆体は、従来の高温焼結プロセスにおいてリチウム化される。Li2CO3(Chemetall)を、ブレンダを用いて、前駆体化合物と、約1.11のLi:Mモル比で30分間乾燥混合する。この混合物を、大量生産スケールの設備を用いて、空気の下で980℃にて10時間反応させる。焼成後に、焼結ケークを粉砕し、分類し、ふるいにかけて、前駆体のものと同様な平均粒径D50、すなわち、約10μmを有する非凝集粉末を得る。表2Bに示すように、Ex19からのNMC111カソードは、Ex18からのものと比べて、より高い第1サイクルDQ、より高いレート性能及びより低いQirrを有する。これは、そのより高いピーク強度比に部分的に起因する。これに加えて、スピネル不純物もまた、EX18の低容量及びレート性能の理由であると考えられる。結論として、特徴的なツインピーク構造を備えかつピーク強度比R>0.7を備えるNMC111前駆体が好ましく、すなわち、NMC532前駆体についての結論と同様である。

0060

EX20〜EX21
Ex20は、NMC111及びNMC532前駆体と同じ条件下で、共沈させ、濾過し、洗浄し乾燥させた、NMC622前駆体である。これは、図5に示すように、1.61のピーク強度を有し、理想及び酸化β(II)−Me(OH)2構造の両方を含む。Ex21は、外部供給元から購入した市販のNMC622前駆体である。これはNMC532におけるEEX19に匹敵する、主として酸化β(II)−Me(OH)2構造(XRDパターンでは単一ピークのみ)及びβ(III)−MeOOH欠陥の小画分を有することを除けば、Ex20と非常に類似した物理化学的性質を有する(表2Aを参照)。図5及び図8において、Ex21の矢印はβ(III)−MeOOH欠陥を指し示す。すべてのNMC622前駆体は、従来の高温焼結プロセスを用いてリチウム化される。LiOH(Chemetall)を、ブレンダを用いて、前駆体化合物と、1.02周辺のLi:Mモル比で30分間乾燥混合する。この混合物を、大量生産スケールの設備を用いて、空気の下で880℃にて10時間反応させる。焼成後に、焼結ケークを粉砕し、分類し、ふるいにかけて、前駆体のものと同様な平均粒径D50、すなわち、約12μmを有する非凝集粉末を得る。表2Bに示すように、Ex20から作製されたNMC622カソードは、優れたコインセル第1サイクルDQ及び良好なレート性能を有するが、一方でEx21から作製されたものは、2.7mAh/gのより低いDQ及び3Cレートにおける4%の低いレート性能を有する。これは、3Cレートでの放電容量における9mAh/g超の損失に達し、非常に大きい。結論として、NMC111及びNMC532前駆体についてすでに結論づいているように、特徴的なツインピーク構造を備えかつピーク強度比R>0.7を備えるNMC622前駆体が好ましい。

0061

EX2−I、EX10−I、EX2−II、EX10−II
EX2及びEX10の前駆体は、それぞれ、0.43及び1.72のピーク強度比を有する。前駆体のカソード性能に及ぼす影響を立証するために、これらの2つの前駆体から、更に4つのカソードを、
−EX2−I及びEX10−Iは、3kgの配合物充填量でトレイ内でリチウム化され、
−EX2−II及びEX10−IIは、7kgの配合物充填量でトレイ内でリチウム化される
ことを除き、EX1〜EX17で上述されたものと同じリチウム化条件を用いて大量生産ラインで作製した。

0062

3kgの配合物充填量では、表3Aで列記するように、EX10−Iは、EX2−Iと比べて、同様なCQを、より低いQirr、及びより高い3Cレート性能を備えた、より高いコインセル0.1CDQを有する。

0063

カソード活物質もまた、前に記載されたようにフルセル内に組み込まれる。表3Bは、フルセルスラリ調製後30分でのスラリ粘度を示す。EX10−Iから作製されたカソードは、明確に、より低いスラリ粘度を有し、これは、カソードがAl箔の集電体上をコーティングすることを容易にする。加えて、フルセルの比容量及び3Cレート性能は、コインセルデータと一致する。−20℃で試験されるとき、EX10−Iから作製されたフルセルもまた、EX2−Iから作製されたものと比べて、わずかに高い容量保存を示す。ホットボックス試験に関しては、EX10−Iの電圧は、EX2−Iのものよりも高い温度まで維持され、これは、より良好な安全性を示唆する。

0064

図6は、25℃で試験されたフルセルのサイクル寿命を示し、ここでは、EX10−I及びEX2−Iが、サイクル中に、基本的に同じ容量フェージングを有する。しかしながら、前者は、後者と比べて明確により小さいDCR増加を有する。図7は、45℃で試験されたフルセルサイクル寿命のデータを示す。一貫して、EX10−Iは、EX2−Iと比べると、これらの45℃におけるサイクル安定性が同じであるにもかかわらず、より少ないDCR増加を有する。

0065

7kgの配合物充填量については、コインセル試験データ及びフルセル試験データは、表3A及び表3B並びに図6及び図7に示すように、EX10−IIから作製されたカソードがEX2−IIから作成されたものを超える利益を有することを確証している。カソード大量生産については、トレイを用いる高温焼成、及び低配合物充填因子は、通常、完全な固体状態反応及びより良好なカソード結晶構造、したがって、より良好なカソード性能を確実なものとする。このように、EX10−IIのEX10−Iに対する場合もそうであるように、7kgの配合物充填量で焼成されたEX2−IIが、3kg配合物充填量でのEX2−Iと比べて不良な性能を有することは当たり前のことである。しかしながら、EX2−IIのEX2−Iに対比しての性能劣化をEX10−IIのEX10−Iに対比しての性能劣化と比べる場合(後者は前者よりも小さい)、高い(より高い)ピーク強度比を有する前駆体化合物が適用されるならば、高配合物充填量で生じるこの性能劣化が低減され得ることを示している(Rは、EX10よりはEX2でより小さい)。

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