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技術 窒化物蛍光体及び発光装置

出願人 日亜化学工業株式会社
発明者 涌井貞一細川昌治
出願日 2016年8月24日 (4年2ヶ月経過) 出願番号 2016-163428
公開日 2018年3月1日 (2年8ヶ月経過) 公開番号 2018-030938
状態 特許登録済
技術分野 LED素子のパッケージ 発光性組成物
主要キーワード ICP発光分析法 フッ素含有物質 フーリエ変換赤外分光装置 フッ素ガス濃度 クロスセクションポリッシャー 窒素ガス濃度 炭酸塩中 紙やすり
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年3月1日)のものです。
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図面 (8)

課題

耐久性に優れた窒化物蛍光体及び発光装置を提供する。

解決手段

Ca、Sr、Ba及びMgから選択される少なくとも1種の元素と、Li、Na及びKから選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnから選択される少なくとも1種の元素と、Alと、Nとを含む組成を有し、FT−IRによって測定される窒化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおいて、450cm−1以上900cm−1未満における吸光度最大値を1としたときに、1200cm−1と1600cm−1との吸光度値を結ぶベースラインAと、1200cm−1以上1600cm−1未満の吸光度スペクトルとで囲われた領域の積分値Z1が4.0以下、及び/又は、2700cm−1と3680cm−1との吸光度値を結ぶベースラインBと、2700cm−1以上3680cm−1未満の吸光度スペクトルとで囲われた領域の積分値Z2が5.0以下である、窒化物蛍光体である。

概要

背景

発光ダイオード(Light emitting diode:以下、「LED」と称する。)と蛍光体とを組み合わせ形成した発光装置は、照明装置液晶表示装置バックライト等に盛んに用いられており、普及が進んでいる。例えば、発光装置を液晶表示装置に用いる場合、色再現範囲を大きくするために、半値幅の狭い蛍光体を用いることが望まれている。

このような蛍光体として赤色に発光し、組成がSrLiAl3N4:Euで表される窒化物蛍光体(以下、「SLAN蛍光体」と呼ぶことがある。)があり、例えば、特許文献1や非特許文献1(Philipp Pust et al. “Narrow-band red-emitting Sr[LiAl3N4]:Eu2+as a next-generationLED-phosphor material” Nature Materials, NMAT4012, VOL13 September 2014)は、半値幅が70nm以下と狭く、発光ピーク波長が650nm付近であるSLAN蛍光体を開示している。

このSLAN蛍光体は、例えば、非特許文献1では、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、窒化アルミニウム(AlN)、水素ストロンチウム(SrH2)及びフッ化ユウロピウム(EuF3)を含む原料粉体をEuが0.4mol%となるような化学量論比で計量、混合した後ルツボに入れ、水素と窒素混合ガス雰囲気大気圧下で温度を1000℃、焼成時間を2時間として、焼成することで製造される。

概要

耐久性に優れた窒化物蛍光体及び発光装置を提供する。Ca、Sr、Ba及びMgから選択される少なくとも1種の元素と、Li、Na及びKから選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnから選択される少なくとも1種の元素と、Alと、Nとを含む組成を有し、FT−IRによって測定される窒化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおいて、450cm−1以上900cm−1未満における吸光度最大値を1としたときに、1200cm−1と1600cm−1との吸光度値を結ぶベースラインAと、1200cm−1以上1600cm−1未満の吸光度スペクトルとで囲われた領域の積分値Z1が4.0以下、及び/又は、2700cm−1と3680cm−1との吸光度値を結ぶベースラインBと、2700cm−1以上3680cm−1未満の吸光度スペクトルとで囲われた領域の積分値Z2が5.0以下である、窒化物蛍光体である。

目的

例えば、発光装置を液晶表示装置に用いる場合、色再現範囲を大きくするために、半値幅の狭い蛍光体を用いることが望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Alと、Nとを含む組成を有する窒化物蛍光体であって、フーリエ変換赤外分光装置によって測定される前記窒化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおいて、450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度最大値を1としたときに、1200cm−1から1600cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインAとし、前記ベースラインAと1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z1が、4.0以下、及び/又は、2700cm−1から3680cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインBとし、前記ベースラインBと2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z2が、5.0以下である、窒化物蛍光体。

請求項2

前記積分値Z1が、4.0以下であり、前記積分値Z2が、5.0以下である、請求項1に記載の窒化物蛍光体。

請求項3

前記積分値Z1が、2.0以下である、請求項1又は2に記載の窒化物蛍光体。

請求項4

前記積分値Z2が、4.0以下である、請求項1又は2に記載に記載の窒化物蛍光体。

請求項5

前記積分値Z2が、1.0以下である、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の窒化物蛍光体。

請求項6

下記式(I)で示される組成を有し、フッ素元素含有量が1質量%以上7質量%以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の窒化物蛍光体。MavMbwMcxAl3−ySiyNz(I)(式中、Maは、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、Mbは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、Mcは、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、v、w、x、y及びzは、それぞれ0.80≦v≦1.05、0.80≦w≦1.05、0.001<x≦0.1、0≦y≦0.5、3.0≦z≦5.0を満たす数である。)

請求項7

請求項1から6のいずれか一項に記載の窒化物蛍光体と、励起光源とを含む発光装置

技術分野

0001

本発明は、窒化物蛍光体及びそれを用いた発光装置に関する。

背景技術

0002

発光ダイオード(Light emitting diode:以下、「LED」と称する。)と蛍光体とを組み合わせ形成した発光装置は、照明装置液晶表示装置バックライト等に盛んに用いられており、普及が進んでいる。例えば、発光装置を液晶表示装置に用いる場合、色再現範囲を大きくするために、半値幅の狭い蛍光体を用いることが望まれている。

0003

このような蛍光体として赤色に発光し、組成がSrLiAl3N4:Euで表される窒化物蛍光体(以下、「SLAN蛍光体」と呼ぶことがある。)があり、例えば、特許文献1や非特許文献1(Philipp Pust et al. “Narrow-band red-emitting Sr[LiAl3N4]:Eu2+as a next-generationLED-phosphor material” Nature Materials, NMAT4012, VOL13 September 2014)は、半値幅が70nm以下と狭く、発光ピーク波長が650nm付近であるSLAN蛍光体を開示している。

0004

このSLAN蛍光体は、例えば、非特許文献1では、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)、窒化アルミニウム(AlN)、水素ストロンチウム(SrH2)及びフッ化ユウロピウム(EuF3)を含む原料粉体をEuが0.4mol%となるような化学量論比で計量、混合した後ルツボに入れ、水素と窒素混合ガス雰囲気大気圧下で温度を1000℃、焼成時間を2時間として、焼成することで製造される。

0005

特表2015−526532号公報

先行技術

0006

Philipp Pust et al. “Narrow-band red-emitting Sr[LiAl3N4]:Eu2+ as a next-generationLED-phosphor material” Nature Materials, NMAT4012, VOL13 September 2014

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、SLAN蛍光体を使った発光装置の耐久性の更なる改善が求められていた。
そこで、本発明の一実施形態は、耐久性に優れた窒化物蛍光体及びそれを用いた発光装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0008

前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りであり、本発明は以下の態様を包含する。
本発明の第一の実施形態は、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Alと、Nとを含む組成を有する窒化物蛍光体であって、フーリエ変換赤外分光装置(以下、「FT−IR」と称する場合がある。)によって測定される前記窒化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおいて、450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度最大値を1としたときに、1200cm−1から1600cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインAとし、前記ベースラインAと1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z1が、4.0以下、及び/又は、2700cm−1から3680cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインBとし、前記ベースラインBと2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z2が、5.0以下である、窒化物蛍光体である。

0009

本発明の第二の実施形態は、前記窒化物蛍光体と、励起光源とを含む発光装置である。

発明の効果

0010

本発明の一実施形態によれば、耐久性に優れた窒化物蛍光体及びそれを用いた発光装置を提供することができる。

図面の簡単な説明

0011

図1は、フーリエ変換赤外分光装置によって測定された実施例1から3及び比較例1から2の窒化物蛍光体の波数400cm−1から4000cm−1に対する吸光度の赤外吸収スペクトルを示す。
図2は、フーリエ変換赤外分光装置によって測定された実施例1から3及び比較例1から2の窒化物蛍光体の波数400cm−1から4000cm−1に対する吸光度の赤外吸収スペクトルであって、波数1000cm−1から4000cm−1の波数領域の吸光度スペクトルの拡大図を示す。
図3は、実施例1の窒化物蛍光体の断面を拡大したSEM写真である。
図4は、実施例1の窒化物蛍光体の断面を示すSEM写真である。
図5は、比較例1の窒化物蛍光体の断面を示すSEM写真である。
図6は、比較例2の窒化物蛍光体の断面を示すSEM写真である。
図7は、発光装置の一例を示す概略断面図である。

0012

以下、本開示に係る窒化物蛍光体及び発光装置を実施の形態に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための、窒化物蛍光体及び発光装置を例示するものであって、本発明は、以下の窒化物蛍光体及び発光装置に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。

0013

本発明の第一の実施形態は、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Alと、Nとを含む組成を有する窒化物蛍光体であって、フーリエ変換赤外分光装置によって測定される前記窒化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおいて、450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度の最大値を1としたときに、1200cm−1から1600cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインAとし、このベースラインAと1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z1が、4.0以下、及び/又は、2700cm−1から3680cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインBとし、このベースラインBと2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z2が、5.0以下である、窒化物蛍光体である。

0014

本発明の一実施形態の窒化物蛍光体は、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Alと、Nとを含む組成を有する窒化物蛍光体(以下、「SLAN系窒化物蛍光体」と称する場合がある。)である。本発明の一実施形態の窒化物蛍光体は、例えば下記一般式(I)で示される組成を有する。
MavMbwMcxAl3−ySiyNz (I)
(式中、Maは、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、Mbは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、Mcは、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも一種の元素であり、v、w、x、y及びzは、それぞれ0.80≦v≦1.05、0.80≦w≦1.05、0.001<x≦0.1、0≦y≦0.5、3.0≦z≦5.0を満たす数である。)

0015

FT−IRによって、SLAN系窒化物蛍光体を測定した赤外吸収スペクトルにおいて、1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域に検出される吸収ピーク炭酸基(CO32−)に由来するピークであり、2700cm−1以上3680cm−1以下の波数領域に検出される吸収ピークは水酸基(OH)に由来するピークである。

0016

SLAN系窒化物蛍光体は、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも一種の元素を含有するものであり、蛍光体の表面近傍に位置する前記元素は、二酸化炭素、水分等と反応しやすい。SLAN系窒化物蛍光体を発光装置に用いた場合は、励起光源から発生される熱によって、発光装置の外部から侵入してきた二酸化炭素、水分等との反応がますます促進されやすくなり、SLAN系窒化物蛍光体の劣化により発光装置の色度の変化が生じやすい。
FT−IRによってSLAN系窒化物蛍光体を測定した赤外吸収スペクトルにおいて、1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域に検出される吸光度スペクトルの吸収ピークが大きい場合には、SLAN系蛍光体の表面近傍の元素が二酸化炭素、水分等と反応して、炭酸塩が生成されていることが推測できる。
また、FT−IRによってSLAN系窒化物蛍光体を測定した赤外吸収スペクトルにおいて、2700cm−1以上3680cm−1以下の波数領域に検出される吸光度スペクトルの吸収ピークが大きい場合には、SLAN系窒化物蛍光体の表面又は表面近傍の元素が、水分と反応して、水酸化物が生成されていることが推測できる。

0017

FT−IRによって測定されたSLAN系窒化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおいて、1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルの吸収ピークと、2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルの吸収ピークが小さいと、これらの波数領域における吸収ピークが大きい蛍光体と比較して、SLAN系窒化物蛍光体を構成するSr等の元素と、二酸化炭素、水分等との反応による影響が小さいことが推測できる。
特定の波数領域における吸収ピークの大小は、FT−IRによってSLAN系窒化物蛍光体を測定した赤外吸収スペクトルにおいて、450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度の最大値を1としたときに、1200cm−1から1600cm−1の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインAとし、このベースラインAと1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z1、及び/又は、2700cm−1から3680cm−1の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインBとし、このベースラインBと2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z2を比較することによって測定することができる。
前記積分値Z1は、1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルの全体の積分値Z01とし、この全体の積分値Z01から、1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルのベースラインA以下の略台形面積の積分値Zt1をバックグラウンドとして除去することによって、スペクトル上に現れる変動要因を除き、安定した積分値Z1を得ることができる。
また、前記積分値Z2は、2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルの全体の積分値Z02とし、この全体の積分値Z02から、2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルのベースラインB以下の略台形の面積の積分値Zt2をバックグラウンドとして除去することによって、スペクトル上に現れる変動要因を除き、安定した積分値Z2を得ることができる。

0018

例えば、SLAN系窒化物蛍光体の製造において、SLAN系窒化物蛍光体を構成する焼成物フッ素含有物質とを接触させた場合、焼成物の表面近傍において、焼成物を構成するSr等の元素が二酸化炭素や水分等と反応して生成された炭酸塩中の炭酸基や水酸化物中の水酸基がフッ素置換され、炭酸塩や水酸化物の生成が抑制され、得られるSLAN系窒化物蛍光体は、二酸化炭素、水分等との反応による影響が小さくなると推測される。また、例えば、SLAN系窒化物蛍光体の製造において、SLAN系窒化物蛍光体を構成する焼成物とフッ素含有物質とを接触させた場合、焼成物を構成するSr等の元素とフッ素が反応して、表面にフッ素を含む化合物が膜状に形成される。このようなSLAN系窒化物蛍光体が得られれば、この膜状のフッ素を含む化合物が保護膜として機能する。このようなフッ素を含む化合物が膜状に形成されたSLAN系窒化物蛍光体を発光装置に用いた場合に、発光装置の内部に浸入した二酸化炭素、水分等とSLAN系窒化物蛍光体の反応が抑制され、この反応の進行によって生じる色度の変化を抑制し得る。

0019

前記ベースラインAと1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z1が4.0以下である場合、及び/又は、前記ベースラインBと2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z2が5.0以下である場合には、SLAN系窒化物蛍光体を構成する元素と、二酸化炭素、水分等との反応による影響が小さいことを示している。このSLAN系窒化物蛍光体を発光装置に用いた場合にも、発光装置に浸入した二酸化炭素、水分等と、SLAN系窒化物蛍光体を構成する元素との反応がある程度以上は進みにくく、このような反応による影響によって生じる色度の変化が抑制された耐久性の高いSLAN系窒化物蛍光体であることが確認できる。
本発明の一実施形態に係るSLAN系窒化物蛍光体は、前記積分値Z1が、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.4以下、特に好ましくは1.3以下である。また、前記積分値Z1は、通常0.1以上である。

0020

前記積分値Z2が、好ましくは4.0以下であり、よりに好ましくは3.0以下であり、さらに好ましくは2.0以下であり、よりさらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.5以下である。前記積分値Z2は、通常0.05以上である。

0021

本発明の一実施形態に係るSLAN系窒化物蛍光体は、前記積分値Z1が4.0以下であり、かつ、前記積分値Z2が5.0以下であることが好ましい。
前記積分値Z1が4.0以下であり、前記積分値Z2が5.0以下であることによって、SLAN系窒化物蛍光体を構成するアルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Mg)又はアルカリ金属(Li、Na、K)が二酸化炭素、水分等のいずれとも反応が抑制されていることが確認できる。

0022

本発明の一実施形態に係るSLAN系窒化物蛍光体は、上記式(I)で示される組成を有し、フッ素元素の含有量が1質量%以上7質量%以下であることが好ましい。
本発明の一実施形態に係るSLAN窒化物蛍光体は、蛍光体の表面又は内部において、Nの一部がOに置き換わっていてもよい。

0023

本発明の一実施形態に係るSLAN系窒化物蛍光体は、前記積分値Z1が4.0以下であり、前記Z2が5.0以下であるとともに、前記式(I)で示される組成を有し、フッ素元素を1質量%以上7質量%以下含有している。このSLAN系窒化物蛍光体は、この蛍光体の表面近傍の蛍光体を構成する元素がフッ素と反応し、フッ素を含む化合物が膜状に形成されていると推測される。本発明の一実施形態に係るSLAN系窒化物蛍光体は、膜状のフッ素を含む化合物が保護膜として機能することによって、SLAN系窒化物蛍光体の内部が二酸化炭素、水分等と反応しにくく、外部環境の影響を受けにくくなり、このSLAN系窒化物蛍光体が発光装置に備えられた場合にも、発光装置の耐久性を向上することができる。

0024

本発明の一実施形態のSLAN系窒化物蛍光体において、フッ素元素の含有量は、好ましくは2質量%以上7質量%以下、より好ましくは3質量以上7質量%以下である。
フッ素元素の含有量を上記範囲内とすることで、蛍光体の表面近傍に形成された膜状のフッ素を含む化合物を保護膜として機能させることができる。
SLAN系窒化物蛍光体のフッ素元素の含有量が1質量%未満であると、フッ素元素の含有量が少なすぎて、フッ素を含む化合物による保護膜の機能を発揮することができず、耐久性を向上することができない場合がある。SLAN系窒化物蛍光体のフッ素元素の含有量が7質量%を超えると、SLAN系窒化物蛍光体を構成する結晶構造中に、結晶構造を形成する前記Ma元素、Mb元素、及びAlからなる元素と、酸素(O)、フッ素(F)等が反応して、これらの元素を含む結晶構造を形成する化合物とは異なる化合物が形成され、SLAN系窒化物蛍光体を発光装置に用いた場合に、色度が変化する場合がある。

0025

式(I)において、Maは、発光強度向上の観点から、Ca及びSrの少なくとも一方を含むことが好ましい。MaがCa及びSrの少なくとも一方を含む場合、Maに含まれるCa及びSrの総モル比率は、例えば85モル%以上であり、90モル%以上が好ましい。
またMbは、結晶構造安定性の観点から、少なくともLiを含むことが好ましい。MbがLiを含む場合、Mbに含まれるLiのモル比率は、例えば80モル%以上であり、90モル%以上が好ましい。

0026

式(I)におけるv、w、x、y及びzについて、vは、結晶構造安定性の観点から、0.80以上1.05以下が好ましく、0.90以上1.03以下がより好ましい。xは、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の賦活量であり、所望の特性を達成できるように適宜選択すればよい。xは、0.001<x≦0.020を満たすことがより好ましく、0.002≦x≦0.015を満たすことがさらに好ましい。

0027

SLAN系窒化物蛍光体は、紫外線から可視光短波長側領域である400nm以上570nm以下の波長範囲の光を吸収して、発光ピーク波長が630nm以上670nm以下の波長範囲にある蛍光を発する。当該波長範囲の励起光源を用いることにより、発光強度の高い蛍光体を提供することができる。特に、420nm以上500nm以下に主発光ピーク波長を有する励起光源を用いることが好ましく、420nm以上460nm以下に主発光ピーク波長を有する励起光源を用いることがより好ましい。

0028

SLAN系窒化物蛍光体の発光スペクトルは、発光ピーク波長が630nm以上670nm以下の範囲にあるが、640nm以上660nm以下の範囲にあることが好ましい。また発光スペクトルの半値幅は、例えば65nm以下であり、60nm以下が好ましい。これにより、広い色再現範囲を有する発光装置とすることができる。半値幅の下限は、例えば45nm以上であることが好ましい。

0029

SLAN系窒化物蛍光体は、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素が発光中心となる。SLAN系窒化物蛍光体は、例えば希土類であるユウロピウム(Eu)が発光中心となる。ただし、SLAN窒化物蛍光体の発光中心は、ユウロピウムのみに限定されず、Euが発光中心となる場合であっても、Euの一部を他の希土類金属やアルカリ土類金属に置き換えて、Euと共賦活させたものも使用できる。2価の希土類イオンであるEu2+は適切な母体を選ぶことにより安定に存在し、発光する。

0030

SLAN系窒化物蛍光体の平均粒径は、例えば4.0μm以上であり、4.5μm以上が好ましく、5.0μm以上がより好ましい。また平均粒径は、例えば20μm以下であり、18μm以下が好ましい。平均粒径を所定値以上とすることにより発光強度を大きくすることができる。平均粒径を所定値以下とすることにより、発光装置の製造工程における作業性を向上させることができる。

0031

平均粒径を所定値以上とすることにより、窒化物蛍光体への励起光吸収率及び発光強度がより高くなる傾向がある。このように、発光特性に優れた窒化物蛍光体を後述する発光装置に含有させることにより、発光装置の発光効率が高くなる。また、平均粒径を所定値以下とすることにより、発光装置の製造工程における作業性を向上させることができる。

0032

本明細書において蛍光体の平均粒径は、体積平均粒径レーザー回折式粒度分布測定装置製品名:MASTERSIZER(マスターサイザー)2000、MALVERN(マルバーン)社製)により測定される粒径メジアン径)である。

0033

〔発光装置〕
次に、本発明の一実施形態に係る発光装置について説明する。図7は、本発明の一実施態様の発光装置100を示す概略断面図である。発光装置100は、少なくとも本発明の一実施形態に係るSLAN系窒化物蛍光体を含む第一蛍光体71と、400nm以上570nm以下の波長範囲の光を発する励起光源とを備える。

0034

発光装置100は、成形体40と、発光素子10と、蛍光部材50とを備える。成形体40は、第1のリード20及び第2のリード30と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42とが一体的に成形されてなるものである。成形体40は底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負電極を有しており、その一対の正負の電極はそれぞれ第1のリード20及び第2のリード30とそれぞれワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は蛍光部材50により被覆されている。蛍光部材50は、例えば、発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70と樹脂を含む。更に蛍光体70は、第一の蛍光体71と第二の蛍光体72とを含む。発光素子10の正負一対の電極に接続された第1のリード20及び第2のリード30は、発光装置100を構成するパッケージの外方に向けて、第1のリード20及び第2のリード30の一部が露出されている。これらの第1のリード20及び第2のリード30を介して、外部から電力の供給を受けて発光装置100を発光させることができる。

0035

発光素子10は、励起光源として用いられており、400nm以上570nm以下の範囲に発光ピーク波長を有するものであることが好ましい。励起光源は、その発光の少なくとも一部を、蛍光体を励起させるために利用することができるだけでなく、発光装置の出力光としても利用することができる。発光素子10の発光ピーク波長の範囲は、より好ましくは420nm以上500nm以下であり、さらに好ましくは420nm以上460nm以下である。本発明の一実施態様の窒化物蛍光体は、このような波長範囲に発光ピーク波長を有する励起光源からの光により効率よく励起され、発光素子10からの光と蛍光体70からの蛍光との混色光を発する発光装置100を構成することが可能となる。

0036

発光素子の発光スペクトルの半値幅は、例えば、30nm以下とすることができる。
発光素子には例えば、窒化物系半導体(InXAlYGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた半導体発光素子を用いることが好ましい。光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。

0037

第一の蛍光体71の含有量は、例えば樹脂(100質量部)に対して1質量部以上50質量部以下とすることができ、2質量部以上40質量部以下であることが好ましい。

0038

蛍光部材50は、第一の蛍光体71とは発光ピーク波長が異なる第二の蛍光体72を含むことが好ましい。例えば、発光装置100は、380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を放出する発光素子10と、この光によって励起される本発明の一実施形態の窒化物蛍光体を含む第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72を適宜備えることにより、広い色再現範囲や高い演色性を有する発光装置100とすることができる。

0039

第二の蛍光体72としては、例えば、下記式(IIa)から(IIi)のいずれかで示される組成を有する蛍光体を挙げることができ、これらからなる群から選択される式で示される組成を有する蛍光体の少なくとも1種を含むことが好ましい。例えば、広い色再現範囲が得られる点で、式(IIc)、(IIe)又は(IIi)で示される組成を有する蛍光体の少なくとも1種を含むことがより好ましい。また、高い演色性が得られる点で、式(IIa)、(IId)、(IIf)又は(IIg)で示される組成を有する蛍光体の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
(Y,Gd,Tb,Lu)3(Al,Ga)5O12:Ce (IIa)
(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Eu (IIb)
Si6−pAlpOpN8−p:Eu(0<p≦4.2) (IIc)
(Ca,Sr)8MgSi4O16(Cl,F,Br)2:Eu (IId)
(Ba,Sr,Ca)Ga2S4:Eu (IIe)
(Ba,Sr,Ca)2Si5N8:Eu (IIf)
(Sr,Ca)AlSiN3:Eu (IIg)
K2(Si,Ge,Ti)F6:Mn (IIh)
(Ba、Sr)MgAl10O17:Mn (IIi)

0040

第二の蛍光体72の平均粒径は、2μm以上35μm以下であることが好ましく、5μm以上30μm以下であることがより好ましい。平均粒径を所定値以上とすることにより発光強度を大きくすることができる。平均粒径を所定値以下とすることにより、発光装置の製造工程における作業性を向上させることができる。

0041

第二の蛍光体72の含有量は、例えば、樹脂100質量部に対して1質量部以上200質量部以下とすることができ、2質量部以上180質量部以下であることが好ましい。

0042

第一の蛍光体71含有比は、第二の蛍光体72に対する質量比として例えば、0.01以上5以下とすることができ、0.05以上3以下が好ましい。

0043

蛍光体70は、樹脂とともに発光素子を被覆する蛍光部材50を構成することができる。蛍光部材50を構成する樹脂としては、シリコーン樹脂エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。

0044

蛍光部材50中の蛍光体70の総含有量は、例えば、樹脂(100質量部)に対して5質量部以上300質量部以下とすることができ、10質量部以上250質量部以下が好ましく、15質量部以上230質量部以下がより好ましく、15質量部以上200質量部以下がさらに好ましい。蛍光部材50中の蛍光体70の含有量が上記範囲内であると、発光素子10から発した光を蛍光体70で効率よく波長変換することができる。

0045

蛍光部材70は、フィラー光拡散材等を更に含んでいてもよい。例えば、光拡散材を含むことで、発光素子10からの指向性緩和させ、視野角を増大させることができる。フィラーとしては例えば、シリカ酸化チタン酸化亜鉛酸化ジルコニウムアルミナ等を挙げることができる。蛍光部材50がフィラーを含む場合、フィラーの含有量は例えば、樹脂(100質量部)に対して1質量部以上20質量部以下とすることができる。

0046

(窒化物蛍光体の製造方法)
本発明の一実施形態に係る窒化物蛍光体は、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素と、Alと、Nとを含む組成(以下、「SLAN系の組成」と称する場合がある。)を有する焼成物を準備し、前記焼成物とフッ素含有物質とを接触させ、200℃以上500℃以下の温度で熱処理することによって製造することができる。

0047

前記SLAN系の組成を有する焼成物は、SLAN系の組成を有するように原料を混合し、得られた原料混合物を、例えば温度が1000℃以上1300℃以下、圧力が0.2MPa以上200MPa以下の窒素ガスを含む雰囲気中で焼成することによって得ることができる。

0048

原料としては、Ca、Sr、Ba及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む金属、合金又は化合物(第一金属化合物)、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む金属、合金又は化合物(第二金属化合物)と、Eu、Ce、Tb及びMnからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む金属、合金又は化合物(第四金属化合物)、と、Alを含む金属、合金又は化合物(第三金属化合物)等が挙げられる。化合物としては、水素化物、窒化物フッ化物酸化物、炭酸塩、塩化物等を挙げることができ、発光特性を向上させる観点から、水素化物、窒化物及びフッ化物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。

0049

原料としては、第一金属化合物は、具体的には、SrN2、SrN、Sr3N2、SrH2、SrF2、Ca3N2、CaH2、CaF2等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。

0050

第二金属化合物は、具体的には、Li3N、LiN3、LiH、LiAlH4等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。第二の金属化合物は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。

0051

第三金属化合物は、具体的には、AlN、AlH3、AlF3、LiAlH4等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。第三の金属化合物は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
焼成物の組成中に、Alの一部にSiを含む場合には、金属元素としてSiを含む金属化合物を用いることが好ましい。Siを含む金属化合物としては、SiO2、Si3N4、SiC、SiCl4等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。Siを含む金属化合物は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。

0052

第四金属化合物として具体的には、Eu2O3、EuN、EuF3等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。本実施形態に係る窒化物蛍光体に用いる焼成物は、発光の中心として2価のEuを含むが、2価のEuは酸化されやすく、3価のEuを含む金属化合物を用いて原料混合物を構成してもよい。
第四金属化合物がEuの場合、Euの一部がSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等で置換されていてもよい。Euの一部を他の元素で置換することにより、他の元素は例えば共賦活剤として作用すると考えられる。窒化物蛍光体を共賦活とすることにより色調を変化させることができ、発光特性の調整を行うことができる。Euを必須とする混合物を窒化物蛍光体として使用する場合、所望により配合比を変えることができる。ユウロピウムは、主に2価と3価のエネルギー準位を持つが、本実施形態に係る窒化物蛍光体に用いる焼成物は、少なくともEu2+を賦活剤として用いる。

0053

原料混合物は、フラックスを含んでいてもよい。原料混合物がフラックスを含むことで、原料間の反応がより促進され、さらには固相反応がより均一に進行するために粒径が大きく、発光特性により優れた窒化物蛍光体を得るために用いる焼成物を製造することができる。原料混合物がフラックスを含む場合、フラックス成分反応性を促進するが、多すぎると発光強度の低下につながるため、その含有量は原料混合物中に例えば10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下がより好ましい。

0054

原料混合物は、例えば窒素ガス雰囲気中で、好ましくは1000℃以上1400℃以下の範囲で焼成して焼成物を得ることができる。窒素ガス雰囲気は、窒素ガスを含む雰囲気であればよく、窒素ガスに加えて水素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素アンモニア等からなる群から選択される少なくとも1種を含む雰囲気とすることもできる。窒素ガス雰囲気は、窒素ガスの比率が70体積%以上であることが好ましく、80体積%以上がより好ましい。焼成は、0.2MPa以上200MPa以下の加圧雰囲気で行うことが好ましい。

0055

SLAN系窒化物蛍光体は、前記焼成物をフッ素含有物質と接触させ、200℃以上500℃以下で熱処理することによって、焼成物の表面近傍の焼成物を構成するSr等の元素が二酸化炭素や水分等と反応して生成された炭酸塩中の炭酸基や水酸化物中の水酸基とフッ素が置換され、炭酸塩や水酸化物の生成が抑制される。また、SLAN系窒化物蛍光体は、前記焼成物をフッ素含有物質と接触させ、前記熱処理することによって、表面近傍にフッ素を含む化合物が膜状に形成される。フッ素含有物質は、F2、CHF3、CF4、NH4F2、NH4F、SiF4、KrF2、XeF2、XeF4、及びNF3からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、より好ましくはフッ素ガス(F2)又はフッ化アンモニウム(NH4F)である。

0056

焼成物と常温固体状態又は液体状態のフッ素含有物質とを接触させる環境の温度は、室温(20℃±5℃)から熱処理温度よりも低い温度でもよく、熱処理温度でもよい。具体的には、20℃以上200℃未満の温度でもよく、20℃以上500℃以下の温度でもよい。焼成物と常温で固体状態のフッ素含有物質とを接触させる環境の温度が20℃以上200℃未満の場合は、複数回の熱処理を行なうことが好ましい。また、焼成物と常温で固体状態のフッ素含有物質とを接触させる環境温度が20℃以上100℃未満の場合は焼成物とフッ素含有物質とを接触させた後、200℃以上500℃以下の熱処理を行なうことが好ましい。室温よりも高い温度以上200℃未満の温度で熱処理を行なう場合は、熱処理時間が1回に1時間以上10時間以下であることが好ましい。
フッ素含有物質が気体である場合には、フッ素含有物質を含む雰囲気中に焼成物を配置して接触させ、200℃以上500℃以下で熱処理を行なうことが好ましい。200℃以上500℃以下の熱処理を続けて行なう時間は、好ましくは1時間以上10時間以下である。
フッ素含有物質がF2(フッ素ガス)であり、F2を含む雰囲気中で焼成物を200℃以上500℃以下で熱処理する場合には、雰囲気中のF2濃度は、好ましくは2体積%以上25体積%以下であることが好ましい。
熱処理は、不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。不活性ガス雰囲気とは、アルゴン、ヘリウム、窒素等を雰囲気中の主成分とする雰囲気を意味する。不活性ガス雰囲気は、不可避的不純物として酸素を含むことがあるが、ここでは、雰囲気中に含まれる酸素の濃度が15体積%以下であれば不活性ガス雰囲気とする。不活性ガス雰囲気中の酸素の濃度は、好ましくは10体積%以下、特に好ましくは1体積%以下である。具体的には、特願2016−037616号に記載の方法によって、本発明の一実施形態に係るSLAN系窒化物蛍光体を製造することができる。

0057

以下、本発明を実施例により具体的に説明する。

0058

(焼成物の作製)
Sr、Li、Eu、Al、及びNを含む組成を有する蛍光体を製造した。
具体的には、一般式(I)のMavMbwMcxAl3−ySiyNzで表される組成を有する蛍光体として、MaがSr、MbがLi、McがEuとし、SrNu(u=2/3、Sr2NとSrNの混合物)、SrF2、LiAlH4、AlN、EuF3を各原料として用い、それを仕込み量比としてのモル比が、Sr:Li:Eu:Al:N=0.9925:1.2:0.0075:3になるように、不活性ガス雰囲気のグローブボックス内で計量した後、混合して原料混合物を得た。ここでSrNuとSrF2の重量比は94:6とした。また、Liは焼成時に飛散しやすいため、理論値より多めに配合した。原料混合物をルツボに充填し、窒素ガス雰囲気で、ガス圧力ゲージ圧として0.92MPa(絶対圧力では1.02MPa)として、温度が1100℃で、熱処理を3時間行い、Sr0.9925LiEu0.075Al3N4で表される組成を有する焼成物を得た。その後、この焼成物を分散、分級処理を行い、焼成物1を得た。

0059

(実施例1)
焼成物1をフッ素ガス(F2)と窒素ガス(N2)とを含み、フッ素ガス濃度が20体積%、窒素ガス濃度が80体積%以上である雰囲気中、温度を350℃、処理時間を8時間として熱処理を行い、実施例1のSLAN系窒化物蛍光体の粉末を得た。

0060

(比較例1)
焼成物1を比較例1のSLAN系窒化物蛍光体とした。

0061

(実施例2)
熱処理の温度を150℃にし、この熱処理の温度以外は各熱処理の初期条件を実施例1と同じ条件にして8時間の熱処理を3回繰り返して行った以外は、実施例1と同じ条件で、実施例2のSLAN系窒化物蛍光体の粉末を得た。

0062

(実施例3)
フッ素ガス濃度を10体積%にし、熱処理温度を400℃にする以外は、実施例1と同じ条件で、実施例3のSLAN系窒化物蛍光体の粉末を得た。

0063

(比較例2)
熱処理の温度を150℃にする以外は、実施例1と同じ条件で、比較例2のSLAN系窒化物蛍光体の粉末を得た。

0064

<評価>
(フーリエ変換赤外分光装置によって測定される赤外吸収スペクトル)
得られた窒化物蛍光体について、フーリエ変換赤外分光装置(製品名:NicoletiS50、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて、赤外吸収スペクトルを測定した。結果を図1に示す。前記FT−IRを用いて、各窒化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおける450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度の最大値を1としたときに、1200cm−1から1600cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインAとし、このベースラインAと1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z1と、2700cm−1から3680cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインBとし、このベースラインBと2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z2を求めた。
具体的には、各窒化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおいて、450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度の最大値を1としたときに、まず、1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域の吸光度スペクトルの全体の積分値Z01を算出する。次に、1200cm−1から1600cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインAとする。吸光度値0から波数1200cm−1における吸光度値を結ぶ直線と、ベースラインAと、吸光度値0から波数1600cm−1における吸光度値を結ぶ直線とで囲われた略台形の面積の積分値Zt1をバックグラウンドとして算出する。最後に、前記ベースラインAと1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z1は、前記積分値Z01からバックグラウンドである前記積分値Zt1を除いた差分を積分値Z1として算出した。
また、各窒化物蛍光体の赤外吸収スペクトルにおいて、450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度の最大値を1としたときに、まず、2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域の吸光度スペクトルの全体の積分値Z02を算出する。次に、2700cm−1から3680cm−1の波数領域の両端の吸光度値を結ぶ直線をベースラインBとする。吸光度値0から波数2700cm−1における吸光度値を結ぶ直線と、ベースラインBと、吸光度値0から波数3680cm−1における吸光度値を結ぶ直線とで囲われた略台形の面積の積分値Zt2をバックグラウンドとして算出する。最後に、
前記ベースラインBと2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z2は、前記積分値Z02からバックグラウンドである前記積分値Zt2を除いた差分を積分値Z2として算出した。
FT−IRを用いた赤外吸収スペクトルは、波数分解能を4.0cm−1とし、積算回数を32回として測定した。

0065

(フッ素元素の含有量)
得られた窒化物蛍光体について、誘導結合プラズマ発光分析装置(Perkin Elmer(パーキンエルマー)社製)を用いて、ICP発光分析法により、組成分析を行ない、窒化物蛍光体中のフッ素元素の含有量を求めた。窒化物蛍光体中のフッ素元素の含有量(質量%)を表1に示す。

0066

保管試験
得られた窒化物蛍光体を用いて発光装置をそれぞれ作製した。各実施例及び比較例の窒化物蛍光体を第一の蛍光体71とし、緑色蛍光体であるβサイアロンを第二の蛍光体72として、シリコーン樹脂に分散した蛍光部材50で、主波長451nmの窒化物系半導体発光素子を被覆して、色度(x,y)=(0.250,0.220)付近となる表面実装型の発光装置100を作製した。この発光装置を温度が85℃、相対湿度が85%で100時間保管した後、色度xを測定し、保管試験前の色度xに対する変化量(絶対値)として求めた。結果を表1に示す。

0067

SEM画像
得られた窒化物蛍光体をエポキシ樹脂に包埋し、窒化物蛍光体の断面がでるように切削し、表面を紙やすり研磨した後、クロスセクションポリッシャー(CP)で表面を仕上げ走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、実施例1及び比較例1,2の各窒化物蛍光体の断面SEM画像を得た。図3は、実施例1の窒化物蛍光体の断面を拡大したSEM写真であり、図4は、実施例1の窒化物蛍光体の断面を示すSEM写真である。図5は、比較例1の窒化物蛍光体の断面を示すSEM写真である。図6は、比較例2の窒化物蛍光体の断面を示すSEM写真である。

0068

(平均粒径)
得られた窒化物蛍光体について、レーザー回折式粒度分布測定装置(製品名:MASTERSIZER(マスターサイザー)2000、MALVERN(マルバーン)社製)により平均粒径を測定した。平均粒径は、体積平均粒径(メジアン径)である。結果を表1に示す。

0069

表1に実施例及び比較例の焼成物とフッ素含有物質との接触条件及び熱処理条件を記載した。

0070

0071

実施例1から3の窒化物蛍光体は、FT−IRによって測定された赤外吸収スペクトルにおいて、450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度の最大値を1としたときに、ベースラインAと1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z1が4.0以下であり、ベースラインBと2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域における吸光度スペクトルで囲われた領域の積分値Z2が5.0以下であった。この結果から、実施例1から3の窒化物蛍光体は、二酸化炭素、水分等との反応による影響が少ないことが確認できる。実施例1から3の窒化物蛍光体を用いた発光装置は、保管後の色度xの変化が比較例よりも低く、耐久性が改善された発光装置であることが確認できた。
一方、比較例1及び2の窒化物蛍光体は、前記積分値Z1が4.0を超えていることから、また、前記積分値Z2が5.0を超えていることから、窒化物蛍光体を構成する元素と二酸化炭素、水分等との反応による影響が大きいと推測された。比較例1及び2の窒化物蛍光体を用いた発光装置は、色度xの変化が大きく、耐久性に問題があった。
実施例1から3の窒化物蛍光体は、Sr0.9925LiEu0.075Al3N4の組成を有し、フッ素の含有量が1質量%以上7質量%以下であり、前述のとおり、実施例1から3の窒化物蛍光体を用いた発光装置は、保管後の色度xの変化が少なく、実施例1から3の窒化物蛍光体の表面近傍には、後述のSEM写真で確認できるフッ素を含む化合物が膜状に形成され、この膜状のフッ素を含む化合物が保護膜として機能していると考えられた。

0072

図1及び図2に示すように、実施例1から3の窒化物蛍光体は、FT−IRによって測定された赤外吸収スペクトルにおいて450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度の最大値を1としたときに、1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域と、2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域で特に目立つようなピークは確認できなかった。
一方、図1及び図2に示すように比較例1及び2の窒化物蛍光体は、FT−IRによって測定された赤外吸収スペクトルにおいて450cm−1以上900cm−1未満の波数領域における吸光度の最大値を1としたときに、1200cm−1以上1600cm−1未満の波数領域と、2700cm−1以上3680cm−1未満の波数領域に、それぞれ炭酸基(CO32−)と、水酸基(OH)に由来する比較的大きなピークがあることが確認できた。この結果から、比較例1及び2の窒化物蛍光体は、表面近傍の元素が二酸化炭素、水分等と反応して炭酸塩や水酸化物が生成されていることが推測できる。

0073

図3に示される実施例1の窒化物蛍光体の断面の拡大したSEM写真から確認できるとおり、実施例1の窒化物蛍光体の表面にはフッ素と窒化物蛍光体の構成元素の1種(例えばSr元素)を含む化合物を含む第一の膜1が形成されており、第一の膜1の下層には、窒化物蛍光体の構成元素、例えばSr、Al、N及びF(フッ素)を含む第二の膜2が形成されていた。フッ素を含む化合物からなる第一の膜1及び第二の膜2によって、これらの膜が保護膜として機能し、窒化物蛍光体の表面近傍において、窒化物蛍光体を構成する元素、例えば、アルカリ土類金属(Ca、Sr、Ba、Mg)又はアルカリ金属(Li、Na、K)が二酸化炭素、水分等と反応し難くなり、二酸化炭素、水分等との反応による影響が小さくなることで、SLAN系窒化物蛍光体の耐久性を向上していると考えられる。図4に示される実施例1の窒化物蛍光体の断面のSEM写真において、符号3は、SLAN系窒化物蛍光体の結晶(SLAN系結晶)であり、符号4は、窒化アルミニウムの結晶(AlN結晶)であると考えられる。また、符号5で示される第一の化合物は、窒化物蛍光体を構成する元素、例えばSrと、Alと、さらに酸素(O)、及び(F)を含む化合物と考えられる。

0074

図5に示される比較例1の窒化物蛍光体の断面のSEM写真から確認できるとおり、比較例1の窒化物蛍光体の表面には、窒化物蛍光体を構成する元素、例えばSrと、Alとが酸素等と反応した酸素(O)、及び(N)を含む化合物の第三の膜6が形成されていた。このように、比較例1の窒化物蛍光体は、表面近傍の窒化物蛍光体を構成する元素と二酸化炭素、水分等との反応による影響が大きく、窒化物蛍光体の劣化が進み、表1に示すように、保管後の色度xの変化が大きくなり、実施例1から3の窒化物蛍光体よりも耐久性に劣っていると推測された。

0075

図6に示される比較例2の窒化物蛍光体の断面のSEM写真からは、窒化物蛍光体の表面に膜が形成されていることが確認できず、窒化物蛍光体の粒子中に、SLAN系結晶3又はAlN結晶4とは異なる、窒化物蛍光体を構成する元素、例えばSrと、Alと、窒素(N)とを含み、さらに酸素(O)、及びフッ素(F)を含む第二の化合物7が形成されていることが確認できた。比較例2の窒化物蛍光体は、表1に示すように、窒化物蛍光体の粒子中に、窒化物蛍光体の結晶構造を構成する元素と、酸素、フッ素等が反応した化合物形成されていることによって、窒化物蛍光体の分解が進み、色度xの変化が大きくなっていると推測された。

実施例

0076

表1に示す結果から、本発明の一実施形態に係る窒化物蛍光体は、前記環境下で保管した後も色調の変化が抑制されている。このように、本発明の一実施形態に係る窒化物蛍光体は、耐久性に優れるため、この窒化物蛍光体を用いることにより、信頼性の高い発光装置を提供することができる。

0077

本開示の窒化物蛍光体を用いた発光装置は、特に発光ダイオードを励起光源とする発光特性に極めて優れた照明用光源LEDディスプレイ液晶用バックライト光源信号機照明式スイッチ、各種センサ及び各種インジケータ等に好適に利用できる。

0078

1:第一の膜、2:第二の膜、3:SLAN系結晶、4:AlN結晶、5:第一の化合物、6:第三の膜、7:第二の化合物、10:発光素子、40:成形体、50:蛍光部材、71:第一の蛍光体、72:第二の蛍光体、100:発光装置。

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