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課題
解決手段
概要
背景
従来、けい酸質肥料は、ケイカル(ケイ酸カルシウム)とケイ酸カリ(ケイ酸カリウム)肥料があり稲作等に用いられてきた。これらの肥料のうち、ケイカルは、おもにSiO2、CaO、およびAl2O3を含み、土壌へのけい酸の補給、酸性土壌の矯正等の効果がある。
しかし、ケイカルからのけい酸溶出量は、塩酸水溶液中では30%を越えるものの、土壌のpHである5〜7程度では5%程度と少ないため、水田1000m2当たり約200kgものケイカルを施肥する場合があり、手間やコストの点から農家にとって負担が大きい。また、ケイカルは肥料の三要素である窒素、燐、および加里のいずれも含まないため、通常、肥料の三要素を含む他の肥料に、多量のケイカルを混合する必要がある。例えば、中性域においても比較的けい酸溶出量が多い熔成りん肥に、ケイカルを混合する場合でも、ケイカルの混合量は、熔成りん肥40kgに対し200kgと多量になる。
なお、前記けい酸溶出量は、可溶性けい酸(0.5モルの塩酸水溶液中に溶出するけい酸の量)とは異なる量である。
そこで、ケイカルの欠点であるけい酸の低い水溶性を改善したけい酸質肥料が、いくつか提案されている。
例えば、特許文献1に記載のけい酸質肥料は、特定の粒度を有するけい酸質組成物の粉末に、特定の水への溶解速度を有する有機質結合材(蔗糖や廃糖蜜)を添加し造粒してなるけい酸質肥料である。そして、イオン交換法を用いて測定した1ヶ月以内の該肥料のけい酸溶出量は16質量%以上である。
また、特許文献2に記載のけい酸質肥料は、前記有機質結合材が、糊化処理されたデンプンからなる肥料である。
そして、前記いずれのけい酸質肥料も、MgOを1〜20質量%、SiO2を30〜50質量%のほか、CaOおよびP2O5等を含有する非晶質物質である。
さらに、特許文献3に記載のけい酸質肥料は、主成分がSiO2、MgO、CaO、およびP2O5からなり、SiO2を12質量%以上30質量%未満含有し、イオン交換法を用いて測定した10日以内のけい酸溶出量は10質量%以上である。しかし、該けい酸質肥料の製造では、天然のリン鉱石である蛇紋岩を使わなければならず、またバッチ方式による熔融スラグ化であるから、製造コスト、エネルギー消費および生産性の点で経済的ではない。
また、特許文献4に記載のけい酸質肥料は、CaO、SiO2、MgO、およびAl2O3を特定量含み、CaO/SiO2の比率が特定の範囲にある肥料用スラグを原料に用いてなる肥料であるが、特許文献4には該スラグを用いてけい酸質肥料を製造する方法の具体的な記載はなく、スラグがけい酸質肥料であるのか、けい酸質肥料の原料であるのか不明である。
ところで、前記熔成りん肥等のりん酸質肥料は、天然資源であるリン鉱石を原料の一部に用いて製造される。しかし、我が国では、リンは天然資源として産出されないため、そのほぼ全てを輸入に頼らざるを得ないが、近年、天然のリンは世界的に枯渇しつつあり、リンの価格が高騰してリンの確保が難しくなっている。そこで、肥料の製造分野では、天然のリン資源に代わるものとして、リンの含有率がリン鉱石とほぼ同じ20〜30質量%である下水汚泥焼却灰が考えられている。また、我が国において、下水汚泥およびその焼却灰は、それぞれ、年間220万トンおよび30万トンと大量に発生するため、下水汚泥等の処理は社会的要請でもあった。そして、下水汚泥焼却灰はりん酸とけい酸を共に含んでいるため、けい酸質肥料の原料としても好適である。
しかし、けい酸質肥料のりん酸源として下水汚泥焼却灰を用いると、下水汚泥焼却灰中に多く含まれるAl2O3が、肥料の製造(焼成または溶融)過程でSiO2と反応してゲーレナイト(2CaO・Al2O3・SiO2)が生成し、ゲーレナイト中のけい酸は難溶性であるため、肥料中の水溶性けい酸の含有率が減少するという問題がある。
また、下水汚泥焼却灰以外のりん酸源として、下水、し尿、および畜舎廃水等のリンを含む排水から、HAP(ヒドロキシアパタイト)法やMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)法等を用いてリンを回収した後のハイドロキシアパタイトやリン酸マグネシウムアンモニウムの有効活用も望まれている。
概要
本発明は、く溶性りん酸を含み、水溶性けい酸の含有率が高い、けい酸質肥料等を提供する。本発明のけい酸質肥料は、下記(A)式を満たすCaO、SiO2,およびAl2O3を含有する肥料である。 0.5≦CaO/(SiO2−Al2O3)≦2.5 ・・・(1) ただし、(A)式中の化学式は、けい酸質肥料中の当該化学物質のモル数を表す。 また、本発明のけい酸質肥料の製造方法は、前記けい酸質肥料を製造する方法であって、けい酸源、りん酸源、およびカルシウム源を少なくとも含む混合原料を、1200〜1400℃で焼成して製造する方法である。なし
目的
本発明は、水溶性けい酸の含有率が高いけい酸質肥料と、その製造方法を提供する
効果
実績
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この技術が所属する分野
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技術分野
背景技術
0002
従来、けい酸質肥料は、ケイカル(ケイ酸カルシウム)とケイ酸カリ(ケイ酸カリウム)肥料があり稲作等に用いられてきた。これらの肥料のうち、ケイカルは、おもにSiO2、CaO、およびAl2O3を含み、土壌へのけい酸の補給、酸性土壌の矯正等の効果がある。
しかし、ケイカルからのけい酸溶出量は、塩酸水溶液中では30%を越えるものの、土壌のpHである5〜7程度では5%程度と少ないため、水田1000m2当たり約200kgものケイカルを施肥する場合があり、手間やコストの点から農家にとって負担が大きい。また、ケイカルは肥料の三要素である窒素、燐、および加里のいずれも含まないため、通常、肥料の三要素を含む他の肥料に、多量のケイカルを混合する必要がある。例えば、中性域においても比較的けい酸溶出量が多い熔成りん肥に、ケイカルを混合する場合でも、ケイカルの混合量は、熔成りん肥40kgに対し200kgと多量になる。
なお、前記けい酸溶出量は、可溶性けい酸(0.5モルの塩酸水溶液中に溶出するけい酸の量)とは異なる量である。
0003
そこで、ケイカルの欠点であるけい酸の低い水溶性を改善したけい酸質肥料が、いくつか提案されている。
例えば、特許文献1に記載のけい酸質肥料は、特定の粒度を有するけい酸質組成物の粉末に、特定の水への溶解速度を有する有機質結合材(蔗糖や廃糖蜜)を添加し造粒してなるけい酸質肥料である。そして、イオン交換法を用いて測定した1ヶ月以内の該肥料のけい酸溶出量は16質量%以上である。
また、特許文献2に記載のけい酸質肥料は、前記有機質結合材が、糊化処理されたデンプンからなる肥料である。
そして、前記いずれのけい酸質肥料も、MgOを1〜20質量%、SiO2を30〜50質量%のほか、CaOおよびP2O5等を含有する非晶質物質である。
さらに、特許文献3に記載のけい酸質肥料は、主成分がSiO2、MgO、CaO、およびP2O5からなり、SiO2を12質量%以上30質量%未満含有し、イオン交換法を用いて測定した10日以内のけい酸溶出量は10質量%以上である。しかし、該けい酸質肥料の製造では、天然のリン鉱石である蛇紋岩を使わなければならず、またバッチ方式による熔融スラグ化であるから、製造コスト、エネルギー消費および生産性の点で経済的ではない。
また、特許文献4に記載のけい酸質肥料は、CaO、SiO2、MgO、およびAl2O3を特定量含み、CaO/SiO2の比率が特定の範囲にある肥料用スラグを原料に用いてなる肥料であるが、特許文献4には該スラグを用いてけい酸質肥料を製造する方法の具体的な記載はなく、スラグがけい酸質肥料であるのか、けい酸質肥料の原料であるのか不明である。
0004
ところで、前記熔成りん肥等のりん酸質肥料は、天然資源であるリン鉱石を原料の一部に用いて製造される。しかし、我が国では、リンは天然資源として産出されないため、そのほぼ全てを輸入に頼らざるを得ないが、近年、天然のリンは世界的に枯渇しつつあり、リンの価格が高騰してリンの確保が難しくなっている。そこで、肥料の製造分野では、天然のリン資源に代わるものとして、リンの含有率がリン鉱石とほぼ同じ20〜30質量%である下水汚泥焼却灰が考えられている。また、我が国において、下水汚泥およびその焼却灰は、それぞれ、年間220万トンおよび30万トンと大量に発生するため、下水汚泥等の処理は社会的要請でもあった。そして、下水汚泥焼却灰はりん酸とけい酸を共に含んでいるため、けい酸質肥料の原料としても好適である。
しかし、けい酸質肥料のりん酸源として下水汚泥焼却灰を用いると、下水汚泥焼却灰中に多く含まれるAl2O3が、肥料の製造(焼成または溶融)過程でSiO2と反応してゲーレナイト(2CaO・Al2O3・SiO2)が生成し、ゲーレナイト中のけい酸は難溶性であるため、肥料中の水溶性けい酸の含有率が減少するという問題がある。
また、下水汚泥焼却灰以外のりん酸源として、下水、し尿、および畜舎廃水等のリンを含む排水から、HAP(ヒドロキシアパタイト)法やMAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)法等を用いてリンを回収した後のハイドロキシアパタイトやリン酸マグネシウムアンモニウムの有効活用も望まれている。
先行技術
0005
特開2002−068871号公報
特開2002−068870号公報
特開2002−047081号公報
特開2007−284289号公報
発明が解決しようとする課題
0006
そこで、本発明は、水溶性けい酸の含有率が高いけい酸質肥料と、その製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0007
本発明者らは、前記目的を達成できるけい酸質肥料等を検討したところ、下記のけい酸質肥料は、水溶性けい酸の含有率が高いことを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記の構成を有するけい酸質肥料等である。
0008
[1]下記(A)式を満たすCaO、SiO2、およびAl2O3を含有する、けい酸質肥料。
0.5≦CaO/(SiO2−Al2O3)≦2.5 ・・・(A)
ただし、(A)式中の化学式は、けい酸質肥料中の当該化学物質のモル数を表す。
[2]水溶性けい酸の含有率が15%以上の、前記[1]に記載のけい酸質肥料。
[3]前記[1]または[2]に記載のけい酸質肥料を製造する方法であって、
けい酸源、りん酸源、およびカルシウム源を少なくとも含む混合原料を、1200〜1400℃で焼成して製造する、けい酸質肥料の製造方法。
[4]前記けい酸源が、リンを回収した後の非晶質ケイ酸カルシウム水和物、およびリンを回収した後の非晶質ケイ酸カルシウム水和物と水酸化カルシウムの複合物から選ばれる1種以上である、前記[3]に記載のけい酸質肥料の製造方法。
[5]前記焼成に用いる装置がロータリーキルンである、前記[3]または[4]に記載のけい酸質肥料の製造方法。
発明の効果
0009
本発明のけい酸質肥料は、水溶性けい酸の含有率が高い。
また、本発明のけい酸質肥料の製造方法は、下記(i)〜(iii)の効果を有する。
(i)りん酸を含有する排水からリンを回収した後の非晶質ケイ酸カルシウム水和物、およびリンを回収した後の非晶質ケイ酸カルシウム水和物と水酸化カルシウムの複合物を、けい酸質肥料のけい酸源として有効利用できる。
(ii)溶融肥料の製造と比べて製造時のエネルギー消費が少ない。
(iii)焼成装置としてロータリーキルンを用いると、けい酸質肥料の連続生産が可能となり製造効率が向上する。
0010
以下、本発明について、けい酸質肥料とその製造方法に分けて詳細に説明する。
1.けい酸質肥料
本発明のけい酸質肥料は、前記(A)式を満たすCaO、SiO2,およびAl2O3を含有するけい酸質肥料である。そして、本発明のけい酸質肥料の水溶性けい酸の含有率は、好ましくは15%以上である。後掲の表1および2に示すように、前記(A)式を満たすけい酸質肥料は、水−弱酸性陽イオン交換樹脂法を用いて測定した水溶性けい酸の含有率が16.5%以上と高い。なお、前記(A)式のモル比は、好ましくは1.0以上で2.2以下である。
ここで前記水−弱酸性陽イオン交換樹脂法は、中性(pH=7)付近で肥料中のけい酸分成分の溶解性を評価する方法であって、以下の文献Aおよび文献Bに記載されている方法に準拠して測定できる。
文献A:加藤直人著「農林水産省・農業環境技術研究所報告」16巻,9−75頁(1998)
文献B:加藤、尾和共著 Soil Sci.Plant Nutr.,43巻,2号,351−359頁(1997)
0011
また、水溶性けい酸の測定において、イオン交換樹脂を用いるのは、けい酸質肥料から溶出するアルカリ土類金属等のアルカリ性物質が溶液に溶けて生ずるpHの上昇を、イオン交換樹脂のイオン交換能を利用して防止するためである。水田の土壌はほぼ中性でありpH緩衝能が高いため、水−弱酸性陽イオン交換樹脂法を用いると、実際の水田により近い環境下でけい酸の水溶性を評価できる。なお、原料およびけい酸質肥料中の酸化物の定量は、蛍光エックス線装置を用いてファンダメンタルパラメーター法により行うことができる。
0012
2.けい酸質肥料の製造方法
本発明のけい酸質肥料の製造方法は、けい酸源、りん酸源、およびカルシウム源を少なくとも含む混合原料を、1200〜1400℃で焼成して製造する方法であり、けい酸源、りん酸源、およびカルシウム源等を混合して混合原料を得る混合工程と、該混合原料を焼成して、焼成物であるけい酸質肥料を得る焼成工程とを、必須の工程として含む。
以下、本発明のけい酸質肥料の製造方法を、混合工程と焼成工程に分けて説明する。
0013
(1)混合工程
前記けい酸源は、特に制限されないが、例えば、リンを回収した後の非晶質ケイ酸カルシウム水和物、リンを回収した後の非晶質ケイ酸カルシウム水和物と水酸化カルシウムの複合物、珪砂、珪石、石炭灰、鋳物砂、頁岩、白土、ゼオライト、珪藻土、粘土、火山灰、高炉スラグ、鉄鋼スラグ、廃コンクリート、および生コンスラッジ等から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、リンを回収した後のリン回収材の有効活用の観点から、好ましくは、前記非晶質ケイ酸カルシウム水和物、および前記非晶質ケイ酸カルシウム水和物と水酸化カルシウムの複合物である。また、化学組成比の調整が容易であることから、SiO2の含有率が50質量%以上のけい酸源が好ましい。なお、前記けい酸源の内、鉄鋼スラグ、廃コンクリート、および生コンスラッジ等は、カルシウム源としても機能する。
0014
また、前記りん酸源は、特に制限されないが、HAP法を用いてリンを回収した後のハイドロキシアパタイト、MAP法を用いてリンを回収した後のリン酸マグネシウムアンモニウム、および熔成りん肥から選ばれる1種以上が挙げられる。
前記リンを回収した後のハイドロキシアパタイト等のリン回収材は、下水道の終末処理場における下水処理、屎尿処理場における屎尿処理、およびこれらの処理場における排水処理の過程において、リン含有排水にマグネシウムやカルシウムなど第2族元素化合物を添加して、排水中のリン酸の沈殿やろ過等により分離して得られる無機泥状物である。
0015
従来、リンを含有する排水からリンを回収する方法として、排水中のリンをハイドロキシアパタイト(HAP)やストラバイト(MAP)として晶析して回収する方法が知られている。これらのうち、HAP法は、排水中のリン酸イオン、カルシウムイオン、および水酸化物イオンの反応によって生成するハイドロキシアパタイトの晶析現象を利用した方法であり、具体的には、リンを含む排水にカルシウムイオンと水酸化物イオンを添加し、過飽和状態(準安定域)で種晶と接触させて、種晶表面にハイドロキシアパタイトを晶析させ、析出させたハイドロキシアパタイトを固液分離して、排水中のリンを除去して回収する方法である。そして、HAP法により下水処理からリンを回収するプロセスは、メインストリーム型とサイドストリーム型に大きく分けられる。ここで、メインストリーム型は、活性汚泥処理の後段においてリンを回収するプロセスであり、また、サイドストリーム型は、生物学的脱リン法におけるリン蓄積微生物のリン過剰摂取・放出現象を利用して、汚泥からリンを放出させ、放出したリンを回収するプロセスである。
これに対し、MAP法は、排液中のリン酸イオン、アンモニウムイオン、およびマグネシウムイオンの反応によって生成するリン酸マグネシウムアンモニウムの晶析現象を利用した方法である。嫌気消化槽の脱水ろ液に、弱アルカリ条件下でマグネシウムイオンを添加するとMAPが析出する。
HAP法、MAP法ともに、回収率80%以上でリンを回収することができる。回収したHAPおよびMAPのく溶性りん酸は、固型物あたりP2O5換算で25質量%以上である。
0016
前記HAP法およびMAP法のほか、近年では様々なリン回収材およびリン回収方法が開発されている。そのなかに、リンの吸着能力が高く、沈降性および脱水性に優れるリン回収材として、非晶質ケイ酸カルシウム水和物がある。非晶質ケイ酸カルシウム水和物を用いたリン回収では、排水中のりん酸はHAP法と同様にハイドロキシアパタイトとして固定される。ここで、前記非晶質ケイ酸カルシウム水和物、および非晶質ケイ酸カルシウム水和物と水酸化カルシウムの複合物は、例えば、珪酸ナトリウム水溶液と消石灰または生石灰等の石灰を、非加熱下で混合して製造することができる。
0017
HAP法で得られるハイドロキシアパタイトは、リン酸カルシウムの水和物であるから、本願発明においてりん酸源としてだけでなく、カルシウム源としても機能する。また、MAP法で得られるストラバイトは、リン酸マグネシウムアンモニウムの水和物であるから、本願発明においてりん酸源および苦土源として機能する。さらに、非晶質ケイ酸カルシウム水和物を用いたリン回収物は、本願発明においてりん酸源としてだけでなく、けい酸源としても機能する。
また、熔成りん肥は、りん鉱石に苦土含有物を混合して1350〜1500℃で熔融し、これに高圧の冷水を接触させて急冷して水砕した肥料であり、市販品が使用できる。
0018
さらに、前記カルシウム源は、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、石灰石、生石灰、消石灰、セメント、鉄鋼スラグ、石膏、および畜産糞焼却灰等から選ばれる1種以上が挙げられる。
0019
前記混合工程は、混合原料中のCaO、SiO2,およびAl2O3が前記(A)式を満たすように、けい酸源、りん酸源、およびカルシウム源等の原料を混合する。また、混合し易い粒度にするために、前記原料は、必要に応じてボールミル、ローラーミル、またはロッドミル等で粉砕してもよい。
原料の混合方法として、例えば、各原料の一部を電気炉等で焼成した後、該焼成灰中の酸化物を定量し、該定量値と所定の配合に基づき、各原料を混合する方法が挙げられる。該酸化物の定量は、蛍光エックス線装置を用いてファンダメンタルパラメーター法により行うことができる。焼成前の混合原料の化学組成は、焼成後の焼成物の化学組成と、焼成による揮発成分を除きほぼ同一であるから、前記(A)式を満たすけい酸質肥料(焼成物)を得るためには、通常、前記(A)式を満たす混合原料を用いて焼成すれば十分である。ただし、正確を期すために、該混合原料の一部を電気炉等で焼成して、該混合原料中のCaO、SiO2、およびAl2O3の含有率と、該焼成物中のCaO、SiO2、およびAl2O3の含有率との相関を事前に把握しておき、該相関に基づき、原料の混合割合を、目的とする焼成物中のCaO、SiO2、およびAl2O3の含有率になるように修正することが好ましい。
0020
(2)焼成工程
該焼成工程は前記混合原料を、1200〜1400℃で焼成して、焼成物であるけい酸質肥料を得る工程である。前記混合原料は、粉末のままで焼成するか、該粉末に水を添加してスラリーにした状態で焼成するか、または脱水ケーキの状態で焼成するか、若しくは、より焼成効率を上げるために、該粉末、または該粉末のセメント混練物等を、パンペレタイザー等の造粒機や、ブリケットマシン、ロールプレス等の成形機で、それぞれ造粒や成形してから焼成する。
また、焼成温度が1200℃未満では、焼成が不十分でけい酸の水溶性が低く、1400℃を超えると、焼成物が溶融して溶融物になるおそれがある。なお、焼成温度は、好ましくは1250〜1370℃である。また、前記焼成に用いる装置は、けい酸質肥料の連続生産が可能であることから、好ましくはロータリーキルンが挙げられる。また、焼成時間は好ましくは10〜60分である。焼成時間が10分未満では焼成が不十分であり、60分を超えると生産効率が低下する。なお、焼成時間は、より好ましくは20〜40分である。
0021
(3)粉砕および造粒工程
該工程は、前記焼成物の粒度を調整する工程であり、粉塵の発生を抑制して、肥料の取り扱いを容易にするためや、肥料効果を十分に発揮させるため、肥料の粒度の調整が必要な場合に選択される任意の工程である。該粒度は好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmである。
粉砕手段は、ジョークラッシャー、ローラーミル、ボールミル、またはロッドミル等を用いることができ、造粒手段は、パン型ミキサー、パンペレタイザー、ブリケットマシン、ロールプレス、押出成型機等を用いることができる。
また、該工程において、肥料の用途に応じて、適宜、けい酸やりん酸の成分を追加したり、窒素、加里、苦土等のその他の肥料成分を、新たに添加することができる。
0022
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.けい酸質肥料の製造
リンを回収した後の非晶質ケイ酸カルシウム水和物(リン回収材、P2O5の含有率は22.9質量%)、下水汚泥焼却灰、熔成りん肥(商品名:BMようりん、朝日工業社製)、珪砂粉末、ケイ酸カルシウム粉末(肥料用のケイカル、くみあい珪酸苦土石灰:樫村石灰工業社製)、および炭酸カルシウム粉末を用いて、表1に示す実施例1〜7、および比較例1〜8の配合に従い混合して混合原料を調製した。
次に、該混合原料を用いて、一軸加圧成形機により成形し、直径40mm、高さ10mmの円柱状の原料を作製した。さらに、該円柱状の原料を、電気炉内に載置した後、昇温速度20℃/分で、表1に示す温度まで昇温し、該温度の下で10分間焼成して焼成物を得た。さらに、該焼成物を、鉄製乳鉢を用いて目開き600μmのふるいを全通するまで粉砕して、表1に示す化学組成を有する粉末状のけい酸質肥料(実施例1〜7、および比較例1〜8)を製造した。なお、焼成後のけい酸質肥料の化学組成は、焼成前の混合原料の化学組成と、焼成による揮発成分を除きほぼ同一であった。
0023
0024
2.水溶性けい酸
水溶性けい酸の測定は、水−弱酸性陽イオン交換樹脂法を用いて以下の手順で行い、水溶性けい酸を測定した。
具体的には、あらかじめ水酸化ナトリウム水溶液と希塩酸を用いて逆再生処理したイオン交換樹脂(商品名:アンバーライトIRC−50[登録商標]、オルガノ社製)2gと純水1リットルを入れた樹脂製のビーカー内に、前記実施例および比較例のけい酸質肥料0.2gをそれぞれ加え、マグネチックスターラーで静かに10分間撹拌した後、10日間静置した。この10日間が経過した後、再度マグネチックスターラーで静かに10分間撹拌した後、30分間静置して上澄み液2mlをメスフラスコに分取し、塩酸(1+1)1mlを添加した後、20mlに希釈した。次に、ICP発光分析法を用いて該水溶液中のSiの濃度を定量し、SiO2の濃度に換算して水溶性けい酸を測定した。この結果を表2に示す。
0025
0026
表2に示すように、実施例1〜7の焼成物(けい酸質肥料)の水溶性けい酸は16.51〜21.2%と高かった。これに対し、比較例1〜8のけい酸質肥料の水溶性けい酸は3.8〜13.0%と低かった。なお、表2に示していないが、本発明のけい酸質肥料はりん酸成分も含むため、りん酸の施肥効果も有する。
実施例
0027
以上の結果から、本発明のけい酸質肥料は、水溶性けい酸を多く含むことが分かる。また、本発明のけい酸質肥料の製造方法は、熔融肥料の製造と比べて、焼成におけるエネルギー消費が少なく、ロータリーキルンを用いた場合、連続生産が可能で生産効率が高い。