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技術 老齢ドナー由来の誘導多能性幹細胞の発がん性を低下させる方法

出願人 メモリアルスローン‐ケッターリングキャンサーセンター
発明者 キム,キタイスカマグキ,マリアドーガン,イルディリム
出願日 2015年10月6日 (6年1ヶ月経過) 出願番号 2017-538188
公開日 2017年12月7日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 2017-536132
状態 特許登録済
技術分野 微生物、その培養処理 突然変異または遺伝子工学
主要キーワード 統合部分 顕微鏡検査システム RT法 統計的確率 BHP溶液 予備解析 主成分解析 スコア解析
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重要な関連分野

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図面 (20)

課題・解決手段

(a)若年ドナー由来のそれら(Y−iPSC)と比較して老齢ドナー由来の誘導多能性幹細胞(A−iPSC)は、ゲノム不安定性の増加、アポトーシスの異常、グルコース代謝の異常、および鈍化したDNA損傷応答を示すこと;ならびに(b)A−iPSCと関連すること、および結果としてDNA損傷応答およびアポトーシスを阻害することが判明した過剰なグルタチオン媒介性H2O2除去活性の阻害は、これらの異常を実質的に救済し、A−iPSCの発がん性を低下させるという発見が開示される。例えば4つのYamanakaのiPSC再プログラミング因子補助としての発現などによる、多能性因子SCAN10(A−iPSCでの活性が低く、グルタチオン関連の上流で作用することが示されている)の補充は、A−iPSCにおいて、GLUT3の増強およびグルタチオン/H2O2のホメオスタシスの正常化を通じてゲノム安定性、DNA損傷応答およびアポトーシスの大幅な回復をもたらし;GLUT3(グルタチオンの上流に作用し、A−iPSCにおいても活性の低い多能性幹細胞特異的グルコース輸送体)は、同様の効果を有し、特にZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニット送達によるグルタチオン/H2O2の阻害が臨床的に有用であり、改善された特性および低下した発がん性のA−iPSCをもたらすことを示す。

概要

背景

関連技術の説明
例えば、転写因子Oct4、Sox2、Klf4およびc−Myc1を用いた体細胞の直接的な再プログラミング(Yamanakaプロトコールとしても知られている)は、胚性幹細胞と酷似する誘導多能性幹細胞(iPSC)をもたらす(Takahashiら、Cell 126:663−676、2006)。iPSCを作出するための他のプロトコールもまた知られ、例えばGonzalez,F.ら、Nature Reviews Genetics 12:231−242(2011年4月1日)に記載される。ES細胞と同様に、iPSCは奇形腫、すなわち3つの胚性胚葉全てに由来する組織を有する分化した腫瘍を形成し、マウス胚盤胞に注入されるとすべての組織に寄与する。

いくつかの障害に対する患者特異的iPSCの誘導報告されている(Partら、Cell 134:877−86、2008年;Dimosら、Science 321:1218−21、2008年)。iPSCの開発は、患者由来のiPSCおよび指向性分化方法を用いる疾患モデル研究の機会を提供する。iPSCの大きな恩恵を受けることができるその他の分野には、医薬品開発と薬物スクリーニングがある。最後に、iPSCが多能性においてESCに似ているが、ESCに基づく治療法に関連する組織非適合性の問題を回避することを考慮すると、iPSCは、患者自身の体細胞を用いて組織適合性移植可能組織を作製するという大きな可能性を秘めている。

全米臓器配分ネットワーク(United Network for Organ Sharing:UNOS)によると、現在、約12万人のアメリカ人が臓器移植を受けるのを待っているが、2013年の1月から10月には24,000回の移植しか行われていない。UNOSは、少数ドナーからの免疫的適合する臓器を待つ間に18人の患者毎日死亡すると推定している。

iPSCはさまざまな方法において有用である。第1に、研究ツールとして、それらは遺伝子機能組織形成へと結びつけるような他では不可能である実験を可能にする。第2に、iPCSは、異なる組織および臓器のヒト細胞へと分化できるため、それらは、スクリーニングおよび毒性試験の両方を含む創薬および開発に対する新しい方法を提供する。しかしながら、iPCSのもっとも重要な用途は、高齢者集団に関連する制限を含まない、生着欠損または無機能の臓器および組織の置換、ならびに退行性疾患の治療のための臓器および組織の作製である。

iPSCは大きなチャンスを提供するが、臨床現場での応用に関連する多くの未踏の問題や障害が未だ存在する。例えば、異なる組織は、再プログラミングに対する変動しやすい感受性を示す(Maheraliら、Cell Stem Cell 3:340−345、2008年;Aoiら、Science 321:699−702、2009年)。さらに、最近の研究は、iPSCが、使用されたドナー組織組織型に依存する、残存するエピジェネティックな特徴を有すること(Kimら、Nat Biotechnol 29(12):1117−1119、2011年)、および老齢ドナーからのiPSC(A− iPSC)は、加齢に特異的なエピジェネティックな記憶を保持していること(Kimら、Nature 467(7313):285−290、2010年)を示してきた。さらに、Yamanakaおよび他の者が、若年ドナー組織を用いたiPSC(Y−iPSC)を作製するために必要な4個のiPSC再プログラミング因子を同定する一方で、同一の4個の因子が老齢ドナー組織由来のiPSC(A−iPSC)を再プログラミングするのに十分であるかどうかは不明である。

Prigione,A.ら、PLoS One、2011;6(11):e27352、doi:10.1371/journal.pone.0027352はまた、実験においてはアポトーシスに対する抵抗性を見出さなかったが、ヒト由来の老齢のiPSCにおける核型異常の存在を報告した。これらの研究者らは、細胞死(アポトーシス)そのものとは対照的であるアポトーシス過程にある細胞指標である微小核形成を測定した。また、すでに死亡した細胞の検出をしない乳酸デヒドロゲナーゼ標準化のために使用した。最後に、DNA損傷と測定との間の時間間隔が長すぎる可能性がある。それにもかかわらず、これらの著者はまた、老齢の体細胞のゲノム定性を保存する再プログラミングプロトコールを開発することの重要性も強調した。

老齢患者は、組織再生ならびに異種移植および自家移植の両方におけるiPSCの臨床応用の恩恵を受ける可能性が高く、そしてiPSCは、黄斑変性症およびパーキンソン病のような多くの加齢関連退行性疾患の臨床試験において既に研究されているため、分化および移植の際の品質および結果としてのその機能を改善するために、A−iPSCを包括的に評価すること、およびこれらの細胞における加齢の負の影響を逆転させる方法を決定することに重要な必要性が存在する。

iPSCの認識されている欠点の1つは、潜在的な発がん性であった。これは、それらを作製するためにがん遺伝子を使用すること、および場合によるとウイルスに基づくベクターの組み込みの使用に起因すると様々に推定されている。結果として、がん遺伝子の使用または組み込みを回避し、ウイルスベクターの使用を回避する努力がなされてきた。例えば、MYCを伴わない再プログラミングのためのNakagawa,M.ら、Nat Biotechnol、2008年1月、26(1):101−6を参照されたい。他の研究者らはiPSCを作製するためにセンダイウイルスのような非組換え型ウイルスに目を向けている。Chen IPら(2013)の、頭蓋骨異形成を有する患者の末梢血からの非組換え型センダイウイルスベクターによる誘導多能性幹細胞再プログラミング、Cell Reprogram.2013年12月;15(6):503−13、さらに、Lieu PTら(2013)の、非組換え型センダイウイルスであるCytoTuneを用いる誘導多能性幹細胞の作製、MethodsMol. Biol. 2013年;997:45−56(血球または線維芽細胞由来)。さらに他の者は、RNAに基づく(ベクター不使用)の方法を使用し、この目的のためのツール(B18Rタンパク質など)は、市販されている。例えば、Affymetrix eBioscienceのhttp://www.ebioscience.com/knowledge−center/cell−type/induced−pluripotent−stem−cells.htm#benefits%20of%20rna、またはWarren,L.らの、メッセンジャーRNAによるヒト誘導多能性幹細胞のフィーダー不使用の誘導、Nature Scientific reports、2:#657(2012年9月14日)を参照されたい。さらに他の者はタンパク質を用いた。Kim,D.らの、再プログラミングタンパク質の直接送達によるヒト誘導多能性幹細胞の作製、Cell Stem Cell、2009年6月5日;4(6):472−6。しかしながら、これらの方法は、低い再プログラミング効率に悩まされる一方で、発がん性が持続する可能性がある。さらに、従前の再プログラミングの試みは、発がん性を考慮する際に、ドナー細胞年齢を考慮しなかった。また、再プログラミングプロトコールを補助するものとして追加の因子を使用するという提案もまったくなかった。

概要

(a)若年ドナー由来のそれら(Y−iPSC)と比較して老齢ドナー由来の誘導多能性幹細胞(A−iPSC)は、ゲノム不安定性の増加、アポトーシスの異常、グルコース代謝の異常、および鈍化したDNA損傷応答を示すこと;ならびに(b)A−iPSCと関連すること、および結果としてDNA損傷応答およびアポトーシスを阻害することが判明した過剰なグルタチオン媒介性H2O2除去活性の阻害は、これらの異常を実質的に救済し、A−iPSCの発がん性を低下させるという発見が開示される。例えば4つのYamanakaのiPSC再プログラミング因子の補助としての発現などによる、多能性因子ZSCAN10(A−iPSCでの活性が低く、グルタチオン関連の上流で作用することが示されている)の補充は、A−iPSCにおいて、GLUT3の増強およびグルタチオン/H2O2のホメオスタシスの正常化を通じてゲノム安定性、DNA損傷応答およびアポトーシスの大幅な回復をもたらし;GLUT3(グルタチオンの上流に作用し、A−iPSCにおいても活性の低い多能性幹細胞特異的グルコース輸送体)は、同様の効果を有し、特にZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットの送達によるグルタチオン/H2O2の阻害が臨床的に有用であり、改善された特性および低下した発がん性のA−iPSCをもたらすことを示す。G

目的

iPSCの開発は、患者由来のiPSCおよび指向性の分化方法を用いる疾患モデル研究の機会を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

A−iPSCのDNA損傷応答アポトーシス応答ゲノム定性およびグルコース代謝の少なくとも1つを改善するための方法であって、前記A−iPSCの再プログラミング補助として、(i)多能性因子SCAN10;(ii)多能性幹細胞特異的グルコーストランスポーターGLUT3;および(iii)エキソソームサブユニットの少なくとも1つをA−iPSCに補充して、前記DNA損傷応答、アポトーシス応答、グルコース代謝およびゲノム安定性の少なくとも1つを実質的にY−iPSCのレベル近似するレベルに回復させることを含む、方法。

請求項2

GPX2の過剰発現が、以下の:A−iPSCを多能性因子ZSCAN10で補充すること;および/またはA−iPSCに多能性幹細胞特異的グルコーストランスポーター3であるGLUT3を補充すること;およびA−iPSCをエキソソームサブユニットで補充することの少なくとも1つによって阻害され、前記補充は再プログラミング多能性因子を補助するものであり、かつ前記A−iPSCにおけるDNA損傷応答、アポトーシスおよびゲノム安定性の1つまたはそれ以上において完全なまたは部分的な救出を達成するのに有効な量である、請求項1に記載の方法。

請求項3

前記補充が、前記A−iPSCが維持されている培地にZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットを添加することによって行われる、請求項2に記載の方法。

請求項4

前記補充が、前記細胞において、ZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットの発現を増加させることによって実施される、請求項2に記載の方法。

請求項5

前記補充が、前記A−iPSCにおけるZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットのレベルを胚性幹細胞ESC)のそれらのレベルの約50%またはそれ以上に回復させるのに十分である、請求項2に記載の方法。

請求項6

前記補充が、前記A−iPSCにおけるグルタチオン酸化能をESCの約80%〜約120%の範囲内に低下させるのに十分である、請求項2に記載の方法。

請求項7

前記補充が、前記A−iPSCのゲノム安定性をほぼY−iPSCのゲノム安定性にまで回復させるのに十分である、請求項2に記載の方法。

請求項8

ゲノム安定性が、異数性クローンの発生によって測定される、請求項7に記載の方法。

請求項9

前記補充が、前記A−iPSCのアポトーシス率をほぼY−iPSCのアポトーシス率に回復させるのに十分である、請求項2に記載の方法。

請求項10

前記アポトーシス率が、DNA損傷剤に応答するDNA断片アッセイによって測定される、請求項9に記載の方法。

請求項11

前記補充が、前記A−iPSCのDNA損傷応答をほぼY−iPSCのDNA損傷応答に回復させるのに十分である、請求項2に記載の方法。

請求項12

DNA損傷応答が、DNA損傷剤に応答するATMまたはH2AXのリン酸化によって測定される、請求項11に記載の方法。

請求項13

前記補充が、前記A−iPSCにおけるグルタチオンの酸化能をほぼY−iPSCの酸化能に低下させるのに十分である、請求項2に記載の方法。

請求項14

前記補充が、前記A−iPSCにおけるGPX2レベルをおおよそY−iPSCレベルまで低下させるのに十分である、請求項2に記載の方法。

請求項15

前記細胞におけるZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットの発現が、前記細胞を、前記ZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットの核酸を含むベクタートランスフェクトすることによって増加する、請求項4に記載の方法。

請求項16

前記ZSCAN10をコードする核酸を含むベクターの発現が一過性である、請求項15に記載の方法。

請求項17

誘導多能性幹細胞(iPSC)の発がん性を低下させる方法であって、前記細胞がゲノム不安定性、アポトーシスの異常、DNA損傷応答の異常およびグルコース代謝における異常の1つまたはそれ以上を有し、かつ胚性幹細胞または若年ドナー由来の誘導多能性幹細胞(Y−iPSC)と比較して、過剰のグルタチオン媒介性H2O2除去活性を示し、前記方法が、前記iPSCにおけるグルタチオンペルオキシダーゼ2(GPX2)の過剰発現を直接的および/または間接的に阻害することにより、前記におけるグルタチオン媒介性H2O2除去活性を阻害して前記iPSCにおけるホメオスタシスを部分的にまたは完全に回復させることを含む、方法。

請求項18

老齢ドナー由来の誘導多能性幹細胞(A−iPSC)の発がん性を低下させる方法であって、前記A−iPSCが、若年ドナー由来の誘導多能性幹細胞(Y−iPSC)と比較して過剰のグルタチオン媒介性H2O2除去活性を示し、前記方法が前記A−iPSCにおけるグルタチオンペルオキシダーゼ2(GPX2)の過剰発現を直接的および/または間接的に阻害することにより前記A−iPSCにおけるグルタチオン媒介性H2O2除去活性を阻害して前記A−iPSCにおけるグルタチオン/H2O2ホメオスタシスを部分的または完全に回復させることを含む、方法。

請求項19

誘導多能性幹細胞(iPSC)の発がん性を低下させる方法であって、前記細胞がゲノム不安定性、アポトーシスの異常、DNA損傷応答の異常およびグルコース代謝の異常の1つまたはそれ以上を有し、かつ胚性幹細胞または若年ドナー由来の誘導多能性幹細胞(Y−iPSC)と比較して過剰なグルタチオン媒介性H2O2除去活性を示し、前記方法が、(i)多能性因子ZSCAN10;(ii)多能性幹細胞特異的グルコーストランスポーターGLUT3;および(iii)エキソソームサブユニットの少なくとも1つをA−iPSCに補充することを含み、それぞれが再プログラミングの補助としてのものであり、前記DNA損傷応答、アポトーシス応答、グルコース代謝およびゲノム安定性の少なくとも1つを実質的にY−iPSCまたはESCのレベルに実質的に同一のレベルに回復させる、方法。

請求項20

前記補充が、前記A−iPSCが維持されている培地にZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットを添加することによって行われる、請求項18または19に記載の方法。

請求項21

前記補充が、前記細胞において、ZSCAN10および/またはGLUT3の発現を増加させることによって実施される、請求項18または19に記載の方法。

請求項22

前記補充が、前記A−iPSCにおけるZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットのレベルを胚性幹細胞(ESC)のそれらのレベルの約50%またはそれ以上に回復させるのに十分である、請求項21に記載の方法。

請求項23

前記補充が、前記A−iPSCにおけるグルタチオンの酸化能をESCの約80%〜約120%の範囲内に低下させるのに十分である、請求項18または19に記載の方法。

請求項24

前記補充が、前記A−iPSCのゲノム安定性をほぼY−iPSCのゲノム安定性にまで回復させるのに十分である、請求項18または19に記載の方法。

請求項25

ゲノム安定性が、異数性クローンの発生によって測定される、請求項24に記載の方法。

請求項26

前記補充が、前記A−iPSCのアポトーシス率をほぼY−iPSCのアポトーシス率に回復させるのに十分である、請求項18または19に記載の方法。

請求項27

前記アポトーシス率が、DNA損傷剤に応答するDNA断片化アッセイによって測定される、請求項26に記載の方法。

請求項28

前記補充が、前記A−iPSCのDNA損傷応答をほぼY−iPSCのDNA損傷応答に回復させるのに十分である、請求項18または19に記載の方法。

請求項29

前記再プログラミング因子がYamanaka因子であるOCT4、SOX2、KLF4およびMYCである、請求項2に記載の方法。

請求項30

前記再プログラミング多能性因子が、Yamanakaのそれらの群より選択され、OCT4、SOX2、KLF4およびMYCの1つまたはそれ以上が以下のように置換されている、請求項2に記載の方法。

請求項31

因子(LIN28+Nanog、Esrrb、Pax5shRNA、C/EBPa、p53.siRNA、UTF1、DNMTshRNA、Wnt3a、SV40LT(T)、hTERT)または化合物(BIX−01294、BayK8644、RG108、AZA、デキサメタゾン、VPA、TSA、SAHA、PD025901+CHIR99021(2i)、A−83−01)。

請求項32

前記再プログラミング多能性因子が、Yamanakaのそれらの群より選択され、OCT4、SOX2、KLF4およびMYCの1つまたはそれ以上が以下の:NanogおよびLin28がKlf4およびMYCと置換される;esrbがKlf4と置換される;SV40LT(T)がKlf4、MYC、lin28およびNanogと置換される;BIX−01294がSOX2およびOCT4と置換される;VPAがKlf4およびMYCと置換される、のように置換されている、請求項2に記載の方法。

請求項33

前記補充が、エキソソームサブユニットによって行われ、エキソソームサブユニットが、以下のEXOSC1、EXOSC2、EXOSC3、EXOSC4、EXOSC5、EXOSC6、EXOSC7、EXOSC8、EXOSC9、EXOSC10およびhDis3の1つまたはそれ以上である、請求項1に記載の方法。

請求項34

前記補充が、A−iPSCへのDNA遺伝子送達によって、またはRNA送達によって、またはタンパク質の送達によって行われる、請求項2に記載の方法。

請求項35

老齢ドナー体細胞由来のiPSCであって、前記iPSCが、健康な若年ドナー由来のiPSCまたは胚性幹細胞に匹敵するレベルでZSCAN10を発現するよう操作されている、iPSC。

請求項36

体細胞由来のiPSCであって、前記iPSCが、Y−iPSCまたはESCの対照と比較して(i)減少したZSCAN10発現レベル、(ii)(例えば、減少したDNA損傷応答、減少したアポトーシス応答、ゲノム不安定性および減少したグルコース代謝によって測定されるような)増加した発がん性、(iii)低下したGLUT3発現レベル、(iv)低下したエキソソームサブユニットレベル、および(v)増加したGPX2発現レベルまたは増加したGSS発現レベル、の1つまたはそれ以上を元々示し、前記iPSCにZSCAN10が補充されて前記対照に見られるようなレベルに匹敵するレベルにまで、前記1つまたはそれ以上の減少または増加したレベルが回復している、iPSC。

請求項37

体細胞由来のiPSCであって、前記iPSCが、ZSCAN10の補充の非存在下において、ZSCAN10発現が欠乏しており、ZSCAN10をまったく発現しないか、または健康な若年ドナーまたは由来のiPSCの対照よりも実質的に低いレベルのZSCAN10を発現し、前記iPSCが、健康な若年ドナーまたは胚由来のiPSCのレベルに匹敵するレベルのZSCAN10を発現するように操作されている、iPSC。

請求項38

(i)幹細胞再プログラミング因子および(ii)ZSCAN10をコードする核酸を含むベクターまたはベクターのセット。

請求項39

前記ZSCAN10の核酸を含むベクターが、再プログラミング因子の核酸を含む単数のベクターまたは複数のベクターとは別のベクターである、請求項38に記載のベクターのセット。

技術分野

0001

関連出願への相互参照
本願は、以下の、3つの米国仮特許出願、2014年10月6日に出願された米国仮特許出願第62/060,532号、ならびに2015年2月26日に出願された、米国仮特許出願第62/121,460および米国仮特許出願第62/121/463号に対する優先権を主張する。各出願の内容は参照により本明細書に組み込まれる。

0002

政府支援された研究または開発
本開示に記載される研究は、部分的に、国立衛生研究所(National Institutes of Health)の5R00HL093212−04、ならびにP30 CA008748およびR01 5R01AG043531−02からのグラントによって資金提供された。米国政府は、本開示について一定の権利を有する可能性がある。

0003

配列表
本願は、「7704−0021−PCT_ST25[3]_.txt」と題し、133.7kbのサイズを持つ、アスキー形式テキストファイルとして電子形式の配列表を含む。このテキストファイルの内容は参照により本明細書に組み込まれる。

0004

発明の背景
本開示の技術分野
本開示は、誘導多能性幹細胞の改善に関し、より詳細には、発がん性の低下および/または改善されたアポトーシス応答、および/または改善されたDNA損傷応答および/または改善されたゲノム定性を有する誘導多能性幹細胞に関する。

背景技術

0005

関連技術の説明
例えば、転写因子Oct4、Sox2、Klf4およびc−Myc1を用いた体細胞の直接的な再プログラミング(Yamanakaプロトコールとしても知られている)は、胚性幹細胞と酷似する誘導多能性幹細胞(iPSC)をもたらす(Takahashiら、Cell 126:663−676、2006)。iPSCを作出するための他のプロトコールもまた知られ、例えばGonzalez,F.ら、Nature Reviews Genetics 12:231−242(2011年4月1日)に記載される。ES細胞と同様に、iPSCは奇形腫、すなわち3つの胚性胚葉全てに由来する組織を有する分化した腫瘍を形成し、マウス胚盤胞に注入されるとすべての組織に寄与する。

0006

いくつかの障害に対する患者特異的iPSCの誘導報告されている(Partら、Cell 134:877−86、2008年;Dimosら、Science 321:1218−21、2008年)。iPSCの開発は、患者由来のiPSCおよび指向性分化方法を用いる疾患モデル研究の機会を提供する。iPSCの大きな恩恵を受けることができるその他の分野には、医薬品開発と薬物スクリーニングがある。最後に、iPSCが多能性においてESCに似ているが、ESCに基づく治療法に関連する組織非適合性の問題を回避することを考慮すると、iPSCは、患者自身の体細胞を用いて組織適合性移植可能組織を作製するという大きな可能性を秘めている。

0007

全米臓器配分ネットワーク(United Network for Organ Sharing:UNOS)によると、現在、約12万人のアメリカ人が臓器移植を受けるのを待っているが、2013年の1月から10月には24,000回の移植しか行われていない。UNOSは、少数ドナーからの免疫的適合する臓器を待つ間に18人の患者毎日死亡すると推定している。

0008

iPSCはさまざまな方法において有用である。第1に、研究ツールとして、それらは遺伝子機能組織形成へと結びつけるような他では不可能である実験を可能にする。第2に、iPCSは、異なる組織および臓器のヒト細胞へと分化できるため、それらは、スクリーニングおよび毒性試験の両方を含む創薬および開発に対する新しい方法を提供する。しかしながら、iPCSのもっとも重要な用途は、高齢者集団に関連する制限を含まない、生着欠損または無機能の臓器および組織の置換、ならびに退行性疾患の治療のための臓器および組織の作製である。

0009

iPSCは大きなチャンスを提供するが、臨床現場での応用に関連する多くの未踏の問題や障害が未だ存在する。例えば、異なる組織は、再プログラミングに対する変動しやすい感受性を示す(Maheraliら、Cell Stem Cell 3:340−345、2008年;Aoiら、Science 321:699−702、2009年)。さらに、最近の研究は、iPSCが、使用されたドナー組織組織型に依存する、残存するエピジェネティックな特徴を有すること(Kimら、Nat Biotechnol 29(12):1117−1119、2011年)、および老齢ドナーからのiPSC(A− iPSC)は、加齢に特異的なエピジェネティックな記憶を保持していること(Kimら、Nature 467(7313):285−290、2010年)を示してきた。さらに、Yamanakaおよび他の者が、若年ドナー組織を用いたiPSC(Y−iPSC)を作製するために必要な4個のiPSC再プログラミング因子を同定する一方で、同一の4個の因子が老齢ドナー組織由来のiPSC(A−iPSC)を再プログラミングするのに十分であるかどうかは不明である。

0010

Prigione,A.ら、PLoS One、2011;6(11):e27352、doi:10.1371/journal.pone.0027352はまた、実験においてはアポトーシスに対する抵抗性を見出さなかったが、ヒト由来の老齢のiPSCにおける核型異常の存在を報告した。これらの研究者らは、細胞死(アポトーシス)そのものとは対照的であるアポトーシス過程にある細胞指標である微小核形成を測定した。また、すでに死亡した細胞の検出をしない乳酸デヒドロゲナーゼ標準化のために使用した。最後に、DNA損傷と測定との間の時間間隔が長すぎる可能性がある。それにもかかわらず、これらの著者はまた、老齢の体細胞のゲノム安定性を保存する再プログラミングプロトコールを開発することの重要性も強調した。

0011

老齢患者は、組織再生ならびに異種移植および自家移植の両方におけるiPSCの臨床応用の恩恵を受ける可能性が高く、そしてiPSCは、黄斑変性症およびパーキンソン病のような多くの加齢関連退行性疾患の臨床試験において既に研究されているため、分化および移植の際の品質および結果としてのその機能を改善するために、A−iPSCを包括的に評価すること、およびこれらの細胞における加齢の負の影響を逆転させる方法を決定することに重要な必要性が存在する。

0012

iPSCの認識されている欠点の1つは、潜在的な発がん性であった。これは、それらを作製するためにがん遺伝子を使用すること、および場合によるとウイルスに基づくベクターの組み込みの使用に起因すると様々に推定されている。結果として、がん遺伝子の使用または組み込みを回避し、ウイルスベクターの使用を回避する努力がなされてきた。例えば、MYCを伴わない再プログラミングのためのNakagawa,M.ら、Nat Biotechnol、2008年1月、26(1):101−6を参照されたい。他の研究者らはiPSCを作製するためにセンダイウイルスのような非組換え型ウイルスに目を向けている。Chen IPら(2013)の、頭蓋骨異形成を有する患者の末梢血からの非組換え型センダイウイルスベクターによる誘導多能性幹細胞再プログラミング、Cell Reprogram.2013年12月;15(6):503−13、さらに、Lieu PTら(2013)の、非組換え型センダイウイルスであるCytoTuneを用いる誘導多能性幹細胞の作製、MethodsMol. Biol. 2013年;997:45−56(血球または線維芽細胞由来)。さらに他の者は、RNAに基づく(ベクター不使用)の方法を使用し、この目的のためのツール(B18Rタンパク質など)は、市販されている。例えば、Affymetrix eBioscienceのhttp://www.ebioscience.com/knowledge−center/cell−type/induced−pluripotent−stem−cells.htm#benefits%20of%20rna、またはWarren,L.らの、メッセンジャーRNAによるヒト誘導多能性幹細胞のフィーダー不使用の誘導、Nature Scientific reports、2:#657(2012年9月14日)を参照されたい。さらに他の者はタンパク質を用いた。Kim,D.らの、再プログラミングタンパク質の直接送達によるヒト誘導多能性幹細胞の作製、Cell Stem Cell、2009年6月5日;4(6):472−6。しかしながら、これらの方法は、低い再プログラミング効率に悩まされる一方で、発がん性が持続する可能性がある。さらに、従前の再プログラミングの試みは、発がん性を考慮する際に、ドナー細胞年齢を考慮しなかった。また、再プログラミングプロトコールを補助するものとして追加の因子を使用するという提案もまったくなかった。

課題を解決するための手段

0013

一態様において、本開示は、A−iPSCのDNA損傷応答、アポトーシス応答、ゲノム安定性およびグルコース代謝の少なくとも1つを改善する方法を提供し、この方法は、前記A−iPSCの再プログラミングの補助として、(i)多能性因子ZSCAN10;(ii)多能性幹細胞特異的グルコーストランスポーターGLUT3;および(iii)エキソソームサブユニットの少なくとも1つをA−iPSCに補充して前記DNA損傷応答、アポトーシス応答、グルコース代謝およびゲノム安定性の少なくとも1つを実質的にY−iPSCのレベル近似するレベルに回復させることを含む。

0014

いくつかの実施形態において、GSSまたはGPX2の過剰発現は、以下の:A−iPSCに多能性因子ZSCAN10を補充すること;および/またはA−iPSCに多能性幹細胞特異的グルコーストランスポーター3、GLUT3を補充すること;ならびにA−iPSCにエキソソームサブユニットを補充することの少なくとも1つによって阻害され、当該補充が再プログラミング多能性因子を補助するものであり、かつ前記A−iPSCにおけるDNA損傷応答、アポトーシス、およびゲノム安定性の1つまたはそれ以上における全部または部分的な救済を達成するのに有効な量である。

0015

別の態様において、本開示は、誘導多能性幹細胞(iPSC)の発がん性を低下させる方法を提供し、前記細胞はゲノム不安定性、アポトーシスの異常、DNA損傷応答の異常およびグルコース代謝の異常の1つまたはそれ以上を有し、かつ胚性幹細胞または若年ドナー由来の誘導多能性幹細胞(Y−iPSC)と比較して、過剰なグルタチオン媒介性H2O2除去活性を示し、前記方法は、前記iPSCにおけるグルタチオンペルオキシダーゼ2(GPX2)の過剰発現を直接的および/または間接的に阻害することによって前記iPSCにおけるグルタチオン媒介性H2O2除去活性を阻害して、前記iPSCにおいて部分的または完全にホメオスタシスを回復することを含む。

0016

さらに別の態様において、本開示は、老齢ドナー由来の誘導多能性幹細胞(A−iPSC)の発がん性を低下させる方法を提供し、前記A−iPSCは、若年ドナー由来の誘導多能性幹細胞(Y−iPSC)と比較して、過剰なグルタチオン媒介性H2O2除去活性を示し、前記方法は、前記A−iPSCにおけるグルタチオンペルオキシダーゼ2(GPX2)の過剰発現を直接的および/または間接的に阻害することによって前記A−iPSCにおけるグルタチオン媒介性H2O2除去活性を阻害して、前記A−iPSCにおいて部分的または完全にグルタチオン/H2O2ホメオスタシスを回復することを含む。

0017

さらに別の態様において、本開示は、誘導多能性幹細胞(iPSC)の発がん性を低下させる方法を提供し、前記細胞がゲノム不安定性、アポトーシスの異常、DNA損傷応答の異常およびグルコース代謝の異常のうちの1つまたはそれ以上を有し、かつ胚性幹細胞または若年ドナー由来の誘導多能性幹細胞(Y−iPSC)と比較して、過剰なグルタチオン媒介性H2O2除去活性を示し、前記方法が、(i)多能性因子ZSCAN10;(ii)多能性幹細胞特異的グルコーストランスポーターGLUT3;および(iii)エキソソームサブユニットの少なくとも1つをA−iPSCに補充することを含み、それぞれが再プログラミングの補助としてのものであり、前記DNA損傷応答、アポトーシス応答、グルコース代謝およびゲノム安定性の少なくとも1つを実質的にY−iPSCまたはESCのレベルに実質的に同じレベルに回復させる。

0018

いくつかの実施形態において、補充は、前記A−iPSCが維持されている培地にZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットを添加することによって実施される。

0019

いくつかの実施形態において、補充は、前記細胞においてZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットの発現を増加させることによって実施される。

0020

いくつかの実施形態において、補充は、前記A−iPSCにおけるZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットのレベルを、胚性幹細胞(ESC)のそれぞれのレベルの約50%またはそれ以上に回復させるのに十分である。

0021

いくつかの実施形態において、補給は、前記A−iPSCにおけるグルタチオンの酸化能をESCの約80%〜約120%の範囲内に低下させるのに十分である。

0022

いくつかの実施形態において、前記補充は、前記A−iPSCのゲノム安定性をY−iPSCのゲノム安定性とほぼ同じに回復させるのに十分である。

0023

いくつかの実施形態において、ゲノム安定性は、異数性クローンの発生によって測定される。

0024

いくつかの実施形態において、アポトーシス率は、DNA損傷剤に応答するDNA断片アッセイによって測定される。

0025

いくつかの実施形態において、DNA損傷応答は、DNA損傷剤に応答するATMまたはH2AXのリン酸化によって測定される。

0026

いくつかの実施形態において、補充は、前記A−iPSCにおけるグルタチオンの酸化能をY−iPSCの酸化能とほぼ同じに低下させるのに十分である。

0027

いくつかの実施形態において、補充は、前記A−iPSCにおけるGSSまたはGPX2のレベルをY−iPSCのそれらのレベルとほぼ同じに低下させるのに十分である。

0028

いくつかの実施形態において、前記細胞におけるZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットの発現は、前記細胞を前記ZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットの核酸を含むベクターによってトランスフェクトすることによって増加する。

0029

いくつかの実施形態において、ZSCAN10をコードする核酸を含む前記ベクターの発現は一過性である。

0030

いくつかの実施形態において、再プログラミング因子は、Yamanaka因子OCT4、SOX2、KLF4およびMYCである。

0031

いくつかの実施形態において、再プログラミング多能性因子は、Yamanaka因子の群より選択され、OCT4、SOX2、KLF4およびMYCの1つまたはそれ以上が以下の:因子(LIN28+Nanog、Esrrb、Pax5shRNA、C/EBPa、p53.siRNA、UTF1、DNMTshRNA、Wnt3a、SV40LT(T)、hTERT)または化合物(BIX−01294、BayK8644、RG108、AZA、デキサメタゾン、VPA、TSA、SAHA、PD025901+CHIR99021(2i)、A−83−01)のように置換されている。

0032

いくつかの実施形態において、再プログラミング多能性因子は、Yamanaka因子の群より選択され、OCT4、SOX2、KLF4およびMYCの1つまたはそれ以上が以下の:NanogおよびLin28がKlf4およびMYCと置換される;esrbがKlf4と置換される;SV40LT(T)がKlf4、MYC、lin28およびNanogと置換される;BIX−01294がSOX2およびOCT4と置換される;VPAがKlf4およびMYCと置換される、のように置換されている。

0033

いくつかの実施形態において、補充はエキソソームサブユニットによって行われ、エキソソームサブユニットは、以下のEXOSC1、EXOSC2、EXOSC3、EXOSC4、EXOSC5、EXOSC6、EXOSC7、EXOSC8、EXOSC9、EXOSC10およびhDis3の1つまたはそれ以上である。

0034

いくつかの実施形態では、補充は、A−iPSCへのDNA遺伝子導入、またはRNA送達、またはタンパク質の送達による。

0035

別の態様において、本開示は、健康な若年ドナー由来のiPSCに匹敵するレベルでZSCAN10を発現するように操作された、老齢ドナーの体細胞に由来するiPSCを提供する。

0036

別の態様において、本発明は、(i)幹細胞再プログラミング因子および(ii)ZSCAN10をコードする核酸を含む1つまたはそれ以上のベクターを含む。

0037

したがって、本明細書に記載された研究の結果として、既存のプロトコールを用いる再プログラミングがZSCAN10、GLUT3またはエキソソームサブユニットにおいて不十分である場合、ZSCAN10は、独占的にというわけではないが特に老齢ドナーの体細胞由来の誘導多能性幹細胞を作製するための再プログラミングプロトコールにおける、主要な共調節因子として明らかになってきた。

0038

したがって、別の態様において、本開示は体細胞由来のiPSCを提供し、当該iPSCはZSCAN10補充の非存在下でZSCAN10発現を欠損し、ZSCAN10を全く発現しないか、または対照の健康な若年ドナー由来のiPSCより実質的に低いレベルのZSCAN10を発現し、当該iPSCは、健康な若年ドナー由来のiPSCのレベルに匹敵するZSCAN10レベルを発現するように操作されている。

0039

関連する態様において、本開示は、体細胞由来のiPSCを対象とし、前記iPSCは、Y−iPSCまたはESCの対照と比較して、(i)減少したZSCAN10発現レベル、(ii)増加した発がん性(例えば、減少したDNA損傷応答、減少したアポトーシス応答、ゲノム不安定性および減少したグルコース代謝によって測定される)、(iii)減少したGLUT3発現レベル、(iv)減少したエキソソームサブユニットレベル、および(v)増加したGPX2または増加したGSSの発現レベル、の1つまたはそれ以上を元々示し、当該iPSCは、ZSCAN10が補充されて、前記1つまたはそれ以上の減少または増加したレベルを、前記対照において見られるようなレベルに実質的に近いレベルに回復させられている。

0040

別の態様において、本開示は、(i)再プログラミング多能性因子、および(ii)ZSCAN10をコードする核酸を含むベクターまたはベクターのセットを対象とする。より詳細な実施形態において、本開示は、請求項38によるベクターのセットに関し、ZSCAN10核酸を含むベクターは、再プログラミング因子核酸を含む単数のベクターまたは複数のベクターとは別のベクターである。

0041

いくつかの実施形態において、本開示は、iPSCの品質を評価する方法であって、ZSCAN10、GLUT3、エキソソームサブユニット(コアエキソソームサブユニットなど)、GPX2およびGSSの群より選択される1つまたはそれ以上のタンパク質の発現レベルを測定または試験することを含み、かつ測定または試験された発現レベルを、同じタンパク質のY−iPSCまたはESCにおける対照の発現レベルと比較し、測定または試験された発現レベルが対照の発現レベルと実質的に同様であるかどうかに基づいて前記品質を決定することを含む方法を対象とする。より具体的な実施形態において、評価される品質は、発がん性またはグルタチオン/過酸化水素ホメオスタシスの1つまたはそれ以上である。

図面の簡単な説明

0042

ESC(図1A)、Y−iPSC(図1B)、A−iPSC−ZSCAN10(図1C)およびA−iPSC(図1Dおよび図1E)の染色体図を示す。図1Fは、A−iPSCの複数の独立したクローンにおける倍数性のより高い頻度、およびZSCAN10発現による倍数性異常の救済を示す棒グラフである。DNA含量は、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、次いで複数の独立したクローンのフローサイトメトリー解析によって推定した。解析されたクローンの数は各群に示されている。統計的有意性はカイ2乗検定によって決定した。図1Gは、各A−iPSCクローンにおける細胞遺伝学的解析によって観察された染色体構造異常の数、およびZSCAN10発現による救済のドットプロットである。エラーバーは、群ごとに解析された4個の独立したクローンの平均の標準誤差を示す。解析した分裂中期総数を各群に示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
ESC(図1A)、Y−iPSC(図1B)、A−iPSC−ZSCAN10(図1C)およびA−iPSC(図1Dおよび図1E)の染色体図を示す。図1Fは、A−iPSCの複数の独立したクローンにおける倍数性のより高い頻度、およびZSCAN10発現による倍数性異常の救済を示す棒グラフである。DNA含量は、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、次いで複数の独立したクローンのフローサイトメトリー解析によって推定した。解析されたクローンの数は各群に示されている。統計的有意性はカイ2乗検定によって決定した。図1Gは、各A−iPSCクローンにおける細胞遺伝学的解析によって観察された染色体構造異常の数、およびZSCAN10発現による救済のドットプロットである。エラーバーは、群ごとに解析された4個の独立したクローンの平均の標準誤差を示す。解析した分裂中期の総数を各群に示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
ESC(図1A)、Y−iPSC(図1B)、A−iPSC−ZSCAN10(図1C)およびA−iPSC(図1Dおよび図1E)の染色体図を示す。図1Fは、A−iPSCの複数の独立したクローンにおける倍数性のより高い頻度、およびZSCAN10発現による倍数性異常の救済を示す棒グラフである。DNA含量は、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、次いで複数の独立したクローンのフローサイトメトリー解析によって推定した。解析されたクローンの数は各群に示されている。統計的有意性はカイ2乗検定によって決定した。図1Gは、各A−iPSCクローンにおける細胞遺伝学的解析によって観察された染色体構造異常の数、およびZSCAN10発現による救済のドットプロットである。エラーバーは、群ごとに解析された4個の独立したクローンの平均の標準誤差を示す。解析した分裂中期の総数を各群に示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
ESC(図1A)、Y−iPSC(図1B)、A−iPSC−ZSCAN10(図1C)およびA−iPSC(図1Dおよび図1E)の染色体図を示す。図1Fは、A−iPSCの複数の独立したクローンにおける倍数性のより高い頻度、およびZSCAN10発現による倍数性異常の救済を示す棒グラフである。DNA含量は、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、次いで複数の独立したクローンのフローサイトメトリー解析によって推定した。解析されたクローンの数は各群に示されている。統計的有意性はカイ2乗検定によって決定した。図1Gは、各A−iPSCクローンにおける細胞遺伝学的解析によって観察された染色体構造異常の数、およびZSCAN10発現による救済のドットプロットである。エラーバーは、群ごとに解析された4個の独立したクローンの平均の標準誤差を示す。解析した分裂中期の総数を各群に示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
ESC(図1A)、Y−iPSC(図1B)、A−iPSC−ZSCAN10(図1C)およびA−iPSC(図1Dおよび図1E)の染色体図を示す。図1Fは、A−iPSCの複数の独立したクローンにおける倍数性のより高い頻度、およびZSCAN10発現による倍数性異常の救済を示す棒グラフである。DNA含量は、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、次いで複数の独立したクローンのフローサイトメトリー解析によって推定した。解析されたクローンの数は各群に示されている。統計的有意性はカイ2乗検定によって決定した。図1Gは、各A−iPSCクローンにおける細胞遺伝学的解析によって観察された染色体構造異常の数、およびZSCAN10発現による救済のドットプロットである。エラーバーは、群ごとに解析された4個の独立したクローンの平均の標準誤差を示す。解析した分裂中期の総数を各群に示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
ESC(図1A)、Y−iPSC(図1B)、A−iPSC−ZSCAN10(図1C)およびA−iPSC(図1Dおよび図1E)の染色体図を示す。図1Fは、A−iPSCの複数の独立したクローンにおける倍数性のより高い頻度、およびZSCAN10発現による倍数性異常の救済を示す棒グラフである。DNA含量は、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、次いで複数の独立したクローンのフローサイトメトリー解析によって推定した。解析されたクローンの数は各群に示されている。統計的有意性はカイ2乗検定によって決定した。図1Gは、各A−iPSCクローンにおける細胞遺伝学的解析によって観察された染色体構造異常の数、およびZSCAN10発現による救済のドットプロットである。エラーバーは、群ごとに解析された4個の独立したクローンの平均の標準誤差を示す。解析した分裂中期の総数を各群に示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
ESC(図1A)、Y−iPSC(図1B)、A−iPSC−ZSCAN10(図1C)およびA−iPSC(図1Dおよび図1E)の染色体図を示す。図1Fは、A−iPSCの複数の独立したクローンにおける倍数性のより高い頻度、およびZSCAN10発現による倍数性異常の救済を示す棒グラフである。DNA含量は、ヨウ化プロピジウム(PI)染色、次いで複数の独立したクローンのフローサイトメトリー解析によって推定した。解析されたクローンの数は各群に示されている。統計的有意性はカイ2乗検定によって決定した。図1Gは、各A−iPSCクローンにおける細胞遺伝学的解析によって観察された染色体構造異常の数、およびZSCAN10発現による救済のドットプロットである。エラーバーは、群ごとに解析された4個の独立したクローンの平均の標準誤差を示す。解析した分裂中期の総数を各群に示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
ESC、Y−iPSC、A−iPSCおよびZSCAN10発現による回復(A−iPSC−ZSCAN10)におけるフレオマイシン処理(30μg/ml、2時間)後のDNA断片化アッセイによる低アポトーシス応答の画像定量を示すドットプロットである。エラーバーは、技術的および生物学的な反復の平均の標準誤差を示す。生物学的反復の正確な数を各群の下に示す。
ZSCAN10を同定するために使用された方法の概略図である。最初に、多能性ネットワーク解析から得られた59個のコア多能性遺伝子を、p53、SIRT1、PLK1、およびp53の上流の遺伝子(ATM、PARP、およびDNAPK)などのDNA損傷応答と関連することが知られている遺伝子に対してフィルタリングした。次いで、遺伝子リストをA−iPSC対Y−iPSC/ESCの差異的発現に基づいてフィルタリングし、候補を単一遺伝子ZSCAN10にまで絞り込んだ。
A−iPSCにおけるZSCAN10発現の乏しい活性化およびZSCAN10の一過性発現による完全な再活性化を示す棒グラフである。内在性ZSCAN10のmRNAレベルは、ESC、Y−iPSC、A−iPSC、およびA−iPSC−ZSCAN10におけるQ−PCRによって決定した。内在性ZSCAN10レベルをβ−アクチンに対して標準化した。エラーバーは、平均の標準誤差を示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
ESCおよびY−iPSCと比較した、A−iPSCにおける突然変異誘発頻度の増加を示す棒グラフである。突然変異の頻度は、6−チオグアニン媒介ネガティブ選択の存在下でのHPRTプロモーター活性不活性化によって推定され、Q−PCRによって確認された。A−iPSCで観察されたより高い突然変異頻度は、ZSCAN発現後に正常レベルに減少した。エラーバーは、3回の反復の平均の標準誤差を示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
奇形腫のヘマトキシリンエオジン(H&E)染色を示し、ESCおよびY−iPSCと比較してA−iPSCのin vivoの発がん性がより高いことを示す。奇形腫解析は、Rag2/γc免疫不全マウス(Taconic)の後肢上の皮下組織に106個の未分化細胞を注入し、注射後3ヶ月間奇形腫の形成をモニターして行った。収集した腫瘍を10%ホルマリン溶液中で固定し、ヘマトキシリン・エオジン(H/E)染色のために処理した。ESC(図5B)およびY−iPSC(図5C)は、嚢胞構造に発展し、癌腫徴候のない様々な組織型を含む良性奇形腫を形成する。対照的に、個々のA−iPSCクローンの48%(n=28)(図5D)は悪性癌腫および良性奇形腫組織の混合物を生じ、A−iPSCクローンの52%(n=30)(図5E)は奇形がんのみを含んでいた。
奇形腫のヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を示し、ESCおよびY−iPSCと比較してA−iPSCのin vivoの発がん性がより高いことを示す。奇形腫解析は、Rag2/γc免疫不全マウス(Taconic)の後肢上の皮下組織に106個の未分化細胞を注入し、注射後3ヶ月間奇形腫の形成をモニターして行った。収集した腫瘍を10%ホルマリン溶液中で固定し、ヘマトキシリン・エオジン(H/E)染色のために処理した。ESC(図5B)およびY−iPSC(図5C)は、嚢胞構造に発展し、癌腫の徴候のない様々な組織型を含む良性奇形腫を形成する。対照的に、個々のA−iPSCクローンの48%(n=28)(図5D)は悪性癌腫および良性奇形腫組織の混合物を生じ、A−iPSCクローンの52%(n=30)(図5E)は奇形がんのみを含んでいた。
奇形腫のヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を示し、ESCおよびY−iPSCと比較してA−iPSCのin vivoの発がん性がより高いことを示す。奇形腫解析は、Rag2/γc免疫不全マウス(Taconic)の後肢上の皮下組織に106個の未分化細胞を注入し、注射後3ヶ月間奇形腫の形成をモニターして行った。収集した腫瘍を10%ホルマリン溶液中で固定し、ヘマトキシリン・エオジン(H/E)染色のために処理した。ESC(図5B)およびY−iPSC(図5C)は、嚢胞構造に発展し、癌腫の徴候のない様々な組織型を含む良性奇形腫を形成する。対照的に、個々のA−iPSCクローンの48%(n=28)(図5D)は悪性癌腫および良性奇形腫組織の混合物を生じ、A−iPSCクローンの52%(n=30)(図5E)は奇形がんのみを含んでいた。
奇形腫のヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色を示し、ESCおよびY−iPSCと比較してA−iPSCのin vivoの発がん性がより高いことを示す。奇形腫解析は、Rag2/γc免疫不全マウス(Taconic)の後肢上の皮下組織に106個の未分化細胞を注入し、注射後3ヶ月間奇形腫の形成をモニターして行った。収集した腫瘍を10%ホルマリン溶液中で固定し、ヘマトキシリン・エオジン(H/E)染色のために処理した。ESC(図5B)およびY−iPSC(図5C)は、嚢胞構造に発展し、癌腫の徴候のない様々な組織型を含む良性奇形腫を形成する。対照的に、個々のA−iPSCクローンの48%(n=28)(図5D)は悪性癌腫および良性奇形腫組織の混合物を生じ、A−iPSCクローンの52%(n=30)(図5E)は奇形がんのみを含んでいた。
Y−iPSCおよびESCと比較したA−iPSCにおける異常なDNA損傷応答、ならびにZSCAN10の一過性発現後永久的な回復を示すイムノブロットである。フレオマイシン処理(2時間、30μg/ml)後のA−iPSCにおける減少したATMリン酸化、およびZSCAN10発現時のATM活性化の回復が観察された。
フレオマイシン処理(2時間、30μg/ml)後の3個の独立したクローンにおける、A−iPSCにおける異常なp53DNA損傷応答およびZSCAN10の一過性発現による回復を示す。赤い線は、両方のイムノブロットに内部標準としてロードされた同じESCサンプルを示す。
フレオマイシン処理(2時間、30μg/ml)後のA−iPSCにおける低H2AXリン酸化およびZSCAN10発現によるH2AXシグナルの回復を示す。
ATM−/−H2AX−/−ESC、A−iPSC、Y−iPSCおよびZSCAN10に対するshRNAが導入されたY−iPSC(Y−iPSC−shZSCAN10)におけるATMおよびH2AXタンパク質のリン酸化されたレベル、およびp53のレベルを示すイムノブロットのスキャン画像である。ベータアクチンをローディング標準として使用した。
線維芽細胞、ESC、Y−iPSCおよびY−iPSC−shZSCAN10におけるmRNAのZSCAN10レベルの棒グラフである。
放射線処理後のESC、Y−iPSC、A−iPSCおよびA−iPSC−ZSCAN10におけるリン酸化−ATM、pH2AXおよびp53レベルを示すイムノブロットのスキャン画像である。
H2O2で処理した後の、ESC、Y−iPSC、A−iPSCおよびA−iPSC−ZSCAN10におけるpATMおよびβ−アクチンの免疫ブロットのスキャン画像である。
ESCおよびY−iPSCと比較した、A−iPSCにおけるZSCANプロモーターのより高いDNAメチル化を示す散布図である。図7Aは、A−iPSCにおける比較的高いDNAメチル化を示す、ZSCAN10プロモーターのパイロシーケンシングデータのプロットである。ZSCAN10の一過性発現は、ZSCANプロモーターのDNAメチル化を低下させた(A−iPSC−ZSCAN10)。エラーバーは、群ごとに解析された4個の独立したクローンの平均の標準誤差を示す。統計的有意性は、t検定によって決定した。
ESCおよびY−iPSCと比較した、A−iPSCにおけるZSCANプロモーターのより高いDNAメチル化を示す散布図である。図7Bは、繊維芽細胞、A−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10、Y−iPSCおよびESCにおいてβ−アクチンで標準化されたDNMT3bのmRNAレベルを示す棒グラフである。
A−iPSCにおけるグルタチオンの過剰な酸化能およびZSCAN10による回復を示す棒グラフである。ESC、Y−iPSC、A−iPSC、およびA−iPSC−ZSCAN10における総グルタチオンレベル(最大酸化能)を決定するために、還元型グルタチオン(GSH)および酸化型グルタチオン(GSSG)の定量化を用いた。各条件からの3回の反復について平均±標準偏差をプロットする。
ESC、Y−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10およびA−iPSCにおけるH2O2除去活性を示す棒グラフであり、活性酸素種ROS活性として表される。細胞活性酸素種アッセイキット(Abcam、ab113851)を使用して、50μMで3時間のTBHP(tert−ブチル過酸化水素;安定な化学形態のH2O2)による処理後のH2O2除去活性を測定した。各条件からの4回の反復について平均±標準偏差をプロットする。
ESC、Y−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10、A−iPSC−GLUT3およびA−iPSCにおけるGPX2のmRNAレベル(Q−PCRによって決定される)を示す棒グラフである。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
ESC、Y−iPSC、Y−iPSC−GPX2、A−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10、およびA−iPSC−shRNA−GPX2におけるグルタチオンの酸化能の棒グラフである。還元型グルタチオン(GSH)および酸化型グルタチオン(GSSG)の定量を測定し、総グルタチオンレベル(最大酸化能)を決定した。各条件からの3回の反復について平均±標準偏差をプロットする。グルタチオン解析は、Glutathione Fluorometric Assay(Biovision、K264−100)を用いて行った。
50μMで3時間TBHP(tert−ブチル過酸化水素;安定した化学形態のH2O2)で処理後のESC、Y−iPSC、Y−iPSC−GPX2、A−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10およびA−iPSC−shRNA−GPX2におけるH2O2除去活性を示す棒グラフである。各条件からの4回の反復について平均±標準偏差をプロットする。
フレオマイシン処理(2時間、30μg/ml)の終了後15時間における、ESC、Y−iPSC、Y−iPSC−GPX2、A−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10およびA−iPSC−shRNAにおけるTUNEL陽性アポトーシス細胞TMR−dUTO)を示す棒グラフである。
GPX2のshRNAを用いたA−iPSCの3個の独立したクローンおよび対照(フレオマイシン処理ありおよび処理なしの、ATMおよびH2AXノックダウンのESCならびにY−iPSCおよびA−iPSC)におけるフレオマイシン処理後のDNA損傷応答(p−ATM、pH2AXおよびp53)の回復を示すpATM/pH2AX/p53のイムノブロットである。
体細胞(若年および老齢ドナー由来の線維芽細胞試料)、ESC、Y−iPSC、A−iPSCおよびA−iPSC−ZSCAN10におけるGLUT3のmRNAのリアルタイムqPCRを示す棒グラフである。
ESC、Y−iPSC、A−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10、およびA−iPSC−GLUT3における細胞内グルコース取り込み速度を示す棒グラフである。グルコース取り込み率は、グルコース取り込み解析キット(cat#K606−100、Biovision Inc.、Milpitas、CA、USA)によって測定した。
A−ntESC(核移植法を用いて作製したES細胞)、ESC、Y−iPSC、A−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10およびA−iPSC−GLUT3によるグルタミン酸化的リン酸化の活性化の棒グラフである。グルタミンを最終濃度4mMで添加した後、酸素消費速度を測定した。
対照(ESC、ならびにESCにおけるATMノックダウン、Y−iPSCおよびA−iPSC)と比較して増加したGLUT3発現を有するA−iPSCの3個の独立したクローンにおけるフレオマイシン処理後のDNA損傷応答の回復を示すATMの免疫ブロットである。
GLUT3プロモーターへのZSCAN10結合のクロマチンIP解析を示すグラフである。ESC、Y−iPSC、またはA−iPSCをIgg対照またはZSCAN10抗体とともにインキュベートし、次いでGLUT3プロモーターに特異的なプライマーを用いてqPCRを実施した。
ESC、Y−iPSC、A−iPSC、GLUT3に対するshRNAを発現するY−iPSC(Y−iPSC−shGLUT3)およびGLUT3に対するsh−RNAを発現するA−iPSC(A−iPSC−shGLUT3)におけるROSレベルの棒グラフである。
グルタチオンレベルは、GLUT3の過剰発現時に、A−iPSCにおいて正常(ESCおよびY−iPSCにおいて観察されたものと同様に)に減少した(図10G)。
Kim,K.ら、Nature、2010年9月16日、467(7313):285−90、doi:10.1038/nature09342、誘導多能性幹細胞におけるエピジェネティック記憶、に開示されるようなランダムリサンプリングによってARE配列を有する14個の遺伝子を見つける統計的確率を示すヒストグラムである。
FESC、Y−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10(ZSCAN10を補充したA−iPSC)、およびA−iPSCにおけるエキソソームサブユニットEXOSC1、EXOSC2およびEXOSC5の相対的mRNAレベル(β−アクチンに対して標準化した)を示す一連の棒グラフである。ヒストグラムは、任意の転写物がUUAUUUA(A/U)(A/U)ARE配列を有する可能性が7であるので、ランダムな機会のみに基づいてサンプル中において14を見つけるという確率は非常に低い(p=0.01224)ことを示す。
ESC、ESCshEXOSC2、ESCshEXOSC8、ESCshEXOSC2および8、ならびにA−iPSCにおける相対的なGPX2のmRNA発現(β−アクチンに対して標準化)の棒グラフである。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
ESC、ESCshEXOSC2、ESCshEXOSC8、およびESCshEXOSC2&8のフレオマイシン処理後のDNA断片化アッセイによるアポトーシス応答の定量である。エラーバーは、技術的および生物学的な反復の平均の標準誤差を示す。
異なる個体における再プログラミングの概略図である。
pATMおよびβアクチンのタンパク質のレベルを示すイムノブロットのスキャン画像である。ESC、Y−iPSCおよびA−iPSCは異なる個体から作製し(A−iPSC AG8−76、A−iPSC AG4−71歳、A−iPSCB、およびA−iPSCS)、フレオマイシンで処理した。
AG4個体から作製されたA−iPSCの染色体図である。
p53−/−のiPSC(陰性対照)、B6129マウスの遺伝的バックグランドから作製されたA−iPSC、およびB6CBAマウスの遺伝的バックグランドから作製されたA−iPSCにおける、フレオマイシンで処理されたイムノブロットのスキャン画像である。p53およびβ−アクチンのレベルが示されている。
ヒトA−iPSCの6個の異なるクローン(図13E)、ヒトA−iPSCアウトライアーの1個のクローン(図13F)、Y−iPSCの5個の異なるクローン(図13G)、およびZSCAN10を過剰発現するA−iPSCの6個のクローン(図13H)におけるpATMおよびβ−アクチンのタンパク質のレベルを示すイムノブロットのスキャン画像を示す。
ヒトA−iPSCの6個の異なるクローン(図13E)、ヒトA−iPSCアウトライアーの1個のクローン(図13F)、Y−iPSCの5個の異なるクローン(図13G)、およびZSCAN10を過剰発現するA−iPSCの6個のクローン(図13H)におけるpATMおよびβ−アクチンのタンパク質のレベルを示すイムノブロットのスキャン画像を示す。
ヒトA−iPSCの6個の異なるクローン(図13E)、ヒトA−iPSCアウトライアーの1個のクローン(図13F)、Y−iPSCの5個の異なるクローン(図13G)、およびZSCAN10を過剰発現するA−iPSCの6個のクローン(図13H)におけるpATMおよびβ−アクチンのタンパク質のレベルを示すイムノブロットのスキャン画像を示す。
ヒトA−iPSCの6個の異なるクローン(図13E)、ヒトA−iPSCアウトライアーの1個のクローン(図13F)、Y−iPSCの5個の異なるクローン(図13G)、およびZSCAN10を過剰発現するA−iPSCの6個のクローン(図13H)におけるpATMおよびβ−アクチンのタンパク質のレベルを示すイムノブロットのスキャン画像を示す。
ヒトESC、DNA損傷応答を示さないヒトA−iPSC、および正常なDNA損傷応答を示すA−iPSCにおける、β−アクチンに対して標準化されたZSCAN10の相対的mRNAレベルの棒グラフである。
グルタチオン合成酵素(GSS)プロモーターに結合するZSCAN10を示す概略図である。
Y−iPSCおよびA−iPSCにおけるGSSプロモーターへのZSCAN10結合のChIP−定量的PCR解析の棒グラフである。値は、投入量と比較した濃縮パーセントで示される。
ESC、Y−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10およびA−iPSCにおけるGSSのmRNAレベル(Q−PCRによって決定)を示す棒グラフである。エラーバーは平均の標準誤差を示す。
ESC、Y−iPSC、Y−iPSCGSS、A−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10およびA−iPSCshGSSのフレオマイシン処理後のDNA断片化アッセイ(画像定量によって取得)によるアポトーシス応答の定量である。エラーバーは、技術的および生物学的な反復の平均の標準誤差を示す。
GSSのshRNA発現を有するA−iPSCの3個の独立したクローン(図14E)、またはGSSのレンチウイルス発現後のY−iPSCの3個の独立したクローン(図14F)におけるフレオマイシン処置後のDNA損傷応答(p−ATM)の回復を示すリン酸化−ATMのイムノブロットである。β−アクチンレベルはローディング標準として使用される。
GSSのshRNA発現を有するA−iPSCの3個の独立したクローン(図14E)、またはGSSのレンチウイルス発現後のY−iPSCの3個の独立したクローン(図14F)におけるフレオマイシン処置後のDNA損傷応答(p−ATM)の回復を示すリン酸化−ATMのイムノブロットである。β−アクチンレベルはローディング標準として使用される。
ヒトESC、A−iPSC(DNA損傷応答なし)およびA−iPSC(正常DNA損傷応答あり)におけるβ−アクチンに対して標準化されたGSSのmRNAレベルを示す棒グラフである。
線維芽細胞(A−SC、Y−SC)、iPS細胞(A−iPSC、Y−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10)およびES細胞(ESC)の全遺伝子発現プロファイルを使用する主成分解析PCA)からのデータのプロットである。
全遺伝子発現プロファイルの教師なしクラスタリング解析のヒートマップである。ヒートマップは、ピアソン相関係数によって測定されるペアワイズ遺伝子発現類似性を示す。
線維芽細胞(A−SC、Y−SC)、iPS細胞(A−iPSC、Y−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10)およびES細胞(ESC)におけるES細胞特異的遺伝子の相対発現レベルのマイクロアレイヒートマップである。ES細胞特異的遺伝子は、成人および若年の線維芽細胞における平均発現よりもES細胞において3倍またはそれ以上の発現レベルを有することが明らかにされた。ヒートマップはES細胞に対する相対的発現倍数差を示す。

実施例

0043

詳細な説明
定義
本明細書で使用されるとき、以下の用語は、文脈から明らかにそうでないことを示さない限り、下記の意味を有するものとする。

0044

「DNA損傷応答」という用語は、外界からの刺激または代謝の際の誤りによるそのDNAに対する損傷を示す刺激の結果として(運動分泌酵素産生、遺伝子発現などの点で)細胞の状態または活性の変化をもたらす任意のプロセスを指す。

0045

「アポトーシス応答」という用語は、例えばDNA損傷に応答して、細胞のアポトーシスをもたらすプロセスを指す。より低いアポトーシス率またはアポトーシスに対する細胞の不全集約的にアポトーシス応答の低下と呼ばれる)は、制御されない細胞増殖およびより具体的には悪性腫瘍に関連する。

0046

「倍数性」という用語は、通常二倍性の細胞または生物が2組超の染色体を示す状態を指し、「異数性」という用語は、任意の倍数性(正常な2組の染色体より多いかまたは少ない)を意味する。

0047

「染色体構造異常」という用語は、染色体の正常な構造の変化を指す。染色体構造異常は、重複欠失転座逆位および挿入を含むが、これらに限定されない。

0048

「ゲノム不安定性」(また「ゲノム不安定性」または「遺伝的不安定性」)という用語は、構造的染色体変化(欠失、増幅および転座)、数値染色体異数性、または細胞系統のゲノム内のDNA配列上の変異の増加を指す。

0049

「発がん性」という用語は、宿主への移植後の細胞が宿主において悪性腫瘍を発生させる可能性を意味する。この用語は、例えば、誘導多能性幹細胞、および動物またはヒトへの分化および移植の際に悪性腫瘍を発生させる傾向に適用される。ゲノム不安定性、DNA損傷応答の異常、アポトーシス応答の低下およびグルコース代謝の低下などの表現型形質は、iPSCが老齢のドナー由来であるか否かにかかわらず発がん性の上昇を示す。

0050

因子または他の活性分子の「有効量」という用語は、特定の結果をもたらすのに有効な量を意味する。例えば、ZSCAN10またはGLUT3またはエキソソームサブユニットの補充(またはGPX2またはGSS阻害)の場合、有効量は、アポトーシス応答および/またはDNA損傷応答および/またはグルコース代謝異常の実質的な回復をもたらすか、またはゲノム安定性を維持する量である。

0051

「再プログラミング因子」という用語は、転写因子、すなわち、単独でまたは他の再プログラミング因子と組み合わせて、分化した体細胞を再プログラムして細胞を多能性状態にする能力を有するタンパク質を指す。

0052

転写多能性ネットワーク」という用語は、胚性幹細胞(ESC)における多能性の転写制御関与する転写因子のネットワークを指す。本発明者らは、ZSCAN10が「転写多能性ネットワーク」の一部であり、Y−IPSCまたはESCと比較してZSCAN10が欠損している幹細胞において補充されるべきであることを示した。

0053

「突然変異誘発能」という用語は、DNA配列の調節部分、タンパク質コード部分または他の部分に変異を誘導し、突然変異の頻度を正常(バックグラウンド)レベルを上回るよう増加させる物質潜在能力または能力を指す。

0054

iPSCに関連して使用される「若年」という用語は、マウスの場合5日齢までの、ヒトの場合16歳までの若年ドナー由来のiPSCを意味し、そしてより一般的には、例えば完全に成熟した成体段階に入ることを開始するための活性成長段階を遅らせることのような、「若年」の特徴を示すドナーに由来するiPSCを意味する。

0055

iPSCと関連して使用される「古い」という用語は、年齢関連の退行性疾患または状態を示すようになる、マウスの場合1.4年齢超の、ヒトの場合50歳超の老齢ドナー由来のiPSCを意味する。

0056

A−iPSCのグルコース代謝またはDNA損傷応答、またはアポトーシス応答、またはゲノム安定性の修復、保存回復または救済の文脈において使用される「実質的」という用語は、Y−iPSCおよびESCのものとほぼ同じまたは完全に同じ状態を達成することを意味する。例えば、ZSCAN10補充を伴うA−iPSCが、Y−iPSCとほぼ同一の倍数性および構造的染色体異常を有している図1F〜1Gを参照されたい。図2、5aおよび6もまた参照されたい。さらに、胚性幹細胞のそれぞれのレベルの約50%またはそれ以上のA−iPSCにおけるZSCAN10および/またはGLUT3および/またはエキソソームサブユニットのレベルは、実質的に回復したと考えられる。最後に、A−iPSC中のグルタチオンの酸化能が、ESCまたはY−iPSCのそれの約80%〜約120%の範囲内になるように(例えば、ZSCAN10の補充によって、またはGSSまたはGPX2の阻害によって)低下する場合、実質的に復元されたものと考えられる。

0057

「エキソソーム」という用語は、様々なタイプのRNA(リボ核酸分子を分解することができる多タンパク質エキソソーム複合体(またはしばしば単にエキソソームと呼ばれるPM/Scl複合体)を指す。エキソソームの基質は、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、および多くの種の小型RNAを含む。エキソソームは、表3に列挙される9個のコアサブユニットおよび2個のエキソヌクレアーゼ補因子を含む。

0058

「エキソソームサブユニット」という用語は、9個のコアサブユニットおよび2個の補因子:EXOS1、EXOS2、EXOS3、EXOS4、EXOS5、EXOS6、EXOS7、EXOS8、EXOS9、EXOS10、およびDIS3を含むエキソソームの11個の構成要素(表3に列挙)を指す。

0059

文脈によって他に要求されない限り、単数形は複数形を含むものとする。例えば、単数の「エキソソームサブユニット」は、1つまたはそれ以上のエキソソームサブユニットを意味する。

0060

本開示の概要
本開示は、以下の発見に基づく。
1.若年ドナー由来の誘導多能性幹細胞(Y−iPSC)と比較して、より高い発がん性を有し、増加したゲノム不安定性、アポトーシスの異常および鈍いDNA損傷応答を示すことが示された、老齢ドナー由来の誘導多能性幹細胞(A−iPSC)。

0061

2. A−iPSCはまた、過剰のグルタチオン媒介性H2O2除去活性(グルタチオン/H2O2)を示すことが示され、これは結果としてDNA損傷応答およびアポトーシスを阻害する。

0062

3. この経路の阻害は、これらの異常を実質的に救済し、結果としてA−iPSCの発がん性を低下させる。

0063

4. A−iPSCは、A−iPSCにおいて不十分に活性化された多能性因子ZSCAN10が欠損していることが示されている。ZSCAN10は、グルタチオン媒介性H2O2スカベンジャータンパク質であるGPX2を阻害するように作用する。ZSCAN10発現は、グルコーストランスポーターGLUT3の誘導と強い相関を示し、ZSCAN10発現が増加するとGLUT3内在性発現が増加する。ZSCAN10は、そのプロモーターに結合することによってGLUT3を直接調節する。

0064

5. 例えば、再プログラミングの補助としてのA−iPSCにおける発現(一過性の発現でさえも)によるようなZSCAN10の補充は、A−iPSCにおいてゲノム安定性、DNA損傷応答、アポトーシス応答およびグルコース代謝の実質的または完全な回復をもたらし、それらをY−iPSCのそれらと同様にすることがさらに見出された。これは、グルタチオン/H2O2のホメオスタシスを正常化することによって達成されることが示されている。重要なのは、これらのY−iPSC属性の十分なまたはむしろ完全な回復は、ZSCAN10を、ESCにおいて存在するレベルに正確にまたはY−iPSCにおいて存在するレベルに正確に補充する必要がないことが示された。さらに、ZSCAN10はA−iPSCで発現されないため、この発見は誘導プロトコールを超越すると予想される。換言すれば、ZSCAN10補充は、この因子の欠乏の場合に使用されるべき任意の幹細胞誘導プロトコールに追加することができる。ZSCAN10をコードする核酸を含むベクターは、他の再プログラミング因子のための核酸を含むベクターのセットに追加することができる。代替的に、再プログラミング因子およびZSCAN10のための核酸を含む単一のベクターが、例えば、これをしない場合にZSCAN10が欠損したiPSCを産生するであろう細胞の再プログラミングの場合に利用することができる。

0065

6. GLUT3(多能性幹細胞特異的グルコーストランスポーター)もまた、A−iPSCにおいて十分に活性化されない。A−iPSCにおけるGLUT3の不十分な活性化は、十分な細胞内グルコース不足に起因してグルコース代謝における酸化的リン酸化から解糖への多能性幹細胞特異的移行を阻害する。したがって、A−iPSCはエネルギー効率の良い酸化的リン酸化を使用して(図10)、より少ないグルコースで十分なエネルギー源を生成する。しかしながら、酸化的リン酸化はより高いH2O2を生成し、結果的にGPX2/グルタチオン媒介性H2O2除去活性を増加させる(図8)。過剰なGPX2/グルタチオン媒介性H2O2除去活性は、H2O2およびATM媒介性DNA損傷応答を阻止する(図6)。GLUT3の直接的または間接的な補充、例えばA−iPSCにおける発現増加または培地への添加またはGLUT3におけるZSCAN10媒介性増加は、A−iPSCにおけるDNA損傷応答およびアポトーシス(図10D)ならびにグルコース代謝も正常化する点で同様の効果を有する。

0066

7. これらの結果は、特にZSCAN10および/またはGLUT3の送達を通じたグルタチオン/H2O2の阻害は、臨床的に有用であり、結果として低下した発がん性を有するA−iPSCをもたらすことを示す。したがって、本発明の結果は、ZSCAN10の補充(任意の上方調節を含むがこれに限定されない)、およびA−iPSCにおける過剰なグルタチオン/H2O2活性(またはその効果)の阻害に寄与するGSSまたはGPX2のような任意の因子の延長調節により、A−iPSCにおけるDNA損傷応答、アポトーシス応答、グルコース代謝およびゲノム安定性(完全性)を実質的に回復させ、結果として発がん性を低下させることにおいて、臨床的に有用であることを示す。そのような因子の1つまたはそれ以上の評価は、iPSCの品質を確認することにおいて有用である。

0067

8. 過剰なグルタチオン/H2O2活性を低下させる介入は、好ましくは、老齢ドナー由来の体細胞をiPSCに再プログラミングすることと同時に実施される。したがって、ZSCAN10は、Yamanaka因子OCT4、SOX2、KLF4、およびc−MYCの使用を介するか、または背景セクションにおいて説明されるおよび/または引用されるような任意の他の誘導プロトコールを介する再プログラミングと同時またはその直後に、体細胞へと導入できる。ZSCAN10の補充は、再プログラミングの間またはその直後に、ならびに分化を誘導する前のいずれの場合においても実施することができる。GLUT3発現の増加は、ZSCAN10と同時に導入することができる。代替的に、GSSおよび/またはGPX2は、それらの発現を抑制することによって、または有効量の対応するタンパク質の阻害物質を導入することによって阻害することができる。

0068

本発明者らは、Y−iPSC、A−iPSCおよびESCにおける遺伝子の発現を比較することにより、A−iPSCに関連する遺伝子を発見した。差異的に発現した遺伝子はごくわずかであり、DNA損傷応答、アポトーシス応答およびゲノム安定性によって評価されるような発がん性に影響を及ぼすものはさらに少なかった。重要な遺伝子に到達するために、本発明者らは最初に、上述するKim,K.ら、2010年(本明細書の他の箇所で議論されているように、代替的なiPSC誘導プロトコールを代わりに使用することができる)に記載されるような標準的なYamanakaのiPSC再プログラミング方法を用いてY−iPSC(E15.5から5日齢の新生仔由来のマウス皮膚線維芽細胞を使用)およびA−iPSC(1.4年齢のドナー由来のマウス皮膚線維芽細胞を使用)を作製した。形態に基づいて多数のクローンが選択され、そしてそれぞれの型の少なくとも12クローンの群が選択された。各Y−iPSCおよびA−iPSCクローンを一連の多能性試験にかけ、例えば奇形腫解析における3つの胚葉への多系統寄与および多能性遺伝子発現解析(AP/OCT4/SSEA1/NANOG)などのような、至適基準としてのESCと比較した(データは示さず)。各クローンにおける4つの再プログラミング因子(OCT4、SOX2、KLF4、MYC)の抑制を、定量的PCR(Q−PCR)により確認した(データは示していない)。DNA倍数性を複数のiPSCクローンで試験し、正常倍数性を有するY−iPSCおよびA−iPSCクローンを同定した(データは示さず)。しかしながら、Y−iPSCと比較してA−iPSCにおいて、倍数性のより高い頻度が観察された(図1F)。A−iPSCはまた、Y−iPSCよりも多くの染色体構造異常を示した(図1G)。

0069

発明者らは、A−iPSCのゲノム安定性の不良は、集団からの重度損傷細胞を排除する直接的なアポトーシスであるiPSCにおけるようなアポトーシス応答の乏しい誘導に起因すると仮定した。彼らは、フレオマイシン(通常、アポトーシスのようなDNA損傷応答を動員するDNA損傷を誘発する薬物)で処理した後、Y−iPSCおよびESCの対照の両方が十分なレベルのアポトーシスを示したことを見出した。対照的に、A−iPSCは、フレオマイシンに対する不十分なアポトーシス応答を示した。次いで、彼らは、A−iPSCにおいてアポトーシス応答を補正し、結果としてゲノム安定性を改善するための方法を開発しようとした。彼らは、ESCまたはY−iPSCのゲノム安定性を有するiPSCを得るためには、さらなる多能性因子が必要であると推論した。多数の以前に同定された多能性ネットワーク遺伝子のスクリーニングにより、ESCで特異的に発現する(かつ体細胞では発現しない)転写因子であり、かつSOX2、OCT4、およびNANOGを含む転写多能性調節ネットワークの一部を形成する、ZSCAN10が得られた。ZSCAN10はまた、ATM、PLK1およびJNK2などのDNA損傷応答遺伝子のプロモーターに結合する。

0070

本発明者らはさらに、ZSCAN10プロモーターがY−iPSCおよびESCにおいて低メチル化/活性化され、A−iPSCにおいて過剰メチル化/不活性化されることを見出した。多能性誘導プロトコールに添加すると、A−iPSCの再プログラミング中に一過的に発現された場合、ZSCAN10は、内在性ZSCAN10プロモーターの低メチル化/活性化をY−iPSCに見られるものに近いレベルに導いた。上記のZSCAN10補充を有するA−iPSCは、染色体倍数性および構造における異常を、Y−iPSCおよびESCに匹敵するレベルまで低下させた。ZSCAN10はまた、A−iPSCの突然変異誘発性をY−iPSCおよびESCに匹敵するレベルまで低下させる。また、ZSCAN10は、A−iPSCのDNA損傷剤に対する応答性(ATMリン酸化、H2AXリン酸化およびp53発現)を回復させ、ZSCAN10がA−iPSCのDNA損傷応答を回復させて、Y−iPSCのDNA損傷応答に近づけることを確認した。

0071

また、これらの発明者らは、A−iPSCにおいてグルタチオンの酸化能が上昇するメカニズムを調べ、マウスにおいてA−iPSC中のグルタチオンペルオキシダーゼ2(GPX2)の発現上昇によってこのことが誘導されるが、Y−iPSCまたはESC中ではそうならないことを見出した。A−iPSCにおけるGPX2発現の減少は、Y−iPSCおよびESCに匹敵するレベルまでグルタチオン/H2O2ホメオスタシスを回復させた。逆に、Y−iPSCにおけるGPX2の過剰発現は、グルタチオン/H2O2ホメオスタシスの不均衡を誘導した。しかしながら、ヒトにおいて、A−iPCSにおけるグルタチオンの酸化能の上昇は、グルタチオン合成酵素(GSS)のレベルの上昇によって引き起こされる。GSSの下方調節は、グルタチオン/H2O2ホメオスタシスの回復をもたらす。

0072

発がん性
加齢と発がん性は強く相関することが知られている。例えば、Stoll EA、Horner PJ、Rostomily RCの発がん性に対する年齢の影響:腫瘍開始細胞および脳微小環境、Aging Cell、2013年;12(5):733−41を参照されたい。PMID:23711239。さらに、DNA過剰メチル化、異常なアポトーシス機構(アポトーシスがより少ない頻度で起こる)およびDNA損傷応答の鈍化などの事象によって発がん性が一般に増加することも知られている。Liu,J.C.の高いミトコンドリアプライミングは、hESCをDNA損傷誘発アポトーシスに感受性にする。Cell stem cell 13、483−491、doi:10.1016/j.stem.2013.07.018(2013年)。さらに、過剰なグルタチオンおよび/または過剰なグルタチオン活性は、膵臓がんおよび結腸直腸がんなどの特定のがんに相関する。さらに、マウスにおけるA−iPSC中のGPX2の過剰発現およびヒトにおけるGSSの過剰発現によって、過剰なグルタチオン活性が誘発されることを本発明者らは見出した。したがって、そのような表現型異常の1つまたはそれ以上は、発がん性を評価するために本開示において使用されており、この目的ならびにより一般的には本開示の方法におけるiPCSの品質を評価するために使用することができる。さらに、これらの表現型異常の改善は発がん性を低下させると考えられている。Donnerstag,B.ら、Cancer Lett.、1996年12月20日;110(1−2):63−70。

0073

DNA損傷応答およびアポトーシスの両方が、腫瘍形成において重要な役割を果たす。ATM、H2AX、およびp53のような特定のDNA損傷応答タンパク質はアポトーシスへとDNA損傷経路を結びつける。したがって、アポトーシスはDNA損傷に対する二次的な応答である。しかしながら、プログラム細胞死誘因することなしに、DNA損傷応答の誘導が起こり得る。例えば、DNA損傷による腫瘍抑制因子p53の活性化は、細胞周期停止またはアポトーシスのいずれかを誘導し、この結果は高度に文脈依存的である。したがって、H2AX、ATM、およびp53などのDNA損傷応答および/またはアポトーシスを媒介するタンパク質のいずれかの活性化における異常は、A−iPSCの異常を示し得、そしてそのような幹細胞の品質を評価するために使用され得る。

0074

ZSCAN10は、ES細胞の多能性を維持するために必要とされる胚性幹(ES)細胞特異的転写因子である。http://www.genecards.org/cgi−bin/carddisp.pl?gene=ZSCAN10を参照されたい(最後に2015年2月24日に訪問)。それおよびそれをコードする核酸(例えば、NCBI Genbank参照配列:NC_000016.10を参照されたい)が公に利用可能である。ヒト、マウスおよびラットのZSCAN10のcDNAは、GE Dharmacon Life Sciencesから入手可能である(http://dharmacon.gelifesciences.com/mammalian−cdna/mgc−cdnas/?term=ZSCAN10&sourceId=EG/84891&productId=416CB003−5022−4263−B1C6−293625B70CE1)(最後に2015年2月24日に訪問)。ヒトのcDNAは、例えば、Tempe ArizonaのDNASU plasmid RepositoryからプラスミドpENTR223.1としても入手可能である(http://dnasu.org/DNASU/GetCloneDetail.do?cloneid=295134;最後に2015年2月24日に訪問)。当該ヒトのcDNAのZSCAN10の挿入部分は配列番号1を有する。

0075

本開示の方法は、iPSCの改善された再プログラミングを達成するためにiPSCをZSCAN10に曝露することに関する。いくつかの実施形態では、本開示は、老齢ドナーから作製されたiPSC細胞に関する(A−iPSC)。いくつかの実施形態では、iPSC細胞は、倍数性または増加した染色体構造異常によって反映されるゲノム不安定性によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、iPSC細胞は、不完全なDNA損傷応答を示す。いくつかの実施形態では、iPSC細胞は、アポトーシスの誘導の異常を示す。いくつかの実施形態では、iPSC細胞はグルコース代謝の異常を示す。これらの異常(ゲノム不安定性、不完全なDNA損傷応答、アポトーシス応答の低下およびグルコース代謝低下)の1つまたはそれ以上を示すiPSCを、ZSCAN10のレベルを増加させることにより、Y−iPSCまたはESCのレベルに匹敵するレベルまで改善することができる(本明細書の他の箇所に開示されているように、ZSCAN10のレベルは、表現型異常が適切に回復する限り、必ずしもY−iPSCのレベルに到達する必要はない)。このプロセスは、ZSCAN10をコードするmRNAのiPSC由来の体細胞への導入、次いで機能的ZSCANタンパク質への翻訳によって達成することができる。ZSCAN10のレベルを増加させるためのさらなる方法には、ZSCAN10発現がDNA、RNA、および/またはタンパク質のレベルにおいて、一過性または長期間の様式のいずれかで達成されるような、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、センダイウイルス、DNAプラスミドのような多数のベクターによるトランスフェクションが含まれるが、これらには限定されない。さらに、ZSCAN10タンパク質レベルは、細胞を、増加したZSCAN10タンパク質レベル(一過性または長期間の様式で発現する)に導く薬剤と接触させることによって、または細胞を組換えZSCAN10タンパク質と直接接触させることによって増加させることができる。本明細書に開示されるように、本発明は、実質的に、(a)ゲノム不安定性を回復する、(b)不完全なDNA損傷応答を改善する、または(c)ヒトまたは動物(例えばマウス)のiPSCにおけるアポトーシス応答を回復するのに十分な用量において、iPSCにおけるZSCAN10のレベルの増加を提供する。

0076

再プログラミングの補助として使用される場合、ZSCAN10補充は、再プログラミング因子をコードする核酸を有する1つまたはそれ以上のベクターに添加することができ、またはそのようなベクターのセットにおいて別個のベクター(必要な場合にのみ使用するような)に含めることができる。再プログラミングに有用なベクターは市販されている。これらのいずれも、ZSCAN10をコードする核酸(および、この技術分野における当業者が理解するようなその発現に有用な任意の他の要素)を含むように改変することができる。

0077

DNA損傷応答、アポトーシス応答、グルコース代謝およびゲノム安定性のうちの1つまたはそれ以上を実質的に回復させるのに有効な量のZSCAN10補充は、Y−iPSCにおけるZSCAN10レベルと比較した、特定のA−iPSC(そのような介入なく再プログラミングされる)によって示されるZSCAN10の欠損に相関する量であるべきである。これに関して、図4は、A−iPSCにおけるZSCAN10の発現の、ESCレベルの約50%のレベル(およびY−iPSCレベルの約60%)のレベルである、未処理細胞の約5倍のレベルまで増加が、評価された表現型応答を回復させるのに有効であったことを示しているので有益である。一般的に、適切なZSCAN10のより意味のある比較は、ESCおよびY−iPSCのレベルに近いかまたは同等である(ただし、異常からの回復には同等のレベルは必要ない)。ESCのZSCAN10レベルの約40%から約90または95%まで、またはY−iPSCのZSCAN10レベルの約50%から100%までのレベルに達するZSCAN10の補充は有効な範囲である。いくつかの実施形態では、評価された表現型パラメーター(DNA損傷応答、アポトーシス応答、ゲノム安定性またはグルコース代謝)を実質的に回復させるのに十分な補充は、たとえより高いレベルが可能であったとしても、十分であり、実際にY−iPSCまたはESCにおいても見られる。

0078

十分な量の内在性のZSCAN10が発現されるがZSCAN10が有効でない場合、補充量は適宜上方調節され、そのような場合にはY−iPSCの量の100%を超える量に到達することができる。

0079

本明細書において補充されることが提案されるZSCAN10または任意の他の因子の補充方法には、培地への添加、またはこれらの因子の発現を促進する送達ベクターまたは他の任意の系によるトランスフェクション、または細胞をこれらの因子へと曝露する任意の事象が含まれる。ベクターを用いない送達の方法については、例えば、Zhou Hら(2009年)の、組換えタンパク質を用いた誘導多能性幹細胞の作製、Cell Stem Cell 4:381−384を参照されたい。任意のタイプのDNA遺伝子導入(レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、Talen、CrispRなど)を使用して補充を達成することができる。代替的に、RNA送達またはタンパク質の形態での細胞への送達もまた使用され得る。これらの技術は当該技術分野において周知である。送達のときは、再プログラミング因子を加える前、その間、またはその後に、ならびに分化および移植の前にすることができる。したがって、ZSCAN10を補充するための試薬を含む細胞を再プログラミングするための試薬(ベクターまたはベクターなし)の組み合わせは、Y−iPSCおよびESCのものと同様の高品質および表現型形質の誘導多能性幹細胞を作製するために想定される。これらは市販されているか、またはZSCAN10の核酸およびアミノ酸配列の両方が既知であることを前提として容易に構築することができる。例えば、Yamanaka再プログラミング多能性因子を細胞に導入するために使用することができるベクターおよびウイルス粒子は、Applied Biological Materials、Richmond BC、Canada; Clontech Laboratories、Mountain View、CA;およびAddgene、Cambridge、MAのような供給源より入手することができる。

0080

本実施例は、ZSCAN10の一過性発現を提供するが、本発明の方法は、ZSCAN10発現が誘導性であるかどうかに限定されない。特定のプロトコールによって誘導されるA−iPSC中のZSCAN10の補充に限定されるものでもない。実際、iPSC誘導のための多くの既知のプロトコールがあり、それらのうちのいずれか1つを本方法と共に使用することができる。Singh,VKら、Front.In Dev.Biol. 3(2):1−18、2015年2月;Yu,J.、Vodyanik,M.A.、Smuga−Otto,K.、Antosiewicz−Bourget,J.、Frane,J.L.、Tian,S.ら(2007年)の、ヒト体細胞由来の誘導多能性幹細胞株、Science 318、1917−1920、doi:10.126/science.151526;Dimos,J.T.、Rodolfa,K.T.、Niakan,K.K.、Weisenthal,L.M.、Mitsumoto,H.、Chung,W.ら、(2008年)の、ALS患者から誘導された誘導多能性幹細胞は運動ニューロンに分化することができる、Science 321、1218−1221、doi:10.1126/science.1158799;Hanna,J.、Markoulaki,S.、Schorderet,P.、Carey,B.W.、Beard,C.、Wernig,M.ら(2008年)の、末梢分化成熟Bリンパ球の多能性への直接的な再プログラミング、Cell 133、250−264、doi:10.1016/J.cell2008.03.028;Huangfu,D.、Macht,R.、Guo,W.、Eijkelenboom,A.、Snitow,M.、Chen,A.E.ら(2008年a)の、定義された因子による多能性幹細胞の誘導は、小分子化合物によって大きく改善される、Nat.Biotechnol.26、795−1797、doi:10.1038/nbt1418;Mali,P.、Ye,Z.、Hommond,H.H.、Yu,X.、Lin,J.、Chen,G.ら(2008年)の、ヒト成人および胎児の線維芽細胞由来の誘導多能性幹細胞の作製の効率およびペースの改善、Stem Cells 26、1998−2005、doi:10.11634/stemcells.2008−0346;Marson,A.、Foreman,R.、Chevalier,B.、Bilodeau,S.、Kahn,M.、Young,R.A.ら(2008)の、Wntシグナル伝達は、体細胞の多能性への再プログラミングを促進する、Cell Stem Cell 3、132−135、doi:10.1016/j.stem.2008.06.019;Mikkelsen,T.S.、Hanna,J.、Zhang,X.、Ku,M.、Wernig,M.、Schorderet,P.ら(2008年)の、統合ゲノム解析による直接再プログラミングの解明、Nature 454、49−55、doi:10.1038/nature07056;Park,I.H.、Zhao,R.、West,J.A.、Yabuchi,A.、Huo,H.、Ince,T.A.ら(2008年a)の、定義された因子によるヒト体細胞の多能性への再プログラミング、Nature 451、141−146、doi:10.1038/nature06534;Shi,Y.、Desponts,C.、Do,J.T.、Hahm,H.S.、Scholer,H.R.、およびDing,S.(2008年a)の、小分子化合物を伴うOct4とKlf4によるマウス胚線維芽細胞からの多能性幹細胞の誘導、Cell Stem Cell 3、568−574、doi:10.1016/J.stem.2008.10.004;Shi,Y.、Do,J.T.、Desponts,C.、Hahm,H.S.、Scholer,H.R.、およびDing,S.(2008年b)の、誘導多能性幹細胞の作製のための化学的および遺伝的アプローチを組み合わせ、Cell Stem Cell、2、525−528、doi:10.1016j.stem.2008.05.011を参照されたい。

0081

ZSCAN10発現を増加させるためのベクター
適切なベクターは、ウイルス遺伝子送達ベクター(偽型であってもよい、例えばHIV1、HIV2、FICおよびEIAV由来のもののようなレンチウイルスに基づいたベクター、AAVに基づいたベクターなど)、プラスミドなどが含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載される実験において、ZSCAN10およびGLUT3の送達は、OCT4遺伝子を含む市販のレンチウイルスベクター(Plasmid 19778:AddgeneのFU−tet−o−hOct4)を用い、それを切り出してZSCAN10またはGLUT3と置き換えて作製した。http://www.addgene.org/19778/(最後に2015年2月25日に訪問)を参照されたい。

0082

用いることができる追加のベクターの例は、EMD Milliporeから入手可能なSTEMCCAのような切除可能なベクターを含む。しかしながら、ZSCAN10補充は、特定の発現ベクターに限定されず、多能性幹細胞の誘導に適した任意の方法(ベクターを使用するか否かに関わらず)を、ZSCAN10を補充するために容易に適合させることができる。本開示に従って、幹細胞に挿入されるGLUT3、GPX2、および任意の他のヌクレオチドについても同様である。

0083

ベクター不使用の方法もまた、本明細書に例示されるような既知のプロトコールに従い、適合させて使用することができる。

0084

iPSCの由来
原則として、いずれの体細胞もiPSCに再プログラミングすることができる。基本的なYamanakaプロトコール(Takahasji,K.ら、Cell、2006年8月25日;126(4):663−76;Takahashi,K.ら、Cell、2007年11月30日;131(5):861−72)は、例えば、背景技術のセクションで引用した参考文献に記載されているようなそのような改変を用いてiPSC誘導の代替プロトコールとして使用され得る。さらに、当技術分野で公知の再プログラミングのための他のプロトコールがある。例えば、国際公開第2013177228号「組込み/導入遺伝子を含まない幹細胞の作製」を参照されたい。

0085

再プログラミングのために最も頻繁に使用される細胞は、必要に応じて胚性、新生児、若年および成人の線維芽細胞などの線維芽細胞を含む。

0086

上述のKim,K.ら、Nature、2010年、および上述のKim,K.ら、Nature Biotechnology 2011年、によると、iPSCの特性には、再プログラミングの前に体細胞が選択された組織に応じたある組織特異性があることに留意されたい。本開示は、ゲノム安定性および/またはアポトーシス応答および/またはDNA損傷応答における異常、を示すA−iPSC(およびより広義には任意のiPSC)、ならびにグルタチオン/H2O2経路の調節異常に関連する発がん性の増加、そしてより具体的には、ZSCAN10および/またはグルコース代謝における異常に関連した実施形態、例えばGLUT3の不十分な内在性発現に関連するようなものに関する。したがって、iPSCがそのような異常を示すかどうかが分からないとき、例えば実施例1の手順に従って試験を実施すべきである。ZSCAN10異常の判定が必要であれば、例えば実施例2のZSCAN10レベルを評価する手順に従うことができる。GLUT3レベルを評価する必要がある場合、例えばGLUT3の発現レベルを評価するための実施例8の手順を使用することができる。

0087

GLUT3
グルコースの細胞取り込みは、GLUT3(SLC2A3としても知られている)が主要なアイソフォームの1つである、グルコーストランスポータータンパク質のファミリーによって媒介される促進された拡散によって生じる。ニューロンおよびいくつかの造血細胞型を除いて、GLUT3は一般に成体組織では発現しない。しかしながら、GLUT3の発現は、様々ながんの型において検出されている。異なるがんの型におけるGLUT3の発現が観察されているが、その機能的役割は未知のままである。

0088

脳腫瘍始原細胞(しばしば脳がん幹細胞とも呼ばれる)の場合、GLUT3の発現は、誘導された多能性と相関し、複数の腫瘍型における不良な生存率予測することが見出されている(Flavahan,WA、Nature Neuroscience 16:1373−1382(2013年)。

0089

本発明者らは、正常な染色体数および/または構造、DNA損傷応答またはアポトーシスの誘導を特徴とする細胞と比較して、染色体数および/または構造、DNA損傷応答の誘導、またはアポトーシスにおける異常を示すiPSC細胞のGLUT3レベルが有意に低いことを発見した。ある例において、GLUT3のより低いレベルまたは非検出可能レベルを発現する細胞はA−iPSC細胞である。実施例8に示すように、A−iPSCにおけるGLUT3の発現の増加は、A−iPSCにおけるZSCAN10発現の効果と同様に、DNA損傷応答の実質的な回復をもたらした(図10D)。さらに、本開示に提示されたデータは、ZSCAN10がGLUT3の誘導をもたらすことを示し、ZSCAN10およびGLUT3がiPSCにおいて相互連結されていることを示唆している。ChIP−seqおよび免疫沈降解析により、ZSCAN10がGLUT3プロモーターに結合し、ZCAN10によるGLUT3の直接調節を示すことが明らかになった。以下の物質は市販されており、下記に例示されるようなウェブサイト(すべて最後に2015年2月25日に訪問)を使用してオンライン調達することができる。

0090

ヒト、マウスおよびラットのGLUT3をコードするcDNA配列は、ここに見出すことができる(配列番号2):http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/6515(Kayano T. J.Biol.Chem.、263(30):15245−15248(1988年))。

0091

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/20527(Nagamatsu S. J Biol Chem.、267(1):467−72(1992年))。

0092

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/25551(Krishnan SN.、Life Sci.56(14):1193−7(1995年))。

0093

ヒトGLUT3を含むプラスミドはGenecopoeiaから市販されており、ここに見出すことができる:http://www.genecopoeia.com/product/search/detail.php?prt=1&cid=&key=C0200(2014年10月6日12:30pmに訪問)。

0094

さらに、組換えGLUT3タンパク質は、mybiosource.comから市販されており、ここに見出すことができる:http://www.mybiosource.com/datasheet.php?products_id=1214582(最後に2015年2月25日に訪問)。

0095

iPSC、またはより具体的にはA−iPSCにおけるグルコース代謝、ゲノム安定性、DNA損傷および/またはアポトーシスの異常の1つまたはそれ以上を実質的に回復させるのに有効な量のGLUT3補充は、上述の異常を示さないiPSC細胞におけるGLUT3レベルに相関する量でなければならない。代替的に、A−iPSCにおけるGLUT3補充は、Y−iPSCおよびESCで検出されるGLUT3の量に相関し得る。GLUT3の低下したレベルに起因してiPSCで観察される異常を回復させるのに有効な補充量は、ZSCAN10について決定された範囲と定性的に同様の範囲にあると予想される。GLUT3の補充方法は多様であり、ZSCAN10の補充について記載されたプロトコールはGLUT3の補充に適用される。

0096

GLUT3の補充は、GLUT3をコードするmRNAをiPSC由来体細胞に導入し、次いで機能的GLUT3タンパク質に翻訳することによって達成することができる。GLUT3のレベルを増加させるためのさらなる方法には、GLUT3発現が、一過性または長期的な様式のいずれかにおいてDNA、RNA、および/またはタンパク質レベルにおいて達成されるような、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、センダイウイルス、DNAプラスミドのような多数のベクターによるトランスフェクションが含まれるが、これらには限定されない。

0097

代替的に、GLUT3のタンパク質レベルは、細胞を、増加したGLUT3タンパク質レベル(一過性または長期間の様式)に導く薬剤と接触させることによって増加させることができる。実施例8に示すように、ZSCAN10の発現は、GLUT3のレベルの上昇をもたらす。したがって、ZSCAN10の細胞レベルを増加させると、GLUT3の上方調節が生じることが予想される。さらに、GLUT3レベルは、細胞を組換えGLUT3タンパク質と接触させることによって増加させることができる。本明細書に開示されるように、本方法は、本発明は、実質的に、または完全に、a)ゲノム不安定性を回復する、(b)不完全なDNA損傷応答を改善する、または(c)ヒトまたは動物(例えばマウス)のiPSCにおけるアポトーシス応答を回復する、または(d)グルコース代謝をESCまたはY−iPSCと同様のレベルにまで回復するのに十分な用量において、iPSCにおけるZSCAN10のレベルの増加を提供する。

0098

GPX2
グルタチオンペルオキシダーゼは、還元型グルタチオンを用いてH2O2の還元触媒する。GPX2は、消化管上皮におけるグルタチオン依存性過酸化水素低下活性の大部分を担う2つのアイソザイムの1つをコードするグルタチオンペルオキシダーゼファミリーのメンバーである。公開された文献は、幹細胞が低ROSレベルのレドックスニッチに存在し、レドックスホメオスタシスのバランスが複雑なネットワークによって幹細胞の自己再生を支配することを示唆している。本明細書に記載の研究では、A−iPSCがESCおよびY−iPSCと比較してグルタチオンの酸化能が上昇して混乱したグルタチオン−H2O2ホメオスタシスを示すことが見出された(図8A)。

0099

従前の、腸におけるGPX2発現の解析は、腸の幹細胞コンパートメントにおけるGPX2の役割を示唆したが、ESCまたはiPSCにおけるGPX2の役割はこれまで記載されていない。実施例7に示すように、マウスA−iPSCにおいて、過剰なグルタチオン活性が、遺伝毒性傷害(異常グルタチオン−過酸化水素ホメオスタシス)によって生成された過酸化水素を除去し、そして正常なアポトーシスおよびDNA損傷応答を阻止する。結果として、損傷した細胞は排除されない。増強されたグルタチオン活性は、GPX2の過剰な上昇に起因する。図9Bおよび9Cに示すように、A−iPSCにおけるGPX2のノックダウンは、グルタチオン−H2O2ホメオスタシスの正常化をもたらした。さらに、GPX2の下方調節は、マウスA−iPSCにおけるDNA損傷およびアポトーシスにおける異常を回復させた(図9Eおよび9D)。機構的には、本発明者らはA−iPSCにおけるZSCAN10の過剰発現はGPX2のmRNAの減少をもたらしたので、マウスにおけるGPX2発現はA−iPSCにおけるZSCAN10によって調節されることを発見した。

0100

高レベルのGPX2が実際にA−iPSCの異常な再プログラミングの原因であるというさらなる証拠として、本発明者らはマウスY−iPSCにおいてGPX2を過剰発現した。Y−iPSCにおけるGPX2の高レベルは、Y−iPSCの挙動をA−iPSCの挙動にシフトさせた。Y−iPSCにおけるGPX2の過剰発現は、アポトーシスを減少させ、DNA損傷応答を低下させ、グルコース代謝を低下させ、グルタチオン−H2O2ホメオスタシス(増加した酸化代謝)の不均衡を誘発した。

0101

したがって、本開示の1つの態様において、異常な染色体数および/または構造、DNA損傷の誘導、またはアポトーシスを示す細胞におけるGPX2レベルの低下は、上述の異常から実質的にESCおよびY−iPSCのそれらにまでの実質的な回復をもたらし得る。一態様において、iPSC細胞はA−iPSCであってもよい。A−iPSCにおけるGPX2レベルの減少は、ESCまたはY−iPSCに酷似するように、iPSC内の分子および表現型の変化を引き起こす可能性がある。A−iPSC、またはより一般的にはiPSCにおけるGPX2のレベルと、健康な若年ドナーからのY−iPSCまたはESCのそれらとの近似または相違も、iPSCの品質を評価するためのサロゲートマーカーとして使用することができる。

0102

GPX2のレベルの減少は、多数の方法によって達成することができる。例えば、GPX2のタンパク質レベルを直接的または間接的に低下させることが知られている小分子阻害剤を使用することができる。さらに、様々なRNA干渉(siRNA、shRNAなど)技術を使用して、RNAレベルでGPX2を阻害することができる。したがって、GPX2のタンパク質、RNA、またはDNAレベルの低下を導く任意の薬剤を用いて、A−iPSCにおいて観察される染色体安定性、DNA損傷および/またはアポトーシスの異常、またはこれらの異常の1つまたはそれ以上によって特徴付けられる任意のiPSCにおける異常を回復させることができる。ヒトGPX2のORFのcDNAは、例えばGeneCopoeia、Rockville MD(http://www.genecopoeia.com)から市販されている。マウスGPX2のORFのcDNAはまた、例えばOrigene、Rockville MD、http://www.origene.com/cdnaから市販されている。

0103

DNAメチル化
生物体内の体細胞は同じゲノム配列共有するが、クロマチン修飾ならびにDNAメチル化に起因して遺伝子発現パターンが大きく異なる可能性がある。再プログラミング因子の過剰発現による体細胞の多能性幹細胞への変換は、エピジェネティックなリモデリングを伴う。しかしながら、最近の研究は、逆転の過程が常に完全に完了しているわけではないことを明らかにしている。例えば、マウスはiPSCから首尾よく作製されたが、すべての多能性幹細胞由来のマウスがエピジェネティクス的に安定というわけではなく、不安定性はマウスの過体重および突然死症候群と関連している。さらに、iPSCは、使用されるドナー組織の組織型に依存した残存するエピジェネティックな特徴を含む(Kimら、Nat Biotechnol 29(12):1117−1119、2011年)。最後に、老齢ドナー由来のiPSC(A−iPSC)は、加齢に特異的なエピジェネティックな記憶を保持することが示されている(Kimら、Nature 467(7313):285−290、2010年)。

0104

正常細胞において、DNAメチル化は、遺伝子発現の正確な調節および安定した遺伝子抑制を保証する。DNAメチル化はヒストン修飾に関連しており、これらの修飾間の相互作用は、クロマチン構造を変化させることによるゲノムの機能にとって重要である。メチル基共有結合的付加は、一般に、CpGアイランドとして知られる大きなクラスターに濃縮されたCpGジヌクレオチド内のシトシンにおいて生じる。異常なDNAメチル化の状況はがんの特徴である。プロモーター領域内の過剰メチル化(不活性化)の結果として、特定の腫瘍抑制遺伝子の不活性化が起こることが確立され、数多くの研究が様々なタイプのがんにおけるDNAメチル化によって抑制された広範囲の遺伝子を示している。さらに、ゲノム不安定性を誘発し得る低メチル化(活性化)も、細胞形質転換に寄与する。

0105

本開示において、ZSCAN10プロモーターは、Y−iPSCおよびESCにおいて活性化され、A−iPSCにおいて不活性である。この修飾はZSCAN10のレベルを低下させたが、A−iPSCにおけるZSCAN10の一過性発現で回復し、これは、Y−iPSCで検出されたものと同様のレベルにまで内在性ZSCAN10プロモーターの低メチル化(活性化)を導いた(図7)。さらに、マウスESCと比較したマウスY−iPSCおよびA−iPSCのDNAメチル化解析は、A−iPSCがY−iPSCよりも多数のメチル化可変領域(DMR)を含むことを示した。さらに、過剰メチル化DMRの数は、マウスA−iPSCにおいてはY−iPSCにおけるものよりも多い。さらに、ドナーの遺伝的バックグランドに応じて、ヒトA−iPSCは、マウスA−iPSCにおいて観察されるものと同様の、より多いDNAメチル化を示す。さらに最近の研究は、ヒト細胞における不十分なDNA脱メチル化が、非効率的な再プログラミングに関連することを明らかにし(Bagci,H.ら、Cell Stem Cell 3:265−269(2013年))、さらにマウスとヒトの細胞の間のDNAメチル化の同等のパターンを確立した。したがって、一態様では、本開示は、過剰メチル化DMRの数またはiPSCにおけるZSCAN10のメチル化状態のような明確なエピジェネティックな差異が特定のiPSCの特性のマーカーまたは指標として役立ち得るような方法を提供する。別の態様では、本開示は、A−iPSCにおけるDNAメチル化パターンを、Y−iPSCで観察されるものと同様となるように、実質的にまたは完全に回復させる方法を提供する。

0106

ESC/Y−iPSC/A−iPSC/ZSCAN10/A−iPSCのマイクロアレイ解析を行って、A−iPSCの遺伝子の差異的発現を検出することによって、A−iPSCの発がん性に影響を及ぼす遺伝子を同定した。GPX2およびGLUT3の両方がこのように同定された。

0107

ZSCANがエキソソームを制御し、結果としてGPX2を制御する
本開示において、ChIP−Seq解析は、ZSCAN10がエキソソーム複合体のサブユニットに結合し、上方調節することを明らかにした。A−iPSCは、FESCおよびY−iPSCと比較して、エキソソームサブユニットのより低いmRNAレベルを示した(図11A)。さらに、ZCAN10の過剰発現は、エキソソームサブユニットmRNAの回復をもたらし、ZSCAN10とエキソソームとの直接的相互作用を実証した。

0108

マルチサブユニットエキソソーム複合体は、ほぼ全てのクラスのRNAのプロセシング品質管理および分解に関与する真核細胞の主要なリボヌクレアーゼである(Schmidら、TrendsBiochem Sci.(10):501−10、(2008年))。従前の研究は、エキソソームとAUリッチエレメント(ARE)との間の相互作用が、ARE含有mRNAのターンオーバーの効率を調節する上で重要な役割を果たすことを実証した。GPX2遺伝子は、高度に保存されたARE配列(Singhら、Am J Respir Cell Mol Biol.35(6):639−50(2006年))を含有し、ZSCAN10→エキソソーム→GPX2軸をGPX2調節の潜在的機序にする。この仮説を検証するために、異なるエキソソームサブユニットをESCでノックダウンし、GPX2のmRNAのレベルを決定した(図12A)。EXOSC2またはEXOSC8のノックダウンは、より低いアポトーシス応答を伴うESCにおけるGPX2発現の劇的な増加をもたらした(図12B)。したがって、これらの知見は、ZSCAN10が、種々のサブユニットを含むエキソソーム複合体を含むメカニズムを介してGPX2を調節することを示している。結果的に、エキソソームサブユニットによってマウスのA−iPSCを補充すると、iPSCの老化に伴う表現型異常および発がん性の改善につながるであろう。

0109

老齢ヒトドナー由来のiPS細胞は、異なる再プログラミング効率および表現型異常を示す
老齢のヒトドナーから作製されたA−iPSC細胞は、低い再プログラミング効率に関して老化動物から作製されたA−iPSCにおいて観察された知見を確認する(図13A)。興味深いことに、同様の年齢の2人の異なるドナー間で、再プログラミング効率の有意差が観察され、これもDNA損傷応答に反映された(図13B)。ドナーから作製され、DNA損傷応答に重大な異常を示すA−iPSCは、構造的染色体異常をも示した(図13C)。これらの結果は、個体の遺伝的バックグランドが、A−iPSCの再プログラミング効率およびDNA損傷応答において重要な役割を果たすことを示唆している。この異常は、本明細書に記載されるように補充によって救済することができると予想される。

0110

様々な遺伝的バックグランドの複数の実験室マウス系統が利用可能である。遺伝的バックグランドがA−iPSCにとって決定的に重要であるという仮説を検証するために、A−iPSCを別個のマウス系統、B6129およびB6CBAから作製した。図13Dに示すように、B6129バックグラウンドマウス由来のA−iPSCは正常なDNA損傷応答(p53の活性化によって示される)を示し、B6CBAバックグラウンドマウス由来のA−iPSCは鈍化したDNA損傷応答を示した。まとめると、これらの所見は、A−iPSCに関連する再プログラミング効率、染色体安定性、ならびにDNA損傷応答のすべてが、それらが由来する個体または動物の遺伝的バックグランドならびにエピジェネティックな因子および老化に大きく依存することを示している。

0111

GSS
グルタチオン(GSH)の新規合成は、γ−グルタミルシステイン合成酵素(γ−GCS)およびグルタチオン合成酵素(GSS)の2つの酵素によって触媒される。GSH合成の律速段階は、グルタミン酸のγ−カルボキシル部分とシステインアミノ部分との間のアミド結合の形成である。GSHが合成される速度は、酵素(GCS)の活性およびシステインの利用可能性の両方に基づく。GSSは、グリシンの添加によるγ−GluCysジペプチドのGSHへの変換を触媒することによってGSH合成を完了する(Johnsonら、Nutrients、4(10):1399−440(2012年))。

0112

GSH合成に関与する酵素は、転写前および転写後の両方の複数のメカニズムによって制御される。ESCにおけるZSCAN10結合部位をゲノムワイドマッピングすることに焦点を当てた従前の研究は、GSSを含む〜3500の標的遺伝子を同定した(Yuら、J Biol Chem.284(45):31327−31335(2009年))。本開示において、本発明者らは、ヒトにおいて、ZSCAN10がGSSプロモーターに直接結合することを示した(実施例12、図14B)。さらに、彼らは、GSSのmRNAのレベルが、Y−iPSCおよびESCと比較してA−iPSCにおいて有意に上方調節されること、およびA−iPSCにおけるZSCAN10の過剰発現の際にこの上方調節が減少することを示した(実施例12、図14C)。

0113

明細書中に開示されるさらなる実験は、GSSが実際にヒトにおけるA−iPSCの発がん性を調節することに関与しているというさらなる証拠を提供する。実施例13および図14D〜Fに記載されるように、GSSは、アポトーシスならびにDNA損傷応答の調節の両方において役割を有する。shRNAを用いたA−iPSCにおけるGSSの下方調節は、アポトーシス応答の増加(実施例13、図14D)ならびにDNA損傷応答の救済(実施例13、図14E〜14F)をもたらした。対照的に、Y−iPSCにおけるGSSの過剰発現は、対照Y−iPSC細胞(図14D)と比較してより低いアポトーシス応答、およびDNA損傷応答の喪失図14Eおよび14F)を引き起こした。

0114

したがって、本開示の1つの態様において、異常な染色体数および/または構造、DNA損傷の誘導、またはアポトーシスを示す細胞におけるGSSレベルの低下は、これらの表現型形質における前述の異常の実質的な回復および実質的にESCおよびY−iPSCのそれらへの回復をもたらし得る。一態様において、iPSC細胞はA−iPSCであってもよい。A−iPSCにおけるGSSレベルの減少は、iPSC内の分子および表現型の変化を、ESCまたはY−iPSCに酷似するようになし得る。

0115

GSSレベルの低下は、多数の方法によって達成することができる。例えば、様々なRNA干渉(siRNA、shRNAなど)技術を用いて、RNAレベルでGSSを阻害することができる。したがって、GSSのタンパク質、RNA、またはDNAレベルの低下を導く任意の薬剤を用いて、A−iPSCにおいて観察される染色体安定性、DNA損傷および/またはアポトーシスの異常、またはこれらの異常の1つまたはそれ以上によって特徴付けられる任意のiPSCにおける異常を回復させることができる。ヒトおよびマウスの両方のGSSのORFのcDNAは、例えば、OriGene Technologies、Rockville、MD(http://www.origene.com/cdna)から市販されている。DNAレベルでGSSを標的とするために、クラスター化した規則的な配置の短いパリンドローム反復(CRISPR)−Casゲノム編集ツールを使用することができる(SanderおよびJoung、Nature Biotechnology 32、347−355(2014年))。さらに、GSSレベルまたは活性は、GSSのタンパク質レベルおよび/または活性を直接的または間接的に低下させることが知られている阻害剤を用いて低下させることができる。例えば、ブチオニンスルホキシミン(DrewおよびMiners、Biochem Pharmacol.33(19):2989−94(1984年))、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン(Vanoni MAおよびCurti B、IUBMB Life.60(5):287−300(2008年))、およびアザセリン(Hensleyら、J Clin Invest.123(9):3678−84(2013年))がGSSを阻害することが示されている。したがって、本開示の1つの実施形態において、ブチオニンスルホキシミン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン(Vanoni MAおよびCurti B、IUBMB)および/またはアザセリン、またはGSSの活性および/またはレベルを低下させることが示されている任意の阻害剤を用いて、GSSレベルが低下するか、またはGSS活性が阻害される。各インヒビターを個別に使用することに加えて、GSS活性および/またはレベルの低下は、2つまたはそれ以上の既知の阻害剤の組み合わせによって達成できる。GSSの阻害においては、阻害が完全ではないことが重要である。いくらかの量のグルタチオンが細胞にとって重要である。

0116

代替的に、本発明者らは、GSSが、GSSのプロモーターへの結合を介してZSCAN10によって直接的に調節されることを示したので、本明細書に記載されるように、GSSの上方調節を抑制するためにZSCAN10が上方調節され得る。本明細書に記載の研究を通して、ZSCAN10は、iPSC、特に老齢のドナー由来のiPSCを産生する体細胞再プログラミングの重要な共調節因子として浮上している。

0117

GSSはまた、A−iPSC、より一般的にはiPSCにおけるGSSのレベルを測定し、それらをY−iPSCまたは健康なドナー由来のESCのレベルと比較することによってiPSC、特にA−iPSCの、発がん性、グルタチオン/H2O2ホメオスタシス、およびより一般的な品質を評価するためのサロゲートマーカーとしても使用できる。GSSのレベルが低い、すなわちY−iPSCおよびESCのレベルに匹敵する場合、幹細胞は低い発がん性を有し、安定したグルタチオンホメオスタシスを有し、そして一般的に良好な品質である。

0118

実験手順
細胞培養
ESCおよびiPSCを、10%FBSおよび1,000U/mlのLIF(ESGRO(登録商標白血病阻害因子[LIF]、100万単位/1mL)を含むESC培地で培養した。ESCの作製のために、以前に報告された確立された方法が使用された(Kimら、Nature 467:285−290、2010年)。体細胞のiPSC再プログラミングのために、OCT4、SOX2、KLF4、およびMYCを発現するレトロウイルスが導入された。誘導性再プログラミング因子を含む体細胞については、培地に2μg/mlのドキシサイクリン(MP Biomedicals、ドキシサイクリンハイクレート)を補充した。DNAおよびRNA単離のために、ESCまたはiPSCをトリプシン処理し、新しい組織培養皿に30分間再播種してフィーダー細胞を除去し、次いで核酸を非接着性細胞懸濁液から抽出した。

0119

マウスY−iPSC、A−iPSC、A−iPSC−ZSCAN10、A−iPSC−shGPX2、A−iPSC−shGSS、A−iPSC−GLUT、ESC−shEXOSC2、ESC−shEXOSC8、ESC shEXOSC2および8、ヒトY−iPSC、およびヒトA−iPSCの作製
106個の皮膚繊維芽細胞を、B6CBAF1マウスの、E15.5胚性皮膚、5日齢の尾の先端の皮膚、および1.4年齢の尾の先端の皮膚から採取し、pMX−mOCT4、pMX−mSOX2、pMX−mKLF4,2、およびpEYK−mMYC3から作製されたレトロウイルスを、各ウイルス上清0.5ml(ウェル当たり合計2ml)で6ウェルディッシュにおいて感染させ、室温で90分間2500rpmで回転させた(BenchTop Centrifuge、BeckmanCoulter、Allegra−6R)。A−iPSC−ZSCAN10の作製については、手順は同一であったが、4つの再プログラミング因子に加えて、ZSCAN10を過剰発現させるためにドキシサイクリン誘導性系を加えた。このシステムは、plentiRZ−ZSCAN10およびplenti−RTTAベクターから作製された2つのレンチウイルスからなった(Kimら、Nat Biotechnol 29:1117−1119、2011年)。ベクターは、市販のベクターの挿入物をZSCAN10(または本明細書に記載のGLUT3または他の挿入物)で置換することによって作製した。再プログラミング因子に感染した全ての細胞および追加のZSCAN10、shGPX2、shGSSおよびGLUT3を有する細胞を、10cm組織培養皿中の20%FBSおよび1,000U/mlのLIFを含むESC培地において、放射線照射したCF−1マウス胚性フィーダー細胞上に播種した。2日目に培地を交換し、ZSCAN10過剰発現については3日目にドキシサイクリン添加を開始した。浮遊細胞を培地の遠心分離によって回収し、培地交換中に培養に戻した。4日目に、培養細胞をトリプシン処理し、ESC維持培地中で、ゼラチン(0.1%)および放射線照射したマウス胚線維芽細胞で予めコートした4枚の10cm培養皿上に再播種した。ESC様コロニーが観察されるまで培地を毎日交換した。再プログラミングされたコロニーを、奇形腫アッセイ形成、アルカリホスファターゼ染色、SSEA−1およびNANOG染色、およびOCT4発現レベルによって多能性について試験した。

0120

A−iPSC−shGPX2の作製のために、A−iPSCを、再プログラミング後に、GPX2のためのshRNAウイルスベクターのセット(Thermo Scientificの6GIPZレンチウイルスshRNAベクター:RMM4532−EG14776)を用いて感染させた。ピューロマイシンを用いてクローンを選択し、Q−PCRにより下方調節のレベルを測定した。A−iPSC−shGSSの作製のために、A−iPSCを、再プログラミング後に、GSSのためのshRNAウイルスベクターのセット(GE DHARMACON、RMM4532−EG14854)で感染させた。

0121

A−iPSC−shZSCAN10の作製のために、マウスA−iPSCを、再プログラミング後に、NM_001033425.3を標的とするように設計された一連のshRNAレンチウイルスベクターで感染させた。ZSCAN10セットのshRNAのセットは、Abmgood.comから市販されている(最後に2015年10月6日に訪問)。

0122

Y−iPSC−GPX2の作製のために、マウスY−iPSCを、再プログラミング後に、GPX2のcDNAを有するレンチウイルス(Harvard Plasmid Core(http://plasmid.med.harvard.edu/PLASMID/Home.jsp))に感染させた。感染したクローンをQ−PCRによりGPX2発現レベルについて評価した。Y−iPSC−GSSの作製のために、マウスY−iPSCを、再プログラミング後に、GSSのcDNAを有するレンチウイルス(Harvard Plasmid Core(http://plasmid.med.harvard.edu/PLASMID/)に感染させた。感染したクローンを赤色蛍光マーカーについて選別し、GSS発現レベルをQ−PCRによって確認した。

0123

ヒトA−iPSCの作製のために、84歳、76歳および81歳の対象からの105個の皮膚線維芽細胞に、hOCT4、hSOX2、hKLF4およびhMYCをコードするテトラシストロンSFG−SV2Aベクターから作製したレトロウイルスに、各ウイルス上清0.5mlを含む6ウェルディッシュ(ウェル当たり合計2ml)で感染させ、室温で90分間2500rpmで回転させた(BenchTop Centrifuge、BeckmanCoulter、Allegra−6R)。

0124

ESC−shEXOSC2、ESC−shEXOSC8およびESC shEXOSC2および8の作製のために、ESCに、EXOSC2および/またはEXOSC8に対するshRNAウイルスのセット(GE DHARMACONからのEXOSC2のための2GIPZレンチウイルスshRNAベクター:RMM4431−200370629、RMM4431−200332733およびGE DARMACONからのEXOSC8のための3GIPZレンチウイルスshRNAベクター:RMM4532−EG69639)を感染させた。ピューロマイシン処理によりクローンを選択した。

0125

レトロウイルスの作製
293T細胞を、10%FBSおよびペニシリンストレプトマイシンを補充したDMEMを含む150mmディッシュあたり5×106細胞で一晩播種した。レトロウイルスは、以前に記載されているように、pMX−mOCT4、pMX−mSOX2、pMX−mKLF4およびpEYK−mMYCコンストラクトを使用して作製された(Kohら、Nucleic AcidsRes.30:e142,200;TakahashiらCell 126:663−676、2006年)。以前に記載されているように標準的なリン酸カルシウム法で細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの18時間後に培地を新鮮なDMEMで2回交換した。トランスフェクションから約48時間後、レンチウイルスを含む培地を回収し、次いで遠心分離により細胞残屑を除去した。上清を0.45μmのフィルターでろ過し、次いでレトロウイルスを、45Tiローター(Beckman)中、4℃、90分間、33,000rpmで超遠心分離してペレット化した。レトロウイルス粒子をESC培地に再懸濁し、−80℃で保存した。

0126

レンチウイルスの生産
293T細胞を、10%FBSおよびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEMを含む150mmディッシュあたり5×106細胞で一晩播種した。以前に記載されたように、リン酸カルシウム細胞トランスフェクションを使用して、細胞をplentiRZ−ZSCAN10およびplenti−RTTAでトランスフェクトした(Kimら、Nat Biotechnol 29:1117−1119、2011)。ZSCAN10のcDNAは、pENTR223.1の背景を持つクローンMmCD00295052であった。Gateway(登録商標)システムを用いて、mZSCAN10のcDNAをplentiRZベクターに、GPX2のcDNAをplenti−puroベクターにサブクローニングした。https://tools.lifetechnologies.com/content/sfs/manuals/gatewayman.pdfを参照されたい。トランスフェクションの48時間後、レンチウイルスを含む培地を回収し、遠心分離により細胞残屑を除去した。上清を0.45μmフィルターでろ過し、次いでレンチウイルスを45Tiローター(Beckman)中で、4℃、90分間、33,000rpmで超遠心分離してペレット化した。レンチウイルス粒子DMEM培地に再懸濁し、−80℃で保存した。

0127

ESC、Y−iPSC、A−iPSC、およびA−iPSC−ZSCAN10細胞について奇形腫解析を行った。結果は、A−iPSC−ZSCAN10細胞の悪性腫瘍の発生率が、挿入物なしのA−iPSCと比較して減少することを明らかにした。A−iPSC−GLUT3の奇形腫解析は類似の方法で行われ、結果は質的に同じであると予想される。

0128

定量的リアルタイムPCR(Q−PCR)解析
遺伝子(ZSCAN10、OCT4、GPX2、GLUT3、およびβ−アクチン)の発現レベルを、Power SYBR Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems)を用いたQ−PCRにより定量した。総RNA(1μg)を、20μlの容量でM−MuLV逆転写酵素システム(New England Biolabs)を用いて逆転写し、次いで得られたcDNAを200μlの全容量に希釈した。この合成したcDNA溶液の10μlを解析に使用した。多能性遺伝子に関して、各反応は、Power SYBR Green PCRマスターミックス(Applied Biosystems)を用いて25μlの容量で実施した。条件は以下のようにプログラムした:95℃で10分間の初期変性、次いで95℃で30秒、55℃で1分、および72℃で1分の40サイクル;次いで95℃で1分、55℃で30秒、および95℃で30秒。すべてのサンプルを2回反復し、PCR反応は、各PCRサイクル中に合成されたシグナルの量を検出することができるMx3005Pリーダー(Stratagene)を用いて行った。MxProプログラム(Stratagene)を用いてmRNAの相対量を決定した。PCR産物の量を、β−アクチンの発現レベルのパーセンテージに標準化した。OCT4、ZSCAN10、GPX2およびβ−アクチンのPCR産物も、1.2%アガロースゲル上でエチジウムブロマイドで染色した後に評価した。cDNAを増幅するために使用したプライマーは以下の通りであった:OCT4−For 5’−GGCTCTCCCATGCATTCAA−3’およびOCT4−Rev 5’−TTTACCCCAAAGCTCCAGG−3’、ZSCAN10−For 5’−GGCTCAGAGGAATGCGTTAG−3’およびZSCAN10−Rev 5’−CATCTACAGGCCCACCAGTT−3’、GPX2−For 5’−GTGCTGATTGAGAATGTGGC−3’およびGPX2−Rev 5’−AGGATGCTCGTTCTGCCCA−3’、β−ACTIN−For 5’−TCGTGGGTGACATCAAAGAGA−3’およびβ−ACTIN−Rev 5’−GAACCGCTCGTTGCCAATAGT−3’およびHPRT−For 5’−CTCCTCAGACCGCTTTTTGC−3’およびHPRT−Rev 5’−TCGAGAGCTTCAGACTCGT−3’、EXOSC2−For CCCCAAGGAGCATCTGACAAおよびEXOSC2−Rev CCAACCCACCATTACCTCCC、EXOSC1−For ATGGGTTGGTGATGGGCATAGおよびEXOSC1−Rev CCCATGCTGTCACTATTGGGT、EXOSC5−For CCGATTCTACCGGGAATCACTおよびEXOSC5−Rev CTACATGGGCACAGACAGAGG。導入遺伝子抑制(OCT4、SOX2、KLF4、およびMYC)は、ウイルスベクターの5’領域および構造遺伝子の5’末端に及ぶ以下のプライマーを用いて確認した。非感染線維芽細胞を陰性対照として用い、Yamanaka因子でトランスフェクトした3日目の線維芽細胞を陽性対照として用いた。pMXベクターおよび導入遺伝子に隣接した導入遺伝子を検出するためのプライマー配列は以下のものである:pMX−S1811−For 5’−GACGGCATCGCAGCTTGGATACAC−3’およびOCT4−Rev 5’−CAGTCCAACCTGAGGTCCAC−3’、KLF4 Rev 5’−GACAACGGTGGGGGACAC−3’、SOX2 Rev 5’−CTGGAGTGGGAGGAAGAGGT−3’およびMYC Rev 5’−CCAGATATCCTCACTGGGCG−3’。GLUT3のためのプライマーは、mGlut3−xba−F atttctagaATGGGGACAACGAAGGTGACCおよびmGlut3−xba−R atggatccTCAGGCGTTGCCAGGGGTCであった。

0129

薬物治療および放射線照射
フレオマイシン(Sigma)を30μg/mlで2時間添加した。他に指示がない限り、細胞を、フレオマイシン処理の30分後に解析のために処理した。ESC培地で30分間の回復後、細胞を収集し、次いで以下の実験のために処理した。長期間のDNA損傷応答の検出のために、細胞をフレオマイシン処理後に回復させるために6時間与え、次いでH2AX免疫染色のために処理した。DNA断片化アッセイにおいて、細胞を回復させるため15時間与えた。突然変異誘発の可能性を調べるために、細胞を30μg/mlのフレオマイシンで2時間処理し、各処理後に1回継代培養した。このプロセスを3回繰り返した後、細胞を6TG選択のために処理した。細胞を10Gyで放射線照射し、2時間回復させ、次いでイムノブロット解析のために溶解物を収集した。

0130

奇形腫解析
iPSCをトリプシンコラゲナーゼ処理によって収集し、Matrigel mix(DMEM:Matrigel:コラーゲンを2:1:1の比率)に再懸濁し、106個の未分化細胞をRag2/γC免疫不全マウス(Taconic)の後肢の上の皮下組織に注入した。奇形腫の形成を注射後3ヶ月間観察した。収集した腫瘍を10%ホルマリン溶液中で固定し、Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMolecular Cytology施設およびHistowiz、Inc.でヘマトキシリン・エオジン(H/E)染色のために処理した。H/E染色プロトコールはhttp://protocolsonline.com/histology/dyes−and−stains/haematoxylin−eosin−he−staining/およびhttp://www.nsh.org/sites/default/files/Guidelines_For_Hematoxylin_and_Eosin_Staining.pdfにて供給されている。

0131

イムノブロット解析
2時間のフレオマイシン処理(30μg/ml)の30分後に、処理細胞および未処理細胞(1×105細胞)を回収した。タンパク質を採取するために、100〜200mLのRIPAバッファ(50mMTris−HCl[pH7.4]、150mM NaCl、1%NP40、0.25%Na−デオキシコレート、1mMPMSF、プロテアーゼ阻害剤カクテル、およびホスファターゼ阻害剤カクテル)を浮遊細胞ペレットおよび残りの接着細胞に添加した。試料を上でインキュベートし(10分間)、次いで遠心分離した(14,000g、10分間、4℃)。タンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce)を用いて測定した。試料をRIPAバッファ(3000μg/ml)で同じ濃度に調整し、Laemmli試料バッファ(Biorad)およびβ−メルカプトエタノール(Sigma)と混合し、次いで95℃で5分間加熱し、4〜15%ミニプロティアンTGX SDS−PAGEゲル(BioRad)上にロードした。SDS−PAGEゲル上のサンプルを湿式電気転写法(0.2Mグリシン、25mMトリス、および20%メタノール)を用いて100Vで1時間0.2mmPVDF膜に転写した。この膜をPBS−T中の5%BSA(4℃で1時間)でブロックし、次いで、ブロッキング溶液(Tween−20を含むリン酸緩衝食塩水[1:1000]、PBS−T中の5%BSA)中の一次抗体、抗H2AX(Millipore、05−636)(1:1000)、抗p53(Leica Biosystems、P53−CM5P)(1:1000)、抗リン酸化−ATM(Pierce MA1−2020)または抗βアクチン(Cell Signaling#4967)(1:5000)によって4℃一晩インキュベートした。一次抗体インキュベーション後、ペルオキシダーゼで標識した二次抗体を添加する前に、膜をPBS−Tで3回洗浄した。二次抗体(1:10,000)はCell Signalingより入手した。

0132

バイサルファイトパイロシーケンシング解析
500ngのゲノムDNAを、EZ DNA Methylation−Goldキット(Zymo Research)を用いて取扱説明書に従ってバイサルファイト処理した。バイサルファイト処理したゲノムDNAを、ZSCAN10特異的プライマーを用いてPCR増幅した。ZSCAN10プロモーターの関心の位置は、Ensemblゲノムアセンブリ:Chr17:23599958−23600647のGRCm38(GCA000001635.4)に基づく。アッセイ(PCRおよびパイロシーケンシング)は、23600600(CpG3)、23600645(CpG2)、および23600647(CpG1)の転写開始部位のすぐ上流の3つのCpG部位カバーする。パイロシーケンシングは、Epigendx(Hopkinton、MA、USA)によって設計され実行された。

0133

細胞遺伝学的解析
細胞遺伝学的解析は、分裂中期染色体調製、Gバンド核型分析およびPI染色によるフローサイトメトリー解析によって実施された。分裂中期染色体調製およびGバンド核型分析は、Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのMolecular Cytogenetics Core Facilityによって実施した。PI染色のために、細胞を採取し、次いでPBS中で洗浄し、次いで4℃で30分間、冷70%エタノール凝集を最小限に抑えるようにボルテックスしながらペレットに滴下して加えた)中で固定した。細胞をPBSで2回洗浄し、リボヌクレアーゼで処理し、次いでPI(ヨウ化プロピジウム染色溶液:3.8mMクエン酸ナトリウム、PBS中40μg/mlPI[Sigma、P4170])で染色した。

0134

免疫組織化学染色
細胞を室温で20分間、3.7%ホルムアルデヒド中で固定し、次いでPBSで洗浄した。次いで、サンプルをPBS中0.1 Triton X−100で20分間透過処理し、次いでPBS−T中3%BSAで1時間ブロックし、次いで一次抗体を室温で2時間または4℃で一晩インキュベートした。抗H2AXはMillipore(05−636)から購入し、フィコエリトリン結合の抗SSEA−1はR&D systems(FAB2155P)から購入し、抗NANOGはBETHYL Laboratories(A300−397A)から購入した。一次抗体を1:500希釈で使用した。Alexa 568結合ヤギ抗マウスIgM(A−21124)およびAlexa 633結合ヤギ抗ウサギIgG(A−21072)は、Molecular Probesより入手した。二次抗体を1:1000希釈で使用した。核を4’、6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI、Sigma)で染色した。アルカリホスファターゼ(AP)染色は、Alkaline Phosphatase Detection Kit(Millipore)を用いて取扱説明書に従って行った。AxioImager Z1顕微鏡検査システム(Zeiss)を用いて蛍光画像を得た。

0135

DNA断片化解析
DNA断片化は、DNA鎖切断可視化のためのin situ細胞死アッセイキット(Roche)を用い、酵素反応において修飾されたヌクレオチド(例えば、ビオチン−dUTP、DIG−dUTP、フルオレセイン−dUTP)によって遊離の3’−OH末端を標識することによって測定された。iPSC細胞(1×105細胞)を2時間、フレオマイシン(30μg/ml)で処理した。サンプルを対照として回収し、またはフレオマイシン処理の15時間後に解析のために処理した。さらに、アポトーシスの陽性対照としてDNA鎖切断を誘導するために、細胞をDNAase I組換え体(Roche)(10分、3U/ml、15℃〜25℃)で処理した。浮遊細胞および付着細胞を含有する培地を遠心分離(1000g、5分)し、回収した。細胞をフローサイトメトリー解析のために処理した。

0136

H2O2活性酸素種(ROS)アッセイ
H2O2除去活性を細胞活性酸素種アッセイキット(Abcam、ab113851)を用いて測定した。ESC/iPSCを20μMのDCFDA(2’,7’−ジクロロフルオレセインジアセテート;細胞内のヒドロキシルペルオキシルおよび他のROS活性を測定する蛍光発生色素)で標識し、次いで50μMのTBHP(tert−ブチル過酸化水素;安定した化学形態のH2O2)とともに3時間培養した。次いで、細胞を蛍光プレートリーダーで解析した。各条件からの4回の反復について平均±標準偏差をプロットする。

0137

TBHP処理
細胞を、PBS中350μMのTBHP溶液(Luperox(登録商標)TBH70X、H2O中70重量%のtert−ブチルヒドロペルオキシド溶液、458139)で30分間処理した。イムノブロット解析のために溶解物を回収した。対照未処理細胞株をESC培地またはPBS中で培養し、TBHP処理を含まない両方の培地でDNA損傷応答を誘導しなかった(データ示さず)。

0138

HPRTアッセイ
HPRTアッセイは以前に公表されたプロトコール(Tsudaら、AATEX 11(2)、118−128、2005年)に従って実施した。ESC、Y−iPSC、A−iPSCおよびA−iPSC−ZSCAN10を3回のフレオマイシン処理で培養した後、106個のESCおよびiPSCを、フィーダー細胞(CF−1 MEF)を含む10cm組織培養皿上に播種し、陰性選択のために5μg/mlの6−TG(2−アミノ−6−メルカプトプリン;Sigma)を添加した。突然変異の頻度は、HPRTプロモーター活性の不活性化によって推定した。個々のコロニーを12日目に計数ピックアップし、コロニー数を、Q−PCR解析によって各群のHPRTを発現しなかったコロニーの割合に対して標準化した。

0139

グルタチオン検出アッセイ
フィーダーを含まない細胞を、MEF条件付けしたESC培地中のMatrigelコーティングされた組織培養プレート上で培養した。3日目に、細胞をPBSで洗浄し、掻き取り、次いで遠心によりペレット化した。次のステップは、Glutathione Fluorometric Assay Kit(カタログ番号K264−100、Biovision Inc.、Milpitas、CA、USA)を用いて取扱説明書に従って実施した。簡潔には、細胞ペレット氷冷グルタチオンアッセイバッファー中でホモジナイズし、過塩素酸中で保存し、遠心した。上清を水酸化カリウム中和した。遠心後、上清を還元型グルタチオン(GSH)を検出するために使用したか、または総グルタチオンを、測定前に酸化型グルタチオン(GSSG)をGSHに還元することによって測定した。GSSG濃度を特異的に測定するために、還元剤を適用する前に既存のGSHをクエンチした。GSHと反応して蛍光を発するOPA(o−フタルアルデヒドプローブを試料に添加し、Thermo Scientific社のVarioscan FlashでEx/Em=340nm/420nmでシグナルを得た。グルタチオンの酸化能は、総グルタチオン(GSH+GSSG)の量によって決定された。

0140

実施例
実施例1
老齢マウス由来のiPS細胞は、より高いゲノム不安定性およびより低いアポトーシス活性を示す
Yamanakaら(Takahashiら、Cell、126,663−676,2006年)は、若年ドナー組織を用いてiPSCを作製するための4つのエピジェネティックな再プログラミング因子を同定したが、同じ4つの因子が老齢ドナー組織のiPSC再プログラミングに十分であるか否かについていっさい検証しなかった。

0141

ここで、iPSC細胞は、E15.5胚から5日齢の新生仔(Y−iPSC)由来のマウス皮膚線維芽細胞を用いて、または1.4年齢のドナー由来のマウス皮膚線維芽細胞(A−iPSC)を用いて、標準のYamanakaのiPSC再プログラミングプロトコールに従って作製された。

0142

各細胞型の12個のクローンを形態に基づいて無作為に採取し、至適基準としてのECSと比較して多能性を解析した。奇形腫解析における3つの胚葉への多系統寄与および多能性遺伝子発現解析(AP/OCT4/SSEA1/NANOG)は、若年および老齢のドナーから単離されたマウス皮膚線維芽細胞の成功した再プログラミングを示した。各クローンにおける4つの再プログラミング因子(OCT4、SOX2、KLF4、MYC)の抑制を、定量的PCR(Q−PCR)によって確認した。最初に、DNA倍数性を複数のiPSCクローンで試験したところ、正常な倍数性を有するY−iPSCおよびA−iPSCクローンの両方が観察された(図1A、1Bおよび1D)が、Y−iPSCと比較した倍数性のより高い頻度が、A−iPSCにおいて観察された(図1B、1Eおよび1F)。さらに、A−iPSCは、Y−iPSCよりも多くの染色体構造異常を示した(図1G)。

0143

多能性幹細胞は、体細胞およびがん細胞の標準的なDNA損傷応答とは異なる独特なDNA損傷応答を有することが知られている。多能性幹細胞におけるゲノム安定性の維持は、集団からの重度損傷細胞を排除するためにアポトーシスを直接誘導することによって達成される(Liu,J、Trendsin Cell Biology、24、268−274、2014年;Liu,J、Cell Stem Cell、13、483−491、2013年)。したがって、A−iPSCで観察される不完全な遺伝的安定性は、アポトーシスの異常に起因すると考えられた。この仮説を検証するために、DNA損傷に応答するアポトーシスの活性化を全ての独立したクローンにおいて評価した。

0144

ESC、Y−iPSCおよびA−iPSCのin situ細胞死アッセイを、DNA損傷誘発剤であるフレオマイシンによる処理(2時間、30μg/ml)の終了後15時間に行った。A−iPSCは、ESCおよびY−iPSCと比較して、より少ない細胞死に対する細胞染色を示す。酵素反応の非存在下において色素で処理したY−iPSC群を陰性対照として使用した。核はDAPIで染色された。図2に示すように、A−iPSCのフレオマイシン処理後のDNA断片化アッセイにおいてより低いアポトーシス応答が観察される一方で、ESCとY−iPSCは同じ条件下で同等のDNA断片化を示した。まとめると、ここに示されたデータは、A−iPSCが、ESCおよびY−iPSCと比較して、より高いゲノム不安定性およびより低いアポトーシス活性によって特徴付けられることを示唆する。

0145

実施例2
ZSCAN10は、ESCおよびY−iPSCと比較して、A−iPSCにおいて不十分に活性化される多能性因子である
ESCおよびY−iPSCと比較してA−iPSCにおいて不十分に活性化され、かつA−iPSCにおいて観察される異常のもっとも原因であるようなESC特異的多能性因子を同定するために、既知の59個の多能性因子のネットワークから開始する戦略が開発された。Kimら(Kim,J.、Cell 132、1049−1061)は、多能性ネットワーク解析に由来する59個のコア多能性遺伝子を以前に報告した(図3)。最初に、これらの59個のコア遺伝子を、p53、SIRT1、PLK1、およびp53の上流の遺伝子(ATM、PARP、およびDNAPK)などのDNA損傷応答と関連することが知られている遺伝子に対してフィルタリングされた。そこから、遺伝子リストを、A−iPSC対Y−iPSおよびA−iPSC対ESCの差異的発現に基づいてさらにフィルタリングし、候補を単一の遺伝子ZSCAN10に絞り込んだ。ZSCAN10は、ESCで特異的に発現する既知のジンクフィンガー転写因子であり、SOX2、OCT4、NANOG、およびZSCAN4との転写調節ネットワークの統合部分である。

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