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図面 (3)

課題

O−アセチルホモセリン生産するエシェリキア(Escherichia)属微生物及び前記微生物を用いて高収率でO−アセチルホモセリンを生産する方法を提供する。

解決手段

クエン酸シンターゼタンパク質内在的活性が低下又は不活性化された、O−アセチルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物

概要

背景

O−アセチルホモセリン(O-acetyl homoserine)は、生体内必須アミノ酸一種であるメチオニンの前駆体として作用する。メチオニンは、生体内の必須アミノ酸の一種であり、飼料食品添加剤だけでなく、輸液剤医薬品の合成原料としても広く用いられている。

メチオニンは生物学的合成や化学合成により生産される。近年、発酵により生産したL−メチオニン前駆体から酵素変換反応によりL−メチオニンを生産する二段階工法(特許文献1)も公知となっている。

前記二段階工法においては、メチオニン前駆体としてO−スクシニルホモセリン(O-succinyl homoserine)やO−アセチルホモセリンを用いることができ、メチオニンの経済的な大量生産のためにO−アセチルホモセリンを高収率で生産することが非常に重要である。

概要

O−アセチルホモセリンを生産するエシェリキア(Escherichia)属微生物及び前記微生物を用いて高収率でO−アセチルホモセリンを生産する方法を提供する。クエン酸シンターゼタンパク質内在的活性が低下又は不活性化された、O−アセチルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物

目的

本発明は、O−アセチルホモセリン生産能が向上したO−アセチルホモセリンを生産する微生物を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

クエン酸シンターゼ(citrate synthase)タンパク質内在的活性が低下又は不活性化された、O−アセチルホモセリン生産するエシェリキア(Escherichia)属微生物

請求項2

前記クエン酸シンターゼ(citrate synthase)タンパク質の内在的活性が低下した微生物が、配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のO−アセチルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物

請求項3

前記微生物が、さらにシスタチオニンγ−シンターゼ(cystathionine gamma synthase)、ホモセリンキナーゼ(homoserine kinase)、又は双方の活性が内在的活性に比べて低下又は不活性化された、請求項1に記載のO−アセチルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物。

請求項4

前記微生物が、さらにホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ活性が導入又は強化されるか、内在性ホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼがホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼの活性を有するように変異した、請求項1に記載のO−アセチルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物。

請求項5

前記微生物が、さらにホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、及びアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼからなる群から選択される1つ以上のタンパク質の活性が導入又は強化された、請求項1に記載のO−アセチルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物。

請求項6

前記微生物が大腸菌(E.coli)である、請求項1に記載のO−アセチルホモセリンを生産するエシェリキア属微生物。

請求項7

(a)請求項1〜6のいずれか一項に記載の微生物を培養するステップと、(b)前記微生物の培養過程で生成されたO−アセチルホモセリンを得るステップとを含む、O−アセチルホモセリンの生産方法

技術分野

0001

本発明は、O−アセチルホモセリン生産するエシェリキア(escherichia)属微生物及び前記微生物を用いて高収率でO−アセチルホモセリンを生産する方法に関する。

背景技術

0002

O−アセチルホモセリン(O-acetyl homoserine)は、生体内必須アミノ酸一種であるメチオニンの前駆体として作用する。メチオニンは、生体内の必須アミノ酸の一種であり、飼料食品添加剤だけでなく、輸液剤医薬品の合成原料としても広く用いられている。

0003

メチオニンは生物学的合成や化学合成により生産される。近年、発酵により生産したL−メチオニン前駆体から酵素変換反応によりL−メチオニンを生産する二段階工法(特許文献1)も公知となっている。

0004

前記二段階工法においては、メチオニン前駆体としてO−スクシニルホモセリン(O-succinyl homoserine)やO−アセチルホモセリンを用いることができ、メチオニンの経済的な大量生産のためにO−アセチルホモセリンを高収率で生産することが非常に重要である。

0005

国際公開第2008/013432号
韓国公開特許第10−2011−0023703号公報
欧州特許出願公開第2290051号明細書
韓国公開特許第10−2012−0070531号公報
国際公開第2012/087039号
韓国登録特許第10−0905381号公報

先行技術

0006

"Biochemical Engineering" by James M. Lee, Prentice-Hall International Editions, pp 138-176
"Manual of Methodsfor General Bacteriology" by the American Society for Bacteriology, Washington DC 1981
PNAS (2000) vol97: P6640-6645
Meded Rijksuniv Gent Fak Landbouwkd Toegep Biol Wet. 2001;66(3a):333-6
The Journal of Biological Chemistry, 2003, 278, 35435-35443
Methods Mol Biol. 2012;815:307-19. doi: 10.1007/978-1-61779-424-7_23.

発明が解決しようとする課題

0007

本発明者らは、O−アセチルホモセリンの生産を増加させるために鋭意努力した結果、クエン酸シンターゼタンパク質発現又は活性を減少させると、O−アセチルホモセリンの生産能を大幅に向上させることができることを確認し、本発明を完成するに至った。

課題を解決するための手段

0008

本発明は、O−アセチルホモセリン生産能が向上したO−アセチルホモセリンを生産する微生物を提供することを目的とする。

0009

また、本発明は、前記微生物を用いてO−アセチルホモセリンを生産する方法を提供することを目的とする。

発明の効果

0010

本発明によるO−アセチルホモセリン生産能を有する微生物を用いると、O−アセチルホモセリンを化学的合成に比べて、環境にやさしく、かつより高い収率で生産することができる。また、生産されたO−アセチルホモセリンは、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼによりメチオニンと酢酸の合成の前駆体として用いることで、高効率でL−メチオニンを生物変換することができ、変換された前記L−メチオニンは動物飼料動物飼料添加剤だけでなく、ヒトの食品又は食品添加剤の生産に広く用いることができる。

図面の簡単な説明

0011

クエン酸シンターゼ活性低下菌株の作製のための発現カセットデザインを示す図である。
pBAD24−クエン酸シンターゼアンチセンスRNA(asRNAベクター開裂地図を示す図である。

0012

本発明の一態様は、クエン酸シンターゼ(citrate synthase)タンパク質の内在的活性が低下又は不活性化された、O−アセチルホモセリンを生産するエシェリキア(Escherichia)属微生物を提供する。

0013

本発明における用語「O−アセチルホモセリン」とは、微生物のメチオニン生合成経路上の特異的中間体物質であり、L−ホモセリンアセチル誘導体を意味する。前記O−アセチルホモセリンは、ホモセリンとアセチルCoA基質としてアセチルCoAのアセチル基をホモセリンに転移する酵素活性により生成される。

0014

本発明における用語「O−アセチルホモセリン生産能を有する微生物」とは、O−アセチルホモセリンを生物体内で生産できる原核又は真核微生物菌株であり、O−アセチルホモセリン生産能のない母菌株にO−アセチルホモセリンの生産能が付与された微生物や、内在的にO−アセチルホモセリン生産能を有する微生物が含まれる。O−アセチルホモセリン生産能力は、品種改良により付与又は増進させることができる。前記O−アセチルホモセリン生産能を有する微生物には、エシェリキア属(Escherichia sp.)、エルウィニア属(Erwinia sp.)、セラチア属(Serratia sp.)、プロビデンシア属(Providencia sp.)、コリネバクテリウム属(Corynebacteria sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、レプトスピラ属(Leptospira)、サルモネラ属(Salmonella sp.)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium sp.)、ヒフォナス属(Hyphomonas sp.)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium sp.)、ノカルディア属(Nocardia sp.)、又は菌類(fungi)もしくは酵母類(yeast)に属する微生物菌株が含まれる。具体的には、エシェリキア属、コリネバクテリウム属、レプトスピラ属の微生物菌株と酵母である。より具体的には、エシェリキア属の微生物菌株であり、その具体的な例として大腸菌(Escherichia coli)が挙げられる。前記O−アセチルホモセリン生産能を有する微生物は、L−リシン、L−トレオニン、L−イソロイシンもしくはL−メチオニンを生産する菌株又はそれに由来するものであるが、これらに限定されるものではない。

0015

本発明における用語「クエン酸シンターゼ(citrate synthase, E.C. 2.3.3.1)」とは、TCAサイクルの最初の段階の酵素であり、オキサロ酢酸(oxaloacetate)とアセチルCoAの反応を触媒する。具体的には、アセチルCoAの2個の炭素を有する酢酸残基と、4個の炭素を有するオキサロ酢酸との縮合反応を触媒することにより、6個の炭素を有するクエン酸塩を生成する。大腸菌(Escherichia coli)における前記クエン酸シンターゼをGltAと命名したが、本発明においてGltAと前記クエン酸シンターゼは混用される。

0016

アセチルCoA+オキサロ酢酸+H2O→クエン酸塩+CoA−SH
具体的には、前記クエン酸シンターゼはエシェリキア属微生物に由来するものであってもよく、より具体的な例として、大腸菌由来GltAであってもよい。前記クエン酸シンターゼは、配列番号4のアミノ酸配列又はそれと70%以上、具体的には80%以上、より具体的には90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。また、相同性を有する配列であって、実質的に配列番号4のアミノ酸配列と同一又は相当するクエン酸シンターゼ活性を有するアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失改変置換又は付加されたアミノ酸配列を有するものも本発明に含まれることは言うまでもない。また、遺伝暗号縮重(genetic code degeneracy)により同一アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列及びその変異体も本発明に含まれる。

0017

本発明における用語「内在的」活性とは、本来微生物が天然の状態又は当該タンパク質の改変前に有しているタンパク質の活性を意味する。

0018

前記「タンパク質の活性が内在的活性に比べて低下又は不活性化されたもの」とは、本来微生物が天然の状態で有しているタンパク質の活性と比較して、その活性が天然の状態に比べて減少したり、なくなったものを意味する。前記低下とは、前記タンパク質をコードする遺伝子の変異などによりタンパク質自体の活性が本来微生物が有しているタンパク質の活性に比べて低場合と、それをコードする遺伝子の発現阻害又は翻訳(translation)阻害などにより細胞内での全体的なタンパク質発現の程度が天然菌株に比べて低下する場合と、それらの組み合わせとを含む概念であるが、これらに限定されるものではない。前記不活性化には、タンパク質をコードする遺伝子が天然菌株に比べて全く発現されない場合、及び発現されたとしてもその活性がない場合が含まれる。

0019

このようなタンパク質活性の低下又は不活性化は、当該分野で周知の様々な方法の適用により達成することができる。前記方法の例として、前記タンパク質の活性を除去する場合をはじめとして、前記酵素の活性が低下するように突然変異させた遺伝子により染色体上の前記タンパク質をコードする遺伝子を代替する方法、前記タンパク質をコードする染色体上の遺伝子の発現調節配列に変異を導入する方法、前記タンパク質をコードする遺伝子の発現調節配列を活性が低い配列や活性のない配列に置換する方法、前記タンパク質をコードする染色体上の遺伝子の全部又は一部を欠失させる方法、前記染色体上の遺伝子の転写体相補的に結合することにより前記mRNAからタンパク質への翻訳を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスRNA)を導入する方法、前記タンパク質をコードする遺伝子のSD配列の前にSD配列と相補的な配列を人為的に付加することにより2次構造物を形成させてリボソーム(ribosome)の付着を不可能にする方法、及び当該配列のORF(open reading frame)の3’末端逆転写するようにプロモーターを付加するRTE(Reverse transcription engineering)方法などが挙げられ、これらの組み合わせによっても達成することができるが、上記例に特に限定されるものではない。

0020

具体的には、タンパク質をコードする遺伝子の一部又は全部を欠失させる方法は、微生物内の染色体導入用ベクターを用いて、染色体内内在性標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを一部のポリヌクレオチド配列が欠失したポリヌクレオチド又はマーカー遺伝子に置換することにより行われる。例えば、相同組換えにより遺伝子を欠失させる方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。また、前記「一部」とは、ポリヌクレオチドの種類によって異なり、具体的には1〜300個、より具体的には1〜100個、さらに具体的には1〜50個であるが、特にこれらに限定されるものではない。

0021

また、発現調節配列を改変する方法は、前記発現調節配列の活性がさらに低下するように、ポリヌクレオチド配列の欠失、挿入、非保存的置換もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより発現調節配列上の変異を誘導して行うこともでき、より低い活性を有するポリヌクレオチド配列に置換することにより行うこともできる。前記発現調節配列には、プロモーター、オペレーター配列リボソーム結合部位をコードする配列、及び転写と翻訳の終結を調節する配列が含まれるが、これらに限定されるものではない。

0022

また、染色体上の遺伝子配列を改変する方法は、前記タンパク質の活性がさらに低下するように、遺伝子配列を欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより配列上の変異を誘導して行うこともでき、より低い活性を有するように改良された遺伝子配列又は活性を有さないように改良された遺伝子配列に置換することにより行うこともできるが、これらに限定されるものではない。

0023

具体的には、前記クエン酸シンターゼタンパク質の活性を低下させるために、クエン酸シンターゼタンパク質のアミノ酸配列のうち一部のアミノ酸を他のアミノ酸に置換する方法を用いることができる。より具体的には、クエン酸シンターゼタンパク質のアミノ酸配列のうち145番目のアミノ酸又は167番目のアミノ酸をチロシン(Y)又はリシン(K)から他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列を有するクエン酸シンターゼを用いてもよい。さらに具体的には、クエン酸シンターゼタンパク質のアミノ酸配列が145番目のアミノ酸であるチロシン(Y)からアラニン(A)に、167番目のアミノ酸であるリシン(K)からアラニン(A)に置換された変異ポリペプチドをコードする遺伝子配列に改変されたものであってもよい。ここで、前記アミノ酸残基の番号は、開始コドンによりコードされるメチオニンの次に位置するアミノ酸を1番として番号を付けたものである。前記ポリペプチドは、それぞれ配列番号1又は2のアミノ酸配列を有する。また、クエン酸シンターゼ活性が野生型より低下したものであれば、前述した配列番号のアミノ酸配列と80%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には97%以上の相同性を有するアミノ酸配列も含まれる。このような相同性を有する配列であって、実質的に配列番号1又は2のタンパク質と同一又は相当する生物学的活性を有するアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、改変、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するものも本発明に含まれることは言うまでもない。

0024

本発明における用語「相同性」とは、2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド部分間の同一性の割合を意味する。一部分から他の部分までの配列間の相同性は周知の当該技術により決定することができる。例えば、相同性は、配列情報整列させて、容易に入手可能なコンピュータプログラムを用いて、2つのポリヌクレオチド分子又は2つのポリペプチド分子間の配列情報を直接整列させることにより決定することができる。前記コンピュータプログラムは、BLASTNCBI)、CLC Main Workbench(CLC bio)、MegAlignTM(DNASTAR Inc)などであってもよい。また、ポリヌクレオチド間の相同性は、相同領域間に安定した二本鎖を形成する条件下でポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションし、その後単鎖特異的なヌクレアーゼで分解し、分解したフラグメントのサイズを決定することにより決定することができる。

0025

本発明における用語「相同」とは、全ての文法形態やスペリング変異形態であるスーパーファミリー由来のタンパク質及び異種由来の相同タンパク質を含み、「共通の進化的起源」を有するタンパク質間の関係を意味する。それらのタンパク質(及びそれらのコード遺伝子)は、高度の配列類似性により反映される配列相同性を有する。しかし、一般的な使用及び本発明における「相同」とは、「非常に高い」などの形容詞で修飾されると、共通の進化起源を意味するのではなく、配列類似性を意味する。

0026

本発明の具体的な態様として、前記微生物は、さらにシスタチオニンγ−シンターゼ(cystathionine gamma synthase, EC 2.5.1.48)、ホモセリンキナーゼ(homoserine kinase, EC 2.7.1.39)、又は双方の活性が内在的活性に比べて低下又は不活性化されたものであってもよい。

0027

本発明における用語「シスタチオニンγ−シンターゼ」とは、O−スクシニルホモセリン及びL−システインを基質として下記化学反応によりシスタチオニンを合成する酵素である。本発明において、大腸菌由来のシスタチオニンγ−シンターゼをMetBと命名した。

0028

O−スクシニル−L−ホモセリン+L−システイン→L−シスタチオニンコハク酸塩(succinate)
具体的には、前記大腸菌由来のシスタチオニンγ−シンターゼは、特にこれらに限定されるものではないが、配列番号9のアミノ酸配列又はそれと70%以上、具体的には80%以上、より具体的には90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。また、相同性を有する配列であって、実質的に配列番号9のアミノ酸配列と同一又は相当するシスタチオニンγ−シンターゼ活性を有するアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、改変、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するものも本発明に含まれることは言うまでもない。また、遺伝暗号の縮重により同一アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列及びその変異体も本発明に含まれる。

0029

このようなシスタチオニンγ−シンターゼ活性の低下及び不活性化は、前述した方法により行われる。

0030

本発明における用語「ホモセリンキナーゼ」とは、ホモセリンのリン酸化をもたらす酵素であって、下記化学反応を行う酵素を意味する。本発明において、大腸菌由来のホモセリンキナーゼをThrBと命名した。

0031

ATP+L−homoserine→ADP+O−phospho−L−homoserine
具体的には、前記大腸菌由来のホモセリンキナーゼは、特にこれらに限定されるものではないが、配列番号11のアミノ酸配列又はそれと70%以上、具体的には80%以上、より具体的には90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。また、相同性を有する配列であって、実質的に配列番号11のアミノ酸配列と同一又は相当するホモセリンキナーゼ活性を有するアミノ酸配列であれば、一部の配列が欠失、改変、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するものも本発明に含まれることは言うまでもない。また、遺伝暗号の縮重により同一アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列及びその変異体も本発明に含まれる。

0032

このようなホモセリンキナーゼ活性の低下及び不活性化は、前述した方法により行われる。

0033

本発明の具体的な態様として、前記微生物は、さらにホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ活性が導入又は強化されるか、内在性ホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼがO−アセチルトランスフェラーゼの活性を有するように変異したものであってもよい。

0034

本発明における用語「ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.31)」とは、アセチルCoAからアセチル基をホモセリンに転移させる活性を有する酵素を意味する。

0035

具体的には、本発明による微生物には、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼの活性を導入することができる。前記ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼは、様々な微生物種に由来するものであってもよく、例えば、コリネバクテリウム属、レプトスピラ属、デイノコッカス属、シュードモナス属、又はマイコバクテリウム属から選択される菌株に由来するタンパク質であってもよい。具体的には、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼは、配列番号13(レプトスピラ・メイエリ)、配列番号14(コリネバクテリウムグルタミカム)又は配列番号15(デイノコッカス・ラディオデュランス)のアミノ酸配列を含むホモセリンO−アセチルトランスファーラゼであってもよいが、これらに限定されるものではない。また、前述した配列番号のアミノ酸配列又はそれと70%以上、具体的には80%以上、より具体的には90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。また、遺伝暗号の縮重により同一アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列及びその変異体も本発明に含まれる。

0036

本発明に用いられるホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼの例は特許文献2又は3に開示されており、上記特許の明細書全体は本発明に参考資料として取り込まれる。

0037

また、内在性ホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.46)がホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼの活性を有するように変異したタンパク質とは、ホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドにおいてスクシニルCoAからアセチルCoAに基質特異性が変換された変異ポリペプチドを意味する。また、前記変異したタンパク質は、特にこれらに限定されるものではないが、ホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列の一部を置換することにより、野生型とは異なり、ホモセリンO−アセチルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであってもよい。

0038

前記ホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼは、エンテロバクター属、サルモネラ属、シュードモナス属、バチルス属、エシェリキア属微生物由来のポリペプチド、具体的にはエシェリキア属微生物由来のホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチド、例えば、大腸菌(E. coli)由来のホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドであってもよい。より具体的には、前記大腸菌由来のホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼは、配列番号16のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよいが、これに限定されるものではない。前記大腸菌由来のホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼをMetAと命名した。

0039

前記変異したホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼは、配列番号16からなるポリペプチド又は前記ポリペプチド配列と95%以上の相同性を有するポリペプチドの111番目のアミノ酸がグルタミン酸に置換され、さらに112番目のアミノ酸がトレオニン又はヒスチジンに置換された変異型ポリペプチドであってもよい。具体的には、前記変異型ポリペプチドは、配列番号17〜19のアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を有するポリペプチドであってもよい。また、前述した配列番号のアミノ酸配列と70%以上、具体的には80%以上、より具体的には90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。また、遺伝暗号の縮重により同一アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列及びその変異体も本発明に含まれる。前記変異したホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼに関する情報は特許文献4又は5から得ることができ、上記特許の明細書全体は本発明に参考資料として取り込まれる。

0040

本発明における用語「活性を導入又は強化」するとは、特定のタンパク質活性のない微生物にそのタンパク質の活性を付与することや、そのタンパク質の活性を有する微生物において細胞内活性を増加させることなどであって、前記タンパク質の細胞内活性を内在的活性に比べて増加させることを意味する。

0041

このような「タンパク質活性の導入又は強化」には、タンパク質自体の活性が増大して本来の機能以上の効果を導出することが含まれるだけでなく、内在性遺伝子の活性の増加、内部又は外部要因による内在性遺伝子の増幅遺伝子コピー数の増加、外部からの遺伝子導入、発現調節配列の置換又は改変、及び突然変異による酵素活性の増加などによるその活性の増加が含まれるが、これらに限定されるものではない。

0042

前記遺伝子コピー数の増加は、特にこれらに限定されるものではないが、ベクターに作動可能に連結された形態で行われたり、宿主細胞内の染色体内に挿入されることにより行われる。具体的には、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主に関係なく複製されて機能するベクターが宿主細胞に導入されることにより行われたり、前記ポリヌクレオチドが作動可能に連結された、宿主細胞内の染色体内に前記ポリヌクレオチドを挿入することのできるベクターが宿主細胞内に導入されることにより前記宿主細胞の染色体内の遺伝子のコピー数を増加する方法で行われる。

0043

前記ベクターとは、好適な宿主内で標的タンパク質を発現させることができるように、好適な調節配列に作動可能に連結された前記標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドのポリヌクレオチド配列を含有するDNA産物を意味し、前記調節配列には、転写を開始するプロモーター、その転写を調節するための任意のオペレーター配列、好適なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、並びに転写及び翻訳の終結を調節する配列が含まれる。ベクターは、好適な宿主細胞内に形質転換されると、宿主ゲノムに関係なく複製及び機能することができ、ゲノム自体に組み込まれる。

0044

本発明において用いられるベクターは、宿主細胞内で複製可能なものであれば特に限定されるものではなく、当業界で公知の任意のベクターを用いることができる。通常用いられるベクターの例としては、天然状態又は組換え状態のプラスミドコスミドウイルス及びバクテリオファージが挙げられる。例えば、ファージベクター又はコスミドベクターとしては、pWE15、M13、λMBL3、λMBL4、λIXII、λASHII、λAPII、λt10、λt11、Charon4A、及びCharon21Aなどを用いることができ、プラスミドベクターとしては、pBR系、pUC系、pBluescriptII系、pGEM系、pTZ系、pCL系、pET系などを用いることができる。具体的には、pDZ、pACYC177、pACYC184、pCL、pECCG117、pUC19、pBR322、pMW118、pCC1BACベクターなどを用いることができる。

0045

また、微生物内の染色体挿入用ベクターにより染色体内に内在性標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを変異したポリヌクレオチドに置換することができる。前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界で公知の任意の方法、例えば相同組換えにより行うことができる。本発明のベクターは、相同組換えを起こして染色体に導入されるので、前記染色体に導入されたか否かを確認するための選択マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。選択マーカーは、ベクターで形質転換した細胞を選択、すなわち標的ポリヌクレオチドが挿入されたか否かを確認するためのものであり、薬物耐性栄養要求性細胞毒性剤に対する耐性、又は表面タンパク質の発現などの選択可能表現型を付与するマーカーを用いることができるが、これらに限定されるものではない。選択剤(selective agent)で処理された環境においては、選択マーカーを発現する細胞のみ生存するか、他の表現形質を示すので、形質転換した細胞を容易に選択することができる。

0046

本発明における用語「形質転換」とは、標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞に導入することにより、宿主細胞内で前記ポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現させることを意味する。形質転換したポリヌクレオチドは、宿主細胞内で発現するものであれば、宿主細胞の染色体内に挿入されて位置するか、染色体外に位置するかに関係なく、それらを全て含むものである。また、前記ポリヌクレオチドは、標的タンパク質をコードするDNAやRNAを含むものである。前記ポリヌクレオチドは、宿主細胞に導入されて発現するものであれば、いかなる形態で導入されるものでもよい。例えば、前記ポリヌクレオチドは、自ら発現する上で必要な全ての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入される。通常、前記発現カセットは、前記ポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位及び翻訳終結シグナルを含み、自己複製可能な発現ベクター形態であってもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入され、宿主細胞において発現に必要な配列と作動可能に連結されたものであってもよい。

0047

また、前記用語「作動可能に連結」されたものとは、本発明の標的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介するようにプロモーター配列と前記遺伝子配列が機能的に連結されたものを意味する。

0048

次に、ポリヌクレオチドの発現が増加するように発現調節配列を改変することは、特にこれらに限定されるものではないが、前記発現調節配列の活性がさらに強化されるように、ポリヌクレオチド配列の欠失、挿入、非保存的置換もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより配列上の変異を誘導して行うこともでき、より強い活性を有するポリヌクレオチド配列に置換することにより行うこともできる。前記発現調節配列には、特にこれらに限定されるものではないが、プロモーター、オペレーター配列、リボソーム結合部位をコードする配列、転写及び翻訳の終結を調節する配列などが含まれる。また、前記ポリヌクレオチド発現単位の上流には、本来のプロモーターの代わりに強力な異種プロモーターが連結されてもよい。

0049

また、染色体上のポリヌクレオチド配列の改変は、特にこれらに限定されるものではないが、前記ポリヌクレオチド配列の活性がさらに強化されるように、ポリヌクレオチド配列の欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより発現調節配列上の変異を誘導して行うこともでき、より強い活性を有するように改良されたポリヌクレオチド配列に置換することにより行うこともできる。

0050

このようなタンパク質活性の導入及び亢進は、対応するタンパク質の活性又は濃度が野生型タンパク質初期の微生物菌株における活性又は濃度を基準として、一般に少なくとも1%、10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、400%又は500%、最大で1000%又は2000%まで増加したものであってもよい。

0051

また、前記微生物は、ホモセリンからO−スクシニルホモセリンを生合成する経路遮断してO−アセチルホモセリンの生合成経路を強化するために、ホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼの活性を内在的活性に比べて低下させるか、不活性化したものであってもよい。

0052

ホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼ活性の低下及び不活性化は、前述した方法により行われる。

0053

本発明の具体的な態様において、本発明によるO−アセチルホモセリン生産菌株は、O−アセチルホモセリン生合成の基質であるホモセリンの量をさらに増加させるために、ホスホエノールピルビン酸からホモセリンまでの生合成経路に関与する酵素の活性がさらに導入及び亢進されたものであってもよい。

0054

具体的には、前記微生物は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(phosphoenolpyruvate carboxylase, ppc, EC 4.1.1.31)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(aspartate aminotransferase, aspC, EC 2.6.1.1)、及びアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aspartate semialdehyde dehydrogenase, asd, EC 1.2.1.11)からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の活性が導入又は強化されたものであってもよい。

0055

例えば、配列番号20で表されるアミノ酸配列を含むホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードするppc遺伝子、配列番号21で表されるアミノ酸配列を含むアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするaspC遺伝子、及び配列番号22で表されるアミノ酸配列を含むアスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするasd遺伝子を菌株に導入することができる。例えば、上記3種の酵素をコードする遺伝子の全てを宿主細胞の染色体内に2以上のコピー数で存在させることにより、これら酵素の活性を導入及び亢進させることができるが、これに限定されるものではない。前記活性の導入及び亢進は、前述した方法により行われる。

0056

本発明の具体例においては、O−アセチルホモセリン生産能を有する大腸菌菌株からクエン酸シンターゼ遺伝子を欠損させたり、クエン酸シンターゼタンパク質活性が野生型より低下した、変異したクエン酸シンターゼタンパク質をコードする遺伝子をクエン酸シンターゼ遺伝子位置に導入したり、クエン酸シンターゼ遺伝子アンチセンスRNA発現ベクターを導入する様々な方法を用いて、クエン酸シンターゼタンパク質の活性を低下又は不活性化させた。その結果、作製した、クエン酸シンターゼタンパク質活性が低下又は不活性化されたO−アセチルホモセリン生産菌株の全てにおいて、母菌株に比べてO−アセチルホモセリンの生産能が向上した(実施例1〜4)。

0057

本発明の他の態様として、前記O−アセチルホモセリン生産能が向上したO−アセチルホモセリン生産能を有する微生物を用いてO−アセチルホモセリンを製造する方法を提供する。具体的には、本発明は、(a)前記微生物を培養するステップと、(b)前記微生物の培養過程で生成されたO−アセチルホモセリンを得るステップとを含む、O−アセチルホモセリンの生産方法を提供する。

0058

本発明によるO−アセチルホモセリン生産能を有する大腸菌菌株の培養過程は、当業界で公知の好適な培地培養条件で行うことができる。このような培養過程は、当業者であれば選択される菌株に応じて容易に調整して用いることができる。特に、本発明の菌株の場合、TCAサイクルの最初の段階を触媒する酵素であるクエン酸シンターゼの活性が内在的活性に比べて低下又は不活性化された菌株であるので、TCAサイクルの流量低下を考慮して培地にグルタメートを含んでもよいが、特にこれに限定されるものではない。

0059

前記培養方法の例としては、回分、連続及び流加培養が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの様々な培養方法は、例えば非特許文献1に開示されている。

0060

培養に用いられる培地は、特定の菌株の要件を満たさなければならない。具体的には、様々な微生物の培地の例が非特許文献2に開示されている。前記培地は、好適な炭素源窒素源リン源無機化合物、アミノ酸及び/又はビタミンなどを含有する通常の培地であってもよく、好気性条件下で温度、pHなどを調節して培養することができる。

0061

炭素源としては、ブドウ糖(glucose)、ラクトース(lactose)、スクロース(sucrose)、乳糖フルクトース(fructose)、マルトース(maltose)、デンプン(starch)及びセルロース(cellulose)などの炭水化物大豆油(soybean oil)、ヒマワリ油(sunflower oil)、ヒマシ油、ベーバーオイル(castor oil)及びココナッツ油(coconut oil)などの脂肪パルミチン酸(palmitic acid)、ステアリン酸(stearic acid)及びリノール酸(linoleic acid)などの脂肪酸グリセリン(glycerol)及びエタノール(ethanol)などのアルコール;酢酸(acetic acid)などの有機酸(organic acid)が挙げられる。これらの炭素源は、単独で用いることもでき、組み合わせて用いることもできるが、これらに限定されるものではない。

0062

窒素源としては、ペプトン(peptone)、酵母抽出物(yeast extract)、肉汁(gravy)、麦芽抽出物(malt extract)、トウモロコシ浸漬液(corn steep liquor, CSL)、黄粉(bean flour)などの有機窒素源及び尿素(urea)、硫酸アンモニウム(ammonium sulfate)、塩化アンモニウム(ammonium chloride)、リン酸アンモニウム(ammonium phosphate)、炭酸アンモニウム(ammonium carbonate)並びに硝酸アンモニウム(ammonium nitrate)などの無機窒素源が挙げられる。これらの窒素源は、単独で用いることもでき、組み合わせて用いることもできるが、これらに限定されるものではない。前記培地には、リン酸源としてリン酸二水素カリウム(potassium dihydrogen phosphate)、リン酸水素カリウム(dipotassium hydrogen phosphate)又はそれらに相当するナトリウム含有塩(sodium-containing salts)がさらに含まれてもよい。また、培地には、硫酸マグネシウム(magnesium sulfate)、硫酸鉄(iron sulfate)などの金属が含まれてもよい。さらに、アミノ酸、ビタミン及び好適な前駆体などが添加されてもよい。これらの培地又は前駆体は、培養物に回分式又は連続式で添加することができるが、上記例に限定されるものではない。

0063

また、培養中に水酸化アンモニウム(ammonium hydroxide)、水酸化カリウム(potassium hydroxide)、アンモニアリン酸及び硫酸などの化合物を好適な方法で添加することにより、培養物のpHを調整することができる。さらに、培養中に脂肪酸ポリグリコールエステル(polyglycol ester)などの消泡剤を添加することにより、培養中の気泡生成を抑制することができる。さらに、培養液好気性(aerobic)条件を維持するために、培養液内に酸素又は酸素を含むガス(例えば、空気)を注入してもよい。培養物の温度は、一般に20〜45℃、具体的には25〜40℃であるが、これらに限定されるものではない。培養期間は、O−アセチルホモセリンの生産が所望のレベルに達するまで続けてもよく、具体的には10〜160時間であるが、これに限定されるものではない。

0064

本発明の前記O−アセチルホモセリンの生産方法は、前記培養された微生物又はその培養物からO−アセチルホモセリンを回収するステップをさらに含んでもよい。

0065

前記O−アセチルホモセリンを回収するステップは、本発明の微生物の培養方法、例えば回分、連続又は流加培養方法などにより、当該技術分野で公知の好適な方法を用いて、培養液から目的とするO−アセチルホモセリンを回収することができる。

0066

前記回収ステップは、精製工程を含んでもよい。

0067

このように回収したO−アセチルホモセリンは、二段階工法(特許文献6)によりメチオニンを生産することができる。

0068

二段階工程は、前記L−メチオニン前駆体生産菌株により生産されたO−アセチルホモセリンとメチルメルカプタンを基質として用いて、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-acetyl homoserine sulfhydrylase)活性を有する酵素又は前記酵素を含む菌株を用いた酵素反応により、L−メチオニン及び有機酸を生産する工程を含む。

0069

より具体的には、本発明は、上記方法で蓄積されたO−アセチルホモセリンを基質として用いて、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼなどの酵素反応により、L−メチオニンを生産する方法を提供する。

0070

前記二段階工程において、O−アセチルホモセリンをL−メチオニン前駆体として用いる場合、具体的にはレプトスピラ属(Leptospira sp.)、クロモバクテリウム属(Chromobacterium sp.)、ヒフォモナス属(Hyphomonas sp.)に属する微生物菌株、より具体的にはレプトスピラ・メイエリ(Leptospira meyeri)、シュードモナスエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、ヒフォモナス・ネプツニウム(Hyphomonas neptunium)、クロモバクテリウムビオラセム(Chromobacterium violaceum)に属する微生物菌株由来のO−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼを用いることができる。

0071

上記反応は次の通りである。

0072

CH3SH+O−アセチル−L−ホモセリン⇔酢酸+メチオニン
このようなさらなるメチオニン生産工程については特許文献6に開示されており、上記特許の明細書全体は本発明に参考資料として取り込まれる。

0073

以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。

0074

参考例:O−アセチルホモセリン生産菌株の作製
<1−1>野生型大腸菌由来metB遺伝子の欠損(特許文献1)
O−アセチルホモセリン生産菌株を作製するために、エシェリキア属微生物の代表的な微生物である大腸菌を用いた。このために、野生型大腸菌であるE.coli K12 W3110(ATCC27325)を米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection, ATCC)から入手して用いた。まず、O−スクシニル−L−ホモセリンのシスタチオニンへの生産経路を遮断するために、シスタチオニンシンターゼ(cystathionine synthase)をコードするmetB遺伝子(配列番号10)を欠損させた。具体的には、シスタチオニンシンターゼをコードする遺伝子であるmetB遺伝子を欠損させるために、FRT−one−stepPCR欠損方法を用いた(非特許文献3)。

0075

具体的には、pKD3ベクター(非特許文献3)を鋳型とし、配列番号30及び31のプライマーを用いて、PCR反応により欠損カセット(deletion cassette)を作製した。94℃で30秒間の変性(denaturation)ステップ、55℃で30秒間のアニーリング(annealing)ステップ、72℃で1分間の伸長(extension)ステップを30回繰り返した。

0076

結果として得られたPCR産物を1.0%アガロースゲル中で電気泳動し、その後1.2kbpの大きさのバンドからDNAを精製した。回収したDNA断片をpKD46ベクター(非特許文献3)で予め形質転換したE.coli(K12)W3110菌株にエレクトロポレーションした。

0077

エレクトロポレーションのために、100μg/Lアンピシリン(ampicilin)と5mMアラビノース(l-arabinose)を含むLB培地を用いて、pKD46で形質転換したW3110菌株を30℃でOD600=0.6まで培養し、その後滅菌蒸留水で2回、10%グリセリン(glycerol)で1回洗浄して用いた。エレクトロポレーションは2500Vで行った。25μg/Lクロラムフェニコール(chloramphenicol)を含むLB平板培地に回収した菌株を塗抹して37℃で一晩培養し、その後耐性を示す菌株を選択した。

0078

選択した菌株を鋳型とし、同一プライマーを用いて同一条件でPCRし、その後1.0%アガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.2Kbであると観察されたことを確認することにより、metB遺伝子の欠損を確認した。確認した菌株を再びpCP20ベクター(非特許文献3)で形質転換してLB培地で培養し、再び同一条件のPCRを行うことにより、1.0%アガロースゲル上で遺伝子の大きさが150bpに小さくなった最終metB遺伝子欠損菌株を作製し、クロラムフェニコールマーカーが除去されたことを確認した。作製した菌株をW3−Bと命名した。

0079

<1−2>thrB遺伝子の欠損(特許文献1)
ホモセリンキナーゼをコードする遺伝子であるthrB遺伝子を欠損させることにより、ホモセリンからO−スクシニルホモセリンの合成量を増加させようとした。実施例1で作製したW3−B菌株からthrB遺伝子を欠損させるために、metB遺伝子を欠損させたときと同じFRTone stepPCRdeletion方法を用いた。

0080

thrB欠損カセットを作製するために、pKD4ベクター(非特許文献3)を鋳型とし、配列番号32及び33のプライマーを用いて、94℃で30秒間の変性ステップ、55℃で30秒間のアニーリングステップ、72℃で1分間の伸長ステップを30回繰り返すPCR反応を行った。

0081

結果として得られたPCR産物を1.0%アガロースゲル中で電気泳動し、その後1.6kbpの大きさのバンドからDNAを精製した。回収したDNA断片をpKD46ベクターで予め形質転換したW3−B菌株にエレクトロポレーションした。50μg/Lカナマイシン(kanamycin)を含むLB平板培地に回収した菌株を塗抹して37℃で一晩培養し、その後耐性を示す菌株を選択した。

0082

選択した菌株は、菌株を直接鋳型とし、配列番号32及び33のプライマーを用いて同一条件でPCRし、その後1.0%アガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.6Kbであることが確認される菌株を選択することにより、thrB遺伝子の欠損を確認した。確認した菌株を再びpCP20ベクターで形質転換してLB培地で培養し、再び同一条件のPCRを行うことにより、1.0%アガロースゲル上で遺伝子の大きさが150bpに小さくなった最終thrB遺伝子欠損菌株を作製し、カナマイシンマーカーが除去されたことを確認した。作製した菌株をW3−BT菌株と命名した。

0083

<1−3>ホモセリンアセチルトランスフェラーゼ活性を有する変異型metA(特許文献5)
参考例<1−2>で得られた菌株のホモセリンアセチルトランスフェラーゼ(homoserine acetyltransferase)活性を強化するために、強化された活性を有するホモセリンアセチルトランスフェラーゼをコードする変異型metA遺伝子(配列番号24及び26)を菌株に導入しようとした。

0084

まず、活性が強化された変異型metA遺伝子を作製するために、野生型菌株であるW3110菌株の染色体を鋳型とし、配列番号34及び35のプライマーを用いてPCRを行うことにより、ホモセリンO−スクシニルトランスフェラーゼをコードするmetA遺伝子を増幅した。

0085

PCRに用いたプライマーは米国国立保健研究所の遺伝子バンク(NIH Gene Bank)に登録されているNC_000913の大腸菌染色体ポリヌクレオチド配列に基づいて作製し、配列番号34及び35のプライマーはそれぞれ制限酵素EcoRV部位及びHindIII部位を有する。こうして得られたPCR産物及びPcj1が入ったpCL1920プラスミドをそれぞれEcoRV及びHindIII制限酵素で処理してクローニングした。クローニングしたプラスミドを用いて大腸菌DH5αを形質転換し、その後スペクチノマイシン(spectinomycin)50μg/mlを含むLBプレートで形質転換した大腸菌DH5αを選択してプラスミドを得た。得られたプラスミドをpCL_Pcj1_metAと命名した。

0086

次に、部位特異的突然変異誘発キット(site directed mutagenesis kit, Stratagene, 米国)を用いて、前述したように作製したpCL_Pcj1_metAプラスミドを鋳型とし、配列番号36及び37のプライマーでO−スクシニルトランスフェラーゼの111番目のアミノ酸グリシン(Gly)をグルタミン酸(Glu)に置換した(G111E)。作製した変異G111E metA遺伝子を含むプラスミドをpCL_Pcj1_metA(EL)と命名した。

0087

また、前記O−スクシニルトランスフェラーゼの111番目のアミノ酸をグリシンからグルタミン酸に置換し、さらに112番目のアミノ酸をロイシンからヒスチジンに置換するために、配列番号38及び39のプライマーを用いた。111番目のアミノ酸がグリシンからグルタミン酸に置換され、112番目のアミノ酸がロイシンからヒスチジンに置換されたmetA遺伝子を含むプラスミドをpCL_Pcj1_metA(EH)と命名した。

0088

次に、metA(EH)による菌株内での置換のための置換カセットを作製するために、pKD3ベクターを鋳型とし、配列番号40及び41のプライマーを用いて、94℃で30秒間の変性ステップ、55℃で30秒間のアニーリングステップ、72℃で2分間の伸長ステップを30回繰り返すPCR反応を行った。置換カセットのmetA(EH)部分は、pCL−Pcj1−metA(EH)を鋳型とし、配列番号42及び43のプライマーを用いてPCR産物を得た。metA野生型部分は、配列番号44及び45のプライマーを用いてPCR産物を得た。配列番号42及び45プライマーを用いてクロラムフェニコールマーカー部分を含むmetA(EH)置換カセットを作製し、pKD46ベクターで予め形質転換した、参考例<1−2>で作製したW3−BT菌株に3つのPCR産物をエレクトロポレーションした。確認した菌株を再びpCP20ベクターで形質転換してLB培地で培養し、クロラムフェニコールマーカーが除去されてmetA遺伝子がmetA(EH)に置換された菌株をW3−BTAと命名した。

0089

<1−4>ppc、aspC、asd遺伝子2コピー(copy)菌株の作製(特許文献3)
参考例<1−3>で作製したW3−BTA菌株のO−アセチルホモセリン生産能を向上させるために、既出願の特許文献3を引用して生合成経路を強化した。上記特許の内容と同様に、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼをコードするppc遺伝子は配列番号46、47、48及び49のプライマー、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼをコードするaspC遺伝子は配列番号50及び51のプライマー、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするasd遺伝子は配列番号52、53、54及び55のプライマーをそれぞれ用いて、各遺伝子を2コピーに増幅した菌株を作製した。ここで、O−アセチルホモセリンを生成すると共に生合成経路が強化された前記菌株をW3−BTA2PCD(「WCJM」ともいう)と命名した。

0090

<1−5>フラスコ培養実験
参考例<1−3>及び<1−4>で作製した菌株のO−アセチルホモセリン生産量を実験するために、三角フラスコ培養を行った。

0091

具体的には、LB培地にW3110、W3−BTA及びWCJM菌株を接種して33℃で一晩培養し、その後単一コロニーを3mlのLB培地に接種して33℃で5時間培養し、再び25mlのO−アセチルホモセリン生産培地を含む250ml三角フラスコで200倍に希釈して33℃、200rpmで30時間培養し、HPLC分析によりO−アセチルホモセリン生産量を確認した。下記表1に用いた培地の組成を示し、表2に確認したO−アセチルホモセリン生産量を示す。

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0093

0094

その結果、野生型W3110においてはO−アセチルホモセリンが全く生成されなかったが、W3−BTA菌株においてはO−アセチルホモセリンが0.9g/L生成され、生合成経路が強化されたWCJM菌株においては1.2g/L生成された。

0095

実施例1:クエン酸シンターゼ活性の欠失
<1−1>O−アセチルホモセリン生産菌株におけるクエン酸シンターゼ(citrate synthase)遺伝子欠損菌株の作製
クエン酸シンターゼ(citrate synthase, GltA)は、TCAサイクルの最初の段階の酵素であり、オキサロ酢酸(oxaloacetate)とアセチルCoA(Acetyl-CoA)の反応で開始される。TCAサイクルの減少による生長阻害はよく知られているが(非特許文献4)、O−アセチルホモセリンの基質として用いられるアセチルCoAの量を増加させるために、前記W3−BTA菌株及びWCJM菌株のクエン酸シンターゼ活性を優先的に欠損させた菌株の作製を試みた。

0096

具体的には、前記W3−BTA菌株及びWCJM菌株のクエン酸シンターゼを欠損させるために、pKD4ベクターを鋳型とし、配列番号56及び57のプライマーを用いて、94℃で30秒間の変性ステップ、55℃で30秒間のアニーリングステップ、72℃で2分間の伸長ステップを30回繰り返した。結果として得られたPCR産物を1.0%アガロースゲル中で遺伝子の大きさが1.6Kbであると観察されたことを確認し、DNAを精製した。回収したDNA断片をpKD46ベクターで予め形質転換した前記W3−BTA、WCJM菌株にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションのために、100μg/Lアンピシリンと5mMアラビノースを含むLB培地を用いて、pKD46で形質転換したW3−BTA、WCJM菌株を30℃でOD600=0.6まで培養し、その後滅菌蒸留水で2回、10%グリセリンで1回洗浄して用いた。エレクトロポレーションは2500Vで行った。50μg/Lカナマイシンを含むLB平板培地に回収した菌株を塗抹して37℃で一晩培養し、その後耐性を示す菌株を選択した。

0097

選択した菌株を配列番号58及び59のプライマーを用いて同一条件でPCRし、その後1.0%アガロースゲル上で遺伝子の大きさが2.5Kbであると観察されたことを確認することにより、染色体上のクエン酸シンターゼ遺伝子部分に欠損カセットが挿入されたことを確認した。確認した菌株を再びpCP20ベクターで形質転換してLB培地で培養し、再び同一条件のPCRを行うことにより、1.0%アガロースゲル上で遺伝子の大きさが1.1Kbに小さくなったクエン酸シンターゼ遺伝子欠損菌株を作製し、カナマイシンマーカーが除去されたことを確認した。ここで、作製した菌株をそれぞれW3−BTA−AD、WCJM−ADと命名した。

0098

<1−2>O−アセチルホモセリン生産菌株におけるクエン酸シンターゼ欠損菌株の評価
前記W3−BTA−AD菌株とWCJM−AD菌株は、クエン酸シンターゼ遺伝子が欠損しており、LB培地では生長が可能であるが、O−アセチルホモセリン培地条件では生長しなかった。O−アセチルホモセリン生産量を実験するために、基本培地の組成にグルタメート(glutamate)3g/Lを添加する条件(下記表3−基本培地にグルタメートを添加した培地の組成)で三角フラスコ培養を行った。

0099

具体的には、LB培地にW3−BTA−AD菌株とWCJM−AD菌株を接種して33℃で一晩培養し、その後単一コロニーを3mlのLB培地に接種して33℃で5時間培養し、再び25mlのO−アセチルホモセリン生産培地(+グルタメート添加)を含む250ml三角フラスコで200倍に希釈して33℃、200rpmで30時間培養し、HPLC分析によりO−アセチルホモセリン生産量を確認した。下記表4にO−アセチルホモセリン生産量を示す。

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0101

0102

その結果、W3−BTA菌株においてはO−アセチルホモセリンが0.9g/L生成され、W3−BTA−AD菌株においてはブドウ糖消費量が減少したが、O−アセチルホモセリンが1.4g/Lと生産が55.6%増加した。WCJM菌株においてもO−アセチルホモセリンが1.3g/L生成され、WCJM−AD菌株においては2.1g/L生産され、クエン酸シンターゼ遺伝子が欠損することによりO−アセチルホモセリン生産能が61.5%向上することを確認した。

0103

実施例2:クエン酸シンターゼタンパク質活性の低下
<2−1>クエン酸シンターゼ遺伝子の変異の種類
実施例<1−1>で作製したWCJM−AD菌株は培養速度が遅いため、多くの文献で周知のクエン酸シンターゼの様々な変異により、活性を低下させてアセチルCoA(Acetyl-CoA)に対する結合力を減少させた変異3種を選択した(非特許文献5)。選択した3種の変異に関する情報は下記表5の通りであり、145番目のアミノ酸がチロシン(Y)からアラニン(A)に、167番目のアミノ酸がリシン(K)からアラニン(A)に、204番目のアミノ酸がトレオニン(T)からアラニン(A)に置換された変異遺伝子を示している。

0104

0105

<2−2>O−アセチルホモセリン生産菌株におけるクエン酸シンターゼタンパク質活性が低下した菌株の作製
本発明者らは、実施例<2−1>で説明した、クエン酸シンターゼタンパク質活性が低下する変異をO−アセチルホモセリン生産菌株に導入して生産能を向上させようとした。

0106

前記WCJM−AD菌株にクエン酸シンターゼ遺伝子変異3種を導入するために、変異置換カセットを図1のようにデザインした。各変異はプライマーのヌクレオチドを置換して合成し、各カセットは3つのPCR産物により作製した。クエン酸シンターゼ遺伝子部分は、W3110菌株を鋳型とし、145番目のアミノ酸変異は配列番号60及び63のプライマーと配列番号62及び61のプライマーを用いて、各PCR反応により514bp、1,112bpのサイズのPCR産物を得た。上記方法と同様に、167番目のアミノ酸変異は配列番号60及び65のプライマーと配列番号64及び61のプライマーを用いて、580bp、1,046bpのサイズのPCR産物を得て、204番目のアミノ酸変異は配列番号60及び67のプライマーと配列番号66及び61のプライマーを用いて、688bp、936bpのサイズのPCR産物を得た。共通のカナマイシン部分は、pKD4ベクターを鋳型とし、配列番号68及び69のプライマーを用いてPCR反応を行った。ここで、クエン酸シンターゼ遺伝子位置に導入するために、配列番号69にクエン酸シンターゼ遺伝子の後半部分のポリヌクレオチド配列を含むように作製し、電気泳動により1,571bpのサイズのPCR産物を得た。

0107

変異により2つずつ回収した各DNA断片と共通部分であるカナマイシンDNA断片を鋳型とし、配列番号60及び69のプライマーを用いてソーイングPCR(sewing PCR)反応を行った。94℃で30秒間の変性ステップ、55℃で30秒間のアニーリングステップ、72℃で4分間の伸長ステップを30回繰り返した。最終的に得られた各PCR産物を1.0%アガロースゲル中で確認し、3,115bpのサイズを有するクエン酸シンターゼ遺伝子変異カセット3種のDNA断片を得た。回収したDNA断片をpKD46ベクターで予め形質転換した前記WCJM−AD菌株にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションのために、100μg/Lアンピシリンと5mMアラビノースを含むLB培地を用いて、pKD46で形質転換したWCJM−AD菌株を30℃でOD600=0.6まで培養し、その後滅菌蒸留水で2回、10%グリセリンで1回洗浄して用いた。エレクトロポレーションは2500Vで行った。25μg/Lカナマイシンを含むLB平板培地に回収した菌株を塗抹して37℃で一晩培養し、その後耐性を示す菌株を選択した。

0108

選択した菌株を鋳型とし、同じ配列番号58及び59のプライマーを用いて同一条件でPCRし、その後1.0%アガロースゲル上で遺伝子の大きさが3.7Kbであると観察されたことを確認することにより、クエン酸シンターゼ遺伝子のアミノ酸が置換された変異カセットが挿入されたことを確認した。確認した菌株を再びpCP20ベクターで形質転換してLB培地で培養し、再び同一条件のPCRを行うことにより、1.0%アガロースゲル上で遺伝子の大きさが2.5Kbに小さくなったクエン酸シンターゼ活性変異菌株3種を作製し、カナマイシンマーカーが除去されたことを確認した。ここで、作製した各変異菌株をWCJM−A145、WCJM−A167、WCJM−A204と命名し、変異が導入されたクエン酸シンターゼ遺伝子の配列情報を配列番号1〜3(アミノ酸配列)及び5〜7(ヌクレオチド配列)でそれぞれ示した。

0109

<2−3>O−アセチルホモセリン生産菌株におけるクエン酸シンターゼタンパク質活性が低下した菌株の評価
前記クエン酸シンターゼ遺伝子の活性が低下したWCJM−A145、WCJM−A167、WCJM−A204の3種の菌株のO−アセチルホモセリン生産量を実験するために、三角フラスコ培養を行った。LB培地にWCJM、WCJM−A145、WCJM−A167、WCJM−A204の4種の菌株を接種して33℃で一晩培養し、その後単一コロニーを3mlのLB培地に接種して33℃で5時間培養し、再び25mlのO−アセチルホモセリン生産培地を添加した250ml三角フラスコで200倍に希釈して33℃、200rpmで30時間培養し、HPLC分析によりO−アセチルホモセリン生産量を確認した。その結果を下記表6に示す。

0110

0111

その結果、WCJM菌株においてはO−アセチルホモセリンが1.3g/L生成され、WCJM−A145、WCJM−A167の2種の菌株においてはODが減少すると共にブドウ糖消費量も減少したが、O−アセチルホモセリンが2.0/L及び1.9g/L生産された。特異的には、グルタメートが1.3g/Lから0g/Lに減少したことから、クエン酸シンターゼ活性の低下によるTCAサイクルの流量減少の結果であることを確認した。しかし、WCJM−A204菌株においてはO−アセチルホモセリン生成量が0.2g/L減少すると共にグルタメートがむしろ増加したことから、活性が強化された変異であることを確認した。

0112

実施例3:クエン酸シンターゼタンパク質の発現低下
<3−1>クエン酸シンターゼ遺伝子アンチセンスRNA(asRNA)発現ベクターの作製
本発明者らは、クエン酸シンターゼタンパク質の発現を低下させるために、アンチセンスRNA(asRNA)発現法の適用を試みた。アンチセンスRNA発現法は、標的遺伝子であるクエン酸シンターゼmRNAと相補的結合部分を過剰発現させることにより、クエン酸シンターゼmRNAとリボソーム(Ribosome)の結合を相殺してタンパク質発現を減少させる方法である。クエン酸シンターゼ遺伝子のmRNAとの結合力を調節することにより抑制の程度を調節できるという利点があり、遺伝子発現を調節するアンチセンスRNAにより従来の遺伝子欠失過程を経ずに効果的に作製して遺伝子発現を減少させることができ、組換え微生物の製造に有用である。

0113

ベクターの作製のために、非特許文献6を参照して、過剰発現のためにインダクションが可能なpBAD24プラスミドにシンターゼ遺伝子アンチセンスRNA部分を導入しようとした。図2にpBAD24−クエン酸シンターゼasRNAベクター図を示す。

0114

クエン酸シンターゼ遺伝子アンチセンスRNAが発現した部分は、プロモーター部分52bpと、クエン酸シンターゼ開始コードから48bpの部分を含めて100bpのサイズであり、両側にはアンチセンスRNA(asRNA)の不安定性を減少させる38bpの反復配列(paired termini; PT)が連結されている。前記クエン酸シンターゼ遺伝子アンチセンスRNA部分を得るために配列番号70及び71を用い、ベクターにクローニングするために制限酵素NcoI部位とHindIII部位を含むようにした。

0115

こうして得られたPCR産物のサイズは194bpであり、この産物をpBAD24プラスミドにそれぞれEcoRV及びHindIII制限酵素で処理してクローニングした。クローニングしたプラスミドを用いて大腸菌DH5αを形質転換し、その後アンピシリン100μg/mlを含むLBプレートで形質転換した大腸菌DH5αを選択してプラスミドを得た。得られたプラスミドをpBAD24−gltA asRNAと命名した。

0116

<3−2>クエン酸シンターゼ遺伝子アンチセンスRNA発現ベクターのO−アセチルホモセリン生産菌株への導入及び評価
実施例<3−1>で作製したクエン酸シンターゼアンチセンスRNA発現ベクターであるpBAD24−gltA−asRNAをO−アセチルホモセリン生産菌株であるWCJM菌株に形質転換(transfomration)した。ここで、このように導入された菌株をWCJM/A−asRNAと命名した。

0117

ここで、クエン酸シンターゼアンチセンスRNAの発現量を調節することにより、クエン酸シンターゼタンパク質の発現量を調節しようとした。ここで、アンチセンスRNAの発現量はアラビノース(Arabinose)濃度により調節することができる。

0118

その結果、実施例2と同様に、クエン酸シンターゼ活性が低下したときにO−アセチルホモセリン生産量が増加することを確認した。

0119

また、クエン酸シンターゼタンパク質の発現量の減少に伴ってO−アセチルホモセリン生産量が増加するか否かを確認するために、三角フラスコ培養を行った。

0120

具体的には、LB培地にWCJM菌株とWCJM/A−asRNA菌株を接種して33℃で一晩培養し、その後単一コロニーを3mlのLB培地に接種して33℃で5時間培養し、再び25mlのO−アセチルホモセリン生産培地を添加した250ml三角フラスコで200倍に希釈した。ここで、クエン酸シンターゼアンチセンスRNAの発現量を調節するために、アラビノースを0mM、2mM、5mM添加して33℃、200rpmで15、30時間培養し、HPLC分析によりO−アセチルホモセリン生産量を確認した。その結果を表7及び8に示す。

0121

0122

0123

その結果、15時間の培養において、WCJM/A−asRNA菌株はアラビノース濃度によってODが1程度減少することが確認されたが、O−アセチルホモセリン濃度は同程度であった。しかし、30時間の培養において、コントロール菌株であるWCJM菌株はアラビノース濃度が増加してもODやO−アセチルホモセリン濃度が同じであったのに対して、クエン酸シンターゼアンチセンス発現ベクターが導入されたWCJM/A−asRNA菌株はアラビノース濃度の増加によって明らかな結果が得られた。アラビノース濃度が0mMではODが9.2であったが、5mMでは1.9減少した7.1であり、消費したブドウ糖量は少なかったが、O−アセチルホモセリン量は30.8%増加した。これらの結果から、クエン酸シンターゼ活性の低下だけでなく、タンパク質発現の低下も同じ結果を示すことが分かった。

0124

実施例4:O−アセチルホモセリン高収率菌株におけるクエン酸シンターゼ活性の低下及び不活性化
<4−1>O−アセチルホモセリン高収率菌株におけるクエン酸シンターゼ活性が不活性化された菌株の作製及び評価
特許文献5には、野生型W3110由来である、NTG突然変異によりトレオニンを生産する菌株からO−アセチルホモセリンを生産する菌株を作製する方法が詳細に記述されている。ここで、作製した高収率でO−アセチルホモセリンを生産する菌株は、韓国微生物保存センター受託番号KCCM11146Pとして寄託した。

0125

前記KCCM11146P菌株は、フラスコ培養時にブドウ糖40g/Lを消費して約15〜16g/LのO−アセチルホモセリンを生産するので、高収率のO−アセチルホモセリン生産能を有する。よって、クエン酸シンターゼ活性が欠失するとさらに多くのO−アセチルホモセリンを生産するか否かを確認するために、前記KCCM11146Pに適用した。作製方法は実施例<1−1>と同一であり、この方法によりKCCM11146P菌株のクエン酸シンターゼ活性が欠失した菌株を作製し、KCCM11146P−ADと命名した。

0126

前記クエン酸シンターゼ遺伝子の活性が欠失したKCCM11146P−AD菌株のO−アセチルホモセリン生産量を実験するために、三角フラスコ培養を行った。LB培地にKCCM11146P又はKCCM11146P−AD菌株を接種して33℃で一晩培養し、その後単一コロニーを3mlのLB培地に接種して33℃で5時間培養し、再び25mlのO−アセチルホモセリン生産培地(+グルタメート添加)を添加した250ml三角フラスコで200倍に希釈して33℃、200rpmで30時間培養し、HPLC分析によりO−アセチルホモセリン生産量を確認した。その結果を下記表9に示す。

0127

0128

その結果、KCCM11146P菌株においてはO−アセチルホモセリンが14.2g/L生成され、KCCM11146P−AD菌株においてはODが減少したが、O−アセチルホモセリンが16.7g/Lと約17.6%向上した。

0129

<4−2>O−アセチルホモセリン高収率菌株におけるクエン酸シンターゼ活性低下菌株の作製及び評価
前記O−アセチルホモセリン高収率菌株であるKCCM11146Pにおいてクエン酸シンターゼ活性を低下させるとさらに多くのO−アセチルホモセリンを生産するか否かを確認するために、実施例<2−1>で説明した、タンパク質活性を低下させる変異3種のうち最も高いO−アセチルホモセリン生産能を示す145番目のアミノ酸変異(チロシン(Y)からアラニン(A))と167番目のアミノ酸変異(リシン(K)からアラニン(A))をKCCM11146Pに適用した。作製方法は実施例<2−2>と同一であり、この方法によりKCCM11146P菌株のクエン酸シンターゼ活性が低下した菌株2種をそれぞれ作製し、各菌株をKCCM11146P−A145、KCCM11146P−A167と命名した。

0130

前記クエン酸シンターゼ遺伝子の活性が低下したKCCM11146P−A145、KCCM11146P−A167の2種の菌株のO−アセチルホモセリン生産量を実験するために、三角フラスコ培養を行った。

0131

LB培地にKCCM11146P、KCCM11146P−A145、KCCM11146P−A167の3種の菌株を接種して33℃で一晩培養し、その後単一コロニーを3mlのLB培地に接種して33℃で5時間培養し、再び25mlのO−アセチルホモセリン生産培地を添加した250ml三角フラスコで200倍に希釈して33℃、200rpmで30時間培養し、HPLC分析によりO−アセチルホモセリン生産量を確認した。その結果を下記表10に示す。

0132

0133

その結果、KCCM11146P菌株においてはO−アセチルホモセリンが15.0g/L生成され、KCCM11146P−A145、KCCM11146P−A167の2種の菌株においては実施例<2−3>と同様であった。2種の菌株のどちらもODが減少したが、O−アセチルホモセリンが17.5g/L、17.3g/Lと約16.7%向上した。O−アセチルホモセリン高生産菌株においてもクエン酸シンターゼ活性の低下によるTCAサイクルの流量減少によりグルタメートが1.6g/Lから0g/Lに減少した。

0134

上記結果は、クエン酸シンターゼ活性低下変異を適用してO−アセチルホモセリンを生産できることを示すものであり、特許文献1に基づいて生産されたO−アセチルホモセリンを基質として用い、さらにシスタチオニンγ−シンターゼ(cystathionine gamma synthase)、O−スクシニルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-succinylhomoserine sulfhydrylase)及びO−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼ(O-acetylhomoserine sulfhydrylase)の活性を有する変換酵素を用いて変換反応を起こす場合より、低コストでL−メチオニンと酢酸を同時に生産できることを示すものでもある。

0135

本発明者らは、KCCM11146P菌株クエン酸シンターゼの167番目のアミノ酸変異株においてO−アセチルホモセリン生産が増加することを確認し、前記KCCM11146P−A167菌株を「CA05−4007」と命名し、その後これを2013年11月22日付けブダペスト条約上の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(KCCM)に寄託番号KCCM11483Pとして寄託した。

0136

以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明の範囲は、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態を含むものであると解釈すべきである。

実施例

0137

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