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技術 エンジンおよびエンジンのシリンダブロックの製造方法

出願人 ヤマハ発動機株式会社
発明者 桜井健一
出願日 2016年7月4日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2016-132243
公開日 2018年1月11日 (3年6ヶ月経過) 公開番号 2018-003707
状態 特許登録済
技術分野 フライス加工 内燃機関のシリンダブロック、ケーシング
主要キーワード 取出しステップ 加工エッジ オフセットクランク 位置決めステップ ダイキャスト鋳造 往復ストローク 軸受壁 停止ステップ
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年1月11日)のものです。
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図面 (17)

課題

シリンダ孔クランク軸開口縁コンロッドとの干渉を避けるにあたって、ピストン摺動面や姿勢に悪影響を及ぼす構成を採ることなく、シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に面取り加工を施すことができるオフセットクランク式のエンジンを提供する。

解決手段

シリンダ孔2を有するシリンダブロック1と、オフセットクランクとなるクランク軸6と、ピストン4とクランク軸6とを連接するコンロッド5とを備える。シリンダ孔2のクランク軸側開口縁に全周にわたって傾斜面11が形成される。傾斜面11とシリンダ孔2との境界線34は、クランク軸6の軸心方向から見て、クランク軸6がシリンダ孔2の中心線に対して偏心する偏心側に向かうにしたがって次第にシリンダ孔2の他端側の開口2aに近付くように傾斜している。

概要

背景

従来、エンジンシリンダ孔には、ホーニング加工が施されている。このホーニング加工は、シリンダ孔内で回転するホーニング砥石がシリンダ孔の中心線に沿って往復することによって行われる。ホーニング砥石は、ホーニング加工時にシリンダ孔を突き抜けてシリンダ孔内からクランク室内に所定の長さだけ突出する。このようにホーニング砥石をクランク室内に突出させる理由は、シリンダ孔を全長に渡って均等に研磨し、シリンダ孔の円筒度の精度を高くするためである。

ところで、多気筒エンジンシリンダブロックは、シリンダ孔を有するシリンダ壁部と、オイルパン協働してクランク室を形成するクランクケース部と、気筒間においてクランクケース部の天井壁からクランク軸に向けて延びる軸受壁部を備えている。軸受壁部の先端部分には、クランク軸を支持する軸受シリンダ側半部が形成されている。

近年の多気筒エンジンは、クランク軸の軸線方向において小型化を図るために気筒間の間隔が可及的狭くなるように形成されている。このため、上述した軸受壁部は、シリンダ孔に近接する位置に設けられることが多い。このようなエンジンのシリンダブロックがアルミダイキャスト法によって形成されると、シリンダの中心線に沿う方向から見た状態において、この軸受壁部の一部がシリンダ孔と重なるようになる。この理由は、ダイキャスト法では、溶湯高速高圧金型内射出する関係から、砂中子の利用が困難であり、軸受壁部が金型から離型できるように、軸受壁部の全体が最も厚い軸受部分の厚みで形成されるからである。

このように軸受壁部がシリンダ孔側に張り出す場合は、ホーニング加工を行うことができないから、例えば特許文献1に記載されているように、軸受壁部にホーニング砥石逃がし加工が施される。この逃がし加工は、図14に示すように、回転切削工具101を使用して行われる。図14はシリンダブロック102の一部を拡大して示す断面図である。図14において、符号103はシリンダ孔を示し、104は気筒間に位置する軸受壁部を示す。逃がし加工は、軸受壁部104どうしの間に回転切削工具101が挿入され、この回転切削工具101が一定の位置に保持された状態で回転して行われる。回転切削工具101は、出入り可能な刃(図示せず)を有し、この刃が突出した状態で回転する。この回転する刃によって軸受壁部104が切削される。

逃がし加工後は、図15に示すように、軸受壁部104の一部が除去されて軸受壁部104に凹曲部からなるホーニング砥石逃がし部105が形成される。このホーニング砥石逃がし加工時には、図16に示すように、回転切削工具101によってシリンダ孔103のクランク軸側開口縁面取り加工が施される。この面取り加工により、シリンダ孔103のクランク軸側開口縁に傾斜面108が形成される。

また、従来の多気筒エンジンとしては、クランク軸がいわゆるオフセットクランクとなるものがある。オフセットクランクとは、軸心がシリンダ孔の中心線に対して偏心して配置されるクランク軸をいう。このオフセットクランクを採用したエンジンにおいては、クランク軸が偏心する方向にコンロッドが偏って位置するために、この偏心方向において、シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの間の隙間が狭くなり干渉のおそれがある。

従来のこの種のエンジンにおいては、後述する方法でシリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの干渉を避けている。この干渉を回避する方法としては、例えばシリンダ孔のクランク軸側開口縁にコンロッドを避ける凹部を鋳造一体成型する方法と、シリンダ孔のクランク軸側開口縁の位置を全周に渡ってより高くして鋳造する方法などがある。コンロッドを避ける凹部は、シリンダブロックを成型する金型を使用して形成される。

概要

シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの干渉を避けるにあたって、ピストン摺動面や姿勢に悪影響を及ぼす構成を採ることなく、シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に面取り加工を施すことができるオフセットクランク式のエンジンを提供する。シリンダ孔2を有するシリンダブロック1と、オフセットクランクとなるクランク軸6と、ピストン4とクランク軸6とを連接するコンロッド5とを備える。シリンダ孔2のクランク軸側開口縁に全周にわたって傾斜面11が形成される。傾斜面11とシリンダ孔2との境界線34は、クランク軸6の軸心方向から見て、クランク軸6がシリンダ孔2の中心線に対して偏心する偏心側に向かうにしたがって次第にシリンダ孔2の他端側の開口2aに近付くように傾斜している。

目的

本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの干渉を避けるにあたって、ピストンの摺動面やピストンの姿勢に悪影響を及ぼす構成を採ることなく、シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に面取り加工を施すことができるオフセットクランク式のエンジンを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

ピストンが移動自在に嵌合するシリンダ孔を有するシリンダブロックと、軸心が前記シリンダ孔の中心線に対して偏心したオフセットクランクとなるクランク軸と、前記ピストンと前記クランク軸とを連接するコンロッドとを備え、前記シリンダ孔のクランク軸側開口縁に全周にわたって傾斜面が形成され、前記傾斜面と前記シリンダ孔との境界線は、クランク軸の軸心方向から見て、前記クランク軸が前記中心線に対して偏心する偏心側に向かうにしたがって次第にシリンダ孔の他端側の開口に近付くように傾斜しているエンジン

請求項2

請求項1記載のエンジンにおいて、前記シリンダブロックは、前記シリンダ孔を有するシリンダ壁部と、前記シリンダ壁部に接続された天井壁を有し、クランク室を形成するクランクケース部と、前記天井壁からクランク軸側に延びて前記クランク軸のシリンダ側半部を支え軸受壁部とを有し、前記軸受壁部に、前記シリンダ孔に挿入されたホーニング砥石との接触を避けるホーニング砥石逃がし部が設けられ、前記傾斜面は、前記ホーニング砥石逃がし部に連なる状態に接続されていることを特徴とするエンジン。

請求項3

ピストンが移動自在に嵌合するシリンダ孔を有するシリンダブロックと、軸心が前記シリンダ孔の中心線に対して偏心したオフセットクランクとなるクランク軸とを有するエンジンのシリンダブロックの製造方法であって、前記シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に、前記中心線と平行な軸線を中心として回転するカッターによって面取りを施す面取りステップを有し、前記面取りは、前記カッターが前記開口縁に沿って移動して行われ、前記面取りステップで移動する前記カッターの回転中心の移動量は、クランク軸の軸心方向から見て、前記シリンダ孔の中心線に対して前記クランク軸が偏心する一方側へ他方側より多くなるエンジンのシリンダブロックの製造方法。

請求項4

ピストンが移動自在に嵌合するシリンダ孔を有するシリンダブロックと、軸心が前記シリンダ孔の中心線に対して偏心したオフセットクランクとなるクランク軸とを有するエンジンのシリンダブロックの製造方法であって、前記シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に、前記中心線と平行な軸線を中心として回転するカッターによって面取りを施す面取りステップを有し、前記面取りは、前記カッターの回転中心が前記中心線に対して前記クランク軸の偏心方向へ偏った位置で停止している状態で行われることを特徴とするエンジンのシリンダブロックの製造方法。

請求項5

請求項3または請求項4記載のエンジンのシリンダブロックの製造方法において、前記シリンダブロックは、前記シリンダ孔を有するシリンダ壁部と、前記シリンダ壁部に接続された天井壁を有し、クランク室を形成するクランクケース部と、前記天井壁からクランク軸側に延びて前記クランク軸のシリンダ側半部を支える軸受壁部とを有し、前記面取りステップは、前記中心線に沿う方向に所定の長さを有する前記カッターを使用して行われ、前記面取りステップで前記開口縁と前記軸受壁部とが前記カッターによって同時に加工されることを特徴とするエンジンのシリンダブロックの製造方法。

技術分野

0001

本発明は、シリンダブロックホーニング砥石逃がし部が形成されたエンジンおよびこのエンジンのシリンダブロックの製造方法に関する。

背景技術

0002

従来、エンジンのシリンダ孔には、ホーニング加工が施されている。このホーニング加工は、シリンダ孔内で回転するホーニング砥石がシリンダ孔の中心線に沿って往復することによって行われる。ホーニング砥石は、ホーニング加工時にシリンダ孔を突き抜けてシリンダ孔内からクランク室内に所定の長さだけ突出する。このようにホーニング砥石をクランク室内に突出させる理由は、シリンダ孔を全長に渡って均等に研磨し、シリンダ孔の円筒度の精度を高くするためである。

0003

ところで、多気筒エンジンのシリンダブロックは、シリンダ孔を有するシリンダ壁部と、オイルパン協働してクランク室を形成するクランクケース部と、気筒間においてクランクケース部の天井壁からクランク軸に向けて延びる軸受壁部を備えている。軸受壁部の先端部分には、クランク軸を支持する軸受シリンダ側半部が形成されている。

0004

近年の多気筒エンジンは、クランク軸の軸線方向において小型化を図るために気筒間の間隔が可及的狭くなるように形成されている。このため、上述した軸受壁部は、シリンダ孔に近接する位置に設けられることが多い。このようなエンジンのシリンダブロックがアルミダイキャスト法によって形成されると、シリンダの中心線に沿う方向から見た状態において、この軸受壁部の一部がシリンダ孔と重なるようになる。この理由は、ダイキャスト法では、溶湯高速高圧金型内射出する関係から、砂中子の利用が困難であり、軸受壁部が金型から離型できるように、軸受壁部の全体が最も厚い軸受部分の厚みで形成されるからである。

0005

このように軸受壁部がシリンダ孔側に張り出す場合は、ホーニング加工を行うことができないから、例えば特許文献1に記載されているように、軸受壁部にホーニング砥石逃がし加工が施される。この逃がし加工は、図14に示すように、回転切削工具101を使用して行われる。図14はシリンダブロック102の一部を拡大して示す断面図である。図14において、符号103はシリンダ孔を示し、104は気筒間に位置する軸受壁部を示す。逃がし加工は、軸受壁部104どうしの間に回転切削工具101が挿入され、この回転切削工具101が一定の位置に保持された状態で回転して行われる。回転切削工具101は、出入り可能な刃(図示せず)を有し、この刃が突出した状態で回転する。この回転する刃によって軸受壁部104が切削される。

0006

逃がし加工後は、図15に示すように、軸受壁部104の一部が除去されて軸受壁部104に凹曲部からなるホーニング砥石逃がし部105が形成される。このホーニング砥石逃がし加工時には、図16に示すように、回転切削工具101によってシリンダ孔103のクランク軸側開口縁面取り加工が施される。この面取り加工により、シリンダ孔103のクランク軸側開口縁に傾斜面108が形成される。

0007

また、従来の多気筒エンジンとしては、クランク軸がいわゆるオフセットクランクとなるものがある。オフセットクランクとは、軸心がシリンダ孔の中心線に対して偏心して配置されるクランク軸をいう。このオフセットクランクを採用したエンジンにおいては、クランク軸が偏心する方向にコンロッドが偏って位置するために、この偏心方向において、シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの間の隙間が狭くなり干渉のおそれがある。

0008

従来のこの種のエンジンにおいては、後述する方法でシリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの干渉を避けている。この干渉を回避する方法としては、例えばシリンダ孔のクランク軸側開口縁にコンロッドを避ける凹部を鋳造一体成型する方法と、シリンダ孔のクランク軸側開口縁の位置を全周に渡ってより高くして鋳造する方法などがある。コンロッドを避ける凹部は、シリンダブロックを成型する金型を使用して形成される。

先行技術

0009

特開2015−161189号公報

発明が解決しようとする課題

0010

オフセットクランク式のエンジンで、シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの干渉を避けるにあたって、シリンダ孔のクランク軸側開口縁に凹部を鋳造で一体成型する方法を採った場合、鋳造後にシリンダ孔のクランク軸側開口縁に面取り加工を施すと、形成される傾斜面が凹部のために断続加工となり、この断続箇所で加工エッジバリが発生する懸念がある。

0011

このように加工エッジやバリが存在する状態でシリンダ孔内をピストンが往復すると、ピストンのスカート部の摺動面が傷付き易い。ピストンの摺動面が傷付けられると、潤滑不良が起こってピストンが焼き付くおそれがある。
シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの干渉を避けるためにこの開口縁の位置を全周にわたってより高くして鋳造する場合は、下死点付近でピストンのガイドが少なくなり、ピストンの姿勢が不安定になって騒音が発生するおそれがある。

0012

本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの干渉を避けるにあたって、ピストンの摺動面やピストンの姿勢に悪影響を及ぼす構成を採ることなく、シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に面取り加工を施すことができるオフセットクランク式のエンジンを提供することを第1の目的とする。また、このエンジンのシリンダブロックを製造する方法を提供することを第2の目的とする。

課題を解決するための手段

0013

この目的を達成するために、本発明に係るエンジンは、ピストンが移動自在に嵌合するシリンダ孔を有するシリンダブロックと、軸心が前記シリンダ孔の中心線に対して偏心したオフセットクランクとなるクランク軸と、前記ピストンと前記クランク軸とを連接するコンロッドとを備え、前記シリンダ孔のクランク軸側開口縁に全周にわたって傾斜面が形成され、前記傾斜面と前記シリンダ孔との境界線は、クランク軸の軸心方向から見て、前記クランク軸が前記中心線に対して偏心する偏心側に向かうにしたがって次第にシリンダ孔の他端側の開口に近付くように傾斜しているものである。

0014

本発明は、前記エンジンにおいて、前記シリンダブロックは、前記シリンダ孔を有するシリンダ壁部と、前記シリンダ壁部に接続された天井壁を有し、クランク室を形成するクランクケース部と、前記天井壁からクランク軸側に延びて前記クランク軸のシリンダ側半部を支える軸受壁部とを有し、前記軸受壁部に、前記シリンダ孔に挿入されたホーニング砥石との接触を避けるホーニング砥石逃がし部が設けられ、前記傾斜面は、前記ホーニング砥石逃がし部に連なる状態に接続されていてもよい。

0015

本発明に係るエンジンのシリンダブロックの製造方法は、ピストンが移動自在に嵌合するシリンダ孔を有するシリンダブロックと、軸心が前記シリンダ孔の中心線に対して偏心したオフセットクランクとなるクランク軸とを有するエンジンのシリンダブロックの製造方法であって、前記シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に、前記中心線と平行な軸線を中心として回転するカッターによって面取りを施す面取りステップを有し、前記面取りは、前記カッターが前記開口縁に沿って移動して行われ、前記面取りステップで移動する前記カッターの回転中心の移動量は、クランク軸の軸心方向から見て、前記シリンダ孔の中心線に対して前記クランク軸が偏心する一方側へ他方側より多くなる方法である。

0016

本発明に係るエンジンのシリンダブロックの製造方法は、ピストンが移動自在に嵌合するシリンダ孔を有するシリンダブロックと、軸心が前記シリンダ孔の中心線に対して偏心したオフセットクランクとなるクランク軸とを有するエンジンのシリンダブロックの製造方法であって、前記シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に、前記中心線と平行な軸線を中心として回転するカッターによって面取りを施す面取りステップを有し、前記面取りは、前記カッターの回転中心が前記中心線に対して前記クランク軸の偏心方向へ偏った位置で停止している状態で行われる方法である。

0017

本発明は、前記エンジンのシリンダブロックの製造方法において、前記シリンダブロックは、前記シリンダ孔を有するシリンダ壁部と、前記シリンダ壁部に接続された天井壁を有し、クランク室を形成するクランクケース部と、前記天井壁からクランク軸側に延びて前記クランク軸のシリンダ側半部を支える軸受壁部とを有し、前記面取りステップは、前記中心線に沿う方向に所定の長さを有する前記カッターを使用して行われ、前記面取りステップで前記開口縁と前記軸受壁部とが前記カッターによって同時に加工されてもよい。

発明の効果

0018

本発明において、傾斜面における偏心側の端部は、コンロッドが最も接近する部分である。この傾斜面の境界線がシリンダ孔の他端側の開口に近いということは、シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの間隔が拡がることを意味する。このため、シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの干渉を傾斜面によって避けることが可能になる。
また、上述した境界線は、ピストンが下死点付近でガイドされる範囲の限界となる位置を示している。すなわち、ピストンの下死点付近のガイドが偏心側に向かうにしたがって徐々に少なくなるだけであるから、下死点付近でピストンの姿勢が不安定になることはない。
さらに、本発明においては、シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に面取り加工が施されているから、この開口縁を通過するピストンのスカート部がバリや微細突起によって傷付けられることはない。

0019

したがって、本発明によれば、シリンダ孔のクランク軸側開口縁とコンロッドとの干渉を避けるにあたって、従来のようなクランク軸側開口縁に凹部を設けたり、クランク軸側開口縁の位置を全周に渡って高くするような、ピストンの摺動面や姿勢に悪影響を及ぼす構成を採ることなく、シリンダ孔のクランク軸側開口縁の全周に面取り加工を施すことができるオフセットクランク式のエンジンを提供することができる。

0020

回転するカッターがシリンダ孔のクランク軸側開口縁に沿って移動して面取りを施すエンジンのシリンダブロックの製造方法によれば、シリンダ孔より径が小さいカッターを使用することができる。このため、シリンダ孔におけるクランク軸とは反対側の開口部からシリンダ孔内にカッターを挿入できるから、カッターをシリンダブロックのシリンダヘッド側合わせ面を使って高い精度で位置決めすることができる。この結果、シリンダ孔のクランク軸側開口縁に面取り加工を高い精度で施すことが可能になる。

0021

回転するカッターの回転中心がシリンダ孔の中心線に対してクランク軸の偏心方向へ偏った位置で停止している状態でカッターが回転して面取りを施すシリンダブロックの製造方法によれば、カッターが移動しながら面取りが行われる方法と較べて加工時間を短縮可能である。このため、生産性が高いエンジンのシリンダブロックの製造方法を提供できる。

図面の簡単な説明

0022

本発明に係るシリンダブロックの断面図である。
シリンダブロックの構成を説明するための断面図である。
要部を拡大して示す断面図である。
軸受壁部の底面図である。
軸受壁部の側方から見た断面図である。
第1の実施の形態によるカッターが挿入された状態を示すシリンダ壁部の平面図である。
シリンダ孔のクランク軸側開口縁をクランク室側から見た状態を示す斜視図である。
シリンダブロックの製造方法を説明するためのフローチャートである。
第1の実施の形態による面取りステップを説明するためのフローチャートである。
第2の実施の形態によるカッターが挿入された状態を示すシリンダ壁部の平面図である。
第2の実施の形態による面取りステップを説明するためのフローチャートである。
第3の実施の形態による軸受壁部の側方から見た断面図である。
第4の実施の形態によるシリンダブロックの構成を説明するための断面図である。
従来の軸受壁部の逃がし加工前の状態を示す断面図である。
従来の軸受壁部の逃がし加工後の状態を示す断面図である。
従来のシリンダ孔のクランク軸側開口縁に面取り加工が施された後の状態を示す断面図である。

実施例

0023

<第1の実施の形態>
以下、本発明に係るエンジンおよびエンジンのシリンダブロックの製造方法の一実施の形態を図1図9によって詳細に説明する。
図1に示すシリンダブロック1は、多気筒エンジンのものであり、鋳鉄を材料として図示していない砂型中子などを用いる重力鋳造法によって所定の形状に形成されている。このシリンダブロック1は、3つの機能部を有している。

0024

<シリンダ壁部の構成>
第1の機能部は、複数のシリンダ孔2を有するシリンダ壁部3である。シリンダ孔2には、図2に示すように、ピストン4が移動自在に嵌合する。図2には、上死点に位置するピストン4と、下死点に位置するピストン4とが描いてある。
ピストン4は、コンロッド5を介してクランク軸6に連接される。図2においては、クランク軸6はクランクウェブクランクピンなどを省略し、クランクジャーナルのみが二点鎖線で描いてある。

0025

このクランク軸6は、いわゆるオフセットクランクと呼称されるものである。このクランク軸6の軸心C1は、図2に示すように軸心方向から見て、シリンダ孔2の中心線C2に対して一方側(図2においては左側)に長さL1だけ偏心している。このため、コンロッド5の最も外側を通る移動軌跡は、図2中に二点鎖線Aで示すように、図2において左側に偏る形状になる。以下においては、クランク軸6が偏心する一方側を単に「偏心側」といい、この方向とは反対側を「他方側」という。

0026

シリンダ壁部3の一端部(図1においては上端部)には、シリンダヘッド(図示せず)を取付けるための合わせ面8が形成されている。シリンダ孔2におけるクランク軸6とは反対側に位置する開口2aは、この合わせ面8に形成されている。以下においては、便宜上、シリンダ壁部3の一端側(図1および図2においては上側)を「シリンダヘッド側」といい、他端側を「クランク軸側」という。
シリンダ壁部3におけるシリンダ孔2を覆う部分には冷却水通路9が形成されている。
シリンダ壁部3のクランク軸側端部であって、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10となる部分には、後述する面取り加工によって傾斜面11が形成されている。この面取り加工の詳細は後述する。なお、この面取り加工は、シリンダ孔2にホーニング加工が施される以前に行われる。

0027

<クランクケース部の構成>
シリンダブロック1の第2の機能部は、シリンダ壁部3のクランク軸側端部に接続された天井壁12を有するクランクケース部13である。このクランクケース部13は、シリンダ壁部3とは反対側に向けて開口する箱状に形成されている。このクランクケース部13の開口部は、図示していないオイルパンによって閉塞される。このクランクケース部13とオイルパンとによって、クランク軸6を収容するクランク室14が形成される。

0028

天井壁12とシリンダ壁部3のクランク軸側端部との接続部分、言い換えればシリンダ孔2のクランク軸側開口縁10を囲む部分は、図1図3および図7に示すように、偏心側に位置する第1の壁部15と、他方側に位置する第2の壁部16とによって構成されている。これらの第1および第2の壁部15,16は、シリンダブロック1を鋳造する型によって所定の形状に形成されている。第1の壁部15は、詳細は後述するが、ピストン4のガイドに寄与しないために、第2の壁部16よりシリンダヘッド側に位置している。このように第1の壁部15がシリンダヘッド側に偏って形成されていることにより、図3に示すように、クランク軸6の軸心方向から見て、二点鎖線Aで示すコンロッド5の移動軌跡と第1の壁部15(シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10)との間に隙間Sが形成される。なお、シリンダ孔2の中心線C2に沿う方向において、第1の壁部15が第2の壁部16からシリンダヘッド側に離れる長さは、シリンダ孔2の孔壁面がピストン4のスカート部4a(図2参照)をガイドする機能が損なわれることがない長さである。

0029

<軸受壁部の構成>
第3の機能部は、図1に示すように、天井壁12からクランク軸6側に延びる軸受壁部17である。この軸受壁部17は、図1に示すように、クランク軸6の軸線とは直交する方向に延びる板状部分17aと、この板状部分17aのクランク軸側端部に設けられた軸受部17bとを有している。

0030

軸受壁部17は、図4に示すように、シリンダ孔2の中心線C2に沿う方向に見た状態で互いに隣り合うシリンダ孔2どうしの間に設けられている。軸受壁部17の板状部分17aは、図5に示すように、シリンダ孔2どうしの間の隔壁18と同等の厚みとなるように形成されている。隔壁18はシリンダ壁部3の一部である。

0031

この実施の形態による板状部分17aには、図1に示すように、複数の補強用リブ19が一体に形成されている。また、この板状部分17aは、クランク室14内が気筒毎に仕切られる大きさに形成されている。この板状部分17aには、クランク室14内の気筒毎に分けられた空間どうしを連通する第1〜第3の連通穴20〜22が形成されている。

0032

板状部分17aのシリンダヘッド側端部であって、図1に示すようにクランク軸6の軸心方向から見てシリンダ孔2の中心線C2と重なる部分には、ホーニング砥石逃がし部23が設けられている。このホーニング砥石逃がし部23は、シリンダ孔2にホーニング加工を施すために挿入されたホーニング砥石24との接触を避けるための凹曲部である。このホーニング砥石逃がし部23は、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10に後述する面取り加工を施すときに形成される。このホーニング砥石逃がし部23と後述する面取り部は、鋳造時に砂中子を用いて形成することができるが、鋳放しのままでは表面が粗く、ピストン4に傷が付くおそれがあるために切削加工が施されている。

0033

軸受部17bは、図5に示すように、板状部分17aより厚く形成されている。このため、図4に示すように、シリンダ孔2の中心線C2に沿う方向から見た状態において、軸受部17bは、その一部がシリンダ孔2と重なっている。この軸受部17bには、図1に示すようにベアリングキャップ25が取付けられる。クランク軸6は、軸受部17bとベアリングキャップ25とによって挟まれる状態でこれらの部材に回転自在に支持される。

0034

<面取り加工の説明>
シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10に施す面取り加工は、図8のフローチャートに示すように、鋳造ステップS1、加工ステップS2の後の面取りステップS3で実施される。図8のフローチャートは、シリンダブロック1の製造方法の一例を示すものである。このシリンダブロック1は、鋳造ステップS1と、面取りステップS3と、ホーニングステップS4とをこの順序で実施して製造される。鋳造ステップS1は、シリンダブロック1を鋳造によって成型するステップである。加工ステップS2は、機械加工合面通路や孔等を切削したり、ねじを切ったりするステップである。加工ステップS2には、ホーニング前の下穴加工も含まれる。

0035

面取りステップS3は、図3および図6に示すカッター31を使用して行われる。このカッター31は、複数の刃32と、これらの刃32を支持する回転軸33とを備えている。回転軸33は、図示していない駆動装置によって駆動され、シリンダ孔2の中心線C2と平行な軸線C3(図3参照)を中心にして回転する。
図3および図6に示すカッター31は、3枚の刃32を有している。しかし、刃32の数は3枚に限定されることはなく、適宜変更可能である。これらの複数の刃32は、例えば回転軸33を中心として放射方向に延びるように配置することができる。また、これらの刃32は、シリンダ孔2内にシリンダヘッド側端部から挿入可能な大きさに形成される。

0036

このカッター31が回転軸33を中心にして回転したときの回転軌跡は、回転軸33の軸線方向から見ると、図6中に二点鎖線Bで示すように、シリンダ孔2より小さい円になる。
刃32は、図3に示すように、シリンダ孔2の中心線C2に沿う方向において、所定の長さを有しており、シリンダヘッド側となる一端部に設けられて傾斜する面取り加工部32aと、この面取り加工部32aから他端部側に延びる逃がし加工部32bとを有している。

0037

面取り加工部32aは、カッター31の軸線C3から離れるにしたがって次第に刃32の他端部側に位置するように傾斜している。逃がし加工部32bは、シリンダ孔2の中心線C2と平行に延びている。逃がし加工部32bの長さは、面取りステップS3の次のホーニングステップS4で用いられるホーニング砥石24の大きさや往復ストローク適合した長さである。逃がし加工部32bの長さは、ホーニング砥石24がシリンダ孔2からクランク軸6側へ突出する突出長さより長いことが望ましい。

0038

面取りステップS3においては、図9のフローチャートに示す複数のステップが順次実行される。面取りステップS3を実施するにあたっては、先ず、挿入ステップS11が実施され、カッター31がシリンダ孔2内にシリンダヘッド側端部の開口から挿入される。このカッター31は、位置決めステップS12において、図3に示すように、面取り加工部32aがシリンダ孔2とクランク室14との境界部分に位置する状態に位置決めされる。なお、図3に示すシリンダブロック1は、面取りステップS3が終了した状態で描いてある。

0039

次に、自転開始ステップS13において、回転軸33が駆動装置によって駆動され、カッター31が回転軸33を中心にして回転する。
そして、このカッター31は、その後の公転ステップS14において、予め定めた移動経路に沿って移動する。この移動は、駆動装置が回転軸33の位置をシリンダ孔2の中心線C2に対して垂直な方向に変えることによって行われる。

0040

このときのカッター31の移動経路は、回転軸33の軸線方向から見て、図6中に二点鎖線Cで示す円が移動軌跡となる経路であって、クランク軸6の軸心方向から見て、図3中に二点鎖線Dで示す移動軌跡となる経路である。図6中に二点鎖線Cで示す円の中心C4は、クランク軸6の軸心方向においてシリンダ孔2の中心(中心線C2の位置)と同一位置であって、シリンダ孔2の中心より偏心側(図6においては左側)に長さL2だけ離れている。図6中に二点鎖線Cで示す移動軌跡となる円の半径rは、図3に示すように、偏心側(図3においては左側)とは反対側において、刃32の面取り加工部32aがシリンダ孔2のクランク軸側開口縁10を切削可能な半径に設定されている。

0041

この公転ステップS14で移動するカッター31の回転中心(軸線C3の位置)の移動量は、図3に示すように、クランク軸6の軸心方向から見て、シリンダ孔2の中心線C2に対して偏心側(図3においては左側)へD1となり、他方側へはD2となる。移動量D1は移動量D2より多い。すなわち、カッター31の回転中心は、シリンダ孔2の中心線C2に対して偏心側へ他方側より多く移動する。

0042

このようにカッター31が自転した状態で図6中に二点鎖線Cで示す移動軌跡となるように移動(公転)することにより、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10が全周にわたって面取り加工部32aによって切削される。このため、公転ステップS14が実施されることにより、カッター31がシリンダ孔2のクランク軸側開口縁10に沿って移動し、このクランク軸側開口縁10の全域に面取り加工が施される。シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10に面取り加工が施されることにより、この開口縁に全周にわたって傾斜面11が形成される。

0043

この傾斜面11とシリンダ孔2との境界線34(図3参照)は、図3において左上がりに傾斜している。この境界線34が傾斜する方向は、図2に示すように、クランク軸6の軸心方向から見て、クランク軸6がシリンダ孔2の中心線C2に対して偏心する偏心側に向かうにしたがって次第にシリンダ孔2の他端側の開口2aに近付く方向である。言い換えれば、境界線34が傾斜する方向は、図3に示すように、クランク軸6の軸心方向から見て、偏心側から他方側(図3においては右側)に向かうにしたがって、クランク軸6の軸心C1からシリンダ孔2の中心線C2に下ろした垂線35を含む仮想直線36に近接する方向である。
傾斜面11の境界線34における偏心側の端部がシリンダ孔2の他端側の開口2aに近くなるということは、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10とコンロッド5との間隔が拡がることを意味する。
この傾斜面11における、シリンダ孔2の中心線C2と平行な方向の幅(図3においては上下方向の幅)は、偏心側に向かうにしたがって次第に広くなる。この理由は、カッター31の傾斜した面取り加工部32aが偏心側のクランク軸側開口縁10を次第に径方向に深く切削するからである。なお、この実施の形態では第1の壁部15が第2の壁部16よりシリンダヘッド側に偏って設けられているから、図3に示す傾斜面11の幅は途中で狭くなっている。

0044

また、公転ステップS14でカッター31が図6中に二点鎖線Cで示す移動軌跡に沿って移動することにより、軸受壁部17の一部がカッター31の逃がし加工部32bによって切削され、軸受壁部17にホーニング砥石逃がし部23が形成される。すなわち、公転ステップS14で上述した傾斜面11と、軸受壁部17のホーニング砥石逃がし部23とがカッター31によって同時に加工される。この加工が施された後の傾斜面11は、図1および図7に示すように、ホーニング砥石逃がし部23に連なる状態に接続されている。

0045

公転ステップS14でカッター31が上述した移動軌跡に沿って少なくとも1周した後、自転停止ステップS15において、駆動装置が回転軸33の駆動を停止し、カッター31が停止する。その後、カッター31は、取出しステップ16において、回転停止時の位置からシリンダ孔2の中心線C2側となる取出可能位置に移動し、シリンダ孔2内を通ってシリンダブロック1の外に取出される。このようにカッター31が退出することによって面取りステップS3が終了する。

0046

面取りステップS3の後は、図8に示すように、ホーニングステップS4が実施される。ホーニングステップS4においては、ホーニング砥石24が回転しながらシリンダ孔2内を往復する。この実施の形態においては、軸受壁部17にホーニング砥石逃がし部23が形成されているから、ホーニング砥石24が干渉することはない。

0047

<第1の実施の形態による効果の説明>
この実施の形態において、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10に形成された傾斜面11は、図1図3に示すように、クランク軸6の軸心方向から見て、偏心側に向かうにしたがって次第にシリンダ孔2の他端側(シリンダヘッド側)の開口2aに近付くように傾斜している。この傾斜面11における偏心側の端部は、コンロッド5が最も接近する部分である。傾斜面11の境界線34がシリンダ孔2の他端側の開口に近いということは、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10とコンロッド5との間隔が拡がることを意味する。このため、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10とコンロッド5との干渉を傾斜面11によって避けることが可能になる。

0048

また、上述した境界線34は、ピストン4が下死点付近でガイドされる範囲の限界となる位置を示している。すなわち、ピストン4の下死点付近のガイドが偏心側に向かうにしたがって徐々に少なくなるだけであるから、下死点付近でピストン4の姿勢が不安定になることはない。
さらに、この実施の形態においては、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10の全周に面取り加工が施されているから、この開口縁を通過するピストン4のスカート部4aがバリや微細な突起によって傷付けられることはない。
したがって、この実施の形態によれば、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10とコンロッド5との干渉を避けるにあたって、従来のようなクランク軸側開口縁に凹部を設けたり、クランク軸側開口縁の位置を全周に渡って高くするような、ピストン4の摺動面や姿勢に悪影響を及ぼす構成を採ることなく、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10の全周に面取り加工を施すことができるオフセットクランク式のエンジンを提供することができる。

0049

この実施の形態による傾斜面11は、ホーニング砥石逃がし部23に連なる状態に接続されている。このため、ピストン4やホーニング砥石24がシリンダ孔2からクランク軸6側に突出するときに軸受壁部17に接触することを確実に防ぐことができる。
したがって、この実施の形態によれば、ピストン4やホーニング砥石24との干渉を避けながら軸受壁部17をシリンダ孔2の中心線C2に近付くように配置できるから、クランク軸6の軸心方向におけるシリンダブロック1の長さを短くできる。この結果、この実施の形態によれば、クランク軸6の軸心方向にコンパクトに形成されたエンジンを提供することができる。

0050

この実施の形態において、シリンダ孔2における傾斜面11との境界線34よりクランク軸側の部位は、ピストン4が接触することがなく、下死点付近でピストン4をガイドする機能を有していない。このため、この実施の形態のシリンダブロック1においては、偏心側に位置する第1の壁部15が第2の壁部16よりシリンダヘッド側に偏る位置に形成されている。
この構成を採ることにより、第1の壁部15が第2の壁部16と同等の高さに形成されている場合に較べると、傾斜面11を形成するときの切削加工に要する時間が短くなるから、生産性が高くなる。

0051

この実施の形態による面取り加工は、シリンダ孔2の孔径より径が小さいカッター31を使用して実施される。このため、カッター31をシリンダ孔2におけるシリンダヘッド側の開口部からシリンダ孔2内に挿入できるから、カッター31をシリンダブロック1のシリンダヘッド側合わせ面8を使って高い精度で位置決めすることができる。この結果、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10に面取り加工を高い精度で施すことが可能になる。

0052

この実施の形態による面取りステップS3は、シリンダ孔2の中心線C2に沿う方向に所定の長さを有するカッター31を使用して行われる。この面取りステップS3において、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10と軸受壁部17とがこのカッター31によって同時に加工される。
このため、この実施の形態によれば、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10に施す面取り加工と、軸受壁部17にホーニング砥石逃がし部23を形成する加工とを効率よく行うことができるから、生産性が高いエンジンのシリンダブロックの製造方法を提供できる。

0053

<第2の実施の形態>
面取りステップ(面取り加工とホーニング砥石逃げ部の加工)は、図10および図11に示すように実施することができる。これらの図において、図1図9によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
この実施の形態による面取りステップS3で使用するカッター41(図10参照)は、回転軸部42から放射方向に突出する複数の刃43が回転軸部42の径方向に移動可能なものである。

0054

回転軸部42は、軸心C5がシリンダ孔2の中心線C2より所定の長さだけ偏心側(図10においては左側)に離れた加工位置に配置され、この加工位置で駆動装置(図示せず)によって駆動されて回転する。
複数の刃43は、詳細には図示してはいないが、第1の実施の形態で示した刃43と同様に面取り加工部43aと逃がし加工部43bとを有している。これらの刃43は、回転軸部42内に設けられた押圧機構44によって径方向の外側に向けて押されることにより、回転軸部42に支持された状態で回転軸部42から径方向の外側に突出する。押圧機構44は、例えば特許文献1に開示されているものを用いることができる。

0055

この実施の形態による面取りステップS3は、図11のフローチャートに示すように実施される。この面取りステップS3を実施するにあたっては、先ず、カッター41をシリンダ孔2内にシリンダヘッド側から挿入し(挿入ステップS21)、シリンダ孔2とクランク室14との境界部分に位置決めする(位置決めステップS22)。位置決めステップS22においては、カッター41の回転軸部42が上述した加工位置に位置決めされる。

0056

その後、加工ステップS23において、カッター41が回転し、刃43が回転軸部42から径方向の外側に突出する。刃43が回転軸部42から突出することによって、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10が回転する刃43によって切削され、傾斜面11が形成される。この面取り加工は、カッター41の回転中心(軸心C5)がシリンダ孔2の中心線C2に対して偏心側へ偏った位置で停止している状態で行われる。
また、この加工ステップS23においては、軸受壁部17が刃43の逃がし加工部43bによって切削され、軸受壁部17にホーニング砥石逃がし部23が形成される。この加工が終了したときのカッター41の外形は、図3中に二点鎖線Dで示す形状になる。

0057

加工ステップS23が終了した後、カッター41の回転が停止してカッター41の刃43が回転軸部42の径方向内側に後退する。そして、取出ステップS24において、カッター41がシリンダ孔2を通してシリンダブロック1の外に出される。このようにカッター41が退出することによって面取りステップS3が終了する。
この実施の形態においては、カッター41が移動しながら面取りが行われる方法(第1の実施の形態による方法)と較べると、カッター41の位置が変わらないために加工時間を短縮できる。このため、この実施の形態によれば、生産性が高いエンジンのシリンダブロックの製造方法を提供できる。

0058

<第3の実施の形態>
本発明は、アルミダイキャスト法によって形成されたシリンダブロックを有するエンジンにも適用することができる。アルミダイキャスト法によって形成されたシリンダブロック1の軸受壁部17を図12に示す。図12において、図1図9によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。

0059

図12に示す軸受壁部17の板状部分17aは、ダイキャスト鋳造直後においては、この明細書の冒頭で背景技術として図14を用いて説明したような、金型から離型可能な形状に形成されており、厚みが軸受部17bと同等かそれ以上となるように形成されている。この板状部分17aには、カッター(図示せず)によって切削されることによりホーニング砥石逃がし部23が形成されている。また、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10には傾斜面11が形成されている。
本発明は、このようにアルミダイキャスト法によって形成されたシリンダブロック1を有するエンジンにも適用可能で、上述した実施の形態を採るときと同等の効果が得られる。

0060

<第4の実施の形態>
本発明は、図13に示すように構成することができる。図13において、図1図12によって説明したものと同一もしくは同等の部材については、同一符号を付し詳細な説明を適宜省略する。
図13に示すシリンダブロック51は、シリンダ孔2のクランク軸側開口縁10を囲む部分が上述した実施の形態によるシリンダブロック1とは異なり、その他の部分が同一になる構成が採られている。

0061

この実施の形態によるシリンダ孔3のクランク軸側開口縁10を囲む部分は、平坦な一つの第3の壁部52によって構成されている。この第3の壁部52の厚みは一定である。
このため、クランクケース部13の天井壁12は、クランク軸6の軸心方向から見て、偏心側となる一端部12aと他端部12bとで略同じ高さとなるように形成されている。ここでいう「高さ」とは、シリンダ孔2の中心線C2に沿う方向の位置に相当する。
また、第3の壁部52が平坦であるから、傾斜面11のクランク軸側の端縁11aは、クランク軸6の軸心方向から見て、偏心側と他端側との間で直線状に延びている。この傾斜面11は、第1の実施の形態や第2の実施の形態で説明したようなカッター(図示せず)を用いて形成することができる。

0062

このようにシリンダ孔3のクランク軸側開口縁10が平坦な第3の壁52に開口する場合であっても、傾斜面10とコンロッド5との間に隙間Sが形成され、シリンダ孔2とコンロッド5との干渉を避けることができるから、上述した実施の形態を採る場合と同等の効果が得られる。

0063

1,51…シリンダブロック、2…シリンダ孔、3…シリンダ壁部、4…ピストン、5…コンロッド、6…クランク軸、10…クランク軸側開口縁、11…傾斜面、12…天井壁、13…クランクケース部、14…クランク室、17…軸受壁部、23…ホーニング砥石逃がし部、24…ホーニング砥石、31,41…カッター、34…境界線、35…垂線、36…仮想直線、C1…クランク軸の軸心、C2…シリンダ孔の中心線、S2…面取りステップ、S14…公転ステップ、S23…加工ステップ。

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