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技術 熱間鍛造用鋼及び熱間鍛造品

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 吉田卓志賀聡寺本真也宮西慶根石豊
出願日 2016年9月1日 (4年3ヶ月経過) 出願番号 2016-171176
公開日 2018年3月8日 (2年9ヶ月経過) 公開番号 2018-035417
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理 軸・クランク・連接棒及び関連の軸受 連続鋳造
主要キーワード 輸送用機械 一次アーム X線解析 建設用機械 検査工数 粗形状 JIS規格 鍛錬成形比
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課題

被削性に優れ、磁粉探傷試験時に擬似模様が生じにくい熱間鍛造用鋼を提供する。

解決手段

C:0.30%超〜0.60%未満、Si:0.10〜0.90%、Mn:0.50〜2.00%、S:0.010〜0.100%、Cr:0.01〜1.00%、Ti:0.001〜0.040%未満、Al:0.005超〜0.100%、N:0.0030〜0.0200%及びBi:0.0001超〜0.0050%に加え、Sb及びSnのうちの1種又は2種を、0.0001〜0.0050%含有し、P:0.050%以下及びO:0.0050%以下であり、残部がFe及び不純物からなり、下記式(1)を満たし、鋼材圧延方向と平行な断面において円相当径が2μm未満のMnSの存在密度が300個/mm2以上の熱間鍛造用鋼を採用する。 d+3σ<20 ・・・(1) 式(1)のdは円相当径で1μm以上のMnSの平均円相当径であり、σは標準偏差である。

概要

背景

熱間鍛造品は、産業用機械建設用機械及び、自動車に代表される輸送用機械機械部品として利用される。機械部品はたとえばエンジン部品や、たとえばクランクシャフトが例示される。

熱間鍛造品は、以下の工程により製造される。まず、熱間鍛造用鋼熱間鍛造して中間品を製造する。製造された中間品に対して必要に応じて、調質処理を実施する。熱間鍛造したままの非調質の中間品又は調質処理後の中間品に対して、切削穿孔等により部品形状機械加工する。機械加工された中間品に対して、高周波焼入れ浸炭、窒化等の表面硬化処理を実施する。表面硬化処理後、中間品に対して研削研磨により仕上げ加工を実施し、熱間鍛造品を製造する。

熱間鍛造品は中間品の状態で切削や穿孔等の機械加工が実施される。そのため、熱間鍛造用鋼は、優れた被削性が要求される。鋼に硫黄(S)を含有すれば、被削性が向上することはよく知られている。Sは鋼中に硫化物を形成する。硫化物は例えば、MnSである。形成されたMnSによって、鋼の被削性が向上する。

ところで、上述のとおり、熱間鍛造品は、表面硬化処理(高周波焼入れ、浸炭、窒化等)を実施される。表面硬化処理のうち、高周波焼入れは、浸炭や窒化と比較して短時間で鋼の表面を硬化することができる。しかしながら、高周波焼入れを実施された熱間鍛造品には、焼き割れが発生する場合がある。また、高周波焼入れ後の中間品に仕上げ加工を実施することで研削割れが発生する場合もある。そのため、高周波焼入れが実施された熱間鍛造品は一般的に、磁粉探傷試験が実施され、焼き割れや研削割れといった表面疵の有無の確認が行われる。

磁粉探傷試験は一般に、熱間鍛造品を磁化させることで熱間鍛造品の表面疵部分において漏洩磁束を発生させ、大きな漏洩磁束が発生している場所に磁粉吸着させることで磁粉模様を形成させる。この磁粉模様により、疵の発生の有無及び表面疵の発生箇所を特定する。しかしながら、被削性の改善のためにS含有量を増加させると、磁粉探傷試験において、MnSに起因した擬似模様が発生する場合がある。この原因は、S含有量を増加させることで非磁性であるMnSが形成され、漏洩磁束が発生し、MnSに起因した擬似模様が形成されるということである。

以上のように、擬似模様は、表面疵以外の要因により形成される磁粉模様である。したがって、擬似模様により、熱間鍛造品が表面疵を有すると誤認される場合がある。このような誤認を防止するためには、磁粉模様が発生した熱間鍛造品に対して浸透探傷試験を実施すれば、表面疵の有無を正確に確認できる。しかしながら、磁粉探傷試験に加えて浸透探傷試験を実施することで検査工数が増えてしまう。

特許文献1では、Tiを含有し、かつ、N含有量を低くすることで、鋼中にMnSに代えてTiSに起因した炭硫化物を形成させる。この炭硫化物が分散することにより、被削性を維持しつつ、擬似模様の発生が抑制されると記載されている。

特許文献2では、鋼中にTeを含有させ、かつ、Ca/Te<1.0とすることで、鋼中のMnSにCa及びTeが固溶し、球状化したMnSが生成され、被削性を維持しつつ擬似模様の発生が抑制されると記載されている。

概要

被削性に優れ、磁粉探傷試験時に擬似模様が生じにくい熱間鍛造用鋼を提供する。C:0.30%超〜0.60%未満、Si:0.10〜0.90%、Mn:0.50〜2.00%、S:0.010〜0.100%、Cr:0.01〜1.00%、Ti:0.001〜0.040%未満、Al:0.005超〜0.100%、N:0.0030〜0.0200%及びBi:0.0001超〜0.0050%に加え、Sb及びSnのうちの1種又は2種を、0.0001〜0.0050%含有し、P:0.050%以下及びO:0.0050%以下であり、残部がFe及び不純物からなり、下記式(1)を満たし、鋼材圧延方向と平行な断面において円相当径が2μm未満のMnSの存在密度が300個/mm2以上の熱間鍛造用鋼を採用する。 d+3σ<20 ・・・(1) 式(1)のdは円相当径で1μm以上のMnSの平均円相当径であり、σは標準偏差である。なし

目的

本発明は、熱間鍛造後の被削性に優れ、磁粉探傷試験時に擬似模様が発生しにくい熱間鍛造用鋼及び熱間鍛造品の提供を課題とする

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

質量%で、C:0.30%超〜0.60%未満、Si:0.10%〜0.90%、Mn:0.50%〜2.00%、S:0.010%〜0.100%、Cr:0.01%〜1.00%、Ti:0.001%〜0.040%未満、Al:0.005%超〜0.100%、N:0.0030%〜0.0200%及びBi:0.0001%超〜0.0050%を含有し、Sb:0.0001%〜0.0050%及びSn:0.0001%〜0.0050%のうちの1種または2種を含有し、更に、P及びOがそれぞれ、P:0.050%以下及びO:0.0050%以下であり、残部がFe及び不純物からなり、下記式(1)を満たし、鋼材圧延方向と平行な断面において円相当径が2μm未満のMnSの存在密度が300個/mm2以上である熱間鍛造用鋼。d+3σ<20μm・・・(1)式(1)中の、dは円相当径が1μm以上のMnSの平均円相当径であり、σは円相当径が1μm以上のMnSの、円相当径の標準偏差である。

請求項2

Feの一部に代えて、質量%で、V:0.30%以下を含有する、請求項1に記載の熱間鍛造用鋼。

請求項3

Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.0003%〜0.0040%、またはPb:0.400%以下からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1または請求項2に記載の熱間鍛造用鋼。

請求項4

質量%で、C:0.30%超〜0.60%未満、Si:0.10%〜0.90%、Mn:0.50%〜2.00%、S:0.010%〜0.100%、Cr:0.01%〜1.00%、Ti:0.001%〜0.040%未満、Al:0.005%超〜0.100%、N:0.0030%〜0.0200%及びBi:0.0001%超〜0.0050%を含有し、Sb:0.0001%〜0.0050%及びSn:0.0001%〜0.0050%のうちの1種または2種を含有し、更に、P及びOがそれぞれ、P:0.050%以下及びO:0.0050%以下であり、残部がFe及び不純物からなり、下記式(2)を満たし、鋼材の圧延方向と平行な断面において円相当径が2μm未満のMnSの存在密度が300個/mm2以上である熱間鍛造品。d+3σ<20μm・・・(2)式(2)中の、dは円相当径が1μm以上のMnSの平均円相当径であり、σは円相当径が1μm以上のMnSの、円相当径の標準偏差である。

請求項5

Feの一部に代えて、質量%で、V:0.30%以下を含有する、請求項4に記載の熱間鍛造品。

請求項6

Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.0003%〜0.0040%、またはPb:0.400%以下からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項4または請求項5に記載の熱間鍛造品。

技術分野

0001

本発明は、熱間鍛造用鋼及び熱間鍛造品に関する。

背景技術

0002

熱間鍛造品は、産業用機械建設用機械及び、自動車に代表される輸送用機械機械部品として利用される。機械部品はたとえばエンジン部品や、たとえばクランクシャフトが例示される。

0003

熱間鍛造品は、以下の工程により製造される。まず、熱間鍛造用鋼を熱間鍛造して中間品を製造する。製造された中間品に対して必要に応じて、調質処理を実施する。熱間鍛造したままの非調質の中間品又は調質処理後の中間品に対して、切削穿孔等により部品形状機械加工する。機械加工された中間品に対して、高周波焼入れ浸炭、窒化等の表面硬化処理を実施する。表面硬化処理後、中間品に対して研削研磨により仕上げ加工を実施し、熱間鍛造品を製造する。

0004

熱間鍛造品は中間品の状態で切削や穿孔等の機械加工が実施される。そのため、熱間鍛造用鋼は、優れた被削性が要求される。鋼に硫黄(S)を含有すれば、被削性が向上することはよく知られている。Sは鋼中に硫化物を形成する。硫化物は例えば、MnSである。形成されたMnSによって、鋼の被削性が向上する。

0005

ところで、上述のとおり、熱間鍛造品は、表面硬化処理(高周波焼入れ、浸炭、窒化等)を実施される。表面硬化処理のうち、高周波焼入れは、浸炭や窒化と比較して短時間で鋼の表面を硬化することができる。しかしながら、高周波焼入れを実施された熱間鍛造品には、焼き割れが発生する場合がある。また、高周波焼入れ後の中間品に仕上げ加工を実施することで研削割れが発生する場合もある。そのため、高周波焼入れが実施された熱間鍛造品は一般的に、磁粉探傷試験が実施され、焼き割れや研削割れといった表面疵の有無の確認が行われる。

0006

磁粉探傷試験は一般に、熱間鍛造品を磁化させることで熱間鍛造品の表面疵部分において漏洩磁束を発生させ、大きな漏洩磁束が発生している場所に磁粉吸着させることで磁粉模様を形成させる。この磁粉模様により、疵の発生の有無及び表面疵の発生箇所を特定する。しかしながら、被削性の改善のためにS含有量を増加させると、磁粉探傷試験において、MnSに起因した擬似模様が発生する場合がある。この原因は、S含有量を増加させることで非磁性であるMnSが形成され、漏洩磁束が発生し、MnSに起因した擬似模様が形成されるということである。

0007

以上のように、擬似模様は、表面疵以外の要因により形成される磁粉模様である。したがって、擬似模様により、熱間鍛造品が表面疵を有すると誤認される場合がある。このような誤認を防止するためには、磁粉模様が発生した熱間鍛造品に対して浸透探傷試験を実施すれば、表面疵の有無を正確に確認できる。しかしながら、磁粉探傷試験に加えて浸透探傷試験を実施することで検査工数が増えてしまう。

0008

特許文献1では、Tiを含有し、かつ、N含有量を低くすることで、鋼中にMnSに代えてTiSに起因した炭硫化物を形成させる。この炭硫化物が分散することにより、被削性を維持しつつ、擬似模様の発生が抑制されると記載されている。

0009

特許文献2では、鋼中にTeを含有させ、かつ、Ca/Te<1.0とすることで、鋼中のMnSにCa及びTeが固溶し、球状化したMnSが生成され、被削性を維持しつつ擬似模様の発生が抑制されると記載されている。

先行技術

0010

特許第3893756号公報
特許第5545273号公報

発明が解決しようとする課題

0011

しかし、特許文献1に記載された熱間鍛造用鋼は、Ti含有量が高い。そのため、熱間鍛造の条件によっては、鋼の硬度が高くなり過ぎ、被削性が低下する場合がある。

0012

特許文献2に記載された熱間鍛造用鋼は、Ca及びTeを添加することによりMnSを球状化させ、かつ、熱間加工圧下比を6.0以上とすることによりMnSを分断微細化させて、擬似模様の発生を抑制させている。なお、圧下比は鋳片又はインゴット横断面積(mm2)/棒鋼の横断面積(mm2)で示される。しかしながら、鋳片サイズが小さく、かつ棒鋼のサイズが大きくなるような大物熱間鍛造品では、圧下比を大きくできず、粗大なMnSが残存する恐れがある。圧下比が小さい場合でも、MnSを微細化するには、熱間圧延前の鋳片の段階で出来るだけMnSを微細にする必要がある。

0013

本発明は、熱間鍛造後の被削性に優れ、磁粉探傷試験時に擬似模様が発生しにくい熱間鍛造用鋼及び熱間鍛造品の提供を課題とする。

課題を解決するための手段

0014

本発明の熱間鍛造用鋼は、質量%で、
C:0.30%超〜0.60%未満、
Si:0.10%〜0.90%、
Mn:0.50%〜2.00%、
S:0.010%〜0.100%、
Cr:0.01%〜1.00%、
Ti:0.001%〜0.040%未満、
Al:0.005%超〜0.100%、
N:0.0030%〜0.0200%及び
Bi:0.0001%超〜0.0050%を含有し、
Sb:0.0001%〜0.0050%及びSn:0.0001%〜0.0050%のうちの1種または2種を含有し、
更に、P及びOがそれぞれ、
P:0.050%以下及び
O:0.0050%以下であり、
残部がFe及び不純物からなり、
下記式(1)を満たし、
鋼材圧延方向と平行な断面において円相当径が2μm未満のMnSの存在密度が300個/mm2以上である。
d+3σ<20μm ・・・(1)
式(1)中の、dは円相当径が1μm以上のMnSの平均円相当径であり、σは円相当径が1μm以上のMnSの、円相当径の標準偏差である。
また、本発明の熱間鍛造用鋼は、Feの一部に代えて、質量%で、V:0.30%以下を含有してもよい。
また、本発明の熱間鍛造用鋼は、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.0003%〜0.0040%、またはPb:0.400%以下からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。

0015

次に、本発明の熱間鍛造品は、質量%で、
C:0.30%超〜0.60%未満、
Si:0.10%〜0.90%、
Mn:0.50%〜2.00%、
S:0.010%〜0.100%、
Cr:0.01%〜1.00%、
Ti:0.001%〜0.040%未満、
Al:0.005%超〜0.100%、
N:0.0030%〜0.0200%及び
Bi:0.0001%超〜0.0050%を含有し、
Sb:0.0001%〜0.0050%及びSn:0.0001%〜0.0050%のうちの1種または2種を含有し、
更に、P及びOがそれぞれ、
P:0.050%以下及び
O:0.0050%以下であり、
残部がFe及び不純物からなり、
下記式(2)を満たし、
鋼材の圧延方向と平行な断面において円相当径が2μm未満のMnSの存在密度が300個/mm2以上である。
d+3σ<20μm ・・・(2)
式(2)中の、dは円相当径が1μm以上のMnSの平均円相当径であり、σは円相当径が1μm以上のMnSの、円相当径の標準偏差である。
また、本発明の熱間鍛造品は、Feの一部に代えて、質量%で、V:0.30%以下を含有してもよい。
また、本発明の熱間鍛造品は、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.0003%〜0.0040%、またはPb:0.400%以下からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
更に、本発明の熱間鍛造品は、先のいずれか1項に記載の熱間鍛造用鋼を熱間鍛造し、熱間鍛造後に高周波焼入れして製造されたものでもよい。

発明の効果

0016

本発明によれば、熱間鍛造後の被削性に優れ、磁粉探傷試験時に擬似模様が発生しにくい熱間鍛造用鋼及び熱間鍛造品を提供できる。

0017

本発明者らは、熱間鍛造用鋼に関する研究及び検討の結果、以下の知見を得た。

0018

(a)鋼中のS含有量を少なくすれば、MnSが少なくなり、磁粉探傷試験時における擬似模様の発生が抑制される。しかしながら、MnSが少なくなると鋼の被削性が低下してしまう。このように、擬似模様の発生抑制と被削性の向上とは相互に相反する関係にある。

0019

(b)S含有量を多くすることなく被削性を向上するには、MnSのサイズ及び分布の制御が重要である。

0020

(c)MnSの円相当径と工具摩耗量との関係について種々実験を行った結果、円相当径が2μm未満のMnSが300個/mm2以上の存在密度で鋼中に存在すると、工具摩耗が抑制される。

0021

(d)一方、磁粉探傷試験において、磁粉は、大きな漏洩磁束が発生している場所に吸着され、磁粉模様を形成する。MnSは非磁性であることから。鋼の表層のMnSのサイズが大きくなると、MnSに起因した漏洩磁束は磁粉模様を形成できる程度に大きくなる。一方、MnSのサイズが小さければ、MnSに起因した漏洩磁束が小さくなり、磁粉模様を形成しにくくなる。したがって、MnSを微細化すれば擬似模様の発生は抑制される。

0022

(e)鋼材中のMnSは、凝固前(溶鋼中)または凝固時に晶出することが多く、MnSのサイズは、凝固時の冷却速度に大きく影響を受ける。また、連続鋳造鋳片の凝固組織は、通常はデンドライト形態を呈しており、このデンドライトは、凝固過程における溶質元素拡散に起因して形成され、溶質元素は、デンドライトの樹間部において濃化する。Mnは、樹間部において濃化し、MnSが樹間に晶出する。

0023

(f)MnSを微細に分散させるには、デンドライトの樹間の間隔を短くする必要がある。デンドライトの1次アーム間隔に関する研究は従来から行われており、下記(A)式で表すことができる。
λ∝(D×σ×ΔT)0.25 …(A)
ここで、λ:デンドライトの1次アーム間隔(μm)、D:拡散係数(m2/s)、σ:固液界面エネルギー(J/m2)、ΔT:凝固温度範囲(℃)である。

0024

非特許文献:W.Kurz and D.J.Fisher著、「Fundamentals of Solidification」、Trans Tech Publications Ltd.、(Switzerland)、1998年、p.256

0025

この(A)式から、デンドライトの1次アーム間隔λは、固液界面エネルギーσに依存しており、このσを低減できればλが減少することがわかる。λを減少させることができれば、デンドライト樹間に晶出するMnSサイズを低減させることができる。本発明者らは、鋼にBiを微量添加することにより、MnSのサイズを微細化できることを見出した。以下、本発明の熱間鍛造用鋼及び熱間鍛造品について詳細に説明する。

0026

まず、各成分元素の含有量について説明する。ここで、成分についての「%」は質量%である。

0027

C:0.30%超〜0.60%未満
炭素(C)は、鋼の引張強度及び疲労強度を高める。一方、C含有量が多すぎれば、鋼の被削性が低下する。したがって、C含有量は0.30超〜0.60%未満である。好ましいC含有量は0.32%〜0.55%である。

0028

Si:0.10%〜0.90%
シリコン(Si)は、鋼中のフェライトに固溶して、鋼の引張強度を高める。一方、Si含有量が多すぎれば、熱間鍛造品の表面にスケールが残りやすくなり、熱間鍛造品の外観を損ねる。したがって、Si含有量は、0.10%〜0.90%である。好ましいSi含有量は0.17%〜0.74%である。

0029

Mn:0.50%〜2.00%
マンガン(Mn)は、鋼に固溶して鋼の引張強度及び疲労強度を高め、鋼の焼入れ性を高める。Mnは更に、鋼中の硫黄(S)と結合してMnSを形成し、鋼の被削性を高める。一方、Mn含有量が多すぎれば、鋼の被削性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.50%〜2.00%である。鋼の引張強度、疲労強度及び焼入れ性を高める場合、好ましいMn含有量の下限は0.60%以上であり、更に好ましくは、0.75%以上である。鋼の冷間鍛造性を更に高める場合、好ましいMn含有量の上限は1.90%以下であり、更に好ましくは、1.70%以下である。

0030

S:0.010%〜0.100%
硫黄(S)は、鋼中のMnと結合してMnSを形成し、鋼の被削性を高める。一方、S含有量が多すぎれば、鋼の疲労強度を低下させる。更に高周波焼入れ後の熱間鍛造品に対して磁粉探傷試験を実施する場合、熱間鍛造品の表面に擬似模様が発生しやすくなる。したがって、S含有量は、0.010%〜0.100%である。鋼の被削性を高める場合、好ましいS含有量の下限は0.015%以上であり、更に好ましくは、0.020%以上である。好ましいS含有量の上限は、0.090%以下であり、更に好ましくは、0.080%以下である。

0031

Cr:0.01%〜1.00%
クロム(Cr)は、鋼の引張強度を高める。また、Crは、鋼の焼入れ性を高め、浸炭処理や高周波焼入れ後の鋼の表面硬度を高める。一方、Cr含有量が多すぎると、鋼の被削性が低下する。したがって、Cr含有量は、0.01%〜1.00%である。鋼の焼入れ性及び引張強度を高める場合、好ましいCr含有量の下限は、0.03%以上であり、更に好ましくは、0.10%以上である。疲労強度を更に高める場合、好ましいCr含有量の上限は0.70%以下であり、更に好ましくは、0.50%以下である。

0032

Ti:0.001%〜0.040%未満
チタン(Ti)は鋼中で窒化物炭窒化物を形成する。窒化物や炭窒化物は、オーステナイト結晶粒を微細化し、鋼の疲労強度を高める。一方、Ti含有量が多すぎれば、鋼の被削性が低下する。したがって、Ti含有量は0.001%〜0.040%未満である。より好ましいTi含有量の上限は0.020%以下であり、より好ましい下限は、0.005%以上である。

0033

Al:0.005%超〜0.100%
アルミニウム(Al)は脱酸作用を有すると同時に、Nと結合してAlNを形成しやすく、浸炭加熱時オーステナイト粒粗大化防止に有効な元素である。しかし、Al含有量が0.005%以下では、安定してオーステナイト粒の粗大化を防止できず、オーステナイト粒が粗大化した場合は、曲げ疲労強度が低下する。一方、Al含有量が0.100%を超えると、粗大な酸化物を形成しやすくなり、曲げ疲労強度が低下する。したがって、Alの含有量を0.005%超〜0.100%とした。Al含有量の好ましい下限は0.030%以上であり、好ましい上限は0.060%以下である。

0034

N:0.0030%〜0.0200%
窒素(N)をTiやNbとともに含有させると、窒化物や炭窒化物を生成することにより、オーステナイト結晶粒が微細化され、鋼の疲労強度を高める。一方、N含有量が多すぎれば、鋼中の窒化物が粗大化し、鋼の被削性が低下する。したがって、N含有量は、0.0030%〜0.0200%である。N含有量の好ましい下限は0.0050%以上であり、好ましい上限は0.0180%以下である。

0035

Bi:0.0001%超〜0.0050%
ビスマス(Bi)は、本発明において重要な元素である。微量のBiを含有することによって、鋼の凝固組織が微細化し、MnSが微細分散する。MnSの微細化効果を得るには、Bi含有量を0.0001%超とする必要がある。しかし、Bi含有量が0.0050%を超えると、デンドライト組織の微細化効果が飽和し、かつ鋼の熱間加工性劣化し、熱間圧延が困難となる。これらのことから、本発明では、Bi含有量は0.0001%超〜0.0050%である。更に、被削性向上及びMnS微細分散化効果を得るには、Bi含有量の下限を0.0010%以上とすることが好ましい。

0036

Sb:0.0001%〜0.0050%
Sn:0.0001%〜0.0050%
本発明は上記の成分に加えて、アンチモン(Sb)または錫(Sn)のうち、1種または2種をそれぞれ、0.0001%〜0.0050%の範囲内で添加することが特徴である。これら2つの元素は、結晶粒界もしくは、母相介在物との界面に偏析し、界面の結合力を低下させ、微量の添加でも被削性を向上させる。本発明ではBiの添加により、被削性を向上させることができるが、SbまたはSnのうち、1種または2種の添加により、さらに被削性向上効果を発揮させることが可能となる。Sb及びSnともに下限を0.0001%以上としたが、効果を十分に発揮させるためのより好ましい下限としては0.0015%以上とする。また、上限については、Sb及びSnを過度に添加すると、鋼の熱間加工性が劣化し、鋳造が困難となることから、上限をそれぞれ0.0050%以下とする。より好ましい上限はそれぞれ0.0030%以下である。熱間加工性を向上させるために更に好ましくは、Bi、Sb及びSnの濃度の合計が0.0001%〜0.0050%であるとよい。

0037

P:0.050%以下
燐(P)は鋼の疲労強度や熱間加工性を低下させることから、P含有量は少ない方が好ましい。したがって、P含有量の上限は0.050%以下である。好ましいP含有量の上限は0.035%以下であり、更に好ましくは、0.020%以下である。なお、P含有量は少ない方が好ましいが、P含有量を極度に低減させるには製造コストが高くなるため、経済性の観点からP含有量の下限は、0.003%以上とすることが好ましい。

0038

O:0.0050%以下
酸素(O)は、Alと結合して硬質酸化物系介在物を形成しやすく、曲げ疲労強度を低下させる。特に、O含有量が0.0050%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、O含有量の上限を0.0050%以下とした。なお、不純物元素としてのO含有量は0.0010%以下にすることがより好ましく、製造コストの上昇をきたさない範囲で、できる限り少なくすることが更に好ましい。

0039

本実施形態による熱間鍛造用鋼の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここでいう不純物は、鋼の原料として利用される鉱石スクラップ、あるいは製造過程の環境等から混入する元素をいう。

0040

選択元素について]
本実施形態による熱間鍛造用鋼は更に、Feの一部に代えて、Vを含有してもよい。

0041

V:0.30%以下
バナジウム(V)は、鋼中で炭化物を形成し、鋼の疲労強度を高める。V炭化物は、フェライト中析出して鋼の芯部(表層以外の部分)の強度を高める。Vを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、V含有量が多すぎれば、鋼の被削性及び疲労強度が低下する。したがって、V含有量の上限は0.30%以下である。V含有量が0.03%以上であれば、上記効果が顕著に得られる。好ましいV含有量は0.04%〜0.20%であり、更に好ましくは0.05%〜0.10%である。

0042

本実施形態による熱間鍛造用鋼は更に、Feの一部に代えて、Pb、またはCaからなる群から選択された1種以上を含有してもよい。

0043

Ca:0.0003%〜0.0040%
カルシウム(Ca)は、MnSに固溶してMnS系介在物を球状化する。これにより、MnSが微細化する。微細なMnS系介在物は、磁粉探傷試験における擬似模様の発生を抑制する。一方、Ca含有量が多すぎると、粗大な酸化物が形成される。粗大な酸化物は、鋼の被削性を低下させる。したがって、Ca含有量は、0.0003%〜0.0040%である。更に好ましいCa含有量の上限は、0.0035%以下である。

0044

Pb:0.400%以下
鉛(Pb)は、鋼の被削性を高める。Pbを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。一方、Pbが過剰に含有されれば、鋼の靭性及び熱間延性が低下する。したがって、Pb含有量の上限は0.400%以下である。更に好ましいPb含有量の上限は、0.250%以下である。

0045

以上のように、本実施形態の熱間鍛造用鋼は、上述の基本元素を含み、残部がFe及び不純物からなる化学組成、または、上述の基本元素と、上述の選択元素から選択される少なくとも1種とを含み、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する。

0046

[デンドライト組織]
連続鋳造後の鋳片の凝固組織は、通常はデンドライト形態を呈している。鋼材中のMnSは、凝固前(溶鋼中)、または凝固時に晶出することが多く、デンドライト1次アーム間隔に大きく影響を受ける。すなわち、デンドライト1次アーム間隔が小さければ、樹間に晶出するMnSは小さくなる。本実施形態の熱間鍛造用鋼は、鋳片の段階において、表層から15mm深さにおけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満であることが望ましい。

0047

MnSを安定的にかつ効果的に微細分散させるには、微量のBiを添加し、溶鋼中の固液界面エネルギーを低減させる。固液界面エネルギーが低減することにより、デンドライト組織が微細となる。

0048

デンドライト組織を微細化することで、デンドライト一次アームから晶出するMnSが微細化され、MnSの最大円相当径が20μm未満となる。

0049

[MnS]
MnSは、被削性の向上に有用であるため、その存在密度を確保することが必要である。S含有量が増加すると被削性は向上するが、粗大なMnSが増加する。粗大なMnSは、磁粉探傷試験時に擬似模様として検出されるため、サイズを制御することが必要である。円相当径で2μm未満のMnSが300個/mm2以上の存在密度で鋼中に存在すると、工具の摩耗が抑制される。なお、介在物がMnSであることは、走査型電子顕微鏡付属するエネルギー分散X線解析装置によって確認すればよい。また、MnSの円相当径はMnSの面積と等しい面積を有する円の直径であり、画像解析によって求めることができる。同様に、MnSの存在密度は、画像解析によって求められる。

0050

[式(1)について]
上述の通り、デンドライト1次アーム間隔を低減して、デンドライト樹間から晶出した微細なMnSの割合を増やし、最大円相当径で20μm以上のMnSを無くせば、擬似模様発生を抑制できる。観察視野9mm2当りに検出されるMnSの円相当径のばらつきを標準偏差σとして算出し、この標準偏差の3σに平均円相当径dを加えた値を式(1)とし、F1を次のとおり定義した。

0051

F1=d+3σ

0052

ここで、F1中のdは円相当径が1μm以上のMnSの平均円相当径であり、σは円相当径が1μm以上のMnSの、平均円相当径の標準偏差である。F1値は、観察視野9mm2で、99.7%の確率で存在するMnSの最大円相当径を示している。すなわち、F1値が20μm未満であれば、最大円相当径で20μm以上のMnSはほとんど存在しないことを示しており、このような鋼は擬似模様発生を抑制できる。MnSの円相当径はMnSの面積と等しい面積を有する円の直径であり、画像解析によって求めることができる。なお、観察対象としたMnSの円相当径を1μm以上としたのは、現実的に汎用機器で、粒子のサイズと成分を統計的に扱うことが可能であり、かつ、これより小さなMnSを制御しても熱間鍛造性及び切りくず処理性に与える影響が少ないためである。

0053

[製造方法]
次に、本実施形態による熱間鍛造用鋼の製造方法を説明する。

0054

本実施形態の熱間鍛造用鋼の製造方法は、上記の化学成分を有し、かつ表層から15mm深さにおけるデンドライト1次アーム間隔が600μm未満である鋳片を連続鋳造し、この鋳片を熱間加工することによって製造される。熱間加工は、熱間圧延を含んでもよい。

0055

[連続鋳造工程]
上記化学組成及び式(1)を満たす鋼の鋳片を連続鋳造法により製造する。造塊法によりインゴット(鋼塊)にしてもよい。鋳造条件は例えば、220×220mm角鋳型を用いて、タンディッシュ内の溶鋼のスーパーヒートを10〜50℃とし、鋳込み速度を1.0〜1.5m/minとする条件を例示できる。更に、上述したデンドライト一次アーム間隔を600μm未満にするために、上記化学組成を有する溶鋼を鋳造する際に、鋳片表面から15mmの深さにおける、液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度を100℃/min以上500℃/min以下とすることが望ましい。平均冷却速度が100℃/min未満では、鋳片表面から15mmの深さにおけるデンドライト一次アーム間隔を600μm未満とすることが困難となり、MnSを微細分散できないおそれがある。一方、500℃/min超では、デンドライト樹間から晶出するMnSが微細になり過ぎ、被削性が低下してしまう恐れがある。

0056

液相線温度から固相線温度までの温度域とは、凝固開始から凝固終了までの温度域のことである。したがって、この温度域での平均冷却速度とは、鋳片の平均凝固速度を意味する。上記の平均冷却速度は、例えば、鋳型断面の大きさ、鋳込み速度等を適正な値に制御すること、または鋳込み直後において、水冷に用いる冷却水量を増大させるなどの手段により達成できる。これは、連続鋳造法及び造塊法共に適用可能である。

0057

上記の15mm深さの冷却速度は、得られた鋳片の断面をピクリン酸にてエッチングし、鋳片表面から15mm深さの位置のそれぞれについて、鋳込み方向に5mmピッチでデンドライト2次アーム間隔λ2(μm)を100点測定し、次式に基づいて、その値からスラブの液相線温度から固相線温度までの温度域内の冷却速度A(℃/秒)を算出し、算術平均した値である。

0058

λ2=710×A−0.39

0059

例えば、鋳造条件を変更した複数の鋳片を製造し、各鋳片における冷却速度を上記式により求め、得られた冷却速度から最適な鋳造条件を決定すればよい。

0060

[熱間加工]
次いで、鋳片又はインゴットを、分塊圧延等の熱間加工を施し、ビレット鋼片)を製造する。更に、ビレットを熱間圧延することにより、本実施形態の熱間鍛造用鋼である棒鋼や線材とする。熱間加工における圧下比、加熱温度及び加熱時間に特に制限はない。

0061

熱間圧延は、例えば、ビレットを1250〜1300℃の加熱温度で1.5時間以上加熱した後、仕上げ温度を900〜1100℃として熱間圧延する。仕上げ圧延を行った後は、大気中で、冷却速度が放冷以下となる条件で冷却する。仕上げ圧延を行った後は、冷却速度が上記の放冷以下となる条件で、室温に至るまで冷却しても構わないが、生産性を高めるためには、600℃に至った時点で、空冷ミスト冷却及び水冷など、適宜の手段で冷却することが好ましい。なお、上記の加熱温度及び加熱時間はそれぞれ、炉内の平均温度及び在炉時間を意味する。また、熱間圧延の仕上げ温度は、複数のスタンドを備える圧延機最終スタンド出口での棒鋼や線材の表面温度を意味する。仕上げ圧延を行った後の冷却速度は、棒鋼や線材の表面での冷却速度を指す。
以上の工程により、本実施形態の熱間鍛造用鋼が得られる。

0062

次に、本実施形態による熱間鍛造品の製造方法を説明する。熱間鍛造品はたとえば、自動車及び建設用機械等に利用される機械部品であり、例えば、クランクシャフトに代表されるエンジン部品である。

0063

上述の本実施形態により製造された棒鋼や線材(熱間鍛造用鋼)を熱間鍛造して、粗形状の中間品を製造する。中間品に対して調質処理を実施してもよい。更に、中間品を機械加工し、中間品を所定の形状にする。機械加工は例えば、切削や穿孔である。

0064

次に、中間品に対して高周波焼入れを実施し、中間品の表面を硬化する。これにより、中間品の表面に表面硬化層が形成される。そして、高周波焼入れされた中間品に対して仕上げ加工を実施する。仕上げ加工は、研削や研磨である。
以上の工程により本実施形態の熱間鍛造品が製造される。本実施形態の熱間鍛造品は、熱間鍛造用鋼と同じ化学成分を有し、円相当径が2μm未満のMnSの存在密度が300個/mm2以上であり、d+3σ<20μmを満足するものとなる。また、表面硬化層を有するものとなる。

0065

熱間鍛造品に対して、磁粉探傷試験を実施する。磁粉探傷試験は、磁粉を利用して、熱間鍛造品の表面疵(焼き割れ、研削割れ等)を検出する。磁粉探傷試験では、熱間鍛造品を磁化する。このとき、熱間鍛造品の疵部分では漏洩磁束が発生する。磁粉は、大きな漏洩磁束が発生している場所に吸着され、磁粉模様を形成する。したがって、磁粉模様により、疵の発生の有無及び発生箇所を特定できる。

0066

熱間鍛造用鋼や熱間鍛造品の表層に粗大なMnSが存在すれば、MnSに起因した大きな漏洩磁束が発生し、擬似模様が形成される。しかしながら、本実施形態の熱間鍛造用鋼や熱間鍛造品は、デンドライト1次アーム間隔の低減により、MnSが微細化される。MnSが微細であれば、擬似模様を形成するのに十分な漏洩磁束が発生しにくい。したがって、擬似模様の発生が抑制される。

0067

上述のとおり、熱間鍛造品の素材となる熱間鍛造用鋼(上記例では棒鋼)において、MnSの最大円相当径が20μm未満となる必要がある。素材(棒鋼)を熱間鍛造すれば、鍛錬成形比に応じて鋼中のMnSが微細化される。しかしながら、熱間鍛造品は複雑な形状を有するものが多く、鍛錬成形比が素材全体に対して一様にならない。したがって、熱間鍛造された素材内において、ほとんど鍛錬されない部分、つまり、鍛錬成形比が非常に小さい部分が生じる。このような部分においても、擬似模様の発生を抑制するためには、素材となる熱間鍛造用鋼中のMnSの最大円相当径が20μm未満になる必要がある。本実施形態の熱間鍛造用鋼は、熱間加工の加工量によらず、被削性向上と擬似模様発生の抑制が可能になる。

0068

以上説明したように、本実施形態の熱間鍛造用鋼は、熱間鍛造品となった場合に、熱間鍛造を含む熱間加工の圧下比によらず、熱間鍛造後の被削性に優れ、磁粉探傷試験時に擬似模様が発生しにくくなる。

0069

表1に示す化学組成を有する鋼A〜AAを270ton転炉で溶製し、連続鋳造機を用いて連続鋳造を実施し、220×220mm角の鋳片を製造した。鋳造条件は、220×220mm角の鋳型を用いて、タンディッシュ内の溶鋼のスーパーヒートを10〜50℃とし、鋳込み速度を1.0〜1.5m/minとした。なお、連続鋳造の凝固途中の段階で圧下を加えた。鋳片の連続鋳造において、鋳片の表面から15mm深さにおける、液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度を100〜500℃/minとした。鋳片の表面から15mm深さにおける、液相線温度から固相線温度までの温度域内の平均冷却速度の調整は、鋳型の冷却水量を変更することによって行った。

0070

次いで、製造した鋳片を加熱炉装入し、1250〜1300℃の加熱温度で10時間以上加熱した後、分塊圧延してビレットとした。なお、鋳片を分塊圧延する前に鋳片を一旦室温まで冷却して、組織観察用の試験片採取した。

0071

次いで、ビレットを1250〜1300℃の加熱温度で1.5時間以上加熱した後、仕上げ温度を900〜1100℃として熱間圧延して、直径90mmの丸棒とした。熱間圧延後の丸棒は大気中で放冷した。このようにして、試験番号1〜27の熱間鍛造用鋼を製造した。

0072

表1に示す鋼A〜Lは、本発明で規定する化学組成を有する鋼である。一方、鋼M〜AAは、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。表1中の数値下線は、本実施形態による熱間鍛造用鋼の範囲外であることを示す。

0073

そして、製造した熱間鍛造用鋼の被削性及び磁粉探傷試験における擬似模様の有無を調査した。製造した熱間鍛造用鋼の被削性は、熱間鍛造用鋼に旋削加工を実施し、使用した超硬工具逃げ面の摩耗量(mm)から判定した。
なお、鋼Y〜AAについては、連続鋳造時または熱間圧延工程において、割れが多く発生したため、熱間鍛造性に優れないとし、組織観察、旋削試験及び、擬似模様評価試験を実施しなかった。

0074

[凝固組織観察方法
凝固組織は、上記の鋳片の断面をピクリン酸にてエッチングし、鋳片表面から15mm深さの位置を、鋳込み方向に5mmピッチでデンドライト1次アーム間隔を100点測定し、平均値を求めた。表2に、デンドライト1次アーム間隔の平均値を示す。

0075

ミクロ組織試験]
鋼番号の丸棒(熱間鍛造用鋼)のミクロ組織を観察した。丸棒の軸方向長さをLとした時のL/4位置を軸方向に対して垂直に切断し、ミクロ組織観察用の試験片を採取した。試験片の切断面を研磨し、光学顕微鏡によって鋼の金属組織を観察し、組織中のコントラストから析出物判別した。被検面は、連続鋳造時の圧延方向と平行な断面である。なお、走査型電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分光分析装置(EDS)とを用いて析出物を同定した。前記試験片の長手方向を含む断面から、縦10mm×横10mmの研磨試験片を10個作製し、これらの研磨試験片の所定位置を光学顕微鏡にて100倍で写真撮影して、0.9mm2の検査基準面積(領域)の画像を10視野分準備した。その観察視野(画像)中のMnSの中から大きい順に10個選定する。選定した各MnSの面積と同等の面積となる円の直径を円相当径とし、各MnSの円相当径を算出した。検出したMnSの粒径分布から、円相当径が2μm未満であるMnSの存在密度、円相当径が1μm以上であるMnSの平均円相当径及び標準偏差を算出した。

0076

表2に、円相当径が2μm未満であるMnSの存在密度及びF1値(d+3σ)を示す。ここで、表2中の*印は、本発明の円相当径が2μm未満であるMnSの存在密度または、F1値の条件を満足しないことを意味する。

0077

次に、試験例1〜24の丸棒(熱間鍛造用鋼)を用いて、被削性、及び、磁粉探傷試験時の擬似模様の発生有無を調査した。試験例1〜24の丸棒は、熱間鍛造品の素材に相当する。素材である丸棒の被削性が高く、かつ、磁粉探傷試験時に擬似模様が発生しにくければ、丸棒を熱間鍛造して成形され、鍛造終了後放冷された熱間鍛造品も当然に、優れた被削性を有し、かつ、磁粉探傷試験時に擬似模様が発生しにくい。そこで、素材に相当する丸棒の被削性及び磁粉探傷試験の擬似模様の発生有無を、以下の試験方法により調査した。

0078

[旋削試験]
試験例1〜24の棒鋼(直径90mm)を直径が85mmになるまでピーリングして旋削試験片とした。

0079

製造された試験片を用いて、旋削加工を実施した。旋削加工では、JIS規格準拠
を250m/min、送り速度を0.30mm/rev、切り込みを1.5mmとし、潤滑油を使用せずに旋削加工を実施した。旋削加工を開始してから10分経過後、超硬工具の逃げ面の摩耗量(mm)を測定した。表2に、測定した超硬工具の逃げ面の摩耗量(mm)を示す。ここで、表2中の*印は、本発明の超硬工具の逃げ面の摩耗量(mm)の条件を満足しないことを意味する。

0080

[擬似模様評価試験]
試験例1〜24の丸棒の中心部から、直径50mm、長さ100mmの丸棒試験片を採取した。丸棒試験片の軸方向は、各丸棒の軸方向と同じであった。丸棒試験片の円周面に対して、周波数40kHz、電圧6kV、加熱時間3.0秒の条件で高周波焼入れを実施した。高周波焼入れ後、丸棒試験片に対して焼戻しを実施した。具体的には、丸棒試験片を150℃で1時間加熱し、その後、大気中で放冷した。焼戻し後、丸棒試験片の円周面を仕上げ研磨し、表面粗さを調整した。具体的には、仕上げ研磨により、円周面の中心線平均粗さ(Ra)を3.0μm以内とし、最大高さ(Rmax)を9.0μm以内にした。仕上げ研磨された複数の丸棒試験片に対して、JIS Z2343−1(2001)に準拠した浸透探傷試験を実施し、疵のない丸棒試験片を各試験例につき50本選択した。
選択された50本の丸棒試験片に対して、下記に示す条件で磁粉探傷試験を実施した。

0081

試験条件
磁粉:黒色磁粉
磁粉濃度:1.8ml(磁粉の沈殿容積)/100ml(単位容積
検出媒体の種類:湿式
磁粉の適用時期:連続法
磁化方法軸通電法
磁化時間:5秒以上
磁化電流:AC
電流値:2500A

0082

表1及び表2を参照して、鋼A〜Lの鋼の化学組成は、本実施形態による熱間鍛造用鋼の化学組成の範囲内であり、かつ、円相当径が2μm未満であるMnSの存在密度が300(個/mm2)以上であった。更に、F1値(d+3σ)が20μm未満であることを満たした。その結果、鋼A〜Lは、優れた被削性を有し、かつ、擬似模様が発生しなかった。

0083

試験番号13は、Bi、Sb及びSnを含有せず、S含有量は、本発明のS含有量の下限未満であった。そのため、円相当径が2μm未満であるMnSの存在密度が300(個/mm2)未満となり、逃げ面摩耗量は0.20mmを超えた。

0084

試験番号14は、Bi、Sb及びSnを含有しなかった。そのため、F1値が20μm以上となり、擬似模様が発生した。

0085

試験番号15は、Bi、Sb及びSnを含有しなかった。そのため、円相当径が2μm未満であるMnSの存在密度が300(個/mm2)未満となり、また、F1値が20μm以上となり、擬似模様が発生した。

0086

試験番号16は、Bi、Sb及びSnを含有しなかった。そのため、円相当径が2μm未満であるMnSの存在密度が300(個/mm2)未満となり、逃げ面摩耗量が0.20mmを超えた。

0087

試験番号17は、S含有量が本発明のS含有量の上限を超え、また、Sb及びSnを含有しなかった。そのため、F1値が20μm以上となり、擬似模様が発生した。

0088

試験番号18〜20は、S含有量が本発明のS含有量の下限未満であり、また、Sb及びSnを含有しなかった。そのため、円相当径が2μm未満であるMnSの存在密度が300(個/mm2)未満となり、逃げ面摩耗量が0.20mmを超えた。

0089

試験番号21は、C含有量が本発明のC含有量の上限以上であり、また、Sb及びSnを含有しなかった。そのため、逃げ面摩耗量が0.20mmを超えた。

0090

試験番号22は、Mn含有量が本発明のMn含有量の上限を超え、また、Sb及びSnを含有しなかった。そのため、逃げ面摩耗量が0.20mmを超えた。

0091

試験番号23は、Cr含有量が本発明のCr含有量の上限を超え、また、Sb及びSnを含有しなかった。そのため、逃げ面摩耗量が0.2mmを超えた。

0092

試験番号24のTi含有量は、本発明のTi含有量の上限以上であり、また、Sb及びSnを含有しなかった。そのため、逃げ面摩耗量が0.20mmを超えた。

0093

試験番号25〜27は、Bi、Sb、Snのいずれかが本発明の範囲外であったため、いずれも熱間加工性が低下し、連続鋳造時に割れが多発した。

0094

以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。

0095

実施例

0096

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