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技術 ロータ寿命推定装置および真空ポンプ

出願人 株式会社島津製作所
発明者 小崎純一郎
出願日 2016年6月28日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2016-127254
公開日 2018年1月11日 (3年6ヶ月経過) 公開番号 2018-003615
状態 特許登録済
技術分野 機械部品、その他の構造物または装置の試験 非容積形送風機
主要キーワード ポンプ分解 定常クリープ 歪み関係 寿命推定装置 データセット数 加速クリープ 外挿演算 危険域
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (16)

課題

ロータ寿命推定することができるロータ寿命推定装置の提供。

解決手段

ロータ寿命推定装置100は、ポンプロータ4aのクリープ歪み速度当量と温度との相関関係およびロータ温度センサ8により検出される温度に基づいて、ポンプロータ4aのクリープ歪みに相当する歪み相当量である歪み積算値の算出、およびその歪み積算値に基づいてロータ寿命を推定する演算部105と、推定されたロータ寿命に関する情報を提示する表示部104と、を備える。

概要

背景

ターボ分子ポンプでは、ロータアルミ材製作されるため、アルミ材特有の比較的低い許容温度がある。一般に、ターボ分子ポンプが排気作用を発揮する高速回転状態には、ロータは高い遠心力の作用により高い引張応力状態にある。引張応力状態においてロータ温度が許容温度(例えば、120℃)以上となると永久歪みが急激に増加するので、すなわちクリープ変形の速度が無視できなくなるので、許容温度よりも低い温度で運転される。

逆に、許容温度以上で運転し続けると、ロータのクリープ歪みが増加してロータの各部寸法が大きくなり、ロータ翼ステータ翼との隙間寸法が小さくなり、高速回転時にステータ翼とロータ翼とが接触するおそれがあった。

特許文献1に記載の発明では、このようなトラブルを未然に防ぐために、ロータの許容温度とほぼ等しいキュリー温度を有する強磁性体をロータに設け、強磁性体のインダクタンス変化が検出されている時間の積算時間が、ロータのクリープ寿命設計に基づいて予め設定された許容時間を超過したときにロータ回転を停止するようにしている。

概要

ロータ寿命推定することができるロータ寿命推定装置の提供。ロータ寿命推定装置100は、ポンプロータ4aのクリープ歪み速度当量と温度との相関関係およびロータ温度センサ8により検出される温度に基づいて、ポンプロータ4aのクリープ歪みに相当する歪み相当量である歪み積算値の算出、およびその歪み積算値に基づいてロータ寿命を推定する演算部105と、推定されたロータ寿命に関する情報を提示する表示部104と、を備える。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

モータにより回転駆動されるロータと、前記ロータの温度を検出するロータ温度検出部とを備える真空ポンプの、ロータ寿命推定装置において、前記ロータのクリープ歪み速度当量と温度との相関関係および前記ロータ温度検出部により検出される温度に基づいて、前記ロータのクリープ歪みに相当する歪み相当量を算出する演算部と、算出された前記歪み相当量に基づいてロータ寿命推定する推定部と、推定された前記ロータ寿命に関する情報を提示する提示部と、を備えるロータ寿命推定装置。

請求項2

請求項1に記載のロータ寿命推定装置において、前記真空ポンプは、前記温度の検出タイミングに関する時間情報を生成する計時部を備え、前記ロータ温度検出部により経時的に検出される複数の温度のそれぞれに関して、前記時間情報と前記歪み相当量とから成るデータセットデータ記憶領域に記憶する記憶部を備え、前記推定部は、前記記憶部に記憶された複数の前記データセットに基づいて将来の歪み相当量の時間的な変化を推定し、前記将来の歪み相当量がロータ寿命として設定された歪み相当量閾値に達するロータ寿命を推定する、ロータ寿命推定装置。

請求項3

請求項1に記載のロータ寿命推定装置において、前記ロータ温度検出部から取得される前記温度の取得タイミング検出に関する時間情報を生成する計時部と、前記ロータ温度検出部により経時的に検出される複数の温度のそれぞれに関して、前記時間情報と前記歪み相当量とから成るデータセットをデータ記憶領域に記憶する記憶部を備え、前記推定部は、前記記憶部に記憶された複数の前記データセットに基づいて将来の歪み相当量の時間的な変化を推定し、前記将来の歪み相当量がロータ寿命として設定された歪み相当量閾値に達するロータ寿命を推定する、ロータ寿命推定装置。

請求項4

請求項2または3に記載のロータ寿命推定装置において、複数の前記データセットの内、前記時間情報が前記推定部による推定の時刻により近いデータセットに、より大きな重み付けを行うデータ処理部を備える、ロータ寿命推定装置。

請求項5

請求項4に記載のロータ寿命推定装置において、前記データ処理部は、前記記憶部に記憶された複数のデータセットの数を減少させる平均化処理を行うと共に、前記平均化処理により生じる前記データ記憶領域の空き領域に新たなデータセットを記憶させる、ロータ寿命推定装置。

請求項6

請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載のロータ寿命推定装置において、前記時間情報は、前記ロータが所定条件で回転駆動されている時間を累積したロータ駆動累積時間である、ロータ寿命推定装置。

請求項7

請求項1に記載のロータ寿命推定装置において、前記推定部は、ロータ寿命として設定された歪み相当量閾値と前記歪み相当量との差分に基づいて、推定時からロータ寿命までの残寿命を推定する、ロータ寿命推定装置。

請求項8

請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のロータ寿命推定装置において、前記ロータの歪み実測データが入力される入力部と、前記歪み実測データに基づいて、前記演算部により算出された前記歪み相当量を補正する補正部と、を備えるロータ寿命推定装置。

請求項9

真空ポンプのロータの寿命を推定するロータ寿命推定装置において、前記ロータの歪み実測データと歪み実測時の時間情報とから成る複数のデータセットに基づいてロータ寿命を推定する推定部と、推定された前記ロータ寿命に関する情報を提示する提示部と、を備えるロータ寿命推定装置。

請求項10

モータにより回転駆動されるロータと前記ロータの温度を検出するロータ温度検出部と、請求項1に記載のロータ寿命推定装置と、を備える真空ポンプ。

技術分野

0001

本発明は、ロータ寿命推定装置および真空ポンプに関する。

背景技術

0002

ターボ分子ポンプでは、ロータがアルミ材製作されるため、アルミ材特有の比較的低い許容温度がある。一般に、ターボ分子ポンプが排気作用を発揮する高速回転状態には、ロータは高い遠心力の作用により高い引張応力状態にある。引張応力状態においてロータ温度が許容温度(例えば、120℃)以上となると永久歪みが急激に増加するので、すなわちクリープ変形の速度が無視できなくなるので、許容温度よりも低い温度で運転される。

0003

逆に、許容温度以上で運転し続けると、ロータのクリープ歪みが増加してロータの各部寸法が大きくなり、ロータ翼ステータ翼との隙間寸法が小さくなり、高速回転時にステータ翼とロータ翼とが接触するおそれがあった。

0004

特許文献1に記載の発明では、このようなトラブルを未然に防ぐために、ロータの許容温度とほぼ等しいキュリー温度を有する強磁性体をロータに設け、強磁性体のインダクタンス変化が検出されている時間の積算時間が、ロータのクリープ寿命設計に基づいて予め設定された許容時間を超過したときにロータ回転を停止するようにしている。

先行技術

0005

特開2006−83825号公報

発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、特許文献1に記載の発明では、クリープ寿命によるロータ破損リスクが極めて高い時期になったときにポンプ運転を停止させる構成であり、事前にポンプ運転停止となる時期を把握することはできない。そのため、事前にロータメンテナンスの為の準備を行うことができず、スムーズなメンテナンス作業を行うのが難しかった。

課題を解決するための手段

0007

本発明の好ましい実施形態によるロータ寿命推定装置は、モータにより回転駆動されるロータと、前記ロータの温度を検出するロータ温度検出部とを備える真空ポンプの、ロータ寿命推定装置であって、前記ロータのクリープ歪み速度当量と温度との相関関係および前記ロータ温度検出部により検出される温度に基づいて、前記ロータのクリープ歪みに相当する歪み相当量を算出する演算部と、算出された前記歪み相当量に基づいてロータ寿命推定する推定部と、推定された前記ロータ寿命に関する情報を提示する提示部と、を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記真空ポンプは、前記温度の検出タイミングに関する時間情報を生成する計時部を備え、前記ロータ温度検出部により経時的に検出される複数の温度のそれぞれに関して、前記時間情報と前記歪み相当量とから成るデータセットデータ記憶領域に記憶する記憶部を備え、前記推定部は、前記記憶部に記憶された複数の前記データセットに基づいて将来の歪み相当量の時間的な変化を推定し、前記将来の歪み相当量がロータ寿命として設定された歪み相当量閾値に達するロータ寿命を推定する。
さらに好ましい実施形態では、前記ロータ温度検出部から取得される前記温度の取得タイミング検出に関する時間情報を生成する計時部と、前記ロータ温度検出部により経時的に検出される複数の温度のそれぞれに関して、前記時間情報と前記歪み相当量とから成るデータセットをデータ記憶領域に記憶する記憶部を備え、前記推定部は、前記記憶部に記憶された複数の前記データセットに基づいて将来の歪み相当量の時間的な変化を推定し、前記将来の歪み相当量がロータ寿命として設定された歪み相当量閾値に達するロータ寿命を推定する。
さらに好ましい実施形態では、複数の前記データセットの内、前記時間情報が前記推定部による推定の時刻により近いデータセットに、より大きな重み付けを行うデータ処理部を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記データ処理部は、前記記憶部に記憶された複数のデータセットの数を減少させる平均化処理を行うと共に、前記平均化処理により生じる前記データ記憶領域の空き領域に新たなデータセットを記憶させる。
さらに好ましい実施形態では、前記時間情報は、前記ロータが所定条件で回転駆動されている時間を累積したロータ駆動累積時間である。
さらに好ましい実施形態では、前記推定部は、ロータ寿命として設定された歪み相当量閾値と前記歪み相当量との差分に基づいて、推定時からロータ寿命までの残寿命を推定する。
さらに好ましい実施形態では、前記ロータの歪み実測データが入力される入力部と、前記歪み実測データに基づいて、前記演算部により算出された前記歪み相当量を補正する補正部と、を備える。
本発明の好ましい実施形態によるロータ寿命推定装置は、真空ポンプのロータの寿命を推定するロータ寿命推定装置において、前記ロータの歪み実測データと歪み実測時の時間情報とから成る複数のデータセットに基づいてロータ寿命を推定する推定部と、推定された前記ロータ寿命に関する情報を提示する提示部と、を備える。
本発明の好ましい実施形態による真空ポンプは、モータにより回転駆動されるロータと、前記ロータの温度を検出するロータ温度検出部と、上述のロータ寿命推定装置と、を備える。

発明の効果

0008

本発明によれば、ロータ寿命を推定することができる。

図面の簡単な説明

0009

図1は、真空ポンプの概略構成を示すブロック図である。
図2は、ポンプ本体の一例を示す断面図である。
図3は、ロータ温度センサに用いられるターゲットの特性を説明する図である。
図4は、2種類の強磁性ターゲットを使用して、複数の温度T1〜T6を検出する場合を説明する図である。
図5は、一般的な高温、高引張応力の一定状態におけるクリープ進展トレンドを模式的に示したものである。
図6は、ロータ温度とロータ寿命時間およびロータ寿命時間の逆数値との関係を示す図である。
図7は、半導体製造装置に装着された真空ポンプの長期的な稼働状態の一例を示す図である。
図8は、寿命推定処理の一例を示すフローチャートである。
図9は、近似曲線L21,L22,L23を示す図である。
図10は、間引き処理を説明する図である。
図11は、推定残寿命算出処理の一例を示すフローチャートである。
図12は、推定結果の表示例を示す図である。
図13は、ポンプロータ歪み計測箇所の一例を示す図である。
図14は、外挿近似関数E(t)の例を示す図である。
図15は、第3の実施形態を説明する図である。

実施例

0010

以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は、真空ポンプ1000の概略構成を示すブロック図である。真空ポンプ1000は、ポンプ本体1と、ポンプ本体1を駆動制御するコントロールユニット2と、ロータ寿命推定装置100とを備えている。本実施の形態では磁気軸受式のターボ分子ポンプを例に説明するが、高速回転するロータを備える真空ポンプであればターボ分子ポンプに限定されない。

0011

図2は、ポンプ本体1の一例を示す断面図である。ポンプ本体1は、回転翼41と固定翼31とで構成されるターボポンプ段と、円筒部42とステータ32とで構成されるネジ溝ポンプ段とを有している。ネジ溝ポンプ段においては、ステータ32または円筒部42にネジ溝が形成されている。回転翼41および円筒部42はポンプロータ4aに形成されている。ポンプロータ4aはシャフト4bに締結されている。ポンプロータ4aとシャフト4bとによって回転体ユニット4が構成される。

0012

軸方向に配置された複数段の回転翼41に対して、複数段の固定翼31が交互に配置されている。各固定翼31は、スペーサリング33を介してポンプ軸方向に積層されている。シャフト4bは、ベース3に設けられた磁気軸受34,35,36によって非接触支持される。詳細な図示は省略したが、各磁気軸受34〜36は電磁石変位センサとを備えている。変位センサによりシャフト4bの浮上位置が検出される。シャフト4b、すなわち回転体ユニット4の回転数(1秒当たりの回転数)は、回転センサ43によって検出される。

0013

回転体ユニット4はモータ10により回転駆動される。モータ10は、ベース3に設けられたモータステータ10aと、シャフト4bに設けられたモータロータ10bとから成る。磁気軸受が作動していない時には、シャフト4bは非常用メカニカルベアリング37a,37bによって支持される。回転体ユニット4がモータ10により高速回転されると、ポンプ吸気口側のガスは、ターボポンプ段(回転翼41、固定翼31)およびネジ溝ポンプ段(円筒部42、ステータ32)により順に排気され、排気ポート38から排出される。

0014

また、ポンプロータ4aの温度はロータ温度センサ8によって検出される。上述したようにポンプロータ4aは磁気浮上されて高速回転するので、ロータ温度センサ8には非接触式温度センサが用いられる。例えば、特開2006−194094号公報に記載のような、強磁性体ターゲット透磁率がキュリー温度前後において大きく変化することを利用した非接触式の温度センサが用いられる。ロータ温度センサ8はインダクタンスセンサであって、ポンプロータ4aに設けられたターゲット9の透磁率の変化をインダクタンスの変化として検出する。ターゲット9は強磁性体で形成されている。なお、ロータ温度センサ8に対向するターゲット9はシャフト4bの位置に設けても良い。

0015

例えば、ポンプロータ4aに設けられたターゲット9の温度がキュリー温度Tcを通過すると、その前後でターゲット9の透磁率が大きく変化する。図3(a)は、キュリー温度Tcにおける透磁率変化の一例を示す図である。このようにロータ温度センサ8が形成する磁界中でターゲット9の透磁率が変化すると、ロータ温度センサ8のインダクタンスは図3(b)のように変化することになる。その結果、ロータ温度センサ8に印加された搬送波は透磁率変化によって振幅変調され、ロータ温度センサ8から出力される振幅変調された搬送波を検波整流することにより、透磁率の変化に相当する信号変化を検出することができる。

0016

図4は、キュリー温度がTc1,Tc2である2種類の強磁性ターゲットを使用して、複数の温度T1〜T6を検出する場合の一例を示したものである。曲線L1,L2は、2つの強磁性体の透磁率変化を示している。なお、図4では、強磁性ターゲットに加えて純鉄ターゲットを設け、強磁性ターゲットの信号と純鉄ターゲットの信号(図3(b)参照)との差分信号を、曲線L1,L2として図示している。直線Va、Vb,Vcは温度検出のための閾値である。曲線L1と閾値Va,Vb,Vcと交差する点の温度をT1,T2,T3とし、曲線L2が閾値Va,Vb,Vcと交差する点の温度をT4,T5,T6とする。

0017

上述のように、ロータ温度センサ8はポンプロータ4aの温度に相当する物理量である透磁率(温度相当量)を検出するものであるが、ロータ温度センサ8は上記構成に限定されるものではなく、非接触でポンプロータ4aの温度を検出できるものであれば、種々の温度センサをロータ温度センサ8として使用することができる。

0018

図1に示すように、コントロールユニット2は、モータ制御部20、軸受制御部21、取得部23、通信部24および計時部25を備えている。モータ10はモータ制御部20により制御される。磁気軸受34〜36は軸受制御部21によって制御される。取得部23は、ロータ温度センサ8からロータ温度相当信号(インダクタンスによって変調された信号)を取得し、それを温度値(以下では、ロータ温度Trと呼ぶ)に変換する。

0019

計時部25は、ロータ温度センサ8による温度の検出タイミングに関する時間情報を生成する。時間情報としては、温度の検出時刻や、ポンプロータ4aの駆動時間の累積であるロータ駆動累積時間などがある。以下ではロータ駆動累積時間を用いる場合について示し、検出時刻を用いる場合については後述する。なお、ロータ駆動累積時間は、クリープ歪みが問題となるロータ回転数となっている時間を累積したものであり、例えば、ロータ回転数が所定範囲内(例えば、定格回転数を含む所定回転数範囲)にあるときの累積時間や、より簡単な方法として、ポンプ回転のスタート信号からストップ信号までの時間を累積したものなどが考えられる。この累積時間(以下では、ロータ駆動累積時間と呼ぶ)は、ポンプロータ4aが交換されると手動にてリセットされる。交換後は、新しいポンプロータ4aのロータ駆動累積時間が計時部25によって測定される。取得部23は、ロータ温度Trとそれが取得されたときのロータ駆動累積時間tとから成るデータセット(Tr、t)を、通信部24を介してロータ寿命推定装置100へ出力する。例えば、所定の時間間隔Δtで繰り返しロータ温度Trを取得して、データセット(Tr、nΔt)を順次出力する。ただし、n=1,2,・・・である。また、上記は、t=nΔt、すなわち、常に運転状態に有る場合を示している。以下、特に断らない限り、常にポンプが運転状態にあり、ロータ駆動累積時間t=nΔtが成立している場合に限定して説明する。

0020

ロータ寿命推定装置100はポンプロータ4aの寿命を推定する装置であり、通信部101,データ処理部102、記憶部103、表示部104,演算部105,入力部107および出力部108を備えている。なお、本実施の形態では、ロータ寿命推定装置100はコントロールユニット2から電源が供給される構成となっており、コントロールユニット2の電源がオンされるとロータ寿命推定装置100もオン状態となる。もちろん、コントロールユニット2以外から、電源が供給されるような構成であっても構わない。

0021

通信部24から出力されたデータセット(Tr、t)は、通信部101を介してロータ寿命推定装置100に入力される。通信部101から入力されたデータセット(Tr、t)は、演算部105において歪み積算値Ldとロータ駆動累積時間tとから成るデータセットD(Ld,t)に変換される。変換されたデータセットD(Ld,t)は記憶部103に記憶される。なお、歪み積算値Ldの演算処理の詳細は後述する。

0022

なお、記憶部103におけるデータセットD(Ld,t)に対するデータ記憶容量には限りがある。そのため、複数のデータセットD(Ld,t)が割り当てられたデータ記憶容量まで記憶されたならば、新たなデータセットD(Ld,t)を記憶するために、既に記憶されているデータセットD(Ld,t)の間引き処理がデータ処理部102において行われる。間引き処理の詳細は後述する。

0023

演算部105は、記憶部103に記憶された複数のデータセットD(Ld,t)に基づいて、ポンプロータ4aがロータ寿命に達する時期を推定する。この推定処理の詳細は後述する。表示部104には、ロータ寿命に関する情報が表示される。また、ロータ寿命に関する情報は出力部108からも出力される。入力部107からは、ロータ寿命推定に関するデータが入力される。

0024

(ロータ寿命推定の説明)
高温、高引張応力環境にあるアルミ材のポンプロータ4aでは、遠心力によるクリープ歪みが増加してポンプロータ4aの各部(特に、応力が大きい部分)の径寸法が大きくなる。その結果、ポンプロータ4aと静止部(固定翼31,ステータ32等)との隙間が小さくなる。

0025

図5は、一般的な高温、高引張応力の一定状態におけるクリープの進展トレンドを模式的に示したものである。ロータ回転時にポンプロータ4aに生じる歪みには弾性歪みと永久歪みであるクリープ歪みがあるが、以下ではロータ寿命に関係するクリープ歪みに絞って説明する。図5縦軸はクリープ歪みを表し、横軸に示す時間はロータ駆動累積時間に相当する。

0026

曲線L21,L22,L23は、それぞれロータ温度がTr1,Tr2,Tr3(Tr1<Tr2<Tr3)の場合を示している。図5に示すように、比較的短時間で遷移クリープが生じた後に、ほぼ一定速度で徐々に進展する定常クリープが生じ、その後、加速的に進展する加速クリープの3つの状態におおよそ分けられる。

0027

通常、ポンプロータ4aは定常クリープの範囲内で設計される。本実施の形態における寿命歪みとは、定常クリープにおいて回転側と固定側との隙間が狭くなる過程において、最終的にポンプロータ4aが固定翼31やステータ32と接触するおそれのある危険域に達したときのクリープ歪みである。この寿命歪みはポンプ設計によって決まっている。一定のロータ温度Tr1で使用した場合には寿命はte1となり、一定のロータ温度Tr2で使用した場合にはte2、一定のロータ温度Tr3で使用した場合にはte3となる。

0028

図6(a)は、クリープ歪みによりロータ寿命に至るまでのロータ駆動累積時間(以下ではロータ寿命時間と呼ぶ)とロータ温度Trとの関係を示す図である。ロータ温度Trが上昇するに従ってロータ寿命時間が短くなる。これは、図5の定常クリープにおける曲線L21〜L23の傾き(すなわちクリープ歪み速度)を見ると分かるように、ロータ温度Trが高くなるにつれてクリープ歪み速度が大きくなること意味している。図6(a)の点(Tr1、te1)、(Tr2、te2)、(Tr3、te3)は、図5の曲線L21,L22,L23の場合のロータ寿命時間を示している。

0029

図6(b)は、図6(a)のロータ寿命時間に対して、ロータ寿命時間の逆数値とロータ温度Trとの関係を示したものである。ロータ寿命時間の逆数値は、ロータ寿命までのクリープ歪みを1とみなし、かつ、歪み速度が一定とみなしたときの1年当たりのクリープ歪みに相当するものである。すなわち、曲線L21に関しては、直線L25のように歪みが変化すると仮定した場合に相当する。実際には、図5に示すように、t=0からロータ寿命時間te1までのクリープ歪みには遷移クリープによるものと定常クリープによるものとが含まれ、遷移クリープにおいては歪み速度は一定ではない。

0030

ところで、歪みは歪み速度の時間積分であるので、ロータ寿命時間の逆数値の時間積分は歪み量を正規化した量になる。そして、ロータ寿命時間の逆数値の時間積分が1に達したタイミングがロータ寿命のタイミングである。ただし、温度検出精度等を考慮して、閾値=1に安全係数掛けることも実用上有益である。

0031

図6(a)に示すように、Tr=120℃におけるロータ寿命時間は10年、Tr=115℃におけるロータ寿命時間は17年になっている。ロータ温度Tr=120℃、115℃におけるロータ寿命時間の逆数値は、図6(b)に示すように、それぞれ0.1[1/年]、0.059[1/年]となる。ロータ温度Tr=120℃において累積で10年間使用するとロータ寿命となり、ロータ寿命時間の逆数値の時間積分は1になる。同様に、ロータ温度Tr=115℃において累積で15年間使用すると寿命になり、ロータ寿命時間の逆数値の時間積分は1になる。

0032

実際には、ポンプの運転状態、排気中のガス種ガス流量でロータ温度Trは変化するので、図6(b)に示すようなロータ温度Trとロータ寿命時間の逆数値との相関関係を示すデータを記憶部103に記憶しておく。演算部105は、検出されたロータ温度Trに対応するロータ寿命時間の逆数値を相関関係により求め、歪みに相当する積算値である歪み積算値Ldを算出する。そして、前述したように、算出された歪み積算値Ldとロータ駆動累積時間tとのデータセットD(Ld、t)が記憶部103に記憶される。

0033

例えば、ポンプロータ4aを使用開始してから常にポンプが運転状態にあり、ロータ駆動累積時間tn(=nΔt)が経過するまでに、コントロールユニット2から通信部101に、n個のデータセットD1(Tr1、Δt)、D2(Tr2、2Δt)、・・・、Dn(Trn、nΔt)が時間間隔Δt(ロータ駆動累積時間での時間間隔)で順に入力された場合を考える。このとき、演算部105は、次式(1)に示すように歪み積算値Ld1〜Ldnを算出する。歪み積算値Ld1〜Ldnは、ポンプロータ4aを使用開始してからロータ駆動累積時間tn(Δt、2Δt、・・・、nΔt)だけ経過したときまでの、ロータ寿命時間の逆数値の時間積分に相当する積算値である。式(1)においてf(Tr1)〜f(Trn)は、図6(b)の相関関数から得られるロータ寿命時間の逆数値である。
Ld1=f(Tr1)・Δt
Ld2=f(Tr1)・Δt+f(Tr2)・Δt
・・・
Ldn=f(Tr1)・Δt+f(Tr2)・Δt+・・・+f(Trn)・Δt …(1)
なお、ロータ回転が停止状態の場合、ロータ駆動積算時間は積み増されることがないため、データセットD(Ld、t)は更新されない。

0034

図7は、半導体製造装置に装着された真空ポンプの稼働状態の一例を示す図であり、数ヶ月〜数年に亘る長期的な状況を示したものである。図7において、(a)はロータ回転数、(b)はモータ電流値I、(c)はロータ温度Tr、(d)は歪み積算値Ldを示す。なお、横軸の時間はロータ駆動累積時間ではなく通常の時間を表しているが、歪み積算値Ldに関するt10〜t12,t20についてはロータ駆動累積時間を示している。図7の温度Tminはクリープ歪み速度が無視できない温度範囲の下限温度(例えば、120℃)を示しているが、一般的に、プロセス中はこの下限温度Tmin以上で運転されているので、時間の経過とともに歪み積算値Ldが徐々に上昇している。Tmaxはクリープ歪みを考慮した場合のポンプロータ4aに許容できるロータ上限温度である。

0035

図7に示す例では、ロータ駆動累積時間t10の前後でロータ温度Trが上昇方向に若干変化し、歪み積算値Ldの上昇傾向も変化している。そして、ロータ駆動累積時間t12において歪み積算値Ldが寿命として設定された寿命閾値Ldeに達している。寿命閾値Ldeは安全係数を考慮した寿命閾値である。本実施の形態では、記憶部103に記憶された複数のデータセットDn(Ldn,tn)に基づいて歪み積算値Ldの上昇傾向を近似することにより、歪み積算値Ldが寿命閾値Ldeに達するまでのロータ駆動累積時間である推定寿命t20を推定するようにした。図7の推定寿命t20は、ロータ駆動累積時間t11において推定した場合の寿命である。

0036

寿命推定方法1)
次に、推定寿命t20の推定方法の第1の例について説明する。図8は、ロータ寿命推定装置100で行われる寿命推定処理の一例を示すフローチャートである。

0037

まず、ステップS5では、コントロールユニット2からロータ温度Trに関するデータセット(Trn,tn)が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定されるとステップS10へ進む。ちなみに、tnが前回から増加している場合は入力されたと判断し、増加していない(前回と同じ値)ならば入力されていないと判断する。ステップS10では、入力されたデータセット(Trn,tn)に対して、歪み積算値Ldnを算出して、データセットDn(Ldn,tn)を生成する。生成されたデータセットDn(Ldn,tn)は記憶部103に記憶される。

0038

ステップS20では、データセットDn(Ldn,tn)の数nが1000に達したか否か、すなわち1000個のデータセットD1(Ld1,t1)〜D1000(Ld1000,t1000)が記憶部103に蓄積された否かを判定する。ステップS20においてn=1000と判定されるとステップS30へ進み、データセット数が1000に達していない場合にはステップS5へ進む。記憶部103には、歪み積算値Ldに関するデータセットのデータ記憶領域として、1000データ分のデータ記憶領域が近似計算用に確保されている。

0039

ステップS30では、記憶部103に記憶されているデータセットD1(Ld1,t1)〜D1000(Ld1000,t1000)に基づいて、歪み積算値Ldの将来の変化を推定する近似式を演算部105において算出する。ここでは、近似式として1次式、2次式および3次式の3種類について算出するが、これらに限定されるものではない。1次式、2次式および3次式の基本式を次式(2)〜(4)のように設定し、最小二乗法を適用した演算処理で各係数値を求める。
Ld=b1・t+a1 …(2)
Ld=c2・t2+b2・t+a2 …(3)
Ld=d3・t3+c3・t2+b3・t+a3 …(4)

0040

図9は、ロータ駆動累積時間t11に達するまでに算出された歪み積算値Ldを示す曲線L10と、ロータ駆動累積時間t11おいて記憶部103に記憶されている1000個のデータセットD1(Ld1,t1)〜D1000(Ld1000,t1000)に基づいて、1次式、2次式および3次式で推定した近似曲線L11,L12,L13とを模式的に示したものである。なお、曲線L10は、図7(d)に示した積算値Ldの曲線と同一のものであり、算出された歪み積算値Ld(離散値)を連続曲線で表示したものである。

0041

ステップS40では、ステップS30で算出された近似式を用いて、歪み積算値Ldが図7の寿命閾値Ldeとなるロータ駆動累積時間を求める外挿演算処理を行う。すなわち、近似式で表される歪み積算値Ldの近似曲線L11,L12,L13が寿命閾値Ldeのラインと交差する点を、例えば2分法を適用して求める。

0042

図7(d)に示す例では、実際に算出された歪み積算値Ldを示す曲線L10は、ロータ駆動累積時間t12において寿命閾値Ldeのラインと交差している。一方、図9に示す近似曲線L11,L12,L13は、寿命閾値Ldeのラインと点P1,P2,P3でそれぞれ交差している。点P1,P2,P3におけるロータ駆動累積時間t21,t22,t23が、近似曲線L11,L12,L13を用いた場合の推定寿命、すなわち、ポンプロータ4aを組み付けてからロータ寿命となるまでのロータ駆動累積時間である。なお、過去よりも現在側に重み付けするように、現在値(ロータ駆動累積時間t11のデータセット)近傍を通過する条件を付け加えても良い。

0043

ステップS50では、推定結果を表示部104に表示する。表示する内容としては、例えば、図9に示すように、現在までの歪み積算値Ldの推移を示す曲線L10と、近似曲線L11,L12,L13と、近似曲線L11,L12,L13を採用した場合の推定寿命t21,t22,t23とを表示する。また、推定寿命t21,t22,t23までの稼働可能時間(t21−t11),(t22−t11),(t23−t11)を表示しても良い。なお、寿命推定結果を表示部104に表示すると共に、その寿命推定結果を出力部108から出力するようにしてもよい。

0044

次いで、ステップS60では記憶部103に記憶されている1000組のデータセットD1(Ld1,t1)〜D1000(Ld1000,t1000)を500組に間引く間引き処理が、データ処理部102において実行される。この間引き処理により、記憶部103に記憶されているデータセットは500組となり、500組分の空き領域がデータ記憶領域に生じる。間引き処理の詳細は後述する。

0045

ステップS60の間引き処理が完了すると、間引き処理により生じた空き領域に新たな500組のデータセットを蓄積するためにステップS5へ戻る。このように、1000組のデータセットD1(Ld1,t1)〜D1000(Ld1000,t1000)が揃う毎に近似式の演算が行われ、推定寿命t21,t22,t23が算出される。

0046

(間引き処理)
次に、ステップS60における間引き処理の一例を説明する。なお、間引き処理はデータ処理部102において行われる。通信部101には、コントロールユニット2の通信部24から、n個のデータセット(Trn、tn)が所定間隔Δtで入力される。演算部105は、それらをn個のデータセットDn(Ldn、tn)に変換する。

0047

まず、記憶部103に1000組のデータセットD1(Ld1,t1)、D2(Ld2,t1+Δt)、D3(Ld3,t1+2Δt)、D4(Ld4,t1+3Δt)、・・・、D999(Ld999,t1+998Δt)、D1000(Ld1000,t1+t999Δt)が記憶部103に蓄積される。この1000組のデータセットD1(Ld1,t1)〜D1000(Ld1000,t1+t999Δt)を間引いて、500組のデータセットD1((Ld1+Ld2)/2,t1+Δt/2)、D2((Ld3+Ld4)/2,t1+(5/2)Δt)、・・・D500((Ld999+L1000)/2,(1997/2)Δt)を生成する。

0048

なお、ここでは、前後2つのデータセットに対して歪み積算値の平均値を求め、その平均値を前後2つのデータセットの中間のロータ駆動累積時間における歪み積算値とすることで、間引き処理を行った。ただし、この間引き処理は一例であって、種々の間引き処理が可能である。

0049

上述した1000組のデータセットを用いて近似式を算出した後に、新たな500組のデータセットが記憶部103に蓄積される。そのため、新たな500組のデータセットの1番目のものが取得されるロータ駆動累積時間は、上述した1000組目のデータセットD1000(Ld1000,t1+999Δt)が取得されるロータ駆動累積時間999Δtから近似式演算に要する時間を経た後に取得されたデータセットのロータ駆動累積時間となる。ここでは、近似式演算に要する時間を省略し、新たな500組のデータセットの1番目が取得されるロータ駆動累積時間は999Δt+Δt=1000Δtであるとして説明する。すなわち、新たな500組のデータセットD1001(Ld1001,1000Δt)、D1002(Ld1002,1001Δt)、・・・、D1500(Ld1500,1499Δt)が記憶部103に蓄積される。

0050

その結果、記憶部103には、再び1000組のデータセットが蓄積されたことになる。そして、この1000組のデータセットを用いて、ステップS30の近似式の算出が行われる。そして、ステップS60の間引き処理では、1000組のデータセットD1((Ld1+Ld2)/2,t1+Δt/2)、D2((Ld3+Ld4)/2,t1+(5/2)Δt)、・・・D500((Ld999+Ld1000)/2,(1997/2)Δt)、D1001(Ld1001,1000Δt)、D1002(Ld1002,1001Δt)、・・・、D1500(Ld1500,1499Δt)に対して、間引き処理が行われる。

0051

図10は、間引き処理を説明する図である。図10では、記憶部103のデータ記憶領域に、20組のデータセットが記憶可能である場合を例に図示した。図10において、黒丸がデータセットDn(Ldn,tn)を表しており、横軸はロータ駆動累積時間を表している。また、黒丸の下に表示した数字は、データセットDn(Ldn,tn)の内の何組目かを示すものである。図10では、図示下側から上側に向かって順に、1回目の近似式算出用のデータセットから4回目の近似式算出用のデータセットまでが記載されている。

0052

1回目の近似式演算では、Δt間隔で取得された20のデータセットを用いて近似式が算出され、その後、20個のデータセットに対して間引き処理が行われる。その結果、20個のデータセットは10個のデータセットとなり、記憶部103には10データセット分の空き領域が生じる。この空いたデータ記憶領域に10個のデータセットが新たに蓄積される。

0053

2回目の近似式演算では、間引き処理により生成された10個のデータセットと新たに蓄積された10個のデータセットとに基づいて、近似式が算出される。その後、20個のデータセットに対して間引き処理が行われ、記憶部103のデータ記憶領域に10データセット分の空き領域が確保される。この空き領域に、新たな10個のデータセットが蓄積される。さらに、図10の3回目および4回目も、2回目と同様の処理が行われる。

0054

(寿命推定方法2)
次に、寿命推定に関する2番目の方法について説明する。上述した推定方法では、時系列的に得られた複数の歪み積算値から得られる近似曲線を外挿して推定寿命t21〜t23を求めた。以下に述べる第2の方法では、現在の歪み積算値に基づいて寿命閾値Ldeまでの推定残寿命を求めて、ポンプロータ4aの寿命時期を推定するようにした。

0055

図11は、推定残寿命算出処理の一例を示すフローチャートである。ステップS100では、コントロールユニット2からロータ温度Trに関するデータセット(Trn,tn)が入力されたか否かを判定し、入力されたと判定されるとステップS110へ進む。ステップS110では、ロータ駆動累積時間tnにおける歪み積算値Ldnを次式(5)のように算出する。式(5)において、f(Tr1)〜f(Trn)は、第1の実施の形態で説明した図6(b)の相関関係から求まる、ロータ温度Tr1〜Trnにおけるロータ寿命時間の逆数値である。
Ldn=f(Tr1)・Δt+f(Tr2)・Δt+・・・+f(Trn)・Δt …(5)

0056

ステップS120では、ステップS110で算出した歪み積算値Lnに対する、寿命閾値Ldeまでの許容歪み量(Lde−Ldn)を算出する。ステップS130では、許容歪み量(Lde−Ldn)に基づく推定残寿命を算出する。前述したように、ロータ寿命とロータ温度Trとの間には図6(a)に示すような関係がある。ここでは、ロータ温度Trが所定温度Tsの場合およびロータ上限温度Tmaxの場合のそれぞれについて、次式(6)、(7)のように推定残寿命Δt(Ts),Δt(Tmax)を求めるようにした。なお、t(Ts)はロータ温度TrがTsの場合の推定寿命であり、t(Tmax)はロータ温度TrがTmaxの場合の推定寿命である。
Δt(Ts)=(Lde−Ldn)×t(Ts) …(6)
Δt(Tmax)=(Lde−Ldn)×t(Tmax) …(7)

0057

なお、所定温度Tsとしては、現在時点におけるロータ温度Tr、現在までのロータ温度Trの平均値、予め入力部107から入力された設定値などがある。

0058

ステップS140では、推定結果を表示部104に表示する。図12は表示例を示す図であり、現在のロータ駆動累積時間t11までの歪み積算値を示す曲線L10、推定寿命t(Ts),t(Tmax)、現在のロータ駆動累積時間t11から推定寿命t(Ts),t(Tmax)までの歪み変化を示す線分L30,L31、推定残寿命Δt(Ts),Δt(Tmax)が表示されている。

0059

なお、上述した第1の推定方法も合わせて実行し、図12表示画面上に、近似曲線L11,L12,L13も表示するようにしても良い。

0060

(時間情報として検出時刻を用いる場合)
時間情報として検出時刻を用いる場合には、コントロールユニット2からロータ寿命推定装置100に入力されるデータセット(Tr、t)は、ロータ温度Trと検出時刻との組み合わせになる。ところで、図7のように長期間にわたるロータ回転状況を見ると、ポンプ停止の際にはロータ回転数がゼロまで低下する。この停止期間中はクリープ歪みは発生しないので、上述した説明では、その期間を除外する意味でロータ駆動累積時間を用いた。しかしながら、時間情報として検出時刻を用いても良い。この場合も、上述した式(1)のtをロータ駆動累積時間から検出時刻に置き換えることで、歪み積算値Ldnを算出することができる。

0061

ただし、tに検出時刻を用いる場合、クリープ歪みがほぼ無視できるロータ回転数(例えば、ポンプ停止中)であっても、歪み積算値Ldnの積算が実行されることになる。すなわち、式(1)の右辺には、そのようなロータ回転数のときに検出されたロータ温度温度Trnに基づく項f(Trn)・Δtも含まれていることになる。しかしながら、そのようなロータ回転数の場合には、ロータ温度Trnは図6に示すロータ温度110℃よりも低い場合が多く、クリープ歪みは非常に小さいか、または無視することができる。すなわち、ロータ寿命時間の逆数値f(Trn)は非常に小さな値であるため、例えばポンプ停止期間があったとしても、ロータ駆動累積時間を用いた場合の歪み積算値Ldnと検出時刻を用いた場合の歪み積算値Ldnとの差は、非常に小さい。なお、歪み積算値Ldnを用いた処理については、tにロータ駆動累積時間を用いた場合と同様なので、ここでは説明を省略する。

0062

(C1)以上説明したように、ロータ寿命推定装置100の演算部105は、ポンプロータ4aのクリープ歪み速度相当量と温度との相関関係(図6(b))、ロータ温度センサ8により検出されるロータ温度Trおよび時間情報であるロータ駆動累積時間や検出時刻に基づいて、ポンプロータ4aのクリープ歪みに相当する歪み相当量である歪み積算値Ldを算出する。そして、演算部105は、歪み積算値Ldに基づいてロータ寿命、例えば、ポンプロータ4aのクリープ歪みが寿命とされる値に達するまでの時間や、現在からクリープ歪みが寿命とされる値に達するまでの時間(推定残寿命)を推定する。推定されたロータ寿命に関する情報は、表示部104に表示されたり、出力部108から出力されたりする。

0063

その結果、クリープ歪みの進展によりロータ寿命となる前に、ロータ交換等のメンテナンスを行うことができる。

0064

(C2)時間情報としては、計時部を真空ポンプ側に設けて温度検出のタイミングに合わせて生成しても良いし、計時部をロータ寿命推定装置100側に設けて真空ポンプ側から検出温度を取得するタイミングに合わせて生成しても良い。そして、ロータ温度センサ8により経時的に検出される複数のロータ温度Trのそれぞれに関して、時間情報(検出時刻やロータ駆動累積時間)tと歪み積算値Ldとから成るデータセットD(Ld、t)をデータ記憶領域に記憶する記憶部103とを備え、演算部105により、記憶部103に記憶された複数のデータセットD(Ld、t)に基づいて将来の歪み積算値Ldの時間的な変化を推定し、将来の歪み積算値Ldがロータ寿命として設定された寿命閾値Ldeに達するロータ寿命を推定するようにしても良い。

0065

(C3)さらに、データ処理部102において、複数のデータセットD(Ld、t)の内、時間情報が演算部105による推定の時刻により近いデータセットD(Ld、t)に、より大きな重み付けを行うようにしても良い。

0066

(C4)例えば、図9に示したように、記憶部103に記憶された複数のデータセットDn(Ldn、tn)の数を減少させる平均化処理を行うと共に、平均化処理により生じるデータ記憶領域の空き領域に新たなデータセットを記憶させる。このようなデータ処理を行うことにより、直近使用傾向に近いロータ寿命を推定することができると共に、記憶部103の記憶領域を節約することができる。

0067

(C5)また、ロータ寿命として設定された歪み相当量閾値である寿命閾値Ldeと前記歪み積算値Ldとの差分に基づいて、現在からロータ寿命となる時点までのロータ駆動累積時間である残寿命を推定するようにしても良い。

0068

−第2の実施の形態−
上述した第1の実施の形態では、取得された歪み積算値から寿命を推定したが、第2の実施の形態では、真空ポンプのオーバーホール時にポンプロータ4aの歪み量を実測し、その実測された歪み量に基づいてロータ寿命を推定するようにした。

0069

ところで、半導体FPD用途におけるエッチングプロセスで使用されるターボ分子ポンプでは、反応生成物堆積しやすく、堆積物洗浄除去するためのオーバーホール作業を定期的に実施するのが一般的である。そこで、本実施形態では、オーバーホールのタイミングにポンプロータ4aの歪みを実測し、その実測データを利用してロータ寿命の推定を行うようにした。

0070

例えば、図5に示すように、ロータ駆動累積時間to1、to2、to3、to4のそれぞれにおいてオーバーホールが行われるものとする。そして、当初組立時(t=0に対応)と、オーバーホールが行われるロータ駆動累積時間to1、to2、to3、to4の各々において、ポンプロータ4aの寸法を計測する。計測を行う箇所としては、クリープ歪みが最も大きくなる場所が好ましい。クリープ歪みが最も大きくなる場所は、設計の段階で判明しているので計測に支障を来さない。また、計測の手間を考えて、計測しやすい箇所で、かつ、最大歪みの箇所との歪み関係が明確になっている箇所を計測するようにしても良い。例えば、図13に示すような、ポンプロータ4aの円筒部42の下端に近い箇所の内径寸法dを計測する。

0071

当初組立時の内径寸法をd0とし、n回目(ロータ駆動累積時間ton)のオーバーホール時に計測された内径寸法をdnとすると、そのときの永久歪み(クリープ歪み)εpnは次式(8)で表される。
εpn=(dn−d0)/d0 …(8)

0072

この永久歪みεpnは、遷移クリープ歪みεtと定常クリープ歪みεsnとの和(εt+εsn)で表される。ポンプ稼働初期において発生する遷移クリープ歪みεtについては、試験を行って実測したりシミュレーションにより演算したりして、別途取得しておく。本実施の形態では、実測により得られた永久歪みεpnから別途取得しておいた遷移クリープ歪みεtを差し引いた定常クリープ歪みεsn(=εpn−εt)を用いて、ロータ寿命を推定する。図5に示すように、定常クリープにおいては歪み速度がほぼ一定となるので、定常クリープ歪みεsnの部分のみについて外挿近似を行うことにより、近似精度をより高めることができる。

0073

処理手順を説明すると以下のようになる。
まず、当初組立時に内径寸法dが計測される。計測された内径寸法は、実測内径寸法の初期値d0としてロータ寿命推定装置100の入力部107にマニュアル入力される。ロータ寿命推定装置100は、入力された初期値d0から式(8)に基づいて永久歪みεp0を算出する。この場合、εp0=0となるので、データセット(0、0)を記憶部103に記憶する。真空ポンプを装置に装着して運転を開始すると、コントロールユニット2の計時部25は、モータ制御部20からのモータ回転情報に基づいてロータ駆動累積時間の計測を開始する。ポンプ停止時には、停止時のロータ駆動累積時間をいったん計時部25内の記憶部(不図示)に記憶し、ポンプ運転再開時には、記憶部に記憶されたロータ駆動累積時間を読み出し、累積時間の計測を再開する。

0074

次いで、1回目のオーバーホール時にポンプロータ4aの内径寸法dが計測される。オペレータは、コントロールユニット2の電源をオンにして、計測された実測内径寸法d1をロータ寿命推定装置100にマニュアル入力する。なお、本実施の形態でもロータ寿命推定装置100はコントロールユニット2から電源が供給される構成となっており、コントロールユニット2の電源がオンされるとロータ寿命推定装置100もオン状態となる。ロータ寿命推定装置100に実測内径寸法d1が入力されると、ロータ寿命推定装置100は以下のような寿命推定処理を実行する。

0075

ロータ寿命推定装置100は、実測内径寸法d1に基づいて永久歪みεp1を式(8)により算出し、算出された永久歪みεp1と予め記憶部103に記憶されている遷移クリープ歪みεtとに基づいて、定常クリープ歪みεs1(=εp1−εt)を求める。ロータ寿命推定装置100は計時部25からロータ駆動累積時間to1を取得し、定常クリープ歪みεs1と運転累積時間to1とから成るデータセット(εs1、to1)を記憶部103に記憶する。演算部105は、2つのデータセット(0、0),(εs1、to1)に基づいて外挿近似関数E(t)を最小二乗法等で求める。

0076

説明は省略するが、2回目、3回目、4回目、・・・のオーバーホールにおいても1回目の場合と同様の処理が行われる。図14は、外挿近似関数E(t)を示す図であり、ラインE1、E2,E3,E4が、1回目、2回目、3回目、4回目のオーバーホールにより得られる外挿近似関数E(t)を示している。また、曲線L21は、図5に示した曲線L21と同じものである。外挿近似関数E(t)を示すラインE1〜E4は定常クリープ歪みに関するものなので、これらのラインE1〜E4に対する寿命閾値を示すラインはLde−εtで表されている。

0077

曲線L21上の点P21,p22,p23,p24における歪みは、オーバーホール時(それぞれのロータ駆動累積時間はto1、to2、to3、to4である)に実測される内径寸法dnに基づく永久歪みεpnに対応している。それらの永久歪みεp1,εp2,εp3,εp4から遷移クリープ歪みεtを差し引いたものが定常クリープ歪みの実測値である。マークM11〜M14は、各オーバーホール時に実測される定常クリープ歪みを示している。そして、ラインE1〜E4と寿命閾値を表すラインLde−εtとの交差する点がロータ寿命を示している。

0078

例えば、1回目のオーバーホール時の歪み実測値に基づく近似関数のラインE1は、次回(2回目)のオーバーホールが予定されているロータ駆動累積時間to2よりも図示右側で寿命閾値ラインLde−εtと交差するので、次回のオーバーホールまでにロータ寿命となるおそれがない。ロータ寿命推定装置100は、推定結果を表示部104に表示する。推定結果としては、例えば、図14に示すようなラインE1、寿命閾値ラインLde−εt、定常クリープ歪みの実測値を示すマークM11、ロータ寿命までの稼働可能時間などがある。稼働可能時間は、ラインE1から推定されるロータ寿命とオーバーホール時のロータ駆動累積時間との差で表される。

0079

一方、4回目のオーバーホールにおける近似関数のラインE4は次回(5回目)のオーバーホールの手前で寿命閾値ラインLde−εtと交差しており、次回のオーバーホールの前にロータ寿命となるおそれがある。よって、このような推定結果が表示部104に表示された場合には、オペレータはロータ交換時期であると認識することができる。このような寿命推定に基づいてロータ交換処理を行うことで、ポンプ運転中にロータ寿命となるのを防止することができる。

0080

なお、上述した第2の実施の形態では時間情報としてロータ駆動累積時間を用いる場合を例に説明したが、第1の実施の形態の場合と同様に、ロータ駆動累積時間に代えて検出時刻を時間情報として用いても良い。

0081

(C6)上述した第2の実施の形態では、堆積物除去のためのメンテナンスのタイミングや、オーバーホールなどのポンプ分解のタイミングに取得可能なポンプロータ4aの歪み実測データと、歪み実測時の時間情報(検出時刻やロータ駆動累積時間)とから成る複数のデータセット(εsn、ton)に基づいて、実測時点からロータ寿命となるまでのロータ残寿命を演算部105において推定するようにした。そして、推定されたロータ残寿命に関する情報を表示部104に表示したり、出力部108から出力したりする。

0082

その結果、次回のメンテナンス時期までにロータ寿命となるか否かが判断でき、ポンプ運転の最中にロータ寿命となるのを防止することができる。

0083

−第3の実施の形態−
第3の実施形態は、上述した第1の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせたもので、歪み積算値をオーバーホール時に実測される永久歪みεpnで補正するようにしたものである。図15は第3の実施形態を説明する図であり、曲線L10は図9で示した歪み積算値Ldを示す曲線である。歪み積算値Ldは、永久歪みεpがロータ寿命のときの歪み(寿命歪み)に達したときに1となるように設定されている。よって、(永久歪みεp)/(寿命歪み)が歪み積算値Ldに相当している。

0084

上述したように、1回目のオーバーホールでは、内径寸法dを実測することにより組み付け時から1回目のオーバーホールまでに生じる永久歪みεp1の実測値が取得される。マークP30は、1回目のオーバーホール時に実測された永久歪みεp1に関して、(永久歪みεp1)/(寿命歪み)を示している。図15に示す例では、演算により算出された歪み積算値Ldと(永久歪みεp1)/(寿命歪み)との間に、ΔLεだけのズレが生じている。このズレΔLεは、歪み積算値Ldの演算誤差に相当している。

0085

オペレータが実測内径寸法d1をロータ寿命推定装置100の入力部107に入力すると、演算部105においてズレΔLεが算出され、記憶部103に記憶される。そして、1回目のオーバーホール以後は、図6(b)のロータ寿命時間の逆数値を用いて算出される歪み積算値LdをLdr=Ld+ΔLεのように補正する。そして、補正後の歪み積算値Ldrを用いて第1の実施の形態で記載したロータ寿命推定が行われる。図15の曲線L10aは、補正後の歪み積算値Ldrを示したものである。説明は省略するが、2回目以降のオーバーホールにおいても、実測された内径寸法dnに基づいて同様の補正処理が施される。

0086

第3の実施の形態では、歪み積算値Ldを歪み実測値で補正することで、歪み積算値Ldの演算誤差を補正することができる。その結果、より精度の高いロータ寿命推定を行うことができる。

0087

(変形例)
図1に示す構成では、データセット(Tr、t)をコントロールユニット2からロータ寿命推定装置100に入力する構成としたが、コントロールユニット2からロータ温度Trをロータ寿命推定装置100へ入力し、時間情報としてロータ温度Trが入力された時刻をロータ寿命推定装置100側で生成するようにしても良い。そして、入力されたロータ温度Trと生成した時間情報とのデータセットに基づいて、データセットD(Ld、t)を生成する。データセットD(Ld、t)を用いた処理は、上述した実施の形態と同様である。

0088

また、図1に示す構成では、データセットD(Ld、t)をロータ寿命推定装置100において生成したが、コントロールユニット2に演算部を設けてそこで生成するようにしても良い。その場合、図6(b)に示す相関関係はコントロールユニット2の記憶部に記憶させるのが望ましい。また、ポンプ本体1に相関関係を記憶させた記憶部を設け、ポンプ本体側からコントロールユニット2側に読み込むようにしても良い。さらに、ロータ寿命推定装置100とコントロールユニット2とを一体に構成しても良い。

0089

上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。例えば、ターボ分子ポンプに限らず他の真空ポンプにも適用可能である。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。

0090

1…ポンプ本体、2…コントロールユニット、8…ロータ温度センサ、10…モータ、23…取得部、24…通信部、27…電流検出部、43…回転センサ、100…ロータ寿命推定装置、101…通信部、102…データ処理部、103…記憶部、104…表示部、105…演算部、107…入力部、108…出力部、1000…真空ポンプ

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