図面 (/)

技術 新規パン酵母、パン生地、パン類の製造方法及びパン酵母のスクリーニング方法

出願人 オリエンタル酵母工業株式会社
発明者 浅田温子戸島佑希東陽介中林弘子石田雄二松尾脩平北島雅弘山田康二
出願日 2016年8月5日 (4年10ヶ月経過) 出願番号 2016-154432
公開日 2018年2月8日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 2018-019662
状態 特許登録済
技術分野 酵素、微生物を含む測定、試験 微生物、その培養処理 ベイカリー製品及びその製造方法
主要キーワード 炭酸ガス発生量 投入時期 ロール成型 凍結条件 惣菜パン 往復式 パン用小麦粉 酵母濃度
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年2月8日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (2)

課題

パン類の製造において、良好な製パン性を有し、且つフロア時間の延長によるパン生地の物性の変化を抑制し、製造されるパン類の品質の差を低減しうる新規パン酵母、当該パン酵母を含有するパン生地、当該パン酵母を用いるパン類の製造方法及び製パン性に優れ且つパン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母のスクリーニング方法を提供する。

解決手段

試験発酵法において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオン分泌量が2ppm以上である、パン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母である。

概要

背景

一般的には、パン類は、小麦粉等の穀粉類とその他の製パン原料加水して、混捏フロア時間(一次発酵)、分割、ベンチ時間、成型ホイロ(二次発酵)、焼成油揚げ等の工程を経て製造される。
製造の際、リテールベーカリー等の小規模製造施設では生じ難いが、パン工場等の比較的に規模が大きい製造施設では、取扱うパン生地の量が多いために、フロア時間終了後、パン生地の全てが分割されるまでに時間差が生じてしまう。このフロア時間の延長が原因で、パン生地の弾力が増大することでパン生地が過度に縮んでしまい、その結果、製造されるパン類の外観食感等の点でばらつきが発生してしまい、これがパン製品のロスにつながるという問題がある。

前記問題を解決するために、アミラーゼなどの酵素製剤や、グルテンL−アスコルビン酸などを配合することが行われているが、未だ十分とはいえないのが現状である。
また、これまで、パン酵母によりパン生地にフロア時間安定性を付与するということは、試みられていなかった。

また、従来、パン酵母の開発においては、冷凍生地製パン法に適するパン酵母や、生地軟化抑制とカビ抑制の機能を併せ持つパン酵母などが報告されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかし、これらの報告では、いずれも菌体内成分(特にグルタチオン)の菌体外への漏出(以下、「分泌」又は「放出」と称することもある)は生地の軟化を引き起こすため、パン酵母のスクリーニングではグルタチオンの漏出の少ない菌株を選択する指標としている。

また、本出願人は、冷凍及び/又は冷蔵によるパン生地への悪影響のない、低コスト品質の安定したパンを製造するための冷凍耐性能及び低温発酵抑制能を有するパン酵母に関する出願を行っている(特許文献3参照)。
前記出願では、パン酵母の育種・スクリーニングの基本的な方法が記載されているが、パン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母は、記載されていない。

一方、本出願人らによって、パン酵母及び/又は変異処理したパン酵母の中から、一次スクリーニングとしてカドミウム耐性株を選択して取得し、更に、二次スクリーニングとしてシクロヘキシミド耐性株を選択して取得する、グルタチオン高生産パン酵母造成方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、前記提案で得られるパン酵母は、グルタチオンを菌体外に分泌するものではないと考えられ、また、このパン酵母を用いてパン類を製造しても良好なパン類を得られないと考えられる。

したがって、パン類の製造において、良好な製パン性を有し、且つフロア時間の延長によるパン生地の物性の変化を抑制し、製造されるパン類の品質の差を低減しうるパン酵母は未だ提供されておらず、その速やかな提供が求められている。

概要

パン類の製造において、良好な製パン性を有し、且つフロア時間の延長によるパン生地の物性の変化を抑制し、製造されるパン類の品質の差を低減しうる新規パン酵母、当該パン酵母を含有するパン生地、当該パン酵母を用いるパン類の製造方法及び製パン性に優れ且つパン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母のスクリーニング方法を提供する。試験発酵法において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオンの分泌量が2ppm以上である、パン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母である。なし

目的

本発明は、このような要望応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

下記の発酵条件において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオン分泌量が2ppm以上である、パン生地フロア時間安定性を付与しうることを特徴とするパン酵母。〔発酵条件〕酵母濃度が10%w/vの酵母懸濁液5mLと、ショ糖濃度が66.7%w/vのショ糖溶液3mLと、イオン交換水12mLとからなる20mLの発酵液を100ccの三角フラスコ中で、水平往復式、震盪幅6.0cm、震盪回数100回/分で振盪発酵する。

請求項2

下記のパン類の製造方法において、フロア時間を20分間としたときに得られるパンの長さと、40分間としたときに得られるパンの長さとの差が3%以内である請求項1に記載のパン酵母。〔パン類の製造方法〕<配合>−中種−・パン用小麦粉・・・70質量部・パン酵母・・・3質量部・イーストフード・・・0.1質量部・ビタミンC・・・10ppm・ぶどう糖・・・3質量部・全・・・10質量部・水・・・32質量部−本捏−・パン用小麦粉・・・30質量部・食塩・・・1質量部・砂糖・・・22質量部・脱脂粉乳・・・2質量部・マーガリン・・・10質量部・水・・・22質量部<工程>−中種−・ミキシング・・・低速2分中速2分・捏上温度・・・26℃・発酵条件・・・28℃、2時間−本捏−・ミキシング・・・低速2分中速6分↓中速3分高速1分・フロア時間・・・20分又は40分・フロア条件・・・28℃、相対湿度75%・分割重量・・・70g・ベンチ時間・・・20分・ベンチ条件・・・28℃、相対湿度75%・成型方法・・・モルダー使用、ロール成型(フロア時間20分のパン生地の長さが17±0.5cmになるようにモルダーを調整)・ホイロ時間・・・70分・ホイロ条件・・・35℃、相対湿度85%・焼成条件・・・200℃、9分前記本捏のミキシングにおける「↓」は、マーガリンの投入時期を表す。

請求項3

サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomycescerevisiae)AD01株(NITEP−02251)、AD02株(NITEP−02252)、AD04株(NITEP−02253)又はAD06株(NITEP−02254)である請求項1又は2に記載のパン酵母。

請求項4

請求項1〜3のいずれかに記載のパン酵母を含有することを特徴とするパン生地。

請求項5

請求項1〜3のいずれかに記載のパン酵母を用いることを特徴とするパン類の製造方法。

請求項6

パン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母のスクリーニング方法であって、下記の発酵条件において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオンの分泌量が2ppm以上であることを指標とすることを特徴とする方法。〔発酵条件〕酵母濃度が10%w/vの酵母懸濁液5mLと、ショ糖濃度が66.7%w/vのショ糖溶液3mLと、イオン交換水12mLとからなる20mLの発酵液を100ccの三角フラスコ中で、水平往復式、震盪幅6.0cm、震盪回数100回/分で振盪発酵する。

技術分野

0001

本発明は、製パン性に優れ且つパン生地フロア時間安定性を付与しうる新規パン酵母、当該パン酵母を含有するパン生地、当該パン酵母を用いるパン類の製造方法及び製パン性に優れ且つパン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母のスクリーニング方法に関する。

背景技術

0002

一般的には、パン類は、小麦粉等の穀粉類とその他の製パン原料加水して、混捏、フロア時間(一次発酵)、分割、ベンチ時間、成型ホイロ(二次発酵)、焼成油揚げ等の工程を経て製造される。
製造の際、リテールベーカリー等の小規模製造施設では生じ難いが、パン工場等の比較的に規模が大きい製造施設では、取扱うパン生地の量が多いために、フロア時間終了後、パン生地の全てが分割されるまでに時間差が生じてしまう。このフロア時間の延長が原因で、パン生地の弾力が増大することでパン生地が過度に縮んでしまい、その結果、製造されるパン類の外観食感等の点でばらつきが発生してしまい、これがパン製品のロスにつながるという問題がある。

0003

前記問題を解決するために、アミラーゼなどの酵素製剤や、グルテンL−アスコルビン酸などを配合することが行われているが、未だ十分とはいえないのが現状である。
また、これまで、パン酵母によりパン生地にフロア時間安定性を付与するということは、試みられていなかった。

0004

また、従来、パン酵母の開発においては、冷凍生地製パン法に適するパン酵母や、生地軟化抑制とカビ抑制の機能を併せ持つパン酵母などが報告されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかし、これらの報告では、いずれも菌体内成分(特にグルタチオン)の菌体外への漏出(以下、「分泌」又は「放出」と称することもある)は生地の軟化を引き起こすため、パン酵母のスクリーニングではグルタチオンの漏出の少ない菌株を選択する指標としている。

0005

また、本出願人は、冷凍及び/又は冷蔵によるパン生地への悪影響のない、低コスト品質の安定したパンを製造するための冷凍耐性能及び低温発酵抑制能を有するパン酵母に関する出願を行っている(特許文献3参照)。
前記出願では、パン酵母の育種・スクリーニングの基本的な方法が記載されているが、パン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母は、記載されていない。

0006

一方、本出願人らによって、パン酵母及び/又は変異処理したパン酵母の中から、一次スクリーニングとしてカドミウム耐性株を選択して取得し、更に、二次スクリーニングとしてシクロヘキシミド耐性株を選択して取得する、グルタチオン高生産パン酵母造成方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、前記提案で得られるパン酵母は、グルタチオンを菌体外に分泌するものではないと考えられ、また、このパン酵母を用いてパン類を製造しても良好なパン類を得られないと考えられる。

0007

したがって、パン類の製造において、良好な製パン性を有し、且つフロア時間の延長によるパン生地の物性の変化を抑制し、製造されるパン類の品質の差を低減しうるパン酵母は未だ提供されておらず、その速やかな提供が求められている。

先行技術

0008

特開2014−83022号公報
国際公開第2013/161303号
特開平8−332084号公報
特開2012−213361号公報

発明が解決しようとする課題

0009

本発明は、このような要望応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、パン類の製造において、良好な製パン性を有し、且つフロア時間の延長によるパン生地の物性の変化を抑制し、製造されるパン類の品質の差を低減しうる新規パン酵母、当該パン酵母を含有するパン生地、当該パン酵母を用いるパン類の製造方法及び製パン性に優れ且つパン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母のスクリーニング方法を提供すること目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、従来、良好なパン類が得られないとされていた菌体外へのグルタチオン(以下、「GSH」と称することがある)の分泌量がある一定量以上であることを主たる指標とし、製パン性に優れるパン酵母を選択し、用いることにより、製パン性に優れ且つパン類の製造において、フロア時間の延長によるパン生地の物性の変化を抑制し、製造されるパン類の品質の差を低減し、優れた品質のパン類を安定的に製造しうることを知見した。

0011

本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記の発酵条件において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオンの分泌量が2ppm以上である、パン生地にフロア時間安定性を付与しうることを特徴とするパン酵母である。
〔発酵条件〕
酵母濃度が10%w(重量)/v(体積)の酵母懸濁液 5mLと、ショ糖濃度が66.7%w/vのショ糖溶液3mLと、イオン交換水12mLとからなる20mLの発酵液を100ccの三角フラスコ中で、水平往復式、震盪幅6.0cm、震盪回数100回/分で振盪発酵する。
<2> 下記のパン類の製造方法において、フロア時間を20分間としたときに得られるパンの長さと、40分間としたときに得られるパンの長さとの差が3%以内である前記<1>に記載のパン酵母である。
〔パン類の製造方法〕
<配合>
中種
パン用小麦粉・・・ 70質量部
・ パン酵母 ・・・ 3質量部
イーストフード・・・ 0.1質量部
ビタミンC・・・ 10ppm
ぶどう糖・・・ 3質量部
・ 全・・・ 10質量部
・ 水 ・・・ 32質量部
−本捏−
・ パン用小麦粉 ・・・ 30質量部
食塩・・・ 1質量部
砂糖・・・ 22質量部
脱脂粉乳・・・ 2質量部
マーガリン・・・ 10質量部
・ 水 ・・・ 22質量部
<工程>
−中種−
ミキシング・・・ 低速2分中速2分
・ 捏上温度・・・ 26℃
・ 発酵条件 ・・・ 28℃、2時間
−本捏−
・ ミキシング ・・・ 低速2分中速6分↓中速3分高速1分
・ フロア時間 ・・・ 20分又は40分
・ フロア条件 ・・・ 28℃、相対湿度75%
・ 分割重量 ・・・ 70g
・ベンチ時間 ・・・ 20分
・ ベンチ条件 ・・・ 28℃、相対湿度75%
成型方法・・・モルダー使用、ロール成型(フロア時間20分のパン生地の長さが17±0.5cmになるようにモルダーを調整)
・ホイロ時間 ・・・ 70分
・ ホイロ条件 ・・・ 35℃、相対湿度85%
焼成条件・・・ 200℃、9分
前記本捏のミキシングにおける「↓」は、マーガリンの投入時期を表す。
<3>サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AD01株(NITEP−02251)、AD02株(NITE P−02252)、AD04株(NITE P−02253)又はAD06株(NITE P−02254)である前記<1>又は<2>に記載のパン酵母である。
<4> 前記<1>〜<3>のいずれかに記載のパン酵母を含有することを特徴とするパン生地である。
<5> パン生地が冷凍生地である前記<4>に記載のパン生地である。
<6> 前記<1>〜<3>のいずれかに記載のパン酵母を用いることを特徴とするパン類の製造方法である。
<7> パン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母のスクリーニング方法であって、
下記の発酵条件において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオンの分泌量が2ppm以上であることを指標とすることを特徴とする方法である。
〔発酵条件〕
酵母濃度が10%w/vの酵母懸濁液 5mLと、ショ糖濃度が66.7%w/vのショ糖溶液 3mLと、イオン交換水 12mLとからなる20mLの発酵液を100ccの三角フラスコ中で、水平往復式、震盪幅6.0cm、震盪回数100回/分で振盪発酵する。
<8> 更に、下記のパン類の製造方法において、フロア時間を20分間としたときに得られるパンの長さと、40分間としたときに得られるパンの長さとの差が3%以内であることを指標とする前記<7>に記載のパン酵母のスクリーニング方法である。
〔パン類の製造方法〕
<配合>
−中種−
・ パン用小麦粉 ・・・ 70質量部
・ パン酵母 ・・・ 3質量部
・ イーストフード ・・・ 0.1質量部
・ ビタミンC ・・・ 10ppm
・ ぶどう糖 ・・・ 3質量部
・ 全卵 ・・・ 10質量部
・ 水 ・・・ 32質量部
−本捏−
・ パン用小麦粉 ・・・ 30質量部
・ 食塩 ・・・ 1質量部
・ 砂糖 ・・・ 22質量部
・ 脱脂粉乳 ・・・ 2質量部
・ マーガリン ・・・ 10質量部
・ 水 ・・・ 22質量部
<工程>
−中種−
・ ミキシング ・・・ 低速2分中速2分
・ 捏上温度 ・・・ 26℃
・ 発酵条件 ・・・ 28℃、2時間
−本捏−
・ ミキシング ・・・ 低速2分中速6分↓中速3分高速1分
・ フロア時間 ・・・ 20分又は40分
・ フロア条件 ・・・ 28℃、相対湿度75%
・ 分割重量 ・・・ 70g
・ ベンチ時間 ・・・ 20分
・ ベンチ条件 ・・・ 28℃、相対湿度75%
・ 成型方法 ・・・ モルダー使用、ロール成型(フロア時間20分のパン生地の長さが17±0.5cmになるようにモルダーを調整)
・ ホイロ時間 ・・・ 70分
・ ホイロ条件 ・・・ 35℃、相対湿度85%
・ 焼成条件 ・・・ 200℃、9分
前記本捏のミキシングにおける「↓」は、マーガリンの投入時期を表す。

発明の効果

0012

本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、パン類の製造において、良好な製パン性を有し、且つフロア時間の延長によるパン生地の物性の変化を抑制し、製造されるパン類の品質の差を低減しうる新規パン酵母、当該パン酵母を含有するパン生地、当該パン酵母を用いるパン類の製造方法及び製パン性に優れ且つパン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母のスクリーニング方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0013

図1は、試験例1において製造したロールパンの長さを測定した結果を示すグラフである。
図2は、試験例1において製造したロールパンの高さを測定した結果を示すグラフである。

0014

(パン酵母、パン酵母のスクリーニング方法)
本発明のパン酵母は、特定の発酵条件において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオンの分泌量が2ppm以上である、パン生地にフロア時間安定性を付与しうる酵母である。
本発明のパン酵母は、本発明のパン酵母のスクリーニング方法により、好適に選抜することができる。

0015

<フロア時間安定性>
本発明において、「パン生地にフロア時間安定性を付与しうる」とは、パン類の製造において、フロア時間の延長によるパン生地の物性の変化を抑制し、製造されるパン類の品質の差を低減しうることをいう。

0016

前記フロア時間安定性を評価する方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、下記のパン類の製造方法(以下、「試験製パン法」ということがある)において、フロア時間を20分間としたときに得られるパンと、40分間としたときに得られるパンとを比較することにより評価する方法などが挙げられる。
〔パン類の製造方法〕
−配合−
−−中種−−
・パン用小麦粉・・・ 70質量部
・パン酵母・・・ 3質量部
・イーストフード・・・ 0.1質量部
・ビタミンC・・・ 10ppm
・ぶどう糖・・・ 3質量部
・ 全卵・・・ 10質量部
・ 水 ・・・ 32質量部
−−本捏−−
・ パン用小麦粉 ・・・ 30質量部
・食塩・・・ 1質量部
・砂糖・・・ 22質量部
・脱脂粉乳・・・ 2質量部
・マーガリン・・・ 10質量部
・ 水 ・・・ 22質量部
−工程−
−−中種−−
・ミキシング・・・ 低速2分中速2分
・ 捏上温度・・・ 26℃
・発酵条件・・・ 28℃、2時間
−−本捏−−
・ ミキシング ・・・ 低速2分中速6分↓中速3分高速1分
・ フロア時間 ・・・ 20分又は40分
・ フロア条件 ・・・ 28℃、相対湿度75%
・ 分割重量 ・・・ 70g
・ベンチ時間 ・・・ 20分
・ ベンチ条件 ・・・ 28℃、相対湿度75%
・成型方法・・・モルダー使用、ロール成型(フロア時間20分のパン生地の長さが17±0.5cmになるようにモルダーを調整)
・ホイロ時間 ・・・ 70分
・ ホイロ条件 ・・・ 35℃、相対湿度85%
・焼成条件・・・ 200℃、9分
前記本捏のミキシングにおける「↓」は、マーガリンの投入時期を表す。

0017

試験製パン法に使用する前記パン用小麦粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、日清製粉株式会社製「オーション」などが挙げられる。

0018

試験製パン法の前記比較の項目としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、パンの長さ、高さ、幅、比容積、体積などが挙げられる。前記フロア時間を20分間としたときに得られるパンと、40分間としたときに得られるパンとの間で、前記比較の項目における差が小さい場合には、フロア時間安定性が付与されたと判断することができる。

0019

試験製パン法において、フロア時間を20分間としたときに得られるパンの長さと、40分間としたときに得られるパンの長さとの差としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、3%以内が好ましく、2%以内がより好ましい。

0020

また、試験製パン法で得られるパン類としては、前記フロア時間を20分間としたときに得られるパンの長さと、40分間としたときに得られるパンの長さとの差が2%以内であり、且つパン類の比容積が6.5±0.5mL/gの範囲であることが好ましい。試験製パン法における比容積は、パン類の製造が異常なく実施されたことを示す指標であり、前記範囲になるように試験製パン法は設計されている。

0021

また、試験製パン法において、フロア時間を20分間としたときに得られるパンの高さと、40分間としたときに得られるパンの高さとの差としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、2.5%以内が好ましく、1.5%以内がより好ましい。

0022

<酵母の選抜>
本発明のパン酵母のスクリーニング方法は、パン生地にフロア時間安定性を付与しうるパン酵母のスクリーニング方法であって、特定の発酵条件において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオンの分泌量が2ppm以上であることを指標とする。

0023

−酵母−
前記スクリーニング方法に用いる酵母(以下、「親株」と称することがある)としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ミコトルラ(Mycotorula)属、トルラスポラ(Torulaspora)属、キャンディダ(Candida)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、ピキア(Pichia)属などが挙げられ、具体的な菌株の例としては、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Saccharomyces uvarum、Saccharomyces rouxii、Torulopsis utilis、Torulopsis candida、Mycotorula japonica、Mycotorula lipolytica、Torulaspora delbrueckii、Torulaspora fermentati、Candida sake、Candida tropicalis、Candida utilis、Hansenula anomala、Hansenula suaveolens、Saccharomycopsis fibligera、Saccharomyces lipolytica、Rhodotorula rubra、Pichia farinosaなどが挙げられる。
前記スクリーニング方法に用いる酵母は、自然に存在するパン酵母を用いてもよいし、市販のパン酵母を用いてもよいし、突然変異処理した酵母を用いてもよいし、これらを混合して用いてもよい。
前記突然変異処理の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。

0024

−特定の発酵条件−
前記特定の発酵(以下、「本発酵」又は「グルタチオン分泌発酵」と称することがある)条件とは、「酵母濃度が10%w/vの酵母懸濁液 5mLと、ショ糖濃度が66.7%w/vのショ糖溶液3mLと、イオン交換水12mLとからなる20mLの発酵液を100ccの三角フラスコ中で、30℃で2時間、水平往復式、震盪幅6.0cm、震盪回数100回/分で振盪発酵する」ことをいう(以下、「試験発酵法」ということがある)。試験発酵法は、パン用酵母試験法(日本イースト工業会平成8年8月)第5頁の(1)液発酵法に従ったものである。

0025

前記酵母懸濁液の調製方法(以下、「前培養」と称することがある)としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、以下のようにして調製することができる。
YPD培地5mLが入った試験管に菌株を植菌し、30℃で24時間振盪培養したものを100mLのYMPD培地(イーストエキス0.3%、マルツエキス0.3%、ペプトン0.5%、グルコース3%)が入ったフラスコに全量植菌し、30℃で48時間振盪培養する。
上記培養液を定法で2回菌体洗浄し、培養菌体とする。これを、下記に示した〔前培養の培養条件〕で培養する。使用する糖は、糖蜜を用いて常に糖濃度が35%となるように希釈して使用する。糖蜜は、マルチホルダー付きシリンジポンプPHD2000(Harvard Apparatus社製)を用いて流加して、培養する。
この培養液を100mL回収し、定法(遠心法)で2回菌体洗浄後、滅菌水で、酵母濃度が10%w/vになるようにメスアップし、酵母懸濁液とする。
〔前培養の培養条件〕
培養容器: 200mLメスシリンダー
培養液量: 100mL
種 : 培養菌体
種量 : 3g
培養温度: 32℃
培養時間 : 14時間
通気量 : 0.4L/分
糖量: 7.8g
窒素(N)源 :ウレア
N/炭素(C) : 4.0
リン(P)源 :リン酸1ナトリウム
P/C : 0.4

0026

グルタチオン量の測定−
試験発酵法での発酵により、菌体外へ分泌されたグルタチオン量を測定する方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、以下のようにして測定することができる。
分光光度計ガラスセルに、5mLのピペットマンリン酸バッファを2.5mL分取する。次に、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NADPH)を100μLと、5−5’−dithiobis[2−nitrobenzoic acid](DTNB)溶液を30μLとをピペットマンで添加する。校正したピペットマンを用いてサンプルを200μL添加し、セル内でピペッティングを行いよく混合する。1分間インキュベート後、グルタチオンレダクターゼ(GR)を100μL添加後、10秒ごとに90秒間、吸収波長412nmにおける吸光度を測定する。反応開始20秒後と80秒後の吸光度から反応速度を求める。
スタンダードとして0ppm、5ppm、10ppm、15ppmのグルタチオン溶液を作製し、検量線を求める。
菌体量補正するためファクターで補正し、グルタチオン量を算出する。

0027

以上により、試験発酵法において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオンの分泌量が2ppm以上であるパン酵母を選別することができる。
後述する試験例1で示されるように、グルタチオンの分泌量が2ppm以上である本発明のパン酵母は、パン生地にフロア時間安定性を付与できる。

0028

前記パン酵母の前記グルタチオンの分泌量としては、2ppm以上であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、パン生地へのフロア時間安定性の付与がより優れる点で、2〜30ppmの範囲が好ましい。

0029

前記スクリーニング方法は、前記指標として、前記グルタチオンの分泌量以外の指標(以下、「その他の指標」と称することがある)を更に用いてもよい。
前記その他の指標としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、上記<フロア時間安定性>の項目に記載のフロア時間安定性を評価する方法における比較の項目、発酵力、生地感や作業性(生地の伸展性ベタつきの有無)、収率、前記フロア時間安定性以外の製パン性、得られるパン類の品質(内相、食感、風味)などが挙げられる。

0030

本発明のパン酵母としては、試験発酵法において、30℃で2時間発酵したときの培地中へのグルタチオンの分泌量が2ppm以上であるパン酵母であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、上記<フロア時間安定性>の項目に記載のフロア時間安定性を評価する方法における比較の項目において、フロア時間を20分間としたときに得られるパンの長さと、40分間としたときに得られるパンの長さとの差が3%以内であるパン酵母が好ましく、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AD01株、AD02株、AD04株又はAD06株がより好ましい。
前記好ましいパン酵母は、前記フロア時間安定性を付与できるだけでなく、後述する試験例2及び3に示すように、優れた冷凍耐性や低糖域から高糖域まで使用できるなどの汎用性を有する点で、有利である。

0031

前記4株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ足2−5−8)に寄託申請し、前記AD01株はNITEP−02251、前記AD02株はNITE P−02252、前記AD04株はNITE P−02253、前記AD06株はNITE P−02254として、2016年5月11日に受託されている。

0032

また、本発明のパン酵母によれば、パン生地にフロア時間安定性を付与しつつ、外観(体積、比容積、高さ・長さ)、食感及び風味も良好なパン類を得ることができる。

0033

(パン生地、パン類の製造方法)
本発明のパン生地としては、本発明のパン酵母を含む限り、特に制限はなく、公知のパン生地を適宜選択することができる。本発明のパン酵母は、後述する試験例2に示されるように、冷凍耐性も有することから、冷凍生地にも使用することができる。
本発明のパン類の製造方法としては、本発明のパン酵母を用いる限り、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、小麦粉を主体とする穀粉類を主原料とし、これに水分、本発明のパン酵母、乳、卵、油脂、塩、糖類などの他の原料を添加して混捏し、得られた生地を、通常の手順で発酵、成型、焼成する方法などが挙げられる。
製パン方法の種類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、中種製法ストレート製法湯種製法、冷蔵若しくは冷凍生地製法などが挙げられる。

0034

<小麦粉を主体とする穀粉類>
前記小麦粉を主体とする穀粉類とは、小麦粉を含む穀粉澱粉類及びその加工澱粉をいう。前記小麦粉を主体とする穀粉類は、小麦粉を単独で使用してもよいし、小麦粉と他の穀粉や澱粉類などを併用してもよい。

0035

前記穀粉としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、小麦粉、ライ麦粉そば粉米粉大麦粉、大豆粉コーンフラワーなどが挙げられる。前記穀粉は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

0036

前記澱粉類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、小麦澱粉米澱粉馬鈴薯澱粉タピオカ澱粉コーンスターチ甘藷澱粉などが挙げられる。前記澱粉類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

0037

前記加工澱粉としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、熱処理澱粉、α化澱粉酸処理澱粉架橋澱粉エーテル化澱粉エステル化澱粉などが挙げられる。前記加工澱粉は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、複数の加工処理架橋エーテル化酸処理と架橋等)を施したものでもよい。

0038

前記パン酵母の使用量としては、特に制限はなく、常法に従って適宜選択することができ、例えば、小麦粉を主体とする穀粉類100質量部に対して、2〜5質量部などが挙げられる。

0039

<パン類>
前記パン類としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、食パン、ロールパン、菓子パン惣菜パンクロワッサンデニッシュブリオッシュ、フランスパン、ドイツパン(カイザーゼンメルライ麦パン等)、フォカッチャパネトーネなどが挙げられる。

0040

本発明のパン生地又はパン類の製造方法は、本発明のパン酵母を用いるので、パン類の製造において、フロア時間の延長によるパン生地の物性の変化を抑制し、製造されるパン類の品質の差を低減しうる。
したがって、本発明は、本発明のパン酵母を用いることを特徴とするフロア時間の延長によるパン生地の物性の変化の抑制方法、製造されるパン類の品質の差の低減方法にも関する。

0041

以下、試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。

0042

(試験例1:パン酵母のスクリーニング試験
出願人が保有するサッカロマイセス・セレビシエ株2倍体)のライブラリー及びパン酵母製品について、特開2014−117212号公報に記載の方法に従い、約3,000株を造成した。

0043

<グルタチオン分泌量の測定>
(1)前培養
YPD培地5mLが入った試験管に前記菌株を植菌し、30℃で24時間振盪培養したものを100mLのYMPD培地(イーストエキス0.3%、マルツエキス0.3%、ペプトン0.5%、グルコース3%)が入ったフラスコに全量植菌し、30℃で48時間振盪培養した。
上記培養液を定法で2回菌体洗浄し、培養菌体とした。これを、下記に示した〔前培養の培養条件〕で培養した。使用する糖は、糖蜜を用いて常に糖濃度が35%となるように希釈して使用した。糖蜜は、マルチホルダー付きシリンジポンプPHD2000(Harvard Apparatus社製)を用いて流加して、培養した。
この培養液を100mL回収し、定法(遠心法)で2回菌体洗浄後、滅菌水で、酵母濃度が10%w/vになるようにメスアップした。
〔前培養の培養条件〕
培養容器: 200mLメスシリンダー
培養液量: 100mL
種 : 培養菌体
種量 : 3g
培養温度: 32℃
培養時間 : 14時間
通気量 : 0.4L/分
糖量: 7.8g
窒素(N)源 :ウレア
N/炭素(C) : 4.0
リン(P)源 :リン酸1ナトリウム
P/C : 0.4

0044

(2)本発酵(グルタチオン分泌発酵)
パン用酵母試験法(日本イースト工業会平成8年8月)第5頁の(1)液発酵法に従って、パン酵母を発酵した。具体的には、前記(1)前培養で得られた酵母懸濁液を下記に示した〔発酵液〕の量で100ccの三角フラスコ中、30℃の温水槽で2時間震盪発酵(水平往復式、震盪幅6.0cm、震盪回数100回/分)した。得られた菌体発酵液を遠心分離により菌体と上清に分離し、上清をグルタチオン測定サンプルとした。
〔発酵液〕
酵母懸濁液(10%w/v) : 5mL
ショ糖溶液(66.7%w/v) : 3mL
イオン交換水: 12mL
全量 20mL

0045

(3)グルタチオン(GSH)量の測定
分光光度計用ガラスセルに、5mLのピペットマンでリン酸バッファを2.5mL分取した。次に、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を100μLと、5−5’−dithiobis[2−nitrobenzoic acid](DTNB)溶液を30μLとをピペットマンで添加した。校正したピペットマンを用いてサンプルを200μL添加し、セル内でピペッティングを行いよく混合した。1分間インキュベート後、グルタチオンレダクターゼ(GR)を100μL添加後、10秒ごとに90秒間、吸収波長412nmにおける吸光度を測定した。反応開始20秒後と80秒後の吸光度から反応速度を求めた。
スタンダードとして0ppm、5ppm、10ppm、15ppmのGSH溶液を作製し、検量線を求めた。
菌体量を補正するためファクターで補正し、グルタチオン量を算出した。
以下に、測定に使用した試薬組成を示す。
・ リン酸バッファ : 50mM、pH7.0、2mMEDTA
・ GR : 5U/mL GR in リン酸バッファ
DNTB溶液 : 19.8mg DNTB、7.5mg NaHCO3/5mL リン酸バッファ
・ β−NADPH : 4mg/mL NADPH in 10mM Tris溶液

0046

前記グルタチオン分泌量の測定により、グルタチオンの分泌量が2ppm以上であったパン酵母を複数得た。

0047

<フロア時間安定性>
前記グルタチオンの分泌量が2ppm以上であったパン酵母と、市販のパン酵母1〜3のそれぞれを用い、中種法によりロールパンを製造した。配合及び工程は、以下のとおりである。

0048

[配合]
−中種−
・パン用小麦粉※ ・・・ 70質量部
・パン酵母・・・ 3質量部
・イーストフード・・・ 0.1質量部
・ビタミンC・・・ 10ppm
・ぶどう糖・・・ 3質量部
・ 全卵・・・ 10質量部
・ 水 ・・・ 32質量部
−本捏−
・ パン用小麦粉※ ・・・ 30質量部
・食塩・・・ 1質量部
・砂糖・・・ 22質量部
・脱脂粉乳・・・ 2質量部
・マーガリン・・・ 10質量部
・ 水 ・・・ 22質量部
※:日清製粉株式会社製「オーション」

0049

[工程]
−中種−
・ミキシング・・・ 低速2分中速2分
・ 捏上温度・・・ 26℃
・発酵条件・・・ 28℃、2時間
−本捏−
・ ミキシング ・・・ 低速2分中速6分↓中速3分高速1分
・フロア時間 ・・・ 20分又は40分
・ フロア条件 ・・・ 28℃、相対湿度75%
・ 分割重量 ・・・ 70g
・ベンチ条件 ・・・ 28℃、相対湿度75%
・成型方法・・・モルダー使用、ロール成型(フロア時間20分のパン生地の長さが17±0.5cmになるようにモルダーを調整)
・ホイロ時間 ・・・ 70分
・ ホイロ条件 ・・・ 35℃、相対湿度85%
・焼成条件・・・ 200℃、9分
前記本捏のミキシングにおける「↓」は、マーガリンの投入時期を表す。

0050

[評価]
製造したロールパンの長さ、高さ及び比容積を測定した結果を表1−1〜1−3に示す。なお、前記比容積は、得られたパンの容積(ml)/生地質量(g)で算出したものである。
前記長さ及び高さについては、測定結果図1及び図2に示し、また、以下の評価基準で評価した結果も併せて表1−1及び1−2に示す。
なお、前記グルタチオンの分泌量が2ppm以上であったパン酵母については、代表例として、AD01株、AD02株、AD04株及びAD06株の結果を示す。
−ロールパンの長さの評価基準−
○ :フロア時間20分間としたときのパンの長さと、フロア時間40分間としたときのパンの長さとの差が、2%以内である。
△ : フロア時間20分間としたときのパンの長さと、フロア時間40分間としたときのパンの長さとの差が、2%超、3%以内である。
× : フロア時間20分間としたときのパンの長さと、フロア時間40分間としたときのパンの長さとの差が、3%超である。
−ロールパンの高さの評価基準−
○ : フロア時間20分間としたときのパンの高さと、フロア時間40分間としたときのパンの高さとの差が、1.5%以内である。
△ : フロア時間20分間としたときのパンの高さと、フロア時間40分間としたときのパンの高さとの差が、1.5%超、2.5%以内である。
× : フロア時間20分間としたときのパンの高さと、フロア時間40分間としたときのパンの高さとの差が、2.5%超である。

0051

前記AD01株、AD02株、AD04株及びAD06株と、市販のパン酵母1〜3のグルタチオンの分泌量は以下のとおりである。
−グルタチオン分泌量−
・ AD01株 ・・・ 4.0ppm
・ AD02株 ・・・ 8.8ppm
・ AD04株 ・・・ 8.0ppm
・ AD06株 ・・・ 6.3ppm
・ 市販のパン酵母1 ・・・ 0.6ppm
・ 市販のパン酵母2 ・・・ 1.2ppm
・ 市販のパン酵母3 ・・・ 0.9ppm

0052

0053

0054

0055

表1−1〜1−3並びに図1及び2の結果から、グルタチオンの分泌量が2ppm未満である市販のパン酵母を用いた場合では、フロア時間の違いにより、パンの長さ及び高さの少なくともいずれかにおいて、差が生じており、パンの品質に差が生じてしまうことが確認された。具体的には、市販パン酵母1ではフロア時間の違いによりパン生地の縮みが生じ、また市販パン酵母2および3ではパン生地の縮みが顕著でその結果、パンの高さの差も大きくなった。一方、グルタチオンの分泌量が2ppm以上である本発明のパン酵母を用いた場合では、フロア時間の違いによるパンの品質(長さ、高さなどの外観)の差が抑制されていた。したがって、本発明のパン酵母を用いることにより、パン生地にフロア時間安定性を付与できることが確認された。
また、パン生地にフロア時間安定性が付与された結果、本発明のパン酵母を用いたパンはフロア時間が20分間、40分間のいずれでもパンの内相がきめ細かく、食感も軽い食感となっていた。これに対し、市販のパン酵母を用いたパンでは、フロア時間が20分間のパンと比較して、40分間のパンは内相がやや粗く、食感もやや弾きがある食感となっていた。
なお、図1はパンの長さを測定した結果を示す図であり、図2はパンの高さを測定した結果を示す図である。図1及び2中、横軸の各項目における左側のグラフはフロア時間を20分間とした場合の結果を示し、右側のグラフはフロア時間を40分間とした場合の結果を示す。

0056

前記サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AD01株、AD02株、AD04株及びAD06株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託申請し、前記AD01株はNITEP−02251、前記AD02株はNITE P−02252、前記AD04株はNITE P−02253、前記AD06株はNITE P−02254として、2016年5月11日に受託された。

0057

(試験例2:冷凍耐性)
前記試験例1で得られたAD01株、AD02株、AD04株及びAD06株と、市販のパン酵母4及び市販のパン酵母5とを用い、冷凍パン生地を製造した。配合及び工程は、以下のとおりである。

0058

<配合>
・パン用小麦粉※ ・・・ 100質量部
・パン酵母・・・ 5質量部
改良剤・・・ 1質量部
・食塩・・・ 1.5質量部
・砂糖・・・ 15質量部
・脱脂粉乳・・・ 3質量部
ショートニング・・・ 5質量部
・ 水 ・・・ 55質量部
※:日清製粉株式会社製「オーション」

0059

<工程>
・ミキシング・・・ 4分
・ 捏上温度・・・ 20℃
・フロア時間 ・・・ 60分
・ フロア条件 ・・・ 25℃、相対湿度80%
・ 分割重量 ・・・ 25g
・ベンチ時間 ・・・ 20分
・ ベンチ条件 ・・・ 25℃、相対湿度85%
・成型方法・・・ 丸め
凍結条件・・・ −40℃のフリーザーで1時間凍結後、−20℃のフリーザーで凍結保存
解凍時間 ・・・ 45分間
・ 解凍条件 ・・・ 25℃、相対湿度80%

0060

<評価>
−20℃のフリーザーで、7日間〜90日間保存後のパン生地について、35℃におけるホイロ炭酸ガス発生量を測定した。また、未凍結のパン生地についても同様にしてホイロ炭酸ガス発生量を測定した。7日間保存後のパン生地のガス発生量を100%としたときの残存率と併せて、結果を表2に示す。

0061

0062

表2の結果から、AD01株、AD02株、AD04株及びAD06株では、生地を冷凍した場合でも十分なガス発生量が認められた。したがって、AD01株、AD02株、AD04株及びAD06株は、フロア時間安定性に加え、冷凍耐性も有することが確認され、冷凍生地にも用いることができることがわかった。

0063

(試験例3:様々な糖濃度での汎用性)
前記試験例1で得られたAD01株、AD02株、AD04株及びAD06株と、市販のパン酵母6とを用い、糖濃度が5%又は35%のパン生地を製造した。配合及び工程は、以下のとおりである。なお、前記市販のパン酵母6は、汎用性を有することが確認されているオリエンタル酵母工業株式会社製の「レギュラー」(品名)である。

0064

<糖濃度5%>
−配合−
・パン用小麦粉※ ・・・ 100質量部
・パン酵母・・・ 2質量部
・砂糖・・・ 5質量部
・食塩・・・ 2質量部
・ 水 ・・・ 68質量部
※:日清製粉株式会社製「オーション」

0065

−工程−
・ミキシング・・・ 3分
・ 捏上温度・・・ 28℃
・ 分割重量 ・・・ 30g

0066

<糖濃度35%>
−配合−
・パン用小麦粉※ ・・・ 100質量部
・パン酵母・・・ 4質量部
・砂糖・・・ 35質量部
・食塩・・・ 0.5質量部
・ 水 ・・・ 56質量部
※:日清製粉株式会社製「オーション」

0067

−工程−
・ミキシング・・・ 3分
・ 捏上温度・・・ 28℃
・ 分割重量 ・・・ 30g

0068

<評価>
前記工程において、30gに分割した後、28℃、2時間におけるガス発生量をファーモグラフ(アトー株式会社製)にて測定した。結果を表3に示す。

0069

実施例

0070

表3の結果から、AD01株、AD02株、AD04株及びAD06株が、低糖域〜高糖域まで十分なガス発生量を示すことが確認された。したがって、AD01株、AD02株、AD04株及びAD06株は、フロア時間安定性、冷凍耐性に加え、低糖域〜高糖域まで使用可能という汎用性も有することが確認された。

0071

NITEP−02251
NITE P−02252
NITE P−02253
NITE P−02254

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 公益財団法人がん研究会の「 抗ポドプラニン抗体」が 公開されました。( 2021/04/01)

    【課題・解決手段】本発明は、ヒト化抗体若しくはマウス−ヒトキメラ抗体である抗ポドプラニン抗体又はその抗原結合領域を含む抗体断片の提供を課題とし、該課題を、所定のアミノ酸配列を含む、単離された、ヒト化抗... 詳細

  • 味の素株式会社の「 酵素組成物」が 公開されました。( 2021/04/01)

    【課題・解決手段】本発明の目的は、ベーカリー食品の老化を抑制するための方法を提供することにある。本発明は、(A)トランスグルタミナーゼ、(B)α−アミラーゼ及び(C)リパーゼを含む酵素組成物に関する。... 詳細

  • 国立大学法人東京大学の「 ヒトノロウイルスの増殖」が 公開されました。( 2021/04/01)

    【課題・解決手段】本発明は、ヒトノロウイルス(HuNoV)をインビトロで増殖させる方法に関し、従来法が抱える倫理的な問題および細胞を胆汁で処理する必要性を回避した方法の確立を解決課題とする。具体的には... 詳細

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ