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技術 原子発振器

出願人 公立大学法人首都大学東京
発明者 五箇繁善
出願日 2016年9月9日 (4年2ヶ月経過) 出願番号 2016-176485
公開日 2018年3月15日 (2年8ヶ月経過) 公開番号 2018-042181
状態 特許登録済
技術分野 発信器の安定化、同期、周波数シンセサイザ メーザ
主要キーワード アルカリガス アナログ入出力回路 圧力係数 周波数変動量 移動平均法 実証実験 低周波発振器 逓倍率
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (7)

課題

長期に渡って高い周波数安定度を維持するガスセル型の原子発振器を提供する。

解決手段

本発明によれば、第1の電圧制御発振器発振する基準周波数信号を第1の逓倍率逓倍して第1の高周波信号を合成する第1の周波数シンセサイザと、前記第1の高周波信号によって変調された第1のレーザー光出射する第1の半導体レーザーと、第2の電圧制御発振器が発振する出力信号を第2の逓倍率で逓倍して第2の高周波信号を合成する第2の周波数シンセサイザと、前記第2の高周波信号によって変調された第2のレーザー光を出射する第2の半導体レーザーと、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光が同時に入射するガスセルであって、第1のアルカリ金属原子ガスと第2のアルカリ金属原子のガスとバッファガス封入するガスセルと、前記第1の逓倍率を前記第1の周波数シンセサイザに設定するコンピュータとを含む原子発振器が提供される。

概要

背景

CPT共鳴を利用した原子発振器は、量子部を光学素子だけで構成することができるため、小型化・省電力化が容易であることから、幅広い用途への適用が期待されている(例えば、特許文献1)。

しかしながら、アルカリガスバッファガス封入したガスセルを用いる原子発振器では、バッファガスのリークなどが原因でバッファガス圧が長期的に変動することによって共鳴周波数シフトするため(バッファガスシフト)、長期的な周波数安定度限界があった。

概要

長期に渡って高い周波数安定度を維持するガスセル型の原子発振器を提供する。本発明によれば、第1の電圧制御発振器発振する基準周波数信号を第1の逓倍率逓倍して第1の高周波信号を合成する第1の周波数シンセサイザと、前記第1の高周波信号によって変調された第1のレーザー光出射する第1の半導体レーザーと、第2の電圧制御発振器が発振する出力信号を第2の逓倍率で逓倍して第2の高周波信号を合成する第2の周波数シンセサイザと、前記第2の高周波信号によって変調された第2のレーザー光を出射する第2の半導体レーザーと、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光が同時に入射するガスセルであって、第1のアルカリ金属原子ガスと第2のアルカリ金属原子のガスとバッファガスを封入するガスセルと、前記第1の逓倍率を前記第1の周波数シンセサイザに設定するコンピュータとを含む原子発振器が提供される。

目的

本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、長期に渡って高い周波数安定度を維持するガスセル型の原子発振器を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

CPT共鳴を利用したガスセル型の原子発振器であって、第1の電圧制御発振器発振する基準周波数信号を第1の逓倍率逓倍して第1の高周波信号を合成する第1の周波数シンセサイザと、前記第1の高周波信号によって変調された第1のレーザー光出射する第1の半導体レーザーと、第2の電圧制御発振器が発振する出力信号を第2の逓倍率で逓倍して第2の高周波信号を合成する第2の周波数シンセサイザと、前記第2の高周波信号によって変調された第2のレーザー光を出射する第2の半導体レーザーと、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光が同時に入射するガスセルであって、第1のアルカリ金属原子ガスと第2のアルカリ金属原子のガスとバッファガス封入するガスセルと、前記第1の逓倍率を前記第1の周波数シンセサイザに設定するコンピュータと、を含み、前記コンピュータは、前記第1の高周波信号と前記第2の高周波信号の周波数比を算出する周波数比算出手段と、算出した前記周波数比に基づいて前記バッファガスのガス圧推定するバッファガス圧推定手段と、推定した前記ガス圧に基づいて前記第1のアルカリ金属原子の共鳴周波数を推定する共鳴周波数推定手段と、推定した前記第1のアルカリ金属原子の共鳴周波数に基づいて前記第1の逓倍率を算出する逓倍率算出手段と、を含む、原子発振器。

請求項2

前記バッファガス圧推定手段は、下記式に基づいて前記ガス圧を推定する、請求項1に記載の原子発振器。(上記式において、Pは前記ガス圧を示し、rは前記周波数比を示し、ν1は前記第1のアルカリ金属原子の公称周波数を示し、ν2は前記第2のアルカリ金属原子の公称周波数を示し、α1は前記第1のアルカリ金属原子の圧力係数を示し、α2は前記第2のアルカリ金属原子の圧力係数を示す。)

請求項3

前記逓倍率算出手段は、推定した前記第1のアルカリ金属原子の共鳴周波数の1/2の値を前記基準周波数信号の目標周波数で除した値を前記第1の逓倍率として算出する、請求項1または2に記載の原子発振器。

技術分野

0001

本発明は、原子発振器に関し、より詳細には、CPT共鳴を利用した原子発振器に関する。

背景技術

0002

CPT共鳴を利用した原子発振器は、量子部を光学素子だけで構成することができるため、小型化・省電力化が容易であることから、幅広い用途への適用が期待されている(例えば、特許文献1)。

0003

しかしながら、アルカリガスバッファガス封入したガスセルを用いる原子発振器では、バッファガスのリークなどが原因でバッファガス圧が長期的に変動することによって共鳴周波数シフトするため(バッファガスシフト)、長期的な周波数安定度限界があった。

先行技術

0004

特開2007−336136号公報

発明が解決しようとする課題

0005

本発明は、上記従来技術における課題に鑑みてなされたものであり、長期に渡って高い周波数安定度を維持するガスセル型の原子発振器を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

ガスセル型の原子発振器では、ガスセルに封入されるバッファガスのガス圧の変動によって原子の共鳴周波数がシフトすると、その共鳴周波数に同期して制御される原子発振器の発振周波数信頼性が失われる。

0007

この点につき、本発明者は、バッファガス圧の変動が共鳴周波数に与える影響が原子の種類によって異なる点に着目して、ガスセルに2種類の異なるアルカリ金属原子を封入するという着想を得た。この着想のもと、さらに検討を進める中で、本発明者は、ガスセルに封入したそれぞれの原子の共鳴周波数を測定することによって、変動するバッファガス圧を推定できることを見出し、本発明に至ったのである。

0008

すなわち、本発明によれば、CPT共鳴を利用したガスセル型の原子発振器であって、第1の電圧制御発振器発振する基準周波数信号を第1の逓倍率逓倍して第1の高周波信号を合成する第1の周波数シンセサイザと、前記第1の高周波信号によって変調された第1のレーザー光出射する第1の半導体レーザーと、第2の電圧制御発振器が発振する出力信号を第2の逓倍率で逓倍して第2の高周波信号を合成する第2の周波数シンセサイザと、前記第2の高周波信号によって変調された第2のレーザー光を出射する第2の半導体レーザーと、前記第1のレーザー光と前記第2のレーザー光が同時に入射するガスセルであって、第1のアルカリ金属原子のガスと第2のアルカリ金属原子のガスとバッファガスを封入するガスセルと、前記第1の逓倍率を前記第1の周波数シンセサイザに設定するコンピュータと、を含み、前記コンピュータは、前記第1の高周波信号と前記第2の高周波信号の周波数比を算出する周波数比算出手段と、算出した前記周波数比に基づいて前記バッファガスのガス圧を推定するバッファガス圧推定手段と、推定した前記ガス圧に基づいて前記第1のアルカリ金属原子の共鳴周波数を推定する共鳴周波数推定手段と、推定した前記第1のアルカリ金属原子の共鳴周波数に基づいて前記第1の逓倍率を算出する逓倍率算出手段とを含む原子発振器が提供される。

発明の効果

0009

上述したように、本発明によれば、長期に渡って高い周波数安定度を維持するガスセル型の原子発振器が提供される。

図面の簡単な説明

0010

本実施形態の原子発振器のハードウェア構成図。
本実施形態の原子発振器に搭載されるコンピュータの構成図。
本実施形態の原子発振器に搭載されるコンピュータが実行する処理のフローチャート
実験装置を示す図。
Csと87RbのCPT共鳴線を示す図。
Csと87RbのCPT共鳴周波数の経時変化周波数変動量の経時変化を示す図。

0011

以下、本発明を図面に示した実施の形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施の形態に限定されるものではない。なお、以下に参照する各図においては、共通する要素について同じ符号を用い、適宜、その説明を省略するものとする。

0012

本発明の実施形態である原子発振器は、ガスセルに封入されたアルカリ金属原子のCPT(Coherent Population Trapping)共鳴に伴って生じる透明化現象を利用して、極めて安定した周波数信号を生成するように構成された発振器である。

0013

図1は、本発明の実施形態である原子発振器100のハードウェア構成を示す。図1に示すように、本実施形態の原子発振器100は、量子部10と、2つの波長制御部20a,20bと、2つの周波数制御部30a,30bと、2つのバイアスT40a,40bと、原子発振器100を制御するコンピュータ50を含んで構成されている。以下、各構成要素について説明する。

0014

最初に、量子部10について説明する。

0015

量子部10は、2つの半導体レーザー12a,12bと、ガスセル14と、2つの光検出器18a,18bと、量子部10の温度を一定に維持するための温度制御手段(図示せず)を含んで構成されている。

0016

ここで、本実施形態では、ガスセル14に、2種類のアルカリ金属原子のガスとバッファガスが封入されている。ここでいう2種類のアルカリ金属原子とは、それぞれが異なる原子番号と異なるCPT共鳴周波数を有する原子を意味し、その種類を限定するものではないが、同位体の組み合わせ(例えば、85Rbと87Rbを72:28の割合で含むナチュラルRb)は2種類のアルカリ金属原子として考えない。以下では、便宜上、セシウム(Cs)とルビジウム(Rb)をガスセル14に封入した場合を例にとって説明を行う。

0017

一方、本実施形態では、バッファガスとして、He、Ne、Ar、N2といった不活性のガスの中から1種類以上のガスを選択して用いることができる。なお、温度依存周波数シフトを低減するために、温度に対する周波数シフト方向が異なる2種類のガスをガスセル14に封入しても良い。

0018

第1の半導体レーザー12a(以下、半導体レーザー[Cs]という場合がある)は、セシウム(Cs)用の励起光源であり、バイアスT40aから入力される駆動電流によって駆動され、セシウム(Cs)の吸収波長帯(894nm)のレーザー光を出射する。一方、第2の半導体レーザー12b(以下、半導体レーザー[Rb]という場合がある)は、ルビジウム(Rb)用の励起光源であり、バイアスT40bから入力される駆動電流によって駆動され、ルビジウム(Rb)の吸収波長帯(795nm)のレーザー光を出射する。なお、本実施形態では、半導体レーザー12a,12bとして、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)を用いることが好ましい。

0019

本実施形態では、2つの半導体レーザー12a,12bから出射した2つのレーザー光が、ビームスプリッタ13(分割比50:50)で重ね合された後、ガスセル14に同時に入射する。その後、ガスセル14を透過したレーザー光は、ビームスプリッタ15(分割比50:50)で2つの光に分割された後、一方の光がセシウム(Cs)の励起光(894nm)を選択的に透過するバンドパスフィルタ16aを経てセシウム用の光検出器18aに入射し、他方の光がルビジウム(Rb)の励起光(795nm)を選択的に透過するバンドパスフィルタ16bを経てルビジウム用の光検出器18bに入射する。その後、2つの光検出器18a,18bは、受光した透過光光電変換して光検出信号直流電圧)を出力する。

0020

ここで、本実施形態では、セシウム用の光検出器18a(以下、光検出器[Cs]という場合がある)から出力される光検出信号が波長制御部20aおよび周波数制御部30aに入力されるとともに、ルビジウム用の光検出器18b(以下、光検出器[Rb]という場合がある)から出力される光検出信号が波長制御部20bおよび周波数制御部30bに入力されるように構成されている。

0021

以上、量子部10について説明したので、続いて、波長制御部20a,20bについて説明する。

0022

まず、波長制御部20aについて説明する。波長制御部20aは、電流駆動回路22aと、低周波発振器24aと、同期検波回路26aと、制御回路28aを含んで構成されている。

0023

電流駆動回路22aは、半導体レーザー[Cs]を駆動するための駆動電流をバイアスT40aに入力する。ここで、電流駆動回路22aから出力される駆動電流は、低周波発振器24aの発振周波数で変調されるようになっている。一方、同期検波回路26aは、光検出器[Cs]から入力される光検出信号を低周波発振器24aが発振する低周波信号で同期検波し、電圧信号を制御回路28aに出力する。これを受けて、制御回路28aは、同期検波回路26aから入力される電圧がゼロになるように、電流駆動回路22aの出力電流を制御する。その結果、ガスセル14に封入されたセシウム(Cs)が励起準位を維持するように、半導体レーザー[Cs]のレーザー光の波長ロックされる。

0024

次に、波長制御部20bについて説明する。波長制御部20bは、電流駆動回路22bと、低周波発振器24bと、同期検波回路26bと、制御回路28bを含んで構成されており、上述した波長制御部20aと同様の機能を果たす。

0025

すなわち、電流駆動回路22bは、半導体レーザー[Rb]を駆動するために、低周波発振器24bの発振周波数で変調された駆動電流をバイアスT40bに入力する。一方、同期検波回路26bは、光検出器[Rb]から入力される光検出信号を低周波発振器24bが発振する低周波信号で同期検波し、電圧信号を制御回路28bに出力する。これを受けて、制御回路28bは、同期検波回路26bから入力される電圧がゼロになるように、電流駆動回路22bの出力電流を制御する。その結果、ガスセル14に封入されたルビジウム(Rb)が励起準位を維持するように、半導体レーザー[Rb]のレーザー光の波長がロックされる。

0026

以上、波長制御部20a,20bについて説明したので、続いて、周波数制御部30a,30bについて説明する。

0027

まず、周波数制御部30aについて説明する。周波数制御部30aは、電圧制御発振器32aと、周波数シンセサイザ33a(以下、周波数シンセサイザ[Cs]という場合がある)と、低周波発振器34aと、同期検波回路35aと、制御回路36aを含んで構成されている。

0028

電圧制御発振器32aは、制御回路36aから印加される制御電圧に応じて出力周波数可変制御される電圧制御型の発振器であり、本実施形態では、電圧制御発振器32aの発振信号が、原子発振器100の基準周波数信号(例えば、10MHz)として外部に出力されるとともに、周波数シンセサイザ33aに基準信号として入力されるようになっている。なお、本実施形態は、電圧制御発振器32aの源振となる振動子を限定するものではなく、電圧制御発振器32aは、水晶発振器であっても良いし、MEMS発振器シリコン発振器)であっても良い。

0029

一方、周波数シンセサイザ33aは、セシウム(Cs)のCPT共鳴に必要な±1次のサイドバンド光を生じさせるために、半導体レーザー[Cs]の駆動電流にFM変調を施すための高周波信号(RF信号)を合成するPLLシンセサイザであり、より具体的には、出力周波数を1Hz以下の分解能で制御することが可能なフラクショナル‐N PLLシンセサイザである。周波数シンセサイザ33aは、電圧制御発振器32aから入力される基準信号を設定された逓倍率で逓倍して、セシウム(Cs)の共鳴周波数の1/2に相当する周波数を持つRF信号を合成する。そして、周波数シンセサイザ33aは、合成したRF信号をバイアスT40aとコンピュータ50の双方に同時に出力する。

0030

ここで、周波数シンセサイザ33aの逓倍率を決定するフラクショナル‐NPLLのパラメータ(具体的には、分周比)のデフォルト値は、ガスセル14に封入されたセシウム(Cs)の共鳴周波数のデフォルト値をFCsとすると、1/2FCsを原子発振器100が出力する基準周波数信号の目標周波数で除してなる逓倍率が実現されるように設定される。例えば、FCsが9.192651718GHzであり、原子発振器100の目標周波数が10MHzである場合、周波数シンセサイザ33aが実現すべき逓倍率は、(1/2FCs)/10MHz=459.6325859であるので、この逓倍率(=459.6325859)を実現する値が周波数シンセサイザ33aのパラメータのデフォルト値として設定される。

0031

周波数シンセサイザ33aが合成するRF信号(以下、RF信号[Cs]という場合がある)は、低周波発振器34aの発振周波数で変調され、バイアスT40aに入力される。これにより、電流駆動回路22aから入力される駆動電流に対して、周波数シンセサイザ33aが合成するRF信号の周波数に基づくFM変調と低周波発振器24aの発振周波数に基づくAM変調が同時に施されることになる。

0032

一方、同期検波回路35aは、光検出器[Cs]から入力される光検出信号を低周波発振器34aが発振する低周波信号で同期検波し、電圧信号を制御回路36aに出力する。これを受けて、制御回路36aは、同期検波回路35aから入力される電圧がゼロになるように、電圧制御発振器32aに対して制御電圧を印加する。その結果、ガスセル14に封入されたセシウム(Cs)のCPT共鳴が維持されるように、周波数シンセサイザ33aから出力されるRF信号[Cs]の周波数がロックされる。

0033

次に、周波数制御部30bについて説明する。周波数制御部30bは、電圧制御発振器32bと、周波数シンセサイザ33b(以下、周波数シンセサイザ[Rb]という場合がある)と、低周波発振器34bと、同期検波回路35bと、制御回路36bを含んで構成されており、上述した周波数制御部30aと同様の機能を果たす。

0034

すなわち、電圧制御発振器32bが発振する基準信号が周波数シンセサイザ33b(フラクショナル‐NPLLシンセサイザ)に入力され、周波数シンセサイザ33bは、入力された基準信号に基づいて、ルビジウム(Rb)の共鳴周波数の1/2に相当する周波数を持つRF信号を合成する。そして、周波数シンセサイザ33bは、合成したRF信号をバイアスT40bとコンピュータ50の双方に同時に出力する。

0035

ここで、周波数シンセサイザ33bの逓倍率を決定するフラクショナル‐NPLLのパラメータのデフォルト値は、ガスセル14に封入されルビジウム(Rb)の共鳴周波数のデフォルト値をFRbとすると、1/2FRbを原子発振器100が出力する基準周波数信号の目標周波数で除してなる逓倍率が実現されるように設定される。例えば、FRbが6.834696360GHzであり、原子発振器100の目標周波数が10MHzである場合、周波数シンセサイザ33bが実現すべき逓倍率は、(1/2FRb)/10MHz=341.734818であるので、この逓倍率(=341.734818)を実現する値が周波数シンセサイザ33bのパラメータのデフォルト値として設定される。

0036

周波数シンセサイザ33bが合成するRF信号(以下、RF信号[Rb]という場合がある)は、低周波発振器24bの発振周波数で変調され、バイアスT40bに入力される。これにより、電流駆動回路22bから入力される駆動電流に対して、周波数シンセサイザ33bが合成するRF信号の周波数に基づくFM変調と低周波発振器24bの発振周波数に基づくAM変調が同時に施されることになる。

0037

一方、同期検波回路35bは、光検出器[Rb]から入力される光検出信号を低周波発振器34bが発振する低周波信号で同期検波し、電圧信号を制御回路36bに出力する。これを受けて、制御回路36bは、同期検波回路35bから入力される電圧がゼロになるように、電圧制御発振器32bに対して制御電圧を印加する。その結果、ガスセル14に封入されたルビジウム(Rb)のCPT共鳴が維持されるように、周波数シンセサイザ33bから出力されるRF信号[Rb]の周波数がロックされる。

0038

以上、周波数制御部30a,30bについて説明したので、続いて、コンピュータ50について説明する。

0039

原子発振器100に搭載されるコンピュータ50は、例えば、マイクロコンピューターであり、量子部10の温度制御手段(図示せず)を制御する役割の他、2つの周波数シンセサイザ33a、33bに対して、バッファガスの圧力変動適応した最適なパラメータを設定する役割を果たす。

0040

図2(a)は、コンピュータ50のハードウェア構成を示す。図2(a)に示すように、コンピュータ50は、プロセッサ501と、後述する所定のプログラムを保存するROM502と、プログラムの実行空間を提供するRAM503と、後述する周波数の時系列データなどを記憶する補助記憶手段504と、入力信号のA/D変換ならびに出力信号のD/A変換を実行するアナログ入出力回路505を備えている。

0041

図2(b)は、コンピュータ50の機能構成を示す。図2(b)に示すように、コンピュータ50は、周波数測定部52と、周波数比算出部53と、バッファガス圧推定部54と、共鳴周波数推定部55と、逓倍率算出部56と、逓倍率制御部58とを含んで構成される。なお、上述した各機能部は、コンピュータ50が所定のプログラムを実行することにより実現される。

0042

周波数測定部52は、コンピュータ50に入力されるRF信号[Cs]の周波数(以下、周波数[Cs]という場合がある)と、コンピュータ50に入力されるRF信号[Rb]の周波数(以下、周波数[Rb]という場合がある)を測定し、測定した周波数[Cs]および周波数[Rb]の時系列データを既知平滑化手法(例えば、移動平均法)を用いて平滑化して一時記憶に記録する機能部である。

0043

ここで、周波数測定部52は、コンピュータ50に入力される2つのRF信号の周波数を共通の時間基準を用いて測定する。例えば、周波数測定部52は、コンピュータ50に入力される2つのRF信号のうち、いずれか一方のRF信号を時間基準として用いて、周波数[Cs]と周波数[Rb]を測定する。例えば、RF信号[Rb]を時間基準として用いる場合、周波数測定部52は、コンピュータ50に入力されるRF信号[Rb]とRF信号[Cs]のパルス数カウントを同時に開始した後、RF信号[Rb]のカウント数がルビジウム(Rb)の共鳴周波数に見合った数(例えば、6.8×109個)に達した時点で2つのRF信号のカウントを同時に終了し、その際に得られたRF信号[Rb]のカウント数を周波数[Rb]として取得し、RF信号[Cs]のカウント数を周波数[Cs]として取得する。

0044

なお、周波数測定部52は、別法として、コンピュータ50の内部クロック信号が定義する時間基準を用いて、既知の方法で周波数[Cs]と周波数[Rb]を測定しても良い。

0045

周波数比算出部53は、RF信号[Cs]とRF信号[Cs]の周波数比を算出する機能部である。

0046

バッファガス圧推定部54は、算出した周波数比に基づいて、ガスセル14に封入されるバッファガスのガス圧を推定する機能部である。

0047

共鳴周波数推定部55は、推定したバッファガスのガス圧に基づいて、セシウム(Cs)の共鳴周波数とルビジウム(Rb)の共鳴周波数を推定する機能部である。

0048

逓倍率算出部56は、推定したセシウム(Cs)の共鳴周波数に基づいて、周波数シンセサイザ[Cs]に設定する逓倍率を算出し、推定したルビジウム(Rb)の共鳴周波数に基づいて、周波数シンセサイザ[Rb]に設定する逓倍率を算出する機能部である。

0049

逓倍率制御部58は、算出した逓倍率を周波数シンセサイザ[Cs]および周波数シンセサイザ[Rb]に設定する機能部である。

0050

以上、コンピュータ50の機能構成について説明してきたが、続いて、上述した各機能部が協働して実行する処理の内容を図3に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の説明においては、適宜、図2を参照するものとする。

0051

まず、ステップ101では、周波数比算出部53が、一時記憶に記録されている周波数の時系列データから最新の周波数[Cs]と周波数[Rb]を読み出して、周波数比(周波数[Cs]/周波数[Rb])を算出する。

0052

続くステップ102では、バッファガス圧推定部54が、先のステップ101で算出した周波数比(周波数[Cs]/周波数[Rb])に基づいてガスセル14に封入されたバッファガス圧を推定する。具体的には、周波数比算出部53が算出した周波数比を所定の推定式代入して、バッファガス圧の推定値を算出する。ここで、本実施形態が採用するバッファガス圧の推定式について説明する。

0053

ガスセル型の原子発振器において、ガスセルに封入された原子の共鳴周波数は、バッファガス圧およびガスセルの温度に依存して変動(シフト)する。ここで、バッファガス圧をP、ガスセルの温度の変動量をΔT、圧力係数をα、温度係数をδとすると、原子の共鳴周波数のシフト量Δνは、下記式(1)で表わすことができる。

0054

0055

ここで、ガスセルの温度が常に一定温度に制御されることを前提とすれば、温度係数δは、1次の項のみを考慮すれば足りる。したがって、本実施形態の場合、ガスセル14に封入されたセシウム(Cs)の共鳴周波数[νm_Cs]を下記式(2)で表わすことができ、ガスセル14に封入されたルビジウム(Rb)の共鳴周波数[νm_Rb]を下記式(3)で表わすことができる。

0056

0057

なお、上記式(2)において、νCs、αCsおよびδCs1は、それぞれ、セシウム(Cs)の公称周波数、圧力係数および1次の温度係数を示す。また、上記式(3)において、νRb、αRbおよびδRb1は、それぞれ、ルビジウム(Rb)の公称周波数、圧力係数および1次の温度係数を示す。(以下の式において同様。)

0058

上記式(2)および(3)から、ガスセル14に封入された、セシウム(Cs)の共鳴周波数[νm_Cs]とルビジウム(Rb)の共鳴周波数[νm_Rb]の比(νm_Cs/νm_Rb)は、下記式(4)で表わすことができる。

0059

0060

ここで、ガスセル14の温度が常に一定温度に制御されることを前提として、上記式(4)におけるΔTをゼロとし、上記式(4)をバッファガス圧[P]について整理すると、下記式(5)が導出される。

0061

0062

最後に、上記式(5)における周波数比(νm_Cs/νm_Rb)をrmに置き換えることによって、下記式(6)がバッファガス圧[P]の推定式として導出される。

0063

0064

そして、ステップ102では、バッファガス圧推定部54が、先のステップ101で算出した周波数比rm(=νm_Cs/νm_Rb)を上記式(6)に代入してガスセル14のバッファガス圧[P]の推定値を算出する。

0065

続くステップ103では、共鳴周波数推定部55が、先のステップ102で推定したバッファガス圧[P]に基づいて、セシウム(Cs)の共鳴周波数[νm_Cs]とルビジウム(Rb)の共鳴周波数[νm_Rb]を推定する。具体的には、バッファガス圧[P]を先に挙げた式(1)および式(2)に代入することによって、共鳴周波数[νm_Cs]および共鳴周波数[νm_Rb]の推定値を算出する。

0066

続くステップ104では、逓倍率算出部56が、先のステップ103で算出した共鳴周波数[νm_Cs]に基づいて周波数シンセサイザ[Cs]に設定すべき逓倍率[MCs]を算出するとともに、先のステップ103で算出した共鳴周波数[νm_Rb]に基づいて周波数シンセサイザ[Rb]に設定すべき逓倍率[MRb]を算出する。具体的には、算出した共鳴周波数[νm_Cs]の1/2を原子発振器100の目標周波数で除した値を逓倍率[MCs]として算出し、算出した共鳴周波数[νm_Rb]の1/2を原子発振器100の目標周波数で除した値を逓倍率[νm_Rb]として算出する。

0067

続くステップ105では、逓倍率制御部58が、周波数シンセサイザ[Cs]に先のステップ104で算出した逓倍率[MCs]を設定し、周波数シンセサイザ[Rb]に先のステップ104で算出した逓倍率[MRb]を設定する。具体的には、逓倍率制御部58は、逓倍率[MCs]を実現するパラメータ[Pr_Cs]を算出した後、パラメータ[Pr_Cs]を設定するための逓倍率制御信号を生成して周波数シンセサイザ[Cs]に送信する。そして、逓倍率制御信号を受信した周波数シンセサイザ[Cs]がパラメータを更新する。また、逓倍率制御部58は、逓倍率[MRb]を実現するパラメータ[Pr_Rb]を算出した後、パラメータ[Pr_Rb]を設定するための逓倍率制御信号を生成して周波数シンセサイザ[Rb]に送信する。そして、逓倍率制御信号を受信した周波数シンセサイザ[Rb]がパラメータを更新する。

0068

本実施形態では、コンピュータ50が、上述した一連の処理(ステップ101〜105)を所定のタイミングで繰り返し実行する。これにより、バッファガス圧の変動の影響が最小化され、結果として、原子発振器100の発振周波数が長期に渡って安定化する。

0069

以上、本発明について実施形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、当業者が推考しうる実施態様の範囲内において、本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。

0070

上述した実施形態の各機能は、C、C++、C#、Java(登録商標)などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、本実施形態のプログラムは、ハードディスク装置CD−ROM、MO、DVD、フレキシブルディスク、EEPROM、EPROMなどの装置可読な記録媒体に格納して頒布することができ、また他装置が可能な形式ネットワークを介して伝送することができる。

0071

以下の手順で本発明の原子発振器の実証実験を行った。

0072

図4は、本実験で用いた実験装置を示す。本実験では、MEMS加工により作製した光路長2mmのセルをガスセルとし、2種類のアルカリ金属原子として、133CsおよびナチュラルRbを封入し、バッファガスとしてNeを封入した。なお、実験期間中、ガスセル温度を90℃に維持するとともに、量子部の周辺温度モニタした。

0073

本実験では、Cs用の励起用光源として出力波長895nm (Cs-D1線)のVCSELを用意し、Rb用の励起用光源として出力波長795nm (Rb-D1線) のVCSELを用意した。また、各VCSELの駆動電流にRFを重畳させてAM/FM変調を施すことにより、CPT共鳴の観測に必要な励起光である±1次のサイドバンドを生成した。実験装置の光学系は、各VCSELから出射する2つのレーザ光が、コリメートレンズを経て平行光とされ、NDフィルタおよびλ/4波長板を経てσ+偏光となった後、2つのレーザ光がハーフミラーで重なってガスセルの同一部分を透過するように構成した。一方、ガスセルを透過する光は、Cs用のバンドパスフィルタ(890±5nm)とRb用バンドパスフィルタ(800±5nm)を用いて分離し、それぞれを専用のフォトダイオードで検出した。

0074

本実験では、レーザ波長の安定化とCPT共鳴の中心周波数の維持のためにロックインアンプを用いてフィードバックループを構成した。また、周波数の測定にあっては、VCSELにRFを重畳するRFジェネレータに対して、セシウム一次標準器リファレンスとして接続した上で、PCを用いてRFジェネレータの出力信号の周波数の制御と記録を行った。

0075

図5は、同時に観測されたCsと87RbのCPT共鳴線を示す。図5に示す結果から、1つのガスセルに2種類のアルカリ金属原子(Cs、87Rb)を一緒に封入しても、各原子のCPT共鳴を問題なく観測できることが確認された。

実施例

0076

一方、図6(a)は、Csの共鳴周波数の経時変化を示し、図6(b)は、Csの共鳴周波数の周波数変動量の経時変化を示す。また、図6(c)は、87Rbの共鳴周波数の経時変化を示し、図6(d)は、87Rbの共鳴周波数の周波数変動量の経時変化を示す。なお、図6(b)および(d)は、量子部の周辺温度の測定結果に基づいて温度補正を施した結果である。図6に示す結果から、2種類のアルカリ金属原子(Cs、87Rb)において、バッファガスシフトの挙動が異なることが確認された。

0077

10…量子部、12a,12b…半導体レーザー、13…ビームスプリッタ、14…ガスセル、15…ビームスプリッタ、16a,16b…バンドパスフィルタ、18a,18b…光検出器、20a,20b…波長制御部、22a,22b…電流駆動回路、24a,24b…低周波発振器、26a,26b…同期検波回路、28a,28b…制御回路、30a,30b…周波数制御部、32a,32b…電圧制御発振器、33a,33b…周波数シンセサイザ、34a,34b…低周波発振器、35a,35b…同期検波回路、36a,36b…制御回路、40a,40b…バイアスT、50…コンピュータ、52…周波数測定部、53…周波数比算出部、54…バッファガス圧推定部、55…共鳴周波数推定部、56…逓倍率算出部、58…逓倍率制御部、100…原子発振器、501…プロセッサ、502…ROM、503…RAM、504…補助記憶手段、505…アナログ入出力回路

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