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技術 バイオディーゼル燃料の精製方法

出願人 トヨタ自動車株式会社国立大学法人京都大学
発明者 志佐倫子林倫坂志朗南英治洲上唯一吉冨慎一郎
出願日 2016年8月1日 (4年4ヶ月経過) 出願番号 2016-151206
公開日 2018年2月8日 (2年10ヶ月経過) 公開番号 2018-021091
状態 特許登録済
技術分野 液体炭素質燃料
主要キーワード 静置温度 蒸留精製装置 パーム由来 理想溶液 静置条件 活量係数 フィルター濾過後 IFAC
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (9)

課題

モノグリセリドを効率よく除去することが可能なバイオディーゼル燃料精製方法を提供する。

解決手段

脂肪酸エステル及びモノグリセリドを含むバイオディーゼル燃料の精製方法であって、以下:(a)バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料の曇り点より高く、モノグリセリドのβ’型結晶析出温度以下である温度に保持して、モノグリセリドを含む凝集沈殿物析出させる工程、及び(b)析出した凝集沈殿物を除去する工程を含む、上記バイオディーゼル燃料の精製方法。

概要

背景

バイオディーゼル燃料とは、油脂の主成分であるトリグリセリドエステル交換反応エステル化反応により得られる脂肪酸エステルのことであり、従来のディーゼル車にそのまま使用できる。東アジアや欧州、米国、中南米を中心として、バイオディーゼル燃料は再生可能エネルギーの中でも軽油代替燃料としての利用が拡大している。しかし、実際のバイオディーゼル燃料には脂肪酸エステル以外の成分も僅かに含まれており、その中でも反応中間体であるモノグリセリド融点が高く、寒冷地等でバイオディーゼル燃料を使用した場合、モノグリセリド等の凝集析出によって燃料フィルター目詰まりを起こすという問題がある。

例えば特許文献1には、バイオディーゼル燃料の製造過程において残留メタノール及びその他の不純物を除去するための蒸留精製装置が開示されている。具体的には、特許文献1には、脂肪酸エステルとモノグリセリドの沸点の差を利用し、減圧蒸留法によってモノグリセリドを除去する方法が示されている。特許文献1によれば、当該方法により沸点の低い脂肪酸エステルを蒸発させ、残ったモノグリセリドを除去することができるとされている。しかしながら、特許文献1に開示されるような減圧蒸留法の場合、バイオディーゼル燃料の加熱及び減圧のために大きなエネルギーが必要なため、エネルギー効率が悪いという問題がある。また、加熱によって不飽和脂肪酸エステル酸化分解が起こり、燃料変質する恐れもある。

特許文献2には、液−液抽出法によりモノグリセリドを除去する方法が示されている。当該方法においては、脂肪酸エステルよりもモノグリセリドの方が極性が高いことを利用し、例えば極性溶媒であるメタノール等のアルコール抽出溶媒として用いている。すなわち特許文献2には、極性溶媒であるメタノールでバイオディーゼル燃料を洗浄することにより、メタノール相にモノグリセリドのみを溶解させて除去する方法が開示されている。また、特許文献3には、モノグリセリドをグリセリンアルコール混合溶媒で抽出する工程を含む脂肪酸アルキルエステルを製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2及び3に開示されるような液−液抽出法の場合、実際には脂肪酸エステルもアルコール中にある程度溶解するため、その分バイオディーゼル燃料の収率が低下するという問題がある。

さらには従来技術においては、燃料の低温特性を表す指標として曇り点が用いられており、曇り点は規定の冷却方法において凝集物の析出により燃料が曇り始める温度と定義されている。しかしながら、バイオディーゼル燃料の場合、曇り点以上の温度で保存しているにも関わらず、析出物が形成される場合があるという問題があった。当該析出物は主に融点の高い反応中間体であるモノグリセリドから構成されることも知られているが、モノグリセリドはα型、β’型、β型等の結晶多形を持ち、それぞれ融点(α<β’<β)が異なるため、低温での析出物の生成挙動をより複雑なものとしている。

特に寒冷地で使用する場合には、析出温度予測することは重要な課題であり、脂肪酸メチルのみから構成される高品位バイオディーゼル燃料については、理想溶液仮定した固液平衡式を用いることで析出温度が予測できることが知られている(非特許文献1)。しかしながら、上述したようにバイオディーゼル燃料には脂肪酸エステル以外の成分も僅かに含まれており、さらにモノグリセリドはα型やβ型等融点の異なる結晶多形を持つため、バイオディーゼル燃料の析出挙動は非常に複雑であり、いまだ正確な予測は実現されていない(非特許文献2)。

上より、バイオディーゼル燃料中のモノグリセリドを簡単に、効率よく除去する方法が求められている。

概要

モノグリセリドを効率よく除去することが可能なバイオディーゼル燃料の精製方法を提供する。脂肪酸エステル及びモノグリセリドを含むバイオディーゼル燃料の精製方法であって、以下:(a)バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料の曇り点より高く、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度以下である温度に保持して、モノグリセリドを含む凝集沈殿物を析出させる工程、及び(b)析出した凝集沈殿物を除去する工程を含む、上記バイオディーゼル燃料の精製方法。

目的

本発明は、モノグリセリドを効率よく除去することが可能なバイオディーゼル燃料の精製方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

脂肪酸エステル及びモノグリセリドを含むバイオディーゼル燃料精製方法であって、以下:(a)バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料の曇り点より高く、モノグリセリドのβ’型結晶析出温度以下である温度に保持して、モノグリセリドを含む凝集沈殿物析出させる工程、及び(b)析出した凝集沈殿物を除去する工程を含む、上記バイオディーゼル燃料の精製方法。

請求項2

モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度を、バイオディーゼル燃料の化学組成に基づいた固液平衡計算によって算出する工程(c)をさらに含む、請求項1に記載のバイオディーゼル燃料の精製方法。

請求項3

工程(c)において、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度を、バイオディーゼル燃料の化学組成に基づいたUNIFACモデル又は修正UNIFAC(Dortmund)モデルによる固液平衡計算によって算出する、請求項2に記載のバイオディーゼル燃料の精製方法。

技術分野

0001

本発明は、バイオディーゼル燃料精製方法に関する。

背景技術

0002

バイオディーゼル燃料とは、油脂の主成分であるトリグリセリドエステル交換反応エステル化反応により得られる脂肪酸エステルのことであり、従来のディーゼル車にそのまま使用できる。東アジアや欧州、米国、中南米を中心として、バイオディーゼル燃料は再生可能エネルギーの中でも軽油代替燃料としての利用が拡大している。しかし、実際のバイオディーゼル燃料には脂肪酸エステル以外の成分も僅かに含まれており、その中でも反応中間体であるモノグリセリド融点が高く、寒冷地等でバイオディーゼル燃料を使用した場合、モノグリセリド等の凝集析出によって燃料フィルター目詰まりを起こすという問題がある。

0003

例えば特許文献1には、バイオディーゼル燃料の製造過程において残留メタノール及びその他の不純物を除去するための蒸留精製装置が開示されている。具体的には、特許文献1には、脂肪酸エステルとモノグリセリドの沸点の差を利用し、減圧蒸留法によってモノグリセリドを除去する方法が示されている。特許文献1によれば、当該方法により沸点の低い脂肪酸エステルを蒸発させ、残ったモノグリセリドを除去することができるとされている。しかしながら、特許文献1に開示されるような減圧蒸留法の場合、バイオディーゼル燃料の加熱及び減圧のために大きなエネルギーが必要なため、エネルギー効率が悪いという問題がある。また、加熱によって不飽和脂肪酸エステル酸化分解が起こり、燃料変質する恐れもある。

0004

特許文献2には、液−液抽出法によりモノグリセリドを除去する方法が示されている。当該方法においては、脂肪酸エステルよりもモノグリセリドの方が極性が高いことを利用し、例えば極性溶媒であるメタノール等のアルコール抽出溶媒として用いている。すなわち特許文献2には、極性溶媒であるメタノールでバイオディーゼル燃料を洗浄することにより、メタノール相にモノグリセリドのみを溶解させて除去する方法が開示されている。また、特許文献3には、モノグリセリドをグリセリンアルコール混合溶媒で抽出する工程を含む脂肪酸アルキルエステルを製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献2及び3に開示されるような液−液抽出法の場合、実際には脂肪酸エステルもアルコール中にある程度溶解するため、その分バイオディーゼル燃料の収率が低下するという問題がある。

0005

さらには従来技術においては、燃料の低温特性を表す指標として曇り点が用いられており、曇り点は規定の冷却方法において凝集物の析出により燃料が曇り始める温度と定義されている。しかしながら、バイオディーゼル燃料の場合、曇り点以上の温度で保存しているにも関わらず、析出物が形成される場合があるという問題があった。当該析出物は主に融点の高い反応中間体であるモノグリセリドから構成されることも知られているが、モノグリセリドはα型、β’型、β型等の結晶多形を持ち、それぞれ融点(α<β’<β)が異なるため、低温での析出物の生成挙動をより複雑なものとしている。

0006

特に寒冷地で使用する場合には、析出温度予測することは重要な課題であり、脂肪酸メチルのみから構成される高品位バイオディーゼル燃料については、理想溶液仮定した固液平衡式を用いることで析出温度が予測できることが知られている(非特許文献1)。しかしながら、上述したようにバイオディーゼル燃料には脂肪酸エステル以外の成分も僅かに含まれており、さらにモノグリセリドはα型やβ型等融点の異なる結晶多形を持つため、バイオディーゼル燃料の析出挙動は非常に複雑であり、いまだ正確な予測は実現されていない(非特許文献2)。

0007

上より、バイオディーゼル燃料中のモノグリセリドを簡単に、効率よく除去する方法が求められている。

0008

特開2015−203068号公報
特表2013−532165号公報
特開2008−156576号公報

先行技術

0009

Imahara, H.; Minami, E.; Saka, S.: Fuel, 85, 1666-1670 (2006)
Chupka, G. M. et al.: Energy Fuels, 25, 398-405 (2011)

発明が解決しようとする課題

0010

本発明は、モノグリセリドを効率よく除去することが可能なバイオディーゼル燃料の精製方法を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料の曇り点より高く、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度以下である温度に保持することにより、モノグリセリドを含む凝集沈殿物を効率よく析出させることが可能となることを見出した。

0012

すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]脂肪酸エステル及びモノグリセリドを含むバイオディーゼル燃料の精製方法であって、以下:
(a)バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料の曇り点より高く、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度以下である温度に保持して、モノグリセリドを含む凝集沈殿物を析出させる工程、及び
(b)析出した凝集沈殿物を除去する工程
を含む、上記バイオディーゼル燃料の精製方法。
[2]モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度を、バイオディーゼル燃料の化学組成に基づいた固液平衡計算によって算出する工程(c)をさらに含む、上記[1]に記載のバイオディーゼル燃料の精製方法。
[3]工程(c)において、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度を、バイオディーゼル燃料の化学組成に基づいたUNIFACモデル又は修正UNIFAC(Dortmund)モデルによる固液平衡計算によって算出する、上記[2]に記載のバイオディーゼル燃料の精製方法。

発明の効果

0013

本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法によれば、モノグリセリドを効率よく除去することができる。また、本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法は、バイオディーゼル燃料の製造方法に関わらず適用することができるため、既存のどのようなバイオディーゼル燃料の製造プラントにおいても実施することができる。

図面の簡単な説明

0014

図1は、本発明の概念図である。
図2は、バイオディーゼル燃料を製造する際の化学反応の例を示す図である。
図3Aは、実験1におけるモノパルミチン(1.0wt%)及びオレイン酸メチルの混合物静置温度と析出物が生成するまでの時間との関係を示す図である。
図3Bは、実験1におけるモノパルミチン(0.5wt%)及びオレイン酸メチルの混合物の静置温度と析出物が生成するまでの時間との関係を示す図である。
図4(a)及び(b)は、実験2におけるオレイン酸メチル及びモノパルミチンの混合物におけるモノパルミチンのモル分率とモノパルミチン(β型結晶)の析出温度との関係を示す図である。
図5は、実験2におけるラウリン酸メチル及びモノラウリンの混合物におけるモノラウリンのモル分率とモノラウリン(β型結晶)の析出温度との関係を示す図である。
図6は、実験2におけるオレイン酸メチル及びモノパルミチンの混合物におけるモノパルミチンのモル分率とモノパルミチン(β’型結晶)の析出温度との関係を示す図である。
図7は、実験3におけるフィルター濾過後フィルター付着物について熱分解ガスクロマトグラフ質量分析を行った結果を示す図である。

0015

本発明は、脂肪酸エステル及びモノグリセリドを含むバイオディーゼル燃料の精製方法に関し、以下:(a)バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料の曇り点より高く、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度以下である温度に保持して、モノグリセリドを含む凝集沈殿物を析出させる工程、及び(b)析出した凝集沈殿物を除去する工程を含むことを特徴とする(以下、本発明の精製方法ともいう)。

0016

本発明の精製方法は析出法により、バイオディーゼル燃料に含まれるモノグリセリド、好ましくはモノグリセリドのβ’型結晶を析出させて除去するものである。本発明者らは、急冷して測定する曇り点ではモノグリセリドのα型結晶が析出し、定温静置の場合はβ’型結晶が析出することを見出した。モノグリセリドの融点はβ’型結晶の方がα型結晶よりも高い。図1に本発明の概念図を示す。析出法によってバイオディーゼル燃料からモノグリセリドを除去する方法において、析出温度を従来のように曇り点以下とするのではなく、β’型結晶の析出温度以下に設定することにより、必要最小限の冷却にてモノグリセリドの析出物を生成し、それを例えばフィルター等により濾過して除去する。β’型結晶の析出温度は曇り点よりも高いため、本発明の精製方法においては冷却に必要なエネルギーが最小限で済む。また本発明の精製方法においては、β’型結晶の析出温度までしか冷却しないため、目的のモノグリセリドのみを除去することもできる。

0017

よって、バイオディーゼル燃料を析出法により精製する本発明の精製方法は、上述したような蒸留法や液−液抽出法の欠点が克服されている。さらには、本発明の精製方法は、単にバイオディーゼル燃料を曇り点以下の温度まで冷却し、それによって生じた析出物を除去するという単純な析出法に対しても優れる。曇り点まで温度を下げた場合、曇り点まで冷却するためのエネルギーが必要となり、また、除去しなくてもよい脂肪酸エステルの一部(例えば比較的融点の高い飽和脂肪酸エステル等)も析出して除去される可能性があり、収率が低下してしまうという問題がある。

0018

上記バイオディーゼル燃料は、脂肪酸エステル及びモノグリセリドを含む。バイオディーゼル燃料は、代表的には油脂類とアルコールとのエステル交換反応やエステル化反応で得られる。バイオディーゼル燃料は、軽油等他の液体燃料と混合された状態であってもよい。バイオディーゼル燃料は、主成分である脂肪酸エステル及び代表的な不純物であるモノグリセリド以外に、例えば未反応のトリグリセリド、反応中間体のジグリセリド、及びアルコール等を不純物として含有していてもよい。

0019

上記油脂類としては、ナタネ油ゴマ油ダイズ油トウモロコシ油ヒマワリ油パーム油パーム核油ヤシ油ベニバナ油アマニ油綿実油キリ油ヒマシ油等の植物油脂牛脂油、魚油鯨脂等の動物油脂;各種の食用油使用済み油(廃食油)等からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。

0020

上記脂肪酸エステルとしては、炭素数8〜24、好ましくは8〜18の脂肪酸とアルコールからなるエステル化合物からなる群から選択される1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。

0021

上記エステル交換反応やエステル化反応におけるアルコールとしては、好ましくは炭素数1〜5のアルコール、より好ましくは炭素数1〜3のアルコールが挙げられる。炭素数1〜5のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノールプロパノールイソプロピルアルコール、1−ブタノール2−ブタノールt−ブチルアルコール、1−ペンタノール、3−ペンタノール等が挙げられ、これらの中でメタノールが一般的であり、好ましい。

0022

上記モノグリセリドとしては、上記油脂類と上記アルコールとのエステル交換反応(エステル化反応を含む)における反応中間体として得られるものからなる群から選択される1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。

0023

本発明の精製方法が対象とする上記バイオディーゼル燃料は、モノグリセリドの含有量(重量%)が、バイオディーゼル燃料に対して、好ましくは10以下であり、より好ましくは2以下である。

0024

本発明の精製方法は、バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料の曇り点より高く、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度以下である温度に保持して、モノグリセリドを含む凝集沈殿物を析出させる工程(a)を含む。尚、当該凝集沈殿物は結晶体に限るものではない。例えば凝集沈殿物として、モノグリセリドを主成分とする結晶、若しくは結晶の前駆体で非晶の凝集物であり、溶媒役割を果たす脂肪酸エステルを濾過等で除去することで結晶化するものも含まれる。また、凝集沈殿物は、モノグリセリドを主成分とするが、反応中間体のジグリセリドや未反応物のトリグリセリドを含む場合もある。

0025

上記バイオディーゼル燃料の曇り点とは、燃料を急冷したときに析出物の生成により燃料が曇り始める温度として定義され、例えばJIS K2269に従い測定することができる。

0026

上記モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度は、バイオディーゼル燃料の化学組成に基づく固液平衡計算、好ましくはUNIFAC式又は修正UNIFAC(Dortmund)式(J. Gmehling; J. Li; M. Schiller: Ind. Eng. Chem. Res., 32, 178-193 (1993))により、正確に予測及び特定することができる。したがって、本発明の精製方法は、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度を、固液平衡計算、好ましくはUNIFACモデル又は修正UNIFAC(Dortmund)モデルによる固液平衡計算によって算出する工程(c)をさらに含むことが好ましい。本発明の精製方法においては、バイオディーゼル燃料を、バイオディーゼル燃料の曇り点より高く、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度以下である温度に保持するため、モノグリセリド、好ましくはモノグリセリドのβ’型結晶を効率よく析出させることができる。また、本発明の精製方法によれば、除去する必要のない脂肪酸エステル等の他の析出物が生じない条件でモノグリセリドだけを析出させることもできる。

0027

上記バイオディーゼル燃料を保持するとは、バイオディーゼル燃料の曇り点より高く、モノグリセリドのβ’型結晶の析出温度以下である温度の範囲内に維持した状態でバイオディーゼル燃料を静置することを意味する。モノグリセリドを効率よく析出させる観点から、一定の温度にて静置することが好ましい。保持する温度は、モノグリセリドを効率よく析出させる観点から、β’型結晶の予測析出温度よりも少し低い温度、例えば1〜10℃低い温度とすることが好ましい。

0028

本発明の精製方法は、析出した凝集沈殿物を除去する工程(b)を含む。

0029

上記工程(b)において、析出した凝集沈殿物を除去する手段としては、析出した凝集沈殿物、特にモノグリセリドを除去することが可能である限り特に制限されず、例えば濾過フィルターによる濾過や遠心分離等により行うことができる。また、工程(b)を行う際の温度等の条件は、析出した凝集沈殿物、特にモノグリセリドを除去することが可能である限り特に制限されず、当業者であれば適宜設定することができる。

0030

以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されない。

0031

[実験1:バイオディーゼル燃料の低温特性におけるモノグリセリド多形の影響]
バイオディーゼル燃料の低温特性について、反応中間体であるモノグリセリドの結晶多形の影響を検討した。

0032

試料として、バイオディーゼル燃料の主成分であるオレイン酸メチルにモノグリセリドであるモノパルミチン(1-モノパルミチン)を様々な濃度で添加したモデル燃料を用いた。これら試料の曇り点を自動流動点・曇り点試験機(MPC-102、田中科学機器製)を用いて測定した。ただし、降温速度は1℃/分とした。一方、試料を0〜30℃(5℃刻み)に設定した恒温槽内に静置したときの、析出物が生成するまでの時間を測定した。但し、本実験では観察時間を最大168時間(7日)までとした。
表1に、オレイン酸メチル/モノパルミチン混合物の曇り点(CP)の測定結果を示す。

0033

0034

モノパルミチン濃度が1wt%のとき曇り点は19.4℃であるが、濃度の減少とともに曇り点は低下し、0.05wt%のときには-26℃になっている。このように、モノパルミチン濃度の依存度が強いことから、曇り点はモノパルミチンの析出に起因していると考えられる。さらに、曇り点がモノパルミチンのどの結晶多形の析出に起因しているのかを考察するため、α、β’及びβ型結晶の析出温度の予測値を固液平衡式(Gmehling, J.; Li, J.; Schiller, M.: Ind. Eng.Chem. Res., 32, 178-193 (1993))により計算し、表1に併記した(下記実験2参照)。これらを比較すると、いずれの濃度においても曇り点はα型結晶の析出温度に近いことがわかる。したがって、曇り点はモノグリセリドのα型結晶の析出に起因していると考えられる。

0035

一方、恒温槽内に試料を静置した場合について、静置温度と析出物が生成するまでの時間の関係を図3A及び図3Bに示す。モノパルミチン濃度が1wt%(図3A)の場合、静置温度が15℃以下では最初(時間=0)から析出物が生成しているが、静置温度を15℃以上にすると析出物の生成に要する時間が急激に長くなっている。また、図3Aには前述の各結晶多形の予測析出温度を一点破線で併記しているが、静置温度-析出時間の曲線はβ’型の析出温度に漸近しているように思われる。モノパルミチン濃度が0.5wt%(図3B)の場合でも、同様の傾向が見られる。すなわち、曇り点以上の温度において定温静置した場合の析出物は、モノグリセリドのβ’型結晶の析出に起因していると考えられる。

0036

一般に、モノグリセリド単体の場合、液体から固体への転移はα型(又はサブα型)でしか起こりえない。しかし、ヘキサン等の溶媒中にモノグリセリドが溶解している状態では、β’やβ型結晶への転移が直接起こることが報告されている(Maruyama, T.; Niiya, I; Imamura, M.; Okada, M.; JOCS, 20, 395-402 (1971))。本実験の場合、オレイン酸メチルが溶媒として振る舞うことで、同様にβ’型が析出したと考えられる。また、曇り点測定における降温速度は1℃/分と急冷条件であるため、熱力学的に不安定なα型モノパルミチンが析出した一方、定温静置条件ではより安定なβ’型モノパルミチンが時間をかけて析出したと考えられる。

0037

以上のように、バイオディーゼル燃料の低温特性について、反応中間体であるモノグリセリドの結晶多形の影響を検討した。その結果、曇り点測定のような比較的急冷条件においては、モノグリセリドのα型結晶が析出していることが示唆された。一方、定温静置条件では、β’型結晶が析出していることが示唆された。

0038

[実験2:固液平衡式によるバイオディーゼル燃料の析出温度の予測]
試料として、バイオディーゼル燃料の主成分である脂肪酸メチル(オレイン酸メチル等)にモノグリセリド(1-モノパルミチン等)を様々な濃度で添加したモデル燃料を用いた。析出温度及び融解エンタルピー示差走査熱量計(DSC島津製作所製DSC-50)を用いて測定した(Matsuoka, M.; Ozawa, R.: Journal of Crystal Growth, 96, 596-604 (1989))。ただし、過冷却の影響を排除するため、測定は加熱サイクルにて行った。また、モノグリセリド濃度が低い試料ではDSCによる析出温度の測定が困難であったため、Synthetic法を用いて測定した(Matsuda, H. et al.: J. Chem. Eng. Data, 56, 1500-1505 (2011))。
一方、析出温度の予測には式(1)の固液平衡式を用いた。

0039

ここで、γiL及びγiSはそれぞれ液相及び固相中の成分iの活量係数、xi及びziは液相及び固相中の成分iのモル分率、ΔHm,i及びΔTm,iは純固体iのモル融解エンタルピー及び融解温度を示している。但し、本実験では析出する固相は純物質であると仮定した(zi=1及びγiS=1)。

0040

図4(a)及び(b)にオレイン酸メチルとモノパルミチン(1-モノパルミチン)混合物の析出温度を示す。まず、破線で示した理想溶液モデル(γiL=1)での予測値は実測値(●)とは乖離している。したがって、脂肪酸メチルとモノグリセリドの混合物は、非理想溶液として振る舞うことがわかった。このことは、脂肪酸メチルのみの混合物が理想溶液と見なせることとは対照的である(Imahara, H.; Minami, E.; Saka, S.: Fuel, 85, 1666-1670 (2006))。

0041

そのため、活量係数モデルを用いて液相活量γiLの推算を試みた。活量係数モデルとしては様々なものが提案されているが、例えばNRTL(Non Random Two-Liquid)式のように、2成分系の実測値を基にパラメータを決定するモデルの場合、バイオディーゼル燃料は化学成分の組み合わせが非常に多く、実用的ではない。そこで本実験では、化学的官能基(グループ)の種類及び数に基づいて活量係数を推算できるグループ寄与法を検討した。その中でも代表的なUNIFAC(UNIversal Functional Activity Coefficient)式を改良した修正UNIFAC(Dortmund)式を採用した(J. Gmehling; J. Li; M. Schiller: Ind. Eng. Chem. Res., 32, 178-193 (1993))。その結果、得られた析出温度の予測値を図4(a)及び(b)の実線で示す。修正UNIFAC(Dortmund)式による予測値は実測値と非常によく一致していることがわかる。

0042

一方、図5にはラウリン酸メチルとモノラウリン(1-モノラウリン)混合物の析出温度を示す。脂肪酸メチルとモノグリセリドの種類が変わっても、図4(a)及び(b)の場合と同様、理想溶液モデルは実測値と乖離しているが、修正UNIFAC(Dortmund)式は実測値とよく一致しており、良好に予測が可能であることが示された。

0043

なお、図4〜5で示した析出温度はいずれもβ型のモノグリセリド結晶の析出によるものである。モノグリセリドは融点の異なる結晶多形を持つため、α型やβ’型の結晶が析出する場合は図4〜5とは異なる結果が得られる。しかし、α型及びβ’型の結晶が析出する場合においても、修正UNIFAC(Dortmund)式を用いることにより、同様に析出温度を予測できることを確認している(なお、析出温度はα<β’<βとなる)。

0044

例えば、図6にはオレイン酸メチルとモノパルミチン(1-モノパルミチン)混合物のβ’型のモノパルミチン結晶の析出による析出温度を示す。図6より、β’型の結晶が析出する場合においても修正UNIFAC(Dortmund)式は実測値とよく一致しており、結晶型が異なる場合にも修正UNIFAC(Dortmund)式を用いることにより同様に析出温度を予測できることが示された。

0045

以上のように、バイオディーゼル燃料の析出温度を予測するため、脂肪酸メチルとモノグリセリドの2成分混合系に対し、実測値と固液平衡式による予測値を比較検討した。その結果、脂肪酸メチルのみの混合物は理想溶液として扱える一方、脂肪酸メチルとモノグリセリドの混合物は非理想溶液として振る舞うことが明らかになった。そのため、グループ寄与法の一つである修正UNIFAC(Dortmund)式を用いて活量係数を推算したところ、実測値と予測値はよく一致し、バイオディーゼル燃料の析出温度の予測に有望であることが示された。

0046

[実験3:バイオディーゼル燃料からのモノグリセリドの除去]
バイオ混合軽油(パーム由来FAME(脂肪酸メチルエステル)体積20%+欧州市販軽油相当の試験燃料体積80%)100mlをバイアル瓶に入れ、析出温度以下、曇り点以上の温度である5℃で5日間保持した燃料を5μm目開きのフィルターで吸引濾過した。濾過後のフィルター付着物を熱分解ガスクロマトグラフ質量分析(PGC-MS)で分析したところ、モノグリセリドのピークが確認された(図7)。したがって、析出温度以下、曇り点以上でモノグリセリドが除去されることが確認できた。

実施例

0047

尚、上記の実施例は、析出した凝集沈殿物は結晶体であるとして説明をしているが、上述したように、本発明における凝集沈殿物は結晶体に限るものではない。例えば凝集沈殿物として、モノグリセリドを主成分とする結晶、若しくは結晶の前駆体で非晶の凝集物であり、溶媒の役割を果たす脂肪酸エステルを濾過等で除去することで結晶化するものも含まれる。さらに、モノグリセリドを主成分とするが、反応中間体のジグリセリドや未反応物のトリグリセリドを含む場合もある。

0048

本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法は、バイオディーゼル燃料の製造方法に関わらず、種々の原料から製造されたバイオディーゼル燃料の製造プラントにおいて適用することができる。本発明のバイオディーゼル燃料の精製方法は、特にバイオディーゼル燃料製造の最終工程として適用することができる。

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