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図面 (9)

課題

温度パラメータ入力値異常値を示す場合であってもフェールセーフ機能保証可能な、エンジンフェールセーフ装置を提供する。

解決手段

フェールセーフ装置は、エンジンが発生するトルク推定に用いられる所定の温度パラメータの値を設定する温度設定部と、温度設定部により設定された所定の温度パラメータの設定値を用いてエンジンの発生トルクを推定するトルク推定部と、トルク推定部により推定された発生トルクがドライバ要求トルクを所定以上上回る場合にエンジンの発生トルクを低下させるトルク監視部と、を備え、温度設定部は、所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が所定の変化量制限値を超えている場合には所定の温度パラメータの現在の設定値を保持し、所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が所定の変化量制限値を超えていない場合には、所定の温度パラメータの入力値により設定値を更新する。

概要

背景

車両に搭載されたエンジンでは、ドライバアクセル踏み込み量に基づいて設定される要求トルクや、定速走行制御あるいは車間距離制御に基づいて設定される要求トルクに応じて、吸入空気量や燃料噴射量、点火時期等が制御されている。近年では、燃料噴射弁点火プラグだけでなく、吸入空気量を調節する吸気スロットル弁電子制御式スロットル弁が採用されている。これらの燃料噴射弁や吸気スロットル弁等は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)により駆動制御される。

電子制御式の吸気スロットル弁の開度制御不能になると、エンジンの気筒に導入される混合気中の酸素量が制御できなくなることから、ドライバの意図せぬ急加速が発生するおそれがある。このため、電子制御装置は、吸気スロットル弁の開度が制御不能に陥った場合に、フェールセーフを作動して、スロットル開度をあらかじめ設定されたリンプホーム開度に固定することが行われている。リンプホーム開度は、例えば、エンジンストールを回避し、退避走行リンプホーム)を確保可能な開度に設定される。

例えば、特許文献1には、アクセル踏み込み量等に応じて演算された要求トルクと、エンジンの発生トルク監視して、エンジンの発生トルクが要求トルクよりも異常判定値以上過大になったときに異常と診断するトルク監視部と、トルク監視部から異常の診断結果を受信する等の条件成立時にエンジンの発生トルクを減少させるフェールセーフ処理を実行するフェールセーフ部とを備えたフェールセーフ装置が開示されている。

概要

温度パラメータ入力値異常値を示す場合であってもフェールセーフ機能保証可能な、エンジンのフェールセーフ装置を提供する。フェールセーフ装置は、エンジンが発生するトルク推定に用いられる所定の温度パラメータの値を設定する温度設定部と、温度設定部により設定された所定の温度パラメータの設定値を用いてエンジンの発生トルクを推定するトルク推定部と、トルク推定部により推定された発生トルクがドライバ要求トルクを所定以上上回る場合にエンジンの発生トルクを低下させるトルク監視部と、を備え、温度設定部は、所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が所定の変化量制限値を超えている場合には所定の温度パラメータの現在の設定値を保持し、所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が所定の変化量制限値を超えていない場合には、所定の温度パラメータの入力値により設定値を更新する。

目的

本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

エンジンが発生するトルク推定に用いられる所定の温度パラメータの値を設定する温度設定部と、前記温度設定部により設定された前記所定の温度パラメータの設定値を用いて前記エンジンの発生トルクを推定するトルク推定部と、前記トルク推定部により推定された前記発生トルクがドライバ要求トルクを所定以上上回る場合に前記エンジンの発生トルクを低下させるトルク監視部と、を備え、前記温度設定部は、前記所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が所定の変化量制限値を超えている場合には前記所定の温度パラメータの前記現在の設定値を保持し、前記所定の温度パラメータの前記入力値と前記現在の設定値との差が前記所定の変化量制限値を超えていない場合には、前記所定の温度パラメータの前記入力値により前記設定値を更新する、エンジンのフェールセーフ装置

請求項2

前記温度設定部は、前記所定の温度パラメータの入力値と前記現在の設定値との差が前記所定の変化量制限値を超えている場合、前記所定の温度パラメータの前記現在の設定値を保持するとともに、次回の比較に用いる前記所定の変化量制限値を増大させる、請求項1に記載のエンジンのフェールセーフ装置。

請求項3

前記温度設定部は、前記所定の変化量制限値(α)を下記式(1)に基づき設定する、請求項1又は2に記載のエンジンのフェールセーフ装置。α=α0×(N+1)…(1)α:変化量制限値α0:基準制限値N:変化量制限値を超える連続回数

請求項4

前記温度設定部は、前記所定の温度パラメータの入力値と前記現在の設定値との差が、前記所定の変化量制限値を一旦超えてから所定時間内に前記所定の変化量制限値以内に復帰した場合には、前記入力値により前記設定値を更新する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエンジンのフェールセーフ装置。

請求項5

前記温度設定部は、前記所定の温度パラメータの入力値と前記現在の設定値との差が、前記所定の変化量制限値を一旦超えてから所定時間を経過しても前記所定の変化量制限値以内に復帰しない場合には、以降の設定値を、現在の設定値に固定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエンジンのフェールセーフ装置。

請求項6

前記所定の温度パラメータが前記エンジンの冷却水温又は油温の少なくとも一方であり、前記所定の変化量制限値は前記冷却水温又は前記油温の低下時の変化量制限値である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンジンのフェールセーフ装置。

請求項7

前記所定の温度パラメータが吸気温度であり、前記所定の変化量制限値は前記吸気温度の上昇時の変化量制限値である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエンジンのフェールセーフ装置。

請求項8

前記温度設定部、前記トルク推定部、及び前記トルク監視部が、前記エンジンの駆動制御を実行する演算装置に備えられる、請求項1〜7のいずれか1項に記載のエンジンのフェールセーフ装置。

請求項9

前記トルク監視部は、吸気スロットル弁リンプホーム開度に固定させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載のエンジンのフェールセーフ装置。

技術分野

0001

本発明は、エンジンフェールセーフ装置に関する。

背景技術

0002

車両に搭載されたエンジンでは、ドライバアクセル踏み込み量に基づいて設定される要求トルクや、定速走行制御あるいは車間距離制御に基づいて設定される要求トルクに応じて、吸入空気量や燃料噴射量、点火時期等が制御されている。近年では、燃料噴射弁点火プラグだけでなく、吸入空気量を調節する吸気スロットル弁電子制御式スロットル弁が採用されている。これらの燃料噴射弁や吸気スロットル弁等は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)により駆動制御される。

0003

電子制御式の吸気スロットル弁の開度制御不能になると、エンジンの気筒に導入される混合気中の酸素量が制御できなくなることから、ドライバの意図せぬ急加速が発生するおそれがある。このため、電子制御装置は、吸気スロットル弁の開度が制御不能に陥った場合に、フェールセーフを作動して、スロットル開度をあらかじめ設定されたリンプホーム開度に固定することが行われている。リンプホーム開度は、例えば、エンジンストールを回避し、退避走行リンプホーム)を確保可能な開度に設定される。

0004

例えば、特許文献1には、アクセル踏み込み量等に応じて演算された要求トルクと、エンジンの発生トルク監視して、エンジンの発生トルクが要求トルクよりも異常判定値以上過大になったときに異常と診断するトルク監視部と、トルク監視部から異常の診断結果を受信する等の条件成立時にエンジンの発生トルクを減少させるフェールセーフ処理を実行するフェールセーフ部とを備えたフェールセーフ装置が開示されている。

先行技術

0005

特開2010−127162号公報

発明が解決しようとする課題

0006

エンジンの発生トルクを推定する際には、例えば、エンジンの冷却水温油温、又は吸気温度等、エンジンの駆動力制御にも用いられる温度パラメータが用いられる。これらの温度パラメータは、温度センサからの入力値に基づいて設定されるが、かかる温度パラメータが異常値となってもフェールセーフ機能喪失しないように保証されなければならない。

0007

例えば、エンジンの冷却水温のパラメータが、現実の冷却水温よりも低下した場合に、電子制御装置は、エンジンフリクション機械的摩擦損失)が増加したものと誤認識し、アイドル回転を維持しようとして、吸気スロットル開度を増大させる。これにより、車両は、ドライバ等が意図しない加速を生じることとなる。このとき、フェールセーフ機能のエンジンの発生トルクの推定にも、異常値を示しているエンジンの冷却水温のパラメータが用いられるとすると、推定されるエンジンの発生トルクがエンジンの要求トルクと一致してしまい、意図しない加速を抑えることができなくなる。その結果、もはやフェールセーフ装置としての機能が失われるおそれがある。

0008

本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、温度パラメータの入力値が異常値を示す場合であってもフェールセーフ機能を保証可能な、新規かつ改良されたエンジンのフェールセーフ装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0009

上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、エンジンが発生するトルクの推定に用いられる所定の温度パラメータの値を設定する温度設定部と、温度設定部により設定された所定の温度パラメータの設定値を用いてエンジンの発生トルクを推定するトルク推定部と、トルク推定部により推定された発生トルクがドライバ要求トルクを所定以上上回る場合にエンジンの発生トルクを低下させるトルク監視部と、を備え、温度設定部は、所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が所定の変化量制限値を超えている場合には所定の温度パラメータの現在の設定値を保持し、所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が所定の変化量制限値を超えていない場合には、所定の温度パラメータの入力値により設定値を更新する、エンジンのフェールセーフ装置が提供される。

0010

温度設定部は、所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が所定の変化量制限値を超えている場合、所定の温度パラメータの現在の設定値を保持するとともに、次回の比較に用いる所定の変化量制限値を増大させてもよい。

0011

温度設定部は、所定の変化量制限値(α)を下記式(1)に基づき設定してもよい。
α=α0×(N+1) …(1)
α:変化量制限値
α0:基準制限値
N:変化量制限値を超える連続回数

0012

温度設定部は、所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が、所定の変化量制限値を一旦超えてから所定時間内に所定の変化量制限値以内に復帰した場合には、入力値により設定値を更新してもよい。

0013

温度設定部は、所定の温度パラメータの入力値と現在の設定値との差が、所定の変化量制限値を一旦超えてから所定時間を経過しても所定の変化量制限値以内に復帰しない場合には、以降の設定値を、現在の設定値に固定してもよい。

0014

所定の温度パラメータがエンジンの冷却水温又は油温の少なくとも一方であり、所定の変化量制限値は冷却水温又は油温の低下時の変化量制限値であってもよい。

0015

所定の温度パラメータが吸気温度であり、所定の変化量制限値は吸気温度の上昇時の変化量制限値であってもよい。

0016

温度設定部、トルク推定部、及びトルク監視部が、エンジンの駆動制御を実行する演算装置に備えられてもよい。

0017

トルク監視部は、吸気スロットル弁をリンプホーム開度に固定させてもよい。

発明の効果

0018

本発明によれば、温度パラメータが異常値を示す場合であってもフェールセーフ機能を保証することができる。

図面の簡単な説明

0019

本発明の一実施形態に係るエンジン制御システム概略構成を示す模式図である。
同実施形態に係るECUの構成例を示すブロック図である。
同実施形態に係る温度パラメータの設定処理を示す説明図である。
同実施形態に係る冷却水温の設定処理を示す説明図である。
吸気温度と吸気酸素濃度との関係を示す説明図である。
冷却水温(又は油温)とエンジンフリクションとの関係を示す説明図である。
同実施形態に係るエンジンのフェールセーフ処理の流れを示すフローチャートである。
同実施形態に係る冷却水温の設定処理の流れを示すフローチャートである。

実施例

0020

以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。

0021

<1.エンジン制御システム>
まず、本発明の一実施形態に係るエンジンのフェールセーフ装置を備えたエンジン制御システムの構成例について説明する。図1は、エンジン制御システムの概略構成図である。図1に示すエンジン制御システムにおいて、エンジン10の吸気通路20の上流側には、吸入空気量を検出するセンサとしてエアフローメータ21が設けられている。かかるエアフローメータ21の下流側には、電子制御式の吸気スロットル弁30が設けられている。吸気スロットル弁30のさらに下流側にはサージタンク29が設けられ、サージタンク29には、吸気温度を検出するための吸気温度センサ23が設けられている。吸気温度センサ23は、例えばサーミスタを用いて構成され得る。サージタンク29からエンジン10の各気筒11a,11bに繋がる吸気ポート27には、燃料噴射弁25が備えられる。

0022

エンジン10のシリンダブロックには、点火プラグ13a,13bが設けられている。点火プラグ13a,13bは点火コイルを有し、かかる点火コイルは、イグナイタ19に接続されている。点火プラグ13a,13bの火花放電により、各気筒11a,11b内の混合気に着火される。これらの点火プラグ13a,13b、燃料噴射弁25、及び吸気スロットル弁30は、電子制御装置(ECU)100により駆動制御される。

0023

電子制御式の吸気スロットル弁30は、駆動部としてのモータ31に対してギヤ33を介して連設されている。モータ31が回転駆動することにより、吸気スロットル弁30が固定された軸部39が軸回転して、吸気スロットル開度が変化する。モータ31としては、例えば、直流モータ又はステッピングモータ等が用いられ得る。モータ31は、ECU100により駆動制御される。吸気スロットル弁30は、軸部39の回転角度を検出するためのスロットルセンサ37を備えている。例えば、吸気スロットル弁30が吸気通路20の軸方向に沿う状態となるときの軸部39の回転角度を0°とした場合、軸部39の回転角度が0°のときに吸気スロットル開度が100%となり、軸部39の回転角度が90°のときに吸気スロットル開度がゼロ%となる。

0024

エンジン10のシリンダブロックには、冷却水温を検出する冷却水温センサ15、油温を検出する油温センサ17が設けられている。冷却水温センサ15及び油温センサ17は、例えばサーミスタを用いて構成され得る。また、エンジン10には、クランクシャフト回転数を検出するエンジン回転数センサや、エンジン運転状態を検出するための図示しない他のセンサ類が設けられている。上述したエアフローメータ21や吸気温度センサ23、スロットルセンサ37を含む各種センサの出力は、ECU100に入力される。また、ECU100には、ドライバによるアクセルペダル5の踏み込み量を検出するためのアクセルセンサ7の出力が入力される。

0025

ECU100は、制御部110と、点火プラグ駆動回路101と、燃料噴射弁駆動回路103と、スロットル駆動回路105とを備えている。制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及び回路基板により構成される。また、制御部110は、図示しないROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の記憶素子を備える。

0026

かかる制御部110は、例えば、記憶素子に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって、種々の温度パラメータを用いて各種の演算処理を実行し、点火プラグ駆動回路101、燃料噴射弁駆動回路103、及びスロットル駆動回路105に駆動指令信号を出力する。点火プラグ駆動回路101、燃料噴射弁駆動回路103、及びスロットル駆動回路105は、それぞれ駆動指令信号にしたがってイグナイタ19、燃料噴射弁25、及びモータ31を駆動する。

0027

<2.フェールセーフ装置>
次に、エンジン制御システムに備えられた本実施形態に係るエンジンのフェールセーフ装置について説明する。本実施形態に係るエンジン制御システムでは、ECU100がフェールセーフ装置としての機能を有する。以下の実施形態においては、吸気スロットル弁30をフェールセーフ処理するECU100を例に採って説明する。

0028

図2は、ECU100のうち、吸気スロットル弁30のフェールセーフ処理に関連する部分の構成例を示すブロック図である。ECU100は、A/D変換器107と、制御部110と、スロットル駆動回路105とを備える。CPU等により構成される制御部110は、温度算出部112と、スロットル制御部114と、温度設定部116と、トルク推定部118と、トルク監視部120とを備える。これらの各部は、CPUによるコンピュータプログラムの実行により実現される機能部である。

0029

(2−1.A/D変換器)
A/D変換器107は、冷却水温センサ15、油温センサ17、及び吸気温度センサ23からそれぞれ入力されるアナログ信号デジタル信号に変換して、制御部110に出力する。本実施形態に係るECU100では、各温度センサから出力されるアナログ信号は、検出温度に応じて変化する電圧信号であって、A/D変換器107は、アナログの電圧信号をデジタルの電圧信号に変換する。

0030

(2−2.温度算出部)
制御部110の温度算出部112は、A/D変換器107から入力されるデジタル信号(V)を、温度(℃)の情報に変換し、温度パラメータとしての冷却水温Tc、油温To、及び吸気温度Taを算出する。温度算出部112は、フィルタリング等によるノイズ除去処理を実行してもよい。温度算出部112は、あらかじめ設定された処理サイクルごとにA/D変換器107から出力されるデジタルの電圧信号を読み込み、冷却水温Tc、油温To、及び吸気温度Taを算出する。

0031

(2−3.スロットル制御部)
スロットル制御部114は、ドライバのアクセル踏み込み量Acc及びエンジン回転数Ne等に基づいて設定される要求トルクTq_expに基づいて、スロットル開度マップを参照して、目標スロットル開度(%)を設定する。要求トルクTq_expが大きいほど、エンジン10の気筒11a,11bに供給すべき必要酸素量は多くなるため、目標スロットル開度はより大きな値に設定される。スロットル制御部114は、設定した目標スロットル開度に応じて吸気スロットル弁30の軸部39の回転角度(°)を求めるとともに、モータ31に供給する電力を決定し、スロットル駆動回路105に対して駆動指令を出力する。

0032

このとき、吸気スロットル開度は、冷却水温Tc、油温To、又は吸気温度Taのうちの少なくとも1つの温度パラメータに基づいて設定される。例えば、冷却水温Tc及び油温Toは、エンジン10の気筒11a,11bにおける燃焼効率に影響し、吸気温度Taは、吸入空気中の酸素濃度に影響する。例えば、冷却水温Tcが低い場合、吸気ポート27付近の温度が低く、ガソリン気化不完全になり、実際に燃焼するガソリン量が減ることから、冷却水温Tcが低いほど吸入空気量が増加するように補正してもよい。また、吸気温度Taが低い場合、吸気中酸素密度が高くなることから、吸気温度Taが低いほど吸入空気量が増加するように補正してもよい。

0033

(2−4.温度設定部)
温度設定部116は、温度算出部112から入力される冷却水温Tc、油温To、及び吸気温度Taの情報に基づいて、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる温度パラメータを設定する。温度設定部116は、処理サイクルごとに温度パラメータの入力値Tと現在の設定値Ptとを比較する。温度設定部116は、温度パラメータの入力値Tと現在の設定値Ptとの差が所定の変化量制限値αを超えている場合には温度パラメータの現在の設定値Ptを保持する。また、温度設定部116は、温度パラメータの入力値Tと現在の設定値Ptとの差が所定の変化量制限値αを超えていない場合には、温度パラメータの入力値Tにより設定値Ptを更新する。

0034

変化量制限値αは、想定される処理サイクル当たりの温度パラメータの最大変化量よりも大きい値に適宜設定され得る。例えば、処理サイクルが8ミリ秒の場合に、想定される冷却水温Tcの最大変化量が20〜30℃である場合、変化量制限値αは40〜50℃に設定されてもよい。つまり、温度算出部112から入力される温度パラメータが、想定される変化量を超えて変化している場合には、温度センサ又はECU100の故障が発生しているおそれがある。このため、温度設定部116は、そのような異常な入力値Tが、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いられないようにしている。

0035

これにより、吸気スロットル開度が、温度パラメータの異常な入力値Tに基づいて設定された場合であっても、推定されるエンジン10の発生トルクTq_estは、現実の温度とのずれが小さい温度パラメータを用いて推定される。これにより、推定されるエンジン10の発生トルクTq_estが要求トルクTq_expよりも所定以上大きい場合にエンジン10の発生トルクを低下させるフェールセーフ機能を保証することができる。

0036

図3は、本実施形態に係るECU100の温度設定部116による温度パラメータの設定処理について説明するための図である。図3は、一例として、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる冷却水温Tcの設定処理を示している。図中、太線で示す実線が温度算出部112からの入力値Tcの推移を示し、太線で示す破線が温度設定部116で設定される設定値Ptcの推移を示す。

0037

処理サイクルt1〜t11ごとに、温度設定部116には、温度算出部112で算出された冷却水温Tc(1),Tc(2),・・・Tc(n)の情報が入力される。処理サイクルt1〜t11の間隔(ミリ秒)は、電子制御装置100の処理能力に応じて適宜設定され得る。温度設定部116は、1回目の処理サイクルt1、例えば、ECU10の起動後の初回の処理サイクルt1においては、入力された冷却水温Tcの入力値Tc(1)を設定値Ptc(1)に設定する(Ptc(1)=Tc(1))。

0038

続く2回目の処理サイクルt2において、入力された冷却水温Tcの入力値Tc(2)は、現在の設定値Ptc(1)に変化量制限値αを加算した上限値を超えておらず、かつ、現在の設定値Ptc(1)から変化量制限値αを減算した下限値を下回っていない。このため、温度設定部116は、設定値Ptc(2)を今回の入力値Tc(2)で更新する(Ptc(2)=Tc(2))。

0039

続く3回目の処理サイクルt3において、入力された冷却水温Tcの入力値Tc(3)は、現在の設定値Ptc(2)に変化量制限値αを加算した上限値を超えておらず、かつ、現在の設定値Ptc(2)から変化量制限値αを減算した下限値を下回っていない。このため、温度設定部116は、設定値Ptc(3)を今回の入力値Tc(3)で更新する(Ptc(3)=Tc(3))。

0040

続く4回目の処理サイクルt4において、入力された冷却水温Tcの入力値Tc(4)は、現在の設定値Ptc(3)から変化量制限値αを減算した下限値を下回っている。このため、温度設定部116は、設定値Ptc(4)を、現在の設定値Ptc(3)のままで保持する。これは、冷却水温の入力値Tc(4)が異常値を示す場合に、現実の冷却水温Tcが、現在の設定値Ptc(3)を中心値として、所定の変化量制限値αで規定される範囲内にあると仮定した場合、現在の設定値Ptc(3)を保持することによって、設定値Ptc(4)と現実の冷却水温Tcとの誤差を小さくすることができるからである。

0041

また、冷却水温の入力値Tc(4)と現在の設定値Ptc(3)との差が変化量制限値αを上回った場合、次の5回目の処理サイクルt5の演算処理で用いられる変化量制限値αは増大され、より大きい値に設定される。例えば、変化量制限値αは、下記式(1)を用いて設定され得る。

0042

α=α0×(N+1) …(1)
α:変化量制限値
α0:基準制限値
N:変化量制限値を超える連続回数

0043

基準制限値α0は、上述したように、想定される処理サイクル当たりの温度パラメータの最大変化量よりも大きい値とされ、冷却水温の入力値Tc(4)と現在の設定値Ptc(3)との差が変化量制限値αを上回らない限り(N=0)、変化量制限値αは基準制限値α0となる。つまり、上記式(1)により求められる変化量制限値αは、冷却水温の入力値Tcと現在の設定値Ptcとの差が変化量制限値αを上回る回数が増えるごとに、大きい値に設定される。これにより、現実の冷却水温Tcが、現在の設定値Ptcを中心値として変化量制限値αの範囲内で最大限変化したと仮定して、次の変化量制限値αが設定されるようになっている。

0044

なお、変化量制限値αを増大させる設定方法は、上記式(1)を用いる例に限られない。上記式(1)の例では、変化量制限値αは、入力値Tcが連続して異常を示す回数が増えるごとに2倍、3倍・・・と増えていくが、例えば、下記式(2)のように、所定の係数Cをかけた値ずつ大きくなるようにしてもよい。

0045

α=α0+C×N×α0 …(2)
α:変化量制限値
α0:基準制限値
C:係数
N:変化量制限値を超える連続回数

0046

続く5回目の処理サイクルt5において、入力された冷却水温Tcの入力値Tc(5)は、現在の設定値Ptc(3)に変化量制限値αを加算した値を超えておらず、かつ、現在の設定値Ptc(3)から変化量制限値αを減算した下限値を下回っていない。このため、温度設定部116は、設定値Ptc(5)を今回の入力値Tc(5)で更新する(Ptc(5)=Tc(5))。冷却水温の入力値Tc(5)と現在の設定値Ptc(3)との差が変化量制限値α内に復帰したことで、上記式(1)を用いて設定される、次の処理サイクルで用いられる変化量制限値αは、基準制限値α0に戻されることになる。

0047

続く6回目の処理サイクルt6において、入力された冷却水温Tcの入力値Tc(6)は、現在の設定値Ptc(5)に変化量制限値αを加算した上限値を超えておらず、かつ、現在の設定値Ptc(5)から変化量制限値αを減算した下限値を下回っていない。このため、温度設定部116は、設定値Ptc(6)を今回の入力値Tc(6)で更新する(Ptc(6)=Tc(6))。

0048

続く7回目の処理サイクルt7において、入力された冷却水温Tcの入力値Tc(7)は、現在の設定値Ptc(6)から変化量制限値αを減算した下限値を下回っている。このため、温度設定部116は、設定値Ptc(7)を、現在の設定値Ptc(6)のままで保持する。

0049

続く8回目の処理サイクルt8及び9回目の処理サイクルt9においても、入力された冷却水温Tcの入力値Tc(8),Tc(9)は、現在の設定値Ptc(6)から、それぞれ上記式(1)を用いて設定される変化量制限値αを減算した下限値を下回っている。このため、温度設定部116は、設定値Ptc(8),Ptc(9)を、現在の設定値Ptc(6)のままで保持する。

0050

このとき、図3の例では、冷却水温の入力値Tcと現在の設定値Ptcとの差が変化量制限値αを連続して超える回数が3回以上となった場合、以降のエンジン10の発生トルクTq_estの算出に用いる冷却水温の設定値Ptcが、現在の設定値Ptcで固定されるようになっている。つまり、9回目の処理サイクルにおいて、入力された冷却水温の入力値Tc(9)と現在の設定値Ptc(6)との差が変化量制限値αを連続して超える回数が3回となったため、10回目以降の処理サイクルでは設定値Ptc(9),Ptc(10),Ptc(11)が固定されている。これは、冷却水温の入力値Tcの異常が所定回数以上続いた場合、入力値Tcと設定値Ptcとの差が上記式(1)等を用いて設定される変化量制限値αの範囲内に収まったとしても、もはや入力値Tcが異常でないことを保障することが困難であるからである。

0051

このように、温度設定部116は、冷却水温の入力値Tcと現在の設定値Ptcとの差が変化量制限値αを一旦超えてから所定時間内(上記の例では3サイクル以内)に変化量制限値α内に復帰した場合には、入力値Tcにより設定値Ptcを更新する。また、温度設定部116は、冷却水温の入力値Tcと現在の設定値Ptcとの差が変化量制限値αを一旦超えてから所定時間(上記の例では3サイクル)を超えて変化量制限値α内に復帰しない場合には、以降の設定値Ptcを現在の設定値Ptcに固定する。例えば、イグニッションスイッチオフにされて、今回のドライビングサイクルが終了するまでの間、温度設定部116は、エンジン10の発生トルクの推定に用いる冷却水温の設定値Ptcの固定を維持する。

0052

以上のようにして、温度設定部116は、冷却水温の入力値Tcが異常値を示していない限り、入力値Tcを、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる温度パラメータとして設定する。一方、温度設定部116は、冷却水温の入力値Tcが異常値を示している場合、これまでの設定値をエンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる温度パラメータとして保持する。そして、温度設定部116は、冷却水温の入力値Tcが、もはや信頼できない状態になった場合には、以降のエンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる温度パラメータを現在の設定値に固定する。これにより、トルク推定部118によって推定されるエンジン10の発生トルクTq_estが、現実の発生トルクから大きくずれないように保証される。

0053

なお、図3に示した例では、冷却水温の入力値Tcが、現在の設定値Ptcを中心値として所定の変化量制限値αを超えて増減したかを監視しているが、冷却水温の入力値Tcが現在の設定値Ptcから所定の変化量制限値αを超えて減少したかのみを監視してもよい。つまり、ECU100のフェールセーフ機能は、ドライバの意図しない急加速を防ぐことがより重要であるため、エンジンフリクションが急激に増加したとご認識されて吸気スロットル開度が増大され得る冷却水温Tcの急降下のみが監視されてもよい。

0054

図4は、冷却水温の入力値Tcが現在の設定値Ptcから所定の変化量制限値αを超えて減少したかのみを監視しながら、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる設定値Ptcを設定する例を示す説明図である。図4に示す例においても、冷却水温の入力値Tcが、現在の設定値Ptcから、上記式(1)等を用いて設定される所定の変化量制限値αを超えて急降下する場合には、設定値Ptcが保持される。また、現在の設定値Ptcから冷却水温の入力値Tcを減算した差の値が、所定の変化量制限値αを超えていない場合には、入力値Tcにより設定値Ptcが更新される。

0055

温度設定部116は、冷却水温Tcだけでなく、油温To及び吸気温度Taについても、上述の冷却温度Tcの設定処理に準じて、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる油温Toの設定値Pto及び吸気温度Taの設定値Ptaを算出することができる。ただし、ECU100のフェールセーフ機能が、ドライバの意図しない急加速を防ぐことがより重要であることを考慮すると、油温Toについては、冷却水温Tcと同様に、入力値Toが現在の設定値Ptoから所定の変化量制限値αを超えて減少したかを監視することがより重要となる。

0056

一方、吸気温度Taについては、上昇時において、ECU100が吸気中の酸素濃度が低下したと誤認識して、吸気スロットル開度を増大させるおそれがある。そのため、吸気温度Taについては、入力値Taが現在の設定値Ptaから所定の変化量制限値αを超えて増大したかを監視することがより重要となる。なお、冷却水温の設定値Ptc、油温の設定値Pto、及び吸気温度の設定値Ptaの設定に用いられる変化量制限値αは、それぞれ想定し得る温度変化量に応じて、異なる値に設定されてよい。

0057

(2−5.トルク推定部)
トルク推定部118は、エンジン10の発生トルクTq_estを推定する演算を行う。例えば、トルク推定部118は、エンジン回転数Ne、吸入空気量、燃料噴射量、点火タイミング、冷却水温Tc、油温To、及び吸気温度Ta等の情報に基づいて、エンジン10の発生トルクTq_estを推定する。例えば、トルク推定部118は、トルク演算マップを用いる等により、エンジン回転数Ne、吸入空気量、燃料噴射量、及び点火タイミングに基づいて、基本発生トルクを算出する。このとき、トルク推定部118は、吸気中の酸素濃度に影響し得る吸気温度Taに基づいて基本発生トルクを補正してもよい。

0058

図5は、吸気温度Taと吸気酸素濃度との関係を示す説明図である。図5に示すように、吸気温度が高いほど、吸気中の酸素濃度が低くなる。したがって、吸入空気量が同じであれば、エンジン10から出力される発生トルクは小さくなる。

0059

また、トルク推定部118は、算出した基本発生トルクから、エンジンフリクション、空調装置負荷オルタネータの負荷、変速機の負荷等のトルクのマイナス要素を減算することにより、正味の発生トルクTq_estを推定する。このとき、エンジンフリクションは、冷却水温Tc又は油温Toの少なくとも一方の温度に基づいて設定され得る。

0060

図6は、冷却水温Tcあるいは油温Toとエンジンフリクションとの関係を示す説明図である。図6に示すように、冷却水温Tcあるいは油温Toが低いほど、エンジンフリクションは大きくなる。したがって、エンジン10から出力される発生トルクは小さくなる。

0061

本実施形態に係るECU100では、温度設定部116により設定される吸気温度の設定値Ptaを用いて基本発生トルクが算出される。また、温度設定部116により設定される冷却水温Tc又は油温Toの少なくとも一つを用いてエンジンフリクションが設定される。したがって、温度パラメータの入力値Tが信頼できる間は、当該入力値Tを用いてエンジン10の発生トルクTq_estが推定され得る。また、冷却水温の入力値Tが異常値を示したり、あるいは、もはや温度パラメータの入力値Tを信頼できないような場合には、現実の温度パラメータTとの誤差が少ない設定値Ptを用いて、エンジン10の発生トルクTq_estが推定され得る。したがって、推定されるエンジン10の発生トルクTq_estは、温度パラメータの入力値Tの異常に起因して低下することがない。これにより、温度パラメータの入力値Tが異常値となっている場合には、推定されるエンジン10の発生トルクTq_estが、要求トルクTq_expよりも大きく算出されるようになる。

0062

(2−6.トルク監視部)
トルク監視部120は、トルク推定部118で算出されるエンジン10の発生トルクTq_estを監視し、推定される発生トルクTq_estが要求トルクTq_expを所定以上上回る場合にエンジン10の発生トルクを低下させる。例えば、トルク監視部120は、アクセル踏み込み量Acc及びエンジン回転数Ne等に基づいて設定される要求トルクTq_expと、推定されたエンジン10の発生トルクTq_estとを比較する。そして、推定された発生トルクTq_estから要求トルクTq_expを減算した値が、あらかじめ設定された閾値βを超える場合に、トルク監視部120は、スロットル駆動回路105に指令信号を出力し、吸気スロットル開度をリンプホーム開度に固定させる。これにより、フェールセーフ機能が作動して、ドライバの意図しない車両の急加速が抑制される。

0063

閾値βは、例えば、エンジン10の仕様や車両の加速の許容範囲等に応じて、適宜の値に設定されてよい。また、リンプホーム開度は、例えば、車両を退避走行させることができる程度の吸入空気量を確保可能な吸気スロットル開度に設定され得る。あるいは、リンプホーム開度として、吸気スロットル開度がゼロ%に設定され、車両を速やかに停止させるようにしてもよい。このとき、警告音音声、あるいはランプ表示又は画像表示等によって、ドライバ等に警告をしてもよい。

0064

(2−7.スロットル駆動回路)
スロットル駆動回路105は、主として、制御部110のスロットル制御部114から出力される駆動指令に基づいて、吸気スロットル弁30のモータ31の駆動制御を行う。これにより、吸気スロットル開度が、要求トルクTq_expに応じて調節される。また、スロットル駆動回路105は、トルク監視部120から出力される駆動指令を受けたときには、吸気スロットル開度をリンプホーム開度で固定するようモータ31の駆動制御を行う。これにより、エンジン10の気筒11a,11bに供給される吸入空気量が抑制され、車両の急加速が抑制される。

0065

<3.フェールセーフ処理のフローチャート>
ここまで、本実施形態に係るエンジンのフェールセーフ装置(ECU)100の構成例について説明した。以下、図7及び図8を参照して、本実施形態に係るECU100により実行されるエンジンのフェールセーフ処理のフローチャートの一例を説明する。図7は、フェールセーフ処理のメインルーチンのフローチャートであり、図8は、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる冷却水温の設定値Ptcの設定処理のフローチャートである。これらのフローチャートで示される演算処理は、例えば、エンジン10のイグニッションスイッチがオンにされている期間、常時実行されてもよい。

0066

図7に示すように、まず、制御部110の温度設定部116は、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる冷却水温Tc、油温To及び吸気温度Taの設定値Ptc,Pto,Ptaを算出する(S11)。冷却水温の設定値Ptc及び油温の設定値Ptoは、いずれか一方のみが設定されてもよい。ここで、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる温度パラメータの設定処理の一例として、冷却水温の設定値Ptcの設定処理のフローチャートを説明する。

0067

図8に示すように、まず、制御部110の温度設定部116は、温度算出部112で算出された冷却水温の入力値Tc(n)を取得する(S21)。取得される冷却水温の入力値Tc(n)は、例えば、温度算出部112により、A/D変換器107を介して入力されるセンサ信号に基づき、ノイズ除去処理等を行いつつ算出される。

0068

次いで、温度設定部116は、今回入力された冷却水温の入力値Tc(n)と現在設定されている冷却水温の設定値Ptc(n−1)との差に基づき、今回の処理サイクルにおける冷却水温の変化量ΔTc(n)を算出する(S23)。かかる冷却水温の変化量ΔTc(n)は、今回入力された冷却水温の入力値Tc(n)と現在設定されている冷却水温の設定値Ptc(n−1)との差の絶対値であってもよく、あるいは、冷却水温の場合であれば、今回入力された冷却水温の入力値Tc(n)から現在設定されている冷却水温の設定値Ptc(n−1)を減算した値であってもよい。ドライバの意図しない車両の急加速を抑制するためには、冷却水温の急降下を検出することがより重要になるからである。

0069

次いで、温度設定部116は、冷却水温の入力値Tc(n)が異常値であるか否かを判別するための変化量制限値αを設定する(S25)。変化量制限値αは、例えば、上記式(1)あるいは(2)を用いて設定され得る。なお、ステップS23とステップS25の順序は逆であってもよい。

0070

次いで、温度設定部116は、今回の処理サイクルにおける冷却水温の変化量ΔTc(n)が変化量制限値α以下であるか否かを判別する(S27)。冷却水温の変化量ΔTc(n)が変化量制限値α以下である場合(S27:Yes)、温度設定部116は、今回の冷却水温の入力値Tc(n)により現在の設定値Ptc(n−1)を更新し、入力値Tc(n)をエンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる設定値Ptc(n)として設定する(S29)。

0071

一方、冷却水温の変化量ΔTc(n)が変化量制限値αを超える場合(S27:No)、温度設定部116は、冷却水温の変化量ΔTc(n)が変化量制限値αを連続して超える回数Nが、あらかじめ設定された閾値N_thre未満であるか否かを判別する(S31)。閾値N_threは、冷却水温の入力値Tc(n)の信頼性を評価すべく適宜設定される値であって、上述した図3の例では「3」に設定されている。

0072

かかる連続回数Nが閾値N_thre未満の場合(S31:Yes)、温度設定部116は、現在設定されている冷却水温の設定値Ptc(n−1)を、そのまま今回の設定値Ptc(n)として保持する(S33)。一方、連続回数Nが閾値N_threに到達した場合(S31:No)、温度設定部116は、以降のエンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる冷却水温の設定値Ptc(n)を、現在設定されている設定値Ptc(n−1)に固定する。冷却水温の設定値Ptc(n)を固定値とした後は、例えば、エンジン10のイグニションスイッチがオンの間、当該固定値の設定が保持され、イグニションスイッチがオフにされたときに固定値の設定が解除されてもよい。

0073

かかる図8のフローチャートに示したように、温度設定部116は、現在の設定値Ptc(n−1)に対する冷却水温の入力値Tc(n)の変化量ΔTc(n)が、処理サイクルごとに想定される最大変化量(変化量制限値α)を超えていない場合には、入力値Tc(n)を、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いる設定値Ptc(n)とする。一方、温度設定部116は、現在の設定値Ptc(n−1)に対する冷却水温の入力値Tc(n)の変化量ΔTc(n)が、変化量制限値αを超えている場合には、入力値Tc(n)が異常値と判断されるために、現在の設定値Ptc(n−1)を今回の設定値Ptc(n)として保持する。

0074

さらに、温度設定部116は、現在の設定値Ptc(n−1)に対する冷却水温の入力値Tc(n)の変化量ΔTc(n)が変化量制限値αを連続して超える回数Nが閾値N_threに到達した場合には、もはや冷却水温の入力値Tc(n)を信頼できないものと判断して、以降の設定値Ptc(n)を現在の設定値Ptc(n−1)に固定する。これにより、冷却水温の異常な入力値、あるいは、信頼性の低い入力値が、エンジン10の発生トルクTq_estの推定に用いられることが妨げられる。

0075

なお、油温の設定値Pto又は吸気温度の設定値Ptaについても、図8に示したフローチャートと同様の処理手順により設定され得る。ただし、吸気温度の場合には、今回の吸気温度の入力値Ta(n)から現在の設定値Pta(n−1)を減算した値が、所定の変化量制限値αを超えていないかを判別することが重要になる。ドライバの意図しない車両の急加速を抑制するためには、吸気温度の急上昇を検出することがより重要になるからである。冷却水温の設定値Ptc、油温の設定値Pto、及び吸気温度の設定値Ptaの設定に用いられる変化量制限値αは、それぞれ想定し得る温度変化量に応じて、異なる値に設定されてよい。

0076

図7戻り、ステップS11において、冷却水温の設定値Ptc、油温の設定値Pto、及び吸気温度の設定値Ptaがそれぞれ設定された後、制御部110のトルク推定部118は、エンジン10の発生トルクTq_estを推定する(S13)。例えば、トルク推定部118は、トルク演算マップを用いる等により、エンジン回転数Ne、吸入空気量、燃料噴射量、及び点火タイミングに基づいて、基本発生トルクを算出する。このとき、トルク推定部118は、吸気中の酸素濃度に影響し得る吸気温度Taに基づいて基本発生トルクを補正してもよい。また、トルク推定部118は、算出した基本発生トルクから、エンジンフリクション、空調装置の負荷、オルタネータの負荷、変速機の負荷等のトルクのマイナス要素を減算することにより、正味の発生トルクTq_estを推定する。このとき、エンジンフリクションは、冷却水温Tc又は油温Toの少なくとも一方の温度に基づいて設定され得る。

0077

次いで、制御部110のトルク監視部120は、推定されたエンジン10の発生トルクTq_estから要求トルクTq_expを減算した値が、あらかじめ設定された閾値βを超えているか否かを判別する(S15)。閾値βは、例えば、エンジン10の仕様や車両の加速の許容範囲等に応じて、適宜の値に設定されてよい。

0078

推定されたエンジン10の発生トルクTq_estから要求トルクTq_expを減算した値が閾値βを超えている場合、トルク監視部120は、推定されたエンジン10の発生トルクTq_estが急上昇していると判断して、吸気スロットル開度をリンプホーム開度に固定するよう、スロットル駆動回路105に駆動指令を出力する。リンプホーム開度は、退避走行ができる程度の吸入空気量を確保可能な吸気スロットル開度であってもよく、あるいは、エンジン10を速やかに停止させるべく、ゼロ%に設定されてもよい。これにより、ドライバの意図しない車両の急加速を速やかに終了させることができる。

0079

一方、推定されたエンジン10の発生トルクTq_estから要求トルクTq_expを減算した値が閾値βを超えていない場合、推定されたエンジン10の発生トルクTq_estの急上昇は見られないため、トルク監視部120は、そのまま本ルーチンを終了して、ステップS11に戻って、これまで説明した手順に沿って各ステップの処理を繰り返す。

0080

本実施形態に係るエンジン10のフェールセーフ処理においては、温度パラメータの入力値Tc,To,Taが異常値を示している場合、あるいは、それらの入力値Tc,To,Taの信頼性が低下している場合には、現在の各温度パラメータの設定値Ptc,Pto,Ptaが保持されて、エンジン10の発生トルクTq_estが推定される。したがって、異常値を示す温度パラメータの入力値Tc,To,Taを用いてエンジン10の発生トルクTq_estが推定されることがなく、推定されるエンジン10の発生トルクTq_estの急上昇により、ドライバの意図しない車両の急加速を精度よく検出することができる。

0081

以上説明したように、本実施形態に係るエンジン10のフェールセーフ装置(ECU)100は、温度パラメータの入力値(Tc(n),To(n),Ta(n))と現在の設定値(Ptc(n−1),Pto(n−1),Pta(n−1))との差が所定の変化量制限値αを超えていない場合には、入力値(Tc(n),To(n),Ta(n))を設定値(Ptc(n),Pto(n),Pta(n))として、エンジン10の発生トルクTq_estを推定する。一方、エンジン10のフェールセーフ装置100は、温度パラメータの入力値(Tc(n),To(n),Ta(n))と現在の設定値(Ptc(n−1),Pto(n−1),Pta(n−1))との差が所定の変化量制限値αを超えている場合には、現在の設定値(Ptc(n−1),Pto(n−1),Pta(n−1))を保持してエンジン10の発生トルクTq_estを推定する。

0082

したがって、異常値を示す温度パラメータの入力値(Tc(n),To(n),Ta(n))を用いてエンジン10の発生トルクTq_estが推定されることがないため、推定されるエンジン10の発生トルクTq_estに基づいて、ドライバの意図しない車両の急加速が精度よく検出される。これにより、エンジン10のフェールセーフ機能が保証される。

0083

また、本実施形態に係るエンジン10のフェールセーフ装置100は、温度パラメータの入力値(Tc(n),To(n),Ta(n))と現在の設定値(Ptc(n−1),Pto(n−1),Pta(n−1))との差が連続して所定の変化量制限値αを超える場合、変化量制限値αを増大させることとしている。したがって、実際には変化している可能性がある温度パラメータの入力値が異常値と判定される可能性が低減され得る。

0084

さらに、本実施形態に係るエンジン10のフェールセーフ装置100は、温度パラメータの入力値(Tc(n),To(n),Ta(n))と現在の設定値(Ptc(n−1),Pto(n−1),Pta(n−1))との差が連続して所定の変化量制限値αを超える回数Nが、あらかじめ設定された閾値N_threを超える場合には、以降の設定値を現在の設定値(Ptc(n−1),Pto(n−1),Pta(n−1))に固定することとしている。したがって、もはや信頼できない入力値(Tc(n),To(n),Ta(n))を用いて、エンジン10の発生トルクTq_estが推定される可能性がなくなる。したがって、本実施形態に係るエンジン10のフェールセーフ装置100は、温度パラメータの入力値(Tc(n),To(n),Ta(n))の異常時においても、フェールセーフ機能を保証することができる。

0085

以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

0086

例えば、上記実施形態では、温度設定部は、温度パラメータの入力値と現在の設定値との差を変化量制限値と比較して、入力値が異常値であるか否かを判別していたが、本発明は係る例に限定されない。温度設定部は、現在の設定値に変化量制限値を加算した上限値、あるいは、現在の設定値から変化量制限値を減算した下限値を設定して、これらの上限値又は下限値と入力値との比較を行ってもよい。

0087

また、上記実施形態では、トルク監視部は、推定されるエンジンの発生トルクの急上昇時のフェールセーフ処理として、吸気スロットル開度をリンプホーム開度に固定させていたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、トルク監視部は、エンジンのフェールセーフ処理として、燃料噴射量をリンプホーム噴射量に固定させてもよい。この場合、リンプホーム噴射量は、エンジン回転数がアイドル回転数を維持できる程度の噴射量であってもよく、あるいは、エンジンを速やかに停止させるべく、ゼロに設定されてもよい。

0088

また、本実施形態に係るエンジンのフェールセーフ装置において、温度設定部、トルク推定部、及びトルク監視部を有する制御部が、エンジンの駆動制御を実行するCPU等の制御部の一機能として構成されてもよい。フェールセーフ機能を構成する各部が、エンジンの駆動制御部が搭載されたCPU等に搭載される場合、温度パラメータの異常値が、駆動制御部及びトルク推定部においてともに用いられると、推定されるエンジンの発生トルクと要求トルクとが一致してしまい、エンジンの発生トルクの異常を検出できなくなるおそれがある。かかるCPU等に本発明が適用されることによって、温度パラメータの異常値を用いてエンジンの発生トルクが推定されることがなくなり、推定されるエンジンの発生トルクの異常に基づいて、ドライバの意図しない車両の急加速を検出することが可能になる。

0089

10エンジン
15冷却水温センサ
17油温センサ
23吸気温度センサ
25燃料噴射弁
30吸気スロットル弁
31モータ
100フェールセーフ装置(ECU)
105スロットル駆動回路
110 制御部
112温度算出部
114スロットル制御部
116温度設定部
118トルク推定部
120トルク監視部
α 変化量制限値

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