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課題
解決手段
概要
背景
従来の1つとして、下記特許文献1に示されるように、樹脂成形品からなるインシュレータをステータコアに装着し、ステータコアの内歯に巻線を施す際に、渡り線をインシュレータのステータコアの端面から突出する部分に設けられた保持片に保持させる方法が知られている。
一方、ステータコアのスロット内にスロット絶縁紙を挿入して、ステータコアの内歯に巻線を施した後、渡り線とコイルエンドとの間に相間絶縁紙を挿入し、糸で縛って渡り線を固定する方法も知られている。
更に、下記特許文献2には、ステータコアに巻線されたステータコイルの外側に渡り線保持リングを配置して渡り線を保持させ、ステータコイル、渡り線保持リング、及び接続端子を、ステータヨーク上で一体にモールドしたモールドモータが開示されている。
概要
材料コストを低減すると共に、製造作業性も良好なステータコイルの渡り線の固定方法及び該固定方法を用いて製造されたステータを提供する。ステータコア2の内歯に巻付けられたステータコイル6間を渡って導電接続する渡り線8を自立保持又は仮保持させた状態で、渡り線8の少なくとも一部を囲むように、内側型枠9と、外側型枠16を組み付け、前記型枠に囲まれた空洞に液状の樹脂を射出して、樹脂成形体17を形成し、渡り線8が他相のコイル6及び他相の渡り線8と直接接触しないようにして、渡り線8を絶縁強化する。
目的
本発明の目的は、材料コストを低減すると共に、製造作業性も良好なステータコイルの渡り線の固定方法及び該固定方法を用いて製造されたステータを提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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- 0件
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請求項1
ステータコアの内歯に巻付けられたステータコイル間を渡って導電接続する渡り線を、他相のコイル及び他相の渡り線と絶縁強化する方法であって、前記渡り線を自立保持又は仮保持させた状態で、前記渡り線の少なくとも一部を囲むように、樹脂注入可能な空洞を有する型枠を装着する型枠装着工程と、前記型枠内の空洞に液状の樹脂を射出する射出成形工程とを備え、前記型枠内の空洞に射出された樹脂によって前記渡り線の少なくとも一部を被覆して、前記渡り線が、他相のコイル及び他相の渡り線と直接接触しないようにしたことを特徴とするステータコイルの渡り線の絶縁強化方法。
請求項2
前記型枠装着工程前に、前記渡り線が前記型枠の空洞の位置に適合するように、かつ、前記複数の渡り線が互いに接触することなく前記空洞内に配置されるように、前記渡り線を仮保持した状態で、前記型枠を装着する請求項1記載のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法。
請求項3
請求項4
請求項5
前記渡り線の少なくとも一部を被覆する樹脂は、前記ステータコア及び/又は前記ステータコイルの少なくとも一部に接合されるように射出成形される請求項1〜4のいずれか一項に記載のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法。
請求項6
請求項7
前記渡り線の少なくとも一部を被覆する樹脂は、前記ステータコイルの隙間に入り込んで抜け止めとなるように射出成形される請求項5記載のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法。
請求項8
前記型枠は、前記ステータコイルの外周に装着される円筒形状の内側型枠と、該内側型枠の外側から組付けられる複数の外側型枠とからなり、前記内側型枠と前記外側型枠との間に前記渡り線を配置して、前記渡り線を前記型枠で囲むようにされる請求項1〜7のいずれか1つに記載のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法。
請求項9
前記外側型枠は、前記渡り線を部分的に覆うように、前記内側型枠の外周に沿って所定間隔をおいて複数に分かれて配置されている請求項8記載のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法。
請求項10
前記外側型枠は、前記内側型枠の外周を環状に囲むように、複数に分かれて配置されている請求項8記載のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法。
請求項11
請求項1〜10のいずれか一項に記載された、ステータコイルの渡り線の固定方法によって、前記ステータコイルの渡り線の少なくとも一部が樹脂によって被覆され、他相のコイル及び他相の渡り線と直接接触しないようにされていることを特徴とするステータ。
技術分野
背景技術
0002
従来の1つとして、下記特許文献1に示されるように、樹脂成形品からなるインシュレータをステータコアに装着し、ステータコアの内歯に巻線を施す際に、渡り線をインシュレータのステータコアの端面から突出する部分に設けられた保持片に保持させる方法が知られている。
0004
更に、下記特許文献2には、ステータコアに巻線されたステータコイルの外側に渡り線保持リングを配置して渡り線を保持させ、ステータコイル、渡り線保持リング、及び接続端子を、ステータヨーク上で一体にモールドしたモールドモータが開示されている。
先行技術
0005
特許第4553477号公報
特許第3607977号公報
発明が解決しようとする課題
0006
特許文献1の方法では、樹脂成形品からなるインシュレータを用いるので、材料コストが高くなるという欠点があった。
0007
また、スロット絶縁紙と、相間絶縁紙とを用い、糸で縛って渡り線を固定する方法は、材料コストは低減できるものの、手間がかかって作業性が悪いという欠点があった。
0008
特許文献2の方法では、ステータコイル、渡り線保持リング、及び接続端子を、ステータヨーク上で一体にモールドするので、モールドする樹脂量が多くなり、材料コストが嵩むという欠点があった。
課題を解決するための手段
0010
上記目的を達成するため、本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法は、ステータコアの内歯に巻付けられたステータコイル間を渡って導電接続する渡り線を、他相のコイル及び他相の渡り線と絶縁強化する方法であって、前記渡り線を自立保持又は仮保持させた状態で、前記渡り線の少なくとも一部を囲むように、樹脂注入可能な空洞を有する型枠を装着する型枠装着工程と、前記型枠内の空洞に液状の樹脂を射出する射出成形工程とを備え、前記型枠内の空洞に射出された樹脂によって前記渡り線の少なくとも一部を被覆して、前記渡り線が、他相のコイル及び他相の渡り線と直接接触しないようにしたことを特徴とする。
0011
本発明によれば、渡り線を自立保持又は仮保持させた状態で、樹脂を射出して渡り線の少なくとも一部を被覆して、渡り線が、他相のコイル及び他相の渡り線と直接接触しないようにしたので、スロット内に挿入されるインシュレータとして、渡り線保持機能を備えた高価な樹脂成形品を用いることなく、比較的安価なスロット絶縁紙等を用いることができ、材料コストを低減することができる。また、渡り線を自立保持又は仮保持させた状態で、樹脂を射出して渡り線の少なくとも一部を被覆するようにしたので、相間絶縁紙を挿入し、糸で縛ったりする必要がなくなり、製造作業性も良好となる。
0012
本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法において、前記型枠装着工程前に、前記渡り線が前記型枠の空洞の位置に適合するように、かつ、前記複数の渡り線が互いに接触することなく前記空洞内に配置されるように、前記渡り線を仮保持した状態で、前記型枠を装着することが好ましい。
0013
上記態様によれば、仮保持された渡り線が樹脂の中に正確に埋め込まれるので、良品率が向上する。また、複数の渡り線が互いに接触していない状態で、同じ樹脂に埋め込まれるので、複数の渡り線が樹脂を介して連結され、振動防止効果も得られる。
0014
本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法において、前記渡り線は、前記ステータに装着された保持部材によって仮保持されることが好ましい。
0017
上記態様によれば、フックによって仮保持した状態で型枠を装着するので、保持部材等が必要なくなり、材料費を増大させることなく、渡り線を樹脂の中に正確に埋め込むことが可能となる。
0018
本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法において、前記渡り線の少なくとも一部を被覆する樹脂は、前記ステータコア及び/又は前記ステータコイルの少なくとも一部に接合されるように射出成形されることが好ましい。
0020
本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法において、前記渡り線の少なくとも一部を被覆する樹脂は、前記ステータ上に配置された係止用の凹凸及び/又は貫通孔に入り込んで抜け止めとなるように射出成形されることが好ましい。
0021
上記態様によれば、樹脂が、ステータ上に配置された係止用の凹凸及び/又は貫通孔に入り込んで抜け止めされるので、渡り線を確実に固定することができる。
0022
本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法において、前記渡り線の少なくとも一部を被覆する樹脂は、前記ステータコイルの隙間に入り込んで抜け止めとなるように射出成形されることが好ましい。
0023
上記態様によれば、樹脂が、ステータコイルの隙間に入り込んで抜け止めとなる、渡り線を確実に固定することができる。
0024
本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法において、前記型枠は、前記ステータコイルの外周に装着される円筒形状の内側型枠と、該内側型枠の外側から組付けられる複数の外側型枠とからなり、前記内側型枠と前記外側型枠との間に前記渡り線を配置して、前記渡り線を前記型枠で囲むようにされることが好ましい。
0025
上記態様によれば、渡り線が配置された部分を主体にして樹脂を被覆することができるので、モールドする樹脂量を少なくして、材料コストを低減できる。
0026
本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法において、前記外側型枠は、前記渡り線を部分的に覆うように、前記内側型枠の外周に沿って所定間隔をおいて複数に分かれて配置されていることが好ましい。
0027
上記態様によれば、渡り線を部分的に覆うように配置された型枠によって、渡り線を部分的に絶縁被覆するようにしたので、モールドする樹脂量を更に少なくして、材料コストを低減できる。
0028
本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法において、前記外側型枠は、前記内側型枠の外周を環状に囲むように、複数に分かれて配置されていることが好ましい。
0029
上記態様によれば、内側型枠と外側型枠とで渡り線を環状に囲む空間を作って樹脂を射出することにより、環状に連結された樹脂によって渡り線を被覆するので、渡り線をより強固に固定できる。
0030
本発明のステータは、上記ステータコイルの渡り線の絶縁強化方法によって、前記ステータコイルの渡り線の少なくとも一部が樹脂によって被覆され、他相のコイル及び他相の渡り線と直接接触しないようにされていることを特徴とする。
発明の効果
0031
本発明によれば、渡り線を自立保持又は仮保持させた状態で、樹脂を射出して渡り線の少なくとも一部を被覆して、渡り線が、他相のコイル及び他相の渡り線と直接接触しないようにしたので、スロット内に挿入されるインシュレータとして、渡り線保持機能を備えた高価な樹脂成形品を用いることなく、比較的安価なスロット絶縁紙等を用いることができ、材料コストを低減することができる。また、渡り線を自立保持又は仮保持させた状態で、樹脂を射出して渡り線の少なくとも一部を被覆するようにしたので、相間絶縁紙を挿入し、糸で縛ったりする必要がなくなり、製造作業性も良好となる。
図面の簡単な説明
0032
本発明に係るステータコイルの渡り線の絶縁強化方法の一実施形態において、ステータコイルの渡り線に型枠を装着する型枠装着工程の概要をあらわす斜視図である。
同実施形態において、ステータコイルの渡り線に装着した型枠に樹脂を射出する射出成型工程の概要をあらわす斜視図である。
同実施形態において、型枠を撤去して得られ、ステータコイルの渡り線が絶縁強化されたステータをあらわす斜視図である。
本発明に係るステータコイルの渡り線の絶縁強化方法の他の実施形態において、前記渡り線が仮保持されている状態をあらわす斜視図である。
同実施形態において、ステータコイルの渡り線に型枠を装着する型枠装着工程の概要をあらわす斜視図である。
同実施形態において、ステータコイルの渡り線に装着した型枠に樹脂を射出する射出成型工程の概要をあらわす斜視図である。
同実施形態において、型枠を撤去して得られ、ステータコイルの渡り線が絶縁強化されたステータをあらわす斜視図である。
本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法に供せられる、絶縁強化前のステータをあらわす斜視図である。
実施例
0033
まず、図8を参照して、本発明のステータコイルの渡り線の絶縁強化方法に供せられる、絶縁強化前の集中巻ステータについて説明する。
0034
同図に示されるように、集中巻されたステータ1は、外形が略円筒形のステータコア2を備える。ステータコア2の内周には、複数の内歯3が突設されていて、内歯3と内歯3との間は、スロット4をなしている。内歯3は、その先端がステータコア2の端面側から見てT字状に延出されており、スロット4は、これらの内歯3どうしの間にスリット状の開口4aを有している。
0035
スロット4の内周面を被覆し、ステータコア2の両端面よりも突出するようにして、スロット絶縁紙5が配置されており、そのスロット絶縁紙5を介して、ステータコア2の内歯3に絶縁被覆された導線が巻き回され、巻き回された導線はステータコイル6をなしている。
0036
ステータコイル6に用いられる導線は、内歯3に巻き回しても嵩張らないように、絶縁被覆が薄いものが好まれ、例えばエナメル線が使用されている。エナメル被覆は巻き回しの際に傷つくこともあるが、スロット絶縁紙5によって、内歯3とステータコイル6が短絡しないように、確実に絶縁されている。また、隣接するステータコイル6とステータコイル6との間には、相間絶縁紙7が挿入されており、ステータコイル6どうしも確実に絶縁されている。
0038
しかしながら、電動機を運転した時の振動によって、渡り線8が、多相のステータコイル6、あるいは他相の渡り線8と接触する可能性がないとは言えず、仮にエナメル被覆が傷ついて導体が露出しており導線どうしが短絡した場合は、電動機が正常回転しないばかりか、過熱による発火の危険性すらある。
0039
そこで、本発明においては、渡り線8が、他相の、コイル6及び渡り線8と直接接触しないように、以下に述べるように、渡り線8の絶縁強化をはかるものである。
0041
図1には、自立保持されている渡り線8に、射出成形用の型枠を組み付ける、型枠装着工程の概要をあらわす斜視図が示されている。本発明における全周被覆タイプの型枠は、円筒形状の内側型枠9と、該内側型枠9の外側から組付けられ、2つに分かれた外側型枠10とからなり、渡り線8が配置されている円弧の内側に円筒形状の内側型枠9を配置し、渡り線8を挟み込むようにして、渡り線8が配置されている円弧の外側から2個の外側型枠10を組み付ける。
0042
ここで、内側型枠9は、支持軸9aと、支持軸9aに支持される型枠本体9bとを備え、型枠本体9bは略円筒形状であって、支持軸9aに接続される円板状の上面板9b1と、該上面板9b1の外周に配置されステータコイル6と渡り線8と間に挿入可能な円筒状の側面板9b2を有し、側面板9b2には、ステータコイル6から延出される渡り線8を通過させるためのスリット9cが配置されている。
0043
一方、外側型枠10は、複数個(図1では2つ)に分かれており、内側型枠9の外周を環状に囲むように内側型枠9の外側から組付けると、内側型枠9の外周に密着して、円環形状となる型枠である。外側型枠の本体10aは、その内周面に沿って帯状にはしる凹部10bを備えており、凹部10bと内側型枠の側面板9b2に囲まれた空間は、型枠組み付け後に、樹脂注入可能な円環形状の空洞をなす。さらに凹部10bには、自立保持された渡り線8に適合する複数(図1では3本)のガイド溝10cが形成されており、渡り線8は、それぞれ適合するガイド溝10cに嵌めこまれ、互いに接触しないように仮保持される。また、外側型枠10の上面には湯口10dが設けられており、湯口10dから樹脂を注入できるようになっている。
0044
なお、型枠装着工程おいて、渡り線8の自立保持が難しい場合は、ステータ1aに装着された仮保持部材によって仮保持し、外側型枠10のガイド溝10cに適合させた後、前記仮保持部材を除き、その後内側型枠9を組み付ける方法であってもよい。型枠装着後は、ガイド溝10cによって渡り線8が仮保持される。
0046
図2には、ステータ1aに内側型枠9と外側型枠10を組み付けた後、湯口10dから液状の樹脂を注入する、射出成形工程の概要をあらわす斜視図が示されている。射出成形に用いられる樹脂の材質は、特に限定されず、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を用いることができ、このうち硬化速度の速い熱可塑性樹脂が特に好ましい。
0047
例えば、熱可塑性樹脂を射出成形する好ましい形態としては、ステータ1aを内側型枠9の支持軸9aによって保持し、支持軸9aを回転させて外側型枠10に設けられた湯口10dを射出成形機のノズル11の射出口の位置に整合させ、ヒーターによって加熱溶融された熱可塑性樹脂を押圧して射出成形機のノズル11から射出し、樹脂成形することができる。湯口10dから注入された熱可塑性樹脂は、内側型枠9の側面板9b2と外側型枠10の内周面の凹部10bに囲まれた円環状の空洞の中を流動して拡がり、円環状の空洞を充たすと、その一部は内側型枠9の側面板9b2に配置されたスリット9cから浸み出して、ステータコイル6の隙間に入り込み、冷えて固化し、図4に示されている樹脂成形体12及び抜け止め13となる。
0048
湯口10dは、熱可塑性樹脂がよく行き亘たり、気泡が残らないように、外側型枠10に所定の間隔で複数個所に設けられていることが好ましい。射出成形機は、ノズル11をひとつ備え、1つの湯口10dに所定量の樹脂を注入したら、支持軸9aを回転させて、次の湯口10dをノズル11に整合させ、樹脂を順次注入してもよいが、複数のノズル11を備えて、複数の湯口10dに同時に注入してもよい。
0049
図3には、射出成形した樹脂が固化した後、内側型枠9と外側型枠10を撤去して得られ、ステータコイル渡り線8が絶縁強化された、ステータ1aの斜視図が示されおり、前記型枠の空洞に注入された樹脂は固化して樹脂成形体12となる。
0050
上記の樹脂成形体12は、渡り線8とステータコイル6との間に介装されて両者を隔離する、円環形状の樹脂部品として、ステータコア2の上端面上に形成されている。渡り線8は、樹脂注入時は型枠10の内周に設けられているガイド溝10cに適合して仮保持されていたため、樹脂が固化した後は樹脂成形体12の外周面に形成された溝に嵌め込まれたかのような仕上がりとなって横ずれしなくなり、渡り線8どうしの接触を防止している。
0051
また、射出成型時に内側型枠の側面版9b2に形成されているスリット9cから侵出した樹脂は、ステータコイル6の隙間に入り込んで固化し、抜け止め13をなしている。樹脂成形体12は、抜け止め13を備えることによって、ステータコイル6と一体化し、ステータ1aに固定されている。
0052
以上、渡り線8は、樹脂成形体12によって、他の相の、ステータコイル6及び渡り線8とは直接接触しないように絶縁強化され、信頼性の高いステータ1aが得られる。
0054
図4において、ステータ1bの渡り線8は、保持部材14の駆動部14aによって前後、左右、上下の3軸方向に動かすことができる、可動アーム14bの先端に取付けたフック14cに引っ掛けられて、所定の位置に仮保持されている。このように渡り線8を仮保持することによって、型枠を取り付ける作業が容易になる。
0055
なお、フック14cの形状は、特に限定されない。例えば、図4においては、フック14cは、可動アーム14bの先端に取付けられた、前後に並ぶ2つの円筒から構成されており、2つの円筒の間に渡り線8を引っ掛けるようにして仮保持することができる。
0056
図5には、仮保持されている渡り線8に、射出成形用の型枠を組み付ける、型枠装着工程の概要をあらわす斜視図が示されている。ただし、図面を見易くするため、保持部材14は省略されている。
0057
本発明のステータ1bにおいては、ステータコア2の内歯3にスロット絶縁紙5を介して被覆導線巻き回されてステータコイル6となり、ステータコイル6と隣接するステータコイル6との間には相間絶縁紙7が挿入されて絶縁され、同相のステータコイル6どうしは、ステータコイル6から延出される渡り線8によって導電接続されている。
0058
本発明における部分被覆タイプの型枠は、円筒形状の内側型枠9と、該内側型枠9の外側から組付けられ、複数個(図5では7個)に分かれた外側型枠16とからなり、渡り線8が配置されている円弧の内側に円筒形状の内側型枠9を配置し、渡り線8を挟み込むようにして、渡り線8が配置されている円弧の外側から上記7個の外側型枠16を組み付ける。
0059
ここで、内側型枠9は、支持軸9aと、支持軸9aに支持される型枠本体9bとを備え、型枠本体9bは略円筒形状であって、支持軸9aに接続される円板状の上面板9b1と、該上面板9b1の外周に配置されステータコイル6と渡り線8と間に挿入可能な円筒状の側面板9b2を有し、側面板9b2には、ステータコイル6から延出される渡り線8を通過させるためのスリット9cが配置されている。
0060
一方、外側型枠の型枠本体16aは、その幅がステータコイル6の直径程度であって、各ステータコイル6の正面に整合配置される。型枠本体16aの、内側型枠9に対向する側の面には、内側型枠の側面板9b2と協同して樹脂を充たすための空洞をなす凹部16bと、仮保持された渡り線8に適合する複数(図5では3本)のガイド溝16cが形成されている。また、型枠本体16aの上面には湯口16dが1個、下面には樹脂を排出するための排出口16eが2個設けられている。
0061
なお、外側型枠16の個数、及びガイド溝16cの個数は、上記態様に限定されず適宜変更できる。
0062
本発明においては、図5に示されるように、例えばステータコア2の端面の、外側型枠の排出口16eに整合する位置に、ネジ穴15を螺設することができる。排出口16eから排出された樹脂は、ネジ穴15に侵出して固化し、抜け止めを形成する。なお、抜け止めを形成する際に、侵出してきた樹脂を受け入れる係止部の形状は、ネジ穴に限定されず、ステータ上に配置された係止用の凹凸及び/又は貫通孔のようなものであってもよい。そして、外側型枠の排出口16eの形状は、上記係止部の形状に合わせて適宜変更することができる。
0063
上記の型枠装着工程において、渡り線8に保持部材14のフック14cを引っ掛けて仮保持する位置は、外側型枠16を組み付けた時に、外側型枠16間の間隙にあたるように場所を選び、外側型枠16の組み付けを妨げないようにする。そして、渡り線8は、外側型枠16のガイド溝16cに適合するように組み付ける。このようにして外側型枠16を組み付けることにより、渡り線8どうしが接触する問題を避けることができる。外側型枠16を組み付けると、渡り線8はガイド溝16cによって仮保持されるので、保持部材14は撤去してもよい。
0064
図6には、ステータ1bに内側型枠9と外側型枠16を組み付けた後、湯口16dから液状の樹脂を注入する、射出成形工程の概要が斜視図によって示されている。射出成形される樹脂の材質は、特に限定されず、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等を用いることができ、このうち硬化速度の速い熱可塑性樹脂が特に好ましい。
0065
例えば、熱可塑性樹脂を射出成形する好ましい形態としては、ステータ1bを内側型枠9の支持軸9aによって保持し、支持軸9aを回転させて外側型枠16に設けられた湯口16dを射出成形機のノズル11の射出口の位置に整合させ、ヒーターによって加熱溶融された熱可塑性樹脂を押圧して射出成形機のノズル11から射出することができる。湯口16dから注入された熱可塑性樹脂は、内側型枠9の側面板9b2と外側型枠16の凹部16bに囲まれた空洞を充たし、余剰分は外側型枠16の排出口16eから排出されステータコア2の端面に螺設されたネジ穴15に侵出し、冷えて固化し、図7に示される樹脂成形体17及び抜け止め18となる。
0066
射出成形機は、ノズル11をひとつ備え、1つの湯口10dに所定量の樹脂を注入したら、支持軸9aを回転させて、次の湯口16dをノズル11に整合させ、樹脂を順次注入してもよいが、複数のノズル11を備えて、複数の湯口16dに同時に注入してもよい。
0067
図7には、射出成形した樹脂が固化した後、内側型枠9と複数の外側型枠16を外した、ステータ1bが示されている。内側型枠9を上方に引き上げ、外側型枠16を水平方向に引き剥がすと、前記型枠の空洞に樹脂が注入され固化してできた樹脂成形体17が残る。
0068
上記の樹脂成形体17は、渡り線8とステータコイル6との間に介装されて両者を隔離する、7個のコンパクトな樹脂部品として、ステータコア2の上端面上に形成されている。
0069
樹脂注入時は型枠10の内周に設けられているガイド溝10cに適合して仮保持されていたため、樹脂が固化した後は樹脂成形体12の外周面に形成された溝に嵌め込まれたかのような仕上がりとなって横ずれしなくなり、渡り線8どうしの接触事故を防止している。
0070
また、射出成型工程おいて外側型枠16の排出口16eから排出された樹脂は、ステータコア2の端面に配置されたネジ穴15に入り込んで固化し、抜け止め18をなしている。樹脂成形体17は、抜け止め18を備えることによって、ステータコア2に固定される。
0071
以上、渡り線8は、樹脂成形体17によって、他の相の、ステータコイル6及び渡り線8とは直接接触しないように絶縁強化され、信頼性の高いステータ1bが得られる。
0072
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
0073
1,1a,1bステータ
2ステータコア
3内歯
4スロット
4aスリット
5スロット絶縁紙
6ステータコイル
7相間絶縁紙
8渡り線
9内側型枠(全周被覆タイプ)
9a支持軸
9b型枠本体
9b1 上面板
9b2側面板
9c スリット
10外側型枠(全周被覆タイプ)
10a 型枠本体
10b 凹部
10cガイド溝
10d 湯口
11射出成形機のノズル
12樹脂成形体
13 抜け止め
14保持部材
14a 駆動部
14b可動アーム
14cフック
15ネジ穴
16 外側型枠(部分被覆タイプ)
16a 型枠本体
16b 凹部
16c ガイド溝
16d 湯口
16e 排出口
17 樹脂成形体
18 抜け止め