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技術 時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法

出願人 大同特殊鋼株式会社
発明者 田中優樹宮崎貴大山崎歩見吉見勇祐寺田紘樹針谷誠
出願日 2016年9月29日 (4年3ヶ月経過) 出願番号 2016-191188
公開日 2018年3月1日 (2年10ヶ月経過) 公開番号 2018-031068
状態 特許登録済
技術分野 鋼の加工熱処理
主要キーワード 円錐圧子 背切り 製造パターン 高耐力化 時効硬化処理後 破断分離 耐力向上 限定条件
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

高強度と低靭性値を有する、時効硬化ベイナイト非調質鋼による部品の製造方法の提供。

解決手段

質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.10〜3.00%、P:0.001〜0.150%、S:0.001〜0.200%、Cu:0.001〜2.00%、Ni:0.40%以下、Cr:0.10〜3.00%、を含有し、さらにMo:0.02〜2.00%、V:0.02〜2.00%、Ti:0.001〜0.250%、Nb:0.010〜0.100%、の何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ化学成分の含有質量%が所定の関係式を満たし、時効硬化処理工程及びひずみ時効硬化処理工程を含む。

概要

背景

時効硬化ベイナイト非調質鋼は、加工時は柔らかく、加工後に変態点以下の温度に加熱(時効硬化処理)することで熱処理歪みを生じさせずに高強度化を図るようにした鋼の一種である。このため、強度と被削性両立させた非調質鋼として開発が進められており、例えば下記特許文献1、2には、上記のように強度と被削性を両立させた時効硬化型ベイナイト非調質鋼が開示されている。

概要

高強度と低靭性値を有する、時効硬化型ベイナイト非調質鋼による部品の製造方法の提供。質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.10〜3.00%、P:0.001〜0.150%、S:0.001〜0.200%、Cu:0.001〜2.00%、Ni:0.40%以下、Cr:0.10〜3.00%、を含有し、さらにMo:0.02〜2.00%、V:0.02〜2.00%、Ti:0.001〜0.250%、Nb:0.010〜0.100%、の何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ化学成分の含有質量%が所定の関係式を満たし、時効硬化処理工程及びひずみ時効硬化処理工程を含む。

目的

本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、より一層の高強度を有する、時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法、さらに高強度だけでなく、低靭性値(低衝撃値)をも有する、同非調質鋼を用いた部品の製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.10〜3.00%、P:0.001〜0.150%、S:0.001〜0.200%、Cu:0.001〜2.00%、Ni:0.40%以下、Cr:0.10〜3.00%、を含有し、さらにMo:0.02〜2.00%、V:0.02〜2.00%、Ti:0.001〜0.250%、Nb:0.010〜0.100%、の何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ所定の化学成分の含有質量%が下記式(1)及び(2)を満たす時効硬化ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法であって、熱間鍛造による非調質鍛造工程と、500〜700℃の範囲内にある所定の時効温度下での時効硬化処理工程と、前記時効温度よりも低く、かつ200〜600℃の範囲内にある所定の加工温度下で加工率を3〜35%に設定したひずみ時効硬化処理工程と、を含むことを特徴とする時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法。3×[C]+10×[Mn]+2×[Cu]+2×[Ni]+12×[Cr]+9×[Mo]+2×[V]≧20…式(1)32×[C]+3×[Si]+3×[Mn]+2×[Ni]+3×[Cr]+11×[Mo]+32×[V]+65×[Ti]+36×[Nb]≧24.0…式(2)

請求項2

質量%で、さらに下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法。321×[C]−31×[Mo]+213×[V]+545×[Ti]+280×[Nb]≧100…式(3)

請求項3

質量%で、B:0.0001〜0.0100%、Pb:0.001〜0.300%、Bi:0.001〜0.300%、Te:0.001〜0.300%、Ca:0.001〜0.010%、のうち1種又は2種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法。

技術分野

0001

本発明は時効硬化ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法に関し、特に従来のものに比して高強度となるように高強度値コントロールした部品の製造方法に関する。

背景技術

0002

時効硬化型ベイナイト非調質鋼は、加工時は柔らかく、加工後に変態点以下の温度に加熱(時効硬化処理)することで熱処理歪みを生じさせずに高強度化を図るようにした鋼の一種である。このため、強度と被削性両立させた非調質鋼として開発が進められており、例えば下記特許文献1、2には、上記のように強度と被削性を両立させた時効硬化型ベイナイト非調質鋼が開示されている。

先行技術

0003

特開2011−236452号公報
特開2015−180773号公報

発明が解決しようとする課題

0004

ところで、非調質鋼と言えば、Vを添加したフェライトパーライト型鋼がその主流であり、現在、自動車用コンロッド等に使用されている。そして、近年の小型化ニーズに伴い、コンロッド等に使用される非調質鋼に対し、さらなる高強度化、特に高耐力化が要求されている。
しかしながら、上記したフェライト+パーライト型鋼では、高価なVを多量に含有させることで高い耐力が得られるものの、850MPa程度が限界であり、近年の要求レベルからすると不十分である。また、上記特許文献1,2に記載の時効硬化型ベイナイト非調質鋼では、フェライト+パーライト型よりもさらに高い1100MPa程度の耐力が得られるが、これによっても近年の要求レベルからすると、必ずしも十分とは言えない。
一方、自動車用コンロッドでは、製造コスト低減を目的に、クラッキング(かち割り)する破断分離加工により製造される、いわゆるクラッキングコンロッドが主流になりつつある。このようなクラッキングコンロッドの場合、破断分離を容易にするため、その使用される鋼材に対してより低靭性(低衝撃値特性)が要求される。

0005

本発明は、上記問題に対処するためになされたものであり、その目的は、より一層の高強度を有する、時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法、さらに高強度だけでなく、低靭性値(低衝撃値)をも有する、同非調質鋼を用いた部品の製造方法を提供することにある。

課題を解決するための手段及び発明の効果

0006

上記目的を達成するために本発明の時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法は、質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜2.00%、Mn:0.10〜3.00%、P:0.001〜0.150%、S:0.001〜0.200%、Cu:0.001〜2.00%、Ni:0.40%以下、Cr:0.10〜3.00%を含有し、さらにMo:0.02〜2.00%、V:0.02〜2.00%、Ti:0.001〜0.250%、Nb:0.010〜0.100%、の何れか1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、かつ所定の化学成分の含有質量%が下記式(1)及び(2)を満たし、
熱間鍛造による非調質鍛造工程と、500〜700℃の範囲内にある所定の時効温度下での時効硬化処理工程と、時効温度よりも低く、かつ200〜600℃の範囲内にある所定の加工温度下で加工率を3〜35%に設定したひずみ時効硬化処理工程と、を含むことを特徴とする。
3×[C]+10×[Mn]+2×[Cu]+2×[Ni]+12×[Cr]
+9×[Mo]+2×[V]≧20 …式(1)
32×[C]+3×[Si]+3×[Mn]+2×[Ni]+3×[Cr]
+11×[Mo]+32×[V]+65×[Ti]+36×[Nb]≧24.0…式(2)
この場合、例えば質量%で、さらに下記式(3)を満たす、同非調質鋼を用いた部品の製造方法とすることができる。
321×[C]−31×[Mo]+213×[V]+545×[Ti]
+280×[Nb]≧100 …式(3)
また、例えば質量%で、B:0.0001〜0.0100%、Pb:0.001〜0.300%、Bi:0.001〜0.300%、Te:0.001〜0.300%、Ca:0.001〜0.010%、のうち1種又は2種以上をさらに含む、同非調質鋼を用いた部品の製造方法とすることもできる。

0007

本発明の発明者らは、時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品において所定の高強度を達成するための成分間の含有関係を上記式(1)及び(2)に示すように定式化し得ることを見出した。さらに、ひずみ時効硬化処理を製造方法の一つに加えると、より一層の高強度を有することを見出した。具体的には、ひずみ時効硬化処理後の硬さが33HRC以上、かつ耐力が900MPa以上である、時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品を得ることができる。
また、本発明の発明者らは、低靭性を達成するための成分間の含有関係を上記式(3)に示すように定式化し得ることを見出した。つまり、上記式(1)〜(3)を満たす時効硬化型ベイナイト非調質鋼に、ひずみ時効硬化処理を加えることで、ひずみ時効硬化処理後の硬さが33HRC以上、耐力が900MPa以上であることに加え、室温におけるシャルピー衝撃値(2mmU)が30J/cm2以下である、時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品を得ることができる。

図面の簡単な説明

0008

本発明の時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造工程図。
ひずみ時効硬化処理で用いる試験片の一例を示す正面図。
ひずみ時効硬化処理における加工温度と硬さの関係を示すグラフ
ひずみ時効硬化処理における加工率と硬さの関係を示すグラフ。

0009

以下、本発明の部品を構成する時効硬化型ベイナイト非調質鋼における各元素組成定理由及び限定条件について説明する。

0010

(1)C:0.10〜0.40%
Cは強度を確保するために必要な元素である。Cは時効硬化処理によりMo,V,Ti,Nbの炭化物析出させて鋼を高強度化する。また、Cはひずみ時効硬化時の強度アップにも寄与する。その働きのために0.10%以上が必要である。一方、0.40%を超えて過剰に含有させると、被削性の悪化を招くため、0.40%を上限とする。好ましくは0.15〜0.35%である。

0011

(2)Si:0.01〜2.00%
Siは鋼の溶製時の脱酸剤として、また強度向上のために加えられる。その働きのために0.01%以上含有させる必要がある。一方、2.00%を超えて過剰に含有させると、熱間鍛造時の金型寿命を低下させ、製造コストを上昇させてしまうため、2.00%を上限とする。好ましくは0.10〜1.00%である。

0012

(3)Mn:0.10〜3.00%
Mnは焼入れ性の確保(ベイナイト組織の確保)、強度向上、及び被削性の向上(MnSの晶出)のために有効な元素であり、0.10%以上が必要である。ただし、3.00%を超えて過剰に含有させると、マルテンサイトの生成を促進し、被削性劣化を招くため、3.00%を上限とする。好ましくは0.50〜2.50%である。

0013

(4)P:0.001〜0.150%
Pは不可避に鋼中に存在し、その含有が許容される。ただし、0.150%を超えて過剰に含有させると、低衝撃値化のコントロールが困難となるため、0.150%を上限とする。なお、ベイナイト組織において、Pの添加量が0.050%以下であれば衝撃特性に影響を与えないことを確認している。

0014

(5)S:0.001〜0.200%
Sは被削性確保のために0.001%以上含有させる必要がある。ただし、0.200%を超えて過剰に含有させると、製造性悪化の要因となるため、0.200%を上限とする。好ましくは0.010〜0.120%である。

0015

(6)Cu:0.001〜2.00%
Cuは焼入れ性の確保(ベイナイト組織の確保)、及び強度向上のために含有させる。2.00%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらし、製造性悪化の要因となるため、2.00%を上限とする。好ましくは0.05〜1.00%、更に好ましくは0.10〜0.50%である。

0016

(7)Ni:0.40%以下
NiはCuと同様、焼入れ性の確保(ベイナイト組織の確保)、及び強度向上のために含有させてもよい。ただし、Niはコストの増加を招くため、0.40%以下に含有量を調整する必要がある。好ましくは0.05〜0.20%である。

0017

(8)Cr:0.10〜3.00%
Crは焼入れ性の確保(ベイナイト組織の確保)、及び強度向上のために含有させる。その働きのために0.10%以上含有させる必要がある。ただし、3.00%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらし、またマルテンサイトの生成を促進し、被削性劣化を招くため、3.00%を上限とする。好ましくは0.20〜1.50%である。

0018

Mo:0.02〜2.00%、
V:0.02〜2.00%、
Ti:0.001〜0.250%、
Nb:0.010〜0.100%、の何れか1種又は2種以上

0019

(9)Mo:0.02〜2.00%
Moは時効硬化処理によりMo炭化物を析出させる。MoはMo炭化物の析出強化による高強度化のために含有させる。その働きのために0.02%以上含有させる必要がある。ただし、2.00%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらすため、2.00%を上限とする。好ましくは0.10〜2.00%、更に好ましくは0.30〜1.00%である。

0020

(10)V:0.02〜2.00%
Vは時効硬化処理によりV炭化物を析出させる。VはV炭化物の析出強化による高強度化のために含有させる。その働きのために0.02%以上含有させる必要がある。ただし、2.00%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらすため、2.00%を上限とする。好ましくは0.10〜2.00%、更に好ましくは0.20〜1.00%である。

0021

(11)Ti:0.001〜0.250%
Tiは時効硬化処理によりTi炭化物を析出させる。TiはTi炭化物の析出強化による高強度化のために含有させる。その働きのために0.001%以上含有させる必要がある。ただし、0.250%を超えて過剰に含有させると、被削性の悪化を招くため、0.250%を上限とする。好ましくは0.005〜0.200%、更に好ましくは0.01〜0.10%である。

0022

(12)Nb:0.010〜0.100%
Nbは時効硬化処理によりNb炭化物を析出させる。NbはNb炭化物の析出強化による高強度化のために含有させる。その働きのために0.010%以上含有させる必要がある。ただし、0.100%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらすため、0.100%を上限とする。好ましくは0.020〜0.070%である。

0023

さらに、本発明において以下の元素を添加することも可能である。

0024

(13)B:0.0001〜0.0100%
Bは成形時にFe炭化物を析出させる。BはFe炭化物の析出により靭性を低下させる効果を有するため、低衝撃値の観点から含有させてもよい。その働きのためには0.0001%以上含有させる。ただし、0.0100%を超えて過剰に含有させると、コストの増大をもたらすため、0.0100%を上限とする。好ましくは0.0010〜0.0050%である。

0025

(14)Pb:0.001〜0.300%
Bi:0.001〜0.300%、
Te:0.001〜0.300%、
Ca:0.001〜0.010%、
これらの元素は、快削元素として必要に応じて含有させることができる。ただし、含有量が多すぎると強度や熱間加工性の低下をもたらすので、Pb,Bi,Teについては0.300%を上限とし、Caについては0.010%を上限とする。

0026

(15)残部:Fe及び不可避不純物
なお、表1ではFe及び不可避不純物の記載を省略してある。

0027

(16)下記式(1)を満たすこと
3×[C]+10×[Mn]+2×[Cu]+2×[Ni]+12×[Cr]
+9×[Mo]+2×[V]≧20 …式(1)
式(1)はベイナイト面積率指標となる条件式を示したものである。式(1)を満たすようにC,Mn,Cu,Ni,Cr,Mo,Vの成分量(質量%)を規定することにより、時効硬化処理前における鋼組織のベイナイト面積率を85%以上に設定することができる。本発明では、熱間鍛造後の鋼組織がほぼベイナイト単相であることが前提となっている。

0028

(17)下記式(2)を満たすこと
32×[C]+3×[Si]+3×[Mn]+2×[Ni]+3×[Cr]
+11×[Mo]+32×[V]+65×[Ti]+36×[Nb]≧24.0…式(2)
式(2)は時効硬化処理後の硬さの指標となる条件式を示したものである。時効硬化処理により炭化物を析出させるMo,V,Ti,Nbの含有量が多いほど、時効硬化処理後の硬さは高くなる。式(2)を満たすようにC,Si,Mn,Ni,Cr,Mo,V,Ti,Nbの成分量(質量%)を規定することにより、時効硬化処理後の硬さを30HRC以上に設定することができる。

0029

(18)さらに、本発明において、下記式(3)を満たすようにすることも可能である。
321×[C]−31×[Mo]+213×[V]+545×[Ti]
+280×[Nb]≧100 …式(3)
式(3)はシャルピー衝撃値の指標となる条件式を示したものである。時効硬化処理により炭化物を析出させる元素であっても、Moは高靭性化に寄与し、一方でV,Ti,Nbは低靭性化に寄与するように作用する。式(3)を満たすようにC,Mo,V,Ti,Nbの成分量(質量%)を規定することにより、シャルピー衝撃値(2mmU)を30J/cm2以下に設定することができる。

0030

(19)500〜700℃の範囲内にある所定の時効温度下での時効硬化処理
500〜700℃の温度にて例えば0.5〜4時間の条件下で時効処理を施すことにより、30HRC以上の硬さを有する部品を得ることができる。より好ましい時効温度は550〜675℃であり、より好ましい時効時間は2〜3時間である。

0031

(20)時効温度よりも低く、かつ200〜600℃の範囲内にある所定の加工温度下でのひずみ時効硬化処理
加工温度を時効温度よりも低くするのは、加工温度が時効温度よりも高いと、硬さの低下を招くおそれがあるからである。また、加工温度が200℃を下回ると、部品に割れが発生するおそれがある一方、加工温度が600℃を上回ると、33HRC以上の硬さを得ることが困難となるからである(図3参照)。より好ましい加工温度は300〜500℃である。

0032

(21)加工率を3〜35%に設定したひずみ時効硬化処理
加工率が3%を下回ると、33HRC以上の硬さを得ることが極めて困難となる一方、加工率が35%を上回っても、硬化量に対する加工の寄与度飽和するからである(図4参照)。より好ましい加工率は7〜25%である。

0033

以下、図1を参照して本発明の実施例について説明する。
まず、表1に示す化学組成(残部はFe及び不可避不純物)の鋼材150kgを真空誘導溶解炉にて溶解し(S1工程)、1250℃でφ50mmの丸棒鍛伸した(熱間鍛造:S2工程)。

0034

0035

次に、上記したφ50mmの丸棒を、1250℃加熱・1100℃鍛造の条件下でφ30mmの丸棒に鍛造した後、室温まで空冷(例えば冷却速度1.0℃/s)した(非調質鍛造:S3工程)。S3工程後、480〜720℃の範囲内にある所定の時効温度にて2時間の条件下で時効硬化処理を行った(S4工程)。この時効硬化処理では、上記時効温度にて2時間加熱処理した後、室温まで空冷した。S4工程後、400℃の加工温度にて加工率15%の条件下でひずみ時効硬化処理を行った(S5工程)。

0036

ひずみ時効硬化処理(S5工程)では、例えば図2に示されるような試験片を用いた。この試験片は、例えば上記丸棒から切り出したφ22mm×100mm程度の円柱体に、中心を挟んだ両側面に背切り面11,12を形成したものである。背切り面11,12間の距離は18mmに設定した。その後、両背切り面11,12を鍛造により圧縮した。なお、この試験片を加工率15%で加工した場合、加工後の各背切り面11,12間の距離は15.3mm(=18mm×(1−0.15))となる。

0037

そして、上記したS3工程後の鋼材を硬さ試験ミクロ組織観察に供し、S4工程後の鋼材を硬さ試験とシャルピー衝撃試験に供し、S5工程後の鋼材を硬さ試験に供した。硬さ試験、ミクロ組織観察及びシャルピー衝撃試験は、それぞれ以下の要領で行った。

0038

(硬さ試験)
硬さ試験は、JIS Z 2245に準拠し、ロックウェル硬度計にて荷重150kgfダイヤモンド円錐圧子で実施した。硬さは試験片の半径1/2の個所で測定を行った。

0039

(ミクロ組織観察)
ミクロ組織観察では、ナイタール腐食後光学顕微鏡倍率400倍)にて観察し、ベイナイト組織の面積率(以下、ベイナイト面積率という)を測定した。表2では、ベイナイト面積率が85%以上であった場合を「○」、ベイナイト組織とフェライト組織の混合(フェライト組織の面積率が15%以上)であった場合を「×F」、ベイナイト組織とマルテンサイト組織の混合(マルテンサイト組織の面積率が15%以上)であった場合を「×M」とする評価を行った。なお、表2ではこれらの評価と併せて、かっこ書きで実測されたベイナイト面積率を表示してある。

0040

引張試験
引張試験については、ひずみ時効処理後の供試材より、Φ5mmの平行部とM10のネジ部を備えたJIS Z2201 14A号試験片を作製して、0.2%耐力(以下、単に耐力という)を測定した。そして、耐力値が900MPa以上の条件を満たしているかを確認した。

0041

(シャルピー衝撃試験)
シャルピー衝撃試験では、JIS Z 2202 2mmUノッチ試験片を作製し、当該試験を室温で実施してシャルピー衝撃値(以下、衝撃値という)を測定した。そして、衝撃値が30J/cm2以下の条件を満たしているかを確認した。

0042

0043

0044

また、ひずみ時効硬化処理(S5工程)による硬化量に対する加工温度及び加工率のそれぞれの有効範囲を求めるために、実施例1の鋼材により作成した図2の試験片を用いて、加工率を15%に設定したときの加工温度と硬さの関係を調べるとともに、加工温度を400℃に設定したときの加工率と硬さの関係を調べた。

0045

また、上記のように時効硬化処理(S4工程)の完了後(加熱処理+室温までの冷却処理)、ひずみ時効硬化処理(S5工程)を行う製造パターン(プロセス1)とは別に、時効硬化処理の加熱処理完了直後の冷却途中に400℃になった時点で、加工率15%のひずみ時効硬化処理(S5工程)を行う製造パターン(プロセス2)についても実施した。

0046

表2及び表3に、各鋼種(実施例1〜39、比較例1〜6、参考例1,2)に対応する式(1)〜(3)の計算結果測定結果を示す。実施例1〜39のうち、実施例1〜36が上記プロセス1に対応し、実施例37〜39が上記プロセス2に対応しており、実施例37〜39は、それぞれ実施例8、15、22と同じ成分のものである。なお、実施例37〜39では、実施例1〜36とは異なり時効後硬さの測定ができないため、これに関連する時効硬化量、ひずみ時効硬化量と共に、表2及び表3中の該当欄を「−」の記載とした。
実施例1〜36に示されるように、各化学成分が所定の範囲にあり、しかも式(1)及び(2)を満たすことにより、より一層高強度の時効硬化型ベイナイト非調質鋼、すなわちベイナイト面積率が85%以上、時効硬化処理後の硬さが30HRC以上、ひずみ時効硬化処理後の硬さが33HRC以上であり、しかもひずみ時効硬化処理後の硬さが時効硬化処理後の硬さに比べて2HRC以上高く、ひずみ時効硬化処理後の硬さが時効硬化処理前の硬さに比べて5HRC以上高く、かつ耐力が900MPa以上となる鋼、ひいてはその鋼材を用いることで上記特性を具備した部品を得ることができる。また、実施例12〜36は、式(3)の成分範囲をも満たす鋼材であるが、これらは、ひずみ時効硬化処理後、一層の高強度だけでなく、低靭性値をも有しており、具体的には、室温におけるシャルピー衝撃値(2mmU)が30J/cm2以下である。
また、実施例37〜39では、それぞれ対応する実施例8、15、22と同等の耐力、衝撃値が得られた。

0047

他方、比較例1は式(2)を満たさないため、時効硬化処理後の硬さが30HRCを下回り(26.7HRC)、ひずみ時効硬化処理後の硬さも33HRC以下であり(30.1HRC)、耐力も900MPa以下であった(791MPa)。また、比較例2は式(1)及び(2)を満たすものの、Cの含有量が0.10%の下限よりも低位である。このため、Cによる、ひずみ時効硬化処理時の耐力向上効果が十分に得られないことから、硬さは33HRCを上回っている(33.7HRC)ものの、耐力が900MPa以下であった(896MPa)。また、比較例3は式(2)を満たさないため、比較例1と同様、ひずみ時効硬化処理後の硬さが33HRC以下であり(32.1HRC)、耐力も900MPa以下であった(878MPa)。

0048

また、比較例4は式(1)を満たさないため、ベイナイト面積率が85%を下回り(ベイナイト面積率70%)、フェライト組織の生成に起因して時効硬化処理後の硬さが30HRCを下回り(28.9HRC)、ひずみ時効硬化処理後の硬さも33HRC以下であり(31.9HRC)、耐力も900MPa以下であった(897MPa)。

0049

比較例5は、Mnの含有量が3.00%の上限を超えている(3.50%)ため、ベイナイトとマルテンサイトの混合組織となった。また、比較例6はCrの含有量が3.00%の上限を超えている(3.40%)ため、ベイナイトとマルテンサイトの混合組織となった。これらについては、ひずみ時効硬化処理後に高い強度が得られるが、マルテンサイトが混在しているために、被削性が劣位であった。

0050

なお、参考例1,2に示されるように、各化学成分が所定の範囲にあり、式(1)〜(3)を満たす場合であっても、時効温度が500〜700℃の範囲内になければ(参考例1:480℃、参考例2:720℃)、時効硬化処理後の硬さが30HRCを下回り(参考例1:27.4HRC、参考例2:28.2HRC)、いずれもひずみ時効硬化処理後の硬さが33HRC以下であり(参考例1:30.8HRC、参考例2:31.1HRC)、耐力も900MPa以下であった(参考例1:821MPa、参考例2:834MPa)。

0051

図3に加工温度と硬さの関係を示し、図4に加工率と硬さの関係を示す。上記実施例では、ひずみ時効処理の条件として、加工温度を400℃、加工率を15%に設定して各種の試験等を実施したが、図3及び図4から明らかなように、加工温度が200〜600℃の範囲内、加工率が3〜35%の範囲内にあれば、ひずみ時効硬化処理後の硬さが33HRC以上となることを十分に推測することができる。

0052

以上の説明から明らかなように、本発明の時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品によれば、より一層の高強度化が可能である。したがって、車両用のコンロッド等に適用することで、部品の小型化を図ることができる。さらに、成分を所定の範囲とした鋼材(式(1)〜(3)の全てを満たす)について、本発明を適用した部品では、一層の高強度だけでなく、低靭性値をも有したものとすることができる。したがって、これらの部品をクラッキングコンロッドに適用した場合においても、部品の小型化を図ることができる。

0053

また、時効硬化処理(加熱処理+室温までの冷却処理)を行った後にひずみ時効硬化処理を行うプロセス1と、時効硬化処理の加熱処理完了直後の冷却途中にひずみ時効硬化処理を行うプロセス2とで、同様の高強度化効果を得ることができ、しかもこのプロセス2によれば、製造工程全体の時間の短縮化を図ることができる。したがって、本発明の時効硬化型ベイナイト非調質鋼を用いた部品の製造方法における「時効硬化処理工程」には、少なくとも時効硬化処理の加熱処理が完了した工程のものを含ませることができる。

実施例

0054

なお、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えた態様で実施することが可能である。例えば本発明は、時効硬化処理後更にひずみ時効硬化処理を施す第1の部位と、時効硬化処理後はひずみ時効硬化処理を施さない第2の部位とを備える部品の他、例えば時効硬化処理を施した全ての部位にひずみ時効硬化処理を施す部品に適用することもできる。前者の場合には、第2の部位の硬さが30HRC以上、第1の部位の硬さが33HRC以上であり、かつ第1の部位の硬さが第2の部位の硬さに比べて2HRC以上高くなるよう、つまり強度が必要な部位のみを高強度化した部品を得ることができる。他方、後者の場合には、全ての部位の硬さが33HRC以上となるような部品を得ることができる。

0055

10試験片
11,12背切り面
S1工程 溶解
S2工程鍛造
S3工程非調質鍛造
S4工程時効硬化処理
S5工程ひずみ時効硬化処理

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