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技術 GPCRの機能的立体構造状態を安定化するタンパク質結合ドメインおよびその使用

出願人 フエー・イー・ベー・フエー・ゼツト・ウエーフリエ・ウニベルシテイト・ブリユツセルザ・ボード・オブ・トラステイーズ・オブ・ザ・リーランド・スタンフオード・ジユニア・ユニバーシテイ
発明者 ヤン・ステヤエルトエルス・パルドンセーレン・ラスムセンジユアン・フアングブライアン・コビルカトーン・レーレマンス
出願日 2017年8月7日 (4年4ヶ月経過) 出願番号 2017-152195
公開日 2018年2月22日 (3年10ヶ月経過) 公開番号 2018-027936
状態 特許登録済
技術分野 微生物による化合物の製造 生物学的材料の調査,分析 ペプチド又は蛋白質 核酸・ペプチド類を含むライブラリー技術 酵素、微生物を含む測定、試験 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 減光スイッチ 内側移 ヒンジ運動 ガラスサンド 範囲レベル 同時情報 超微粒粉末 空間的次元
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題

蛋白質共役受容体(GPCR)の個々の配座異性体高分解能構造解析のための新しい直接的なツールの提供。

解決手段

ナノボディを前記GPCR、及び前記GPCRのアゴニストと接触させること、及び前記アゴニストが非存在下における前記GPCRと比較した、前記アゴニストが存在下における前記GPCRへの前記ナノボディの結合の改善を検出すること、又は前記ナノボディが非存在下における前記GPCRと比較した、前記ナノボディ存在下における前記アゴニストへの前記GPCRのアフィニティーの増強を検出すること、を含む、活性立体構造状態にある前記GPCRに特異的に結合し安定化し得るナノボディのスクリーニング方法

概要

背景

Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、ヒトゲノムにおける最大のファミリー膜タンパク質である。これは、生体アミンアミノ酸ペプチドタンパク質プロスタノイドリン脂質脂肪酸ヌクレオシドヌクレオチド、Ca2+イオン匂い分子苦味および甘味物質フェロモンならびにプロトン等のリガンドの多様なセットに対する生理応答において重要な役割を果たす(Heilkerら、2009)。GPCRは、広範な疾患の治療標的である。GPCRは、細胞外アミノ末端および細胞カルボキシル末端を有する7個の膜貫通ドメインによって特徴付けられ、7回膜貫通または7ヘリックス(heptahelical)受容体とも称される(Rosenbaumら、2009)。効率的な光検出に高度に特化したGPCRであるロドプシンは、その生化学的安定性およびウシ網膜における豊富天然の存在量のため、GPCRシグナル伝達および構造生物学パラダイムである(Hofmannら、2009)。対照的に、多くのGPCRは、複数のGタンパク質アイソフォーム活性を調節することおよびGタンパク質非依存的シグナル伝達経路(例えば、β−アレスチン)により、複雑な機能的挙動呈示する。一部の事例において、GPCRは、リガンド不在下であっても、特異的シグナル伝達経路に対して基礎活性を呈示し得る。GPCRに作用するオルソステリックリガンドは、下流のシグナル伝達経路における多種多様な効果を有し得る。完全アゴニストは、受容体を最大限に活性化する。部分アゴニストは、飽和濃度であっても最大下刺激を誘発する。インバースアゴニストは基礎活性を阻害し、一方、ニュートラルアンタゴニストは基礎活性に効果がないが、他のリガンドの結合を競合的に遮断する。

ホルモンおよび神経伝達物質に対するGPCRの複雑な挙動は、その構造的柔軟性に起因し得る(Kobilka and Deupi、2007)。機能的および生物物理学的研究から得られた証拠は、GPCRが、複数の機能的に異なる立体構造状態で存在し得ることを示す(Kobilka and Deupi、2007)。この構造的柔軟性および動的挙動は、正常機能に必須であるが、その生化学的不安定性をもたらし、高分解能結晶構造を得るのが困難となる。現在のところ、ヒトβ2AR(Rasmussenら、2007;Rosenbaumら、2007;Cherezovら、2007;Hansonら、2008)、トリβ1AR(Warneら、2008)およびヒトA2アデノシン受容体(Jaakolaら、2008)の結晶構造が報告されている。ロドプシンは、天然の組織から単離された無修飾のタンパク質から結晶化され得るが、これら他のGPCRは、組換え系における発現、インバースアゴニストによる不活性状態の安定化および受容体タンパク質を安定化するための生化学的修飾を必要とした。β2ARの最初の結晶構造は、選択的Fabにより安定化された(Rasmussenら、2007)。その次のβ2ARおよびA2アデノシン受容体の構造は、タンパク質工学活用して得られ、元来β2ARに関して記載された通り、T4リゾチームを第3の細胞内ループへと挿入した(Rosenbaumら、2007)。最後に、トリβ1ARの結晶は、アミノ末端およびカルボキシル末端の切断、第3の細胞内ループの欠失ならびに精製タンパク質熱安定性を増強する6アミノ酸置換により操作されたタンパク質から成長した(Warneら、2008)。

GPCRの活性状態は相対的に不安定であるため、この状態の構造を得るのはより困難である。蛍光寿命研究は、β2ARが、飽和濃度の完全アゴニストの存在下で構造的に不均一であることを示す(Ghanouniら、2001)。この構造的不均一性は、結晶の形成と適合しない。β2ARの活性状態の安定化は、アデニリルシクラーゼ刺激タンパク質であるその同種Gタンパク質Gsの存在を必要とする(Yaoら、2009)。現在のところ、GPCRの唯一の活性状態構造は、ロドプシンのリガンドなし型(ligand free form)であるオプシンのものである(Parkら、2008)。この結晶は酸性pH(5.5)で成長し、このpHにおいて、オプシンは、生理的pHにおける光活性化されたロドプシン(メタロドプシンII)と構造的に類似していることがFTIR分光測定により示された。β2ARも低いpHでより高い基礎活性を呈示するが、生化学的に不安定である(Ghanouniら、2000)。

概要

蛋白質共役受容体(GPCR)の個々の配座異性体の高分解能構造解析のための新しい直接的なツールの提供。ナノボディを前記GPCR、及び前記GPCRのアゴニストと接触させること、及び前記アゴニストが非存在下における前記GPCRと比較した、前記アゴニストが存在下における前記GPCRへの前記ナノボディの結合の改善を検出すること、又は前記ナノボディが非存在下における前記GPCRと比較した、前記ナノボディ存在下における前記アゴニストへの前記GPCRのアフィニティーの増強を検出すること、を含む、活性立体構造状態にある前記GPCRに特異的に結合し安定化し得るナノボディのスクリーニング方法。なし

目的

本発明は、機能的立体構造状態のGPCRの安定性を増大させる、特に、その活性立体構造状態にあるGPCRの安定性を増大させることができるタンパク質結合ドメインを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

機能的立体構造状態のGPCRと特異的に結合することができるタンパク質結合ドメイン

請求項2

結合によりGPCRの機能的立体構造状態を安定化することができる、請求項1に記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項3

結合によりGPCRにおける機能的立体構造状態を誘導することができる、請求項1から2のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項4

GPCRの機能的立体構造状態が、基礎立体構造状態または活性立体構造状態または不活性立体構造状態からなる群から選択される、請求項1から3のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項5

GPCRの機能的立体構造状態が、活性立体構造状態である、請求項1から4のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項6

アゴニスト結合GPCRと特異的に結合できるおよび/またはアゴニストに対するGPCRの親和性を増強する、請求項1から5のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項7

結合によりGPCRの機能的立体構造状態の熱安定性を増大させることができる、請求項1から6のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項8

機能的立体構造状態のGPCRの立体構造エピトープと特異的に結合することができる、請求項1から7のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項9

立体構造エピトープが、細胞エピトープである、請求項8に記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項10

立体構造エピトープが、下流のシグナル伝達タンパク質結合部位に含まれる、請求項8から9のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項11

立体構造エピトープが、Gタンパク質結合部位に含まれる、請求項8から10のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項12

4個のフレームワーク領域および3個の相補性決定領域を含むアミノ酸配列またはその任意の適切な断片を含む、請求項1から11のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項13

ラクダ科動物抗体由来する、請求項1から12のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項14

ナノボディ配列またはその任意の適切な断片を含む、請求項1から13のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項15

ナノボディが、配列番号1−29からなる群から選択される配列またはそれらの任意の適切な断片を含む、請求項14に記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項16

GPCRが、哺乳動物タンパク質または植物タンパク質または微生物タンパク質またはウイルスタンパク質または昆虫タンパク質である、請求項1から15のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項17

哺乳動物タンパク質が、ヒトタンパク質である、請求項16に記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項18

GPCRが、GPCRグルタミン酸ファミリーのGPCR、GPCRロドプシンファミリーのGPCR、GPCR接着ファミリーのGPCR、GPCRFrizzled/Taste2ファミリーのGPCRおよびGPCRセクレチンファミリーのGPCRを含む群から選ばれる、請求項1から17のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項19

GPCRが、αアドレナリン受容体もしくはβ−アドレナリン受容体等のアドレナリン受容体である、またはGPCRが、M1ムスカリン受容体もしくはM2ムスカリン受容体もしくはM3ムスカリン受容体もしくはM4ムスカリン受容体もしくはM5ムスカリン受容体等のムスカリン受容体である、またはGPCRが、1型アンジオテンシンII受容体もしくは2型アンジオテンシンII受容体等のアンジオテンシン受容体である、請求項1から18のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン。

請求項20

(i)タンパク質結合ドメイン、(ii)機能的立体構造状態のGPCRおよび(iii)場合によって受容体リガンドを含む複合体。

請求項21

(i)請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン、(ii)機能的立体構造状態のGPCRおよび(iii)場合によって受容体リガンドを含む、請求項20に記載の複合体。

請求項22

受容体リガンドが、小分子、タンパク質、ペプチドタンパク質スキャフォールド核酸イオン炭水化物もしくは抗体またはそれらの任意の適切な断片を含む群から選ばれる、請求項20から21のいずれかに記載の複合体。

請求項23

可溶化形態であるまたは固体支持体固定化されている、請求項20から22のいずれかに記載の複合体。

請求項24

結晶である、請求項20から23のいずれかに記載の複合体。

請求項25

(i)タンパク質結合ドメイン、(ii)機能的立体構造状態のGPCRおよび(iii)場合によって受容体リガンドを含む複合体の結晶形であって、結晶形は請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインの使用により得られる、結晶形。

請求項26

請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインおよび/または請求項20から24のいずれかに記載の複合体を含む細胞組成物

請求項27

タンパク質結合ドメインが、タンパク質結合ドメインの結合によりGPCRの機能的立体構造状態を安定化および/または誘導することができる、請求項26に記載の細胞組成物。

請求項28

GPCRの機能的立体構造状態を安定化および/または誘導するための、請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインまたは請求項20から24のいずれかに記載の複合体または請求項26から27のいずれかに記載の細胞組成物の使用。

請求項29

機能的立体構造状態のGPCRを結晶化および/または機能的立体構造状態のGPCRの構造を解明するための、請求項28に記載の使用。

請求項30

機能的立体構造状態のGPCRを捕捉するための、請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインまたは請求項20から24のいずれかに記載の複合体または請求項26から27のいずれかに記載の細胞組成物の使用。

請求項31

受容体リガンドとまたは1つもしくは複数の下流の相互作用タンパク質と複合した機能的立体構造状態のGPCRを捕捉するための、請求項30に記載の使用。

請求項32

癌、自己免疫疾患感染症神経疾患心血管疾患等のGPCR関連疾患の診断または予後診断のための、請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインまたは請求項20から24のいずれかに記載の複合体の使用。

請求項33

機能的立体構造状態のGPCRの結晶構造を決定する方法であって、(i)請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメイン、標的GPCRおよび場合によって受容体リガンドを用意するステップ、(ii)タンパク質結合ドメイン、GPCRおよび場合によって受容体リガンドの複合体を形成するステップ、ならびに(iii)ステップ(ii)の複合体を結晶化して、結晶を形成するステップを含み、結晶構造が機能的立体構造状態のGPCRにおいて決定される方法。

請求項34

結晶から原子座標を得るステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。

請求項35

機能的立体構造状態のGPCRを捕捉する方法であって、a.請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインおよび標的GPCRを用意するステップ、ならびにb.タンパク質結合ドメインおよびGPCRの複合体を形成するステップを含み、GPCRは機能的立体構造状態で捕捉される方法。

請求項36

機能的立体構造状態のGPCRを捕捉する方法であって、a.複数の立体構造状態のGPCRを含有する溶液を、請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインを固定化した固体支持体に適用するステップ、b.タンパク質結合ドメインおよびGPCRの複合体を形成するステップ、ならびにc.弱く結合した分子または結合していない分子を除去するステップを含み、GPCRは機能的立体構造状態で捕捉される方法。

請求項37

複合体を精製するステップをさらに含む、請求項35から36のいずれかに記載の方法。

請求項38

治療上有効量の請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインおよび薬学的に許容される担体アジュバントまたは希釈液のうち少なくとも1つを含む医薬組成物

請求項39

GPCRシグナル伝達活性を調節するための、請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインまたは請求項38に記載の医薬組成物の使用。

請求項40

Gタンパク質媒介性シグナル伝達を遮断するための、請求項39に記載の使用。

請求項41

癌、自己免疫疾患、感染症、神経疾患、心血管疾患等のGPCR関連疾患の治療における使用のための、請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインまたは請求項38に記載の医薬組成物。

請求項42

請求項1から19のいずれかに記載のタンパク質結合ドメインまたは請求項20から24のいずれかに記載の複合体または請求項のいずれかに記載の細胞組成物を含むキット

技術分野

0001

本発明は、GPCR構造生物学およびシグナル伝達の分野に関する。特に、本発明は、機能的立体構造状態のGタンパク質共役受容体(GPCR)に対して作製されたまたはそれと特異的に結合することができるタンパク質結合ドメインに関する。より具体的には、本発明は、機能的立体構造状態のGPCRの安定性を増大させる、特に、その活性立体構造状態にあるGPCRの安定性を増大させることができるタンパク質結合ドメインを提供する。本発明のタンパク質結合ドメインは、様々な天然および合成リガンドと結合しているGタンパク質共役受容体の構造的および機能的特徴付けならびにGPCRを標的としたスクリーニングおよび創薬努力のためのツールとして用いられ得る。さらに、本発明は、GPCR関連疾患に対するこれらのタンパク質結合ドメインの診断予後診断および治療上の有用性網羅する。

背景技術

0002

Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、ヒトゲノムにおける最大のファミリー膜タンパク質である。これは、生体アミンアミノ酸ペプチドタンパク質プロスタノイドリン脂質脂肪酸ヌクレオシドヌクレオチド、Ca2+イオン匂い分子苦味および甘味物質フェロモンならびにプロトン等のリガンドの多様なセットに対する生理応答において重要な役割を果たす(Heilkerら、2009)。GPCRは、広範な疾患の治療標的である。GPCRは、細胞外アミノ末端および細胞カルボキシル末端を有する7個の膜貫通ドメインによって特徴付けられ、7回膜貫通または7ヘリックス(heptahelical)受容体とも称される(Rosenbaumら、2009)。効率的な光検出に高度に特化したGPCRであるロドプシンは、その生化学的安定性およびウシ網膜における豊富な天然の存在量のため、GPCRシグナル伝達および構造生物学のパラダイムである(Hofmannら、2009)。対照的に、多くのGPCRは、複数のGタンパク質アイソフォームの活性を調節することおよびGタンパク質非依存的シグナル伝達経路(例えば、β−アレスチン)により、複雑な機能的挙動呈示する。一部の事例において、GPCRは、リガンド不在下であっても、特異的シグナル伝達経路に対して基礎活性を呈示し得る。GPCRに作用するオルソステリックリガンドは、下流のシグナル伝達経路における多種多様な効果を有し得る。完全アゴニストは、受容体を最大限に活性化する。部分アゴニストは、飽和濃度であっても最大下刺激を誘発する。インバースアゴニストは基礎活性を阻害し、一方、ニュートラルアンタゴニストは基礎活性に効果がないが、他のリガンドの結合を競合的に遮断する。

0003

ホルモンおよび神経伝達物質に対するGPCRの複雑な挙動は、その構造的柔軟性に起因し得る(Kobilka and Deupi、2007)。機能的および生物物理学的研究から得られた証拠は、GPCRが、複数の機能的に異なる立体構造状態で存在し得ることを示す(Kobilka and Deupi、2007)。この構造的柔軟性および動的挙動は、正常機能に必須であるが、その生化学的不安定性をもたらし、高分解能結晶構造を得るのが困難となる。現在のところ、ヒトβ2AR(Rasmussenら、2007;Rosenbaumら、2007;Cherezovら、2007;Hansonら、2008)、トリβ1AR(Warneら、2008)およびヒトA2アデノシン受容体(Jaakolaら、2008)の結晶構造が報告されている。ロドプシンは、天然の組織から単離された無修飾のタンパク質から結晶化され得るが、これら他のGPCRは、組換え系における発現、インバースアゴニストによる不活性状態の安定化および受容体タンパク質を安定化するための生化学的修飾を必要とした。β2ARの最初の結晶構造は、選択的Fabにより安定化された(Rasmussenら、2007)。その次のβ2ARおよびA2アデノシン受容体の構造は、タンパク質工学活用して得られ、元来β2ARに関して記載された通り、T4リゾチームを第3の細胞内ループへと挿入した(Rosenbaumら、2007)。最後に、トリβ1ARの結晶は、アミノ末端およびカルボキシル末端の切断、第3の細胞内ループの欠失ならびに精製タンパク質熱安定性を増強する6アミノ酸置換により操作されたタンパク質から成長した(Warneら、2008)。

0004

GPCRの活性状態は相対的に不安定であるため、この状態の構造を得るのはより困難である。蛍光寿命研究は、β2ARが、飽和濃度の完全アゴニストの存在下で構造的に不均一であることを示す(Ghanouniら、2001)。この構造的不均一性は、結晶の形成と適合しない。β2ARの活性状態の安定化は、アデニリルシクラーゼ刺激タンパク質であるその同種Gタンパク質Gsの存在を必要とする(Yaoら、2009)。現在のところ、GPCRの唯一の活性状態構造は、ロドプシンのリガンドなし型(ligand free form)であるオプシンのものである(Parkら、2008)。この結晶は酸性pH(5.5)で成長し、このpHにおいて、オプシンは、生理的pHにおける光活性化されたロドプシン(メタロドプシンII)と構造的に類似していることがFTIR分光測定により示された。β2ARも低いpHでより高い基礎活性を呈示するが、生化学的に不安定である(Ghanouniら、2000)。

先行技術

0005

Heilker et al 2009. Drug Discovery Today 14:231−240
Rosenbaum D. M., S. G. Rasmussen, and B. K. Kobilka, Nature 459 (7245), 356 (2009)
Hofmann K. P., P. Scheerer, P. W. Hildebrand et al., TrendsBiochem Sci 34 (11), 540 (2009)
Kobilka B. K. and X. Deupi, Trends in Pharmacological Sciences 28 (8), 397 (2007)
Rasmussen S.G., Choi H.J., Rosenbaum D.M., Kobilka T.S., Thian F.S., Edwards P.C., Burghammer M., Ratnala V.R., Sanishvili R. and Fischetti R.F. et al., Crystal Structure of the human beta2 adrenergic G−protein−coupled receptor, Nature 450 (2007), pp. 383−387
Rosenbaum D. M., V. Cherezov, M. A. Hanson et al., Science 318 (5854), 1266 (2007)
Cherezov, V. et al. Highーresolution crystal structure of an engineered human beta2−adrenergic G protein−coupled receptor. Science 318, 1258−1265, doi:1150577 [pii] 10.1126/science.1150577 (2007)
Hanson, M. A. et al. A specific cholesterol binding site is established by the 2.8 angstrom structure of the human beta(2)−adrenergic receptor. Structure 16, 897−905 (2008)
Warne, T. et al. Structure of a beta1−adrenergic G−protein−coupled receptor. Nature 454, 486−491, doi:nature07101 [pii] 10.1038/nature07101 (2008)
Jaakola, V. P. et al. The 2.6 Angstrom Crystal Structure of a Human A2A Adenosine Receptor Bound to an Antagonist. Science (2008)
Ghanouni, P. et al. Functionally different agonists induce distinct conformations in the G protein coupling domain of the beta 2 adrenergic receptor. J Biol Chem 276, 24433−24436. (2001)
Yao, X. J. et al. The effect of ligand efficacy on the formation and stability of a GPCR−G protein complex. Proc Natl Acad Sci U S A 106, 9501−9506, doi:0811437106 [pii] 10.1073/pnas.0811437106 (2009)
Park, J. H., Scheerer, P., Hofmann, K. P., Choe, H. W. & Ernst, O. P. Crystal Structure of the ligand−free G−protein−coupled receptor opsin. Nature 454, 183−U133 (2008)

発明が解決しようとする課題

0006

様々な天然および合成リガンドならびにタンパク質と複合体を形成したGPCRの様々な機能的立体構造状態の構造の解明は、GPCRシグナル伝達の機序の理解および構造に基づく創薬努力の両方に有用である。したがって、GPCRの個々の配座異性体の高分解能構造解析のための新しい直接的なツールの開発が必要とされる。

課題を解決するための手段

0007

(発明の要旨)
本発明の第1の態様は、機能的立体構造状態のGPCRと特異的に結合することができるタンパク質結合ドメインに関する。

0008

好ましい一実施形態によると、タンパク質結合ドメインは、結合によりGPCRの機能的立体構造状態を安定化することができる。好ましくは、タンパク質結合ドメインは、結合によりGPCRにおける機能的立体構造状態を誘導することができる。

0009

別の好ましい一実施形態によると、GPCRの機能的立体構造状態は、基礎立体構造状態または活性立体構造状態または不活性立体構造状態からなる群から選択される。好ましくは、GPCRの機能的立体構造状態は、活性立体構造状態である。

0010

別の好ましい一実施形態によると、タンパク質結合ドメインは、アゴニスト結合GPCRと特異的に結合することができるおよび/またはアゴニストに対するGPCRの親和性を増強する。

0011

別の好ましい一実施形態によると、タンパク質結合ドメインは、結合により機能的立体構造状態のGPCRの熱安定性を増大させることができる。

0012

特定の一実施形態において、タンパク質結合ドメインは、機能的立体構造状態のGPCRの立体構造エピトープと特異的に結合することができる。好ましくは、立体構造エピトープは、細胞内エピトープである。より好ましくは、立体構造エピトープは、下流のシグナル伝達タンパク質の結合部位に含まれる。最も好ましくは、立体構造エピトープは、Gタンパク質結合部位に含まれる。

0013

好ましくは、本発明のタンパク質結合ドメインは、4個のフレームワーク領域および3個の相補性決定領域を含むアミノ酸配列またはその任意の適切な断片を含む。より好ましくは、タンパク質結合ドメインは、ラクダ科動物抗体由来する。最も好ましくは、タンパク質結合ドメインは、ナノボディ配列またはその任意の適切な断片を含む。例えば、ナノボディは、配列番号1−29からなる群から選択される配列またはそれらの任意の適切な断片を含む。

0014

別の好ましい一実施形態によると、GPCRは、哺乳動物タンパク質または植物タンパク質または微生物タンパク質またはウイルスタンパク質または昆虫タンパク質である。哺乳動物タンパク質は、ヒトタンパク質であり得る。特に、GPCRは、GPCRグルタミン酸ファミリーのGPCR、GPCRロドプシンファミリーのGPCR、GPCR接着ファミリーのGPCR、GPCR Frizzled/Taste2ファミリーのGPCRおよびGPCRセクレチンファミリーのGPCRを含む群から選ばれる。より具体的には、GPCRは、αアドレナリン受容体もしくはβ−アドレナリン受容体等のアドレナリン受容体である、またはGPCRは、M1ムスカリン受容体もしくはM2ムスカリン受容体もしくはM3ムスカリン受容体もしくはM4ムスカリン受容体もしくはM5ムスカリン受容体等のムスカリン受容体である、またはGPCRは、1型アンジオテンシンII受容体もしくは2型アンジオテンシンII受容体等のアンジオテンシン受容体である。

0015

本発明の第2の態様は、(i)本発明によるタンパク質結合ドメイン、(ii)機能的立体構造状態のGPCRおよび(iii)場合によって受容体リガンドを含む複合体に関する。受容体リガンドは、小分子、タンパク質、ペプチド、タンパク質スキャフォールド核酸、イオン、炭水化物もしくは抗体またはそれらの任意の適切な断片を含む群から選ばれ得る。複合体は、可溶化形態であり得または固体支持体固定化され得る。特に、複合体は、結晶である。本発明は、本発明によるタンパク質結合ドメインの使用により得られる、(i)タンパク質結合ドメイン、(ii)機能的立体構造状態のGPCRおよび(iii)場合によって受容体リガンドを含む複合体の結晶形をさらに網羅する。

0016

本発明の第3の態様は、本発明によるタンパク質結合ドメインおよび/または本発明による複合体を含む細胞組成物に関する。好ましくは、細胞組成物に含まれるタンパク質結合ドメインは、タンパク質結合ドメインの結合によりGPCRの機能的立体構造状態を安定化および/または誘導することができる。

0017

本発明の第4の態様は、GPCRの機能的立体構造状態を安定化および/または誘導するための、本発明によるタンパク質結合ドメインまたは本発明による複合体または本発明による細胞組成物の使用に関する。

0018

好ましい一実施形態によると、タンパク質結合ドメインまたは複合体または細胞組成物は、機能的立体構造状態のGPCRの構造を結晶化および/または機能的立体構造状態のGPCRの構造を解明するために用いられ得る。

0019

本発明は、機能的立体構造状態のGPCRの結晶構造を決定する方法であって、
(i)本発明によるタンパク質結合ドメイン、標的GPCRおよび場合によって受容体リガンドを用意するステップ
(ii)タンパク質結合ドメイン、GPCRおよび場合によって受容体リガンドの複合体を形成するステップならびに
(iii)ステップ(ii)の複合体を結晶化して、結晶を形成するステップ
を含み、結晶構造が機能的立体構造状態のGPCRにおいて決定される方法も網羅する。

0020

GPCRの結晶構造を決定する上記方法は、結晶から原子座標を得るステップをさらに含むことができる。

0021

別の好ましい一実施形態によると、タンパク質結合ドメインまたは複合体または細胞組成物は、場合によって受容体リガンドまたは1つもしくは複数の下流のシグナル伝達タンパク質と共に、機能的立体構造状態のGPCRを捕捉するために用いられ得る。

0022

よって、本発明は、機能的立体構造状態のGPCRを捕捉する方法であって、
(i)本発明によるタンパク質結合ドメインおよび標的GPCRを用意するステップならびに
(ii)タンパク質結合ドメインおよびGPCRの複合体を形成するステップ
を含み、GPCRは機能的立体構造状態で捕捉される方法も網羅する。

0023

さらに、本発明は、機能的立体構造状態のGPCRを捕捉する方法であって、
(i)複数の立体構造状態のGPCRを含有する溶液を、本発明によるタンパク質結合ドメインを固定化した固体支持体に適用するステップ、
(ii)タンパク質結合ドメインおよびGPCRの複合体を形成するステップならびに
(iii)弱く結合した分子または結合していない分子を除去するステップ
を含み、GPCRは機能的立体構造状態で捕捉される方法も網羅する。

0024

機能的立体構造状態のGPCRを捕捉する上記方法は、複合体を精製するステップを含むことができる。

0025

別の好ましい一実施形態によると、本発明は、また、GPCRの立体構造特異的(薬)化合物またはリガンドのスクリーニングおよび/または同定プログラムにおける、本発明によるタンパク質結合ドメインまたは複合体または細胞組成物の使用に関する。

0026

よって、本発明は、機能的立体構造状態のGPCRと結合することができる化合物を同定する方法であって、
(i)GPCRおよび本発明によるタンパク質結合ドメインを用意するステップ、
(ii)試験化合物を用意するステップ、
(iii)試験化合物が、機能的立体構造状態のGPCRと結合するか評価するステップならびに
(iv)機能的立体構造状態のGPCRと結合する化合物を選択するステップ
を含む方法も網羅する。

0027

好ましくは、化合物を同定するための上述の方法は、本発明によるタンパク質結合ドメインおよび機能的立体構造状態のGPCRを含む複合体を形成するステップをさらに含む。複合体は、小分子、タンパク質、ペプチド、タンパク質スキャフォールド、核酸、イオン、炭水化物もしくは抗体またはそれらの任意の適切な断片を含む群から選ばれ得る受容体リガンドをさらに含むことができる。好ましくは、受容体リガンドは、完全アゴニストまたは部分アゴニストまたはインバースアゴニストまたはアンタゴニストである。好ましくは、タンパク質結合ドメインおよび/または複合体は、基本的に精製された形態で提供される。あるいは、タンパク質結合ドメインおよび/または複合体は、可溶化形態で提供される。あるいは、タンパク質結合ドメインおよび/または複合体は、固体支持体に固定化されている。あるいは、タンパク質結合ドメインおよび/または複合体は、細胞組成物中に提供される。

0028

別の好ましい一実施形態によると、化合物を同定するための上述の方法において用いられる試験化合物は、ポリペプチド、ペプチド、小分子、天然物ペプチド模倣物、核酸、脂質、リポペプチド、炭水化物、抗体またはそれに由来する任意の断片(Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体ジスルフィド結合Fv(dsFv)およびVLまたはVHドメインのいずれかを含む断片等、重鎖抗体(hcAb)、単一ドメイン抗体(sdAb)、ミニボディ(minibody)、ラクダ科動物重鎖抗体に由来する可変ドメイン(VHHまたはナノボディ)、サメ抗体に由来する新規抗原受容体(new antigen receptor)の可変ドメイン(VNAR)、アルファディ(alphabody)を包含するタンパク質スキャフォールド、プロテインAプロテインG、設計アンキリンリピートドメイン(DARPin)、フィブロネクチンIII型リピートアンチカリン(anticalin)、ノッチン、操作されたCH2ドメイン(ナノ抗体(nanoantibodies))を含む群から選択される。

0029

好ましくは、試験化合物は標識されている。さらに、試験化合物のライブラリーが用いられてもよい。さらに、化合物を同定するための上述の方法は、ハイスループットスクリーニング方法でよい。

0030

別の特定の一実施形態によると、すべて本発明によるタンパク質結合ドメインまたは複合体または細胞組成物は、癌、自己免疫疾患感染症神経疾患心血管疾患等のGPCR関連疾患の診断または予後診断のために用いられ得る。

0031

本発明の第5の態様は、治療上有効量の本発明によるタンパク質結合ドメインおよび薬学的に許容される担体アジュバントまたは希釈液のうち少なくとも1つを含む医薬組成物に関する。

0032

本発明の第6の態様は、GPCRシグナル伝達活性を調節するため、より具体的には、Gタンパク質媒介性シグナル伝達を遮断するための、本発明によるタンパク質結合ドメインまたは本発明による医薬組成物の使用に関する。

0033

本発明によるタンパク質結合ドメインまたは医薬組成物は、癌、自己免疫疾患、感染症、神経疾患、心血管疾患等のGPCR関連疾患の治療においても用いられ得る。

0034

本発明の第7の態様は、本発明によるタンパク質結合ドメインまたは本発明による複合体または本発明による細胞組成物を含むキットに関する。

0035

本発明のアミノ酸配列およびポリペプチドの他の適用および用途は、当業者であれば、本明細書におけるさらなる開示から明らかとなる。

図面の簡単な説明

0036

図1aはβ2AR特異的ナノボディが、活性状態の受容体と結合および安定化することを示す図である。Nb80の分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)の代表的なトレースを示す図である。アゴニストと結合している精製β2AR(20μM)(β2AR−アゴニスト)を、FPLCによる解析の前に40μM Nb80ありおよびなし(それぞれ黒および青)で2時間室温にてインキュベートした。Nb80の存在下において、β2AR−アゴニスト溶出ピークは、UV吸光度(280nm)が増加し、β2AR−アゴニスト単独よりも早い時点の容量で溶出し、これと同時にNb80溶出ピーク(緑)が減少した。この結果は、β2AR−アゴニスト−Nb80複合体の形成を示唆する。インバースアゴニストと結合しているβ2AR(20μM)とNb80とのインキュベーション(赤)は、β2AR−アゴニスト−Nb80複合体と比較して、UV吸光度のシフトがより小さく、増加がより小さかった。図1bはβ2AR特異的ナノボディが、活性状態の受容体と結合および安定化することを示す図である。β2ARを発現するSf9昆虫細胞膜における用量反応競合結合実験を示す図である。SECによるβ2ARを結合した7種のナノボディをそれぞれ、β2ARを発現する膜と共に90分間室温にてインキュベートした。7種のナノボディはすべて、(−)−イソプロテレノールに対するβ2ARの親和性を増加した(表3)。リードナノボディとしてNb80(青)を選択した。データは、3回複製して行われた独立した2実験の平均±s.e.を表す。図1cはβ2AR特異的ナノボディが、活性状態の受容体と結合および安定化することを示す図である。モノブロモマン(mBBr)標識された精製受容体を用いた蛍光に基づく機能アッセイは、1μM Nb80(青)が、Nb80不在下の受容体(黒)と比較して、β2AR(完全アゴニスト(−)−イソプロテレノールと結合している)のより高い活性状態を安定化することを示す。活性状態は、mBBr蛍光の消光およびmBBr蛍光における赤色移動によって特徴付けられる(Yaoら、2009)。
図2aはβ2ARの三次構造に対するナノボディの特異性を示す代表的なドットブロットの図である。アゴニストと結合している等量の未変性もしくはSDS変性した精製β2AR(それぞれ上および中)またはインバースアゴニストと結合している未変性β2AR(下)を、ニトロセルロース膜片上に3回複製してスポット状に滴下した。膜片を0.05%Tween−20含有PBS(pH7.4)に溶解した5%脱脂粉乳ブロッキングし、次にブロッキングバッファー希釈した1mg/mlの表示のナノボディと共にインキュベートした。抗ヒスチジン(a−6His)一次マウス抗体により、続いてヤギ抗マウスIR−800標識二次抗体とのインキュベーションによりナノボディの結合を検出した。直鎖状FLAGエピトープを認識するM1抗体をAlexa−688で標識し、β2ARを直接的に検出した。Odyssey Infrared Imaging System(Li−cor Biosciences)を用いてドットブロットをスキャンし、画像処理した。2種の異なるチャネル(それぞれ800nm対700nm)が画像処理に用いられるため、ナノボディを検出するブロットは、M1によりβ2ARを検出するブロットと別々に処理した。したがって、ブロットは、直接的に比較および定量化できない(即ち、ナノボディの結合対M1結合の比較は、本来的に定性的でしかない)。図2bはβ2ARの三次構造に対するナノボディの特異性を示す代表的なドットブロットの図である。天然に折り畳まれたβ2ARに対する結合が低下したナノボディを示す代表的なドットブロットの図である。
活性状態の受容体に対するナノボディの選択的結合を示す図である。アゴニストと結合している精製β2AR(20μM)を、分子ふるいクロマトグラフィーによる解析の前に40μMナノボディありおよびなし(それぞれ黒および青)で2時間室温にてインキュベートした。ナノボディの存在下でインバースアゴニストと結合しているβ2AR(20μM)の試料(赤)も解析した。数種のナノボディ(Nb72、Nb65、Nb71、Nb69、Nb67およびNb84)の存在下で、β2AR−アゴニスト溶出ピークは、UV吸光度(280nm)が増加し、β2AR−アゴニスト単独(青)よりも早い時点の容量(黒線)で溶出し、これと同時にNb80溶出ピーク(緑)が減少した。この結果は、β2AR−アゴニスト−Nb80複合体の形成を示唆する。β2AR−インバースアゴニスト−Nb80複合体の形成は観察されない(赤線)。
活性状態の受容体に対するナノボディの選択的結合を示す図である。アゴニストと結合している精製β2AR(20μM)を、分子ふるいクロマトグラフィーによる解析の前に40μMナノボディありおよびなし(それぞれ黒および青)で2時間室温にてインキュベートした。ナノボディの存在下でインバースアゴニストと結合しているβ2AR(20μM)の試料(赤)も解析した。数種のナノボディ(Nb72、Nb65、Nb71、Nb69、Nb67およびNb84)の存在下で、β2AR−アゴニスト溶出ピークは、UV吸光度(280nm)が増加し、β2AR−アゴニスト単独(青)よりも早い時点の容量(黒線)で溶出し、これと同時にNb80溶出ピーク(緑)が減少した。この結果は、β2AR−アゴニスト−Nb80複合体の形成を示唆する。β2AR−インバースアゴニスト−Nb80複合体の形成は観察されない(赤線)。
活性状態の受容体に対するナノボディの選択的結合を示す図である。アゴニストと結合している精製β2AR(20μM)を、分子ふるいクロマトグラフィーによる解析の前に40μMナノボディありおよびなし(それぞれ黒および青)で2時間室温にてインキュベートした。
ナノボディがモノブロモビマン標識β2ARの立体構造変化を誘導したことを示す蛍光放射スペクトルの図である。β2ARに対するアゴニスト結合親和性を増加するナノボディは、受容体の活性状態を安定化する。モノブロモビマン(mBBr)標識した精製受容体を用いた蛍光に基づく機能アッセイは、1μMのナノボディ65、67、69、71、72および84(赤)が、ナノボディ不在下の受容体(黒)と比較して、β2AR(完全アゴニストイソプロテレノールと結合している)のより高い活性状態を安定化することを示す。この活性状態は、mBBr蛍光の消光およびmBBr蛍光における赤色移動によって特徴付けられる(Yaoら、2009)。
ナノボディがモノブロモビマン標識β2ARの立体構造変化を誘導したことを示す蛍光放射スペクトルの図である。β2ARに対するアゴニスト結合親和性を増加するナノボディは、受容体の活性状態を安定化する。モノブロモビマン(mBBr)標識した精製受容体を用いた蛍光に基づく機能アッセイは、1μMのナノボディ65、67、69、71、72および84(赤)が、ナノボディ不在下の受容体(黒)と比較して、β2AR(完全アゴニストイソプロテレノールと結合している)のより高い活性状態を安定化することを示す。この活性状態は、mBBr蛍光の消光およびmBBr蛍光における赤色移動によって特徴付けられる(Yaoら、2009)。
ナノボディがモノブロモビマン標識β2ARの立体構造変化を誘導したことを示す蛍光放射スペクトルの図である。β2ARに対するアゴニスト結合親和性を増加するナノボディは、受容体の活性状態を安定化する。モノブロモビマン(mBBr)標識した精製受容体を用いた蛍光に基づく機能アッセイは、1μMのナノボディ65、67、69、71、72および84(赤)が、ナノボディ不在下の受容体(黒)と比較して、β2AR(完全アゴニストイソプロテレノールと結合している)のより高い活性状態を安定化することを示す。この活性状態は、mBBr蛍光の消光およびmBBr蛍光における赤色移動によって特徴付けられる(Yaoら、2009)。
図6aはβ2AR構造および機能におけるNb80の効果を示す図である。イラストは、図6b−cにおいて観察される蛍光の減少を生じる受容体活性化における、TM6の細胞質末端におけるCys2656.27に付着した環境感受性ビマンプローブの、より埋没した疎水性環境からより極性溶媒曝露した位置への移動を説明する。図6bはβ2AR構造および機能におけるNb80の効果を示す図である。添加物不在下(黒の実線)における、または完全アゴニストイソプロテレノール(ISO、緑の幅広破線)、インバースアゴニストICI−118,551(ICI、黒の破線)、Gsヘテロ三量体(赤の実線)、ナノボディ−80(Nb80、青の実線)ならびにGsとISO(赤の幅広の破線)、Nb80とISO(青の幅広の破線)およびNb80とICI(青の破線)の組み合わせの存在下における、高密度リポタンパク質粒子へと再構成されたモノブロモビマン標識β2AR(mBB−β2AR/HDL)のリガンドにより誘導された立体構造変化を示す蛍光放射スペクトルの図である。図6cはβ2AR構造および機能におけるNb80の効果を示す図である。添加物不在下(黒の実線)における、または完全アゴニストイソプロテレノール(ISO、緑の幅広の破線)、インバースアゴニストICI−118,551(ICI、黒の破線)、Gsヘテロ三量体(赤の実線)、ナノボディ−80(Nb80、青の実線)ならびにGsとISO(赤の幅広の破線)、Nb80とISO(青の幅広の破線)およびNb80とICI(青の破線)の組み合わせの存在下における、高密度リポタンパク質粒子へと再構成されたモノブロモビマン標識β2AR(mBB−β2AR/HDL)のリガンドにより誘導された立体構造変化を示す蛍光放射スペクトルの図である。図6dはβ2AR構造および機能におけるNb80の効果を示す図である。GTPγSの不在下または存在下でGsヘテロ三量体により再構成されたβ2AR/HDLに対する、[3H]−ジヒドロアルプレノロール([3H]−DHA)と競合するISOのリガンド結合曲線を示す図である。エラーバー標準誤差を表す。図6eはβ2AR構造および機能におけるNb80の効果を示す図である。Nb80の不在下および存在下のβ2AR/HDLに対する、[3H]−ジヒドロアルプレノロール([3H]−DHA)と競合するISOのリガンド結合曲線を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す。図6fはβ2AR構造および機能におけるNb80の効果を示す図である。Nb80の不在下および存在下のβ2AR−T4L/HDLに対する、[3H]−ジヒドロアルプレノロール([3H]−DHA)と競合するISOのリガンド結合曲線を示す図である。エラーバーは標準誤差を表す。
脂質立方相に形成された結晶におけるアゴニスト−β2AR−T4L−Nb80複合体のパッキングを示す図である。3つの異なる観点の構造のβ2ARをオレンジ色、Nb80を青色、アゴニストを緑色で表示する。T4リゾチーム(T4L)は、電子密度が低いためモデル化できなかった。その位置候補は、TM5およびTM6の細胞内末端に連結された水色黒破線の丸で表示されており、これは、β2AR−T4L構築物においてそれが融合されている位置である。全図の作成にPyMOL(http://www.pymol.org)を用いた。
図8aはインバースアゴニストおよびアゴニスト−Nb80により安定化されたβ2AR結晶構造の比較の図である。インバースアゴニストカラゾロールが結合したβ2AR−T4L(β2AR−Cz)の構造は青色、カラゾロールは黄色で示す。アゴニストが結合し、Nb80により安定化されたβ2AR−T4L(β2AR−Nb80)の構造はオレンジ色で、アゴニストは緑で示す。Pymol整列機能を用いてこれら2種の構造を整列した。受容体の細胞内およびGタンパク質に面する部分における有意な構造的変化を示す重ね合わせた構造の側面図である。図8bはインバースアゴニストおよびアゴニスト−Nb80により安定化されたβ2AR結晶構造の比較の図である。インバースアゴニストカラゾロールが結合したβ2AR−T4L(β2AR−Cz)の構造は青色、カラゾロールは黄色で示す。アゴニストが結合し、Nb80により安定化されたβ2AR−T4L(β2AR−Nb80)の構造はオレンジ色で、アゴニストは緑で示す。Pymol整列機能を用いてこれら2種の構造を整列した。垂直軸で90度回転した後の側面図である。図8cはインバースアゴニストおよびアゴニスト−Nb80により安定化されたβ2AR結晶構造の比較の図である。インバースアゴニストカラゾロールが結合したβ2AR−T4L(β2AR−Cz)の構造は青色、カラゾロールは黄色で示す。アゴニストが結合し、Nb80により安定化されたβ2AR−T4L(β2AR−Nb80)の構造はオレンジ色で、アゴニストは緑で示す。Pymol整列機能を用いてこれら2種の構造を整列した。僅かな構造的変化を示す細胞外リガンド結合ドメインの比較を示す図である。
図9aは不活性β2ARおよびオプシン構造と比較した、Nb80により安定化された細胞内ドメインを示す図である。受容体と相互作用するNb80のCDRを水色(CDR1)および青色(CDR3)で表したβ2AR(オレンジ色)の側面図である。図9bは不活性β2ARおよびオプシン構造と比較した、Nb80により安定化された細胞内ドメインを示す図である。β2ARに進入するCDR1および3に着目した拡大図である。CDRの4Å以内にあるTM3、5、6および7における側鎖を示す。より大型のCDR3は、受容体に13Å貫入する。図9cは不活性β2ARおよびオプシン構造と比較した、Nb80により安定化された細胞内ドメインを示す図である。細胞の内側から見たCDR1およびCDR3の相互作用を示す図である。図9dは不活性β2ARおよびオプシン構造と比較した、Nb80により安定化された細胞内ドメインを示す図である。アゴニストが結合し、Nb80により安定化されたβ2AR−T4L(β2AR−Nb80)を、カラゾロールが結合したβ2AR−T4Lの不活性構造(β2AR−Cz)と重ね合わせた図である。TM3におけるDRYモチーフのAsp3.49およびArg3.50の間のイオンロック(ionic lock)相互作用は、β2AR−Nb80構造において損なわれている。TM6の細胞内末端は、外向きに移動し、受容体コアから離れる。矢印は、β2AR−Czおよびβ2AR−Nb80の構造におけるGlu6.30のα炭素間の距離11.4Åの変化を表示する。TM3およびTM7の細胞内末端は、コアに向かってそれぞれ4および2.5Å移動し、一方、TM5は外向きに6Å移動する。図9eは不活性β2ARおよびオプシン構造と比較した、Nb80により安定化された細胞内ドメインを示す図である。Gt(トランスデューシン)のC末端ペプチドにより結晶化したオプシンの構造と重ね合わせたβ2AR−Nb80構造を示す図である。
図10aはオプシン構造と比較した、Nb80により安定化されたβ2ARの細胞内ドメインを示す図である。β2ARおよびNb80の間の相互作用を示す図である。図10bはオプシン構造と比較した、Nb80により安定化されたβ2ARの細胞内ドメインを示す図である。オプシンおよびトランスデューシンのカルボキシル末端ペプチドの間の相互作用を示す図である。
図11aはアゴニスト結合による膜貫通セグメントパッキング相互作用の再編成を示す図である。TM5におけるPro211、TM3におけるIle121、TM6におけるPhe282およびTM5におけるAsn316の間で、不活性状態を安定化するパッキング相互作用が観察される。図11bはアゴニスト結合による膜貫通セグメントパッキング相互作用の再編成を示す図である。アゴニスト結合によるTM5の内向きの移動は、Ile121およびPro211のパッキングを破壊し、Ile121およびPhe282間の相互作用の再編成をもたらす。これらの変化は、TM6の回転および外向きの移動ならびにTM7の内向きの移動に寄与する。
β2ARに対して産生された様々なナノボディのアミノ酸配列を示す図である。配列は、標準ソフトウェアツールを用いて整列され、CDRは、IMGTナンバリングに従って定義されている(Lefrancら、2003)。
β2AR受容体の熱安定性におけるNb80の効果を示す図である。Nb80の存在下および不在下における、界面活性剤で可溶化した(DDM)アゴニスト結合(イソプロテレノール)β2ARの融解曲線の比較を示す図である。Nb80なしのβ2ARの見かけ上の融解温度は、12.0℃である。Nb80ありのβ2ARの見かけ上の融解温度は、24℃である。
図14Aは温度によって誘導されたβ2AR受容体の凝集におけるNb80の効果を示す図である。界面活性剤で可溶化した(DDM)β2ARを、Nb80またはイソプロテレノールの存在下で10分間50℃にて加熱し、SECにより受容体の凝集を解析した。
図14Bは温度によって誘導されたβ2AR受容体の凝集におけるNb80の効果を示す図である。Nb80の不在下におけるイソプロテレノール結合受容体温度依存性を示す図である。
図15aはNb80が、インバースアゴニストICI−118,551と結合するβ2ARにおける効果がほとんどないことを示す図である。β2ARまたはβ2AR−T4LをHDL粒子へと再構成し、Nb80の不在下または存在下でアゴニスト競合結合実験を行った。Nb80の不在下および存在下におけるβ2AR/HDLに対する、[3H]−ジヒドロアルプレノロール([3H]−DHA)と競合するインバースアゴニストICI−118551のリガンド結合曲線を示す図である。図15bはNb80が、インバースアゴニストICI−118,551と結合するβ2ARにおける効果がほとんどないことを示す図である。β2ARまたはβ2AR−T4LをHDL粒子へと再構成し、Nb80の不在下または存在下でアゴニスト競合結合実験を行った。Nb80の不在下および存在下におけるβ2AR−T4L/HDLに対する、[3H]−ジヒドロアルプレノロール([3H]−DHA)と競合するインバースアゴニストICI−118551のリガンド結合曲線を示す図である。
Nb80が、アゴニストに対するβ2AR親和性を増加させるが、アンタゴニストに対しては増加させないことを示す図である。全長β2ARを含有する市販の昆虫細胞に由来する膜において、Nb80の不在下または存在下で競合的リガンド結合実験を行った。Nb80および無関連ナノボディ(Irr Nb)の存在下における、代表的なアゴニスト2種(イソプロテレノール、プロカテロール)および代表的なアンタゴニスト2種(ICI−118,551およびカルベジロール)の用量依存比率−リガンド置換曲線を示す図である。
Nb80が、アゴニストに対するβ2AR親和性を増加させるが、アンタゴニストに対しては増加させないことを示す図である。全長β2ARを含有する市販の昆虫細胞に由来する膜において、Nb80の不在下または存在下で競合的リガンド結合実験を行った。Nb80および無関連ナノボディ(Irr Nb)の存在下における、代表的なアゴニスト2種(イソプロテレノール、プロカテロール)および代表的なアンタゴニスト2種(ICI−118,551およびカルベジロール)の用量依存的比率−リガンド置換曲線を示す図である。
Nb80が、アゴニストに対するβ2AR親和性を増加させるが、アンタゴニストに対しては増加させないことを示す図である。全長β2ARを含有する市販の昆虫細胞に由来する膜において、Nb80の不在下または存在下で競合的リガンド結合実験を行った。Nb80および無関連ナノボディ(Irr Nb)の存在下における、代表的なアゴニスト2種(イソプロテレノール、プロカテロール)および代表的なアンタゴニスト2種(ICI−118,551およびカルベジロール)の用量依存的比率−リガンド置換曲線を示す図である。
ヒトβ1ARおよびヒトβ2ARの配列アライメントを示す図である。 β2AR−Nb80接合部においてNb80と相互作用するβ2−アドレナリン受容体のアミノ酸に下線を引く。
図18AはNb80が、ヒトβ1AR受容体の活性立体構造と選択的に結合することを示す図である。[3H]−ジヒドロアルプレノロール([3H]−DHA)と競合するアゴニストおよびインバースアゴニストのリガンド結合曲線を示す図である。Nb80の存在下および不在下でβ2ARと結合するアゴニストイソプロテレノール(ISO)を示す図である。図18BはNb80が、ヒトβ1AR受容体の活性立体構造と選択的に結合することを示す図である。[3H]−ジヒドロアルプレノロール([3H]−DHA)と競合するアゴニストおよびインバースアゴニストのリガンド結合曲線を示す図である。Nb80の存在下および不在下でβ2ARと結合するインバースアゴニストICI−118,551(ICI)を示す図である。
図18CはNb80が、ヒトβ1AR受容体の活性立体構造と選択的に結合することを示す図である。[3H]−ジヒドロアルプレノロール([3H]−DHA)と競合するアゴニストおよびインバースアゴニストのリガンド結合曲線を示す図である。Nb80の存在下および不在下でβ1ARと結合するアゴニストイソプロテレノール(ISO)を示す図である。図18DはNb80が、ヒトβ1AR受容体の活性立体構造と選択的に結合することを示す図である。[3H]−ジヒドロアルプレノロール([3H]−DHA)と競合するアゴニストおよびインバースアゴニストのリガンド結合曲線を示す図である。Nb80の存在下および不在下でβ1ARと結合するインバースアゴニストCGP20712A(CPG)を示す図である。

0037

定義
特定の実施形態に関して、特定の図面を参照しつつ本発明を説明するが、本発明は、これらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。特許請求の範囲におけるいかなる引用符号も、範囲を限定するものとして解釈するべきではない。記載されている図面は模式的なものでしかなく、非限定的である。図面において、ある要素のサイズは誇張されている可能性があり、例証目的のスケールで描かれてはいない。本明細書および特許請求の範囲において、用語「含む」が用いられている場合、この用語は、他の要素またはステップを除外しない。単数名詞について言及する際に不定詞または定冠詞(例えば、「a」または「an」、「the」)が用いられている場合、特に他の事柄の記載がない限り、これは該名詞の複数を包含する。その上、本明細書および特許請求の範囲における、第1、第2、第3等の用語は、類似の要素間を区別するために用いられており、必ずしも連続的または経時的な順を説明するために用いられていない。このように用いられる用語は、適切な状況下において互換的であり、本明細書に記載されている本発明の実施形態は、本明細書において記載または説明されている以外の順序で実施できることを理解されたい。

0038

本明細書において他に定義がなされていなければ、本発明に関連して用いられている科学および技術用語および語句は、当業者によって一般に理解されている意味を持つ。一般に、本明細書に記載されている、分子および細胞生物学遺伝学、タンパク質、核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して用いられている命名法ならびにその技法は、本技術分野において周知のものであり、一般に用いられている。本発明の方法および技法は、一般に、他に断りがなければ、本技術分野において周知の、本明細書を通じて引用記述されている様々な一般的な参考文献およびより具体的な参考文献に記載されている従来の方法に従って実施される。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨークコールドスプリングハーバー(1989);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates(1992、および2002の別冊号)を参照されたい。

0039

用語「タンパク質結合ドメイン」は、特異的分子間相互作用を用いてタンパク質またはペプチドと結合することができる、任意の非天然起源の分子またはその部分を一般に意味する。タンパク質性分子(タンパク質、ペプチド、タンパク質様またはタンパク質含有)、核酸分子(核酸、核酸様、核酸含有)および炭水化物分子(炭水化物、炭水化物様、炭水化物含有)等が挙げられるが、これらに限定されない様々な分子が、タンパク質結合ドメインとして機能し得る。本明細書においてより詳細な説明をさらに見出すことができる。

0040

本明細書において、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」、「ペプチド」は、本明細書において互換的に用いられており、コードされたおよびコードされていないアミノ酸、化学的または生化学的に修飾または誘導体化されたアミノ酸および修飾ペプチド骨格を有するポリペプチドを包含し得る、任意の長さのアミノ酸のポリマー型を意味する。

0041

本明細書において、用語「多タンパク質複合体」または「タンパク質複合体」または単に「複合体」は、2以上の会合したポリペプチド鎖の群を意味する。タンパク質複合体におけるタンパク質は、非共有結合性タンパク質−タンパク質相互作用により連結されている。「四次構造」は、タンパク質複合体における会合し折り畳まれたタンパク質の構造的配置である。「マルチマー型複合体」は、非タンパク質性分子をさらに含み得る、本明細書において定義されているタンパク質複合体を意味する。

0042

本明細書において、用語「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」、「ポリ核酸」、「核酸」は、互換的に用いられ、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかまたはそれらのアナログである、任意の長さのヌクレオチドのポリマー型を意味する。ポリヌクレオチドは、いかなる三次元構造であってもよく、公知または未知のいかなる機能を果たし得る。ポリヌクレオチドの非限定的な例として、遺伝子、遺伝子断片エクソンイントロン伝令RNAmRNA)、転移RNAリボソームRNAリボザイムcDNA組換えポリヌクレオチド分岐ポリヌクレオチド、プラスミドベクター、任意の配列の単離DNA、調節領域、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマーが挙げられる。核酸分子は、直鎖状であっても環状であってもよい。

0043

本明細書において、用語「リガンド」または「受容体リガンド」は、細胞内または細胞外のいずれかにおいてGPCRと特異的に結合する分子を指す。リガンドは、タンパク質、(ポリ)ペプチド、脂質、小分子、タンパク質スキャフォールド、核酸、イオン、炭水化物、抗体またはナノボディ等の抗体断片(すべて本明細書において定義されている)でよいが、これらに制限する目的はない。リガンドは、合成であっても天然起源であってもよい。リガンドは、自然のGPCRに対する内在性天然リガンドである、「自然のリガンド」も包含する。「修飾因子」は、細胞において発現されたGPCRと接触、例えば、結合したときに、GPCRのシグナル伝達活性を増加または減少させる(即ち、細胞内応答により)リガンドである。この用語は、アゴニスト、完全アゴニスト、部分アゴニスト、インバースアゴニストおよびアンタゴニストを包含するが、これらは、本明細書においてより詳細な説明をさらに見出すことができる。

0044

タンパク質の用語「立体構造」または「立体構造状態」は、タンパク質が、任意の瞬間において形をとり得る構造の範囲を一般に意味する。当業者であれば、立体構造または立体構造状態の決定因子が、タンパク質のアミノ酸配列(修飾アミノ酸を包含する)に反映されるタンパク質の一次構造およびタンパク質を取り巻く環境を包含することを認識する。タンパク質の立体構造または立体構造状態は、タンパク質二次構造(例えば、とりわけα−ヘリックス、β−シート)、三次構造(例えば、ポリペプチド鎖の三次元フォールディング)および四次構造(例えば、ポリペプチド鎖と他のタンパク質サブユニットとの相互作用)等の構造的特色にも関する。とりわけリガンド結合、リン酸化硫酸化糖鎖付加または疎水性基の付着等、ポリペプチド鎖に対する翻訳後および他の修飾は、タンパク質の立体構造に影響し得る。その上、とりわけ周囲の溶液のpH、塩濃度イオン強度および浸透圧ならびに他のタンパク質および補助因子との相互作用等の環境要因が、タンパク質立体構造に影響を及ぼし得る。タンパク質の立体構造状態は、活性もしくは別の分子との結合の機能アッセイまたは他の方法の中でもX線結晶構造解析、NMRもしくはスピン標識等の物理的方法のいずれかによって決定され得る。タンパク質立体構造および立体構造状態の総合的な考察のため、Cantor and Schimmel、Biophysical Chemistry、第I部:The Conformation of Biological.Macromolecules、W.H.Freeman and Company、1980およびCreighton、Proteins:Structures and Molecular Properties、W.H.Freeman and Company、1993を参照されたい。「特異的立体構造状態」は、タンパク質が形をとり得る立体構造または立体構造状態の範囲の任意のサブセットである。

0045

本明細書における「機能的立体構造」または「機能的立体構造状態」は、タンパク質が、ダイナミックレンジ、特に活性なしから最大活性にわたる活性を有する様々な立体構造状態を保有するとの事実を意味する。「機能的立体構造状態」は、活性なしを含めた任意の活性を有するGPCRの任意の立体構造状態を網羅することを企図しており、タンパク質の変性状態を網羅することは企図していないことは明らかであるはずである。

0046

本明細書において、抗体の文脈における用語「相補性決定領域」または「CDR」は、H(重)またはL(軽)鎖(それぞれVHおよびVLとも略される)いずれかの可変領域を意味し、抗原標的と特異的に結合することができるアミノ酸配列を含有する。これらのCDR領域は、抗体の特定の抗原決定基構造に対する基礎特異性の原因となる。このような領域は、「高頻度可変領域」とも称される。CDRは、可変領域内のアミノ酸の非近接ストレッチを表すが、生物種にかかわらず、可変重および軽鎖領域内のこれらの重大な意味を持つアミノ酸配列の位置的配置は、可変鎖のアミノ酸配列内において同様の配置を有することが判明した。あらゆる標準的抗体の可変重および軽鎖はそれぞれ、個々の軽(L)および重(H)鎖毎に、それぞれ互いに非近接である3個のCDR領域(L1、L2、L3、H1、H2、H3と称する)を有する。特に、ナノボディは、4個の「フレームワーク配列または領域」即ちFRおよび3個の「相補性決定領域」即ちCDRを含むと考えられる単一のアミノ酸鎖を一般に含む。ナノボディは、それぞれ互いに非近接である3個のCDR領域(CDR1、CDR2、CDR3と称する)を有する。FRおよびCDR配列描写は、V−ドメインおよびV様ドメインのIMGT独自の番号方式に基づく(Lefrancら、2003)。

0047

本明細書における「エピトープ」は、ポリペプチドの抗原決定基を意味する。エピトープは、該エピトープ独特の空間的立体構造における3個のアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも4、5、6、7個のこのようなアミノ酸からなり、さらに通常は、少なくとも8、9、10個のこのようなアミノ酸からなる。アミノ酸の空間的立体構造を決定する方法は、本技術分野において公知のものであり、例えば、X線結晶構造解析および二次元核磁気共鳴を包含する。

0048

本明細書における「立体構造エピトープ」は、ポリペプチドの折り畳まれた三次元立体構造に独特である、空間的な立体構造におけるアミノ酸を含むエピトープを意味する。一般に、立体構造エピトープは、タンパク質の折り畳まれた構造において一体となる、直鎖状配列において非連続的なアミノ酸からなる。しかし、立体構造エピトープはまた、ポリペプチドの折り畳まれた三次元立体構造に独特の立体構造の形をとる(変性状態には存在しない)アミノ酸の直鎖状配列からなる。多タンパク質複合体において、立体構造エピトープは、異なる折り畳まれたポリペプチドのフォールディングおよび独自の四次構造におけるそれらの会合により一体となる、1つまたは複数のポリペプチドの直鎖状配列における非連続的なアミノ酸からなる。ここで同様に、立体構造エピトープはまた、一体となって四次構造に独特の立体構造の形をとる、1つまたは複数のポリペプチドのアミノ酸の直鎖状配列からなる可能性がある。

0049

本明細書における用語「特異性」は、タンパク質結合ドメイン、特に免疫グロブリンまたはナノボディ等の免疫グロブリン断片の、他の抗原と比べてある抗原と優先的に結合する能力を意味し、必ずしも高親和性暗示しない。

0050

本明細書における用語「親和性」は、抗原およびタンパク質結合ドメインの平衡状態をその結合によって形成される複合体の存在に向かってシフトさせるような、タンパク質結合ドメイン、特に抗体等の免疫グロブリンまたはナノボディ等の免疫グロブリン断片が抗原と結合する程度を意味する。よって、例えば、相対的に等濃度の抗原および抗体(断片)が組み合わされる場合、高親和性の抗体(断片)は、利用できる抗原と結合して、その結果生じる高濃度の複合体に向けて平衡状態をシフトさせる。解離定数は、タンパク質結合ドメインおよび抗原標的の間の親和性を説明するよう一般に用いられる。通例、解離定数は、10−5Mよりも低い。好ましくは、解離定数は、10−6Mよりも低く、より好ましくは、10−7Mよりも低い。最も好ましくは、解離定数は、10−8Mよりも低い。

0051

本明細書における用語「特異的に結合」および「特異的結合」は、タンパク質結合ドメイン、特に、抗体等の免疫グロブリンまたはナノボディ等の免疫グロブリン断片の、異なる抗原の均一な混合物に存在する特定の抗原と優先的に結合する能力を一般に意味する。ある特定の実施形態において、特異的結合相互作用は、試料における望ましいおよび望ましくない抗原の間を識別し、一部の実施形態において、約10倍超から100倍以上(例えば、約1000または10,000倍超)で識別する。GPCRの多種多様な立体構造状態の文脈において、この用語は、特に、タンパク質結合ドメイン(本明細書において定義されている)の、別の立体構造状態と比較してGPCRの特定の立体構造状態を優先的に認識および/または結合する能力を意味する。例えば、活性状態選択的タンパク質結合ドメインは、活性立体構造状態のGPCRと優先的に結合し、不活性立体構造状態のGPCRと結合しないまたはより弱い程度で結合し、よって、活性立体構造状態に対してより高い親和性を有する。用語「特異的に結合」、「選択的に結合」、「優先的に結合」およびそれらの文法的な均等語は、本明細書において互換的に用いられる。用語「立体構造特異的」または「立体構造選択的」も、本明細書において互換的に用いられる。

0052

本明細書における「抗原」は、動物における免疫応答を誘発できる分子を指す。GPCRの多種多様な立体構造状態の文脈において、分子は、GPCRの別の立体構造状態において形成されないまたはより接近しにくい特定の立体構造状態のGPCRの立体構造エピトープを含む。

0053

「欠失」は、それぞれ1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチド残基が、親ポリペプチドまたは核酸のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比較して存在しない、アミノ酸またはヌクレオチド配列のいずれかにおける変化として本明細書において定義されている。タンパク質の文脈において、欠失は、約2、約5、約10、最大約20、最大約30または最大約50以上のアミノ酸の欠失に関与し得る。タンパク質またはその断片は、2以上の欠失を含有し得る。GPCRの文脈において、欠失は、ループ欠失であっても、Nおよび/またはC末端欠失であってもよい。

0054

「挿入」または「付加」は、親タンパク質のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比較した、それぞれ1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチド残基の付加をもたらした、アミノ酸またはヌクレオチド配列における変化である。「挿入」は、ポリペプチドのアミノ酸配列内部への1つまたは複数のアミノ酸残基への付加を一般に意味するが、一方、「付加」は、挿入となることができる、またはNもしくはC末端または両末端に付加されたアミノ酸残基を意味し得る。タンパク質またはその断片の文脈において、挿入または付加は、通常、約1、約3、約5、約10、最大約20、最大約30または最大約50以上のアミノ酸の挿入または付加である。タンパク質またはその断片は、2以上の挿入を含有し得る。

0055

本明細書における「置換」は、親タンパク質またはその断片のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と比較した、それぞれ異なるアミノ酸またはヌクレオチドによる1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチドの置き換えに起因する。タンパク質またはその断片が、タンパク質の活性における効果が実質的にない保存的アミノ酸置換を有し得ることが理解される。保存的置換は、gly、ala;val、ile、leu、met;asp、glu;asn、gln;ser、thr;lys、arg;cys、met;およびphe、tyr、trp等、所望の組み合わせによるものである。

0056

本明細書における「結晶」または「結晶構造」は、その構成原子、分子またはイオンが3つの空間的次元すべてに広がって整然と反復したパターンに配置された固体材料を意味する。液体または液体に溶解された材料から結晶構造を形成するプロセスは、多くの場合、「結晶化」または「結晶生成」と称される。タンパク質結晶は、殆どの場合、溶液において成長する。最も一般的なアプローチは、その構成分子溶解性を徐々に低くすることである。溶液における結晶成長は、2ステップによって特徴付けられる。即ち、顕微鏡レベル結晶子(恐らく100分子しかない)の核形成と、続く、該結晶子の理想的には回折品質の結晶への成長。

0057

本明細書における「X線結晶構造解析」は、X線ビームを結晶に当て、多くの特異的な方向に回折させる、結晶内の原子の配置を決定する方法である。この回折したビームの角度および強度から、結晶学者は、結晶内電子密度三次元像を作成することができる。この電子密度から、結晶における原子の平均的な位置ならびにその化学結合、その無秩序(disorder)および様々な他の情報が決定され得る。

0058

本明細書における用語「原子座標」は、分子構造内の原子の三次元座標のセットを意味する。一実施形態において、原子座標は、生物物理学分野の当業者にとって周知の方法に従ったX線結晶構造解析を用いて得られる。簡単に説明すると、X線回折パターンは、結晶からのX線を回折することによって得ることができる。回折データは、結晶を含む単位格子の電子密度マップの計算に用いられる。マップは、単位格子内の原子の位置(即ち、原子座標)の確立に用いられる。当業者であれば、X線結晶構造解析によって決定された構造座標のセットが、標準誤差を含有することを理解する。他の実施形態において、原子座標は、電子回折(電子結晶構造解析としても知られる)および核磁気共鳴(NMR)方法を包含し得る他の実験生物物理学的構造決定方法を用いて得ることができる。さらに他の実施形態において、原子座標は、アブニシオなタンパク質フォールディングアルゴリズムエネルギー最小化および相同性に基づくモデリングのうち1つまたは複数に基づき得られる分子モデリングツールを用いて得ることができる。これらの技法は、生物物理学および生物情報学分野における当業者にとって周知のものである。

0059

本明細書における「構造を解明すること」は、タンパク質の原子の配置または原子座標の決定を意味し、多くの場合、X線結晶構造解析等の生物物理学的方法によってなされる。

0060

本明細書における用語「化合物」または「試験化合物」または「候補化合物」または「薬物候補化合物」は、スクリーニングアッセイまたは創薬アッセイ等、アッセイにおいて検査される天然起源または合成いずれかの任意の分子を説明する。そのようなものとして、これらの化合物は、有機または無機化合物を含む。化合物は、低分子量によって特徴付けられたポリヌクレオチド、脂質またはホルモンアナログを包含する。他のバイオポリマー有機試験化合物は、抗体、抗体断片または抗体コンジュゲート等、約2から約40アミノ酸を含む小分子ペプチドまたはペプチド様分子(ペプチド模倣物)および約40から約500アミノ酸を含むより高分子のポリペプチドを包含する。試験化合物は、タンパク質スキャフォールドでもよい。ハイスループットな目的のため、十分な範囲の多様性をもたらすコンビナトリアルまたはランダム化ライブラリー等の試験化合物ライブラリーを用いることができる。例として、天然化合物ライブラリーアロステリック化合物ライブラリー、ペプチドライブラリー、抗体断片ライブラリー、合成化合物ライブラリー、断片ベースのライブラリー、ファージディスプレイライブラリー等が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書においてより詳細な説明をさらに見出すことができる。

0061

本明細書において、用語「決定する」、「測定する」、「評価する」、「モニターする」および「アッセイする」は、互換的に用いられ、定量的および定性的決定の両方を包含する。

0062

GPCRに関して用語「生物活性のある」は、天然起源のGPCRの生化学的機能(例えば、結合機能、シグナル伝達機能またはリガンド結合の結果立体構造を変化させる能力)を有するGPCRを意味する。

0063

本明細書における用語「治療上有効量」、「治療上有効用量」および「有効量」は、所望の結果(単数または複数)の達成に必要とされる量を指す。

0064

本明細書における用語「薬学的に許容される」は、生物学その他の観点から望ましくないことのない材料を指し、即ち、材料が、望ましくない生物学的効果を決して生じないまたはそれを含有する医薬組成物の他の成分のいずれとも有害な様式で相互作用しない化合物と共に個体に投与され得ることを指す。

0065

詳細な説明
GPCRに関する構造情報は、受容体から細胞内相互作用タンパク質(Gタンパク質、β−アレスチン等)へのシグナルの伝達に関与する構造的、機能的および生化学的変化に関する見識をもたらし、これらの薬理学的に関連性のある相互作用に干渉する仕方を描写する。したがって、GPCRを得て結晶化する試みは、非常に重要である。しかし、これは、GPCRを扱う際の生化学的課題および界面活性剤溶液におけるこれらの複合体の固有の不安定性のために、特に困難な努力である。また、成長する回折品質の結晶は、安定的で立体構造的均質なタンパク質を必要とするため、GPCR固有の立体構造の柔軟性は、GPCR単独の高分解能構造解析を複雑化する(Kobilkaら、2007)。本発明は、高分解能構造解析およびそれから派生する多くの応用等、GPCRの構造的および機能的解析を可能にする、対象のGPCRの機能的立体構造状態、特に、その活性立体構造状態を捕捉または「凍結」するための新規の実験的および分析的ツールを提供する。

0066

本発明の第1の態様は、機能的立体構造状態のGPCRと特異的に結合することができるタンパク質結合ドメインに関する。

0067

本発明のタンパク質結合ドメインは、機能的立体構造状態の標的GPCRと特異的に結合することができる任意の非天然起源の分子またはその部分(上文に定義されている)であり得る。好ましい一実施形態において、本明細書に記載されているタンパク質結合ドメインは、タンパク質スキャフォールドである。用語「タンパク質スキャフォールド」は、別の分子、例えばタンパク質との結合のためのフレームワークを含む構造、特にタンパク質またはペプチド構造を形成するフォールディング単位を一般に意味する(概説として、例えば、Skerra、J.2000を参照されたい)。タンパク質結合ドメインは、天然起源の分子、例えば、自然または獲得免疫系の成分に由来し得るまたは全く人工的に設計され得る。タンパク質結合ドメインは、免疫グロブリンに基づいてもよくまたは微生物タンパク質、プロテアーゼ阻害剤毒素、フィブロネクチン、リポカリン、単鎖アンチパラレルコイル大腸菌タンパク質(single chain antiparallel coiled coil proteins)もしくは反復モチーフタンパク質等が挙げられるが、これらに限定されないタンパク質に存在するドメインに基づいてもよい。本技術分野における公知のタンパク質結合ドメインの例として、抗体、重鎖抗体(hcAb)、単一ドメイン抗体(sdAb)、ミニボディ、ラクダ科動物重鎖抗体に由来する可変領域(VHHまたはナノボディ)、サメ抗体に由来する新規抗原受容体の可変領域(VNAR)、アルファボディ、プロテインA、プロテインG、設計アンキリンリピートドメイン(DARPins)、フィブロネクチンIII型リピート、アンチカリン、ノッチン、操作されたCH2ドメイン(ナノ抗体)、ペプチドおよびタンパク質、リポペプチド(例えば、ペプデュシン(pepducin))、DNAならびにRNA(例えば、Gebauer&Skerra、2009;Skerra、2000;Starovasnikら、1997;Binzら、2004;Koideら、1998;Dimitrov、2009;Nygrenら、2008;WO2010066740を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。多くの場合、選択方法を用いて特定の種類のタンパク質結合ドメインを作製する際、ランダム化された相互作用残基候補を含有するコンセンサスまたはフレームワーク配列を含むコンビナトリアルライブラリーが、タンパク質等の対象の分子への結合に関するスクリーニングに用いられる。

0068

本明細書における「Gタンパク質共役受容体」または「GPCR」は、それぞれ膜を貫通する7個のアルファヘリックスを形成する、22から24個の間の疎水性アミノ酸の7領域を備える共通構造的モチーフを共有するポリペプチドである。各貫通領域は、番号により同定され、即ち、膜貫通−1(TM1)、膜貫通−2(TM2)等とする。膜貫通ヘリックスは、それぞれ「細胞外」領域1、2および3(EC1、EC2およびEC3)と称される、細胞膜の外部または「細胞外」側における膜貫通−2と膜貫通−3との間、膜貫通−4と膜貫通−5との間および膜貫通−6と膜貫通−7との間のアミノ酸の領域によって連結されている。膜貫通ヘリックスは、それぞれ「細胞内」領域1、2および3(IC1、IC2およびIC3)と称される、細胞膜の内部または「細胞内」側における膜貫通−1と膜貫通−2との間、膜貫通−3と膜貫通−4との間および膜貫通−5と膜貫通−6との間のアミノ酸の領域によっても連結されている。受容体の「カルボキシ」(「C」)末端は、細胞の内側にある細胞内空間に位置し、受容体の「アミノ」(「N」)末端は、細胞の外側にある細胞外空間に位置する。これらの領域のいずれも、GPCRの一次アミノ酸配列の解析により容易に同定可能である。

0069

GPCR構造および分類は、一般に本技術分野において周知のものであり、GPCRに関するさらなる考察は、Probstら、1992;Marcheseら、1994;Lagerstrom&Schioth、2008;Rosenbaumら、2009ならびに次の書籍、Jurgen Wess(編)Structure−Function Analysis of G Protein−Coupled Receptors、Wiley−Liss発行(第1版;1999年10月15日);Kevin R.Lynch(編)Identification and Expression of G Protein−Coupled Receptors、John Wiley&Sons発行(1998年3月);Tatsuya Haga(編)、G Protein−Coupled Receptors、CRCPress発行(1999年9月24日)およびSteve Watson(編)G−Protein Linked Receptor Factsbook、Academic Press発行(第1版;1994年)に見出すことができる。

0070

GPCRは、配列相同性に基づいて、数種の別々のファミリーにグループ分けすることができる。あらゆるGPCRは、7個の膜貫通α−ヘリックスの類似の構造を有するが、この受容体クラス内の異なるファミリーは、互いに配列相同性を示さず、よって、これらの膜貫通ドメイン構造の類似性が、共通の機能的要件を定義し得ることを示唆する。ヒトゲノムの最初のドラフト配列が利用できるようになったとき、GPCRレパートリー包括見解が可能となった。Fredrikssonおよび同僚らは、系統発生学判断基準に基づいて802種のヒトGPCRをファミリー分けした。その結果は、ヒトGPCRの多くが、グルタミン酸、ロドプシン、接着、Frizzled/Taste2およびセクレチンと称される5種の主要ファミリーに存在することを示した(Fredrikssonら、2003)。

0071

本発明の好ましい一実施形態において、タンパク質結合ドメインは、GPCRの機能的立体構造状態に対して作製されまたはそれと特異的に結合することができ、GPCRは、GPCRグルタミン酸ファミリーのGPCR、GPCRロドプシンファミリーのGPCR、GPCR接着ファミリーのGPCR、GPCR Frizzled/Taste2ファミリーのGPCRおよびGPCRセクレチンファミリーのGPCRを含む群から選ばれる。好ましくは、GPCRは、哺乳動物タンパク質または植物タンパク質または微生物タンパク質またはウイルスタンパク質または昆虫タンパク質である。さらにより好ましくは、GPCRは、ヒトタンパク質である。

0072

ロドプシンファミリー(クラスA(Kolakowski、1994)またはクラス1(Foordら、(2005)、古い分類システムにおける)に相当)のメンバーは、小型の細胞外ループしか持たず、リガンドの相互作用は、膜貫通間隙内の残基との間で行われる。これは、圧倒的最大の群(GPCRの>90%)であり、匂い分子、カテコールアミンおよびアミン等の小分子、(神経)ペプチドおよび糖タンパク質ホルモンの受容体を含有する。このファミリーの代表であるロドプシンは、構造が解明された最初のGPCRである(Palczewskiら、2000)。構造が解明された拡散性リガンドと相互作用する最初の受容体であるβ2AR(Rosenbaumら、2007)も、このファミリーに属す。系統発生解析に基づき、クラスB GPCRまたはクラス2(Foordら、2005)受容体は、近年、接着およびセクレチン(Fredrikssonら、2003)の2ファミリーに細分化された。接着およびセクレチン受容体は、リガンド結合に関与する相対的に長いアミノ末端細胞外ドメインによって特徴付けられる。膜貫通ドメインの配向性に関して殆ど分かっていないが、恐らく、ロドプシンの配向性とは全く異なる。これらのGPCRのリガンドは、グルカゴン、セクレチン、性腺刺激ホルモン放出ホルモンおよび副甲状腺ホルモン等のホルモンである。グルタミン酸ファミリー受容体(クラスCまたはクラス3受容体)も大型の細胞外ドメインを有し、このドメインは、内側に結合したアゴニストにより開閉できることから「ハエジゴク(Venus fly trap)」の様に機能する。ファミリーメンバーは、代謝型グルタミン酸、Ca2+感知およびγ−アミノ酪酸GABA)−B受容体である。

0073

GPCRは、セロトニン嗅覚受容体糖タンパク質ホルモン受容体ケモカイン受容体、アデノシン受容体、生体アミン受容体、メラノコルチン受容体神経ペプチド受容体、走化性受容体、ソマトスタチン受容体オピオイド受容体メラトニン受容体カルシトニン受容体PTHPTHrP受容体グルカゴン受容体、セクレチン受容体、ラトロトキシン受容体、代謝型グルタミン酸受容体カルシウム受容体、GABA−B受容体、フェロモン受容体プロテアーゼ活性化型受容体、ロドプシンおよび他のGタンパク質共役型7回膜貫通セグメント受容体を限定することなく包含する。GPCRは、ホモマーもしくはヘテロマーダイマーまたはより高次オリゴマーとして互いに会合したGPCR受容体も包含する。GPCRのアミノ酸配列(およびこれをコードするcDNAのヌクレオチド配列)は、例えば、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)を参照することにより容易に入手できる。

0074

好ましい一実施形態によると、GPCRは、すべて本技術分野において周知のものである、アドレナリン受容体、好ましくは、α1アドレナリン受容体およびα2アドレナリン受容体等のαアドレナリン受容体ならびにβ1アドレナリン受容体、β2アドレナリン受容体およびβ3アドレナリン受容体等のβアドレナリン受容体を含む群;またはムスカリン受容体、好ましくは、M1ムスカリン受容体、M2ムスカリン受容体、M3ムスカリン受容体、M4ムスカリン受容体およびM5ムスカリン受容体を含む群;またはアンジオテンシン受容体、好ましくは、1型アンジオテンシンII受容体、2型アンジオテンシンII受容体および他の異型アンジオテンシンII受容体の群から選ばれる。

0075

本明細書におけるGPCRは、いかなる天然起源または非天然起源の(即ち、人為的に変化された)ポリペプチドであってもよい。GPCRに関する用語「天然起源」は、天然に生成された(例えば、限定的でないが、とりわけ哺乳動物、より具体的には、ヒトによりまたはウイルスによりまたは植物によりまたは昆虫により生成された)GPCRを指す。このようなGPCRは、天然に存在する。GPCRに関する用語「非天然起源」は、天然起源でないGPCRを指す。変異導入により構成的に活性化された野生型GPCRおよび天然起源のGPCRの変種は、非天然起源のGPCRの例である。非天然起源のGPCRは、天然起源のGPCRに対して少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一または少なくとも99%同一のアミノ酸配列を有し得る。β2−アドレナリン受容体を本発明の範囲内におけるGPCRの特定の非限定的な例とすると、上の記述から、ヒトβ2アドレナリン受容体(例えば、Genbank受託番号NP_000015に記載の配列)に加えて、マウスβ2アドレナリン受容体(例えば、Genbank受託番号NM007420に記載)または他の哺乳動物β2アドレナリン受容体を用いてよいことは明らかである。さらに、この用語は、特定の生物種のβ2アドレナリン受容体の野生型多型変種および特定の他の活性変種を網羅することを目的とする。例えば、「ヒトβ2アドレナリン受容体」は、Genbank受託番号NP_000015の天然起源の「ヒトβ2アドレナリン受容体」に対して少なくとも95%同一(例えば、少なくとも95%または少なくとも98%同一)のアミノ酸配列を有する。さらに、本発明が、ループ欠失またはNおよび/またはC末端欠失またはそのアミノ酸もしくはヌクレオチド配列に関連した置換もしくは挿入もしくは付加またはそれらの任意の組み合わせを有するGPCRも想定することが認識される(上文に定義されている、また、実施例の節も参照されたい)。本発明によるタンパク質結合ドメインが、一般に、GPCRのあらゆる天然起源または合成のアナログ、変種、変異体対立遺伝子と結合することができるとさらに期待される。

0076

例えば、酵素結合免疫吸着測定法ELISA)、表面プラズモン共鳴法、ファージディスプレイ等を含めた様々な方法が、タンパク質結合ドメインおよび標的GPCRの間の特異的結合の決定に用いることができ、これらの方法は、本技術分野において慣行的であり、例えば、Sambrookら(2001)、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバーに記されている。この目的のため、多くの場合、本明細書にさらに記載されているペプチド標識、核酸標識、化学標識、蛍光標識または高周波タグ等の独特の標識またはタグが用いられることが認識される。

0077

GPCRが、天然および合成リガンドに応じて幅広い機能的挙動を示す立体構造的に複雑な体膜タンパク質であることは明らかである。アゴニスト結合からタンパク質活性化への経路を定義するには、活性化経路に沿ったスナップショットを提供するであろう様々な天然または合成リガンドと複合した、研究中の受容体の様々な立体構造状態の結晶構造(活性アゴニスト結合状態およびGPCR−Gタンパク質複合体の構造を含む)の組み合わせを必要とする。

0078

よって、好ましい一実施形態において、タンパク質結合ドメインは、安定化することができる、あるいはGPCRの特定の機能的立体構造状態の安定性を増大させることができる。好ましくは、タンパク質結合ドメインは、GPCR結合によりGPCRにおける機能的立体構造状態の形成を誘導することができる。GPCRの機能的立体構造状態は、基礎立体構造状態または活性立体構造状態または不活性立体構造状態であり得る。好ましくは、タンパク質結合ドメインは、結合によりGPCRをその活性立体構造状態に安定化することができるおよび/またはGPCRにその活性立体構造状態の形を取らせることができる。

0079

GPCRの機能的立体構造状態(本明細書において定義されている)に関する表現「誘導する」または「(強制的に)させる」または「ロックする」または「トラップする」または「固定する」または「凍結する」は、本明細書において、GPCRと本発明によるタンパク質結合ドメインとの相互作用の効果のため、他に仮定され得る可能な立体構造のサブセットにおけるGPCRの保持または維持を意味する。したがって、「立体構造的にトラップされた」または「立体構造的に固定された」または「立体構造的にロックされた」または「立体構造的に凍結された」タンパク質は、本明細書において、GPCRと本発明によるタンパク質結合ドメインとの相互作用の効果のため、他に仮定され得る可能な立体構造のサブセットにおいて維持されたタンパク質である。この文脈において、タンパク質の特異的立体構造または立体構造状態と特異的または選択的に結合するタンパク質結合ドメインは、タンパク質に仮定し得る他の立体構造または立体構造状態よりも高い親和性で、立体構造または立体構造状態のサブセットにおけるタンパク質と結合するタンパク質結合ドメインを意味する。当業者であれば、タンパク質の特異的立体構造または立体構造状態と特異的または選択的に結合するタンパク質結合ドメインが、この特異的立体構造または立体構造状態を安定化することを認識する。

0080

本明細書における用語「機能的立体構造状態」は、タンパク質、特にGPCR等の膜タンパク質が、ダイナミックレンジの活性、特に活性なしから最大活性にわたる活性を有する多くの異なる立体構造状態を保有するとの事実を意味する(Kobilka and Deupi、2007において概説)。「機能的立体構造状態」が、タンパク質の変性状態を網羅することを目的としないことは明らかであるはずである。GPCRの機能的多用途性は、このような多種多様な立体構造を生じるこれらのタンパク質の柔軟性と本質的に結びつく。立体構造エネルギー景観は、結合したリガンド(エフェクター分子、アゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニスト…)の存在、脂質環境または相互作用タンパク質の結合等の要因内因的に結びつく。例えば、「基礎立体構造状態」は、リガンド(上文に定義されている、例えば、エフェクター分子、アゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニスト)不在下の受容体の低エネルギー状態として定義され得る。タンパク質が別の立体構造状態へと移行を行う確率は、2状態間のエネルギー差および2状態間のエネルギー障壁の高さの関数である。GPCR等の受容体タンパク質の場合、リガンド結合のエネルギーは、2状態間のエネルギー障壁の変化もしくは2状態間の相対エネルギーレベルの変化のいずれかまたはその両方に用いられ得る。エネルギー障壁の変化は、2状態間の移行速度における効果を有し、一方、エネルギーレベルの変化は、2状態における受容体の平衡分布における効果を有する。アゴニストまたは部分アゴニストの結合は、エネルギー障壁を低めるおよび/または不活性立体構造状態に対してより活性の高い立体構造状態のエネルギーを低下させる。インバースアゴニストは、エネルギー障壁を高めるおよび/または「活性立体構造」に対して「不活性状態立体構造」のエネルギーを低下させる。受容体とそのGタンパク質とのカップリングは、エネルギー景観をさらに変化させ得る。GPCR等の膜内在性タンパク質の活性は、膜においてそれを取り巻く脂質分子の構造によっても影響される。膜タンパク質は、強固な実体ではなく、周囲の脂質二重層との優れた疎水性調和を確実にするために変形する。重要なパラメータの一つは、脂質脂肪酸アシル鎖の長さによって画定される脂質二重層の疎水部の厚さである。また、脂質頭部領域の構造は、脂質頭部領域に位置する膜タンパク質のこの部分の構造の画定に重要である可能性がある。他の脂質の中で、パルミトイル化およびコレステロールとGPCRの結合は、モノマー受容体内側における構造的役割も果たし、受容体オリゴマーの形成/安定化に寄与し得る(Lee 2004;Chini and Parenti 2009)。

0081

上文に定義されている「受容体リガンド」または単に「リガンド」は、受容体の活性部位と結合し、その有効性または即ち、特異的経路を通した受容体シグナル伝達におけるその効果に従ってさらに分類されることを指す「オルソステリック」リガンド(天然および合成の両方)でよい。本明細書において、「アゴニスト」は、受容体と結合することにより、受容体のシグナル伝達活性を増加させるリガンドを意味する。完全アゴニストは、最大受容体刺激ができる。部分アゴニストは、飽和濃度であっても完全活性を誘発できない。部分アゴニストは、より強いアゴニストの結合を抑制することにより、「遮断薬」としても機能し得る。「アンタゴニスト」は、いかなる活性も刺激することなく受容体と結合するリガンドを意味する。「アンタゴニスト」は、他のリガンドの結合を抑制するその能力、したがって遮断アゴニスト誘導活性のため、「遮断薬」としても知られる。さらに、「インバースアゴニスト」は、アゴニスト効果の遮断に加えて、受容体の基礎または構成的活性をリガンド非結合の受容体の活性よりも低下させるアンタゴニストを意味する。

0082

GPCRが細胞生理を調節する仕方についての標準的見解は、リガンド(ホルモン、神経伝達物質または感覚刺激等)の結合が、受容体の活性立体構造状態を安定化し、これによりヘテロ三量体Gタンパク質との相互作用を可能にすることである。Gタンパク質との相互作用に加えて、アゴニスト結合GPCRは、GPCRキナーゼ(GRK)と会合し、受容体リン酸化を生じる。GRKによるGPCRリン酸化の一般的な結果は、Gタンパク質とのGPCR相互作用の減少およびアレスチンとのGPCR相互作用の増加であり、アレスチンは、さらなるGタンパク質シグナル伝達を立体的に阻害して、受容体脱感作をもたらす。β−アレスチンは、Gタンパク質シグナルを打ち消すため、MAPK経路等、第2の平行セットのシグナルカスケードを同時に惹起することができる。GPCRは、一般的なGPCR相互作用タンパク質(Gタンパク質、GRK、アレスチンおよび他の受容体)ファミリー外の様々なタンパク質とも会合する。これらのGPCR選択的パートナーは、GPCRシグナル伝達を媒介し、Gタンパク質によるGPCRシグナル伝達を組織化し、GPCR輸送を導き、GPCRを特に細胞内区画繋留しおよび/またはGPCR薬理学に影響を与えることができる(Ritter and Hall、2009)。この点において、本明細書におけるリガンドは、受容体のシグナル伝達活性のサブセットを選択的に刺激、例えば、Gタンパク質またはβ−アレスチン機能を選択的に活性化する能力を有する「バイアスをかけたリガンド(biased ligand)」でもよい。このようなリガンドは、「バイアスをかけたリガンド」、「バイアスをかけたアゴニスト」または「機能的に選択的なアゴニスト」として公知のものである。より具体的には、リガンドバイアスは、異なるシグナルに対して異なる相対有効性を有する複数の受容体活性のリガンド刺激によって特徴付けられる不完全なバイアスであり得(非絶対的選択性)または別の公知の受容体活性の刺激なしで1種の受容体活性のリガンド刺激によって特徴付けられる完全バイアスであり得る。

0083

GPCRのシグナル伝達活性(したがって、その立体構造挙動)は、アロステリック調節因子として公知の別種のリガンドの結合によっても影響され得る。「アロステリック調節因子」あるいは「アロステリック修飾因子」、「アロステリックリガンド」または「エフェクター分子」は、GPCRのアロステリック部位(即ち、物理的にタンパク質の活性部位と異なる調節性部位)において結合する。オルソステリックリガンドと対照的に、アロステリック修飾因子は、内在性リガンドも結合しているとしても、異なる部位で受容体と結合して受容体機能を修飾するため、非競合的である。このため、アロステリック修飾因子は、多くの薬物がそうであるように、単に受容体をオンにしたりオフにしたりすることに限定されない。その代わりに、これは、むしろ減光スイッチのように作用し、本体に受容体活性化の惹起に関するその天然の制御を保持させつつ、活性化または非活性化の強度に関する制御をもたらす。タンパク質の活性を増強するアロステリック調節因子は、本明細書において、「アロステリック活性化因子」または「正のアロステリック修飾因子」と称され、一方、タンパク質の活性を減少させるアロステリック調節因子は、本明細書において、「アロステリック阻害剤」あるいは「負のアロステリック修飾因子」と称される。

0084

好ましくは、本発明のタンパク質結合ドメインは、アゴニスト結合GPCRと特異的に結合することができるおよび/またはアゴニストに対するGPCRの親和性を増強する。EC50、IC50、Kdまたは当業者にとって公知である任意の他の親和性もしくは効力測定値の減少によって測定された通り、タンパク質結合ドメインが、受容体との結合によりアゴニストに対する親和性を少なくとも2倍、少なくとも5倍、より好ましくは少なくとも10倍増加できることが好ましい。

0085

GPCRの構造および/または特定の生物活性に関する安定性の増大も、熱、界面活性剤、カオトロピック剤および極端なpHを含めた他の変性剤または変性条件の安定性の指針となり得ることが認識される。したがって、さらに別の一実施形態において、本発明によるタンパク質結合ドメインは、希釈、濃縮バッファー組成物、加熱、冷却、凍結、界面活性剤、カオトロピック剤、pHにより誘導された非生理的条件下におけるGPCRの機能的立体構造状態の安定性を増大させることができる。水溶性タンパク質と対照的に、膜タンパク質フォールディングおよび安定性の熱力学的研究は極めて難しく、可逆的フォールディングのための条件を見出すことが困難であるため複雑化されていることが判明した。熱および化学的アプローチ等、多くの方法によって誘導されたヘリックス膜タンパク質のアンフォールディングは、Stanley and Fleming(2008)によって概説された通り、不可逆的である。したがって、本明細書における用語「熱安定化」、「熱安定化する」、「の熱安定性を増大させる」は、GPCRの熱力学的特性よりもむしろ機能的特性を意味し、加熱、冷却、凍結、化学的変性剤、pH、界面活性剤、塩、添加剤プロテアーゼもしくは温度等が挙げられるが、これらに限定されない熱および/または化学的アプローチによって誘導された不可逆的変性に対するタンパク質の抵抗性を意味する。不可逆的変性は、タンパク質の機能的立体構造の不可逆的アンフォールディング、生物活性の損失および変性タンパク質の凝集をもたらす。本明細書における用語「(熱)安定化」、「(熱)安定化する」、「の(熱)安定性を増大させる」は、脂質粒子または脂質層(例えば、脂質単層、脂質二重層等)に包埋されたGPCRおよび界面活性剤に可溶化されたGPCRに適用する。

0086

好ましくは、本発明によるタンパク質結合ドメインは、GPCRの機能的立体構造状態、好ましくは、GPCRの活性立体構造状態の熱安定性を増大させることができる。熱に対する安定性の増大との関連で、これは、リガンド結合を測定することまたは上昇温度におけるアンフォールディングに対して感受性である蛍光、CDもしくは光散乱等、分光測定方法を用いることによって容易に決定され得る(実施例の節も参照)。タンパク質結合ドメインが、少なくとも2℃、少なくとも5℃、少なくとも8℃、より好ましくは少なくとも10℃または15℃または20℃による機能的立体構造状態のGPCRの熱安定性の増大によって測定された安定性を増大できることが好ましい。別の好ましい一実施形態によると、タンパク質結合ドメインは、アゴニスト、インバースアゴニスト、アンタゴニストおよび/またはGPCRもしくはGPCR依存性シグナル伝達経路の修飾因子もしくは阻害剤等が挙げられるが、これらに制限されないリガンドと複合したGPCRの機能的立体構造の熱安定性を増大させることができる。別の好ましい一実施形態によると、本発明によるタンパク質結合ドメインは、界面活性剤またはカオトロープの存在下で、GPCRの機能的立体構造状態の安定性を増大させることができる。好ましくは、タンパク質結合ドメインは、熱または化学的アプローチによって誘導された変性に対して、GPCRの活性立体構造状態の安定性を増大させることができる。熱、界面活性剤またはカオトロープに対する安定性増大との関連で、通例、GPCRは、検査界面活性剤または検査カオトロピック剤の存在下で規定の時間インキュベートされ、例えば、リガンド結合または分光測定方法を用いて、場合によって、上に記す通り上昇温度における安定性が決定される。さらに別の好ましい一実施形態によると、本発明によるタンパク質結合ドメインは、極端なpHに対してGPCRの機能的立体構造状態の安定性を増大させることができる。好ましくは、タンパク質結合ドメインは、極端なpHに対してGPCRの活性立体構造状態の安定性を増大させることができる。極端なpH値のとの関連において、通常の検査pHは、例えば、6から8の範囲、5.5から8.5の範囲、5から9の範囲、4.5から9.5の範囲において、より具体的には、4.5から5.5(低pH)の範囲または8.5から9.5(高pH)の範囲において選ばれる。

0087

本発明によるタンパク質結合ドメインは、一般に、任意の所望のGPCRに対して作製され、特に、任意のGPCRの任意の立体構造エピトープ、好ましくは、任意のGPCRの機能的立体構造状態、より好ましくは、GPCRの活性立体構造状態(すべて上文に定義されている)に対して作製され得る。より具体的には、立体構造エピトープは、任意の所望のGPCRの細胞内もしくは細胞外領域または膜内領域またはドメインもしくはループ構造の一部であり得る。特定の実施形態によると、タンパク質結合ドメインは、GPCRの任意の適切な細胞外領域、ドメイン、ループまたは他の細胞外立体構造エピトープに対して作製され得るが、好ましくは、膜貫通ドメインの細胞外部分の一つに対してまたはより好ましくは、膜貫通ドメインを連結する細胞外ループの一つに対して作製される。あるいは、タンパク質結合ドメインは、GPCRの任意の適切な細胞内領域、ドメイン、ループまたは他の細胞内立体構造エピトープに対して作製され得るが、好ましくは、膜貫通ドメインの細胞内部分の一つに対してまたはより好ましくは膜貫通ドメインを連結する細胞内ループの一つに対して作製される。「三次元」エピトープまたは「立体構造」エピトープと特異的に結合するタンパク質結合ドメインは、折り畳まれたタンパク質の三次(即ち、三次元)構造と特異的に結合し、より低い(即ち、少なくとも2、5、10、50または100倍低い)親和性で直鎖状(即ち、折り畳まれていない、変性した)形態のタンパク質と結合する。本発明のタンパク質結合ドメインが、一般に、GPCRのあらゆる天然起源または合成アナログ、変種、変異体、対立遺伝子と結合することがさらに期待される。

0088

特定の一実施形態において、本発明によるタンパク質結合ドメインは、GPCRの細胞内立体構造エピトープと特異的に結合することができる。好ましくは、タンパク質結合ドメインは、GPCRのGタンパク質結合部位に含まれる、そこに位置するまたはそれと重複する立体構造エピトープと特異的に結合することができる。より好ましくは、タンパク質結合ドメインは、GPCRの機能的立体構造状態、より好ましくは、GPCRの活性立体構造状態のGタンパク質結合部位を占拠することができる。最も好ましくは、タンパク質結合ドメインは、Gタンパク質様の挙動を示す。本明細書における用語「Gタンパク質様挙動」は、例えばインバースアゴニスト結合受容体に対し、アゴニスト結合受容体と優先的に結合するタンパク質結合ドメインの特性を意味する。Gタンパク質様挙動を示すタンパク質結合ドメインは、アゴニスト占拠受容体およびGタンパク質間の協同的相互作用に起因するアゴニストに対する受容体の親和性も増強する(実施例の節も参照)。

0089

好ましい一実施形態において、タンパク質結合ドメインは、自然または獲得免疫系に由来する。好ましくは、タンパク質結合ドメインは、免疫グロブリンに由来する。好ましくは、本発明によるタンパク質結合ドメインは、抗体またはその誘導体である。用語「抗体」(Ab)は、抗原を特異的に結合および認識する、免疫グロブリン遺伝子によってコードされたポリペプチドまたはその機能的断片を一般に意味し、当業者にとって公知のものである。従来の免疫グロブリン(抗体)構造的単位は、テトラマーを含む。各テトラマーは、各対が1本の「軽」(約25kDa)および1本の「重」鎖(約50−70kDa)を有する同一の2対のポリペプチド鎖によって構成されている。各鎖のN末端は、主として抗原認識に関与する約100から110以上のアミノ酸の可変領域を画定する。用語、可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)はそれぞれ、これらの軽および重鎖を意味する。用語「抗体」は、単鎖全抗体および抗原結合断片を含めた全抗体を包含するよう企図されている。一部の実施形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’およびF(ab’)2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(dsFv)およびVLまたはVHドメインのいずれかを含むまたはそれからなる断片ならびに標的抗原と結合することができる免疫グロブリンペプチドのこれらまたは任意の他の機能的部分の任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない抗原結合抗体断片でよい。用語「抗体」は、本明細書においてさらに定義されている単一ドメイン抗体、より具体的にはナノボディ等、重鎖抗体またはその機能的断片も包含するよう企図されている。

0090

好ましくは、タンパク質結合ドメインは、4個のフレームワーク領域および3個の相補性決定領域、好ましくは配列FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4またはその任意の適切な断片(よって通常、相補性決定領域のうち少なくとも1個を形成するアミノ酸残基の少なくとも一部を含有する)を含むアミノ酸配列を含む。4個のFRおよび3個のCDRを含むタンパク質結合ドメインは、当業者にとって公知のものであり、非限定的な例として、Wesolowskiら(2009)に記載されている。

0091

好ましくは、本発明によるタンパク質結合ドメインは、ラクダ科動物抗体に由来する。より好ましくは、本発明によるタンパク質結合ドメインは、ナノボディまたはその任意の適切な断片のアミノ酸配列を含む。より具体的には、タンパク質結合ドメインは、ナノボディまたはその任意の適切な断片である。本明細書における「ナノボディ」(Nb)は、天然起源の重鎖抗体に由来する最小の抗原結合断片または単一可変ドメイン(「VHH」)を意味し、当業者にとって公知のものである。これは、ラクダ科動物に見られる重鎖のみの抗体に由来する(Hamers−Castermanら、1993;Desmyterら、1996)。「ラクダ科動物」のファミリーにおいて、軽ポリペプチド鎖を欠く免疫グロブリンが見いだされる。「ラクダ科動物」は、旧世界ラクダ科動物(カメルス・バクトリアヌス(Camelus bactrianus)およびカメルス・ドロメダリウス(Camelus dromedarius))ならびに新世界ラクダ科動物(例えば、ラマ・パコス(Lama paccos)、ラマ・グラマ(Lama glama)、ラマ・グアニコエ(Lama guanicoe)およびラマ・ビクニャ(Lama vicugna))を含む。単一可変ドメイン重鎖抗体は、本明細書において、ナノボディまたはVHH抗体と命名される。Nanobody(ナノボディ)(商標)、Nanobodies(商標)およびNanoclone(商標)は、Ablynx NV(ベルギー)の商標である。Nbの小サイズおよび独特の生物物理学的特性は、稀少なまたは隠れたエピトープの認識およびタンパク質標的の空洞または活性部位への結合に関して従来の抗体断片よりも優れている。さらに、Nbは、二重特異性および二価抗体として設計され得るまたはレポーター分子と付着され得る(Conrathら、2001)。Nbは、容易に製造されて胃腸管系に残存し得る安定的で強固な単一ドメインタンパク質である。したがって、Nbは、創薬および治療等、多くの用途において用いられ得る(Saerensら、2008)が、タンパク質の精製、機能研究および結晶化のための多用途および有用なツールとしても用いられ得る(Conrathら、2009)。

0092

本発明によるナノボディは、4個の「フレームワーク配列」即ちFRおよび3個の「相補性決定領域」即ちCDR(上文に定義されている)を含むと考慮され得る単一のアミノ酸鎖を一般に含む。本発明のナノボディの非限定的な例は、本明細書においてより詳細にさらに説明されている。ナノボディのフレームワーク領域も、その抗原の結合に寄与し得ることは明らかである(Desmyterら、2002;Korotkovら、2009)。

0093

本発明によるナノボディの非限定的な例として、配列番号1−29(図12、表1を参照)によって定義されているナノボディが挙げられるが、これらに限定されない。CDR配列の描写は、V−ドメインおよびV様ドメインに関するIMGT独自の番号方式に基づく(Lefrancら、2003)。特定の一実施形態において、上記のナノボディは、配列番号30−70(図12、表2を参照)から選択されたアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR)のうち少なくとも1個を含むことができる。より具体的には、上記のナノボディは、配列番号1−29またはその機能的断片を含む群から選択され得る。本明細書における「機能的断片」または「適切な断片」は、例えば、CDRループのうち1個を含むことができる。好ましくは、機能的断片は、CDR3を含む。より具体的には、ナノボディは、配列番号1−29のうちいずれかからなり、ナノボディの機能的断片は、配列番号30−70のうちいずれかからなる。さらに別の一実施形態において、上記のナノボディまたは機能的断片のうちいずれかをコードする核酸配列もまた、本発明の一部である。さらに、本発明は、上記のナノボディまたはその機能的断片のうちいずれかをコードする核酸配列を含む発現ベクターおよびこのような発現ベクターを発現する宿主細胞も想定する。適切な発現系は、細菌もしくは酵母における構成的および誘導性発現系、バキュロウイルスセムリキ森林ウイルスおよびレンチウイルス等のウイルス発現系または昆虫もしくは哺乳動物細胞における一過性トランスフェクションを包含する。適切な宿主細胞は、E.コリ(E.coli)、ラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキアパストリス(Pichia pastoris)等を包含する。適切な動物宿主細胞は、HEK293、COS、S2、CHO、NSO、DT40等を包含する。ナノボディのクローニング、発現および/または精製は、当業者にとって公知の技法に従って行われ得る。

0094

本明細書におけるナノボディという用語は、その最も広い意義において、特定の生物学的ソースまたは特定の調製方法に限定されないことに留意されたい。例えば、本発明のナノボディは、一般に、(1)天然起源の重鎖抗体のVHHドメインを単離することにより、(2)天然起源のVHHドメインをコードするヌクレオチド配列の発現により、(3)天然起源のVHHドメインの「ヒト化」によりまたはこのようなヒト化VHHドメインをコードする核酸の発現により、(4)任意の動物種、特にヒト等の哺乳動物種から得られた天然起源のVHドメインの「ラクダ化(camelization)」によりまたはこのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現により、(5)本技術分野において説明されている「ドメイン抗体」または「Dab」の「ラクダ化」によりまたはこのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現により、(6)それ自体は公知のタンパク質、ポリペプチドまたは他のアミノ酸配列を調製するための合成または半合成技法を用いることにより、(7)それ自体は公知の核酸合成技法を用いてナノボディをコードする核酸を調製し、次に、このようにして得られた核酸を発現することにより、および/または(8)前述の1つまたは複数の任意の組み合わせにより得ることができる。

0095

ナノボディの好ましい1クラスは、機能的立体構造状態のGPCRに対して作製された天然起源の重鎖抗体のVHHドメインに相当する。ナノボディのナイーブまたは合成ライブラリー(このようなライブラリーの例は、WO9937681、WO0043507、WO0190190、WO03025020およびWO03035694を参照されたい)は、機能的立体構造状態のGPCRに対する立体構造結合剤を含有し得るが、本発明の好ましい一実施形態は、場合によって受容体リガンドと結合している機能的立体構造状態のGPCRによりラクダ科免疫化して、GPCR(例えば、その活性立体構造状態のGPCRに対して作製された抗体を産生できるよう、アゴニスト結合GPCR)独特の立体構造エピトープに、この動物の免疫系を曝露することを包含する。よって、さらに本明細書に記載されている通り、このようなVHH配列は、好ましくはGPCR、好ましくは機能的立体構造状態のGPCR、より好ましくは活性立体構造状態によりラクダ科動物種を適切に免疫化し(即ち、GPCRに対して作製された免疫応答および/または重鎖抗体を産生できるよう)、ラクダ科動物から適切な生物試料血液試料または任意のB細胞試料等)を得て、試料から出発してGPCRに対するVHH配列を産生することにより、産生または得ることができる。このような技法は、当業者であれば明らかである。所望のVHH配列を得るためのさらに別の技法は、重鎖抗体を発現することのできるトランスジェニック哺乳動物を適切に免疫化し(即ち、機能的立体構造状態のGPCRに対して作製された免疫応答および/または重鎖抗体を産生できるよう)、トランスジェニック哺乳動物から適切な生物試料(血液試料または任意のB細胞試料等)を得て、次に、それ自体は公知の任意の適切な技法を用いて試料から出発してGPCRに対して作製されたVHH配列を産生することに関与する。例えば、この目的のため、WO02085945およびWO04049794に記載されている重鎖抗体発現マウスならびにさらなる方法および技法を用いることができる。

0096

したがって、本発明は、本発明によるタンパク質結合ドメインを産生する方法を網羅する。非限定的な例として、GPCRの機能的立体構造状態の立体構造エピトープと特異的に結合するナノボディを産生する方法であって、
(i)GPCRにより動物を免疫化するステップおよび
(ii)GPCRの機能的立体構造状態の立体構造エピトープと特異的に結合するナノボディをスクリーニングするステップ
を含む方法が提供される。

0097

好ましくは、動物の免疫化は、受容体リガンド存在下のGPCRによりなされ、リガンドは、GPCRの特定の機能的立体構造状態を誘導する。例えば、GPCRの活性立体構造状態の形成を誘導するアゴニスト存在下のGPCRにより動物を免疫化することにより、GPCRの活性立体構造状態の立体構造エピトープと特異的に結合するナノボディが産生され得る(実施例の節も参照)。

0098

GPCRによる動物の免疫化のため、GPCRは、宿主細胞における組換え型GPCRの発現ならびにアフィニティークロマトグラフィーおよび/または抗体に基づく方法を用いたGPCRの精製を利用できる従来の方法を用いて産生および精製され得る。特定の実施形態において、他の発現系(例えば、細菌、酵母または哺乳動物細胞系)を用いてもよいが、バキュロウイルス/Sf−9系が発現に利用され得る。GCPRを発現および精製するための例示的な方法は、その他多数の中でも、例えば、Kobilka(1995)、Erogluら(2002)、Chelikaniら(2006)および書籍「Identification and Expression of G Protein−Coupled Receptors」(Kevin R.Lynch(編)、1998)に記載されている。GPCRは、リン脂質小胞において再構成されてもよい。同様に、リン脂質小胞において活性GPCRを再構成するための方法は公知のものであり、とりわけLucaら(2003)、Mansoorら(2006)、Niuら(2005)、Shimadaら(2002)およびErogluら(2003)に記載されている。特定の事例において、GPCRおよびリン脂質は、高密度(例えば、リン脂質1mg当たり1mgの受容体)で再構成され得る。特定の実施形態において、リン脂質小胞は、GPCRが活性を有することを確認するために検査され得る。多くの場合、GPCRは、リン脂質小胞において両方の配向性で(正常な配向性および細胞内ループが小胞の外側にある「上下逆の」配向性で)存在し得る。GPCRを用いた他の免疫化方法として、とりわけGPCRを発現する完全細胞の使用、GPCRをコードする核酸配列によるワクチン接種(例えば、DNAワクチン接種)、GPCRを発現するウイルスまたはウイルス様粒子による免疫化が挙げられるが、これらに限定されない。

0099

任意の適切な動物、例えば、温血動物、特に、ウサギ、マウス、ラット、ラクダ、ヒツジ、ウシ、サメもしくはブタ等の哺乳動物またはニワトリもしくはシチメンチョウ等のトリが、免疫応答の産生に適した本技術分野において周知の技法のいずれかを用いて免疫化され得る。

0100

非限定的な例として、GPCRの機能的立体構造状態の立体構造エピトープと特異的に結合するナノボディのスクリーニングは、例えば、その表面上に重鎖抗体を発現する細胞(例えば、適切に免疫化されたラクダ科動物から得られたB細胞)またはその表面にgenIIIおよびナノボディの融合体提示するバクテリオファージのセット、コレクションもしくはライブラリーをスクリーニングすることにより、VHH配列もしくはナノボディ配列の(ナイーブもしくは免疫)ライブラリーをスクリーニングすることによりまたはVHH配列もしくはナノボディ配列をコードする核酸配列の(ナイーブもしくは免疫)ライブラリーをスクリーニングすることにより行われてよく、これらはすべてそれ自体は公知の様式で行われてよく、これらの方法は、場合によって、例えば、これらに限定することなく、親和性成熟のステップ、所望のアミノ酸配列を発現するステップ、所望の抗原(この場合、GPCR)に対する結合および/または活性に関しスクリーニングするステップ、所望のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を決定するステップ、1つまたは複数のヒト化置換を導入するステップ、適切な多価および/または多選択性フォーマットをフォーマットするステップ、所望の生物学的および/または生理学的特性に関しスクリーニングするステップ(即ち、本技術分野において公知の適切なアッセイを用いて)および/またはこのようなステップの1つまたは複数の適切な順序での任意の組み合わせ等の1つまたは複数の他の適切なステップをさらに含み得る。

0101

本発明のタンパク質結合ドメインの特に好ましいクラスは、天然起源のVHHドメインのアミノ酸配列に相当するが、「ヒト化」された、即ち、天然起源のVHH配列のアミノ酸配列(特に、フレームワーク配列)における1つまたは複数のアミノ酸残基を、ヒト由来の従来の4鎖抗体から得られたVHドメインにおける対応する位置(複数可)に存在するアミノ酸残基の1つまたは複数に置き換えることにより「ヒト化」されたアミノ酸配列を有するナノボディを含む。これは、当業者であれば本明細書におけるさらなる説明およびヒト化に関する先行技術に基づき明らかとなる、それ自体は公知の様式で行われ得る。一方、本発明のこのようなヒト化ナノボディが、それ自体は公知の任意の適切な様式で(即ち、上記のポイント(1)−(8)に表示)得られ、よって、出発材料として天然起源のVHHドメインを含むポリペプチドを用いて得られたポリペプチドに厳密に限定されないことに留意されたい。ヒト化ナノボディは、対応する天然起源のVHHドメインと比較した免疫原性の低下等、いくつかの利点を有し得る。このようなヒト化では、一般に、天然起源のVHHの配列における1つまたは複数のアミノ酸残基を、ヒトVH3ドメイン等のヒトVHドメインにおける同一位置に存在するアミノ酸残基に置き換える。ヒト化置換は、得られたヒト化ナノボディが、本明細書において定義されているナノボディの有利な特性を保持し続けるように選ばれるべきである。当業者であれば、一方ではヒト化置換によってもたらされる有利な特性と、他方では天然起源のVHHドメインの有利な特性との間の所望のまたは適切なバランスを最適化または達成するヒト化置換またはヒト化置換の適切な組み合わせを選択することができる。

0102

本発明のタンパク質結合ドメインの別の特に好ましいクラスは、天然起源のVHドメインのアミノ酸配列に相当するが、「ラクダ化」された、即ち、従来の4鎖抗体から得られた天然起源のVHドメインのアミノ酸配列における1つまたは複数のアミノ酸残基を、重鎖抗体のVHHドメインにおける対応する位置(複数可)に存在するアミノ酸残基の1つまたは複数に置き換えることにより「ラクダ化」されたアミノ酸配列を有するナノボディを含む。本明細書において定義されている通り、このような「ラクダ化」置換は、好ましくは、VH−VLの連結部を形成するおよび/またはそこに存在するアミノ酸位置におよび/またはいわゆるラクダ科に特徴的な残基に挿入される(例えば、WO9404678を参照)。好ましくは、ラクダ化ナノボディを産生または設計するための出発材料または出発点として用いられるVH配列は、好ましくは、哺乳動物由来のVH配列、より好ましくは、VH3配列等のヒトのVH配列である。しかし、本発明のこのようなラクダ化ナノボディが、それ自体は公知の任意の適切な様式(即ち、上記のポイント(1)−(8)に表示)で得られ、よって、出発材料として天然起源のVHドメインを含むポリペプチドを用いて得られたポリペプチドに厳密に限定されないことに留意されたい。

0103

例えば、「ヒト化」および「ラクダ化」は両者ともに、それぞれ天然起源のVHHドメインまたはVHドメインをコードするヌクレオチド配列を用意し、次に、新たなヌクレオチド配列が、それぞれ本発明の「ヒト化」または「ラクダ化」ナノボディをコードするような仕方で、ヌクレオチド配列における1つまたは複数のコドンをそれ自体は公知の様式で変化させることによって行われ得る。次に、この核酸は、本発明の所望のナノボディを生じるようそれ自体は公知の様式で発現され得る。あるいは、それぞれ天然起源のVHHドメインまたはVHドメインのアミノ酸配列に基づき、それぞれ本発明の所望のヒト化またはラクダ化ナノボディのアミノ酸配列が設計され、続いてそれ自体は公知のペプチド合成のための技法を用いて新規合成され得る。また、それぞれ天然起源のVHHドメインまたはVHドメインのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列に基づき、それぞれ本発明の所望のヒト化またはラクダ化ナノボディをコードするヌクレオチド配列が設計され、続いてそれ自体は公知の核酸合成のための技法を用いて新規合成され、その後、このようにして得られた核酸が、本発明の所望のナノボディを生じるようそれ自体は公知の様式で発現され得る。天然起源のVH配列または好ましくはVHH配列から出発して、本発明のナノボディおよび/またはこれをコードする核酸を得るための他の適切な方法および技法は、当業者にとって明らかであり、例えば、1つまたは複数の天然起源のVH配列のうち1つまたは複数の部分(1つまたは複数のFR配列および/またはCDR配列等)、1つまたは複数の天然起源のVHH配列のうち1つまたは複数の部分(1つまたは複数のFR配列またはCDR配列等)および/または1つまたは複数の合成または半合成配列を、本発明のナノボディまたはこれをコードするヌクレオチド配列もしくは核酸を生じるよう適切な様式で組み合わせるステップを含むことができる。

0104

本発明によるタンパク質結合ドメイン、好ましくはナノボディの天然または合成のアナログ、変異体、変種、対立遺伝子、ホモログおよびオルソログ(本明細書においてまとめて「アナログ」と称される)、特に、配列番号1−29(表1、図12を参照)のナノボディのアナログを使用することは、本発明の範囲内に収まるものである。よって、本発明の一実施形態によると、その最も広い意義における用語「本発明のナノボディ」もこのようなアナログを網羅する。一般に、このようなアナログにおいて、1つまたは複数のアミノ酸残基は、本明細書において定義されている本発明のナノボディと比較して置換、欠失および/または付加されていてよい。このような置換、挿入、欠失または付加は、フレームワーク領域のうち1つもしくは複数および/またはCDRの1つもしくは複数において、特に、配列番号1−29のナノボディのCDR(配列番号30−70(表2、図12を参照)に相当する)のアナログにおいてなされ得る。本明細書におけるアナログは、各フレームワーク領域またはいずれかのフレームワーク領域および各相性決定領域またはいずれかの相補性決定領域が、BLASTpアライメントにおける測定により、参照配列における対応する領域(即ち、FR1_アナログ対FR1_参照、CDR1_アナログ対CDR1_参照、FR2_アナログ対FR2_参照、CDR2_アナログ対CDR2_参照、FR3_アナログ対FR3_参照、CDR3_アナログ対CDR3_参照、FR4_アナログ対FR4_参照)と少なくとも80%同一性、好ましくは少なくとも85%同一性、より好ましくは90%同一性、さらにより好ましくは95%同一性を示す配列である(Altschulら、1987;FRおよびCDRの定義は、V−ドメインおよびV様ドメインのIMGT独自の番号方式による(Lefrancら、2003))。

0105

非限定的な例によると、置換は、例えば、保存的置換(本明細書に記載されている)であり得るおよび/またはアミノ酸残基は、別のVHHドメインにおける同一位置における天然起源の別のアミノ酸残基に置き換えることができる。よって、本発明のナノボディの特性を改善するまたは本発明のナノボディの所望の特性もしくはバランスもしくは所望の特性の組み合わせを少なくとも過度に損なう(即ち、ナノボディがもはや目的の用途に適さなくなる程度まで)ことのない任意の1つまたは複数の置換、欠失もしくは挿入またはそれらの任意の組み合わせは、本発明の範囲内に包含されている。当業者は、一般に、本明細書における開示に基づき、場合によって、例えば限られた数の可能な置換を導入し、このようにして得られたナノボディの特性におけるその影響の決定に関与し得る限られた程度のルーチン実験後に、適切な置換、欠失、挿入、付加またはそれらの適切な組み合わせを決定および選択することができる。

0106

例えば、また、本発明のタンパク質結合ドメイン、好ましくはナノボディの発現に用いた宿主生物に応じて、このような欠失および/または置換は、当業者の能力の範囲内にある、1つまたは複数の翻訳後修飾のための部位(1つまたは複数の糖鎖付加部位等)が除去されるような仕方で設計され得る。あるいは、置換または挿入は、官能基(本明細書に記載されている)付着のための1つまたは複数の部位を導入するよう、例えば、部位特異的ペグ化を可能にするよう設計され得る。

0107

修飾と、修飾され得る(即ち、タンパク質骨格か、好ましくは側鎖のいずれかにおける)タンパク質結合ドメイン配列、好ましくはナノボディ配列内におけるアミノ酸残基、このような修飾の導入に用いられ得る方法および技法ならびにこのような修飾の潜在的な用途および利点の例は、当業者にとって明らかである。例えば、このような修飾は、本発明のナノボディへの1つまたは複数の官能基、残基または部分、特に、本発明のナノボディに1つまたは複数の所望の特性または官能性を付与する1つまたは複数の官能基、残基または部分の導入(例えば、共有結合または別の適切な様式による)に関与し得る。このような官能基およびこれを導入するための技法の例は、当業者にとって明らかであり、上文に引用する一般的な背景技術において言及されているあらゆる官能基および技法ならびに医薬品タンパク質の修飾のため、特に抗体または抗体断片(ScFvおよび単一ドメイン抗体等)の修飾のためのそれ自体は公知の官能基および技法を一般に含むことができ、これに関し、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Mack Publishing Co.、ペンシルベニアイーストン(1980)について記す。同様に当業者にとって明らかな通り、このような官能基は、例えば、本発明のナノボディに直接的に(例えば共有結合により)連結されても、場合によって、適切なリンカーまたはスペーサーを介して連結されてもよい。半減期を増加および/または医薬品タンパク質の免疫原性を低下させるために最も広く用いられている技法の一法は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)またはその誘導体(メトキシポリ(エチレングリコール)もしくはmPEG等)等、適切な薬理学的に許容されるポリマーの付着を含む。一般に、本技術分野において抗体および抗体断片((単一)ドメイン抗体およびScFv等が挙げられるが、これらに限定されない)に用いられるペグ化等、任意の適切な形態のペグ化が用いられ得る。例えば、Chapman、Nat.Biotechnol.、54、531−545(2002);Veronese and Harris著、Adv.Drug Deliv.Rev.54、453−456(2003)、Harris and Chess著、Nat.Rev.Drug.Discov.、2、(2003)およびWO04060965について記す。タンパク質のペグ化のための様々な試薬は、例えば、Nektar Therapeutics、米国から市販もされている。好ましくは、特にシステイン残基を介した部位特異的ペグ化が用いられる(例えば、Yangら、Protein Engineering、16、10、761−770(2003)を参照)。例えば、この目的のため、PEGが、本発明のナノボディにおける天然起源のシステイン残基に付着されていても、本発明のナノボディが、PEGの付着のための1つもしくは複数のシステイン残基を適切に導入するよう修飾されていてもまたはPEGの付着のための1つもしくは複数のシステイン残基を含むアミノ酸配列が、本発明のナノボディのNおよび/またはC末端と融合されていてもよく、これらはすべて当業者にとってそれ自体は公知のタンパク質工学の技法を用いる。好ましくは、本発明のナノボディおよびタンパク質のため、分子量が10,000を超える等、5000を超え、100,000未満等、200,000未満である、例えば、20,000−80,000範囲のPEGが用いられる。また、通常、より好ましくない修飾として、通常、同時翻訳および/または翻訳後修飾の一部としての、本発明のナノボディまたはポリペプチドの発現に用いた宿主細胞に応じたN結合型またはO結合型糖鎖付加が挙げられる。ナノボディの半減期を増加させるための別の技法は、二官能性ナノボディ(例えば、一方のナノボディは標的GPCRに対し、もう一方はアルブミン等の血清タンパク質に対する)またはペプチド(例えば、アルブミン等の血清タンパク質に対するペプチド)とナノボディの融合体への操作を含み得る。

0108

さらに別の修飾は、標識タンパク質結合ドメイン、特にナノボディの目的の用途に応じて、1つもしくは複数の検出可能な標識または他のシグナル発生基もしくは部分の導入を含み得る。適切な標識ならびにこれを付着、使用および検出するための技法は、当業者にとって明らかであり、例えば、インビボインビトロまたはインサイチュ診断および画像処理における使用に特に適した蛍光標識(フルオレセインイソチオシアネートローダミンフィコエリトリンフィコシアニンアロフィコシアニンo−フタルアルデヒドおよびフルオレサミンならびにEuまたはランタニド系列由来の他の金属等の蛍光金属等)、リン光標識化学発光標識または生物発光標識(ルミノールイソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾールアクリジニウム塩、シュウ酸エステルジオキセタンまたはGFPおよびそのアナログ等)、放射性同位元素、金属、金属キレートもしくは金属陽イオンまたは他の金属もしくは金属陽イオンならびに発色団および酵素リンゴ酸脱水素酵素ブドウ球菌ヌクレアーゼデルタ−V−ステロイド異性化酵素、酵母アルコール脱水素酵素、アルファ−グリセロリン酸脱水素酵素トリオースリン酸異性化酵素、ビオチンアビジンペルオキシダーゼ西洋わさびペルオキシダーゼアルカリホスファターゼアスパラギナーゼグルコース酸化酵素ベータガラクトシダーゼリボヌクレアーゼウレアーゼカタラーゼグルコース−VI−リン酸脱水素酵素グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼ等)が挙げられるが、これらに限定されない。他の適切な標識は、当業者にとって明らかであり、例えば、NMRまたはESR分光測定を用いて検出され得る部分を包含する。このような本発明の標識ナノボディおよびポリペプチドは、例えば、特異的標識の選択に応じて、インビトロ、インビボまたはインサイチュアッセイ(ELISA、RIAEIAおよび他の「サンドイッチアッセイ」等、それ自体は公知のイムノアッセイ等)ならびにインビボ診断および画像処理目的に用いられ得る。当業者にとって明らかな通り、例えば、上に記す金属または金属陽イオンの1つをキレート化するための別の修飾が、キレート化基の導入に関与し得る。適切なキレート化基として、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸EDTA)が限定されることなく挙げられる。さらに別の修飾は、ビオチン−(ストレプト)アビジン結合ペア等、特異的結合ペアの一部分である官能基の導入を含み得る。このような官能基は、結合ペアのもう半分と結合している別のタンパク質、ポリペプチドまたは化学物質と本発明のナノボディとの、即ち結合ペアの形成による連結に用いられ得る。例えば、本発明のナノボディは、ビオチンとコンジュゲートされて、アビジンまたはストレプトアビジンとコンジュゲートした別のタンパク質、ポリペプチド、化合物または担体と連結され得る。例えば、このようなコンジュゲートされたナノボディは、例えば、検出可能シグナル発生薬剤が、アビジンまたはストレプトアビジンとコンジュゲートされた診断システムにおけるレポーターとして用いられ得る。このような結合ペアは、例えば、本発明のナノボディと製薬目的に適した担体等の担体との結合にも用いられ得る。非限定的な一例は、Cao and Suresh、Journal of Drug Targetting、8、4、257(2000)によって記載されたリポソーム製剤である。このような結合ペアは、治療上有効な薬剤と本発明のナノボディとの連結に用いることもできる。

0109

特定の一実施形態において、本発明のナノボディは、二価であり、2個の重鎖一価単一ドメインを一緒にする化学結合または組換えDNA技法により形成される。別の特定の一実施形態において、本発明のナノボディは、二重特異性であり、それぞれ異なる特異性を有する2個の重鎖可変ドメインを一緒に結合することにより形成される。同様に、多価または多選択性ナノボディを含むポリペプチドは、本明細書における非限定的な例として挙げられる。好ましくは、本発明の一価ナノボディは、GPCRの機能的立体構造状態、より好ましくは、GPCRの活性立体構造状態の細胞外部分、領域、ドメイン、ループまたは他の細胞外エピトープと、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは500pM未満等、10nM未満の親和性で結合するものである。あるいは、本発明の一価ナノボディは、GPCRの機能的立体構造状態、より好ましくは、GPCRの活性立体構造状態の細胞内部分、領域、ドメイン、ループまたは他の細胞内エピトープと、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは500pM未満等、10nM未満の親和性で結合するものである。また、この態様によると、本発明の任意の多価または多選択性(本明細書において定義されている)ナノボディは、同一抗原における2以上の異なる細胞外もしくは細胞内部分、領域、ドメイン、ループまたは他の細胞外もしくは細胞内エピトープに対して、例えば、2種の異なる細胞外もしくは細胞内ループに対してまたは膜貫通ドメインの2種の異なる細胞外もしくは細胞内部分に対して適切に作製されてもよい。本発明のこのような多価または多選択性ナノボディは、このような多価または多選択性ナノボディの使用により得られる所望のGPCRおよび/または任意の他の所望の特性または所望の特性の組み合わせに対する結合力増加および/または選択性改善も有し(または操作および/または選択され)得る。特定の一実施形態において、本発明のこのような多価または多選択性ナノボディは、GPCRのシグナル伝達活性の調節における有効性改善も有し(または操作されおよび/または選択され)得る(さらに本明細書も参照)。本発明による多価または多選択性ナノボディが、GPCRまたは1つもしくは複数の下流のシグナル伝達タンパク質とのリガンド相互作用等が挙げられるが、これらに限定されない異なる抗原に対して追加的に適切に作製され得ることが認識される。

0110

本発明の第2の態様は、(i)本発明によるタンパク質結合ドメイン、(ii)機能的立体構造状態のGPCRおよび場合によって(iii)受容体リガンドを含む複合体に関する。本明細書において定義されている「受容体リガンド」または「リガンド」は、小分子化合物、タンパク質、ペプチド、タンパク質スキャフォールド、核酸、イオン、炭水化物もしくは抗体またはそれらに由来する任意の適切な断片等でよい。優先的に、リガンドは、アゴニストクラスに由来し、受容体は、活性立体構造状態である。リガンドは、インバースアゴニスト、アンタゴニストまたはバイアスをかけたリガンドでもよい。リガンドは、オルソステリックまたはアロステリックでよい。リガンドは、アロステリック修飾因子、増強物質賦活薬、負のアロステリック修飾因子および阻害剤も包含する。これは、それ自体が生物活性も有し得るまたはこれは、別のリガンドの存在下でのみ活性を調節し得る。Neubigら(2003)は、リガンドのクラスの多くについて記載する。

0111

好ましくは、本発明は、タンパク質結合ドメインがGPCRと結合している、より好ましくは、タンパク質結合ドメインがGPCRと結合しており、GPCRが受容体リガンドと結合している複合体を提供する。これをさらに説明するためであって、これらに制限する目的はないが、ナノボディ、GPCRおよびアゴニストを含有する安定的な三元複合体は、アフィニティークロマトグラフィーまたはゲル濾過により、(1)該GPCRの活性立体構造に特異的なナノボディ、(2)界面活性剤で可溶化した受容体および(3)アゴニストを含有する混合物から精製され得る。

0112

別の好ましい一実施形態において、複合体は結晶である。よって、より詳細に後述するが、複合体の結晶と共に、結晶を作製する方法も提供される。好ましくは、(i)本発明によるタンパク質結合ドメイン、(ii)機能的立体構造状態、より好ましくは活性立体構造状態のGPCR、および場合によって(iii)受容体リガンドを含む複合体の結晶形が想定され、結晶形は、本発明によるタンパク質結合ドメインの使用により得られる。

0113

さらに別の好ましい一実施形態において、本発明による複合体は、例えば、界面活性剤で水可溶化した後に可溶化形態となる。代替的な好ましい一実施形態において、本発明による複合体は、固体支持体に固定化される。固体支持体ならびに固定化のための方法および技法の非限定的な例は、詳細な説明においてさらに記載されている。さらに別の一実施形態において、本発明による複合体は、生物、組織、細胞、細胞株および生物、組織、細胞または細胞株に由来する膜組成物等の「細胞組成物」に存在する。膜組成物は、天然もしくは合成脂質またはそれらの組み合わせを含み得る任意のリポソーム組成物を包含することも企図されている。膜またはリポソーム組成物の例として、細胞小器官膜標本ウイルス様脂質粒子、脂質層(二重層および単層)、脂質小胞、高密度脂質粒子(例えばナノディスク(nanodisk))等が挙げられるが、これらに限定されない。細胞組成物または膜様もしくはリポソーム組成物が、天然または合成脂質を含み得ることが認識される。

0114

したがって、本発明の第3の態様は、本発明によるタンパク質結合ドメインおよび/または複合体を含む、膜またはそれに由来するリポソーム組成物(すべて上文に定義されている)を包含する細胞組成物に関する。好ましくは、タンパク質結合ドメインを提供および/または発現する細胞組成物は、タンパク質結合ドメインの結合によりGPCRの機能的立体構造状態を安定化および/または誘導することができる。個々のタンパク質の十分な機能性を保持することが重要であることが理解され、そのための方法および技法が利用でき、当業者にとって公知のものである。細胞組成物が、標的GPCRを内因的または外因的に提供および/または発現できることが認識される。

0115

膜断片または膜−界面活性剤抽出物から生成されたGPCRの調製は、参照により本明細書に組み込むCooper(2004)において詳細に総説されている。可溶化受容体調製の非限定的な例は、実施例の節にさらに提供されている。

0116

標的細胞(例えば、哺乳動物細胞)のトランスフェクションは、Sambrook and Russel(Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第3版、3巻、第16章、第16.1−16.54節)によって概要を述べられた原理に従って行われ得る。さらに、ウイルス形質導入は、アデノウイルスベクター等の試薬を用いても行われ得る。適切なウイルスベクター系、調節領域および宿主細胞の選択は、当業者の技能範囲レベル内の周知の知識である。得られたトランスフェクト細胞は、一般慣例に従って培養において維持されるまたは後に用いるために凍結される。好ましくは、細胞は、対象のGPCRを発現する真核細胞、例えば酵母細胞または培養細胞株、例えば哺乳動物細胞株、好ましくはヒト細胞株である。タンパク質結合ドメインおよび/またはGPCRを機能的に発現する好ましい細胞株は、昆虫細胞(例えば、SF−9)、ヒト細胞株(例えば、HEK293)、齧歯類細胞株(例えば、CHO−K1)、ラクダ科動物細胞株(Dubca)を包含する。

0117

上文に記載されているタンパク質結合ドメインまたは複合体または細胞組成物は、下でさらに詳細に説明されることになる種々の文脈および適用において使用することができる。

0118

GPCRの結晶化およびこの構造の解明
GPCRを含む膜タンパク質の結晶化は依然として手強い課題である。ミリグラム量の生成を可能にする発現および精製法が現れてきているが、これらの分子の安定性を達成するのはおそらく克服するのが最も困難な障害物である。精製には、タンパク質の疎水性表面界面活性剤モノマー被膜されてタンパク質−界面活性剤複合体(PDC)を形成するプロセスである界面活性剤可溶化による脂質二重層からのGPCRの放出が必要である。しかし、周囲の脂質によりタンパク質にかかる側圧の多くが失われるために、タンパク質の周りに形成された界面活性剤ベルトは脂質二重層の代替物としては不十分である。したがって、膜タンパク質の可溶化は、不安定化、アンフォールディングおよびそれに続く凝集をもたらすことが多い。ロドプシン以外のGPCRは典型的には界面活性剤中で安定性に乏しく、凝集およびタンパク質分解を起こしやすい。GPCRを結晶化する努力は膜内在性タンパク質の他の固有の特徴によりくじかれてきた。GPCRの7つの疎水性膜貫通へリックスは結晶接触に対して不十分な表面しか作らず、細胞外および細胞内ドメインは相対的に短いおよび/または構造化が不十分であることが多い。ロドプシン(天然存在比および安定性に関して非定型のGPCR)を除いて、GPCRの最初の結晶は、TM5および6を連結する第3の細胞内ループのアミノおよびカルボキシル末端から構成されるエピトープを認識するFab断片に結合しているβ2ARから得られた(Rasmussen、2007)。第2のアプローチにおいて、第3の細胞内ループがT4リゾチームにより置き換えられた(β2AR−T4L、Rosenbaum、2007)。最終的に、シグナル伝達分子としてのGPCRの並外れた多用途性はこの柔軟で動的な三次元構造に起因すると考えることができる。不運にも、そのような動的挙動は高分解能構造解析には特に困難である。回折特質の結晶を成長させるには、安定していて立体構造的に均質なタンパク質が必要である。したがって、天然で非結合GPCRの回折特質の結晶を得るのは困難であり、この目標が達成された時でも、結晶構造はその多くの天然の立体構造のうちの1つを表しているだけである。これらの問題の多くは、高分解能構造解析のために特定の立体構造状態のGPCRを安定化し精製し結晶化するためのツールとしてタンパク質結合ドメイン、特にナノボディを使用することにより本発明において解決することが可能である。

0119

したがって、タンパク質結合ドメインを、GPCRタンパク質を安定化させるためのツールとして使用し、これらのタンパク質結合ドメインをGPCRのための共結晶化補助としてさらに使用する、または言い換えると、好ましくは機能的立体構造状態でのGPCRの結晶生成を促進することが本発明の目的の1つである。

0120

したがって、本発明の第4の態様は、GPCRを機能的立体構造状態で、特に活性立体構造状態で安定化するためのおよび/または特定の機能的(好ましくは、活性のある)立体構造状態の形成をGPCR内に誘導するための、本発明によるタンパク質結合ドメインまたは特定の実施形態において、タンパク質結合ドメインを含む複合体もしくはタンパク質結合ドメインを提供する細胞組成物の使用に関する。そのようなタンパク質結合ドメインは、GPCRを機能的立体構造状態で、特にこの活性立体構造状態で精製する、結晶化するおよび/またはこの構造を解明するための非常に有用なツールであることが認識される。上文で明瞭に概要を述べたように、GPCRを精製する、安定化する、結晶化するおよび/またはこの構造を解明するために使用されることになる本発明によるタンパク質結合ドメインは、任意の所望のGPCRに対して作製でき、任意の所望のGPCRの機能的立体構造状態、好ましくは活性立体構造状態の立体構造エピトープと特異的に結合できまたはこれを認識できることは明らかであるはずである。特に、立体構造エピトープは、いかなる所望のGPCRの細胞内もしくは細胞外領域または膜内領域またはドメインもしくはループ構造の一部であることが可能である。

0121

第一に、本発明によるタンパク質結合ドメインは、特定の立体構造状態で安定化している界面活性剤で可溶化した受容体の熱安定性を増大させ、この受容体をタンパク質分解および/または凝集から保護し、正しく折り畳まれた受容体の均一な試料の精製および濃縮を促進することができる。当業者であれば、そのような試料は回折結晶の生成のための好まれる出発点であることを認識する。

0122

精製された受容体の結晶化は、X線結晶学による巨大分子構造決定のプロセスにおけるもう1つの大きな障害である。結晶化の成功には、核の形成およびこれに続く適切な大きさの結晶へのその成長が必要である。結晶成長は一般に、同種の核形成の結果として過飽和溶液中で自然に起こる。タンパク質は典型的な低密度マトリックススクリーニング実験において結晶化することができ、この実験において沈殿剤、添加剤およびタンパク質濃度が広範にサンプリングされ、核形成と結晶成長に適した過飽和条件を特定のタンパク質について同定することが可能である。例えば、タンパク質に結合するリガンドを添加することによりまたは優先的に標的タンパク質表面残基において異なる変異体を作製することによりまたは標的タンパク質の異なる種のオルソログの結晶化を試みることにより、タンパク質それ自体において構造変異を生み出すことは低密度マトリックススクリーニングアプローチに関係している(Chang 1998)。本発明の1つの思いがけない発見は、GPCRに特異的に結合して、GPCRの全体的フォールドは保存しつつ結合にある程度の構造変異を導入する、ナノボディ等のタンパク質結合ドメインの有用性である。ナノボディが異なれば生じる四次構造も異なり、結晶格子形成のために新しい異なる界面を提供し、GPCRの全体的フォールドは保存しつつ複数の結晶形態が生じる。

0123

結晶化は、結晶格子に組み立てられる分子における立体構造エントロピーの好ましくない喪失を伴うために、まだ溶液のまま標的の立体構造エントロピーを減少させる方法は、格子形成正味のエントロピーペナルティを低下させることにより結晶化の尤度を増強するはずである。「表面エントロピー減少」アプローチは極めて効果的であることが判明している(Derewenda 2004)。同様に、イオン、小分子リガンドおよびペプチド等の結合パートナーは、タンパク質の立体構造状態のサブセットに結合して安定化させることにより立体構造不均一性を減少させることができる。そのような結合パートナーは効果的ではあるが、すべてのタンパク質が既知の結合パートナーを有しているわけではなく、結合パートナーが既知の場合でも、その親和性、溶解性および化学的安定性は結晶化の試みと両立しないこともある。したがって、驚くべきことに、本発明のタンパク質結合ドメイン、特にナノボディは、受容体の特定の立体構造に結合することにより標的GPCRにおける立体構造不均一性を最小限に抑えることによって秩序だった結晶を得る可能性を増加させるツールとして使用することが可能であることが見出された。

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