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技術 ステアリング制御装置

出願人 株式会社デンソー
発明者 青木崇
出願日 2016年9月7日 (4年5ヶ月経過) 出願番号 2016-174506
公開日 2018年3月15日 (2年11ヶ月経過) 公開番号 2018-039350
状態 特許登録済
技術分野 走行状態に応じる操向制御
主要キーワード 絶対値判定 無次元量 実機データ ブラシ付DCモータ 角度状態 戻り速度 サーボ制御器 正負反転
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年3月15日)のものです。
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図面 (20)

課題

戻し制御において、ドライバ操舵に応じて戻し制御量を適切に調整するステアリング制御装置を提供する。

解決手段

戻し制御部131は、基本アシストトルクに付加される補正トルクとして、ハンドル中立位置に戻るようにアシストする戻し制御量Tr*を演算する。ドライバ操舵補正部401は、戻し制御量Tr*の演算過程における演算量の一つである目標操舵速度ω*に対して乗算する補正ゲインK1を、操舵トルクTs及び操舵角θに基づいて演算する。補正ゲインK1は、操舵トルクTsがハンドル中立位置に向かう戻し方向に加わっているとき戻し制御量Tr*を増加させ、操舵トルクTsがハンドル中立位置から離れる切り込み方向に加わっているとき戻し制御量Tr*を減少させるように演算される。ドライバが戻し方向に操舵トルクTsを加えているとき操舵負荷を低減することで、操舵フィールを向上させることができる。

概要

背景

車速の低い領域では、高速時に比べて相対的に車体やタイヤ横滑り角が小さくなり、同じ操舵角横加速度において路面から受けるセルフアライニングトルクが小さくなる。セルフアライニングトルクが操舵機構摩擦と同程度以下になるとハンドル中立位置に戻り難くなるため、ドライバが意識的にハンドルを戻す操作をしなければならなくなる。
そこで従来、ハンドルを中立位置に戻す方向の補正トルク演算アシストトルクに付加する「戻し制御」を実行するステアリング制御装置が知られている。

例えば特許文献1に開示された装置では、ドライバが保舵しているとき戻し制御を実行すると、小舵角、特に低車速での操舵を安定して行うことが困難であることを問題としている。そして、その解決手段として、操舵トルクが0のときの値が1であり、操舵トルクが0から正負に大きくなるに従い値が0に漸近するゲインを演算し、戻しトルク乗算することで、保舵時における戻し制御の出力を抑制している。

概要

戻し制御において、ドライバの操舵に応じて戻し制御量を適切に調整するステアリング制御装置を提供する。戻し制御部131は、基本アシストトルクに付加される補正トルクとして、ハンドルが中立位置に戻るようにアシストする戻し制御量Tr*を演算する。ドライバ操舵補正部401は、戻し制御量Tr*の演算過程における演算量の一つである目標操舵速度ω*に対して乗算する補正ゲインK1を、操舵トルクTs及び操舵角θに基づいて演算する。補正ゲインK1は、操舵トルクTsがハンドル中立位置に向かう戻し方向に加わっているとき戻し制御量Tr*を増加させ、操舵トルクTsがハンドル中立位置から離れる切り込み方向に加わっているとき戻し制御量Tr*を減少させるように演算される。ドライバが戻し方向に操舵トルクTsを加えているとき操舵負荷を低減することで、操舵フィールを向上させることができる。

目的

本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、戻し制御において、ドライバの操舵に応じて戻し制御量を適切に調整するステアリング制御装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

ドライバ操舵トルク(Ts)に基づいて操舵アシストモータ(80)が出力するアシストトルクを制御するステアリング制御装置であって、基本アシストトルク(Tb)を演算する基本アシストトルク演算部(11)と、前記基本アシストトルクに付加される補正トルクとして、ハンドル(91)が中立位置に戻るようにアシストする戻し制御量(Tr*)を演算する戻し制御部(13)と、を備え、ハンドルが中立位置にあるときの値が0であり、中立位置を基準としたハンドル位置に応じて正又は負の値を取る情報をハンドル位置関連情報と定義すると、前記戻し制御部は、操舵トルクがハンドル中立位置に向かう戻し方向に加わっているとき前記戻し制御量を維持し又は増加させ、絶対値が所定の臨界値以上の操舵トルクがハンドル中立位置から離れる切り込み方向に加わっているとき前記戻し制御量を減少させるように、前記戻し制御量の演算過程におけるいずれかの演算量に対して出力する補正量を、操舵トルク及び前記ハンドル位置関連情報に基づいて演算するドライバ操舵補正部(401−405)を含むステアリング制御装置。

請求項2

前記ドライバ操舵補正部は、前記ハンドル位置関連情報の符号と操舵トルクとを乗算して得られる符号乗算後操舵トルク(Ts_sgn)に基づいて、前記符号乗算後操舵トルクが0のときの前記戻し制御量を基準として、前記ハンドル位置関連情報の符号が示す方向と共通の方向で操舵トルクの符号を定義した場合、前記符号乗算後操舵トルクが負のとき、前記戻し制御量を維持し又は増加させ、前記符号乗算後操舵トルクが正であって絶対値が前記臨界値以上のとき、前記戻し制御量を減少させるように補正量を演算し、前記ハンドル位置関連情報の符号が示す方向と反対の方向で操舵トルクの符号を定義した場合、前記符号乗算後操舵トルクが正のとき、前記戻し制御量を維持し又は増加させ、前記符号乗算後操舵トルクが負であって絶対値が前記臨界値以上のとき、前記戻し制御量を減少させるように補正量を演算する請求項1に記載のステアリング制御装置。

請求項3

前記ドライバ操舵補正部は、前記ハンドル位置関連情報が0に漸近するとき、前記戻し制御量を0に漸近させる請求項2に記載のステアリング制御装置。

請求項4

前記戻し制御部は、操舵速度(ω)の目標値である目標操舵速度(ω*)を演算する目標操舵速度演算部(201、205)を含み、前記ドライバ操舵補正部(401、405)は、前記符号乗算後操舵トルクに基づいて演算した補正量を、前記目標操舵速度に対して乗算又は加算する請求項2または3に記載のステアリング制御装置。

請求項5

前記戻し制御部は、操舵角(θ)に応じた舵角基準トルク(Tθ)を演算する舵角基準トルク演算部(33)を含み、前記ドライバ操舵補正部(402、403)は、前記符号乗算後操舵トルクに基づいて演算した補正量を、前記舵角基準トルクに対して乗算又は加算する請求項2または3に記載のステアリング制御装置。

技術分野

0001

本発明は、ステアリング制御装置に関する。

背景技術

0002

車速の低い領域では、高速時に比べて相対的に車体やタイヤ横滑り角が小さくなり、同じ操舵角横加速度において路面から受けるセルフアライニングトルクが小さくなる。セルフアライニングトルクが操舵機構摩擦と同程度以下になるとハンドル中立位置に戻り難くなるため、ドライバが意識的にハンドルを戻す操作をしなければならなくなる。
そこで従来、ハンドルを中立位置に戻す方向の補正トルク演算アシストトルクに付加する「戻し制御」を実行するステアリング制御装置が知られている。

0003

例えば特許文献1に開示された装置では、ドライバが保舵しているとき戻し制御を実行すると、小舵角、特に低車速での操舵を安定して行うことが困難であることを問題としている。そして、その解決手段として、操舵トルクが0のときの値が1であり、操舵トルクが0から正負に大きくなるに従い値が0に漸近するゲインを演算し、戻しトルク乗算することで、保舵時における戻し制御の出力を抑制している。

先行技術

0004

特許第4959217号公報

発明が解決しようとする課題

0005

特許文献1の技術では、ドライバが積極的に戻し方向に操舵トルクを加えたときにも戻し制御の出力が抑制されるため、ドライバの操舵負荷が高くなるという問題がある。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、戻し制御において、ドライバの操舵に応じて戻し制御量を適切に調整するステアリング制御装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0006

本発明は、ドライバの操舵トルク(Ts)に基づいて操舵アシストモータ(80)が出力するアシストトルクを制御するステアリング制御装置に係る発明である。
このステアリング制御装置は、基本アシストトルク(Tb)を演算する基本アシストトルク演算部(11)と、戻し制御部(13)と、を備える。
戻し制御部は、基本アシストトルクに付加される補正トルクとして、ハンドル(91)が中立位置に戻るようにアシストする戻し制御量(Tr*)を演算する。

0007

ここで、「ハンドルが中立位置にあるときの値が0であり、中立位置を基準としたハンドル位置に応じて正又は負の値を取る情報」を「ハンドル位置関連情報」と定義する。
例えばハンドルが中立位置に対し左側にあるとき、ハンドル位置関連情報の値を正とし、ハンドルが中立位置に対し右側にあるとき、ハンドル位置関連情報の値を負とする。
ハンドル位置関連情報には、ハンドルの回転量を直接的に示す操舵角(θ)の他、操舵角と相関するモータ回転角や伝達系ギア回転角、タイヤの舵角、ヨーレート等の情報が含まれる。

0008

戻し制御部は、戻し制御量の演算過程におけるいずれかの演算量に対して出力する補正量を、操舵トルク及びハンドル位置関連情報に基づいて演算するドライバ操舵補正部(401−405)を含む。この補正量は、操舵トルクがハンドル中立位置に向かう戻し方向に加わっているとき戻し制御量を維持し又は増加させ、絶対値が所定の臨界値以上の操舵トルクがハンドル中立位置から離れる切り込み方向に加わっているとき戻し制御量を減少させるように演算される。

0009

つまり、ドライバ操舵補正部は、ドライバが戻し方向に操舵トルクを加えているとき、戻し制御量を維持し又は増加させることにより、操舵負荷の増加を回避し又は操舵負荷を低減する。また、ドライバが切り込み方向に操舵トルクを加えているとき、戻し制御量を減少させることにより、操舵阻害感を低減する。ただし、切り込み方向の操舵トルクの絶対値が小さいときには、操舵への影響を考慮しなくてもよい場合もあるため、切り込み方向の操舵トルク絶対値が所定の臨界値以上のとき、戻し制御量を減少させるようにする。もちろん臨界値を0に設定してもよい。

0010

特許文献1の従来技術では、ドライバが戻し方向に操舵トルクを加えているときにも戻し制御の出力が抑制されるため、操舵負荷が高くなる。それに対し本発明では、ドライバが戻し方向に操舵トルクを加えているとき、少なくとも戻し制御量を減少させないため、操舵フィールを向上させることができる。
よって、本発明のステアリング制御装置は、ドライバの操舵に応じて戻し制御量を適切に調整することができる。

0011

好ましくは、ドライバ操舵補正部は、ハンドル位置関連情報の符号と操舵トルクとを乗算して得られる符号乗算後操舵トルク(Ts_sgn)に基づいて、補正量を演算する。
具体的には、ドライバ操舵補正部は、符号乗算後操舵トルクが0のときの戻し制御量を基準として、操舵トルクの符号の定義により、以下のように補正量を演算する。
ハンドル位置関連情報の符号が示す方向と共通の方向で操舵トルクの符号を定義した場合、符号乗算後操舵トルクが負のとき、戻し制御量を維持し又は増加させ、符号乗算後操舵トルクが正であって絶対値が臨界値以上のとき、戻し制御量を減少させる。
ハンドル位置関連情報の符号が示す方向と反対の方向で操舵トルクの符号を定義した場合、符号乗算後操舵トルクが正のとき、戻し制御量を維持し又は増加させ、符号乗算後操舵トルクが負であって絶対値が臨界値以上のとき、戻し制御量を減少させる。

図面の簡単な説明

0012

電動パワーステアリングシステム概略構成図。
戻し制御における(a)操舵角の時間変化を示す図、(b)切り込み操舵から戻し操舵への移行時における状態変化を示す図。
第1実施形態による戻し制御部の全体制ブロック図。
戻し状態判定部の制御ブロック図。
第1実施形態によるドライバ操舵補正部の制御ブロック図。
操舵角、操舵トルクの符号の定義を説明する図。
図5マップの例。
ドライバ操舵補正の作用効果を示す実機データ(1)。
ドライバ操舵補正の作用効果を示す実機データ(2)。
第2実施形態による戻し制御部の全体制御ブロック図。
第2実施形態によるドライバ操舵補正部の制御ブロック図。
図11のマップの例。
第3実施形態による戻し制御部の全体制御ブロック図。
第3実施形態によるドライバ操舵補正部の制御ブロック図。
図14のマップの例。
第4実施形態による戻し制御部の全体制御ブロック図。
第4実施形態によるドライバ操舵補正部の制御ブロック図。
第5実施形態による戻し制御部の全体制御ブロック図。
第5実施形態によるドライバ操舵補正部の制御ブロック図。
図19のマップの例。

実施例

0013

以下、ステアリング制御装置の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態において、「ステアリング制御装置」としてのECUは、車両の電動パワーステアリングシステムに適用され、操舵アシストモータが出力するアシストトルクを制御する。また、明細書中、「本実施形態」とは、後述の第1−第5実施形態を包括していう。
[電動パワーステアリングシステムの構成]
図1に示すように、電動パワーステアリングシステム1はドライバによるハンドル91の操作を操舵アシストモータ80のトルクによってアシストするものである。

0014

ステアリングシャフト92の一端にはハンドル91が固定されており、ステアリングシャフト92の他端側にはインターミディエイトシャフト93が設けられている。ステアリングシャフト92とインターミディエイトシャフト93との間には、トルクセンサ94が設けられている。なお、ステアリングシャフト92からトルクセンサ94を経てインターミディエイトシャフト93に至る軸全体を、まとめて操舵軸95とする。

0015

トルクセンサ94は、ステアリングシャフト92とインターミディエイトシャフト93とを連結するトーションバー捩れ角に基づき、トーションバーに加えられている操舵トルクTsを検出する。トルクセンサ94の検出値は、ECU10に出力される。
インターミディエイトシャフト93のトルクセンサ94と反対側の端部には、ピニオンギア961及びラック962を含むギアボックス96が設けられている。

0016

ドライバがハンドル91を回すと、インターミディエイトシャフト93とともにピニオンギア961が回転し、ピニオンギア961の回転に伴って、ラック962が左右に移動する。ラック962の両端に設けられたタイロッド97は、ラック962とともに左右の往復運動を行う。タイロッド97がナックルアーム98を引っ張ったり押したりすることで、タイヤ99の向きが変わる。
また、車両の所定の部位には、車速Vを検出する車速センサ71が設けられている。

0017

モータ80は、例えば3相交流ブラシレスモータであり、ECU10から出力された駆動電圧Vdに応じて、ハンドル91の操舵力をアシストするアシストトルクを出力する。3相交流モータの場合、駆動電圧Vdは、U相、V相、W相の各相電圧を意味する。
モータ80の回転は、ウォームギア86及びウォームホイール87を含む減速機構85を経由してインターミディエイトシャフト93に伝達される。また、タイヤ99側からのセルフアライニングトルクや路面反力によってインターミディエイトシャフト93が回転すると、この回転が減速機構85を経由してモータ80に伝達される。

0018

なお、図1に示す電動パワーステアリングシステム1は、モータ80の回転が操舵軸95に伝達されるコラムアシスト式であるが、本実施形態のECU10は、ラックアシスト式の電動パワーステアリングシステム、或いは、ハンドルと操舵輪とが機械的に切り離されているステアバイワイヤシステムにも同様に適用可能である。
また、他の実施形態では、操舵アシストモータとして、3相以外の多相交流モータや、ブラシ付DCモータを用いてもよい。

0019

ECU10は、図示しない車載バッテリからの電力によって動作し、トルクセンサ94により検出された操舵トルクTsや車速センサ71により検出された車速V等に基づき、アシストトルク指令Ta*を演算する。そして、ECU10は、アシストトルク指令Ta*に基づいて演算した駆動電圧Vdをモータ80へ印加することにより、アシストトルクを発生させる。
ECU10における各種演算処理は、ROM等の実体的なメモリ装置に予め記憶されたプログラムをCPUで実行することによるソフトウェア処理であってもよいし、専用の電子回路によるハードウェア処理であってもよい。

0020

ECU10は、基本アシストトルク演算部11、補正トルク演算部13、及び電流フィードバック部70を備える。
基本アシストトルク演算部11は、操舵トルクTs及び操舵速度ωに基づいて、基本アシストトルクTbを演算する。
補正トルク演算部13は、基本アシストトルクTbに付加される各種補正トルクを演算する。ただし本実施形態では、補正トルクとして、戻し制御における戻し制御量Tr*のみに着目し、その他の補正トルクには言及しない。そこで、以下、「補正トルク演算部」を具体的に「戻し制御部13」として説明する。

0021

戻し制御部13は、操舵トルクTs、操舵速度ω及び操舵角θに基づいて、戻し制御量Tr*を演算する。戻し制御部13が演算した戻し制御量Tr*は、加算器12で基本アシストトルクTbに加算され、アシストトルク指令Ta*が演算される。また、図3等に示すように戻し制御量Tr*に他の補正トルクが更に付加される構成の場合、図1の戻し制御量Tr*は、戻し制御量最終指令値Tr**に置き換えられる。
なお、各量について記した[Nm]、[deg]、[deg/s]の単位は、各量の次元を表すためのものであり、その単位での使用を限定する意図ではない。例えば角度単位として[rad]を用いてもよい。以下の図でも同様に解釈する。
さらに、「操舵角θ」及び「操舵速度ω」の用語は、ドライバの積極的な操舵によってハンドル91が回転する場合のみでなく、ドライバが手を放した状態でのハンドル91の位置及び回転速度についても拡張して用いる。

0022

電流フィードバック部70は、アシストトルク指令Ta*に基づく目標電流に対して、モータ80に流れる実電流フィードバック制御することにより、モータ80へ印加する駆動電圧Vdを演算する。
ステアリング制御装置における基本アシストトルク演算部11や電流フィードバック部70の構成は周知技術であるため、詳細な説明を省略する。

0023

[戻し制御の概要
次に、戻し制御の概要について、図2を参照する。
車速の低い領域では、高速時に比べて相対的に車体やタイヤの横滑り角が小さくなり、同じ操舵角や横加速度において路面から受けるセルフアライニングトルクが小さくなる。
セルフアライニングトルクが操舵機構の摩擦と同程度以下になるとハンドルは中立位置に戻り難くなるため、ドライバが意識的にハンドルを戻す操作をしなければならなくなる。
具体的には、トー角キャスタトレールが小さい車両や、低転がり抵抗のタイヤを装着した車両では、復元力が小さくなる。また、ラックピニオン機構歯打ち音低減のために部材の接触圧を高く設定した車両では、摩擦が高くなる。これらは、いずれもハンドルの中立位置への復元を妨げる要因となる。

0024

このような問題に対し、戻し制御は、電動パワーステアリングシステムにおけるアシストトルクに、更にハンドルを中立位置に戻す方向の補正トルクを付加する制御である。
以下、本明細書では、ハンドルが中立位置から離れる方向を「切り込み方向」といい、ハンドルが中立位置に向かう方向を「戻し方向」という。つまり、ドライバの感覚にかかわらず、ハンドルと中立位置との関係で客観的に「戻し/切り込み方向」を定義する。
そして、切り込み方向及び戻し方向への操舵を、それぞれ、「切り込み操舵」及び「戻し操舵」という。また、ドライバが積極的にハンドルを戻す操作をしなくても、セルフアライニングトルク及び戻し制御によってハンドルが中立位置へ戻るときの速度を「戻り速度」という。

0025

図2(a)は、切り込み操舵後、ドライバが手を添えた程度の状態でハンドルが中立位置(すなわち操舵角θ=0[deg])に戻るまでの操舵角θの時間変化を示す概念図である。長破線R0は、戻し制御を実施しない場合、又は、戻し制御の出力が不足し、戻り速度が遅すぎる場合、摩擦によって操舵角θが0[deg]に復元しないときの動作を示している。

0026

これに対し、短破線R1は、好ましい戻し制御により、ハンドルが中立位置に戻る動作を示している。戻り速度が適正であるため、操舵角θが滑らかに変化している。
また、一点鎖線R2及び二点鎖線R3は、不適当な戻し制御の例を示す。一点鎖線R2の動作では、戻し制御の出力が過剰であり、戻り速度が速すぎるため、操舵を阻害する。二点鎖線R3の動作では、戻り速度が安定しないため、ドライバに違和感を与えるおそれがある。したがって戻し制御では、操舵を阻害せず、違和感の無い自然な速度でハンドルが戻る短破線R1の動作を実現することが制御目標となる。

0027

図2(b)は、切り込み操舵から戻し操舵への移行時における状態変化を、操舵角θと操舵トルクTsとの関係により表した図である。ここで、中立位置を基準とした左右の方向に応じて操舵角θの正負の符号を定義する。また、操舵角θの符号が示す方向と共通の方向で操舵トルクTsの符号を定義する。基本的には、操舵トルクTsを正方向に加えたとき、操舵角θは正方向に変化し、操舵トルクTsを負方向に加えたとき、操舵角θは負方向に変化する。図2(b)では、操舵角θ及び操舵トルクTsが共に正の領域の図を示すが、操舵角θ及び操舵トルクTsが共に負の領域の図は、これと原点対称に現れる。

0028

操舵移行時の状態変化は、実線で示す「切り込み期」、一点鎖線で示す「第1遷移期」、破線で示す「戻し期」、二点鎖線で示す「第2遷移期」の4つの期間に分けられる。
ドライバがハンドルを切り込んでいる切り込み期には、操舵角θの絶対値が増加する。なお、図示上のカーブ形状は、一例を示すものに過ぎない。切り込み期には、操舵を阻害しないため戻し制御を実施しない。
ハンドルを戻し始めたとき、操舵角θはほぼ変化せず、操舵速度ωの絶対値が比較的小さい。この第1遷移期には、戻し制御を積極的に実施するとドライバが強い戻され感を感じることとなるため、戻し制御を徐々に開始する。

0029

ドライバがハンドルを戻している戻し期には、操舵角θの絶対値が減少する。この戻し期には、戻し制御を積極的に実施する。これにより、細破線で示す、「戻し制御を実施しない場合」のカーブの先が原点に向くように修正する。
ハンドルが中立位置に近づいた第2遷移期には、操舵角θの絶対値が比較的小さい範囲で0に漸近する。この期間に、戻し制御を徐々に終了させる。

0030

また、戻し期、切り込み期、遷移期にあるときの各操舵状態を、「戻し状態、切り込み状態、遷移状態」という。戻し状態は、「ハンドル位置が中立位置に向かって変化している状態」と定義される。切り込み状態は、「ハンドル位置が中立位置から離れる方向に変化している状態」と定義される。
そして、戻し状態を定量的に示す情報が、後述する戻し状態判定部50により演算される「戻し状態量α」である。図2(b)の各期間における戻し状態量αは、切り込み期には「α=0」、戻し期には「α=1」、第1及び第2遷移期には「0<α<1」となる。

0031

ところで、特許文献1(特許第4959217号公報)には、ドライバが操舵トルクを加えて保舵しているとき、戻し制御による補正トルクを出力しないようにする従来技術が開示されている。しかし、この従来技術では、ドライバが積極的に戻し方向に操舵トルクを加えたときにも戻し制御の出力が抑制されるため、ドライバの操舵負荷が高くなるという問題がある。

0032

この問題に対し、本実施形態の戻し制御部13は、戻し制御においてドライバの操舵に応じて戻し制御量Tr*を適切に調整するため、「ドライバ操舵補正部」を含む。ドライバ操舵補正部は、操舵トルクTsが戻し方向又は切り込み方向のいずれに加わっているかを判別し、戻し方向に操舵トルクTsが加わっているときは、戻し制御量Tr*を抑制しないようにする。
続いて、第1−第5実施形態による戻し制御部13の構成について順に説明する。各実施形態の戻し制御部の符号として、「13」に続く3桁目に実施形態の番号を付す。

0033

[戻し制御部の構成]
(第1実施形態)
第1実施形態の戻し制御部131の全体構成を図3に示す。
戻し制御部131は、大きく、目標操舵速度演算部201、戻し制御量演算部301、戻し状態判定部50、及び、戻り速度安定化制御部60の4つのブロックで構成される。各ブロックの機能を簡単に記すと、目標操舵速度演算部201は、ハンドル戻り時の目標操舵速度ω*を演算する。戻し制御量演算部301は、ハンドルを中立位置に戻す復元力指令値を演算する。戻し状態判定部50は、ハンドルの切り込みと戻しとを判別する。戻り速度安定化制御部60は、ハンドル戻り速度を安定化させるものである。

0034

戻し制御部131には、各ブロックでの演算に用いられる情報量として、操舵角θ、操舵速度ω、及び操舵トルクTsが入力される。ここで、操舵角θは、「ハンドルが中立位置にあるときの値が0であり、中立位置を基準としたハンドル位置に応じて正又は負の値を取るハンドル位置関連情報」に相当する。
図3を始めとする各実施形態の戻し制御部の全体構成図では、図の見やすさを考慮し、操舵角θの入力を一点鎖線、操舵速度ωの入力を二点鎖線、操舵トルクTsの入力を実線で示す。各ブロックから出力される演算結果は、いずれも実線で示す。

0035

4つのブロックのうち、第1実施形態と後述の第2−第5実施形態とでは、目標操舵速度演算部、及び、戻し制御量演算部の構成が異なる。そして、そのいずれかに、ドライバ操舵補正部が含まれる。
以下、目標操舵速度演算部の符号については「20」に続く3桁目、戻し制御量演算部の符号については「30」に続く3桁目に、実施形態の番号を付して区別する。ただし、前出の実施形態と実質的に同じ構成である場合には、前出の実施形態の符号を援用する。

0036

第1実施形態の戻し制御部131では、目標操舵速度演算部201は、基本目標操舵速度演算部21、乗算器23、及び、ドライバ操舵補正部401を含む。
基本目標操舵速度演算部21は、操舵角θに基づいて、ハンドル戻り時の目標操舵速度の基本値である基本目標操舵速度ω*_0を演算する。乗算器23では、基本目標操舵速度ω*_0に対して、ドライバ操舵補正部401が演算した補正ゲインK1が乗算され、目標操舵速度ω*が演算される。目標操舵速度演算部201は、こうして演算された目標操舵速度ω*を出力する。ドライバ操舵補正部401の詳細な構成については後述する。
以下、本明細書では、複数種類演算値について、語頭に「基本」を付した用語を用いる。これらは、最終的に出力される演算値に対し、補正量が加算又は乗算される前の値であることを意味する。

0037

戻し制御量演算部301は、操舵速度偏差算出部31、操舵速度サーボ制御器32、舵角基準トルク演算部33、及び、加算器37を含む。
操舵速度偏差算出部31は、目標操舵速度ω*と操舵速度ωとの偏差Δωを算出する。
操舵速度サーボ制御器32は、操舵速度偏差Δωが0になるように、つまり、操舵速度ωを目標操舵速度ω*に追従させるようにサーボ制御を実行し、基本戻し制御量Tr*_0を演算する。

0038

舵角基準トルク演算部33は、操舵角θに応じた復元力である舵角基準トルクTθを演算する。加算器37では、基本戻し制御量Tr*_0に舵角基準トルクTθが加算され、戻し制御量Tr*が演算される。戻し制御量演算部301は、こうして演算された戻し制御量Tr*を出力する。

0039

図4に示すように、戻し状態判定部50は、操舵速度判定部51、操舵角判定部52、乗算器53及び出力制限部54を含む。各状態量αω、αθ、α0、αは、いずれも無次元量[−]である。
操舵速度判定部51は、操舵速度ωに基づいて、−1から+1までの値を取る速度状態量αωを演算する。操舵角判定部52は、操舵角θに基づいて、−1から+1までの値を取る角度状態量αθを演算する。乗算器53は、速度状態量αωと角度状態量αθとを乗算し、−1から+1までの値を取る制限前戻し状態量α0を演算する。
出力制限部54は、制限前戻し状態量α0のうち、−1から0までの負の値を除外し、0から+1までの正の値のみを戻し状態量αとして出力する。

0040

戻し状態量αは、現在の操舵状態が図2(b)に参照される戻し期であるか、又は、切り込み期もしくは遷移期であるかを判別する指標として用いられる。
戻り速度安定化制御部60は、戻し状態量α及び操舵速度ωに基づいて、戻り速度安定化トルクTω_stbを演算する。戻し制御量演算部301が出力した戻し制御量Tr*に、乗算器39で戻り速度安定化トルクTω_stbが乗算されることで、戻し制御量最終指令値Tr**が演算される。
なお、本実施形態では、戻し状態量αや戻り速度安定化トルクTω_stbに係る構成に関する詳しい説明を省略する。

0041

次に、第1実施形態のドライバ操舵補正部401の構成を図5に示す。
ドライバ操舵補正部401は、符号判定部(図中「sgn」)411、符号乗算器412、及びマップ42を有する。
符号判定部411は、操舵角θの符号を判定し、操舵角θが正のとき「+1」、操舵角θが負のとき「−1」を演算する。なお、操舵角θが0のときは、−1から+1までの間の任意の値としてよい。符号乗算器412は、操舵角θの符号と操舵トルクTsとを乗算し符号乗算後操舵トルクTs_sgnを算出する。マップ42は、符号乗算後操舵トルクTs_sgnと補正ゲインK1との関係を規定する。
上述の通り、ドライバ操舵補正部401が出力した補正ゲインK1は、乗算器23にて基本目標操舵速度ω*_0に対して乗算され、目標操舵速度ω*が算出される。

0042

第1実施形態では、特許請求の範囲に記載の「戻し制御量の演算過程におけるいずれかの演算量」に相当する演算量が目標操舵速度ω*である。なお、実施形態では、便宜上、「基本目標操舵速度ω*_0」の用語を「目標操舵速度ω*」と区別しているが、これらは補正前後の違いのみであり、表す対象は本質的に同じものである。したがって、「いずれかの演算量に対して出力する」という記載は、「基本目標操舵速度ω*_0に対して出力し、その結果、補正後の目標操舵速度ω*を得る」という意味に解釈する。以下の実施形態における「舵角基準トルク」や「戻し制御量」についても同様に解釈する。
また、第1実施形態では、補正ゲインK1が「いずれかの演算量に対して出力する補正量」に相当する。なお、記号「K1」は、第1実施形態の補正ゲインであることを意味する。これに対応し、第2実施形態における補正ゲインの記号を「K2」のように記す。

0043

ここで、操舵角θ及び操舵トルクTsの符号の定義について、図6を参照する。
図6における一点鎖線Nの方向はハンドル91(以下、符号91の記載を省略する)の中立位置を示し、破線Dの方向は現在のハンドル位置を示す。操舵角θについては、中立位置に対し左側の操舵角θを正、中立位置に対し右側の操舵角θを負と定義する。また、左回転方向、すなわち反時計回り方向の操舵速度ω及び操舵トルクTsを正と定義し、右回転方向、すなわち時計回り方向の操舵速度ω及び操舵トルクTsを負と定義する。
なお、他の実施形態では、上記とは逆に、中立位置に対し右側の操舵角θ、右回転方向の操舵速度ω及び操舵トルクTsを正と定義し、中立位置に対し左側の操舵角θ、左回転方向の操舵速度ω及び操舵トルクTsを負と定義してもよい。

0044

また、操舵トルクTsに関しては、ハンドルが実際にその方向に回転しているか否かに関係なく、あくまでトルクが加わっている方向を表す。例えば路面負荷慣性トルク等により、操舵トルクTsが加わっていてもハンドルが停止している場合や、操舵トルクTsとは逆方向に回転している場合があり得る。
さらに、上述の通り、ハンドルが中立位置に向かう方向を「戻し方向」と定義し、ハンドルが中立位置から離れる方向を「切り込み方向」と定義する。

0045

例えば、操舵角θが正領域にある場合、操舵トルクTsが負のとき、戻し方向にトルクが加わっており、操舵トルクTsが正のとき、切り込み方向にトルクが加わっている。
一方、操舵角θが負領域にある場合、操舵トルクTsが正のとき、戻し方向にトルクが加わっており、操舵トルクTsが負のとき、切り込み方向にトルクが加わっている。

0046

要するに、操舵角θと操舵トルクTsとが異符号で符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負の場合、戻し方向にトルクが加わっていることを意味する。操舵角θと操舵トルクTsとが同符号で符号乗算後操舵トルクTs_sgnが正の場合、切り込み方向にトルクが加わっていることを意味する。よって、符号乗算後操舵トルクTs_sgnは、操舵トルクTsの絶対値の情報と共に、操舵トルクTsが戻し方向又は切り込み方向のいずれに加わっているかの情報を表す。

0047

図7にマップ42の例を示す。符号乗算後操舵トルクTs_sgnが0のとき補正ゲインK1は1であり、目標操舵速度演算部201において、基本目標操舵速度ω*_0がそのまま目標操舵速度ω*として出力される。
これを基準とし、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負方向に小さくなるほど補正ゲインK1は1から大きくなり、基本目標操舵速度ω*_0よりも大きい目標操舵速度ω*が出力される。その結果、戻し制御量演算部301により演算される戻し制御量Tr*が増加する。これにより、ドライバが戻し方向に操舵トルクTsを加えているとき、戻し制御のアシスト量が大きくなり、操舵負荷を低減することができる。

0048

なお、本実施形態の技術的思想では、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負のとき、ドライバ操舵補正を行わない場合に比べて、戻し制御量Tr*を少なくとも減少させなければよい。つまり、戻し制御量Tr*を増加させる場合に限らず、維持してもよい。したがって、例えば第2実施形態の図12に示すように、符号乗算後操舵トルクTs_sgnの負領域において補正ゲインが1で一定となるマップを用いてもよい。この場合、少なくとも操舵負荷が高くなることを回避することができる。

0049

また、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが正方向に大きくなるほど補正ゲインK1は1から小さくなり、基本目標操舵速度ω*_0よりも小さい目標操舵速度ω*が出力される。その結果、戻し制御量演算部301により演算される戻し制御量Tr*が減少する。詳しくは、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが「+E」以上の区間では、「+E」未満の区間に比べ、補正ゲインK1の変化勾配が負側に大きくなるように変化している。
これにより、ドライバが切り込み方向に操舵トルクTsを加えているとき、戻し制御のアシスト量が小さくなり、ドライバの操舵阻害感、すなわち、切り込み動作に反してハンドルが戻されるように感じる違和感を低減することができる。

0050

ここで、上記の作用効果を基本としつつ、マップの傾きや、傾きが変化するトルク値等の詳細な特性は、車速Vに応じた最適な特性を設定することが好ましい。そこで、図5に複数のマップ42を重ねて図示しているように、車速V毎に異なるマップが用いられてもよい。或いは、車速Vから演算されるゲインに基づいて最適なマップが選択されるようにしてもよい。

0051

次に、第1実施形態によるドライバ操舵補正を含む戻し制御を実施した実機データについて、図8図9を参照する。
図8(a)、(b)、(c)、及び、図9(d)、(e)の各横軸は、共通の時間軸を示す。各図の縦軸は、図8(a)操舵角θ、(b)操舵トルクTs、(c)符号乗算後操舵トルクTs_sgn、図9(d)補正ゲインK1乗算後の目標操舵速度ω*、(e)戻し制御量Tr*である。

0052

この実機データは、図8(a)に示すように、時刻t0から時刻t1まで切り込み方向に約−400[deg]操舵した後、時刻t1から時刻t3まで、中立位置、すなわち0[deg]に向けて戻し方向に操舵したときの戻し制御量Tr*の変化を示す。
詳しくは、時刻t1の直後、時刻t2までの期間は、依然、操舵トルクTsが負方向に加わっており、時刻t2にて操舵トルクTsが0になる。
時刻t0から時刻t3までの期間を通じて操舵角θの符号が負であるため、(c)符号乗算後操舵トルクTs_sgnは、(b)操舵トルクTsを正負反転した形状となる。

0053

図9(d)、(e)において、ドライバ操舵補正を含まない戻し制御を実施したときのデータを比較のために破線で示す。
図9(d)のd1部、及び(e)のe1部に示すように、時刻t1から時刻t2までの期間、ドライバ操舵補正有りの場合、補正無しの場合に比べて、補正ゲインK1乗算後の目標操舵速度ω*、及び戻し制御量Tr*が小さくなる。このように、ドライバが切り込み方向に操舵トルクTsを加えているとき、戻し制御量Tr*を小さくすることで、操舵阻害感が低減される。

0054

図9(d)のd2部、及び(e)のe2部に示すように、時刻t2から時刻t3までの期間、ドライバ操舵補正有りの場合、補正無しの場合に比べて、補正ゲインK1乗算後の目標操舵速度ω*、及び戻し制御量Tr*が大きくなる。このように、ドライバが戻し方向に操舵トルクTsを加えているとき、戻し制御量Tr*を大きくすることで、操舵負荷が低減される。

0055

特許文献1の従来技術では、ドライバが戻し方向に操舵トルクTsを加えているときにも戻し制御の出力が抑制されるため、ドライバの操舵負荷が高くなる。それに対し本実施形態では、ドライバが戻し方向に操舵トルクTsを加えているとき、ドライバ操舵補正を行わない場合に比べて戻し制御量Tr*を維持し又は増加させる。つまり、少なくとも減少させない。そのため、操舵負荷を低減し、操舵フィールを向上させることができる。
よって、本実施形態のステアリング制御装置は、ドライバの操舵に応じて戻し制御量を適切に調整することができる。

0056

また、時刻t3の直前から時刻t3までの動作に注目すると、操舵角θが0[deg]に漸近するとき、戻し制御量Tr*は0に漸近する。
このドライバ操舵補正では、符号乗算後操舵トルクTs_sgnの演算において操舵角θの符号を乗算するため、操舵角θが0[deg]のとき戻し制御量Tr*が0に近い値でないと、出力に値飛びが生じる、言い換えれば出力が不連続になるという問題がある。そこで、ドライバ操舵補正部401は、操舵角θが0[deg]に漸近するとき、戻し制御量Tr*を0に漸近させることで、出力の連続性を確保することができる。

0057

以下の第2−第5実施形態では、戻し制御部にドライバ操舵補正部を設ける他の構成について説明する。第2−第5実施形態において第1実施形態と実質的に同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。特に、符号判定部411及び符号乗算器412により、操舵角θの符号と操舵トルクTsとを乗算して符号乗算後操舵トルクTs_sgnを算出する構成は、各実施形態のドライバ操舵補正部402−405で共通に用いられる。

0058

各実施形態のドライバ操舵補正部は、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負となる戻し方向の操舵時には、戻し制御量Tr*を維持し又は増加させることにより、ドライバの操舵負荷の増加を回避し又は操舵負荷を低減する。また、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが正となる切り込み方向の操舵時には、戻し制御量Tr*を減少させることにより、ドライバの操舵阻害感を低減する。
第1実施形態と同様に、各実施形態におけるマップは、車速V毎に異なるマップが用いられてもよく、車速Vから演算されるゲインに基づいて選択されてもよい。

0059

(第2実施形態)
第2実施形態の戻し制御部132について、図10図12を参照して説明する。
図10に示す第2実施形態の戻し制御部132は、戻し制御量演算部302において、補正ゲインK2を演算するドライバ操舵補正部402が設けられる。ドライバ操舵補正部402が出力した補正ゲインK2は、乗算器36にて、舵角基準トルク演算部33が出力した基本舵角基準トルクTθ_0に対して乗算され、その結果、舵角基準トルクTθが算出される。
第2実施形態では、舵角基準トルクTθが「戻し制御量の演算過程におけるいずれかの演算量」に相当し、補正ゲインK2が「補正量」に相当する。

0060

図11に示すように、ドライバ操舵補正部402は、符号乗算後操舵トルクTs_sgnと補正ゲインK2との関係を規定するマップ42を有する。マップ42は、第1実施形態で示した図7共用してもよい。或いは、図12に示すように、符号乗算後操舵トルクTs_sgnの負領域において補正ゲインK2を1で一定とするようにしてもよい。
第2実施形態に関しては、従来技術として特許文献1に加え特許第4959212号公報が参照される。

0061

なお、第2、第3、第4実施形態に共通の目標操舵速度演算部202は、第1実施形態の目標操舵速度演算部201とは異なり、基本目標操舵速度演算部21が演算した目標操舵速度ω*がそのまま出力される。そのため、「目標操舵速度演算部21」にあえて「基本」を付す意味は無いとも考えられる。ただし、第1、第5の実施形態との整合のため、図10等において「基本」の表記を残すこととする。

0062

(第3実施形態)
第3実施形態の戻し制御部133について、図13図15を参照して説明する。
図13に示す第3実施形態の戻し制御部133は、戻し制御量演算部303において、舵角基準トルク演算部33と並列に、戻し制御量補正トルクTr*_compを演算するドライバ操舵補正部403が設けられる。ドライバ操舵補正部403が出力した戻し制御量補正トルクTr*_compは、舵角基準トルク演算部33が出力した舵角基準トルクTθと共に、加算器38で基本戻し制御量Tr*_0に加算され、その結果、戻し制御量Tr*が算出される。
第3実施形態では、舵角基準トルクTθ及び戻し制御量Tr*が「戻し制御量の演算過程におけるいずれかの演算量」に相当し、戻し制御量補正トルクTr*_compが「補正量」に相当する。

0063

図14に示すように、ドライバ操舵補正部403は、第1マップ44及び第2マップ47を有する。
第1マップ44は、符号乗算後操舵トルクTs_sgnと、戻し制御量補正トルク基本値Tr*_comp_0との関係を規定する。図15(a)に示す第1マップの例では、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが正の値「+E」以上の区間では、補正トルク基本値Tr*_comp_0は0に設定される。符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負領域、及び「+E」未満の正領域では、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが小さくなるほど、略一定の傾きで小さくなるように補正トルク基本値Tr*_comp_0が設定される。

0064

第2マップ47は、絶対値判定部(図中「|θ|」)46にて判定された操舵角θの絶対値と、0から1までの値を取る角度状態量αθとの関係を規定する。図15(b)に示す第2マップの例では、操舵角θが0[deg]のとき、角度状態量αθは0である。操舵角θの絶対値が増加するに従って角度状態量αθは0から1に向かって増加し、操舵角θが60[deg]付近で、ほぼ1に収束する。

0065

第1マップ44で演算された補正トルク基本値Tr*_comp_0には、符号判定部411が判定した操舵角θの符号が符号乗算器43にて乗算されることで符号が調整される。更に、符号調整後のトルクに、第2マップ47が出力した角度状態量αθが乗算器48にて乗算され、戻し制御量補正トルクTr*_compが算出される。
ドライバ操舵補正部403は、図15(a)のような第1マップ44を用いることで、ドライバが戻し方向に操舵トルクTsを加えている領域での戻し制御量補正トルクTr*_compを増加させる。また、図15(b)のような第2マップ47を用いることで、ハンドル中立位置付近では、戻し制御量補正トルクTr*_compを0にする。

0066

(第4実施形態)
第4実施形態の戻し制御部134について、図16図17を参照して説明する。
図16に示す第4実施形態の戻し制御部134は、戻し制御量演算部304において、補正ゲインK4を演算するドライバ操舵補正部404が設けられる。ドライバ操舵補正部404が出力した補正ゲインK4は、乗算器34にて、舵角基準トルクTθが加算される前の基本戻し制御量Tr*_0に対して乗算される。
第4実施形態では、戻し制御量Tr*が「戻し制御量の演算過程におけるいずれかの演算量」に相当し、補正ゲインK4が「補正量」に相当する。

0067

図17に示すように、ドライバ操舵補正部404は、第1実施形態と実質的に同一形式の、符号乗算後操舵トルクTs_sgnと補正ゲインK4との関係を規定するマップ42を有する。これにより、第4実施形態は、第1実施形態と同様に、符号乗算後操舵トルクTs_sgnに応じて戻し制御量Tr*を適切に調整することができる。
さらに、第1又は第4実施形態の構成に限らず、符号乗算後操舵トルクTs_sgnに応じた補正ゲインを乗算する箇所は、戻し制御量Tr*を増減させられる箇所であれば、どこでもよい。例えば、操舵速度サーボ制御器32の直前において、目標操舵速度ω*と操舵速度ωとの速度偏差Δωに対して補正ゲインを乗算するようにしてもよい。

0068

(第5実施形態)
第5実施形態の戻し制御部135について、図18図20を参照して説明する。
図18に示す第5実施形態の戻し制御部135は、目標操舵速度演算部205において、補正目標戻し速度ω5を演算するドライバ操舵補正部405が設けられる。ドライバ操舵補正部405が出力した補正目標戻し速度ω5は、加算器24にて、基本目標操舵速度ω*_0に対して加算される。
第5実施形態では、目標操舵速度ω*が「戻し制御量の演算過程におけるいずれかの演算量」に相当し、補正目標戻し速度ω5が「補正量」に相当する。

0069

図19に示すように、ドライバ操舵補正部405は、マップ45を有する。
マップ45は、符号乗算後操舵トルクTs_sgnと、符号調整前の補正目標戻し速度基本値ω5_0との関係を規定する。図20に示すマップ45の例では、符号乗算後操舵トルクTs_sgnのI−Vの5つの区間で、補正目標戻し速度基本値ω5_0との関係が規定されている。
符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負の値「−A」未満の区間Iでは、補正目標戻し速度基本値ω5_0は、負の下限値「−ω5LIM」で一定である。

0070

符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負の値「−A」以上で負の値「−B」未満の区間IIでは、補正目標戻し速度基本値ω5_0は、符号乗算後操舵トルクTs_sgnの増加に従い、下限値「−ω5LIM」から0まで漸増する。
符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負の値「−B」以上0以下の区間III、及び、0を超え正の値「+C」未満の区間IVでは、補正目標戻し速度基本値ω5_0は、0で一定である。
符号乗算後操舵トルクTs_sgnが正の値「+C」以上の区間Vでは、補正目標戻し速度基本値ω5_0は、符号乗算後操舵トルクTs_sgnの増加に従い、0から増加する。

0071

この例の区間IVでは、操舵トルクTsが切り込み方向に加わっていても、区間IIIと同じ値の戻し制御量Tr*が維持される。このように、切り込み方向の操舵トルクTsの絶対値が小さいときには、操舵への影響を考慮しなくてもよい場合もあるため、必ずしも戻し制御量Tr*を減少させなくてもよい。この例での操舵トルクTsの値「+C」を「臨界値」という。
図20に示すマップを用いる場合、ドライバ操舵補正部405は、絶対値が臨界値以上の操舵トルクTsが切り込み方向に加わっているとき戻し制御量Tr*を減少させるように補正目標戻し速度ω5を演算する。なお、前述の図7図12のマップを用いる場合、臨界値は0に設定されているものと解釈される。

0072

マップ45が出力した補正目標戻し速度基本値ω5_0には、符号判定部411が判定した操舵角θの符号が符号乗算器43で乗算され、補正目標戻し速度ω5が演算される。
目標操舵速度演算部205は、ドライバ操舵補正部405が出力した補正目標戻し速度ω5が加算された補正後の目標操舵速度ω*を戻し制御量演算部301に出力する。戻し制御量演算部301が補正後の目標操舵速度ω*に基づいて戻し制御量Tr*を演算することで、戻し制御量Tr*を適切に調整することができる。

0073

(その他の実施形態)
(1)上記実施形態でドライバ操舵補正部401−405の制御に用いられる操舵角θは、ハンドルが中立位置にあるときの値が0であり、中立位置を基準としたハンドル位置に応じて正又は負の値を取る「ハンドル位置関連情報」の典型例である。他の実施形態では、全部又は一部のハンドル位置関連情報として、操舵角θと相関するモータ回転角や伝達系ギアの回転角、タイヤの舵角、ヨーレート等の情報を用いてもよい。その場合、上記実施形態におけるブロック図やマップの操舵角θを、適宜、他のハンドル位置関連情報に置き換えればよい。

0074

(2)上記実施形態では、操舵角θの符号が示す方向と共通の方向で操舵トルクTsの符号を定義し、符号乗算後操舵トルクTs_sgnを演算する。そして、ドライバ操舵補正部は、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負のとき、戻し制御量Tr*を維持し又は増加させ、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが正であって絶対値が臨界値以上のとき、戻し制御量Tr*を減少させるように補正量を演算する。
他の実施形態では、操舵角θの符号が示す方向と反対の方向で操舵トルクTsの符号を定義し、符号乗算後操舵トルクTs_sgnを演算してもよい。その場合、ドライバ操舵補正部は、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが正のとき、戻し制御量Tr*を維持し又は増加させ、符号乗算後操舵トルクTs_sgnが負であって絶対値が臨界値以上のとき、戻し制御量Tr*を減少させるように補正量を演算する。

0075

(3)上記実施形態では、ドライバ操舵補正部401−405における補正量の演算にマップを用いているが、マップを用いる方式に限らず、数式によって補正量を演算してもよい。
(4)各実施形態の制御ブロック図において、ドライバ操舵補正部以外の構成については、適宜、削除又は変更してもよい。例えば戻し状態判定部50や戻り速度安定化制御部60を設けなくてもよい。或いは、別の種類の補正制御を追加してもよい。
以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。

0076

10 ・・ECU(ステアリング制御装置)
11・・・基本アシストトルク演算部
13(131−135)・・・戻し制御部
401−405・・・ドライバ操舵補正部
80 ・・操舵アシストモータ
91 ・・ハンドル

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