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技術 溶銑の精錬方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 小野慎平田村鉄平
出願日 2016年7月7日 (4年5ヶ月経過) 出願番号 2016-135185
公開日 2018年1月11日 (2年11ヶ月経過) 公開番号 2018-003132
状態 特許登録済
技術分野 炭素鋼又は鋳鋼の製造
主要キーワード 耐用限界 飛散距離 歩留まりロス バースト発生 ガス密度ρ 悪化要因 集塵水中 ノズル断面
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2018年1月11日)のものです。
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図面 (4)

課題

脱炭吹錬におけるダスト発生量を抑えるととともに、装置や部品交換頻度を抑えて安定的に脱炭吹錬を行う溶銑精錬方法を提供する。

解決手段

上吹きランスを用いて溶銑に酸素を吹きつけて脱炭吹錬を行う際に、当該上吹きランスの中心軸を中心とする同一円周上に等間隔で配置された3孔以上のノズルを有する上吹きランスを用い、酸素ジェットが溶銑に衝突したとき時の運動エネルギーである指標E>15000、かつランス先端地金発生源である火点との距離との比を表す指標R<6.5を満たすように吹錬を行う。

概要

背景

従来、溶鉄脱炭精錬を効率よく進行させる方法として、転炉内溶銑攪拌強化することが効果的であることは広く知られている。そのため、現在用いられている転炉での脱炭吹錬の多くは、転炉の上方に設置されたランスから酸素ジェット酸素ガス)を上吹きすることに加え、溶銑の攪拌を強化するために転炉の炉底部底吹羽口を設けて、酸素炭化水素不活性ガス等を底吹羽口から吹き込んでいる。

このような転炉吹錬法において、装入した鉄分の歩留を悪化させる要因としては、スラグ中へ鉄分が酸化鉄として混入する酸化鉄ロスや、スラグ中への粒鉄の混入、ダスト発生による鉄分ロス等がある。

上記のダスト生成機構としては、上吹される酸素ジェットが直接溶銑衝突して2000〜2500℃まで高温になっている火点で鉄分が蒸発してヒュームダストが生成する機構と、脱炭反応COガス気泡バーストバブルバースト)する際にバブルバーストダストが生成する機構とがある。さらに、バブルバーストが発生したり、酸素ジェットが溶銑の浴面に形成するキャビティリップ部等から溶銑が直接飛散したりすることによって、スピッティングが発生する。このスピッティングで飛散した粒子は、飛散中に酸素ジェットによって脱炭(2次バースト)され、細かい溶銑が飛散するため、ダストの発生源となり得る。ダストの発生は、転炉における鉄分の歩留を低下させるので大きなコス悪化要因となっている。

このようなダストの発生を鑑みて、従来から様々な対策が講じられてきた。ヒュームダストを抑制する方法としては、例えば特許文献1には、上吹酸ノズルに連通する通孔から、CO2、CaCO3、水蒸気、水、Mn鉱石鉄鉱石等の冷却剤の1種または2種以上の混合物を火点に吹き込み、火点温度を下げることによって火点で鉄分が蒸発しないようにする方法が開示されている。また、特許文献2には、ランスノズルの形状を変更することにより火点の面積を小さくする方法等が開示されている。

しかしながら、特許文献1に開示された方法は、火点の冷却に相当量冷却材を要するため、冷却材のコストが余分にかかる上、吹き込んだ冷却材により吹錬の熱源が減少し、熱的自由度が制限されるという欠点を有する。また、特許文献2に開示された方法では、ダスト低減効果はあるもののその効果が不十分であり、かつ特許文献2に開示された方法では、ノズル傾斜角広角化することに伴って炉壁溶損は解消されないという問題がある。

一方、スピッティングを抑制する方法として、例えば特許文献3には、酸素ジェットにより溶銑の浴面上に形成されるキャビティの深さLと径Dとの比L/Dを2より大きい値に制御することで、酸素ジェットが溶銑の浴面に与えるエネルギーのうち、スピッティングに寄与するエネルギーの割合を減少させ、ダスト量を抑制する方法が開示されている。

しかし、特許文献3に記載の方法を実現するには、ランス−湯面間距離を1m以下とする必要があり、この場合、スラグ量が溶銑1tあたり40kg以下のレススラグ吹錬においては、溶鉄表面からの輻射熱によりランス先端が溶損するという問題がある。また、特許文献3にはキャビティ深さLの算出方法を明確に規定しておらず、キャビティ深さLの算出方法によってL/Dとランス高さとの関係は変わらないと記載されているが、実際は大きく変化するので、一般的に実施するに耐えうる範囲とは言い難い。例えば、川らの式(後述する(3)式)でLを算出し、特許文献3の実施例を実施した場合、L0を約2mと仮定するとL/L0>1となる場合もあり、浴深の耐火物損耗する可能性が非常に高い。

概要

脱炭吹錬におけるダストの発生量を抑えるととともに、装置や部品交換頻度を抑えて安定的に脱炭吹錬を行う溶銑の精錬方法を提供する。上吹きランスを用いて溶銑に酸素を吹きつけて脱炭吹錬を行う際に、当該上吹きランスの中心軸を中心とする同一円周上に等間隔で配置された3孔以上のノズルを有する上吹きランスを用い、酸素ジェットが溶銑に衝突したとき時の運動エネルギーである指標E>15000、かつランス先端と地金発生源である火点との距離との比を表す指標R<6.5を満たすように吹錬を行う。

目的

本発明は、脱炭吹錬におけるダストの発生量を抑えるととともに、ランス交換の頻度を抑えて安定的に脱炭吹錬を行う溶銑の精錬方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

上吹きランスを用いて溶銑酸素ガスを吹きつけて脱炭吹錬を行う溶銑の精錬方法であって、前記上吹きランスは当該上吹きランスの中心軸を中心とする同一円周上に等間隔で配置された3孔以上のノズルを有し、以下の(1)式〜(6)式でそれぞれ定義される指標Eおよび指標Rが、各々以下の(7)式および(8)式の条件を満たすように吹錬を行うことを特徴とする溶銑の精錬方法。E=ρg×L/1000×(D/2000)2×π×V2・・・(1)R=(E・cosθ/H)・・・(2)dV0=0.73(L+H)L0.5・・・(3)D=2(H/cosθ)×tanα・・・(4)V0=(QO2/n)/{π(d/2000)2 }・・・(5)V=V0×d/D・・・(6)E>15000・・・(7)R<6.5・・・(8)ここで、ρgはガス密度(kg/m3)を表し、Lは上吹きによる凹み深さ(mm)を表す。Hは、吹錬前の前記溶銑の浴面の高さを0として、吹錬での送酸期間の10〜90%で上下するランスの高さの平均値(mm)を表し、θはノズル傾斜角(deg)を表す。Dは火点径(mm)を表し、αは酸素ジェット拡がり半角(deg)を表す。QO2は吹錬での送酸期間の10〜90%における送酸速度の平均値(Nm3/s)を表し、nは上吹きランスのノズルの孔数を表す。dはノズル断面積が最小となる部位の直径(mm)を表し、V0はノズル断面積が最小となる部位における酸素ガスの線流速(m/s)を表す。また、Vは浴面における酸素ガスの流速を表す。

技術分野

0001

本発明は、例えば、製鋼用転炉において酸素ガス溶銑に吹き付けて脱炭吹錬を行う溶銑の精錬方法に関する。

背景技術

0002

従来、溶鉄脱炭精錬を効率よく進行させる方法として、転炉内の溶銑の攪拌強化することが効果的であることは広く知られている。そのため、現在用いられている転炉での脱炭吹錬の多くは、転炉の上方に設置されたランスから酸素ジェット(酸素ガス)を上吹きすることに加え、溶銑の攪拌を強化するために転炉の炉底部底吹羽口を設けて、酸素炭化水素不活性ガス等を底吹羽口から吹き込んでいる。

0003

このような転炉吹錬法において、装入した鉄分の歩留を悪化させる要因としては、スラグ中へ鉄分が酸化鉄として混入する酸化鉄ロスや、スラグ中への粒鉄の混入、ダスト発生による鉄分ロス等がある。

0004

上記のダスト生成機構としては、上吹される酸素ジェットが直接溶銑衝突して2000〜2500℃まで高温になっている火点で鉄分が蒸発してヒュームダストが生成する機構と、脱炭反応COガス気泡バーストバブルバースト)する際にバブルバーストダストが生成する機構とがある。さらに、バブルバーストが発生したり、酸素ジェットが溶銑の浴面に形成するキャビティリップ部等から溶銑が直接飛散したりすることによって、スピッティングが発生する。このスピッティングで飛散した粒子は、飛散中に酸素ジェットによって脱炭(2次バースト)され、細かい溶銑が飛散するため、ダストの発生源となり得る。ダストの発生は、転炉における鉄分の歩留を低下させるので大きなコス悪化要因となっている。

0005

このようなダストの発生を鑑みて、従来から様々な対策が講じられてきた。ヒュームダストを抑制する方法としては、例えば特許文献1には、上吹酸ノズルに連通する通孔から、CO2、CaCO3、水蒸気、水、Mn鉱石鉄鉱石等の冷却剤の1種または2種以上の混合物を火点に吹き込み、火点温度を下げることによって火点で鉄分が蒸発しないようにする方法が開示されている。また、特許文献2には、ランスノズルの形状を変更することにより火点の面積を小さくする方法等が開示されている。

0006

しかしながら、特許文献1に開示された方法は、火点の冷却に相当量冷却材を要するため、冷却材のコストが余分にかかる上、吹き込んだ冷却材により吹錬の熱源が減少し、熱的自由度が制限されるという欠点を有する。また、特許文献2に開示された方法では、ダスト低減効果はあるもののその効果が不十分であり、かつ特許文献2に開示された方法では、ノズル傾斜角広角化することに伴って炉壁溶損は解消されないという問題がある。

0007

一方、スピッティングを抑制する方法として、例えば特許文献3には、酸素ジェットにより溶銑の浴面上に形成されるキャビティの深さLと径Dとの比L/Dを2より大きい値に制御することで、酸素ジェットが溶銑の浴面に与えるエネルギーのうち、スピッティングに寄与するエネルギーの割合を減少させ、ダスト量を抑制する方法が開示されている。

0008

しかし、特許文献3に記載の方法を実現するには、ランス−湯面間距離を1m以下とする必要があり、この場合、スラグ量が溶銑1tあたり40kg以下のレススラグ吹錬においては、溶鉄表面からの輻射熱によりランス先端が溶損するという問題がある。また、特許文献3にはキャビティ深さLの算出方法を明確に規定しておらず、キャビティ深さLの算出方法によってL/Dとランス高さとの関係は変わらないと記載されているが、実際は大きく変化するので、一般的に実施するに耐えうる範囲とは言い難い。例えば、川らの式(後述する(3)式)でLを算出し、特許文献3の実施例を実施した場合、L0を約2mと仮定するとL/L0>1となる場合もあり、浴深の耐火物損耗する可能性が非常に高い。

先行技術

0009

特開昭58−193309号公報
特開平9−41020号公報
特開平2−111809号公報

発明が解決しようとする課題

0010

上記従来技術の課題を鑑みて、本発明は、脱炭吹錬におけるダストの発生量を抑えるととともに、ランス交換頻度を抑えて安定的に脱炭吹錬を行う溶銑の精錬方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するために、ダスト生成機構に着目し、転炉における上吹き酸素条件とダスト量との関係を調査した。そして、上吹酸素条件(送酸速度、ランス高さおよびランス形状)とダスト発生量との関連性について検討した結果、以下を知見した。

0012

本発明は、酸素ジェット(酸素ガス)が溶銑に衝突することにより生じる溶銑の凹み深さL(mm)、凹みの直径(火点径)D(mm)および酸素ジェットと溶銑との衝突面における酸素ジェットの流速V(m/s)により(1)式で規定される指標E(kg・m2/s2)と、指標E、ランス高さH(mm)およびノズル傾斜角θ(deg)により(2)式で規定される指標Rとが所定の範囲を満足するような吹錬条件を規定するものである。なお、ノズル傾斜角θは、ランス中心軸ノズル中心軸とのなす角を表す。
E=ρg×L/1000×(D/2000)2×π×V2 ・・・(1)
R=(E・cosθ/H) ・・・(2)

0013

ここで、指標Eは酸素ジェットと鋼浴との衝突界面における酸素ジェットの運動エネルギーを代表する指標であり、酸素ジェットが溶銑に衝突することにより生じる凹みを、高さL、直径Dの円柱とみなしたときに、凹み体積相当の質量の酸素ガスが速度Vで溶銑に衝突したときの運動エネルギーである。指標Eがある値を超えることによって、酸素ジェットと溶銑との衝突面が不安定領域遷移してダスト発生機構が変化し、ダスト発生量が減少する。すなわち、酸素ジェットが気液衝突界面に深く潜り込むことにより、バブルバーストが発生する位置が溶銑深くに押し込まれ、脱炭反応時の飛沫の発生が大幅に抑制される。また、指標Eが大きくなるほどダストが減少する。そこで、本発明者らは調査により指標Eの閾値を明らかにした。指標Eの算出に関して、溶銑の凹み深さL、凹みの直径(火点径)D、ノズル出口ノズル断面積が最小となる部位)における酸素ジェットの線流速V0(m/s)および浴面における酸素ジェットの流速V、はそれぞれ以下の式(3)式〜(6)式を用いて算出した。
dV0=0.73(L+H)L0.5 ・・・(3)
D=2(H/cosθ)×tanα ・・・(4)
V0=(QO2/n)/{π(d/2000)2 } ・・・(5)
V=V0×d/D ・・・(6)

0014

ここで、dはノズル断面積が最小となる部位の直径(mm)を表している。αは酸素ジェットの拡がり半角(deg)を表しており、実験的に計測では8°〜12°と言われていることから本発明ではα≒10°として計算する。QO2は脱炭吹錬での送酸期間の10〜90%における送酸速度の平均値(Nm3/hr)を表し、nはランスのノズルの孔数を表している。なお、ランス高さHは、吹錬前の溶銑の浴面の高さを0として、送酸期間の10〜90%で上下するランスの高さの平均値を表している。

0015

一方、指標Rは指標Eと、ランス先端と地金発生源である火点との距離との比を表している。酸素ジェットが溶銑に衝突したとき時の運動エネルギーである指標Eが地金の飛散距離と比例していると考えると、指標Eが小さいほどランス先端へ地金が衝突する頻度が低減する。すなわち、指標Eを大きくしつつ指標Rを小さく保つことにより、地金が付着することによるランス交換頻度を抑えつつダストを低減することができる。

0016

このように、指標Eは衝突界面における酸素ジェットの運動エネルギーを表すため、指標Eを増加させるほどランスへの地金付着が顕著となり、操業性が悪化してしまうことも調査の過程で知見した。本発明者は、指標Eが地金の飛散距離を代表していると考え、指標Eとランス−火点間の距離との比を表す指標Rを小さくすることにより地金の付着を抑制可能であることを知見し、操業性を悪化させない指標Rの好適な範囲を明確にした。すなわち、E>15000の範囲で指標Eを極力大きくしつつ、R<6.5を満足するよう上吹き条件を調整することにより安定的に操業可能なレベルでダスト低減効果を享受できるという考えに至った。

0017

上記から本発明を以下のように纏めることができる。
(1)上吹きランスを用いて溶銑に酸素ガスを吹きつけて脱炭吹錬を行う溶銑の精錬方法であって、前記上吹きランスは当該上吹きランスの中心軸を中心とする同一円周上に等間隔で配置された3孔以上のノズルを有し、以下の(1)式〜(6)式でそれぞれ定義される指標Eおよび指標Rが、各々以下の(7)式および(8)式の条件を満たすように吹錬を行うことを特徴とする溶銑の精錬方法。
E=ρg×L/1000×(D/2000)2×π×V2 ・・・(1)
R=(E・cosθ/H) ・・・(2)
dV0=0.73(L+H)L0.5 ・・・(3)
D=2(H/cosθ)×tanα ・・・(4)
V0=(QO2/n)/{π(d/2000)2 } ・・・(5)
V=V0×d/D ・・・(6)
E>15000 ・・・(7)
R<6.5 ・・・(8)
ここで、ρgはガス密度(kg/m3)を表し、Lは上吹きによる前記溶銑の凹み深さ(mm)を表す。Hは、吹錬前の前記溶銑の浴面の高さを0として、吹錬での送酸期間の10〜90%で上下するランスの高さの平均値(mm)を表し、θはノズル傾斜角(deg)を表す。Dは火点径(mm)を表し、αは酸素ジェットの拡がり半角(deg)を表す。QO2は吹錬での送酸期間の10〜90%における送酸速度の平均値(Nm3/s)を表し、nは上吹きランスのノズルの孔数を表す。dはノズル断面積が最小となる部位の直径(mm)を表し、V0はノズル断面積が最小となる部位における酸素ガスの線流速(m/s)を表す。また、Vは浴面における酸素ガスの流速(m/s)を表す。

発明の効果

0018

本発明によれば、脱炭吹錬におけるダストの発生量を抑えるととともに、ランス交換の頻度を抑えて安定的に脱炭吹錬を行うことができる。

図面の簡単な説明

0019

指標Eとダスト指数との関係を示す図である。
指標Rとランス寿命指数との関係を示す図である。
指標Eと指標Rとの関係を示す図である。

0020

以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。

0021

本発明の溶銑の精錬方法では、上吹きランス(以下、ランス)を用いて溶銑に酸素ジェットを吹きつけて脱炭吹錬を行う。このとき、ランスは、ランスの中心軸を中心とする同一円周上に等間隔で3孔以上のノズルを有しているものを用いる。ノズルが1または2孔の場合は、酸素流量が多くなると火点面積の調整が困難になるからである。したがって、以下、ランスに3孔以上のノズルを有していることを前提に説明する。

0022

本発明者らは、300t規模の転炉で行う脱炭吹錬において、上吹き酸素流量(送酸速度QO2)、ランス形状およびランス−湯面間距離(ランス高さH)を変更したときの指標Eとダスト発生量(ダスト指数)との関係、および指標Rと地金付着量(ランス寿命指数)との関係を調査した。

0023

まず、組成が質量%でC:4.2%、Si:0.4%、Mn:0.2%、P:0.1%、S:0.001%を含有する溶銑を転炉に装入し、上吹き酸素流量を4.0〜6.0Nm3/min/t、底吹きAr流量を0.25Nm3/min/tとしてC:0.3%以下となるまで吹錬を行い、吹錬中のダスト発生量を調査した。ランスには多孔ラバールランスを用い、底吹き羽口数は4とした。そして、ランス−湯面間距離(ランス高さH)を1800〜4000mmの範囲で制御した。

0024

なお、本発明に係る指標Eおよび指標Rの計算において、ガス密度ρgは1.429kg/m3とし、ランス高さHおよび送酸速度QO2の数値は、各吹錬での送酸期間の10〜90%における平均値を用いた。

0025

ここで、ダストとは、転炉排ガス中に含まれる鉄粒子を指し、発生量原単位10〜30kg/steel−tと一般に言われている。ダストは酸素ジェットの溶銑への衝突や脱炭反応による飛散する粒鉄および火点から蒸発するさらに微細な粒鉄が起源と言われている。そこで、以下の説明においては、集塵水中ダスト濃度を測定し、基準となる条件での集塵水中のダスト濃度を1として規格化した値をダスト指数と定義する。つまり、ダスト指数が小さいほど低ダストであることを示す。

0026

また、転炉のランスは通常、使用チャージ数250〜350程度で耐用限界を迎えるが、地金の衝突、付着、剥離等による損耗が大きい場合は少ないチャージ数で耐用限界を迎える。例えば、上吹き条件によってはランス先端へ地金が付着する量および頻度が増加すると、相対的にランスの損耗速度が高まり、ランス寿命は短くなる。そこで、以下の説明では、基準となる条件で使用したランスの使用チャージ数を1として規格化した値をランス寿命指数とした。つまり、ランス寿命指数が大きいほど長寿命であることを示す。

0027

図1は、指標Eとダスト指数との関係を示す図であり、E=5000〜10000でのダスト発生量の平均値をダスト指数=1と基準値に定め、その基準値との対比を指数化したものである。ダストの生成起因は多様である上に、ダストロスおよびスピッティングによる粒鉄飛散ロスとは実操業では区別が難しいものなので、この調査ではそれらのロスを一括して「ダスト発生量」と名付けている。

0028

図1に示したように、Eが12000を超える付近からダスト発生量が低下し始め、それが15000を超えるとダスト指数が0.85以下と急激にダスト発生量が低下することが確認できた。これは酸素ジェットが溶銑に衝突する界面が不安定領域に遷移し、ダスト発生機構が変化してダスト発生量が減少したものと考えられる。すなわち、酸素ジェットが気液衝突界面に深く潜り込むことにより、バブルバーストの発生位置が溶銑深くに押し込まれ、脱炭反応時の飛沫発生が大幅に抑制されたためと考えられる。

0029

E>12000の領域では、指標Eが増加するほどダスト発生量が低下した。また、E≦10000では、指標Eを増加させてもダストの低減効果はほとんどなかった。これはE≦10000では、酸素ジェットが溶銑に衝突する界面が安定していて、火点近傍でダストが大量に発生したためと考えられる。以上から、転炉ダストを大幅に低減させる条件は、E>12000の領域で指標Eを増加させることであると明確化することができた。指標Eの上限値は特に限定されないが、指標Eが高すぎてもそれに見合ったダスト発生量の低減効果が見込めないため、E≦25000であることが望ましい。

0030

このように指標Eを増加させ、E>15000の領域まで増加させることによって、指標Eを増加させるほど急激にダストが減少することが判明した。しかし、指標Eを単に増加させるとランス寿命が短命化することが発覚した。一方、指標Eが一定の場合はランス先端と火点との距離を大きくすることによりランスが長寿命化することを知見した。そして、本発明者は更なる調査を行い、指標Eとランス先端中心と火点(酸素ジェットによる溶銑の衝突位置)との距離との比(指標R)を増加させることにより、ランスへの地金付着が抑制されて安定して操業できることを知見した。この調査では、指標Eを5000〜22000、ノズル孔数nを3〜6個、ノズル傾斜角θを10〜30°とした。そして、指標Rを所定範囲とすることによって、指標Eの増加によるダスト低減効果を享受しつつ、ランスへの地金付着を抑制してランスの寿命低下を抑制できることを見出した。

0031

本発明者らは、指標Eが高まるほどランス寿命が低下したことから、酸素ジェットの慣性力の増加に伴って地金の飛散距離が増大しためと推定した。一方、指標Eが同じであってもノズル傾斜角θが大きいときにはランス寿命が低下しなかった。これは、火点直上ほど地金の飛散が顕著で、ノズル傾斜角θによって酸素ジェットが向かう方向に角度を付け、ランスが火点直上から離れたことによって地金の付着量が減少したためと考えられる。

0032

したがって本発明者らは、ランス高さHおよびノズル傾斜角θを調整することにより地金の付着を抑制できることを着想し、ランス先端中心と火点との距離(ランス高さH)とEcosθとの比(指標R)とランス寿命との関係を調査したところ、R<6.5とすることによりランス寿命を低下させずに指標Eを増加させることができることが判明した。指標Rとランス寿命指数との関係を図2に示す。ここで、ランス寿命指数は、基準となる上吹き条件で吹錬したときのランス寿命(吹錬回数)を1としたときの規格化した値である。

0033

図2に示すように、R≧6.5ではランス寿命指数が急激に悪化することが分かった。なお、指標Rの下限値は特に限定されないが、E>15000という条件から自ずと限界がある。指標Rが低すぎてもそれに見合ったランス寿命低減効果が見込めず、むしろ酸素ジェットが炉壁に近づくことにより耐火物が損耗する可能性が高いため、現実的にはR≧3.0程度であることが望ましい。

0034

以上のことから、指標Eの増加によるダスト低減効果を享受しつつ、安定して操業を行うためには、指標Eおよび指標Rを、それぞれE>15000、R<6.5とする必要があることが分かった。

0035

ランスにおけるノズルの孔数は3〜10まで調査したが、満足する範囲で吹錬を行えば操業性に影響は見られなかった。本発明では、ノズルの孔数を3つ以上としているが、ランスの外径が同じ場合、孔数が多くなるほど冷却水流路の確保が困難となるため、10孔程度までが多孔化の限度と考えられる。

0036

ノズル傾斜角θは6〜30°の範囲で変更して調査を行ったが、耐火物の損耗挙動に大きな影響を与えなかった。ただし、通常操業で一般的となっている吹錬初期ソフトブロー条件とするといった操作を実施することを考えるとノズル傾斜角θを広角化する際の限度は30°程度と考えられる。

0037

次に、本発明を実施例に基づいて更に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。

0038

本発明の効果を確認するために、300t規模の転炉を用いて実験を行った。その際、主原料として質量%でC:4.4〜6.5%、Si:0.2〜0.5%、Mn:0.2〜0.4%、P:0.100〜0.120%を含有する溶銑を約260tと、スクラップを約20tとを転炉に装入し、上吹き酸素流量を溶銑1t当たり4.0Nm3/minに設定し、底吹きCO2流量を0.15Nm3/minに設定し、吹錬を行った。実験では、ランスの形状および吹錬条件を変更して吹錬を行い、質量%でC:0.05〜0.1%、Si≦0.01%、Mn:0.1〜0.2%、P:0.015〜0.025%の溶鋼を製造し、ダスト発生量とランスに付着した地金の重量とを調査した。ここで調査したダスト発生量も、スピッティングによる鉄歩留まりロスを含めたものである。ランス−湯面間距離(ランス高さH)は、吹錬前の溶銑の浴面の高さを0として、吹錬期の10〜90%で変化する平均のランス−湯面間距離とした。表1に実施例および比較例の操業条件と、そのときのダスト指数およびランス寿命指数とを示す。表1において、ノズル断面積が最小となる部位の直径をスロート径と記載している。

0039

0040

ダスト指数およびランス寿命指数は、250〜350ch使用したときの平均値であり、比較例1を1として、規格化した値を示した。ダスト指数0.9以下かつランス地金付着指数1.0以上であった場合を○、そうでなかった場合を×とした。上吹きランスは3〜6孔のノズルを有し、ノズル傾斜角θが10〜25°の多孔ラバールランスとし、ランス−湯面間距離(ランス高さH)を2000〜4000mmの範囲で制御した。本発明例である実施例、および比較例について、指標Eと指標Rの関係を図3に示す。なお、比較例1〜3は、従来の操業に相当する指標E、指標Rとなるよう調整した条件である。

0041

実施例1〜5は、いずれもE>15000、かつR<6.5を満足しており、多少のばらつきはあるが、指標Eが大きいほどダスト指数は低下した。特に、E>19000にすると、ダスト指数が0.80未満にできることが確認できた。これは酸素ジェットが溶銑に衝突する界面が不安定領域に遷移し、ダスト発生機構が変化してダスト発生量が減少したためであり、すなわち、酸素ジェットが気液衝突界面に深く潜り込むことで、バブルバースト発生位置が溶銑深くに押し込まれ、脱炭反応時の飛沫発生が大幅に抑制されたためと考えられる。また、ランス寿命指数も1.01〜1.03で安定しており、指標Eを高位にした場合でも寿命低下は全く見られなかった。これは酸素ジェットの慣性力による地金飛散を抑制するのに十分な指標Rとしたためである。

0042

一方、比較例1ではノズルが5孔でランス傾斜角θ=15°のランスを用い、ランス高さHは3000mmとしており、指標Eは5294で指標Rは1.70であった。また、比較例2では、ノズルが6孔でノズル傾斜角θ=18°のランスを用い、ランス高さHは2000mmとしており、指標Eは8856で指標Rは4.21であった。

0043

比較例2のダスト指数は1.01で、ランス寿命指数は1.01であった。比較例2は指標Rの値が小さいためランス寿命指数は十分高く操業性には問題ないものの、5294から8856へ指標Eを比較例1よりも大きくしてもダスト指数はほとんど変わらなかった。これは酸素ジェットが溶銑に衝突する界面が安定しており、火点近傍でダストが大量に発生したためと考えられる。

0044

また、比較例3は、ノズルが4孔でノズル傾斜角θ=10°のランスを用い、ランス高さHは2700mmとしており、指標Eは19652で指標Rは7.17であった。比較例3のダスト指数は0.7で、ランス寿命指数は0.85であった。このようにE>15000の領域まで指標Eを増加させたため、ダスト指数は大きく減少したが、ランス寿命指数は低下し、操業性は大きく悪化した。これはランス先端−火点間距離が小さかったことから、酸素ジェットの慣性力により地金の飛散が増加したためである。

実施例

0045

上より、ノズルの孔数、ノズル傾斜角、ランス−湯面間距離といった諸条件が異なる場合においても、指標EおよびRを所定の範囲内で制御することができればダスト発生量を削減しつつ、ランスの寿命低下を抑制できることが確認できた。以上の検討により本発明の効果を十分享受可能な指標Eおよび指標Rの範囲は、それぞれE>15000、R<6.5であることが確認できた。特に指標Eの条件は、E>19000であることがさらに好ましいといえる。

0046

本発明によれば、製鋼用転炉にて溶銑浴面精錬用ガスを吹き付ける精錬プロセスにおいて、操業性を悪化させることなくダストによる鉄分ロスを大幅に低減することができる。これにより、精錬歩留まりの向上が達成され、生産性を向上することができるため、工業的価値が大きいといえる。

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