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技術 現場打ち杭工法

出願人 株式会社長谷工コーポレーション勝見武株式会社立花マテリアル
発明者 中村光男勝見武久保博
出願日 2016年8月10日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2016-158213
公開日 2018年2月15日 (3年6ヶ月経過) 公開番号 2018-025055
状態 特許登録済
技術分野 杭・地中アンカー 地中削孔 固体廃棄物の処理
主要キーワード 品質管理項目 地盤汚染 規準値 実験フロー モデルケース 定性ろ紙 境目部分 濃度低減効果
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年2月15日)のものです。
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図面 (20)

課題

地盤改良なしで土壌汚染拡散を大幅に低減又は防止することができる現場打ち杭工法を提供する。

解決手段

安定液杭孔に満たして掘削する現場打ち杭工法において、重金属汚染物質吸着する吸着剤を安定液に添加して添加安定液を調製する安定液調製工程と、添加安定液を杭孔に満たして杭孔を掘削する杭孔掘削工程と、を有する。重金属汚染物質は、ヒ素フッ素、又は鉛である。安定液は、ポリマー系安定液又はベントナイト系安定液である。吸着剤は、酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムである。ヒ素、フッ素、及び鉛に対して、ポリマー系安定液及びベントナイト系安定液に、酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムを添加することにより、掘削孔内混入したヒ素、フッ素および鉛の溶出量を基準値未満に低減し得る。

概要

背景

我が国の大都市のほとんどが比較的軟弱な沖積層上に発達しているため、都市部の中高層集合住宅建設ではが必要となる。杭は軟弱な沖積層を貫通して下部支持層に到達し、上部の建物支え役割を持つが、この沖積層に地盤汚染が存在する場合に、杭工事による地盤汚染の拡散が問題になる。つまり、杭の施工によって、沖積層の汚染土壌汚染地下水が下部支持層である下部帯水層侵入汚染を広げてしまうことがないよう、何らかの対策が必要である。

大阪平野をはじめとして我が国の都市部の沖積層には、自然由来重金属等を含む土壌が存在することが知られている。自然由来の重金属等を含む土壌はこれまで土壌汚染対策法の対象外であったが、2009年の法改正で人為由来の汚染土壌と同様に法の対象として取り扱うことが定められた。したがって、今後、自然由来の重金属等を含む土壌が存在する地盤において、重金属等を拡散させることなく杭を設ける杭工法確立は、集合住宅の杭工事における急務の課題である。

そこで、土壌汚染の拡散を防止して杭施工を行う手段として、特許文献1〜3が提案されている。

特許文献1の「杭施工方法」は、杭施工領域中心部への汚染物質の浸入を防止するための置換材料を用いて、杭施工領域内部の上部透水層地盤を置換する上部透水層地盤置換工程と、杭施工領域を貫通して所定深さに至るまで杭を打設する杭打設工程とを含むものである。

特許文献2の「杭施工方法」では、掘削工程により、地盤表層にある汚染層から、汚染層と不透水層境界面より深い不透水層の位置まで縦穴掘削する。次に、注入工程により縦穴に、不透水層の位置から汚染層の位置まで充填材注入する。次に、挿入工程により充填材が硬化する前に、ケーシングチューブを不透水層の位置まで挿入し、ケーシングチューブの外周面と、縦穴の内周壁との間に充填材を充填させる。次に、杭施工工程により、充填材が硬化した後ケーシングチューブを通じて、不透水層の下層にある透水層を貫通して下部支持層まで杭を施工する。

特許文献3の「鉛直孔掘削方法及び鉛直孔掘削装置」では、不透水層の上部に位置する上部透水層と、不透水層の下部に位置する下部透水層とを有する地盤を掘削して鉛直孔が形成される。この鉛直孔掘削方法は、鉛直孔を不透水層の途中部分まで掘削する第1の掘削工程と、第1の掘削工程で掘削した土をベントナイト泥水で置換する置換工程と、ベントナイト泥水中で上部透水層と不透水層の境目部分を含む領域に層形成材料を吹き付けてシーリング層を形成する層形成工程と、鉛直孔を不透水層の途中部分から下部透水層まで掘削する第2の掘削工程とを備えている。

概要

地盤改良なしで土壌汚染の拡散を大幅に低減又は防止することができる現場打ち杭工法を提供する。安定液杭孔に満たして掘削する現場打ち杭工法において、重金属汚染物質吸着する吸着剤を安定液に添加して添加安定液を調製する安定液調製工程と、添加安定液を杭孔に満たして杭孔を掘削する杭孔掘削工程と、を有する。重金属汚染物質は、ヒ素フッ素、又は鉛である。安定液は、ポリマー系安定液又はベントナイト系安定液である。吸着剤は、酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムである。ヒ素、フッ素、及び鉛に対して、ポリマー系安定液及びベントナイト系安定液に、酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムを添加することにより、掘削孔内混入したヒ素、フッ素および鉛の溶出量を基準値未満に低減し得る。

目的

したがって、今後、自然由来の重金属等を含む土壌が存在する地盤において、重金属等を拡散させることなく杭を設ける杭工法の確立は、集合住宅の杭工事における急務の課題である

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
1件

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請求項1

安定液杭孔に満たして掘削する現場打ち杭工法において、重金属汚染物質吸着する吸着剤を前記安定液に添加して添加安定液を調製する安定液調製工程と、前記添加安定液を前記杭孔に満たして前記杭孔を掘削する杭孔掘削工程と、を有する、現場打ち杭工法。

請求項2

前記安定液調製工程は、前記重金属汚染物質を含む地盤から汚染土壌採取するサンプリング工程と、前記汚染土壌と、吸着剤添加率が異なる複数の前記添加安定液とを混合して、液中の前記重金属汚染物質の溶出量を検出する溶出試験工程と、前記吸着剤添加率と前記溶出量の関係を求める関係検出工程と、前記関係から前記添加安定液の前記吸着剤添加率を決定する添加率決定工程と、を有する請求項1に記載の現場打ち杭工法。

請求項3

前記杭孔掘削工程は、前記重金属汚染物質を含む地盤を掘削したのち、非汚染地盤の手前で一旦掘削を中断し、前記添加安定液の液相濃度基準値未満であることを確認する中間確認工程を有する、請求項1に記載の現場打ち杭工法。

請求項4

前記重金属汚染物質は、ヒ素フッ素、又は鉛であり、前記安定液は、ポリマー系安定液又はベントナイト系安定液であり、前記吸着剤は、酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムである、請求項1に記載の現場打ち杭工法。

請求項5

前記重金属汚染物質は、ヒ素、フッ素、又は鉛であり、前記安定液は、ポリマー系安定液であり、前記吸着剤は、0.5〜5%の酸化マグネシウム、又は0.5〜5%の水酸化アルミニウムである、請求項1に記載の現場打ち杭工法。

請求項6

前記重金属汚染物質は、ヒ素、フッ素、又は鉛であり、前記安定液は、ベントナイト系安定液であり、前記吸着剤は、0.5〜2%の酸化マグネシウム、又は0.5〜5%の水酸化アルミニウムである、請求項1に記載の現場打ち杭工法。

請求項7

前記杭孔掘削工程は、使用中の前記添加安定液が含有する前記重金属汚染物質の溶出量を検査する品質管理工程を有する、請求項1に記載の現場打ち杭工法。

請求項8

前記現場打ち杭工法は、アースドリル工法であり、表層ケーシング建込み予定深度まで掘削して前記表層ケーシングを立て込み、前記添加安定液を注入し、前記添加安定液の液面を一定に保ちながらドリリングバケットで掘削し地上への排土作業を繰り返す、請求項1に記載の現場打ち杭工法。

請求項9

前記杭孔掘削工程において、前記添加安定液の孔内水位を地下水位以上に保ちながら掘削を行う、請求項1に記載の現場打ち杭工法。

請求項10

前記杭孔内コンクリート打設するコンクリート打設工程と、前記コンクリートで置換された前記添加安定液を回収槽回収する安定液回収工程と、を有する、請求項1に記載の現場打ち杭工法。

技術分野

0001

本発明は、土壌汚染拡散を防止するための現場打ち杭工法に関する。

背景技術

0002

我が国の大都市のほとんどが比較的軟弱な沖積層上に発達しているため、都市部の中高層集合住宅建設ではが必要となる。杭は軟弱な沖積層を貫通して下部支持層に到達し、上部の建物支え役割を持つが、この沖積層に地盤汚染が存在する場合に、杭工事による地盤汚染の拡散が問題になる。つまり、杭の施工によって、沖積層の汚染土壌汚染地下水が下部支持層である下部帯水層侵入汚染を広げてしまうことがないよう、何らかの対策が必要である。

0003

大阪平野をはじめとして我が国の都市部の沖積層には、自然由来重金属等を含む土壌が存在することが知られている。自然由来の重金属等を含む土壌はこれまで土壌汚染対策法の対象外であったが、2009年の法改正で人為由来の汚染土壌と同様に法の対象として取り扱うことが定められた。したがって、今後、自然由来の重金属等を含む土壌が存在する地盤において、重金属等を拡散させることなく杭を設ける杭工法の確立は、集合住宅の杭工事における急務の課題である。

0004

そこで、土壌汚染の拡散を防止して杭施工を行う手段として、特許文献1〜3が提案されている。

0005

特許文献1の「杭施工方法」は、杭施工領域中心部への汚染物質の浸入を防止するための置換材料を用いて、杭施工領域内部の上部透水層地盤を置換する上部透水層地盤置換工程と、杭施工領域を貫通して所定深さに至るまで杭を打設する杭打設工程とを含むものである。

0006

特許文献2の「杭施工方法」では、掘削工程により、地盤表層にある汚染層から、汚染層と不透水層境界面より深い不透水層の位置まで縦穴掘削する。次に、注入工程により縦穴に、不透水層の位置から汚染層の位置まで充填材注入する。次に、挿入工程により充填材が硬化する前に、ケーシングチューブを不透水層の位置まで挿入し、ケーシングチューブの外周面と、縦穴の内周壁との間に充填材を充填させる。次に、杭施工工程により、充填材が硬化した後ケーシングチューブを通じて、不透水層の下層にある透水層を貫通して下部支持層まで杭を施工する。

0007

特許文献3の「鉛直孔掘削方法及び鉛直孔掘削装置」では、不透水層の上部に位置する上部透水層と、不透水層の下部に位置する下部透水層とを有する地盤を掘削して鉛直孔が形成される。この鉛直孔掘削方法は、鉛直孔を不透水層の途中部分まで掘削する第1の掘削工程と、第1の掘削工程で掘削した土をベントナイト泥水で置換する置換工程と、ベントナイト泥水中で上部透水層と不透水層の境目部分を含む領域に層形成材料を吹き付けてシーリング層を形成する層形成工程と、鉛直孔を不透水層の途中部分から下部透水層まで掘削する第2の掘削工程とを備えている。

先行技術

0008

特許第3367042号公報
特開2012−241471号公報
特開2014−156752号公報

発明が解決しようとする課題

0009

上述した土壌汚染の拡散を防止して杭施工を行う従来の手段は、上部透水層地盤置換工程(特許文献1)、充填材注入とケーシングチューブの挿入(特許文献2)、シーリング層を形成する層形成工程(特許文献3)など、従来の現場打ち杭工法と異なる地盤改良を必要とする。
そのため、従来の手段は、地盤改良のために長期間を要し、かつ工程が複雑であり多大な費用コスト)がかかる。

0010

本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、地盤改良なしで土壌汚染の拡散を大幅に低減又は防止することができる現場打ち杭工法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0011

本発明によれば、安定液杭孔に満たして掘削する現場打ち杭工法において、
重金属汚染物質吸着する吸着剤を前記安定液に添加して添加安定液を調製する安定液調製工程と、
前記添加安定液を前記杭孔に満たして前記杭孔を掘削する杭孔掘削工程と、を有する、現場打ち杭工法が提供される。

発明の効果

0012

本発明の発明者は、多くの実験と研究を繰り返した結果、以下の新規の知見を得た。
(1)安定液を杭孔に満たして掘削する現場打ち杭工法で使用されている安定液は、鉛に対する吸着機能が高い。
(2)安定液に吸着剤を添加することにより、重金属汚染物質に対する吸着機能を持たせることができる。
(3)自然由来程度の重金属汚染物質を含む地盤であれば、安定液に適量の吸着剤を添加することで、安定液本来の性能を保持しながら、重金属汚染物質の溶出濃度基準値未満に抑え、重金属汚染物質の拡散を防止できる。

0013

本発明はかかる新規の知見に基づくものである。すなわち、本発明によれば、安定液調製工程において重金属汚染物質を吸着する吸着剤を安定液に添加して添加安定液を調製する。次いで、杭孔掘削工程において、調製した添加安定液を杭孔に満たして杭孔を掘削する。
上述した本発明の現場打ち杭工法は、安定液を杭孔に満たして掘削する従来の現場打ち杭工法と施工手順が同じであり、地盤改良は不要である。
また、従来の施工手順に追加される工程は、上述した安定液調製工程などのみであり、短時間で実施できる。
したがって、本発明の現場打ち杭工法は、地盤改良なしで土壌汚染の拡散を大幅に低減又は防止することができる。

図面の簡単な説明

0014

汚染を存置し集合住宅を建設する場合の概念図である。
本発明による現場打ち杭工法を示すフロー図である。
アースドリル工法による杭工事施工要領図である。
安定液の機能と必要な性質を示す図である。
実験フロー図である。
安定液Aの吸着試験結果を示す図である。
安定液Bの吸着試験結果を示す図である。
安定液Cの吸着試験結果を示す図である。
安定液A、B、Cに含まれるベントナイトに対するヒ素吸着等温線を示す図である。
安定液A、B、CのpHとPb濃度の関係図である。
安定液A、B、CのAs吸着等温線を示す図である。
各重金属等に対する吸着試験結果を示す図である。
アースドリル工法による掘削手順を示す図である。
重金属等を含む土壌と安定液の構成を示す図である。
安定液の品質管理試験ファンネル粘性、ろ過水量、pH)の結果を示す図である。
吸着剤であるMgOおよびAl(OH)3の添加量と安定液Aの各重金属濃度との関係を示す図である。
吸着剤であるMgOおよびAl(OH)3の添加量と安定液Bの各重金属濃度との関係を示す図である。
ヒ素の吸着等温線を示す図である。
フッ素の吸着等温線を示す図である。
配合設計のフローチャートの一例を示す図である。

0015

以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。

0016

図1は、汚染を存置し集合住宅を建設する場合の概念図である。
この図に示すように自然由来の重金属等を含む汚染土壌1と地下水が存在する地盤(下部支持層3)に杭を計画する場合、杭は汚染土壌1とその下の難透水層2を貫通して下部支持層3に達する。このような杭の施工によって重金属等が難透水層下部の下部帯水層3(下部支持層3)に拡散するおそれがある。

0017

図2は、本発明による現場打ち杭工法を示すフロー図である。
この図において、本発明の現場打ち杭工法は、安定液を杭孔に満たして掘削する現場打ち杭工法であり、安定液調製工程S1と杭孔掘削工程S2を有する。
安定液を杭孔に満たして掘削する現場打ち杭工法は、例えば、アースドリル工法、リバース工法、BH工法である。

0018

安定液調製工程S1において、重金属汚染物質を吸着する吸着剤を安定液に添加して添加安定液を調製する。
杭孔掘削工程S2において、調製した添加安定液を杭孔に満たして杭孔を掘削する。

0019

本発明において、対象とする重金属汚染物質は、ヒ素(As)、フッ素(F)、又は鉛(Pb)であるが、その他の汚染物質を含んでもよい。
安定液は、好ましくは、ポリマー系安定液又はベントナイト系安定液であるが、その他の安定液であってもよい。
吸着剤は、好ましくは、酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムであるが、その他の吸着剤を含んでもよい。

0020

後述する実施例により、ヒ素、フッ素、及び鉛に対して、ポリマー系安定液又はベントナイト系安定液に、酸化マグネシウム又は水酸化アルミニウムを添加することにより、掘削孔内混入したヒ素、フッ素および鉛の溶出量を基準値未満に低減し得ることが確認された。「基準値」は、好ましくは「地下水環境基準値」である。

0021

図2において、安定液調製工程S1は、サンプリング工程S11、溶出試験工程S12、関係検出工程S13、及び添加率決定工程S14を有する。

0022

サンプリング工程S11において、重金属汚染物質を含む地盤から汚染土壌1を採取する。
溶出試験工程S12において、汚染土壌1と、吸着剤添加率が異なる複数の添加安定液とを混合して、液中の重金属汚染物質の溶出量を検出する。
関係検出工程S13において、吸着剤添加率と溶出量の関係を求める。
添加率決定工程S14において、吸着剤添加率と溶出量の関係から添加安定液の吸着剤添加率を決定する。
後述するように、この安定液調製工程S1により、吸着剤添加率と、添加安定液の転用回数nを求めることができる。

0023

杭孔掘削工程S2は、中間確認工程S21を有する。中間確認工程S21において、重金属汚染物質を含む地盤(汚染土壌1)を掘削したのち、非汚染地盤の手前(難透水層2)で一旦掘削を中断し、添加安定液の液相濃度が基準値未満であることを確認する。
この中間確認工程S21により、基準値以上の濃度の重金属等が下部帯水層3に拡散するのを、未然に防止することができる。

0024

図2において、杭孔掘削工程S2は、さらに品質管理工程S22を有する。品質管理工程S22において、使用中の添加安定液が含有する重金属汚染物質の溶出量を検査する。
この品質管理工程S22により、分析の結果、重金属等の溶出量が基準値を超える場合には掘削を停止して、安定液の入替えや吸着剤の追加等の処置を実施し、添加安定液の液相濃度を基準値未満に維持することができる。

0025

杭孔掘削工程S2において、添加安定液の孔内水位を地下水位以上に保ちながら掘削を行う。
孔内水位を地下水位以上に保つことにより、重金属汚染物質を含む土層(汚染土壌1)の掘削過程において外部からの重金属汚染物質の侵入を防止することができる。

0026

現場打ち杭工法は、アースドリル工法であり、表層ケーシング建込み予定深度まで掘削して表層ケーシングを立て込み、添加安定液を注入し、添加安定液の液面を一定に保ちながらドリリングバケットで掘削し地上への排土作業を繰り返すことが好ましい。

0027

図2において、本発明の現場打ち杭工法は、さらに、コンクリート打設工程S3と安定液回収工程S4を有する。
コンクリート打設工程S3において、杭孔にコンクリートを打設する。
安定液回収工程S4において、コンクリートで置換された添加安定液を回収槽に回収する。
この工程により回収した添加安定液を、配合設計で設定した転用回数nで廃棄処分することで、吸着剤の追加によるゲル化を回避することができる。

0028

安定液が、ポリマー系安定液である場合、吸着剤は、0.5〜5%の酸化マグネシウム、又は0.5〜5%の水酸化アルミニウムである、ことが好ましい。
この範囲であれば、安定液の品質を確保しつつ、削孔内に混入したヒ素、フッ素および鉛の溶出量を基準値未満に低減し得ることが後述する実施例により確認された。

0029

安定液が、ベントナイト系安定液である場合、吸着剤は、0.5〜2%の酸化マグネシウム、又は0.5〜5%の水酸化アルミニウムであることが好ましい。
この範囲であれば、安定液の品質を確保しつつ、削孔内に混入したヒ素、フッ素および鉛の溶出量を基準値未満に低減し得ることが後述する実施例により確認された。

0030

上述したように、本発明によれば、安定液調製工程S1において重金属汚染物質を吸着する吸着剤を安定液に添加して添加安定液を調製する。次いで、杭孔掘削工程S2において、調製した添加安定液を杭孔に満たして杭孔を掘削する。これにより、重金属汚染物質を添加安定液に吸着させることで、地盤改良なしで土壌汚染の拡散を大幅に低減又は防止することができる。

0031

以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下の説明において、「重金属汚染物質」を単に、「重金属等」又は「汚染物質」と呼ぶ。また、「安定液」と「添加安定液」を区別が必要な場合を除き、単に「安定液」と呼ぶ。また、「吸着剤添加率」を単に「添加率」と呼ぶ。

0032

(安定液の重金属等吸着機能の検証)
1.安定液の重金属等吸着について
図3は、アースドリル工法による杭工事施工要領図である。
アースドリル工法は、安定液を杭孔に満たして掘削する現場打ち杭工法の一つであり、ドリリングバケットを回転させて地盤を掘削し、バケット内部に格納した土砂を地上に排出する工法である。孔壁は、表層部では表層ケーシングを用い、それ以深は安定液で保護する。掘削完了後、所定の形状に製作された鉄筋かごを建込み、トレミー管でコンクリートを打設し杭を築造する。安定液には対象とする地盤の性状に合わせてベントナイト系またはポリマー系が用いられる。

0033

図4は、安定液の機能と必要な性質を示す図である。
アースドリル工法で地盤を掘削する際、孔壁の崩壊を防ぐために常に地下水位プラス1〜2m以上の水頭差を維持する。そのため重金属等を含む土層の掘削過程では外部からの重金属等の侵入は考えにくいが、安定液には掘削土(汚染土壌1)に含まれる有害物質が混入する。この安定液を用いて掘削を継続し粘土層(難透水層2)を貫通したとき、粘土層下部の帯水層(下部帯水層3)へ重金属等を漏出するおそれがある。

0034

2.実験方法
図5は、実験フロー図である。この図に示すように、ヒ素(As)、フッ素(F)、鉛(Pb)に対する安定液の吸着機能を検証するため、バッチ吸着試験およびAP規格(アメリカ石油協会)の加圧ろ過試験器を用いてろ過試験を行った。ろ過試験は、泥膜によるろ過効果を模擬している。また、重金属等の混入による安定液の性状変化を確認するため、同時に安定液の品質管理試験を行った。実験手順を以下に示す。

0035

(1)安定液は一般に使用されているポリマー系安定液(以下、「安定液A」)、ベントナイト系安定液(以下、「安定液B」)および大阪市内施工中現場でサンプリングした現場採取安定液(以下、「安定液C」)の3種類を使用した。安定液A、Bは作液後24時間の養生を行った。安定液A、B、Cの配合を表1に示す。単位は重量%である。

0036

0037

(2)対象とする重金属等(As、F、Pb)は原子吸光分析用の1000mg/L標準液(As2O3、F−、Pb(NO3)2、すべて和光純薬工業製)を1、5、20mg/Lの3水準の濃度になるように添加し、1分間の振とうを行った。各物質相互作用を確認するために、2種混合溶液(As+F、As+Pb、F+Pb)および3種混合溶液(As+F+Pb)も作製した。

0038

(3)安定液の振とうの2日後に、遠心分離(3000rpm、20min)および0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、得られたろ液aのAs、F、Pb濃度を測定した。検液作製方法濃度測定法図5に示す。

0039

(4)安定液の振とう後、直ちに加圧ろ過試験器を用いてろ過試験(ろ過圧0.5MPa、ろ紙保留粒子径1μm)を行い、得られたろ液bのAs、F、Pb濃度を測定した。

0040

(5)安定液の品質管理試験は粘性造壁性およびpHの確認を行った。粘性はAPI規格のファンネル粘度計を用いて、500mlの安定液が流出完了するのに要する時間(s)を計測した。造壁性は加圧ろ過試験器でろ過試験(ろ過圧0.3MPa、30分間、ろ紙の保留粒子径1μm)を行い、得られたろ過水量(ml)を測定した。

0041

3.実験結果と考察
表2、表3、表4に実験結果を、図6図7図8には重金属等ごとの吸着試験結果を示す。
A、B、Cの各安定液ともにPb濃度の大幅な低減が確認された。線形軸ではろ液濃度を表示できないため、Pb濃度のグラフのみ対数軸を用いた。
ヒ素の濃度については概ね10〜50%程度まで低減した。
フッ素についてはほとんど濃度の低減は見られなかった。また、安定液の性状(ファンネル粘性、pH、ろ過水量)については重金属等の混入による有意な変化は見られなかった。

0042

0043

0044

0045

(1)ヒ素
図9に安定液A、B、Cに含まれるベントナイトに対するヒ素(CASEA1〜3、B1〜3、C1〜3)の吸着等温線を示す。吸着量は初期濃度とろ液aとの差をベントナイト量で除して求めた。吸着特性をHenry型として近似直線を描くと、直線の傾き(分配係数)は安定液A、B、Cで比較的近い値を示すことから、ベントナイトによるヒ素吸着があったと考えられる。

0046

ベントナイトによるヒ素吸着については次のように考えられる。安定液のpHはおおよそ9〜12の値をとるが、このときヒ素は亜ヒ酸イオン(H2AsO3−)やヒ酸イオンHAsO42−、AsO43−)などの陰イオンの形態で安定液中に存在する。したがって、ベントナイトの主成分である層状ケイ酸塩鉱物とのイオン交換や、その結晶端面におけるイオン吸着反応は起きにくい。しかし、実験に用いたベントナイトには随伴鉱物として磁鉄鉱が含まれており、これが亜ヒ酸イオンを吸着した可能性が考えられる。

0047

ろ液aのAs濃度は、ろ液bのAs濃度よりも、安定液Aで平均約20%、安定液B、Cで平均10%程度低くなった。この理由は次のように考えられる。前述したような亜ヒ酸イオンと鉄の酸化物水酸化物との反応は陽イオン交換反応のように瞬時には完了しない。振とう直後に行った加圧ろ過試験器によるろ過によって亜ヒ酸イオンとベントナイトは分離されるが、ろ液aの遠心分離とろ過は約2日後に実施したため、その間に亜ヒ酸イオンとベントナイトとの吸着反応が進み、溶出濃度が低下したと考えられる。また環告46号方式によるろ過で用いたメンブレンフィルター(孔径0.45mm)と、API規格による加圧ろ過試験で用いた定性ろ紙(保留粒子径1μm)の違いも影響したと考えられる。

0048

(2)フッ素
安定液A、B、CともにF濃度の低減はわずかであった。これは、フッ素がアルカリ域において層状ケイ酸塩鉱物や水酸化鉄とは余り共沈しないことが原因であると考えられる。ろ液bのF濃度は、ろ液aのF濃度よりも約20%程度高くなったが、この理由はヒ素と同様、フィルターの種類の違いが原因と考えられる。

0049

(3)鉛
ろ液aのPb濃度は、安定液Aで<0.01〜0.78mg/L、安定液Bで<0.01〜0.18mg/L、安定液Cで<0.01〜0.10mg/Lとなった。安定液Cにおいては、ろ液bのPb濃度は全て地下水環境基準値(0.01mg/L)以下と、顕著な濃度の低下が見られた。安定液のpHがおおよそ8〜12とアルカリ性を示していることから、鉛はPb(OH)3−の陰イオンの形態で安定液中に存在するため、ベントナイトの主成分である層状ケイ酸塩鉱物とのイオン交換や、その結晶端面におけるイオン吸着反応は起きない。よって、鉛は難溶性の水酸化物の沈殿物を生成したと考えられる。図10に安定液A、B、CのpHとPb濃度の関係を示すが、いずれのケースでも、pHと鉛濃度とは負の相関が見られたた。

0050

安定液B、CではCASEB15を除いて、ろ液bのPb濃度は、ろ液aのPb濃度よりも低かった。鉛のイオン交換反応や、水酸化物の生成反応の反応時間はms〜minのオーダーであり、ろ過試験前にこれらの反応は終わり、その後、溶出試験までに新たな吸着反応はおこり得ない。さらに、前述したフィルター径の違いにもかかわらず、ろ液aのPb濃度>ろ液bのPb濃度となったのは、泥膜によるろ過機能が発揮されたと考えられる。

0051

(4)重金属等の共存による影響について
他の重金属等との共存による相互作用は、安定液A、B、Cともに、フッ素、鉛が存在した場合にヒ素の吸着量が抑えられる傾向が見られた(図11)。一方で、Pb、Fについては共存する重金属等による吸着量への影響は見られなかった。

0052

(吸着剤の適用性の検討)
1.吸着剤の性能評価
実施例1では、アースドリル工法で一般に使用されている安定液が、ヒ素および鉛に対して吸着機能をもつことを明らかにした。特に鉛に対しては(水酸化物の沈殿も吸着に含めると)高い吸着機能を有しており、初期濃度が1mg/L程度であれば土壌溶出量基準値の数倍近くまで濃度低減が可能であることが明らかとなった。さらに、泥膜のろ過機能により一定の濃度低下も期待できることがわかった。

0053

実施例2では、安定液に添加し、ヒ素、フッ素および鉛の濃度を低減するための吸着剤を検討した。吸着剤は重金属の不溶化処理実績のある硫酸第一鉄(FeSO4)、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸カルシウム(CaCO3)、ゼオライト、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)の5種類を選択し吸着性能の評価を行なった。また、これらの吸着剤の添加が安定液本来の機能(造壁性、粘性、pH)に与える影響についても検証した。

0054

2.実験方法
重金属等3種(As、F、Pb)に対する吸着剤の吸着機能を検証するため、バッチ吸着試験を行った。また、吸着剤の添加による安定液本来の機能の低下の有無を確認するため、安定液の品質管理試験も実施した。実験手順を以下に示す。

0055

(1)安定液はベントナイト系安定液を使用した。安定液の作液時(吸着剤の添加前)の配合を表5に示す。

0056

0057

(2)安定液を24時間養生したのち、吸着剤を重量比で1%添加した。吸着剤は、硫酸第一鉄(粉末、主成分FeSO4・7H2O)、酸化マグネシウム(微粉末、主成分MgO)、炭酸カルシウム(微粉末、主成分CaCO3)、ゼオライト(粒状、主成分SiO2)、非晶質水酸化アルミニウム(粉末、主成分Al(OH)3)とした。

0058

(3)対象とする重金属等はAs、F、Pbとし、原子吸光分析用の1000mg/L標準液をそれぞれ5mg/Lの濃度になるよう安定液に混合し、1分間の振とうを行った。重金属と安定液の混合液を以下の試料とした。
(4)試料は安定液の品質管理試験を行ない、表6に示す「安定液の品質管理基準値」を満足しない場合には、分散剤等で性状の修正を行った。

0059

0060

(5)試料を環告46号方式に準拠して遠心分離とろ過をし、ろ液のAs、F、Pb濃度を測定した。濃度測定法は、AsおよびPbはICP質量分析法、Fは流れ分析法とした。

0061

3.実験結果と考察
各重金属等に対する吸着試験結果を図12に示す。

0062

硫酸第一鉄は安定液に添加し撹拌したところ著しくゲル化した。これは安定液中のベントナイトが鉄イオン(Fe2+)の混入により凝集状態になったためと考えられる。分散剤等による修正の効果もなかったため、安定液の混和材として適用不可と判断した。

0063

ゼオライトは陽イオン交換能が高く、鉛の吸着を期待したが、安定液のみのケースと比較して吸着効果は見られなかった。
炭酸カルシウムについては鉛、ヒ素、フッ素の吸着を期待したが、ゼオライト同様に安定液のみのケースと比較して吸着効果は見られなかった。

0064

酸化マグネシウムは、ヒ素、フッ素および鉛すべてをよく吸着し、フッ素と鉛の濃度が地下水環境基準値を満足した。重金属の混入後にファンネル粘性が、再振とうすることによって流動性を取り戻した。なお、酸化マグネシウムを添加した安定液は他のケースに比べてpHが2程度上昇した。

0065

水酸化アルミニウムについても、フッ素と鉛の濃度が地下水環境基準値を満足した。安定液の性状については、粘性とろ過水量がわずかに増加したものの、pHともに初期値に比べて変化がなく良好であった。

0066

以上のことから、酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムを適切な濃度で安定液に添加することにより、安定液本来の機能を損なうことなく、掘削孔内に混入したヒ素、フッ素および鉛の溶出量を基準値未満に低減し得ることが示された。

0067

(安定液の配合設計手法の検討)
1.自然由来の重金属等を含む地盤への適用の検討
実施例2では、安定液に吸着剤(酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム)を添加することで初期濃度5mg/Lの鉛およびフッ素の溶出量を地下水環境基準値未満に、ヒ素については地下水環境基準値の数倍程度に濃度低減できることが示された。そこで実施例3では、自然由来の重金属等を含む土壌、すなわち溶出量基準の10倍程度を対象として、安定液に添加する吸着剤の効果的な配合について検討した。

0068

2.安定液に溶出する重金属の濃度
アースドリル工法は安定液の孔内水位を地下水位プラス1〜2m以上に保ちながら掘削を行うため、外部の重金属等を含む土壌や地下水が孔内に入ることは考えにくい。したがって、安定液には、掘削土壌から溶出した重金属等のみ混入すると考えられる。そこで、掘削土壌から安定液への重金属の混入について検討する。

0069

図13にアースドリル工法による掘削手順を示す。まず、表層ケーシングの建込み予定深度(3m程度)まで掘削し(図13(a))、表層ケーシングを立て込んだ後、安定液を注入する(図13(b))。その後は、安定液の液面を一定に保ちながらドリリングバケットで掘削し地上へ排土、という作業を繰り返す(図13(c))。したがって、表層ケーシング以深の土壌は、掘削および地上への排土工程において安定液と接触し、その体積比杭長にもよるが、概ね1:1と考えられる。

0070

図14は、重金属等を含む土壌(a)と安定液(b)の構成を示す図である。土粒子の乾燥質量msと間隙水の質量mwおよび安定液中の水の質量mwslは以下のように示すことができる。

0071

ms=ρs・Vs・・・(1)
mw=ρw・Vw=ρw・eVs・・・(2)
mwsl=ρsl・V(1−α)=ρsl・Vs(1+e)(1−α)・・・(3)
ここでNを、間隙水と安定液中の水分の質量和(mw+mwsl)と、土粒子の質量msとの比と定義すると、
N=(mw+mwsl)/ms={ρw・e+ρsl・(1+e)(1−α)}/ρs・・・(4)
となる。

0072

ここで、V:土の体積、Vs:固相の体積、Vw:液相の体積、mw:間隙水の質量、ms:土粒子の乾燥質量、mwsl:安定液に含まれる水の質量、mb:ベントナイト等の乾燥質量、msl:安定液の質量、α:ベントナイト等の配合率=mb/msl、ρs:土粒子の密度、ρsl:安定液の密度、e:間隙比=Vw/Vsである。

0073

重金属等を含む土壌の溶出量値(環境告示第46号方式に準拠し液固比10で測定)をc0(mg/L)とし、安全側の仮定として、土壌からの重金属の溶出量が一定であるとすれば、安定液の液相濃度cは次式を満足する。なお地下水汚染はないものとする。
10・c0=N・c・・・(5)
c=10c0・ρs/{ρw・e+ρsl・(1+e)(1−α)}・・・(4.6)

0074

たとえば、c0=0.10mg/L、e=1.0、ρs=2.65t/m3の重金属等を含む土層をρsl=1.05t/m3の安定液を用いて掘削した場合、掘削完了時の安定液の液相濃度は、最大でc=0.89mg/Lとなる。これは元の土壌の溶出量値c0の概ね10倍程度である。

0075

3.実験方法
表7にバッチ吸着試験の実験条件を示す。対象とする重金属は、ヒ素、フッ素、鉛の3種類に、3種混合溶液を含めた4種類とした。各重金属の濃度は、それぞれ土壌溶出量基準値の100倍とした。これは、自然由来の重金属等を含む土壌の溶出量値が概ね土壌溶出量基準値の10倍以内であり、この土壌を含む地盤をアースドリル工法で掘削すると安定液の液相濃度が、最大で土壌溶出量基準値の100倍程度になると想定している。

0076

0077

吸着剤は実施例2の実験結果から、酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムの2種類とした。添加量は対象とする重金属等がヒ素単独、または鉛単独の場合は0.5、1.0、2.0%の3水準とし、フッ素を含むケースについては1.0、2.0、5.0%の3水準とした。
安定液の種類は、表1に示したポリマー系安定液(安定液A)およびベントナイト系安定液(安定液B)の2種類とした。なお、実施例3の実験では安定液A、Bともに粘土分を加えていない。また、吸着剤や重金属等の混入による安定液の機能の低下の有無を確認するため、表6に示した「安定液の品質管理試験」も実施した。なお、濃度測定法は、AsおよびPbはICP質量分析法、Fは流れ分析法とした。

0078

4.実験結果とその考察
(1)安定液の品質管理試験
表7に示すCASEA−1〜24およびCASE B−1〜24に対する安定液の品質管理試験(ファンネル粘性、ろ過水量、pH)の結果を図15に示す。
この図において、(a)はファンネル粘性、(b)はろ過水量、(c)はpHである。また横軸はCASE番号であり、図中の破線管理基準値の一例、○印は安定液A(ポリマー系安定液)、△印は安定液B(ベントナイト系安定液)である。
以下に品質管理項目ごとの実験結果と考察を述べる。

0079

(a)粘性(ファンネル粘性)
安定液AにMgOおよびAl(OH)3を添加することによるファンネル粘性の変化は安定しており、全ケースで30秒前後を推移した。一方で、安定液BはCASEB−11(添加量2%)でファンネル粘性が48秒と管理規準値超過したためCASE B−6、B−12(添加量5%)の試験は取りやめた。また、CASE B−24(添加量5%)のファンネル粘性も45秒と管理基準値を超過した。なお、CASE B−11およびCASE B−24の安定液は試験後6時間静置したところ一旦ゲル化したが、振動を与えることによって流動性は戻った。

0080

安定液Bで、吸着剤の添加量の増加に伴って粘性とろ過水量が増大したのは、吸着剤に含まれる金属イオン(Mg2+やAl3+)の混入により安定液が凝集状態になったためと考えられる。ファンネル粘性が管理基準値を超過したことから安定液B、すなわちベントナイト系安定液へのMgOの添加量は2%未満、Al(OH)3の添加量は5%未満とすべきであろう。一方で、ポリマー系安定液はベントナイト系安定液に比べて金属イオンに対する耐凝集性を有しており、吸着剤の添加量の増加に伴い粘性とろ過水量が増加するものの、管理基準値を超過することはなかった。

0081

(b)造壁性
造壁性はろ過水量を測定することで把握できる。MgO、Al(OH)3ともに添加量が増えると、ろ過水量が増加する傾向が見られた。このことから、MgO、Al(OH)3ともに添加量が少ないほど造壁性が良いと言える。しかしながら、MgOを0.5〜5%添加した場合、ろ過水量は6〜10mlに分布し、Al(OH)3を0.5〜5%添加した場合には、ろ過水量は7〜11mlに分布した。いずれも良好な値であり、本実験条件においては吸着剤の添加による造壁性への影響は小さいと言える。
ただし安定液AにAl(OH)3を5%添加したCASEA−18で急激なろ過水量の増加が見られたことから、安定液A、すなわちポリマー系安定液に対するAl(OH)3の添加量は5%程度を上限とすべきと考えられる。

0082

(c)pH
安定液A、Bとも、MgOの添加によるpHの変化は小さく、pH10〜11の間に分布した。一方で、Al(OH)3の添加によるpHの変化は比較的大きく、特に、安定液AにAl(OH)3を5%添加した場合、すなわちCASEA−18、CASE A−24でpH8と管理基準値の下限近くになった。

0083

(2)吸着剤の添加量と平衡濃度
図16に吸着剤であるMgOおよびAl(OH)3の添加量と安定液Aの各重金属濃度との関係を示す。この図において、(a)はMgO添加量とAs濃度(上)及びF濃度(下)との関係図であり、(b)は、Al(OH)3添加量とAs濃度(上)、F濃度(中)、及びPb濃度(下)との関係図である。

0084

ヒ素についてはフッ素、鉛との混合による影響は少なく、MgO、Al(OH)3の添加量はそれぞれ0.5%、5%以上にすることでヒ素濃度を地下水環境基準値未満に抑えることができる。

0085

フッ素についてはMgOを添加した場合にヒ素、鉛との共存による影響が見られ、MgO、Al(OH)3の添加量はそれぞれ5%以上にすることでフッ素濃度を地下水環境基準値未満に抑えることができる。
鉛については、MgOを添加した場合、全ケースで地下水環境基準値未満になった。Al(OH)3を添加した場合、ヒ素、フッ素との共存による影響は少なく、添加量を2%以上にすることで鉛濃度を地下水環境基準値未満に抑えることができる。

0086

図17に吸着剤であるMgOおよびAl(OH)3の添加量と安定液Bの各重金属濃度との関係を示す。この図において、(a)はMgO添加量とAs濃度(上)及びF濃度(下)との関係図であり、(b)は、Al(OH)3添加量とAs濃度(上)、F濃度(中)、及びPb濃度(下)との関係図である。

0087

ヒ素についてはフッ素、鉛との混合による影響は少なく、MgO、Al(OH)3の添加量はそれぞれ2%、5%以上にすることで、ヒ素濃度を地下水環境基準値未満に抑えることができる。

0088

フッ素についてはMgOを添加した場合にヒ素、鉛との共存による影響が見られ、添加量を2.5%以上にすることで地下水環境基準値未満に抑えることができる。フッ素にAl(OH)3を添加した場合、ヒ素、鉛との共存による影響は見られず、添加量5%以下でフッ素濃度は地下水環境基準値を満足しなかった。

0089

鉛にMgOを添加した場合、全ケースで地下水環境基準値未満になった。鉛にAl(OH)3を添加した場合、ヒ素、フッ素との共存による影響が見られ、添加量を2%以上にすることで地下水環境基準値を満足した。

0090

(3)安定液と吸着剤の最適な組合
図18図19にそれぞれヒ素、フッ素の吸着等温線を示す。ヒ素、フッ素ともにAl(OH)3よりもMgOの吸着機能が高い。中でも安定液AにMgOを添加したケースが最も吸着機能が高い。なお、鉛に対しても、Al(OH)3よりもMgOを添加したほうが吸着量は大きいことがわかった。

0091

(4)考察
(a)水酸化アルミニウムによる重金属の吸着について
Al(OH)3は活性表面水酸基を有しており陽イオンであるPb2+や陰イオンであるF−やH2AsO3−、も吸着し表面錯体を形成する。ここで、Al(OH)3を添加した場合の安定液のpHは8.1〜9.6を示しており、これはCASEB−14を除きAl(OH)3の電位ゼロ点である9.5〜10.0より小さい。このため、Al(OH)3は正電荷を有し、F−やH2AsO3−を吸着したと考えられる。CASE A−19〜21およびCASE B−19〜21におけるPb濃度と、実施例の実験結果(表2のA−7およびB−7)と比較して、Al(OH)3による鉛の濃度低減効果が見られないことからも、鉛が難溶性の水酸化物を生成したことが示唆される。

0092

ポリマー系安定液を夏場に使用する場合、バクテリアによる変質対策としてpH9以上にする必要があることから、Al(OH)3を添加する際には添加量を制限するか、アルカリ剤の使用を検討する必要がある。しかし前述したとおり、Al(OH)3の電位ゼロ点は9.5であり、pH9以上にすることによってヒ素およびフッ素の吸着効果が低下する可能性があるため、実施工への適用の際には注意を要する。

0093

(b)酸化マグネシウムによる重金属の吸着について
MgOを添加した場合の安定液のpHは10.5〜11を示しており、この値はMgOの電位ゼロ点である12.4よりも低い。このためMgOも正電荷を有しておりF−やH2AsO3−を吸着し表面錯体を形成すると考えられる。またMgOが水と反応してMg(OH)2に変化する際にフッ素が取り込まれるとも考えられる。鉛についてはMgOによる不溶化機構が明らかになっていないが、pH上昇による水酸化鉛の生成などが考えられる。

0094

CASEA−1〜12では、実験時(MgOの添加直後)から濃度分析時(2日後)までに、pHが1程度上昇した。この理由は次のように考える。式(7)に示すように、MgOは水溶液中で溶解し水酸化物イオンを供給するためpHが上昇するが、その後式(8)に示すように過飽和状態になったマグネシウムイオンと水酸化物イオンが水酸化マグネシウムイオンとして沈殿する。

0095

MgO+H2O⇔Mg2++2OH−・・・(7)
Mg2++2OH−⇔Mg(OH)2・・・(8)

0096

しかしながら、ベントナイトの主成分であるスメクタイトの存在下では式(7)、(8)の反応は酸化マグネシウムの濃度に依存し、酸化マグネシウムがスメクタイトの10%以下では式(7)、(8)の反応は起こらないことが指摘されている。また、スメクタイトは、イオン交換等によるpH緩衝能をもつことが知られており、これらのことから、ベントナイトを多く含む安定液CASEB−1〜12では CASE A−1〜12に比べてpHの上昇が抑えられたと考えられる。

0097

式(7)、(8)の反応は遅く、水酸化マグネシウムの生成割合は3日で75%、28日で92%と報告されている。また、式(7)、(8)の反応は約8時間と報告されている。これらのことは、安定液作液後の養生時間が、吸着効果に大きく影響する可能性があることを示しており、実施工への適用の際には注意を要する。

0098

5.自然由来ヒ素含有土による検証実験
吸着剤を添加した安定液による重金属等吸着機能を、現場で採取した土壌を用いて検証した。使用した試料は表8に示す性状の自然由来のヒ素含有土である。安定液はポリマー系安定液とし、吸着剤はMgOとAl(OH)3、添加量は実施例3の実験結果の図16より0.5%と2.0%の2水準とした。安定液と試料土を体積比1:1で1分間の振とうの2日後に、遠心分離(3000rpm、20min)および0.45μmメンブレンフィルターでろ過を行い、得られたろ液のAs濃度を測定した。

0099

0100

表9に実験結果を示す。現場で採取した土壌においてもAl(OH)3よりもMgOの方が吸着機能は高く、MgO添加量0.5%で安定液のAs濃度は地下水環境基準値未満に低減した。

0101

0102

6.まとめ
以上をまとめると、ベントナイト系安定液は吸着剤の添加によりゲル化しやすいこと、水酸化アルミニウムはpHが9未満になり、夏場にバクテリアによる劣化の可能性があることなどから、実施工への適用の際の安定液と吸着剤の組み合わせは、ポリマー系安定液に添加剤としてMgOを0.5〜5%を添加することが効果的であると考えられる。

0103

(安定液の設計手法施工管理手法の考察)
1.安定液の設計手法
(1)配合設計
ここでは、重金属等の拡散防止効果を有する安定液の配合設計について検討する。上述した実施例3において、アースドリル工法による掘削では掘削土壌と安定液はおおよそ体積比1:1で接触することを示した。したがってトリータビティー試験における固液比は1とする。

0104

上述した実施例3の結果から、安定液はポリマー系安定液、吸着剤はMgOで添加率は0.5、1、2、5%の4水準とする。溶出試験結果から、添加率−溶出量のグラフを作成し添加率d1を算出する。安定液の転用回数をn回(1≦n≦4)としd1×n≦dnとなるdnを吸着剤の添加率とする。以上をふまえ、配合設計のフローチャートの一例を図20に示す。

0105

上述したとおり、酸化マグネシウムは水和反応により水酸化マグネシウムを生成するが、この反応速度は遅く作液後の養生日数によって吸着効果が変動する可能性がある。したがって、実施工の作業工程にあったトリータビリティー試験を行う必要がある。

0106

(2)安全率について
アースドリル工法では一般的にドリリングバケットによる掘削から排土までの1サイクルは10分程度であり、土壌はドリリングバケット内に収まったまま地上部に引きき上げられるため、掘削土壌と安定液とは十分に接触しているとは言えない。溶出試験における検液作成方法(毎分200回の振とうを6時間)に比べて接触時間は短く、接触面積も小さいことから、土壌から安定液への重金属の溶出量は溶出試験結果よりも小さいと考えられる。

0107

また、上述したように安定液と地盤との間の泥膜は、一定のろ過機能をもつと考えられる。したがって、この2点については設計上の「安全しろ」と考えることができる。設計者はこれらを考慮したうえで、吸着剤の添加率を割り増しするなど、安全率を設定する必要がある。

0108

2.施工管理手法
(1)安定液の品質管理
本発明の工法の施工時には、安定液の品質管理試験の際に、対象となる重金属等の濃度を確認する必要がある。特に、重金属等を含む地盤を掘削したのち、非汚染地盤の手前で一旦掘削を中断し、安定液の液相濃度が地下水環境基準値未満であることを確認することが最も重要である。分析の結果、重金属等の濃度が地下水環境基準値未満であれば掘削を再開し、そうでなければ安定液の入替えや吸着剤の追加等の処置が必要となる。

0109

施工中の重金属等の濃度確認では、公定法による分析結果を待って施工を進めることは現実的ではなく、また上述したようにサンプリングからろ過までのタイムラグによって濃度が低く評価される可能性があることから、迅速判定法の採用が望まれる。

0110

(2)安定液の処分
コンクリートを打設後、コンクリートに置き換わった安定液は回収槽にいったん貯留される。一般に、この安定液は品質管理試験ののち修正処理を行ない、再度掘削に使用する。再度の使用に耐えないもの、および工事終了時には産業廃棄物として処分する。しかしながら、本発明の工法の場合、吸着機能の修正処理として吸着剤の追加はゲル化の恐れがあるためすべきではなく、今のところ、配合設計で設定した転用回数で廃棄処分すべきである。

0111

(3)コスト効果
本発明の工法のコスト効果の概算について表10に示す。モデルケースとして、杭径2000mm、杭長30m、重金属等を含む土層厚10m(GL±0〜10m)、難透水層厚7m(GL−10〜17m)、重金属はAs、F、Pbが共存し、溶出量は土壌溶出量基準値の2、5、10倍に設定した。また、実施例3の実験結果をふまえ、ポリマー系安定液に5%のMgOを添加し、この安定液を用いた1回の掘削で土壌溶出量基準値の10倍のAs、Pb、F濃度が土壌溶出量基準値まで低下すると仮定した。工事費については、地盤汚染対策なしの場合の杭一本当りの工事費を100として、他のケースの工事費を算出した。

0112

0113

土壌溶出量が基準値の2倍程度であれば、通常の施工と同様に安定液の4回の転用が可能と思われ、工事費の増額は3%程度である。土壌溶出量が基準値の5倍程度で、安定液の転用は2回に減り、工事費の増額は12%となる。土壌溶出量が基準値の10倍程度になり安定液の転用ができない場合でも、工事費の増額は30%程度で、現行の地盤汚染対策と比較しても大幅なコスト縮減となる。

0114

汚染地盤をアースドリル工法で掘削し、現場打ち杭を構築する際、安定液に重金属等(ヒ素、フッ素、鉛)が混入する。本発明では、このときの、安定液による重金属等の吸着機能を明らかにした。次に、安定液に吸着剤を添加し、液相のヒ素、フッ素、鉛の濃度を地下水環境基準値未満に低減するための配合設計手法について実験的に検討を行った。得られた成果は以下のとおりである。

0115

(1)アースドリル工法で一般に使用されている安定液は、鉛に対する吸着機能が高いことがわかった。吸着機能は、安定液に含まれるベントナイト量と、安定液のpH(8.5〜12.0)の影響が大きいと考えられる。

0116

(2)ベントナイト系安定液に吸着剤を添加することにより、ヒ素、フッ素に対する吸着機能を持たせることが可能である。吸着剤はMgO(添加量2%以下)、Al(OH)3(添加量5%以下)であれば適用可能である。
(3)ポリマー系安定液に吸着剤を添加することにより、ヒ素、フッ素に対する吸着機能を持たせることが可能である。吸着剤はMgO(添加量5%以下)、Al(OH)3(添加量5%以下)であれば適用可能である。

0117

(4)自然由来程度(土壌溶出量基準値の10倍以内)の重金属等を含む地盤(ヒ素、フッ素、鉛)であれば、安定液に適量の吸着剤を添加することで、安定液本来の性能を保持しながら、重金属濃度を地下水環境基準値未満に抑え、重金属等の拡散を防止し得ることが示唆された。

0118

(5)本発明の工法の工事費は、対象重金属等の種類、溶出量などから決まる吸着剤の量と安定液の転用回数により変動する。しかしながら、杭の掘削工事費全体に占める安定液の割合はわずかであり、重金属等の溶出量が基準値の10倍程度としても、工事費の増加は30%程度であり、従来の工法(例えば、二重管工法)と比較するとコスト縮減効果は大きい。

0119

上述した本発明の現場打ち杭工法は、安定液を杭孔に満たして掘削する従来の現場打ち杭工法(例えば、アースドリル工法、リバース工法、BH工法)と施工手順が同じであり、地盤改良は不要である。
また、従来の施工手順に追加される工程は、上述した安定液調製工程S1、中間確認工程S21、及び品質管理工程S22のみであり、短時間で実施できる。
したがって、本発明の現場打ち杭工法は、地盤改良なしで土壌汚染の拡散を大幅に低減又は防止することができる。

実施例

0120

なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限りで種々に変更できることは勿論である。

0121

n安定液の転用回数、1汚染土壌(沖積層)、
2難透水層、3 下部支持層(下部帯水層)

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