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技術 鋼板の形状矯正方法および形状矯正装置

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 伊藤悠衣大塚貴之
出願日 2016年8月29日 (4年3ヶ月経過) 出願番号 2016-167072
公開日 2018年3月8日 (2年9ヶ月経過) 公開番号 2018-034169
状態 特許登録済
技術分野 金属板状体の矯正
主要キーワード 粘塑性 計算比 生産性悪化 矯正温度 平面ひずみ 矯正対象 設備条件 テンションアニーリング
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

形状に優れた鋼板および形状矯正方法及び形状矯正装置を供する。

解決手段

鋼板をある温度まで加熱し、張力を付与することで形状矯正を行う鋼板の形状矯正方法において、矯正対象とする鋼板の温度と張力を付与したときのひずみを予め求めておき、最適な形状矯正開始温度および終了温度を決定する。本発明は、この形状矯正開始温度まで加熱し、鋼板に張力を付与し、さらに終了温度まで加熱あるいは均熱を続けることを特徴とする。

概要

背景

鋼板熱間圧延プロセスあるいは冷間圧延プロセスにおいて、幅方向の硬さの分布圧延ロールクラウンと呼ばれる径の分布などによって、板端部で波が生じる耳波板幅中央部に波が生じる中波等の形状不良がしばしば生じ、後工程において形状矯正と呼ばれる作業が必要になる。

前記板形状の不良は圧延方向ひずみの不均一によって生じるものであり、形状矯正工程では、このようなひずみ不均一を解消することが必要になる。

圧延工程で発生するひずみを矯正するための従来の板形状の矯正方法として幅広く適用されている技術として、スキンパスミルローラレベラ、およびテンションレベラがある。

しかし、特に高張力鋼板等については、このような形状矯正を行う上で高い圧下荷重が必要となり、材質劣化を招くとともに、設備上の荷重限界トルク限界などの理由で結局のところ形状不良を矯正できない場合もあり、ひいては歩留まりの圧下や生産性悪化を招いていた。

このため、熱間で矯正する技術や、熱処理と併用して矯正を行う技術が検討されてきた。特許文献1には板形状の矯正技術として変態域まで加熱し、いわゆる変態塑性を利用した矯正が提案されている。しかし、変態域まで加熱することで、大きな矯正効果は得られるものの、組織が変化してしまうという問題点があった。

また、特許文献2には、500℃以下の比較的低温まで加熱し、ある程度転位解放した後にテンションレベラによって矯正を行うことで、破断の防止を狙っている。しかし、高張力鋼においては、合金の影響と500℃という比較的低温での加熱では、十分な矯正効果が得られていなかった。

ここで、特許文献3には、Niを32〜38%含むFe−Ni系合金において、変態を介さずに比較的高温下において矯正する技術が示されている。しかし、これはFe−Ni鋼に限定される技術であると共に、成分系や加工履歴によって左右される矯正効果の影響を考慮していないため、矯正効果にバラツキが発生していた。

概要

形状に優れた鋼板および形状矯正方法及び形状矯正装置を供する。鋼板をある温度まで加熱し、張力を付与することで形状矯正を行う鋼板の形状矯正方法において、矯正対象とする鋼板の温度と張力を付与したときのひずみを予め求めておき、最適な形状矯正開始温度および終了温度を決定する。本発明は、この形状矯正開始温度まで加熱し、鋼板に張力を付与し、さらに終了温度まで加熱あるいは均熱を続けることを特徴とする。

目的

本発明は、上記実情に鑑み、矯正材の成分、加工履歴(すなわち転位密度)や形状を考慮し、最適な矯正条件(温度、張力)を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

形状矯正対象とする鋼板について、A1点未満の鋼板温度Tと、圧延方向に張力を加えない状態における鋼板のひずみS(T,0)との関係を予め求めておくとともに、前記鋼板について、A1点未満の鋼板温度Tと、常温下の降伏点未満の一定の張力Fが圧延方向に加わっている状態における鋼板のひずみS(T,F)との関係を予め求め、前記関係からS(T,F)とS(T,0)の差がひずみ差の目標値ΔSOになる矯正張力FO及び矯正温度TOを求め、前記鋼板に対して圧延方向に矯正張力FOを加えながら、前記鋼板の温度が矯正温度TO以上A1点未満の温度になるまで前記鋼板を加熱することを特徴とする鋼板の形状矯正方法

請求項2

前記形状矯正対象の鋼板の急峻度をλ1、当該鋼板の急峻度の目標値をλ0とし、下記式(2−1)で定義される伸びひずみ差ΔεOを前記鋼板の形状矯正に必要なひずみ差の目標値ΔSOとして用い、S(T,F)とS(T,0)の差が前記ΔεOになる矯正張力FO及び矯正温度TOを求め、前記鋼板に対して圧延方向に張力FOを加えながら、前記鋼板の温度が矯正温度TO以上A1点未満の温度になるまで前記鋼板を加熱することを特徴とする請求項1に記載の鋼板の形状矯正方法。但し、ΔεO=2.47×(λ12−λ02)・・・式(2−1)

請求項3

矯正前までの加工プロセスにおいて導入された転位密度を考慮して矯正温度TO及び矯正張力FOを算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板の形状矯正方法。

請求項4

加工プロセスにおいて導入される転位密度分布ρ(x、y)及び結晶方位分布θ(x、y)を結晶塑性理論に基づいて数値計算し、前記転位密度分布ρ(x、y)及び結晶方位分布θ(x、y)を用いて、A1点未満の鋼板温度Tと、常温下の降伏点未満の一定の張力Fが圧延方向に加わっている状態における鋼板の結晶粒再結晶シミュレーションし、前記再結晶のシミュレーションを用いて、前記鋼板温度T及び前記張力Fにおける鋼板のひずみとの関係式S(T,F)を算出し、前記関係式S(T,F)を用いて、前記矯正張力Fo及び前記矯正温度Toを求めることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載の形状矯正方法。

請求項5

形状矯正対象の鋼板を加熱中及び/或いは加熱後に当該鋼板の粒径を測定し、前記粒径の測定結果を用いて、前記鋼板の結晶粒の再結晶の有無を判定し、再結晶の有無の判定に基づいて、前記鋼板の加熱から均熱への切り替え或いは加熱の終了を判定し、前記判定結果に基づいて、前記鋼板の温度を再結晶による粒径変化を生じた温度以上A1点未満に保持することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の鋼板の形状矯正方法。

請求項6

請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の鋼板の形状矯正方法を実行する装置であって、中央演算装置と、前記中央演算装置に接続されたインターフェースと、巻取張力調整装置と、加熱装置と、巻き取り手段とを備え、前記形状矯正対象の鋼板の加熱温度を調整する加熱温度調整手段と、前記形状矯正対象に加える張力を調整する張力調整手段とを備え、前記中央演算装置は、前記インターフェースから入力された矯正条件に基づき、目標のひずみ差ΔSOを得るために必要な矯正温度TOを選定或いは算出し、前記入力された矯正条件及び前記矯正温度TO及び矯正張力FOに基づいて、前記加熱温度調整手段及び前記張力調整手段を制御することを特徴とする鋼板の形状矯正装置

請求項7

前記加熱装置内及び/或いは加熱装置下流に設置された粒径測定装置を備え、当該粒径測定装置の測定結果に基づいて、前記加熱温度調整手段が前記形状矯正対象の鋼板の加熱温度を調整し、前記張力調整手段が前記形状矯正対象に加える張力を調整することを特徴とする請求項6に記載の鋼板の形状矯正装置。

請求項8

ペイオフリールを備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の鋼板の形状矯正装置。

請求項9

形状測定装置を備えることを特徴とする請求項6〜8のうちいずれか1項に記載の鋼板の形状矯正装置。

技術分野

0001

本発明は、鋼板矯正方法であって、特に形状不良を持つ冷延後の鋼板を、通常では塑性変形しないような微小応力を付与しながら加熱することで生じる再結晶を利用して、形状を矯正する上で好適な鋼板の形状矯正方法および装置に関する。

背景技術

0002

鋼板の熱間圧延プロセスあるいは冷間圧延プロセスにおいて、幅方向の硬さの分布圧延ロールクラウンと呼ばれる径の分布などによって、板端部で波が生じる耳波板幅中央部に波が生じる中波等の形状不良がしばしば生じ、後工程において形状矯正と呼ばれる作業が必要になる。

0003

前記板形状の不良は圧延方向ひずみの不均一によって生じるものであり、形状矯正工程では、このようなひずみ不均一を解消することが必要になる。

0004

圧延工程で発生するひずみを矯正するための従来の板形状の矯正方法として幅広く適用されている技術として、スキンパスミルローラレベラ、およびテンションレベラがある。

0005

しかし、特に高張力鋼板等については、このような形状矯正を行う上で高い圧下荷重が必要となり、材質劣化を招くとともに、設備上の荷重限界トルク限界などの理由で結局のところ形状不良を矯正できない場合もあり、ひいては歩留まりの圧下や生産性悪化を招いていた。

0006

このため、熱間で矯正する技術や、熱処理と併用して矯正を行う技術が検討されてきた。特許文献1には板形状の矯正技術として変態域まで加熱し、いわゆる変態塑性を利用した矯正が提案されている。しかし、変態域まで加熱することで、大きな矯正効果は得られるものの、組織が変化してしまうという問題点があった。

0007

また、特許文献2には、500℃以下の比較的低温まで加熱し、ある程度転位解放した後にテンションレベラによって矯正を行うことで、破断の防止を狙っている。しかし、高張力鋼においては、合金の影響と500℃という比較的低温での加熱では、十分な矯正効果が得られていなかった。

0008

ここで、特許文献3には、Niを32〜38%含むFe−Ni系合金において、変態を介さずに比較的高温下において矯正する技術が示されている。しかし、これはFe−Ni鋼に限定される技術であると共に、成分系や加工履歴によって左右される矯正効果の影響を考慮していないため、矯正効果にバラツキが発生していた。

0009

特開2010−240691号公報
特開2008−213015号公報
特開平9−95740号公報
特開2006−84392号公報

先行技術

0010

テンションアニーリング、p.156−p.161
A. Jablonka, K. Harster and K. Schwerdtfeger, Thermomechanical properties of iron and iron-carbon alloys : density and thermal contraction, Steel Research, 62, 1, pp.24-33(1991)
J. Miettinen, Calculation of solidification-related thermo physical properties for steels, Metallurgical and Materials Transactions B, 28B, pp.281-297(1997)
S. E. Krugerら,In-Situ Laser-Ultrasonic Monitoring of the Recrystallization of Aluminium Alloys, Materials Science Forum, pp. 426-432(2003)
板圧延の理論と実際(日本鉄鋼協会発行)
T. Takaki, A. Yamanaka, H. Higa, Y. Tomita, Static recrystallization simulation using phase-field model based on crystal plasticity theory : Proceedings of Third International Conference on Multiscale Materials Modeling 2006, pp. 562-565
高木知弘,山中晃徳,比嘉吉一,富田佳宏,静的一次再結晶過程のPhase-fieldモデル解析手順構築:日本機械学会論文集A編,第73巻728号pp.482(2007)

発明が解決しようとする課題

0011

本発明は、上記実情に鑑み、矯正材の成分、加工履歴(すなわち転位密度)や形状を考慮し、最適な矯正条件(温度、張力)を提供するものである。

課題を解決するための手段

0012

最初に、本発明に至った経緯について説明する。
上述の通り、従来から形状矯正の技術として熱間矯正や熱処理と併用した矯正技術が多く検討されてきた。しかし、材料によって最適な矯正温度が異なっており、この最適温度より低温に加熱した場合は所望の矯正効果が得られず、この最適温度より高温に加熱した場合には材質劣化、および板幅の減少を招来するという問題が生じていた。

0013

非特許文献1には、テンションアニーリングにより形状を矯正する方法が開示されている。しかし、非特許文献1に開示された形状矯正方法では、目標とする矯正の程度に応じて、どの程度の張力を掛ける必要があるかを開示していない。つまり、目標とする矯正の程度と、テンションアニーリング時の鋼板温度及び鋼板の伸び率或いはひずみとの関係は、非特許文献1に特定されていないので、張力不良、温度不足或いは温度超過等により所望の矯正効果が得られないおそれがある。

0014

そこで、本発明者らは成分系および加工条件(転位密度)を変更した場合について、種々の加熱温度および張力で実験を行い、これらの影響を調査した。

0015

試験における加熱条件は材質劣化を防止するため、A1変態点より低い温度とし、また、張力は板幅変動を抑制のため、塑性変形しないような微小な負荷として50MPa以下の荷重を付与した。

0016

負荷を掛けた状態における、低炭素鋼(0.08%C−0.5%Si−0.5%Mn)の冷延鋼板、及び高張力鋼(0.1%C—0.8%Si—2.0%Mn)の冷延鋼板の温度とひずみの関係を図1及び図2に示す。いずれのサンプルも前記冷延鋼板から採取し、採取されたサンプルに対して、無負荷の状態、引張試験機を用いて一定の微小な負荷(30MPa及び50MPa)を掛けた状態で温度条件を変えて、ひずみを測定した。図1及び図2中、「0MPa」の曲線は前記無負荷の状態の測定結果であり、「30MPa」及び「50MPa」の曲線は、前記一定の微小な負荷状態の測定結果である。尚、参考のため、熱処理炉を用いて950℃で焼鈍した材料に微小な負荷(30MPa)を掛けた状態で温度条件を変えて、温度とひずみの関係を測定した。その結果を、図1及び図2の「30MPa(anneal)」に示す。

0017

いずれの鋼種においても、焼鈍した材料に微小な負荷をかけた場合(図1及び図2の曲線「30MPa(anneal)」)及び無負荷の状態(図1及び図2の曲線「0MPa」)の場合、同様の熱ひずみのみしか観察されない。しかし、図1及び図2の温度TSに示されるように、微小負荷を付与した冷延鋼板は低炭素鋼では400℃近傍において、高張力鋼では300℃近傍において、無負荷の状態を基準としてひずみが更に増加し始める温度が存在することを、本発明者らは見出した。

0018

尚、本発明において、負荷によって増加したひずみ差とは、図1及び図2の符号ΔSに示されるように、無負荷の状態を基準とした同一温度条件下におけるひずみの差であって、圧延方向に降伏点未満の一定の張力を加えながら昇温した際のひずみのうち、無負荷の状態のひずみを超える分をいう。

0019

図1及び図2の曲線「30MPa(anneal)」に対応するサンプルは焼鈍処理されているので、回復・再結晶・変態などの金属組織変化によって、金属組織に導入された転位が消滅している。従って、図1及び図2に示されるような、焼鈍されていない冷延鋼板のひずみの増加は、冷延加工後では転位密度が高く、再結晶の駆動力が高いため、加熱により比較的低温から再結晶が生じるためであると推定される。このように、前述したようにひずみが増加し始める温度は、金属組織の再結晶化が開始する温度(以下、「再結晶化温度」という。)であって、図1及び図2に示されるように鋼種によって差異がある。

0020

以上説明したように、焼鈍されていない材料の場合、無負荷の状態を基準としてひずみが更に増加し始める温度TSが存在し、負荷によって増加したひずみ差ΔSが粘塑性変形として残留する特性が存在することを本発明者らは見出した。本発明者らは、矯正のために必要なひずみ差がΔSOである鋼板に当該ひずみ差ΔSOを与えるためにこの特性を利用することを鋭意研究した。そして、本発明者らは、A1点未満の鋼板温度と、圧延方向の張力と、鋼板のひずみとの相関関係を実験データ或いはより簡便にシミュレーションによって予め求め、得られた前記相関関係に基づいてひずみ差の目標値ΔSOの粘塑性変形を与える矯正張力FO及び矯正温度TOを特定することで、最も効率的に矯正が可能であることを見出した。

0021

本発明は以上のような検討の結果、最適な矯正温度および張力を基にした矯正方法を提供するもので、その要旨とするところは以下の通りである。

0022

(1)形状矯正対象とする鋼板について、A1点未満の鋼板温度Tと、圧延方向に張力を加えない状態における鋼板のひずみS(T,0)との関係を予め求めておくとともに、前記鋼板について、A1点未満の鋼板温度Tと、常温下の降伏点未満の一定の張力Fが圧延方向に加わっている状態における鋼板のひずみS(T,F)との関係を予め求め、前記関係からS(T,F)とS(T,0)の差がひずみ差の目標値ΔSOになる矯正張力FO及び矯正温度TOを求め、前記鋼板に対して圧延方向に矯正張力FOを加えながら、前記鋼板の温度が矯正温度TO以上A1点未満の温度になるまで前記鋼板を加熱することを特徴とする鋼板の形状矯正方法。
(2)前記形状矯正対象の鋼板の急峻度をλ1、当該鋼板の急峻度の目標値をλ0とし、下記式(2−1)で定義される伸びひずみ差ΔεOを前記鋼板の形状矯正に必要なひずみ差の目標値ΔSOとして用い、S(T,F)とS(T,0)の差が前記ΔεOになる矯正張力FO及び矯正温度TOを求め、前記鋼板に対して圧延方向に張力FOを加えながら、前記鋼板の温度が矯正温度TO以上A1点未満の温度になるまで前記鋼板を加熱することを特徴とする(1)に記載の鋼板の形状矯正方法。
但し、ΔεO=2.47×(λ12−λ02)・・・式(2−1)
(3)矯正前までの加工プロセスにおいて導入された転位密度を考慮して矯正温度TO及び矯正張力FOを算出することを特徴とする(1)又は(2)に記載の鋼板の形状矯正方法。
(4)加工プロセスにおいて導入される転位密度分布ρ(x、y)及び結晶方位分布θ(x、y)を結晶塑性理論に基づいて数値計算し、前記転位密度分布ρ(x、y)及び結晶方位分布θ(x、y)を用いて、A1点未満の鋼板温度Tと、常温下の降伏点未満の一定の張力Fが圧延方向に加わっている状態における鋼板の結晶粒の再結晶をシミュレーションし、前記再結晶のシミュレーションを用いて、前記鋼板温度T及び前記張力Fにおける鋼板のひずみとの関係式S(T,F)を算出し、前記関係式S(T,F)を用いて、前記矯正張力Fo及び前記矯正温度Toを求めることを特徴とする(1)〜(3)のうちいずれかに記載の形状矯正方法。
(5)形状矯正対象の鋼板を加熱中及び/或いは加熱後に当該鋼板の粒径を測定し、前記粒径の測定結果を用いて、前記鋼板の結晶粒の再結晶の有無を判定し、再結晶の有無の判定に基づいて、前記鋼板の加熱から均熱への切り替え或いは加熱の終了を判定し、前記判定結果に基づいて、前記鋼板の温度を再結晶による粒径変化を生じた温度以上A1点未満に保持することを特徴とする(1)〜(3)のうちいずれかに記載の鋼板の形状矯正方法。
(6)(1)〜(5)のうちいずれかに記載の鋼板の形状矯正方法を実行する装置であって、中央演算装置と、前記中央演算装置に接続されたインターフェースと、巻取張力調整装置と、加熱装置巻き取り手段とを備え、前記形状矯正対象の鋼板の加熱温度を調整する加熱温度調整手段と、前記形状矯正対象に加える張力を調整する張力調整手段とを備え、前記中央演算装置は、前記インターフェースから入力された矯正条件に基づき、目標のひずみ差ΔSOを得るために必要な矯正温度TOを選定或いは算出し、前記入力された矯正条件及び前記矯正温度TO及び矯正張力FOに基づいて、前記加熱温度調整手段及び前記張力調整手段を制御することを特徴とする鋼板の形状矯正装置
(7)前記加熱装置内及び/或いは加熱装置下流に設置された粒径測定装置を備え、当該粒径測定装置の測定結果に基づいて、前記加熱温度調整手段が前記形状矯正対象の鋼板の加熱温度を調整し、前記張力調整手段が前記形状矯正対象に加える張力を調整することを特徴とする(6)に記載の鋼板の形状矯正装置。
(8)ペイオフリールを備えることを特徴とする(6)又は(7)に記載の鋼板の形状矯正装置。
(9)形状測定装置を備えることを特徴とする(6)〜(8)のうちいずれかに記載の鋼板の形状矯正装置。

発明の効果

0023

本発明によれば、最適な条件で矯正された形状に優れた鋼板および形状矯正装置を供することが出来る。

図面の簡単な説明

0024

低炭素鋼の温度とひずみの関係を示した図である。
高張力鋼の温度とひずみの関係を示した図である。
高張力鋼の50MPaにおける実験結果および分子動力学シミュレーション計算比較を示した図である。
(a)、(b)は、本発明の第1実施形態の形状矯正方法を実現するための形状矯正装置の構成例の概略図である。
(a)、(b)は、本発明の第1実施形態或いは第2実施形態の形状矯正方法を実現するための形状矯正装置1の他の構成例の概略図である。

0025

以下、本発明を実施するための一実施形態として、本発明の形状矯正方法及び形状矯正装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。

0026

(第1実施形態)
図4(a)、(b)は、本発明の1実施形態の形状矯正方法を実現するための形状矯正装置1の構成例の概要を示している。この形状矯正装置1は、第1のピンチロール11と第2のピンチロール12とを備え、これらのピンチロール11、12の間に、形状矯正対象とする鋼板2に対し加熱、均熱及び冷却等の熱処理を行う熱処理装置20が設けられている。また、前記矯正装置1は、前記ピンチロール11、12及び熱処理装置20に接続された中央演算装置4、前記中央演算装置に接続されたインターフェース5及び記憶部6を備えている。

0027

記憶部6には、鋼板2の温度、鋼板2に対して圧延方向に加えられる張力及び鋼板のひずみの少なくとも3つの形状矯正パラメータを一組とするデータが保存されている。前記インターフェース5は、鋼板2に与えるべき目標のひずみ差ΔSO、鋼板2の急峻度λ1、鋼板2の急峻度の目標値λ0等の矯正条件を入力することができる。尚、前記インターフェース5は、鋼板2の矯正工程経過或いは矯正結果等をモニター表示しても良い。

0028

中央処理装置4は、矯正条件選定部40及び制御部43を備えている。前記矯正条件選定部40は矯正張力選定部41及び矯正温度選定部42を備えており、前記矯正張力選定部41は、板厚・板幅と設備上限の張力値に基づき、設備上限の張力で板に付与される応力を計算する。ここで、板に付与する張力は設備条件を下回ってもよいが、材質の劣化を防ぐためには加熱温度を出来るだけ低く抑えることが望ましい。ただし、板の降伏応力以上になると材質が変化するため、降伏応力未満の応力であることが望ましい。従って材料の降伏応力を超えない範囲で設備上可能な最大の張力を板に付与することが望ましい。また、前記矯正張力選定部42は、入力された矯正条件に基づき、前記記憶部6に保存された前記形状矯正パラメータから、目標のひずみ差ΔSO或いは急峻度の目標値λ0を得るために必要な矯正温度TOを選定或いは算出する。

0029

前記制御部43は、前記入力された矯正条件及び前記選定或いは算出された矯正温度TO及び矯正張力FOに基づいて、前記ピンチロール11、12及び熱処理装置20に制御信号を送信して、前記ピンチロール11、12及び熱処理装置20を制御する。

0030

前記鋼板2は、熱延鋼板或いは冷延鋼板のいずれであっても良く、鋼板の組成は特に限定されないが、まず、前記鋼板2について、鋼板温度Tと、圧延方向に張力を加えない状態における鋼板のひずみS(T,0)との関係を予め求めておく必要があるが、この関係はα鉄線膨張係数であって、鋼種依存性は小さいが、より精度を求める場合には、非特許文献2もしくは非特許文献3に記載の密度モデルを用いることができる。鋼板温度Tと、前記ひずみS(T,0)との対応関係は、実験によって求めても良く、或いは計算機シミュレーションによって求めても良い。また、鋼板温度Tの範囲はA1点未満であり、300℃〜700℃までの範囲を含むことが好ましい。

0031

また、前記鋼板2について、A1点未満の鋼板温度Tと、A1点未満における降伏応力未満の一定の張力Fが圧延方向に加わっている状態における鋼板のひずみS(T,F)との関係を予め求める必要がある。図4の形状矯正装置1を用いて、ピンチロール11、12の間で鋼板2に掛かる張力Fを調整し、熱処理装置20が鋼板2に加える温度を調整することによって、鋼板2のひずみを前記張力F及び鋼板温度Tの関数S(T,F)として求めることができる。また、前記張力Fは、圧延方向において前記鋼板2のA1点未満における降伏応力未満の大きさであれば特に限定されない。しかし、鋼板2の形状を矯正するために必要なひずみに応じて最適な矯正条件を速やかに特定するため、少なくとも2つ以上の異なる一定の張力F1、F2・・・FN(Nは2以上の整数)における鋼板2のひずみS(T,F1)、S(T,F2)・・・S(T,FN)を求めておくことが好ましい。尚、鋼板2の板幅100mm〜300mm、ピンチロール11及び12間の長さが10m〜100m、板厚が1〜10mmの冷延鋼板の場合、前記張力Fとして30MPa〜50MPaの範囲内に設定しても良い。

0032

前述のように予め求められたS(T,0)及びS(T,Fi)(iは1以上N以下の整数)のデータと、鋼板の形状から推定される伸びひずみ差と、設備上限の張力から算出した引張り応力と、材料の降伏応力を用いて、鋼板2の矯正条件を特定することができる。矯正前の鋼板2に対して、圧延方向ひずみの不均一の程度から、所望の伸びひずみの差(ひずみ差の目標値ΔSO)が決定される。次いで、予め得られたS(T,0)及びS(T,Fi)のデータを用いて、以下の式(1−1)を満足する矯正張力FO及び矯正温度TOを決定する。
S(TO,FO)−S(T,0)=ΔSO ・・・式(1−1)

0033

次いで、前記鋼板2に対して圧延方向に矯正張力FOを加えながら、前記鋼板の温度が矯正温度TO以上の温度まで加熱する。加熱速度及び冷却速度は特に制限されないが、鋼板2がオーステナイト変態して材質或いはサイズが変わることを避けるため、鋼板温度がA1点を超えないように制御する必要がある。尚、矯正温度TO以上に保持する時間は、鋼板2の板厚によって異なるが、板厚が1〜10mmの冷延鋼板の場合、2秒以上維持することが好ましい。

0034

尚、曲線S(T,Fi)の数が多ければ、図1及び図2のTO1及びTO2に示すように、上記式(1−1)を満足する矯正張力FO及び矯正温度TOの組み合わせが多く得られる。このようにすれば、使用する形状矯正装置の機能、例えば、鋼板温度を制御する機能、鋼板に加える張力を制御する能力等に応じて、最適な矯正条件を柔軟に決定できる。

0035

(第1実施形態の変形例1)
前述のように実験の結果を用いて最適な矯正温度および張力を算出する以外に、矯正前までの加工プロセスにおいて導入された転位密度を数値計算(所謂、変形特性を評価する数値計算)で求め、矯正温度TO及び矯正張力FOを算出しても良い。例えば非特許文献6および7にあるようにFEM(Finite Element Method;有限要素法)を用いた結晶塑性解析のように矯正前までの加工プロセスにおいて導入される転位密度を計算し、さらに算出された前記転位密度をインプットデータとし、組織形成シミュレーションとしてフェーズフィールド法などによって再結晶の計算(所謂、再結晶の数値計算)をすることで、張力および温度条件下における組織変化を算出することが可能である。

0036

更に、当該組織を原子配列に置き換えて分子動力学シミュレーションを行うことで、張力および温度条件下のひずみを算出し(所謂、組織とひずみの関係を算出可能な数値計算を行い)、最適な矯正温度および張力を計算してもよい。このように転位密度を考慮すると、再結晶の生じやすさの程度を予測できるので、最適な矯正条件の特定をより一層正確に行うことができる。

0037

前述の計算手法は、限定されるものではなく、例えば加工プロセスにおいて導入される転位密度の計算であれば、境界要素法高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform;FFT)などがあり、組織予測シミュレーションであればセルオートマトン(Cellular automaton;CA)やレベルセット(Level set)法がある。

0038

(結晶塑性有限要素法を用いたシミュレーション)
複雑な圧延現象簡易的に解くために、冷間圧延前の鋼板の組織を所定の周期境界を持つ正方形状の2次元領域(以下、「正方形領域」という。)に分割し、更に前記正方形領域それぞれをN個×N個のCrossed Triangles要素(以下、「三角形要素」という。)で格子状に分割し、等価粒径正六角形粒(以下、「疑似結晶粒」という。)が配置された解析モデルとする。前記正方形領域の大きさは、特に限定せず、鋼板の板厚方向の全領域を計算しても良いが、一部領域を計算しても有意な差異はないため、例えば、一片を0.1mm以下として計算しても良い。また、前記三角形要素の前記「N×N個」は、Nが8以上の整数とすることが好ましい。また、前記等価粒径の数は、20個以上とすることが好ましい。

0039

この解析モデルを用いて、結晶塑性理論に基づいて、冷間圧延した場合について有限要素解析を行い、冷間鋼板の転位密度分布ρ(x、y)及び結晶方位分布θ(x、y)をシミュレーションする。このとき、圧延方向をx、板厚方向をyとした。尚、前記解析モデルのすべり系の数は、今回の対象ではbcc金属であることから48のすべり系が存在する。

0040

(フェーズフィールド法を用いたシミュレーション)
前述の結果得られた転位密度分布ρ(x、y)及び結晶方位分布θ(x、y)を再結晶フェーズフィールドシミュレーションの格子点マッピングし、鋼板温度Tにおいて圧延方向の張力Fを加えない時、及び張力Fが加えられた時における、組織変化の過程を、上記シミュレーションに基づくフェーズフィールドモデル(以下、「再結晶フェーズフィールドモデル」という。)によりシミュレーションする。尚、前記再結晶フェーズフィールドモデルは、非特許文献6及び7に開示された再結晶をシミュレーションするフェーズフィールドモデルであっても良い。

0041

分子動力学法を用いた鋼板のひずみのシミュレーション)
前記フェーズフィールド法を用いてシミュレーションされた結晶粒j1について、当該結晶粒j1と、結晶粒界αjを介して当該結晶粒j1に隣接する複数の結晶粒j2を初期組織と仮定し、分子動力学法を用いて、時刻tiにおける結晶粒j1及び結晶粒j2の各結晶方位のひずみを算出する。

0042

ところで、前記結晶粒界αjが存在する割合は、結晶粒の方位関係によって相違する。また、計算を速やかに行う必要もある。これらの観点から、結晶粒j1と当該結晶粒j1に隣接する結晶粒j2からなる2つの結晶粒を初期組織として、当該初期組織の各結晶方位のひずみを、下記式(5−1)によって表しても良い。

0043

ここで、前記結晶粒界αjは結晶粒の方位関係によって存在する割合が相違するので、式(5−1)のパラメータである結晶方位及び粒界がどの程度再結晶中の材料内に存在するかを考慮する必要がある。そこで、上記再結晶フェーズフィールドモデルに基づいて、各結晶粒の結晶方位分布θ(x、y)と当該結晶方位の生じやすさを、各結晶粒jに加わる応力σiの関数として算出する。すなわち、結晶方位及び粒界がどの程度再結晶中の材料内に存在するかを表わす割合或いは重み付けのパラメータとして、以下の式(5−2)で定義されるパラメータWiを、上記再結晶フェーズフィールドモデルによって得られたシミュレーション結果から統計的に取得する。

0044

鋼板は多結晶体であるため、前述した結晶粒j1と隣接する結晶粒j2からなる初期組織と同様の関係を有する結晶粒が複数存在する。そこで、多結晶体を模擬するため、各結晶方位を15度ずつ変化させ、鋼板を構成する可能性のある全結晶方位のひずみを算出した後、当該結晶方位及び粒界について、下記式(5−3)を用いて、鋼板を構成する全N条件のそれぞれのひずみを算出して合算し、材料の平均的なひずみを求める。尚、前記結晶方位の回転角度は、特に限定されないが、30°以下とすることが好ましく、15°以下とすることがより好ましい。

0045

分子動力学シミュレーションを用いた各ひずみの計算において、分子動力学シミュレーションを用いた数値計算の初期条件数(場合分けの数)に関して、想定される初期条件全てを計算する必要がある。従って、1つのある応力σi、温度Ti、時刻tiの条件に対して2つの粒の結晶方位を15°ずつ変えた場合、(6912)2×3パターンの条件が存在する。何故なら、まず、1つ目の粒の結晶方位(ψ1,φ,ψ2)i1に対して、ψ1,ψ2 =0〜360°,φ=0〜180°を考える必要があり、それぞれ(ψ1,φ,ψ2)i1=(24,12,24)通り、24×12×24=6912の条件がある。同様に2つ目の粒の結晶方位(ψ1,φ,ψ2)i2も考えた場合、結晶方位だけで(6912)2の条件が存在する。加えて、粒界の角度は0〜90°の中で代表的に0, 45, 90°の3条件について計算しておく必要があるので、(6912)2×3パターンとなるからである。

0046

オイラー角メッシュは細かいほど望ましいが、設定される回転角度を細かくするほど、分子動力学シミュレーションを行うためのコンピュータリソースが要求される。しかし、回転角度の取り方による顕著な差異はないため、30°程度((864)2×3条件)でも十分である。

0047

図4及び図5の符号7は、矯正前までの加工プロセスにおいて導入された転位密度を数値計算で求め、鋼板2の温度、鋼板2に対して圧延方向に加えられる張力及び鋼板のひずみの少なくとも3つの形状矯正パラメータを一組とするデータをシミュレーションする計算部である。本発明の形状矯正装置は、記憶部6の代用として或いは記憶部6とともに前記計算部7を備えても良い。

0048

(第1実施形態の変形例2)
更に、前記形状矯正対象の鋼板を加熱中及び/或いは加熱後に当該鋼板の平均結晶粒径を測定し、前記粒径の測定結果を用いて、当該鋼板の加熱温度及び/或いは張力を制御しても良い。近年、レーザ超音波法による非破壊粒径測定技術が開発されている(例えば特許文献4および非特許文献4)。これによると、非破壊で材料の再結晶を測定することが可能である。すなわち、鋼板の金属組織の粒径を測定して当該粒径の変化によって再結晶を判定し、その結果を稼働中の形状矯正装置にフィードバックすることができれば、鋼板の加熱から均熱への切り替え或いは加熱の終了の判定を自動的に行うことができる。具体的には、例えば張力を固定し、鋼板を加熱した場合の粒径変化をオンライン粒径測定技術により測定し、再結晶による粒径変化を生じた温度以上A1点未満の温度で保持することで矯正することが可能である。

0049

また、形状矯正の対象となる鋼板の金属組織の加熱前後の粒径の変化の程度が乏しい場合、その結果を形状矯正装置にフィードバックして、鋼板の加熱温度を自動的に昇温させることができる。更に、加熱温度が高く、粒成長による粒径の変化が大きい場合にも、その結果を形状矯正装置にフィードバックして、昇温を停止し、温度を保持することが可能である。

0050

(第2実施形態)
一般的に、鋼板の形状不良及び残留応力を解消させる十分な伸びは、矯正前の鋼板の形状に依存する。非特許文献5によれば、目的とする急峻度変化をもたらすのに必要な伸びひずみ差ΔεOと、矯正前の鋼板の平坦度を表す指標である急峻度λ1、矯正後の鋼板の平坦度を表す指標である急峻度λOとの関係は、以下の式(2−1)により表される。式(2−1)により、例えば急峻度3%の鋼板を1%に改善するためにはおよそ0.2%のひずみが必要である。このように多くの場合は0.1%から1%の範囲で十分であり,この伸びは本発明の効果で十分に付与可能な程度の伸びであることを確認した。
ΔεO≒2.47×(λ12−λO2)・・・式(2−1)

0051

すなわち、急峻度λ1の鋼板を急峻度λ0まで低減するには、鋼板の形状矯正に必要なひずみ差ΔSOとして上記式(2−1)で定義される伸びひずみ差ΔεOが必要になる。この伸びひずみ差ΔεOを得るための矯正条件は、第1実施形態にて説明したS(T,0)及びS(T,Fi)(iは1以上N以下の整数)のデータを用いて、S(T,F)とS(T,0)の差が前記伸びひずみ差ΔεOになるような矯正張力FO及び矯正温度TOを特定することによって得ることができる。

0052

このように特定された圧延方向への張力FOを形状矯正対象の鋼板に加えながら、鋼板温度が矯正温度TO以上A1点未満の温度になるまで前記鋼板を加熱することによって、鋼板の形状を所望の程度に矯正することができる。

0053

このように、第2実施形態の発明によれば、予め矯正対象とする鋼板に付与すべきひずみの特定が容易であり、且つ、当該効果が得られる最適な形状矯正開始温度終了温度、および張力を決定も容易になる。そのため、第2実施形態の発明によれば、課題であった材質の劣化及び板幅の減少の防止、不要な熱量の削減によるコストメリットの実現に有利である。

0054

図5(a)、(b)は、本発明の第1実施形態或いは第2実施形態の形状矯正方法を実現するための形状矯正装置の他の構成例としての形状矯正装置100の概要を示している。当該形状矯正装置100は、前記熱処理装置20内及び/或いは熱処理装置20下流に粒径測定装置30を備えている。形状矯正装置100のピンチロール11、12は、鋼板2の巻取り機能に加え、前記粒径測定装置30の測定結果に基づいて、前記形状矯正の鋼板2に加える張力Fを調整する巻取張力調整機能を有する。また、形状矯正装置100の熱処理装置20は、前記粒径測定装置30の測定結果に基づいて、前記形状矯正対象の鋼板2の加熱温度Tを調整する加熱温度調整機能を有している。

0055

本発明の効果を確認するため、形状不良を持つ冷延鋼板を用いて、形状矯正処理を実施した。

0056

鋼種は、常温で引張強さ500MPaの高張力鋼の冷延鋼板であり、この成分は質量%でCが0.1%、Siが0.8%、Mnが2.0%である。試験材は240mm厚で鋳造し、熱延工程で2mm厚みとした後、冷延工程で1mmの鋼板厚みとしたものを用いた。板幅は200mmと120mmの2種類で、コイル長さは50mである。矯正前の鋼板は急峻度3%の試験材を用いた。

0057

各試験の矯正条件および結果を表1に示す。実施例1〜6および比較例1〜3は目標とする急峻度λ0となるよう、前記(2−1)式を用いて冷延鋼板の形状矯正に必要なひずみ差ΔSOとして伸びひずみ差ΔεOを算出し、図1及び図2に示すように予め求めたひずみの曲線S(T, 0)、S(T, 30MPa)及びS(T, 50MPa)より、S(T, F)とS(T, 0)の差が目標値ΔεOになる矯正張力FO及び矯正温度TOを決定した。

0058

一方で、実施例7および比較例4は、下記の通りの数値計算を用いて高張力鋼の矯正張力50MPaにおけるひずみと温度の関係を予め算出し、矯正温度TOを決定した。

0059

(結晶塑性有限要素法を用いたシミュレーション)
まず、冷間圧延前の鋼板の組織を0.1mm×0.1mmの周期的境界を持つ正方形領域に分割し、更に前記正方形領域それぞれを64×64個の三角形要素で格子状に分割し、等価粒径12μmの77個の疑似結晶粒が配置された解析モデルとした。当該モデルでは各積分点に1つの結晶方位を定義した結晶塑性有限要素法とし、この解析モデルを用いて、鋼板温度Tであり且つ圧延方向に張力を加えない状態において、冷間圧延を模擬した平面ひずみ圧縮問題として有限要素解析を行い、冷間鋼板の転位密度分布ρ(x、y)及び結晶方位分布θ(x、y)をシミュレーションした。尚、前記解析モデルのすべり系の数は、48とした。

0060

更に、上記計算結果を初期条件とし、温度Tおよび矯正張力Fとした場合のシミュレーションを実施し、矯正時における転位密度分布ρ(x、y)及び結晶方位分布θ(x、y)を算出した。ただし、冷間圧延前の初期方位熱延板集合組織インプットとした。

0061

(フェーズフィールド法を用いたシミュレーション)
前述の結果得られた転位密度分布ρ(x、y)及び結晶方位分布θ(x、y)を再結晶フェーズフィールドシミュレーションの格子点にマッピングし、前述の鋼板温度Tにおいて圧延方向の張力Fが加えられた時における、前記解析モデルの組織変化の過程を、前述した再結晶フェーズフィールドモデルによりシミュレーションした。

0062

(分子動力学法を用いた鋼板のひずみのシミュレーション)
まず、前記フェーズフィールド法を用いてシミュレーションされた各結晶粒j1について、当該結晶粒j1と、結晶粒界αjを介して当該結晶粒j1に隣接する結晶粒j2からなる2つの結晶粒について、分子動力学法を用いて、前記2つの結晶粒からなる初期組織の各結晶方位のひずみを、前記式(5−1)によって表すようにした。また、このとき各結晶方位を15度ずつ変化させ、鋼板を構成する可能性のある全結晶粒のひずみを算出した。

0063

次に、結晶方位及び粒界がどの程度再結晶中の材料内に存在するかを表わす割合或いは重み付けのパラメータとして、前記式(5−2)で定義されるパラメータWiを、上記再結晶フェーズフィールドモデルによって得られた結果から統計的に取得した。

0064

次に、多結晶体を模擬するため、各結晶方位及び粒界について、前記式(5−3)を用いて、鋼板を構成する全結晶粒のそれぞれのひずみを算出し、材料の平均的なひずみを求めた。

0065

図3に高張力鋼の50MPaにおける実験結果および分子動力学シミュレーションの計算比較結果を示す。これより実験結果と計算結果は概ね一致しており、実験をせずとも計算で簡便に算出できることが確認された。

0066

実施例1〜8および比較例1〜4は、各試験ともコイル巻き戻し部とコイル巻取り部により微小な矯正張力を付与しながら、コイル巻き戻し部とコイル巻取り部の間に設置の誘導加熱装置(Induction Heater)により所定温度Tまで加熱した。所定温度Tは、400〜680℃の間に設定された最高到達温度であって、各実施例及び各比較例についてそれぞれ設定した。また、設備限界の張力は10kNであるので、矯正張力は板幅が200mmの場合は50MPaであり、板幅120mmの場合は30MPaである。これらは何れも材料の降伏応力未満の値であるため、このままの値を採用する。矯正張力は30または50MPaとし、通板速度は1mpmとした。

0067

実施例9は粒径測定装置を用いて形状矯正を実施した。実験条件特定周波数をφ8.8MHzとし、矯正張力は50MPaで固定とした。熱処理装置により30℃/sで昇温中の粒径変化をオンラインで計測し、粒径変化が始まった温度から100℃高い温度で通板した。

0068

また、高張力鋼以外への効果の確認として低炭素鋼(0.08%C−0.5%Si−0.5%Mn)を対象とした試験も同様に実施した。矯正前の鋼板形状は高張力鋼同様、3%の板を用意した。

0069

評価は実績急峻度が目標急峻度に対して+10%以下に形状が矯正されており、かつ、矯正後に板幅変動(低下)が生じていないものを○とし、それ以外を×とした。

0070

高張力鋼および低炭素鋼ともに、実施例では比較的低温であるにも関わらず、目標通りに形状が矯正され、板幅変動もないことが分かる。

0071

一方で比較例1、2および3は、決定された矯正温度よりも低い温度で加熱が停止されたため、ひずみが十分に与えられなかった。このように矯正条件が予め求めた値より小さい場合、急峻度は改善傾向にあるものの、目標急峻度λ0を下回ることができず十分とはいえない結果であった。

実施例

0072

0073

本発明によれば、本発明によれば、最適な条件で矯正された形状に優れた鋼板および形状矯正装置を提供し、材質特性を劣化させることなく、製品品質の最も重要な一つである形状の精度が向上する。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。

0074

1形状矯正装置
2鋼板
11、12ピンチロール
20熱処理装置
30粒径測定装置
100 形状矯正装置

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