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技術 アグロバクテリウム菌を用いた、ソルガム属植物への遺伝子導入方法およびソルガム属植物の形質転換植物の作成方法

出願人 日本たばこ産業株式会社
発明者 綱島雅子
出願日 2014年12月24日 (6年10ヶ月経過) 出願番号 2014-259772
公開日 2018年2月22日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 2018-027020
状態 未査定
技術分野 植物の育種及び培養による繁殖 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 未処理区 耐高温性 多孔性セラミックス 明暗条件 ソルビトール濃度 カリウムイオン濃度 遠心加速度 硝酸イオン濃度
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課題

アグロバクテリウム法に比べて効率の高い、ソルガム属の植物の遺伝子導入方法および形質転換植物作成方法の提供。

解決手段

ソルガム属の植物の植物組織材料を調製する工程、アグロバクテリウム菌接種する工程及び/又は共存工程において、窒素源の濃度、ならびに/または、マグネシウムイオンカリウムイオンカルシウムイオンおよびナトリウムイオンから選択される無機イオンの濃度、を高めた培地を用いるソルガム属の植物の遺伝子導入方法。また、前記遺伝子導入方法を用いる形質転換植物の製造方法。

概要

背景

ソルガムは、アフリカを原産とするイネ科短日単子葉植物である。ソルガムは、水利用効率が高く、耐乾性耐高温性に富み、トウモロコシ、イネ、コムギオオムギに次ぐ主要穀類であり、アフリカやアジアの国々において重要な食糧となっている。また、ソルガムは糖含有量が高く、バイオエタノール原料にもなることから、ソルガムの農業形質を改良するための技術開発も盛んに行われている。ソルガムは全ゲノム解読され、ソルガム特有の有用農業形質に関連する遺伝子や量的遺伝子座(QTL)の解析も進んでいる。ソルガムにおける遺伝子組換え技術の開発は、ソルガムの農業形質を改良する上で重要な役割を果たすと考えられる。

主要穀類であるオオムギ、コムギ、トウモロコシ、イネなどの単子葉植物の形質転換方法には、ポリエチレングリコール法、エレクトロポレーション法パーティクルガン法などの物理化学的方法(DNAの直接導入法)とアグロバクテリウム属細菌が持つ機能を利用する生物学的方法(DNAの間接導入法)が知られている。アグロバクテリウム属細菌を介する遺伝子導入法は、Tiプラスミド病原性領域(vir領域)における遺伝子群発現制御等により、目的遺伝子の導入コピー数は低く保たれ、断片化されて導入されることも少ない。そのため、得られた形質転換体において目的遺伝子が高発現する個体が多く得られ、直接導入法に比べると、発現量の個体間差も少ないという大きな利点がある。

アグロバクテリウム属細菌を介した遺伝子導入法は、双子葉植物形質転換法として普遍的に用いられている。もともと、自然界におけるアグロバクテリウム属細菌の宿主は双子葉植物に限定されており、長い間、単子葉植物には寄生しないと考えられてきた。しかしながら、供試組織の検討、培地組成の改良、アグロバクテリウム菌株の選定などの詳細な研究の結果、主要穀物であるイネで初めてアグロバクテリウム属細菌を介した高効率形質転換方法が報告された(Hiei et al. 1994:非特許文献1)。その後、イネでの成功に続いて、トウモロコシ(Ishida et al. 1996:非特許文献2)、コムギ(Cheng et al. 1997:非特許文献3)、オオムギ(Tingay et al. 1997:非特許文献4)、ソルガム(Zhao et al. 2000:非特許文献5)でアグロバクテリウムを介した形質転換の成功が報告されている。

1.アグロバクテリウム属細菌を介したソルガムの形質転換方法に関連する従来技術
1)アグロバクテリウムを接種する植物組織
アグロバクテリウムを接種するために用いられるソルガムの組織としては、未熟胚が用いられている(非特許文献5)。

2)前処理
アグロバクテリウム法による形質転換効率を向上させる方法の1つとして、形質転換をする植物材料熱処理または遠心処理を施すことがいくつかの単子葉植物への形質転換に使われている(Hiei et al. 2006:非特許文献6)。ソルガムにおいても、アグロバクテリウムを感染させる前の未熟胚に対して、43℃で3分間処理することによって形質転換効率が未処理区に比べて約3倍向上するという報告がされている(Gurel et al. 2009:非特許文献7)。但し、遠心処理については、ソルガムの形質転換にネガティブな結果を生じたと記されている。

3)共存工程
アグロバクテリウムを植物組織に接種して共存させる工程である。アグロバクテリウムを介したソルガムの形質転換では、共存培地組成としてLS無機塩を1倍量含むMS培地が使われている(非特許文献5)。

4)カルス形成工程
カルス形成工程は、植物組織を脱分化させる工程である。

ソルガムの組織培養工程ではフェノール化合物が過剰に産生し、カルス形成が阻害される傾向がある(Cai et al. 1987:非特許文献8)。これに対し、MS培地にL−プロリン、L−アスパラギンを添加することによって、エンブリオジェニックカルスの増殖を促進すること、およびソルガム培養の阻害要因となるフェノール産生を抑制することが示された(Elkonin et al. 1995:非特許文献9)。また、カルス形成培地硝酸イオン濃度リン酸イオン濃度を増加することによって、エンブリオジェニックカルスの誘導を促し、さらに得られたカルスからの再分化効率も向上することが報告されている(Elkonin et al. 2000:非特許文献10)。ポリビニルポリピロリドンPVPP)のカルス形成培地への添加が、アグロバクテリウム接種時のダメージによる細胞褐変を軽減するという報告がある(Gao et.al. 2005:非特許文献11)。

また、実際にソルガムを形質転換した事例としては、カルス形成培地に添加する植物成長調節物質に6−ベンジルアミノプロリン(BAP)を使用することによって、形質転換効率が改善したという報告もある(Wu et al. 2014:非特許文献12)。

5)再分化工程
再分化培地に添加する植物成長調節物質の種類と濃度を最適化する試みも行われ、1 mg/Lナフタレン酢酸(NAA)、1 mg/Lインドール−3−酢酸(IAA)、1 mg/Lインドール−3−酪酸(IBA)、1 μmol/L硫酸銅を含むMS培地を用いることによって、発根培地移植後の再分化植物からの発根が促進されることが報告されている(Guoquan et al. 2013:非特許文献13)。

以上のように、アグロバクテリウムを介したソルガムの形質転換方法は、改良が行われ、最初の報告で2.1%(非特許文献5)であった形質転換効率が、33%(非特許文献12)まで上昇してきた。しかしながら、その形質転換効率は、イネやトウモロコシと比較しても、未だ十分に高いとはいえない。

2.アグロバクテリウム属細菌を介した植物の形質転換方法における共存培地の改良
アグロバクテリウムを介した形質転換方法において、トウモロコシでは、N6培地希釈した共存培地を用いることによって形質転換効率が向上したという報告が複数なされている。例えば、Duらは、アグロバクテリウムを接種したトウモロコシ(A188)未熟胚のうち、GUS遺伝子の一過性発現が確認された未熟胚の割合が、N6無機塩を1倍量含むN6培地では72%であったのに対し、主要無機塩を50%、30%、10%に希釈したN6培地ではいずれも90%以上に増加することを示した(Du et al. 2010:非特許文献14)。

また、別の報告では、主要無機塩を10%、50%に希釈したN6培地からなるアグロバクテリウム懸濁培地、および共存培地を使用することによって、N6無機塩を1倍量含むN6培地を用いた時のトウモロコシ(Hi-II)における供試カルス当たりの形質転換効率が0%であったのに対し、それぞれ4.0%、17.5%に向上することが確認された(Vega et al. 2008:非特許文献15)。

コムギにおいては、無機塩を10%に希釈したMS培地からなるアグロバクテリウム懸濁培地、および共存培地を用いた場合、MS無機塩を1倍量含むMS培地からなる上記培地を用いるよりも著しくGUS遺伝子の一過性発現を示した未熟胚の割合が高かったことが報告されている(Cheng et al. 1997:非特許文献16)。このように「低無機塩培地は、数種の主要作物へのアグロバクテリウムによる導入遺伝子の一過性発現や形質転換効率向上のために一般的に用いられている。」(Vega et al. 2008:非特許文献15)と考えられている。

反対に、共存培地ではないが、タバコにおいて、アグロバクテリウムを接種する前の植物材料を前培養する培地に、硝酸アンモニウム濃度を増加させた培地を用いることによって、導入遺伝子の一過性発現や形質転換効率が向上したことが報告されている(Boyko et al. 2009:非特許文献17)。また、アグロバクテリウムを接種する前の植物組織を前培養する培地に、塩化カリウム希土類元素塩化物を添加することにより、シロイヌナズナやタバコの形質転換効率が向上したという報告がある(Boyko et al. 2011:非特許文献18)。

共存培地に、抗酸化物質や銅を添加することによって、導入遺伝子の一過性発現を促進させる方法も報告されている。トウモロコシでは、抗酸化物質であるL−システインジチオトレイトール(DTT)をMS培地、N6培地、LS培地、D培地それぞれに添加した結果、非添加区に比べて0.4g/L L−システインと0.15g/L DTTを添加した試験区において導入遺伝子の一過性発現および形質転換効率が著しく向上した(非特許文献14)。

3.植物組織の培養に用いられる培地
上記のMS培地(LS培地)以外にも、植物組織の培養にさまざまな組成の培地が開発され、利用されている。

N6培地は、主にイネの葯培養培地として用いられている。B5培地は、液体培養用として開発されたが、固体培地としても多くの植物組織培養に用いられている。R2培地は、B5培地を基本としてイネの懸濁培養細胞用に開発された培地である。CC培地は、トウモロコシのプロトプラストからのカルス形成培地として考案された培地である。

下記の表は、公知の基本培地であるMS培地、LS培地、N6培地、B5培地、R2培地、CC培地について、窒素源としてのNH4+とNO3−の合計濃度、および各種無機イオンマグネシウムイオンカリウムイオンカルシウムイオン、およびナトリウムイオン)の濃度をまとめたものである。

概要

アグロバクテリウム法に比べて効率の高い、ソルガム属の植物の遺伝子導入方法および形質転換植物作成方法の提供。ソルガム属の植物の植物組織材料を調製する工程、アグロバクテリウム菌を接種する工程及び/又は共存工程において、窒素源の濃度、ならびに/または、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンおよびナトリウムイオンから選択される無機イオンの濃度、を高めた培地を用いるソルガム属の植物の遺伝子導入方法。また、前記遺伝子導入方法を用いる形質転換植物の製造方法。なし

目的

本発明は、従来公知のアグロバクテリウム法と比較して効率の高い、ソルガム属の植物へ遺伝子導入を行う方法、および、ソルガム属の形質転換植物を作成する方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、(i)上記植物材料を調製する工程;(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌接種する工程;および(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、マグネシウムイオンの濃度を高めた培地であって、マグネシウムイオン濃度が4.0mM以上100mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。

請求項2

ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、(i)上記植物材料を調製する工程;(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源の濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mMより多く270mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。

請求項3

ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、(i)上記植物材料を調製する工程;(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源および/またはマグネシウムイオンの濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mM以上270mM以下であり、マグネシウムイオン濃度が2.6mM以上100mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。

請求項4

ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、(i)上記植物材料を調製する工程;(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源および/またはカリウムイオンの濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mM以上270mM以下であり、カリウムイオン濃度が24mM以上65mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。

請求項5

ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、(i)上記植物材料を調製する工程;(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源および/またはカルシウムイオンの濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mM以上270mM以下であり、カルシウムイオン濃度が5.2mM以上10mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。

請求項6

ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、(i)上記植物材料を調製する工程;(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源および/またはナトリウムイオンの濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mM以上270mM以下であり、ナトリウムイオン濃度が0.6mM以上200mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。

請求項7

少なくとも(iii)の共存工程において、窒素源の濃度、ならびに/または、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンおよびナトリウムイオンから選択される無機イオンの濃度を高めた培地を用いることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。

請求項8

ソルガム属(Sorghum)の植物の、形質転換植物作成方法であって、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法にしたがって工程(i)−(iii)を行い、次いで、(iv)共存工程で培養した組織をレスティング培地で培養するレスティング工程;および(v)上記組織を再分化培地再分化させる工程;を含む、前記方法。

請求項9

以下の形質転換向上処理:a)加熱処理;b)遠心処理;c)加圧処理;d)(ii)および/または(iii)の工程において、銅イオンを含む金属塩の濃度を高めた培地を用いる処理;およびe)(ii)および/または(iii)の工程において、硝酸銀の濃度を高めた培地を用いる処理;のうちの少なくとも1つを行う、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。

請求項10

上記(iv)レスティング工程と、(v)再分化工程の間に選抜工程を含む、請求項8または9に記載の方法。

請求項11

アグロバクテリウム菌が、LBA4404、EHA101、EHA105、AGL0、AGL1、およびC58C1からなる群より選択される菌である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。

請求項12

ソルガム属の植物がソルガム(Sorghum bicolor)である、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、アグロバクテリウム属細菌を介してソルガム属の植物へ遺伝子導入を行う方法に関する。本発明はさらに、アグロバクテリウム属細菌を介して、ソルガム属の植物の形質転換植物を作成する方法に関する。

背景技術

0002

ソルガムは、アフリカを原産とするイネ科短日単子葉植物である。ソルガムは、水利用効率が高く、耐乾性耐高温性に富み、トウモロコシ、イネ、コムギオオムギに次ぐ主要穀類であり、アフリカやアジアの国々において重要な食糧となっている。また、ソルガムは糖含有量が高く、バイオエタノール原料にもなることから、ソルガムの農業形質を改良するための技術開発も盛んに行われている。ソルガムは全ゲノム解読され、ソルガム特有の有用農業形質に関連する遺伝子や量的遺伝子座(QTL)の解析も進んでいる。ソルガムにおける遺伝子組換え技術の開発は、ソルガムの農業形質を改良する上で重要な役割を果たすと考えられる。

0003

主要穀類であるオオムギ、コムギ、トウモロコシ、イネなどの単子葉植物の形質転換方法には、ポリエチレングリコール法、エレクトロポレーション法パーティクルガン法などの物理化学的方法(DNAの直接導入法)とアグロバクテリウム属細菌が持つ機能を利用する生物学的方法(DNAの間接導入法)が知られている。アグロバクテリウム属細菌を介する遺伝子導入法は、Tiプラスミド病原性領域(vir領域)における遺伝子群発現制御等により、目的遺伝子の導入コピー数は低く保たれ、断片化されて導入されることも少ない。そのため、得られた形質転換体において目的遺伝子が高発現する個体が多く得られ、直接導入法に比べると、発現量の個体間差も少ないという大きな利点がある。

0004

アグロバクテリウム属細菌を介した遺伝子導入法は、双子葉植物形質転換法として普遍的に用いられている。もともと、自然界におけるアグロバクテリウム属細菌の宿主は双子葉植物に限定されており、長い間、単子葉植物には寄生しないと考えられてきた。しかしながら、供試組織の検討、培地組成の改良、アグロバクテリウム菌株の選定などの詳細な研究の結果、主要穀物であるイネで初めてアグロバクテリウム属細菌を介した高効率形質転換方法が報告された(Hiei et al. 1994:非特許文献1)。その後、イネでの成功に続いて、トウモロコシ(Ishida et al. 1996:非特許文献2)、コムギ(Cheng et al. 1997:非特許文献3)、オオムギ(Tingay et al. 1997:非特許文献4)、ソルガム(Zhao et al. 2000:非特許文献5)でアグロバクテリウムを介した形質転換の成功が報告されている。

0005

1.アグロバクテリウム属細菌を介したソルガムの形質転換方法に関連する従来技術
1)アグロバクテリウムを接種する植物組織
アグロバクテリウムを接種するために用いられるソルガムの組織としては、未熟胚が用いられている(非特許文献5)。

0006

2)前処理
アグロバクテリウム法による形質転換効率を向上させる方法の1つとして、形質転換をする植物材料熱処理または遠心処理を施すことがいくつかの単子葉植物への形質転換に使われている(Hiei et al. 2006:非特許文献6)。ソルガムにおいても、アグロバクテリウムを感染させる前の未熟胚に対して、43℃で3分間処理することによって形質転換効率が未処理区に比べて約3倍向上するという報告がされている(Gurel et al. 2009:非特許文献7)。但し、遠心処理については、ソルガムの形質転換にネガティブな結果を生じたと記されている。

0007

3)共存工程
アグロバクテリウムを植物組織に接種して共存させる工程である。アグロバクテリウムを介したソルガムの形質転換では、共存培地組成としてLS無機塩を1倍量含むMS培地が使われている(非特許文献5)。

0008

4)カルス形成工程
カルス形成工程は、植物組織を脱分化させる工程である。

0009

ソルガムの組織培養工程ではフェノール化合物が過剰に産生し、カルス形成が阻害される傾向がある(Cai et al. 1987:非特許文献8)。これに対し、MS培地にL−プロリン、L−アスパラギンを添加することによって、エンブリオジェニックカルスの増殖を促進すること、およびソルガム培養の阻害要因となるフェノール産生を抑制することが示された(Elkonin et al. 1995:非特許文献9)。また、カルス形成培地硝酸イオン濃度リン酸イオン濃度を増加することによって、エンブリオジェニックカルスの誘導を促し、さらに得られたカルスからの再分化効率も向上することが報告されている(Elkonin et al. 2000:非特許文献10)。ポリビニルポリピロリドンPVPP)のカルス形成培地への添加が、アグロバクテリウム接種時のダメージによる細胞褐変を軽減するという報告がある(Gao et.al. 2005:非特許文献11)。

0010

また、実際にソルガムを形質転換した事例としては、カルス形成培地に添加する植物成長調節物質に6−ベンジルアミノプロリン(BAP)を使用することによって、形質転換効率が改善したという報告もある(Wu et al. 2014:非特許文献12)。

0011

5)再分化工程
再分化培地に添加する植物成長調節物質の種類と濃度を最適化する試みも行われ、1 mg/Lナフタレン酢酸(NAA)、1 mg/Lインドール−3−酢酸(IAA)、1 mg/Lインドール−3−酪酸(IBA)、1 μmol/L硫酸銅を含むMS培地を用いることによって、発根培地移植後の再分化植物からの発根が促進されることが報告されている(Guoquan et al. 2013:非特許文献13)。

0012

以上のように、アグロバクテリウムを介したソルガムの形質転換方法は、改良が行われ、最初の報告で2.1%(非特許文献5)であった形質転換効率が、33%(非特許文献12)まで上昇してきた。しかしながら、その形質転換効率は、イネやトウモロコシと比較しても、未だ十分に高いとはいえない。

0013

2.アグロバクテリウム属細菌を介した植物の形質転換方法における共存培地の改良
アグロバクテリウムを介した形質転換方法において、トウモロコシでは、N6培地希釈した共存培地を用いることによって形質転換効率が向上したという報告が複数なされている。例えば、Duらは、アグロバクテリウムを接種したトウモロコシ(A188)未熟胚のうち、GUS遺伝子の一過性発現が確認された未熟胚の割合が、N6無機塩を1倍量含むN6培地では72%であったのに対し、主要無機塩を50%、30%、10%に希釈したN6培地ではいずれも90%以上に増加することを示した(Du et al. 2010:非特許文献14)。

0014

また、別の報告では、主要無機塩を10%、50%に希釈したN6培地からなるアグロバクテリウム懸濁培地、および共存培地を使用することによって、N6無機塩を1倍量含むN6培地を用いた時のトウモロコシ(Hi-II)における供試カルス当たりの形質転換効率が0%であったのに対し、それぞれ4.0%、17.5%に向上することが確認された(Vega et al. 2008:非特許文献15)。

0015

コムギにおいては、無機塩を10%に希釈したMS培地からなるアグロバクテリウム懸濁培地、および共存培地を用いた場合、MS無機塩を1倍量含むMS培地からなる上記培地を用いるよりも著しくGUS遺伝子の一過性発現を示した未熟胚の割合が高かったことが報告されている(Cheng et al. 1997:非特許文献16)。このように「低無機塩培地は、数種の主要作物へのアグロバクテリウムによる導入遺伝子の一過性発現や形質転換効率向上のために一般的に用いられている。」(Vega et al. 2008:非特許文献15)と考えられている。

0016

反対に、共存培地ではないが、タバコにおいて、アグロバクテリウムを接種する前の植物材料を前培養する培地に、硝酸アンモニウム濃度を増加させた培地を用いることによって、導入遺伝子の一過性発現や形質転換効率が向上したことが報告されている(Boyko et al. 2009:非特許文献17)。また、アグロバクテリウムを接種する前の植物組織を前培養する培地に、塩化カリウム希土類元素塩化物を添加することにより、シロイヌナズナやタバコの形質転換効率が向上したという報告がある(Boyko et al. 2011:非特許文献18)。

0017

共存培地に、抗酸化物質や銅を添加することによって、導入遺伝子の一過性発現を促進させる方法も報告されている。トウモロコシでは、抗酸化物質であるL−システインジチオトレイトール(DTT)をMS培地、N6培地、LS培地、D培地それぞれに添加した結果、非添加区に比べて0.4g/L L−システインと0.15g/L DTTを添加した試験区において導入遺伝子の一過性発現および形質転換効率が著しく向上した(非特許文献14)。

0018

3.植物組織の培養に用いられる培地
上記のMS培地(LS培地)以外にも、植物組織の培養にさまざまな組成の培地が開発され、利用されている。

0019

N6培地は、主にイネの葯培養培地として用いられている。B5培地は、液体培養用として開発されたが、固体培地としても多くの植物組織培養に用いられている。R2培地は、B5培地を基本としてイネの懸濁培養細胞用に開発された培地である。CC培地は、トウモロコシのプロトプラストからのカルス形成培地として考案された培地である。

0020

下記の表は、公知の基本培地であるMS培地、LS培地、N6培地、B5培地、R2培地、CC培地について、窒素源としてのNH4+とNO3−の合計濃度、および各種無機イオンマグネシウムイオンカリウムイオンカルシウムイオン、およびナトリウムイオン)の濃度をまとめたものである。

0021

先行技術

0022

Hiei et al. (1994) The Plant Journal 6:271-282.
Ishida et al. (1996) Nature Biotechnology 14:745-750.
Cheng et al. (1997)Plant Physiol. 115: 971-980.
Tingay et al.(1997) Plant J. 11: 1369-1376.
Zhao et. al. (2000) Plant Molecular Biology 44:789-798.
Hiei et al. (2006) Plant Cell Tissue Organ Cult 87: 233-243.
Gurel et.la (2009) Plant Cell Rep 28(3): 429-444.
Cai et al. (1987) Plant Cell Tissue Organ Cult. 9:245-252.
Elkonin et al. (1995) Maydica 40(2):153-157.
Elkonin et al. (2000) Plant Cell Tissue Organ Cult 61(2):115-123.
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発明が解決しようとする課題

0023

本発明は、従来公知のアグロバクテリウム法と比較して効率の高い、ソルガム属の植物へ遺伝子導入を行う方法、および、ソルガム属の形質転換植物を作成する方法を提供する事を目的とする。

課題を解決するための手段

0024

本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究に努めた結果、ソルガム属の植物の植物材料を調製する工程、当該植物材料の組織へアグロバクテリウム菌を接種する工程および/または共存工程において、窒素源の濃度、ならびに/またはマグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンおよびナトリウムイオンから選択される無機イオンの濃度を、LS無機塩を1倍量含む培地よりも高めた培地を用いることにより、ソルガム属の植物において遺伝子導入効率が向上することを見いだした。

0025

本発明は、好ましくは以下に記載するような態様により行われるが、これらに限定されるものではない。
[態様1]
ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
(i)上記植物材料を調製する工程;
(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および
(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;
を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、マグネシウムイオンの濃度を高めた培地であって、マグネシウムイオン濃度が4.0mM以上100mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。
[態様2]
ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
(i)上記植物材料を調製する工程;
(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および
(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;
を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源の濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mMより多く270mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。
[態様3]
ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
(i)上記植物材料を調製する工程;
(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および
(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;
を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源および/またはマグネシウムイオンの濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mM以上270mM以下であり、マグネシウムイオン濃度が2.6mM以上100mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。
[態様4]
ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
(i)上記植物材料を調製する工程;
(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および
(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;
を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源および/またはカリウムイオンの濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mM以上270mM以下であり、カリウムイオン濃度が24mM以上65mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。
[態様5]
ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
(i)上記植物材料を調製する工程;
(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および
(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;
を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源および/またはカルシウムイオンの濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mM以上270mM以下であり、カルシウムイオン濃度が5.2mM以上10mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。
[態様6]
ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
(i)上記植物材料を調製する工程;
(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および
(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;
を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源および/またはナトリウムイオンの濃度を高めた培地であって、NH4+とNO3−の合計濃度が60mM以上270mM以下であり、ナトリウムイオン濃度が0.6mM以上200mM以下である前記培地を用いることを特徴とする、前記方法。
[態様7]
少なくとも(iii)の共存工程において、窒素源の濃度、ならびに/または、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンおよびナトリウムイオンから選択される無機イオンの濃度を高めた培地を用いることを特徴とする、態様1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
[態様8]
ソルガム属(Sorghum)の植物の、形質転換植物の作成方法であって、
態様1ないし7のいずれか1項に記載の方法にしたがって工程(i)−(iii)を行い、次いで、
(iv)共存工程で培養した組織をレスティング培地で培養するレスティング工程;および
(v)上記組織を再分化培地で再分化させる工程;
を含む、前記方法。
[態様9]
以下の形質転換向上処理
a)加熱処理
b)遠心処理;
c)加圧処理
d)(ii)および/または(iii)の工程において、銅イオンを含む金属塩の濃度を高めた培地を用いる処理;および
e)(ii)および/または(iii)の工程において、硝酸銀の濃度を高めた培地を用いる処理;
のうちの少なくとも1つを行う、態様1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
[態様10]
上記(iv)レスティング工程と、(v)再分化工程の間に選抜工程を含む、態様8または9に記載の方法。
[態様11]
アグロバクテリウム菌が、LBA4404、EHA101、EHA105、AGL0、AGL1、およびC58C1からなる群より選択される菌である、態様1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
[態様12]
ソルガム属の植物がソルガム(Sorghum bicolor)である、態様1ないし11のいずれか1項に記載の方法。

発明の効果

0026

本発明により、高い効率でソルガム属の植物の遺伝子導入を行うことが可能となった。また、それにより高い効率でソルガム属の形質転換植物を作成することができる。本発明の方法により、ソルガムの形質転換した植物体を得るためのコストを削減することも可能となる。

0027

以下に本発明の構成を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本明細書で特段に定義されない限り、本発明に関連して用いられる科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。

0028

本発明は、ソルガム属(Sorghum)の植物の、植物材料の組織へ、遺伝子導入を行う方法であって、
(i)上記植物材料を調製する工程;
(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;および
(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;
を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地を用いることを特徴とする、前記方法を提供する。

0029

さらに本発明は、ソルガム属の植物の、形質転換植物の作成方法であって、(i)上記植物材料を調製する工程;
(ii)当該植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程;
(iii)当該アグロバクテリウム菌を接種した組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程;
(iv)共存工程で培養した組織をレスティング培地で培養するレスティング工程;および
(v)上記組織を再分化培地で再分化させる工程;
を行うことを含み、ここで、上記(i)、(ii)および/または(iii)の工程において、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地を用いることを特徴とする、前記方法を提供する。

0030

本発明において使用可能な植物材料が由来する植物はソルガム属の植物である。なお、ソルガム属はモロコシ属と呼ばれることもあるが、本明細書では「ソルガム属」の呼称統一して記載する。本明細書における「ソルガム属」の植物の例として、限定されるものではないが、ソルガム(Sorghum bicolor)を挙げることができる。

0031

本発明においてソルガム(S. bicolor)はとりわけ好適である。なお、本明細書において「ソルガム(S. bicolor)」と記載した場合には、「ソルガム属」の中で「ソルガム」という特定の植物種を示すものとする。またソルガム(S. bicolor)は、モロコシタカキビ、高粱(コウリャン)とも呼ばれることがあるがいずれも同じ植物種であり、本発明において使用可能である。

0032

本発明において使用可能な「植物材料」は、非限定的に、アグロバクテリウム法による植物の遺伝子導入または形質転換に供するためのソルガム属の植物の細胞、葉、根、、実、その他いずれかの部位の植物組織、未熟胚、完熟種子、カルスもしくは不定胚様組織(以下、本明細書においてカルス等、または単にカルスという)、または完全な植物体など植物のあらゆる態様を包含する。本発明の方法に用いる植物材料の形態として好ましいのは、未熟胚、完熟種子、およびそれらから誘導されるカルスであり、最も好ましいのは未熟胚である。

0033

本明細書において「未熟胚」とは、受粉後の登熟過程にある未熟種子のをいう。また、本発明の方法に供される未熟胚のステージ熟期)は特に限定される物ではなく、受粉後いかなる時期に採取されたものであってもよいが、受粉後2日以降、好ましくは受粉後7から24日後のものが好ましい。未熟胚は取り出した当日使用することができるが、前培養した未熟胚であってもよい。

0034

本明細書において「完熟種子」とは、受粉後の登熟過程が終了して種子として完熟しているものをいう。

0035

本明細書において「カルス」とは、無秩序に増殖する未分化状態細胞塊をいう。カルスを得るためには、植物組織の分化した細胞をオーキシン(例えば、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D))、サイトカイニン等の植物成長調節物質を含む培地(脱分化培地という)において培養して得ることができる。このカルスを得るための処理を脱分化処理といい、またこの過程を脱分化過程という。

0036

本発明の方法において、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地とは、当業者によく知られているMS(LS)基本培地に含まれる窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度と比較して、高濃度の窒素源および/または無機イオンを含む培地をいう。高濃度とは、当該MS(LS)基本培地(Zhao, et al., 2000:非特許文献5)に含まれる窒素源および/または無機イオンの濃度よりも高いことをいう。具体的には、MS(LS)基本培地は窒素源としてNH4+とNO3−を含んでおり、それらの合計濃度は60.0mMである。また、MS(LS)基本培地は、1.5mMのマグネシウムイオン、20.0mMのカリウムイオン、3.0mMのカルシウムイオンを含む。MS(LS)基本培地はナトリウムイオンを含まない。これらMS(LS)基本培地に含まれる窒素源および/または無機イオンの濃度よりも高濃度の窒素源および/または無機イオンを含む場合には、その培地は窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地である。

0037

本発明の方法において、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地は、上記(i)の植物材料の調製工程、(ii)のアグロバクテリウム菌の接種工程および(iii)の共存工程の少なくとも1の工程において用いられる。好ましくは、当該培地は少なくとも(iii)の共存工程において用いられる。

0038

一態様において、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地は、マグネシウムイオンの濃度を高めた培地である。マグネシウムイオンの濃度を高めた培地におけるマグネシウムイオン濃度は、4.0mM以上100mM以下、好ましくは4.8mM以上90.4mM以下である。あるいは、この場合においてマグネシウムイオン濃度の下限は4.0mM以上、4.8mM以上、および7.5mM以上から選択してもよく、そしてその上限は100mM以下、90.4mM以下、80mM以下、70mM以下、60mM以下、50mM以下、45.3mM以下、40.0mM以下から選択してもよい。マグネシウムイオン濃度の下限および上限は、上記の数値からそれぞれ適宜選択して組み合わせることができる。

0039

別の態様において、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地は、窒素源の濃度を高めた培地である。窒素源の濃度を高めた培地におけるNH4+およびNO3−の合計濃度は60mMより多く270mM以下、好ましくは62mM以上270mM以下である。あるいは、この場合においてNH4+およびNO3−の合計濃度の下限は、60mMより多い、62mM以上、65mM以上、70mM以上、75mM以上、および80mM以上から選択してもよく、そしてその上限は270mM以下、263mM以下、250mM以下、225mM以下、200mM以下、175mM以下、150mM以下、125mM以下、115mM以下および112mM以下から選択してもよい。NH4+およびNO3−の合計濃度の下限および上限は、上記の数値からそれぞれ適宜選択して組み合わせることができる。

0040

さらなる態様において、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地は、窒素源の濃度、および/または、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンもしくはナトリウムイオンの濃度を高めた培地である。

0041

窒素源の濃度、および/または、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンもしくはナトリウムイオンの濃度を高めた培地におけるNH4+およびNO3−の合計濃度は60mM以上270mM以下、好ましくは62mM以上112mM以下である。あるいは、この場合においてNH4+およびNO3−の合計濃度の下限は、60mM以上、62mM以上、65mM以上、70mM以上、75mM以上、および80mM以上から選択してもよく、そしてその上限は270mM以下、263mM以下、250mM以下、225mM以下、200mM以下、175mM以下、150mM以下、125mM以下、115mM以下および112mM以下から選択してもよい。上記のNH4+およびNO3−の合計濃度の下限および上限は、上記の数値の群からそれぞれ適宜選択して組み合わせることができる。

0042

窒素源の濃度および/またはマグネシウムイオンの濃度を高めた培地におけるマグネシウムイオン濃度は、2.6mM以上100mM以下、好ましくは4.8mM以上90.4mM以下である。あるいは、この場合においてマグネシウムイオン濃度の下限は2.6mM以上、4.0mM以上、4.8mM以上、および10.0mM以上から選択してもよく、そしてその上限は100mM以下、90.4mM以下、80mM以下、70mM以下、60mM以下、50mM以下、45.3mM以下から選択してもよい。上記のマグネシウムイオン濃度の下限および上限は、上記の数値の群からそれぞれ適宜選択して組み合わせることができる。

0043

窒素源の濃度および/またはカリウムイオンの濃度を高めた培地におけるカリウムイオン濃度は24mM以上65mM以下、好ましくは24mM以上60mM以下である。あるいは、この場合においてカリウムイオン濃度の下限は、24.0mM以上、27.0mM以上、および30mM以上から選択してもよく、そしてその上限は70mM以下、65mM以下、64.1mM以下、60mM以下、55mM以下、50mM以下、および45mM以下から選択してもよい。上記のカリウムイオン濃度の下限および上限は、上記の数値の群からそれぞれ適宜選択して組み合わせることができる。

0044

窒素源の濃度および/またはカルシウムイオンの濃度を高めた培地におけるカルシウムイオン濃度は、5.2mM以上10mM以下、好ましくは5.2mM以上9.6mM以下である。あるいは、この場合においてカルシウムイオン濃度の下限は、5.2mM以上、5.5mM以上、および6.0mM以上から選択してもよく、そしてその上限は10mM以下、9.6mM以下、9.0mM以下、8.0mM以下、7.5mM以下、7.0mM以下、および6.9mM以下から選択してもよい。上記のカルシウムイオン濃度の下限および上限は、上記の数値の群からそれぞれ適宜選択して組み合わせることができる。

0045

窒素源の濃度および/またはナトリウムイオンの濃度を高めた培地におけるナトリウムイオン濃度は、0.6mM以上200mM以下、好ましくは0.6mM以上150mM以下、さらに好ましくは40.0mM以上50.0mM以下である。あるいは、この場合においてナトリウムイオン濃度の下限は0.6mM以上、1.0mM以上、4.0mM以上、10.0mM以上、20.0mM以上、30.0mM以上および40.0mM以上から選択してもよく、そしてその上限は200mM以下、175mM以下、150.1mM以下、150mM以下、125mM以下、100mM以下、90.1mM以下、90mM以下、80mM以下、70mM以下、60mM以下、および50mM以下から選択してもよい。上記のナトリウムイオン濃度の下限および上限は、上記の数値の群からそれぞれ適宜選択して組み合わせることができる。

0046

以下、上記の本発明の方法の各工程についてさらに詳しく説明する。

0047

1.本発明の各工程について
本発明の遺伝子導入方法および形質転換植物の作成方法は、アグロバクテリウム属細菌を利用する。特に明記する工程以外は、公知のアグロバクテリウム属細菌を利用した遺伝子導入方法、形質転換方法の各工程に従って行うことが可能である。

0048

(i)植物材料を調製する工程
工程(i)においては、未熟胚、完熟種子などの植物材料を植物体または種子等から取り出す、または必要に応じてそれらから誘導されるカルスを得ることにより、遺伝子導入または形質転換に好適な植物材料を調製する。「植物材料」の定義については上述のとおりである。植物材料の調製は、ソルガム属植物の植物体から組織(これには未熟胚、完熟種子等が含まれる)を単離・採取することにより行う。また、単離・採取した組織からカルスを誘導して植物材料を調製してもよい。所望によりさらに、植物材料をアグロバクテリウムに感染させる前に培養してもよい。

0049

本発明において使用するソルガム属の植物の植物材料の大きさは特に限定される訳ではないが、例えば、未熟胚の場合、1.0−3.0mmの大きさの物を用いることができる。

0050

工程(i)においては、上述の通り、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地を用いることができる。

0051

また、工程(i)においては、形質転換効率を向上させるための様々な処理がなされてもよい。このような処理としては、例えば熱処理、遠心処理、熱処理および遠心処理、ならびに加圧処理などがあげられる。このような形質転換効率を上昇させるための処理は、下記項目2.において詳細に述べる。

0052

(ii)植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する工程
工程(ii)においては、工程(i)で調製したソルガム属植物の植物材料の組織にアグロバクテリウム菌を接種する。

0053

本明細書で使用する「接種」とは、アグロバクテリウム菌を植物の組織に接触させることをいい、当該技術分野においては種々のアグロバクテリウム菌接種方法が公知である。当該方法としては、例えば、アグロバクテリウム菌を懸濁した液体培地に植物組織を加える方法、共存培地上の植物組織にアグロバクテリウム菌の懸濁液を直接滴下する方法、植物組織中にアグロバクテリウム菌の懸濁液を注入する方法、およびアグロバクテリウム菌の懸濁液中に植物組織を浸漬し減圧する方法があげられる。しかしながら、本発明の方法におけるアグロバクテリウム菌の接種方法は、これらの方法に限定されない。

0054

当該アグロバクテリウム菌を接種するにあたり、アグロバクテリウム菌による形質転換効率を改善するために、例えば、アセトシリンゴン界面活性剤多孔性セラミックス糖の種々の添加剤をアグロバクテリウム菌の懸濁液中に含ませることが可能である。

0055

本発明に使用可能なアグロバクテリウム菌は特に限定されず、アグロバクテリウムによる形質転換法に使用可能な、公知のいずれのアグロバクテリウム菌であってよい。本発明の好ましい態様において、アグロバクテリウム菌は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)、例えばLBA4404、EHA101、EHA105、AGL0、AGL1およびC58C1等であるが、これらに限定されない。

0056

アグロバクテリウム菌は、アグロバクテリウム菌内のプラスミドのT−DNAの中に挿入された遺伝子を植物のゲノム中に導入する性質を有することが公知である。そのため、本発明で使用可能なアグロバクテリウム菌は、植物内で発現させることを意図する遺伝子をT−DNA中に挿入したプラスミドを有する。そして、当該プラスミドを有するアグロバクテリウム菌を植物組織に接種することにより植物を形質転換することが可能である。これにより、組織中の植物細胞に好ましい形質が付与される。本発明において使用可能なアグロバクテリウム菌用のプラスミドは、例えば、pLC41、pSB131、U0009B、U0017S、pSB134、pNB131、およびpIG121Hm等があげられるが、これらに限定されるわけではない。

0057

工程(ii)においては、上述の通り、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地を用いることができる。

0058

また、工程(ii)においては、形質転換効率を向上させるための様々な処理がなされてもよい。このような処理としては、例えば熱処理、遠心処理、熱処理および遠心処理、加圧処理、銅イオンを含む金属塩の濃度を高めた培地を用いる処理、ならびに硝酸銀の濃度を高めた培地を用いる処理、などがあげられる。このような形質転換効率を上昇させるための処理は、下記項目2.において詳細に述べる。

0059

(iii)共存工程
工程(iii)においては、工程(ii)においてアグロバクテリウム菌を接種した植物材料の組織を、該アグロバクテリウム菌の存在下で培養する、共存工程を行う。本工程は、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織を、アグロバクテリウム菌の共存下にて培養することにより、アグロバクテリウム菌から植物細胞へのDNAの導入を確実にする工程である。

0060

工程(iii)で使用される培地は、本明細書では「共存培地」という。共存培地は、植物細胞を通常培養するために通常使用されるものでもよく、例えばLS無機塩類(Linsmaier, E., and Skoog, F., (1965) Physiol. Plant, 18:100-127)を基本とする培地等が挙げられる。好ましくは、工程(iii)においては、上述の通り、窒素源の濃度および/または無機イオンの濃度を高めた培地を、共存培地として用いることができる。

0061

また、本発明で用いる共存培地中に、オーキシン類として2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、ピクローラム、ダイカンバまたは他のオーキシン類を添加することができる。あるいは、カイネチンや4PUのようなサイトカイニンなど、他の植物成長調節物質を添加することもできる。

0062

工程(iii)における「培養」とは固化した共存培地の上または液体状の共存培地の中などに植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間で生育させることをいう。本発明において、培地の形態は、培養成分が植物組織に十分供給されるものであれば特に限定されない。共存培地の固化は、当該技術分野において公知の固化剤を添加することにより行うことができ、そのような固化剤としては、例えばアガロースが知られている。本発明においては、このような固化した共存培地を好適に使用することができる。

0063

工程(iii)における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは18℃−35℃、さらに好ましくは25℃で行われる。また、工程(iii)の培養は好ましくは暗所で行われるが、これに限定されない。工程(iii)の培養期間もまた適宜選択可能であり、好ましくは1日ないし7日、より好ましくは2日ないし3日である。

0064

植物材料として未熟胚が用いられる場合、本発明の工程(iii)の共存培養において未熟胚は胚盤側を上向きに、胚軸側を培地に接するように置床して培養してもよく、または未熟胚は胚軸側を上向きに、胚盤側を下向きに培地に接するように置床して培養してもよい。好ましくは、未熟胚は胚盤側を上向きに、胚軸側を培地に接するように置床して共存培養する。

0065

また、工程(iii)においては、形質転換効率を向上させるための様々な処理がなされてもよい。このような処理としては、例えば、遠心処理、加圧処理、銅イオンを含む金属塩の濃度を高めた培地を用いる処理、および硝酸銀の濃度を高めた培地を用いる処理、などがあげられる。このような形質転換効率を上昇させるための処理は、下記項目2.において詳細に述べる。

0066

(iv)レスティング工程
本発明の形質転換植物の作成方法においては、上記共存工程の後にさらにレスティング工程、再分化工程を経て、形質転換植物を作成する。

0067

工程(iv)のレスティング工程においては、共存工程後に植物組織をレスティング培地で培養する。本工程は、共存工程の後に植物細胞からアグロバクテリウム菌を除くとともに植物細胞の増殖を行う工程である。

0068

工程(iv)で使用される培地は、本明細書中では「レスティング培地」という。レスティング培地は、植物細胞を培養するために通常使用されるものでよく、例えば、LS無機塩類やN6無機塩類(Chu, C.-C., (1978) Proc. Symp. Plant Tissue Culture., Peking: Science Press, pp. 43-50)を基本とする培地等があげられる。なお本工程におけるレスティング培地は、好ましくは抗生物質を含む。レスティング培地中に含まれる抗生物質は、下記の選抜工程で用いる選抜用の抗生物質とは異なり、アグロバクテリウムの除菌を目的とする。限定される訳ではないが、抗生物質として、好ましくはセフォタキシムおよび/またはカルベニシリンチメンチン等を使用することができる。

0069

工程(iv)におけるレスティング培地中には、好ましくは、植物成長調節物質を含む。植物成長調節物質としては好ましくは、オーキシン類に属するピクローラムおよび/または2,4−D、ダイカンバが含まれる。オーキシン類は一般に植物組織を脱分化させる作用を有するために、工程(iv)および所望により続いて行われる選抜工程において、ほとんどの植物組織は一部または全部が脱分化組織(カルス)となる。本明細書で使用する、「脱分化組織」または「カルス」の用語は、分化した植物組織の一部(外植片)をオーキシンおよびサイトカイニン等の植物成長調節物質を含む培地で培養することにより得られる組織で、元来の植物組織としての形態を有さない無定形で未分化状態の細胞塊をいう。したがって、脱分化組織の状態でレスティング工程を開始する場合、および分化している植物組織がレスティング工程中または続く選抜工程中にすべてが脱分化および一部が脱分化する場合等の、脱分化組織が関係するいかなる態様も本発明の範囲内である。

0070

また、レスティング培地は、好ましくは糖質を含む。糖質源としては、シュークロースグルコースマルトースなどの糖や、マンニトールソルビトールなどの糖アルコールを用いることができる。ソルガム属ではないが、イネではシュークロース濃度やマンニトール、ソルビトール濃度を変えることによってカルス形成、および再分化効率が改善したとの報告がある(Kavi Kishor(1987)Plant Science 48:189-194)。ソルガムにおいても適宜、糖質源の種類と濃度を変えることができる。

0071

工程(iv)における「培養」とは、固化したレスティング培地の上または液体状のレスティング培地の中などに植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間で生育させることをいう。本発明において、培地の形態は、培地成分が植物組織に十分供給されるものであれば特に限定されない。レスティング培地の固化は、当該技術分野において公知の固化剤を添加することにより行うことができ、そのような固化剤としては、例えばアガロース等が知られている。工程(iv)における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは20℃−35℃、さらに好ましくは25℃で行われる。また、本工程の培養は好ましくは暗所で行われるが、これに限定されない。本工程の培養期間もまた適宜選択可能であり、好ましくは1日−28日、より好ましくは7日−21日である。

0072

また、工程(iv)においては、形質転換効率を向上させるための様々な処理がなされてもよい。このような処理としては、例えば、遠心処理、加圧処理、L−プロリン、および/またはL−アスパラギンを添加した培地(Elkonin, et al., 1995:非特許文献9)、硝酸イオン濃度とリン酸イオン濃度を増加させた培地(Elkonin, et al., 2000:非特許文献10);ポリビニルポリピロリドン(PVPP)を添加した培地(Gao, et al., 2005:非特許文献11);ならびに、6−ベンジルアミノプロリン(BAP)を添加した培地(Wu, et al., 2014:非特許文献12);をレスティング培地として用いること、などがあげられる。このような形質転換効率を上昇させるための処理は、下記項目2.において詳細に述べる。

0073

さらに、レスティング工程(iv)と再分化工程(v)の間に選抜工程が含まれていてもよい。選抜工程は、アグロバクテリウム菌による植物の形質転換方法において一般的に行われている工程である。本発明の形質転換植物の作製方法において選抜工程は必須ではない。例えば、後に述べる形質転換向上処理をした場合には、選抜工程を経なくても目的とする形質転換体を得ることができるからである。なお、選抜工程を行う場合、以下の記載は例示のためのものであり、本発明は以下の記載により限定されるものではない。

0074

選抜工程は、上記工程により得られた組織から、形質転換体を導入遺伝子の有無により選抜する工程である。選抜工程で使用される培地は、本明細書中では「選抜培地」という。選抜培地として使用可能な培地は、例えば、LS無機塩類やN6無機塩類を基本とする培地、例えば具体的にはMS培地等があげられる。

0075

一般的なアグロバクテリウム菌を用いた形質転換法によれば、選抜培地中には、オーキシン類、好ましくは2,4−Dおよび/またはピクローラム、ダイカンバが添加される。本発明においても、選抜培地が植物成長調節物質を含むのは、好ましい態様である。本選抜工程で使用されるオーキシン類は特に限定されず、好ましくは2,4−Dである。さらに、必要に応じて、種々の添加物を加えることが可能である。

0076

形質転換植物の選抜は、例えば、適当な選抜薬剤を含む選抜培地で、上記共存工程および/またはレスティング工程を経た植物を培養し、選抜薬剤に対する耐性の有無により行うことができる。選抜工程に使用可能な選抜薬剤は、当該技術分野で通常使用されるものを用いることが可能である。例えば、選抜薬剤としては、抗生物質または除草剤を使用可能である。抗生物質としては、例えば、ハイグロマイシンカナマイシン、またはブラストサイジンS等が使用可能である。さらに、除草剤としては、例えば、フォスフィノスラシンビアラフォスまたはグリホセート等が使用可能である。

0077

本選抜工程を行うためには、アグロバクテリウム菌中のT−DNA中に挿入したDNAは、植物に発現させることを意図する遺伝子のみならず、例えば、選抜薬剤に対する耐性遺伝子等を含むことが必要である。このような選抜薬剤に対する耐性遺伝子は当該技術分野においては公知である。選抜工程において、例えばハイグロマイシンを含む選抜培地において選抜を行う場合、植物には、植物内で発現させることを意図する遺伝子に加え、ハイグロマイシン耐性遺伝子が導入されていることが必要である。

0078

あるいは、形質転換植物の選抜は、植物細胞の糖要求性に基づいて行うことが可能である。植物細胞が利用できる糖にはシュークロース、グルコースなどがあるが、マンノースは利用できないことが知られている。したがって、マンノースのみを炭素源とする培地で植物組織を培養すると、利用できる糖がないために植物組織は枯死する。糖要求性に基づく選抜はこの原理を利用するものである。即ち、この選抜方法を利用するためには、アグロバクテリウム菌中のT−DNA中に挿入したDNAは、植物に発現させることを意図する遺伝子のみならず、リン酸化マンノースイソメラーゼ(phosphomannose isomerase:PMI)遺伝子を含むことが必要となる。ここで、PMI遺伝子を導入された植物細胞は、マンノースを炭素源として利用できるようになる。したがって、上記のようなアグロバクテリウム菌により形質転換された植物組織のみが、マンノースのみを炭素源とする培地で生育することが可能となり、これにより形質転換植物組織のみを選抜することが可能となる(Negrotto, D., et al., (2000) Plant Cell Reports, 19:798-803)。このような方法は、他の糖についても行うことができる。例えば、キシロースイソメラーゼ遺伝子を導入された植物細胞は炭素源としてキシロースを利用することが可能となるため、このような方法に適用可能である。

0079

また、容易に検出可能な遺伝子をスクリーニング指標として導入し、当該遺伝子の発現の有無により選抜することも可能である。このようなスクリーニングの指標となる遺伝子としては、GFP遺伝子等があげられる。これらの遺伝子を発現する細胞・組織を検出する方法は当該技術分野において公知である。

0080

選抜工程は、培地の成分組成を変更して、複数回繰り返して行うことも可能である。例えば、複数回の選抜工程では、選抜薬剤の濃度を各選抜工程で上昇させることにより、薬剤選抜の確実性増し形質転換植物体を得られる可能性を上昇させることが可能となる。本選抜工程は、好ましくは少なくとも1回、より好ましくは2回行われる。また、複数回選抜工程を行う場合には、選抜薬剤を含む培地で培養した組織のうち増殖した部分を切り取り、当該増殖部分のみを次の選抜工程に供することにより、効率よく形質転換組織を獲得することも可能である。

0081

選抜工程における「培養」とは、固化した選抜培地の上または液体状の選抜培地の中などに植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間にて生育させることをいう。本発明において、培地の形態は、培地成分が植物組織に十分供給されるものであれば特に限定されない。選抜培地の固化は、上記のように例えばアガロース等により行うことが可能である。選抜工程における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは20℃−35℃、さらに好ましくは25℃で行われる。また、本工程の培養は好ましくは暗所で行われるが、これに限定されない。本工程の培養期間もまた適宜選択可能であり、例えば、2回選抜工程が行われる場合には、1次選抜は1週間、そして2次選抜は2週間の計3週間行われる。また、複数回の選抜工程全体では好ましくは2−6週間、より好ましくは3−5週間行われる。また、複数回の選抜を行う場合には、各回毎に培養期間、温度および明暗条件を変更することも可能である。

0082

(v)再分化工程
工程(v)においては、レスティング培地で培養した組織を、必要ならば選抜した後に、再分化培地で再分化させる工程を行う。工程(v)で使用される培地は、本明細書中では「再分化培地」という。再分化培地には、オーキシンやサイトカイニンを適宜添加してもよい。

0083

再分化培地としては、例えば、LS無機塩類やN6無機塩類を基本とする培地、例えば具体的にはMS培地等があげられる。

0084

再分化培地は選抜薬剤を含んでもよい。再分化工程(v)において使用可能な選抜薬剤は、選抜工程において定義したものと同様である。しかしながら、再分化工程において必ずしも選抜工程で用いた選抜薬剤と同じ選抜薬剤を用いなくともよい。その場合には、植物にはアグロバクテリウム菌から、2種類以上の選抜薬剤に対する耐性遺伝子が導入されている必要がある。

0085

本発明における「再分化」とは、全部または一部が脱分化していた植物組織が、再び元の植物組織または植物体の性質を獲得することをいう。共存工程および/または選抜工程中にオーキシン類を使用すると、植物組織の全部または一部が脱分化する。したがって、再分化工程に供することにより、脱分化組織が再分化し、完全な形質転換植物体を得ることが可能となる。

0086

再分化工程における「培養」とは、固化した再分化培地の上または液体状の再分化培地の中などに植物組織を置床し、適切な温度、明暗条件および期間にて生育させることをいう。本発明において、培地の形態は、培地成分が植物組織に十分供給されるものであれば特に限定されない。再分化培地の固化は、上記のように例えばアガロース等により行うことが可能である。再分化工程における培養温度は、適宜選択可能であり、好ましくは20℃−35℃、さらに好ましくは25℃で行われる。また、再分化工程の培養は好ましくは16−24時間/日の照明下で行われるが、これに限定されない。再分化工程の培養期間もまた適宜選択可能であり、好ましくは7日−56日、より好ましくは14日−35日である。

0087

また、再分化工程(v)においては、形質転換効率を向上させるための様々な処理がなされてもよい。このような処理としては、例えば、1mg/L NAA、1mg/L IAA、1mg/L IBA、1μmol/L硫酸銅を含むMS培地(非特許文献13)や0.5mg/Lゼアチン、 1mg/Lインドール−3−酢酸(IAA)、0.1mg/L チジアズロンを含む改良MS培地(非特許文献12)を再分化培地として用いることなどがあげられる。このような形質転換効率を上昇させるための処理は、下記項目2.において詳細に述べる。

0088

2.形質転換向上処理
また本発明の遺伝子導入方法と形質転換植物の作成方法において、以下に述べる形質転換向上処理を行ってもよい。本明細書において、「形質転換向上処理」とは、形質転換効率の向上を達成するための処理をいう。また、本明細書において「形質転換向上処理」とは、遺伝子導入効率を向上させる処理、カルス形成率を向上させる処理、および/または、再分化効率を向上させる処理を包含する概念である。

0089

このような形質転換向上処理としては、限定されるものではないが、例えば以下のa)ないしk)のいずれか1つの処理、あるいはこれらの組み合わせが含まれる。

0090

a)熱処理;
b)遠心処理;
c)加圧処理;
d)熱処理及び遠心処理;
e)アグロバクテリウム菌の接種時および/または共存工程において銅イオンを含む金属塩の濃度を高めた培地を用いる処理;
f)アグロバクテリウム菌の接種時および/または共存工程において硝酸銀の濃度を高めた培地を用いる処理;
g)レスティング工程において、L−プロリンおよび/またはL−アスパラギンを添加した培地を用いる処理;
h)レスティング工程において、硝酸イオン濃度とリン酸イオン濃度を増加させた培地を用いる処理;
i)レスティング工程において、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)を添加した培地を用いる処理;
j)レスティング工程において、6−ベンジルアミノプロリン(BAP)を添加した培地を用いる処理;ならびに
k)再分化工程において、1mg/Lナフタレン酢酸(NAA)、1mg/Lインドール−3−酢酸(IAA)、1mg/Lインドール−3−酪酸(IBA)、1μmol/L硫酸銅を含むMS培地を用いる処理。

0091

l)再分化工程において、0.5mg/Lゼアチン、 1mg/Lインドール−3−酢酸(IAA)、0.1mg/L チジアズロンを含む改良MS培地を用いる処理。

0092

上記a)ないしk)の処理のうち、a)ないしe)はいずれも遺伝子導入効率を向上させる効果があり、b)、e)ないしi)はカルス形成率を向上させる効果があり、e)、h)およびk)は再分化効率を向上させる効果がある。j)は、遺伝子導入効率、カルス形成率、または再分化効率のいずれの段階に効果があるのかについてまだ確認されていないが、結果として形質転換効率を向上させる効果がある。

0093

熱処理は、例えばWO 1998/054961に記載の方法を用いて行うことができる。熱処理は本発明の工程(i)または(ii)において行うことができる。例えば、植物材料をアグロバクテリウム菌と接触させる前に熱処理を行う場合、33℃ないし60℃、好ましくは37℃ないし52℃で、5秒間ないし24時間、好ましくは1分間ないし24時間、処理する。

0094

遠心処理は、例えばWO 2002/012520に記載の方法を用いて行うことができる。遠心処理は本発明の工程(i)ないし(iv)のいずれかの工程において行うことができる。植物材料をアグロバクテリウム菌と接触させる前に遠心処理を行う場合の条件は、例えば、100Gないし25万G、好ましくは、500Gないし20万G、更に好ましくは1000Gないし15万Gの遠心加速度で、1秒間ないし4時間、更に好ましくは1秒間ないし2時間処理することであってもよい。また、遠心処理を共存工程の後に行う場合の条件は、例えば、100G−25万G、500G−20万G、好ましくは1000G−15万G、最も好ましくは1100G−11万G程度の遠心加速度範囲で、1秒以上、好ましくは1秒間ないし4時間、より好ましくは1秒間ないし2時間、さらに好ましくは1秒間ないし10分間、処理することであってもよい。遠心処理の時間は、遠心加速度に応じて適宜選択される。遠心処理時間は、遠心加速度が大きい場合には極く短い時間、例えば1秒以下でも遺伝子導入効率を有意に向上させることができる。一方、遠心加速度が小さい場合には、遠心処理を長く行うことにより遺伝子導入効率を有意に向上させることができる。なお、適切な遠心処理条件は、ルーチン実験により容易に設定することができる。

0095

加圧処理は、例えばWO 2005/017169に記載の方法を用いて行うことができる。加圧処理は本発明の工程(i)ないし(iv)のいずれかの工程において行うことができる。加圧処理は、限定されるわけではないが、好ましくは1.7気圧ないし10気圧の範囲、より好ましくは2.4気圧ないし8気圧の範囲で行われる。

0096

熱処理および遠心処理は、例えばWO 2002/012521に記載の方法を用いて行う事ができる。熱処理および遠心処理の条件は、上述の熱処理および遠心処理についてそれぞれ記載した条件を採用しうる。

0097

アグロバクテリウム菌の接種時および/または共存工程において銅イオンを含む金属塩の濃度を高めた培地を用いる処理は、例えばWO 2005/017152に記載の方法を用いて行うことができる。当該処理は本発明の工程(ii)または(iii)において行うことができる。当該処理は、例えば、銅イオンを含む金属塩を1μMないし50μM、好ましくは1μMないし10μMの濃度で含む培地を用いて行い得る。金属塩は、例えば硫酸銅またはグルコン酸銅であってもよい。

0098

アグロバクテリウム菌の接種時および/または共存工程において硝酸銀の濃度を高めた培地を用いる処理は、例えば、Zhao, Z.-Y., et al., (2001) Mol. Breed., 8:323-333;非特許文献2;および/またはIshida, Y., et al., (2003) Plant Biotechnology, 20:57-66に記載の方法を用いて行う事ができる。当該処理は、本発明の工程(ii)または(iii)において行う事ができる。当該処理は、例えば硝酸銀を1μMないし50μM、好ましくは1μMないし10μMの濃度で含む培地を用いて行い得る。

0099

レスティング工程において、以下:L−プロリンおよび/またはL−アスパラギンを添加した培地を用いる処理;硝酸イオン濃度とリン酸イオン濃度を増加させた培地を用いる処理;ポリビニルポリピロリドン(PVPP)を添加した培地を用いる処理;および、6−ベンジルアミノプロリン(BAP)を添加した培地を用いる処理;は、それぞれ例えば非特許文献9、10、11及び12に記載の方法を用いて行うことができる。当該処理は本発明の工程(iv)において行うことができる。それぞれの物質添加量は上述の非特許文献を参照して、当業者が適宜決定することができる。

0100

再分化工程において、1mg/L NAA、1mg/L IAA、1mg/L IBA、1μmol/L硫酸銅を含むMS培地を用いる処理は、例えば非特許文献13に記載の方法を用いて行うことができる。また、0.5mg/Lゼアチン、 1mg/Lインドール−3−酢酸(IAA)、0.1mg/L チジアズロンを含む改良MS培地を用いる処理は、例えば非特許文献12に記載の方法を用いて行うことができる。当該処理は本発明の工程(v)において行うことができる。

0101

当業者は、これらの形質転換向上処理を適切なタイミング・条件で行う事ができる。また、これらを適宜組み合わせることは、形質転換効率向上のために一層好ましい。

0102

3.本発明の方法による効果とその確認方法
本明細書において形質転換とは、導入した目的遺伝子が核ゲノムに組み込まれ安定的に発現している植物を得る工程をいう。本発明の形質転換植物の作成方法により、高い効率でソルガム属植物の形質転換を行うことができる。よって植物の形質転換効率の向上が達成される。

0103

形質転換工程は、具体的には、対象植物の細胞内への目的遺伝子の導入、遺伝子が導入された細胞を含む組織からのカルス形成、遺伝子が核ゲノムに組み込まれたカルスの再分化、といった工程を経る。

0104

本明細書において遺伝子導入とは、対象植物の細胞内に目的遺伝子を導入することをいう。本発明の遺伝子導入方法により、高い効率でソルガム属植物に遺伝子導入を行うことが可能となる。また、それにより高い効率でソルガム属の形質転換植物を作成することができる。

0105

さらには、カルス形成率や再分化効率の向上によっても、植物の形質転換効率の向上が可能となる。

0106

すなわち本明細書において「形質転換効率が高い」とは、高い効率で目的遺伝子が植物細胞へ導入されること(遺伝子導入効率が高い)、目的遺伝子が導入された植物組織からから高い効率でカルスが形成されること(カルス形成率が高い)、目的遺伝子が組み込まれたカルスから高い効率で再分化が起こること(再分化効率が高い)、を包含する概念である。また本明細書において「形質転換効率が向上する」とは、目的遺伝子の植物細胞への導入効率が向上すること、目的遺伝子が導入された植物組織からのカルス形成率が向上すること、目的遺伝子が組み込まれたカルスからの再分化効率が向上すること、を包含する概念である。

0107

本発明の形質転換植物の作成方法により、植物の形質転換効率の再現性が高い、形質転換の実験毎のバラツキが少ない、安定して形質転換植物を獲得できる、などの有利な効果も得ることができる。これらの効果も広義においては、上記の「形質転換効率が高い」、および「形質転換効率が向上する」、という概念に包含される。

0108

対象植物が形質転換されたか否かを決定するためのより確実な方法は、例えば、サザンハイブリダイゼーション法による植物染色体への導入遺伝子の組み込み、および後代植物での導入遺伝子の発現確認(後代への遺伝)などである。サザンハイブリダイゼーション法は広く知られた方法により行うことができ、例えば、Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed. (2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York) に記載される方法により行われる。また、後代植物における発現の確認はGUS遺伝子などのレポーター遺伝子の発現や除草剤抵抗性遺伝子などの選抜マーカー遺伝子の発現を調査する方法により実行可能である。具体的には非特許文献2に記載されているが、これに限定されるものではない。

0109

植物細胞に遺伝子導入がされたか否かは、遺伝子導入組織の一過性発現を観察することにより決定することができる。一過性発現とは、植物細胞の核内へ移行した目的遺伝子が、植物細胞のタンパク発現機構を利用して、ある一定期間発現する現象である。一過性発現の後、核内に移行した目的遺伝子のうちの一部が核ゲノムに組み込まれ、目的遺伝子が組み込まれた細胞は形質転換細胞として、目的遺伝子を安定的に発現し始める。

0110

一過性発現は公知の種々の方法により確認することができる。例えば、導入する遺伝子にGUS(β−グルクロニダーゼ)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子あるいはGFP遺伝子などのレポーター遺伝子を利用し、簡便な公知の方法でこれらのレポーター遺伝子の発現部位目視することにより確認することが可能である。

0111

遺伝子導入効率は、例えば、目視により一過性発現を段階的にスコアリングすることにより評価することができる。例えば、後述の実施例のように、レスティング工程における未熟胚の胚盤組織のGUS遺伝子の発現を、青色を呈するスポットが0個の未熟胚はスコア0、1−10個の未熟胚はスコア1、11−40個の未熟胚はスコア2、41個から胚盤の1/3未満が青色を呈した未熟胚はスコア3、胚盤の1/3以上1/2未満が青色を呈した未熟胚はスコア4、胚盤の1/2以上が青色を呈した未熟胚はスコア5とした6段階で評価してもよい。

0112

また遺伝子導入効率は、当業者に一般に使用されている計算方法によっても決定することができる。例えば、遺伝子導入された植物組織数を、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織数で除することにより算出することが可能である。

0113

カルス形成率については、例えば、目視によりカルスが形成されたか否かを段階的に評価して平均値をとってもよい。例えば、後述の実施例のように未熟胚からのカルス形成を1(胚盤の半分以上がカルス化)、0.5(胚盤の一部がカルス化)、0(カルス形成なし)の3段階で評価してもよい(後述の実施例におけるカルス形成指数)。あるいは、カルスが形成された数を、アグロバクテリウム菌を接種した植物組織数で除することにより算出してもよい。

0114

以下、実施例によって本発明を説明するが、実施例は例証のためのものであり、本発明を制限するものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて判断される。さらに、当業者は本明細書の記載に基づいて、容易に修正、変更を加えることが可能である。

0115

実施例1:高窒素共存培地の遺伝子導入に対する効果
材料および方法
開花後14−23日目のソルガム(品種:Tx430)の未熟胚を無菌的に採取し、アグロバクテリウム懸濁培地(LS無機塩、0.5mg/Lニコチン酸、0.5mg/Lピリドキシン塩酸塩、1mg/Lチアミン塩酸塩、100mg/Lミオイノシトール、1g/Lカザミノ酸、1.5mg/L 2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、68.5g/Lシュークロース、36g/Lグルコース、pH5.2;非特許文献5を参照)で1回洗浄した。遺伝子導入効率を高めるための前処理(15,000rpm、10分間の遠心処理および43℃、3分間の熱処理)を行った。100μMアセトシリンゴンを含むアグロバクテリウム懸濁培地に約1.0×109 cfu/mLでアグロバクテリウムを懸濁し接種源とした。アグロバクテリウム菌株には、WO 2014/157541 A1のpLC41GWHのT−DNA領域を、トウモロコシユビキチンプロモーターおよびイントロンで制御されヒマのカタラーゼイントロンが介在したGUS遺伝子(Pubi−Iubi−IGUS−Tnos)、およびカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターで制御されたBar遺伝子(P35S−bar-T35S)を有するT−DNAに改変したバイナリーベクター、およびWO 2014/157541 A1のブースターベクターを有するEHA105(pLC41 GUS-Bar::pVGW7)を使用した。前処理した未熟胚に接種源を加え、5分間室温静置した。LS無機塩を1倍量含む共存培地(LS無機塩、0.5mg/L ニコチン酸、0.5mg/L ピリドキシン塩酸塩、1mg/L チアミン塩酸塩、100mg/L ミオ−イノシトール、700mg/L L−プロリン、1.5mg/L 2,4−D、20g/L シュークロース、10g/L グルコース、500mg/L MES、100μM アセトシリンゴン、5μM AgNO3、5μM CuSO4・5H2O、8g/L寒天、pH5.8;非特許文献5を参照、ただしアスコルビン酸は除いた)、またはNH4+とNO3−の合計濃度が22−362mMでありLS無機塩を1/5倍量含む上記共存培地に、アグロバクテリウムを接種した未熟胚を胚盤側が上になるように置床した。NH4+とNO3−の合計濃度が22−362mMである培地は、NH4NO3を添加することによって調整した。25℃、暗黒下で2日間培養した後、未熟胚をレスティング培地(LS無機塩、0.5mg/L ニコチン酸、0.5mg/L ピリドキシン塩酸塩、1mg/L チアミン塩酸塩、100mg/L ミオ−イノシトール、1g/L カザミノ酸、3mg/L 2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、30g/Lマルトース、7.5g/Lソルビトール、7.8μM硫酸銅、150mg/Lチメンチン、3.5g/Lゲランガム、pH5.8)に置床し、25℃、暗黒下で培養した。

0116

レスティング培地に置床後3日間培養した後、未熟胚を0.1%のTriton X−100を含む0.1Mリン酸緩衝液(pH6.8)で1度洗浄し、1.0mM 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルクロン酸(X-gluc)を含むリン酸緩衝液に浸潤した。28℃で24時間反応させた後、顕微鏡下で観察し、青色を呈する胚盤組織の範囲を調査した。青色を呈するスポットが0個の未熟胚はスコア0、1−10個の未熟胚はスコア1、11−40個の未熟胚はスコア2、41個から胚盤の1/3未満が青色を呈した未熟胚はスコア3、胚盤の1/3以上1/2未満が青色を呈した未熟胚はスコア4、胚盤の1/2以上が青色を呈した未熟胚はスコア5とした。1試験区6−8未熟胚を使用し、試験は2回行った。

0117

結果
対照培地であるLS無機塩を1倍量含む共存培地を用いた時より、NH4+とNO3−の合計濃度が62mM−262.1mMであり、LS無機塩を1/5倍量含む共存培地を用いた時の方がGUS遺伝子の一過性発現の平均スコアは高かった。よって、低無機塩培地であっても、NH4+とNO3−の合計濃度が62mM以上262.1mM以下の培地を用いることによって、ソルガム未熟胚への外来遺伝子の導入効率が向上することが確認された。

0118

0119

実施例2:高Mg2+共存培地の遺伝子導入に対する効果
材料および方法
LS無機塩を1倍量含む共存培地、またはMg2+濃度が0.6−150.4 mM でありLS無機塩を1/5倍量含む共存培地に、実施例1と同様に処理した未熟胚を置床し、GUS遺伝子の一過性発現を評価した。Mg2+濃度が0.6−150.4mMである培地は、MgSO4を添加することによって、調整した。1試験区6−7未熟胚を使用し、試験は2回行った。

0120

結果
Mg2+のみを高濃度にした培地ではMg2+濃度が4.8mM−90.4mMである時、対照培地よりもGUS一過性発現の平均スコアは高くなった。高Mg2+共存培地は、ソルガム未熟胚への外来遺伝子の導入効率を向上させることが明らかになった。

0121

0122

実施例3:高Mg2+および高N共存培地の遺伝子導入に対する効果
材料および方法
LS無機塩を1倍量含む共存培地、またはMg2+濃度が0.6−150.4mMかつNH4+とNO3−の合計濃度が62.0mMであるLS無機塩を1/5倍量含む共存培地に、実施例1と同様に処理した未熟胚を置床し、GUS遺伝子の一過性発現を評価した。Mg2+濃度が0.6−150.4mMである培地は、MgSO4を添加することによって、NH4+とNO3−の合計濃度が62.0mMである培地は、NH4NO3を添加することによって調整し、作成した。1試験区8未熟胚を使用し、試験は2回行った。

0123

結果
高窒素条件では、Mg2+濃度が2.6mM−90.4mMである時、対照培地と比較してGUS一過性発現の平均スコアは著しく高くなった。高Mg2+高N共存培地は、ソルガム未熟胚への外来遺伝子の遺伝子導入効率を顕著に向上させることが明らかになった。

0124

0125

実施例4:高K+および/または高N共存培地の遺伝子導入に対する効果
材料および方法
LS無機塩を1倍量含む共存培地、またはK+濃度が8.0−204.4mMでありLS無機塩を1/5倍量含む上記共存培地、または上記K+を様々な濃度含む培地にさらにNH4+とNO3−の合計濃度が62.0mMとなるように調整した共存培地に、実施例1と同様に処理した未熟胚を置床し、GUS遺伝子の一過性発現を評価した。K+濃度が8.0−204.4mMである培地は、K2SO4を添加することによって調整し、作成した。1試験区6−7未熟胚を使用し、試験は4回行った。

0126

結果
高窒素条件においてK+濃度が24.0mM−64.1mMである時、対照培地よりGUS一過性発現の平均スコアは著しく高くなった。高K+高N共存培地は、ソルガム未熟胚への外来遺伝子の遺伝子導入効率を向上させることが明らかになった。

0127

0128

実施例5:高Ca2+および/または高N共存培地の遺伝子導入に対する効果
材料および方法
LS無機塩を1倍量含む共存培地、またはCa2+濃度が1.2−9.6mMでありLS無機塩を1/5倍量含む上記共存培地、または上記Ca2+を様々な濃度含む培地にさらにNH4+とNO3−の合計濃度が62.0mMとなるように調整した共存培地に、実施例1と同様に処理した未熟胚を置床し、GUS遺伝子の一過性発現を評価した。Ca2+濃度が1.2−9.6 mMである培地は、CaSO4を添加することによって調整した。1試験区6−7未熟胚を使用し、試験は2回行った。

0129

結果
高窒素条件でCa2+濃度が5.2mM−9.6mMである時、対照培地よりGUS一過性発現の平均スコアは顕著に高くなった。よって、高Ca2+高N共存培地は、ソルガム未熟胚への外来遺伝子の遺伝子導入効率を著しく向上させることが明らかになった。

0130

0131

実施例6:高Na+および/または高N共存培地の遺伝子導入に対する効果
材料および方法
LS無機塩を1倍量含む共存培地、またはNa+濃度が0.6−250.0mMでありLS無機塩を1/5倍量含む上記共存培地、または上記Na+を様々な濃度含む培地にさらにNH4+とNO3−の合計濃度が62.0mMとなるように調整した共存培地に、実施例1と同様に処理した未熟胚を置床し、GUS遺伝子の一過性発現を評価した。Na+濃度が0.6−250.0mMである培地は、Na2SO4を添加することによって調整し、作成した。1試験区6−7未熟胚を使用し、試験は2回行った。

0132

結果
高窒素条件では、Na+濃度が0.6mM−150.1mMである時、GUS一過性発現の平均スコアは高くなった。高Na+共存培地、および高Na+高N共存培地は、ソルガム未熟胚への外来遺伝子の遺伝子導入効率を向上させることが明らかになった。

実施例

0133

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