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技術 湯種生地と中種生地を含むパン生地の製造方法

出願人 株式会社武蔵野フーズ
発明者 安田定明安田信行菅野篤史
出願日 2016年8月25日 (4年8ヶ月経過) 出願番号 2016-164663
公開日 2018年3月1日 (3年2ヶ月経過) 公開番号 2018-029539
状態 特許登録済
技術分野 ベイカリー製品及びその製造方法
主要キーワード 中間生地 連続焼成装置 プランジャー速度 使用プラン ガス対流 工場規模 トンネルオーブン 放射パネル
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年3月1日)のものです。
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図面 (3)

課題

中種低温長時間発酵法と湯種法の利点を維持しつつ、工場規模大量生産に適したパン生地製造法を提供する。

解決手段

湯種生地中種生地の2種類の中間生地を作成し、両生地をそれぞれ5〜20℃の温度で6〜14時間保存した後に、残りの小麦粉を加えて本捏ね工程で混捏してパン生地を作成することにより、硬さ、弾力性凝集性および食感が改善されたパンが製造できるパン生地の製造方法。

概要

背景

製パン法は、ストレート法(直捏法とも呼ばれる)と中種法とに大別される。ストレート法は、小麦粉、水、砂糖、油脂、食塩酵母などの全ての製パン原材料を一度に混捏発酵させる方法で、風味良好なパンが得られるのが長所である。その反面、発酵の温度、時間は厳密に管理する必要があり、生地機械耐性に劣るなどの欠点があり大量生産には適さない方法であることはよく知られている。

中種法は、製パン原材料の一部を混捏発酵させた後、残りの原材料を加えて本捏する方法で、出来上がったパンの内層きめが細かく、ソフトで老化が遅いパンができる。その反面、製パンには長時間が必要で、通常行われる2〜4時間で発酵させる中種製パン法では、風味がストレート法に比べて劣るなどの欠点があった。

近年、こうした中種法の欠点を改良して、長所を活かす製パン法が考案されている。それらの方法に共通するのは、中種を比較的低温に長時間保持することにより風味を補うことである。しかしながら、低温中種法では、酵母の発酵に伴って発生する炭酸ガスによりパン生地膨張することによって生地自体が断熱材となり、生地の外側と中心部とで熱が伝導しにくくなり、中種の量が増えるほど外側と中心部との温度差が拡大して、発酵状態が不均一となるという問題があった。

そこで、中種の捏上げ温度、中種の温度履歴を制御することによって、工場規模の大量生産においても中種の外側と中心部との温度差の発生を抑えることにより、焼き上げたパン製品ボリューム、風味や食感が良好となる中種製パン法として、小麦粉、イースト、水、その他の製パン材料を混合し、15〜24℃で捏上げた中種を、0〜15℃の環境下で10〜20時間置き、次いで13〜28℃で5〜15時間置いて昇温させてから本捏を行う中種発酵熟成パン類連続製造方法が提案された(特許文献1)。

さらに改善された方法として、中種の発酵を低温で行う中種法と遠赤外焼成を組み合わせて、16〜20℃の中種温度となるように捏上げた後、6〜15℃の環境温度で10〜15時間の範囲内で中種の発酵を行う中種調製工程と遠赤外線焼成工程により、風味、硬さ、弾力性凝集性が改善され、かつ揮発性成分含有量が少ないパン類を製造する中種連続製パン方法(特許文献2)が提案された。

一方、小麦粉に熱水を加えて混捏して中間生地を調製する方法は、湯種法として知られており、もっちりとした食感のパンが得られるが、湯種法では小麦粉中のグルテンが熱水で変性されるため、焼成後にパンが潰れる現象を起こしやすくなる。そのため良好な焼成状態を得るために、湯種生地を−5〜15℃の温度で15時間以上72時間以下保存すること(特許文献3)や、湯種とは別に残りの小麦粉を用いて中間生地を作成し、湯種と中間生地を混捏してパン生地を製造する方法(特許文献4)が提案されている。

概要

中種低温長時間発酵法と湯種法の利点を維持しつつ、工場規模の大量生産に適したパン生地の製造法を提供する。湯種生地と中種生地の2種類の中間生地を作成し、両生地をそれぞれ5〜20℃の温度で6〜14時間保存した後に、残りの小麦粉を加えて本捏ね工程で混捏してパン生地を作成することにより、硬さ、弾力性、凝集性および食感が改善されたパンが製造できるパン生地の製造方法。なし

目的

本発明は、低温長時間中種発酵法と湯種法を用いる製パン法において、焼成工程として遠赤外線焼成を用いなくても、硬さ、弾力性、凝集性及び食感が良好であるパン製品を製造する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部を用いて熱水を加えて混捏し、その後20℃以下まで冷却した中間生地Aと、最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部を用いて通常の中種製法により混捏した中間生地Bとを、それぞれ5℃以上20℃以下の温度で6時間以上14時間以下保存する保存工程と、保存後の中間生地AとBに、さらに最終のパン生地に必要な小麦粉の残りの小麦粉を加え、本捏ね工程にて混捏するパン生地作成工程と、パン生地を最終発酵させるパン生地発酵工程と、を包含することを特徴とするパン生地の製造方法。

請求項2

中間生地Aが、最終のパン生地に必要な小麦粉の10〜20%に対して90〜200%の熱水を加えて混捏したものであり、中間生地Bが、最終のパン生地に必要な小麦粉の50〜60%に水及びイースト等の副原料を加えて混捏したものであり、本捏ね工程で加える残りの小麦粉が、最終のパン生地に必要な小麦粉の20〜40%である、請求項1に記載のパン生地の製造方法。

請求項3

中間生地Aを、8〜12℃の温度で10〜14時間保存する保存工程を包含する、請求項1または2に記載のパン生地の製造方法。

請求項4

中間生地Bを、6〜15℃の温度で10〜14時間保存する、より好ましくは、6〜12℃の温度で5〜6時間次いでより高い11〜15℃の温度で5〜8時間、計10〜14時間保存する保存工程を包含する、請求項1ないし3のいずれかに記載のパン生地の製造方法。

請求項5

最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部を用いて熱水を加えて混捏し、その後20℃以下まで冷却した中間生地Aと、最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部を用いて通常の中種製法により混捏した中間生地Bとを、それぞれ5℃以上20℃以下の温度で6時間以上14時間以下保存する保存工程と、保存後の中間生地AとBに、さらに最終のパン生地に必要な小麦粉の残りの小麦粉を加え、本捏ね工程にて混捏するパン生地作成工程と、パン生地を最終発酵させた後に焼成する工程と、を包含することを特徴とするパン製品の製造方法。

請求項6

焼成が、遠赤外線焼成である請求項5に記載のパン製品の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、湯種生地中種生地を別々に作成し、これらを含むパン生地を本捏ね工程で作成するパン生地の製造方法に関する。

背景技術

0002

製パン法は、ストレート法(直捏法とも呼ばれる)と中種法とに大別される。ストレート法は、小麦粉、水、砂糖、油脂、食塩酵母などの全ての製パン原材料を一度に混捏発酵させる方法で、風味良好なパンが得られるのが長所である。その反面、発酵の温度、時間は厳密に管理する必要があり、生地機械耐性に劣るなどの欠点があり大量生産には適さない方法であることはよく知られている。

0003

中種法は、製パン原材料の一部を混捏発酵させた後、残りの原材料を加えて本捏する方法で、出来上がったパンの内層きめが細かく、ソフトで老化が遅いパンができる。その反面、製パンには長時間が必要で、通常行われる2〜4時間で発酵させる中種製パン法では、風味がストレート法に比べて劣るなどの欠点があった。

0004

近年、こうした中種法の欠点を改良して、長所を活かす製パン法が考案されている。それらの方法に共通するのは、中種を比較的低温に長時間保持することにより風味を補うことである。しかしながら、低温中種法では、酵母の発酵に伴って発生する炭酸ガスによりパン生地が膨張することによって生地自体が断熱材となり、生地の外側と中心部とで熱が伝導しにくくなり、中種の量が増えるほど外側と中心部との温度差が拡大して、発酵状態が不均一となるという問題があった。

0005

そこで、中種の捏上げ温度、中種の温度履歴を制御することによって、工場規模の大量生産においても中種の外側と中心部との温度差の発生を抑えることにより、焼き上げたパン製品ボリューム、風味や食感が良好となる中種製パン法として、小麦粉、イースト、水、その他の製パン材料を混合し、15〜24℃で捏上げた中種を、0〜15℃の環境下で10〜20時間置き、次いで13〜28℃で5〜15時間置いて昇温させてから本捏を行う中種発酵熟成パン類連続製造方法が提案された(特許文献1)。

0006

さらに改善された方法として、中種の発酵を低温で行う中種法と遠赤外焼成を組み合わせて、16〜20℃の中種温度となるように捏上げた後、6〜15℃の環境温度で10〜15時間の範囲内で中種の発酵を行う中種調製工程と遠赤外線焼成工程により、風味、硬さ、弾力性凝集性が改善され、かつ揮発性成分含有量が少ないパン類を製造する中種連続製パン方法(特許文献2)が提案された。

0007

一方、小麦粉に熱水を加えて混捏して中間生地を調製する方法は、湯種法として知られており、もっちりとした食感のパンが得られるが、湯種法では小麦粉中のグルテンが熱水で変性されるため、焼成後にパンが潰れる現象を起こしやすくなる。そのため良好な焼成状態を得るために、湯種生地を−5〜15℃の温度で15時間以上72時間以下保存すること(特許文献3)や、湯種とは別に残りの小麦粉を用いて中間生地を作成し、湯種と中間生地を混捏してパン生地を製造する方法(特許文献4)が提案されている。

先行技術

0008

特開平11-196758号公報
特開2013−138663号公報
特許第3167692号明細書
特許第4158090号明細書

発明が解決しようとする課題

0009

本発明は、低温長時間中種発酵法と湯種法を用いる製パン法において、焼成工程として遠赤外線焼成を用いなくても、硬さ、弾力性、凝集性及び食感が良好であるパン製品を製造する方法を提供することを課題とする。

0010

また、中種を比較的低温に長時間保持する中種法によるパン製品の品質を維持するために、従来15〜35時間と製造時間が長くかかるという問題を解決するのと共に、さらに出来上がったパン製品の品質の改善も目指すものであり、工場規模の大量生産に適し、硬さ、弾力性、凝集性及び食感が良好でありながら、製造時間を短縮する製パン技術を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明のパン生地の製造方法は、湯種生地と中種生地の2種類の中間生地を作成し、両生地をそれぞれ5〜20℃の温度で6〜14時間保存するという保存工程を設けることにより、湯種生地の保存と中種生地の発酵を同じ時間内で行うことができ、製造時間を短縮できるばかりか、湯種法と中種を比較的低温に長時間保持する中種法の両製法の利点が維持されたパン製品を製造することを可能にしたものであって、工場規模での大量生産にも適するものとなる。

0012

保存した後の湯種生地と中種生地に、残りの小麦粉を加えて本捏ね工程で混捏してパン生地を作成することにより、中種の発酵を低温で行う中種法と遠赤外線焼成を組み合わせる方法(特許文献2)によって製造したパン製品以上に、硬さ、弾力性、凝集性及び食感が良好であるパン製品を製造することが可能となる。また、焼成工程に遠赤外線焼成を用いれば、さらにより特性と食感が改善されたパン製品が製造できるものである。

0013

本発明は,以下の技術的事項から構成される。
(1) 最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部を用いて熱水を加えて混捏し、その後20℃以下まで冷却した中間生地Aと、最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部を用いて通常の中種製法により混捏した中間生地Bとを、それぞれ5℃以上20℃以下の温度で6時間以上14時間以下保存する保存工程と、保存後の中間生地AとBに、さらに最終のパン生地に必要な小麦粉の残りの小麦粉を加え、本捏ね工程にて混捏するパン生地作成工程と、パン生地を最終発酵させるパン生地発酵工程と、を包含することを特徴とするパン生地の製造方法。
(2)中間生地Aが、最終のパン生地に必要な小麦粉の10〜20%に対して90〜200%の熱水を加えて混捏したものであり、中間生地Bが、最終のパン生地に必要な小麦粉の50〜60%に水及びイースト等の副原料を加えて混捏したものであり、本捏ね工程で加える残りの小麦粉が、最終のパン生地に必要な小麦粉の20〜40%である、(1)に記載のパン生地の製造方法。
(3)中間生地Aを、8〜12℃の温度で10〜14時間保存する保存工程を包含する、(1)または(2)に記載のパン生地の製造方法。
(4)中間生地Bを、6〜15℃の温度で10〜14時間保存する、より好ましくは、6〜12℃の温度で5〜6時間次いでより高い11〜15℃の温度で5〜8時間、計10〜14時間保存する保存工程を包含する、(1)ないし(3)のいずれかに記載のパン生地の製造方法。
(5)最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部を用いて熱水を加えて混捏し、その後20℃以下まで冷却した中間生地Aと、最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部を用いて通常の中種製法により混捏した中間生地Bとを、それぞれ5℃以上20℃以下の温度で6時間以上14時間以下保存する保存工程と、保存後の中間生地AとBに、さらに最終のパン生地に必要な小麦粉の残りの小麦粉を加え、本捏ね工程にて混捏するパン生地作成工程と、パン生地を最終発酵させた後に焼成する工程と、を包含することを特徴とするパン製品の製造方法。
(6)焼成が、遠赤外線焼成である(5)に記載のパン製品の製造方法。

発明の効果

0014

本発明によれば、湯種法と中種を比較的低温に長時間保持する中種法における長所をそれぞれ維持しながらも、工場規模の大量生産に適する方法であり、その結果、遠赤外線焼成を用いなくても、遠赤外線で焼成したパンより、硬さ、弾力性、凝集性及び食感が良好であるパン製品を提供することができ、さらに遠赤外線焼成を行えば、今までにない優れた特性と食感を有するパン製品の製造を可能とするものである。

図面の簡単な説明

0015

中種発酵時間が12時間で、12時間保存した湯種生地との混合の有無と遠赤外線焼成の有無による、パン製品の「硬さ」の経時変化の違いを示す。(以下の図において、「12hr通常」は、従来の中種発酵時間が12時間であり、焼成が通常のオーブンでの焼成であることを示し、「12hr遠赤」は、従来の中種発酵時間が12時間であり、焼成が遠赤外線オーブンでの焼成であることを示し、「12hr通常新法」は、本発明の中種発酵時間が12時間で12時間保存した湯種生地との混合生地であり、焼成が通常のオーブンでの焼成であることを示し、「12hr新法遠赤」は、本発明の中種発酵時間が12時間で12時間保存した湯種生地との混合生地であり、焼成が遠赤外線オーブンでの焼成であることを意味する。)
中種発酵時間が12時間で、12時間保存した湯種生地との混合の有無と遠赤外線焼成の有無による、パン製品の「弾力性」の経時変化の違いを示す。
中種発酵時間が12時間で、12時間保存した湯種生地との混合の有無と遠赤外線焼成の有無による、パン製品の「凝集性」の違いを示す。

0016

本発明は、中種の発酵を低温で行う中種法と湯種法を併用して、中種生地と湯種生地の2種類の中間生地を作成し、2つの中間生地A、Bを、それぞれ5℃以上20℃以下の温度で6時間以上14時間以下保存するという保存工程を設け、保存後2つの中間生地A.Bを混合して本捏ね工程にて混捏してパン生地を作成することを特徴とするものである。そして、これらの工程を包含することにより、遠赤外線焼成を行わなくても、低温長時間発酵による中種調製工程と遠赤外線焼成工程を組み合わせる方法よりも、硬さ、弾力性、凝集性が改善されたパン製品を製造することができるものであり、さらに遠赤外線焼成を行えば、今までにはなかった程の優れた品質のパン製品を提供することができる。
本発明のパン生地の製造方法により製造されるパンとしては、フランスパン食パン菓子パンデニッシュペストリーの他、中華まんじゅう、蒸しパン、イーストドーナッツなどのイーストを使用するパン全てを含むものである。
以下、各工程について詳しく説明する。

0017

[湯種法による中間生地Aの調製]
最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部の小麦粉に対して熱水を加えて混捏する。湯種法では、小麦粉が吸水して加熱され、その小麦粉澱粉の一部が部分的にα化されるものであり、湯種を使用して製造したパン製品には、しっとりした柔らかさと、小麦粉由来麦芽糖の自然な甘み香りが付与される。湯種生地に使用する小麦粉が多すぎると、熱変性を受ける小麦グルテンの割合が多くなり、パン生地が柔らかすぎて粘着性が強くなり、良好な焼成状態が得られにくくなるので、使用する小麦粉の量は、最終のパン生地に必要な小麦粉のうち10〜30%(本願明細書における「%」は、全て「重量%」を意味する。)が好ましく、10〜20%がより好ましい。

0018

熱水とは、温度が70℃以上の水であり、熱水の温度が低いと、混捏後の小麦粉澱粉のα化および麦芽糖の生成が不十分になり、湯種としての効果が得られにくいので、80〜100℃の熱水が好ましい。加える熱水量は、小麦粉100重量部に対して90〜200重量部であり、また、熱水の添加時に、小麦粉に、食塩、糖類、脱脂粉乳米粉などを加えることもでき、これによりパン生地を引き締めることができる。

0019

湯種を作成するときの捏上げ時の生地温度として調整される温度(捏上温度)は55〜70℃が好ましく、より好ましくは60〜65℃に調整する。捏上温度が低いと、混捏後の小麦粉澱粉のα化および麦芽糖の生成が不十分になり、高いと小麦グルテンの熱変性が過度すすむおそれがある。湯種生地は、作成後20℃以下まで急速冷却して中間生地Aとすることにより、グルテン変性抑制効果を高めることができる。冷却後必要に応じてイーストを含む副原料を加えて混捏して中間生地Aとしてもよい。

0020

[中種法による中間生地Bの調製]
湯種生地とは別に、最終のパン生地に必要な小麦粉のうちの一部の小麦粉に、水およびイースト等の副原料を加えて混捏する。使用する小麦粉の量は、最終のパン生地に必要な小麦粉のうち50〜60%が好ましい。イーストは、中種と本捏とに分割して加えることが好ましく、中種には発酵力の弱いイーストを、本捏には発酵力の強いイーストを加える。中種生地には、発酵力が極めて穏やかで持続性に富んでおり、長時間発酵を行う製法に適したもの(低発酵力・長時間中種用イースト)を使用することが好ましい。イーストの量を増やすと一定量まではイーストの増殖数を増やすことができ、その数とパンの体積に密接な関係が認められることが知られている。従来の低温長時間発酵の製法と比べ中種へのイースト投入量を適度に増やすことにより、中種の発酵時間が比較的短くとも充分な発酵が得られるようになる。

0021

イースト以外の副原料としては、イーストフード、糖類、食塩、油脂、乳製品乳化剤生地改良剤等から選択された1種類以上を適宜量使用することができる。原料の混捏は、通常の中種の製法どおり、捏上温度は15〜24℃の範囲であり、低速攪拌を経て水切れ入り、小麦粉に水が完全に分散、吸収されて一つの塊状の生地になるまで行い、中間生地Bを調製する。

0022

[保存工程]
20℃以下まで冷却された中間生地Aを、5〜20℃の温度で6〜14時間保存する。好ましくは、8〜12℃の温度で10〜14時間保存する。熱水を加えて調製した中間生地Aを、この保存温度と保存時間で保存することにより、湯種の特徴を有しながら十分な結合水が含まれるパン生地となり、良好な水和熟成状態が得られるので、この中間生地Aを比較的少量、本捏ね工程で中間生地Bと小麦粉等と混捏することにより、焼成前のパン生地全体に良好な水和状態と熟成状態を付与することができる。

0023

また、中間生地Bは、5〜20℃の温度で6〜14時間保存して中種発酵させる。好ましくは、6〜15℃の温度で10〜14時間保存する、より好ましくは、6〜12℃の温度で5〜6時間次いでより高い11〜15℃の温度で5〜8時間、計10〜14時間保存する。従来の低温長時間中種発酵と比べて環境温度を昇温することで生地温度を昇温させ、中種の発酵時間が比較的短くとも充分な発酵が得られるよう、中種発酵温度を5〜20℃、発酵時間を6〜14時間とする。中種の熟成の度合いは、生地のpHやイーストによるガス発生曲線によって確認することができる。生地の熟成が若めになるとpHが高く滴定酸度は低くなる傾向がある。また、ガス発生曲線がプラトーに到達(頭打ち)する以前の生地は発酵が不充分で未熟な状態であり、頭打ちとなり一定時間経過後に熟成の最高点に到達し、以後時間が経ち過ぎると発酵が進みすぎた過熟な状態となる。

0024

[本捏ね工程によるパン生地作成工程]
所定の保存後の中間生地AとBに対して、残量の小麦粉等を加えて混捏する。
使用する小麦粉の量は、最終のパン生地に必要な小麦粉のうち20〜40%が好ましい。小麦粉の他、水、イーストが加えられ、その他、イーストフード、糖類、食塩、油脂、乳製品、乳化剤、生地改良剤等から選択された1種類以上を適宜量使用することができる。イーストは、本捏ね工程では発酵力が強く、糖配合適性が低糖から高糖の配合にも適した耐糖性に優れた汎用・超高糖生地用イーストを使用することが好ましい。本捏ね工程のイーストは、砂糖を分解するインベルターゼ活性が低いため、焼成したパン着色が淡くなる特色も有する。混捏は、通常の条件(混合条件、捏上温度等)によって、生地の最適状態が得られるまで行う。

0025

[パン生地発酵工程]
作成したパン生地を所定時間発酵させる。発酵は、通常の条件(温度、湿度、時間等)によって行い、フロアタイムでの発酵後、分割して丸めを行い、その後ベンチタイムをとり、ガス抜き、整形後、ホイロをとる。

0026

[焼成工程]
発酵後のパン生地は焼成され、パン製品が製造される。本発明のパン製品には、食パン、フランスパン、菓子パン、デニッシュペストリー、その他の焼成されることにより製造されるパンが含まれるが、本発明は、食パンの製造に最も適している。

0027

焼成は、通常のオーブンでもよいが、パン類や焼き菓子類など焼成処理を伴って調理される食品の焼成に使用されている遠赤外線焼成技術が利用できる。食品類焼成装置には、成形した生地などの被焼成物コンベヤで搬送しながら焼成する装置や石焼などと称される固定の竪型などに分類され、これらの焼成装置において遠赤外線を利用することもよく知られている。
例えば、コンベヤで搬送しながら焼成する連続焼成装置としては、搬送路に沿って長く形成されトンネル状のコンベヤを包囲する炉壁が形成されている。こうした焼成装置は、ガス対流トンネルオーブンと称されるものであり、連続移動炉床が設置され、製品焼成過程において性質の異なった遠赤外線加熱が可能となる。遠赤外線放射パネルは、専用の石とセラミックスなどが使用され、これらを加熱することにより遠赤外線が放射される。
また、遠赤外線による焼成工程の入り口ゾーン加熱水蒸気噴射することにより遠赤外線による焼成効果を最大限に増加させることができる。蒸気雰囲気とするには、加熱水蒸気の噴射あるいは炉内への水の滴下などにより行うことができる。

0028

以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例により限定されるものではない。

0029

本発明方法により、食パンを製造した例である。中間生地Aの製造工程と保存工程、中間生地Bの製造工程と保存工程、本捏工程、発酵工程、焼成工程を、それぞれ以下のように行った。

0030

[中間生地Aの製造工程]
生地配合
小麦粉1000g(最終パン生地製造に必要な小麦粉重量に対し10%)
食塩10g
熱水(98℃) 1200g
混合 低速5分
捏上温度60℃
得られた中間生地Aを急速冷却した。
[保存工程]
10℃の保冷庫で12時間保存した。

0031

[中間生地Bの製造工程]
生地配合
小麦粉6000 g
イースト81g
水 3400 g
混合 低速 3分、中速2分
捏上温度21℃
[保存工程]
14℃で12時間中種発酵した。

0032

[本捏工程]
中間生地Aと中間生地Bに対して以下の原料を加えて混捏した。
生地配合
小麦粉3000 g
イースト150 g
砂糖600 g
食塩190 g
油脂 500 g
水 2000 g
中間生地A 全量
中間生地B 全量
混合 低速3分、中速6分、低速3分、中速3分
捏上温度27℃

0033

[発酵工程]
以下の条件で発酵した。
フロアタイム15分
ベンチアタイム20分
ホイロ 57分

0034

[焼成工程]
以下の条件で焼成して食パンを製造した。
焼成上火温度200℃、下火温度200℃、37分
焼成は通常のガスオーブンで行った。

0035

中間生地Aの製造工程から発酵工程までは、実施例1と同一である。
実施例2では、焼成は遠赤外線ガスオーブンで行った。
焼成上火温度200℃、下火温度200℃、37分
[比較例1]

0036

従来の方法により、食パンを製造した。中間生地B(中種)の製造工程と保存工程、本捏工程、発酵、焼成工程を、それぞれ以下のように行った。

0037

[中種の製造工程]
生地配合
小麦粉7000 g
イースト94g
水 4000 g
混合 低速3分、中速2分
捏上温度21℃
[保存工程]
14℃で12時間中種発酵した。

0038

[本捏工程]
中種に対し、以下の原料を加え、混捏した。
生地配合
小麦粉3000 g
イースト150 g
砂糖600 g
食塩200 g
油脂 500 g
水 2000 g
中種 全量
混合 低速3分、中速6分、低速3分、中速3分
捏上温度27℃

0039

[発酵、焼成工程]
以下の条件で発酵、焼成して食パンを生産した。
フロアタイム15分
ベンチタイム20分
ホイロ 57分
焼成上火温度200℃、下火温度200℃、37分
通常のガスオーブンで焼成した。
[比較例2]

0040

従来の方法により、食パンを製造した。中間生地B(中種)の製造工程と保存工程、本捏工程、発酵、焼成工程を、それぞれ以下のように行った。

0041

[中種の製造工程]
生地配合
小麦粉7000 g
イースト100g
水 4000 g
混合 低速3分、中速2分
捏上温度21℃
[保存工程]
14℃で12時間中種発酵した。

0042

[本捏工程]
中種に対し、以下の原料を加え、混捏した。
生地配合
小麦粉3000 g
イースト150 g
砂糖600 g
食塩200 g
油脂 500 g
水 2000 g
中種 全量
混合 低速3分、中速6分、低速3分、中速3分
捏上温度27℃

0043

[発酵、焼成工程]
以下の条件で発酵、焼成して食パンを生産した。
フロアタイム15分
ベンチタイム20分
ホイロ 57分
焼成上火温度200℃、下火温度200℃、37分
遠赤外線ガスオーブンで焼成した。

0044

実施例1では、中種発酵時間が12時間で、12時間保存した湯種生地と本捏ね工程で混合し、焼成が通常の焼成であり、以下、「12hr通常新法」という。
実施例2では、中種発酵時間が12時間で、12時間保存した湯種生地と本捏ね工程で混合し、焼成が遠赤外線焼成であり、以下、「12hr新法遠赤」という。
比較例1では、中種発酵時間が12時間であり、焼成が通常の焼成であり、以下、「12hr通常」といい、比較例2では、中種発酵時間が12時間であり、焼成が遠赤外線焼成であり、以下、「12hr遠赤」という。

0045

得られた食パンの硬さ、弾力性および凝集性の経時変化を測定した結果を、図1,2,3に示す。「D+」に続く数値は製造後の経過日数を示す。例えば「D+1」は製造後1日が経過していることを示す。

0046

測定条件
測定に使用した機器:EZtest EZ−SX 500N(SHIMADZU社製)、使用プランジャー:径40mm、シリンダー型プランジャー速度:1mm/s、測定方法:50%圧縮×2サイクルサンプル:食パン(カム製造品クラム中央部を測定。

0047

[測定項目測定結果
硬さ:1サイクル目プランジャーにかかる力の最大値であり、パンの硬さそのものを表す。
弾力性:1度押されたパンの厚みが2度目に押すまでに復元する程度で表す。
凝集性:1度目と2度目にパンを潰すのに要するエネルギーの比で、パンの潰れにくさを表す。凝集性が高いことは、パンが潰れにくく「ふんわり」している。

0048

物性測定結果図1〜3に示す。
本発明の製品(12hr通常新法)はD+1〜D+5までのいずれも、従来の製品(12hr遠赤)と同程度の「柔らかい」数値を示しており(図1)、本発明の製品(12hr新法遠赤)は4品の中でD+1〜D+5までいずれも、最も「柔らかい」数値を示した。
弾力性(図2)及び凝集性(図3)については、本発明の製品の「12hr新法遠赤」、「12hr通常新法」がこの順で、D+1〜D+5までのいずれでも、従来の製品の「12hr遠赤」、「12hr通常」より高い数値を示しており、本発明のパン製品の弾力性と凝集性が高いことを示す。

0049

[測定項目と食感との関係]
測定項目と食感との関係は次に示す。
硬さ:数値が高いパンは「硬い」食感、低いパンは「柔らかい」食感。
弾力性:数値が高いパンは弾力的な「噛みごたえ」のある食感、低いパンは塑性のあるつぶれやすい食感。
凝集性:数値が高いパンは「もちもち」、「ふんわり」して、飲み込みやすい食感、低いパンはつぶれやすく、団子になり易く飲み込みにくい食感。

0050

以上を総合すると、本発明のパン生地の製造方法により製造したパンは、他の製法のパンと比較して、「柔らかい」にもかかわらず、「噛みごたえ」があって、「もちもち」、「ふんわり」した食感になっている。

実施例

0051

このように、本発明の湯種法と中種法による生地をそれぞれ、5℃以上20℃以下の温度で6時間以上14時間以下保存する保存工程を経た後、混合して本捏するという本発明のパン生地の製造方法により、湯種法によるもちもち感と中種法による柔らかさと弾力性という、両法の利点を保持できるものであり、遠赤外線焼成によらなくても、遠赤外線で焼成したパンより、硬さ、弾力性、凝集性及び食感が良好であるパン製品を提供できるという、今までにない優れたパン製品を提供できるものである。

0052

本発明のパン生地の製造方法により製造する対象となるパン製品とは、フランスパン、食パン、菓子パン、デニッシュペストリーの他、中華まんじゅう、イーストドーナッツなどのイーストを使用するパン製品全てを含むものであり、これらパン製品の硬さ、弾力性、凝集性および食感が改善される。本発明によれば、湯種法と中種を比較的低温に長時間保持する中種法における長所をそれぞれ維持しながらも、工場規模の大量生産に適する方法であり、その結果、遠赤外線焼成を用いなくても、硬さ、弾力性、凝集性及び食感が良好であるパン製品を提供することができ、さらに遠赤外線焼成を行えば、今までにない優れた特性と食感を有するパン製品の製造を可能とするものである。こうして製造されたパン製品は、これまでには達成することがかなわなかった優れた性状を有するものであり、本発明は、食生活を豊かにし、パン製品のさらなる発展を図れる優れた技術である。

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