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技術 切削工具および切削加工物の製造方法

出願人 京セラ株式会社
発明者 脇真宏今里真唯何丹
出願日 2017年11月8日 (2年9ヶ月経過) 出願番号 2017-215468
公開日 2018年2月22日 (2年5ヶ月経過) 公開番号 2018-027616
状態 特許登録済
技術分野 穴あけ工具 バイト、中ぐり工具、ホルダ及びタレット フライス加工 CVD
主要キーワード 通り穴 最外位置 穴加工後 切削加工物 切削加工前 センタレス加工 中心回転軸 刃付け加工
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年2月22日)のものです。
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図面 (8)

課題

基体の先端部に切刃を設けた切削工具において、切刃および切屑排出部に求められる被覆層の性能をともに満たす切削工具を提供する。

解決手段

少なくとも先端部Aに設けられる切刃2と、切刃2に隣接するとともに先端部Aから後方後端B方向)に向けて設けられた切屑排出部4とを具備する棒状の基体5の表面に、ダイヤモンドグラファイトとの混合相からなり、先端部Aよりも先端から10mm後方の後方部Bのほうが、ダイヤモンドの含有比率が低い被覆層6を設けたドリル1等の切削工具である。

概要

背景

基体の表面に、ダイヤモンドからなる被覆層成膜した切削工具が知られている。例えば、特許文献1では、棒状の基体の表面に、ダイヤモンド層を成膜したドリルエンドミル等が知られている。また、特許文献2では、基体の表面にSi含有ダイヤモンドライクカーボン膜を成膜し、Si含有割合を被覆層の厚み方向で変化させた傾斜組成とした耐摩耗性工具部材が記載されている。

概要

基体の先端部に切刃を設けた切削工具において、切刃および切屑排出部に求められる被覆層の性能をともに満たす切削工具を提供する。 少なくとも先端部Aに設けられる切刃2と、切刃2に隣接するとともに先端部Aから後方後端B方向)に向けて設けられた切屑排出部4とを具備する棒状の基体5の表面に、ダイヤモンドとグラファイトとの混合相からなり、先端部Aよりも先端から10mm後方の後方部Bのほうが、ダイヤモンドの含有比率が低い被覆層6を設けたドリル1等の切削工具である。

目的

本発明は、ドリルやエンドミル等の棒状の基体の先端部に切刃を設けた切削工具において、切刃および切屑排出部に求められる被覆層の性能をともに満たす切削工具を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

回転中心軸を有し、少なくとも先端側から見て中心部から外周部にかけて設けられる切刃具備する切削工具であって、基体と、該基体の表面に設けられたダイヤモンドを含有する被覆層とを有し、前記ダイヤモンド層の表面についてのラマン分光分析において、前記ダイヤモンドに由来するピークの総ピーク強度に対するSP3ピークのピーク強度比を求めた際に、前記中心部におけるSP3ピーク強度比が、前記外周部におけるSP3ピーク強度比よりも低い切削工具。

請求項2

前記ダイヤモンドに由来するピークとしてナノダイヤモンドに由来するナノダイヤモンドピークが少なくとも前記中心部に存在し、前記中心部における前記ナノダイヤモンドのピーク強度比が、前記外周部における前記ナノダイヤモンドのピーク強度比よりも高い請求項1記載の切削工具。

請求項3

前記ダイヤモンドに由来するピークとしてグラファイトに由来するSP2ピークが少なくとも前記中心部に存在し、前記中心部における前記SP2ピークのピーク強度比が、前記外周部における前記SP2ピークのピーク強度比よりも高い請求項1または2記載の切削工具。

請求項4

前記ダイヤモンド層の厚みが、後方における前記ダイヤモンド層の厚みよりも薄い請求項1乃至3のいずれか記載の切削工具。

請求項5

前記中心部における前記被覆層に含有されるダイヤモンドの平均粒径が、前記外周部における前記被覆層に含有されるダイヤモンドの平均粒径よりも小さい請求項1乃至4のいずれか記載の切削工具。

請求項6

前記被覆層は、前記中心部及び前記外周部を含む前記基体の先端部の全体に位置し、ナノダイヤモンドを含有する第1層と、該第1層の上であって前記中心部を除く領域に位置して、μmオーダーのダイヤモンドを含有する第2層とを有する請求項1乃至5のいずれか記載の切削工具。

請求項7

前記被覆層は、前記中心部及び前記外周部を含む前記基体の先端部の全体に位置し、μmオーダーのダイヤモンドを含有する第1層と、該第1層の上であって前記外周部を除く領域に位置して、ナノダイヤモンドを含有する第2層とを有する請求項1乃至5のいずれか記載の切削工具。

請求項8

請求項1乃至7のいずれか記載の切削工具を回転軸周りに回転させる工程と、回転している前記切削工具の前記切刃を前記被削材に接触させる工程と、前記切削工具を前記被削材から離す工程とを備えた切削加工物の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、棒状の基体の表面に被覆層を設けた切削工具および切削加工物の製造方法に関する。

背景技術

0002

基体の表面に、ダイヤモンドからなる被覆層を成膜した切削工具が知られている。例えば、特許文献1では、棒状の基体の表面に、ダイヤモンド層を成膜したドリルエンドミル等が知られている。また、特許文献2では、基体の表面にSi含有ダイヤモンドライクカーボン膜を成膜し、Si含有割合を被覆層の厚み方向で変化させた傾斜組成とした耐摩耗性工具部材が記載されている。

先行技術

0003

特開平11−058106号公報
特開2010−194628号公報

発明が解決しようとする課題

0004

しかしながら、ダイヤモンド層を被覆した上記特許文献1のドリルにおいて、ドリル先端部側の切刃では被覆層が摩耗しやすく、一方、先端よりも後方切屑排出溝では、切屑排出性を高めたいという要求があった。また、厚み方向に傾斜組成としたダイヤモンドライクカーボン膜を成膜した特許文献2の被覆層を採用しても、上記要求をともに満たすことはできなかった。

0005

そこで、本発明は、ドリルやエンドミル等の棒状の基体の先端部に切刃を設けた切削工具において、切刃および切屑排出部に求められる被覆層の性能をともに満たす切削工具を提供することにある。

課題を解決するための手段

0006

一態様の切削工具は、回転中心軸を有し、少なくとも先端側から見て中心部から外周部にかけて設けられる切刃を具備し、基体と、該基体の表面に設けられたダイヤモンドを含有する被覆層とを有し、前記ダイヤモンド層の表面についてのラマン分光分析において、前記ダイヤモンドに由来するピークの総ピーク強度に対するSP3ピークのピーク強度比を求めた際に、前記中心部におけるSP3ピーク強度比が、前記外周部におけるSP3ピーク強度比よりも低いものである。

発明の効果

0007

上記の態様の切削工具によれば、先端側から見た中心部(以下、中心部という場合がある。)においてはSP3強度比が低い、つまり、μmオーダーのダイヤモンドの含有比率が低いので、多角形形状粒成長したダイヤモンドがダイヤモンド層の表面から突出してダイヤモンド層の表面が粗くなることもない。そのため、中心部におけるダイヤモンド層の表面を平坦にすることができる。また、中心部におけるダイヤモンド層の硬度が低いので、切削初期すぐに、切刃の中心部におけるダイヤモンド層の表面がさらに平坦になる。その結果、中心部における切削抵抗が低くなって、工具折損を抑制できる。一方、先端側から見た外周部(以下、外周部という場合がある。)においてはSP3強度比が高い、つまり、μmオーダーのダイヤモンドの含有比率が高いので、ダイヤモンド層の耐摩耗性が高い。

0008

つまり、本発明の切削工具は、耐摩耗性が求められる切刃、特に切刃の外周部では、ダイヤモンドの含有比率を高めて耐摩耗性を高める。これに対して、切屑排出性や摺動性が求められる基体の後方側、切屑排出溝および先端側から見た中央部では、ダイヤモンドの含有比率を低めて切屑排出性や摺動性を高める。その結果、長期間にわたって切削加工が可能な切削工具となる。

図面の簡単な説明

0009

本発明の切削工具の一実施態様であるドリルの一例についての側面図である。
図1のドリルのa−a断面図である。
本発明の切削工具の一実施態様である他のドリルの一例についてのa−a断面図である。
図1のドリルについて、被覆層の成膜工程を説明するための模式図である。
第2の実施態様のドリルにおいて、基体のエッチング処理工程を説明するための模式図である。
第3の実施態様のドリルにおいて、基体のエッチング処理工程を説明するための模式図である。
本発明の一実施態様における切削加工物の製造方法を説明するための図であり、図7A、図7B、図7Cは、本製造方法のいずれかの工程を示す概略図である。

0010

本発明の切削工具の第1の実施態様であるソリッドタイプのドリルについて、図面を基に説明する。ドリル1は、図1に示すように、回転軸Oを有する棒状で、先端部Aに形成された切刃2と、切刃2に沿って、切刃2の回転方向側に形成され、後方(後端B方向)に向かってらせん状に形成された切屑排出溝4とを具備する。また、ドリル1の後端B側にはシャンク部3が設けられ、シャンク部3が加工装置(図示せず)に把持されてドリル1が加工装置に装着される。ここで、本発明における先端とは、棒状のドリル1(切削工具)の切刃2を有する側と定義され、先端部Aとは、ドリル1(切削工具)を先端から見て、切刃が見える範囲の長さと定義する。本実施態様では、先端部Aは図1の先端から点pまでの長さの範囲となる。

0011

本実施態様によれば、ドリル1は、基体5の表面に、ダイヤモンドとグラファイトとの混合相からなる被覆層6が設けられている。なお、図1によれば、被覆層6は、ドリル1の先端部Aから切屑排出溝4が設けられた終端付近まで形成され、それよりも後方は、基体5がむき出しの状態となっている。

0012

そして、本実施態様によれば、被覆層6は、先端部Aよりも先端から10mm後方の後方部Cのほうが、ダイヤモンドの含有比率が低い。これによって、基体5の先端部Aに位置する切刃2においては、ダイヤモンドの含有比率が高いので、被覆層6の硬度が高く、切刃2における被覆層6の摩耗を抑制できる。また、基体5の先端部Aよりも後方側では、グラファイトの含有比率が高いので、被覆層6の表面が平滑であり、切屑排出溝4は平滑になるため、切屑排出性が向上する。さらに、本実施態様によれば、先端部Aから後方(後端B方向)に向けて、ダイヤモンドの含有比率が低下している。ここで、本発明における後方部Cとは、先端から10mm後方の点を中心とする領域を指し、領域の大きさは各分析におけるスポット径に応じて決定される。

0013

なお、ドリル1の先端部側は、ブラシ加工ブラスト加工等の研磨加工によって、被覆層6の表面を平滑にしてもよい。この場合でも、切屑排出溝4の表面は研磨されにくく、被覆層6の表面は平滑になりにくい。

0014

本実施態様によれば、後方部Cにおけるダイヤモンドの平均粒径が、先端部Aにおけうダイヤモンドの平均粒径よりも小さい。これによって、後方側の被覆層6の表面がより平滑となり、切屑排出溝4における切屑排出性が向上する。なお、被覆層6中のダイヤモンドの平均粒径は、被覆層6の表面から走査型電子顕微鏡によって組織を観察し、ルーゼックス画像解析法によって算出することができる。さらに、本実施態様によれば、先端部Aから後方に向けて、ダイヤモンドの平均粒径が小さくなっている。

0015

本実施態様によれば、後方部Cにおける被覆層6の厚みが、先端部Aにおける被覆層6の厚みよりも薄い。これによって、切刃2における被覆層6の厚みが厚いために、切刃2における被覆層6の耐摩耗性が高まる。一方、先端部Aから後方に向かう切屑排出溝4においては、成膜速度が遅くて、緻密で平滑な被覆層6となる結果、被覆層6の表面状態を悪化させることがない。なお、本実施態様において、被覆層6の厚みは、特定しない限り、図2に示すように、切屑排出溝4よりも外側の外周面にて測定した厚みtとする。なお、ドリル以外の形状の場合でも、先端部Aの厚みと後方側の厚みを比較する際には、長手方向に垂直な断面において測定すればよい。さらに、本実施態様によれば、先端部Aから後方に向かって、被覆層6の厚みが薄くなっている。

0016

本実施態様によれば、後方部Cにおける被覆層6の厚みが、先端部Aにおける被覆層6の厚み(図示せず)よりも薄い。これによって、切刃2において被覆層6が摩滅することを抑制できるとともに、切屑排出溝4において被覆層6の平滑性を保ちやすくなる。ここで、先端部Aにおける被覆層6の膜厚tA(図示せず)と先端から10mm後方の後方部における被覆層6の膜厚tBとの比(tB/tA)の望ましい範囲は0.2〜0.8であり、特に望ましい範囲は、0.4〜0.8である。膜厚tAの望ましい範囲は、5〜12μmである。

0017

なお、被覆層6中のダイヤモンドおよびグラファイトの含有比率は、ラマン分光分析法を用いて測定することができる。具体的には、1333cm−1付近のダイヤモンドピークSP3と、1400〜1600cm−1にグラファイトピークSP2とのピーク強度を測定することによって求めることができる。ラマン分光分析するためのレーザービームをスポット径が1〜100μmで、被覆層6の表面に対して垂直に照射して測定する。ピーク強度の局所的なバラツキを考慮して、スポット径が10μm以下の場合には、任意の3箇所以上について測定し、その平均値をとる。

0018

また、上記ダイヤモンドおよびグラファイトの混晶からなる被覆層6と基体5との間に、他の被覆層(図示せず)が積層されたものであってもよい。

0019

さらに、基体5としては、炭化タングステンや、炭窒化チタンを主成分とする硬質相コバルトニッケル等の鉄族金属を主成分とする結合相とからなる超硬合金サーメットの他、窒化ケイ素や、酸化アルミニウムを主成分とするセラミックス等の硬質材料が好適に使用されるが、中でも耐欠損性に優れる超硬合金が最適である。

0020

また、本発明の切削工具は、上記実施態様のドリルに限定されるものではなく、工具本体が棒状で、先端に底刃を有し、外周の先端側に外周刃を有するとともに、底刃と外周刃に隣接して先端部から後方に向けて切屑排出溝4を有するエンドミルであってもよい。他にも、切刃を含む部分を別体として、ホルダの先端部の所定の位置に取り付けて使用する刃先交換型のドリルやエンドミルに対しても好適に使用可能である。さらに、棒状の工具本体の先端部から側面の先端部側にかけて切刃を有し、切刃に隣接して切屑排出部となるすくい面を有する内径加工工具であってもよい。内径加工工具の場合には、切屑排出部はらせん状の切屑排出溝でなく、先端部Aから後方の一部にかけて設けられるブレーカ曲面
であってもよい。

0021

本発明の切削工具の一例であるソリッドタイプのドリルの第2の実施態様について説明する。なお、第1の実施態様と同じ構成については、説明を一部省略する。ドリル10は、第1の実施態様と同じく、図1に示すように、回転中心軸Oを有する棒状で、切刃2と、切屑排出溝4と、シャンク部3を有する。

0022

ドリル10においては、切刃2の先端部A側から見た中心部12(以下、中心部12という場合がある。)では、切削速度がゼロか、切刃2の先端部A側から見た外周部13(以下、外周部13という場合がある。)に比べて遅いために、こすれ摩耗の状態となる。そのため、切刃2の中心部12においては切削抵抗が高くなることから、ドリル10の折損を引き起こす場合がある。これに対して、切刃2の外周部13においては、切削速度が切刃2の中心部12に比べて速いために、切刃2の外周部13では摩耗が進行しやすい傾向にある。

0023

本実施態様によれば、被覆層6の表面におけるラマン分光分析において、ダイヤモンドに由来する全ピークに対するSP3ピークのピーク強度比を求めた際に、先端部Aの回転中心軸Oおよびその近傍である中心部12におけるSP3ピーク強度比が、外周部13におけるSP3ピーク強度比よりも低いものである。これによって、中心部12における被覆層6の摺動性を高めることができるとともに、被覆層6を構成する相の粒径を小さくして、被覆層6の表面を平坦にすることができる。なお、中心部12においてはSP3強度比が低く、被覆層6の硬度が低いため、切削初期すぐに、中心部12における被覆層6の表面がさらに平坦になる。そのため、切刃2の中心部12における切削抵抗が低くなって、ドリル10の折損を抑制できる。すなわち、SP3ピーク強度比は、μmオーダーのダイヤモンドの存在比率が高くなるほど高くなる。そのため、中心部12においては、μmオーダーのダイヤモンドの存在比率が低くなり、SP3ピーク強度比を低めるナノダイヤモンドおよびグラファイトの存在比率が高くなっている。

0024

一方、切刃2の外周部13においてはSP3強度比が高いので、被覆層6の耐摩耗性が高い。その結果、長期間にわたって切削加工が可能な切削工具となる。なお、本発明における中心部12とは、図1に示すドリルを先端から見た図3Bに示すように、円cで表される芯厚の内側の領域を指し、測定する際は、回転中心軸Oを含んだ領域で測定する。外周部13とは、円cの外側の領域を指し、測定する際は、図3Bに示すように、先端部A側から見た切刃2の最外位置になるべく近い破線領域で測定する。

0025

ここで、ラマン分光分析におけるSP3ピーク強度比の測定は、μmオーダーのダイヤモンドに由来する1333cm−1付近のSP3ピークのピーク強度、nmオーダーのダイヤモンドに由来する1145cm−1付近のナノダイヤモンドピークのピーク強度、ダイヤモンドの結晶構造崩れたグラファイトに由来する1400〜1600cm−1付近のSP2ピークのピーク強度を測定する。なお、ピーク強度は各ピークの最高値として測定する。3つのピーク強度の総和に対するSP3ピークのピーク強度の比率をSP3ピーク強度比とする。なお、μmオーダーのダイヤモンドの粒径の望ましい範囲は0.5μm〜20μmであり、μmオーダーのダイヤモンドの平均粒径の望ましい範囲は0.8μm〜3μmである。ナノダイヤモンドの粒径の望ましい範囲は1nm〜200nmであり、ナノダイヤモンドの平均粒径の望ましい範囲は10nm〜100nmである。

0026

また、中心部12におけるSP3ピーク強度比を外周部13におけるSP3ピーク強度比よりも低める形態として、2つの形態が挙げられる。1つ目の形態は、中心部12におけるナノダイヤモンドに由来するナノダイヤモンドピークのピーク強度比が、外周部13におけるナノダイヤモンドピークのピーク強度比よりも高い形態、すなわち、中心部12
におけるダイヤモンドの平均粒径が、外周部13におけるダイヤモンドの平均粒径よりも小さい形態である。

0027

μmオーダーのダイヤモンドに比べてナノダイヤモンドは摺動性が高いので、切刃2の中心部12における被覆層6の切削抵抗を小さくできる。また、ダイヤモンドは粒成長するにつれて多角形形状に成長する傾向にあるが、ダイヤモンドの平均粒径が小さいと、被覆層6の表面からダイヤモンドが突出する割合も低く、被覆層6の表面粗さが小さく、平滑な表面となるため、切刃2の中心部12における被覆層6の切削抵抗をさらに小さくできる。さらに、ダイヤモンドは粒成長するにつれて硬度が高くなるため、ダイヤモンドの平均粒径が小さいと被覆層6の硬度が低下し、切削初期すぐに被覆層6の表面がさらに平滑になって、切刃2の中心部12における被覆層6の切削抵抗をさらに小さくできる。一方、外周部13においては、ダイヤモンドの平均粒径が大きいため、ダイヤモンドの硬度が高く、被覆層6の硬度および耐摩耗性が向上する。なお、被覆層6中のダイヤモンドの平均粒径は、被覆層6の表面または断面を走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡によって組織を観察し、ルーゼックス画像解析法によって算出することができる。

0028

中心部12におけるSP3ピーク強度比を外周部13におけるSP3ピーク強度比よりも低下させる2つ目の形態は、中心部12におけるグラファイトに由来するSP2ピークのピーク強度比が、外周部13におけるSP2ピークのピーク強度比よりも大きい形態である。すなわち、SP2ピークはダイヤモンドの結晶構造が崩れたグラファイトに由来するピークであり、中心部12におけるグラファイトの存在割合が、外周部13におけるグラファイトの存在割合よりも多い形態である。

0029

グラファイトはダイヤモンドに比べて摺動性がよいため、切刃2の中心部12における被覆層6の切削抵抗を小さくできる。また、グラファイトは粒成長することがないので、グラファイトの含有割合が高くなると、被覆層6の表面粗さが小さく、平滑な表面になり、切刃2の中心部12における被覆層6の切削抵抗をさらに小さくできる。さらに、グラファイトはダイヤモンドに比べて硬度が低いために、中心部12における被覆層6の硬度が低下し、切削初期すぐに被覆層6の表面がさらに平滑になって、切刃2の中心部12における被覆層6の切削抵抗をさらに小さくできる。一方、外周部13においては、被覆層6中のμmオーダーのダイヤモンドの含有割合が高いので、被覆層6の硬度が向上し、被覆層6の耐摩耗性が向上する。

0030

なお、被覆層6は単層であってもよいが、SP3強度比の異なる2層以上の層の積層であってもよい。このときにおいても、被覆層6の表面においては、中心部12におけるSP3ピーク強度比が、外周部13におけるSP3ピーク強度比よりも低い。これを達成する一例として、例えば、中心部12におけるナノダイヤモンドのピーク強度比が、外周部13におけるナノダイヤモンドのピーク強度比よりも高くする方法が挙げられる。具体的には、ナノダイヤモンドを含有する1層目が中心部12および外周部13を含むドリル10の先端部Aの全体に形成され、2層目は中心部12を除いてμmオーダーのダイヤモンドを含有する層として形成された構成とする。逆に、μmオーダーのダイヤモンドを含有する1層目が中心部12および外周部13を含むドリル10の先端部Aの全体に形成され、2層目は外周部13を除いて中心部12のみにナノダイヤモンドを含有する層として形成された構成であってもよい。これらの構成であれば、被覆層6の表面は、中心部12においてはナノダイヤモンドを含有する1層目となり、外周部13においてはμmオーダーの被覆層6を含有する2層目となることから、中心部12におけるSP3ピーク強度比が、外周部13におけるSP3ピーク強度比よりも低くなる。

0031

本発明の切削工具の一例であるソリッドタイプのドリルの第3の実施態様について説明する。なお、第1の実施態様または第2の実施態様と同じ構成については、説明を一部省
略する。ドリル20は、第1の実施態様と同じく、図1に示すように、回転中心軸Oを有する棒状で、切刃2と、切屑排出溝4と、シャンク部3を有する。

0032

基体5は、硬質相と結合相とを含有する硬質合金からなる。硬質合金としては、結合相が鉄族金属からなるとともに、硬質相が炭化タングステンからなる超硬合金や、硬質相が炭窒化チタンからなるサーメットが挙げられる。本実施態様によれば、結合相の含有量は5〜15質量%、特に6〜8質量%である。

0033

本実施態様によれば、先端部Aの切刃2を有する部位では、当該部位の基体5の表面部における結合相の含有比率が当該部位の基体5の内部における結合相の含有比率に対して0.9倍より少なく、かつ、当該部位の基体5の表面に被覆層6を有している。つまり、切刃2においては、基体5の表面が被覆層6で被覆されている。本実施態様では、切刃2の基体5の表面部における結合相の含有比率は、基体5の内部における結合相の含有比率に対して0.1〜0.3倍である。

0034

一方、切屑排出溝4を有する部位では、当該部位の基体5の表面部における結合相の含有比率が当該部位の基体5の内部における結合相の含有比率に対して0.9〜1.1倍であり、かつ当該部位の基体5の表面が会部に露出しているか、または基体5の表面に被覆層6を有している。つまり、切屑排出溝4では、基体5の表面が被覆層6で被覆されているかまたは基体5が表面に露出している。これによって、切刃2においては被覆層6の密着性が高く、切刃2における摩耗の進行を抑制できる。切屑排出溝4においては、被覆層6が成膜されないか、または被覆層6の密着性が悪くて被覆層6が早期に剥離する。そのため、切屑排出溝4の表面が平滑になり、切屑排出性が向上する。

0035

ここで、図3Bにおいて、すくい面22は見えないが、括弧書きですくい面22の位置を示す。本発明における切刃2を有する部位とは、図3Bの先端から見える逃げ面23(点線部)の稜線21から100μmの厚みの範囲を含むとともに、図1の側面から見て、基体5の先端部に設けられた稜線21を含んで稜線21からすくい面22側に幅100μm(先端の稜線21から100μm後方まで)の範囲を指す。図1の側面から見て、ドリル20の先端部側の三角形の部分には、先端部側に切刃2が存在し、その後方にすくい面22が存在する。切屑排出溝4を有する部位は、すくい面22の終端から後方に位置し、凹状の溝の部分を指す。すなわち、基体5の切刃2の後方には、すくい面22に繋がる切屑排出溝4と、切刃2の稜線21に繋がる側方稜線部24と、逃げ面23に繋がるランド部25とが存在する。なお、本発明における基体5の内部とは、基体5の表面からの深さが5μm以上深い回転軸O側の位置を指し、可能であれば、回転軸Oを含む領域を指す。また、結合相の含有比率とは、硬質合金中の総金属含有量に対する結合相の含有量の比率を指す。先端部Aの切刃2を有する部位において、基体5の表面における結合相の含有比率と、基体5の内部における結合相の含有比率とを比較するには、切刃2に対して垂直な断面において、電子線マイクロアナライザー(EPMA)により金属成分の分布を確認することによって測定することができる。

0036

なお、被覆層6は、ドリル20の先端部Aから切屑排出溝4が設けられた終端付近まで形成され、それよりも後方は、基体5がむき出しの状態となっている。また、ドリル20の先端部側をブラシ加工やブラスト加工等の研磨加工を施して、切刃2における被覆層6の表面を平滑にしてもよい。この場合、切屑排出溝4の表面では、被覆層6が成膜されていても密着性が悪いので、被覆層6が剥離して基体5が露出することもある。このとき、切屑排出溝4の表面は研磨されにくい位置にあるため、切屑排出溝4の表面が過剰に研磨加工されることなく、切屑排出溝4の基体5の表面における平滑さは損なわれにくい。また、被覆層6を成膜する前の基体の先端部側をブラシ加工やブラスト加工等の研磨加工を施して、切刃2における基体5の表面粗さを調整してもよい。

0037

ここで、本実施態様では、切刃2において、被覆層6中のダイヤモンド粒子の平均粒径が0.4〜3μmである。これによって、被覆層6の硬度が高く、かつ被覆層6の表面が過剰に粗くなることなく、切刃2における切削抵抗が高くてドリル20が折損することを抑制する。さらに、本実施態様によれば、切屑排出溝4に被覆層6が被覆されている場合には、切屑排出溝4における被覆層6中のダイヤモンドの平均粒径が、切刃2における被覆層6中のダイヤモンドの平均粒径よりも小さくなっている。これによって、後方側の被覆層6の表面がより平滑となり、切削加工初期にも切屑排出溝4における切屑排出性が向上する。なお、被覆層6中のダイヤモンドの平均粒径は、被覆層6の表面から走査型電子顕微鏡によって組織を観察し、ルーゼックス画像解析法によって算出することができる。

0038

また、本実施態様では、切刃2における基体5の表面における界面粗さが0.12〜1.5μmであり、切屑排出溝4における基体5の表面における界面粗さが0.01〜0.1μmである。これによって、切刃2および切屑排出溝4における被覆層6の密着性を最適化できる。界面粗さは、基体5の被覆層6との界面を含む断面についてのSEM観察から、基体5と被覆層6との界面をなぞって、その軌跡からJISB0601に基づく最大高さRyを算出し、これを界面粗さとして測定できる。

0039

さらに、本実施態様では、切刃2における被覆層6のほうが、切屑排出溝4における被覆層6よりも被覆層6中に存在するダイヤモンドとグラファイトのうちのダイヤモンドの含有比率が高い。また、切屑排出溝4における被覆層6のほうが、切刃2における被覆層6よりも被覆層6の厚みが薄くなっている。これによって、切削加工前の切刃2および切屑排出溝4における被覆層6の表面粗さを適正化して、切削初期においても過剰に切削抵抗がかかることを抑制する。なお、本実施態様では、切屑排出溝4の表面に被覆層6がなく、切屑排出溝4の表面は基体5がむき出しであってもよい。

0040

切刃2における被覆層6の厚みは、ドリル20の先端部(回転軸Oの位置)における被覆層6の厚みを指す。切屑排出溝4が被覆層6で被覆されている場合、切屑排出溝4における被覆層6の厚みは、回転軸Oと垂直な横断面における切屑排出溝4内の最深部での被覆層6の厚みを指す。切屑排出溝4内の最深部は、基体1の表面のうち、回転軸Oから最も短い距離にある位置を指す。回転軸Oを中心として、前記最も短い距離にある位置を通る円、すなわち、ドリル20内に描ける最大の円cの直径が芯厚である。

0041

本実施態様によれば、切刃2における被覆層6の膜厚t1(図示せず)と切屑排出溝4における被覆層6の膜厚t2との比(t2/t1)が0.2〜0.8である。これによって、切刃2において被覆層6が摩滅することを抑制できるとともに、切屑排出溝4において被覆層6の平滑性を保つことができる。また、被覆層6中のダイヤモンドおよびグラファイトの含有比率は、ラマン分光分析法を用いて測定することができる。具体的には、1333cm−1付近のダイヤモンドピークSP3と、1400〜1600cm−1にグラファイトピークSP2とのピーク強度を測定することによって求めることができる。

0042

また、本発明の切削工具は、上記実施態様のドリルに限定されるものではなく、工具本体が棒状で、先端に底刃を有し、外周の先端側に外周刃を有するとともに、底刃と外周刃に隣接して先端部から後方に向けて切屑排出溝を有するエンドミルであってもよい。この場合、外周刃には、稜線からすくい面側に50μm以下の範囲が上記切刃の構成であることが望ましい。

0043

(製造方法)
上述した第1の実施態様であるドリルの製造方法について説明する。

0044

まず、円柱状の基体の表面にセンタレス加工を施した後、刃付け加工をして、ドリルの形状の基体を作製する。所望によって、基体の切刃側に研磨加工を施す。次に、基体の表面に、酸処理およびアルカリ処理のエッチング処理をして、ドリルの形状の基体を作製する。

0045

次に、基体の表面に、被覆層を成膜する。被覆層の成膜方法として、熱フィラメント方式CVD法が好適に適応可能である。成膜方法の一例についての詳細について説明すると、成膜装置30はチャンバ31を有し、チャンバ31内には試料エッチングした基体)32をセットする試料台33が設けられている。本実施態様によれば、棒状の基体32は、先端部が上を向くように上下に立てた状態でセットされる。図4では基体32の刃付け部(切刃および切屑排出溝を含む部分)を略して記載している。

0046

そして、基体32の周囲にはフィラメント等のヒータ34を配置する。ヒータ34はチャンバ31外に配置された電源35に接続される。ここで、本実施態様によれば、複数のヒータ34を用いて、これらの配置、および各ヒータ34に供給する電流値を調整することによって、試料台33にセットした棒状の基体32の温度が、基体32の長手方向で変化するように調整する。具体的には、基体32の先端部における温度が最も高く、基体32の後方側では温度が漸次低くなるように調整する。なお、ヒータ34は支持体39にて支持されている。

0047

チャンバ31には、原料ガス供給口36と、ガス排気口37が設けられる。真空にしたチャンバ31内に、原料ガス供給口36から水素ガスメタンガスを供給して、基体32に吹き付けることにより、ダイヤモンドとグラファイトとの混合比率が基体32の長手方向で異なる切削工具を得ることができる。

0048

上述した第2の実施態様のドリルの製造方法を例として説明する。なお、第1の実施態様と同じ構成については、説明を一部省略する。まず、ドリルの形状の基体を作製する。本実施態様では、中心部12におけるSP3ピーク強度比を低める第1の方法として、研磨加工後に基体の表面をエッチング処理する際に、中心部12に樹脂等のマスキング剤を塗布した状態でエッチング処理する方法が適用できる。この方法によれば、中心部12において、基体の表面における結合相の含有比率を低下させないように制御することができる。その結果、その後に成膜されるダイヤモンドを含有する被覆層において、中心部12におけるダイヤモンドの粒成長が抑制され、グラファイトの含有比率が高くなる。

0049

中心部12におけるSP3ピーク強度比を低める第2の方法として、エッチング処理工程の後で、図5に示すように、主として中心部12のみがコバルトを含有する溶液40に浸るように、基体5の所定部分のみを浸漬させて、中心部12のみにコバルト成分を再度含有させる。これによって、その後に成膜される被覆層において、中心部12におけるダイヤモンドの粒成長が抑制され、グラファイトの含有比率が高くなる。エッチングした基体は水等で洗浄し、乾燥する。

0050

その後、被覆層を成膜する。中心部12におけるSP3ピーク強度比を低める第3の方法として、ドリル10の先端部Aの全体にナノダイヤモンドを含有する1層目を成膜した後、ドリル10の中心部12にカーボンスラリーを塗布する等によってマスクを付け、μmオーダーのダイヤモンドを含有する2層目を成膜する方法が挙げられる。この方法で成膜された中心部12の2層目は、成膜終了後、マスクとともに剥離する。本実施態様では、1層目の成膜温度と2層目の成膜温度が同じままで、1層目を成膜する際の真空度0.5〜2kPa、2層目を成膜する際の真空度が3〜5kPaとなるように調整する。また、1層目を成膜する際のメタンの混合比(体積%)に対して、2層目を成膜する際のメタンの混合比が低くなるように調整する。これによって、ラマン分光分析において、1層目にはナノダイヤモンドピークが出現し、2層目にはSP3ピークが出現しない。そして、1層目を構成するダイヤモンドの平均粒径が、2層目を構成するダイヤモンドの平均粒径よりも1ケタ以上小さくなる。

0051

次に、上述した第3の実施態様のドリルの製造方法の一例について説明する。なお、第1の実施態様または第2の実施態様と同じ構成については、説明を一部省略する。まず、ドリルの形状の基体を作製する。本実施態様では、エッチング処理の際、中でも酸処理の際に、図6に示すように、主として切刃2のみが酸溶液41に浸るように、酸溶液41に基体5の所定部分のみを浸漬させ、基体5の長手方向を回転軸として回転させながらエッチングする。これによって、基体の表面における結合相の含有比率を制御することができる。このとき、酸溶液41の濃度および浸漬時間を調整することによって、切刃における結合相の含有比率を調整することができる。エッチングした基体は水等で洗浄し、乾燥し、その後、被覆層を成膜する。

0052

(切削加工物の製造方法)
本実施態様における切削加工物の製造方法について、上述したドリル1を用いる場合を例に挙げて、図7を参照しつつ詳細に説明する。図7Aは、ドリル1を被削材50に向かってY方向に近づける工程を示す図である。図7Bは、ドリル1を被削材50に接触させる工程を示す図である。図7Cは、ドリル1を被削材50からZ方向に離す工程を示す図である。

0053

本実施態様における切削加工物の製造方法は、以下の(i)〜(iV)の工程を備える。

0054

(i)準備された被削材50の上方にドリル1を配置する工程(図7A)。

0055

(ii)ドリル1を、回転軸Oを中心に矢印r方向に回転させ、被削材50に向かって矢印Y方向にドリル1を近づける工程(図7A、図7B)。本工程は、例えば、ドリル1を取り付けた工作機械のテーブル上に被削材50を固定し、ドリル1を回転させた状態で被削材50に近づけることによって行うことができる。なお、本工程では、被削材50とドリル1とが相対的に近づけばよく、例えば、ドリル1を固定して被削材50をドリル1に近づけてもよい。

0056

(iii)ドリル1をさらに被削材50に近づけることによって、回転しているドリル1の切刃2を、被削材50の表面の所定の位置に接触させて、図7Cの被削材50に加工穴貫通孔)51を形成する工程(図7B)。

0057

(iv)ドリル1を矢印Zの方向に移動させることによって、ドリル1を被削材50の貫通孔51から離す工程(図7C)。本工程においても、上記(ii)工程と同様に、被削材50とドリル1とは相対的に離隔すればよく、例えば、ドリル1を固定して、被削材50をドリル1から離してもよい。

0058

以上の工程によって、優れた穴加工性を発揮することができる。なお、穴加工を繰り返し行う場合には、ドリル1の回転を保持した状態で、被削材50の異なる箇所にドリル1の切刃2を接触させる工程を繰り返せばよい。

0059

平均粒径0.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、金属コバルト(Co)粉末を10質量%、炭化チタン(TiC)粉末を0.2質量%、炭化クロム(Cr3C2)粉末を0.8質量%の割合で添加、混合し、円柱形状に成型して焼成した。そして、研削工程を経てドリル形状にした後、アルカリ、酸、蒸留水の順によって表面を洗浄してドリル基体(直径6mm、刃長10mm、芯厚3mm、2枚刃)を作製した。

0060

その基体を図4に示す成膜装置にセットして、熱フィラメントCVD法により、基体の表面にダイヤモンドとグラファイトとの混晶からなる被覆層を成膜した。成膜装置は、直径25cmφ、高さ20cmの反応チャンバ内に、太さ0.4mmφのタングステンフィラメントが基体の先端部側に1本、基体を挟むように側面に2本、合計3本を配置した。ドリル形状の基体は、先端部が上を向くように上下に立てた状態でセットされた。なお、タングステンフィラメントに供給する電流値を調整することにより、基体の先端および先端から3mm、5mm、10mm後方の位置における温度を表1に示す温度とした。

0061

そして、真空中で、反応ガス組成水素(97容量%)+メタン(3容量%)を供給口より反応炉に導入して、被覆層を成膜した。成膜された被覆層について、ドリルの先端および先端から5mm、10mm後方の位置における結晶状態ラマン散乱分光で測定し、1333cm−1付近のダイヤモンドピークSP3と、1400〜1600cm−1にグラファイトピークSP2とのピーク強度からダイヤモンドピークSP3の含有比率(SP3/(SP3+SP2))を見積もった。

0062

また、ドリルの表面に成膜された被覆層をSEM観察して、ルーゼックス解析法を用いてダイヤモンド粒子の平均粒径を求めた。さらに、ドリルの先端および先端から5mm、10mm後方の位置における被覆層の断面をSEM観察して、被覆層の厚みを測定した。結果は表1に示した。

0063

さらに、得られたドリルを用いて以下の切削条件にて切削試験を行い、切削性能を評価した。結果は表2に記載した。
切削方法穴あけ通り穴
被削材:CFRP
切削速度(送り):100mm/分
送り :0.075mm/刃
切り込み:深さ8mm、加工径φ6mm
切削状態:乾式
評価方法:1500穴加工後の切刃の先端摩耗幅(表中、摩耗幅と記載)、バリが発生した加工穴数を測定するとともに、加工不能になった時点でのドリルの状態を確認。

0064

0065

0066

表1、2より、ダイヤモンドの含有比率が、基体の先端と10mm後方の位置で同じ試料No.4では、切屑処理性が悪くて切屑が詰まりやすく、ドリルに負荷がかかって折損してしまい、試料No.5では、切刃の耐摩耗性が悪く、ともに加工穴数が少なくなった。

0067

これに対して、基体の先端よりも10mm後方の位置のほうがダイヤモンドの含有比率が低い試料No.1〜3では、いずれも切刃の耐摩耗性が良く、かつ切屑排出性も良好で、加工穴数が多くなった。

0068

実施例1と同様にして、ドリル基体を作製した。なお、試料No.II−1〜II−3については、エッチング処理した後に、ドリル基体の中心部のみを塩化コバルト(CoCl2)のメタノール溶液に浸漬した後、引き上げて蒸留水で洗浄した。試料No.II−4については、酸処理前に、ドリルの中心部にマスクを付けて酸処理を実施した。試料No.II−7については、酸処理した後に、ドリル基体の先端部側の全体を塩化コバルト(CoCl2)のメタノール溶液に浸漬した後、引き上げて蒸留水で洗浄した。これらの条件については、表3の処理の項目で記載した。

0069

その基体に対して、実施例1と同様に被覆層を成膜した。試料No.II−5については、上記被覆層の成膜に先立ち、先端部で820℃、ドリル基体の先端から3mm後方の位置で650℃の成膜温度で、真空度0.8kPa、反応ガス組成:水素(94容量%)+メタン(6容量%)を供給口より反応炉に導入して、ナノダイヤモンドを含有する1層目を成膜した。そして、中心部にマスクを付けて、2層目として上記被覆層を成膜した。

0070

成膜された被覆層について、ドリル先端部の中央部および外周部における結晶状態をラマン散乱分光分析で測定した。中心部の測定には、回転中心軸Oを含んだ領域で測定し、外周部13の測定には、先端側から見た切刃の最外位置になるべく近い図3Bの破線部分領域で測定した。測定データから、1333cm−1付近のダイヤモンドピークSP3と、1400〜1600cm−1にグラファイトピークSP2と、1145cm−1のナノダイヤモンドピーク強度からダイヤモンドピークSP3の含有比率(SP3/(SP3+SP2+ナノダイヤモンド(nano)))を見積もった。表3、4に、外周部のSP3の含有比率(SP3比)に対する中央部のSP3の含有比率(SP3比)の比率を、SP
3比の比率(中央部/外周部)として記載した。

0071

また、ドリルの表面に成膜された被覆層をSEM観察またはTEM観察した後、ルーゼックス解析法を用いてダイヤモンド粒子の平均粒径を求めた。さらに、ドリルの先端からみた外周部の最外周(図1に示す点p)および先端から3mm後方の最外周(図1に示す点q)における被覆層の断面をSEM観察して、被覆層の厚み(表中、先端部tA、後方tBと記載)を測定した。結果は表5に示した。

0072

さらに、得られたドリルを用いて以下の切削条件にて切削試験を行い、切削性能を評価した。結果は表5に記載した。
切削方法:穴あけ(通り穴)加工径φ6mm
被削材:CFRP深さ8mm
切削速度(送り速度):200mm/分
送り :0.075mm/rev
切削状態:乾式
評価方法:ドリル100本について評価し、100穴加工するまでに折損した初期折損したドリルの本数を測定した。また、初期折損しなかったドリルについて、1500穴加工後の切刃の先端摩耗幅を測定し、その平均値を算出した(表中、摩耗幅と記載)。さらに、バリが発生して加工不能となるまでの加工穴数を測定し、その平均値を算出した(表中、加工穴数と記載)。

0073

0074

0075

0076

表3〜5より、中心部のみをCoCl2溶液に浸漬したり、中心部にマスクを付けてエッチング処理をしたりせず、中心部におけるSP3ピーク強度比と、外周部におけるSP3ピーク強度比が同じになった試料No.II−6、9では、先端部の中央部における切削抵抗が高くなって、折損するドリルの本数が多く、加工穴数も少ないものであった。また、エッチング処理時に基体全体をCoCl2溶液に浸漬した試料No.II−7、10では、外周部における耐摩耗性が悪かった。

0077

これに対して、中心部におけるSP3ピーク強度比が、外周部におけるSP3ピーク強度比よりも低い試料No.II−1〜II−5、II−8では、いずれも折損することもなく、外周部における耐摩耗性が良く、加工穴数が多くなった。

0078

金属コバルト(Co)粉末を7.0質量%、炭化クロム(Cr3C2)粉末を0.8質量%、残部が平均粒径0.5μmの炭化タングステン(WC)粉末を用いて、実施例1と同様の方法でドリル基体を作製した。

0079

その後、図2に示すように基体の回転軸を酸溶液およびアルカリ溶液の液面に対して30°傾けた状態で回転させる方法で、基体を0.5mmの深さで酸溶液(表1の濃度の塩酸に15分間)、アルカリ溶液(試薬に5〜30秒)の順に浸漬してエッチング処理をした。その後、蒸留水によって表面を洗浄して、ドリル基体を作製した。なお、試料No.III−5については、基体の回転軸が酸溶液およびアルカリ溶液の液面に対して垂直になるようにして1mmの深さで浸漬した。試料No.III−7については、基体の回転軸が酸溶液およびアルカリ溶液の液面に対して垂直になるようにして10mmの深さで浸漬した。試料No.III−6については、エッチング処理をしなかった。その基体に、実施例1と同様にして被覆層を成膜した。なお、表6に示す後方の基体温度とは、ドリル基体の先端から3mm後方の位置における温度を示す。

0080

成膜された被覆層について、ドリルの先端および先端から3mm、5mm、10mm後方の位置における結晶状態をラマン散乱分光で測定し、1333cm−1付近のダイヤモンドピークSP3と、1400〜1600cm−1にグラファイトピークSP2とのピーク強度からダイヤモンドの比率であるSP3比(SP3/(SP3+SP2))を見積もった。また、ドリルの表面に成膜された被覆層をSEM観察して、ルーゼックス解析法を用いてダイヤモンド粒子の平均粒径を求めた。さらに、ドリルの先端部(切刃)、および先端から3mm後方の切屑排出溝の位置における被覆層の断面をSEM観察して、被覆層の厚みを測定した。切刃における厚みをt1、切屑排出溝における厚みをt2として表記した。また、このSEM観察から、基体と被覆層との界面をなぞって、その軌跡をJISB0601に基づく最大高さRyを算出し、界面粗さとした。さらに、EPMA分析から、ドリル先端の切刃における基体の表面(表中、切刃eと記載)、切屑排出溝(ドリル先端から3mm後方の位置)における基体の表面(表中、切屑排出溝gと記載)とその中央部(表中、内部iと記載)について、超硬合金中の総金属成分に対する結合相(Co)の含有比率を測定した。結果は表6〜8に示した。

0081

さらに、得られたドリルを用いて以下の切削条件にて切削試験を行い、切削性能を評価した。結果は表8に記載した。
切削方法:穴あけ(通り穴)
被削材:CFRP
切削速度(送り):120mm/分
送り :0.075mm/刃
切り込み:深さ8mm、加工径φ6mm
切削状態:乾式
評価方法:1000穴加工後(加工不能となった加工数が1000穴未満の試料については加工終了時点)の切刃の先端摩耗幅(表中、摩耗幅と記載)、バリが発生した加工穴数を測定するとともに、加工不能になった時点でのドリルの状態を確認。

0082

0083

0084

0085

表6〜8より、基体に対してエッチング処理をせず、切刃において、基体の表面部における結合相の含有比率が基体の内部における前記結合相の含有比率に対して0.9倍以上の試料No.III−6では、切刃において被覆層が早期に剥離してしまい、切刃の耐摩耗
性が悪く、加工穴数が少なくなった。切刃も切屑排出溝も酸溶液に浸漬してエッチング処理し、切屑排出溝において、基体の表面部における結合相の含有比率が基体の内部における前記結合相の含有比率に対して0.9倍よりも少ない試料No.III−7では、切屑排
出溝における表面が荒れ、切屑処理性が悪くて切屑が詰まりやすく、ドリルに負荷がかかって折損してしまった。

実施例

0086

これに対して、切刃では、結合相の含有比率の比e/iが0.9より少なく、切屑排出溝では、結合相の含有比率の比g/iが0.9〜1.1の試料No.III−1〜III−5、III−8では、いずれも切刃の耐摩耗性が良く、かつ切屑排出性も良好で、加工穴数が多
くなった。なお、試料No.III−5については、切屑排出溝の表面において被覆層が部
分的に剥離し、基体が露出していた。

0087

1、10、20ドリル
2切刃
3シャンク部
4切屑排出溝
5基体
6被覆層
12 中心部
13 外周部
21稜線
22すくい面
23逃げ面
24側方稜線部
25ランド部
A 先端部
B後端
O 中心回転軸

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