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技術 電動車両の制御方法および電動車両の制御装置

出願人 日産自動車株式会社
発明者 中村勝徳芦沢裕之杉田秀彦
出願日 2016年8月24日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2016-163228
公開日 2018年3月1日 (3年7ヶ月経過) 公開番号 2018-033216
状態 特許登録済
技術分野 ハイブリッド電気車両 車両の電気的な推進・制動 交流電動機の制御一般
主要キーワード 解放モード 振動抑制性能 総慣性モーメント 非振動 制御モードフラグ ブロック線 内部状態変数 高電圧インバータ
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図面 (16)

課題

駆動輪の回転速度の定常的な検出誤差に伴うトルク指令の誤補正を抑制できる電動車両制御方法および電動車両の制御装置を提供する。

解決手段

モータ2のトルク目標値Tm*をトルク目標値補正基本値Tm*dで補正する前に、ハイパスフィルタ28によってトルク目標値補正基本値Tm*dにハイパスフィルタ処理を施す。

概要

背景

特許文献1には、モータ回転速度駆動輪ドライブシャフト)の回転速度に換算した回転速度と、駆動輪の回転速度との速度差に所定のゲインを乗じて補正値を算出し、モータトルク指令から補正値を減じることにより、ドライブシャフトのねじれ等に起因する振動の抑制を図る技術が開示されている。

概要

駆動輪の回転速度の定常的な検出誤差に伴うトルク指令の誤補正を抑制できる電動車両制御方法および電動車両の制御装置を提供する。モータ2のトルク目標値Tm*をトルク目標値補正基本値Tm*dで補正する前に、ハイパスフィルタ28によってトルク目標値補正基本値Tm*dにハイパスフィルタ処理を施す。

目的

本発明の目的は、駆動輪の回転速度の定常的な検出誤差に伴うトルク指令の誤補正を抑制できる電動車両の制御方法および電動車両の制御装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

駆動輪を駆動するモータの回転速度を検出または推定し、前記駆動輪の回転速度を検出または推定し、前記モータの回転速度を前記駆動輪の回転速度に換算した回転速度と、前記駆動輪の回転速度との速度差に応じて補正値を算出し、前記モータのトルク指令を前記補正値で補正する電動車両制御方法であって、前記速度差にハイパスフィルタ処理を施す電動車両の制御方法。

請求項2

請求項1に記載の電動車両の制御方法において、前記モータおよび前記駆動輪間介装したクラッチスリップ状態から締結状態移行したとき、所定時間が経過するまでの間は前記ハイパスフィルタ処理を禁止または制限する電動車両の制御方法。

請求項3

請求項1または2に記載の電動車両の制御方法において、前記速度差が定常的に現われる走行状態の場合には、前記定常的な速度差が大きいほど前記ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数を高くする電動車両の制御方法。

請求項4

請求項3に記載の電動車両の制御方法において、車速が高いほど、加速度の絶対値が大きいほど、または操舵角が大きいほど前記ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数を高くする電動車両の制御方法。

請求項5

請求項1ないし4のいずれかに記載の電動車両の制御方法において、車両の加減速初期には前記ハイパスフィルタ処理を禁止または制限する電動車両の制御方法。

請求項6

請求項2または5に記載の電動車両の制御方法において、前記ハイパスフィルタ処理を禁止または制限を解除する際、前記ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数を徐々に設定値に戻す電動車両の制御方法。

請求項7

請求項1ないし6のいずれかに記載の電動車両の制御方法において、エンジンおよび前記モータ間に介装したクラッチの状態および/または前記モータおよび前記駆動輪間に介装した変速機変速段に応じて前記ハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数を設定する電動車両の制御方法。

請求項8

駆動輪を駆動するモータの回転速度を検出するモータ回転速度検出部と、前記駆動輪の回転速度を検出または推定する駆動輪回転速度検出部と、前記モータの回転速度を前記駆動輪の回転速度に換算した回転速度と、前記駆動輪の回転速度との速度差に応じて補正値を算出する補正値算出部と、前記モータのトルク指令を前記補正値で補正するトルク指令補正部と、を有する電動車両の制御装置において、前記速度差にハイパスフィルタ処理を施して前記トルク指令補正部に出力するハイパスフィルタを備えた電動車両の制御装置。

技術分野

0001

本発明は、電動車両制御方法および電動車両の制御装置に関する。

背景技術

0002

特許文献1には、モータ回転速度駆動輪ドライブシャフト)の回転速度に換算した回転速度と、駆動輪の回転速度との速度差に所定のゲインを乗じて補正値を算出し、モータトルク指令から補正値を減じることにより、ドライブシャフトのねじれ等に起因する振動の抑制を図る技術が開示されている。

先行技術

0003

特開2013-141359号公報

発明が解決しようとする課題

0004

しかしながら、上記従来技術にあっては、駆動輪の回転速度に定常的な検出(推定を含む)誤差が生じるシーンでは、当該検出誤差外乱とみなしてトルク指令が誤補正されるため、運転者の所望する加速を実現できない。
本発明の目的は、駆動輪の回転速度の定常的な検出誤差に伴うトルク指令の誤補正を抑制できる電動車両の制御方法および電動車両の制御装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0005

本発明では、モータの回転速度を駆動輪の回転速度に換算した回転速度と、駆動輪の回転速度との速度差にハイパスフィルタ処理を施す。

発明の効果

0006

よって、本発明にあっては、駆動輪の回転速度の定常的な検出誤差に伴うトルク指令の誤補正を抑制できる。

図面の簡単な説明

0007

実施形態1のハイブリッド車両におけるパワートレイン概略構成図である。
統合コントローラ15の指令値演算処理を示すフローチャートである。
目標駆動トルク演算マップである。
クラッチトルク容量油圧変換マップである。
クラッチ油圧電流変換マップである。
モータコントローラ19の制振制御を示すブロック線図である。
制御対象モデルである。
実施形態1のハイパスフィルタ28がないトルク制御フィードバック制御系のブロック線図である。
走行状態に応じたカットオフ周波数設定方法を示すタイムチャートである。
クラッチ状態および変速段に応じたカットオフ周波数設定マップである。
車速に応じたカットオフ周波数設定マップである。
従来の制振制御のタイムチャートである。
実施形態1の制振制御のタイムチャートである。
実施形態1の比較例として、ハイパスフィルタ28のカットオフ周波数fhpfをある設定値に固定した場合のタイムチャートである。
実施形態1の制振制御において、ハイパスフィルタ28のカットオフ周波数fhpfを走行状態に応じて切り替えた場合のタイムチャートである。

実施例

0008

〔実施形態1〕
図1は、実施形態1のハイブリッド車両におけるパワートレインの概略構成図である。
実施形態1のハイブリッド車両は、エンジン1の車両前後方向後方側に有段式自動変速機(以下、変速機)3をタンデム配置し、エンジン1のクランクシャフト1aからの回転を変速機3へ伝達する軸2aに結合してモータジェネレータ(以下、モータ)2を設ける。エンジン1は希薄燃焼可能であり、スロットルアクチュエータによる吸入空気量、インジェクタによる燃料噴射量および点火プラグによる点火時期の制御により、エンジントルクが指令値と一致するように制御される。モータ2はエンジン1および変速機3間に位置し、モータ軸2aにトルクを出力する。モータ2は、交流同期モータであり、運転状態に応じて電動機または発電機として機能する。クランクシャフト1aおよびモータ軸2a間に第1クラッチ4を介装し、第1クラッチ4によりエンジン1およびモータ2間を切り離し可能に結合する。第1クラッチ4は、例えば、乾式単板クラッチとする。

0009

モータ2および変速機3間は、モータ軸2aと変速機入力軸3aとの結合により相互に直結させる。変速機3は、変速機入力軸3aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比変速して変速機出力軸3bに出力する。変速機出力軸3bの回転は、ディファレンシャルギヤ装置6により左右の後輪(以下、駆動輪)7RL,7RR分配して伝達され、車両の走行に供される。実施形態1では、モータ2および駆動輪7RL,7RRを切り離し可能に結合する第2クラッチ5として、変速機3内に既存する前進変速段選択用変速摩擦要素または後退変速段選択用の変速摩擦要素を流用している。第2クラッチ5は、例えば、湿式多板クラッチとする。

0010

第2クラッチ入力軸回転速度センサ(モータ回転速度検出部)8は、第2クラッチ5の入力軸回転速度(モータ軸2aの回転速度)を検出する。第2クラッチ出力軸回転速度センサ9は、第2クラッチ5の出力軸回転速度(変速機入力軸3aの回転速度)を検出する。高電圧インバータ10は、モータ2の力行運転時、高電圧バッテリ11の直流電力交流電力に変換し、モータ2に駆動電流を供給する。高電圧バッテリ11は、高電圧インバータ10に電流を供給すると共に、モータ2からの回生エネルギー蓄積する。アクセルセンサ30は、アクセル開度を検出する。エンジン回転速度センサ12は、エンジン回転速度を検出する。油温センサ13は、第2クラッチ5の作動油の温度(油温)を検出する。車輪速センサ14,14は、前輪(以下、従動輪)7FL,7FRの回転速度を検出する。

0011

統合コントローラ15は、高電圧バッテリ11の状態(バッテリSOC等)、アクセル開度および車速(変速機出力軸回転速度に同期した値)から車両の目標駆動トルクを演算し、目標駆動トルクに基づき各アクチュエータ(エンジン1、モータ2、第1クラッチ4、第2クラッチ5および変速機3)に対する指令値を演算し、各コントローラ16,17,18,19へ送信する。変速機コントローラ16は、統合コントローラ15からの変速指令を達成するように変速機3を制御する。クラッチコントローラ17は、統合コントローラ15からの各クラッチトルク容量指令値を達成するように第1クラッチ4および第2クラッチ5の締結容量を制御する。エンジンコントローラ18は、統合コントローラ15からのエンジントルク指令値を達成するようにエンジントルクを制御する。モータコントローラ19は、統合コントローラ15からのモータトルク指令値を達成するようにモータトルクを制御する。バッテリコントローラ20は、高電圧バッテリ11の状態を管理し、その情報を統合コントローラ15へ送信する。

0012

図2は、統合コントローラ15の指令値演算処理を示すフローチャートである。この処理は、所定のサンプリング周期で繰り返し実行される。
テップS1では、バッテリSOC、変速機3のシフト位置、第2クラッチ5の入出力軸回転速度ωcl2i,ωo、エンジン回転速度ωe、エンジン1の動作状態Ests、車速信号Vsp等、他のコントローラ16,17,18,19,20が計測した車両状態を示すデータを受信する。
ステップS2では、アクセルセンサ30により検出されたアクセル開度Apoを読み込む。
ステップS3では、アクセル開度Apoおよび車速Vspに基づき、図3の目標駆動トルク演算マップを参照して車両の目標駆動トルクTd*を演算する。

0013

ステップS4では、バッテリSOC、目標駆動トルクTd*および車速Vsp等の車両状態に基づき、第1クラッチ制御モード締結エンジン始動解放エンジン停止)および第1クラッチ制御モードフラグfCL1を設定する。例えば、低加速での発進等、比較的エンジン1の効率が良くない走行シーンではモータ単独走行EV走行)するため、第1クラッチ4を解放モードとし、第1クラッチ制御モードフラグfCL1=0とする。また、急加速やバッテリSOCが所定値SOCth1以下、あるいは車速Vspが所定値Vspth1以上となった場合はEV走行が困難であるため、エンジン1およびモータ2の双方で走行(HEV走行)するために第1クラッチ4を締結モードとし、第1クラッチ制御モードフラグfCL1=1とする。

0014

ステップS5では、バッテリSOC、目標駆動トルクTd*、第1クラッチ制御モードフラグfCL1および車速Vsp等の車両状態に基づき、第2クラッチ制御モード(締結、解放、スリップ)および第2クラッチ制御モードフラグfCL2を設定する。第2クラッチ制御モードフラグfCL2は、第2クラッチ5の解放モードのとき0、締結モードのとき1、スリップモードのとき2とする。なお、第2クラッチ制御モードの設定方法については省略する。
ステップS6では、各クラッチ4,5の制御モードフラグfCL1,fCL2および車両状態に基づき、目標駆動トルクTd*を基本エンジントルク指令値Te_base*と基本モータトルク指令値Tm_base*とに配分する。

0015

ステップS7では、各クラッチ4,5の制御モードフラグfCL1,fCL2、エンジン回転速度ωe、目標駆動トルクTd*および各種車両状態に基づき、エンジン始動中の各クラッチ4,5のトルク容量指令値Tcl1_ENG_START、Tcl2_ENG_STARTを演算する。
ステップS8では、第1クラッチ制御モードフラグfCL1、第2クラッチ入力軸回転速度ωCL2iおよびエンジン回転速度ωeに基づき、エンジン始動中か否かを判定する。このステップでは、第1クラッチ制御モードフラグfCL1=1であり、エンジン回転速度ωeが第2クラッチ入力軸回転速度ωCL2iよりも低い場合は始動中と判定して始動フラグfENG_STをセットし、それ以外であれば始動中ではないと判定して始動フラグfENG_STをクリアする。

0016

ステップS9では、スリップ回転数制御を実行(ON)するか否かを判定する。ステップS5で第2クラッチ制御モードがスリップモード(fCL2=2)と設定され、かつ実際のスリップ回転数入力軸出力軸)絶対値が所定値以上となった場合はスリップ回転数制御をONとしてステップS10へ進み、解放または締結と設定された場合は回転数制御をOFFとしてステップS14へ進む。
ステップS10では、基本第2クラッチトルク容量指令値Tcl2_base*を演算する。実施形態1では、基本第2クラッチトルク容量指令値Tcl2_base*を目標駆動トルクTd*と同値とする。
ステップS11では、第1クラッチ制御モードフラグfCL1、基本第2クラッチトルク容量指令値Tcl2_base*、第2クラッチ油温Tempcl2、バッテリSOCおよび第2クラッチ出力軸回転速度ωoに基づき、第2クラッチ入力軸回転速度目標値ωcl2i*を演算する。

0017

ステップS12では、第2クラッチ入力軸回転速度目標値ωcl2i*と第2クラッチ入力軸回転速度ωcl2iが一致するように回転数制御用モータトルク指令値Tm_FB_ONを例えば下記の式(1)を用いて演算する。



ただし、
KPm:モータ制御用比例ゲイン
Kim:モータ制御用積分ゲイン
S:微分演算
である。
ステップS13では、基本第2クラッチトルク容量指令値Tcl2_base*、回転数制御用モータトルク指令値Tm_FB_ONおよびエンジントルク指令値Te_baseに基づき、回転数制御用第2クラッチトルク容量指令値Tcl2_FB_ONを演算する。
ステップS14では、回転数制御用モータトルク指令値Tm_FB_ONおよび回転数制御用第2クラッチトルク容量指令値Tcl2_FB_ONを演算するための内部状態変数初期化する。

0018

ステップS15では、回転数制御を行わない場合、すなわち第2クラッチ5を締結/解放状態もしくは締結状態から回転数制御を行う(スリップ状態にする)までのクラッチトルク容量指令値Tcl2_FB_OFFを演算する。
1) 締結する場合
1-1) Tcl2_z1* < Td* × Ksafe であれば、
Tcl2_FB_OFF = Tcl2_z1* + ΔTcl2LU …(2)
1-2) Tcl2_z1* ≧ Td* x Ksafe であれば、
Tcl2_FB_OFF = Td* × Ksafe …(3)
2)解放する場合
Tcl2_FB_OFF = 0 …(4)
3) 第2クラッチ5を締結→スリップ状態にする場合
Tcl2_FB_OFF = Tcl2_z1* - ΔTcl2slp …(5)
ただし、
Ksafe:第2クラッチ安全率係数(>1)
ΔTcl2LU:スリップ(または解放)→締結移行時のトルク容量変化
ΔTcl2slp:締結→スリップ移行時トルク容量変化率
Tcl2_z1*:最終第2クラッチトルク容量指令値前回値
である。

0019

ステップS16では、以下の条件に基づき最終第2クラッチトルク容量指令値Tcl2*を演算する。
1)回転数制御中において、
1-1)エンジン始動中(fENG_ST=1)の場合
Tcl2* = Tcl2_ENG_START…(6)
1-2) 上記以外の場合
Tcl2* = Tcl2_FB_ON …(7)
2)回転数制御停止の場合
Tcl2* = Tcl2_FB_OFF…(8)

0020

ステップS17では、第1クラッチ制御モードフラグfCL1に基づき第1クラッチトルク容量指令値Tcl1*を演算する。
1) 第1クラッチ制御モードが締結モードにおいて、
1-1)エンジン始動中(fENG_ST=1)の場合
Tcl1* = Tcl1_ENG_START…(9)
1-2) 上記以外の場合
Tcl1* = Tcl1_max …(10)
ただし、
Tcl1_max:第1クラッチ最大トルク容量
である。
2) 第1クラッチ制御モードが解放モードになっている場合
Tcl1* = 0 …(11)

0021

ステップS18では、クラッチトルク容量指令値Tcl1*,Tcl2*から、予め取得した特性に基づくクラッチトルク容量−油圧変換マップ(図4)および油圧−電流変換マップ(図5)を参照して電流指令値Icl1*,Icl2*を演算する。これにより、油圧や電流に対してクラッチトルク容量が非線形な特性を有している場合でも、制御対象線形とみなせるため、前述したような線形理論を適用できる。
ステップS19では、以下の条件に基づきモータ2のトルク目標値Tm*を演算する。
1)回転数制御中の場合
Tm* = Tm_FB_ON …(12)
2)回転数制御停止の場合
Tm* = Tm_base …(13)
ステップS20では、算出した各指令値を各コントローラ16,17,18,19へ送信する。

0022

次に、モータコントローラ19の処理内容を説明する。
モータコントローラ19は、統合コントローラ15が回転数制御中の場合には、基本モータトルク指令値Tm_base*を最終的なモータトルク指令値Tm*fとして高電圧インバータ10に出力する。一方、モータコントローラ19は、回転数制御停止中(トルク制御中)の場合にはドライブシャフトのねじれに起因する振動(ねじれ振動)等を抑制するための制振制御により最終的なモータトルク指令値Tm*fを決定する。図6は、モータコントローラ19の制振制御を示すブロック線図である。以下、基本モータトルク指令値Tm_base*をトルク目標値Tm*と称す。トルク目標値Tm*に対し、伝達特性Gm(s)/Gp(s)を有する第1フィルタ21と、伝達特性Gm(s)/Gc'(s)を有する第2フィルタ22とによるフィルタ処理を施すことで、第1トルク目標値Tm*a,Tm*bをそれぞれ算出する。ただし、第1トルク目標値Tm*bは遅れ時間(むだ時間)Lを有するむだ時間要素23により、フィードバック制御系に存在する遅れ時間Lだけ出力を遅くする。第1フィルタ21および第2フィルタ22の具体的な設定方法は後述する。

0023

減算器24は、伝達特性Gp(s)を有する制御対象25(モータ2および駆動シャフト)から出力されたモータ回転速度ωm'と駆動輪速度相当値ωwとの速度差を算出する。モータ回転速度ωm'は、モータ2の回転速度を駆動輪7RL,7RR(ドライブシャフト)の回転速度に換算した回転速度であり、例えば、第2クラッチ入力軸回転速度センサ8の検出値にモータ2および駆動輪7RL,7RR間の減速比を乗じて算出する。駆動輪速度相当値ωwは、モータコントローラ(駆動輪回転速度検出部)19において、車輪速センサ14,14の各検出値を平均して求める。つまり、駆動輪速度相当値ωwは従動輪7FL,7FRの回転速度平均値である。乗算器26は、減算器24の出力にフィードバックゲインkを乗じて第2トルク目標値Tm*cを算出する。フィードバックゲインkの具体的な設定方法については後述する。減算器(補正値算出部)27は、第1トルク目標値Tm*bと第2トルク目標値Tm*cとの偏差を算出しトルク目標値補正基本値Tm*dとする。なお、外乱がない理想状態ではTm*bがTm*cに相殺される。

0024

実施形態1の制振制御では、実際の駆動輪速度に対し駆動輪速度相当値ωwに定常的な誤差(以下、駆動輪速度の定常的な検出誤差と称す。)が生じるシーンにおいて、当該検出誤差を外乱とみなしてトルク目標値補正基本値Tm*dが誤補正されるのを抑制することを狙いとし、トルク目標値補正基本値Tm*dにハイパスフィルタ処理を施すハイパスフィルタ28を設けた。ハイパスフィルタ28は、伝達特性Gh(s)を有する1次のハイパスフィルタであり、トルク目標値補正基本値Tm*dにハイパスフィルタ処理を施してトルク目標値補正最終値Tm*eを算出する。ハイパスフィルタ28により、駆動輪速度に定常的な検出誤差が生じている場合であっても、その影響をトルク目標値補正最終値Tm*eから除去できる。なお、ハイパスフィルタ28の伝達特性Gh(s)およびカットオフ周波数fhpfの詳細は後述する。
加算器(トルク指令補正部)29は、第1トルク目標値Tm*aにトルク目標値補正最終値Tm*eを加算して最終的なモータトルク指令値Tm*fを算出する。

0025

次に、第1フィルタ21および第2フィルタ22の設定方法を説明する。
まず、フィードフォワード制御系を設計するための制御対象モデルとし、図7に例示するモデルについて考える。このモデルの運動方程式は、下記の式(14)のように記述できる。各符号の意味は以下の通りである。
J1:モータが含まれる動力装置総慣性モーメント
J2:車両およびタイヤ等価慣性モーメント
Id:モータから駆動輪までの減速比
Cs:駆動系シャフトとタイヤの合成された粘性係数
Ks:駆動系シャフトとタイヤの合成されたバネ定数
Tm*f:モータトルク指令値
Tm*a:第1トルク目標値
Tm*c:第2トルク目標値
ωm':モータ回転速度(駆動輪換算値
ωw:駆動輪速度相当値
θ:駆動系シャフトのねじれ角

0026

図8は、実施形態1のハイパスフィルタ28がないトルク制御のフィードバック制御系のブロック線図である。トルク応答遅れを無視した場合、モータトルク指令値Tm*fは下記の式(15)で表される。
Tm*f = Tm*a - Tm*c
= Tm*a - k × (ωm' - ωw) …(15)
よって、式(14)と式(15)とにより制御系を構成した閉ループ状態方程式は下記の式(16)となる。

0027

さらに、式(16)に示した状態方程式の特性方程式ラプラス演算子sを用いることで下記の式(17)のように表される。



ここで、ωpは制御対象モデルの振動周波数ζpは制御対象モデルの減衰係数、ζcはフィードバック制御を施すことによって増加した減衰係数を表している。

0028

第1フィルタ21の伝達特性Gm(s)/Gp(s)は、フィードバック制御がない状態での制御対象の伝達特性、すなわち式(17)の減衰係数ζcを0とした特性の逆系と、設計者が所望する2次非振動特性とから、下記の式(18)で表される特性とする。ただし、実際の演算はタスティ近似等で離散化して得られた漸化式を用いて演算する。



また、第2フィルタ22の伝達特性Gm(s)/Gc'(s)は、下記の式(19)で表される特性とする。ただし、実際の演算はタスティン近似等で離散化して得られた漸化式を用いて演算する。

0029

次に、フィードバックゲインkの設定方法を説明する。
フェイードバック補償後の減衰係数ζ'cは式(17)から下記の式(20)のように表される。



また、式(20)をフィードバックゲインkについて整理すると、下記の式(21)となる。



式(21)から、設計者の所望する減衰係数ζ'cになるようにフィードバックゲインkを設定できる。

0030

次に、ハイパスフィルタ28の伝達特性Gh(s)について説明する。
伝達特性Gh(s)は、例えば下記の式(22)で表される。



上記伝達特性Gh(s)を持つハイパスフィルタ28を用いてトルク目標値補正基本値Tm*dにハイパスフィルタ処理を施すことにより、カットオフ周波数fhpf以上の周波数を持つ信号(トルク目標値補正最終値Tm*e)のみで第1トルク目標値Tm*aを補正できる。

0031

次に、カットオフ周波数fhpfの設定方法について説明する。
モータコントローラ19が回転数制御からトルク制御に切り替わったとき(第2クラッチ5がスリップ状態から締結状態へ移行したとき)や、車両の加減速初期には、図9に示すように、所定時間Tthの間、カットオフ周波数fhpfを設定値からゼロまたはゼロ付近の値まで低下させてハイパスフィルタ処理を禁止または制限する。これにより、クラッチ締結時や入力トルク急変といったねじれ振動だけでなく様々な加速変動が発生するシーンにおいては、低周波領域までフィードバックによる補償を行うことでその変動を除去できる。トルク制御に移行して所定時間Tthが経過すると、カットオフ周波数fhpfを一定の割合で設定値まで上昇させる。これにより、カットオフ周波数fhpfを設定値まで戻す際のモータトルク指令値Tm*fの急変を抑制できる。

0032

また、図10に示すようなクラッチ状態および変速段に応じたカットオフ周波数設定マップを用いて、第1クラッチ4の状態(締結/解放)と変速機3の変速段毎にカットオフ周波数fhpfの設定値を変更する。カットオフ周波数fhpfは、第1クラッチ4の締結時よりも解放時を高くする。また、カットオフ周波数fhpfは、変速機3の変速段が高いほど高くする。ねじれ振動の周波数(振動周波数)は、第1クラッチ4の締結時よりも解放時で高くなる。また、振動周波数は変速段が高いほど高くなる。よって、第1クラッチ4の状態および変速段に応じて上記のようにカットオフ周波数fhpfを設定することにより、トルク目標値補正基本値Tm*dからねじれ振動抑制に必要のない成分を精度よく除去できる。

0033

さらに、図11に示すような車速に応じたカットオフ周波数設定マップを用いて、車速Vspに応じてカットオフ周波数fhpfの設定値を大きく設定する。カットオフ周波数fhpfは、車速Vspが0から所定車速Vspthまでは一定とし、所定車速Vspthを超えると、車速Vspが高くなるほど高くする。実施形態1では、従動輪7FL,7FRの車輪速から駆動輪速度相当値ωwを算出しているため、駆動輪速度相当値ωwと実際の駆動輪速度との間の定常的な誤差は、車速Vspが高いほど拡大する。よって、車速Vspが高いほどカットオフ周波数fhpfを高くすることにより、駆動輪速度の定常的な検出誤差によって定常的なトルク目標値補正基本値Tm*dが大きくなった場合であってもその影響を抑制できる。

0034

図12は、従来の制振制御のタイムチャートであり、一定車速走行中に運転者がアクセルを踏み増しして加速した場合を示している。各回転速度を検出するセンサ(第2クラッチ入力軸回転速度センサ8、車輪速センサ14,14)の応答性のち外野、実施形態1のように従動輪の回転速度を駆動輪相当として用いた場合、例えば急加速のような回転速度の変化が比較的急峻な運転状態では、駆動輪速度に定常的な検出誤差が生じる。この検出誤差は、モータ回転速度ωm'および駆動輪速度相当値ωw間の定常的な速度差として現われる。従来の制振制御では、定常的な速度差をドライブシャフトのねじれに起因する過渡的な速度差と混同してトルク目標値補正最終値Tm*eを算出している。このため、加速時には最終的なモータトルク指令値Tm*fがアクセル開度Apoに応じたトルク目標値Tm*よりも小さくなる。この結果、車両の実加速度はアクセル開度Apoに応じた目標加速度よりも低くなり、運転者の所望する加速を実現できない。

0035

これに対し、実施形態1の制振制御では、ハイパスフィルタ28を用いてトルク目標値補正基本値Tm*dにハイパスフィルタ処理を施すことにより、図13に示すように、トルク目標値補正最終値Tm*eから定常的な速度差を無くすための補正量(誤補正量)が除去され、過渡的な速度差に基づき、ドライブシャフトのねじれやトルク変動に起因する過渡的な速度差のみを無くすためのトルク目標値補正最終値Tm*eが生成される。このため、最終的なモータトルク指令値Tm*fをトルク目標値Tm*と一致させることができ、車両の実加速度は目標加速度と一致する。この結果、運転者の所望する加速度を実現できる。

0036

次に、走行状態に応じてハイパスフィルタ28のカットオフ周波数fhpfを切り替えることによる作用効果を説明する。図14は、実施形態1の制振制御の比較例として、ハイパスフィルタ28のカットオフ周波数fhpfをある設定値に固定した場合のタイムチャートであり、EV走行中に第2クラッチ5がスリップ状態から締結状態へ移行する場合を示している。比較例では、第2クラッチ5がスリップ状態から締結状態へ移行したとき、ハイパスフィルタ28の影響によって過渡的にトルク目標値補正最終値Tm*eはトルク目標値補正基本値Tm*dよりも増加側に補正される。このため、最終的なモータトルク指令値Tm*fはトルク目標値Tm*よりも大きくなる。この結果、車両の実加速度は目標加速度よりも高くなり、運転者に違和感を与える。

0037

一方、図15は、ハイパスフィルタ28のカットオフ周波数fhpfを走行状態に応じて切り替えた場合のタイムチャートである。実施形態1の制振制御では、第2クラッチ5がスリップ状態から締結状態へ移行したとき、ハイパスフィルタ28のカットオフ周波数fhpfを所定時間Tthの間ゼロまたはゼロ付近の値とする。これにより、第2クラッチ5の締結移行直後はハイパスフィルタ28の影響を無くすことができるため、上記のような加速度変動を改善できる。

0038

実施形態1は以下の効果を奏する。
(1)駆動輪7RL,7RRを駆動するモータ2の回転速度を検出し、駆動輪7RL,7RRの回転速度を検出し、モータ2の回転速度を駆動輪7RL,7RRの回転速度に換算したモータ回転速度ωm'と、駆動輪速度相当値ωwとの速度差に応じてトルク目標値補正基本値Tm*dを算出し、モータ2のトルク目標値Tm*をトルク目標値補正基本値Tm*dで補正する電動車両の制御方法であって、トルク目標値補正基本値Tm*dにハイパスフィルタ処理を施す。
よって、所望する周波数以上の信号のみでトルク目標値Tm*を補正できるため、振動抑制性能を維持しつつ、駆動輪速度の定常的な検出誤差に伴うトルク目標値Tm*の誤補正を抑制して運転者の所望する加速を実現できる。

0039

(2)モータ2および駆動輪7RL,7RR間に介装した第2クラッチ5がスリップ状態から締結状態へ移行したとき、所定時間Tthが経過するまでの間はハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数fhpfを設定値からゼロまたはゼロ付近の値まで低下させる。
よって、第2クラッチ5の締結時の振動以外のトルク変動を抑制できる。

0040

(3)駆動輪速度相当値ωwに定常的な検出誤差が生じる走行状態の場合には、定常的な検出誤差が大きいほどハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数fhpfを高くする。
よって、駆動輪速度の定常的な検出誤差に伴うトルク目標値Tm*の誤補正を過不足なく抑制できる。

0041

(4)車速Vspが高いほどハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数fhpfを高くする。
よって、車速Vspが高くなるほど駆動輪速度の定常的な検出誤差が大きくなるのに対し、トルク目標値Tm*の誤補正を過不足なく抑制できる。

0042

(5) 車両の加減速初期にはハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数fhpfを設定値からゼロまたはゼロ付近の値まで低下させる。
よって、加減速初期に生じるトルク変動に対し振動抑制性能を向上できる。

0043

(6)カットオフ周波数fhpfをゼロまたはゼロ付近の値から設定値まで戻す場合には、カットオフ周波数fhpfを徐々に設定値に戻す。
よって、カットオフ周波数fhpfを設定値まで戻す際のモータトルク指令値Tm*fの急変を抑制できる。

0044

(7)エンジン1およびモータ2間に介装した第1クラッチ4の状態およびモータ2および駆動輪7RL,7RR間に介装した変速機3の変速段に応じてハイパスフィルタ処理のカットオフ周波数fhpfを設定する。
よって、トルク目標値補正基本値Tm*dからねじれ振動抑制に必要のない成分を精度よく除去できるため、振動抑制性能を維持しつつ、所望する加速性能を実現できる。

0045

(8)駆動輪7RL,7RRを駆動するモータ2の回転速度を検出する第2クラッチ入力軸回転速度センサ8と、駆動輪7RL,7RRの回転速度を推定するモータコントローラ19と、モータ2の回転速度を駆動輪7RL,7RRの回転速度に換算したモータ回転速度ωm'と、駆動輪速度相当値ωwとの速度差に応じてトルク目標値補正基本値Tm*dを算出する減算器27と、モータ2のトルク目標値Tm*をトルク目標値補正基本値Tm*dで補正する加算器29と、を有する電動車両の制御装置において、トルク目標値補正基本値Tm*dにハイパスフィルタ処理を施して加算器29に出力するハイパスフィルタ28を備えた。
よって、所望する周波数以上の信号のみでトルク目標値Tm*を補正できるため、振動抑制性能を維持しつつ、駆動輪速度の定常的な検出誤差に伴うトルク目標値Tm*の誤補正を抑制して運転者の所望する加速を実現できる。

0046

(他の実施形態)
以上、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明したが、本発明の具体的な構成は、実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、ハイパスフィルタ28の次数は2次以上でもよい。
ハイパスフィルタ28は、減算器24および乗算器26間、または乗算器26および減算器27間に設けてもよい。
モータ2の回転速度は推定値でもよい。
駆動輪7RL,7RRの回転速度は車輪速センサを用いて直接計測してもよい。

0047

図11横軸を車速Vspに代えてアクセル開度Apoとし、アクセル開度Apoが高くなるほどカットオフ周波数fhpfを高くしてもよい。実施形態1では、従動輪7FL,7FRの車輪速から駆動輪速度相当値ωwを算出しているため、駆動輪速度相当値ωwと実際の駆動輪速度との間の定常的な誤差は、車両の加速度が高いほど拡大する。よって、アクセル開度Apoが高いほどカットオフ周波数fhpfを高くすることにより、駆動輪速度の定常的な検出誤差によって定常的なトルク目標値補正基本値Tm*dが大きくなった場合であってもその影響を抑制できる。図11の横軸を車速Vspに代えて操舵角とした場合も同様である。車速Vspに応じたカットオフ周波数fhpfの設定方法、アクセル開度Apoに応じたカットオフ周波数fhpfの設定方法、操舵角に応じたカットオフ周波数fhpfの設定方法のうち、いずれか2つ以上の方法を組み合わせてもよい。

0048

1エンジン
2モータジェネレータ(モータ)
3有段式自動変速機(変速機)
4 第1クラッチ
5 第2クラッチ
7RL,7RR後輪(従動輪)
8 第2クラッチ入力軸回転速度センサ(モータ回転速度検出部)
19モータコントローラ(駆動輪回転速度検出部)
27減算器(補正値算出部)
28ハイパスフィルタ
29加算器(トルク指令補正部)

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