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技術 エンジン出力抑制装置

出願人 川崎重工業株式会社
発明者 廣上達也寺井昭平東誠治植田健吾
出願日 2016年9月14日 (4年2ヶ月経過) 出願番号 2016-179706
公開日 2018年3月22日 (2年8ヶ月経過) 公開番号 2018-044490
状態 拒絶査定
技術分野 内燃機関の複合的制御 車両用機関または特定用途機関の制御
主要キーワード 制御度合い 周辺気温 気象パラメータ 周辺大気 環境補正係数 変更要素 想定範囲 相対性
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

解決手段

エンジン出力抑制装置が、エンジン出力を変える出力変更要素の動作を制御する制御器と、車両の使用環境を示す環境パラメータを検出する環境センサとを備え、制御器は、車両状態がエンジン出力を抑制すべき状態にあるという条件である出力抑制条件の成否を判定し、出力抑制条件が成立していると判定すると、エンジン出力を抑制すべく出力変更要素に対する抑制値を設定し、環境センサによって検出される環境パラメータに応じて抑制値を補正する。

概要

背景

車両用制御装置のなかには、スリップあるいはウィリーを検出すると、エンジン出力を抑制するように構成されたものがある。

概要

エンジン出力の出力抑制量バラつきを抑える。 エンジン出力抑制装置が、エンジン出力を変える出力変更要素の動作を制御する制御器と、車両の使用環境を示す環境パラメータを検出する環境センサとを備え、制御器は、車両状態がエンジン出力を抑制すべき状態にあるという条件である出力抑制条件の成否を判定し、出力抑制条件が成立していると判定すると、エンジン出力を抑制すべく出力変更要素に対する抑制値を設定し、環境センサによって検出される環境パラメータに応じて抑制値を補正する。

目的

本発明によれば、エンジン出力の出力抑制量のバラつきを抑えることを目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

エンジン出力を変える出力変更要素の動作を制御する制御器と、前記車両の使用環境を示す環境パラメータを検出する環境センサと、を備え、前記制御器は、車両状態が前記エンジン出力を抑制すべき状態にあるという条件である出力抑制条件の成否を判定し、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、前記エンジン出力を抑制すべく前記出力変更要素に対する抑制値を設定し、前記環境センサによって検出される環境パラメータに応じて前記抑制値を補正する、エンジン出力抑制装置

請求項2

前記環境パラメータは、前記エンジン出力に影響を及ぼす環境値である、請求項1に記載のエンジン出力抑制装置。

請求項3

前記環境パラメータが大気圧であり、前記環境センサが前記車両の周辺の大気圧を検出する大気圧センサであり、前記制御器は、前記大気圧センサによって検出される前記大気圧が高いほど、前記エンジン出力が大きく抑制されるように前記抑制値を補正する、請求項2に記載のエンジン出力抑制装置。

請求項4

前記出力抑制条件が、前記車両がスリップ状態にあるとの条件、または前記車両がウィリー状態にあるとの条件を含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のエンジン出力抑制装置。

請求項5

車両状態を検出する車両状態センサを備え、前記制御器は、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、前記車両状態センサによって検出される前記車両状態に応じて前記抑制値を設定し、前記車両状態に応じて設定された前記抑制値を、前記環境パラメータに応じて補正する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のエンジン出力抑制装置。

請求項6

運転操作を検出する運転操作センサを備え、前記制御器は、少なくとも前記出力抑制条件が非成立であるときに、ベース規則に従って前記運転操作センサによって検出される前記運転操作に応じて前記出力変更要素に対する基本値を設定し、前記環境センサによって検出される前記環境パラメータに応じて、前記基本値を補正し、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、前記ベース規則とは異なる出力抑制規則に従って前記抑制値を設定し、前記環境センサによって検出される前記環境パラメータに応じて、前記抑制値を補正する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のエンジン出力抑制装置。

請求項7

前記出力抑制規則で定義される前記運転操作の変化に対する前記抑制値の敏感度は、前記ベース規則で定義される前記運転操作の変化に対する前記基本値の敏感度と比べて、小さい、請求項6に記載のエンジン出力抑制装置。

請求項8

前記制御器は、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、混合気燃焼を伴って前記エンジン出力を抑制する第1抑制制御と、混合気の燃焼を止めて前記エンジン出力を抑制する第2抑制制御との両方を実施することによって、前記エンジン出力を抑制する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のエンジン出力抑制装置。

請求項9

前記制御器は、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、出力抑制規則に従って車両状態に応じて前記抑制値を設定し、前記環境パラメータに基づく出力過剰度が高いほど前記エンジン出力が大きく抑制されるように前記抑制値を補正する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載のエンジン出力抑制装置。

技術分野

0001

本発明は、エンジン出力を抑制する装置に関する。

背景技術

0002

車両用制御装置のなかには、スリップあるいはウィリーを検出すると、エンジン出力を抑制するように構成されたものがある。

先行技術

0003

特開2011−137416号公報

発明が解決しようとする課題

0004

エンジン出力を抑制する際、エンジン運転パラメータ(例えば、回転数吸気量、燃料噴射量、点火時期)が同一条件下にあっても、出力抑制量バラツキが出る。

0005

本発明は、出力抑制量のバラツキを抑えることを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明の一態様に係るエンジン出力抑制装置は、エンジン出力を変える出力変更要素の動作を制御する制御器と、前記車両の使用環境を示す環境パラメータを検出する環境センサと、を備え、前記制御器は、車両状態が前記エンジン出力を抑制すべき状態にあるという条件である出力抑制条件の成否を判定し、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、前記エンジン出力を抑制すべく前記出力変更要素に対する抑制値を設定し、前記環境センサによって検出される環境パラメータに応じて前記抑制値を補正する。

0007

前記構成によれば、出力変更要素の抑制値を補正することによって、使用環境によって生じる出力抑制量のバラツキを補償できる。よって、出力抑制量のバラツキを抑えることができる。

0008

前記環境パラメータは、前記エンジン出力に影響を及ぼす環境値であってもよい。前記構成によれば、使用環境に起因するエンジン出力および出力抑制量のバラツキを考慮して、エンジン出力を抑制できる。

0009

前記環境パラメータが大気圧であり、前記環境センサが前記車両の周辺の大気圧を検出する大気圧センサであり、前記制御器は、前記大気圧センサによって検出される前記大気圧が高いほど、前記エンジン出力が大きく抑制されるように前記抑制値を補正してもよい。前記構成によれば、大気圧が高くなればエンジン出力は高くなる。大気圧が高いときにエンジン出力を大きく抑制するので、エンジン出力を平準化できる。

0010

前記出力抑制条件が、前記車両がスリップ状態にあるとの条件、または前記車両がウィリー状態にあるとの条件を含んでもよい。前記構成によれば、スリップやウィリーが発生しても、使用環境に起因した出力抑制量のバラツキ、スリップやウィリーの解消の速さのバラツキを抑えることができる。

0011

車両状態を検出する車両状態センサを備え、前記制御器は、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、前記車両状態センサによって検出される前記車両状態に応じて前記抑制値を設定し、前記車両状態に応じて設定された前記抑制値を、前記環境パラメータに応じて補正してもよい。前記構成によれば、使用環境に起因する出力抑制量のバラツキを抑制できる。

0012

運転操作を検出する運転操作センサを備え、前記制御器は、少なくとも前記出力抑制条件が非成立であるときに、ベース規則に従って前記運転操作センサによって検出される前記運転操作に応じて前記出力変更要素に対する基本値を設定し、前記環境センサによって検出される前記環境パラメータに応じて、前記基本値を補正し、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、前記ベース規則とは異なる出力抑制規則に従って前記抑制値を設定し、前記環境センサによって検出される前記環境パラメータに応じて、前記抑制値を補正してもよい。前記構成によれば、出力抑制を要さない状態において運転操作に応じて決まるエンジン出力、出力抑制を要する状態において決まる出力抑制量、これら2つが使用環境に起因してバラツキが生じるのを防止できる。この防止のための補正を、2つの状態について個別に行うことができる。

0013

前記出力抑制規則で定義される前記運転操作の変化に対する前記抑制値の敏感度は、前記ベース規則で定義される前記運転操作の変化に対する前記基本値の敏感度と比べて、小さくてもよい。前記構成によれば、抑制値が運転操作に変動があってもその影響を受けずに設定されるので、運転操作によらずに強制的な出力抑制を実現しやすい。その抑制値が使用環境に応じて補正されるので、運転操作によらずとも、使用環境に起因した出力抑制量のバラツキを抑制できる。

0014

前記制御器は、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、混合気燃焼を伴って前記エンジン出力を抑制する第1抑制制御と、混合気の燃焼を止めて前記エンジン出力を抑制する第2抑制制御との両方を実施することによって、前記エンジン出力を抑制してもよい。前記構成によれば、第2抑制制御の採用により速やかな出力抑制を図ることができる。第1抑制制御の併用により、運転者に与えるショック緩和した出力抑制も実現できる。更に、使用環境を考慮に入れるので、出力抑制が継続して行われる場合でも、出力抑制の過不足を防ぐことができる。

0015

前記制御器は、前記出力抑制条件が成立していると判定すると、出力抑制規則に従って車両状態に応じて前記抑制値を設定し、前記環境パラメータに基づく出力過剰度が高いほど前記エンジン出力が大きく抑制されるように前記抑制値を補正してもよい。前記構成によれば、出力過剰度が高いほどエンジン出力を大きく抑制することで、使用環境に起因して生じる出力過剰の状態から早期脱出できる。

発明の効果

0016

本発明によれば、エンジン出力の出力抑制量のバラつきを抑えることを目的とする。

図面の簡単な説明

0017

実施形態に係るエンジン出力抑制装置を示すブロック図である。
ベース規則の一例を示す図である。
出力抑制規則の一例を示す図である。
環境パラメータと環境補正係数との対応関係を示す図である。

実施例

0018

以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。この説明における方向は、車両の運転者から見た方向を基準とし、前後方向は車長方向と対応し、左右方向は車幅方向と対応する。

0019

図1は、エンジン出力抑制装置を示す。エンジン出力抑制装置は、車両に動力源として搭載されたエンジン4の出力を抑制する。詳細図示を省略するが、エンジン出力抑制装置を搭載する車両の一例として、自動二輪車を挙げられる。自動二輪車は、前輪および後輪を1つずつ備え、後輪が駆動輪、前輪が従動輪かつ操舵輪である。エンジン4で発生された動力は、変速機およびクラッチを含む動力伝達機構を介し、駆動輪(後輪)に伝達される。内燃機関であるエンジン4は、一例として、点火式エンジンであり、レシプロ式エンジンであり、ガソリンエンジンであり、また、多気筒エンジンである。

0020

図1に示すように、エンジン4には、エンジン出力を変える出力変化要素として、スロットル弁6、インジェクタ7および点火器8が設けられている。スロットル弁6は、吸気通路開度可変に設けられる。インジェクタ7は、吸気通路または気筒内へと燃料噴射する。点火器8は、気筒内に着火トリガ(火花またはパイロット燃料)を供給する。点火器8で混合気を気筒内で燃焼させ、それによりピストン押し下げることで、エンジン4の出力軸が回転する。エンジン出力は、吸気量、燃料量、および点火時期によって変わる。吸気量は、スロットル開度(スロットル弁6の開度)に応じて変更される。インジェクタ7は常閉電磁開閉弁であり、燃料量はインジェクタ7の開弁期間に応じて変更される。

0021

車両は、運転者が運転操作を行うための操作子を備える。例えば、操作子は、スロットル開度、エンジン出力ひいては車速調整操作するための加速操作子9a、車輪制動操作するための制動操作子9b、操舵のための操舵子9c、シフトチェンジ操作のためのシフトチェンジ操作子9dを含む。加速操作子9aは、自動二輪車に適したグリップの他、ペダルでもよい。制動操作子9bが操作されると、車輪を制動する油圧式ブレーキ装置が作動し、車輪が制動される。操舵子9cが操作されると、操舵輪(前輪)が転向する。シフトチェンジ操作子9dが操作されると、変速機で設立される変速段が変わる。

0022

車両の1は、出力変更要素(スロットル弁6、インジェクタ7および点火器8)の動作、ひいてはエンジン出力を制御する制御器10を備える。制御器10は「電子制御ユニット:ECU」とも呼ばれる。制御器10は、車両状態センサから「車両状態」に関わる情報を入力する。制御器10は、検出された車両状態に応じて出力変更要素の動作を制御する。

0023

制御器10は、スロットル弁6を操作し、スロットル開度、吸気量ひいてはエンジン出力を制御する。制御器10は、インジェクタ7を操作し、インジェクタ7の開弁期間(更には開弁時期および閉弁時期)、燃料量ひいてはエンジン出力を制御する。制御器10は、スロットル弁6および/またはインジェクタ7を操作し、空燃比ひいてはエンジン出力を制御する。制御器10は、点火器8を操作し、点火時期ひいてはエンジン出力を制御する。制御器10は、インジェクタ7および/または点火器8を操作し、後述の燃焼間引き率ひいてはエンジン出力を制御する。

0024

制御器10による開度制御実現のため、スロットル弁6は、弁体回転駆動する弁アクチュエータ(例えば、電気モータ)を備えている。制御器10は、スロットル弁6の弁アクチュエータを操作し、弁体の回転位置、すなわちスロットル開度を制御する。

0025

前述の車両状態センサは、車両状態を検出する。「車両状態」には、車両のエンジン4、動力伝達機構、車輪、あるいは車体の状態が含まれる。「車両状態」の例として、エンジン回転数、スロットル開度、空燃比、変速機のギヤ位置、クラッチの入出力回転数、車速、車輪の回転速度や周速度、駆動輪のスリップ率、車体のロールピッチ、ヨー方向の傾斜角、ウィリー量を挙げられる。「車両状態」には、これらの時間変化率も含めることができる。

0026

「車両状態」には、運転者による運転操作が含まれ、車両状態センサには、運転操作を検出する運転操作センサが含まれる。「運転操作」の例として、加速操作子9aでの車速調整操作、制動操作子9bでの制動操作、操舵子9cでの操舵を挙げられる。なお、車速を低下させるための運転操作は、加速操作子9aでも制動操作子9bでも可能である。「運転操作の検出」は、操作の有無を検出することだけでなく、操作有りの場合にその操作の程度(各操作子操作量または操作位置)を検出することも含まれる。

0027

車両は、環境パラメータを検出する環境センサ20を備えている。吸気量、燃料量および点火時期のような出力変更要素の動作に関わるパラメータが同一条件下であっても、車両の使用環境に起因してエンジン4から実際に出力されているエンジン出力にバラツキが出る。環境パラメータは、車両の使用環境を示し、特に、エンジン出力に影響を及ぼす環境値を示す。環境パラメータは、「出力過剰度」、すなわち、エンジン出力を高める度合いを示すともいえる。

0028

環境パラメータとして、例えば、周辺大気圧、周辺気温使用燃料オクタン価、使用燃料のエタノールアルコール含有率を挙げられる。大気圧が高いと、吸気圧が高くなり、エンジン出力は大きくなる。気温が低いと、混合気の充填効率が高くなり、エンジン出力は大きくなる。大気圧が高いほど、気温が低いほど、出力過剰度は高くなる。

0029

エンジン4から実際に出力されているエンジン出力が同一条件下であっても、車両の使用環境に起因して車両の加速性にバラツキが出る。環境パラメータは、車両の加速性に影響を及ぼす環境値であってもよく、「出力過剰度」は、「エンジン出力自体を高める度合い」の他、「車両の加速性を高める度合い」を含んでもよい。

0030

環境パラメータとして、例えば、風向走行風を除いた気象的な風向)と車両の進行方向との差、積載重量路面勾配を挙げられる。方向差が180度に近いほど、運転者に前から向かう風力は強くなり、加速性が悪くなる。方向差が0度に近いほど、運転者に前から向かってくる風力が弱くなり、加速性が良くなる。積載重量は、車両に搭載された荷物重量の他、運転者および同乗者の体重も含む。自動二輪車の場合、車重が軽く可載重量が小さいので、体重を考慮に入れることに意義がある。積載重量が軽いほど、正味の出力重量比[W/g]が大きくなり、加速性が良くなる。上り坂を正、下り坂を負とする場合、路面勾配が小さいほど、加速性が良くなる。このように、方向差が0度に近いほど、積載重量が軽いほど、路面勾配が小さいほど、出力過剰度は高くなる。

0031

なお、エンジン出力自体に影響を及ぼすか否か以外の切り口でも、環境パラメータを分類できる。環境パラメータは、気象と関連した気象パラメータ走行地と関連した地理パラメータ、使用燃料の性状と関連した燃料性状パラメータ、およびその他の使用環境と関連した使用パラメータに分類され得る。気象パラメータは、前述した大気圧、気温および風向の他、湿度を含んでもよい。地理パラメータは、前述した路面勾配の他、標高を含んでもよい。なお、標高は大気圧と相関し、標高が高いほど大気圧は低くなる。燃料性状パラメータは、前述したオクタン価およびアルコール含有率を含む。使用パラメータは、前述した積載重量の他、エンジン温度を含んでいてもよい。エンジン温度のように、一部のパラメータは、環境パラメータと車両状態のどちらにも属し得る。

0032

車両状態センサの例として、車両1は、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ11、スロットル開度を検出するスロットル開度センサ12、駆動輪(後輪)の回転速度を検出する駆動輪速度センサ13、従動輪(前輪)の回転速度を検出する従動輪速度センサ14、変速機のギヤ位置を検出するギヤ位置センサ15、冷却水温を検出する水温センサ16、車体のピッチ方向の角速度を検出するピッチレートセンサ17、加速操作子9aの操作位置を検出する加速操作センサ18を備える。加速操作センサ18は、運転操作センサの一例である。

0033

環境センサ20の例として、車両は、大気圧を検出する大気圧センサ21を備える。大気圧センサ21は、吸気通路の内圧を検出できるようにして、車両のエンジン吸気系に設けられていてもよい。換言すれば、大気圧センサ21は、吸気圧を検出する吸気圧センサ代用可能である。吸気圧は大気圧と正に相関するので、吸気通路の内圧を参照して大気圧を考慮に入れた制御を実行することには妥当性がある。

0034

なお、クラッチ入出力回転数は、エンジン回転数、駆動輪の回転速度およびギヤ位置に基づいて制御器10内で推定可能である。車速、車輪の周速度、およびスリップ率は、車輪の回転速度に基づく制御器10内での演算を通じて検出(測定)可能である。このようなことから、「車両状態センサ」、「運転操作センサ」および「環境センサ」は、狭義のセンサ(情報を示す信号を制御器10に出力するハードウェアデバイス)だけでなく、制御器10内でパラメータ(中間値)を導出すべく機能するソフトウェア要素も含み得る。

0035

制御器10は、基本値設定部31、補正部32、出力抑制条件判定部33、抑制値設定部34を備える。基本値設定部31は、出力変更要素に対する基本値Bを設定する。補正部32は、基本値Bを環境パラメータに応じて補正することで、出力変更要素に対する最終指令値Sを設定する。出力抑制条件判定部33は、出力抑制条件の成否を判定する。出力抑制条件の成立時、抑制値設定部34が、エンジン出力を抑制すべく出力変更要素に対する抑制値Yを設定し、補正部32が、抑制値Yを環境パラメータに応じて補正することで、出力変更要素に対する最終指令値Sを設定する。

0036

なお、「出力変更要素に対する基本値B」は、スロットル開度(または吸気量)の基本値、インジェクタ開弁期間(または燃料量)の基本値、点火時期の基本値、燃焼間引き率の基本値を含む。「出力変更要素に対する最終指令値」および「出力変更要素に対する抑制値」も、これと同様である。

0037

吸気量(スロットル開度)あるいは燃料量が小さいほど、点火時期が遅角するほど、エンジン出力は大きく抑制される。吸気量、燃料量または点火時期を調整する場合、気筒内で混合気の燃焼が行われる。これに対し、エンジン4の出力軸の回転に伴って順次訪れる複数の燃焼行程のうち一部の燃焼行程において混合気の燃焼を止める、いわゆる燃焼間引きによってもエンジン出力を抑制できる。燃焼を止めるには、燃料または着火トリガの供給を止めればよい。以下、インジェクタ7を開弁させず燃料供給を止めるものを「燃料間引き」と呼び、点火器8を動作させず着火トリガ供給を止めるものを「点火間引き」と呼ぶ。「燃焼間引き率」は、ある複数回の連続した燃焼行程に対して燃焼間引きが行われる回数の割合である。燃焼間引き率が大きいほど、エンジン出力は大きく抑制される。

0038

以下、気筒内での燃焼を維持してエンジン出力を抑制する制御を「第1抑制制御」、気筒内での混合気燃焼の停止を伴ってエンジン出力を抑制する制御を「第2抑制制御」と呼ぶ。第1抑制制御には、例えば、吸気量低減制御(スロットル開度低減制御)、燃料量低減制御、点火角制御が含まれる。第2抑制制御には、燃焼間引き制御が含まれ、燃焼間引き制御には、点火間引き制御と燃料間引き制御とが含まれる。

0039

第1抑制制御では、全気筒で混合気の燃焼を伴うため、エンジン出力を急速に低減することが難しい。また、吸気量低減制御では、出力抑制のための指令がスロットル弁6に与えられても、その弁体の回転位置が指令どおりに静定するまでに時間を要する。その点からいっても、急速なエンジン出力の低減は難しい。逆にいえば、エンジン出力はマイルドに低減するので、運転者にショックが伝わりにくい。また、スロットル開度および点火時期そのものは連続性を有するので、(指令値がデジタル量であるものの)エンジン出力の微調整には向いている。このため、第1抑制制御によってエンジン出力を抑制する場合、運転フィーリングを大きく損なわずに済む。第1抑制制御はこのような特性を有する。

0040

第2抑制制御では、一部気筒で混合気燃焼を停止するので、エンジン出力を急速に低減できる。その一方、燃焼間引き率を高める等して制御度合いを強めれば、燃焼カットの実施中であることを運転者が力覚または聴覚で容易に知覚でき、運転フィーリングを損ないやすい。また、燃焼間引き率の数値離散性が比較的強く、制御度合いの変更時に、出力抑制量は段階的に変更されざるを得ない。そのため、制御度合いの変化が運転者にショックとなって伝わるおそれがある。第2抑制制御はこのような特性を有する。

0041

「出力抑制条件」は、車両状態がエンジン出力を抑制すべき状態になっているという条件である。出力抑制条件を成立させる車両状態の例として、車両にウィリーが生じている状態や、駆動輪にスリップが生じている状態を挙げられる。ウィリーもスリップも、駆動輪すなわち後輪に伝達される動力が過大であるときに生じやすく、操安性を悪化させる。仮に運転者が加速操作子9aでの操作を緩めていなくてもエンジン出力を積極的に抑制することによって、ウィリーやスリップの解消、ひいては操安性の維持や回復が図られる。

0042

ウィリーに関する出力抑制条件(以下、「ウィリー条件」)は、前輪の路面からの浮上り量を示すウィリー量が所定の閾値以上であるという条件であってもよい。ウィリー量は、ピッチレートセンサ17によって検出されるピッチ角速度から推定できる。ウィリー条件が成立すると、制御器10は、ウィリーを解消すべく、エンジン出力を抑制するウィリー抑制制御を実行する。

0043

スリップに関する出力抑制条件(以下、「スリップ条件」)が、スリップ率が所定の閾値以上であるという条件であってもよい。スリップ率は、駆動輪と従動輪との回転速度の相対性を示す数値であり、ここでは、スリップ率の値が大きいほど、駆動輪の路面に対する滑り(車体の対地速度に対する駆動輪の周速度)が大きいものとする。スリップ率は、例えば、1から、従動輪の回転速度Vfを駆動輪の回転速度Vrで除した値を、減算することによって求めることができる(1−Vf/Vr)。スリップ条件が成立すると、制御器10は、駆動輪のスリップを解消すべく、エンジン出力を抑制するスリップ抑制制御を実行する。

0044

このように複数種の条件(例えば、ウィリー条件およびスリップ条件)が考慮される場合、そのいずれもが非成立であるときに、出力抑制条件判定部33は出力抑制条件が非成立であると判定する。

0045

出力抑制条件の非成立時、基本値設定部31は、ベース規則35に従って車両状態に応じて基本値を設定する。ベース規則35は、車両状態と基本値との対応を定めた規則であり、制御器10に記憶される。ベース規則35は、制御器10の出荷段階から不変永続的に記憶されてもよく、制御器10によって実行される学習制御を通じて実用中に更新記憶されてもよい。ベース規則35の形態は、入力(車両状態)に応じて出力(基本値)を取得できればどのようなものでもよく、例えば、プログラム内の演算式でもよいし、制御器10内の記憶領域に格納された制御マップあるいはテーブルであってもよい。テーブル採用時は補間処理ルーチンも「ベース規則」のなかに包含することが可能である。

0046

図2は、スロットル開度用のベース規則35を示す。図2の例では、スロットル開度の基本値が、運転状態センサによって検出される運転状態、例えば、加速操作センサ18によって検出される加速操作子9aの操作位置と略比例する。燃料量および点火時期の基本値は、エンジン回転数およびスロットル開度等に応じて決定される。ただし、燃焼間引き率の基本値は、運転状態に関わらずゼロ値である(燃焼間引きは行われない)。

0047

補正部32は、環境パラメータによって表される「出力過剰度」が高いほどエンジン出力が抑制されるように基本値を補正して、最終指令値を設定する。例えば、大気圧が高いほど出力過剰度は高くなる。そこで補正部32は、大気圧センサ21によって検出される大気圧が高いほど、エンジン出力が大きく抑制されるように基本値を補正する。このような補正により、大気圧に起因するエンジン出力のバラツキを解消できる。

0048

出力抑制条件の非成立時に環境パラメータに応じて補正されるものは、スロットル開度、燃料量、点火時期、燃焼間引き率の各基本値のうちの一部である。例えば、燃焼間引き率は、出力抑制条件の非成立時に環境パラメータに関わらずゼロ値で固定され、あらゆる燃焼行程で混合気燃焼が行われる。出力抑制条件の非成立時でも補正部32の働きによりエンジン出力を抑制する場合があるが、その抑制は「第1抑制制御」によって実現される。例えば、燃料量低減制御により実現され、出力抑制条件の非成立時における補正対象は、燃料量の基本値とされる。燃料量低減制御においては、補正部32は、出力過剰度が高いほど最終指令値をより小さな値に設定する。一例として、補正部32は、環境パラメータに応じて求まる環境補正係数を基本値に乗算することで、燃料量の最終指令値を求める。

0049

出力抑制条件が成立していると判定されると、抑制値設定部34が、出力抑制規則36に従って抑制値Yを設定する。出力抑制規則36は、車両状態と抑制値Yとの対応を定めた規則であり、制御器10に記憶される。

0050

補正部32は、例えば、最終指令値Sを次式(1a)または(1b)より求める。

0051

S=B−Y×K……(1a)
S=B+Y×K……(1b)
ここで、Bはベース規則35に従って決まる基本値、Yは出力抑制規則36に従って決まる抑制値、Kは環境パラメータに応じて決まる環境補正係数である。式(1a)は、抑制値Yを基本値Bから引くので、スロットル開度および燃料量に適し、式(1b)は、抑制値Yを基本値Bに足すので、点火時期に適する。その場合、抑制値Yとしての点火遅角量は負の値をとる。

0052

なお、式(1a)および(1b)の場合、基本値Bと環境パラメータに応じた補正を考慮に入れない指令値との差分(環境に応じた補正を度外視したスロットル開度低減量、燃料量低減量、点火時期遅角量、燃焼間引き率)は、Yである。この差分Yに基づく出力抑制量が使用環境に起因してバラつくので、環境補正係数Kを用いて補正を行う。基本値Bと最終指令値Sとの差分(環境に応じた補正を考慮に入れたスロットル開度低減量、燃料量低減量、点火時期遅角量、燃焼間引き率)は、Y×Kとなる。係数Kを加味することで出力抑制量のバラツキが補償される。なお、出力抑制量のバラツキを補償するための補正量は、Y−Y×K=Y(1−K)である。

0053

補正部32は、最終指令値Sを次式(2a)または(2b)より求めてもよい。

0054

S=B×Y×K……(2a)
S=B×(1−Y×K)……(2b)
この場合、抑制値Yは、基本値Bに乗算される係数である。式(2a)の場合、基本値Bと環境パラメータに応じた補正を考慮に入れない指令値との差分は、B(1−Y)である。この差分B(1−Y)に基づく出力抑制量が使用環境に起因してバラつくので、環境補正係数Kを用いて補正を行う。基本値Bと最終指令値Sとの差分は、B(1−Y×K)となる。係数Kを加味することで出力抑制量のバラツキが補償される。なお、出力抑制量のバラツキを補償するための補正量は、B(1−Y)−B(1−Y×K)=BY(K−1)である。

0055

他方、式(2b)の場合、基本値Bと環境パラメータに応じた補正を考慮に入れない指令値との差分は、B×Yである。この差分B×Yに基づく出力抑制量が使用環境に起因してバラつくので、環境補正係数Kを用いて補正を行う。基本値Bと最終指令値Sとの差分は、B×Y×Kとなる。係数Kを加味することで出力抑制量のバラツキが補償される。なお、出力抑制量のバラツキを補償するための補正量は、B×Y−B×Y×K=BY(1−K)である。

0056

補正部32は、最終指令値Sを次式(3)より求めてもよい。

0057

S=Y×K……(3)
このように、最終指令値Sが、ベース規則35に従った基本値Bを用いずに、出力抑制規則36に従って求められた抑制値Yと環境補正係数Kとに基づき求められてもよい。なお、式(3)の場合、基本値Bと環境パラメータに応じた補正を考慮に入れない指令値との差分は、B−Yである。この差分B−Yに基づく出力抑制量が使用環境に起因してバラつくので、環境補正係数Kを用いて補正を行う。基本値Bと最終指令値Sとの差分は、B−Y×Kとなる。係数Kを加味することで出力抑制量のバラツキが補償される。なお、出力抑制量のバラツキを補償するための補正量は、B−Y−(B−Y×K)=Y(K−1)である。

0058

補正部32における最終指令値Sの求め方がどのようなものであっても、抑制値Yは、基本値Bと最終指令値Sとの差分(基本値に対するスロットル開度低減量、基本値に対する燃料量低減量、基本値に対する点火時期遅角量、燃焼間引き率)に影響を及ぼす。抑制値Yが変われば、当該差分も変わる。そして、補正部32は、環境パラメータに応じてこの抑制値Yを補正する。一例として、補正部32は、環境パラメータに応じて環境補正係数Kを求め、乗算により補正を行う。

0059

抑制値設定部34で設定される抑制値Yとして、上記のように概して3種例示できる。どの種を採用するのかに関しては、スロットル開度、燃料量、点火時期、燃料間引き率のうちいずれであるのかに応じて、あるいは、出力抑制制御を実行するに際して複数種の出力抑制条件のうちのいずれの条件が成立しているのかに応じて、適宜選択される。

0060

出力抑制条件が非成立時の最終指令値は、基本値Bである。あるいは、最終指令値は、基本値Bを環境パラメータで補正した値であってもよい。それにより、条件非成立時(通常走行時と言換え可能)に、ドライバビリティ低下や排ガス性状悪化を抑制できる。このように通常時にも補正を行う場合、出力抑制条件成立時における環境パラメータに応じた補正は、出力抑制条件非成立時における環境パラメータに応じた補正と異ならせることが好ましい。例えば、環境補正係数Kを導出するための規則、環境補正係数Kを考慮して最終出力値を導出するための式が、出力抑制条件成立時のものと出力抑制条件非成立時のものとで異なっていてもよい。これにより、ドライバビリティ低下や排ガス性状悪化の抑制と、出力抑制を必要とする際における出力抑制量の平準化とを両立しやすくなる。

0061

以下、ウィリー抑制制御を例にとり、出力抑制条件の成立時の制御についてより詳細に説明する。以下、最終指令値、抑制値および環境補正係数を示す符号S、Y、Kに、ウィリー抑制制御用であることを示す添え字Wや、スロットル開度用であることを示す添え字THや、点火時期用であることを示す添え字IGTや、点火間引き制御用であることを示す添え字IGMを付す場合がある。

0062

ウィリー条件の成否は、2段構えで判定される。第1段として、車速あるいは車輪の速度、またはエンジン出力(例えば、これと強い相関を有するスロットル開度)に基づき、車両がウィリー前状態であるか否かを判定する。ウィリー前状態とは、前輪が路面から浮き上がり始める状態である。ウィリー前状態であると判定されると、第2段に進み、ウィリー量が所定の閾値以上であるか否かを判定する。ウィリー量の算出は、ウィリー前状態の判定時点から開始する。ウィリー量は、ピッチレートセンサから逐次出力されるピッチ角速度を積算することによって算出され、ウィリー前状態判定後における前輪の路面からの浮上り量を端的に表す。ウィリー量が閾値以上であれば、ウィリー条件が成立したと判定する。ウィリー条件が成立したと判定されると、ウィリー抑制制御が開始する。

0063

ウィリー抑制制御では、第1抑制制御と第2抑制制御とが両方とも実施される。第1抑制制御として、スロットル開度低減制御と点火遅角制御とが実行される。第2抑制制御として、燃焼間引き制御、特に、点火間引き制御が実行される。出力抑制規則36には、ウィリー抑制制御におけるスロットル開度の抑制値YWTHを求めるための第1出力抑制規則36a(図3A参照)、ウィリー抑制制御における点火時期の抑制値YWIGTを求めるための第2出力抑制規則、ウィリー抑制制御における点火間引き率の抑制値YWIGMを求めるための第3出力抑制規則36c(図3B参照)が含まれる。

0064

補正部32は、上式(2b)をベースとした次式(4)より、ウィリー抑制制御におけるスロットル開度の最終指令値SWTHを設定する。補正部32は、上式(1b)をベースとした次式(5)より、ウィリー抑制制御における点火時期の最終指令値SWIGTを設定する。補正部32は、上式(3)をベースとした次式(6)より、ウィリー抑制制御における点火間引き率の最終指令値SWIGMを設定する。

0065

SWTH=BTH(1−YWTH×KWTH)……(4)
SWIGT=BIGT+YWIGT×KWIGT……(5)
SWIGM=YWIGM×KWIGM……(6)
ここで、BTHは、ベース規則35に従って設定されるスロットル開度の基本値、BIGTは、点火時期の基本値である。KWTHは、ウィリー抑制制御におけるスロットル開度用の環境補正係数、KWIGTは、点火時期用の環境補正係数、KWIGMは、点火間引き率用の環境補正係数である。

0066

図3Aは、第1出力抑制規則36aの一例を示し、図3Bは、第3出力抑制規則36cの一例を示す。出力抑制規則36は、ウィリー量およびピッチ角速度という運転状態(特に、車体の状態)を、抑制値Yと対応付けている。抑制値Yは、運転操作に関わらず求められる。このように、出力抑制規則36はベース規則35と異なる。ベース規則35に従って求められる基本値Bは運転操作に依存するが、出力抑制規則36に従って求められる抑制値Yは運転操作に依存しない。抑制値Yの運転操作への依存度は、基本値Bの運転操作への依存度と比べて小さい。別の言い方では、運転操作の変化に対する抑制値Yの敏感度は、運転操作の変化に対する基本値Bの敏感度と比べて小さい。なお、「依存度」および「敏感度」を大小比較しているが、ここでの「依存度」および「敏感度」はゼロを含む概念である。

0067

図3Aおよび3Bに示すように、出力抑制規則36によれば、ピッチ角速度が正で大きいほど、また、ウィリー量が大きいほど、エンジン出力が大きく抑制されるような抑制値Yが導出される。スロットル開度の場合は、抑制値YWTHが1に近づくように大きくなる。点火間引き率の場合も、抑制値YWIGMが1に近付くように大きくなる。

0068

ウィリー状態の開始付近では、ウィリー抑制制御によって達成される出力抑制全体に対する寄与度は、第2抑制制御のほうが第1抑制制御よりも大きい。ウィリー状態の終了付近において、この寄与度は、第1抑制制御のほうが第2抑制制御よりも大きい。つまり、ウィリー状態の開始から終了に至る間に、出力抑制の主役を第2抑制制御から第1抑制制御に入れ換える。

0069

この点、図3Aおよび3Bには、第1出力抑制規則36aおよび第3出力抑制規則36cと重ねる形で、ウィリー条件が成立してからウィリー条件が非成立になるまで(ウィリー抑制制御の実行期間中)のピッチ角速度およびウィリー量の変遷の一例を略示している。ウィリー条件の成立時点では、ウィリー量は閾値をとるが、前輪は路面から浮き上がり始めるので、ピッチ角速度は正のある値をとる。そこからウィリー量が大きくなるにつれて、出力抑制によりピッチ角速度は小さくなっていく。前輪が出力抑制によってある高さに達すると、ピッチ角速度はゼロ値になる。それ以降の前輪が路面へと落ち過程では、ピッチ角速度はゼロ値から漸減(絶対値は漸増)し、ウィリー量は小さくなっていく。ウィリー量が閾値に達してウィリー条件が非成立になったと判定されると、ウィリー抑制制御が終了する。

0070

点火間引き率は、ウィリー条件成立時点から前輪が出力抑制によりある高さに達するまではゼロ値を超えるが、前輪が路面へと落ちる過程ではゼロ値に設定される。すなわち、第2抑制制御の一例である点火間引き制御は、ウィリー条件成立時点から前輪が出力抑制によりある高さに達するまでの期間に行われ、前輪が路面へと落ちる過程では終了する。

0071

一方、スロットル開度に関しては、ウィリー状態が検知されてから解除されるまでの期間を通じてゼロ値を超える値となる。すなわち、基本的制御内容としては、第1抑制制御の一例である吸気量低減制御(スロットル開度低減制御)は、ウィリー状態と判定されている期間を通じて行われる。

0072

このように、2つの抑制制御はウィリー条件成立時点で同時に開始するが、第2抑制制御はある時間が経過すれば終了する。本例では、ピッチ角速度がゼロ値まで減って前輪が出力抑制によりある高さに達する、第2抑制制御は終了する。第1抑制制御は、前述のとおり急速に出力抑制効果を発揮できない。そこで、ウィリー状態の開始付近では、ウィリー抑制制御全体としての出力抑制に対して、第2抑制制御の寄与度が相対的に高くなる。第2抑制制御は即応性が高いので、ウィリー初期段階での出力抑制を好適に行える。そして、第2抑制制御の実行期間は、第1抑制制御の静定期間に宛がわれる。第1抑制制御が静定して出力抑制効果を発揮しだす頃、第2抑制制御は終了する。ウィリー状態の終了付近では、ウィリー抑制制御全体としての出力抑制に対して、第1抑制制御の寄与度が相対的に高くなる。

0073

ウィリー条件成立直後、第2抑制制御によって即応性の高い出力抑制が実現される。これにより、過大なウィリーの未然防止、ウィリー状態の早期解消が図られる。第1抑制制御による出力抑制効果が現れ始めてからは、エンジン出力をマイルドに抑制でき、運転フィーリングが保たれる。2つの抑制制御を併用するにあたって、両制御の特性に見合った開始時期終了時期および実行期間を決めているので、ウィリー状態の早期解消と運転フィーリングを保つこととを両立できる。また、第1抑制制御によるエンジン出力の抑制が有効に働き出すときに、2つの抑制制御それぞれによる大きな抑制が重複するのを防止でき、運転者に伝わるショックを緩和できる。

0074

しかし、標高が低く大気圧が高い場合のように、使用環境の出力過剰度が高い場合は、出力抑制量が相対的に小さくなるので、前輪が想定以上に持ち上がり、ウィリーがなかなか解消できないことがある。そこで、環境補正係数KWTH,KWIGMを用いて補正を行う。図4Aおよび4Bに示すように、環境パラメータ(大気圧など)に基づく出力過剰度が高いほどエンジン出力が大きく抑制されるようにして、環境補正係数Kは導出される。それにより、使用環境に関わらず、出力抑制量を均し、前輪が持ち上がる高さを想定範囲内に収め、ウィリーの解消速さのバラツキを抑えることができる。

0075

なお、上記の例では、ウィリー抑制制御において燃料量低減制御を実施していない。燃料量については、ウィリー条件の成否に関わらず、環境パラメータに応じた補正を行う。このため、出力過剰度が高ければ燃料量は抑制され、それにより空燃比が調整される。

0076

以上のとおり、エンジン出力抑制装置は、エンジン出力を変える出力変更要素(スロットル弁6、インジェクタ7および点火器8)の動作を制御する制御器10と、車両の使用環境を示す環境パラメータを検出する環境センサ20と、を備える。制御器10は、車両状態がエンジン出力を抑制すべき状態にあるという条件である出力抑制条件の成否を判定する。制御器10は、出力抑制条件が成立していると判定すると、エンジン出力を抑制すべく出力変更要素6〜8に対する抑制値Yを設定する。そして、環境センサ20によって検出される環境パラメータに応じて抑制値Yを補正する。このように、出力変更要素に対する抑制値Yを補正することで、使用環境によって生じる出力抑制量のバラツキを補償できる。よって、出力抑制量のバラツキを抑えることができる。

0077

環境パラメータは、エンジン出力に影響を及ぼす環境値である。そのため、使用環境に起因するエンジン出力および出力抑制量のバラツキを考慮して、エンジン出力を抑制できる。環境パラメータは例えば大気圧であり、環境センサ20が車両の周辺の大気圧を検出する大気圧センサ21を含む。制御器10は、大気圧センサ21によって検出される大気圧が高いほど、エンジン出力が大きく抑制されるように抑制値Yを補正する。大気圧が高くなればエンジン出力は高くなる。大気圧が高いときにエンジン出力を大きく抑制するので、エンジン出力の平準化が図られる。

0078

出力抑制条件は、車両がウィリー状態にあるとの条件(ウィリー条件)を含む。ウィリーが発生しても、使用環境に起因した出力抑制量のバラツキ、ウィリーの解消の速さのバラツキを抑えることができる。出力抑制条件は、車両がスリップ状態にあるとの条件(スリップ条件)も含み得る。詳細説明は省略するが、この場合も、スリップ発生時に、使用環境に起因した出力抑制量のバラツキや、スリップの解消速さのバラツキを抑えることができる。具体例を挙げれば、高地ではスリップやウィリーが適切に抑制されたのに、同じ車両で低海抜域を走行するとスリップやウィリーがなかなか抑制されない、といった事態を解消できる。

0079

エンジン出力抑制装置は、車両状態を検出する車両状態センサを備える。制御器10は、出力抑制条件が成立していると判定すると、車両状態センサによって検出される車両状態に応じて抑制値Yを設定し、車両状態に応じて設定された抑制値Yを、環境パラメータに応じて補正してもよい。これにより、使用環境に起因する出力抑制量のバラツキを抑制できる。

0080

エンジン出力抑制装置は、運転操作を検出する運転操作センサを備える。制御器10は、少なくとも出力抑制条件が非成立であるときに、ベース規則35に従って運転操作センサによって検出される運転操作に応じて出力変更要素6〜8に対する基本値Bを設定し、環境センサ20によって検出される環境パラメータに応じて基本値Bを補正する。制御器10は、出力抑制条件が成立していると判定すると、ベース規則35とは異なる出力抑制規則36に従って抑制値Yを設定し、環境センサ20によって検出される環境パラメータに応じて抑制値Yを補正する。出力抑制を要さない状態において運転操作に応じて決まるエンジン出力、出力抑制を要する状態において決まる出力抑制量、これら2つが使用環境に起因してバラツキが生じるのを防止できる。この防止のための補正を、2つの状態について個別に行うことができる。

0081

出力抑制規則36で定義される運転操作の変化に対する抑制値Yの敏感度は、ベース規則35で定義される運転操作の変化に対する基本値Bの敏感度と比べて、小さい。本実施形態では、抑制値Yの敏感度はゼロであり、抑制値Yは運転操作に関わらず求められている。運転操作に変動があっても、抑制値Yはその影響を受けずに設定されるので、運転操作によらずに強制的な出力抑制を実現しやすい。その抑制値Yが使用環境に応じて補正されるので、運転操作によらずとも、使用環境に起因した出力抑制量のバラツキを抑制できる。

0082

制御器10は、出力抑制条件が成立していると判定すると、混合気の燃焼を伴ってエンジン出力を抑制する第1抑制制御と、混合気の燃焼を止めてエンジン出力を抑制する第2抑制制御との両方を実施することによって、エンジン出力を抑制する。第2抑制制御の採用により、速やかな出力抑制が図られる。第1抑制制御の併用により、運転者に与えるショックを緩和した出力抑制も実現できる。第1抑制制御においても第2抑制制御においても使用環境を考慮に入れて抑制値Yが補正されるので、出力抑制が継続して行われる場合でも、出力抑制の過不足発生を防ぐことができる。

0083

制御器10は、出力抑制条件が成立していると判定すると、出力抑制規則36に従って車両状態に応じて抑制値Yを設定し、環境パラメータに基づく出力過剰度が高いほど前記エンジン出力が大きく抑制されるように抑制値Yを補正する。出力過剰度が高いほどエンジン出力を大きく抑制するので、使用環境に起因する出力過剰の状態を早期脱出できる。

0084

上記実施形態は、一例に過ぎず、本発明の範囲内で変更、追加または削除可能である。

0085

例えば、制御器10は、大気圧以外の環境パラメータに応じてエンジン出力を制御してもよい。環境パラメータの他例は前述のとおりである。なお、燃料の性状(オクタン価やアルコール含有率)については、排気管内酸素濃度を検出するセンサからの情報に基づいて検知可能である。2以上の環境パラメータに基づいて、エンジン出力を抑制してもよい。

0086

環境パラメータによる補正の全体的傾向は、環境パラメータに基づく出力過剰度が高いほどエンジン出力を大きく抑制するというものであるが、エンジン4およびその吸気系の構成によって、補正の程度や、補正のために参照する環境パラメータの種類を適宜選択可能である。例えば、自然吸気エンジンの場合は、大気圧や標高に応じた補正の度合いを高め、過給機付きエンジンの場合は、周辺気温やエンジン温度に応じた補正の度合いを高めてもよい。スロットル弁6は電子制御可能でなくてもよく、その場合、制御器10によって動作を制御される出力変更要素は、インジェクタ7および点火器8となり、第1抑制制御が、燃料量低減制御と点火時期遅角制御とを含む。

0087

上記実施形態では、出力抑制条件として、ウィリー条件とスリップ条件とを例示したが、制御器10で判定される条件は、ウィリー条件およびスリップ条件のいずれか一方のみでもよい。逆に、制御器10は、ウィリー条件およびスリップ条件以外の条件を判定してもよい。

0088

出力抑制条件の他例として、ラウンチ条件、速度制限条件エンジン回転数制限条件を挙げられる。ラウンチ条件は、運転者がロケットスタートを所望しているという条件である。ラウンチ条件が成立すると、制御器10が、アクセル全開操作がなされていても、クラッチの状態および車速に応じて、好発進に適したエンジン出力(回転数およびトルク)を自動調整するラウンチ制御を実施する。速度制限条件は、車速が規定速度(例えば、300km/h)に達すると、アクセル全開操作がなされていても、当該規定速度を超えないようにエンジン出力を自動調整する速度制限制御を実行する。回転数制限条件は、エンジン回転数が規定回転数(例えば、14,000rpm)に達すると、アクセル全開操作がなされていても、当該規定回転数を超えないようにエンジン出力を自動調整するオーバーレブ制限制御を実行する。

0089

環境パラメータに応じた補正は、係数の乗算によって行うものに限定されず、その他の演算手法を行ってもよい。例えば、式(1a)、(1b)、(2a)、(2b)および(3)は、以下のように変更可能である。

0090

S=B−(Y+K)……(1a´)
S=B+Y+K……(1b´)
S=B×(Y+K)……(2a´)
S=B×(1−Y+K)……(2b´)
S=Y+K……(3´)
ここで、Kは環境パラメータに応じて決まる環境補正項である。

0091

エンジン出力抑制装置が対象とするエンジンは、ディーゼルエンジンでもよい。本発明に係るエンジン出力抑制装置は、高出力エンジンに対して好適に用いることができる。また、エンジン出力抑制装置は、出力重量比[W/g]が大きい車両(例えば、自動二輪車)に好適に用いることができるが、自動二輪車に限定されず、その他の車両にも適用可能である。

0092

1 車両
4エンジン
6スロットル弁
7インジェクタ
8点火器
10制御器
11〜18運転状態センサ
20環境センサ
21 大気圧センサ

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