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技術 テラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法

出願人 浜松ホトニクス株式会社
発明者 高橋永斉高橋考二渡辺向陽高橋宏典井上卓
出願日 2016年8月31日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2016-169290
公開日 2018年3月8日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 2018-036484
状態 特許登録済
技術分野 レーザ(2) メーザ
主要キーワード ハーフサイクル 整形ステップ 構成周波数 波形関数 ペリスコープ コヒーレント制御 スペクトル関数 パルス時間間隔
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

テラヘルツ波発生素子におけるキャリア飽和をより効果的に回避することができるテラヘルツ波発生装置を提供する。

解決手段

テラヘルツ波発生装置1Aは、シングル光パルスP1を出力する光源3と、光源3と光学的に結合され、シングル光パルスP1から、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスP21〜P23を生成し、光パルスP21〜P23それぞれを、波長に応じて異なる光路L1〜L3上に出力するマルチパルス生成部10Aと、マルチパルス生成部10Aと光学的に結合され、マルチパルス生成部10Aから出力された光パルスP21〜P23を受けてテラヘルツ波パルスを発生するテラヘルツ波発生素子30と、を備える。

概要

背景

非特許文献1には、光伝導アンテナから放射される狭帯域テラヘルツ波を、光パルス整形によって増強する技術が記載されている。また、非特許文献2には、マルチ光パルスと大口径光伝導アンテナを組み合わせて、狭帯域のテラヘルツ波を増強する技術が記載されている。この非特許文献2には、光伝導アンテナにおけるキャリア飽和及び緩和時間について記載されている。

概要

テラヘルツ波発生素子におけるキャリアの飽和をより効果的に回避することができるテラヘルツ波発生装置を提供する。テラヘルツ波発生装置1Aは、シングル光パルスP1を出力する光源3と、光源3と光学的に結合され、シングル光パルスP1から、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスP21〜P23を生成し、光パルスP21〜P23それぞれを、波長に応じて異なる光路L1〜L3上に出力するマルチパルス生成部10Aと、マルチパルス生成部10Aと光学的に結合され、マルチパルス生成部10Aから出力された光パルスP21〜P23を受けてテラヘルツ波パルスを発生するテラヘルツ波発生素子30と、を備える。

目的

本発明は、テラヘルツ波発生素子におけるキャリアの飽和をより効果的に回避することができるテラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

第1光パルスを出力する光源と、前記光源と光学的に結合され、前記第1光パルスから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを生成し、前記複数の第2光パルスそれぞれを、波長に応じて異なる光路上に出力するマルチパルス生成部と、前記マルチパルス生成部と光学的に結合され、前記マルチパルス生成部から出力された前記複数の第2光パルスを受けてテラヘルツ波パルスを発生するテラヘルツ波発生素子と、を備える、テラヘルツ波発生装置

請求項2

前記マルチパルス生成部は、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる前記複数の第2光パルスを共通の光路上に出力する時間波形整形器と、前記時間波形整形器から出力された前記複数の第2光パルスそれぞれを、波長に応じて異なる光路に分離する光分散素子と、を有する、請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置。

請求項3

前記時間波形整形器は、前記第1光パルスを分光する分光素子と、分光後の前記第1光パルスの位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる前記複数の第2光パルスを生成する空間光変調器と、前記複数の第2光パルスを集光する光学系と、を含む、請求項2に記載のテラヘルツ波発生装置。

請求項4

前記光分散素子は回折格子若しくはプリズムである、請求項2または3に記載のテラヘルツ波発生装置。

請求項5

前記マルチパルス生成部は、前記第1光パルスを分光する分光素子と、分光後の前記第1光パルスの位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる前記複数の第2光パルスを生成するとともに、該複数の第2光パルスの光路を波長に応じて分光方向と交差する方向に分離する空間光変調器と、前記分光方向において前記複数の第2光パルスを集光する光学系と、を有する、請求項1に記載のテラヘルツ波発生装置。

請求項6

前記空間光変調器は、少なくとも回折格子パターンに基づいて前記分光後の第1光パルスを位相変調する、請求項5に記載のテラヘルツ波発生装置。

請求項7

各第2光パルスの時間幅が100フェムト秒以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のテラヘルツ波発生装置。

請求項8

第1光パルスから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを生成し、前記複数の第2光パルスそれぞれを、波長に応じて異なる光路上に出力するマルチパルス光生成テップと、前記複数の第2光パルスをテラヘルツ波発生素子に入力してテラヘルツ波パルスを発生させるテラヘルツ波生成ステップと、を含む、テラヘルツ波発生方法

請求項9

前記マルチパルス光生成ステップは、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる前記複数の第2光パルスを共通の光路上に出力する時間波形整形ステップと、前記複数の第2光パルスそれぞれを、波長に応じて異なる光路に分離する光分散ステップと、を含む、請求項8に記載のテラヘルツ波発生方法。

請求項10

前記時間波形整形ステップは、前記第1光パルスを分光する分光ステップと、分光後の前記第1光パルスの位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる前記複数の第2光パルスを生成する光変調ステップと、前記複数の第2光パルスを集光する集光ステップと、を含む、請求項9に記載のテラヘルツ波発生方法。

請求項11

前記マルチパルス光生成ステップは、前記第1光パルスを分光する分光ステップと、分光後の前記第1光パルスの位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる前記複数の第2光パルスを生成するとともに、該複数の第2光パルスの光路を波長に応じて分光方向と交差する方向に分離する光変調ステップと、前記分光方向において前記複数の第2光パルスを集光する集光ステップと、を含む、請求項8に記載のテラヘルツ波発生方法。

技術分野

0001

本発明は、テラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法に関するものである。

背景技術

0002

非特許文献1には、光伝導アンテナから放射される狭帯域テラヘルツ波を、光パルス整形によって増強する技術が記載されている。また、非特許文献2には、マルチ光パルスと大口径光伝導アンテナを組み合わせて、狭帯域のテラヘルツ波を増強する技術が記載されている。この非特許文献2には、光伝導アンテナにおけるキャリア飽和及び緩和時間について記載されている。

先行技術

0003

Yongqian Liu et. al., “Enhancement of narrow-band terahertzradiation from photoconducting antennas by optical pulse shaping”, OpticsLetters, Vol.21, No.21, pp.1762-1764 (1996)
Sang-Gyu Park et.al., “High-Power Narrow-Band Terahertz Generation UsingLarge-Aperture Photoconductors”,IEEE Journal of Quantum Electronics, Vol.35,No.8, pp.1257-1268 (1999)
Marc M. Wefers et. al., “Space-Time Profiles of Shaped UltrafastOptical Waveforms”, IEEE Journal of Quantum electronics, vol.32, No.1,pp.161-172 (1996)
Tingting Qi et. al., “Collective Coherent Control: Synchronizationof Polarization in Ferroelectric PbTiO3by Shaped THz Fields”, Physical ReviewLetters 102, 247603 (2009)
K. Yamaguchi et. al., “Terahertz Time-Domain Observation of SpinReorientation in Orthoferrite ErFeO3 through Magnetic Free InductionDecay”, Physical Review Letters, 110, 137204 (2013)
Shayne M. Harrel et. al., “Influence of free-carrier absorption onterahertz generation from ZnTe(110)”, Journal of applied physics, 107, 033526(2010)
T. Kampfrath et. al., “Coherent terahertz control ofantiferromagnetic spin waves”, Nature Photonics, Vol.5, pp.31-34 (2011)
M. Hacker, G. Stobrawa, T. Feurer, “Iterative Fourier transformalgorithm for phase-only pulse shaping”, Optics Express, Vol. 9, No. 4, pp.191-199,13 August 2001
Olivier Ripoll, Ville Kettunen, Hans Peter Herzig, “Review ofiterative Fouriertransform algorithms for beam shaping applications”, OpticalEngineering, Vol. 43, No. 11, pp.2549-2556, November 2004

発明が解決しようとする課題

0004

従来より、例えば光伝導アンテナといったテラヘルツ波発生素子シングル光パルスを照射し、広帯域のテラヘルツ波を発生させる技術が知られている。光伝導アンテナに対して光パルスが照射されると、発生したキャリアがアンテナ間を伝搬することによって瞬時電流が流れ、テラヘルツ波が発生する。しかし、光パルスのエネルギーが高くなりすぎると、発生するキャリアの数が多くなり、空間電荷効果によってキャリアの反発が生じ(以下、このような現象をキャリアの飽和と称する)、テラヘルツ波の発生効率が下がってしまう。このような問題点に対し、光パルスを時間的に分割することが考えられる。テラヘルツ波発生素子におけるキャリアの飽和状態時間経過と共に緩和されるので、複数の光パルスを時間間隔をおいて順次照射すれば、キャリアの飽和を回避しつつテラヘルツ波を発生させることができ、更に強いテラヘルツ波を出力することが可能になる(例えば非特許文献1,2を参照)。しかしながら、本発明者の実験によれば、光パルスを時間的に分割するだけでは、キャリアの飽和を十分に回避することが難しいことがわかった。

0005

本発明は、テラヘルツ波発生素子におけるキャリアの飽和をより効果的に回避することができるテラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

上述した課題を解決するために、一形態によるテラヘルツ波発生装置は、第1光パルスを出力する光源と、光源と光学的に結合され、第1光パルスから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを生成し、複数の第2光パルスそれぞれを、波長に応じて異なる光路上に出力するマルチパルス生成部と、マルチパルス生成部と光学的に結合され、マルチパルス生成部から出力された複数の第2光パルスを受けてテラヘルツ波パルスを発生するテラヘルツ波発生素子と、を備える。

0007

また、一形態によるテラヘルツ波発生方法は、第1光パルスから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを生成し、複数の第2光パルスそれぞれを、波長に応じて異なる光路上に出力するステップ(マルチパルス光生成ステップ)と、複数の第2光パルスをテラヘルツ波発生素子に入力してテラヘルツ波パルスを発生させるステップ(テラヘルツ波生成ステップ)と、を含む。

0008

これらのテラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法では、光源から出力された第1光パルスが時間分割され、互いに時間差を有する複数の第2光パルスが生成される。これらの第2光パルスの中心波長は互いに異なり、波長に応じて異なる光路上に出力される。これにより、テラヘルツ波発生素子において複数の第2光パルスは互いに異なる位置に照射されることとなる。従って、複数の第2光パルスが同じ位置に照射される場合と比較して、第2光パルスの照射により発生するキャリアが他の第2光パルスの照射の際のキャリアの飽和に影響する度合いは小さい。すなわち、上記のテラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法によれば、テラヘルツ波発生素子におけるキャリアの飽和をより効果的に回避することができる。

0009

上記のテラヘルツ波発生装置において、マルチパルス生成部は、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを共通の光路上に出力する時間波形整形器と、時間波形整形器から出力された複数の第2光パルスそれぞれを、波長に応じて異なる光路に分離する光分散素子と、を有してもよい。同様に、上記のテラヘルツ波発生方法において、マルチパルス生成ステップは、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを共通の光路上に出力する時間波形整形ステップと、複数の第2光パルスそれぞれを、波長に応じて異なる光路に分離する光分散ステップと、を含んでもよい。これらにより、上述したマルチパルス生成部及びマルチパルス生成ステップを好適に実現することができる。この場合、時間波形整形器(時間波形整形ステップ)は、第1光パルスを分光する分光素子分光ステップ)と、分光後の第1光パルスの位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを生成する空間光変調器光変調ステップ)と、複数の第2光パルスを集光する光学系(集光ステップ)と、を含んでもよい。これにより、複数の第2光パルスを生成するための構成を小型且つ簡易な構成により実現することができる。また、光分散素子は回折格子若しくはプリズムであってもよい。これにより、中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスそれぞれを、波長に応じて好適に分離することができる。

0010

上記のテラヘルツ波発生装置において、マルチパルス生成部は、第1光パルスを分光する分光素子と、分光後の第1光パルスの位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを生成するとともに、該複数の第2光パルスの光路を波長に応じて分光方向と交差する方向に分離する空間光変調器と、分光方向において複数の第2光パルスを集光する光学系と、を有してもよい。同様に、上記のテラヘルツ波発生方法において、マルチパルス生成ステップは、第1光パルスを分光する分光ステップと、分光後の第1光パルスの位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを生成するとともに、該複数の第2光パルスの光路を波長に応じて分光方向と交差する方向に分離する光変調ステップと、分光方向において複数の第2光パルスを集光する集光ステップと、を含んでもよい。これらのような構成であっても、上述したマルチパルス生成部(マルチパルス生成ステップ)を好適に実現することができる。この場合、空間光変調器は、少なくとも回折格子パターンに基づいて分光後の第1光パルスを位相変調してもよい。これにより、空間光変調器において複数の第2光パルスの光路を波長に応じて好適に分離することができる。

0011

上記のテラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法において、各第2光パルスの時間幅は100フェムト秒以下であってもよい。このような超短光パルスによって、テラヘルツ波を効率的に発生させることができる。

発明の効果

0012

本発明によるテラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法によれば、テラヘルツ波発生素子におけるキャリアの飽和をより効果的に回避することができる。

図面の簡単な説明

0013

第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の構成を概略的に示す図である。
時間波形整形器の構成例を示す図である。
空間光変調素子変調面を示す図である。
(a)単パルス状のシングル光パルスのスペクトル波形を示す。(b)該シングル光パルスの時間強度波形を示す。
(a)空間光変調素子において矩形波状の位相スペクトル変調を与えたときの変調光のスペクトル波形を示す。(b)得られる光パルスの時間強度波形を示す。
中心波長が800nm、帯域幅が±50nmであるシングル光パルスから生成される、3つの光パルスの波長帯域の例を示すグラフである。
回折格子及びレンズ付近の光パルスの光路を示す図である。
テラヘルツ波発生素子の例として、光伝導アンテナ素子を示す平面図である。
図8部分拡大図である。
図9のX−X線に沿った側断面図である。
図9のXI−XI線に沿った側断面図である。
テラヘルツ波発生素子の別の例として、光伝導アンテナ素子を示す平面図である。
図12の部分拡大図である。
第1実施形態に係るテラヘルツ波発生方法を示すフローチャートである。
データ作成部の構成を概略的に示す図である。
位相スペクトル設計部及び強度スペクトル設計部の内部構成を示すブロック図である。
反復フーリエ変換法による位相スペクトルの計算手順を示す図である。
位相スペクトル設計部における位相スペクトル関数の計算手順を示す図である。
強度スペクトル設計部におけるスペクトル強度の計算手順を示す図である。
ターゲット生成部におけるターゲットスペクトログラム生成手順の一例を示す図である。
強度スペクトル関数を算出する手順の一例を示す図である。
(a)(b)ターゲットスペクトログラムの作成過程を示す図である。
対応する各ターゲットスペクトログラムに対して評価値が所定の条件を満足した各スペクトログラムに含まれる2つのドメインの中心波長と、ドメイン間の中心波長間隔とを示すグラフである。
(a)ターゲットスペクトログラムの2つのドメインの中心波長の組み合わせが(800nm,800nm)であるときのスペクトル波形を示すグラフである。(b)(a)のスペクトル波形をフーリエ変換して得られた出力光の時間強度波形を示すグラフである。
(a)ターゲットスペクトログラムの2つのドメインの中心波長の組み合わせが(802nm,798nm)であるときのスペクトル波形を示すグラフである。(b)(a)のスペクトル波形をフーリエ変換して得られた出力光の時間強度波形を示すグラフである。
(a)第2実施例にて用いられたターゲットスペクトログラムを示す図である。(b)(a)のターゲットスペクトログラムに基づいて算出されたスペクトログラムである。
(a)第2実施例にて用いられたターゲットスペクトログラムを示す図である。(b)(a)のターゲットスペクトログラムに基づいて算出されたスペクトログラムである。
(a)図26(b)のスペクトログラムから算出されたスペクトル波形を示すグラフである。(b)(a)のスペクトル波形をフーリエ変換して得られた出力光の時間強度波形を示すグラフである。
(a)図27(b)のスペクトログラムから算出されたスペクトル波形を示すグラフである。(b)(a)のスペクトル波形をフーリエ変換して得られた出力光の時間強度波形を示すグラフである。
第1変形例を示す図である。
第2変形例を示す図である。
第3変形例における4つの光パルスの集光位置を示す図である。
第4変形例に係るテラヘルツ波発生装置の構成の一部分を概略的に示す図である。
パルスストレッチャの具体的な構成例として、グレーティングペア型の構成を示す図である。
(a)〜(c)第5変形例を説明するための図である。
(a),(b)第6変形例を説明するための図である。
(a),(b)第6変形例を説明するための図である。
(a),(b)第7変形例を説明するための図である。
(a)第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の構成の一部を示す側面図である。(b)第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の構成の一部を示す上面図である。
第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置の構成の一部を示す斜視図である。
第2実施形態における空間光変調素子の変調パターンの一例を示す図である。
第2実施形態に係るテラヘルツ波発生方法を示すフローチャートである。

実施例

0014

以下、添付図面を参照しながら本発明によるテラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。

0015

(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るテラヘルツ波発生装置1Aの構成を概略的に示す図である。図1に示されるように、本実施形態のテラヘルツ波発生装置1Aは、光源3と、マルチパルス生成部10Aと、テラヘルツ波発生素子30とを備える。

0016

光源3は、コヒーレントなシングル(単一)光パルスP1を出力する。このシングル光パルスP1は、時間的に他の光パルスとは連続しない独立した光パルスであって、本実施形態における第1光パルスである。また、シングル光パルスP1は、複数の波長の光を含んでいる。光源3は、例えば超短パルスレーザといった固体レーザによって構成される。シングル光パルスP1の波長は、後述するテラヘルツ波発生素子30の構成材料に応じて選択される。例えば、テラヘルツ波発生素子30が低温成長GaAsを用いた光伝導アンテナである場合、キャリアを効率よく励起するため、シングル光パルスP1の中心波長は例えば800nmとされる。また、シングル光パルスP1のスペクトル幅は、後述するマルチ光パルスP2として100フェムト秒以下のフーリエ限界パルスが得られるように設定される。例えば、シングル光パルスP1の中心波長が800nmである場合、100フェムト秒のフーリエ限界パルスを得るためには、スペクトル半値全幅FWHM)は10nmより広いことが必要である。

0017

マルチパルス生成部10Aは、光源3と光学的に結合されている。マルチパルス生成部10Aは、シングル光パルスP1から、複数の光パルスP21,P22及びP23からなるマルチ光パルスP2を生成する。これらの光パルスP21〜P23は、本実施形態における第2光パルスである。光パルスP21〜P23の中心波長は互いに異なる。光パルスP21の中心波長が最も長く、光パルスP23の中心波長が最も短い。また、光パルスP21〜P23は、互いに時間差を有している。図1に示される例では、光パルスP21が最も早く出力され、光パルスP23が最も遅く出力されているが、光パルスP21〜P23の出力順序は任意である。各光パルスP21〜P23の時間幅は、例えば100フェムト秒以下であることが好ましい。

0018

マルチパルス生成部10Aは、光パルスP21〜P23それぞれを空間的に分割し、波長に応じてそれぞれ異なる光路L1〜L3上に出力する。一例では、光路L1〜L3は互いに平行に並んでいる。なお、マルチパルス生成部10Aから出力される光パルスの個数制約はなく、様々な個数とすることができる。但し、テラヘルツ波発生素子30において分子振動を効果的に励起するために、適切なパルス数がある。例えば、分子振動のオンオフ切り替える場合、必要なパルス数はスイッチング回数と等しい。

0019

本実施形態のマルチパルス生成部10Aは、時間波形整形器11、回折格子18(光分散素子)、及びレンズ19を有する。時間波形整形器11は、光源3と光学的に結合されており、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる光パルスP21〜P23を共通の(単一の)光路L0上に出力する。ここで、図2は、時間波形整形器11の構成例を示す図である。図2に示されるように、時間波形整形器11は、回折格子12、レンズ13、空間光変調器(Spatial Light Modulator:SLM)14、レンズ15、回折格子16、及びデータ作成部17を有する。

0020

回折格子12は本実施形態における分光素子であり、光源3と光学的に結合されている。SLM14はレンズ13を介して回折格子12と光学的に結合されている。回折格子12は、シングル光パルスP1を波長成分毎に分光する。なお、分光素子として、回折格子12に代えてプリズム等の他の光学部品が用いられてもよい。また、図2には反射型の回折格子12が示されているが、回折格子12は透過型であってもよい。シングル光パルスP1は、回折格子12に対して斜めに入射し、複数の波長成分に分光される。この複数の波長成分を含む光Lbは、レンズ13によって各波長成分毎に集光され、SLM14の変調面に結像される。レンズ13は、光透過部材からなる凸レンズであってもよく、凹状の光反射面を有する凹面鏡であってもよい。

0021

SLM14は、位相マスクの一例であり、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる光パルスP21〜P23をシングル光パルスP1から生成するために、光Lbの位相変調と強度変調とを同時に行う。また、光Lbの位相変調のみを行ってもよいし、光Lbの強度変調のみを行ってもよい。SLM14は、例えば位相変調型である。一実施例では、SLM14はLCOS(Liquid crystal on silicon)型である。図3は、SLM14の変調面14aを示す図である。図3に示されるように、変調面14aには、複数の変調領域14bが或る方向B1に沿って並んでおり、各変調領域14bは方向B1と交差する(例えば、直交する)方向B2に延びている。方向B1は、回折格子12による分光方向である。この変調面14aはフーリエ変換面として働き、複数の変調領域14bのそれぞれには、分光後の対応する各波長成分が入射する。SLM14は、各変調領域14bにおいて、入射した各波長成分の位相及び強度を他の波長成分から独立して変調する。なお、本実施形態のSLM14は位相変調型であるため、強度変調は、変調面14aに呈示される変調パターンによって実現される。

0022

SLM14は、データ作成部17によって作成された位相パターンに基づく制御信号を受ける。変調パターンは、SLM14を制御するためのデータであり、複素振幅分布の強度あるいは位相分布の強度を含むデータである。変調パターンは、例えば、計算機合成ホログラム(Computer-Generated Holograms(CGH))である。なお、データ作成部17の詳細については後述する。

0023

SLM14によって変調された変調光Lcの各波長成分は、レンズ15によって回折格子16上の一点に集められる。このときのレンズ15は、変調光Lcを集光する集光光学系として機能する。レンズ15は、光透過部材からなる凸レンズであってもよく、凹状の光反射面を有する凹面鏡であってもよい。また、回折格子16は合波光学系として機能し、変調後の各波長成分を合波する。すなわち、これらのレンズ15及び回折格子16により、変調光Lcの複数の波長成分は互いに集光・合波され、同じ光路上を伝搬する光パルスP21〜P23となる。

0024

レンズ15よりも前の領域(スペクトル領域)と、回折格子16よりも後ろの領域(時間領域)とは、互いにフーリエ変換の関係にあり、スペクトル領域における位相変調は、時間領域における時間強度波形に影響する。従って、光パルスP21〜P23は、SLM14の変調パターンに応じた、所望の時間強度波形を有することとなる。ここで、図4(a)は、一例として、単パルス状のシングル光パルスP1のスペクトル波形(スペクトル位相G11及びスペクトル強度G12)を示し、図4(b)は、該シングル光パルスP1の時間強度波形を示す。また、図5(a)は、一例として、SLM14において矩形波状の位相スペクトル変調を与えたときの変調光Lcのスペクトル波形(スペクトル位相G21及びスペクトル強度G22)を示し、図5(b)は、得られる光パルスの時間強度波形を示す。図4(a)及び図5(a)において、横軸は波長(nm)を示し、左の縦軸は強度スペクトルの強度値任意単位)を示し、右の縦軸は位相スペクトルの位相値(rad)を示す。また、図4(b)及び図5(b)において、横軸は時間(フェムト秒)を表し、縦軸は光強度(任意単位)を表す。この例では、矩形波状の位相スペクトル波形を変調光Lcに与えることにより、シングル光パルスP1のシングルパルスが、高次光を伴うダブルパルスに変換されている。なお、図5に示されるスペクトル及び波形は一つの例であって、様々な位相スペクトル及び強度スペクトルの組み合わせにより、光パルスの個数及び時間強度波形を様々に変更することができる。

0025

図6は、中心波長が800nm、帯域幅が±50nmであるシングル光パルスP1から生成される、3つの光パルスP21〜P23の波長帯域の例を示すグラフである。図6の横軸は波長(単位:nm)を表し、縦軸は強度(任意単位)を表す。図6に示されるように、各光パルスP21〜P23の帯域幅は例えば20nmであり、その半値全幅(FWHM)は例えば10nmである。また、各光パルスP21〜P23の中心波長は例えばそれぞれ840nm、800nm、及び760nmである。この例では、各光パルスP21〜P23の最短パルス幅はおよそ94フェムト秒となる。

0026

なお、時間波形整形器11が有する位相マスクとしては、SLM14に限られず、他の様々な位相マスクを用いることができる。例えば、位相マスクは音響光学変調器であってもよい。また、位相マスクとしては、電気的に制御可能なSLMや音響光学変調器以外にも、例えば固定式のものを用いることができる。また、図2には透過型のSLM14が示されているが、光利用効率を高めるため、SLM14は反射型であってもよい(例えば浜松ホトクス社製X13138−02)。

0027

また、回折格子12、レンズ13、及びSLM14は、シングル光パルスP1のスペクトルに適した構成を有する。例えば、シングル光パルスP1のスペクトルの半値全幅が100nmである場合、回折格子12のライン数は300ライン/mm、レンズ13の焦点距離は181.5mm、SLM14の画素数は1280×1024、SLM14の画素ピッチは12.5μmとされる。また、テラヘルツ波発生効率を高める為、光パルスP21〜P23のパルス幅がテラヘルツ波発生素子30において最も短くなるように、時間波形整形器11において分散補償がなされてもよい。例えば、レンズ15、レンズ19の各分散をβ1β2とすると、時間波形整形器11において、各光パルスP21〜P23に対して補償分散β=−(β1+β2)を付加してもよい。

0028

再び図1を参照する。時間波形整形器11から出力された光パルスP21〜P23は、回折格子18に入力される。図7は、回折格子18及びレンズ19付近の光パルスP21〜P23の光路を示す図である。回折格子18は、時間波形整形器11から出力されて共通の光路L0上を伝搬する光パルスP21〜P23それぞれを、波長に応じて光路L1〜L3に分離することにより、空間的に分割する。回折格子18は、反射型でもよく、透過型でもよい。光パルスP21〜P23の光径Dは例えば4mmであり、回折格子18の格子数dは例えば20ライン/mmである。回折格子18における回折角θは、θ=sin-1(λ/d)として表される。λは各光パルスP21〜P23の中心波長である。

0029

回折格子18を通過した光パルスP21〜P23は、レンズ19によって、集光スポットQ1〜Q3にそれぞれ集光される。レンズ19は、例えば一又は複数のレンズによって構成される集光光学系である。或いは、レンズ19は、シリンドリカルミラーによって構成されてもよい。回折格子18とレンズ19との光学距離は、レンズ19の焦点距離fと等しい。このとき、集光スポットQ1〜Q3の間隔Δhは、Δh=f・tan(θ)として表される。焦点距離fが50mmである場合、間隔Δhは40μmである。一方、集光スポットQ1〜Q3の直径(ビームの直径であり、ガウス近似したときの1/e2の範囲内。eは自然対数)φは、φ=4λf/πDとして表され、この場合およそ13μmである。従って、集光スポットQ1〜Q3の間隔Δdが集光スポットQ1〜Q3の直径φよりも広くなり、集光スポットQ1〜Q3は互いに確実に分離する。

0030

再び図1を参照する。テラヘルツ波発生素子30は、マルチパルス生成部10Aと光学的に結合され、マルチパルス生成部10Aから出力された光パルスP21〜P23を受けてテラヘルツ波パルスを発生する。ここで、図8は、テラヘルツ波発生素子30の例として、光伝導アンテナ素子30Aを示す平面図である。図9図8の部分拡大図であり、図10図9のX−X線に沿った側断面図であり、図11図9のXI−XI線に沿った側断面図である。

0031

図10及び図11に示されるように、光伝導アンテナ素子30Aは、基板31と、基板31上に設けられた第1半導体層32と、第1半導体層32上に設けられた絶縁層33と、絶縁層33上に設けられた一対の電極34と、絶縁層33及び電極34を覆う保護膜37とを有する。基板31と第1半導体層32との間には、第1半導体層よりもバンドギャップの大きい絶縁性を有する第2半導体層35が設けられている。基板31は、例えば略矩形状を呈する半絶縁性GaAs基板である。第1半導体層32は、例えば分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)によって低温(200℃〜300℃)でエピタキシャル成長させたGaAs層である。絶縁層33は、例えばSiN層である。第2半導体層35は、例えばAlGaAs層である。電極34は、オーミック電極であって、例えばAuGe,Au等によって形成されている。

0032

図8に示されるように、絶縁層33は、開口部33aを有している。開口部33aは、絶縁層33の中央部に形成され、光伝導アンテナ素子30Aの表面の法線方向から見て長方形状を呈している。また、各電極34は、配線部34a、複数(本実施形態では3つ)のアンテナ部34b、及び一対のパッド部34cを有する。配線部34aは、複数のアンテナ部34bとパッド部34cとを相互に接続している。複数のアンテナ部34bは、所定方向B3に沿ってアレイ状に並んでおり、配線部34aと一体に形成されている。複数のアンテナ部34bは、開口部33aの内部に位置し、第1半導体層32と接触している(図10を参照)。一方の電極34の複数のアンテナ部34bと、他方の電極34の複数のアンテナ部34bとは、所定の間隔をあけて対向配置されている。一方の電極34の一対のパッド部34cは、絶縁層33上の一辺に沿った2つの角部にそれぞれ位置する。他方の電極34の一対のパッド部34cは、絶縁層33上の他辺に沿った2つの角部にそれぞれ位置する。これらのパッド部34cは、外部配線と電気的に接続される。

0033

図9に示されるように、アンテナ部34bは、配線部34aから他方のアンテナ部34bに向かって突出している。より具体的には、アンテナ部34bは、配線部34aの延在方向の中央部から、当該延在方向と略直交する方向に突出している。一方の電極34のアンテナ部34bの先端と、他方の電極34のアンテナ部34bの先端とは、互いに対向している。これらの先端間の領域(アンテナギャップ、幅5μm)には、前述した光パルスP21〜P23が入射して集光スポットQ1〜Q3が形成される。アンテナ部34bのパターンは、光伝導アンテナ素子30Aの表面の法線方向から見て長方形状を呈するダイポールパターンであり、光伝導アンテナ素子30Aは、このようなダイポールパターンが複数並んだダイポールアンテナアレイである。

0034

この光伝導アンテナ素子30Aに対して光パルスP21〜P23が照射されると、発生したキャリアが一対の電極34間を伝搬することによって瞬時電流が流れ、テラヘルツ波が発生する。例えば、光パルスP21〜P23の時間間隔が1ピコ秒である場合、パルス時間間隔逆数である1THzの共鳴を持つ分子スピン振動を励起することができる。そして、キャリアの生成位置が各光パルスP21〜P23毎に分割されているので、キャリアの飽和を十分に回避しつつ、効率よくテラヘルツ波を発生させることができる。隣り合うアンテナ部34b同士の間隔は、例えば数十μm以下である必要がある。すなわち、全てのキャリアの生成位置の領域の大きさは、テラヘルツ波の波長以下(例えば、テラヘルツ波の周波数が1THzであれば300μm以下)である。そのような間隔であれば、各集光スポットQ1〜Q3から出力されるテラヘルツ波はひとつの点光源からの出力とみなされる。

0035

なお、図8及び図9では全てのアンテナ部34bがダイポールアンテナを構成する例を説明したが、少なくとも一つのアンテナ部の種類が他のアンテナ部と異なってもよい。例えば、少なくとも一つのアンテナ部が、ボウタイアンテナスパイラルアンテナ、或いは櫛形アンテナであってもよい。或いは、これらのアンテナ種類のうち少なくとも2つが混在していてもよい。得られるテラヘルツ波スペクトルはアンテナ種類によって異なるので、各アンテナ部のアンテナ種類を必要に応じて選択することにより、テラヘルツ波スペクトルを任意の形状に制御することができる。

0036

図12は、テラヘルツ波発生素子30の別の例として、光伝導アンテナ素子30Bを示す平面図である。また、図13図12の部分拡大図である。なお、光伝導アンテナ素子30Bの構成は、電極形状を除いて、上述した光伝導アンテナ素子30Aと同様である。

0037

光伝導アンテナ素子30Bが有する一対の電極36は、それぞれ、配線部36a、アンテナ部36b、及び一対のパッド部36cを有する。なお、配線部36a及び一対のパッド部36cの形状は、上述した光伝導アンテナ素子30Aの配線部34a及び一対のパッド部34cと同様である。アンテナ部36bは、一定の幅でもって所定方向B3に延びており、配線部36aと一体に形成されている。アンテナ部36bは、開口部33aの内部に位置し、第1半導体層32と接触している。一方の電極36のアンテナ部36bと、他方の電極36のアンテナ部36bとは、互いに平行に、所定の間隔をあけて対向配置されている。

0038

図9に示されるように、アンテナ部36b間の領域には、前述した光パルスP21〜P23が入射して、上記所定方向B3に並ぶ集光スポットQ1〜Q3が形成される。そして、一対の電極36間にバイアス電圧(例えば振幅±10V、変調周波数1kHz)を印加することによって、各集光スポットQ1〜Q3からテラヘルツ波が発生する。各集光スポットQ1〜Q3の領域の大きさは、テラヘルツ波の波長以下である。そのため、各集光スポットQ1〜Q3から出力されるテラヘルツ波は点光源からの出力とみなせるので、効率よくテラヘルツ波を発生させることができる。なお、このようなアンテナ部36bのパターンを有する光伝導アンテナ素子30Bは、ストリップラインアンテナと称される。

0039

上述したテラヘルツ波発生素子30の例では第1半導体層32の半導体材料として低温成長GaAsを例示したが、例えばSemi−insulating(SI)GaAsやInGaAsなど、テラヘルツ波の発生効率が高い半導体材料であればよい。

0040

また、テラヘルツ波発生素子30に到達した光パルスP21〜P23の光強度は互いに等しくてもよく、互いに異なってもよい。特に、コヒーレント制御などのテラヘルツ波の応用によっては、光パルスP21〜P23の光強度は互いに異なってもよい。また、時間的に最初にテラヘルツ波発生素子30に到達する光パルスの光強度を最大にするなど、各光パルスP21〜P23の光強度を任意に制御してもよい。

0041

ここで、本実施形態によるテラヘルツ波発生方法について説明する。このテラヘルツ波発生方法は、本実施形態のテラヘルツ波発生装置1Aを用いて実現可能である。図14は、本実施形態のテラヘルツ波発生方法を示すフローチャートである。

0042

まず、第1ステップ(パルス光生成ステップ)S1において、光源3からシングル光パルスP1を出力する。次に、第2ステップ(マルチパルス光生成ステップ)S2において、シングル光パルスP1から、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスP21〜P23を生成し、光パルスP21〜P23それぞれを、波長に応じて異なる光路上に出力する。この第2ステップS2は、時間波形整形ステップS3を含む。時間波形整形ステップS3では、光パルスP21〜P23を共通の光路L0上に出力する。時間波形整形ステップS3は、分光ステップS4、光変調ステップS5、及び集光ステップS6を含む。分光ステップS4では、シングル光パルスP1を分光する。光変調ステップS5では、分光後のシングル光パルスP1の位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスP21〜P23を生成する。集光ステップS6では、光パルスP21〜P23を集光する。

0043

第2ステップS2は、光分散ステップS7を更に含む。光分散ステップS7では、光パルスP21〜P23それぞれを、波長に応じて異なる光路L1〜L3に分離する。最後に、第3ステップ(テラヘルツ波生成ステップ)S8において、光パルスP21〜P23をテラヘルツ波発生素子30に入力して、テラヘルツ波パルスを発生させる。

0044

以上に説明した本実施形態によるテラヘルツ波発生装置1A及びテラヘルツ波発生方法によって得られる効果について説明する。例えば非特許文献2に記載されたテラヘルツ波発生装置では、テラヘルツ波発生素子におけるキャリアの飽和を抑えるため、集光スポット径を例えば4mm程度と大きくしているので、テラヘルツ波の発生効率が抑えられてしまう。また、複数の光パルスの発生方式として多重マイケルソン干渉系を用いているので、光パルスの個数及び時間間隔を変更することが容易ではなく、また装置が大規模になるという問題がある。更に、光パルスのエネルギーが高い場合、テラヘルツ波のパワーが飽和することが報告されている。この理由は、キャリアの飽和が十分に回避されていないためと推測される。

0045

これに対し、本実施形態のテラヘルツ波発生装置1A及びテラヘルツ波発生方法では、光源3から出力されたシングル光パルスP1が時間分割され、互いに時間差を有する複数の光パルスP21〜P23が生成される。これらの光パルスP21〜P23の中心波長は互いに異なり、波長に応じて異なる光路L1〜L3上に出力される。これにより、テラヘルツ波発生素子30において光パルスP21〜P23は互いに異なる位置に照射されることとなる。従って、光パルスP21〜P23が同じ位置に照射される場合と比較して、各光パルスの照射により発生するキャリアが他の光パルスの照射の際のキャリアの飽和に影響する度合いは小さい。すなわち、本実施形態のテラヘルツ波発生装置1Aによれば、テラヘルツ波発生素子30におけるキャリアの飽和をより効果的に回避し、テラヘルツ波の発生効率を向上できる。

0046

また、本実施形態によれば、光パルスP21〜P23の時間間隔を自在に制御できるので、スペクトル選択の自由度及び効率を更に高めることができる。更に、光パルスP21〜P23の時間間隔を制御することにより、テラヘルツ波発生素子30に固有のキャリアの緩和時間によらず飽和を回避できるので、テラヘルツ波発生素子30の選択自由度を高めることができる。例えば、緩和時間が100ピコ秒程度と長いSI−GaAsを用いたテラヘルツ波発生素子を採用することも可能になる。

0047

また、本実施形態によれば、光伝導アンテナの形状の自由度を高めることができる。例えば複数の光パルスを一点に集光させる場合には、テラヘルツ波を効率的に発生させるためにダイポールアンテナが使用され、ダイポールアンテナのアンテナギャップに集光スポットが形成される。これに対し、本実施形態においては、光パルスP21〜P23を時間的かつ空間的に分離して集光するので、複数箇所にアンテナギャップを有するアンテナを使用することができ、例えば櫛型アンテナといった複雑な形状の光伝導アンテナを用いることができる。

0048

また、本実施形態によれば、テラヘルツ波の発生効率が高まるので、スピン制御などのコヒーレント制御に応用することが可能になる。近年、テラヘルツ波をNiOなどの物質に照射し、スピンを制御する実験が注目を集めている(例えば非特許文献7)。例えば、2つのテラヘルツ波パルスを照射し、そのパルス間隔によってスピンのオフ/オフを制御することができる。本実施形態によってテラヘルツ波の発生効率が向上すれば、効率よくスピンを励起させることができる。さらに、時間波形整形器11によって容易にパルス間隔を制御できるので、量子演算などへの応用も可能となる。

0049

また、本実施形態のように、マルチパルス生成部10A(第2ステップS2)は、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる光パルスP21〜P23を共通の光路L0上に出力する時間波形整形器11(時間波形整形ステップS3)と、時間波形整形器11から出力された光パルスP21〜P23それぞれを、波長に応じて異なる光路に分離する回折格子18(光分散ステップS7)とを有してもよい。これにより、マルチパルス生成部10Aを好適に実現することができる。この場合、時間波形整形器11(時間波形整形ステップS3)は、シングル光パルスP1を分光する回折格子12(分光ステップS4)と、分光後のシングル光パルスP1の位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる光パルスP21〜P23を生成するSLM14(光変調ステップS5)と、光パルスP21〜P23を集光する光学系(集光ステップS6)と、を含んでもよい。これにより、光パルスP21〜P23を生成するための構成を小型且つ簡易な構成により実現することができる。また、光分散素子として回折格子18を用いることにより、中心波長が互いに異なる光パルスP21〜P23それぞれを、波長に応じて好適に分離することができる。

0050

また、本実施形態のように、光パルスP21〜P23の時間幅は100フェムト秒以下であってもよい。このような超短光パルスによって、テラヘルツ波を効率的に発生させることができる。

0051

なお、本実施形態ではシングル光パルスP1をSLM14へ導く光学系(回折格子12及びレンズ13)と、複数の光パルスP21〜P23を生成する光学系(レンズ15及び回折格子16)とが別個に設けられているが、これらの光学系は共通であってもよい。その場合、SLM14は反射型であることが好ましい。

0052

ここで、時間波形整形器11のデータ作成部17について詳細に説明する。前述したように、時間波形整形器11は、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスを出力する。データ作成部17は、そのような複数の光パルスを生成するためにSLM14に表示される変調パターンを算出し、該変調パターンに関するデータをSLM14に提供する。

0053

図15は、データ作成部17の構成を概略的に示す図である。本実施形態のデータ作成部17は、例えば、パーソナルコンピュータスマートフォンタブレット端末などのスマートデバイス;あるいはクラウドサーバなどのプロセッサを有するコンピュータである。データ作成部17は、SLM14と電気的に接続されており、光パルスのパルス数及び時間強度波形を制御するための位相変調パターンを算出し、該位相変調パターンを含む制御信号SCをSLM14に提供する。本実施形態のデータ作成部17は、複数の光パルスを含む所望の波形を得る為の位相スペクトルを出力光に与える位相変調用の位相パターンと、所望の波形を得る為の強度スペクトルを出力光に与える強度変調用の位相パターンとを含む位相パターンをSLM14に呈示させる。そのために、データ作成部17は、任意波形入力部21と、位相スペクトル設計部22と、強度スペクトル設計部23と、変調パターン生成部24とを有する。すなわち、データ作成部17に設けられたコンピュータのプロセッサは、任意波形入力部21の機能と、位相スペクトル設計部22の機能と、強度スペクトル設計部23の機能と、変調パターン生成部24の機能とを実現する。それぞれの機能は、同じプロセッサにより実現されてもよいし、異なるプロセッサにより実現されてもよい。

0054

コンピュータのプロセッサは、変調パターン算出プログラムによって、上記の各機能を実現することができる。故に、変調パターン算出プログラムは、コンピュータのプロセッサを、データ作成部17における任意波形入力部21、位相スペクトル設計部22、強度スペクトル設計部23、及び変調パターン生成部24として動作させる。変調パターン算出プログラムは、コンピュータの内部または外部の記憶装置記憶媒体)に記憶される。記憶装置は、非一時的記録媒体であってもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD、DVD等の記録媒体、ROM等の記録媒体、半導体メモリ、クラウドサーバ等が例示される。

0055

任意波形入力部21は、操作者からの所望の時間強度波形の入力を受け付ける。操作者は、所望の時間強度波形に関する情報(例えばパルス数、パルス幅など)を任意波形入力部21に入力する。所望の時間強度波形に関する情報は、位相スペクトル設計部22及び強度スペクトル設計部23に与えられる。位相スペクトル設計部22は、その時間強度波形に基づいて、対応する位相スペクトルを算出する。強度スペクトル設計部23は、その時間強度波形に基づいて、対応する強度スペクトルを算出する。変調パターン生成部24は、位相スペクトル設計部22において求められた位相スペクトルと、強度スペクトル設計部23において求められた強度スペクトルとを出力光に与えるための位相変調パターン(例えば、計算機合成ホログラム)を算出する。そして、算出された位相変調パターンを含む制御信号SCが、SLM14に提供され、SLM14は、制御信号SCに基づいて制御される。

0056

図16は、位相スペクトル設計部22及び強度スペクトル設計部23の内部構成を示すブロック図である。図16に示されるように、位相スペクトル設計部22及び強度スペクトル設計部23は、フーリエ変換部25、関数置換部26、波形関数修正部27、逆フーリエ変換部28、及びターゲット生成部29を有する。ターゲット生成部29は、フーリエ変換部29a及びスペクトログラム修正部29bを含む。これらの各構成要素の機能については、後に詳述する。

0057

ここで、所望の時間強度波形は時間領域の関数として表され、位相スペクトルは周波数領域の関数として表される。従って、所望の時間強度波形に対応する位相スペクトルは、例えば、所望の時間強度波形に基づく反復フーリエ変換によって得られる。図17は、反復フーリエ変換法による位相スペクトルの計算手順を示す図である。まず、周波数ωの関数である初期の強度スペクトル関数A0(ω)及び位相スペクトル関数Ψ0(ω)を用意する(図中の処理番号(1))。一例では、これらの強度スペクトル関数A0(ω)及び位相スペクトル関数Ψ0(ω)はそれぞれシングル光パルスP1のスペクトル強度及びスペクトル位相を表す。次に、強度スペクトル関数A0(ω)及び位相スペクトル関数Ψn(ω)を含む周波数領域の波形関数(a)を用意する(図中の処理番号(2))。




添え字nは、第n回目フーリエ変換処理後を表す。最初(第1回目)のフーリエ変換処理の前においては、位相スペクトル関数Ψn(ω)として上述した初期の位相スペクトル関数Ψ0(ω)が用いられる。iは虚数である。

0058

続いて、上記関数(a)に対して周波数領域から時間領域へのフーリエ変換を行う(図中の矢印A1)。これにより、時間強度波形関数bn(t)及び時間位相波形関数Θn(t)を含む周波数領域の波形関数(b)が得られる(図中の処理番号(3))。




続いて、上記関数(b)に含まれる時間強度波形関数bn(t)を、所望の波形に基づく時間強度波形関数Target0(t)に置き換える(図中の処理番号(4)、(5))。








続いて、上記関数(d)に対して時間領域から周波数領域への逆フーリエ変換を行う(図中の矢印A2)。これにより、強度スペクトル関数Bn(ω)及び位相スペクトル関数Ψn(ω)を含む周波数領域の波形関数(e)が得られる(図中の処理番号(6))。

0059

続いて、上記関数(e)に含まれる強度スペクトル関数Bn(ω)を拘束するため、初期の強度スペクトル関数A0(ω)に置き換える(図中の処理番号(7))。




以降、上記の処理(1)〜(7)を複数回繰り返し行うことにより、波形関数中の位相スペクトル関数Ψn(ω)が表す位相スペクトル形状を、所望の時間強度波形に対応する位相スペクトル形状に近づけることができる。最終的に得られる位相スペクトル関数ΨIFTA(ω)が、所望の時間強度波形を得るための変調パターンの基になる。

0060

しかしながら、上述したような反復フーリエ法では、時間強度波形を制御することはできるが、時間強度波形を構成する周波数成分(帯域波長)を制御することはできないという問題がある。そこで、本実施形態のデータ作成部17は、以下に説明する算出方法を用いて、変調パターンの基になる位相スペクトル関数及び強度スペクトル関数を算出する。図18は、位相スペクトル設計部22における位相スペクトル関数の計算手順を示す図である。まず、周波数ωの関数である初期の強度スペクトル関数A0(ω)及び位相スペクトル関数Φ0(ω)を用意する(図中の処理番号(1))。一例では、これらの強度スペクトル関数A0(ω)及び位相スペクトル関数Φ0(ω)はそれぞれシングル光パルスP1のスペクトル強度及びスペクトル位相を表す。次に、強度スペクトル関数A0(ω)及び位相スペクトル関数Φ0(ω)を含む周波数領域の第1波形関数(g)を用意する(処理番号(2−a))。但し、iは虚数である。

0061

続いて、位相スペクトル設計部22のフーリエ変換部25は、上記関数(g)に対して周波数領域から時間領域へのフーリエ変換を行う(図中の矢印A3)。これにより、時間強度波形関数a0(t)及び時間位相波形関数φ0(t)を含む時間領域の第2波形関数(h)が得られる(フーリエ変換ステップ、処理番号(3))。

0062

続いて、位相スペクトル設計部22の関数置換部26は、次の数式(i)に示されるように、時間強度波形関数b0(t)に、任意波形入力部21において入力された所望の波形に基づく時間強度波形関数Target0(t)を代入する(処理番号(4−a))。

0063

続いて、位相スペクトル設計部22の関数置換部26は、次の数式(j)に示されるように、時間強度波形関数a0(t)を時間強度波形関数b0(t)で置き換える。すなわち、上記関数(h)に含まれる時間強度波形関数a0(t)を、所望の波形に基づく時間強度波形関数Target0(t)に置き換える(関数置換ステップ、処理番号(5))。

0064

続いて、位相スペクトル設計部22の波形関数修正部27は、置き換え後の第2波形関数(j)のスペクトログラムが、所望の波長帯域に従って予め生成されたターゲットスペクトログラムに近づくように第2波形関数を修正する。まず、置き換え後の第2波形関数(j)に対して時間−周波数変換を施すことにより、第2波形関数(j)をスペクトログラムSG0,k(ω,t)に変換する(図中の処理番号(5−a))。添え字kは、第k回目の変換処理を表す。

0065

ここで、時間−周波数変換とは、時間波形のような複合信号に対して、周波数フィルタ処理または数値演算処理窓関数をずらしながら乗算して、各々の時間に対してスペクトルを導出する処理)を施し、時間、周波数、信号成分の強さ(スペクトル強度)からなる3次元情報に変換することをいう。また、本実施形態では、その変換結果(時間、周波数、スペクトル強度)を「スペクトログラム」と定義する。

0066

時間−周波数変換としては、例えば、短時間フーリエ変換(Short-Time Fourier Transform;STFT)やウェーブレット変換ハールウェーブレット変換、ガボールウェーブレット変換、メキシカハットウェーブレット変換、モルレーウェーブレット変換)などがある。

0067

また、所望の波長帯域に従って予め生成されたターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)をターゲット生成部29から読み出す。このターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)は、目標とする時間波形(時間強度波形とそれを構成する周波数成分)と概ね同値であり、処理番号(5−b)のターゲットスペクトログラム関数において生成される。

0068

次に、位相スペクトル設計部22の波形関数修正部27は、スペクトログラムSG0,k(ω,t)とターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)とのパターンマッチングを行い、類似度(どの程度一致しているか)を調べる。本実施形態では、類似度を表す指標として、評価値を算出する。そして、続く処理番号(5−c)では、得られた評価値が、所定の終了条件を満たすか否かの判定を行う。条件を満たせば処理番号(6)へ進み、満たさなければ処理番号(5−d)へ進む。処理番号(5−d)では、第2波形関数に含まれる時間位相波形関数φ0(t)を任意の時間位相波形関数φ0,k(t)に変更する。時間位相波形関数を変更した後の第2波形関数は、STFTなどの時間−周波数変換により再びスペクトログラムに変換される。以降、上述した処理番号(5−a)〜(5−c)が繰り返し行われる。こうして、スペクトログラムSG0,k(ω,t)がターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)に次第に近づくように、第2波形関数が修正される(波形関数修正ステップ)。

0069

その後、位相スペクトル設計部22の逆フーリエ変換部28は、修正後の第2波形関数に対して逆フーリエ変換を行い(図中の矢印A4)、周波数領域の第3波形関数(k)を生成する(逆フーリエ変換ステップ、処理番号(6))。




この第3波形関数(k)に含まれる位相スペクトル関数Φ0,k(ω)が、最終的に得られる所望の位相スペクトル関数ΦTWC-TFD(ω)となる。この位相スペクトル関数ΦTWC-TFD(ω)が、変調パターン生成部24に提供される。

0070

図19は、強度スペクトル設計部23におけるスペクトル強度の計算手順を示す図である。なお、処理番号(1)から処理番号(5−c)までは、上述した位相スペクトル設計部22におけるスペクトル位相の計算手順と同様なので説明を省略する。強度スペクトル設計部23の波形関数修正部27は、スペクトログラムSG0,k(ω,t)とターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)との類似度を示す評価値が所定の終了条件を満たさない場合、第2波形関数に含まれる時間位相波形関数φ0(t)は初期値で拘束しつつ、時間強度波形関数b0(t)を任意の時間強度波形関数b0,k(t)に変更する(処理番号(5−e))。時間強度波形関数を変更した後の第2波形関数は、STFTなどの時間−周波数変換により再びスペクトログラムに変換される。以降、処理番号(5−a)〜(5−c)が繰り返し行われる。こうして、スペクトログラムSG0,k(ω,t)がターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)に次第に近づくように、第2波形関数が修正される(波形関数修正ステップ)。

0071

その後、強度スペクトル設計部23の逆フーリエ変換部28は、修正後の第2波形関数に対して逆フーリエ変換を行い(図中の矢印A4)、周波数領域の第3波形関数(m)を生成する(逆フーリエ変換ステップ、処理番号(6))。

0072

続いて、処理番号(7−b)では、強度スペクトル設計部23のフィルタ処理部が、第3波形関数(m)に含まれる強度スペクトル関数B0,k(ω)に対し、シングル光パルスP1の強度スペクトルに基づくフィルタ処理を行う(フィルタ処理ステップ)。具体的には、強度スペクトル関数B0,k(ω)に係数αを乗じた強度スペクトルのうち、シングル光パルスP1の強度スペクトルに基づいて定められる各波長毎カットオフ強度を超える部分をカットする。全ての波長域において、強度スペクトル関数αB0,k(ω)がシングル光パルスP1のスペクトル強度を超えないようにするためである。一例では、波長毎のカットオフ強度は、シングル光パルスP1の強度スペクトル(本実施形態では初期の強度スペクトル関数A0(ω))と一致するように設定される。その場合、次の数式(n)に示されるように、強度スペクトル関数αB0,k(ω)が強度スペクトル関数A0(ω)よりも大きい周波数では、強度スペクトル関数ATWC-TFD(ω)の値として強度スペクトル関数A0(ω)の値が取り入れられる。また、強度スペクトル関数αB0,k(ω)が強度スペクトル関数A0(ω)以下である周波数では、強度スペクトル関数ATWC-TFD(ω)の値として強度スペクトル関数αB0,k(ω)の値が取り入れられる(図中の処理番号(7−b))。




この強度スペクトル関数ATWC-TFD(ω)が、最終的に得られる所望のスペクトル強度として変調パターン生成部24に提供される。

0073

変調パターン生成部24は、位相スペクトル設計部22において算出された位相スペクトル関数ΦTWC-TFD(ω)により示されるスペクトル位相と、強度スペクトル設計部23において算出された強度スペクトル関数ATWC-TFD(ω)により示されるスペクトル強度とを光パルスP21〜P23に与えるための位相変調パターン(例えば、計算機合成ホログラム)を算出する(データ生成ステップ)。

0074

ここで、図20は、ターゲット生成部29におけるターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)の生成手順の一例を示す図である。ターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)は、目標とする時間波形(時間強度波形とそれを構成する周波数成分(波長帯域成分))を示すので、ターゲットスペクトログラムの作成は、周波数成分(波長帯域成分)を制御するために極めて重要な工程である。図20に示されるように、ターゲット生成部29は、まずスペクトル波形(初期の強度スペクトル関数A0(ω)及び初期の位相スペクトル関数Φ0(ω))、並びに所望の時間強度波形関数Target0(t)を入力する。また、所望の周波数(波長)帯域情報を含む時間関数p0(t)を入力する(処理番号(1))。

0075

次に、ターゲット生成部29は、例えば図17に示された反復フーリエ変換法、或いは非特許文献8または9に記載された方法を用いて、時間強度波形関数Target0(t)を実現するための位相スペクトル関数ΦIFTA(ω)を算出する(処理番号(2))。

0076

続いて、ターゲット生成部29は、先に得られた位相スペクトル関数ΦIFTA(ω)を利用した反復フーリエ変換法により、時間強度波形関数Target0(t)を実現するための強度スペクトル関数AIFTA(ω)を算出する(処理番号(3))。ここで、図21は、強度スペクトル関数AIFTA(ω)を算出する手順の一例を示す図である。

0077

まず、初期の強度スペクトル関数Ak=0(ω)及び位相スペクトル関数Ψ0(ω)を用意する(図中の処理番号(1))。次に、強度スペクトル関数Ak(ω)及び位相スペクトル関数Ψ0(ω)を含む周波数領域の波形関数(o)を用意する(図中の処理番号(2))。




添え字kは、第k回目のフーリエ変換処理後を表す。最初(第1回目)のフーリエ変換処理の前においては、強度スペクトル関数Ak(ω)として上記の初期強度スペクトル関数Ak=0(ω)が用いられる。iは虚数である。

0078

続いて、上記関数(o)に対して周波数領域から時間領域へのフーリエ変換を行う(図中の矢印A5)。これにより、時間強度波形関数bk(t)を含む周波数領域の波形関数(p)が得られる(図中の処理番号(3))。

0079

続いて、上記関数(p)に含まれる時間強度波形関数bk(t)を、所望の波形に基づく時間強度波形関数Target0(t)に置き換える(図中の処理番号(4)、(5))。

0080

続いて、上記関数(r)に対して時間領域から周波数領域への逆フーリエ変換を行う(図中の矢印A6)。これにより、強度スペクトル関数Ck(ω)及び位相スペクトル関数Ψk(ω)を含む周波数領域の波形関数(s)が得られる(図中の処理番号(6))。




続いて、上記関数(s)に含まれる位相スペクトル関数Ψk(ω)を拘束するため、初期の位相スペクトル関数Ψ0(ω)に置き換える(図中の処理番号(7−a))。

0081

また、逆フーリエ変換後の周波数領域における強度スペクトル関数Ck(ω)に対し、シングル光パルスP1の強度スペクトルに基づくフィルタ処理を行う。具体的には、強度スペクトル関数Ck(ω)により表される強度スペクトルのうち、シングル光パルスP1の強度スペクトルに基づいて定められる各波長毎のカットオフ強度を超える部分をカットする。一例では、波長毎のカットオフ強度は、シングル光パルスP1の強度スペクトル(例えば初期の強度スペクトル関数Ak=0(ω))と一致するように設定される。その場合、次の数式(u)に示されるように、強度スペクトル関数Ck(ω)が強度スペクトル関数Ak=0(ω)よりも大きい周波数では、強度スペクトル関数Ak(ω)の値として強度スペクトル関数Ak=0(ω)の値が取り入れられる。また、強度スペクトル関数Ck(ω)が強度スペクトル関数Ak=0(ω)以下である周波数では、強度スペクトル関数Ak(ω)の値として強度スペクトル関数Ck(ω)の値が取り入れられる(図中の処理番号(7−b))。




上記関数(s)に含まれる強度スペクトル関数Ck(ω)を、上記数式(u)によるフィルタ処理後の強度スペクトル関数Ak(ω)に置き換える。

0082

以降、上記の処理(1)〜(7−b)を繰り返し行うことにより、波形関数中の強度スペクトル関数Ak(ω)が表す強度スペクトル形状を、所望の時間強度波形に対応する強度スペクトル形状に近づけることができる。最終的に、強度スペクトル関数AIFTA(ω)が得られる。

0083

再び図20を参照する。以上に説明した処理番号(2)、(3)における位相スペクトル関数ΦIFTA(ω)及び強度スペクトル関数AIFTA(ω)の算出によって、これらの関数を含む周波数領域の第3波形関数(v)が得られる(処理番号(4))。




ターゲット生成部29のフーリエ変換部29aは、上の波形関数(v)をフーリエ変換する。これにより、時間領域の第4波形関数(w)が得られる(処理番号(5))。

0084

ターゲット生成部29のスペクトログラム修正部29bは、時間−周波数変換により第4波形関数(w)をスペクトログラムSGIFTA(ω,t)に変換する(処理番号(6))。そして、処理番号(7)では、所望の周波数(波長)帯域情報を含む時間関数p0(t)を基にスペクトログラムSGIFTA(ω,t)を修正することにより、ターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)を生成する。例えば、2次元データにより構成されるスペクトログラムSGIFTA(ω,t)に現れる特徴的パターンを部分的に切り出し、時間関数p0(t)を基に当該部分の周波数成分の操作を行う。以下、その具体例について詳細に説明する。

0085

例えば、所望の時間強度波形関数Target0(t)として時間間隔が2ピコ秒であるトリプルパルスを設定した場合について考える。このとき、スペクトログラムSGIFTA(ω,t)は、図22(a)に示されるような結果となる。なお、図22(a)において横軸は時間(単位:フェムト秒)を示し、縦軸は波長(単位:nm)を示す。また、スペクトログラムの値は、図の明暗によって示されており、明るいほどスペクトログラムの値が大きい。このスペクトログラムSGIFTA(ω,t)において、トリプルパルスは2ピコ秒間隔で時間軸上に分かれたドメインD1、D2、及びD3として現れる。ドメインD1、D2、及びD3の中心(ピーク)波長は800nmである。

0086

仮に光パルスP21〜P23の時間強度波形のみを制御したい(単にトリプルパルスを得たい)場合には、これらのドメインD1、D2、及びD3を操作する必要はない。しかし、各パルスの周波数(波長)帯域を制御したい場合には、これらのドメインD1、D2、及びD3の操作が必要となる。すなわち、図22(b)に示されるように、波長軸(縦軸)に沿った方向に各ドメインD1、D2、及びD3を互いに独立して移動させることは、それぞれのパルスの構成周波数(波長帯域)を変更することを意味する。このような各パルスの構成周波数(波長帯域)の変更は、時間関数p0(t)を基に行われる。

0087

例えば、ドメインD2のピーク波長を800nmで据え置き、ドメインD1及びD3のピーク波長がそれぞれ−2nm、+2nmだけ平行移動するように時間関数p0(t)を記述するとき、スペクトログラムSGIFTA(ω,t)は、図22(b)に示されるターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)に変化する。例えばスペクトログラムにこのような処理を施すことによって、時間強度波形の形状を変えずに、各パルスの構成周波数(波長帯域)が任意に制御されたターゲットスペクトログラムを作成することができる。

0088

以上に説明したように、本実施形態のデータ作成部17では、周波数領域の第1波形関数(g)に対してフーリエ変換を行うことにより時間領域の第2波形関数(h)を生成したのち、第2波形関数(h)に対し、所望の波形に基づく時間強度波形関数Target0(t)の置き換えを行う。その後、第2波形関数に対して逆フーリエ変換を行い、周波数領域の第3波形関数(k)及び(m)を生成する。そして、第3波形関数(k)の位相スペクトル関数Φ0,k(ω)、及び第3波形関数(m)の強度スペクトル関数B0,k(ω)に基づいて変調パターンを生成する。これにより、複数の光パルスを含む所望の波形を実現するための変調パターンを好適に生成することができる。

0089

加えて、本実施形態のデータ作成部17では、時間強度波形関数Target0(t)の置き換えののち、逆フーリエ変換の前に、ターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)に第2波形関数のスペクトログラムSG0,k(ω,t)が近づくように第2波形関数を修正する。このターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)は所望の波長帯域に従って予め生成されたものであり、この処理によって、第2波形関数の波長帯域は、所望の波長帯域に修正される。従って、第2波形関数を逆フーリエ変換して得られる第3波形関数(k)及び(m)もまた、所望の波長帯域内の関数となる。そして、上述したように変調パターンは、第3波形関数(k)の位相スペクトル関数Φ0,k(ω)、及び第3波形関数(m)の強度スペクトル関数B0,k(ω)に基づいて生成される。以上より、本実施形態のデータ作成部17によれば、複数の光パルスの波長成分(周波数成分)を個別に制御することが可能となる。

0090

また、本実施形態のように、波形関数修正部27は、第2波形関数のスペクトログラムSGIFTA(ω,t)とターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)との類似度を表す評価値を算出し、評価値が所定の条件を満たすように第2波形関数を修正してもよい。例えばこのような方式によって、第2波形関数のスペクトログラムSGIFTA(ω,t)がターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)に近づくように第2波形関数を精度良く修正することができる。

0091

また、本実施形態のように、波形関数修正部27は、第2波形関数を修正するために、時間強度波形関数b0,k(t)又は時間位相波形関数φ0,k(t)を変更してもよい。例えばこのような方式によって、第2波形関数のスペクトログラムSGIFTA(ω,t)がターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)に近づくように第2波形関数を好適に修正することができる。

0092

なお、データ作成部17は、本実施形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、位相スペクトル設計部22が位相スペクトル関数ΦTWC-TFD(ω)を算出し、強度スペクトル設計部23が強度スペクトル関数ATWC-TFD(ω)を算出し、変調パターン生成部24が、双方の関数に基づいて変調パターンを生成しているが、変調パターン生成部は、位相スペクトル関数ΦTWC-TFD(ω)及び強度スペクトル関数ATWC-TFD(ω)のうち一方に基づいて変調パターンを生成してもよい。

0093

また、波形関数修正部27が第2波形関数をスペクトログラムSG0,k(ω,t)に変換する際(図18及び図19の処理番号(5−a))の時間−周波数変換として、本実施形態では短時間フーリエ変換(STFT)及びウェーブレット変換を例示している。時間−周波数変換処理において重要なことは、時間波形を「時間−周波数情報」であるスペクトログラムSG0,k(ω,t)へ変換することにある。本実施形態では、時間波形のうち時間強度波形のみを制御する手法(例えば非特許文献8,9)と異なり、その時間波形を構成する周波数成分(帯域成分)を制御することを主な目的としており、時間波形から時間強度情報と周波数(帯域)情報とを抽出することに意味があるからである。つまり、時間−周波数変換としては、STFT及びウェーブレット変換に限らず、時間波形から周波数情報を抽出し得る様々な変換処理を適用することができる。

0094

また、本実施形態では、波形関数修正部27が、第2波形関数のスペクトログラムSGIFTA(ω,t)とターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)との類似度を示す評価値を用いて、これらが互いにどの程度近いかを判定している(図18及び図19の処理番号(5−c))。ターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)は、所望の時間波形が、どのような時間強度形状及び周波数(帯域)情報を含むかを表すものであり、いわば目標値(設計図)の役割を果たす。従って、本実施形態の評価値は、波形制御精度を示す指標の一つとなり得る。

0095

一方、スペクトログラムSGIFTA(ω,t)は、周波数ω及び時間tといった2つの変数を含むので、画像としても扱うことができる。従って、スペクトログラムSGIFTA(ω,t)とターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)とがどの程度一致しているかを調べることは、画像解析における各種のパターンマッチング手法を用いた差違抽出作業であると考えることができる。故に、類似度を示す評価値を利用する方法の他にも、例えば、画像の特徴量(周波数や時間軸方向に限定した輪郭・形状など)を抽出してパターンのマッチング度合いを評価する方法や、画像を複数の部分に分割して部分毎に評価する方法などを適用することもできる。

0096

また、本実施形態では、波形関数修正部27が、評価値が所定の条件を満たさない(スペクトログラムSGIFTA(ω,t)とターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)とが乖離している)場合に、時間位相波形関数φ0,k(t)または時間強度波形関数b0,k(t)を他の任意のものへ変更する(図18の処理番号(5−d)、図19の処理番号(5−e))。これらの関数φ0,k(t)、b0,k(t)を変更する方法としては、様々な方法がある。最も簡易な方法としては、関数φ0,k(t)、b0,k(t)をランダムに変化させる方法がある。また、例えばシミュレーテッドアニーリング法などにより、一定のルールに従い(確率過程に伴い)関数φ0,k(t)、b0,k(t)の解を探索する方法も適用可能である。或いは、どのような関数φ0,k(t)、b0,k(t)を用いると評価値が良くなるかの指標が得られる場合には、その指標を活用してもよい。例えば、処理番号(5−a)にて算出される評価値の大きさや処理番号(5−c)における判定結果を、関数φ0,k(t)、b0,k(t)の変更の際にフィードバックしてもよい。具体的には、スペクトログラムSGIFTA(ω,t)とターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)との差分値を基に、新たなスペクトログラムNewSG0(ω,t)を作成し、そのNewSG0(ω,t)を逆スペクトログラム変換することで、時間波形の形に変形する。このようなスペクトログラム上での演算を経て得られたNewSG0(ω,t)を逆スペクトログラム変換することで得られる時間波形の時間位相や時間強度関数には、例えば、どのような関数φ0,k(t)、b0,k(t)を用いると評価値が良くなるかに関する(スペクトログラム上での演算に基づく)指標が含まれる。従って、適宜この指標を時間位相波形関数φ0,k(t)または時間強度波形関数b0,k(t)の修正にフィードバック利用する手法が考えられる。

0097

また、ターゲット生成部29がターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)を生成する際、図20に示される処理番号(2)において、時間強度波形関数Target0(t)を実現するための位相スペクトル関数ΦIFTA(ω)を算出する。このとき、図17に示された反復フーリエ変換法、或いは非特許文献8または9に記載された方法を用い得ることを先に述べたが、位相スペクトル関数ΦIFTA(ω)の算出方法はこれらに限られず、時間強度波形関数Target0(t)の生成を実現し得るような、解析的若しくは近似的に求められる位相スペクトル関数ΦIFTA(ω)を用いても良い。

0098

また、ターゲット生成部29がターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)を生成する際、図20に示される処理番号(3)において、時間強度波形関数Target0(t)を実現するための強度スペクトル関数AIFTA(ω)を算出する。このとき、図19に示された、改良された反復フーリエ変換法を用いて強度スペクトル関数AIFTA(ω)を算出する例を先に述べたが、強度スペクトル関数AIFTA(ω)の算出方法はこれに限られず、時間強度波形関数Target0(t)の生成を実現し得るような、解析的若しくは近似的に求められる強度スペクトル関数AIFTA(ω)を用いても良い。

0099

なお、クラウドサーバなどの遠隔地に存在するコンピュータを用いて、本実施形態のデータ作成方法に基づいて変調パターン(例えば、計算機合成ホログラム)を作成し、作成された変調パターンに関するデータをユーザーに送信してもよい。その場合、本実施形態のデータ作成部17は不要となる。

0100

(第1実施例)
上記実施形態のデータ作成方法に基づく計算を行って、周波数(波長)帯域の制御を含めた時間波形の制御が可能であることを確かめた。この計算においては、波長帯域が半値全幅で5nmであるシングルパルスをシングル光パルスP1として設定し、2ピコ秒間隔のダブルパルスを複数の光パルスとして設定した。この場合、ターゲットスペクトログラムTargetSG(ω,t)は、2つのドメインを含む。本実施例では、図22(b)に示された方法により、この2つのドメインを波長軸方向に平行移動した(すなわち各パルスを構成する周波数(波長)帯域を変更した)5つのターゲットスペクトログラムTargetSG(ω,t)を用意した。具体的には、2つのドメインの中心波長(ピーク波長)の組み合わせがそれぞれ(800nm,800nm)、(801nm,799nm)、(802nm,798nm)、(803nm,797nm)、及び(804nm,796nm)である5種類のターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)を用意した。そして、図18に示された方法を用いて位相スペクトル関数ΦTWC-TFD(ω)を、図19に示された方法を用いて強度スペクトル関数ATWC-TFD(ω)を、それぞれ算出した。

0101

図23は、対応する各ターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)に対して評価値が所定の条件を満足した各スペクトログラムSG0,k(ω,t)に含まれる2つのドメインの中心波長と、ドメイン間の中心波長間隔とを示すグラフである。縦軸は各ドメインの中心波長を示し、横軸はドメイン間の中心波長間隔を示している。また、グラフG31及びG32は、ターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)に含まれる一方及び他方のドメインの中心波長をそれぞれ結ぶ直線であり、グラフG33及びG34は、スペクトログラムSG0,k(ω,t)に含まれる一方及び他方のドメインの中心波長をそれぞれ結ぶ近似曲線である。この結果から、隣接するパルスの波長帯域差が例えば4nm以内であるときに、周波数(波長)帯域を含めた時間波形の制御が可能であることが示された。すなわち、シングル光パルスP1の波長帯域の半値全幅(5nm)の範囲内において、任意の波長帯域への変更が概ね可能であることが示された。言い換えれば、ターゲットスペクトログラムTargetSG(ω,t)のドメインを波長軸方向に移動する際、シングル光パルスP1の波長帯域内で移動することが望ましい。

0102

図24(a)は、ターゲットスペクトログラムTargetSG(ω,t)の2つのドメインの中心波長の組み合わせを(800nm,800nm)と設定し、図18図19に示された方法を用いて得られたスペクトル波形(スペクトル位相G41及びスペクトル強度G42)を示すグラフである。図24(b)は、図24(a)のスペクトル波形をフーリエ変換して得られた複数の光パルスの時間強度波形を示すグラフである。また、図25(a)は、ターゲットスペクトログラムTargetSG(ω,t)の2つのドメインの中心波長の組み合わせを(802nm,798nm)と設定し、図18図19に示された方法を用いて得られたスペクトル波形(スペクトル位相G51及びスペクトル強度G52)を示すグラフである。図25(b)は、図25(a)のスペクトル波形をフーリエ変換して得られた複数の光パルスの時間強度波形を示すグラフである。

0103

図24(a)と図25(a)とを比較すると、各ドメインの中心波長が800nm,800nmである場合(図24(a))、位相スペクトル(G41)はステップ状であり、且つ、強度スペクトル(G42)の裾付近の波長において位相スペクトル(G41)に折り返しが生じている。これに対し、各ドメインの中心波長が802nm,798nmである場合(図25(a))、スペクトル強度(G52)の裾付近の波長に近づくに従って位相スペクトル(G51)のステップが滑らかになり、且つ、位相スペクトル(G51)の折り返しが生じていない。このことから、複数の光パルスの周波数(波長)帯域を制御するために、位相スペクトルに明確な違いが生じることがわかる。

0104

また、図24(b)と図25(b)とを比較すると、複数の光パルスの周波数(波長)帯域の制御の違いにかかわらず、同様の時間強度波形が得られることがわかる。

0105

(第2実施例)
続いて、7本の光パルスを生成し、各パルスの波長帯域を互いに異ならせる実施例について説明する。図26(a)及び図27(a)は、本実施例にて用いられたターゲットスペクトログラムTargetSG(ω,t)を示す。図26(a)は各パルスの波長帯域を制御しない(等しくする)場合を示し、図27(a)は各パルスの波長帯域を互いに異ならせた場合を示す。また、図26(b)及び図27(b)は、それぞれ図26(a)及び図27(a)のターゲットスペクトログラムTargetSG(ω,t)に基づいて算出されたスペクトログラムSG0,k(ω,t)である。なお、これらの図において、横軸は時間(単位:フェムト秒)を示し、縦軸は波長(単位:nm)を示す。また、スペクトログラムの値は、図の明暗によって示されており、明るいほどスペクトログラムの値が大きい。本実施例では、ターゲットスペクトログラムTargetSG(ω,t)及びスペクトログラムSG0,k(ω,t)が、パルスの本数と同じ数のドメインD1〜D7を含んでいる。

0106

図28(a)は、図26(b)のスペクトログラムSG0,k(ω,t)に対応する時間波形(第2波形関数)から算出されたスペクトル波形(スペクトル位相G61及びスペクトル強度G62)を示すグラフである。図28(b)は、図28(a)のスペクトル波形をフーリエ変換して得られた複数の光パルスの時間強度波形を示すグラフである。また、図29(a)は、図27(b)のスペクトログラムSG0,k(ω,t)に対応する時間波形(第2波形関数)から算出されたスペクトル波形(スペクトル位相G71及びスペクトル強度G72)を示すグラフである。図29(b)は、図29(a)のスペクトル波形をフーリエ変換して得られた複数の光パルスの時間強度波形を示すグラフである。

0107

図28(a)と図29(a)とを比較すると、各ドメインの中心波長が互いに等しい場合(図28(a))と、各ドメインの中心波長が互いに異なる場合(図29(a))とで、位相スペクトルに明確な違いが生じることがわかる。一方、図28(b)と図29(b)とを比較すると、複数の光パルスの周波数(波長)帯域の制御の違いにかかわらず、同様の時間強度波形が得られることがわかる。

0108

(第1変形例)
上記第1実施形態においては、光パルスP21〜P23の光路L1〜L3を揃えるためにマルチパルス生成部10Aがレンズ19を有するが、図30に示されるように、回折格子18とレンズ19との間に、シリンドリカルミラー41及びペリスコープアレイ42が更に設けられてもよい。その場合、回折格子18によって波長毎に分割された複数の光パルスP21〜P23は、シリンドリカルミラー41を介してペリスコープアレイ42に入射する。そして、ペリスコープアレイ42によって光パルスP21〜P23の光路の間隔が調整されたのち、光パルスP21〜P23がレンズ19によって集光される。このような構成においては、ペリスコープアレイ42の反射角度を制御することにより、図7と同様に各光パルスP21〜P23の集光位置を好適に制御することができる。なお、本変形例においても、回折格子18は反射型及び透過型の何れであってもよく、シリンドリカルミラー41はレンズであってもよい。また、レンズ19はシリンドリカルミラーであってもよい。

0109

(第2変形例)
上記第1実施形態では、時間波形整形器11から出力された光パルスP21〜P23それぞれを異なる光路L1〜L3に分離するための光分散素子として回折格子18が用いられているが、図31に示されるように、回折格子18に代えてプリズム43が用いられてもよい。このような形態であっても、中心波長が互いに異なる光パルスP21〜P23それぞれを、波長に応じて好適に分離することができる。但し、プリズム43の波長毎の分散角度は回折格子18よりも小さいので、テラヘルツ波発生装置の小型化を要する場合には回折格子18が選択される。

0110

(第3変形例)
図7に示す上記第1実施形態では、中心波長が最も長い光パルスP21が最も早く出力され、中心波長が最も短い光パルスP23が最も遅く出力される。従って、図7及び図9に示されるように、光パルスP21〜P23にそれぞれ対応する集光スポットQ1〜Q3は、時間的にこの順序で形成される。すなわち、集光位置において空間的に隣り合う光パルスは、時間的にも隣り合っている。

0111

しかしながら、キャリアの飽和を避ける観点から、時間的に隣り合う光パルスは可能な限り空間的に離れて集光されることがより望ましい。図32は、一変形例における4つの光パルスP21〜P24の集光位置を示す図である。この変形例では、時間的に隣り合う光パルスの集光位置が隣り合わないように、光パルスP21〜P24の出力タイミングが工夫されている。すなわち、光パルスP21の中心波長をλ1、光パルスP22の中心波長をλ2、光パルスP23の中心波長をλ3、光パルスP24の中心波長をλ4としたとき、λ1>λ2>λ3>λ4の関係を満たすものとする。そして、光パルスP23を最初に出力し、次に光パルスP21を出力し、その次に光パルスP24を出力し、最後に光パルスP22を出力する。この場合、所定方向に並ぶ集光スポットQ1〜Q4のうち、集光スポットQ3が最初に形成され、集光スポットQ1が次に形成され、集光スポットQ4がその次に形成され、最後に集光スポットQ2が形成される。このように、時間的に隣り合う光パルスの集光位置が隣り合わないので、テラヘルツ波発生素子30におけるキャリアの飽和をより効果的に回避でき、更に効率良くテラヘルツ波を発生させることができる。

0112

(第4変形例)
図33は、上記実施形態の第4変形例に係るテラヘルツ波発生装置1Bの構成の一部分を概略的に示す図である。図33に示されるように、本変形例に係るテラヘルツ波発生装置1Bは、光源3と時間波形整形器11との間の光路上に配置されたパルスストレッチャ(パルス拡張器)44を更に備える。パルスストレッチャ44は、光源3と光学的に結合され、シングル光パルスP1の波長成分毎に異なる遅延を与えることによってパルス時間幅拡張する。具体的には、パルスストレッチャ44は、シングル光パルスP1に線形分散を与えることにより、時間的に異なる波長成分を有するチャープ光パルスP11を生成する。

0113

その後、チャープ光パルスP11は時間波形整形器11に入力される。時間波形整形器11は、チャープ光パルスP11の各波長成分同士を分断することにより、互いに中心波長が異なる複数の光パルスを生成する。同時に、時間波形整形器11は、複数の光パルス毎に異なる遅延時間を与え、且つ各光パルスの時間幅を圧縮する。結果として、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスP21〜P23が生成される。

0114

図34は、パルスストレッチャ44の具体的な構成例として、グレーティングペア型の構成を示す図である。このパルスストレッチャ44は、一対の回折格子44a,44bと、ミラー44cとを含む。回折格子44aには、シングル光パルスP1が入力される。シングル光パルスP1は、回折格子44aにおいて各波長成分に分光される。分光された各波長成分は、回折格子44bに入力され、互いの光路が平行に揃えられる。その後、これらの波長成分はミラー44cにおいて反射し、再び回折格子44b,44aを経て互いに結合される。この過程において、各波長成分の光路長がそれぞれ異なる(長波長側が短く、短波長側が長い)ので、結果的に、合波後の光パルスでは波長成分毎に異なる遅延が与えられ、パルス時間幅が拡張される。なお、パルスストレッチャ44としてはこのような構成に限られず、例えばプリズムペアが用いられてもよく、適当な長さを有するガラスロッドが用いられてもよい。

0115

(第5変形例)
図35(a)〜図35(c)は、上記実施形態の第5変形例を説明するための図である。本変形例では、テラヘルツ波発生素子30のアンテナ構造を工夫することにより、マルチテラヘルツ波パルスの偏光方向を制御する。図35(a)に示されるダイポールアンテナの3組のアンテナ部のうち1組では、一対のアンテナ部34b1の対向方向が他組のアンテナ部34b2とは相違している。すなわち、他組においては一対のアンテナ部34b2の所定方向B3における位置が互いに一致しているので、一対のアンテナ部34b2は所定方向B3と直交する方向B4において対向している。これに対し、1組においては一対のアンテナ部34b1の所定方向B3における位置が互いにずれており、且つ突出長さが他組よりも長い。これにより、一対のアンテナ部34b1は所定方向B3において対向している。そして、所定方向B3において対向する一組のアンテナ部34b1のアンテナギャップに光パルスP23の集光スポットQ3が形成され、他組のアンテナ部34b2のアンテナギャップに、光パルスP21,P22の集光スポットQ1,Q2が形成されるとする。

0116

この場合、図35(c)に示されるように、光パルスP21,P22により生じるテラヘルツ波T1,T2の偏光方向TP1,TP2は方向B4に沿い、光パルスP23により生じるテラヘルツ波T3の偏光方向TP3は所定方向B3に沿うこととなる。そして、時間波形整形器11が光パルスP21を最初に出力し、次に光パルスP22を出力し、最後に光パルスP23を出力するとき、最初に出力されるテラヘルツ波T1、及び次に出力されるテラヘルツ波T2の偏光方向は方向B4に沿い、最後に出力されるテラヘルツ波T3の偏光方向は所定方向B3に沿うこととなる。また、時間波形整形器11が光パルスP23を最初に出力し、次に光パルスP22を出力し、最後に光パルスP21を出力するとき、最初に出力されるテラヘルツ波T3の偏光方向は所定方向B3に沿い、次に出力されるテラヘルツ波T2、及び最後に出力されるテラヘルツ波T1の偏光方向は方向B4に沿うこととなる。このように、本変形例によれば、各光パルスP21〜P23の遅延時間を制御することにより、テラヘルツ波発生素子30から順に出力される複数のテラヘルツ波の偏光方向を、それぞれ独立して制御することができる。

0117

(第6変形例)
図36及び図37は、上記実施形態の第6変形例を説明するための図である。本変形例では、テラヘルツ波発生素子30のアンテナ構造を更に工夫するとともに、光パルスP21〜P23の光路とテラヘルツ波発生素子30との相対位置を移動可能とする移動ステージを更に設けることにより、テラヘルツ波の偏光方向の制御の自由度をより高める。

0118

図36(a)及び図37(a)に示されるダイポールアンテナは、6組のアンテナ部を有する。そのうちの3組では、一対のアンテナ部34b1の所定方向B3における位置が互いにずれており、且つ突出長さが他組よりも長い。これにより、一対のアンテナ部34b1は所定方向B3において対向している。また、残りの3組では、一対のアンテナ部34b2の所定方向B3における位置が互いに一致しており、一対のアンテナ部34b2は所定方向B3と直交する方向B4において対向している。

0119

図36(a)に示されるように、3つの光パルスP21〜P23の集光スポットQ1〜Q3が、最初の3組のアンテナ部34b1のアンテナギャップに形成されるとする。この場合、図36(b)に示されるように、光パルスP21〜P23により生じるテラヘルツ波T1〜T3の偏光方向TP1〜TP3は全て所定方向B3に沿うこととなる。一方、光パルスP21〜P23の光路とテラヘルツ波発生素子30との相対位置を移動することにより、図37(a)に示されるように、集光スポットQ1がアンテナ部34b1のアンテナギャップに形成され、集光スポットQ2,Q3がアンテナ部34b2のアンテナギャップに形成されるとする。この場合、図37(b)に示されるように、光パルスP21により生じるテラヘルツ波T1の偏光方向TP1は所定方向B3に沿い、光パルスP22,P23により生じるテラヘルツ波T2,T3の偏光方向TP2,TP3は方向B4に沿うこととなる。このように、本変形例では、光パルスP21〜P23の光路とテラヘルツ波発生素子30との相対位置を変更することにより、テラヘルツ波発生素子30から順に出力される複数のテラヘルツ波の偏光方向を制御することができる。

0120

なお、本変形例においては、各光パルスP21〜P23の時間遅延を制御することによって、マルチテラヘルツ波パルスの偏光の順序を制御することもできる。また、光パルスP21〜P23の集光スポットQ1〜Q3の位置を変更することによって、マルチテラヘルツ波パルスの偏光の組み合わせを制御することができる。例えば、非特許文献4には、PbTiO3のコヒーレント制御において、複数のテラヘルツ波パルスのうち最後のテラヘルツ波パルスの偏光を90°回転させることによって、効率よく結晶振動を励起できることが示されている。そのため、本変形例は、特に結晶などのコヒーレント制御に有効である。

0121

(第7変形例)
図38は、上記実施形態の第7変形例を説明するための図である。本変形例では、テラヘルツ波発生素子30のアンテナ構造を工夫することにより、マルチテラヘルツ波パルスの電場の符号を制御する。図38(a)に示されるダイポールアンテナでは、一方の電極の2つのアンテナ部34b3と、他方の電極の2つのアンテナ部34b3とが、所定方向B3において交互に配置されている。そして、一方の電極の第1のアンテナ部34b3と他方の電極の第1のアンテナ部34b3とによって第1のアンテナギャップが形成され、一方の電極の第2のアンテナ部34b3と他方の電極の第1のアンテナ部34b3とによって第2のアンテナギャップが形成され、一方の電極の第2のアンテナ部34b3と他方の電極の第2のアンテナ部34b3とによって第3のアンテナギャップが形成されている。第1のアンテナギャップには集光スポットQ1が形成され、第2のアンテナギャップには集光スポットQ2が形成され、第3のアンテナギャップには集光スポットQ3が形成される。

0122

光パルスをダイポールアンテナに照射すると、キャリアによる電流の流れる方向によって、発生するテラヘルツ波の電場の符号が変化する。ここで、図38(a)において、電流が所定方向B3の一方の向き(図中の矢印B31)に流れる場合に、テラヘルツ波の電場がプラス方向に振動するものとする。このとき、テラヘルツ波パルスT1,T3の電場は主にプラスの方向に振動する。一方、テラヘルツ波パルスT2は主にマイナスの方向に振動する。このように、本変形例によれば、マルチテラヘルツ波パルスの各電場における振動方向を自在に制御することができる。さらに、上述した第5変形例及び第6変形例のように、ダイポールアンテナの対向方向を併せて工夫することにより、マルチテラヘルツ波パルスの偏光方向を同時に制御することができる。

0123

非特許文献5では、テラヘルツ波パルスを用いて、反強磁性体であるErFeO3のスピンを制御できることが報告されている。この非特許文献5には、ハーフサイクル(プラスまたはマイナスのどちらか片方にしか振動しない電場、つまり単を意味する)のテラヘルツ波を用いることによって、スピンに対してインパルス的な撃力を与えて、励起されたFモード(0.377THz)およびAFモード(0.673THz)の共鳴を区別できることが示されている。また、ハードディスクドライブなどの磁化制御においては、スピンの向きも重要であることが知られている。そのため、スピン制御においては、テラヘルツ波の電場の振動方向を制御することが望まれる。本変形例は、このようなスピンのコヒーレント制御に対して有用である。

0124

(第2実施形態)
図39及び図40は、本発明の第2実施形態に係るテラヘルツ波発生装置1Cの構成の一部を示す図である。図39(a)は側面図であり、図39(b)は上面図であり、図40は斜視図である。本実施形態のテラヘルツ波発生装置1Cは、第1実施形態と異なり、回折格子18を備えていない。すなわち、時間波形整形器11とレンズ19とが、回折格子18を介さずに光結合されている。

0125

具体的には、本実施形態のSLM14は、第1実施形態と同様に、回折格子12による分光後のシングル光パルスP1の位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスP21〜P23を生成する。加えて、本実施形態のSLM14は、複数の光パルスP21〜P23の光路を、波長に応じて分光方向(図中の矢印B4)と交差する方向(図中の矢印B3)に分離する。このようなSLM14の機能は、SLM14に表示される変調パターンが、方向B3に沿って格子が並ぶ回折格子パターンを含むことにより好適に実現される。すなわち、光パルスP21〜P23は、回折格子パターンの作用により、それらの中心波長に応じた互いに異なる角度で出力される。レンズ15は、分光方向B4において複数の光パルスP21〜P23を集光する。回折格子16では、光パルスP21〜P23の光路が、方向B4においては回折作用により互いに一致するが、方向B3においては回折作用が生じないので互いに異なったままとなる。その後、光パルスP21〜P23は、レンズ19により集光され、テラヘルツ波発生素子30において、方向B3に沿って並ぶ3つの集光スポットQ1〜Q3を形成する。なお、一例では、SLM14からレンズ19までの距離、及びレンズ19からテラヘルツ波発生素子30までの距離は、共にレンズ19の焦点距離fと等しい。

0126

図41は、本実施形態におけるSLM14の変調パターンの一例を示す図である。本実施形態では、SLM14の変調パターンを、方向B4において3つの領域14c〜14eに分割する。領域14cは、中心波長840nmの長波長域(すなわち光パルスP21の帯域)に対応する領域であり、領域14dは、中心波長800nmの中波長域(すなわち光パルスP22の帯域)に対応する領域であり、領域14eは、中心波長760nmの短波長域(すなわち光パルスP23の帯域)に対応する領域である。領域14c,14eでは、位相が0(rad)からπ(rad)まで滑らかに変化するブレーズド回折格子の位相パターンが含まれる。

0127

そして、このブレーズド回折格子により、領域14cでは、方向B4における一方の向きに傾斜した光路へ光パルスP21を出力し、領域14eでは、方向B4における他方の向きに傾斜した光路へ光パルスP23を出力する。なお、領域14dにはブレーズド回折格子が含まれておらず、光パルスP22はこれらの光路の中間の向きに出力される。

0128

一実施例では、回折格子12,16のライン数は300ライン/mmであり、レンズ13,15の焦点距離は181.5mmである。そして、SLM14のブレーズド回折格子の位相パターンのライン数は例えば3.33ライン/mmであり、シングル光パルスP1の光径は16mmであり、レンズ19の焦点距離はf=500mmである。この場合、集光スポットQ1〜Q3の直径は30μmとなり、集光スポットQ1〜Q3の間隔は66μmとなる。従って、本実施形態においても第1実施形態と同様に、集光スポットQ1〜Q3の直径よりも集光スポットQ1〜Q3の間隔が広くなり、集光スポットQ1〜Q3は互いに確実に分離することができる。その結果、キャリア飽和を抑圧し、テラヘルツ波の発生効率を向上させることができる。なお、本実施形態においても、前述した第3変形例と同様に、時間的に隣り合う光パルスは可能な限り空間的に離れて集光されることが望ましい。

0129

ここで、本実施形態によるテラヘルツ波発生方法について説明する。このテラヘルツ波発生方法は、本実施形態のテラヘルツ波発生装置1Cを用いて実現可能である。図42は、本実施形態のテラヘルツ波発生方法を示すフローチャートである。

0130

まず、第1ステップ(パルス光生成ステップ)S11において、光源3からシングル光パルスP1を出力する。次に、第2ステップ(マルチパルス光生成ステップ)S12において、シングル光パルスP1から、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスP21〜P23を生成し、光パルスP21〜P23それぞれを、波長に応じて異なる光路上に出力する。この第2ステップS12は、分光ステップS13、光変調ステップS14、及び集光ステップS15を含む。分光ステップS13では、シングル光パルスP1を分光する。光変調ステップS14では、分光後のシングル光パルスP1の位相変調を波長毎に行うことにより、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスP21〜P23を生成するとともに、光パルスP21〜P23の光路を、波長に応じて、分光方向B4と交差する方向B3に分離する。集光ステップS15では、分光方向B4において光パルスP21〜P23を集光する。最後に、第3ステップ(テラヘルツ波生成ステップ)S16において、光パルスP21〜P23をテラヘルツ波発生素子30に入力して、テラヘルツ波パルスを発生させる。

0131

本実施形態のテラヘルツ波発生装置1C及びテラヘルツ波発生方法によれば、前述したテラヘルツ波発生装置1Aと同様に、テラヘルツ波発生素子30におけるキャリアの飽和をより効果的に回避し、テラヘルツ波の発生効率を向上できる。

0132

本発明によるテラヘルツ波発生装置及びテラヘルツ波発生方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した各実施形態及び各変形例を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、上記各実施形態では、テラヘルツ波発生媒質として半導体を用いたテラヘルツ波発生素子を例示したが、非線形結晶を用いたテラヘルツ波発生素子においても、本発明は有効である。すなわち、半導体においてはレーザーパワー増大に伴うキャリアの飽和が問題となるが、非線形結晶においても、レーザーパワーが増大すると、結晶自身の二光子吸収によるテラヘルツ波出力の飽和が問題となる(例えば非特許文献6)。従って、テラヘルツ波発生素子が非線形結晶を有する場合であっても、本発明を適用できる。非線形結晶は、例えばZnTe,GaSe,GaP,DAST,DSTMSなどである。

0133

1A〜1C…テラヘルツ波発生装置、3…光源、10A…マルチパルス生成部、11…時間波形整形器、12,16…回折格子、13,15…レンズ、14a…変調面、14b…変調領域、17…データ作成部、18…回折格子、19…レンズ、21…任意波形入力部、22…位相スペクトル設計部、23…強度スペクトル設計部、24…変調パターン生成部、25…フーリエ変換部、26…関数置換部、27…波形関数修正部、28…逆フーリエ変換部、29…ターゲット生成部、29a…フーリエ変換部、29b…スペクトログラム修正部、30…テラヘルツ波発生素子、30A,30B…光伝導アンテナ素子、31…基板、32…第1半導体層、33…絶縁層、33a…開口部、34,36…電極、34a,36a…配線部、34b,36b…アンテナ部、34c,36c…パッド部、35…第2半導体層、37…保護膜、41…シリンドリカルミラー、42…ペリスコープアレイ、43…プリズム、44…パルスストレッチャ、44a,44b…回折格子、44c…ミラー、B3…所定方向、B4…分光方向、D…光径、f…焦点距離、L0〜L3…光路、P1…シングル光パルス、P2…マルチ光パルス、P21〜P24…光パルス、Q1〜Q4…集光スポット、SC…制御信号、T1〜T3…テラヘルツ波、TP1〜TP3…偏光方向。

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