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技術 量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体

出願人 セイコーエプソン株式会社
発明者 橋幸弘
出願日 2016年7月8日 (4年4ヶ月経過) 出願番号 2016-136128
公開日 2018年1月11日 (2年10ヶ月経過) 公開番号 2018-006703
状態 特許登録済
技術分野 メーザ 発信器の安定化、同期、周波数シンセサイザ
主要キーワード 電子線溶接 横断面形 外部環境温度 リジット配線基板 量子干渉装置 アルカリ金属ガス 固体熱伝導 量子メモリ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (9)

課題

良好な周波数特性を発揮させることができる量子干渉装置および原子発振器を提供すること、また、かかる量子干渉装置を備える電子機器および移動体を提供すること。

解決手段

アルカリ金属封入されている原子セル、前記アルカリ金属を励起する光を出射する光源、および、前記原子セルおよび前記光源を加熱するヒーターを含む原子セルモジュールと、前記原子セルモジュールを収納しているパッケージと、前記光源が設定温度となるように前記ヒーターの駆動を制御する制御部と、を備え、前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の熱抵抗をR[℃/W]とし、前記設定温度をTv[℃]とし、前記設定温度よりも低い値に設定される使用環境温度の上限値をTout[℃]とし、前記光源の発熱量をQv[W]としたとき、R≦(Tv−Tout)/Qvなる関係を満足することを特徴とする量子干渉装置。

概要

背景

長期的に高精度な発振特性を有する発振器として、ルビジウムセシウム等のアルカリ金属原子エネルギー遷移に基づいて発振する原子発振器が知られている。一般に、原子発振器の動作原理は、光およびマイクロ波による二重共鳴現象を利用した方式と、波長の異なる2種類の光による量子干渉効果(CPT:Coherent Population Trapping)を利用した方式とに大別される。このうち、特に、CPTを利用した方式の原子発振器は、小型化および低消費電力化が容易であることから、近年、様々な機器への搭載が期待されている。

例えば、特許文献1に係る原子発振器は、光源原子セルヒーター等を含んで量子干渉効果を生じさせるユニット部と、ユニット部を収納するパッケージと、パッケージ内でユニット部をパッケージに対して支持する支持部材と、を備える。この原子発振器では、支持部材を介したユニット部からパッケージへの熱の伝達を抑制することで、省電力化を図っている。

概要

良好な周波数特性を発揮させることができる量子干渉装置および原子発振器を提供すること、また、かかる量子干渉装置を備える電子機器および移動体を提供すること。アルカリ金属が封入されている原子セル、前記アルカリ金属を励起する光を出射する光源、および、前記原子セルおよび前記光源を加熱するヒーターを含む原子セルモジュールと、前記原子セルモジュールを収納しているパッケージと、前記光源が設定温度となるように前記ヒーターの駆動を制御する制御部と、を備え、前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の熱抵抗をR[℃/W]とし、前記設定温度をTv[℃]とし、前記設定温度よりも低い値に設定される使用環境温度の上限値をTout[℃]とし、前記光源の発熱量をQv[W]としたとき、R≦(Tv−Tout)/Qvなる関係を満足することを特徴とする量子干渉装置。

目的

本発明の目的は、良好な周波数特性を発揮させることができる量子干渉装置および原子発振器を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

アルカリ金属封入されている原子セル、前記アルカリ金属を励起する光を出射する光源、および、前記原子セルおよび前記光源を加熱するヒーターを含む原子セルモジュールと、前記原子セルモジュールを収納しているパッケージと、前記光源が設定温度となるように前記ヒーターの駆動を制御する制御部と、を備え、前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の熱抵抗をR[℃/W]とし、前記設定温度をTv[℃]とし、前記設定温度よりも低い値に設定される使用環境温度の上限値をTout[℃]とし、前記光源の発熱量をQv[W]としたとき、R≦(Tv−Tout)/Qvなる関係を満足することを特徴とする量子干渉装置

請求項2

前記原子セルモジュールは、前記原子セルと前記パッケージとの間に配置されている支持部材と、前記光源と前記パッケージとを電気的に接続している配線を含む可撓性の配線基板と、を有し、前記支持部材の熱抵抗は、前記配線基板の熱抵抗よりも小さい請求項1に記載の量子干渉装置。

請求項3

前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の固体熱伝導による熱抵抗をR1[℃/W]とし、前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の輻射による熱抵抗をR2[℃/W]としたとき、R1/R2は、0.5以上2.0以下である請求項1または2に記載の量子干渉装置。

請求項4

前記R1が前記R2よりも小さい請求項3に記載の量子干渉装置。

請求項5

前記R1が前記R2よりも大きい請求項3に記載の量子干渉装置。

請求項6

前記原子セルモジュールは、前記光源と前記パッケージとを電気的に接続している第1配線を含む可撓性の第1配線基板と、前記光を検出する光検出部と、前記光検出部と前記パッケージとを電気的に接続している第2配線を含む可撓性の第2配線基板と、を有し、前記第1配線の熱抵抗が前記第2配線の熱抵抗よりも小さい請求項1ないし5のいずれか1項に記載の量子干渉装置。

請求項7

前記Rが3000[℃/W]以上である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の量子干渉装置。

請求項8

前記パッケージ内の圧力が1Pa以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の量子干渉装置。

請求項9

アルカリ金属が封入されている原子セル、前記アルカリ金属を励起する光を出射する光源、および、前記原子セルおよび前記光源を加熱するヒーターを含む原子セルモジュールと、前記原子セルモジュールを収納しているパッケージと、前記光源が設定温度となるように前記ヒーターの駆動を制御する制御部と、を備え、前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の熱抵抗をR[℃/W]とし、前記設定温度をTv[℃]とし、前記設定温度よりも低い値に設定される使用環境温度の上限値をTout[℃]とし、前記光源の発熱量をQv[W]としたとき、R≦(Tv−Tout)/Qvなる関係を満足することを特徴とする原子発振器

請求項10

請求項1ないし8のいずれか1項に記載の量子干渉装置を備えることを特徴とする電子機器

請求項11

請求項1ないし8のいずれか1項に記載の量子干渉装置を備えることを特徴とする移動体

技術分野

0001

本発明は、量子干渉装置原子発振器電子機器および移動体に関するものである。

背景技術

0002

長期的に高精度な発振特性を有する発振器として、ルビジウムセシウム等のアルカリ金属原子エネルギー遷移に基づいて発振する原子発振器が知られている。一般に、原子発振器の動作原理は、光およびマイクロ波による二重共鳴現象を利用した方式と、波長の異なる2種類の光による量子干渉効果(CPT:Coherent Population Trapping)を利用した方式とに大別される。このうち、特に、CPTを利用した方式の原子発振器は、小型化および低消費電力化が容易であることから、近年、様々な機器への搭載が期待されている。

0003

例えば、特許文献1に係る原子発振器は、光源原子セルヒーター等を含んで量子干渉効果を生じさせるユニット部と、ユニット部を収納するパッケージと、パッケージ内でユニット部をパッケージに対して支持する支持部材と、を備える。この原子発振器では、支持部材を介したユニット部からパッケージへの熱の伝達を抑制することで、省電力化を図っている。

先行技術

0004

特開2014−157987号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかし、従来、特許文献1に係る原子発振器のように可能な限り断熱性を高めたパッケージ構造を単に採用すると、外部環境温度が高くなったときに、周波数安定度が低下するという問題があった。CPTを利用した方式の原子発振器では、一般に、光源としてVcsel(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)が用いられるが、かかる問題が生じるのは、光源自体発熱により光源の温度が上昇してしまい、それに伴って、光源の波長が変動するからである。

0006

本発明の目的は、良好な周波数特性を発揮させることができる量子干渉装置および原子発振器を提供すること、また、かかる量子干渉装置を備える電子機器および移動体を提供することにある。

課題を解決するための手段

0007

上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の量子干渉装置は、アルカリ金属が封入されている原子セル、前記アルカリ金属を励起する光を出射する光源、および、前記原子セルおよび前記光源を加熱するヒーターを含む原子セルモジュールと、
前記原子セルモジュールを収納しているパッケージと、
前記光源が設定温度となるように前記ヒーターの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の熱抵抗をR[℃/W]とし、前記設定温度をTv[℃]とし、前記設定温度よりも低い値に設定される使用環境温度の上限値をTout[℃]とし、前記光源の発熱量をQv[W]としたとき、
R≦(Tv−Tout)/Qv
なる関係を満足することを特徴とする。

0008

このような量子干渉装置によれば、使用環境温度(パッケージの外部の温度)が光源の設定温度近く高温となっても、光源の発熱による熱をパッケージへ逃して、光源の温度上昇に伴う波長変動を低減し、その結果、良好な周波数特性を発揮させることができる。

0009

本発明の量子干渉装置では、前記原子セルモジュールは、
前記原子セルと前記パッケージとの間に配置されている支持部材と、
前記光源と前記パッケージとを電気的に接続している配線を含む可撓性の配線基板と、を有し、
前記支持部材の熱抵抗は、前記配線基板の熱抵抗よりも小さいことが好ましい。

0010

支持部材は配線基板に比べて光源に対して対称的に配置しやすい。そのため、支持部材の熱抵抗を配線基板の熱抵抗よりも小さくすることで、支持部材の熱抵抗が配線基板の熱抵抗よりも大きい場合に比べて、光源の発熱による熱をパッケージへ均一に逃すことができる。その結果、量子干渉装置の特性劣化を的確に低減することができる。

0011

本発明の量子干渉装置では、前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の固体熱伝導による熱抵抗をR1[℃/W]とし、前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の輻射による熱抵抗をR2[℃/W]としたとき、
R1/R2は、0.5以上2.0以下であることが好ましい。
これにより、原子セルモジュール内の温度分布の均一化を図ることができる。

0012

本発明の量子干渉装置では、前記R1が前記R2よりも小さいことが好ましい。
これにより、光源の発熱による熱をパッケージへ容易かつ適度に逃すことができる。

0013

本発明の量子干渉装置では、前記R1が前記R2よりも大きいことが好ましい。
これにより、例えば、原子セルの一部の温度を低くすることにより、当該一部に液体状または固体のアルカリ金属を意図的に溜めることができる。

0014

本発明の量子干渉装置では、前記原子セルモジュールは、
前記光源と前記パッケージとを電気的に接続している第1配線を含む可撓性の第1配線基板と、
前記光を検出する光検出部と、
前記光検出部と前記パッケージとを電気的に接続している第2配線を含む可撓性の第2配線基板と、を有し、
前記第1配線の熱抵抗が前記第2配線の熱抵抗よりも小さいことが好ましい。
これにより、光源の発熱による熱をパッケージへ容易かつ適度に逃すことができる。

0015

本発明の量子干渉装置では、前記Rが3000[℃/W]以上であることが好ましい。
これにより、消費電力を極めて小さくする(例えば100mW以下とする)ことができる。

0016

本発明の量子干渉装置では、前記パッケージ内の圧力が1Pa以下であることが好ましい。

0017

これにより、原子セルモジュールとパッケージとの間の対流による熱伝導を実質的に無くし、消費電力を効果的に低減できるとともに、原子セルモジュールとパッケージとの間の対流による熱抵抗を関係式の計算上無視することができる。

0018

本発明の原子発振器は、アルカリ金属が封入されている原子セル、前記アルカリ金属を励起する光を出射する光源、および、前記原子セルおよび前記光源を加熱するヒーターを含む原子セルモジュールと、
前記原子セルモジュールを収納しているパッケージと、
前記光源が設定温度となるように前記ヒーターの駆動を制御する制御部と、を備え、
前記原子セルモジュールと前記パッケージとの間の熱抵抗をR[℃/W]とし、前記設定温度をTv[℃]とし、前記設定温度よりも低い値に設定される使用環境温度の上限値をTout[℃]とし、前記光源の発熱量をQv[W]としたとき、
R≦(Tv−Tout)/Qv
なる関係を満足することを特徴とする。

0019

このような原子発振器によれば、使用環境温度(パッケージの外部の温度)が光源の設定温度近くの高温となっても、光源の発熱による熱をパッケージへ逃して、光源の温度上昇に伴う波長変動を低減し、その結果、良好な周波数特性を発揮させることができる。

0020

本発明の電子機器は、本発明の量子干渉装置を備えることを特徴とする。
このような電子機器によれば、良好な周波数特性を有する量子干渉装置を備えるため、優れた信頼性を発揮させることができる。

0021

本発明の移動体は、本発明の量子干渉装置を備えることを特徴とする。
このような移動体によれば、良好な周波数特性を有する量子干渉装置を備えるため、優れた信頼性を発揮させることができる。

図面の簡単な説明

0022

本発明の第1実施形態に係る原子発振器(量子干渉装置)を示す概略図である。
図1に示す原子発振器が備えるパッケージ部を示す断面図である。
図2に示す原子セルモジュールを説明する図である。
図3に示す第1配線基板を平面状に展開した状態を示す図である。
図3に示す第2配線基板を平面状に展開した状態を示す図である。
本発明の第2実施形態に係る原子発振器(量子干渉装置)における原子セルモジュールを説明する図である。
GPS衛星を利用した測位ステムに本発明の原子発振器を用いた場合の概略構成を示す図である。
本発明の移動体の一例を示す図である。

実施例

0023

以下、本発明の量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。

0024

1.原子発振器(量子干渉装置)
まず、本発明の量子干渉装置の一種である原子発振器について説明する。なお、以下では、本発明の量子干渉装置を原子発振器に適用した例を説明するが、本発明の量子干渉装置は、これに限定されず、原子発振器の他、例えば、磁気センサー量子メモリー等にも適用可能である。

0025

<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る原子発振器(量子干渉装置)を示す概略図である。

0026

図1に示す原子発振器1は、アルカリ金属原子に対して特定の異なる波長の2つの共鳴光を同時に照射したときに当該2つの共鳴光がアルカリ金属に吸収されずに透過する現象が生じる量子干渉効果(CPT:Coherent Population Trapping)を利用した原子発振器である。なお、この量子干渉効果による現象は、電磁誘起透明化EIT:Electromagnetically Induced Transparency)現象とも言う。

0027

この原子発振器1は、図1に示すように、量子干渉効果を生じさせるパッケージ部10と、パッケージ部10を制御する制御部6と、を有する。ここで、パッケージ部10は、原子セル21と、光源22と、光学部品231、232(光学系23)と、光検出部24と、ヒーター25と、温度センサー26と、コイル27と、を有する。また、制御部6は、光源制御部61と、温度制御部62と、磁場制御部63と、を有する。まず、以下、原子発振器1の概略を説明する。

0028

この原子発振器1では、光源22が光LL光軸aに沿って光学部品231、232を介して原子セル21に照射し、原子セル21を透過した光LLを光検出部24が検出する。

0029

原子セル21は光透過性を有し、原子セル21内には、アルカリ金属(金属原子)が封入されている。アルカリ金属は、互いに異なる2つの基底準位励起準位とからなる3準位系エネルギー準位を有する。また、原子セル21内のアルカリ金属は、ヒーター25により加熱され、ガス状態となっている。また、原子セル21内のアルカリ金属は、コイル27から所望の方向の磁場が印加され、ゼーマン分裂している。

0030

光源22から出射された光LLは、周波数の異なる2種の光を含んでいる。これら2種の光は、周波数差が原子セル21内のアルカリ金属の2つの基底準位間エネルギー差に相当する周波数に一致する共鳴光対となったとき、EIT現象を生じさせる。

0031

光源制御部61は、光検出部24の検出結果に基づいて、EIT現象を生じさせるように、前述した光源22から出射される光LLに含まれる2種の光の周波数を制御する。また、光源制御部61は、光検出部24の検出結果に応じて、発振周波数が制御される電圧制御型水晶発振器(図示せず)を備えている。そして、この電圧制御型水晶発振器(VCXO)の出力信号は、原子発振器1のクロック信号として出力される。

0032

また、温度制御部62は、温度センサー26の検出結果に基づいて、光源22が設定温度となるようにヒーター25の駆動を制御する。これに伴って、原子セル21内も所望温度に制御される。また、磁場制御部63は、コイル27が発生する磁場が一定となるように、コイル27への通電を制御する。

0033

このような制御部6は、光源制御部61、温度制御部62および磁場制御部63のそれぞれが熱の影響を避け、より正常な差動を確保するために、パッケージ部10の外部に設けられているのが好ましく、例えば、図示しないが、パッケージ部10が実装される基板上に実装されたICチップに設けられている。なお、制御部6がパッケージ部10に設けられていてもよい。
以上、原子発振器1の概略を説明した。以下、パッケージ部10について詳述する。

0034

図2は、図1に示す原子発振器が備えるパッケージ部を示す断面図である。図3は、図2に示す原子セルモジュールを説明する図である。図4は、図3に示す第1配線基板を平面状に展開した状態を示す図である。図5は、図3に示す第2配線基板を平面状に展開した状態を示す図である。なお、以下では、説明の便宜上、図2および図3中の上側を「上」、下側を「下」という。

0035

図2および図3に示すように、原子発振器1が備えるパッケージ部10は、原子セルモジュール20と、原子セルモジュール20を収納しているパッケージ3と、を備えている。ここで、原子セルモジュール20は、原子セルユニット2と、原子セルユニット2をパッケージ3に対して支持する支持部材5と、原子セルユニット2とパッケージ3との電気的接続を行う配線部4と、を備えている。なお、パッケージ3の外側には、必要に応じて、磁気シールドが設けられていてもよい。また、図2および図3では、説明の便宜上、コイル27の図示を省略している。以下、パッケージ部10の各部を順次説明する。

0036

〈原子セルユニット〉
原子セルユニット2は、原子セル21と、光源22と、光学系23と、光検出部24と、ヒーター25と、温度センサー26と、基板28と、接続部材29と、カバー部材30と、を含み、これらがユニット化されている。具体的には、基板28の上面(一方の面)上に、光源22、ヒーター25、温度センサー26および接続部材29が搭載されており、原子セル21、光学系23および光検出部24が接続部材29に保持されている。また、カバー部材30が接続部材29の外表面に固定されている。

0037

[原子セル]
図2および図3に示すように、原子セル21は、柱状の貫通孔214を有する胴体部211と、その貫通孔214の両側の開口を封鎖する1対の光透過部212、213と、を有する。これにより、ガス状のルビジウム、セシウム、ナトリウム等のアルカリ金属が封入される内部空間Sが形成されている。なお、内部空間Sには、必要に応じて、アルゴンネオン等の希ガス窒素等の不活性ガス緩衝ガスとしてアルカリ金属ガスとともに封入されていてもよい。なお、貫通孔214の横断面(光軸aに対して垂直な方向での断面)、すなわち、内部空間Sの横断面形状は、特に限定されず、例えば、円形楕円形四角形等の多角形等が挙げられる。

0038

原子セル21の各光透過部212、213は、光源22からの光LLに対する透過性を有している。一方の光透過部212は、原子セル21内へ入射する光LLが透過する「入射側光透過部」であり、他方の光透過部213は、原子セル21内から出射した光LLが透過する「出射側光透過部」である。

0039

光透過部212、213を構成する材料としては、前述したような光LLに対する透過性を有していれば、特に限定されないが、例えば、ガラス材料水晶等が挙げられる。また、胴体部211を構成する材料は、特に限定されず、シリコン材料セラミックス材料金属材料樹脂材料等であってもよく、光透過部212、213と同様にガラス材料、水晶等であってもよい。

0040

そして、各光透過部212、213は、胴体部211に対して気密的に接合されている。これにより、原子セル21の内部空間Sを気密空間とすることができる。原子セル21の胴体部211と光透過部212、213との接合方法としては、これらの構成材料に応じて決められるものであり、特に限定されないが、例えば、接着剤による接合方法、直接接合法陽極接合法等を用いることができる。

0041

以上説明したような原子セル21の周囲には、図2および図3において図示しないが、図1に示すコイル27が設けられている。より具体的には、コイル27は、例えば、ソレノイド型を構成するように原子セル21の外周に沿って巻回して設けられたコイルで構成されているか、または、ヘルムホルツ型を構成するように原子セル21を介して対向して設けられた1対のコイルで構成されている。このコイル27は、原子セル21内のアルカリ金属に磁場を印加する機能を有する。これにより、ゼーマン分裂により、原子セル21内のアルカリ金属原子の縮退している異なる複数のエネルギー準位間のギャップを拡げて、分解能を向上させることができる。その結果、原子発振器1の発振周波数の精度を高めることができる。

0042

なお、コイル27が発生する磁場は、直流磁場または交流磁場のいずれかの磁場であってもよいし、直流磁場と交流磁場とを重畳させた磁場であってもよい。また、コイル27は、パッケージ3内に設けられていてもよいし、パッケージの外部に設けられていてもよい。

0043

[光源]
光源22は、原子セル21中のアルカリ金属原子を励起する光LLを出射する機能を有する。この光源22としては、前述したような共鳴光対を含む光LLを出射し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)等の半導体レーザー等の発光素子を用いることが好ましい。

0044

[光学系]
光学系23は、前述した光源22と原子セル21との間における光LLの光路上に設けられている光学部品231、232を有する。本実施形態では、光源22側から原子セル21側へ、光学部品231、光学部品232がこの順に配置されている。

0045

光学部品231は、減光フィルターNDフィルター)である。これにより、原子セル21に入射する光LLの強度を調整(減少)させることができる。そのため、光源22の出力が大きい場合でも、原子セル21に入射する光LLを所望の光量とすることができる。

0046

光学部品232は、1/4波長板である。これにより、光源22からの光LLを直線偏光から円偏光右円偏光または左円偏光)に変換することができる。円偏光をした光LLを用いることにより、所望のEIT現象を発現する原子数を増大させ、所望のEIT信号の強度を大きくすることができる。その結果、原子発振器1の発振特性を向上させることができる。

0047

また、本実施形態では、光源22と原子セル21との間には、波長板および減光フィルターの他に、レンズ偏光板等の他の光学部品が配置されていてもよい。また、光源22からの励起光の強度によっては、光学部品231を省略することができる。また、光学部品231、232の並び順は、前述した順に限定されず、任意である。

0048

[光検出部]
光検出部24は、原子セル21内を透過した光LLの強度を検出する機能を有する。この光検出部24としては、上述したような光LLを検出し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、太陽電池フォトダイオード等の光検出器受光素子)を用いることができる。

0049

[ヒーター]
ヒーター25は、通電により発熱する発熱抵抗体(加熱部)を有する。このヒーター25は、基板28上に設けられている。そして、ヒーター25からの熱は、基板28および接続部材29を介して、原子セル21に伝達される。これにより、原子セル21(より具体的には原子セル21中のアルカリ金属)が加熱され、原子セル21中のアルカリ金属を所望の濃度のガス状に維持することができる。また、ヒーター25からの熱は、基板28を介して光源22にも伝達される。これにより、光源22の温度制御を高精度に行うことができる。

0050

また、ヒーター25は、原子セル21に対して離間している。これにより、ヒーター25への通電により生じた不要磁場が原子セル21内の金属原子に悪影響を与えるのを抑制することができる。

0051

なお、ヒーター25の設置位置は、原子セル21および光源22を加熱することができれば、前述した位置に限定されず、任意である。また、ヒーター25は、設置位置の異なる複数の発熱抵抗体で構成されていてもよい。

0052

[温度センサー]
温度センサー26は、光源22、ヒーター25または原子セル21の温度を検出するものである。この温度センサー26としては、特に限定されず、サーミスタ熱電対等の公知の各種温度センサーを用いることができる。そして、この温度センサー26の検出結果に基づいて、前述したヒーター25の発熱量が制御される。これにより、原子セル21内のアルカリ金属原子を所望の温度に維持することができる。

0053

この温度センサー26は、基板28上に設けられている。したがって、温度センサー26は、基板28を介して光源22またはヒーター25の温度を検出することとなる。あるいは、温度センサー26は、基板28および接続部材29を介して原子セル21の温度を検出することとなる。なお、温度センサー26の設置位置は、これに限定されず、例えば、接続部材29上であってもよいし、ヒーター25上であってもよいし、原子セル21の外表面上であってもよい。

0054

[接続部材]
図2に示すように、接続部材29は、原子セル21を挟んで設けられた1対の接続部材291、292で構成されている。接続部材291、292は、それぞれ、光LLの通過領域を避けるように形成されている。また、接続部材291、292は、光透過部212、213のそれぞれに対して、接触しているか、または、熱伝導性に優れた接着剤を介して接合されている。なお、接続部材291、292の形状は、少なくとも原子セル21、光源22および光検出部24の相対的な位置関係を固定し得るものであれば、図示のものに限定されない。また、接続部材291、292が一体化してもよいし、接続部材291、292がそれぞれ複数の部材で構成されていてもよい。

0055

このように、接続部材29は、それぞれ、ヒーター25と各光透過部212、213とを熱的に接続している。これにより、ヒーター25からの熱を接続部材291、292による熱伝導により各光透過部212、213に伝達し、各光透過部212、213を加熱することができる。また、ヒーター25と原子セル21とを離間することができる。そのため、ヒーター25への通電により生じた不要磁場が原子セル21内のアルカリ金属原子に悪影響を与えるのを抑制することができる。また、ヒーター25の数を少なくすることができるため、例えば、ヒーター25への通電のための配線の数を少なくし、その結果、原子発振器1の小型化を図ることができる。なお、ここで、「熱的に接続」とは、2つの部材がこれらの間において5%以下の損失で固体熱伝導可能な状態を言い、当該2つの部材が接触している場合だけでなく、当該2つの間に他の部材が介在している場合も含む。

0056

このような接続部材29の構成材料としては、熱伝導性に優れた材料、例えば、金属材料を用いることが好ましい。また、コイル27からの磁場を阻害しないよう、接続部材29の構成材料としては、非磁性の材料を用いることが好ましい。

0057

[カバー部材]
カバー部材30は、板状またはシート状の1対のカバー部材305、306で構成されている。カバー部材305、306は、前述した1対の接続部材291、292から露出した原子セル21や光源22等の側方を覆うように設けられ、接続部材291、292に接着剤等により接合されている。

0058

カバー部材305、306は、それぞれ、波長4μmの電磁波(すなわち遠赤外線)に対する反射率が50%以上である。これにより、原子セル21や光源22とパッケージ3との間の輻射による熱の伝達を抑制することができる。このようなカバー部材305、306の構成材料としては、例えば、非磁性の金属材料が挙げられる。

0059

[基板]
図2および図3に示すように、基板28は、前述した光源22、ヒーター25、温度センサー26および接続部材29等を支持する機能を有する。

0060

また、基板28は、ヒーター25と接続部材29とを熱的に接続しており、ヒーター25からの熱を接続部材29へ伝達する機能を有する。これにより、ヒーター25が接続部材29に対して離間していても、ヒーター25からの熱を接続部材29へ伝達することができる。また、光源22が基板28に搭載されていることにより、基板28を介してヒーター25からの熱を光源22に伝達することができ、光源22の温度制御を高精度に行うことができる。

0061

また、基板28は、光源22、ヒーター25、温度センサー26に電気的に接続される配線(図示せず)を有している。この配線は、基体31の上面に設けられた複数の内部端子(図示せず)に電気的に接続されている。

0062

このような基板28の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、セラミックス材料、金属材料等が挙げられ、これらのうちの1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、基板28を金属材料で構成した場合、基板28の表面には、基板28が有する配線の短絡防止等の目的で、必要に応じて、例えば、樹脂材料、金属酸化物金属窒化物等で構成された絶縁層が設けられていてもよい。

0063

また、後述するパッケージ3と同様、コイル27からの磁場を阻害しないよう、基板28の構成材料としては、非磁性の材料を用いることが好ましい。

0064

なお、基板28は、接続部材29の形状、ヒーター25の設置位置等によっては、省略することができる。この場合、ヒーター25を接続部材29に接触させる位置に設置すればよい。

0065

〈パッケージ〉
図2および図3に示すように、パッケージ3は、原子セルモジュール20(すなわち原子セルユニット2、配線部4および支持部材5を含む構造体)を収納する機能を有する。なお、パッケージ3内には、前述した部品以外の部品が収納されていてもよい。

0066

このパッケージ3は、板状の基体31(ベース部)と、有底筒状蓋体32(蓋部)と、を備え、蓋体32の開口が基体31により封鎖されている。これにより、原子セルモジュール20を収納する内部空間S1が形成されている。ここで、蓋体32は、原子セルモジュール20に対して離間している。これにより、原子セルユニット2とパッケージ3との間の熱干渉を低減することができる。

0067

基体31は、支持部材5を介して原子セルユニット2を支持している。また、基体31は、リジット配線基板を構成しており、基体31の下面には、複数の端子34が設けられている。この複数の端子34は、図示しない配線を介して、基体31の上面に設けられた複数の内部端子(図示せず)に電気的に接続されている。

0068

この基体31の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、樹脂材料、セラミックス材料等を用いることができるが、セラミック材料を用いることが好ましい。これにより、リジット配線基板を構成する基体31を実現しながら、内部空間S1の気密性を優れたものとすることができる。

0069

このような基体31には、蓋体32が接合されている。基体31と蓋体32との接合方法としては、特に限定されないが、例えば、ろう接シーム溶接エネルギー線溶接レーザー溶接電子線溶接等)等を用いることができる。本実施形態では、蓋体32は、シームリング低融点ガラス、接着剤等の接合部材33を介して基体31に接合されている。

0070

また、基体31と蓋体32とは気密的に接合されている。すなわち、内部空間S1は、気密空間であり、大気圧よりも減圧されている。特に、本実施形態では、内部空間S1は、真空(1Pa以下)である。これにより、内部空間S1における対流によって、原子セルユニット2、特に光源22の温度が変化することを低減することができる。また、ヒーター25の消費電力を小さくすることができる。

0071

このような蓋体32の構成材料としては、特に限定されず、例えば、樹脂材料、セラミックス材料、金属材料等を用いることができる。

0072

なお、以上説明したようなパッケージ3の内壁面上には、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の輻射を低減するために金属膜が適宜設けられていてもよい。かかる金属膜の構成材料としては、例えば、銅(熱の反射率97.93%)、銀(熱の反射率98.47%)、金(熱の反射率98.62%)、チタン(熱の反射率78.04%)、クロム(熱の反射率93.77%)、鉄(熱の反射率87.09%)、コバルト(熱の反射率87.75%)、ニッケル(熱の反射率92.38%)、アルミニウム(熱の反射率99.03%)、イリジウム(熱の反射率98.73%)、鉛(熱の反射率98.90%)等の金属またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金が挙げられる。

0073

〈支持部材〉
支持部材5は、パッケージ3内に収納されており、パッケージ3の基体31に対して原子セルユニット2を支持する機能を有する。また、支持部材5は、原子セルユニット2とパッケージ3との間の熱の伝達を抑制する機能を有する。これにより、原子セルユニット2の各部、特に原子セル21や光源22と、パッケージ3との熱伝達を低減し、原子セル21や光源22とパッケージ3の外部との間の熱干渉を抑制することができる。そのため、原子セル21や光源22等の温度制御を高精度に行うことができる。

0074

この支持部材5は、図2に示すように、基体31の上面側に立設された複数の脚部51と、複数の脚部51の上端部同士を連結している板状の連結部52と、を有し、連結部52の上面が基板28に接続されている。図示の連結部52の上面には、凹部53や貫通孔(図示せず)が形成されている。これにより、連結部52と基板28との接触面積を低減するとともに支持部材5の熱抵抗を高めている。

0075

このように構成された支持部材5では、支持部材5を介した原子セルユニット2から基体31への熱の伝達経路を長くすることができる。そのため、原子セルユニット2、特に原子セル21や光源22とパッケージ3との間の熱の伝達をより低減することができる。

0076

また、支持部材5の構成材料としては、熱伝導性が比較的低く、かつ、支持部材5が原子セルユニット2を支持する剛性を確保し得る材料であれば、特に限定されないが、例えば、樹脂材料、セラミックス材料等の非金属を用いることが好ましく、樹脂材料を用いることがより好ましい。支持部材5を主として樹脂材料で構成した場合、支持部材5の熱抵抗を高くすることができ、また、支持部材5の形状が複雑であっても、例えば射出成型等の公知の方法を用いて、支持部材5を容易に製造することができる。特に、支持部材5を主として樹脂材料で構成した場合、熱抵抗が大きい発泡体で構成された支持部材5を容易に形成することができる。また、支持部材5の構成材料としては、コイル27からの磁場を阻害しないよう、非磁性の材料を用いることが好ましい。

0077

このように、支持部材5は、原子セルユニット2とパッケージ3との間に配置されており、原子セル21および光源22を一括してパッケージ3の基体31に対して支持している。このため、原子セル21および光源22とパッケージ3との間の熱伝達を低減することができる。ここで、支持部材5の光源22側からパッケージ3側への熱伝導率は、0.1W・m−1・K−1以上40.0W・m−1・K−1以下であることが好ましく、0.1W・m−1・K−1以上0.5W・m−1・K−1以下であることがより好ましい。これにより、原子セル21および光源22とパッケージ3との間の支持部材5を介した熱伝導を抑制することができ、原子セル21および光源22の温度が変化することを低減することができる。

0078

〈配線部〉
図3に示すように、配線部4は、基板28と基体31とを電気的に接続している配線基板41と、光検出部24と基体31とを電気的に接続している配線基板42と、を有している。

0079

配線基板41、42は、それぞれ、フレキシブル配線基板FPC)で構成されている。具体的に説明すると、図4に示すように、配線基板41は、ベースフィルム411と、ベースフィルム411上に設けられている複数の配線412と、を有している。同様に、図5に示すように、配線基板42は、ベースフィルム421と、ベースフィルム421上に設けられている複数の配線422と、を有している。なお、図示しないが、配線基板41、42には、配線412、422を適宜覆う絶縁性カバーフィルムが設けられている。また、配線基板41、42の層間には、接着層が設けられていてもよい。

0080

ベースフィルム411、421は、それぞれ、シート状をなす絶縁性のフィルムである。ベースフィルム411、421の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、例えば、ポリイミド樹脂のような樹脂材料を用いることができる。

0081

このようなベースフィルム411、421上には、複数の配線412、422が配置されている。各配線412の一端部には、基体31に電気的に接続される複数の端子414が設けられ、各配線412の他端部には、基板28に電気的に接続される端子413が設けられている。そして、複数の配線412は、パッケージ3と温度センサー26、光源22およびヒーター25とを電気的に接続している。また、各配線422の一端部には、基体31に電気的に接続される複数の端子424が設けられ、各配線422の他端部には、光検出部24に電気的に接続される端子423が設けられている。そして、複数の配線422は、パッケージ3と光検出部24とを電気的に接続している。

0082

図示では、各配線412、422は、直線状に延びている形状をなしている。なお、配線412、422の熱抵抗を高める観点から、配線412、422が蛇行した形状をなす部分を有していてもよい。

0083

ここで、各配線422の長さは、各配線412の長さよりも長い。また、本実施形態では、各配線412の幅W1は、各配線422の幅W2よりも広い。このようなことから、各配線412の熱抵抗は、各配線422の熱抵抗よりも小さい。なお、後述する関係式1を満足できれば、配線412、422の幅W1、W2は、前述したものに限定されず、例えば、互いに等しくてもよい。また、配線412、422の厚さは、互いに等しくても異なっていてもよい。

0084

このような配線412、422の構成材料としては、それぞれ、特に限定されないが、金属材料を用いることが好ましく、具体的には、例えば、金、プラチナ、銅またはこれらの合金を用いることが好ましい。

0085

(原子セルモジュールとパッケージとの間の熱抵抗)
以上説明したような構成を有するパッケージ部10では、前述したように、パッケージ3内の内部空間S1を真空とするとともに、優れた断熱性を有する支持部材5を用いることで、低消費電力化を図っている。その上で、パッケージ部10では、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の熱抵抗(熱抵抗値)を最適化することで、比較的高温の使用環境温度下においても、良好な周波数安定度を発揮させることができる。以下、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の熱抵抗について詳述する。

0086

前述したように、量子干渉装置の一種である原子発振器1は、アルカリ金属が封入されている原子セル21、アルカリ金属を励起する光LLを出射する光源22、および、原子セル21および光源22を加熱するヒーター25を含む原子セルモジュール20と、原子セルモジュール20を収納しているパッケージ3と、光源22が設定温度となるようにヒーター25の駆動を制御する「制御部」である温度制御部62と、を備える。

0087

このような原子発振器1では、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の熱抵抗を大きくするほど、原子発振器1の消費電力を低減することができる。しかし、かかる熱抵抗を単に大きくしすぎると、外部環境温度が高くなったときに、光源22自体の発熱による熱を外部に逃すことができず、光源22の温度が上昇してしまい、それに伴って、光源22からの光LLの波長が変動してしまう。その結果、周波数安定度が低下するという問題が生じる。

0088

そこで、原子発振器1では、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の熱抵抗をR[℃/W]とし、温度制御部62における光源22の設定温度をTv[℃]とし、温度制御部62における光源22の設定温度よりも低い値に設定される使用環境温度の上限値をTout[℃]とし、光源22の発熱量をQv[W]としたとき、
R≦(Tv−Tout)/Qv
なる関係(以下、単に「関係式1」ともいう)を満足する。

0089

このような原子発振器1によれば、使用環境温度(パッケージ3の外部の温度)が光源22の設定温度近くの高温となっても、光源22の発熱による熱をパッケージ3へ逃して、光源22の温度上昇に伴う波長変動を低減し、その結果、良好な周波数特性を発揮させることができる。

0090

なお、「使用環境温度の上限値Tout」は、温度制御部62における光源22の設定温度よりも低い値であればよいが、低消費電力化との両立の観点から、当該設定温度との差が5℃以上20℃以下であることが好ましく、10℃以上15℃以下であることがより好ましい。また、具体的な「環境使用温度の上限値Tout」は、光源22に用いる発光素子の仕様に伴う温度制御部62における光源22の設定温度や実製品上の要求との関係から、40℃以上60℃以下であることが好ましい。また、発熱量Qvは、光源22の低消費電力化や小型化の観点から、1mW以上5mW以下であることが好ましい。

0091

ここで、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の熱抵抗R[℃/W]は、固体熱伝導による熱抵抗R1[℃/W]、輻射による熱抵抗R2[℃/W]、および、対流による熱抵抗R3[℃/W]からなり、
(1/R)=(1/R1)+(1/R2)+(1/R3)
なる関係(以下、単に「関係式2」ともいう)を満たす。すなわち、
R=(R1×R2×R3)/{(R1×R2)+(R2×R3)+(R1×R3)}
である。

0092

原子セルモジュール20とパッケージ3との間の固体熱伝導による熱抵抗R1は、支持部材5での固体熱伝導による熱抵抗R11、および、配線部4での固体熱伝導による熱抵抗R12からなる。すなわち、(1/R1)=(1/R11)+(1/R12)であり、
R1=R11×R12/(R11+R12)である。

0093

また、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の輻射による熱抵抗R2は、主に、原子セルユニット2の表面での輻射による熱抵抗からなる。また、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の対流による熱抵抗R3は、パッケージ3内の気体を介した熱伝導による熱抵抗である。

0094

ここで、パッケージ3内の圧力は、1Pa以下であることが好ましい。これにより、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の対流による熱伝導を実質的に無くし(言い換えると、熱抵抗R3を熱抵抗R1、R2に比べて極めて大きくし)、消費電力を効果的に低減できるとともに、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の対流による熱抵抗R3を前述の関係式の計算上無視することができる。

0095

また、前述したように、原子セルモジュール20は、原子セル21とパッケージ3との間に配置されている支持部材5と、光源22とパッケージ3とを電気的に接続している配線412(第1配線)を含む可撓性の配線基板41(第1配線基板)と、光LLを検出する光検出部24と、光検出部24とパッケージ3とを電気的に接続している配線422(第2配線)を含む可撓性の配線基板42(第2配線基板)と、を有する。そして、配線412の熱抵抗が配線422の熱抵抗よりも小さい。これにより、光源22の発熱による熱をパッケージ3へ容易かつ適度に逃すことができる。また、支持部材5の熱抵抗は、配線基板41の熱抵抗よりも小さいことが好ましい。支持部材5は配線基板41に比べて光源22に対して対称的に配置しやすい。そのため、支持部材5の熱抵抗を配線基板41の熱抵抗よりも小さくすることで、支持部材5の熱抵抗が配線基板41の熱抵抗よりも大きい場合に比べて、光源22の発熱による熱をパッケージ3へ均一に逃すことができる。その結果、原子発振器1の特性劣化を的確に低減することができる。

0096

また、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の固体熱伝導による熱抵抗をR1[℃/W]とし、原子セルモジュール20とパッケージ3との間の輻射による熱抵抗をR2[℃/W]としたとき、R1/R2は、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.8以上1.5以下であることがより好ましい。これにより、原子セルモジュール20内の温度分布の均一化を図ることができる。

0097

ここで、熱抵抗R1が熱抵抗R2よりも小さい場合、光源22の発熱による熱をパッケージ3へ容易かつ適度に逃すことができる。一方、熱抵抗R1が熱抵抗R2よりも大きい場合、例えば、原子セル21の一部の温度を低くすることにより、当該一部に液体状または固体状のアルカリ金属を意図的に溜めることができる。これにより、原子セル21の液体状または固体状のアルカリ金属による特性変動を低減することができる。

0098

また、熱抵抗Rは、前述した関係式1を満足すればよいが、3000[℃/W]以上であることが好ましく、4000[℃/W]以上であることがより好ましい。これにより、消費電力を極めて小さくする(例えば100mW以下とする)ことができる。すなわち、低消費電力化を図りつつ高温下での良好な周波数特性を発揮させることができる原子発振器1を実現することができる。

0099

このような熱抵抗Rを満足する上では、熱抵抗R1が4000[℃/W]以上9000[℃/W]以下であり、かつ、熱抵抗R2が5000[℃/W]以上11000[℃/W]以下であることが好ましい。これにより、原子セルモジュール20内の温度分布の均一化を図ることができる。以下、前述した関係式1を満足する具体例を一例として挙げる。

0100

(具体例1)
例えば、設定温度Tvを60[℃]、上限値Toutを45[℃]、光源22の発熱量Qvを3[mW]としたとき、前述した関係式1の右辺は、5000[℃/W]となる。一方、固体熱伝導による熱抵抗R1を8200[℃/W]、輻射による熱抵抗R2を10000[℃/W]としたとき、前述した関係式2から、熱抵抗R(関係式1の左辺)は、4500[℃/W]となり、前述した関係式1を満足する。

0101

(具体例2)
前述した具体例1において、上限値Toutを50[℃]とした場合、前述した関係式1の右辺は、3333[℃/W]となる。一方、固体熱伝導による熱抵抗R1を5000[℃/W]、輻射による熱抵抗R2を10000[℃/W]としたとき、前述した関係式2から、熱抵抗R(関係式1の左辺)は、3333[℃/W]となり、前述した関係式1を満足する。

0102

(具体例3)
前述した具体例1において、上限値Toutを50[℃]とした場合、前述した関係式1の右辺は、3333[℃/W]となる。一方、固体熱伝導による熱抵抗R1を8200[℃/W]、輻射による熱抵抗R2を5600[℃/W]としたとき、前述した関係式2から、熱抵抗R(関係式1の左辺)は、3328[℃/W]となり、前述した関係式1を満足する。

0103

<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。

0104

図6は、本発明の第2実施形態に係る原子発振器(量子干渉装置)における原子セルモジュールを説明する図である。

0105

本実施形態の原子発振器は、カバー部材の構成が異なること以外は、前述した第1実施形態と同様である。

0106

なお、以下の説明では、第2実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、図6において、前述した実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。

0107

図6に示す原子発振器1Aが備えるパッケージ部10Aは、パッケージ3に収納されている原子セルモジュール20Aを備えている。この原子セルモジュール20Aは、カバー部材30Aを有する原子セルユニット2Aを備えている。カバー部材30Aは、板状またはシート状の1対のカバー部材305A、306で構成されている。配線基板41側のカバー部材305Aは、配線基板42側のカバー部材306よりも上下方向での長さが短く、かつ、1対の接続部材291、292間から光源22が露出する開口部307を形成するように設けられている。これにより、前述した第1実施形態に比べて、光源22とパッケージ3との間の輻射による熱抵抗を小さくすることができる。そのため、光源22からの熱を容易かつ適度にパッケージ3へ逃すことができる。そして、支持部材5の熱抵抗を極めて大きくしても、原子セルモジュール20Aとパッケージ3との間の全体の熱抵抗を前述した関係式1を満足するように設定することができる。

0108

以上説明したような第2実施形態に係る原子発振器1Aによっても、良好な周波数特性を発揮させることができる。

0109

2.電子機器
以上説明したような本発明の量子干渉装置を備えた原子発振器1または1Aは、各種電子機器に組み込むことができる。

0110

以下、本発明の量子干渉装置を備えた原子発振器を備える電子機器の一例について説明する。

0111

図7は、GPS衛星を利用した測位システムに本発明の原子発振器を用いた場合の概略構成を示す図である。

0112

図7に示す測位システム100は、GPS衛星200と、基地局装置300と、GPS受信装置400とで構成されている。

0113

GPS衛星200は、測位情報GPS信号)を送信する。
基地局装置300は、例えば電子基準点(GPS連続観測局)に設置されたアンテナ301を介してGPS衛星200からの測位情報を高精度に受信する受信装置302と、この受信装置302で受信した測位情報を、アンテナ303を介して送信する送信装置304と、を備える。

0114

ここで、受信装置302は、その基準周波数発振源として前述した本発明の原子発振器1(または原子発振器1A)を備える電子機器である。このような受信装置302は、良好な周波数特性を有する原子発振器1(量子干渉装置の一種)を備えるため、優れた信頼性を発揮させることができる。また、受信装置302で受信された測位情報は、リアルタイムで送信装置304により送信される。

0115

GPS受信装置400は、GPS衛星200からの測位情報を、アンテナ401を介して受信する衛星受信部402と、基地局装置300からの測位情報を、アンテナ403を介して受信する基地局受信部404と、を備える。

0117

3.移動体
また、前述したような本発明の量子干渉装置を備えた原子発振器1または1Aは、各種移動体に組み込むことができる。

0118

以下、本発明の移動体の一例について説明する。
図8は、本発明の移動体の一例を示す図である。

0119

図8に示す移動体1500は、車体1501と、4つの車輪1502と、を有しており、車体1501に設けられた図示しない動力源エンジン)によって車輪1502を回転させるように構成されている。このような移動体1500には、原子発振器1(または原子発振器1A)が内蔵されている。そして、原子発振器1からの発振信号に基づいて、例えば、図示しない制御部が動力源の駆動を制御する。

0120

このような移動体は、良好な周波数特性を有する原子発振器1または1A(量子干渉装置の一種)を備えるため、優れた信頼性を発揮させることができる。

0121

以上、本発明の量子干渉装置、原子発振器、電子機器および移動体について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、例えば、前述した実施形態の各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。

0122

また、前述した関係式1を満足することができれば、原子セルモジュールは、少なくとも、原子セル、光源およびヒーターを含むものであればよく、また、各部の構成を公知のものに置き換えることができる。

0123

1…原子発振器、1A…原子発振器、2…原子セルユニット、2A…原子セルユニット、3…パッケージ、4…配線部、5…支持部材、6…制御部、10…パッケージ部、10A…パッケージ部、20…原子セルモジュール、20A…原子セルモジュール、21…原子セル、22…光源、23…光学系、24…光検出部、25…ヒーター、26…温度センサー、27…コイル、28…基板、29…接続部材、30…カバー部材、30A…カバー部材、31…基体、32…蓋体、33…接合部材、34…端子、41…配線基板(第1配線基板)、42…配線基板(第2配線基板)、51…脚部、52…連結部、53…凹部、61…光源制御部、62…温度制御部(制御部)、63…磁場制御部、100…測位システム、200…GPS衛星、211…胴体部、212…光透過部、213…光透過部、214…貫通孔、231…光学部品、232…光学部品、291…接続部材、292…接続部材、300…基地局装置、301…アンテナ、302…受信装置、303…アンテナ、304…送信装置、305…カバー部材、305A…カバー部材、306…カバー部材、307…開口部、400…GPS受信装置、401…アンテナ、402…衛星受信部、403…アンテナ、404…基地局受信部、411…ベースフィルム、412…配線(第1配線)、413…端子、414…端子、421…ベースフィルム、422…配線(第2配線)、423…端子、424…端子、1500…移動体、1501…車体、1502…車輪、LL…光、Qv…発熱量、R…熱抵抗、R1…熱抵抗、R11…熱抵抗、R12…熱抵抗、R2…熱抵抗、R3…熱抵抗、S…内部空間、S1…内部空間、a…光軸、W1…幅、W2…幅

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