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技術 波面制御装置、波面制御方法、情報取得装置、プログラム、および、記憶媒体

出願人 キヤノン株式会社
発明者 増村考洋
出願日 2017年6月8日 (4年2ヶ月経過) 出願番号 2017-113432
公開日 2018年1月18日 (3年7ヶ月経過) 公開番号 2018-008040
状態 特許登録済
技術分野 超音波診断装置 光学的手段による材料の調査、分析 蛍光または発光による材料の調査,分析 ホログラフィ
主要キーワード IR帯域 第三次高調波 アイセーフレーザ フォーカススポット パルス光ビーム 非拡散領域 媒質表面 ゆらぐ
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図面 (15)

課題

散乱媒質内部の深い位置、或いは広範囲における光学特性の情報の取得に有利な波面制御装置を提供する。

解決手段

波面制御装置は、光が照射された媒質から発生する信号を検出する検出手段104と、検出手段の出力に基づいて、光の波面を制御する制御手段102、105と、を有し、制御手段は、媒質内部の第1の測定位置から発生する信号に基づいて光の第1の波面を形成する第1の処理と、第1の波面を有する光が照射された媒質内部の、第1の測定位置とは異なる第2の測定位置から発生する信号に基づいて光の第2の波面を形成する第2の処理と、を行う。

概要

背景

可視域から近赤外の光を用いて、生体などの媒質の内部の光学特性非侵襲、或いは低侵襲イメージングするための研究が進められている。一般的に、光は生体などの散乱媒質中では、散乱によって不規則軌跡を辿り伝搬する。そのため、散乱が多重に引き起こされるような媒質では、光が深い位置まで十分に達しなくなるため、イメージングの解像度やイメージングする深さ(侵達長)が劣化する。そのような散乱媒質を高解像度にイメージングするためには、散乱光を除去し、信号となる光(非散乱光、或いは散乱回数が非常に少ない弱散乱光)だけを抽出してイメージングを行うのが一般的である。代表的なものとしては、共焦点顕微鏡や、OCT(Optical Coherence Tomography)などが挙げられる。このような手法は、イメージングする深さが比較的媒質の浅い領域では有効であるが、深い領域では散乱が支配的となり、信号源となる非散乱光が指数関数的に減少してしまう。従って、上記のようなイメージング手法を媒質の深い領域に対して実施することが非常に困難になる。上記のようなイメージング手法は、一般的には侵達長が浅い領域(例えば生体組織などの場合には、1mm以下)に限られてしまう。或いは、霧や煙、或いはヘイズと呼ばれる大気中の微粒子が存在するような条件下や、或いは大気によって屈折率が空間的にゆらぐような条件下で被写体を広範囲撮像する場合、光の散乱の影響で、撮像された被写体の像が歪み、被写体を認識するのが困難になる。

このような課題に対し、近年、媒質へ入射する光の波面を適切に成形することで光を効率的に散乱媒質内部の特定の位置へ送り込む技術が提案されている。

非特許文献1では、散乱媒質に光を照射し、媒質中にある蛍光物質から発生する蛍光をCCDでモニタし、蛍光の信号が最大になるように入射波面空間変調器SLM:Spatial Light Modulator)で成形する。そして、CCDによる蛍光信号のモニタと、SLMによる入射波面の成形を反復的に繰り返し、蛍光信号が最大になるように入射波面を最適化することで、同蛍光物質へ光を効率よくフォーカスできることが実証されている。また、特許文献1で開示されているように、蛍光信号の代わりに、光音響信号を波面最適化のターゲットに用いる構成も開示されている。或いは非特許文献2で示されているように、2光子吸収による蛍光信号(TPF: Two−photon fluorescence)をターゲットにする構成も開示されている。このように、様々な信号を最適化のターゲットとし、光を散乱媒質内部でフォーカスさせることができる。このとき最適化のターゲットとして用いることができる信号は、多重散乱光とは何らかの形で区別された信号を用いる。

また、入射波面を成形する技術としては、上述したような反復的な最適化処理とは別に、特許文献2に示されているように、位相共役光を利用した技術も提案されている。特許文献2では、散乱媒質内部の任意の位置に超音波集束領域を生成し、同領域で変調された光(超音波変調光)が媒質外部へ射出され、この超音波変調光の波面を選択的にホログラムに記録する。同ホログラムから位相共役波面を発生させて媒質へ入射させることで、その位相共役光は時間的な可逆性に従って超音波の集束領域へ伝搬していく。この効果により、媒質内部の超音波集束領域へ効率的に光を送ることができる。このような超音波変調光の他に、非特許文献3では、媒質内部のある位置を発生源とする第二次高調波SHG:Second Harmonic Generation)を利用した位相共役光技術についても開示されている。

このような散乱媒質内部へ光をフォーカスさせる技術は、ターゲット信号、或いはガイドスターと呼ばれる、散乱光とは区別された信号に基づいて、媒質へ照射する光の波面を適切に(反復的な最適化、或いは位相共役光技術を用いて)成形することで可能となる。散乱光とは区別された信号とは、例えば、蛍光信号、TPF、SHG、光音響信号、超音波変調信号などである。このような散乱媒質内部へ光をフォーカスさせる技術を、様々なイメージング手法と組み合わせて用いることが提案されている。

概要

散乱媒質内部の深い位置、或いは広範囲における光学特性の情報の取得に有利な波面制御装置を提供する。波面制御装置は、光が照射された媒質から発生する信号を検出する検出手段104と、検出手段の出力に基づいて、光の波面を制御する制御手段102、105と、を有し、制御手段は、媒質内部の第1の測定位置から発生する信号に基づいて光の第1の波面を形成する第1の処理と、第1の波面を有する光が照射された媒質内部の、第1の測定位置とは異なる第2の測定位置から発生する信号に基づいて光の第2の波面を形成する第2の処理と、を行う。

目的

本発明は、散乱媒質内部の深い位置、或いは広範囲における光学特性の情報の取得に有利な波面制御装置、波面制御方法、情報取得装置プログラム記憶媒体を提供する

効果

実績

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請求項1

光が照射された媒質から発生する信号を検出する検出手段と、前記検出手段の出力に基づいて、前記光の波面を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記媒質内部の第1の測定位置から発生する前記信号に基づいて前記光の第1の波面を形成する第1の処理と、前記第1の波面を有する前記光が照射された前記媒質内部の、前記第1の測定位置とは異なる第2の測定位置から発生する前記信号に基づいて前記光の第2の波面を形成する第2の処理と、を行うことを特徴とする波面制御装置。

請求項2

前記制御手段は、前記第1の処理において、前記第1の測定位置から発生する前記信号の強度が最大値の75%よりも高くなるように前記第1の波面を形成し、前記第2の処理において、前記第2の測定位置から発生する前記信号の強度が最大値の75%よりも高くなるように前記第2の波面を形成することを特徴とする請求項1に記載の波面制御装置。

請求項3

前記制御手段は、前記第2の測定位置を前記第1の測定位置とし、前記第2の波面を前記第1の波面として、前記第1及び第2の処理を反復する処理を、前記第2の測定位置が目標位置に一致するまで実行することを特徴とする請求項1または2に記載の波面制御装置。

請求項4

前記制御手段は、前記媒質に前記第1の波面を有する光を照射した際に前記信号の強度が閾値よりも高くなる領域に基づいて、前記第2の測定位置を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の波面制御装置。

請求項5

前記制御手段は、前記領域を、前記媒質の深さ方向に対して垂直な面内における前記信号の強度分布から推定することを特徴とする請求項4に記載の波面制御装置。

請求項6

前記制御手段は、前記媒質の深さ方向、或いは前記深さ方向に対して垂直な方向における位置に応じて変化する前記信号の強度に基づいて、前記第2の測定位置を設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の波面制御装置。

請求項7

前記制御手段は、前記媒質の表面からの距離に応じて変化する前記信号の強度が、閾値より大きい範囲内で前記第2の測定位置を設定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の波面制御装置。

請求項8

前記閾値は、前記信号の強度の最大値の半値であることを特徴とする請求項7に記載の波面制御装置。

請求項9

前記第2の測定位置は、前記第1の測定位置よりも前記媒質の表面から離れた位置であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の波面制御装置。

請求項10

前記制御手段は、前記媒質に超音波を照射することで、前記媒質の内部に前記超音波が集束する超音波集束領域を形成し、該超音波集束領域の前記媒質の深さ方向における大きさに基づいて前記第2の測定位置を設定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の波面制御装置。

請求項11

前記制御手段は、前記媒質に対する前記光の照射角度を制御することで前記第2の測定位置を設定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の波面制御装置。

請求項12

前記信号は、光音響信号蛍光信号超音波変調光信号、高調波信号ラマン散乱信号OCT信号共焦点光学系により取得される光強度信号、或いはゲート撮像により取得される輝度信号のうちいずれかであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の波面制御装置。

請求項13

前記目標位置から発生する信号は、前記目標位置以外の測定位置から発生する信号とは異なる信号であることを特徴とする請求項3乃至12のいずれか1項に記載の波面制御装置。

請求項14

光が照射された媒質から発生する信号を検出する検出手段と、前記検出手段の出力に基づいて、前記光の波面を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記媒質内部の第1の測定位置から発生する前記信号に基づいて前記光の第1の波面を形成する第1の処理と、前記第1の波面を有する前記光が照射された前記媒質内部の、前記第1の測定位置とは異なる第2の測定位置から発生する前記信号に基づいて前記光の第2の波面を形成する第2の処理と、を行う波面制御装置を有し、前記媒質内部の光学特性の情報を取得することを特徴とする情報取得装置

請求項15

検出した前記信号に基づいて画像を生成する生成手段と、生成した前記画像を表示する表示手段と、を有することを特徴とする請求項14に記載の情報取得装置。

請求項16

媒質に照射される光の波面を制御する波面制御方法であって、前記媒質内部の第1の測定位置から発生する信号に基づいて前記媒質に照射される光の第1の波面を形成するステップと、前記第1の波面を有する光が照射された前記媒質内部の、前記第1の測定位置とは異なる第2の測定位置から発生する前記信号に基づいて前記光の第2の波面を形成するするステップと、を有することを特徴とする測定方法

請求項17

請求項16に記載の波面制御方法の各ステップが記述されたコンピュータで実行可能なプログラム

請求項18

コンピュータに、請求項16に記載の波面制御方法の各ステップを実行させるためのプログラムが記憶されたコンピュータが読み取り可能な記憶媒体

技術分野

0001

本発明は、波面制御装置に関する。本発明は、例えば、光を用いて散乱媒質光学特性を測定または撮像する装置に適用可能である。

背景技術

0002

可視域から近赤外の光を用いて、生体などの媒質の内部の光学特性を非侵襲、或いは低侵襲イメージングするための研究が進められている。一般的に、光は生体などの散乱媒質中では、散乱によって不規則軌跡を辿り伝搬する。そのため、散乱が多重に引き起こされるような媒質では、光が深い位置まで十分に達しなくなるため、イメージングの解像度やイメージングする深さ(侵達長)が劣化する。そのような散乱媒質を高解像度にイメージングするためには、散乱光を除去し、信号となる光(非散乱光、或いは散乱回数が非常に少ない弱散乱光)だけを抽出してイメージングを行うのが一般的である。代表的なものとしては、共焦点顕微鏡や、OCT(Optical Coherence Tomography)などが挙げられる。このような手法は、イメージングする深さが比較的媒質の浅い領域では有効であるが、深い領域では散乱が支配的となり、信号源となる非散乱光が指数関数的に減少してしまう。従って、上記のようなイメージング手法を媒質の深い領域に対して実施することが非常に困難になる。上記のようなイメージング手法は、一般的には侵達長が浅い領域(例えば生体組織などの場合には、1mm以下)に限られてしまう。或いは、霧や煙、或いはヘイズと呼ばれる大気中の微粒子が存在するような条件下や、或いは大気によって屈折率が空間的にゆらぐような条件下で被写体を広範囲に撮像する場合、光の散乱の影響で、撮像された被写体の像が歪み、被写体を認識するのが困難になる。

0003

このような課題に対し、近年、媒質へ入射する光の波面を適切に成形することで光を効率的に散乱媒質内部の特定の位置へ送り込む技術が提案されている。

0004

非特許文献1では、散乱媒質に光を照射し、媒質中にある蛍光物質から発生する蛍光をCCDでモニタし、蛍光の信号が最大になるように入射波面空間変調器SLM:Spatial Light Modulator)で成形する。そして、CCDによる蛍光信号のモニタと、SLMによる入射波面の成形を反復的に繰り返し、蛍光信号が最大になるように入射波面を最適化することで、同蛍光物質へ光を効率よくフォーカスできることが実証されている。また、特許文献1で開示されているように、蛍光信号の代わりに、光音響信号を波面最適化のターゲットに用いる構成も開示されている。或いは非特許文献2で示されているように、2光子吸収による蛍光信号(TPF: Two−photon fluorescence)をターゲットにする構成も開示されている。このように、様々な信号を最適化のターゲットとし、光を散乱媒質内部でフォーカスさせることができる。このとき最適化のターゲットとして用いることができる信号は、多重散乱光とは何らかの形で区別された信号を用いる。

0005

また、入射波面を成形する技術としては、上述したような反復的な最適化処理とは別に、特許文献2に示されているように、位相共役光を利用した技術も提案されている。特許文献2では、散乱媒質内部の任意の位置に超音波集束領域を生成し、同領域で変調された光(超音波変調光)が媒質外部へ射出され、この超音波変調光の波面を選択的にホログラムに記録する。同ホログラムから位相共役波面を発生させて媒質へ入射させることで、その位相共役光は時間的な可逆性に従って超音波の集束領域へ伝搬していく。この効果により、媒質内部の超音波集束領域へ効率的に光を送ることができる。このような超音波変調光の他に、非特許文献3では、媒質内部のある位置を発生源とする第二次高調波SHG:Second Harmonic Generation)を利用した位相共役光技術についても開示されている。

0006

このような散乱媒質内部へ光をフォーカスさせる技術は、ターゲット信号、或いはガイドスターと呼ばれる、散乱光とは区別された信号に基づいて、媒質へ照射する光の波面を適切に(反復的な最適化、或いは位相共役光技術を用いて)成形することで可能となる。散乱光とは区別された信号とは、例えば、蛍光信号、TPF、SHG、光音響信号、超音波変調信号などである。このような散乱媒質内部へ光をフォーカスさせる技術を、様々なイメージング手法と組み合わせて用いることが提案されている。

0007

米国特許出願公開第2012/0127557号明細書
米国特許出願公開第2011/0071402号明細書

先行技術

0008

I.M.Vellekoop, E.G.Van Putten,A.Lagendijk and A.P.Mosk,“Demixing light paths inside disordered metamaterials”, Optics Express Vol.16, No.1 67−80(2008)
Jianyong Tang, Ronald N.Germain and Meng Cui,“Superpenetration optical microscopy by iterative multiphoton adaptive compensation technique”, Proceeding of the National Academy of Sciences USA, 109(22) 8434−8439 (2012)
Xin Yang, Chia−Lung Hsieh, Ye Pu and Demetri Psaltis,“Three−dimensional scanning microscopy through thin turbid media”, Optics Express Vol.20 No.3 2500−2506 (2012)
I.M.Vellekoop, A.P.Mosk,”Phase control algorithms for focusing light through turbid media”, Optics Communications 281 (2008) 3071−3080
Donald B.Conkey et al.,”Genetic algorithm optimization for focusing through turbid meida in noisy environments”,Optics Express Vol.20, No.5 (2012)
Thomas Bifano, Yang Lu, Christopher Stockbride, Aaron Berliner, John Moore, Richard Paxman, Santosh Tripanthi and Kimani Toussaint,“MEMS spatial light modulators for controlled optical transmission through nearly opaque materials”, Proc. of SPIEVol.8253 (2012)

発明が解決しようとする課題

0009

散乱媒質内部のある特定の位置へ光をフォーカスさせる前述の技術を、様々な測定方法と合わせて用いれば、光を効率的にターゲットへフォーカスさせ、測定する信号を向上させて、同媒質の光学特性を測定することが可能である。このとき、前述したように、散乱媒質内部の特定の位置へ光をフォーカスさせるためには、同位置から発生するターゲット信号に基づいて、入射光の波面を成形(最適化)する必要がある。言い換えれば、そのターゲット信号を測定することができない場合は、前述のような反復的な最適化や、位相共役光技術を利用することができない。従って、このような光フォーカス技術は、媒質内部にあるターゲット信号を媒質外部から測定できる範囲内で有効である。ターゲットが媒質の内部深くにある場合、多重散乱の影響でターゲット信号が減衰してしまい、同信号の測定が困難となる。そのような場合、前述の反復的な最適化や、位相共役技術を効果的に適用することができない。従って、媒質内部の深い位置に光をフォーカスさせることができないために、媒質の奥深くの光学特性を測定することができなくなる。つまり、光学測定の侵達長を向上させることができない。

0010

そこで、本発明は、散乱媒質内部の深い位置、或いは広範囲における光学特性の情報の取得に有利な波面制御装置、波面制御方法、情報取得装置プログラム記憶媒体を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明の一側面としての波面制御装置は、光が照射された媒質から発生する信号を検出する検出手段と、前記検出手段の出力に基づいて、前記光の波面を制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記媒質内部の第1の測定位置から発生する前記信号に基づいて前記光の第1の波面を形成する第1の処理と、前記第1の波面を有する前記光が照射された前記媒質内部の、前記第1の測定位置とは異なる第2の測定位置から発生する前記信号に基づいて前記光の第2の波面を形成する第2の処理と、を行うことを特徴とする。

発明の効果

0012

本発明によれば、散乱媒質内部の深い位置、或いは広範囲における光学特性の情報の取得に有利な波面制御装置、波面制御方法、情報取得装置、プログラム、記憶媒体を提供することができる。

図面の簡単な説明

0013

本発明の実施形態1の測定装置の構成を示す模式図である。
本発明の実施形態1の測定方法の全体の処理フローを模式的に示す図である。
本発明の実施形態1の入射波面の最適化の処理フローを模式的に示す図である。
本発明の実施形態1のターゲット領域における光音響信号の深さ(z)方向の分布を表す図である。
本発明の実施形態2の測定装置の構成を示す模式図である。
本発明の実施形態2のターゲット領域における蛍光信号の横(x−y断面)方向の分布を表す図である。
本発明の実施形態3の測定装置の構成を示す模式図である。
本発明の実施形態3の媒質内部における深さ方向に広がりをもつターゲット領域(超音波集束領域)を模式的に示した図である。
本発明の実施形態4の測定装置の構成を示す模式図である。
本発明の実施形態4の測定方法の全体の処理フローを模式的に示す図である。
本発明の実施形態5の測定装置の構成を示す模式図である。
本発明の実施形態5の処理フローを模式的に示す図である。
本発明の実施形態5の効果をシミュレーションで示した図である。
本発明の実施形態5において、照射ビームスキャンを模式的に示した図である。

実施例

0014

以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明において、波面制御装置および方法は、媒質に照射される光の波面を制御(調節)する装置および方法である。波面制御方法は、後述する制御手段を構成するコンピュータによって実行されるプログラムによって実現可能である。図中の「S」はステップを表す。情報取得装置は、媒質内部の光学特性の情報を取得する装置であり、波面制御装置を含んでもよい。情報取得装置は、媒質内部の光学特性を測定する測定装置や媒質内部の光学特性を撮像する撮像装置を含む。

0015

(実施形態1)
図1〜4を用いて、本発明の第1の実施形態に係る散乱媒質の光学特性の測定方法及び装置を説明する。図1は、本実施形態における測定装置の例示的な構成を示す概略図である。媒質107は、生体組織を含む被検媒質であり、散乱粒子111を含み、可視から近赤外の光に対して散乱媒質である。いま、媒質107に対して光音響信号(Photoacoustic signal)を利用してイメージングする装置において、本発明を適用した場合について説明する。

0016

光源100からは、数nsのパルス光放射される。また光源100は、例えば媒質107が生体組織である場合、その組織の構成成分である水、脂肪タンパク質酸化ヘモグロビン還元ヘモグロビン、などの吸収スペクトルに応じた複数の波長を選択することができる。一例としては、400nm〜1,500nmなどの可視から近赤外の範囲の波長を放射する電磁波源を使用する。また、同様に媒質107が生体組織の場合、放射される光強度は照射可能な安全基準以下の強度内で調整される。

0017

光源100から放射された光は、ビームスプリッタ101を透過し、SLM102へ照射される。SLM102は、例えばliquid crystal on silicon(LCOS)を用いることができる。このSLM102は制御装置105によって制御され、図3に示される最適化処理に基づき波面を成形(位相変調)する。図3の最適化処理については後述する。このSLM102および制御装置105により、後述の超音波トランスデューサの出力に基づいて、光の波面を制御する制御手段が構成される。SLM102を反射した波面成形された光106は、ビームスプリッタ101を反射し、光学系103を介して媒質107へ照射される。

0018

散乱媒質107に入射した光109は、散乱されながら媒質107内部を伝搬し、一部は特定の位置(領域)108にある吸収体エネルギーが吸収され、同局所領域で温度上昇が生じ、体積膨張され、音響波(光音響信号)110が発生する。超音波トランスデューサ104は、光が照射された散乱媒質から発生する信号を検出(測定)する検出手段(測定手段)として機能し、この光音響信号110を測定する。このとき、制御装置105は超音波トランスデューサ104を制御し、散乱媒質107内部の局所領域108からの光音響信号110を含む信号が検出されるように、超音波トランスデューサのフォーカスが制御される。ここで、超音波トランスデューサは、例えばリニアアレイ探触子から構成され、アレイ探触子を用いた電子フォーカスによって、媒質107内部の任意の位置に超音波フォーカス領域を生成することが可能である。トランスデューサとしては、圧電現象を用いたトランスデューサ、光の共振を用いたトランスデューサ、容量変化を用いたトランスデューサなどを用いることができる。また、超音波トランスデューサ104は、媒質107と音響的に整合されている。

0019

ここで、光の入射位置から媒質内部の深さz(位置z)における光音響信号P(z)は、同位置zにおける光強度Φ(z)、同位置zにある吸収体の吸収係数μa(z)、及び熱から音響波への変換効率を表すグリュナイゼン係数Γを用いて、以下のように表される。

0020

0021

式(1)からわかるように、位置zにおいてグリュナイゼン係数Γと吸収係数μa(z)が媒質固有で一定であるとすれば、光音響信号は同位置zでの光強度に応じて変化する。従って、位置zに効率よく光をフォーカスさせれば、光音響信号P(z)の信号強度は向上する。

0022

SLM102は光学系103の瞳面に配置され、SLM上の各セグメント(独立に位相を制御できる小領域)がそれぞれ入射光の波面を独立に成形する。以下で、この入射光の波面成形(最適化)を含む、本実施形態の光音響イメージング全体の測定フローについて、図2及び図3に示すフローチャートに基づき説明する。

0023

まず最初にS200で、初期条件として、光音響信号を測定する局所的なターゲット領域108(ターゲット位置z0)を設定する。この初期のターゲット領域108について、入射光が照射される位置からの深さは、光音響信号が十分測定できるほどの深さに任意に設定する。測定を何回か実行して、信号強度が十分測定できる適切な深さを探してもよい。

0024

次にS210において、光源100をオンにし、超音波トランスデューサ104が光音響信号を受信し始めたら、次のS220で入射光の波面の最適化処理に移る。S220の最適化処理では、S200で設定したターゲット領域108から発生する光音響信号が最大になるように入射光の波面を最適化する。前述したように、式(1)より、光強度がターゲット領域108にフォーカスするように波面を成形すれば、光音響信号も向上する。このS220の入射波面の最適化処理は、S230以降で反復される処理の1ステップ前で最適化された入射波面を初期状態としてS220を実行する(後述のS260参照)。ただし、S230以降がまだ実行されていない初期のターゲット位置z0における最適化処理では、例えば平面波を最適化の初期条件としてS220を実行してもよい。

0025

S220の最適化の処理については、図3を用いて説明する。まずS221で、SLM102上でN個に分割されたセグメントのうちインデックスjのセグメントを選択する。このときセグメントは、SLM102の1ピクセルでもよいし、SLM102の複数のピクセルから構成される領域であってもよい。

0026

S222でN個全てのセグメントに対してS223〜S227までの処理が終了すると、最適化処理(S220)を終了して、S230(図2)へ移る。S222で全セグメントに対して処理が未実行の場合、S223において、ターゲット領域108から発生する光音響信号110を超音波トランスデューサ104で測定する。測定された信号の値は、セグメントjの位相の値φjと共に、制御装置105のメモリに保存される。例えばj=1の場合は、S260で設定された位相分布(1ステップ前のzi−1の深さにおいて最適化された波面)、或いは位置z0であれば平面波が媒質に照射されたときの光音響信号108が測定される。

0027

次にS224〜S225で、位相変調量Δφの値を徐々に増やしながら(離散化されたステップサイズに応じてインクリメントさせながら)、セグメントjの位相φjに位相変調量Δφを与え、同セグメントの位相の値を更新する。S224では、上記の位相変調量Δφが2πを超えたか否かを判定し、超えていない場合は、S225において、セグメントjの位相の値φjをφj→φj+Δφのようにして、位相変調量Δφを加えて位相φjの値を更新する。新たに更新された位相φjに対し、再びS223で、ターゲット領域108から発生する光音響信号を測定し、制御装置105のメモリにデータを格納する。これをセグメントjの位相の変調量Δφが2πを超えるまで繰り返す。

0028

S224において、位相変調量Δφが2πを超えて測定が終了すると、S226において、メモリに保存されたデータから光音響信号が最大となる最適な位相φjを読み出し、SLM102のセグメントjの位相として設定する。S227では、SLM102の次のセグメントj+1に移り、上述したS222〜S227の最適化を実行する。このようにしてSLM102の全てのセグメントに対して上記最適化処理を実行することで、設定したターゲット領域に光をフォーカスさせる入射光106を生成する。

0029

本実施例では、S226で光音響信号が最大値となる位相φjを読み出しているが、少なくとも光音響信号の最大値の75%、好ましくは85%、更に好ましくは95%あればよい。

0030

ここで、S220の入射波面の最適化には、上述のようにSLMの各セグメントの位相を逐一最適化するアルゴリズムの代わりに、非特許文献4に開示されている複数のセグメントを同時に最適化するPartitioning algorithmを用いてもよい。或いは、非特許文献5で開示されているように、遺伝的アルゴリズムを用いることもできる。特に光音響信号が微弱な場合には、複数のセグメントを同時に最適化するPartitioning algorithmや、遺伝的アルゴリズムが有効である。

0031

S220の最適化処理が終了すると、図2に示したS230の処理に移る。S230では、光音響信号を用いて媒質の光学特性を測定する深さ(目標位置)までターゲット位置ziが到達したかを判定する。到達していない場合はS240に移る。

0032

図4に、ある深さziにあるターゲット位置において最適化された入射波面を媒質107に照射したときの、同ターゲット領域108における光音響信号の深さ方向(z方向)のプロファイルを表す。S220の最適化の効果により、通常の光照射に比べて光音響信号の強度は向上され、その信号強度はziでピークとなり、深さ方向に広がり(半値幅W)をもつ形状となる(深さに対して垂直な断面方向にも広がりをもつ)。従って、図4に示す光音響信号のプロファイルを、超音波トランスデューサ104で測定することができる。S240では、図4に示されるような、S220の最適化の効果によって得られた信号分布の半値幅Wを測定する。

0033

次にS250では、反復処理で波面最適化を行うための次のターゲット位置zi+1を決める。ここで、次のターゲット位置zi+1は、現在のターゲット位置ziにおいて最適化された波面(第1の波面)を有する光を媒質に照射した際に測定信号が向上する領域に基づいて変更する。具体的には、図4に示されるような、深さ方向に応じて変化する測定信号の値が閾値より大きい範囲内でターゲット位置(測定位置)を変更する。例えば、測定信号の最大値の半分の値より大きい範囲内でターゲット位置を変更する。本実施例では、図4に示されるように、測定される半値幅Wに基づいて次のターゲット位置をzi+1=zi+W/2のように設定する。このターゲット位置の変更は、超音波トランスデューサ104のフォーカス位置を変更すればよく、S250では更新されたターゲット位置zi+1に超音波トランスデューサ104のフォーカスが一致するように設定する。

0034

本発明において、S250のようにしてターゲット位置を更新し、これを反復することが大きな特徴である。S220の最適化処理によって、位置ziで光音響信号が最大になるように最適化されると、同位置を中心に光音響信号の強度が向上される領域が生成される。この領域の広がりは、超音波トランスデューサ104で設定される超音波フォーカス領域の特性や、成形された入射波面が、同ターゲット位置まで伝搬したときの散乱波面の相関や、存在し得る独立なモード(optical mode)の数などに影響される。つまり、媒質固有の特性と、超音波のフォーカス領域などの制御可能な特性の両方の影響で、光音響信号は、ある空間的な広がりを持って信号強度が向上される。本発明では、上記最適化処理によるこのような効果を利用する。

0035

S260では、S220で最適化によって得られた波面(位相分布)をSLM102にそのまま設定した状態でS220の最適化処理のステップに戻る。S220の最適化処理では、位置ziで最適化された波面が初期条件として既にSLM102に設定され、この波面を基準に波面の最適化を開始する。この位置ziで最適化された波面を媒質107に入射すれば、新しいターゲット位置zi+1で、前ステップで得られた信号強度の半分程度の信号強度が最適化処理の初期条件で得られる。この信号強度は、波面成形せずに光を媒質に入射させた場合に比べて強度が大きく向上している値である。従って、この信号強度を初期条件として用いることで、S220の最適化処理を効率よく実行することができる。例えば同様の効果は、非特許文献6にも開示されている。非特許文献6では、散乱媒質を透過した光がフォーカスするように最適化された入射波面に対し、散乱に相関がある範囲内(メモリ効果が現れる範囲内)で波面をシフトさせている。そのシフトさせた波面を最適化の初期値にして、再度最適化すれば、効率的に媒質の背後にフォーカススポットを生成できることが開示されている。

0036

本発明では、上記のような最適化の効率化に加えて、1ステップ前の深さで最適化された入射波面を利用することで、次のステップの深さにおけるターゲット信号(光音響信号)がノイズに埋もれてしまうことを避ける目的がある。さらに、上記の反復処理を行うことで、通常の光照射では信号が測定できないような媒質内部の深い位置からも、信号を測定し、波面の最適化処理を行い、局所的な光学特性を測定することが特徴である。このように本発明の目的は、媒質の光学特性を測定する深さ(侵達長)を深くすることである。従来では、散乱媒質中の深い位置にターゲットを設定し、同位置から発生する信号を測定しようとしても、散乱や吸収による信号の減衰を受けて、信号を測定することが非常に困難となり、従って同信号を用いて入射波面を最適化することもまた困難となる。

0037

S230でターゲット位置が、光学特性を測定する目的の深さに達した場合は、S270に移る。S270では、S220で最適化された入射波面を媒質に照射して、同ターゲット位置で光音響信号を測定することで、式(1)に基づく光学特性の測定を行う。S270で、同深さ断面の光音響信号を測定する場合、上述の深さ方向に対して反復して最適化した処理を、断面内の横方向に対して実行してもよい。例えば、ある深さにおいてS270の処理に移り、光音響信号を測定する場合、S220で最適化された入射波面を初期条件とし、光音響信号の取得位置(ターゲット位置)を横方向(深さに対して断面方向)にずらす。このずらしたターゲット位置で再度入射波面を最適化して、光音響信号を測定する。これを繰り返しながら同断面内で光音響信号を測定し、測定結果を画像化することも可能である。

0038

以上のように、本実施例では、まず、媒質の深さ方向における表面からの距離が比較的短い距離(第1の距離)にある測定位置(第1の測定位置)から発生する光音響信号の強度が高くなるように、第1の最適化処理を行って第1の波面を形成する。そして、測定位置と目標位置との距離が小さくなるように、測定位置を、媒質の深さ方向における表面からの距離が比較的長い距離(第1の距離よりも大きい第2の距離)にある測定位置(第2の測定位置)に変更する。さらに、媒質に第1の波面を有する光を照射させるとともに、該変更した測定位置(第2の測定位置)から発生する光音響信号の強度が高くなるように、第2の最適化処理を行って第1の波面を更新する(第2の波面)。以上を、第2の測定位置が目標位置に到達するまで反復処理する。すなわち、反復処理において、第2の測定位置を新たな第1の測定位置とし、第2の波面を新たな第1の波面として更新する。このように、本発明における処理ステップは、S200〜S260に示される目的の深さまで波面を成形する光フォーカスステップと、最適化された波面を用いて光学特性を測定する測定ステップ(或いはイメージングするステップ)とに大きく分類される。

0039

また、S270において、媒質内部の注目領域(光音響信号を測定したい領域)に限定してターゲット位置108を走査して光音響信号を測定し、注目領域の吸収係数分布を定量的にイメージングしてもよい。さらに、同イメージングにより生成された画像(吸収係数分布画像)をディスプレイなどの表示装置112に表示してもよい。ここで、制御装置105は、検出した光音響信号に基づいて画像を生成する生成手段としての機能を有し、表示装置112は、生成した画像を表示する表示手段としての機能を有する。また、散乱媒質107が生体組織であり、上記光音響イメージングが診断目的である場合には、例えばディスプレイには、他の診断結果や測定データと、本実施形態により得られた吸収係数分布画像とを重ね合わせて表示するも可能である。このとき、光音響イメージングを実施する注目領域は、上記診断結果に基づいて設定することも可能である。或いは、超音波トランスデューサ104を用いて、超音波を送信し、その反射信号エコーイメージ)から注目領域を設定してもよい。

0040

さらに、任意の複数の波長を用いて以上説明した測定及び処理を実行し、媒質内部の分光特性を測定してもよい。そして、その分光特性を用いて、例えば、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、水などの成分比率や、酸素飽和度などの代謝情報を求め、イメージングすることも可能である。このような媒質の代謝情報の分布を注目領域に対して3次元的に求め、その断層像を表示装置に表示してもよい。

0041

また、できるだけ高速に光音響信号を測定する深さへS230で到達するために、S220の最適化処理におけるS222において、必ずしも全てのセグメントについて処理を実行する必要はない。例えば、いくつかのセグメントに対して最適化の処理を実行する。その後、位置ziに対して次の深さ位置zi+1においても光音響信号がノイズに対して十分向上され、測定可能である場合には、最適化が未処理のセグメントがあってもS220の最適化処理を終了し、次のステップに移ってもよい。或いは、位置ziと、位置zi+1両方の位置で光音響信号を並列してモニタし、SLMの領域を2分割(若しくは2つのSLMを用いる)してもよい。このとき、一方で波面を最適化した結果を他方でモニタして最適化し、並列的に順次測定の深さを深くすることも可能である。

0042

また、深さ方向へ逐次最適化していく際、次の深さへのステップサイズを半値幅Wに基づいて決める代わりに、フォーカス領域を何らかの閾値を設定し、その閾値に基づいてステップサイズを決定することも可能である。

0043

(実施形態2)
本発明の第2の実施形態に係る散乱媒質の光学特性の測定方法及び装置を説明する。図5は、本実施形態における測定装置の例示的な構成を示す概略図である。媒質305は、生体組織を含む被検媒質であり、可視から近赤外の光に対して散乱媒質である。いま、媒質305から発生する蛍光信号を測定して、イメージングする装置において、本発明を適用した場合について説明する。

0044

光源300は、媒質305内部にある蛍光物質の特性などに応じて、波長やパルス幅などが調整された光を放射する。光源300から放射された光は、ビームスプリッタ301を透過し、SLM302へ照射される。SLM302は制御装置308によって制御され、後述する最適化処理に基づき、媒質305へ入射される波面を成形(位相変調)する。このSLM302および制御装置308により、後述のCCDの出力に基づいて、光の波面を制御する制御手段が構成される。SLM302を反射した波面成形された光は、ビームスプリッタ301を反射し、ダイクロイックミラー303を反射し、光学系304を介して媒質305へ照射される。

0045

散乱媒質305に入射した光は、光学系304で設定されたフォーカス領域近傍へと散乱されながら媒質305内部を伝搬する。媒質305内部には光源300から放射された光の波長によって励起され、蛍光を発する物質が含まれる。いま、光学系304でフォーカスされている領域へ集中的に光が照射され、同領域を中心に蛍光物質が励起され、蛍光信号が生成される。この蛍光信号を光学系304で収集し、ダイクロイックミラー303を通してノイズとなる励起波長の光は除去して蛍光信号を透過させる。さらに蛍光波長の信号を選択的に透過させるバンドパスフィルタ306によって、フィルタリングされた蛍光信号がCCD307に入射される。CCD307は、光が照射された媒質から発生する信号を検出(測定)する検出手段(測定手段)として機能する。ここで、CCD307の代わりに、CMOSセンサ、或いは、イメージインテンシファイアを有するエリアセンサ、或いはEMCCDも適用可能である。

0046

このような蛍光イメージング装置構成において、第1の実施形態で説明したのと同様に、光学系304のフォーカス位置で決まる局所位置(ターゲット位置)からの蛍光信号が向上するように、入射光の波面を成形する。CCD307で測定される蛍光信号をモニタしながら、制御装置308でSLM302を制御することで、媒質305に入射する光の波面を最適化することができる。さらに、本実施形態においても第1の実施形態と同様に、蛍光信号を測定するターゲット位置を徐々に深くし、同位置に応じて逐次的に入射波面を最適化する。この処理を実行することで、媒質の深い位置へ効率的に光をフォーカスさせて、蛍光信号を用いたイメージングを行う。本実施形態の処理フローは、図2及び図3で示した第1の実施形態のフローとほぼ同様に行う(図2及び図3で光音響信号と記載している箇所を蛍光信号に置き換えればよい)。従って、以下で図2及び図3を用いて処理フローを説明する。

0047

まず図2のS200に対応する最初のターゲット位置z0の設定は、光学系304のフォーカス位置を適切に調整し、蛍光信号がノイズに埋もれることなく十分測定可能な深さに設定する。S210で光源300をオンにし、蛍光信号の計測を開始したらS220の最適化処理に移る。S220の最適化の処理は図3で示す処理と同様に行うことができる。ここでも、図3で示した最適化のアルゴリズムの代わりに、前述したPartitioning algorithmや、遺伝的アルゴリズムを用いてもよい。このような最適化によって、ターゲット位置で蛍光信号の強度が最大になるような入射波面を生成することができる。

0048

本実施形態においても、最適化によって蛍光信号が向上した領域に応じて、次の深さ方向のターゲット位置zi+1を決め(S240〜S250)、位置ziで最適化された入射波面を次の位置zi+1での最適化の初期条件に設定する(S260)。

0049

図6は、最適化された入射波面を媒質305に入射したときに、CCD307で測定される蛍光信号の断面プロファイルを模式的に示した図である。図6プロット横軸は、媒質の深さz方向に垂直な横方向r(x−y方向)の位置を表し、縦軸は測定される蛍光信号の強度を表す。riはターゲット領域のx−y断面における中心位置で、深さはziとする。S220では同位置から発生する蛍光信号をターゲットに最適化が実行される。通常の光照射で得られる信号と比べて、測定される蛍光信号は最適化の結果大きく向上される。図6に示すように、蛍光信号の強度は、ターゲット位置を中心に空間的な広がりをもって向上する。この強度が向上する領域は、光学系304の開口数(NA)で決まるフォーカスのスポット径や、成形された入射波面が、位置riまで伝搬したときの散乱波面の相関によって決まる。

0050

ここで、本実施形態では光学系304のフォーカス位置ziに対応する断面の蛍光信号がCCD307で測定されるため、第1の実施形態の図4で示したような、深さ方向の蛍光信号の広がりが直接モニタされない。従って、図4のような深さ方向のプロファイルを得るために、光学系304のフォーカス位置ziを変えながら蛍光信号をモニタしてもよい。得られたプロファイルから、図4に示す分布の半値幅Wを直接測定(S240)して、次の深さzi+1を適切に設定(S250)してもよい。

0051

或いは、図6に示される横方向の蛍光信号のプロファイルから以下のように次の深さ位置zi+1を設定してもよい。一般的に、媒質内部における光の伝搬が深さz方向(前方方向)が支配的であるような領域(非拡散領域)においては、最適化によって強度向上した蛍光信号のプロファイルは、横方向rよりも深さz方向に伸びたプロファイルになる。さらに多重散乱の結果、光の伝搬がほぼ等方的と見なせるような領域(拡散領域)の場合、上記プロファイルはほぼ等方的に広がるとみなしてもよい。従って、何れの場合においても、蛍光信号の半値幅をWとすれば、次のターゲット位置の深さzi+1をzi+1=zi+W、或いは、少なくともzi+1=zi+W/2のようにして設定すれば、zi+1において最適化の結果による信号強度の向上が得られる。このように、次のターゲット位置zi+1を、媒質の深さ方向に対して垂直な面内における信号(蛍光信号)の強度分布から推定して設定してもよい。このように設定した深さzi+1に対し、深さziで最適化した波面を初期条件にして、再度最適化を繰り返す。

0052

このように、1ステップ前の深さziで最適化された入射波面を次ステップの深さにおける最適化に利用することで、ターゲットの蛍光信号がノイズに埋れることを防ぎ、且つ効率的に波面の最適化を収束させることができる。さらに、ターゲットの深さに応じて逐次入射波面を最適化して、効率的に深い位置に光をフォーカスさせて(光フォーカスステップ)、蛍光信号による媒質のイメージングを行う。例えば、ある目的の深さで蛍光イメージングを行いたい場合、同深さまでS220〜S260を繰り返す。このとき、途中の深さの蛍光信号を測定する必要がない場合は、S220の最適化を収束するまで実行する必要はない。次ステップの深さ位置において、信号強度が向上し、十分測定可能であれば、最適化を中断し、その時点で成形された波面を次の深さの初期条件に設定してもよい。それにより処理を高速化し、目的の深さへより早く到達して、蛍光イメージングを実行することができる。

0053

以上のように、本実施例では、まず、媒質の深さ方向における表面からの距離が比較的短い距離(第1の距離)にある測定位置(第1の測定位置)から発生する蛍光信号の強度が高くなるように第1の波面を形成する。そして、目標位置に近づくように、測定位置を、媒質の深さ方向における表面からの距離が比較的長い距離(第1の距離よりも大きい第2の距離)にある測定位置(第2の測定位置)に変更し、媒質に第1の波面を有する光を照射させるとともに、該変更した測定位置(第2の測定位置)から発生する蛍光信号の強度が高くなるように第1の波面を更新する(第2の波面)。以上を、第2の測定位置が目標位置に到達するまで反復処理することを特徴とする。

0054

また、上記のような媒質の深さ方向における反復の処理フローを、蛍光イメージングを実行する走査フローと同期して実行してもよい。例えば、図2に示す処理フローに従って、深さ方向に1次元の蛍光信号のプロファイルのデータを得る。次に、イメージングする位置を横方向にずらして(例えば、媒質305を保持しているステージを動かして)、同様に次の深さ方向のデータを得る。これを例えば、媒質305のある注目領域内に対して順次繰り返すことで、同領域における蛍光信号の3次元分布をイメージングすることができる。さらに、深さ方向や横方向の走査に対して、近傍領域で既に最適化して得られた波面を初期条件に利用して、新たな測定位置で効率よく最適化を実行してイメージングすることもできる。生成された画像は、ディスプレイなどの表示装置(図示せず)に表示してもよい。

0055

ここで、蛍光信号とは前述したTPFのように、非線形現象多光子励起により発光した信号も含む。また、蛍光信号によるイメージングだけに限らず、例えば、媒質に光を照射して、後述する実施例で説明するように超音波変調光信号を測定してイメージングする手法において、本発明を適用してもよい。また、媒質内部の第二次高調波(SHG)や第三次高調波THG)を測定してイメージングする手法において、本発明を適用してもよい。或いは、誘導ラマン散乱SRS)や、コヒーレント反ストークスラマン散乱CARS)などを含むラマン散乱に起因する信号のイメージングにおいて、本発明を適用してもよい。また、OCT(Optical Coherence Tomography)や、共焦点顕微鏡など、散乱媒質内部のある特定の深さから発生する信号を識別セクショニング)して測定・イメージングする場合においても本発明を適用することができる。このように本発明の測定信号は、例えば、光音響信号、蛍光信号、超音波変調光信号、高調波信号ラマン散乱信号OCT信号共焦点光学系により取得される光強度信号のうちいずれかの信号であってよい。

0056

(実施形態3)
本発明の第3の実施形態に係る散乱媒質の光学特性の測定方法及び装置を説明する。図7は、本実施形態における測定装置の例示的な構成を示す概略図である。媒質405は、生体組織を含む被検媒質であり、可視から近赤外の光に対して散乱媒質である。いま、媒質405に超音波を照射し、超音波で変調された光(超音波変調光)を発生させて光学特性を測定する装置において、本発明を適用した場合について説明する。

0057

光源400からは、コヒーレンス長が長く(例えば、1m以上)、数10〜数100μsのパルス光が出力される。また光源400から放出される光の波長は、前述したように、例えば媒質405を構成する要素である水、脂肪、タンパク質、酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、などの吸収スペクトルに応じた複数の波長を選択することができる。

0058

光源400から放出されたパルス光は、ビームスプリッタ401を透過し、SLM402へ照射される。SLM402は制御装置408によって制御され、後述する最適化処理に基づき、媒質405へ入射される波面を成形(位相変調)する。このSLM402および制御装置408により、後述の検出システムの出力に基づいて、光の波面を制御する制御手段が構成される。SLM402を反射した波面成形された光409は、ビームスプリッタ401を反射し、光学系403を介して媒質405へ入射される。

0059

一方、超音波トランスデューサ404によって、集束超音波パルス410が媒質405に照射され、超音波集束領域411が生成される。超音波トランスデューサ404の中心には、入射光409が通過するための開口があり、光と超音波が同軸で媒質405に照射される。ここで、照射する超音波は、例えば1〜数10MHzの範囲であり、制御装置408によって照射する超音波強度は適切に調整される。例えば、媒質405が生体組織の場合、超音波強度は照射可能な安全基準以下の強度内で調整される。また、超音波トランスデューサ404は、媒質405と音響的に整合されている。

0060

散乱媒質405に入射した光は、多重散乱されながら媒質405内部を伝搬し、多重散乱された光の一部は超音波集束領域411に到達する。超音波集束領域411では、媒質の屈折率が超音波によって変調され、さらに媒質中の散乱体(散乱粒子412)の変位印加された超音波の周波数faで誘起される。その超音波集束領域411に光が侵入すると、上記の屈折率変調と散乱体変位による光路長変化によって光は位相の変調効果を受け、超音波の周波数faに応じて周波数がシフトする。この超音波によって周波数がシフトした光(超音波変調光)が、超音波集束領域411から放射される。放射された超音波変調光は、再び媒質405内部を散乱されながら伝搬し、媒質405から射出される。

0061

ここで、超音波集束領域411を局在化させるために、制御装置408によって集束超音波パルス410と入射光409の照射のタイミングは適切に調整され、集束超音波パルスがターゲット位置411に達するタイミングで照射される。超音波のパルス幅は、超音波集束領域411のサイズ及び、媒質中の超音波の速度に応じて設定される。

0062

媒質405から放射された超音波変調光を検出システム407によって検出する。検出システム407は、光が照射された媒質から発生する信号を検出(測定)する検出手段(測定手段)として機能する。検出システム407は、単一センサと、ロックインアンプ(lock−in amplifier)、或いはバンドパスフィルタと組み合わせて周波数シフトした超音波変調光の光強度をモニタするシステムを用いることができる。ここで、単一センサとして、フォトダイオード(PD)、アバランシェフォトダイオードAPD)、光電子増倍管(PMT)などを使用することができる。或いは、CCDや、CMOS、EMCCD、若しくはCCDにイメージインテンシファイアを組み合わせた2次元センサアレイを用いてもよい。また、2次元センサアレイを用い、超音波トランスデューサ404のオン時とオフ時のそれぞれのスペックルコントラストから、超音波変調光の信号強度に関連する変調度の信号を測定するシステムを用いてもよい。

0063

入射光409の波面を成形するための最適化処理は、基本的には図2図3で示したフローと同様に行う。即ち、検出システム407で測定された超音波変調光信号に基づき、同信号が最大になるように制御装置408がSLM402を制御し、図3と同様にして、入射波面を成形する。最適化のターゲットである超音波変調光信号は、超音波集束領域411から発生する信号であるため、上記のようにして最適化された入射光は、集束超音波パルスが局在する位置(超音波集束領域411)にフォーカスされる。図2のS240〜S260で説明したように、光がフォーカスされる位置をziとし、位置ziを中心に広がるフォーカス領域から、次のターゲット位置zi+1を設定し、更新された位置で最適化を実施する。このとき、位置ziで最適化された入射波面を、次の位置zi+1における最適化の初期条件として設定し、最適化を反復させる。

0064

このとき、入射波面の最適化によって得られる光のフォーカス領域は、超音波トランスデューサ404で設定する超音波のフォーカスに関するパラメータで制御することができる。図8は、媒質405内部の集束超音波パルスの局在位置(ターゲット領域)を模式的に示した図である。いま、超音波パルスのパルス幅を適切に調整することによって、図8に示すように深さ方向(z方向)に伸びた超音波集束領域を生成することが可能である。超音波集束領域のz方向のサイズを、集束超音波パルスの半値幅Wで定義すれば、Wは超音波トランスデューサ404に印加する電気信号のパルス幅で自由に制御することできる。深さziは超音波パルスの中心位置で、いま、入射波面の最適化処理でターゲット領域420に光がフォーカスされているとする。このとき本実施形態において、図2のS240〜S250に対応する処理として、制御装置408で設定されたパルス幅Wに基づき、次の最適化のターゲット領域430の中心位置zi+1をzi+1=zi+W/2のように設定する。このように、媒質に超音波を照射することで、該媒質の内部に超音波が集束する超音波集束領域を形成させ、次のターゲット位置zi+1を、該超音波集束領域の深さ方向の大きさに基づいて設定する。このように更新されたターゲット位置zi+1に対し、位置ziで最適化された入射波面を、初期条件として設定して再び最適化を行う。上記のような処理を反復的に行うことで、光学特性を測定する目的の深さまで波面を逐次的に最適化していく。

0065

本実施形態における最大の特徴は、次のステップサイズΔzを比較的自由に制御できるところにある。超音波のパルス幅を大きくすれば、Δzを大きくすることができ、より効率的に目的の深さへフォーカスさせることが可能な入射波面を生成することができる。

0066

上記の処理によって、目的の深さまで到達すれば(図2のS230でYes)、同深さで超音波変調光を測定信号として、媒質内部の光学特性を測定する。前述したように、ターゲット領域を同一深さの断面内で横方向にスキャンしながら、超音波変調光を測定することで媒質405内部の局所的な光学特性をイメージングすることができる。このとき、横方向のスキャン時に、1ステップ隣で最適化した入射波面を、次の横方向の位置での入射波面の最適化の初期条件として設定してもよい。横方向に対しても深さ方向と同様に、逐次入射波面を最適化しながらイメージングを実行することができる。また、媒質内部でターゲット領域を空間的にスキャンさせながら超音波変調光を測定し、イメージングした結果をディスプレイなどの表示装置(図示せず)に表示してもよい。

0067

以上のように、本実施例では、まず、媒質の深さ方向における表面からの距離が比較的短い距離(第1の距離)にある測定位置(第1の測定位置)から発生する超音波変調光信号の強度が高くなるように第1の波面を形成する。そして、目標位置に近づくように、測定位置を、媒質の深さ方向における表面からの距離が比較的長い距離(第1の距離よりも大きい第2の距離)にある測定位置(第2の測定位置)に変更する。さらに、媒質に第1の波面を有する光を照射させるとともに、該変更した測定位置(第2の測定位置)から発生する超音波変調光信号の強度が高くなるように第1の波面を更新する(第2の波面)。以上を、第2の測定位置が目標位置に到達するまで反復処理することを特徴とする。

0068

またS230において、上記のような光フォーカスステップで目的の深さに到達した後に、光学特性を測定するための信号源を超音波変調光以外に変えて測定を実行してもよい。例えば、超音波変調光を最適化のターゲット信号として、ある深さまで上記光フォーカスステップを実行する。同深さに達したら、最適化された入射波面を利用して、蛍光信号を測定することも可能である。このとき、超音波変調光を用いた光フォーカスステップでは、蛍光物質を励起する波長の光に対して処理を実行する。また、S270の測定ステップにおいては、必要に応じて同じ波長で出力パワーの異なる蛍光イメージング用の光源に切り替えてもよい。このように、光フォーカスステップと測定ステップとで測定する信号を切り替えてもよい。また、測定ステップでは、超音波トランスデューサ404はオフの状態にする。さらに、測定ステップでは、測定する信号に応じて入射光の強度を変えたり、入射光を超短パルス光や、或いは強度が時間的に一定な連続光CW光:Continuous Wave光)に切り替えてもよい。また、測定ステップの測定信号としては、蛍光信号以外にも、SHG光や、ラマン散乱など様々な測定方法を光フォーカスステップと組み合わせて用いることが可能である。このように、目標位置から検出される信号は、該目標位置とは異なる測定位置から検出される信号と異なる信号であってよい。

0069

(実施形態4)
本発明の第4の実施形態に係る散乱媒質の光学特性の測定方法及び装置を説明する。図9は、本実施形態における測定装置の例示的な構成を示す概略図である。本実施形態は、第3の実施形態と同様に超音波変調光利用した測定装置に関するものである。

0070

光源500は、第3の実施形態と同様に、コヒーレンス長が比較的長く、数10〜数100μsのパルス光を放出し、波長は照射する媒質内部の測定したいコントラスト源(水、ヘモグロビンなど)の吸収スペクトルに応じた波長が選択される。光源500からコリメートされ放出された光は、半波長板501によって偏光方向を制御され、偏光ビームスプリッタ502を透過する。このとき、シャッター503は閉じ、シャッター504は開放されている。シャッター504を通過した光は、半波長板505と偏光ビームスプリッタ506を経て、信号光530と参照光531に分割される。

0071

信号光530は、ミラー507によって反射され、音響光学素子(AOM)508、及び509へ送られる。AOM508、509はそれぞれ個別の周波数で駆動され、その2つのAOMの周波数の和が超音波装置550により印加される超音波の周波数と等しくなるように調整される。例えば、超音波の周波数faが2MHzである場合、AOM508の周波数をf1=−70MHzに設定し、AOM509の周波数f2は、f1+f2=fa(=2MHz)となるようにf2=+72MHzに設定する。

0072

或いはAOMを用いて周波数を調整する別の手段として、この2つのAOMを信号光と参照光のそれぞれの光路に配置し、2つのAOMの周波数差が超音波の周波数faと等しくなるように調整してもよい。例えば、信号光の光路に配置されたAOMの周波数がf1(=70MHz)であり、且つ超音波の周波数がfa(=2MHz)である場合、参照光の光路に配置されたAOMの周波数f2は、f1+fa(=72MHz)としてもよい。

0073

AOMによって周波数が調整された信号光530は、ミラー510、ビームスプリッタ511、515を経て、光学系517によって、媒質570へ照射される。媒質570は、生体組織も含む散乱媒質である。

0074

一方、超音波装置550は、超音波トランスデューサを含み、媒質570と音響的に整合されていて、予め設定された媒質570内部の注目領域に超音波をフォーカスして照射する。形成される超音波集束領域(ターゲット)560のサイズは注目領域全体、或いはその一部になるように設定される。

0075

ここで、媒質570内部の注目領域とは、吸収や散乱などの光学特性の分布を測定・イメージングしたい領域を指す。この注目領域は、例えば本実施形態を医療分野へ適用する場合、X線MRI超音波エコー画像などの測定結果、或いは他の何らかの診断結果など、他のモダリティにより提供される事前情報を利用して、同注目領域を設定することも可能である。

0076

照射する超音波の周波数や、照射する強度は、制御装置(図示せず)で調整される。超音波装置550に含まれる超音波トランスデューサは、例えばリニアアレイ探触子から構成され、アレイ探触子を用いた電子フォーカスによって、媒質570内部の任意の位置に超音波集束領域560を生成する。トランスデューサとしては、圧電現象を用いたトランスデューサ、光の共振を用いたトランスデューサ、容量変化を用いたトランスデューサなどを用いることができる。また前述したように、縦方向超音波伝播方向)に小さな超音波集束領域560を実現するためにパルス超音波を照射する。超音波のパルス幅は、超音波集束領域560のサイズ及び、媒質中の超音波の速度に応じて設定され、ターゲット560にパルス超音波が到達するタイミングと同期させて、光源500からパルス光を照射する。なお、光源500はパルス光でなく、CW光を使用することも可能である。

0077

超音波集束領域560に入射した光は、前述したように、超音波による変調効果を受け、超音波の周波数に応じて周波数が±faシフト(1次成分)する。従って、f1+f2=faとなるように周波数が調整されて入射した信号光530に対して、−faシフトした変調光は参照光531と等しい周波数をもつ。超音波集束領域560から周波数シフトした超音波変調光が放射され、再び媒質570内部を散乱しながら伝播し、媒質外へ射出される。この超音波変調光のうちの一部540が、光が入射した側へ射出し、光学系517の開口を通過する。

0078

媒質570から射出され光学系517を透過した、±fa周波数がシフトした超音波変調光540、及び周波数シフトしていない散乱光(非超音波変調光)が、ビームスプリッタ515、511を介して、CCD514に導かれる。CCD514は、光が照射された媒質から発生する信号を検出(測定)する検出手段(測定手段)として機能する。一方、参照光531もCCDへ入射する。このとき参照光531の光路長を後述する干渉信号を測定するために適切に調整してもよい。

0079

超音波変調光(±fa周波数シフトした光)及び非超音波変調光を含む光と、参照光531とがCCD上で干渉し、干渉縞が形成される。この干渉縞のうち、周波数の異なる光によって形成されるもの(非超音波変調光と参照光531の干渉、或いは+faの超音波変調光と参照光531の干渉)は、そのビート周波数が超音波の周波数faと同じ、若しくはそれ以上の速度で振動する。通常、この周波数は非常に速く、干渉信号はCCDでは記録されない。一方、同一の周波数(−fa)の光により形成される超音波変調光540と参照光531の干渉信号(デジタルホログラム)は、CCD514で測定される。

0080

ここで、超音波変調光540と参照光531は互いに微小な角度(例えば〜1度)をもってCCD上で重ね合わせる(図示せず)ことで、オフアクシス(off−axis)デジタルホログラムを取得する。CCD514で取得されたオフアクシスデジタルホログラムは、信号処理ユニット(図示せず)によって、フーリエ変換され、空間的にハイパスフィルタが実行されて、超音波変調光540と参照光531の干渉項が抽出される。これを再度フーリエ変換することで超音波変調光540の振幅、位相を算出する。あるいは、オフアクシスデジタルホログラムを用いる代わりに、位相シフト法を用いて超音波変調光540の位相分布を算出することも可能である。CCD514でデジタルホログラムの信号が得られた時点で、超音波装置550による媒質570への超音波照射を止めてもよい。

0081

ここで、非周波数シフト光を排除し、周波数シフト光を効率的に回収してホログラムを形成するために、バンドパスフィルタを用いてもよい。例えば、ファブリペロ干渉計、又は低温冷却スペクトルホールバーニング結晶などを用いてもよい。

0082

CCD514によって得られた超音波変調光540の位相分布は、信号処理ユニットによってデジタル的に反転され、ピクセル単位でSLM516に設定される。SLM516は、制御装置580により制御され、媒質に照射する光の波面を形成する。このSLM516および制御装置580により、CCD514の出力に基づいて、光の波面を制御する制御手段が構成される。例えば、測定された位相分布がCCDの平面でφ(x、y)である場合、SLMに設定される反転位相は、−φ(x、y)となる。このとき、超音波変調光540が射出する媒質の射出面からCCD514まで、同じく媒質の射出面からSLM516までの光路長は等しくなるように設定される。また、CCD514とSLM516はピクセル単位で位相分布が一致するように調整、或いは補正されている。

0083

SLM516に位相が設定された後、シャッター504は閉じ、シャッター503が開放される。光源500から放射された光(再生光)532は、偏光ビームスプリッタ502を反射し、ミラー512、ビームスプリッタ513を介して、SLM516へ入射する。SLM516で設定された位相分布により、再生光532は波面成形されて、超音波変調光540の位相共役波に変換され、再生光541として媒質570へ照射される。

0084

位相共役波である再生光541は、散乱の時間可逆性に従い、デジタルホログラム記録(超音波変調光540測定)時の伝搬軌跡を逆方向に進み、ターゲット領域560へ再伝搬する。この位相共役光を用いた光照射によって、入射光のエネルギーを高効率に媒質570内部のターゲット領域560へ送ることが可能になる。ここで、デジタルホログラムの代わりに、フォトリフラクティブ結晶などのホログラフィック材料を用いたホログラム記録を実行してもよい。

0085

このような光照射による媒質内部の光フォーカスにおいて、超音波変調光の位相共役光で構成される再生光は、第3の実施形態において、超音波変調光をターゲットに最適化されたときの入射光と実質的に等価である。従って、ターゲット領域(超音波集束領域)560を中心に光をフォーカスさせる効果をもつ。本実施形態は、波面を成形する手段は、第3の実施形態と異なる(前者は反復的な最適化を用い、後者はホログラムによる波面測定から位相共役光を生成する)が、どちらの場合でも超音波変調光の信号強度を向上させることができる。従って、再生光を媒質に照射して以降は、本実施形態においても、第3の実施形態で説明したような処理フローと同様のフローを適用することで、光学測定を行う深さ(侵達長)を向上させることが可能である。

0086

以下で、本実施形態の処理フローについて、図10を用いて説明する。まず、S600において、初期条件としての超音波集束領域560(ターゲット位置z0)を設定する。このとき、このターゲット位置z0の深さ(光の入射位置を基準としたときの、媒質表面からの深さ)は、超音波変調光信号が十分測定できるほどの深さとする。測定を何回か実行して、信号強度が十分測定できる適切な深さを探してもよい。

0087

S610において光源500と、超音波装置550をオンにし、超音波変調光の波面計測(ホログラム記録)を開始する。S620において、上記説明したように、超音波変調光540と参照光531を干渉させて、CCD514でデジタルホログラムを取得する。引き続きS630では、このデジタルホログラムに基づき算出された超音波変調光の位相分布を算出し、その位相共役波の位相分布をSLM516に設定した後、再生光として位相共役光を発生させて媒質570に入射させる。

0088

S640では、ターゲット位置が光学特性を測定する目的の深さまで到達したかを判定する。到達していない場合はS650に移る。

0089

S650では、第3の実施形態で説明した処理と同様の処理を実施する。即ち、現在のターゲット領域の深さziに対して、次のターゲット領域の深さzi+1を設定し、超音波装置550を制御して深さzi+1の位置に超音波集束領域を生成する。このとき図8に示したように、超音波のパルス幅は適宜制御され、超音波パルスの半値幅Wに基づき次のターゲット位置zi+1を設定することができる。この新たに設定されたターゲット位置zi+1に対して、S660では、位置ziにおけるホログラムの記録から得られた位相共役波面をSLM516にそのまま設定された状態にし、S620の波面計測に戻る。S620では、新たなターゲット位置zi+1から発生する超音波変調光のホログラムを記録する。このとき、1ステップ前(位置zi)での位相共役波面を現ステップの波面計測における入射光として用いることで、通常の入射光(例えば平面波)による照射と比べて、位置zi+1の超音波集束領域560から発生する超音波変調光の信号強度が高くなる。従って、この信号強度が向上された効果を利用して、ターゲット位置zi+1から発生する超音波変調光によるホログラムを記録する。このようなS620〜S660までの処理を反復的に実行(光フォーカスステップ)することで、測定を行う目的の深さまで波面を逐次的に成形する。このように本実施形態においても、適切に設定された超音波集束領域560の広がりによる信号の向上効果を利用し、逐次的に入射波面を成形して、媒質の深い位置へ効率的に光をフォーカスさせて光学特性を測定する。

0090

S640において、光フォーカスステップが終了し、目的の深さに達したら(図10のS640でYes)、同深さで超音波変調光を測定信号として媒質の光学特性を測定する(測定ステップ)。前述したように、超音波集束領域560を深さ方向や、同深さ断面内で横方向にスキャンしながら、超音波変調光を測定することで、その領域の光学特性をイメージングすることができる。媒質内部で超音波集束領域560を空間的にスキャンさせながら超音波変調光を測定し画像化した結果をディスプレイなどの表示装置(図示せず)に表示してもよい。

0091

以上のように、本実施例では、まず、媒質の深さ方向における表面からの距離が比較的短い距離(第1の距離)にある測定位置から発生する超音波変調光信号の強度が高くなるように第1の波面を形成する。そして、目標位置に近づくように、測定位置を、媒質の深さ方向における表面からの距離が比較的長い距離(第1の距離よりも大きい第2の距離)にある測定位置(第2の測定位置)に変更し、媒質に第1の波面を有する光を照射させるとともに、該変更した測定位置(第2の測定位置)から発生する超音波変調光信号の強度が高くなるように第1の波面を更新する(第2の波面)。以上を、第2の測定位置が目標位置に到達するまで反復処理することを特徴とする。

0092

また、前述したように、S640で光フォーカスステップが終了した後に、イメージングの信号源を超音波変調光以外に変えてイメージングを実行してもよい。或いは、超音波変調光以外の信号源を用いたイメージングと、超音波変調光を用いたイメージングを組合わせるなどして、複数の異なる信号源を重ね合わせて媒質内部の光学特性をイメージングしてもよい。

0093

このように本発明は、媒質へ入射させる光の波面を適切に(最適化、或いは位相共役波を用いて)成形して媒質に入力することで、媒質内部の局所領域(ターゲット領域)への光のフォーカスを実現する。その光フォーカスの効果の結果、同局所領域から発生する信号(光音響信号、蛍光信号、超音波変調信号など)強度は向上する。このとき、同局所位置で深さ方向への信号向上領域の広がりを利用して次の光フォーカス領域を設定し、これを反復的に繰り返しながら、入射光波面を逐次成形する。この光フォーカスステップにより、散乱媒質の比較的深い位置に効率的に光を送り込むことが特徴であり、この処理を前段の処理とし、後段の測定ステップで、様々な測定・イメージング方法を前段の処理と組み合わせる。これにより、媒質内部の光学特性の測定・イメージングの侵達長を向上させることが本発明の特徴である。

0094

本発明によれば、散乱媒質内部の光学特性の測定において、散乱媒質の比較的深い位置まで測定することが可能になる。

0095

(実施形態5)
本発明の第5の実施形態に係る測定装置について説明する。図11は、本実施形態の装置構成を模式的に示した図である。本発明の測定装置としての、ゲート撮像装置700は、光源部710、カメラ部720、制御・処理部730、表示部740から構成され、例えば、遠距離の被写体を監視するカメラなどに適用できる。ゲート撮像装置700は、大気中の散乱体780越しに、被写体790を撮像する。ここで、散乱体780は、霧や、煙、スモッグ、或いは大きさがマイクロメーターサイズ土壌粉塵などの大気中に浮遊する微粒子である。或いは、や雨、または大気中の温度分布ムラによる屈折率のゆらぎなども考えられる。このような条件下において、ゲート撮像装置は、パルス光を被写体に照射し、このパルス光が被写体で反射して戻ってきた瞬間だけカメラのシャッターを開けて撮像するため、比較的散乱光を低減して被写体を撮像することができる。

0096

光源部710は、主にレーザー光源711とSLM713から構成される。レーザー光源711は、一般的にアイセーフレーザー(eye−safe laser)と呼ばれる、波長が1.4〜1.8μm帯域短波赤外、SWIR:Short−wavelength infrared)の赤外光のパルス光を放出する。例えば、波長が1.5μmの波長で、パルス幅が1〜数10nsecである。ただし、撮像条件によっては、上記以外の波長帯域、及びパルス幅であってもよい。また、パルスの繰り返し周波数は、一例として、数Hz〜数100kHzの範囲で任意に選択できるが、一般的には高速である方が望ましい。

0097

レーザー光源711からは、コリメートされたパルス光ビームが放射され、ミラー712を反射してSLM713に入射する。また、パルス光のビームサイズは、SLM713の有効領域に収まるように設定されている。SLM713は、例えば、LCOSや、Digital Mirror Device(DMD)を用いることができる。或いは、SLM713として透過型液晶を用いた構成であってもよい。なお、SLM713が偏光依存性のあるデバイスの場合、SLM713に入射する光の偏光は、SLM713で位相変調が動作する偏光方向と一致するように調整されている。SLM713に入射した光は、後述する処理によって位相変調される。SLM713から反射した光は、光学系714を通して所望のビームサイズや照射方向に調整して光源部710から射出される。ここで、必要に応じて、ガルバノミラーを用いてパルス光ビームを走査してもよい。また、パルス光ビーム760の出力強度は、被写体(人などの生物か、無生物か)や、被写体までのおおよその距離等の条件に応じて任意に調整することができる。例えば、出力は1パルスあたり数10〜数100mJの範囲である。

0098

パルス光ビーム760は、大気中の散乱体780を通過する際に、散乱の影響を受け、散乱光761を発生させながら、被写体790まで伝搬する。さらに、被写体790で反射した光は、再び散乱体780を通って伝搬し、同様に散乱光771を伴いながら、カメラ720まで伝搬する。ここで、被写体790は、例えば100m〜数10kmの比較的遠方に存在するものを対象とする。本実施形態では、照射するパルス光を赤外のSWIR帯域の光とすることで、可視光よりも散乱を抑えられ、且つ被写体790が人物の場合、安全基準上、可視光に比べて強い出力で被写体を照明することが可能である。以上の点は、SWIR帯域のビームを用いる利点となる。

0099

カメラ720は、波長1.5μmの光を十分透過するカメラレンズと、同波長に感度があるアレイセンサからなる。カメラレンズの焦点距離は、被写体790までの距離に応じて適宜選択することが可能である。上述したように、被写体790が遠方にあるような場合は、例えば焦点距離1000mm以上の望遠レンズを用いる。アレイセンサとしては、上記波長帯域に感度をもつInGaAsセンサを用いることができる。また、カメラのシャッター時間(ゲート時間)は、例えば、数10nsec〜数μsecの範囲で選択できる。

0100

カメラ720で撮像した画像データは、制御・処理部730に転送される。制御・処理部730は、後述する測定フローに従って、光源部710や、カメラ720を制御する。また、後述の波面成形処理を実行し、最適化処理で波面成形されたビーム760で被写体790を照射し、ゲート撮像した画像を取得する。撮像画像は、表示部740に表示される。また、表示部740は、測定フローの途中で撮像した画像や、波面成形処理の経過結果を表示してもよい。

0101

図12は、本実施形態におけるゲート撮像装置700の例示的な測定フローである。まず、S810で、パルス光ビーム760を被写体790に照射し、ゲート撮像画像を取得する。いま、ゲート撮像における遅延時間τ[sec]を設定すると、撮像装置700から撮像距離L=τc/2[m]から反射した光を撮像することになる。ここで、cは大気中の光速である。撮像距離Lに被写体790が存在しない場合、被写体790に関連する有意な信号を観測することができない。例えば、撮像距離Lに、大気中の散乱体780以外にパルス光ビームを反射させる物が存在しない場合は、撮像画像には散乱によるフレアを除いて何も映らない。或いは、撮影距離Lに、撮像したい被写体790以外の別の反射物体が存在する場合には、被写体790以外の物体が撮像される。従って、S810では、撮像したい被写体790の撮像距離が、別途何らかの手段で事前にわかっている場合には、その撮像距離Lに相当する遅延時間τを設定してゲート撮像を実行する。このとき、被写体790の像、或いはその像の一部について、最も信号強度が大きく、或いは高コントラストに観察される遅延時間を、遅延時間τの前後で微少調整してもよい。或いは、被写体790が事前に明確でない場合は、遅延時間τを徐々に変えながらゲート撮像し、撮像画像中に何らかの有意な信号が確認できた時点で、それを被写体790に関連する観測信号として、以降のフローを実行してもよい。本発明においては、まずS810のゲート撮像において、被写体790に関連する観測信号(反射光)を取得することが必要である。この観測信号は、大気中の散乱や屈折率のゆらぎによって、被写体790の像が歪められたものであってもよいし、歪められた像の一部であってもよい。図13は、本実施形態における測定結果をシミュレーションした図である。図13(a)は、収差(散乱による劣化)のない理想的な被写体790の像を示す。また図13(b)は、S810におけるゲート撮像の結果取得した像を示す。散乱によって図13(a)の像が歪められている。このように、S810では、被写体像790の一部の観測信号を取得する。ここで、観測信号として設定する条件として、画像の輝度値がある閾値以上である、或いは特徴的な形状が確認できるなどでもよい。撮像画像に対してエッジ処理フィルタ処理を行って、特徴的な形状を抽出してもよい。または、予め様々な散乱条件下で撮像した人工物、人物などの画像を学習し、その特徴量を参考に観測信号を判断することも可能である。

0102

次に、S820において、波面成形処理S830を実行するための最適化の目的関数を設定する。S810において、被写体790に関連する観測信号を取得しているので、これを利用する。例えば、S810で得た観測信号(図13(b))に対して、ある閾値を設定して2値化処理を実行し、これによって抽出した領域全体をターゲット領域とする(図13(c))。ここで、閾値は、撮像画像の輝度値のヒストグラムを参考に決定してもよい。また、ターゲット領域が極端に小さくならない範囲で、できるだけ閾値は大きく設定した方がよい。2値化処理によって、S810の観測信号に付随して取得された、散乱光などのノイズ成分を除去することができる。ゲート撮像した画像で、このターゲット領域にある画素の輝度値の平均値、或いは総和を目的関数として設定することができる。或いは、ターゲット領域のうち、任意の1画素以上の部分領域を設定し、その部分領域について、上述のように輝度値の和を目的関数としてもよい。部分領域の設定は、撮影者が任意に、注目する領域として設定してもよい。ここで、2値化処理によって、ターゲット領域が撮像画像中で複数の領域に分かれていても、上記のように目的関数を決めてもよい。或いは、分割した領域をそれぞれ別々のターゲット領域とし、最適化の目的関数を個別に設定して、それぞれ独立にS830の波面成形の処理を実行することも可能である。また、目的関数の設定として、ターゲット領域を設定した後に、撮像画像中のターゲット領域とその周辺近傍領域の輝度値で算出する画像のコントラスト値を目的関数としてもよい。このように、S820において、S810で測定した被写体起因の観測信号に基づいて、最適化の目的関数に用いる信号(輝度値の和、或いはコントラスト値)を設定する。このように、ゲート撮像画像に対して、最適化によって波面成形を実行する場合には、目的関数の位置や領域を明確に定義しておく必要がある。この目的関数の設定は、S810の結果を踏まえて、撮影者が決めてもよいし、制御・処理部730が自動で判断して実行してもよい。また、被写体790について、何らかの事前情報がある場合には、その情報に基づいてターゲット領域、及び目的関数を設定してもよい。

0103

次のS830では、S820で設定した目的関数の値が最大になるように、被写体790に照射するパルス光ビームの波面を成形(最適化)する。この最適化処理では、パルス光ビーム760の波面を成形して被写体790に照射し、ゲート撮像して目的関数の値を評価する。この波面成形、ビーム照射、ゲート撮像、目的関数の評価を反復し、目的関数の値が向上するように波面を最適化する。反復は、予め設定した反復回数、或いは、所望の目的関数の値に至るまで実行する。S830の波面成形処理は、第一の実施形態で説明した図3と同様に行う。図3では、ターゲット領域の光音響信号をモニタし、同信号が最大になる位相を設定している。これに対し、本実施形態では、S820で設定した目的関数の値が最大になるように位相を設定すればよい。ゲート撮像画像から被写体790に起因する信号領域(ターゲット領域)を特定し、同領域に基づいて最適化の目的関数を設定し、波面成形することが特徴である。

0104

次にS840において、S830で最適化されたパルス光ビーム760を被写体790に照射し、ゲート撮像することで撮像画像を取得する(図13(d))。S830の処理によって、被写体790をより効果的に照射し、カメラ720でより高SNに被写体像を撮像することができる。

0105

さらに、図14に示すように、S840の実行後、S830で得られた波面761を用い、被写体790におけるターゲット領域791に対して、パルス光ビームの照射角度を水平方向にスキャンしながらゲート撮像を実行する。ここで、水平方向とは、被写体を含む大気(媒質)の、ゲート撮像装置700から見て奥行き方向(深さ方向;Z)に対して垂直な面内での水平方向(横方向;X)とする。これにより、広範囲(広画角)において撮像画像を取得することができる。撮像する領域の範囲(目標位置・範囲)は予め決めていてもよいし、撮像画像から決定してもよい。スキャン量795は、例えばSLM713にスキャン量に応じた線形位相シフト量を、S830で得られた位相分布に足し合わせてスキャンしてもよい。或いは、別途走査光学系があって、それを用いてスキャンを行ってもよい。ここで、このスキャンは、散乱の相関が保持される範囲で実行する。入射角度を変えても散乱に相関がある範囲では、S830による波面成形の効果が保持される。この効果を利用して、ターゲット領域の近傍をイメージングすることも可能である。スキャンの範囲は、入射角度を変えて撮像した結果から、S820で設定した目的関数をモニタすることで範囲を決めてもよい。例えば、目的関数がS830の処理の初期値より大きい範囲であればよい。

0106

さらに、上述のようにスキャンを実行した結果、撮像画像中の被写体790の像の輝度値が低下した場合、再度波面成形処理を実行する。例えば、目的関数の閾値を決め、閾値以下にならない範囲で、スキャン範囲を最大に設定する。この範囲を超えてさらにスキャンする場合、前回S830で成形された波面を初期値に、再度S830の波面成形処理を実行する。このとき、被写体790を再度設定し直し、目的関数も再設定してもよい(S820)。このように再度波面成形処理を行って、S840のゲート撮像を行う。このように、波面成形処理とゲート撮像を反復させながら、より広い画角を高SNにゲート撮像することが可能である。このとき、波面成形処理は、散乱の相関を利用し、前回の波面成形処理による効果を保ちながら実行することで、高速に効率的にスキャン後の最適な入射波面を取得することができる。上記目的関数の閾値は、例えば、S830で得られた値の半分の値、或いは30%の値に設定する。
なお、スキャンは被写体790に対して、上述の深さ方向(Z)に対して垂直な面内における垂直方向(縦方向;Y)であってもよい。最終的に、各撮像画角で撮像した画像をつなげて表示部140に表示してもよい。

0107

以上のように、本実施例では、まず、ある撮像画角における被写体までの距離(第1の距離)にある第1の測定位置における被写体の輝度信号の強度(目的関数)が高くなるように、第1の最適化処理を行って第1の波面を形成する。そして、目標位置(撮像する画角範囲)に近づくように、パルス光ビームの照射角度を制御することで測定位置を変更し(第2の測定位置)、媒質に第1の波面を有する光を照射させるとともに、該変更した測定位置(第2の測定位置)から発生する被写体の輝度信号の強度が高くなるように、第2の最適化処理行って第1の波面を更新する(第2の波面)。以上を、第2の測定位置が目標位置に到達するまで反復処理することを特徴とする。

0108

以上、本発明に係る実施形態を例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明が上述の実施形態に限定されないことを理解すべきである。添付の特許請求の範囲の範囲は、そのような変形並びに同等の構造及び機能をすべて含むように最も広い意味での解釈とみなされるべきである。

0109

また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。

0110

従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するための手順が記述されたコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。

0111

その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコードインタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体不揮発性半導体メモリでもよい。

0112

また、プログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバに本発明を形成するコンピュータプログラムを記憶し、接続のあったクライアントコンピュータがコンピュータプログラムをダウンロードしてプログラムするような方法も考えられる。

0113

本発明は、診断などの医療用途に用いられる画像を提供する装置に好適に利用できる。

0114

102SLM
104超音波トランスデューサ
105 制御装置

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