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課題

細胞膜における擾乱を引き起こすためのマイクロ流体システムの提供。

解決手段

細胞膜における擾乱を引き起こすためのマイクロ流体システム10であって、内腔画定し、かつ緩衝液中に懸濁された細胞20がそこを通り得るように構成された、マイクロ流体チャンネルを含み、マイクロ流体チャンネルが、細胞変形用狭窄15を含み、狭窄15の直径が細胞20の直径の関数である、マイクロ流体システム10。送達用材料30を細胞の内部に送達できる、マイクロ流体システム10。

概要

背景

背景
多くの製薬企業は、小分子薬の開発に大きく重点を置いている。これらの薬物がそう呼ばれるのはこれらが比較的小さなサイズであるためであり、このことによりこれらは全身に自由に拡散してそれらの標的に到達することができる。これらの分子はまた、さもなくば不透過性である細胞膜を、ほとんど妨害されずに通り抜けることもできる。しかし、タンパク質、DNAまたはRNAをベースとする次世代の治療薬(therapies)は、細胞膜を容易には通り抜けることができず、それ故に、送達を促進するために細胞改変を必要とする。確立された方法では、化学物質または電気パルスを用いて膜を破り(breach)、材料を細胞質中に送達させる。適正な細胞内送達は、次世代の治療薬の研究、開発および実現において肝要な段階である。

既存の方法は往々にして開発が困難であり、それらの個々の用途に対して特異的である。さらに、幹細胞および免疫細胞といった臨床的に重要な多くの細胞型は、既存の方法によっては適正に対処されない。このため、今日の生物学的/医学的研究の需要応えることのできる、より強固かつ精度の高い手法に対する需要が存在する。

概要

細胞膜における擾乱を引き起こすためのマイクロ流体システムの提供。細胞膜における擾乱を引き起こすためのマイクロ流体システム10であって、内腔画定し、かつ緩衝液中に懸濁された細胞20がそこを通り得るように構成された、マイクロ流体チャンネルを含み、マイクロ流体チャンネルが、細胞変形用狭窄15を含み、狭窄15の直径が細胞20の直径の関数である、マイクロ流体システム10。送達用材料30を細胞の内部に送達できる、マイクロ流体システム10。

目的

プロテアーゼ、温度、ならびに電気に対して繊細なタンパク質に特に該当することである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

細胞膜における擾乱を引き起こすためのマイクロ流体システムであって、内腔画定し、かつ緩衝液中に懸濁された細胞がそこを通り得るように構成された、マイクロ流体チャンネルであって、細胞変形用狭窄を含み、該狭窄の直径が該細胞の直径の関数である、マイクロ流体チャンネルを含む、マイクロ流体システム。

請求項2

狭窄の直径が、そこを通る細胞の直径の実質的に20〜99%である、請求項1記載のマイクロ流体システム。

請求項3

狭窄の直径が細胞の直径の実質的に60%である、請求項2記載のマイクロ流体システム。

請求項4

狭窄の直径が、ペイロードが通るのに十分な大きさの、細胞壁の一時的擾乱を誘導するように選択される、請求項1記載のマイクロ流体システム。

請求項5

狭窄の直径がまた、細胞が変形の結果として死滅する可能性を低下させるようにも選択される、請求項4記載のマイクロ流体システム。

請求項6

チャンネルの断面が、円形楕円形細長スリット四角形六角形および三角形からなる群より選択される、請求項1記載のマイクロ流体システム。

請求項7

狭窄が入口部分、中心点および出口部分を含む、請求項1記載のマイクロ流体システム。

請求項8

入口部分が狭窄角度を定め、該狭窄角度が、チャンネルの目詰まりを減らすように最適化されている、請求項7記載のマイクロ流体システム。

請求項9

入口部分が狭窄角度を定め、該狭窄角度が、送達および細胞生存度を向上させるように最適化されている、請求項7記載のマイクロ流体システム。

請求項10

入口部分が90度の狭窄角度を定めている、請求項7記載のマイクロ流体システム。

請求項11

直列および並列のうちの一方で並べられた複数のマイクロ流体チャンネルをさらに含む、請求項1記載のマイクロ流体システム。

請求項12

細胞駆動装置(cell driver)をさらに含む、請求項1記載のマイクロ流体システム。

請求項13

細胞駆動装置が以下からなる群より選択される、請求項12記載のマイクロ流体システム:圧力ポンプガスボンベ圧縮機、真空ポンプシリンジシリンジポンプ蠕動ポンプ手動シリンジ、ピペットピストン毛管作用物(capillary actor)、ヒト心臓、ヒト筋肉、および重力

請求項14

緩衝液中に懸濁された細胞の流体流がチャンネルにより狭窄内に運ばれ、該細胞が該流体流によって主として圧縮されるように該狭窄の直径がそこを通る該細胞の直径よりも大きい、請求項1記載のマイクロ流体システム。

請求項15

化合物または組成物を細胞内に送達するための方法であって、懸濁溶液中に細胞を供給する段階;該溶液を、細胞変形用の狭窄を含むマイクロ流体チャンネルに通す段階;圧力が該細胞に印加されるように該細胞を該狭窄に通す段階であって、それにより、ペイロードが通るのに十分な大きさの、該細胞の擾乱が引き起こされる、段階;および該細胞が狭窄を通った後に、該細胞を、ペイロード含有溶液中で所定の時間にわたってインキュベートする段階を含む、方法。

請求項16

狭窄の直径が細胞の直径の実質的に20〜99%である、請求項15記載の方法。

請求項17

狭窄の直径が細胞の直径の実質的に60%である、請求項16記載の方法。

請求項18

マイクロ流体チャンネルの断面が、円形、楕円形、細長いスリット、四角形、六角形および三角形からなる群より選択される、請求項15記載の方法。

請求項19

溶液を通す段階が、該溶液を狭窄の入口部分、中心点および出口部分に通すことを含む、請求項15記載の方法。

請求項20

入口部分の狭窄角度を調整することによってマイクロ流体チャンネルの目詰まりを減らす段階をさらに含む、請求項19記載の方法。

請求項21

入口部分の狭窄角度を調整することによって送達および細胞生存度をさらに向上させる段階をさらに含む、請求項19記載の方法。

請求項22

入口部分の狭窄角度を90度に調整する段階をさらに含む、請求項19記載の方法。

請求項23

溶液を通す段階が、該溶液を、直列および並列のうちの一方で並べられた複数のマイクロ流体チャンネルに通すことを含む、請求項15記載の方法。

請求項24

インキュベートする段階が、細胞を0.0001秒間〜20分間インキュベートすることを含む、請求項15記載の方法。

請求項25

細胞を狭窄に通す段階が、緩衝液中に懸濁された該細胞の流体流がチャンネルにより狭窄内に運ばれることを含み、該細胞が該流体流によって主として圧縮されるように該狭窄の直径がそこを通る該細胞の直径よりも大きい、請求項15記載の方法。

請求項26

圧力が剪断および圧縮のうちの1つである、請求項15記載の方法。

請求項27

化合物を細胞内に送達するための方法であって、細胞を溶液中に懸濁させる段階;該溶液を、細胞変形用の狭窄を含むマイクロ流体チャンネルに通す段階;該狭窄を該細胞の直径の関数としてサイズ変更する段階;圧力が該細胞に印加されるように該細胞を該狭窄に通す段階であって、それにより、該細胞の擾乱が引き起こされる、段階;および該細胞が狭窄を通った後に、該細胞を、ペイロードを含む該溶液中で所定の時間にわたってインキュベートする段階であって、該擾乱が、該ペイロードを通すのに十分な大きさである、段階を含む、方法。

請求項28

狭窄の直径が細胞の直径の実質的に20〜99%である、請求項27記載の方法。

請求項29

狭窄の直径が細胞の直径の実質的に60%である、請求項28記載の方法。

請求項30

マイクロ流体チャンネルの断面が、円形、楕円形、細長いスリット、四角形、六角形および三角形からなる群より選択される、請求項27記載の方法。

請求項31

溶液を通す段階が、該溶液を狭窄の入口部分、中心点および出口部分に通すことを含む、請求項27記載の方法。

請求項32

入口部分の狭窄角度を調整することによってマイクロ流体チャンネルの目詰まりを減らす段階をさらに含む、請求項31記載の方法。

請求項33

入口部分の狭窄角度を調整することによって送達および細胞生存度をさらに向上させる段階をさらに含む、請求項31記載の方法。

請求項34

入口部分の狭窄角度を90度に調整する段階をさらに含む、請求項31記載の方法。

請求項35

溶液を通す段階が、該溶液を、直列および並列のうちの一方で並べられた複数のマイクロ流体チャンネルに通すことを含む、請求項27記載の方法。

請求項36

インキュベートする段階が、細胞を0.0001秒間〜20分間インキュベートすることを含む、請求項27記載の方法。

請求項37

インキュベートする段階が、細胞を0.0001秒間よりも長くインキュベートすることを含む、請求項27記載の方法。

請求項38

圧力が剪断および圧縮のうちの1つである、請求項27記載の方法。

請求項39

化合物を細胞内に送達するための方法であって、溶液中に細胞を供給する段階;該細胞の膜に擾乱が引き起こされるように該細胞を変形させる段階;および該細胞が変形された後に、該細胞を該溶液中でペイロードとともにインキュベートする段階を含む、方法。

請求項40

細胞を変形させる段階が、該細胞を1μs〜1msにわたって変形させることを含む、請求項39記載の方法。

請求項41

インキュベートする段階が、0.0001秒間〜20分間にわたって行われる、請求項39記載の方法。

請求項42

化合物を細胞内に送達するための方法であって、溶液中に細胞の懸濁液およびペイロードを供給して、懸濁液を作製する段階;該懸濁液を、該細胞を急激かつ一時的に変形させるように構成されたマイクロ流体チャンネルを通じて流す段階;ならびに該細胞を、急激および一時的な変形の後に、該懸濁液中で所定の時間にわたってインキュベートする段階を含む、方法。

請求項43

懸濁液を、マイクロ流体チャンネルを通じて流す段階が、該懸濁液を、該マイクロ流体チャンネル内の狭窄を通じて流すこと;および該狭窄を該細胞の直径の関数としてサイズ変更することを含む、請求項42記載の方法。

請求項44

狭窄を細胞の直径の関数としてサイズ変更することが、該狭窄の直径が該細胞の直径の20〜99%となるように該狭窄をサイズ変更することを含む、請求項42記載の方法。

請求項45

懸濁液を、マイクロ流体チャンネルを通じて流す段階が、細胞を実質的に1μs〜1msにわたって変形させることを含む、請求項42記載の方法。

請求項46

溶液中に懸濁された細胞とともに用いるため、および細胞の膜に擾乱を引き起こすためのマイクロ流体システムであって、細胞の膜に擾乱を引き起こすように構成されたシステムであって、該細胞に圧力を印加することによって該細胞を急激かつ一時的に変形させるように構成され、該擾乱が、ペイロードを通すのに十分な大きさである、システムを含む、マイクロ流体システム。

請求項47

流れを合流させることによる流体剪断流を用いて細胞に対する急激および一時的な変形を引き起こすように構成されている、請求項46記載のマイクロ流体システム。

請求項48

複数のマイクロピラーを用いて細胞に対する急激および一時的な変形を引き起こすように構成されている、請求項46記載のマイクロ流体システム。

請求項49

マイクロピラーが1つのアレイとして構成されている。請求項48記載のマイクロ流体システム。

請求項50

1つまたは複数の可動プレートを用いて細胞に対する急激および一時的な変形を引き起こすように構成されている、請求項46記載のマイクロ流体システム。

請求項51

増量(bulking)材料を用いて細胞に対する急激および一時的な変形を引き起こすように構成されている、請求項46記載のマイクロ流体システム。

請求項52

細胞を、該細胞の変形されていない直径の20〜99%である直径まで変形させるように構成されている、請求項46記載のマイクロ流体システム。

請求項53

細胞を1μs〜1msにわたって変形させるように構成されている、請求項46記載のマイクロ流体システム。

請求項54

細胞リプログラミングのために、DNA、RNA、siRNAまたはタンパク質を初代線維芽細胞および幹細胞に送達するために用いられる、請求項15〜45のいずれか一項記載の方法。

請求項55

抗原またはRNAを初代免疫細胞に送達するために用いられる、請求項15〜45のいずれか一項記載の方法。

請求項56

量子ドットおよびカーボンナノチューブのうちの少なくとも1つを標的細胞に送達して該標的細胞の画像化を助けるために用いられる、請求項15〜45のいずれか一項記載の方法。

請求項57

薬物を標的細胞に送達するために用いられ、該標的細胞が腫瘍細胞である、請求項15〜45のいずれか一項記載の方法。

請求項58

ペイロードを標的細胞内に送達するための方法であって、1つまたは複数の一時的な孔が標的細胞膜内に誘導されるように標的細胞を変形させる段階であって、該1つまたは複数の孔が、該ペイロードが通るのに十分な大きさである、段階;および該細胞をペイロード含有溶液中で所定の時間にわたってインキュベートする段階を含み、変形が、機械的ストレスまたは剪断ストレスによって誘導される方法。

請求項59

ペイロードを複数の標的細胞内に送達するための方法であって、懸濁溶液中に複数の標的細胞を供給する段階;複数の標的細胞を含む該溶液を複数のマイクロ流体チャンネルに通す段階であって、各チャンネルが、複数の標的細胞それぞれの変形が誘導されるような少なくとも1つの細胞変形用の狭窄を含み、それにより、ペイロードが通るのに十分な大きさの、細胞の擾乱が引き起こされる、段階;および複数の標的細胞がチャンネルを通った後に、該複数の標的細胞を該溶液中で所定の時間にわたってインキュベートする段階を含む、方法。

技術分野

0001

関連出願
本出願は、2011年10月17日に提出された米国仮出願第61/548,013号、および2012年8月17日に提出された米国仮出願第61/684,301号に対する優先権を主張し、それぞれの内容は参照により本明細書に組み入れられる。

0002

連邦政府による資金援助を受けた研究としての申告
本発明は、少なくとも一部には、米国国立衛生研究所(National Institute of Health)によって授与された助成金5 RC1 EB011187-02号の下で、政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。

背景技術

0003

背景
多くの製薬企業は、小分子薬の開発に大きく重点を置いている。これらの薬物がそう呼ばれるのはこれらが比較的小さなサイズであるためであり、このことによりこれらは全身に自由に拡散してそれらの標的に到達することができる。これらの分子はまた、さもなくば不透過性である細胞膜を、ほとんど妨害されずに通り抜けることもできる。しかし、タンパク質、DNAまたはRNAをベースとする次世代の治療薬(therapies)は、細胞膜を容易には通り抜けることができず、それ故に、送達を促進するために細胞改変を必要とする。確立された方法では、化学物質または電気パルスを用いて膜を破り(breach)、材料を細胞質中に送達させる。適正な細胞内送達は、次世代の治療薬の研究、開発および実現において肝要な段階である。

0004

既存の方法は往々にして開発が困難であり、それらの個々の用途に対して特異的である。さらに、幹細胞および免疫細胞といった臨床的に重要な多くの細胞型は、既存の方法によっては適正に対処されない。このため、今日の生物学的/医学的研究の需要応えることのできる、より強固かつ精度の高い手法に対する需要が存在する。

0005

概要
本発明は、制御された傷害、例えば、細胞を狭窄、急速な伸展、急速な圧縮、または高剪断速度パルスに供することにより、周囲の細胞媒質から細胞の細胞質中への分子の取込みが導かれるという驚くべき発見に基づく。したがって、本発明は、真核細胞に対する、材料、例えば化合物または組成物の、サイトゾルへの細胞内直接送達のための、ベクターを用いない(vector-free)マイクロ流体プラットフォームを特徴とする。本デバイスは、所望の分子を標的細胞内に送達するための、多目的で、かつ適用範囲の広い研究用ツールとして有用である。本明細書に記載の方法を用いた細胞内への分子の送達は、狭窄および/または圧力による細胞速度に、例えば直線的または単調的に、比例する。例えば、50μlの細胞懸濁液はデバイスを数秒で通過する。スループットは、1チャンネル当たり細胞1個/秒(またはさらにはそれ未満)から、1チャンネル当たり細胞1,000個超/秒までの範囲にわたる。狭窄を通じた典型的な細胞速度には10mm/秒〜500mm/秒が含まれるが、細胞速度が最大で10m/秒である(またはさらにはそれよりも高い)ことも可能である。システム総スループットを高めるために、追加的なチャンネルを並列して配置することもできる。

0006

分子の取り込みは、エンドサイトーシスではなく拡散に基づき、すなわち、ペイロード(細胞に送達しようとする化合物)は、デバイスの通過後に、エンドソーム内ではなく細胞質中に存在する。細胞処理後にエンドソーム内に認められるペイロードはほとんどまたは全くない。例えば、大分子は、より小さな分子よりも緩徐に取り込まれる。狭窄を通じた細胞伸展および細胞移動速度の制御により、細胞の生存度および完全性を保ちながら、標的分子のより優れた送達が導かれる。処理後に細胞生存度は70〜100%であり、例えば、典型的な生存度は処理後に90%である。これに比して、高剪断速度のみを数秒または数ミリ秒用いる以前の送達方法では、処理後に得られる細胞の生存度が低いことが示されている。従来の手法とは対照的に、本発明の方法では、細胞が狭窄を通る際に、細胞を、極めて短時間(およそ100ミリ秒)、100〜1000Paの範囲にわたる剪断パルスに供する。しかし、本手法は、以前の手法とは根本的に異なる。本手法では、細胞が狭窄を通る際に好ましくは細胞の全体的な機械的変形が起こり、これにより、従来の手法とは異なる剪断力印加することができる。好ましい態様において、細胞を電流に供することはない。他の態様においては、併用処理が用いられ、例えば、本明細書に記載のデバイスを用いる機械的変形の後に、またはその前に、エレクトロポレーション(電流を用いて細胞膜に一時的な穴を生じさせて、核酸または高分子移入を可能にする、浸透圧トランスフェクション一種)を行う。

0007

ペイロードとは、細胞内に送達しようとする化合物または組成物のことである。例えば、ペイロードには、タンパク質、蛍光性色素量子ドットカーボンナノチューブRNA分子DNA分子抗原および他の高分子、ナノ粒子、ならびに組成物質が含まれうる。

0008

デバイスの狭窄の幅、狭窄部分の長さ、入口領域幾何形状およびデバイスのチャンネルの深さは、細胞内への分子の送達に影響を及ぼす。好ましくは、導管の狭窄部分の幅は直径4μm以上であり、導管の狭窄部分の長さは、好ましくは40〜50μmである。狭窄部分の長さは一般に、90μmを上回らない。狭窄部分の直径は、処理しようとする細胞の種類と関連している。以下に述べるように、直径は細胞の直径未満である(例えば、細胞の直径の20〜99%)。多くの細胞は直径5〜15μmであり、例えば、樹状細胞は直径7〜8μmである。例えば、単一細胞の処理の場合、狭窄部分の直径は4.5、5、5.5、6または6.5μmである。もう1つの例では、ヒトの処理の場合の狭窄部分のサイズ/直径は6.2μm〜8.4μmであるものの、より大きいか、またはより小さい狭窄も可能である(ヒト卵子の直径はおよそ12μmである)。さらにもう1つの例では、(例えば、細胞2〜3個の塊)は、12μm〜17μmの狭窄直径を用いて処理される。

0009

本デバイスおよび方法は、特化した抗原提示細胞、例えば樹状細胞などを用いるワクチンの開発および生産に有用である。例えば、抗原提示刺激する方法は、樹状細胞を、ごく短時間(transitory)の狭窄または高剪断力のパルスといった制御された傷害に供し、該樹状細胞を標的抗原を含む溶液と接触させることによって、実施される。本方法は、以前の刺激方法と比較して、高度に活性化された抗原提示細胞を生じさせる。ワクチン生産は、樹状細胞または他の抗原提示細胞を進ませて狭窄を含むデバイスに通し(それにより、細胞を急速な伸展イベントに供する)、続いて細胞をペイロード、例えば抗原を含む溶液中でインキュベートすることによって、実施される。細胞の急速な変形後に、細胞を1つまたは複数の抗原を含む細胞培養基中に浸すが、細胞を急速な変形イベント/プロセスの前、最中、および/または後に抗原と接触させてもよい。

0010

界面活性剤(例えば、0.1〜10% w/w)が、任意で、流動緩衝液中に用いられる(例えば、ポロキサマー動物由来血清アルブミンタンパク質)。細胞内への分子の送達は、界面活性剤の存在によっては影響されない;しかし、界面活性剤は任意で、動作中のデバイスの目詰まりを減らすために用いられる。

0011

デバイスは、シリコン、金属(例えば、ステンレス鋼)、プラスチック(例えば、ポリスチレン)、セラミックス、または、ミクロン規模特徴物(feature)をエッチングするのに適した他の任意の材料でできており、細胞が通る1つまたは複数のチャンネルまたは導管を含む。シリコンが特に好適であるが、これはこの材料についてはマイクロパターン化法が十分に確立されており、それ故に、新たなデバイスを加工すること、デザインを変更することなどがより容易であるためである。さらに、シリコンの剛性は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)のようなより柔軟な基質を上回る利点、例えば、より高い送達率をもたらしうる。例えば、デバイスは、2、10、20、25、45、50 75、100本またはそれ以上のチャンネルを含む。デバイスは、シリコンをエッチングすることによって微細加工されている。圧力を印加することによって細胞をチャンネルまたは導管内で移動させる、例えば推進させる。細胞駆動装置(cell driver)により圧力を印加することができる。細胞駆動装置には、例えば、圧力ポンプガスボンベ、圧縮機、真空ポンプシリンジシリンジポンプ蠕動ポンプ手動シリンジ、ピペットピストン毛管作用物(capillary actor)および重力が含まれうる。チャンネルの代わりとして、細胞を、網または密に配置されたプレートの形態の狭窄に通してもよい。いずれのケースでも、細胞が通り抜ける狭窄の幅は、天然状態、すなわちストレスのない状態の、処理される細胞の幅または直径の20〜99%である。温度は組成物の取り込みに影響を及ぼす可能性があり、生存度に影響を及ぼす。本方法は、室温(例えば、20℃)、生理的温度(例えば、39℃)、生理的温度よりも高い温度もしくは低い温度(例えば、4℃)、またはこれらの例示的な温度間の温度で実施される。

0012

狭窄、伸展、および/または高剪断速度のパルスによる、細胞に対する制御された傷害の後に、該細胞内に導入することが望まれる化合物または分子を含む送達用溶液中で、該細胞をインキュベートする。制御された傷害は、細胞膜における、小さな、例えば直径200nmの欠損として特徴づけることができる。細胞の回復期間は、狭窄を通ることによって引き起こされた傷害が閉じるまで数分のオーダーである。送達期間には1〜10分またはそれ以上、例えば、15、20、30、60分またはそれ以上が含まれ、室温で動作させる時には2〜5分が最適である。送達用溶液中でのインキュベーション期間が長いほど、取り込みの増加が得られるわけでは必ずしもない。例えば、データからは、5分後に、細胞によって追加的に取り込まれた材料はほとんどまたは全くなかったことが指し示された。

0013

したがって、本発明は、細胞への薬物送達の分野における長年の問題に対して、かつ以前の方法に付随する短所に対して、解決策を与えるものである。

0014

真核細胞への材料の送達に関しては、細胞を2つの主要なカテゴリー分類することができる:

0015

1)送達が容易な(ETD)細胞:利用しうる化学的方法およびウイルス的方法のほとんどは、このカテゴリーに該当する。送達が容易な細胞は、往々にして、直接的な臨床的意義はない。

0016

2)送達が困難な(DTD)細胞:臨床的意義が大きい。送達技術の進歩は、新規治療法の開発を大きく可能にする/加速することができる。このカテゴリーには、幹細胞、初代細胞および免疫細胞が含まれる。新規RNA、幹細胞およびタンパク質ベースの治療薬が今後数年のうちに活発化するにつれて、DTD送達の市場は劇的に拡大すると予想されている。

0017

本明細書に記載の手法は、DTD研究領域にとって特に有用であることが立証されているものの、同じ手法をETD細胞とともに用いることもできる。加えて、それは、他のあらゆる方法によってもETD細胞またはDTD細胞のいずれにも有効に送達することができない材料(量子ドット、カーボンナノチューブおよび抗体など)の送達も促進した。

0018

一般に、1つの局面において、本発明の実施により、細胞膜における擾乱を引き起こすためのマイクロ流体システムが提供され得、該マイクロ流体システムは、内腔画定し、かつ緩衝液中に懸濁された細胞がそこを通り得るように構成された、マイクロ流体チャンネルを含み、該マイクロ流体チャンネルは、狭窄を含み、該狭窄の直径は該細胞の直径の関数である。

0019

また、本発明の実施により、以下の特徴物のうちの1つまたは複数も提供されうる。狭窄の直径は、そこを通る細胞の直径の実質的に20〜99%である。チャンネルの断面は、円形楕円形細長スリット四角形六角形および三角形からなる群より選択される。狭窄は、入口部分、中心点および出口部分を含む。入口部分は狭窄角度を定め、該狭窄角度はチャンネルの目詰まりを減らすように最適化されている。マイクロ流体システムは、並列して配列された複数の、例えば、2、5、10、20、40、45、50、75、100、500、1,000本またはそれ以上のマイクロ流体チャンネルをさらに含む。

0020

一般に、もう1つの局面において、本発明の実施により、化合物を細胞内に送達するための方法も提供され得、該方法は、懸濁液中に細胞を供給する段階、または細胞およびペイロードを溶液中に懸濁させる段階、該溶液を、狭窄を含むマイクロ流体チャンネルに通す段階、該狭窄を該細胞の直径の関数としてサイズ変更する段階、圧力が該細胞に印加されるように該細胞を該狭窄に通す段階であって、それにより、ペイロードが通るのに十分な大きさの、該細胞の擾乱が引き起こされる、段階、および、該細胞を、それが狭窄を通った後に溶液中で所定の時間にわたってインキュベートする段階を含む。

0021

また、本発明の実施により、以下の特徴物のうちの1つまたは複数も提供されうる。狭窄の直径は、細胞の直径の実質的に20〜99%である。マイクロ流体チャンネルの断面は、円形、楕円形、細長いスリット、四角形、六角形および三角形からなる群より選択される。溶液を通す段階は、溶液を、狭窄の入口部分、中心点および出口部分に通すことを含む。本方法は、入口部分の狭窄角度を調整することによって、マイクロ流体チャンネルの目詰まりを減らす段階をさらに含む。溶液は、溶液を、並列して配列された複数のマイクロ流体チャンネルに通すことを含む。

0022

一般に、さらにもう1つの局面において、本発明の実施により、化合物を細胞内に送達するための方法も提供され得、該方法は、溶液中に細胞を供給する段階または細胞を溶液中に懸濁させる段階、該溶液を、狭窄を含むマイクロ流体チャンネルに通す段階、該狭窄を該細胞の直径の関数としてサイズ変更する段階、圧力が該細胞に印加されるように該細胞を該狭窄に通す段階であって、それにより、該細胞の擾乱が引き起こされる、段階、および該細胞が狭窄を通った後に、該細胞を、ペイロードを含む該溶液中で所定の時間にわたってインキュベートする段階を含み、擾乱は、該ペイロードを通すのに十分な大きさである。

0023

また、本発明の実施により、以下の特徴物のうちの1つまたは複数も提供されうる。狭窄の直径は、細胞の直径の実質的に20〜99%である。マイクロ流体チャンネルの断面は、円形、楕円形、細長いスリット、四角形、六角形および三角形からなる群より選択される。溶液を通す段階は、溶液を狭窄の入口部分、中心点および出口部分に通すことを含む。本方法は、入口部分の狭窄角度を調整することによって、マイクロ流体チャンネルの目詰まりを減らす段階をさらに含む。溶液を通す段階は、溶液を、直列および並列のうちの一方で配列された複数のマイクロ流体チャンネルに通すことを含む。インキュベートする段階は、細胞を0.0001秒間〜20分間(またはさらにはより長く)インキュベートすることを含む。圧力は剪断性および圧縮性のいずれかである。

0024

一般に、さらにもう1つの態様において、本発明の実施により、化合物を細胞内に送達するための方法も提供され得、該方法は、溶液中に細胞を供給する段階または細胞を溶液中に懸濁させる段階、該細胞の膜に擾乱が引き起こされるように該細胞を変形させる段階、および、該細胞が変形された後に、該細胞を該溶液中でペイロードとともにインキュベートする段階を含む。

0025

また、本発明の実施により、以下の特徴物のうちの1つまたは複数も提供されうる。細胞を変形させる段階は、該細胞を1μs〜10ms、例えば、10μs、50μs、100μs、500μsおよび750μsにわたって変形させることを含む。インキュベートする段階は、0.0001秒間〜20分間、例えば、1秒間、30秒間、90秒間、270秒間および900秒間にわたって行う。

0026

本発明のさまざまな実施により、以下の能力のうちの1つまたは複数が提供されうる。従来の手法と比較して、送達のより高い精度およびスケーラビリティーを達成することができる。細胞への材料の送達は自動化することができる。タンパク質、RNA、siRNA、ペプチド、DNAおよび不透過性色素などの材料を、胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞(iPSC)、初代細胞または不死化細胞株などの細胞内に移植することができる。本デバイスおよび方法は任意の細胞型に適用可能であり、狭窄部分のサイズは、処理しようとする細胞に合わせて調整される。本デバイスおよび方法は、大きな利点をもたらしうる。例えば、現行のシステムにおける実験ノイズを、従来の手法と比較して減少させることができる。材料の送達数量は、細胞集団の全体を通じて不変でありうる。細胞をバッチとして取り扱うのではなく、個別に取り扱うことができる。また、本発明により、種々のナノ粒子およびタンパク質をサイトゾルに送達するというかなり比類のない可能性も実証された。既存の方法は、そのような機能を遂行するにはかなり信頼性が低いか、または非効率的である。

0027

繊細な(sensitive)ペイロードの送達に関しては、例えば、タンパク質(特に大型のタンパク質、例えば、30、50、100、150、200、300、400、500kDaを上回るか、またはそれ以上のもの)、量子ドット、または電気に対して繊細なもしくは電気への曝露によって損傷される他のペイロードが、繊細なペイロードの完全性および活性を保ちながら、細胞内に確実に送達される。したがって、本デバイスおよび方法は、ペイロード組成物を電気に供して(それによってペイロードを損傷させる)低い細胞生存度をもたらす(例えば、細胞の505またはそれ以上が、典型的には、エレクトロポレーション後に死滅する)エレクトロポレーションなどの既存の手法を上回る、大きな利点を有する。急速な伸展/変形法のもう1つの利点は、幹細胞または前駆細胞が、処理された細胞の分化または活性の状態を変化させることなくペイロードの取り込みを受け入れるようになることである。例えばワクチン生産といった治療目的での、細胞の細胞質中への組成物の送達に加えて、本方法は、診断または画像化の目的で、オルガネラなどの細胞内構造を標識するためまたは細胞内構成要素を標識するために、分子、例えば検出可能マーカーを含む大分子を導入するのにも用いられる。

0028

また、本発明のさまざまな実施により、以下の能力の1つまたは複数も提供されうる。DNAを、送達のために投与する(dose-to-deliver)細胞、例えば幹細胞、初代細胞、免疫細胞の中に送達することができる。非常に大きなプラスミド染色体全体でさえ)の送達を実現することができる。また、関心対象の遺伝子の発現レベル、および濃度に対するその感受性試験するために、細胞内への既知の量の遺伝子構築物の定量的送達も容易に実現することができる。より容易な/より効率的な安定的な送達、相同組換えおよび部位特異的突然変異誘発を達成する目的で、既知の量のDNA配列の、DNA組換え強化する既知の量の酵素を伴っての送達も実現することができる。本明細書に記載の方法およびデバイスはまた、より効率的/確証的なRNA試験のための、RNAの定量的送達のためにも有用な可能性がある。細胞の細胞質中への低分子干渉RNA(siRNA)の送達も容易に実現される。

0029

本発明のさまざまな実施により、以下の能力の1つまたは複数も提供されうる。リポソームを必要とすることなしに、RNAサイレンシングのためにRNAを細胞内に送達することができる。既知の量のRNA分子を既知の量のダイサー分子とともに送達して、さまざまな条件における複数の細胞株間の、標準化された効率的なRNAを達成することができる。転写後レベルでの遺伝子発現調節の諸局面を調査するために、mRNAを細胞内に送達することができる。RNAおよび細胞の半減期を検討するための、RNAの既知の量の標識も可能と考えられる。汎用的なタンパク質送達を達成することができる。既知の量の標識タンパク質を、細胞におけるそれらの半減期を検討するために送達することができる。タンパク質局在を検討するための標識タンパク質の送達を実現することができる。細胞環境におけるタンパク質-タンパク質相互作用を検討するために、既知の量のタグ標識タンパク質を送達することができる。免疫染色および蛍光ベースのウエスタンブロット法のために、生きた細胞内への標識抗体の送達を達成することができる。

0030

また、本発明のさまざまな実施により、以下の臨床的能力および研究能力のうちの1つまたは複数も提供されうる。改良されたスクリーニングおよび投薬試験のための、細胞モデルへの薬物の定量的送達を達成することができる。本方法は、タンパク質治療薬を同定するため、または疾患の機序解明するための一助として、サイトゾル中のタンパク質活性をスクリーニングするハイスループット方法として採用されうると考えられる。そのような用途は現在、それらが非効率的であるという理由から、現行のタンパク質送達方法によっては大きく制約されている。本デバイスおよび手法は、流血血液細胞特定サブセット(例えば、リンパ球)への薬物の細胞内送達、細胞、特に卵母細胞凍結保存を改良するための細胞内への糖のハイスループット送達、タンパク質、mRNA、DNAおよび/または増殖因子を導入することによる標的化された細胞分化iPS細胞を作製するために細胞リプログラミング誘導するための遺伝子材料またはタンパク質材料の送達、トランスジェニック幹細胞株の開発のための胚性幹細胞内へのDNAおよび/または組換え酵素の送達、トランスジェニック生物の開発、DC細胞活性化、iPSC作製および幹細胞分化のための接合子内へのDNAおよび/または組換え酵素の送達、診断および/または機序研究のためのナノ粒子送達、ならびに量子ドットの導入のために有用である。形成外科手術に関連して用いられる皮膚細胞も、本明細書に記載のデバイスおよび方法を用いて改変される。

0031

抗原および/または免疫刺激分子を送達する方法を用いて抗原提示を刺激する方法により、従来の刺激方法と比較して活性レベルが向上した抗原提示細胞、例えば樹状細胞が得られ、それにより、標的抗原に対する増大したレベルでのT細胞およびB細胞媒介性免疫が導かれる。このため、そのような方法は、癌または感染に対する応答として免疫系を活性化させる手段として使用しうると考えられる。

0032

スクリーニング、画像化または診断の目的で、本デバイスは細胞を標識する方法に用いられる。細胞を標識する方法は、制御された傷害に細胞を供した上で、細胞を検出可能マーカーを含む溶液に接触させることによって実施され、ここで前記傷害は、ごく短時間の狭窄または高剪断力のパルスを含む。検出可能なマーカーには、蛍光性分子放射性核種、量子ドット、金ナノ粒子または磁性ビーズが含まれる。

0033

本発明の前には、外因性組成物を導入することを目的とする幹細胞の操作は困難であった。本明細書に記載のデバイスおよび方法、例えば、誘導多能性幹細胞(iPSC)などの幹細胞または始原細胞を狭窄チャンネルに通すことは、分化を誘導しないが、細胞内への組成物の取り込みを確実に誘導する。例えば、分化因子がそのような細胞に導入される。導入された因子の取り込みの後に細胞は該導入された因子によって指令される分化経路を進み、該因子が細胞内に導入された方法に付随する問題を伴うことはない。

0034

単一細胞のほかに、非常に大きな細胞、例えば、卵;直径およそ200μm、細胞の塊、例えば細胞2〜5個の塊、例えば2〜3個の細胞を含む胚なども、標的組成物を取り込むように処理される。開口部のサイズはそれに応じて調整され、すなわち、狭窄の幅は塊のサイズよりも少しだけ小さい。例えば、チャンネルの幅は細胞塊の幅の20〜99%である。

0035

細胞または細胞塊は、所望の細胞型に関して精製/単離されるか、または濃縮される。本方法に用いられる樹状細胞または他の細胞、例えば、マクロファージ、B細胞、T細胞などの免疫細胞、または胚性幹細胞もしくはiPSなどの幹細胞は、精製または濃縮される。例えば、細胞は、その細胞表面マーカー発現または他の識別的特徴に基づいて単離されるか、または濃縮される。樹状細胞はそれらのβ-インテグリン、CD11cまたは他の識別的細胞表面マーカーの発現に基づいて同定され、単離される。細胞に関して、「単離された」という用語は、その細胞が、それが天然に存在する場合に伴う他の細胞型も細胞材料も実質的に含まないことを意味する。例えば、特定の組織型または表現型の細胞の試料は、それが細胞集団の少なくとも60%を占める場合には「実質的に純粋」である。好ましくは、調製物は、細胞集団の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%または100%を占める。純度は、任意の適切な標準的な方法によって、例えば、蛍光活性細胞分取法(FACS)によって測定される。

0036

ポリヌクレオチドポリペプチドまたは他の作用物質などのペイロード組成物は、精製および/または単離される。具体的には、本明細書で用いる場合、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、組換え手法によって産生される場合には他の細胞材料もしくは培養基を、または化学合成される場合には前駆的化学物質もしくは他の化学物質を、実質的に含まない。精製された化合物は、関心対象の化合物が重量比で少なくとも60%を占める(乾燥重量)。好ましくは、調製物は、関心対象の化合物が重量比で少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも99%を占める。例えば、精製された化合物は、所望の化合物が重量比で少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%または100%(w/w)を占めるものである。純度は、任意の適切な標準的な方法、例えば、カラムクロマトグラフィー薄層クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーHPLC分析によって測定される。精製または単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、その天然の状態でそれに隣接する遺伝子も配列も含まない。単離または精製された核酸分子の例には、以下のものが含まれる:(a)天然のゲノムDNA分子の一部であるが、それが天然に存在する生物のゲノム中で分子の一部に隣接する核酸配列のいずれとも隣接していないDNA;(b)結果的に生じる分子がいかなる天然のベクターともゲノムDNAとも同一でない様式で、ベクター中、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に組み入れられた核酸;(c)分離した分子、例えばcDNAゲノム断片ポリメラーゼ連鎖反応PCR)によって生成された断片、または制限断片など;および(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列。本発明による単離された核酸分子は、合成的に生成された分子、ならびに化学的に改変された、および/または修飾された骨格を有する任意の核酸をさらに含む。

0037

懸濁溶液とは、任意の生理的な、または細胞適合性のある緩衝液または溶液のことである。例えば、懸濁溶液は細胞培地またはリン酸緩衝食塩水である。ペイロードは同じまたは異なる懸濁溶液であり、それはまた、細胞内に送達しようとする組成物も含む。

0038

本デバイスの利点には、所望のペイロードの改変を回避すること、および、ペイロードを必ずしも電磁場や他の形態のストレスに曝露するわけではないことが含まれる。エレクトロポレーションに関して、係る方法はタンパク質を損傷させ、送達に関して効果的でないことが示されている。この重大な欠点は、本明細書に記載の方法では問題とならない;本方法は、繊細なペイロード、例えばタンパク質、特に大型のタンパク質(例えば、40kDa〜70kDa、および最大で120、130、150、200kDaまたはそれ以上)、大型の核酸構築物(例えば、1kb、2kb、5kbまたはそれ以上の核酸重合体および最大で染色体全体までを含むプラスミドおよび他の構築物)、大型の化合物、ならびに量子ドット(例えば、直径12nm)、ならびに繊細であって電気への曝露によって容易に損傷されることが判明している他の材料などの送達に特に適している。例えば、ナノ粒子または量子ドット上の表面リガンドは、電場に応答して損傷されるかまたは荷電して、それ故に粒子凝集をもたらし、それにより、それらの機能性を限定/消失させる恐れがある。制御された傷害方法のさらにもう1つの利点は、細胞を送達用組成物と接触させるタイミングのことである。プロテアーゼ、温度、ならびに電気に対して繊細なタンパク質に特に該当することであるが、より以前の方法と比較すると、細胞は処理後に比較的短期間にわたってペイロード溶液と接触される。また、デバイスはマイクロ流体性質であるため、はるかにより小さい作動容積しか必要とせず、それにより、貴重な生の材料および/または細胞が保存される。また、本デバイスを、エレクトロポレーションまたはリポソームといった既存の送達方法と併用して、各方法の個別での場合に比して大きく強化された送達を生じさせることもできる。

0039

送達されるペイロードの機能的活性流体剪断ストレスと逆相関し、すなわち、細胞膜に加わる物理的歪み、例えば細胞膜の伸展は、剪断ではなく、ペイロードの取り込みを媒介する。従来のナノ粒子送達法は、より多量の材料が細胞の細胞内環境に到達することをもたらしうる;しかし以前の方法は、送達された材料のエンドソーム内への隔離をもたらすという事実のために、それらの方法は、本明細書に記載の方法と比較して、送達された材料の活性がより低くなる。本明細書に記載の方法は、細胞内に送達されたより少量のペイロードによりそれらの他のサイトゾル構成要素へ到達可能であるために、送達された分子の機能的活性がずっと多くなるような、化合物/組成物のサイトゾルへの直接送達を招く。例えば、ナノ粒子を送達するための以前の方法は、細胞内に送達される材料の量を2〜10倍にしたが、エンドソーム内への隔離のために、送達された材料は機能的活性をほとんどまたは全く有さない。本発明のデバイスおよび方法は、エンドソーム区画を回避することにより、以前の細胞内送達法のこの短所を克服する。

0040

さらなる利点および特徴として、以前のアプローチよりもはるかに速い、処理の時間尺度および細胞速度が挙げられる。さらに、例えば、(細胞の直径に対する%としての)狭窄のサイズ(直径)に対する細胞のサイズ(直径)による判断では、他の方法は本方法ほど激しく細胞を押しつぶすことはない。この急速で、力強く、しかし致死的には至らない(sub-leather)押しつぶしまたは変形は、細胞による、より優れた、ペイロードのサイトゾルへの直接取り込みを導く。細胞の変形は急激であり、すなわち、実質的に1μs〜1msで起こる。一般に、あまりにも大きい変形によって誘導される細胞ストレスは細胞に致死的となりうるが、一方でそれと同時に、あまりにもわずかなストレスは細胞擾乱を誘導しない。このため、本主題は、一時的擾乱を誘導するのに十分なストレスを引き起こすが、擾乱が永続的で細胞にとって致死的となるほど大きいストレスは引き起こさない方法およびシステムを提供する。

0041

上記の方法の任意のものが、インビトロエクスビボまたはインビボで実行される。インビボ用途の場合には、例えば、インライン(in-line)ステントのように、デバイスを血管内腔に植え込むこともできる。本発明のこれらの能力および他の能力は、本発明それ自体とともに、添付の図面、以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲を綿密に読むことにより、より十分に理解されるであろう。

図面の簡単な説明

0042

図1aは、マイクロ流体システムの概略図である。細胞は、狭窄を通った後に送達用材料(ペイロード)に曝露される。図1bは、マイクロ流体システムの概略図である。細胞は、送達用材料(ペイロード)を含む溶液中に細胞を懸濁させることによって、プロセスの全体を通じて送達用材料(ペイロード)に曝露される(例えば、細胞は狭窄を通る前および後に送達用材料に曝露される)。
図2Aは、マイクロ流体システムの1つの態様の概略図である。図2Bは、深さ、幅および長さを描写している、マイクロ流体システムの説明図である。
マイクロ流体システムの概略図である。
細胞壁における擾乱を示している概略図である。
マイクロ流体システムの写真である。
マイクロ流体システムの写真である。
マイクロ流体システムの写真である。
図8a〜8bは、マイクロ流体システムから得られた例示的な結果を示しているグラフである。
マイクロ流体システムを用いて処理された細胞から得られた例示的な結果を示しているグラフである。
マイクロ流体システムを用いて処理された細胞から得られた例示的な結果を示しているグラフである。
マイクロ流体システムを用いて処理された細胞から得られた例示的な結果を示しているグラフである。
マイクロ流体システムの概略図である。
マイクロ流体システムを用いて処理された細胞から得られた例示的な結果を示しているグラフである。
マイクロ流体システムを用いて処理された細胞から得られた例示的な結果を示しているグラフである。
マイクロ流体システムを用いて処理された細胞から得られた例示的な結果を示しているグラフである。
図16a〜16fは、例示的なマイクロ流体システムの概略図である。
マイクロ流体システムを用いる方法に関する流れ図である。
図18a〜18bは、マイクロ流体システムを用いて処理された細胞から得られた例示的な結果を示しているグラフである。
本主題を用いて量子ドット(QD)が送達された処理細胞の透過および共焦点蛍光画像の重ね合わせ図と、それに続いて、z断面(z-section)共焦点蛍光画像を示したものである。
図20Aは、ポリ-イミダゾールリガンド(PIL)をコーティングしたQDによる本主題の処理時のHeLa細胞サイトゾル中への送達効率を図示している。フローサイトメトリーによる測定で、細胞生存度は80%を上回った。図20Bは、ヨウ化プロピジウム染色およびフローサイトメトリー測定によって測定した、本主題によるプレーン(plain)QD535の送達時のHeLa細胞の生存度を図示している。
構築物のデザインを図示している。
構築物の吸光度およびさまざまな媒質中での安定性を図示している。
図22Aは、処理細胞および対照細胞生細胞共焦点顕微鏡画像を図示している。図22Bは、緑および赤のチャンネルにおける、時間の関数としての処理細胞の強度の変化を図示している。
平均細胞蛍光のフローサイトメトリー測定を図示している。
平均細胞蛍光および生存度のフローサイトメトリー測定を図示している。
10nM量子ドット溶液によるデバイス処理後の細胞サイトゾル内での非凝集性の単一の量子ドットの落射蛍光画像化、および自己蛍光を伴う3種の量子ドットの点滅軌跡を図示している。
送達成績が細胞速度および狭窄デザインに依存することを示す実験結果を図示している。
共焦点顕微鏡検査によって測定した、パシフィックブルー結合3kDaデキストランの送達後のHeLa細胞の種々の水平面のスキャンを図示している。
孔の開いた(porated)膜を交差しての細胞内への材料の受動拡散シミュレートしている単純化2D拡散モデルを図示している。
材料の二段重ね式送達の結果を図示している。
SiRNA、タンパク質およびナノ粒子の送達に関するデータを図示している。
細胞型間での本主題の適用可能性を図示している。
ナノ材料および抗体送達によるデータを図示している。
タンパク質送達の用途を図示している。
ペイロードの送達が成功した例示的な細胞型の表である。
患者の血液を高分子などのペイロードの送達のためにマイクロ流体デバイスによって処理するシステムの説明図である。
ペイロードを送達するために10μm-6μmデバイスで処理したヒト胚性幹細胞の送達効率および生存度を図示している。
本主題を用いた融合リプログラミングタンパク質の直接送達によるマウスおよびヒトiPSC株の作製および特性決定を描写している。
本主題を用いた融合リプログラミングタンパク質の直接送達によるマウスおよびヒトiPSC株の作製および特性決定を描写している。
予備的タンパク質リプログラミングの結果を描写するとともに、iPSCコロニーにおけるヒト胚性幹細胞マーカーOct4、SSEA-4、Tra-60、Tra-80、アルカリホスファターゼAP)の発現を描写している。
局部的な電場をチャンネル内に導入することによって細胞変形をエレクトロポレーションと組み合わせるために、フォトリソグラフィーパターニングおよびAu沈着によって狭窄の両側に電極を組み込むことにより改変されたデバイスを図示している顕微鏡写真を描写している。
入口部分が90度の狭窄角度を有する、マイクロ流体システムのもう1つの態様を描写している。
図40Aおよび40Bは、図2Aに描写された例示的態様によるデバイスと、図39に描写された例示的態様によるデバイスとの間での生存度および送達効率の比較を示しているプロットである。
CD45に対するAlexa 488抗体によって測定した、活性化T細胞のCD45発現のヒストグラムである。CD45サイレンシングRNAの存在下でデバイスによって処理した細胞はより低い蛍光強度ピークを呈し、これにより、CD45遺伝子発現のノックダウンが指し示される。
再生医学;免疫学;画像化およびセンシング;ならびに癌ワクチンおよび癌研究といった、いくつかの例示的な適用分野を描写している説明図である。
図43Aおよび43Bは、カスケードブルー結合3kDaデキストランに曝露した対照集団、および30μm-6μmデバイスに供した上で3kDaデキストランに曝露した細胞の集団のフローサイトメトリーの強度ヒストグラムである。
マイクロ流体デバイスおよび関連した方法を用いる処理後のヒト胚性幹細胞におけるGFPノックダウンを図示している棒グラフである。

0043

詳細な説明
本発明の諸態様は、細胞膜における擾乱を引き起こす目的で、細胞に所定の時間にわたって制御された変形を加え、その結果、材料を細胞の内部に送達しうるようにするための手法を提供する。変形は、例えば、機械的歪みまたは剪断力によって誘導される圧力によって引き起こすことができる。1つの例では、マイクロ流体システムは、流体を幾何形状的に小規模(例えば、1ミリリットル未満の容積、例えばマイクロリットルナノリットルまたはピコリットルなど)に制限することによって流体を制御および/または操作する構造を含む。マイクロ流体システムは、事実上あらゆるペイロードを細胞へと細胞内送達することが可能である。本システムは、細胞が通る狭窄を備えた、1つまたは複数のマイクロ流体チャンネルからなる。好ましくは、細胞は、システムを通るように圧力駆動される液体媒質中に懸濁されて、マイクロ流体チャンネルを通じて流れる。細胞が狭窄を通ると、その膜が擾乱されて膜における一時的破損を引き起こし、周囲の媒質中に存在するペイロードの取り込みをもたらす。狭窄は標的細胞のサイズの関数であるが、好ましくは、細胞直径と同程度であるか、またはそれよりも小さい。複数の狭窄を並列および/または直列に配置することができる。細胞における擾乱とは、材料が細胞外から細胞内に移動することを可能にする、細胞における割れ目(例えば、穴、裂け目、空隙、開口部、孔、断裂(break)、ギャップ穿孔)のことである。本明細書に記載の方法によって作り出される擾乱(例えば、孔または穴)は、補体または細菌溶血素によって作り出されるもののような、タンパク質サブユニット集合による多量体孔構造の形成の結果として形成されるのではない。他の態様も、記載される主題の範囲内にある。

0044

図1〜3を参照すると、マイクロ流体システム5は、管状内腔を定めるチャンネル10を含む。マイクロ流体チャンネル10は、好ましくは一度に単一の標的細胞20のみが狭窄15を通り得るように構成された狭窄15を含む。好ましくは、細胞20は、送達用材料30をも含む緩衝溶液25中に懸濁されてチャンネル10を通り得るが、送達用材料を、細胞20が狭窄15を通った後に溶液緩衝液25に添加することもできる。細胞20が狭窄15に接近して通る際に、狭窄15は細胞20に圧力(例えば、機械的圧縮)を印加して、細胞20を圧搾する(例えば、細胞201として示されているように)。狭窄15によって細胞に印加される圧力は細胞膜における擾乱(例えば、図4に示された穴)を引き起こす(例えば、細胞202)。ひとたび細胞が狭窄15を通ると、細胞20は、送達用材料30を含む、緩衝溶液25中の材料を穴を通して取り込み始める(例えば、細胞203)。細胞膜は時が経つにつれて元に戻り、送達用材料30の少なくとも一部分は、好ましくは細胞の中に捕捉されたままで保たれる。

0045

狭窄15の形状構成(configuration)をカスタマイズして、細胞20の狭窄を制御し、それによって細胞20に印加される圧力を制御することができる。好ましくは、狭窄15は入口部分35、中心点40および出口部分45を含む。例えば、狭窄15の直径を、細胞に印加される圧力(およびどの程度迅速に圧力が印加される/解除されるか)を調整するために変更することができ、かつ、狭窄15の長さを、圧力が細胞に印加される時間を調整するために変更することができる。ある形状構成においては、細胞の物理的狭窄は必要でなく、むしろ細胞を非常に高い剪断速度(sheer rate)および/または圧縮速度にごく短時間供することにより、所望の擾乱が引き起こされ得る。一般に、マイクロ流体システムの外径に関する必要条件はなく、内径と外径との比はさまざまであってよい(例えば、5を上回る)。

0046

中心点40の直径は、細胞20の直径の関数でありうる。好ましくは、中心点40は、細胞20の直径と同程度であるか、またはそれよりも小さい(例えば、細胞の直径の20〜99%)。好ましくは、中心点40の直径は細胞の直径の60%〜70%であるが、最適な中心点直径は用途および/または細胞型によって異なりうる。従来の実験で用いられてきた中心点40の例示的な直径は、5〜6μm、および7〜8μmである。また、中心点40は細胞20の直径より大きくてもよいが、細胞20に印加される圧力(例えば、剪断)のパルスを引き起こすように構成される。そのような圧力は、細胞20に対して、それがチャンネル10の壁に触れなくても印加することができる。剪断作用は、公知の手法によって測定することができる(例えば、Journal of Applied Physics 27, 1097 (1956); Murphey et al.)。

0047

入口部分35の狭窄角度(例えば、図2Aにおけるα)は、さまざまでありうる(例えば、直径がどの程度急に減じるか)。狭窄角度は、好ましくは、細胞がそこを通る時に、システム5の目詰まりを最小限に抑える角度である。出口部分45の角度もさまざまでありうる。例えば、出口部分45の角度は、非層流をもたらしうる乱流/渦の可能性を低下させるように構成される(例えば、1〜80度の範囲)。入口部分35および/または出口部分45の壁は好ましくは直線的であるが、他の形状構成も可能である(例えば、壁が湾曲していてもよい)。

0048

チャンネル10、入口部分35、中心点40および出口部分45の断面はさまざまでありうる。例えば、さまざまな断面とは、円形、楕円形、細長いスリット、四角形、六角形、三角形などであってもよい。中心点40の長さもさまざまであってよく、細胞20が狭窄15を通る際にそれに対して圧力が印加される時間を変更するように、調整することができる。ある所与流速では、狭窄15が長いほど(例えば、中心点40が長いほど)、細胞20に対してより長い期間にわたって圧力を印加することができる。チャンネル10、入口部分35、中心点40および出口部分45の深さはさまざまでありうる。例えば、深さは、より狭い狭窄をもたらし、それによって狭窄幅の変化に類似した様式で送達を強化するように調整することができる。幅および長さ(lenge)はデバイスデザイン毎にさまざまであってよく、リソグラフィー段階に用いられるクロムマスクなどによって、デバイスの製造時に決定することができる(デバイスがシリコンベースの場合)。深さはチャンネルの全体を通じて均一であってよく、ディープ反応性イオンエッチング段階などによって、デバイスの製造時に決定することができる。深さは、例えば15μm〜20μmでありうる。本明細書で用いる場合、デバイス寸法は、長さ、幅および狭窄の数を指し示す一連数字によって表される(例えば、30μm-6mx5は、長さ30μm、幅6μmおよび狭窄5つのデバイスを表す)。

0049

細胞20への送達用材料30の送達を制御するために、細胞20がチャンネル10を通る速度も変更することができる。例えば、チャンネル10を通る細胞20の速度の調整により、細胞に圧力が印加される時間を変更すること、および細胞に圧力がどの程度急速に印加されるか(例えば、緩徐的または衝撃的に)を変更することができる。細胞20はシステム5を少なくとも0.1mm/秒の速度で、例えば0.1mm/秒間〜5m/秒、好ましくは10mm/秒間〜500mm/秒の速度で通るが、他の速度も可能である。いくつかの態様において、細胞20はシステム5を、5m/秒を上回る速度で通り得る。

0050

チャンネル10は、シリコン、ガラスセラミック結晶基板非晶質基板およびポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレートPMMA)、PDMS、環状オレフィンコポリマー(COC)など)といったさまざまな材料で製作することができる。製作は好ましくはクリーンルームを利用したものであり、例えば、ドライエッチングウェットエッチング、フォトリソグラフィー、射出成形レーザー焼灼、SU-8マスクなどを用いることができる。1つの例示的なチャンネル10は長さがおよそ40〜50μmであり、およそ50μmの非狭窄部直径を有し、かつ、およそ4〜8μmの狭窄部直径を有する。好ましくは、チャンネル10の長さは目詰まりを避けるように短く保たれる。他の寸法も可能である。

0051

図39は、マイクロ流体システムのもう1つの態様を描写している。この態様において、チャンネル10は、細胞20を締めつけない(constrict)予備的入口部分50を含む。拡張されたチャンネル部分55は、90度の狭窄角度(例えば、図2Aにおけるα)を有するような入口部分35をもたらす。

0052

図40Aおよび40Bは、2つの例示的な態様間での生存度および送達効率の比較を示している2つのプロットである。ラベル4000は、図2Aによる態様を用いた場合に得られた測定値を指示しており、一方、4010は図39による態様を用いた場合に得られた測定値を指示している。同じ細胞速度および動作圧力の場合、図39の態様が高い送達効率および生存度を有することが示された。これは、図2Aの態様と同程度の剪断速度、細胞速度および圧縮下に置かれた時間にもかかわらず、そうである。

0053

いくつかのパラメーターが、細胞20内への送達用材料30の送達に影響を及ぼしうる。例えば、狭窄15の寸法、動作流速(例えば、狭窄15への細胞移動時間)、緩衝溶液25中の送達用材料30の濃度、および狭窄の後に緩衝溶液25中で細胞20を回復させる/インキュベートする時間は、細胞20内への送達用材料30の吸収に影響を及ぼしうる。細胞20内への材料30の送達に影響を及ぼしうるそのほかのパラメーターには、狭窄15における細胞20の速度、狭窄20における剪断速度、流速に対して垂直である速度成分、細胞圧縮速度、および狭窄内にある時間が含まれうる。そのようなパラメーターを、送達用材料30の送達を制御するために設計することができる。緩衝溶液25の組成(例えば、塩濃度血清含有量など)も、送達用材料30の送達に影響しうる。細胞20が狭窄15を通る際に、狭窄15によって誘導される変形/ストレスが、細胞への傷害を一時的に引き起こし、これが擾乱を通じての材料の受動拡散を引き起こす。いくつかの態様において、細胞20は、細胞シグナル伝達機構を通じてアポトーシス経路が活性化される見込みを最小限に抑えるために100μs程度のごく短期間しか変形されないが、他の持続時間も可能である(例えば、ナノ秒から数時間の範囲)。初期の観察所見により、細胞20による送達用材料30の吸収は、細胞20が狭窄15を通った後、数分程度で起こることが指し示されている。

0054

細胞20は、さまざまな方法によって、チャンネル10を通り抜けるように駆動させることができる。例えば、圧力を入口側にあるポンプ(例えば、高圧ガス容器または圧縮機)によって印加してもよく、出口側にある真空ポンプによって陰圧を印加してもよく、チューブを通じての毛管作用でもよく、および/またはシステム5が重力送り式であってもよい。押し退け(displacement)に基づく流動システムを用いることもできる(例えば、シリンジポンプ、ペリスタポンプ、手動シリンジまたはピペット、ピストンなど)。単一のチャンネル10を通る例示的な流速は、数秒間に1μl程度である。さらに、緩衝溶液25は、チャンネル10の目詰まりを減少させるかまたは消失させかつ生存度を向上させるように設計しうる、1つまたは複数の潤滑剤(プルロニックまたは他の界面活性剤)も含みうる。

0055

システム5は、送達用材料30の送達数量が細胞集団全体を通じて確実に一定であるように制御することができる。例えば、システム5は、送達用材料30を細胞20の透過化細胞膜に対して衝突させる狭窄後対送達機構の使用を含みうる。二次流の流速を制御することにより、細胞にもたらされる送達用材料30の数量を、好ましくは制御することができる。さらに、膜回復時の緩衝溶液25中の送達用材料30の濃度を制御することにより、細胞の集団への送達用材料30の送達の均一性を向上させることもできる。好ましくは、システム5は、いかなる電場および/または化学物質も適用されない純粋に機械的なシステムとして動作するが、他の形状構成も可能である(例えば、蛍光などの細胞特性を測定するために電気的および/または光学的センサーを用いることができる)。さらに、システム5は好ましくは、送達される材料の種類とは無関係に動作する。例えば、タンパク質、RNAおよびDNAを、いかなるさらなる改変も伴わずに同じシステムを通じて送達することができる。

0056

ある種の細胞20を用いるいくつかの形状構成においては、細胞20を、細胞の内部への送達用材料の吸収を助ける1つまたは複数の溶液中でインキュベートすることができる。例えば、アクチン細胞骨格脱分極させるために、送達の前に1時間、ラトランクリンA(Lantrunculin A)(0.1μg/ml)などの脱重合溶液中で細胞20をインキュベートすることができる。さらなる一例として、微小管網を脱分極させるために、送達の前に2時間、10μMコルヒチン(Sigma)中で細胞をインキュベートすることもできる。これらの方法は、DNAを送達する場合に遺伝子発現を得る上での一助となりうる。

0057

同じく図5も参照すると、システム5の並列の形状構成の写真が示されている。システム5は、任意の数の並列チャンネルを含みうる。好ましくは、追加的な並列チャンネルをシステム5に加えると、システム5の総スループットを高めることができる。図6は、チャンネル10のそれぞれの注入口にフィルターを含むシステム5の並列の形状構成の写真を示している。さらに、図6はまた、複数の段を含む入口部分35を含む狭窄15の形状構成も示している。同じく図7も参照すると、システム5のプロトタイプの追加的な写真が示されている。図7で明らかなように、インキュベーションウェルを含むプロトタイプは、およそ1インチ×1/4インチ×1/4インチの寸法を有する。システム5の他の形状構成はまた、ソーター、処理前/処理後モジュール、および/またはセンサーモジュール(例えば、光学的、電気的および磁気的)も含みうる。

0058

これらの実施例に関して以下により詳細に説明するように、マイクロ流体システムおよび関連した方法は広範囲にわたる用途を有する。図42は、いくつかの例示的な適用分野を描写している説明図である。例えば、本主題を、細胞リプログラミングおよび幹細胞分化を可能にするといった目的で再生医学に適用することができる。本主題を、樹状細胞、単球、T細胞、B細胞および他のリンパ球への送達を通じての免疫活性の抗原提示および強化/抑制といった目的で免疫学に適用することができる。さらに、画像化およびセンシングも、標的細胞への量子ドット、カーボンナノチューブおよび抗体の送達の向上によって恩恵を受けることができる。さらに、本主題は、流血中腫瘍細胞(CTC)の単離およびリンパ腫治療といった目的で癌ワクチンおよび研究における用途も有する。本方法はまた、疾患を治療すること、または細胞挙動を操作することが可能な活性siRNAおよび小分子化合物をスクリーニングするための強固なプラットフォームも提供する。

0059

この概念は、緩衝溶液25中に存在する、通常であれば膜不透過性の色素(例えば、分子質量3kDA〜2MDAの蛍光性色素)、DNA、タンパク質、RNA、ナノチューブまたはナノ粒子を取り込むように細胞20を誘導したプロトタイプにおいて、実証が成功した。細胞20は、この過程の後に回復および増殖すると同時に、送達された材料を72時間を超えて保持することが示された。図33に列記されたものを含め、11種の異なる細胞型をこのシステムで試験したところ、本システムが種々の細胞型において強固な成績をもたらすことが実証されている。図33は、本主題の適用が成功した細胞型を含む表である。単一のチャンネル10を用いて、平均細胞スループットは細胞5,000〜20,000個/秒のオーダーで測定され、平均送達効率は96%と測定され、細胞生存度は95%と測定された。試験はすべて室温で行った。しかし、ある種の手法では、温度を変更してもよい。例えば、本方法は、室温(例えば、20℃)、生理的温度(例えば、39℃)、生理的なよりも高い温度もしくは低い温度(例えば、4℃)、またはこれらの例示的な温度間の温度で実施することができる。本方法を低温(すなわち、例えば、冷却、氷浴または他の公知の手法によって達成しうる実質的に4℃付近)で行うことにより、送達効率および細胞生存度の驚くべき向上が生じた。このように、温度を調整することにより、組成物送達および細胞生存度に影響を及ぼすことができる。

0060

図8a〜bに示されているように、狭窄15を通る細胞速度を高めることにより、送達用材料30の送達率および送達効率を高めうることが見いだされた。送達効率は細胞速度とともに直線的に変化すること、および用量依存的反応がみられることが見いだされた。

0061

図9に示されているように、細胞が狭窄15を通った後の緩衝溶液25中での細胞のインキュベーション時間は、細胞20への送達用材料30の総送達率に影響を及ぼしうる。しかし、ある一定のインキュベーション時間(およそ2〜3分)後には、送達率は実質的に不変となることが認められた。このデータによれば、細胞20が狭窄15を通った後にそれに生じる擾乱は、細胞20が狭窄15を通った後約5分以内のオーダーで是正されると考えられる。さらに、参考までに、-1分が対照群に対応する。

0062

図10に示されているように、細胞20を狭窄15に複数回通すことは総送達率に影響を及ぼしうるが、それは細胞20の総生存度には負の影響を及ぼすことが観察された。このデータを生成するため、細胞を狭窄15に通し、収集した上で、およそ1分以内に再びデバイスに通した。

0063

細胞20が擾乱されている期間中(例えば、狭窄15を通した後)には、細胞内からの材料を該擾乱を通じて抽出されうることが観察された。したがって、細胞20が擾乱されると、材料が細胞20に流入することもそこから流出することも可能であることが見いだされた。この特性は、システム5が、細胞を溶解させずに細胞内材料の試料採取を行う方法として使用可能であることを意味する。細胞膜における擾乱は、好ましくは、細胞質からの高分子の流出をもたらすと考えられ、それ故に細胞質の組成を探索するために用いうる。

0064

図11に示されているように、安定して緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するHeLa細胞を、GFPサイレンシングsiRNA(Ambion, U.S.A)の存在下で処理し、48時間の時点でFACS(FACS CantoII, BD Biosciences, U.S.A.)によって蛍光ノックダウンに関して分析した。図11における結果は、40%を上回る遺伝子発現のノックダウンを指し示している‐これはリポフェクタミン2000(Lipofectamine 2000)(Invitrogen, U.S.A)などの市販の試薬のそれと同等な結果である。同じく図11では、スクランブルsiRNA対照により、このノックダウンが変形過程それ自体によっては引き起こされないことが指し示されている。

0065

図13〜14に示されているように、圧搾寸法は、送達用材料30の総送達効率に影響を及ぼしうる。例えば、図13〜14は、動作圧力を変更すると(例えば、狭窄15の長さおよび/または幅を変更することによって)、総送達効率が幾分変化することを示している(図14は、種々の条件下での量子ドット(ナノ粒子)の送達に関する)。その上、図18a〜18bに示されているように、推定細胞速度も送達用材料30の総生存度および送達効率に影響を及ぼしうる。例えば、図18aは、動作速度が変化すると、総送達効率が幾分変化することを示している。さらに、図18bは、動作速度が変化すると、細胞の生存度が幾分変化しうることを示している。これらの図は、狭窄の長さの変化が、送達を促進する一方で生存度には最小限にしか影響しないことを示している。さらに、大きな分子は狭窄の後、より小型の分子よりも低い速度で細胞に入る。本明細書に記載のこの細胞内送達方法は、それが非常にさまざまな種類の材料および細胞に対して奏功するという点で「汎用的(universal)」である。さらに、このデバイスによって誘導される膜破損は典型的には少なくともほぼ100nmのサイズでありうるが、他のサイズの破損も可能である。

0066

図12を参照すると、1つの実施においては、緩衝溶液25とサイトゾルとの間の濃度勾配を制御することで、送達される材料の量を予想通りに制御することができる。細胞20が狭窄によって穿孔を受けた後に、細胞20を濃縮された一群の高分子に曝露する局部的送達法を用いることができる。しかし、そのような局部的送達法は、適正な機能が確実に得られるように、推定される擾乱再封鎖時間を考慮に入れるべきである。これは、細胞膜の近傍に高濃度のペイロードを送達する、チャンネルに対して垂直な「マイクロノズル」を組み入れることによって実現することができる(図6Aに図示されている)。好ましくは、マイクロノズルは、狭窄15の箇所および/またはその付近に配置しうる。そのようなアプローチは、拡散性送達機構に対流成分を補い、それ故により高濃度でのより正確な細胞ローディングを可能にしうると考えられる。好ましくは、注入は、細胞20が狭窄15の高濃度領域にある時に起こる。局部的手法には、緩衝液全体を高濃度に維持する必要がなくなることから、貴重な送達用材料が節約されるというさらなる利点がある。

0067

図16aを参照すると、一連のマイクロピラー100を用いて、擾乱が引き起こされるように細胞20に圧力を印加することができる。この実施において、細胞20は、圧力が細胞20に印加される様式で狭窄性ピラーアレイ強制的に通される。

0068

図16bを参照すると、圧縮プレート105を用いて、擾乱が引き起こされるように細胞20に圧力を印加することができる。この実施において、圧縮プレート105は、圧力が所定の時間にわたって細胞20に印加されるように制御することができる。圧縮プレート105は、細胞20に圧力を印加するように一方または両方のプレートが動くように構成することができる。細胞20が実質的に取り囲まれるように、圧縮プレート105のもう1つのセットを供給することもできる。

0069

図16cを参照すると、細胞20が細胞20の直径よりも大きい狭窄15を通る際に圧搾をシミュレートするために、緩衝液添加剤115(または細胞表面に結合した増量(bulking)材料)を用いることができる。例えば、緩衝液添加剤115による干渉に起因する狭窄のシミュレートが可能である。緩衝液添加剤115の例には、微粒子またはナノ粒子(例えば、ポリマーベースの、脂質ベースの、セラミックベースの、金属製のものなど)が含まれる。これらの粒子は、抗体、DNA配列、ペプチドまたは小分子などの細胞結合性リガンドによって標識されるが、これが不可欠なわけではない。

0070

図16dを参照すると、ビーズ120を用いて細胞20を圧縮することができる。例えば、磁力および/もしくは静電力を用いて細胞20に圧力を印加することができ、または図16eのケースでは、細胞20を引っ張ることができる。好ましくは、細胞20に印加される力は擾乱を引き起こすのに十分である。

0071

図16fを参照すると、複数の流体流125を、細胞20の圧縮(または急速なごく短時間の剪断)が引き起こされるような様式で向かわせることができる。例えば、複数の流体流125を、それらが互いに接近するかまたは衝突するような様式で作動させることができる。細胞20が複数の流体流125を通る際に、細胞20の膜における擾乱が引き起こされるように細胞20に力を印加することができる。または、送達を促進するために狭いスリット様ノズルを通して細胞を作動させることもできる。

0072

システム5は図7に示されているもののような独立型システムであってもよいが、他の形状構成も可能である。例えば、システム5を、局所的細胞内送達のためにインビボで患者に移植してもよく、または細胞を患者に戻す前に細胞を処理するためにエクスビボで機械に組み入れてもよい。

0073

本明細書に記載したその送達上の利点に加えて、本システムのマイクロ流体的な性質により、送達条件全体での正確な制御、前処理、およびその後の細胞の特性決定も行うことが可能である。例えば、本システムに、蛍光活性化細胞分取法(FACS)モジュールを直列に実装することができる。これにより、所望の細胞の送達および分取を、同一のシステム上でリアルタイムで行うことが可能である。さまざまな前処理および分取後アッセイ手法を採用することもでき、それにより、薬物スクリーニングおよび診断のための連続的なハイスループットアッセイの開発が可能になる。

0074

標的細胞に送達されるペイロードの送達効率は、標的細胞の対照集団、ならびにマイクロ流体デバイスによる処理を受けた集団をペイロードに供することによって決定される。対照試料を、同一の送達用溶液に、同じ濃度で、デバイスによって処理される細胞と少なくとも同じ時間にわたって曝露する。表面結合、エンドサイトーシス、および自己蛍光などの他の影響を補償するために、送達領域は、生きた対照細胞の上位1〜5%のみがこの領域に入るように定められる。試料の送達効率はそれ故、送達領域にある生細胞のパーセンテージに対応する。例えば、図43Aは、カスケードブルー結合3kDaデキストランに曝露した対照集団のフローサイトメトリーによる強度ヒストグラムである。図43Bは、30μm-6μmデバイスに供した細胞のフローサイトメトリーによる強度ヒストグラムである。定められた送達領域は、43Aおよび43Bのいずれにおいても、陰影のない領域である。

0075

動作においては、図1〜3をさらに参照しながら図17を参照すると、複数の段階を含む、システム5の細胞内送達を行うための過程1000が示されている。しかし、過程1000は例示に過ぎず、限定ではない。過程1000は、段階を追加すること、除去すること、改変すること、または並べ替えることによって改変することができる。

0076

段階1005では、細胞20を、送達用材料30とともに緩衝溶液25に懸濁させる。典型的な細胞濃度は104〜109個/mlの範囲でありうる。送達用材料の濃度は、10mg/ml〜0.1ug/mlの範囲でありうる。損傷/孔が1〜5分間開いたままであることを考えれば、送達用材料は、所望の機構に応じて送達の前または直後に細胞緩衝液に添加することができる。緩衝溶液は、いくつかの塩、糖、増殖因子、動物由来産物、または適正な細胞増殖、細胞の健康状態の維持、もしくは細胞シグナル伝達経路の誘導のために必要な任意の他の成分で構成されてよい。そのほかの材料を緩衝溶液25に添加してもよい。例えば、界面活性剤(例えば、プルロニック)および/または増量材料を緩衝溶液25に添加することができる。

0077

段階1010では、細胞20および送達用材料30を含む緩衝溶液25を、システム5のチャンネル10に通す。緩衝溶液25は、重力を用いてチャンネル10を通すこともでき、他の方法によって補助することもできる。例えば、チャンネル10の入口側で緩衝溶液25に圧力を印加すること(例えば、高圧ガス容器および/または圧縮機を用いて)、および/または出口側上の真空ポンプによって陰圧を印加することができる。さらに、押し退けに基づく流動システムを用いることもできる。

0078

個々の細胞20が狭窄15を通る際に、狭窄15の固い構造(solid construction)によって圧力が瞬間的に細胞20に印加されて、これにより、送達用材料30が細胞20の内側に送達されうるように、穴などの擾乱が細胞膜に生じる。圧力が細胞20に印加される量および/または持続時間は、狭窄15の寸法、細胞20が狭窄15を通る速度を調整することによって、および/または狭窄15の形状を調整することによって変更することができる。1つの形状構成では、狭窄15をおよそ5,000〜20,000個/秒の細胞が通り、各細胞はおよそ100μsにわたって締めつけられる。

0079

システム5は、1つまたは複数のチャンネル10を含みうる。例えば、システム5は、並列の形状構成に並べられた50〜100本のチャンネル10を含みうる。並列の形状構成を用いることにより、チャンネル10の1つまたは複数で目詰まりが起こることの重要性を低下させることができ、システム5の総スループットを高めることができる。さらに、システム5は、互いに直列になった1つまたは複数のチャンネルも含みうる。

0080

段階1015では、細胞20が狭窄15を通った後に、細胞を緩衝溶液25中に置くことによってインキュベート/回復させる。この時間中に、細胞20は、細胞膜における擾乱を通じて、緩衝溶液25中に存在する送達用材料30のいくつかを取り込むと考えられる。より大型の分子がより小型の分子よりも遅い速度で吸収されるようであるため、取り込みの1つの機序は、拡散に基づくものである。好ましくは、細胞20を2〜5分間のオーダーで緩衝溶液25中でインキュベート/回復させるが、他の持続時間も可能である。細胞20を緩衝溶液25中でインキュベート/回復させている時間中に、細胞20内部の材料も細胞から緩衝溶液25中に放出されうる。インキュベーション/回復期間の間、送達用材料30の送達数量が細胞集団全体で一定であることを確実にするために、ある特定の条件を制御することができる。例えば、狭窄後に、送達用材料をインキュベート/回復中の細胞に衝突させる対流送達機構を用いることができる。

0081

任意で、段階1020において、細胞をインキュベート/回復させた後に、緩衝溶液を除去するために細胞を洗浄してもよい。好ましくは、洗浄は、擾乱を修復させるために必要な期間の後に行われるが、細胞によって吸収される送達用材料30の量を制御する目的で、洗浄を他の時点で行うこともできる。

0082

実施例1‐機能的に操作されたナノ粒子の送達
操作されたナノ材料は、生細胞画像化ツール、治療用分子送達物質として、またはさらには、光照射野もしくは磁場といった外的操作手段(external handle)によって生細胞を操作するための手法としても、計り知れない潜在能力を有する(Howarth, M., et al. Monovalent, reduced-size quantum dots for imaging receptors on living cells. Nature Methods5, 397-399 (2008))。しかし、これらの潜在的な用途の大半は、ナノ材料が細胞内のサイトゾルに送達されることを必要とする。QDなどのほとんどのナノ粒子は、水性媒質中での可溶性を付与するポリマーによってナノ粒子を被膜保護することを必要とし、これは一般に、それらが細胞膜を交差して受動拡散することを防ぐ。ナノ粒子のマイクロインジェクションは、特殊な装置の必要性およびスループットの低さに加えて、エレクトロポレーションが細胞の内側でQD凝集を引き起こすという理由から、非現実的とみなされている。このため、QDを細胞質中に送達するための試みのほとんどは、細胞によるエンドサイトーシスを受けて、エンドソームからは回避するQDに依拠してきた。本主題よりも前には、満足の行く規模変更可能な様式で、QDを細胞質中に送達することは不可能であった。それらのシステム(they system)は、より以前のアプローチのこの送達問題に対する解決策を提供する。

0083

マイクロ流体デバイスを、最近記載された新世代の生体適合性QDと組み合わせる(Liu, W., et al. Compact biocompatible quantum dots via RAFT-mediated synthesis of imidazole-based random copolymer ligand. JACS 132, 472-483 (2010))。実施例1の全体を通じて用いられるQDは、複数の金属キレートイミダゾール基および複数の水溶性を付与する被膜保護性ポリ(エチレン)グリコール(PEG)で構成されるポリ-イミダゾールリガンドでコーティングした。

0084

QDのサイトゾル送達のために、QDを含有するPBS溶液中に細胞を分注した。この細胞-QD溶液をピペットでマイクロ流体デバイスに注ぎ、溶液を一定圧力でチャンネルを通り抜けさせた後に、5分間のインキュベーション期間をおいた。このインキュベーション期間の後に、余分なQDを遠心分離によって分離した。対照集団については、細胞-QD溶液をマイクロ流体デバイスに入れて、細胞をサイトゾル送達プロトコールと等しい時間にわたってQD溶液に曝露した。

0085

図19は、本主題を用いてQDが送達された処理細胞の透過および共焦点蛍光画像の重ね合わせ図と、それに続いて、z断面(z-section)共焦点蛍光画像を示したものである。図19は、(上)処理(すなわち、送達)の直後、ならびに(下)37℃および5%CO2下での48時間のインキュベーション後を図示している。びまん性染色パターンは細胞質に限局されており、ナノ粒子は核(細胞内の暗い領域)には入っていないように思われる。スケールバーは10μmである。図19において撮像されたQDをコーティングした特定の遊離性ポリ-イミダゾールリガンドは、PEG基を介して生体適合性をもたらすこと以外には機能を有しなかった。これらの共焦点顕微鏡画像は、マイクロ流体デバイスを通った後の、剥離された丸いHeLa細胞が、細胞の種々のz断面の全体を通じて、びまん性の細胞質QD染色を有したことを示している(図19、上)。このびまん性染色は、5% CO2、37℃での細胞のインキュベーションおよび付着後の、48時間後にも存続していた(図19、下)。びまん性QD蛍光は48時間後の時点では不明瞭であるが、これは細胞分裂に起因する可能性が高い(図19)。本デバイスは、QD(流体力学直径はほぼ13nm)を、生細胞集団のほぼ40%に、ほぼ10,000個/秒というスループット速度で送達した。図20Aは、PILでコーティングしたQDによる本主題の処理時のHeLa細胞サイトゾルへの送達効率を図示している。フローサイトメトリーによる測定で、細胞生存度は80%を上回った。図20Bは、ヨウ化プロピジウム染色およびフローサイトメトリー測定によって測定した、本主題によるプレーン(plain)QD535の送達時のHeLa細胞の生存度を図示している。フローサイトメトリー、共焦点画像でのびまん性染色、および細胞の付着能力によって測定される処理細胞の生存度は、生細胞の細胞質中へのQDの送達と一致している。

0086

蛍光が、エンドソーム内に隔離されたQDではなく、サイトゾル中に送達されたQDから実際に生じていることを確かめるために、サイトゾルの還元性環境との相互作用によってその発光プロフィールが変化するナノ粒子を設計した。細胞質内部の還元電位は-260〜-220mVであり、これは主として、トリペプチドであるグルタチオンが高濃度(5〜10mM)に維持されることによって定められる。このため、サイトゾル環境に曝露された場合に発光が変化するQD-色素構築物の蛍光を測定することにより、送達されたナノ粒子の局在および化学的到達性を判定することができる。還元しうるジスルフィド結合を介してコンジュゲートされた、カルボキシ-X-ローダミン(Rox)色素(λemission=610nm)に対するエネルギー供与体として作用する緑色発光性QD(λemission=541nm)を含むQD-色素を構築した。

0087

図21は、構築物のデザイン、吸光度およびさまざまな媒質中での安定性を図示している。2100にあるのは、色素とのコンジュゲーションおよびQDのコーティングの前のPIL(左)、ならびに結果的に生じるQD-ジスルフィド-Rox構築物(右)の概略である(画像は縮尺通りではない)。2110にあるのは、QD-ジスルフィド-色素構築物の吸光度スペクトルである。実験全体を通じて、488nmおよび405nmでの励起により、QDによる排他的吸収が得られた。2120にあるのは、37℃および5%CO2下での完全培地中での構築物に関するQDからRoxへの蛍光エネルギー転移の安定性であり、これはジスルフィド結合が細胞外環境で切断されないことを実証している。プロット2130は、QD蛍光の回復によって示される、サイトゾル性還元物質グルタチオンによるジスルフィド結合の切断を図示している。2140では、非チオール性還元物質であるトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンによる処理時のQD蛍光の回復が示されており、これはジスルフィド結合の切断のさらなる裏づけとなる。

0088

PILに組み入れられたチオール基は、チオール化されたRox色素とジスルフィド結合を形成した。精製された構築物の吸光度スペクトルは、QDおよびRoxの両方の吸光度の特徴を有し(2120)、QD 1個当たりRox色素が平均13個であり、QD蛍光を事実上消光させる(2130)。この構築物は、サイトゾル中の特異的還元環境非可逆的センサーとして役立つ。ジスルフィド架橋無傷のままで、488nm(顕微鏡検査)または405nm(フローサイトメトリー)のレーザーによってQDが選択的に励起されると、この構築物は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を起こし、その結果、赤色域にあるRox発光が優勢となる。溶液アッセイでは、細胞性還元物質グルタチオンがジスルフィド架橋を切断して、Rox色素を放出させ、QD蛍光を回復させる(2140)。非チオールベースの還元物質であるトリス-(2カルボキシエチル)ホスフィンもQD蛍光の回復が可能であり、このことはQD表面からのRoxの放出がグルタチオンによるPILの押し退けを介するのではないことを指し示している(2140)。Rox蛍光は、PIL上のジスルフィド架橋の一部が長いPEG基によって立体的に妨害されること、および色素とQD表面との間にある程度少量の非特異的相互作用が理由となって、完全には消失しない可能性がある。

0089

フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡検査によって測定した、構築物の蛍光プロフィールの変化により、QD-ジスルフィド-Rox構築物の細胞質への送達が確かめられる。還元性サイトゾル環境に曝露されると、ジスルフィド結合の切断により、QDから色素へのFRET過程が途絶する。このため、QDの排他的励起に際して、QDチャンネル蛍光は経時的に増加するが、一方、Roxチャンネル蛍光は減少する。生きたHeLa細胞を、高濃度のQD-ジスルフィド-Roxを伴う溶液中でマイクロ流体デバイスで処理し、5分間インキュベートした上で、余分なQDを除去するために洗浄し、その後に細胞培地に添加した(すなわち、処理細胞)。対照細胞は、マイクロ流体デバイスによって処理する代わりにQD-ジスルフィド-Roxとともに5分間インキュベートし、洗浄した後に、細胞培地の中に入れた。これらの処理細胞および対照細胞のRoxおよびQDチャンネルの蛍光を、共焦点顕微鏡検査およびフローサイトメトリーの両方によって観察した。

0090

図22Aおよび22Bは、QD表面の細胞質染色および化学的到達性を実証している、生細胞共焦点顕微鏡画像および蛍光強度分析を図示している。図22Aは、処理細胞(上)および対照細胞(下)の画像を図示している。びまん性緑色蛍光出現は、処理細胞のみに存在する。スケールバーは10μmである。図22Bは、緑色チャンネルおよび赤色チャンネルにおける時間の関数としての強度の変化を図示している。各時点でnが20未満であったため、総平均蛍光の変動を、0時間の時点に対して標準化することによって補正した。

0091

共焦点顕微鏡下で、処理細胞の細胞質を通じて現れるびまん性蛍光は、強い赤色から強い緑色に進展した(図22Aに示されるように)。対照細胞画像は、輪状の蛍光によって実証されるように、外膜上でのある程度の非特異的な結合を示しており、緑色チャンネルシグナルの増加はみられない。これらの影響は、FRET効果を減少させる、サイトゾル性ジスルフィド結合の予想された切断に一致する。図22Bにおいて、線グラフは、送達された蛍光性材料の細胞間差異を、処理細胞および対照細胞に関する総蛍光、ならびに自己蛍光に関して標準化することによって補正した後の、細胞1個当たりのQDおよびRoxチャンネルの平均強度をプロットしている。処理細胞について、このグラフは、QD蛍光が増加してRox蛍光を上回る、インキュベーション2〜4時間での交差を示している。興味深いことに、処理細胞のRoxシグナルは、9時間後に自己蛍光レベルを上回るところで安定化することが示されている。このことは、還元後にある程度のFRETが残存していた、溶液アッセイによる結果と一致している。観察されたびまん性染色、ならびにQDシグナルの増加およびRoxシグナルの減少は、サイトゾル送達およびその後のジスルフィド結合切断を強く裏づけている。RoxへのFRETによって消光される、対照細胞におけるQD蛍光は、自己蛍光と識別不能であるように思われる。対照細胞は、初期の時点では自己蛍光を上回るある程度のRox蛍光を呈するが、その後は絶えず減少する。このことは、QD-S-S-Roxと細胞の表面との非特異的相互作用、およびそれに続く構築物の媒質中への再溶媒和(re-solvation)に起因すると考えることができる。

0092

図23は、平均細胞蛍光および生存度のフローサイトメトリー測定を図示している。2300にあるのは、細胞1個当たりのQD(左)およびRox(右)の平均蛍光であり、処理細胞のみにおけるQD蛍光の増加を示している。Rox蛍光は処理細胞および対照細胞の両方において、24時間の時点までに自己蛍光レベルとなる。2310にあるのは、QDチャンネル(左)およびRoxチャンネル(右)における、処理細胞および対照細胞における選択した時点での蛍光強度の分布のヒストグラムである。QD送達は、細胞集団の少なくとも35%で起こったと推定される。グレイの領域は、蛍光強度ヒストグラムのピークの動きを目で追う際の目安とすることを意図している。2320では、ヨウ化プロピジウムによって測定した、対照細胞および処理細胞の生存度が図示されている。

0093

図23に図示されたフローサイトメトリー測定により、QD-ジスルフィド-Rox構築物がサイトゾル環境と相互作用しうることが確かめられている。フローサイトメトリー測定を、送達された細胞(処理細胞集団のほぼ35%)および非送達細胞の両方を範囲に含めて、すべての生細胞で記録した。2100では、処理集団および対照集団の細胞1個当たりの平均蛍光が図示されている。処理細胞では平均QD蛍光が最初に増大し、ほぼ9時間でピークに達して、その後は徐々に低下するが、これは自己蛍光レベルと同等なままに保たれる対照細胞集団のQD蛍光とは対照的である。このことは、処理細胞の内部でQDと色素との間のジスルフィド架橋のサイトゾル性還元が起こり、続いて細胞分裂による蛍光構築物の希釈が起こることと一致している。Rox蛍光は処理細胞および対照細胞のいずれについても高値で始まり、最初の2時間以内に急低下する。この急低下は、インキュベーション中の、細胞表面に結合した分子の媒質中への再溶媒和に起因すると考えられる。処理細胞集団における平均Rox蛍光は対照細胞と同程度であるように思われるが、これは処理集団内に非送達細胞が存在することに起因する。処理集団内における送達細胞および非送達細胞の両方の存在は、2310に示されたQD強度およびRox強度のヒストグラムで識別することができる。時間の経過に伴って、蛍光ヒストグラムは処理細胞については二峰性となるが、対照細胞については単峰性のままである。QD蛍光は処理細胞集団のあるサブセットでは時間とともに増大するが(2100)、このことは処理されて送達された細胞のサイトゾル中でのFRET過程の途絶をさらに裏づけるものである。Rox蛍光は、膜に結合した構築物が媒質中に再溶媒和されるとともに全体的に減少するが、処理細胞集団のあるサブセットはRox蛍光を保ち続ける。このことは、共焦点顕微鏡検査において観察されたQD-S-S-Rox結合の不完全な還元と一致する。ヨウ化プロピジウム染色によって測定した、処理細胞集団の生存度は、すべての時点で対照集団の10%以内である(2130)。対照群に比して90%を上回る細胞生存度は、処理後の生存度が40〜60%という低さであるエレクトロポレーションおよびポリマーベースの方法といった代替的な方法よりも勝る。

0094

図24は、10nM QD溶液によるデバイス処理後の細胞サイトゾル内での非凝集性の単一の量子ドットの落射蛍光画像化(上)、ならびに自己蛍光を伴う3種のQD標識2400、2410および2420の点滅軌跡を図示している。QD点滅軌跡は、二値(bin)取得時間が長いこと(500ms)により、非二値性(non-binary)であるように思われる。スケールバーは10μmである。

0095

このQD送達プラットフォームにより、観察された発光間欠性が単一のQDと一致することから、非凝集QD-ジスルフィド-Rox構築物を送達することによる単分子画像化も可能となった。この実験については、QD-ジスルフィド-Rox構築物をサイトゾル中に送達し、その後に10時間のインキュベーションを行って、落射蛍光顕微鏡での画像化を行った。10時間のインキュベーションにより、サイトゾル内部からのQD蛍光をジスルフィド結合還元を介して確実に回収された;落射蛍光顕微鏡検査を用いたのは、十分な光子を確実に収集するためである。細胞を本主題によって低QD濃度で処理したところ、いくつかの点滅性QDが観察された(図24)。2400、2410および2420に示されたサイトゾル中での点滅性QDの強度軌跡は、二値(bin)取得時間が長いこと(500ms)により、非二値性(non-binary)であるように思われる。並進性細胞移動は、この取得時間枠(ほぼ1分間)の間にはごくわずかであると考えられた。これらのデータは、本主題を用いて蛍光性標識としてQDを送達することによって、細胞サイトゾル内での単分子イベントを観察しうることを実証している。

0096

実施例1は、本主題の態様による細胞サイトゾル中へのナノ粒子送達を実証している。サイトゾル性還元物質によるQD-ジスルフィド-Roxの切断を観察することにより、ナノ粒子表面がサイトゾル成分と相互作用することが示された。本主題の諸態様は、いかなる細胞浸透性またはエンドソーム回避性リガンドも用いずに細胞質中へのQDのハイスループットでの送達を可能にし、同時に細胞生存度およびQD完全性も保たれる。35%という送達効率は、マイクロ流体狭窄の数を増やすこと、狭窄寸法を変更すること、または処理サイクルの数を増やすことによってさらに高めうる可能性がある。現行の細胞浸透性ペプチドまたは正電荷により補助される送達法の大部分とは異なり、本主題は、同一のナノ粒子上での細胞内送達ハンドルとサイトゾル性タンパク質標的指向性ハンドルとの二重コンジュゲーションを必要としない。前者の必要性をなしで済ませられることにより、交差反応性、コンジュゲーション戦略反応効率不均等性、およびコンジュゲーションの化学量論性に関する懸念の軽減を達成することができる。このことにより、QD構築物デザインに関して大きな柔軟性が獲得され、細胞内タンパク質の標識および追跡のための道が開かれる。本方法は、ストレプトアビジン-ビオチン、HaloTag-クロロアルカン、およびソルターゼタグ標識などの、ただしこれらには限定されない、立証されたタンパク質ターゲティング戦略を通じて細胞内タンパク質およびオルガネラを標的とする、複雑なデザインを有する多くの蛍光性ナノ材料の送達のために有用である。

0097

実施例1において、化学物質はすべてSigma Aldrichから入手し、別に指示する場合を除き、受け取ったままで用いた。空気感性材料は、酸素レベルが0.2ppm未満乾燥窒素雰囲気中にあるOmni-Lab VACグローブボックス内で取り扱った。溶媒はすべてSpectroscopicまたは試薬とした。芳香環を保有する化合物は、手持ち式UVランプおよびKMnO4を用いてTLC上で可視化した。アミンを保有する化合物は、ニンヒドリン染料を用いてTLC上で可視化した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Teledyne Isco Combi Flash Companion上で行った。HeLa細胞はATCCから購入し、細胞媒質材料はすべて、別に指示する場合を除き、Mediatechから購入した。

0098

実施例1において、1HNMRスペクトルはBruker DRX 401 NMRSpectrometerで記録した。MS-ESIはBruker DaltonicsAPEXIV 4.7 FT-ICR-MS機器にて行った。UV-Vis吸光度スペクトルは、HP 8453ダイオードアレイ分光光度計を用いて得た。光ルミネセンスおよび吸光度スペクトルは、BioTek Synergy 4 Microplate Readerを用いて記録した。ポリマーの分子量は、DMF溶液中で、3種のPLgelカラム(103、104、105Å)を直列につないだAgilent 1100 seriesHPLC/GPCシステムにて、狭小ポリスチレン標準物質との対比により求めた。色素誘導体はVarian ProStar Prep HPLCシステムを用いて精製した。改変ポリマーは、Sephadex(商標)G-25Mを充填したGE HealthcareのPD-10カラムを用いて精製した。リガンドを交換したQDは、Millipore Amicon Ultra 30Kカットオフ遠心濾過器による遠心透析によって、および自己充填によるSuperdex 200 10/100ガラスカラム備え付けたAKTAprime Plusクロマトグラフィーシステム(Amersham Biosciences)によるGFCによって精製した。フローサイトメトリー測定は、LSR Fortessa(BD Biosciences)にて行った。

0099

実施例1においては、以前に報告された方法(1)を用いて、478nmに第1の吸収ピークを有するCdSeコアを合成した。要約すると、0.4mmol(54.1mg)のCdO、0.8mmol(0.2232g)のTDPA、9.6mmol(3.72g)のTOPOを25mL丸底フラスコに入れた。溶液を160℃で1時間かけて脱気し、CdOが溶解して透明な均質溶液が形成されるまでアルゴン中で300℃に加熱した。この後に、発生した水を除去するために溶液を160℃の真空下に置いた。溶液をアルゴン中で360℃に再び加熱し、TOP-Se溶液(1.5mLのTOP中に1.5mLの1.5M TOP-Seを加えたもの)を急速に添加して、478nmに第1の吸収特徴を有するCdSeコアを得た。

0100

以前に報告された手順(2)の変法により、CdSシェルをCdSeコア上に沈着させた。アセトンによるヘキサンからの反復沈殿によって単離されたコアを、オレイルアミン(3mL)とオクタデセン(6mL)の溶媒混合物中で180℃にした。続いて、Cd前駆体およびS前駆体の溶液を4mL/時の速度で連続的に投入した。Cd前駆体は、オクタデセン(1.5mL)とTOP(3mL)との溶媒混合物中にある0.33mmolオレイン酸Cdおよび0.66mmolオレイルアミンからなった。S前駆体は、6mL TOP中にある0.3mmolヘキサメチルジシラチアン[(TMS)2S]からなった。CdおよびSのそれぞれを合計3つの単層ずつ添加することにより、オクタン中に希釈した場合に541nmで発光し、量子収率が60%であるQDが生成された。CdSe(CdS)の消衰係数は、文献(3)によるCdSeコアの消衰係数から、オーバーコーティング段階の際にCdSeコアの95%が保たれると仮定した上で算出した。

0101

実施例1において、シリコンチップは、フォトリソグラフィーおよびディープ反応性イオンエッチング手法を用いて製作した。その結果得られたエッチングされたシリコンウエーハを、残屑を除去するために洗浄し(H2O2およびH2SO4により)、酸化させてガラス表面を生じさせた上で、Pyrexウエーハに結合させ、その後に切り分けて個別にパッケージ化されたデバイスとした。続いて、各デバイスを使用前に不具合に関して個別に点検した。

0102

実施例2‐高分子の送達
高分子の細胞内送達は、治療および研究の用途において決定的な段階である。例えば、DNAおよびRNAのナノ粒子媒介性送達は遺伝子治療のために有用であり、一方、タンパク質送達は臨床および研究室の両方の状況において細胞機能に影響を及ぼすために用いられている。小分子、量子ドットまたは金ナノ粒子などの他の材料は、癌治療から細胞内標識および単分子追跡までの範囲にわたる目的でサイトゾルに送達される。

0103

本手法の多目的性を実証するために、モデルとなるデキストラン分子をいくつかの細胞型に送達した:DC2.4樹状細胞、ヒト新生児包皮線維芽細胞(NuFF)およびマウス胚性幹細胞(mESC)で、それぞれ最大で55%、65%および30%の送達効率が達成された。初期実験により、マウスに由来する初代リンパ球、マクロファージおよび樹状細胞の送達の成功も示された。さらに、本手法は過度細胞傷害性を引き起こすことも、幹細胞分化を誘導することもなかった。実際に、すべての細胞型で、試験した最も高い速度でも生存度が60%を上回った。デバイスのデザインおよび動作条件は、前述の細胞型のいずれに対しても事前に最適化しなかった。

0104

図25は、送達成績が細胞速度および狭窄デザインに依存することを示す実験結果を図示している。狭窄寸法は、第1の数字が狭窄の長さ、第2のものが狭窄幅、および第3のもの(あれば)がチャンネル1本当たりの直列になった狭窄の数に対応するように、数字によって表される(例えば、10μm-6μmx5)。2500では送達効率が示されており、2510では、40μm-6μm(○)、20μm-6μm(□)および10μm-6μmx5(Δ)のデバイスデザインについて、処理18時間後の細胞生存度(フローサイトメトリーにより測定)が細胞速度の関数として示されている。2520では送達効率が、2530では細胞生存度(フローサイトメトリーにより測定)が、30μm-6μmデバイスによって処理した初代ヒト線維芽細胞(□)、DC2.4樹状細胞(○)およびマウス胚性幹細胞(mESC)(Δ)における、速度の関数として示されている。ヒト線維芽細胞および樹状細胞は送達18時間後に分析した。MESCは送達1時間後に分析した。データポイントはすべて3回ずつの試験によるものであり、エラーバーは2つの標準偏差を表している。

0105

図26は、共焦点顕微鏡検査によって測定した、パシフィックブルー結合3kDaデキストランの送達後のHeLa細胞の種々の水平面のスキャン2600を図示している。スキャンは上から下に読み取って、続いて左から右に読み取ったが、ここで左最上部はz=6.98μmであり、右最下部z=-6.7μmである。スケールバーは6μmを表している。2610では、10μm-6μm(□)、20μm〜6μm(○)、30μm-6μm(Δ)および40μm-6μm(◇)デバイスの生細胞送達効率が示されている。時間軸は、細胞を標的送達用溶液に曝露する前の、細胞の初期処理から経過した時間を指し示している。結果はすべて、処理18時間後にフローサイトメトリーによって測定した。2620にあるのは、自己蛍光に関する対照とするための非処理細胞によって標準化した、送達された細胞集団の平均強度である。連続した処理サイクルにおいて、フルオレセイン結合70kDaデキストラン(横線)およびパシフィックブルー結合3kDaデキストラン(対角線)を細胞に送達し(サイクル1および3)、細胞から除去した(サイクル2)。対照は送達用溶液のみに曝露し、デバイスによる処理を行わなかった細胞を表している。データポイントはすべて3回ずつの試験によるものであり、エラーバーは2つの標準偏差を表している。

0106

以前のナノ粒子および細胞浸透性ペプチド(CPP)に基づく送達手法ではエンドサイトーシス経路を利用していることから、本主題の送達機構におけるエンドサイトーシスの影響の可能性を否定するための証拠提示する。図26は、2600で、エンドサイトーシス法で予想されるであろう点状特性とは異なり、パシフィックブルー結合3kDaデキストランで処理された細胞がびまん性サイトゾル染色を明らかに示している共焦点顕微鏡検査を図示している。さらに、エンドサイトーシスが最小限となる4℃で送達実験を実施すると、3kDaおよび70kDaデキストランといういずれの被験ペイロード材料についても、送達効率は温度によってわずかにしか影響されない。このデータは、エンドサイトーシスがこのシステムにおける送達の原因である可能性は低いことを指し示している。

0107

経時的な送達動態の特性決定を行った。細胞を送達用材料の非存在下で本主題によって処理し、その後に処理後の定められた時間間隔でパシフィックブルー標識3kDaデキストランに曝露した。このアプローチでは、細胞が狭窄を通る際にそれらの膜が撹乱される;しかし、それらを標識デキストランに曝露するまで、測定可能な送達は起こらなかった。したがって、各時点での送達効率は、処理後にその時間にわたって多孔性に保たれる細胞の割合を反映すると考えられる。この方法により、孔形成閉鎖の動態が捉えられる。これらの結果は、デバイスのデザインに関係なく、送達のほぼ90%が処理後の最初の1分間に起こることを指し示している(2610)。観察されたこの時間スケールは、膜修復動態に関する以前の諸研究で膜封孔が傷害が誘導されてから約30秒後に起こることが報告されているように、孔形成仮説を裏づけるものである。対照的に、ナノ粒子およびCPP媒介性送達機構といったエンドサイトーシス法に関して推奨される時間スケールは時間のオーダーである。

0108

膜孔を通しての材料の送達は拡散性であるため、材料は孔の寿命の全体を通じて細胞の中および外へと交換可能であると考えられる。一方、エンドサイトーシスまたは対流による機序は、一方向性でなければならず、すなわち、細胞内への材料の輸送を促進するのみでなければならない。細胞膜を交差する材料の双方向性輸送を実証するために、3つの送達サイクルからなる実験を実施した。第1のサイクルでは、細胞を3kDaおよび70kDaデキストランの存在下で処理し、デキストラン溶液中で5分間インキュベートした上で、PBSにより2回洗浄した。試料の3分の1を残し、追跡調査のためにプレーティングした。第2のサイクルでは、洗浄した残りの細胞をデバイスによって再び、ただし送達用材料の非存在下で処理して、さらに5分間インキュベートした。この試料の半分を追跡調査のためにプレーティングした。第3のサイクルでは、第2のサイクルからの残りの細胞を、第1のサイクルと同じ条件下(すなわち、デキストランの存在下)でデバイスに通し、5分間インキュベートした上で、PBS中で2回洗浄した。細胞を、実験から18時間後にフローサイトメトリーによって分析した。標準化された蛍光強度の変化により、第1のサイクルでは細胞内に、第2のサイクルでは細胞外への、さらに第3のサイクルでは再び細胞内への、デキストランの正味の拡散があることが実証されている(2620)。このように、これらの結果は、拡散性送達機構と一致する。

0109

図27は、孔の開いた(porated)膜を交差しての細胞内への材料の受動拡散をシミュレートしている、COMSOL Multiphysicsとして知られるソフトウエアパッケージにおいて開発された、単純化された2D拡散モデルを図示している。COMSOL Multiphysicsは、さまざまな物理学的および工学的用途、特に結合現象またはマルチフィジックス(multiphysics)のためにCOMSOLによって開発された、有限要素解析法ソルバー(solver)およびシミュレーション用のソフトウエア/FEAソフトウエアパッケージである。2700にあるのは、材料の送達/損失が膜拡散率の関数として示されている。関心対象の材料が穿孔時に緩衝液中(□)または細胞内(○)にある場合の膜拡散率の関数として、細胞に送達された/細胞から損失した材料のパーセンテージを指し示しているシミュレーション結果である。2710にあるのは、材料が緩衝液から細胞に送達された場合に膜の両端間に形成される、シミュレートされたシステムおよび濃度勾配のグラフ表示である。

0110

細胞質の内側および外側での粒子拡散率に関する文献値を用い、拡散を物質移動唯一の様式として用いて、図26の実験結果を質的に再現させた。さらに、実験データをこのモデルに適合させることにより、この手法は緩衝液中の送達用材料の10〜40%を細胞サイトゾル中に送達した。これに比して、タンパク質送達のためのCPP法は、緩衝液材料の0.1%しかサイトゾルに送達しないと推定される。

0111

粒子のサイズ(または流体力学的半径)は、その拡散率およびそれが特定のサイズの膜孔に入る能力に影響を及ぼす。このため、このパラメーターは、孔形成/拡散の機序での送達効率に影響を及ぼす。一連の実験において、フルオレセインまたはパシフィックブルーにコンジュゲートさせた3kDa、10kDa、70kDa、500kDaおよび2MDaデキストランの被験ペイロードを送達させた。3.1MDaと推定されるフルオレセイン標識プラスミドも送達させた。これらのモデル分子は、分子量の点でのそれらの関心対象の送達用材料との類似性に基づいて選択した。例えば、3kDa〜10kDaデキストランはある種の短いペプチドまたはsiRNAと同程度のサイズであり、一方、70kDa〜2MDaの範囲はほとんどのタンパク質およびある種の小型ナノ粒子のサイズを模している。

0112

図28は、材料の二段重ね式送達の結果を図示している。2800では、パシフィックブルー結合3kDa(□)、フルオレセイン結合70kDa(○)および2MDa(Δ)デキストランで処理したHeLa細胞について、速度の関数としての生細胞送達効率が示されている。この実験は10μm-6μmx5チップを用いて実施した。データポイントはすべて3回ずつの試験によるものであり、エラーバーは2つの標準偏差を表している。2810および2820は、非処理(赤色)、700mm/秒で処理(緑色)、500mm/秒で処理(オレンジ色)、300mm/秒で処理(淡青色)するか、または送達用材料のみに曝露した(対照、濃青色)HeLa細胞に関して、フローサイトメトリーデータのヒストグラム重ね合わせ図を図示している。送達用材料は、パシフィックブルー結合3kDaデキストラン(2810)およびフルオレセイン結合70kDaデキストラン(2820)からなった。

0113

これらの実験により、70kDaよりも大きい分子は、3kDaデキストランに比して異なる送達プロフィールを有することが示された(2800)。本デバイスにより、10μm-6μmx5デバイスを500mm/秒で動作させた場合には二段重ね式送達が生じ、例えば、生細胞の90%超が3kDa分子を受け入れることができ、一方、より大きな70kDaおよび2MDa分子を受け入れたのは約50%である。

0114

これらのフローサイトメトリーデータに対応するヒストグラムは、3kDaデキストラン送達によって2つの明確に異なるピークが生じることを指し示している(2810)。第1の部分集団において、対照に比してのピークシフトによって観察されるように(対照は、0mm/秒データポイントに関して以前に記載したようなエンドサイトーシスおよび表面結合に相当する)、細胞は軽度の送達レベルを呈し、平均蛍光強度は2〜6倍に増加する。第2の集団において、細胞は、対照に比して平均蛍光強度の20〜100倍の増加に対応する強化された送達レベルを呈する。この効果は、細胞の後者の部分集団が前者よりも過酷に孔の開いた状態にあり、材料の流入がほぼ10倍に増加することが可能になったことを指し示すと考えられる。実際に、300mm/秒、500mm/秒および700mm/秒の曲線によって図示されているように、動作速度を高めることによって処理の過酷さを高めることにより、送達が強化された細胞の割合が高くなるように思われる。より大きな70kDaデキストラン分子の送達についても、類似の特徴が観察される(2820)。しかし、粒子拡散率がより小さく、サイズ排除効果の可能性があることから送達される総数量が減少するために、その効果は相対的に顕著ではない。軽度送達集団(第1のピーク)は、3kDaのケースでは2〜6倍が観察されたのに比較して、平均蛍光性強度の1.5〜2倍の増加を示すのみである。この効果は、より大型の分子のケースでは、送達の本定義に基づいて軽度送達集団を対照と識別することが困難となりうるという、2800における送達データ不一致の説明になりうると考えられる。その結果として、70kDaおよび2MDaデキストランといったより大型の分子については、第2の強化された送達集団を主として測定する。

0115

急速な機械的変形によって送達される材料が細胞サイトゾル中で活性があり、生物学的に利用可能であることを立証するために、不安定化されたGFPを発現するHeLa細胞に、被験ペイロードGFPサイレンシングsiRNA(Ambion, USA)を送達する、一連の実験を実施した。処理18時間後に、用量依存的かつ配列特異的なGFPノックダウン(最大で80%)が観察された。細胞速度およびデバイスデザインに対する遺伝子ノックダウン反応はデキストラン送達実験と一致し、速度が高く、複数の狭窄を有するデザインであるほど、より高度の遺伝子ノックダウンが生じた。リポフェクタミン2000を、これらの実験における陽性対照として用いた。これらの実験を行う前に、デバイスデザインおよび動作パラメーターをsiRNA送達に関して最適化することはしなかった。

0116

図29は、SiRNA、タンパク質およびナノ粒子送達に関するデータを図示している。2900では、10μm-6μmx5チップを送達濃度5μMで用いた抗eGFPsiRNAの送達から18時間後の不安定化されたGFPを発現するHeLa細胞における、デバイスの種類および細胞速度としての遺伝子ノックダウンが図示されている。リポフェクタミン2000を陽性対照として用いた。2910では、急速な機械的変形およびエレクトロポレーションによるフルオレセイン標識70kDaデキストランおよびパシフィックブルー標識3kDaデキストランの送達効率が示されている。各デキストラン種類は、送達用溶液中の濃度0.1mg/mlとした。2920では、30μm-6μmデバイスを用いて、速度の関数として、フルオレセイン標識ウシ血清アルブミン(○)送達効率、パシフィックブルー結合3kDaデキストラン(□)送達効率および細胞生存度(Δ)が示されている。2930では、Alexa Fluor 488タグを有するチューブリンに対する抗体の送達直後のHeLa細胞の蛍光顕微鏡写真が示されている。スケールバーは5μm。2940および2950では、10μm-6μmx5デバイスによる処理後にほぼ1秒間固定した細胞における、金ナノ粒子(いくつかを矢印によって指し示している)のトンネル電子顕微鏡検査(TEM)画像が示されている。スケールバーは500nm。データポイントはすべて3回ずつの試験によるものであり、エラーバーは2つの標準偏差を表している。

0117

さらなる実験において、サイトゾル送達能力を、タンパク質およびナノ粒子の送達といった、これまで困難であった用途に対して調べた。本主題の成績を商業化された方法と比較するために、本主題およびNeonエレクトロポレーションシステム(Invitrogen)を用いて、ヒト線維芽細胞に対して、3kDaおよび70kDaデキストランをタンパク質モデルとして送達した。その結果、急速な機械的変形により、そのような高分子についての送達効率の7倍またはそれ以上の増加がもたらされることが指し示されている(2910)。本方法をタンパク質送達へと置き換えるために、30μm-6μmチャンネル直径デバイスを、フルオレセイン標識ウシ血清アルブミン(BSA)のHeLa細胞への送達に用いたところ、効率は最大で44%であり、一方、生存度は90%以上に維持された(2920)。また、チューブリンに対するAlexa Fluor 488標識抗体(Bio Legend)も、0.25mg/mlの抗体濃度を用いて、30μm-6μmデバイスによる処理後にHeLa細胞に送達させた(2930)。びまん性染色により、材料がエンドソーム内に捕捉されておらず、それ故にサイトゾル中の細胞構造の生細胞抗体染色のために適することが指し示されている。アポリポタンパク質Eも、この手法を用いた送達に成功した。

0118

ナノ粒子の送達に関しては、変形後にほぼ1秒間固定した細胞のTEM画像(2940および2950)により、PEG 1000でコーティングした15nm金ナノ粒子の送達が実証されている。金ナノ粒子はほとんど非凝集性であるように思われ、視認しうる程度ではエンドソーム内に隔離されなかった。これらの画像において、送達の原因となる細胞質中のさまざまな瑕疵が観察された。ハイスループットでの、量子ドットの細胞サイトゾルへの直接的な非細胞傷害性送達が実証された‐これは以前の手法が達成しようと努めてきた目標である。これらの実験においては、Rox色素をその表面に結合させた量子ドットを急速な機械的変形によって送達し、経時的に観察した。これらのデータにより、35%という最小推定送達効率が得られ、送達された量子ドットがサイトゾル中にあり、細胞内環境に化学的に到達可能であることが確かめられた。

0119

細胞がマイクロ流体狭窄を通る際に、細胞の急速な機械的変形によって一過性の孔が形成される。データからは、びまん性サイトゾル染色(図26の2600)、siRNA機能性(図29の2900)および孔の開いた膜を交差する材料の双方向性移動(図26の2920)を実証することによって、この機序が裏づけられている。送達効率および生存度に影響を及ぼす、狭窄寸法、直列になった狭窄の数および細胞速度といったいくつかのパラメーターが同定されている(図25)。したがって、これらのパラメーターを用いて、個々の用途に対して、細胞型および送達用材料のサイズに基づいてデバイスデザインを最適化しうると考えられる。

0120

実施例2において、この手法は、送達前の複数の前処理段階および処理後の分析または分取段階からなるより大型の集積システムに組み込むことのできるマイクロ流体システムに基づく。例えば、送達直後に細胞を分取するため、または他の分析作業を行うために、10,000個/秒という平均スループット速度で、本送達デバイスを、フローサイトメトリー機器に直列させて配置することができる。

0121

本明細書に記載のデバイス、システムおよび方法には、既存の方法を上回る潜在的な利点がいくつかある。エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクションと同様に、これは穿孔に基づく機序であり、それ故に、外因性材料、ペイロードの化学的修飾、またはエンドサイトーシス経路のいずれにも依拠しない。しかし、エレクトロポレーションとは対照的に、これは、タンパク質送達における成果が限定的であり、ある種のペイロードを損傷させるか、または細胞傷害作用を引き起こす恐れのある電場には依拠しない。実際に、本結果からは、ほとんどの用途において比較的高い生存度が実証されており、量子ドットなどの繊細なペイロードは損傷を受けていないように思われる。本主題はこのため、エレクトロポレーションに起因する量子ドットの損傷が問題となる恐れがあり、化学的送達法の使用によって利用可能な表面化学の範囲が制約される恐れのある、サイトゾル材料の標識および追跡といった分野において大きな利点を有する。

0122

また、実施例2により、タンパク質を細胞サイトゾルに送達する本デバイスの能力も実証された。データおよびモデル化推定値により、本主題が、細胞浸透性ペプチドまたはエレクトロポレーションの使用といった従来の手法に比して、細胞1個当たり10〜100倍の多さの材料を送達しうると考えられることが指し示されている。送達率のこの向上は、例えば、細胞サイトゾルへの転写因子の送達が信頼性の高いiPSC作製法を開発する上での重大な障害になっている、タンパク質に基づく細胞リプログラミングに用いるための強力な方法をもたらす。また、関心対象のさまざまなタンパク質/ペプチドを送達することによって疾患機序を研究するために、本主題を用いることもできる。実際に、本主題は、ペプチドライブラリーハイスループットスクリーニングのために用いることができるが、これは、CPPまたはナノ粒子に基づくほとんどの手法とは異なり、本主題がタンパク質の構造および化学に対して繊細でなく、エンドサイトーシス経路に依拠せず、かつタンパク質の機能性に影響を及ぼさないためである。

0123

本主題が初代細胞への送達に関する能力を実証したことから、急速な機械的変形によるサイトゾル送達をエクスビボ治療の機序として具体化することができる。このアプローチでは、血液または他の組織から単離された患者の標的細胞を、患者の体外でデバイスによって処理し、続いて体内に再び導入する。そのようなアプローチは、タンパク質またはナノ粒子治療薬の送達効率の増加をうまく利用しており、既存の手法よりも安全であるが、これは毒性のある可能性があるベクター粒子の必要性をなくすとともに、網内系クリアランスおよびオフターゲット送達に伴う副作用の可能性も減じるためである。

0124

実施例2においては、シリコンベースのデバイスを、微細加工施設にてフォトリソグラフィーおよびディープ反応性イオンエッチング手法を用いて製作した。この過程では、厚さの450μmの6インチのシリコンウエーハを、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で処理し、フォトレジスト(OCG934, FujiFilm)により3000rpmで60秒間のスピンコーティングを行い、狭窄チャンネルデザインを備えたクロムマスクを通してUV光EV1-EVG)を照射し、AZ405(AZ Electronic Materials)溶液中で100秒間にわたり現像させた。90℃で20分間の焼き付けを行った後に、ウエーハを、ディープ反応性イオンエッチング(SPTS Technologies)によって、所望の深さ(典型的には、この実施例では15μm)にエッチングした。エッチング過程が完了した後に、ピラニア処理(H2O2およびH2SO4)を用いて、残ったフォトレジストを除去した。アクセス用の穴(すなわち、注入口および流出口)をエッチングするには、この過程をウエーハの反対側(すなわち、エッチングされたチャンネルを含まないもの)に対して、アクセス用の穴のパターンおよびより厚いフォトレジストAZ9260(AZ Electronic Materials)を含む異なるマスクを用いて繰り返した。

0125

酸素プラズマおよびRCA洗浄を用いて、残留性不純物を除去した。湿式酸化を用いて100〜200nmの酸化ケイ素成長させ、その後にウエーハをPyrexウエーハに陽極接合させた上で、個々のデバイスへと切り分けた。各デバイスを、使用前に不具合に関して個別に点検した。

0126

各実験の前に、注入口リザーバーおよび流出口リザーバーを有するホルダーにデバイスをマウントした(いずれも受注設計であり、Firstcutによって製造された)。これらのリザーバーは、適正な密封が得られるように、Buna-N Oリング(McMaster-Carr)を用いてデバイスと接合されている。注入口リザーバーは、材料を押してデバイスに通すために必要な駆動力を得るために、テフロンチューブを用いて圧力調節システムに接続されている。実施例2は、最大で70psiの圧力に対応しうる。

0127

実施例2の細胞培養物には、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Atlanta Biologics)および1%ペニシリンストレプトマイシン(Mediatech)を加えた高グルコースダルベッコ変法必須培地(DMEM, Mediatech)中で培養した、HeLa細胞(ATCC)、GFPを発現するHeLa細胞、およびDC2.4(ATCC)細胞が含まれる。初代ヒト線維芽細胞(NuFF)(Globalstem)は、15% FBSを加えた高グルコースDMEM中で培養した。細胞は、37℃および5% CO2のインキュベーター内に保った。適用可能な場合には、付着細胞を0.05%トリプシンEDTA(Mediatech)による5〜10分間の処理によって懸濁させた。

0128

マウス胚性幹細胞(mESC)は、85%ノックアウトDMEM、15%ウシ胎仔血清、1mMグルタミン、0.1mMβメルカプトエタノールおよび1%非必須アミノ酸からなり、1000単位/mLのLIF(Millipore, USA)を加えた培地中で、マウス胚性線維芽細胞(Chemicon)上にて増殖させた。細胞を2〜3日毎に0.25%トリプシン/EDTAを用いて継代した。デバイスによって処理したところ、mESCは、処理から2週であってもコロニーを再形成することができ、正常な形態を保った。

0129

実施例2に関する実験を行うためには、細胞をまず所望の送達緩衝液(増殖培地、リン酸緩衝食塩水(PBS)、または3% FBSおよび1% F-68プルロニック(Sigma)を加えたPBS)中に懸濁させて、所望の送達用材料と混合した上で、デバイスの注入口リザーバー内に入れた。このリザーバーは調節器によって制御される圧縮空気路と接続されており、流体をデバイスに通して推進させるために、選択した圧力(0〜70psi)が用いられる。続いて、処理した細胞を流出口リザーバーから収集する。孔閉鎖が確実に得られるように、細胞を処理後に送達用溶液中で室温にて5〜20分間インキュベートし、その後にさらなる処理に供した。

0130

異なるサイズのデキストランまたはタンパク質の送達をデキストランと比較する実施例2の実験においては、関心対象の分子を同時送達させ、すなわち、それらを同一のデバイス上で同一の細胞集団を用いる同一の実験に用いた上で、それらの蛍光性標識に基づいて識別した。実験条件のすべてを3回ずつ実施しており、エラーバーは2つの標準偏差を表している。

0131

蛍光標識デキストラン分子(Invitrogen)またはアポリポタンパク質E(Apolioprotein E)(Invitrogen)を送達するためには、実施例2の実験を、送達緩衝液が0.1〜0.3mg/mlのデキストランまたは1mg/mlのアポリポタンパク質Eのそれぞれを含むようにして、上記の通りに実施した。

0132

フルオレセイン結合BSA(Invitrogen)を送達するためには、細胞をまず、5mg/mlの非標識BSA(Sigma)を含む培地中で37℃にて2時間インキュベートし、続いて、1mg/mlのフルオレセイン結合BSAを含む送達緩衝液を用いて、実施例2のデバイスによって処理した。プレインキュベーション段階は、蛍光標識BSAの細胞表面への非特異的結合を最小限に抑えることを狙いとした。

0133

実施例2に関するGFPノックダウンは、非処理対照に比しての細胞集団の平均蛍光強度の低下率として測定した。リポフェクタミン2000+siRNA粒子は、100μlのPBS中で1μgのsiRNAと1μlのリポフェクタミン2000試薬を合わせることによって調製した。室温での20分間のインキュベーション後に、この混合物の20μlを、ほぼ20,000個の細胞および100μlの培地を含む各実験ウェルに添加した。細胞を粒子とともに18時間インキュベートし、その後に分析を行った。

0134

実施例2において、金ナノ粒子は、チオール終端化した1000MWのポリエチレングリコール(PEG)をナノ粒子表面とコンジュゲートさせ、続いて余分なPEGを遠心分離(10,000rcfで30分間)によって4回洗浄し、その結果得られた材料をPBS中に再懸濁させて最終濃度を100nMにすることによって調製した。HeLa細胞へのGNP送達を画像化するためには、3% FBS、1% F-68プルロニックおよび47nMのGNPを加えたPBS中に細胞を懸濁させ;10μm-6μmx5デバイスによって処理し、2.5%(w/v)グルタルアルデヒド、3%(w/v)パラホルムアルデヒドおよび5.0%(w/v)スクロースを含む0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中で固定した。一晩の固定の後に、1%(w/v)OsO4を含むベロナール-酢酸緩衝液中で1時間かけて細胞を後固定した。続いてそれらを、0.5%酢酸ウラニルを含むベロナール-酢酸緩衝液(pH 6.0)中で一括して一晩染色し、脱水した上で、Spurr樹脂中に包埋した。Reichert Ultracut E(Leica)にてダイアモンドナイフを用いて、厚さ70nmの切片切り出した。切片をEM410電子顕微鏡(Phillips)を用いて検査した。

0135

実施例2においては、Neonエレクトロポレーションシステム(Invitrogen)を用いて、NuFF細胞にフルオレセイン標識70kDaデキストランおよびパシフィックブルー標識3kDaデキストランをトランスフェクトした。細胞の洗浄は製造元の手順に従って行い、それらを適切な緩衝液中に懸濁させた。細胞を、デキストラン濃度0.1mg/mlを用い、107個/mlの密度で、10μlチップを用いて処理した。用いた3つの条件は以下の通りであった:1)1700Vの20msパルスを1回、2)1600Vの10msパルスを3回、3)1400Vの20msパルスを2回。条件1および3はいずれも、ヒト線維芽細胞のトランスフェクションのための最適な条件として製造元によって推奨されており、eGFPプラスミド送達効率はそれぞれ84%および82%である。

0136

実施例2の共焦点画像では、試料を800rcfで4分間、遠心分離して、PBSで2〜3回洗浄した後に画像化を行った。60倍水浸レンズを装着したNikon TE2000-U倒立顕微鏡のC1共焦点増設ユニットを用いて、生細胞での共焦点画像を取得した。蛍光試料は405nmレーザーによって励起させ、標準的なDAPIフィルター(Nikon)を用いて検出した。

0137

実施例2の蛍光顕微鏡検査では、試料を800rcfで4分間、遠心分離し、PBSで2〜3回洗浄した後に画像化を行った。画像は、Neofluarレンズ(Zeiss)を装着したAxiovert 200(Zeiss)倒立顕微鏡を用いて得た。蛍光励起は、X-cite 120Q水銀ランプ(Lumen Dynamics)によって行った。顕微鏡にHamamatsu C4742-95カメラ(Hamamatsu)を取り付けて、画像をImageJ(NIH)によって分析した。

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