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技術 乳癌の予後の診断補助方法、ならびに乳癌の予後の診断補助のためのキットおよび装置

出願人 国立研究開発法人国立がん研究センターシスメックス株式会社
発明者 山田哲司吉田正行増田万里菅野哲平本田一文
出願日 2016年9月9日 (4年9ヶ月経過) 出願番号 2016-176302
公開日 2018年3月15日 (3年2ヶ月経過) 公開番号 2018-038351
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析 微生物・酵素関連装置 酵素、微生物を含む測定、試験
主要キーワード 自動スライド 評価部位 マスクROM 的中率 診断補助 蛍光情報 核異型 読出装置
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年3月15日)のものです。
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図面 (13)

課題

より正確な乳癌予後予測方法を提供する。

解決手段

患者生体試料に含まれるACTN4遺伝子を検出する工程、ACTN4遺伝子のコピー数増加およびACTN4遺伝子の遺伝子増幅からなる群より選択される少なくとも1が存在する場合、乳癌の予後が不良であると判定する工程を含み、患者がHER2陰性ホルモン受容体陽性及びリンパ節転移陰性である、乳癌の予後の診断補助方法。

概要

背景

乳癌予後予測方法として、Ki67陽性細胞率に基づく方法が知られている(たとえば非特許文献1)。非特許文献2には、乳癌患者においてACTN4タンパク質細胞局在が予後不良を示す旨記載されている。

概要

より正確な乳癌の予後予測方法を提供する。患者生体試料に含まれるACTN4遺伝子を検出する工程、ACTN4遺伝子のコピー数増加およびACTN4遺伝子の遺伝子増幅からなる群より選択される少なくとも1が存在する場合、乳癌の予後が不良であると判定する工程を含み、患者がHER2陰性ホルモン受容体陽性及びリンパ節転移陰性である、乳癌の予後の診断補助方法。

目的

本発明は、より正確な乳癌の予後予測を可能にする方法を提供する

効果

実績

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請求項1

乳癌患者予後診断補助する方法であって、前記患者生体試料に含まれるACTN4遺伝子を検出する工程、および前記ACTN4遺伝子のコピー数増加および前記ACTN4遺伝子の遺伝子増幅からなる群より選択される少なくとも1が存在する場合、前記乳癌の予後が不良であると判定する工程を含み、前記患者がHER2陰性ホルモン受容体陽性及びリンパ節転移陰性である、乳癌の予後の診断補助方法。

請求項2

前記生体試料が、前記患者の乳房由来する組織または細胞から調製された試料である、請求項1記載の方法。

請求項3

前記判定工程において、前記ACTN4遺伝子のコピー数増加および前記ACTN4遺伝子の遺伝子増幅のいずれも存在しない場合、予後が良好であると判定する、請求項1または2記載の方法。

請求項4

前記ACTN4遺伝子のコピー数が5以上の場合に、前記ACTN4遺伝子のコピー数増加が存在すると判定される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

請求項5

前記検出工程において、19番染色体セントロメア数がさらに検出され、前記検出工程の後、前記19番染色体のセントロメア数に対する前記ACTN4遺伝子数の比が算出され、前記判定工程において、前記比が2以上の場合に、前記ACTN4遺伝子の遺伝子増幅が存在すると判定される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。

請求項6

前記検出工程が、in situ hybridization法により行われる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。

請求項7

前記乳癌のサブタイプが、Luminal AまたはLuminal Bである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。

請求項8

乳癌患者の予後診断を補助する方法であって、前記患者の生体試料に含まれるACTN4遺伝子を検出する工程、前記患者の生体試料におけるKi67陽性細胞率を測定する工程、および前記検出工程および測定工程の結果に基づいて、前記乳癌の予後を判定する工程、を含み、前記患者がHER2陰性、ホルモン受容体陽性及びリンパ節転移陰性であり、前記判定工程において、前記ACTN4遺伝子のコピー数増加および前記ACTN4遺伝子の遺伝子増幅の何れも存在しない場合は、前記乳癌が予後良好であると判定され、前記ACTN4遺伝子のコピー数増加または前記ACTN4遺伝子の遺伝子増幅が存在し、且つ前記Ki67陽性細胞率が所定の閾値未満である場合は、前記乳癌が予後中程度であると判定され、前記ACTN4遺伝子のコピー数増加または前記ACTN4遺伝子の遺伝子増幅が存在し、且つ前記Ki67陽性細胞率が所定の閾値以上である場合は、前記乳癌が予後不良であると判定する、乳癌の予後の診断補助方法。

請求項9

前記Ki67陽性細胞率が、Ki67ラベリングインデックス(Ki67 labeling index)である請求項8記載の方法。

請求項10

請求項1〜9のいずれかに記載の方法に用いられる試薬キットであって、前記ACTN4遺伝子の細胞あたりのコピー数または前記19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比を測定することのできる試薬を含んでなる、キット

請求項11

前記試薬が、ゲノム上の前記ACTN4遺伝子に特異的なプローブを含んでなる、請求項10に記載のキット。

請求項12

更に、前記Ki67陽性細胞率を測定することのできる試薬を含んでなる、請求項10または11に記載のキット。

請求項13

プロセッサメモリとを含むコンピュータを少なくとも備え、前記メモリには、乳癌患者から採取された生体試料における、ACTN4遺伝子のコピー数増加およびACTN4遺伝子の遺伝子増幅からなる群より選択される少なくとも1の情報を測定装置から取得する工程と、 取得した情報に基づいて、前記患者の乳癌の予後を判定する工程と、を前記コンピュータに実行させるためのプログラムが記録されている、乳癌の予後を判定する判定装置

技術分野

0001

本発明は、ACTN4遺伝子のコピー数増加および/または遺伝子増幅に基づく、乳癌の予後の診断補助方法、ならびに乳癌の予後の診断補助のためのキットおよび装置に関する。

背景技術

0002

乳癌の予後予測方法として、Ki67陽性細胞率に基づく方法が知られている(たとえば非特許文献1)。非特許文献2には、乳癌患者においてACTN4タンパク質細胞局在が予後不良を示す旨記載されている。

先行技術

0003

ONO M, et al., Breast Cancer. 2015 Mar;22(2) :141-52.
K. Honda, J. Cell. Biol., 1998; 140: 1383.
A. KALLIONIEMI, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., Vol. 91, pp. 2156-2160, March 1994.

発明が解決しようとする課題

0004

しかしながら、乳癌の予後予測因子としてKi67陽性細胞率のみを用いた方法では、必ずしも正確に予後を予測できるとはいえない。また、ACTN4遺伝子を乳癌予後予測マーカーとして用いる予後予測方法は知られていない。なお、ACTN4遺伝子はゲノムにおいて19q13.1に位置する。非特許文献3では、乳癌のセルラインの1つ(MDA-157)で19q13.1の増幅が検出されたことが報告されている。しかし、乳癌の15のセルラインのうちの1つにのみ認められた現象を報じたのみで、この文献からACTN4遺伝子増幅が臨床で用いられ得るマーカーとの認識は生じ得ない。また、単に乳癌のセルラインにおける遺伝子増幅が報告されているのみであって、予後との相関性について全く記載されていない。

0005

また、非特許文献2には、ACTN4タンパク質の細胞内局在の変化が予後不良を示すと記載されているが、本発明者らがACTN4タンパク質の発現量を乳癌の予後予測マーカーとして利用可能か検証したところ、有用性が低いことがわかった。本発明者らはこの知見に基づき、より正確な乳癌の予後予測方法の開発を行った。

課題を解決するための手段

0006

本発明者らは、ACTN4遺伝子のコピー数増加および/または遺伝子増幅を予後予測因子とすることによって、より正確な乳癌の予後予測ができることを見出して本発明を完成した。

0007

すなわち、本発明によれば、患者生体試料に含まれるACTN4遺伝子を検出する工程、ACTN4遺伝子のコピー数増加およびACTN4遺伝子の遺伝子増幅からなる群より選択される少なくとも1が存在する場合、乳癌の予後が不良であると判定する工程を含み、患者がHER2陰性ホルモン受容体陽性及びリンパ節転移陰性である、乳癌の予後の診断補助方法が提供される。

0008

また、本発明によれば、上記方法に用いられる試薬キットであって、ACTN4遺伝子の細胞あたりのコピー数または19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比を測定することのできる試薬を含んでなるキットが提供される。

0009

更に、本発明によれば、プロセッサメモリとを含むコンピュータを少なくとも備え、メモリには、乳癌患者から採取された生体試料における、ACTN4遺伝子のコピー数増加およびACTN4遺伝子の遺伝子増幅からなる群より選択される少なくとも1の情報を測定装置から取得する工程と、 取得した情報に基づいて、患者の乳癌の予後を判定する工程とをコンピュータに実行させるためのプログラムが記録されている、乳癌の予後を判定する判定装置が提供される。

発明の効果

0010

本発明は、より正確な乳癌の予後予測を可能にする方法を提供することができる。また本発明は、乳癌の予後を予測するためのキットおよび装置を提供することができる。

図面の簡単な説明

0011

肺腺癌患者(I-III期)におけるACTN4タンパク質発現陽性症例群および陰性症例群の全生存率を示す図である。
膵癌患者(I-IV期)におけるACTN4タンパク質発現陽性症例群および陰性症例群の全生存率を示す図である。
HER2陰性、ホルモン受容体陽性及びリンパ節転移陰性乳癌患者におけるACTN4遺伝子数増加陽性群および陰性群の乳癌特異的生存率(A)と無病生存率(B)を示す図である。
HER2陰性、ホルモン受容体陽性及びリンパ節転移陰性乳癌患者におけるACTN4タンパク質発現陽性群および陰性群の無病生存率を示す図である。
HER2陰性、ホルモン受容体陽性及びリンパ節転移陰性乳癌患者におけるKi67-LI (labeling index)高値群および低値群の乳癌特異的生存率(A)および無再発生存率(B)を示す図である。
Luminal A (Ki67-LI低値)判定群におけるACTN4遺伝子陽性群および陰性群の無再発生存率を示す図である。
Luminal B(Ki67-LI高値)判定群におけるACTN4遺伝子陽性群および陰性群の無再発生存率を示す図である。
Ki67-LIおよびACTN4遺伝子数増加に基づいた被験者の予後の良否を判定するためのフローチャートである。
被験者の乳癌の予後を判定するための判定装置の一例を示した概略図である。
図9の判定装置の機能構成を示すブロック図である。
図9に示された判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図9に示された判定装置を用いた、被験者の予後を判定するためのフローチャートである。

0012

本実施形態の乳癌患者の予後診断補助する方法(以下、単に「方法」ともいう)の対象は、HER2陰性、ホルモン受容体陽性およびリンパ節転移陰性の乳癌患者である。
HER2の陽性/陰性の判定は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、HER2タンパク質の過剰発現をみる免疫組織化学染色(IHC)法、HER2遺伝子の増幅を検索する蛍光in situ hybridization (FISH)法などを用いることができる。IHC法による判定は、例えば、染色された陽性細胞が占める割合に基づくスコアによって行う。FISH法による判定は、例えば、細胞あたりのHER2遺伝子の数に基づき行うことができる。また第17染色体のセントロメア(CEP17)蛍光シグナルとHER2遺伝子の蛍光シグナルをカウントし、各々のシグナル総数比率から行うこともできる。HER2の判定は、アメリカ臨床腫瘍学会(ASCO)およびアメリカ病理学会(CAP)によるガイドライン(ASCO/CAPガイドライン)に準拠して行うことができる。

0013

ホルモン受容体の陽性/陰性の判定は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、IHC法により陽性細胞の占有率を評価する方法や、陽性細胞率と染色強度スコア化して評価する方法を用いることができる。陽性細胞率を評価する方法としてJ scoreがあり、陽性細胞率10%以上を陽性と判定する。陽性細胞率と染色強度をスコア化して評価する方法としてAllred scoreやH scoreがある。Allred scoreは、陽性細胞率と染色強度から8段階に分類し、3以上を陽性と判定する。ホルモン受容体の判定は、ASCO/CAPガイドラインに準拠して行うこともできる。

0014

リンパ節転移の陽性/陰性の判定は、触診、CT診断MRI診断、マンモグラフィ、PET診断、超音波検査等の画像診断乳房周囲のリンパ節センチネルリンパ節等)組織病理検査または遺伝子検査等公知の方法によって行うことができる。

0015

本実施形態の方法は、上記乳癌患者の生体試料に含まれるACTN4遺伝子を検出する工程を含む。ACTN4遺伝子の検出は、インビトロで行われる。ACTN4遺伝子の配列およびこれによりコードされるアミノ酸配列は当該技術分野において周知であり、例えば、配列番号1および配列番号2(Ensembl ID:ENSG00000130402およびENST00000252699)に示されるヒト由来ACTN4の配列が挙げられる。ヒト由来ACTN4の配列はまた、NCBI(National Center for Biotechnology Information)アクセス番号:NM_004924およびNP_004915にも登録されている。また、ACTN4遺伝子の遺伝子座も周知であり、例えば、ヒトのACTN4遺伝子は、第19染色体の第43,830,167〜43,913,010塩基に位置する。ヒト以外の哺乳動物についても、ヒト由来ACTN4に対応する同様の遺伝子を利用することが可能である。

0016

検出工程に用いられる生体試料は、ACTN4遺伝子の増幅を判断できる試料であれば特に限定されない。乳房に由来する組織または細胞から調製された試料が好ましい。このような生体試料として、例えば、被験者から手術または生検により採取した乳癌の組織または細胞が挙げられる。被験者から採血した血液に存在し得る血中循環腫瘍細胞Circulating Tumor Cells;CTC)も用いることができる。

0017

上記生体試料から、公知の遺伝子検出方法を用いてACTN4遺伝子を検出することができる。例えば、サザンブロッティング法、in situハイブリダイゼーション(ISH)法、比較ゲノムハイブリダイゼーションCGH)法、定量的PCR法などが挙げられる。これらの中でもin situハイブリダイゼーション(ISH)法が好ましい。

0018

本実施形態では、上記検出工程の結果に基づいて、ACTN4遺伝子の増幅が存在するか否かを判断し、その結果に従って、被験者の予後の良否を判定する。この判定工程において、ACTN4遺伝子のコピー数増加および遺伝子増幅の少なくともいずれかが存在する場合、予後が不良であると判定する。一方、ACTN4遺伝子のコピー数増加および遺伝子増幅のいずれも存在していない場合、予後が良好であると判定し得る。

0019

本明細書において、「遺伝子のコピー数増加(copy number increase)」とは、細胞内で染色体が異常増加することによって、特定の遺伝子の数が増加する現象をいう。たとえば、乳癌の細胞において複数の19番染色体が検出されることがある。染色体自体が増加することによってACTN4遺伝子数も増加する。

0020

本明細書において、「遺伝子増幅」とは、当該遺伝子の一部または全部を含む染色体の一部分が異常に増幅する現象をいう。たとえば、ACTN4遺伝子は19番染色体に本来1コピー存在する。しかし、乳癌由来の細胞において19番染色体内でACTN4遺伝子が複数コピー検出されることがある。これは、ACTN4遺伝子の異常増幅である。

0021

本明細書において、「ACTN4遺伝子数の増加」は、ACTN4遺伝子のコピー数増加または遺伝子増幅によってACTN4遺伝子の数が増加する現象をいう。

0022

ACTN4遺伝子のコピー数増加および遺伝子増幅の存否は、以下のようにして検出することができる。まず、細胞当たりのACTN4遺伝子数を測定する。次に、19番染色体において異常増幅が起こらないことが知られている部位(たとえば、セントロメア)の数を測定する。当該部位の数に対して、ACTN4遺伝子数が増加している場合は、染色体数は増加せず、ACTN4遺伝子が増幅しているため、ACTN4遺伝子増幅が存在すると判定することができる。すなわち、当該部位の数とACTN4遺伝子の数との比を算出し、この比に基づいてACTN4遺伝子の遺伝子増幅の存否を判定することができる。当該部位の数とACTN4遺伝子数がいずれも同程度増加していると認められる場合は、染色体自体が増加しているため、コピー数増加が存在すると判定することができる。なお、本明細書において、「比」や「比率」の語は、「比の値」と同義である。たとえば、「Bに対するAの比」や「AとBとの比」は、「A/B」である。

0023

サザンブロッティング法では、ゲノムDNAを断片化し、電気泳動で分離し、膜に転写し、ACTN4遺伝子の特異的プローブにハイブリダイゼーションさせる。この特異的プローブからのハイブリダイゼーションシグナルの強度と、コピー数の増加のない同じゲノムの領域にハイブリダイズする対照プローブからのシグナル強度とを比較することにより、相対的なACTN4遺伝子のコピー数が求められる。

0024

in situハイブリダイゼーション(ISH)法は、主に、分析される組織または細胞を固定化し、この組織または細胞をプレハイブリダイゼーション処理し、この組織または細胞の中の核酸に対して特異的プローブをハイブリダイズさせ、結合しなかった特異的プローブを除去するための洗浄を行い、ハイブリダイズした特異的プローブを検出することによって行われる。蛍光in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法では、この特異的プローブは、蛍光レポーターで標識されている。1個の細胞核内における蛍光の数を計数することにより、その細胞におけるACTN4遺伝子のコピー数が得られる。

0025

FISH法に用いられる特異的プローブとして、ヒト第19番染色体上の第43.81Mb〜第44.02Mbの領域のヌクレオチド配列からなるものが好適に用いられる。この領域のヌクレオチド配列からなるプローブを用いることにより、ゲノム上のACTN4遺伝子のコピー数を測定するにあたって、より高感度で正確な測定が可能となる。

0026

比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)法では、分析される被験細胞対照となる正常細胞からそれぞれDNAを抽出し、それぞれのDNAを異なる色の蛍光色素で標識し、これら標識DNAの等量からなる混合溶液を調製し、この混合溶液を37℃で2〜3日間暗所保管する。これにより、染色体の総ての部位に対して被験DNAと対照DNAとの間で競合的な結合が生じる。その結果、被験DNA中に遺伝子コピー数の増加があれば、スライド上のその遺伝子に対応する位置において被験DNAを標識した色の蛍光が強く観察され、逆に、被験DNA中に遺伝子コピー数の減少があれば、スライド上のその遺伝子に対応する位置において対照DNAを標識した色の蛍光が強く観察される。

0027

定量的PCR法では、ゲノム中のACTN4遺伝子が増幅反応鋳型となるため、そのコピー数に応じた量の増幅産物が得られる。

0028

これらの中でも、検出精度等の観点から、in situハイブリダイゼーション法が好ましく、FISH法がより好ましい。

0029

生体試料中の細胞あたりのACTN4遺伝子のコピー数が5以上である場合に、ACTN4遺伝子のコピー数増加が存在すると判断してもよい。

0030

19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比は、FISH法等によって測定できる。例えば、特異的プローブとして、ACTN4(RP11-118P21)遺伝子座を含むヒト19番染色体上の第43.81Mb〜第44.02Mbの領域を含有する変性させたバクテリア人工染色体(BAC)プローブと、19番染色体傍セントロメアコントロールクローンを用い、生体試料中のゲノムDNAとハイブリダイゼーションさせる。19番染色体セントロメア蛍光シグナル数とACTN4遺伝子の蛍光シグナル数をカウントし、ACTN4遺伝子の蛍光シグナル数を19番染色体セントロメア蛍光シグナルで除して得た値として、19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比を求めることができる。この値が好ましくは2以上の場合に、ACTN4遺伝子の遺伝子増幅が存在すると判断できる。

0031

本発明の別の実施形態においては、上記のACTN4遺伝子検出に加えて、Ki67陽性細胞率が測定される。IHC法では、Ki67を認識するMIB-1抗体などの抗体を用いて免疫染色を行うことができる。Ki67陽性細胞率の評価方法としては、評価細胞数に対する陽性細胞数の割合をパーセンテージで表すラベリングインデックス(labeling index;LI)を用いることができる。評価部位として浸潤部を用いることが好ましく、またホットスポットが認められる場合には、ホットスポットを評価部位に含めることが好ましい。評価する癌細胞の数は少なくとも500〜1,000個が好ましい。Ki67 LIの閾値は、予後不良であることが既知の患者群および予後良好であることが既知の患者群のKi67 LIを算出し、予後良好群と予後不良群とを最も精度良く分類できる値に設定することができる。なお、この閾値は、感度特異度、陽性的中率、陰性的中率などを考慮して設定することができる。また染色強度を問わず、核陽性像を陽性とすることができる。

0032

Ki67陽性細胞率(例えばKi67 LI)の測定結果および上記ACTN4遺伝子検出結果に基づき、患者の予後を判定することができる。この実施形態では、患者の予後を予後良好、予後不良およびこれらの中間群である中程度の3群に分類することができる。具体的には、ACTN4遺伝子のコピー数増加および遺伝子増幅の何れも検出されない場合は、Ki67のLIにかかわらず予後良好であると判定することができる。ACTN4遺伝子のコピー数増加および/または遺伝子増幅が存在し、Ki67のLIが所定の閾値未満である場合は、予後が中程度であると判定することができる。ACTN4遺伝子のコピー数増加および/または遺伝子増幅が存在し、Ki67のLIが所定の閾値以上である場合は、予後不良であると判定することができる。図8は、この実施形態の予後予測の処理フローを示すフローチャートである。この処理フローについては、後述する。

0033

本発明の範囲には、乳癌の予後の診断用試薬キット(以下、単に「キット」ともいう)が含まれる。本実施形態のキットは、細胞あたりのACTN4遺伝子のコピー数または19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比を測定することのできる試薬を含み得る。このような試薬として、好ましくは、FISH法に用いることのできる、ゲノム上のACTN4遺伝子に特異的なプローブが挙げられる。この特異的プローブは、好ましくはヒト19番染色体上の第43.81Mb〜第44.02Mbの領域のヌクレオチド配列を含み得る。また本実施形態のキットは、ヒト19番染色体セントロメアプローブを含み得る。

0034

また別の実施形態では、Ki67のLIなどのKi67陽性細胞率を測定できる試薬を含み得る。このような試薬として、MIB−1抗体が挙げられる。

0035

乳癌患者の予後の判定は、例えば、図9に示される判定装置11によって行なうことができる。以下、乳癌患者の予後の判定に用いることができる判定装置を、添付の図面を参照しながら、より詳細に説明するが、本発明は、かかる実施形態のみに限定されるものではない。図9は、本発明の一実施形態に係る乳癌患者の予後判定装置の概略説明図である。図9に示された判定装置11は、測定装置22と、当該測定装置22と接続されたコンピュータシステム33とを含んでいる。

0036

本実施形態において、測定装置22は、in situ hybridization法によるACTN4遺伝子に結合したプローブからのシグナルを検出するスキャナーを含み得る。本実施形態において、前記シグナルは例えば蛍光シグナルなどのACTN4遺伝子数の増加に関する光学的情報であり得る。プローブをハイブリダイズさせた後の組織マイクロアレイを測定装置22にセットすると、測定装置22は、組織切片上のプローブに結合したACTN4遺伝子に基づく光学的情報を取得し、得られた光学的情報をコンピュータシステム33に送信する。

0037

スキャナーは、ACTN4遺伝子に基づくシグナルの検出が可能なものであればよい。ACTN4遺伝子に基づくシグナルは、標識物質によって異なることから、スキャナーは標識物質の種類に応じて、当該標識物質から生じるシグナルを検出するのに適したものを適宜選択することができる。例えば、標識物質が蛍光である場合、測定装置22として、当該蛍光を検出可能なスキャナーを用いることができる。スキャナーで検出された光学的情報は、コンピュータシステム33に送信される。

0038

コンピュータシステム33は、コンピュータ本体33aと、入力デバイス33bと、検体情報、判定結果などを表示する表示部33cとを含む。コンピュータシステム33は、測定装置22から光学的情報を受信する。そして、コンピュータシステム33のプロセッサは、前記光学的情報に基づいて、乳癌患者の予後を判定するプログラムを実行する。

0039

図10は、図9に示された診断補助装置の機能構成を示すブロック図である。
コンピュータシステム33は、図10に示されるように、取得部301と、記憶部302と、算出部303と、判定部304と、出力部305とを備える。取得部301は、測定装置22と、ネットワークを介して通信可能に接続されている。なお、算出部303と判定部304とは、制御部306を構成している。
取得部301は、測定装置22から送信された情報を取得する。記憶部302は、判定に必要な閾値、19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比を算出するための式、予後判定のための処理プログラムなどを記憶する。算出部303は、取得部301で取得された情報を用い、記憶部302に記憶された式や処理プログラム等を用いて、19番染色体セントロメア数およびACTN4遺伝子数を算出し、第19染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比を算出する。判定部304は、算出部303によって算出された値に基づき、予後判定を行う。出力部305は、判定部304による判定結果を、乳癌の予後の良否として表示部33cに出力する。

0040

図11は、図9に示された判定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図11に示されるように、コンピュータ本体33aは、CPU(Central Processing Unit)330と、ROM(Read Only Memory)331と、RAM332と、ハードディスク333と、入出力インターフェイス334と、読出装置335と、通信インターフェイス336と、画像出力インターフェイス337とを備えている。CPU330、ROM331、RAM(Random Access Memory)332、ハードディスク333、入出力インターフェイス334、読出装置335、通信インターフェイス336および画像出力インターフェイス337は、バス338によってデータ通信可能に接続されている。
CPU330は、ROM331に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM332にロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。CPU330がアプリケーションプログラムを実行することにより、前述した各機能ブロックが実現される。
これにより、コンピュータシステムが、乳癌患者の予後の良否の判定装置としての端末として機能する。
ROM331は、マスクROMPROMEPROM、EEPROMなどによって構成されている。ROM331には、CPU330によって実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータが記録されている。
RAM332は、SRAM、DRAMなどによって構成されている。RAM332は、ROM331およびハードディスク333に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。ROM332はまた、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU330の作業領域として利用される。
ハードディスク333は、CPU330に実行させるためのオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム(乳癌患者の予後の良否判定のためのコンピュータプログラム)などのコンピュータプログラムおよび当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。
読出装置335は、フレキシブルディスクドライブCD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブなどによって構成されている。読出装置335は、可搬型記録媒体340に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。
入出力インターフェイス334は、例えば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインターフェイスと、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインターフェイスと、D/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインターフェイスとから構成されている。入出力インターフェイス334には、キーボードマウスなどの入力デバイス33bが接続されている。操作者は、当該入力デバイス33bを使用することにより、コンピュータ本体33aにデータを入力することが可能である。
通信インターフェイス336は、例えば、Ethernet(登録商標)インターフェイスなどである。コンピュータシステム33は、通信インターフェイス336により、プリンタへの印刷データの送信が可能である。
画像出力インターフェイス337は、LCD、CRTなどで構成される表示部33cに接続されている。これにより、表示部33cは、CPU330から与えられた画像データに応じた映像信号を出力することができる。表示部33cは、入力された映像信号にしたがって画像(画面)を表示する。

0041

つぎに、判定装置11による乳癌患者の予後の良否判定の処理手順を説明する。図12は、図9に示された判定装置を用いた乳癌患者の予後良否判定のフローチャートである。ここでは、被験者の生体試料から構成した組織切片上のプローブに結合したACTN4遺伝子に基づく蛍光情報を用いて判定を行なう場合を例として挙げて説明するが、本発明は、かかる実施形態のみに限定されるものではない。

0042

まず、ステップS1−1において、取得部301は、測定装置22から蛍光情報を取得する。そして、ステップS1−2において、算出部303は、取得部301が取得した蛍光情報からACTN4遺伝子の細胞あたりのコピー数および19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比を算出し、記憶部302に送信する。
つぎに、ステップS1−3において、算出部303は、記憶部302に取得したACTN4遺伝子の細胞あたりのコピー数(図12において「コピー数」で表す)または19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比(図12において「CEP19/ACTN4」で表す)が、記憶部302に記憶された閾値以上であるか否かの判定を行う。ここで、ACTN4遺伝子の細胞あたりのコピー数または前記比の少なくとも一方が、閾値以上であるとき、ステップS1−4に進行する。そして、判定部304は被験者の予後が不良であることを示す判定結果を出力部305に送信する。一方、ACTN4遺伝子の細胞あたりのコピー数および19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比のいずれもが閾値よりも小さいとき、ステップS1−5に進行する。そして、判定部304は、被験者の予後が良好であることを示す判定結果を出力部305に送信する。

0043

その後、ステップS1−6において、出力部305は、判定結果を出力し、表示部33cに表示させたり、プリンタに印刷させたりする。これにより、医師などが乳癌患者の予後が良好か、不良かについて判断することを補助する情報を提供することができる。

0044

本発明の別の実施形態は、Ki67陽性細胞率およびACTN4遺伝子に基づいて予後判定を行う装置である。ACTN4遺伝子についての測定結果および算出結果は、上に述べたように記憶部302に保存される。Ki67のLIは、ユーザが入力デバイス33bを用いて入力する。入力されたKi67のLIは記憶部302に記憶される。記憶部302に記憶されたこれらの情報に基づいて、判定部304は図8に示す処理を実行する。

0045

ステップS2−1において、算出部303は、記憶部302に取得したACTN4遺伝子の細胞あたりのコピー数(図8において「コピー数」で表す)または19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比(図8において「CEP19/ACTN4」で表す)が、記憶部302に記憶された閾値以上であるか否かの判定を行う。ここで、ACTN4遺伝子の細胞あたりのコピー数または前記比の少なくとも一方が、閾値以上であるとき、ステップS2−2に進行する。そして、Ki67のLIの値が記憶部302に記憶された閾値以上であるか否かの判定を行う。Ki67のLI(図8において「Ki67」で表す)が閾値以上であるとき、ステップS2−3に進行する。そして、判定部304は被験者の予後が不良であることを示す判定結果を出力部305に送信する。一方、Ki67のLIが閾値よりも小さいとき、ステップS2−4に進行する。そして、判定部304は、被験者の予後が中程度であることを示す判定結果を出力部305に送信する。
これに対し、ACTN4遺伝子の細胞あたりのコピー数および19番染色体セントロメア数に対するACTN4遺伝子数の比のいずれもが閾値よりも小さいとき、ステップS2−5に進行する。そして、判定部304は、被験者の予後が良好であることを示す判定結果を出力部305に送信する。

0046

その後、ステップS2−6において、出力部305は、判定結果を出力し、表示部33cに表示させたり、プリンタに印刷させたりする。これにより、医師などが乳癌患者の予後が良好か、不良か、中程度かについて判断することを補助する情報を提供することができる。

0047

以下、本発明を実施例等によって詳細に説明するが、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。

0048

参考例1:I期肺腺癌とACTN4遺伝子の発現亢進との関連
サンプルとして、1997年から2009年までに国立がんセンター中央病院(日本国)においてI期肺腺癌の切除手術施行された372名の患者と、IIおよびIII期肺腺癌の切除手術を施行された168名の患者からの、ホルマリン固定パラフィン包埋された切除検体(計540)を用いた。
これらのサンプルについて、ACTN4タンパク質の発現を免疫組織化学分析によって検討した。免疫組織化学分析に用いた一次抗体は、国立がんセンター研究所(日本国)で作製された抗ヒトACTN4ウサギポリクローナル抗体とした。免疫染色は、アビジンビオチン複合体(Avidin-Biotin Complex)を用いるABC法によって行った。

0049

ACTN4タンパク質発現の評価として、同一切片上の血管内皮と比べて、がん部で発現が亢進しており、かつ、その亢進部分の面積腫瘍全体の面積の30%以上を占めるサンプルを陽性例と定義し、それ以外のサンプルを陰性例と定義した。ACTN4タンパク質発現の陽性症例と陰性症例の2群について、Kaplan-Meier法によって生存曲線を作成し、Log-rank検定により検討した。得られた生存曲線を図1に示す。陰性症例の5年生存率は82%であったのに対し、陽性症例の5年生存率は69%であった。また、陰性症例と陽性症例の生存率の差は、術後5年以降においてより大きくなることがわかる。よって、図1によれば、ACTN4タンパク質発現の陰性症例に比べて、陽性症例は統計学的な有意差をもって予後が不良であったことがわかる。

0050

参考例2:膵癌とACTN4タンパク質の発現亢進との関連
サンプルとして、1990年から2003年までに国立がんセンター中央病院(日本国)において浸潤性膵管癌の切除手術を施行された、既往歴のない173名の患者からの、ホルマリン固定パラフィン包埋された切除検体を用いた。これらのサンプルについて、参考例1と同様にしてACTN4タンパク質の発現を分析した。

0051

膵癌細胞におけるACTN4の発現の評価は、同一切片上の血管内皮より明らかに染色性が高度のものを強陽性(strong positive)、血管内皮と染色性が同等か低下しているもの(まったく染色されていないものも含む)を弱陽性または陰性(weak positive or negative)とし、この2つのカテゴリーに分類した。この分類は、サンプルの採取元である患者の他の臨床データを知らない3名の研究者によって行われた。分類されたACTN4タンパク質発現の強陽性症例と弱陽性/陰性症例の2群について、Kaplan-Meier法によって生存曲線を作成し、Cox-Mantel検定により検討した。得られた生存曲線を図2に示す。図2によれば、ACTN4発現の弱陽性/陰性症例である64例に比べて、強陽性症例である109例は統計学的な有意差をもって予後が不良であったことがわかる。

0052

実施例1:乳癌とACTN4遺伝子のコピー数増加/遺伝子増幅との関連
サンプルとして、1996〜2000年に東京国立がん研究センター中央病院(日本国)において、原発性乳癌の切除手術を受けた、ホルモン受容体陽性、HER2陰性およびリンパ節転移陰性の浸潤性乳癌を持つ369人の患者からの、ホルマリン固定パラフィン包埋された組織ブロックを用いて組織マイクロアレイを構成した。
組織ブロックを3〜4μmの厚さに薄切して測定用試料とし、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行った。
プローブとして、ACTN4遺伝子と第19番染色体(対照クローン)を含むバクテリア人工染色体(BAC)クローンのFISHプローブ(Abnova社)を用いた。このプローブをSpectriumOrange(Abbott Molecular,Des Plaines,IL)を用いて標識化した。BACクローンDNAでFISHを行った。ハイブリダイゼーションは37℃で48時間行った。核は4,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール対比染色した。20個の間期腫瘍細胞の核におけるACTN4遺伝子及び対照の蛍光シグナルの数を2人の研究者によって別々に計数した。ここで、ACTN4遺伝子のシグナルの数を対照の蛍光シグナルの数で除した値が2以上(遺伝子増幅)であるか、細胞あたりのACTN4遺伝子の平均コピー数が5以上(コピー数増加)である場合を「ACTN4遺伝子陽性」と定義し、それ以外を「ACTN4遺伝子陰性」と定義する。

0053

上記ACTN4遺伝子陽性/陰性分類と、各種臨床病理学的因子とをCox回帰モデル単変解析および多変量解析によって分析した。変数としては、ACTN4遺伝子(陽性/陰性)の他、年齢(50以上/50歳未満)、閉経(前/後)、浸潤癌サイズ(2cm以上/2cm未満)、組織(浸潤性乳管癌/その他)、組織学ステージ(1−2/3)、核異型度(1−2/3)、リンパ管浸襲(陽性/陰性)、Ki67-LI(14以上/14未満)、ACTN4タンパク質発現(陽性/陰性)を用いた。結果を表1に示す。

0054

0055

表1より、ACTN4遺伝子(陽性/陰性)は、独立した予後予測因子であることが示された。

0056

上記分類されたACTN4遺伝子陽性と陰性の2群について、Kaplan-Meier法によって生存曲線を作成し、Cox-Mantel検定により検討した。特異的生存率(BCSS)は、手術から乳癌死亡又は最後のフォローアップ検査日の間隔として測定した。無病生存期間DFS)は、手術から新たな病変の最初の検出までの時間の長さと定義した。得られた生存曲線を図3に示す。図3によれば、BCSSおよびDFSのいずれにおいてもACTN4遺伝子陰性群に比べて、陽性群は統計学的な有意差をもって予後が不良であったことがわかる。

0057

比較例1:乳癌とACTN4タンパク質の発現亢進との関連
実施例1と同じ組織マイクロアレイを用いて、免疫組織化学分析(IHC)によりACTN4タンパク質の発現解析を行った。免疫染色は、Ventana DABMap detection kitおよび自動スライド染色(Discovery XT; Ventana Medical System)を用いて行った。
ACTN4タンパク質発現の評価として、同一切片上の血管内皮と比べて、癌部で発現が亢進するサンプルを陽性例と定義し、それ以外のサンプルを陰性例と定義した。
ACTN4タンパク質発現の陽性症例と陰性症例の2群について、Kaplan-Meier法によって生存曲線を作成し、Log-rank検定により検討した。得られた生存曲線を図4に示す。IHCの結果について2人の独立した研究者が評価した。

0058

比較例2:乳癌とKi67のLIとの関連
実施例1と同じ組織マイクロアレイを用いて、IHC法によりKi67のLIを測定した。抗Ki67抗体としてMIB-1(Dako社)を用いた。IHCは、Autostainer Link 48 (Dako社)を用いて行った。Ki67 LIについては、Ki67陽性細胞のホットスポットを含む組織中心部あたり2〜3領域を選択し、異なる領域の複数の顕微鏡写真撮影した。顕微鏡写真をプリントし、1000個の癌細胞あたりの中〜強程度の免疫反応を示すKi67陽性癌細胞の割合を2人の独立した研究者が測定した。測定値平均値をKi67 LIとした。Ki67 LIが14%以上をLuminal B(Ki67-LI高値)群、14%未満をLuminal A(Ki67-LI低値)群とした。Kaplan-Meier法によって生存曲線を作成し、Log-rank検定により検討した。得られた生存曲線を図5に示す。

0059

(参考例1、参考例2,実施例1,比較例1および比較例2の考察)
非特許文献1の記載から、ACTN4タンパク質の過剰発現により、予後不良が予測できる可能性が示唆される。そこで、ACTN4タンパク質発現と予後の関係を確認した。肺癌及び膵臓癌については、予後良好群と不良群を区別することができた(参考例1および2)。一方、乳癌では、ACTN4タンパク質発現により予後を区別することができなかった(比較例1)。また比較例1の結果から、乳癌におけるACTN4遺伝子と予後との間にも相関がないことが当然に予想される。しかし、実施例1の結果によると、驚くべきことに、ACTN4遺伝子と予後には、統計学的に有意な差をもって相関が認められた。さらに、実施例1および比較例2の結果によると、ACTN4遺伝子に基づく予後予測は、現在乳癌の予後不良マーカーとして臨床的に使用されているKi67のLIよりも、高精度であった。

0060

実施例2
実施例1と同じ組織マイクロアレイを用いて、IHC法によりKi67のLIを測定した。抗Ki67抗体としてMIB-1(Dako社)を用いた。IHCは、Autostainer Link 48 (Dako社)を用いて行った。Ki67 LIについては、Ki67陽性細胞のホットスポットを含む組織中心部あたり2〜3領域を選択し、異なる領域の複数の顕微鏡写真を撮影した。顕微鏡写真をプリントし、1000個の癌細胞あたりの中〜強程度の免疫反応を示すKi67陽性癌細胞の割合を2人の独立した研究者が測定した。測定値の平均値をKi67 LIとした。Ki67 LIが14%以上をLuminal B(Ki67-LI高値)群、14%未満をLuminal A(Ki67-LI低値)群とした。
各群について、実施例1と同様にして、FISH法によりACTN4遺伝子陽性群と陰性群に分類した。Kaplan-Meier法によって生存曲線を作成し、Log-rank検定により検討した。図6にはLuminal A(Ki67-LI低値)群の患者のKaplan-Meier曲線、図7にはLuminal B(Ki67-LI高値)群の患者のKaplan-Meier曲線が示される。

0061

現在、ホルモン受容体陽性およびHER2陰性の患者群において、Ki67-LI低値をLuminal A、Ki67-LI高値をLuminal Bに分類し、Luminal A群ではホルモン療法推奨され、Luminal B群では、ホルモン療法に加え化学療法が推奨される。図6に示すように、Luminal A群においても、ACTN4遺伝子陽性の場合には、予後が不良となる。一方、図7に示すように、Luminal B群においても、ACTN4遺伝子陰性の場合には予後は良好となる。したがって、Ki67に加え、ACTN4遺伝子を予後予測因子とした予後判定を行うことで、Ki67-LIによるLuminal A 判定群の中でも化学療法が必要な患者を選択でき、一方、Luminal B判定群の中でも化学療法が不要な患者を選択できることが示唆される。

実施例

0062

また、図6および図7より、Ki67-LIの高値・低値(陽性・陰性)にかかわらず、ACTN4遺伝子陰性群は、予後が良好であることがわかる。図7より、Ki67-LIおよびACTN4遺伝子の何れも陽性の群は、予後が不良であることがわかる。図6より、Ki67-LIが陰性であってACTN4遺伝子が陽性の群は、上記の予後良好群および予後不良群の中間に位置することがわかる。以上のことから、Ki67陽性細胞率およびACTN4遺伝子の両方を予後予測因子として用いることにより、予後を三分類し得ることが示唆される。

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