図面 (/)

技術 高分子材料のシミュレーション方法

出願人 住友ゴム工業株式会社
発明者 尾藤容正皆川康久
出願日 2016年8月22日 (4年4ヶ月経過) 出願番号 2016-161951
公開日 2018年3月1日 (2年9ヶ月経過) 公開番号 2018-032077
状態 特許登録済
技術分野 計算コンビナトリアル技術(1) CAD 特定用途計算機
主要キーワード 平衡角度 平衡距離 結合角θ 調和振動子 高分子モデル セル変形 粒子モデル 古典力学
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年3月1日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (16)

課題

分子鎖モデルの切断を安定して計算する。

解決手段

コンピュータを用いて、高分子材料分子鎖の切断を解析するためのシミュレーション方法である。このシミュレーション方法では、高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルに、分子鎖モデルを配置した高分子材料モデルを定義する工程、及び、分子鎖モデルの切断を計算するための切断計算工程を含む。切断計算工程では、高分子材料モデルを用いて、分子力学計算を行う第1分子力学計算工程S46、第1分子力学計算工程S46後の分子鎖モデルについて、粒子モデル間の距離が第1距離よりも大きい粒子モデル対を含む第1領域を対象に量子力学計算を行う工程S48と、第1領域について、第1距離よりも大きく設定され、かつ、結合解離ポテンシャル変曲点での粒子モデル間の距離に1.0〜2.5Åを加えた第2距離よりも、粒子モデル間の距離が大きいときに、粒子モデル対に対応する分子鎖モデルの粒子モデル間の結合を切断する工程S54を含む。

概要

背景

近年、ゴム等の高分子材料の開発のために、高分子材料の性質を、コンピュータを用いて評価するためのシミュレーション方法数値計算)が種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。

この種のシミュレーション方法では、先ず、高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルに、複数の粒子モデルを含む分子鎖モデルを配置した高分子材料モデルが、コンピュータに定義される。高分子材料モデルの粒子モデル間には、粒子モデル間の距離の関数であるポテンシャルが定義されている。このような高分子材料モデルは、上記空間内で分子動力学に基づく緩和計算が行われる。その後、例えば、高分子材料モデルを用いた変形計算が実施され、高分子材料の性能等が解析される。

概要

分子鎖モデルの切断を安定して計算する。コンピュータを用いて、高分子材料の分子鎖の切断を解析するためのシミュレーション方法である。このシミュレーション方法では、高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルに、分子鎖モデルを配置した高分子材料モデルを定義する工程、及び、分子鎖モデルの切断を計算するための切断計算工程を含む。切断計算工程では、高分子材料モデルを用いて、分子力学計算を行う第1分子力学計算工程S46、第1分子力学計算工程S46後の分子鎖モデルについて、粒子モデル間の距離が第1距離よりも大きい粒子モデル対を含む第1領域を対象に量子力学計算を行う工程S48と、第1領域について、第1距離よりも大きく設定され、かつ、結合解離ポテンシャルの変曲点での粒子モデル間の距離に1.0〜2.5Åを加えた第2距離よりも、粒子モデル間の距離が大きいときに、粒子モデル対に対応する分子鎖モデルの粒子モデル間の結合を切断する工程S54を含む。

目的

本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、分子鎖モデルの切断を安定して計算することができる高分子材料のシミュレーション方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

コンピュータを用いて、高分子材料分子鎖の切断を解析するためのシミュレーション方法であって、前記分子鎖に基づいて、複数の粒子モデルと、前記粒子モデル間を結合するボンドモデルとを含む分子鎖モデルを、前記コンピュータに定義する工程、前記高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルを、前記コンピュータに定義する工程、前記セルに、少なくとも一つの前記分子鎖モデルを配置した高分子材料モデルを定義する工程、及び前記コンピュータが、予め定められた条件に基づいて、前記分子鎖モデルの切断を計算するための切断計算工程を含み、前記切断計算工程は、前記分子鎖モデルから選択された一対の粒子モデルと、前記粒子モデル間を連結するボンドモデルとを含む分子モデルを設定する工程、前記分子モデルを用いた量子力学計算に基づいて、エネルギーの増分が小さくなる変曲点を有する結合解離ポテンシャルを求める工程、前記高分子材料モデルを用いて、分子力学計算を行う第1分子力学計算工程、及び前記第1分子力学計算工程後の前記分子鎖モデルについて、前記粒子モデル間の距離が、予め定められた第1距離よりも大きい粒子モデル対が存在するか否かを判断する工程を含み、前記粒子モデル対が存在すると判断された場合、前記粒子モデル対を含む第1領域を対象に量子力学計算を行う量子力学計算工程と、前記量子力学計算工程後の前記第1領域について、前記第1距離よりも大きく設定されかつ前記変曲点での前記粒子モデル間の距離に1.0〜2.5Åを加えた第2距離よりも、前記粒子モデル間の距離が大きいときに、前記粒子モデル対に対応する前記分子鎖モデルの前記粒子モデル間の結合を切断する切断工程とを含むことを特徴とする高分子材料のシミュレーション方法。

請求項2

前記第1距離は、前記変曲点での前記粒子モデル間の距離よりも小さい請求項1記載の高分子材料のシミュレーション方法。

請求項3

前記切断計算工程は、前記第1領域を対象に分子力学計算を行う第2分子力学計算工程をさらに含む請求項1又は2記載の高分子材料のシミュレーション方法。

請求項4

前記切断計算工程は、前記第1分子力学計算工程、前記第2分子力学計算工程、及び、前記量子力学計算工程の計算結果に基づいて、前記高分子材料モデルのエネルギーEt、及び、前記高分子材料モデルに作用する力Ftを含む物理量を計算する工程、並びに前記物理量に基づいて、前記粒子モデルの座標値更新する工程をさらに含み、前記切断工程は、前記座標値から計算された前記粒子モデル間の距離に基づいて、前記粒子モデル間の結合を切断する請求項3記載の高分子材料のシミュレーション方法。

請求項5

前記エネルギーEtは、下記式に基づいて計算される請求項4記載の高分子材料のシミュレーション方法。Et=Ea−Eb+Ecここで、Ea:第1分子力学計算工程で求められた高分子材料モデルのエネルギーEb:第2分子力学計算工程で求められた第1領域のエネルギーEc:量子力学計算工程で求められた第1領域のエネルギー

請求項6

前記力Ftは、下記式に基づいて計算される請求項4又は5記載の高分子材料のシミュレーション方法。Ft=Fa−Fb+Fcここで、Fa:第1分子力学計算工程で求められた高分子材料モデルに作用する力Fb:第2分子力学計算工程で求められた第1領域に作用する力Fc:量子力学計算工程で求められた第1領域に作用する力

技術分野

0001

本発明は、高分子材料解析に役立つ高分子材料のシミュレーション方法に関する。

背景技術

0002

近年、ゴム等の高分子材料の開発のために、高分子材料の性質を、コンピュータを用いて評価するためのシミュレーション方法(数値計算)が種々提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。

0003

この種のシミュレーション方法では、先ず、高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルに、複数の粒子モデルを含む分子鎖モデルを配置した高分子材料モデルが、コンピュータに定義される。高分子材料モデルの粒子モデル間には、粒子モデル間の距離の関数であるポテンシャルが定義されている。このような高分子材料モデルは、上記空間内で分子動力学に基づく緩和計算が行われる。その後、例えば、高分子材料モデルを用いた変形計算が実施され、高分子材料の性能等が解析される。

先行技術

0004

特開2013−195220号公報

発明が解決しようとする課題

0005

実際の高分子材料では、例えば大きな力が作用すると、分子鎖が切断することが知られている。しかしながら、上記シミュレーション方法では、分子鎖モデルを切断する方法が未だ十分に確立されていない。このような分子鎖モデルの切断を、安定して計算できる方法が求められていた。

0006

本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、分子鎖モデルの切断を安定して計算することができる高分子材料のシミュレーション方法を提供することを主たる目的としている。

課題を解決するための手段

0007

本発明は、コンピュータを用いて、高分子材料の分子鎖の切断を解析するためのシミュレーション方法であって、前記分子鎖に基づいて、複数の粒子モデルと、前記粒子モデル間を結合するボンドモデルとを含む分子鎖モデルを、前記コンピュータに定義する工程、前記高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルを、前記コンピュータに定義する工程、前記セルに、少なくとも一つの前記分子鎖モデルを配置した高分子材料モデルを定義する工程、及び前記コンピュータが、予め定められた条件に基づいて、前記分子鎖モデルの切断を計算するための切断計算工程を含み、前記切断計算工程は、前記分子鎖モデルから選択された一対の粒子モデルと、前記粒子モデル間を連結するボンドモデルとを含む分子モデルを設定する工程、前記分子モデルを用いた量子力学計算に基づいて、エネルギーの増分が小さくなる変曲点を有する結合解離ポテンシャルを求める工程、前記高分子材料モデルを用いて、分子力学計算を行う第1分子力学計算工程、及び前記第1分子力学計算工程後の前記分子鎖モデルについて、前記粒子モデル間の距離が、予め定められた第1距離よりも大きい粒子モデル対が存在するか否かを判断する工程を含み、前記粒子モデル対が存在すると判断された場合、前記粒子モデル対を含む第1領域を対象に量子力学計算を行う量子力学計算工程と、前記量子力学計算工程後の前記第1領域について、前記第1距離よりも大きく設定されかつ前記変曲点での前記粒子モデル間の距離に1.0〜2.5Åを加えた第2距離よりも、前記粒子モデル間の距離が大きいときに、前記粒子モデル対に対応する前記分子鎖モデルの前記粒子モデル間の結合を切断する切断工程とを含むことを特徴とする。

0008

本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記第1距離は、前記変曲点での前記粒子モデル間の距離よりも小さいのが望ましい。

0009

本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記切断計算工程は、前記第1領域を対象に分子力学計算を行う第2分子力学計算工程をさらに含むのが望ましい。

0010

本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記切断計算工程は、前記第1分子力学計算工程、前記第2分子力学計算工程、及び、前記量子力学計算工程の計算結果に基づいて、前記高分子材料モデルのエネルギーEt、及び、前記高分子材料モデルに作用する力Ftを含む物理量を計算する工程、並びに前記物理量に基づいて、前記粒子モデルの座標値更新する工程をさらに含み、前記切断工程は、前記座標値から計算された前記粒子モデル間の距離に基づいて、前記粒子モデル間の結合を切断するのが望ましい。

0011

本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記エネルギーEtは、下記式に基づいて計算されるのが望ましい。
Et=Ea−Eb+Ec
ここで、
Ea:第1分子力学計算工程で求められた高分子材料モデルのエネルギー
Eb:第2分子力学計算工程で求められた第1領域のエネルギー
Ec:量子力学計算工程で求められた第1領域のエネルギー

0012

本発明に係る前記高分子材料のシミュレーション方法において、前記力Ftは、下記式に基づいて計算されるのが望ましい。
Ft=Fa−Fb+Fc
ここで、
Fa:第1分子力学計算工程で求められた高分子材料モデルに作用する力
Fb:第2分子力学計算工程で求められた第1領域に作用する力
Fc:量子力学計算工程で求められた第1領域に作用する力

発明の効果

0013

本発明の高分子材料のシミュレーション方法は、コンピュータが、予め定められた条件に基づいて、分子鎖モデルの切断を計算するための切断計算工程を含んでいる。

0014

切断計算工程は、前記分子鎖モデルから選択された一対の粒子モデルと、粒子モデル間を連結するボンドモデルとを含む分子モデルを設定する工程、及び、分子モデルを用いた量子力学計算に基づいて、エネルギーの増分が小さくなる変曲点を有する結合解離ポテンシャルを求める工程を含んでいる。

0015

変曲点は、粒子モデル間の結合と解離との境界と考えることができる。即ち、粒子モデル間の距離が変曲点よりも大きくなると、粒子モデル間で切断、又は、結合次数の減少が生じていると考えることができる。従って、結合解離ポテンシャルは、分子鎖モデルの切断を計算するのに役立つ。

0016

切断計算工程は、高分子材料モデルを用いて、分子力学計算を行う第1分子力学計算工程、及び、第1分子力学計算工程後の分子鎖モデルについて、粒子モデル間の距離が、予め定められた第1距離よりも大きい粒子モデル対が存在するか否かを判断する工程を含んでいる。

0017

粒子モデル対が存在すると判断された場合、粒子モデル対を含む第1領域を対象に量子力学計算を行う量子力学計算工程と、量子力学計算工程後の第1領域について、粒子モデル間の距離が、第1距離よりも大きく設定されかつ変曲点での粒子モデル間に距離に1.0〜2.5Åを加えた第2距離よりも大きいときに、粒子モデル対に対応する分子鎖モデルの粒子モデル間の結合を切断する切断工程とを含んでいる。

0018

粒子モデル対は、分子鎖モデルにおいて、粒子モデル間で切断する可能性が高い部分である。この粒子モデル対を含んだ第1領域を対象に、分子力学計算よりも計算精度の高い量子力学計算が行われている。このため、本発明のシミュレーション方法によれば、粒子モデル間の切断を、実際の分子鎖の切断に近似させることができ、高分子材料を精度良く解析することができる。

0019

また、粒子モデル対の有無は、量子力学計算よりも計算時間が短い分子力学計算に基づいて判断される。このため、本発明のシミュレーション方法によれば、高分子材料モデルの全体領域を対象とした量子力学計算を実施する必要がないため、計算時間を短縮できる。

0020

一般に、量子力学計算で求められる第1領域のエネルギーと、分子力学計算で求められる第1領域のエネルギーとは互いに異なる。また、量子力学計算と分子力学計算とのエネルギーの差異は、粒子モデル間の距離が近いほど大きくなる一方、粒子モデル間の距離が大きいほど小さくなる。発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、粒子モデル間の距離を十分に確保せずに、粒子モデル間の結合を切断すると、切断された粒子モデル間において、前記差異が大きくなり、計算が異常終了しやすくなることを知見した。

0021

本発明では、変曲点での粒子モデル間の距離に1.0〜2.5Åを加えた第2距離よりも、粒子モデル間の距離が大きいときに、分子鎖モデルの粒子モデル間の結合を切断しているため、前記差異が大きくなるのを防ぐことができる。従って、本発明のシミュレーションによれば、分子鎖モデルの切断を安定して計算することができる。

図面の簡単な説明

0022

高分子材料のシミュレーション方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。
ポリイソプレン構造式である。
シミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
分子鎖モデルの一例を示す概念図である。
分子鎖モデル設定工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
(a)〜(c)は、第1ポテンシャルを説明する分子鎖モデルの部分図である。
高分子材料モデルの一例を示す概念図である。
切断計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
高分子材料モデルの伸長シミュレーションを説明する側面図である。
分子モデルの一例を示す図である。
結合解離ポテンシャルの一例を示すグラフである。
結合解離ポテンシャル及び結合ポテンシャルの一例を示すグラフである。
量子力学計算工程の処理手順の一例を示すフローチャートである。
第1領域の一例を示す図である。
(a)は、粒子モデル間で切断する前の分子鎖モデル5一部を示す図、(b)は、粒子モデル間で切断した分子モデルの一部を示す図である。

0023

以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本発明の高分子材料のシミュレーション方法(以下、単に「シミュレーション方法」ということがある)は、コンピュータを用いて、高分子材料の分子鎖の切断を解析するための方法である。

0024

図1は、本発明のシミュレーション方法を実行するコンピュータの一例を示す斜視図である。コンピュータ1は、本体1a、キーボード1b、マウス1c及びディスプレイ装置1dを含んで構成されている。この本体1aには、例えば、演算処理装置(CPU)、ROM、作業用メモリ磁気ディスクなどの記憶装置、及び、ディスクドライブ装置1a1、1a2が設けられている。また、記憶装置には、本実施形態のシミュレーション方法を実行するための処理手順(プログラム)が予め記憶されている。

0025

高分子材料としては、例えば、ゴム、樹脂又はエラストマー等が含まれる。本実施形態の高分子材料は、cis-1,4ポリイソプレン(以下、単に「ポリイソプレン」ということがある。)である。図2は、ポリイソプレンの構造式である。

0026

ポリイソプレンを構成する分子鎖2Aは、メチン基等(例えば、−CH=、>C=)、メチレン基(−CH2−)、及び、メチル基(−CH3)によって構成されるイソプレンモノマーイソプレン分子)3が、重合度nで連結されて構成されている。なお、高分子材料には、ポリイソプレン以外の高分子材料が用いられてもよい。

0027

図3は、シミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態のシミュレーション方法では、先ず、図2に示した分子鎖2Aに基づいて、分子鎖モデルがコンピュータ1に定義される(分子鎖モデル設定工程S1)。図4は、分子鎖モデル5の一例を示す概念図である。

0028

分子鎖モデル5は、全原子モデルとして構成されている。本実施形態の分子鎖モデル5は、一つの硫黄原子架橋されたポリイソプレンとして設定されている。分子鎖モデル5は、複数の粒子モデル6と、粒子モデル6、6間を結合するボンドモデル7とを含んで構成されている。

0029

粒子モデル6及びボンドモデル7は、図2に示した分子鎖2Aのモノマー3をなす単位構造に基づいて連結される。これにより、モノマーモデル9が設定される。このモノマーモデル9は、分子量(重合度)Mnに基づいて連結される。これにより、分子鎖モデル5が設定される。図5は、分子鎖モデル設定工程S1の処理手順の一例を示すフローチャートである。

0030

本実施形態の分子鎖モデル設定工程S1では、先ず、図4に示されるように、粒子モデル6が設定される(工程S11)。粒子モデル6は、後述する分子動力学計算、分子力学計算、及び、量子力学計算に基づいたシミュレーションにおいて、運動方程式質点として取り扱われる。即ち、粒子モデル6は、質量、直径、電荷、又は、初期座標などのパラメータが定義される。

0031

本実施形態の粒子モデル6は、図2に示した分子鎖2Aの炭素原子モデル化した炭素粒子モデル6C、水素原子をモデル化した水素粒子モデル6H、及び、硫黄原子をモデル化した硫黄粒子モデル6Sを含んでいる。これらの粒子モデル6は、コンピュータ1に記憶される。

0032

次に、分子鎖モデル設定工程S1では、ボンドモデル7が設定される(工程S12)。ボンドモデル7は、粒子モデル6、6間を拘束するものである。本実施形態のボンドモデル7は、主鎖7aと側鎖7bとを含んでいる。主鎖7aは、炭素粒子モデル6C、6Cを連結するものである。側鎖7bは、炭素粒子モデル6Cと水素粒子モデル6Hとの間、及び、炭素粒子モデル6Cと硫黄粒子モデル6Sとの間を連結するものである。これらのボンドモデル7は、コンピュータ1に記憶される。

0033

次に、分子鎖モデル設定工程S1では、ボンドモデル7を介して隣り合う粒子モデル6、6間には、相互作用斥力及び引力を含む)が生じさせるポテンシャルが定義される(工程S13)。図4に示されるように、ポテンシャルには、ボンドモデル7を介して隣り合う粒子モデル6、6間に定義される第1ポテンシャルP1と、ボンドモデル7を介さずに隣り合う粒子モデル6、6間に定義される第2ポテンシャルP2とが定義される。

0034

図6(a)〜(c)は、第1ポテンシャルP1を説明する分子鎖モデル5の部分図である。図6(a)〜(b)に示されるように、分子鎖モデル5には、各粒子モデル6、6間の結合長さである結合距離(結合長)r、及び、ボンドモデル7を介して連続する3つの粒子モデル6がなす角度である結合角θが定義されている。さらに、図6(c)に示されるように、分子鎖モデル5には、ボンドモデル7を介して連続する4つの粒子モデル6において、隣り合う3つの粒子モデル6が作る一方の平面8Aと他方の平面8Bとのなす角度ある二面角φが定義される。結合距離r、結合角θ及び二面角φは、分子鎖モデル5に作用する外力又は内力によって変化する。

0035

結合距離r、結合角θ及び二面角φは、下記式(1)で定義される結合ポテンシャルUbond(r)、下記式(2)で定義される結合角ポテンシャルUangle(θ)、及び、下記式(3)で定義される結合二面角ポテンシャルUtorsion(φ)によって設定される。










ここで、各定数及び変数は、次のとおりである。
r:結合距離
r0:平衡距離平衡長)
k1、k2:ばね定数
θ:結合角
θ0:平衡角度
k3:二面角ポテンシャルの強度
N−1:二面角ポテンシャル多項式次数
φ:二面角
An:二面角定数
なお、結合距離r及び平衡距離r0は、各粒子モデル6の中心(図示省略)間の距離として定義される。

0036

各結合ポテンシャルUbond(r)、結合角ポテンシャルUangle(θ)、及び、結合二面角ポテンシャルUtorsion(φ)の各定数については、適宜設定することができる。なお、これらのポテンシャルは、論文(J. Phys. Chem. 94, 8897(1990))に基づいて、分子鎖Mcの構造に応じて設定されるのが望ましい。

0037

第2ポテンシャルP2は、上述したように、ボンドモデル7を介さずに隣り合う粒子モデル6、6間に定義されるものである。本実施形態の第2ポテンシャルP2は、下記式(4)で定義されるLJポテンシャルULJ(rij)である。

0038

ここで、各定数及び変数は、Lennard-Jonesポテンシャルのパラメータであり、次のとおりである。
rij:粒子モデル間の距離
ε:粒子モデル間に定義されるLJポテンシャルの強度
σ:粒子モデルの直径に相当
なお、距離rijは、各粒子モデル6、6の中心(図示省略)間の距離として定義される。

0039

第2ポテンシャルP2は、粒子モデル間の距離rijがσよりも小さくなるほど、粒子モデル6、6間に作用する斥力が大きくなる。また、第2ポテンシャルP2は、粒子モデル間の距離rijがσになるときに最小となり、粒子モデル6、6間に斥力や引力は働かない。さらに、第2ポテンシャルP2は、粒子モデル間の距離rijがσよりも大になると、粒子モデル6、6間に作用する引力が働く。このように、第2ポテンシャルP2は、粒子モデル間の距離rijに応じて、斥力及び引力を定義することができる。

0040

本実施形態では、硫黄粒子モデル6S、6S間、炭素粒子モデル6C、6C間、炭素粒子モデル6Cと水素粒子モデル6Hとの間、硫黄粒子モデル6Sと炭素粒子モデル6Cとの間、及び、硫黄粒子モデル6Sと水素粒子モデル6Hとの間に、それぞれ異なる第2ポテンシャルP2が設定されている。各第2ポテンシャルP2は、上記式(4)の定数がそれぞれ異なっている。なお、各定数は、例えば、論文(J. Phys. Chem. 94, 8897(1990))に基づいて、適宜設定することができる。

0041

次に、本実施形態のシミュレーション方法では、高分子材料の一部に対応する仮想空間であるセルが、コンピュータ1に定義される(工程S2)。図7は、高分子材料モデルの一例を示す概念図である。

0042

本実施形態のセル17は、分子鎖モデル5を配置して、高分子材料モデル16を定義するためのものである。セル17は、互いに向き合う三対の平面17a、17bを有する直方体として定義されている。各平面17a、17bには、周期境界条件が定義されている。このようなセル17は、例えば、一方の平面17aから出て行った分子鎖モデル5の一部が、反対側の平面17bから入ってくるように計算することができる。従って、一方の平面17aと、反対側の平面17bとが連続している(繋がっている)ものとして取り扱うことができる。

0043

セル17の一辺の長さL1、L2、L3は、適宜設定することができる。本実施形態の長さL1は、分子鎖モデル5の慣性半径(図示省略)の2倍以上が望ましい。慣性半径は、分子鎖モデル5の拡がりを示す量である。このようなセル17では、分子動力学計算において、周期境界条件による自己イメージとの衝突が起こりにくいため、分子鎖モデル5の空間的拡がりを適切に計算することができる。さらに、セル17の大きさは、例えば1気圧で安定な体積に設定される。このようなセル17は、高分子材料の少なくとも一部の体積を定義することができる。セル17は、コンピュータ1に記憶される。

0044

次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1に、高分子材料モデルが定義される(工程S3)。高分子材料モデル16は、コンピュータ1上に定義されたセル17に、少なくとも一つの分子鎖モデル5を配置することによって定義される。セル17に配置される分子鎖モデル5の個数については、適宜設定することができる。本実施形態の分子鎖モデル5の個数としては、例えば、1個以上、好ましくは30個以上に設定されるのが望ましい。

0045

本実施形態では、分子鎖モデル5が配置されたセル17を用いて、分子動力学( Molecular Dynamics : MD )計算による緩和計算が実施される。これにより、高分子材料モデル16が設定される。

0046

本実施形態の分子動力学計算では、例えば、セル17について所定の時間、分子鎖モデル5が古典力学に従うものとして、ニュートンの運動方程式が適用される。そして、各時刻での粒子モデル6の動きが、単位時間ステップ毎に追跡される。このような構造緩和の計算は、例えば(株)JSOL社製のソフトマテリアル総合シミュレーター(J−OCTA)に含まれるCOGNACを用いて処理することができる。

0047

分子動力学計算では、セル17において、圧力及び温度が一定、又は体積及び温度が一定に保たれる。また、分子動力学計算では、分子鎖モデル5の人為的な初期配置が十分に排除されたとみなせるまで行われる。これにより、工程S3では、実際の高分子材料の分子運動に近似させて、分子鎖モデル5の初期配置を精度よく緩和することができる。このような緩和計算を経て、高分子材料モデル16が定義される。高分子材料モデル16は、コンピュータ1に記憶される。

0048

次に、本実施形態のシミュレーション方法では、コンピュータ1が、予め定められた条件に基づいて、分子鎖モデル5の切断を計算する(切断計算工程S4)。本実施形態の切断計算工程S4では、図7に示した高分子材料モデル16を、一軸方向(例えば、Z軸方向)に伸長させる伸長シミュレーションが実施される。

0049

本実施形態の伸長シミュレーションでは、分子力学計算(Molecular Mechanics : MM)、及び、量子力学計算(Quantum Mechanics : QM)を用いて、単位時間ステップ毎に、高分子材料モデル16の伸長が計算される。そして、単位時間ステップを進展させることによって、予め定められた長さ(上限値)まで伸長した高分子材料モデル16が計算される。この高分子材料モデル16の伸長によって、分子鎖モデル5は、粒子モデル6、6間が離間する。この粒子モデル6、6間の離間に伴って、分子鎖モデル5が切断される状態が計算される。分子力学計算は、分子動力学計算と同様の上記ソフトウェアによって計算されうる。

0050

量子力学計算では、分子鎖モデル5が、原子核電子とに基づく相互作用に従うものとして、シミュレーションの単位時間ステップ毎に、粒子モデル6の電子状態と動きとが追跡される。従って、量子力学計算は、分子力学計算に比べて計算精度が高い。このような量子力学計算は、Gaussian社製の量子化学計算プログラムGaussian03、又は、Gaussian09を用いて処理することができる。

0051

本実施形態では、高分子材料モデル16の全体領域を対象に、分子力学計算を用いて、伸長シミュレーションが実施される。そして、分子鎖モデル5のうち粒子モデル6、6間で切断しそうな部分のみを対象に、量子力学計算を用いて、分子鎖モデル5の切断が詳細に計算される。従って、本実施形態の切断計算工程S4では、例えば、高分子材料モデル16の全体領域を対象に量子力学計算を実施する場合に比べて、計算時間を大幅に短縮することができる。図8は、切断計算工程S4の処理手順の一例を示すフローチャートである。

0052

本実施形態の切断計算工程S4では、先ず、高分子材料モデル16の伸長シミュレーションを実施するための初期条件が設定される(工程S41)。図9は、高分子材料モデル16の伸長シミュレーションを説明する側面図である。初期条件としては、高分子材料モデル16のポアソン比に基づいて、各単位時間ステップでの高分子材料モデル16の長さL1、L2、L3が定義される。これにより、切断計算工程S4では、高分子材料モデル16のポアソン比に基づいて、高分子材料モデルを一軸方向(例えば、Z軸方向)に伸長させるシミュレーションを実施することができる。

0053

高分子材料モデル16の一軸方向の伸長速度Vaについては、解析対象の高分子材料や、シミュレーション条件に応じて適宜設定することができる。本実施形態の伸長速度Vaは、例えば、200m/秒〜300m/秒に設定されている。これにより、本実施形態の切断計算工程S4では、高分子材料が高速に引き伸ばされた状態を計算することができる。これらの初期条件は、コンピュータ1に記憶される。

0054

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、分子鎖モデル5から選択された一対の粒子モデル6と、粒子モデル6、6間を連結するボンドモデル7とを含む分子モデルが設定される(工程S42)。図10は、分子モデル11の一例を示す図である。分子モデルは、後述する結合解離ポテンシャルを求める際に用いられる。

0055

本実施形態の分子モデル11は、分子鎖モデル5において、一対の粒子モデル6、6の全ての組み合わせが設定される。本実施形態では、硫黄粒子モデル6S、6Sを結合した分子モデル11A、炭素粒子モデル6C、6Cを結合した分子モデル(図示省略)、炭素粒子モデル6Cと水素粒子モデル6Hとを結合した分子モデル(図示省略)、硫黄粒子モデル6Sと炭素粒子モデル6Cとを連結した分子モデル(図示省略)、及び、硫黄粒子モデル6Sと水素粒子モデル6Hとを連結した分子モデル(図示省略)が設定される。図10は、硫黄粒子モデル6S、6Sを結合した分子モデル11Aを代表して示している。

0056

本実施形態の分子モデル11は、一対の粒子モデル6、6(本実施形態では、硫黄粒子モデル6S、6S)と、粒子モデル6、6間を連結するボンドモデル7とを含んでいる。なお、各粒子モデル6には、粒子モデル6でモデル化された原子原子価(例えば、硫黄原子の場合:2)から、粒子モデル6の結合数(例えば、1)を減じた数の水素粒子モデル6H(例えば、1個)が、ボンドモデル7を介して連結される。これにより、分子モデル11は、量子力学計算において、安定した構造を維持することができる。このような方法に基づいて、上記した各分子モデル11がそれぞれ設定される。これらの分子モデル11は、コンピュータ1に記憶される。

0057

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、分子モデル11を用いた量子力学計算に基づいて、エネルギーの増分が小さくなる変曲点を有する結合解離ポテンシャルが求められる(工程S43)。結合解離ポテンシャルPu(図示省略)は、結合する粒子モデル6の種類に応じてそれぞれ異なる。本実施形態では、工程S43で求められた分子モデル11を用いて、硫黄粒子モデル6S、6S間、炭素粒子モデル6C、6C間、炭素粒子モデル6Cと水素粒子モデル6Hとの間、硫黄粒子モデル6Sと炭素粒子モデル6Cとの間、及び、硫黄粒子モデル6Sと水素粒子モデル6Hとの間について、それぞれ異なる結合解離ポテンシャルPuが求められる。

0058

工程S43では、先ず、各分子モデル11の粒子モデル6、6間に、量子力学計算に使用する理論及び基底関数が定義される。本実施形態で定義される理論としては、例えば、密度汎関数法汎関数:B3LYP)が定義される。また、基底関数としては、例えば、基底関数(6−31G(d))が定義される。これらの量子力学計算に使用する理論及び基底関数は、上記した量子力学計算用のプログラムを用いることによって定義することができる。これらの理論及び基底関数は、コンピュータ1に記憶される。

0059

次に、工程S43では、分子モデル11を用いた量子力学計算を行うシミュレーションによって、各粒子モデル6、6間の結合解離ポテンシャルPuが求められる。図10に示されるように、分子モデル11では、上記理論及び基底関数により、原子核と電子とに基づく相互作用のバランスによって、粒子モデル6、6の平衡距離r0が決定されている。本実施形態の工程S43では、例えば、粒子モデル6、6が当接した状態から、粒子モデル6、6間の距離rが平衡距離r0よりも大(例えば、4.5Å)になるまでの間、粒子モデル6、6を単位ステップ毎に0.1Åずつ離間させる量子力学計算が実施される。また、本実施形態の量子力学計算では、非制限密度汎関数法に基づいて、分子モデル11の全エネルギーが、単位ステップ毎に計算される。そして、粒子モデル6、6間の距離rと、分子モデル11の全エネルギーとの関係に基づいて、結合解離ポテンシャルPuを求めることができる。図11は、結合解離ポテンシャルPuの一例を示すグラフである。平衡距離r0及び距離rは、粒子モデル6、6の中心6c、6c(図10に示す)間の距離として定義される。

0060

図11のグラフにおいて、結合解離ポテンシャルPuは、粒子モデル6、6間の距離rが平衡距離r0(本実施形態では、2.1)よりも小さくなるほど、分子モデル11の全エネルギー(粒子モデル6、6間の斥力)が大きくなる。また、結合解離ポテンシャルPuは、距離rが2.1になるときにエネルギーが最小となり、粒子モデル6、6間に斥力や引力は作用しない。さらに、結合解離ポテンシャルPuは、距離rが平衡距離r0よりも大きくなるほど、分子モデル11の全エネルギー(粒子モデル6、6間の引力)が大きくなる。このように、結合解離ポテンシャルPuは、距離rに応じて、斥力及び引力を定義することができる。

0061

結合解離ポテンシャルPuは、粒子モデル6、6間の距離rが平衡距離r0よりも大きい領域において、分子モデル11の全エネルギーの増分が小さくなる変曲点13を有している。変曲点13は、変曲点13よりも距離rが大きいと予想される領域、及び、変曲点13よりも距離rが小さいと予想される領域において、結合解離ポテンシャルPuに近似する一対の直線15a、15bの交点で特定することができる。

0062

変曲点13よりも距離rが小さい領域Tbでは、変曲点13よりも粒子モデル6、6間の距離rが大きい領域Taに比べて、分子モデル11の全エネルギーの増分が大きい。これは、変曲点13よりも小さい領域Tbにおいて、粒子モデル6、6間の結合が強固に維持されることを示している。また、変曲点13よりも距離rが大きい領域Taでは、粒子モデル6、6間で切断、又は、結合次数の減少が生じているため、分子モデル11の全エネルギーの増分が小さくなっている。従って、変曲点13は、粒子モデル6、6間の結合と解離との境界と考えることができる。

0063

工程S43では、上記した各分子モデル11の全てについて、量子力学計算がそれぞれ実施される。これにより、硫黄粒子モデル6S、6S間の結合解離ポテンシャルPu、炭素粒子モデル6C、6C間の結合解離ポテンシャルPu、炭素粒子モデル6Cと水素粒子モデル6Hとの間の結合解離ポテンシャルPu、硫黄粒子モデル6Sと炭素粒子モデル6Cとの間の結合解離ポテンシャルPu、及び、硫黄粒子モデル6Sと水素粒子モデル6Hとの間の結合解離ポテンシャルPuがそれぞれ求められる。各結合解離ポテンシャルPuは、コンピュータ1に記憶される。

0064

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、分子力学計算で用いられる結合ポテンシャルPnが定義される(工程S44)。図4に示されるように、結合ポテンシャルPnは、分子鎖モデル5において、ボンドモデル7を介して隣り合う粒子モデル6、6間に定義されるものである。

0065

本実施形態の結合ポテンシャルPnとしては、結合解離ポテンシャルPu(図示省略)に近似するポテンシャルが定義される。このような結合ポテンシャルPnは、量子力学計算でのポテンシャルに近似するため、分子力学計算の結果と量子力学計算の結果との差異を、最小限にすることができる。図12は、結合解離ポテンシャルPu及び結合ポテンシャルPnの一例を示すグラフである。

0066

本実施形態の工程S44は、フックの法則に基づいた調和振動子型の関数を、結合解離ポテンシャルPuに近似させている。これにより、結合ポテンシャルPnが求められる。調和振動子型の関数は、下記式(5)で定義される。

0067

ここで、
V:分子モデルのエネルギー
k:バネ定数
r:粒子モデル間の距離
r0:粒子モデル間の平衡距離

0068

上記式(5)の調和振動子型の関数は、粒子モデル6、6間の距離rと、分子モデルのエネルギーとの関係を示す二次関数である。本実施形態では、変曲点13よりも距離rが小さい領域Tb(図11に示す)において、調和振動子型の関数を、結合解離ポテンシャルPuに近似させることによって、結合ポテンシャルPnを求めている。従って、本実施形態の結合ポテンシャルPnは、粒子モデル6、6間で切断、又は、結合次数の減少が生じる前の結合解離ポテンシャルPuに近似するものである。

0069

調和振動子型の関数を、結合解離ポテンシャルPuに近似させる方法としては、例えば、最小二乗法を用いることができる。このような結合ポテンシャルPnでは、複雑な結合解離ポテンシャルPuを、簡単な調和振動子型の関数で表すことができる。

0070

工程S44では、結合解離ポテンシャルPuのエネルギー(分子モデル11のエネルギー)の下限値(即ち、平衡距離r0)から、エネルギーの上限値の50%〜80%までの範囲において、調和振動子型の関数を、結合解離ポテンシャルPuに近似させるのが望ましい。これにより、結合ポテンシャルPnは、変曲点13よりも距離r0が小さい領域Tb(図11に示す)において、結合解離ポテンシャルPuに精度良く近似することができる。

0071

なお、調和振動子型の関数に近似させる範囲において、結合解離ポテンシャルPuのエネルギーの上限値の80%を超えると、変曲点13よりも距離が大きい領域Ta(図11に示す)を含めて、調和振動子型の関数を近似させるおそれがある。逆に、結合解離ポテンシャルPuのエネルギーの上限値の50%未満であると、結合解離ポテンシャルPuに近似させる範囲が小さくなり、結合解離ポテンシャルPuに精度良く近似できないおそれがある。このような観点より、調和振動子型の関数に近似させる範囲において、より好ましくは、結合解離ポテンシャルPuのエネルギーの上限値の70%以下であり、より好ましくは60%以上である。

0072

工程S44では、硫黄粒子モデル6S、6S間の結合解離ポテンシャルPu、炭素粒子モデル6C、6C間の結合解離ポテンシャルPu、炭素粒子モデル6Cと水素粒子モデル6Hとの間の結合解離ポテンシャルPu、硫黄粒子モデル6Sと炭素粒子モデル6Cとの間の結合解離ポテンシャルPu、及び、硫黄粒子モデル6Sと水素粒子モデル6Hとの間の結合解離ポテンシャルPuについて、結合ポテンシャルPnがそれぞれ求められる。

0073

工程S44では、図4に示した分子鎖モデル5において、ボンドモデル7を介して隣り合う粒子モデル6、6間に、第1ポテンシャルP1に代えて、結合ポテンシャルPnがそれぞれ定義される。なお、ボンドモデル7を介さずに隣り合う粒子モデル6、6間に定義されている第2ポテンシャルP2については、維持される。

0074

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、高分子材料モデル16(図7に示す)を伸長させる変形計算が実施される(伸長工程S45)。本実施形態では、初期条件として設定されたポアソン比に基づいて、高分子材料モデル16の変形が計算される。

0075

伸長工程S45では、現在の単位時間ステップにおいて、一軸方向に伸長した高分子材料モデル16が計算される。この高分子材料モデル16の伸長により、図7に示した分子鎖モデル5も一軸方向に引き伸ばされ、ボンドモデル7を介して隣り合う粒子モデル6、6間の距離r(図4に示す)の少なくとも一部が大きくなる。

0076

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、伸長工程S45で変形した高分子材料モデル16に対して、分子力学計算(Molecular Mechanics : MM)が実施される(第1分子力学計算工程S46)。第1分子力学計算工程S46では、高分子材料モデル16のエネルギーEaと、高分子材料モデル16に作用する力Faとを含む物理量が計算される。このようなエネルギーEaと、力Faとを含む物理量は、コンピュータ1に記憶される。

0077

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、第1分子力学計算工程S46後の分子鎖モデル5について、ボンドモデル7を介して隣り合う粒子モデル6、6間の距離r(図4に示す)が、予め定められた第1距離Laよりも大きい粒子モデル対(離反粒子モデル部)21が存在するか否かが判断される(工程S47)。

0078

工程S47では、セル17に配置されている全ての分子鎖モデル5について、ボンドモデル7を介して隣り合う粒子モデル6、6間の距離rが計算される。なお、工程S47では、ボンドモデル7で拘束されていない粒子モデル6、6間の距離は計算されない。そして、粒子モデル6、6間の距離rが、第1距離Laよりも大きい一対の粒子モデル6、6及びボンドモデル7を、粒子モデル対21として判断される。

0079

本実施形態の第1距離Laは、図12に示した結合解離ポテンシャルPuの変曲点13での粒子モデル6、6間の距離r(Ln)よりも小に設定されている。また、第1距離Laは、粒子モデル6、6の平衡距離r0よりも大に設定されている。上述したように、変曲点13は、粒子モデル6、6間の結合と解離との境界点と考えることができる。このため、第1距離Laよりも大きく離間した粒子モデル対21では、粒子モデル6、6間で切断する可能性が高いと考えることができる。従って、工程S47では、粒子モデル6、6間で切断する可能性が高い粒子モデル対21(図14に示す)の有無を判断することができる。

0080

また、第1距離Laについては、変曲点13での距離rよりも小さい値であれば、適宜設定することができる。本実施形態では、図12に示されるように、結合解離ポテンシャルPuと、結合ポテンシャルPnとの交点18での距離rを、第1距離Laとして求めている。これにより、量子力学計算よりも計算時間を短縮しうる分子力学計算に基づいて、粒子モデル対21の存在の有無を、精度良く判断することができる。

0081

工程S47において、粒子モデル対21が存在すると判断された場合(工程S47で、「Y」)、粒子モデル対21のみを対象に、次の量子力学計算工程S48が実施される。他方、粒子モデル対21が存在しないと判断された場合(工程S47で、「N」)、後述する工程S52が実施される。

0082

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、粒子モデル対21を含む第1領域22を対象に、量子力学計算が行われる(量子力学計算工程S48)。図13は、量子力学計算工程S48の処理手順の一例を示すフローチャートである。

0083

本実施形態の量子力学計算工程S48では、先ず、粒子モデル対21を含む第1領域22が設定される(工程S481)。図14は、第1領域22の一例を示す図である。第1領域22は、高分子材料モデル16の分子鎖モデル5から、粒子モデル対21を抜き出した非全体領域である。なお、高分子材料モデル16に、複数の粒子モデル対21が存在する場合、全ての粒子モデル対21が、第1領域22に含められる。

0084

また、粒子モデル対21の各粒子モデル6には、粒子モデル6でモデル化された原子の原子価(例えば、炭素原子の場合:4)から、粒子モデル6の結合数(例えば、1)を減じた数の水素粒子モデル6H(例えば、3個)が、ボンドモデル7を介して連結される。これにより、量子力学計算において、安定した構造を有する粒子モデル対21を設定することができる。

0085

次に、本実施形態の量子力学計算工程S48では、粒子モデル対21の粒子モデル6に、量子力学計算に使用する理論及び基底関数が定義される(工程S482)。工程S482では、粒子モデル対21の粒子モデル6、6間に設定されている結合ポテンシャルPnを無効にして、量子力学計算に使用する理論及び基底関数が定義される。なお、量子力学計算に使用する理論及び基底関数については、上述のとおりである。

0086

次に、本実施形態の量子力学計算工程S48では、初期条件として設定されたポアソン比に基づいて、第1領域22のみを対象に、量子力学計算が実施される(工程S483)。上述したように、量子力学計算では、原子核と電子とに基づく相互作用に従うものとして、シミュレーションの単位時間ステップ毎に、粒子モデル6の電子状態と動きとが追跡される。従って、工程S483では、分子力学計算に比べて、第1領域22及び粒子モデル対21の伸長を、高い精度で計算することができる。また、工程S483では、高分子材料モデル16から抜き出された第1領域22のみを対象に、量子力学計算が実施されている。このため、図7に示した高分子材料モデル16の全体領域を対象に量子力学計算が実施される場合に比べて、計算時間を大幅に短縮することができる。

0087

工程S483では、第1領域22のエネルギーEcと、第1領域22に作用する力Fcとを含む物理量が計算される。このようなエネルギーEc及び力Fcを含む物理量は、コンピュータ1に記憶される。

0088

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、第1領域22を対象に分子力学計算が行われる(第2分子力学計算工程S49)。図14に示されるように、第1領域22は、伸長工程S45で変形した高分子材料モデル16の分子鎖モデル5から、粒子モデル対21を抜き出した非全体領域である。従って、第2分子力学計算工程S49は、第1領域22のエネルギーEbと、第1領域22に作用する力Fbとを含む物理量が計算される。このようなエネルギーEbと力Fbとを含む物理量は、後述するONIOM法に従って、高分子材料モデル16のエネルギーEt、及び、高分子材料モデル16に作用する力Ftを求めるのに利用される。エネルギーEbと力Fbとを含む物理量は、コンピュータ1に記憶される。また、第2分子力学計算工程S49では、粒子モデル対21の粒子モデル6、6間に、結合ポテンシャルPnが設定される。

0089

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、高分子材料モデル16のエネルギーEtが計算される(工程S50)。本実施形態のエネルギーEtは、ONIOM( Our own N-layered Integrated molecular Orbital and molecular Mechanics ) 法に従って、下記式(6)に基づいて計算される。
Et=Ea−Eb+Ec … (6)
ここで、
Ea:第1分子力学計算工程で求められた高分子材料モデルのエネルギー
Eb:第2分子力学計算工程で求められた第1領域のエネルギー
Ec:量子力学計算工程で求められた第1領域のエネルギー

0090

上記式(6)において、第1分子力学計算工程S46で求められたエネルギーEaは、高分子材料モデル16の全体領域のエネルギーである。また、第2分子力学計算工程S49で求められたエネルギーEbは、第1領域22でのエネルギーである。これらのエネルギーEa、Ebは、分子力学計算で求められているため、量子力学計算に比べて、計算精度が低い。量子力学計算工程S48で求められたエネルギーEcは、第1領域22のエネルギーである。このエネルギーEcは、量子力学計算で求められているため、分子力学計算に比べて、計算精度が高い。

0091

ONIOM法は、計算精度の異なる階層構造を組み合わせることによって最適解を得る方法である。本実施形態では、計算精度が比較的低い高分子材料モデルのエネルギーEaのうち、第1領域のエネルギーEbを、計算精度が比較的高い第1領域のエネルギーEcに置き換えることによって、高分子材料モデル16のエネルギーEtを求めている。このようなエネルギーEtは、分子鎖モデル5の切断による影響を詳細に考慮することができるため、計算精度を高めることができる。また、本実施形態では、例えば、量子力学計算に基づいた高分子材料モデル16の全体領域のエネルギーを求めることなく、高分子材料モデル16のエネルギーEtを求めることができるため、計算時間を短縮することができる。エネルギーEtは、コンピュータ1に記憶される。

0092

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、高分子材料モデル16に作用する力Ftが計算される(工程S51)。本実施形態の力Ftは、高分子材料モデルのエネルギーEtと同様に、ONIOM法に従って、下記式(7)に基づいて計算される。
Ft=Fa−Fb+Fc … (7)
ここで、
Fa:第1分子力学計算工程で求められた高分子材料モデルに作用する力
Fb:第2分子力学計算工程で求められた第1領域に作用する力
Fc:量子力学計算工程で求められた第1領域に作用する力

0093

本実施形態では、計算精度が比較的低い高分子材料モデル16の力Faのうち、第1領域22の力Fbを、計算精度が比較的高い第1領域の力Fcに置き換えることによって、高分子材料モデル16の力Ftを求めている。このような力Ftは、分子鎖モデル5の切断による影響を詳細に考慮することができるため、計算精度を高めることができる。また、本実施形態では、量子力学計算に基づいた高分子材料モデル16の全体領域に作用する力を計算する必要がないため、計算時間を短縮することができる。この力Ftは、コンピュータ1に記憶される。

0094

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、現在の単位時間ステップにおいて、分子鎖モデル5の各粒子モデル6の座標値及び速度が更新される(工程S52)。本実施形態では、ONIOM法で計算されたエネルギーEt及び力Ftを含む物理量から加速度を求める。そして、エネルギーEt及び力Ftを含む物理量から求められた加速度に基づいて、第1分子力学計算工程S46が実施される前の分子鎖モデル5の各粒子モデル6の座標値から、各粒子モデル6の新たな座標値(即ち、次の単位時間ステップで用いられる座標値)が計算される。

0095

このような各粒子モデル6の座標値は、切断される可能性の高い第1領域22を量子力学計算した座標値が含められているため、分子鎖モデル5の切断を精度よく解析することができる。また、切断される可能性の低い部分については、比較的精度の低い分子力学計算が実施されるため、計算時間を短縮することができる。

0096

本実施形態では、第1分子力学計算工程S46、及び、第2分子力学計算工程S49において、結合解離ポテンシャルPuに近似する結合ポテンシャルPnが定義されている。このため、第2分子力学計算工程S49後の各粒子モデル6に作用する力と、量子力学計算工程S48後の各粒子モデル6に作用する力との間に生じる差異を最小限に抑えることができる。従って、ONIOM法に基づく、座標値の計算精度を高めることができる。また、各粒子モデル6の速度は、分子鎖モデル5の各粒子モデル6の座標値、高分子材料モデル16のエネルギーEt、及び、高分子材料モデル16に作用する力Ftに基づいて計算される。

0097

なお、上述した工程S47において、粒子モデル対21が存在しないと判断された場合(工程S47で、「N」)は、第1領域22を対象とした量子力学計算(工程S48)及び分子力学計算(工程S49)が実施されていない。この場合、工程S52では、高分子材料モデル16を対象とした分子力学計算によって求められた粒子モデル6の座標値、第1分子力学計算工程で求められたエネルギーEa、及び、第1分子力学計算工程で求められた力Faから、座標値及び速度が更新される。

0098

次に、切断計算工程S4では、量子力学計算工程S48(本実施形態では量子力学計算工程S48及び第2分子力学計算工程S49)が行われた後の第1領域22について、粒子モデル6、6間の距離rが、予め定められた第2距離Lbよりも大きい粒子モデル対21が存在するか否かが判断される(工程S53)。工程S53では、工程S52で更新された分子鎖モデル5の各粒子モデル6の座標値に基づいて、第1領域22に配置されている全ての粒子モデル対21について、粒子モデル6、6間の距離rが計算される。

0099

本実施形態の第2距離Lbは、粒子モデル6、6間で切断される粒子モデル対21の有無を判断するためのパラメータである。図12に示されるように、本実施形態の第2距離Lbは、第1距離Laよりも大きく設定されている。さらに、第2距離Lbは、変曲点13での粒子モデル間の距離Ln以上に設定されている。上述したように、変曲点13は、粒子モデル6、6(図4に示す)間の結合と解離との境界点と考えることができる。このため、粒子モデル6、6間の距離rが、第2距離Lbよりも大きい場合、粒子モデル6、6間で切断すると判断できる。

0100

図15(a)は、粒子モデル6、6間で切断する前の分子鎖モデル5の一部を示す図である。図15(b)は、粒子モデル6、6間で切断した分子鎖モデル5の一部を示す図である。後述の切断工程S54では、切断対象の粒子モデル対21に対応する分子鎖モデル5の粒子モデル6、6間の結合が切断される。切断の定義は、先ず、粒子モデル6、6間を拘束しているボンドモデル7(図15(a)に示す)を無効に設定する。次に、切断された粒子モデル6、6間に定義されていた結合ポテンシャルPn(図15(a)に示す)が無効とされ、図15(b)に示されるように、ボンドモデル7を介さずに隣り合う粒子モデル6、6間に、第2ポテンシャルP2が定義される。

0101

さらに、切断された各粒子モデル6、6には、例えば、粒子モデル6でモデル化された原子の原子価(例えば、炭素原子の場合:4)から、粒子モデル6の結合数(例えば、3)を減じた数の水素粒子モデル6H(例えば、1個)が、ボンドモデル7を介して連結される。

0102

このような切断の定義により、分子鎖モデル5の粒子モデル6、6間の切断を計算することができるが、シミュレーションが異常終了しやすいという問題がある。発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、粒子モデル6、6(例えば、炭素粒子モデル6C、6C)間の距離を十分に確保せずに切断すると、切断された粒子モデル6、6間において、量子力学計算で求められる第1領域22のエネルギーと、分子力学計算で求められる第1領域22のエネルギーとの差異が大きくなり、異常終了が発生しやすくなることを知見した。

0103

量子力学計算でのエネルギーと、分子力学計算でのエネルギーとは互いに異なる。また、量子力学計算でのエネルギーと、分子力学計算でのエネルギーとの差異は、粒子モデル6、6間の距離が近いほど大きくなる一方、粒子モデル6、6間の距離が大きいほど小さくなる。発明者らは、種々検証した結果、切断された各粒子モデル6、6に新たに連結された水素粒子モデル6H、6H間の距離が平衡距離r0よりも小さくなり、水素粒子モデル6H、6H間の第2ポテンシャルP2の斥力(即ち、上記式(4)の12乗の項)が過度に大きくなることで異常終了が発生すると解明した。

0104

このような検証結果に基づいて、図12に示されるように、本実施形態の第2距離Lbは、変曲点13での粒子モデル6、6間の距離Lnに1.0〜2.5Åを加えた値に設定されている。これにより、後述の切断工程S54において、切断対象の粒子モデル6、6間の距離を十分に確保したのちに、粒子モデル6、6間で切断されるため、新たに連結された水素粒子モデル6H、6H(図15(b)に示す)も大きく離間させることができる。従って、本実施形態では、前記エネルギーの差異の増大に起因する計算の異常終了を確実に防ぐことができるため、分子鎖モデル5の切断を安定して計算することができる。

0105

なお、第2距離Lbにおいて、変曲点13での前記距離Lnに加える値が1.0Å未満であると、量子力学計算と分子力学計算とのエネルギーの差異の増大を防げないおそれがある。逆に、変曲点13での前記距離Lnに加える値が2.5Åを超えると、量子力学計算が不安定になって異常終了しやすくなる。さらに、第1領域22に含まれる粒子モデル対が切断されるまでの時間が長くなるため、量子力学計算での計算負荷が増大しやすくなる。このような観点より、変曲点13での前記距離Lnに加える値は、好ましくは1.5以上であり、また、好ましくは、2.0以下である。

0106

工程S53において、粒子モデル6、6間の距離rが第2距離Lb以上の粒子モデル対21が存在すると判断された場合(工程S53で、「Y」)、次の切断工程S54が実施される。他方、全ての粒子モデル対21において、粒子モデル6、6間の距離が第2距離Lb未満であると判断された場合(工程S53で、「N」)、高分子材料モデル16が予め定められた条件まで伸長したか否かを判断する後述の工程S55が実施される。

0107

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、切断対象の粒子モデル対21に対応する分子鎖モデル5の粒子モデル6、6間の結合が切断される(切断工程S54)。粒子モデル6、6間の切断の定義については、上述の手順で行われる。切断工程S54では、工程S52で更新された座標値に基から計算された粒子モデル6、6間の距離に基づいて、粒子モデル6、6間の結合が切断される。更新された座標値は、量子力学計算で計算された座標値が反映されているため、分子鎖モデル5の切断を精度よく解析することができる。

0108

このように、本実施形態のシミュレーション方法では、粒子モデル対21を含んだ第1領域22を対象として、分子力学計算よりも計算精度の高い量子力学計算の結果に基づき、粒子モデル6、6間を切断している。従って、本実施形態では、分子鎖モデル5の切断を、実際の分子鎖の切断に近似させることができ、高分子材料を精度良く解析するのに役立つ。

0109

また、量子力学計算が実施される粒子モデル対21の有無は、工程S47において、量子力学計算よりも計算時間が短い分子力学計算の結果に基づいて判断される。このため、高分子材料モデル16の全体領域を対象とした量子力学計算を実施する必要がない。従って、本実施形態のシミュレーション方法では、計算時間を短縮することができる。さらに、本実施形態では、第2距離Lbが上記範囲に設定されるため、計算の異常終了を防ぐことができ、分子鎖モデル5の切断を安定して計算することができる。

0110

次に、本実施形態の切断計算工程S4では、高分子材料モデル16が、予め定められた条件まで伸長したか否かが判断される(工程S55)。工程S55では、高分子材料モデル16が上限値まで伸長したと判断された場合(工程S55で、「Y」)、次の工程S5が実施される。他方、高分子材料モデル16が上限値まで伸長していないと判断された場合は(工程S55で、「N」)、単位時間ステップを一つ進展させて(工程S56)、工程S45〜工程S55が再度実施される。これにより、切断計算工程S4では、高分子材料モデルを上限値まで伸長させて、分子鎖モデル5の切断を解析することができる。

0111

次に、図3に示されるように、本実施形態のシミュレーション方法では、高分子材料モデル16の物理量が、許容範囲内であるか否かが判断される(工程S5)。この工程S5では、高分子材料モデル16の物理量が許容範囲内であると判断された場合(工程S5で、「Y」)、高分子材料モデル16に基づいて、高分子材料が製造される(工程S6)。他方、高分子材料モデル16の物理量が、許容範囲外と判断された場合は(工程S5で、「N」)、分子鎖モデル5の諸条件が変更されて(工程S7)、工程S1〜工程S5が再度実施される。このように、本実施形態では、高分子材料モデル16の物理量が許容範囲内になるまで、分子鎖モデル5の諸条件が変更されるため、所望の性能を有する高分子材料を、効率よく設計することができる。

0112

以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。

0113

図3及び図5に示した処理手順に従って、分子鎖モデル及び高分子モデルが定義され、分子鎖モデルを切断する切断計算工程が実施された(実施例、比較例)。

0114

実施例及び比較例の切断計算工程では、図8及び図13に示した処理手順に従って、高分子材料モデルに基づいて分子力学計算を行う工程、粒子モデル間の距離が第1距離Laよりも 大きい離反粒子モデル部を含む第1領域を対象に、量子力学計算を行う工程、及び、第1領域を対象に分子力学計算を行う工程が実施され、上記式(6)、(7)に基づいて、高分子材料モデルのエネルギーEt及び高分子材料モデルに作用する力Ftが計算された。

0115

実施例及び比較例の分子力学計算を行う工程では、分子鎖モデルの粒子モデル間に、結合解離ポテンシャルに近似する結合ポテンシャルが定義された。さらに、実施例及び比較例の切断工程では、粒子モデル間の距離が第2距離Lbよりも大きいときに、粒子モデル対に対応する前記分子鎖モデルの粒子モデル間の結合が切断された。そして、高分子材料モデルが下記のセル変形率の上限値になるまでの計算時間が測定された。

0116

実施例1〜4の第2距離Lbは、結合解離ポテンシャルの変曲点での粒子モデル間の距離に1.0〜2.5Åを加えた値に設定された。他方、比較例1の第2距離は、結合解離ポテンシャルの変曲点での粒子モデル間の距離に0.5Åを加えた値に設定された。また、比較例2の第2距離は、結合解離ポテンシャルの変曲点での粒子モデル間の距離に3.0Åを加えた値に設定された。

0117

なお、粒子モデル間に設定されるポテンシャルやソフトウェアは、明細書に記載のとおりである。共通仕様は、次のとおりである。
コンピュータ:SGI社のワークステーション
CPUのコア数:12コア
搭載メモリ:64GB
高分子モデル:
セルの1辺の長さL1:2.3nm
分子鎖モデルの個数:1個
分子鎖モデル:
ポリイソプレン(イソプレン分子:100重合)に硫黄(1原子)を架橋
粒子モデル(原子)の個数:1301個
変曲点での距離Ln:3.09Å
第1距離La:2.69Å
伸長シミュレーション:
伸長方向:一軸方向(Z軸方向)
伸長速度Va:250m/sec
セル変形率の上限値:1100%
テスト結果を、表1に示す。

0118

実施例

0119

テストの結果、実施例では、セル変形率が1100%になるまで伸長することができた。他方比較例では、セル変形率が700%の時点で異常終了した。また、実施例のうち、結合解離ポテンシャルの変曲点での粒子モデル間の距離に1.0〜2.0Åを加えた実施例2及び実施例3が、実施例1及び実施例2に比べて、計算精度を維持しつつ、計算時間の増大を防ぐことができた。

0120

S46 第1分子力学計算工程
S48量子力学計算を行う工程
S54分子鎖モデルの粒子モデル間の結合を切断する工程

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

関連する公募課題一覧

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ