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技術 繊維強化樹脂プリプレグおよび対象物を補強または補修する方法

出願人 積水化学工業株式会社
発明者 安井香織
出願日 2016年9月20日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-183235
公開日 2018年3月29日 (3年1ヶ月経過) 公開番号 2018-048231
状態 特許登録済
技術分野 強化プラスチック材料 既存建築物への作業 型の被覆による成形、強化プラスチック成形 エポキシ樹脂
主要キーワード 補修対象物 硬化応力 被着対象物 軸状体 平均低下率 補強対象物 ポリイソイミド樹脂 向クロス
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年3月29日)のものです。
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図面 (4)

課題

補強対象物または補修対象物貼付された後、熱硬化時でのずれが防止される繊維強化樹脂プリプレグ、およびそれを用いた対象物補強または補修する方法を提供する。

解決手段

本発明の繊維強化樹脂プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物と繊維とを含む。熱硬化性樹脂組成物は、温度T(℃)で最低粘度ηmin(Pa・s)を示し、T−10(℃)で最低粘度ηminより高い粘度ηk(Pa・s)を示し、最低粘度ηminが200Pa・s以上、かつ、最低粘度ηminと粘度ηkとの差が1Pa・s以上である。

概要

背景

従来、経年劣化により強度低下を生じたコンクリートおよび鋼構造物の表面に、ガラス繊維アラミド繊維炭素繊維などで強化された樹脂シートを貼り付けて補修または補強することが行われてきた。

特に補強工法としては、炭素繊維で強化されたエポキシ樹脂を用いることが知られている。このような繊維強化樹脂が用いられる例として、特開平1−197532号公報(特許文献1)に、現場硬化軟質炭素繊維強化プリプレグを用いた補強工法が記載されている。

概要

補強対象物または補修対象物貼付された後、熱硬化時でのずれが防止される繊維強化樹脂プリプレグ、およびそれを用いた対象物を補強または補修する方法を提供する。本発明の繊維強化樹脂プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物と繊維とを含む。熱硬化性樹脂組成物は、温度T(℃)で最低粘度ηmin(Pa・s)を示し、T−10(℃)で最低粘度ηminより高い粘度ηk(Pa・s)を示し、最低粘度ηminが200Pa・s以上、かつ、最低粘度ηminと粘度ηkとの差が1Pa・s以上である。

目的

本発明の目的は、補強対象物または補修対象物へ貼付された後、熱硬化時でのずれが防止される繊維強化樹脂プリプレグ、およびそれを用いた対象物を補強または補修する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

熱硬化性樹脂組成物と繊維とを含み、前記熱硬化性樹脂組成物が、温度T(℃)で最低粘度ηmin(Pa・s)を示し、前記温度T−10(℃)で前記最低粘度ηminより高い粘度ηk(Pa・s)を示し、前記最低粘度ηminが200Pa・s以上、かつ、前記最低粘度ηminと前記粘度ηkとの差が1Pa・s以上である、繊維強化樹脂プリプレグ

請求項2

前記熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂およびポリメタアクリル酸エステル系有機微粒子を含み、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の含有量が前記エポキシ樹脂100重量部に対し20重量部以上である、請求項1に記載の繊維強化樹脂プリプレグ。

請求項3

前記ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子が少なくともエポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子を含む、請求項2に記載の繊維強化樹脂プリプレグ。

請求項4

前記エポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の含有量がエポキシ樹脂100重量部に対し15重量部以上である、請求項3に記載の繊維強化樹脂プリプレグ。

請求項5

前記熱硬化性樹脂組成物が硬化剤として実質的にアミン系硬化剤のみを含み、かつ、前記最低粘度ηminと前記粘度ηkとの差が100以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂プリプレグ。

請求項6

前記熱硬化性樹脂組成物が硬化剤として酸無水物系硬化剤を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂プリプレグ。

請求項7

前記熱硬化性樹脂組成物が以下の物性:(i)30℃、周波数100Hzにおける貯蔵弾性率が30,000Pa以上、(ii)30℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が300,000Pa以下、を満たす、請求項1から6のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂プリプレグ。

請求項8

請求項1から7のいずれか1項に記載の繊維強化樹脂プリプレグを対象物に貼り付ける貼付工程と、貼り付けられた前記繊維強化樹脂プリプレグを100℃以上200℃以下で加熱する熱硬化工程と、を含む、対象物を補強または補修する方法。

請求項9

前記熱硬化工程において3℃/分以上30℃/分以下の速度で前記繊維強化樹脂プリプレグの温度を上昇させる、請求項8に記載の対象物を補強または補修する方法。

請求項10

前記熱硬化工程において、前記繊維強化樹脂プリプレグに対して押圧を行わない、請求項8または9に記載の対象物を補強または補修する方法。

技術分野

0001

本発明は、対象物建築物構造体)を補強または補修する技術に関する。より具体的には、本発明は、繊維強化樹脂プリプレグ、およびそれを用いて対象物を補強または補修する方法に関する。

背景技術

0002

従来、経年劣化により強度低下を生じたコンクリートおよび鋼構造物の表面に、ガラス繊維アラミド繊維炭素繊維などで強化された樹脂シートを貼り付けて補修または補強することが行われてきた。

0003

特に補強工法としては、炭素繊維で強化されたエポキシ樹脂を用いることが知られている。このような繊維強化樹脂が用いられる例として、特開平1−197532号公報(特許文献1)に、現場硬化軟質炭素繊維強化プリプレグを用いた補強工法が記載されている。

先行技術

0004

特開平1−197532号公報

発明が解決しようとする課題

0005

上記の特許文献1の実施例には、繊維強化樹脂プリプレグに含浸されている樹脂組成物が120℃付近で炭素繊維に含浸できる程の低粘度になる旨の記載がある。このため、この繊維強化樹脂プリプレグを施工現場加熱硬化すると、プリプレグ強化繊維から含浸樹脂流れ落ち浸出し)たり、貼付対象垂直面および天面である場合にはプリプレグ自体がずれ落ちたりする問題が生じる。プリプレグのずれ落ちへの対策として、熱硬化時にプリプレグを押圧する手段があるものの、実際には含浸樹脂の浸出を十分に防ぐことはできないためプリプレグのずれは生じてしまう。

0006

そこで本発明の目的は、補強対象物または補修対象物貼付された後、熱硬化時でのずれが防止される繊維強化樹脂プリプレグ、およびそれを用いた対象物を補強または補修する方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

本発明者らは、熱硬化性樹脂組成物温度上昇とともに示す粘度変化において、ある温度から最低粘度を取る温度までの所定の温度幅における粘度低下率所定範囲とすることにより上記の本発明の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。

0008

(1)
本発明の繊維強化樹脂プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物と繊維とを含む。熱硬化性樹脂組成物は、温度T(℃)で最低粘度ηmin(Pa・s)を示し、T−10(℃)で最低粘度ηminより高い粘度ηk(Pa・s)を示し、最低粘度ηminが200Pa・s以上、かつ、最低粘度ηminと粘度ηkとの差が1Pa・s以上である。

0009

これによって、補強対象物または補修対象物へ貼付された後、熱硬化時でのずれが防止される。
なお、粘度とは、動的粘弾性測定による複素粘性率をいう。また、熱可塑性樹脂は増粘された状態の樹脂組成物であり、最低粘度とは、この増粘された状態の樹脂組成物の最低粘度をいう。

0010

(2)
上記(1)の繊維強化樹脂プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物がエポキシ樹脂およびポリメタアクリル酸エステル系有機微粒子を含み、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の含有量エポキシ樹脂100重量部に対し20重量部以上であってよい。

0011

これによって、補強対象物または補修対象物へ貼付された後、熱硬化時でのずれがより良好に防止される。

0012

(3)
上記(2)の繊維強化樹脂プリプレグは、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子が少なくともエポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子を含んでよい。

0013

これによって、補強対象物または補修対象物へ貼付された後、熱硬化時でのずれがより良好に防止される。

0014

(4)
上記(3)の繊維強化樹脂プリプレグは、エポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の含有量がエポキシ樹脂100重量部に対し15重量部以上であってよい。

0015

これによって、補強対象物または補修対象物へ貼付された後、熱硬化時でのずれがより良好に防止される。

0016

(5)
上記(1)から(4)のいずれかの繊維強化樹脂プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物が硬化剤として実質的にアミン系硬化剤のみを含み、かつ、最低粘度ηminと粘度ηkとの差が100以上であってよい。

0017

このように、硬化剤がアミン系硬化剤の場合、最低粘度ηminと粘度ηkとの差を比較的大きくすることで、熱硬化時でのずれが良好に防止される。

0018

(6)
上記(1)から(4)のいずれかの繊維強化樹脂プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物が硬化剤として酸無水物系硬化剤を含んでよい。

0019

このように、硬化剤が酸無水物硬化剤を含む場合、最低粘度ηminと粘度ηkとの差が比較的小さくても、熱硬化時でのずれが良好に防止される。

0020

(7)
上記(1)から(6)のいずれかの繊維強化樹脂プリプレグは、熱硬化性樹脂組成物が以下の物性:
(i)30℃、周波数100Hzにおける貯蔵弾性率が30,000Pa以上、
(ii)30℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が300,000Pa以下、
を満たしてよい。

0021

上記(i)の物性を具備させることで、繊維強化樹脂プリプレグが表面に剥離シートを有する場合に剥離シートを容易に剥離することができ、上記(ii)の物性を具備させることで対象物へ強固に接着させることができる。
なお、貯蔵弾性率とは、動的粘弾性測定による貯蔵弾性率をいう。

0022

(8)
本発明の対象物を補強または補修する方法は、貼付工程と熱硬化工程とを含む。貼付工程では、上記(1)から(7)のいずれかの繊維強化樹脂プリプレグを対象物に貼り付ける。硬化工程では、貼り付けられた繊維強化樹脂プリプレグを100℃以上200℃以下で加熱する。

0023

これによって、熱硬化時のプリプレグのずれを良好に防止することができる。
なお、補強とは、対象物の劣化度合いに関わらず、当該対象物の健全状態(非劣化状態)よりも向上された機械的特性を付与するための処理をいい、補修とは、対象物の劣化による機械的特性の低下を健全状態(非劣化状態)同等に回復させるための処理をいう。

0024

(9)
上記(8)の対象物を補強または補修方法では、熱硬化工程において3℃/分以上30℃/分以下の速度で繊維強化樹脂プリプレグの温度を上昇させてよい。

0025

これによって、熱硬化時のプリプレグのずれをより良好に防止するとともに、良好な接着性を得ることができる。

0026

(10)
上記(8)または(9)の対象物を補強または補修する方法では、熱硬化工程において、繊維強化樹脂プリプレグに対して押圧を行わなくてよい。

0027

このように本発明は、熱硬化時にプリプレグのズレを良好に防止できるため、熱硬化時に押圧を行わない場合に特に有用である。この場合、押圧のための器具等を必要としないため、現場施工が容易であるとともに、施工対象物の形状の自由度が顕著に高くなる。

発明の効果

0028

本発明によれば、補強対象物または補修対象物へ貼付された後、熱硬化時でのずれが防止される繊維強化樹脂プリプレグ、およびそれを用いた対象物を補強または補修する方法が提供される。

図面の簡単な説明

0029

本発明の繊維強化樹脂プリプレグの一例を示す模式的断面図である。
本発明の繊維強化樹脂プリプレグの他の例を示す模式的断面図である。
本発明の繊維強化樹脂プリプレグに含まれる樹脂組成物が加熱された場合の粘度変化を模式的に示す。

0030

[1.繊維強化樹脂プリプレグ]
[1−1.基本構造
図1に、本発明の繊維強化樹脂プリプレグの一例を示す模式的断面図である。図1に示される繊維強化樹脂プリプレグ100は、第1樹脂層210と、繊維強化樹脂層250と、第2樹脂層220と、を含む。第1樹脂層210、繊維強化樹脂層250および第2樹脂層220はこの順に積層されている。第1樹脂層210、繊維強化樹脂層250および第2樹脂層220の総厚は、たとえば0.1mm以上3mm以下、好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である。総厚が上記下限値以上であることは、第1樹脂層210を適切な厚さで確保しやすい点で好ましく、上記上限値以下であることは、特に表面が曲面である場合に、プリプレグの内外周差に起因する凹曲面側のヒダを生じさせず追従させやすい点、柱状構造物への多積層貼りの際に、外層へ貼り付けるシート面積の増分を抑えられるなどで好ましい。本実施形態の繊維強化樹脂プリプレグ100は、さらに、バリア性層290を含む。バリア性層290は、第2樹脂層220に積層されている。繊維強化樹脂プリプレグ100は、第1樹脂層210に剥離シート300が張り付けられている。

0031

図2に、本発明の繊維強化樹脂プリプレグの他の例を示す模式的断面図である。図2に示される繊維強化樹脂プリプレグ100aは、バリア性層290を有しないことを除いて、上述の繊維強化樹脂プリプレグ100と同じである。
以下、繊維強化樹脂プリプレグ100を挙げて説明する。

0032

[1−2.第1樹脂層]
第1樹脂層210は、繊維強化樹脂層250の表面を均すだけでなく、所定の厚みおよび所定の粘度を有することによって、繊維強化樹脂プリプレグ100を対象物に接着させるための接着層として機能する。

0033

第1樹脂層210の厚みは、50μm以上、好ましくは60μm以上であってよい。第1樹脂層210の厚みが上記の範囲であることによって、繊維強化樹脂プリプレグ100を対象物に貼付することが容易で、被着対象物凹凸への追従が可能となり接着不良を起こしにくく、さらに剥離作業時に炭素繊維表面からの樹脂層の剥離を抑制させることができる。第1樹脂層210の厚み範囲内の上限は特に限定されないが、繊維強化樹脂プリプレグ100の総厚の肥大を防止する観点から、たとえば500μm、好ましくは200μmであってよい。対象物に貼付することができるとは、貼付時(硬化前)において、仮に重力が加わっても(つまり、プリプレグに、それを剥離する方向に向かってプリプレグの自重が加わっても)、さらに重力と揺動とが加わっても、貼り付け位置がずれたり対象物から剥がれたりせず安定的な貼付状態を保つことをいう。

0034

第1樹脂層210を構成する熱硬化性樹脂組成物(以下、樹脂組成物)はプレゲル化された状態が維持されている。プレゲル化された状態とは、樹脂組成物が完全硬化されずに増粘によりそれ自身の形状を保持できる状態をいう。これによって、第1樹脂層210は粘着性を有する。

0035

この樹脂組成物が加熱された場合の粘度変化を模式的に図3に示す。図3において、横軸は温度(℃)、縦軸は粘度(Pa・s)を示す。樹脂組成物は、温度上昇に伴い徐々に粘度が低下し、一定の温度を超えると温度上昇に対する粘度低下率は急激に大きくなり、最低粘度に達する(硬化前領域)。さらに温度を上昇させると、熱硬化の進行により粘度は上昇する(硬化進行領域)。
ここで、硬化前領域における樹脂組成物が温度T(℃)で最低粘度ηmin(Pa・s)を示し、温度T−10(℃)で粘度ηk(Pa・s)を示すとする。

0036

本発明における樹脂組成物は、まず、最低粘度ηminが200Pa・s以上である。最低粘度ηminが200Pa・sを下回る場合、プリプレグを対象物に貼付した後の熱硬化時に樹脂組成物の粘度が下がりすぎてプリプレグが貼付位置からずれる問題が生じる。

0037

さらに、本発明における樹脂組成物は、T−10(℃)からT(℃)の温度上昇幅に対する粘度の平均低下率が0.1(Pa・s/℃)以上である。つまり、|(ηmin−ηk)/{T−(T−10)}|≧0.1 ⇔ ηk−ηmin≧1 である。当該平均低下率が0.1を下回る場合つまり最低粘度ηminと粘度ηkとの差が1を下回る場合、熱硬化時に供される温度帯に対して低粘度である場合が多すぎるため、熱硬化時の通常の温度上昇速度に対して低粘度である時間が長すぎ、熱硬化の間にプリプレグが貼付位置からずれる問題が生じる。
当該差の範囲内の上限は特に限定されないが、たとえば1,000、好ましくは500であってよい。これによって、最も低粘度となった樹脂組成物が対象表面なじみやすいため、プリプレグの対象表面への接着強度が良好に確保される。

0038

熱硬化樹脂組成物が硬化剤として実質的にアミン系硬化剤のみを含む場合は、最低粘度ηminと粘度ηkとの差は100以上、好ましくは200以上であってよい。これによって、硬化時のプリプレグのずれをより良好に抑制することができる。
熱硬化樹脂組成物が硬化剤として酸無水物系硬化剤を含む場合、好ましくは実質的に酸無水物系硬化剤のみを含む場合は、最低粘度ηminと粘度ηkとの差は1以上であってよい。特に酸無水物系硬化剤が固体である場合、使用量と溶解速度とを考慮すると、たとえば1以上、好ましくは5以上であってよい。

0039

最低粘度ηmin(Pa・s)を示す温度T(℃)は、たとえば100℃以上190℃以下、好ましくは130℃以上160℃以下であってよい。温度Tが上記下限以上であることは硬化前におけるプリプレグの過度のべたつき等を防止し取り扱い容易性を得る点で好ましく、上記上限以下であることは、プリプレグを構成する樹脂組成物および/または繊維の変性を防ぐ点で好ましい。

0040

第1樹脂層210を構成する樹脂組成物の30℃、周波数100Hzにおける貯蔵弾性率は30,000Pa以上、好ましくは35,000Pa以上である。これによって、剥離シート300を容易に剥離させることができる。
第1樹脂層210を構成する樹脂組成物の30℃、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率は、200,000Pa以下、好ましくは100,000Pa以下である。これによって、対象物へ強固に接着することができる。

0041

第1樹脂層210を構成する樹脂組成物の30℃、周波数1Hzにおける粘度は、50,000Pa・s以下であってよい。これによって、繊維強化樹脂プリプレグの対象物表面への追従性が良好となり、対象物への接着強度がさらに良好となる。
また、第1樹脂層210を構成する樹脂組成物の30℃、1Hzにおける粘度は、200Pa・s以上50,000Pa・s以下、好ましくは10,000Pa・s以上50,000Pa・s以下であってもよい。当該粘度が上記下限以上であることは、第1樹脂層210の厚みを維持する点、および剥離シート300を剥離させやすい点で好ましく、上記上限以下であることは、対象物表面への追随性を良好に確保し繊維強化樹脂プリプレグ100を軽い負荷で対象物に貼付できる点で好ましい。

0042

第1樹脂層210を構成する樹脂組成物は一液性樹脂組成物であり、未硬化状態熱硬化性樹脂(以下、単に未硬化樹脂と記載する場合がある)、硬化剤および増粘剤を含み、さらに他の添加剤を含みうる。

0043

(未硬化樹脂)
未硬化樹脂としては特に限定されないが、たとえば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂フェノール樹脂ビニルエステル樹脂シアン酸エステル樹脂ウレタンアクリレート樹脂フェノキシ樹脂アルキド樹脂ウレタン樹脂マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂の予備重合樹脂ビスマレイミド樹脂アセチレン末端を有するポリイミド樹脂及びポリイソイミド樹脂、ナジック酸末端を有するポリイミド樹脂などがあげられる。これらの樹脂は、単独または複数種が組み合わされて使用されてよい。

0044

本実施形態では、異素材との接着性などの観点からエポキシ樹脂が主成分として用いられることが好ましい。エポキシ樹脂は、エポキシ基を1官能以上、好ましくは2官能以上有するエポキシプレポリマー化合物である。具体的には、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーおよびエポキシ基を有するポリマーの少なくともいずれかをいう。樹脂組成物は増粘剤によって増粘されるため、エポキシプレポリマー化合物は、モノマーまたはオリゴマーを少なくとも含むことが好ましく、モノマーまたはオリゴマーのみであってもよい。
さらに、エポキシプレポリマー化合物は、グリシジルエーテル型グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、および脂環式エポキシ化合物が挙げられる。

0045

グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型およびグリシジルエステル型のエポキシ化合物は、グリシジルアルキル基を有するハロゲン化物活性水素化合物(それぞれ、アルコールアミンカルボン酸)とから得ることができる。

0046

グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物の臭化物、ビスフェノールA型エポキシ化合物の水素添加物ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物の臭化物、ビスフェノールF型エポキシ化合物の水素添加物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、o−,m−,p−クレゾールノボラック型エポキシ化合物フェノールノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン環含有エポキシ化合物ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ジヒドロキシペンタジエン型エポキシ化合物、およびトリフェニルメタン型エポキシ化合物など、および、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。

0047

グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタントリグリシジルアミノフェノールテトラグリシジルキシレンジアミン、グリシジルアニリン、グリシジルo−トルイジンなどが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステルダイマー酸ジグリシジルエステル、などが挙げられる。

0048

脂環式エポキシ化合物は、脂肪族環とエポキシ基を有する化合物であり、より具体的には、脂環エポキシ基(脂環を構成する隣接する2つの炭素原子酸素原子とで構成されるエポキシ基)を有する化合物、および脂肪族環に直接的または間接的に単結合したエポキシ基を有する化合物が挙げられる。

0049

脂環エポキシ基を有する化合物しては、2個の脂環エポキシ基が単結合または2価の連結基によって連結された化合物であることが好ましい。脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が挙げられる。2価の連結基としては、2価の炭化水素基カルボニル基エーテル結合エステル結合カーボネート基アミド基、及びこれらが複数個連結した基が挙げられる。たとえば、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(たとえば(株)ダイセルセロサイド2021P)、ε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド2081)が好ましい。その他、脂環エポキシ基を有する化合物しては、1個の脂環エポキシ基を有する、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド2000)、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイドが挙げられる。

0050

脂肪族環に直接的または間接的に単結合したエポキシ基を有する化合物としては、エポキシノルボルネン(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド3000)、2,2−ビスヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニルシクロヘキサン付加物(たとえば(株)ダイセル製EHPE3150)などが挙げられる。

0051

(硬化剤)
硬化剤としては、いわゆる潜在性硬化剤が用いられる。潜在性硬化剤とは、加熱を契機として溶解、分解、転移反応等により活性化し、熱硬化性樹脂に対して硬化促進剤として機能する化合物である。このため、対象物に貼付されて硬化条件に供されるまでは、繊維強化樹脂プリプレグ100中で硬化剤として不活性の状態で含まれる。

0052

硬化剤は、熱の作用によって活性化される化合物であればよい。より具体的には、アミン系硬化剤および酸無水物などが挙げられる。
アミン系硬化剤としては、芳香族アミンであるジアミノジフェニルスルホンおよびジアミノジフェニルメタン脂肪族アミンであるジシアンジアミドおよびその誘導体;ならびにヒドラジド化合物などが挙げられる。ジシアンジアミドの誘導体は、ジシアンジアミドに各種化合物を結合させたものであり、エポキシ樹脂との反応物およびビニル化合物またはアクリル化合物との反応物などが挙げられる。
酸無水物としては、無水マレイン酸無水コハク酸無水フタル酸無水シトラコン酸などのジカルボン酸無水物およびその誘導体が挙げられる。ジカルボン酸無水物の誘導体としては、水素化物およびアルキル基付加物などが挙げられる。より具体的には、水素化メチルナジック酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物などの脂環式酸無水物が挙げられる。

0053

硬化剤の量は硬化剤の種類により異なるため特に限定されないが、硬化剤の反応基当量が未硬化樹脂の重合性基当量のたとえば0.5倍以上1.5倍以下、好ましくは0.8倍以上1.2倍以下、より好ましくは0.9倍以上1.0倍以下となる量であってよい。硬化剤の量が上記下限以上であることは、硬化物反応率耐熱性、強度、および弾性率などを良好に得る点で好ましく、上記上限以下であることは、硬化物の塑性変形能力ひいては耐衝撃性を良好に得る点で好ましい。

0054

硬化剤は、硬化促進剤との組み合わせで用いられてもよい。硬化促進剤としては、イミダゾール類およびルイス酸触媒が挙げられる。
イミダゾール類としては、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−1H−イミダゾール4,5−ジメタノール、2,4−ジアミノ−6−(2’−メチルイミダゾリル(1)’)エチル−s−トリアジンイソシアヌール酸付加物などの変性イミダゾール化合物が挙げられる。
ルイス酸触媒としては、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素・トリエタノールアミン錯体、三塩化ホウ素オクチルアミン錯体などの、ハロゲン化ホウ素塩基との錯体が挙げられる。

0055

(増粘剤)
増粘剤は、温度上昇により樹脂液を増粘させるものであり、固形エポキシ樹脂は除外される。これによって、上述の最低粘度ηminの所定量および最低粘度ηminと粘度ηkとの差の所定量を容易に満たすことができる。

0056

増粘剤は、未硬化樹脂100重量部に対して、たとえば15重量部以上50重量部以下であってよい。当該含量が上記下限値以上であることは、上述の最低粘度ηminの所定量および最低粘度ηminと粘度ηkとの差の所定量を良好に満たし、剥離シートの剥離性を良好に得る点で好ましく、当該含量が上記上限値未満であることは、対象物への粘着性を良好に得る点で好ましい。

0057

増粘剤の具体例としては、コアシェル型熱可塑性樹脂の粒子、および塩化ビニル系樹脂の粒子などが挙げられる。

0058

コアシェル型熱可塑性樹脂粒子コア成分としては特に限定されないが、たとえば(メタ)アクリル酸エステルジエンおよびこれらと共重合可能単量体の中から選ばれる1種以上を単量体成分とする樹脂(特にポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子)であってよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチル(メタ)アクリレートn−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシルメタクリレートイソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
ジエンとしては、ブタジエンイソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエンジシクロペンタジエンなどの共役ジエン系化合物、1,4−ヘキサジエンエチリデンノルボルネンなどの非共役ジエン系化合物などが挙げられる。
これらと共重合可能な単量体としては、スチレンα−メチルスチレンビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物アクリルアミドN−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物メタアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、などのメタクリルアミド系化合物およびグリシジルアクリレートグリシジルメタクリレートアリルグリシジルアクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。

0059

コアシェル型熱可塑性樹脂のシェル成分としては特に限定されないが、上記の単量体から選ばれる2種以上を単量体成分とする樹脂であってよい。シェル層には、N−置換アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステル系ラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体遊離カルボキシル基を有する単量体を共重合させることができる。これによって、熱硬化性樹脂に対し溶解性発現する構造となりやすい。
N−置換アクリルアミドとしては、例えば、N−アクリロイルピロリジン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミドなどが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体とラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体としては、エチレングリコールジアクリレートブチレングリコールジアクリレートトリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートヘキサンジオールジアクリレート、オリゴエチレンジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレンジメタクリレートジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニル単量体トリメリット酸トリアリルトリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。
遊離カルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸クロトン酸ケイヒ酸などの不飽和モノカルボン酸マレイン酸イタコン酸フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などのジカルボン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルマレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられる。

0060

未硬化樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、上述の増粘剤の中でもポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子であることがより好ましい。これによって、上述の最低粘度ηminの所定量および最低粘度ηminと粘度ηkとの差の所定量を容易に満たすことができる。この場合、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対し20重量部以上であってよい。当該含量が上記下限値以上であることは、上述の最低粘度ηminの所定量および最低粘度ηminと粘度ηkとの差の所定量をより良好に満たす点で好ましい。

0061

未硬化樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、さらに、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子として、上述のエポキシ基含有(メタ)アクリレートを少なくとも単量体成分とする樹脂をコア成分に有するエポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子を含むことがより好ましい。これによって、上述の最低粘度ηminの所定量および最低粘度ηminと粘度ηkとの差の所定量をより良好に満たすことができる。この場合、エポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の含有量は、エポキシ樹脂100重量部に対し15重量部以上、好ましくは20重量部以上であってよい。当該含量が上記下限値以上であることは、上述の最低粘度ηminの所定量および最低粘度ηminと粘度ηkとの差の所定量をより良好に満たす点で好ましい。さらにこの場合、エポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子は、エポキシ基不含ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子と併用されることが好ましい。これによって、剥離シートの剥離性がより良好となる。エポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子と併用される場合のエポキシ基不含ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の含有量は、エポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子より少なくてよく、具体的には、3重量部以上10重量部以下であってよい。併用されるエポキシ基不含ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の含有量が上記下限以上であることは、剥離シートの剥離性を良好に得る点で好ましく、上記上限値以下であることは、上述の最低粘度ηminの所定量および最低粘度ηminと粘度ηkとの差の所定量をより良好に満たす点で好ましい。

0062

塩化ビニル系樹脂としては特に限定されず、塩化ビニル単量体単独重合体の他、例えば、塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体、塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂をグラフトさせたグラフト共重合体等が挙げられる。さらに、これらの塩化ビニル系樹脂を塩素化した塩素化塩化ビニル系樹脂も挙げられる。これら塩化ビニル系樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。

0063

塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体における重合性単量体としては特に限定されないが、炭素数2以上16以下のα−オレフィン(たとえば、エチレン、プロピレン、およびブチレン);炭素数2以上16以下の脂肪族カルボン酸ビニルエステル(たとえば、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル);炭素数2以上16以下のアルキルビニルエーテル(たとえば、ブチルビニルエーテルおよびセチルビニルエーテル);炭素数1以上16以下のアルキル(メタ)アクリレート(たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレート);アリール(メタ)アクリレート(たとえば、フェニルメタクリレート);芳香族ビニル(たとえば、スチレンおよびα−置換スチレン(たとえば、α−メチルスチレン));ハロゲン化ビニル(たとえば、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン);およびN−置換マレイミド(N−フェニルマレイミドおよびN−シクロヘキシルマレイミド)が挙げられる。

0064

塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂とともにグラフト共重合体を与える重合体としては、塩化ビニルモノマーグラフト重合可能な重合体であれば単独重合体および共重合体を問わず、いかなるものも含まれる。たとえば、α−オレフィンとビニルエステルとの共重合体(たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体);α−オレフィンとビニルエステルと一酸化炭素との共重合体(たとえば、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体);α−オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(たとえば、エチレン−メチルメタクリレート共重合体およびエチレン−エチルアクリレート共重合体);α−オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートと一酸化炭素との共重合体(たとえば、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体);異なる2種以上のα−オレフィンの共重合体(たとえば、エチレン−プロピレン共重合体);不飽和ニトリルとジエンとの共重合体(たとえば、アクリロニトリルブタジエン共重合体);ポリウレタン;および塩素化ポリオレフィン(たとえば、塩素化ポリエチレンおよび塩素化ポリプロピレン)が挙げられる。

0065

塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、特に限定されるものではないが、たとえば400以上1500以下、好ましくは600以上1300以下である。平均重合度が上記下限値以上であることにより、塩化ビニル系樹脂による好ましい物性(たとえば強靭性)を得やすく、適切な添加量で用途に適した粘着性を得やすい。平均重合度が上記上限値以下であることにより、未硬化樹脂に対し、相溶または膨潤の態様を少量の添加量にて容易に得ることができる。上述の特性は未硬化樹脂の組成に影響されるため、上記の範囲を超える平均重合度であっても、当業者によって適宜選択されてよい。

0066

増粘剤が粒子状であることにより、繊維強化樹脂プリプレグ100の製造において未硬化樹脂との相溶状態または膨潤状態を得やすく、ハンドリング性にも優れる。これらの状態をより好ましく得る観点からは、増粘剤粒子の平均粒子径は、0.2μm以上200μm以下であってよい。なお、平均粒子径とは、レーザー光を用いた動的散乱法により測定された体積基準の50%累積分布径をいう。

0067

樹脂組成物には、硬化収縮による硬化応力を低減させるなどの目的で、充填材が添加されていてもよい。充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム炭酸マグネシウム硫酸バリウムマイカタルクカオリンクレーセライトバーライトバライタ、シリカ珪砂ドロマイト石灰石、石膏中空バルーンアルミナガラス粉水酸化アルミニウム酸化ジルコニウム三酸化アンチモン酸化チタン二酸化モリブデン鉄粉などが挙げられる。
一方、硬化物の外観異常(たとえば、充填材と樹脂とが流動性の違いにより分離して移動し、樹脂成分のみが繊維基材に沿って流れた跡として残る成形スジ)を防止する観点からは、上述のような充填材は実質的に含まなくてよい。

0068

[1−3.繊維強化樹脂層]
繊維強化樹脂層250は、繊維と、繊維に含浸されたマトリックス樹脂とで構成される。本実施形態では、繊維強化樹脂プリプレグ100の製造容易性、層間相溶性、および硬化後に一体的硬化態様が得られる点で、マトリックス樹脂は上述の第1樹脂層210を構成する樹脂組成物と同一である。しかしながら、マトリックス樹脂は、上述の第1樹脂層210を構成する樹脂組成物となりうるものから選択される限りにおいて、第1樹脂層210を構成している樹脂組成物と異なっていることも許容する。

0069

特に、繊維強化樹脂層250のマトリックス樹脂は、130℃以上150℃以下で1Pa・s以上、好ましくは30Pa・s以上の最低粘度を示すことによって、硬化時に加熱条件に供されても繊維強化樹脂層からの樹脂の浸出を防止するため、施工時における繊維強化樹脂プリプレグ100のずれを良好に防止することができる。

0070

第1樹脂層210と繊維強化樹脂層250と第2樹脂層220との合計重量に対し、繊維強化樹脂層250に含まれる繊維の重量比率は、たとえば5%以上60%以下、好ましくは20%以上60%以下、より好ましくは20%以上35%以下、さらに好ましくは10%以上30%以下であってよい。当該重量比率が上記下限値以上であることは、対象物たる対象物の強化性を良好に得る点で好ましく、上記上限値以下であることは、第1樹脂層210の厚みを確保しやすいため貼り付け容易性を良好に得る点で好ましい。

0071

繊維は、PAN (ポリアクリロニトリル) 系炭素繊維およびピッチ系炭素繊維などの炭素繊維;スチール繊維などの金属繊維;ガラス繊維、セラミックス繊維ボロン繊維などの無機繊維;ならびに、アラミドポリエステルポリエチレンナイロンビニロンポリアセタールポリパラフェニレンベンズオキサゾール、高強度ポリプロピレンなどの有機繊維ケナフなどの天然繊維が挙げられる。これらの繊維は、単独または複数種を組み合わされて使用されてよい。比強度の観点からは、炭素繊維であることが好ましい。

0072

繊維の形態としては特に限定されず、たとえば、トウクロスチョップドファイバー連続繊維などの繊維の方向を一方向に引き揃えた形態;連続繊維を経緯にして織物とした形態;トウの方向を一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態;繊維の方向を一方向に引き揃えた複数の繊維シートを、それぞれ繊維の方向が異なるように重ね補助糸でステッチして留めたマルチアキシャルワープニットの形態;および、繊維の不織布の形態などが挙げられる。この中でも、繊維の方向を一方向に引き揃えた形態のものおよびトウの方向を一方向に引き揃え横糸補助糸で保持した形態(一方向繊維材料)が好ましい。この場合、繊維強化樹脂プリプレグ100全体で繊維の方向は一方向である。一方向繊維材料を強化繊維として含む繊維強化樹脂プリプレグ100は、セメント硬化物のように貼り付け対象物が直線状のひび割れを生じる場合には繊維方向をひび割れの窪みに沿わせ易く、また、たとえば張り付け対象物が管などの軸状体である場合には繊維方向を軸方向に沿わせ易い。

0073

繊維の目付は、例えば100g/m2以上600g/m2以下であってよい。目付が上記下限値以上であることは、補強または補修硬化を劣化度合いに応じて適切量を少ない施工処理回数で貼り付けることができる点で好ましく、上記上限値以下であることは、含浸性を良好に得るなどの点で好ましい。

0074

[1−4.第2樹脂層]
本実施形態における第2樹脂層220は、繊維強化樹脂層250の表面を均し、バリア性層290がさらに積層されている場合はバリア性層290を接着する接着層としても機能する。
本実施形態では、繊維強化樹脂プリプレグ100の製造容易性、層間相溶性、および硬化後に一体的硬化態様が得られるなどの点で、第2樹脂層220を構成する樹脂は上述の第1樹脂層210および繊維強化樹脂層250のマトリックス樹脂を構成する樹脂組成物と同一である。しかしながら、第2樹脂層220を構成する樹脂は、上述の第1樹脂層210および/または繊維強化樹脂層250のマトリックス樹脂を構成する樹脂組成物となりうるものから選択される限りにおいて、上述の第1樹脂層210および/または繊維強化樹脂層250のマトリックス樹脂を構成している樹脂組成物と異なっていてもよい。あるいは、第2樹脂層220を構成する樹脂は、上述の第1樹脂層210および/または繊維強化樹脂層250のマトリックス樹脂を構成する樹脂組成物となりうるものとは異なっていてもよい。

0075

[1−5.バリア性層]
バリア性層290を構成する物質は、層としてバリア機能を発揮するものであれば特に限定されるものではない。バリア性としては、紫外線バリア性二酸化炭素バリア性、酸素バリア性水蒸気バリア性などのガスバリア性が挙げられる。バリア性層290は、単層構造であってもよいし、異なるバリア性を有する複数の層の積層構造であってもよい。

0076

バリア性層290が紫外線バリア性を有する場合、アクリル系樹脂などの基材樹脂に、紫外線遮蔽剤を含ませることができる。紫外線遮蔽剤としては、一般的に顔料および紫外線吸収剤称呼されるものが挙げられる。

0077

顔料としては、フタロシアニン系、イソインドリノン系、ペリレン系、アゾ系、縮合アゾ系、キナクリドン系、アンスラキノン系、アニリンブラック系、トリフェニルメタン系、ジオキサジン系、酸化チタン系、酸化鉄系酸化クロム系、クロム酸鉛系、スピネル型焼成系、ジケトピロロピロール系、酸化マンガン酸化ビスマス複合塩系、酸化マンガン−イットリウム複合塩系、酸化鉄−酸化クロム複合塩系などの顔料が挙げられる。顔料は、1種または複数種の組み合わせで用いられてよい。

0078

紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化セリウム、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム水酸化カルシウムカーボンブラックホワイトカーボンゼオライトグラファイトなどの無機系紫外線吸収剤;フェニルサレシレ−ト、p−tert−ブチルフェニルサリシレ−ト、p−オクチルフェニルサリシレ−トなどのサリチル酸系;2,4−ギヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ルなどのベンゾトリアゾ−ル系;2−エチルへキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレ−ト、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレ−トなどのシアノアクリレ−ト系の有機系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種または複数種の組み合わせで用いられてよい。

0079

バリア性層290がガスバリア性を有する場合、バリア性層290を構成する樹脂としては、ポリビニルアルコールPVA)、エチレンビニルアルコール共重合体EVOH)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、及びポリアクリロニトリル(PAN)などのガスバリア性樹脂が挙げられる。

0080

[1−6.剥離シート]
剥離シート300は樹脂フィルムであってよく、具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムなど樹脂フィルムがあげられる。樹脂フィルムの表面には、シリコーン樹脂などの剥離性コントロール剤層が設けられることで剥離処理がされていてよい。

0081

[2.繊維強化樹脂プリプレグの製造方法]
繊維強化樹脂プリプレグ100は、たとえば、樹脂混合工程、含浸工程および増粘工程によって製造することができる。

0082

[2−1.樹脂混合工程]
樹脂混合工程においては、未硬化樹脂と増粘剤とを混合し、混合樹脂液を得る。混合樹脂液は無溶媒であってよいが、混合樹脂液単独では粘度が高過ぎる場合は溶媒を添加して混合樹脂液を調製してもよい。これによって、含浸工程での繊維への含浸が容易になる。この場合、溶媒としては、低沸点溶媒であってよい。具体的には、低沸点溶媒として、エタノールトルエンアセトン、などの有機溶媒が挙げられるが、アクリル系増粘材を併用する際は、該増粘材と相溶しない溶媒が好ましい。溶媒量は強化繊維への含浸性を良好に得る目的で適宜調整されるが、多すぎると乾燥処理に多くの熱量および時間が必要となるため、繊維への含浸が可能となる最低限の量とすることが好ましい。

0083

混合樹脂液の温度は、たとえば20℃以上60℃以下、好ましくは30℃以上50℃以下であってよい。当該温度が上記下限値以上であることは、樹脂粘度を下げて繊維への含浸性を良好に得る点で好ましく、上記上限値以下であることは、混合樹脂液の増粘を防いで繊維への含浸性を良好に得る点で好ましい。

0084

[2−2.含浸工程]
含浸工程では、混合樹脂液を繊維に含浸させる。担持工程で許容される温度条件は、樹脂混合工程における温度条件と同じであってよい。たとえば、樹脂混合工程と含浸工程とで同じ温度を維持してもよいし、樹脂への含浸性を向上させるために、上述の温度範囲内で混合樹脂液の温度を上昇させてもよいし、繊維へ良好に保持させるため、および第1樹脂層210の厚みを確保するために、上述の温度範囲内で混合樹脂液の温度を下げてもよい。

0085

含浸の手法としては特に限定されず、当業者によって適宜選択される。たとえば、混合樹脂液を収容した液槽中に繊維を浸漬させ、必要に応じて、繊維の扱き処理、および加圧または真空などの圧変化処理などの手法を用いて含浸を効率化させることができる。混合樹脂液が含浸させられた繊維が液槽から引き上げられた後、ドクターナイフなどによって繊維の表面に付着している混合樹脂液量を調節し、第1樹脂層210の厚みを確保することができる。

0086

[2−3.増粘工程]
増粘工程では、繊維に含浸された混合樹脂液を増粘する。具体的には、加熱により、混合樹脂液中に含まれる増粘剤が好ましくは未硬化樹脂に膨潤された状態となる。あるいは、未硬化樹脂と相溶した状態となることも許容する。

0087

加熱温度としては、相溶または膨潤の状態が得られる温度であればよい。たとえば80℃以上、好ましくは100℃以上である。これによって、溶媒が蒸発するとともに、少なくとも膨潤された状態を容易に得ることができる。一方、高温となるほど、相溶の状態が得られやすい。さらに、加熱温度の範囲内の上限は、たとえば140℃以下、好ましくは120℃以下であってよい。加熱温度の上限は、未硬化樹脂の硬化温度を考慮して当業者が適宜調整することができる。

0088

加熱時間としては、上記温度と対応し適宜調整され、相溶または膨潤の状態が得られ、硬化反応の影響が現れない時間であればよい。たとえば、加熱時間は10分以上60分以下であってよい。

0089

バリア性層290は、バリア性樹脂組成物塗布層コーティングされることにより積層されてもよいし、バリア性フィルムラミネートされることにより積層されてもよい。

0090

増粘完了後、剥離シート300を設け、繊維強化樹脂プリプレグ100を得る。得られた繊維強化樹脂プリプレグ100は、所定の寸法および大きさに分割されてもよいし、巻き取られてロール形状にされてもよい。

0091

[3.繊維強化樹脂プリプレグを用いて対象物を補強または補修する方法]
繊維強化樹脂プリプレグ100は、対象物の補強または補修に用いることができる。補強とは、対象物の劣化度合いに関わらず、当該対象物の健全状態(非劣化状態)よりも向上された機械的特性を付与するための処理をいい、補修とは、対象物の劣化による機械的特性の低下を健全状態(非劣化状態)同等に回復させるための処理をいう。対象物を補強または補修する方法は、貼付工程と、熱硬化工程とを含む。

0092

[3−1.貼付工程]
貼付工程では、補強または補修の対象物に、上述の繊維強化樹脂プリプレグ100を貼付する。対象物は、建築構造物建材配管などの構造物であってよい。対象物の材質は、金属であってもよいし、セメント硬化体であってもよい。金属としては、炭素鋼および鋳鋼などが挙げられる。セメント硬化体としては、モルタルおよびコンクリートなどが挙げられる。

0093

貼付すべき表面は、予め、表面削去(ケレン処理)して平滑化または粗化してもよいし、プライマー処理してもよい。ケレン処理としては、ワイヤーブラシディスクグラインダーサンドブラストおよびブリストルブラストによる処理が挙げられる。なお、本発明における繊維強化樹脂プリプレグ100は第1樹脂層210が接着層として機能するため、対象物と繊維強化樹脂プリプレグ100との間に接着層など、接着を助ける他の層を介在させなくても接着が可能であるが、本発明は、当該接着を助ける他の層が介在した態様も許容する。

0094

貼付工程では、繊維強化樹脂プリプレグ100を対象物に貼り付ける。対象物に確実に貼り付けるために、ローラなどで繊維強化樹脂プリプレグ100を対象物に押し付けることができる。

0095

繊維強化樹脂プリプレグ100は、対象物の特定個所に対し一枚用いてもよいし、当該特定個所に複数枚重ねて用いてもよい。複数枚重ねる場合は、最も外側の繊維強化樹脂プリプレグにバリア性層290を有する上述の繊維強化樹脂プリプレグ100を用い、それ以外の繊維強化樹脂プリプレグにバリア性層290を有さない繊維強化樹脂プリプレグ100aを用いることができる。

0096

[3−2.熱硬化工程]
熱硬化工程では、貼付された状態の樹脂複合体を、硬化剤の活性条件下に供する。これによって、繊維強化樹脂プリプレグ100に含まれる樹脂組成物を完全硬化させる。したがって、対象物は、表面に繊維強化樹脂の完全硬化体が強固に固着した状態で補強または補修される。

0097

繊維強化樹脂プリプレグ100は、最低粘度ηminでも200Pa・s以上という高粘度が保たれるため、第1樹脂層210の厚みが適切に維持され、かつ、繊維強化樹脂層250からの樹脂の浸出を防止することができる。

0098

さらに、熱硬化を行っても第1樹脂層210の厚みが適切に維持され、かつ、繊維強化樹脂層からの樹脂の浸出の防止などが可能であるため、熱硬化工程で押圧を行わなくても良好な固着状態を得ることができる。この場合、押圧のための器具等を必要としないため、現場施工が容易であるとともに、施工対象物の形状の自由度が顕著に高くなる。

0099

一方で、熱硬化工程で押圧を行ってもよい。これによって、繊維強化樹脂を対象物へ強固に固着させることができる。

0100

加圧を行う場合、加圧条件は、1,000Pa以上200,000Pa以下、好ましくは10,000Pa以上であってよい。加圧条件が上記下限値以上であることは、繊維強化樹脂プリプレグ100が対象物に良好に押しつけられ、対象物への接着強度が良好になる点で好ましく、上記上限値以下であることは、第1樹脂層210の厚みを押しつぶさないなどで、対象物への接着強度が良好になる点で好ましい。加圧の際は、押圧のための器具とプリプレグとの接着を防ぐ目的で、離型シートなどを介在させることが好ましい。離型シートとしては、表面が離型処理されたシート、および非接着性に優れるテフロン登録商標)シートなどが挙げられる。

0101

硬化条件としては、熱硬化工程において3℃/分以上30℃/分以下、好ましくは5℃/分以上25℃/分以下の速度でプリプレグの温度を上昇させることが好ましい。加熱速度が上記下限以上であることは、プリプレグの中の樹脂組成物が最低粘度ηmin近辺の粘度帯を経由する時間を短くすることでプリプレグのずれをより良好に防止する点で好ましく、上記上限以下であることは、最低粘度ηmin近辺の粘度に低粘度化された樹脂組成物が対象物表面に密着して硬化後に良好な接着性を得る点で好ましい。

0102

プリプレグが供される具体的な温度条件としては、100℃以上200℃以下、好ましくは130℃以上200℃以下であってよい。当該温度が上記下限値以上であることは、繊維強化樹脂プリプレグ100の第1接着層210が対象物表面に追随させやすい点で好ましく、上記上限値以下であることは、繊維強化樹脂プリプレグ100を構成する樹脂組成物および/または繊維の変性を防ぐ点で好ましい。したがって、繊維強化樹脂プリプレグ100を異素材へ強固に固着させることができる。なお、加熱時間は、5分以上60分以下、好ましくは10分以上45分以下であってよい。

0103

加熱方式は特に限定されないが、対象物の形状に対する高い自由度を確保するために熱風および赤外線ヒーターなどの非接触加熱方式であることが好ましい。加熱時間が上記下限値以上であることは、硬化反応を十分に進行させて接着強度を得る点で好ましく、上記上限値以下であることは、硬化樹脂の変性などを防ぐ点で好ましい。

0104

[3−3.貼り直し−仮貼付工程およびリセット工程]
繊維強化樹脂プリプレグ100は、未硬化時における第1樹脂層210の粘度が高いため、硬化前であれば貼り直しを行うことができる。たとえば、繊維強化樹脂プリプレグ100の貼付位置および/または貼付方向訂正したい場合などに有用である。このような貼り直しを行う場合、繊維強化樹脂プリプレグを用いて対象物を補強または補修する方法は、上述の貼付工程(本貼付工程)の前に、仮貼付工程およびリセット工程がさらに含まれる。

0105

仮貼付工程では、仮の位置および/または方向で繊維強化樹脂プリプレグ100を対象物に貼り付ける。リセット工程では、仮貼付した繊維強化樹脂プリプレグ100を対象物から剥がす。さらにこの後、上述の貼付工程(本貼付工程)で、剥がされた繊維強化樹脂プリプレグ100をより適切と判断される位置/および方向で対象物に再度貼り直す。

0106

以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の発明に限定されるものではない。

0107

[実施例1]
未硬化樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂jER828(三菱化学(株)製)100重量部と、硬化剤としてジシアンジアミドDICY−7(三菱化学(株)製)7重量部と、硬化助剤として2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール2PHZ−PW(四国化成(株)製)3重量部と、エポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子としてエポキシ基含有ポリメチルメタクリレートZefiac F301(アイカ工業(株)製)を25重量部と、エポキシ基不含ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子としてポリアルキルメタクリレートZefiac F320(アイカ工業(株)製)を5重量部とを遊星ミキサー中で20℃、2000rpmで10分間撹拌および脱泡させ、混合樹脂液を調製した。

0108

炭素繊維シートとして、一方向クロス(PAN系、300g/m2)を用い、40℃に加温した上述の混合樹脂液を収容した液槽中に浸漬させた。浸漬させた炭素繊維シートを、ロールを通しながら扱くことにより脱泡および樹脂含浸を行い、引き続いて液槽から引き上げ、ドクターナイフにより表面に付着した混合樹脂液の厚みを調節した。

0109

その後、混合樹脂液を含浸させた炭素繊維シートを110℃環境下で30分静置して増粘を行った。これによって、第1樹脂層、繊維強化樹脂層および第2樹脂層で構成される繊維強化樹脂プリプレグを得た。第1樹脂層の厚みは100μm、繊維強化樹脂層の厚みは700μm、総厚は900μmであった。第1樹脂層、繊維強化樹脂層および第2樹脂層の合計重量に対し、炭素繊維シートの重量率は30%であった。

0110

[実施例2]
エポキシ基不含ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子をZefiac F303(アイカ工業(株)製)5重量部に変更したことを除いて、実施例1と同様にして繊維強化樹脂プリプレグを作成した。

0111

[実施例3]
エポキシ基含有ポリメチルメタクリレートZefiac F301(アイカ工業(株)製)の量を20重量部に、ポリアルキルメタクリレートZefiac F320(アイカ工業(株)製)の量を10重量部に変更したことを除いて、実施例1と同様にして繊維強化樹脂プリプレグを作成した。

0112

[実施例4]
エポキシ基含有ポリメチルメタクリレートZefiac F301(アイカ工業(株)製)の量を30重量部に変更し、かつ、エポキシ基不含ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の使用を排除したことを除いて、実施例1と同様にして繊維強化樹脂プリプレグを作成した。

0113

[実施例5]
硬化助剤の使用を排除したことを除いて、実施例1と同様にして繊維強化樹脂プリプレグを作成した。

0114

[実施例6]
硬化剤をリカシッドTH(新日本理化(株)製))87重量部に変更し、かつ硬化助剤の使用を排除したことを除いて、実施例1と同様にして繊維強化樹脂プリプレグを作成した。

0115

[比較例1]
エポキシ基含有ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の使用を排除し、ポリアルキルメタクリレートZefiac F320(アイカ工業(株)製)の使用量を10重量部に変更し、ジシアンジアミドDICY−7(三菱化学(株)製)の使用量を10重量部に変更し、かつ、硬化助剤の使用を排除したことを除いて、実施例1と同様にして繊維強化樹脂プリプレグを作成した。

0116

[比較例2]
エポキシ基含有ポリメチルメタクリレートZefiac F301(アイカ工業(株)製)の使用量を3重量部に変更し、かつエポキシ基不含ポリ(メタ)アクリル酸エステル系有機微粒子の使用を排除したことを除いて、実施例1と同様にして繊維強化樹脂プリプレグを作成した。

0117

[比較例3]
未硬化樹脂を2液型エポキシ樹脂系炭素繊維シート用含浸樹脂CE(ショーボンド社製)100重量部に変更し、硬化剤、硬化助剤および増粘剤の使用を排除したことを除いて、実施例1と同様にして繊維強化樹脂プリプレグを作成した。

0118

[比較例4]
未硬化樹脂をビスフェノールA型エポキシ樹脂jER828(三菱化学(株)製)50重量部とビスフェノールA型エポキシ樹脂jER1001(三菱化学(株)製)50重量部との混合物に変更し、かつ、増粘剤の使用を排除したことを除いて、実施例1と同様にして繊維強化樹脂プリプレグを作成した。

0119

粘弾性測定]
実施例1から実施例6および比較例1から比較例4で用いた混合樹脂液を、別途測定用試料として用意し、5℃/分で110℃まで昇温し、1時間維持して増粘させた後に、30℃まで降温させ、増粘された樹脂組成物を調製した。
粘弾性測定装置MCR102 Anton Paar社製)を使用し、平行平板半径を25mm、平行間距離1mm、30℃、周波数1Hzまたは100Hzの条件にて、増粘された樹脂組成物の貯蔵弾性率測定を行った。
その後、増粘された樹脂組成物を周波数1Hzにて200℃まで5℃/分で昇温させ、昇温中における粘度を測定し、最低粘度ηminとその時の温度Tとを取得した。さらに、最低粘度ηminに達する前の、温度Tよりも10℃低い温度((T−10)℃)における粘度ηkも取得した。最低粘度ηminが200Pa・s以上である場合を「○」、200Pa・s未満である場合を「×」と評価した。また、粘度ηkから最低粘度ηminを引いた値が1Pa・s以上である場合を「○」、1Pa・s未満である場合を「×」と評価した。

0120

加熱硬化過程でのプリプレグの位置ずれ性評価
実施例1から実施例6および比較例1から比較例4で作成した繊維強化樹脂プリプレグの位置ずれ性を以下のように評価した。
ブリストルブラスターによって表面を約20μm(Rz値)に粗化した鋼平板の表面へ、増粘後の繊維強化樹脂プリプレグ(20x20mm)を一枚貼り、最大130,000Paまでの荷重(ローラ10mm×400mmに対し5kgfの荷重)をローラでかけて貼り付け、予め180℃へ加熱していたオーブンへ、鋼平板表面が水平面に対して垂直となるように設置し、硬化過程でのプリプレグの位置の変化を目視観察により3段階で評価した。加熱前の位置よりずれが見られなかったものを「○」、位置ずれが観察されたものを「×」とした。

0121

実施例1から実施例6および比較例1から比較例4の概要、ならびに、粘弾性測定結果、および加熱硬化過程でのプリプレグの位置ずれ性評価の結果を、下記表1に示す。

0122

実施例

0123

本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれらのみに限定されるものではなく、本発明の趣旨から逸脱することのない様々な実施形態が他になされる。

0124

100,100a…繊維強化プリプレグ
210…第1樹脂層
220…第2樹脂層
250…繊維強化樹脂層

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