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技術 モノリシック2次元材料およびイオノマーを含むプロトン伝導膜、その作製方法、ならびに燃料電池および水素ガスセンサにおけるその使用法

出願人 ユニバーシティ・オブ・マンチェスター
発明者 マルセロロザーダアンドレケイゲイム
出願日 2015年9月15日 (5年2ヶ月経過) 出願番号 2017-515077
公開日 2017年11月24日 (2年11ヶ月経過) 公開番号 2017-535030
状態 特許登録済
技術分野 導電材料 燃料電池(本体)
主要キーワード V曲線 温度依存度 最小運動 気体浸透性 加圧容積 膜集合体 漏出速度 グラフェン酸化物
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (17)

課題・解決手段

本発明は、プロトンおよびデュテロンを通過させる、グラフェンを主成分とした膜または他の2次元材料膜に関し、また、このような膜にプロトン/デューテロンを容易に浸透させる方法に関する。単層および数層のグラフェン、hBN、二硫化モリブデン(MoS2)および二硫化タングステン(WS2)等で形成される単結晶膜を開示する。事実上、プロトンまたはデューテロンは、グラフェン膜または他の2次元膜を通過する電荷キャリアである。このプロセスは、気体水素の通過と対比することができる。水素は、荷電していない2原子気体種である。つまり、通常のバリア特性を考慮すれば気体分子形態であるが、本発明の場合、膜を通って輸送される種は、単原子を含む荷電イオンである。本発明の膜は燃料電池などの多数の用途に用いられるであろう。

概要

背景

グラフェンおよびその化学的誘導体からなる膜は格別な浸透特性を示す。欠陥のない単層グラフェンは、すべての気体および液体に対し完全に不浸透性である。この興味深い特性により、グラフェン系膜は、バリア用途および保護被膜用途の理想的な候補と考えられる。さらに、グラフェンの機械的強度光学透過性、低毒性および高い化学熱安定性は、他のバリア材料に対して優位である。

概要

本発明は、プロトンおよびデュテロンを通過させる、グラフェンを主成分とした膜または他の2次元材料膜に関し、また、このような膜にプロトン/デューテロンを容易に浸透させる方法に関する。単層および数層のグラフェン、hBN、二硫化モリブデン(MoS2)および二硫化タングステン(WS2)等で形成される単結晶膜を開示する。事実上、プロトンまたはデューテロンは、グラフェン膜または他の2次元膜を通過する電荷キャリアである。このプロセスは、気体水素の通過と対比することができる。水素は、荷電していない2原子気体種である。つまり、通常のバリア特性を考慮すれば気体は分子形態であるが、本発明の場合、膜を通って輸送される種は、単原子を含む荷電イオンである。本発明の膜は燃料電池などの多数の用途に用いられるであろう。

目的

ピンホールを検出するとして知られる最も感度の高い技術は、ほぼ間違いなく、小規模加圧容積からのガス漏れを測定することである

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

次元材料のモノレイヤまたは2〜5層と、必要に応じて基体とを具え、前記2次元材料がモノリシックであり、前記2次元材料の少なくとも片面にイオノマー被膜が設けられた、プロトン伝導膜

請求項2

2次元材料のモノレイヤまたは2〜5層を設ける工程であって、前記材料がモノリシックである工程と、前記2次元材料の少なくとも片面をイオノマーで被覆して該イオノマーの片面が前記2次元材料と接触し、前記2次元材料の他方の面が露出するようにする工程、またはイオノマーおよび非導電性構成成分を含む材料の層を前記2次元材料の前記片面に塗布する工程のいずれかと、必要に応じて、前記少なくとも1つのイオノマー被膜の露出面に接して基体を設ける工程とを備える、プロトン伝導膜の作製方法

請求項3

前記イオノマーがプロトン伝導性ポリマーである、請求項1または2に記載の膜または方法。

請求項4

前記ポリマースルホン化ポリマー、好ましくはNafionである、請求項3に記載の膜または方法。

請求項5

前記イオノマーが、前記2次元材料の片面に設けられるか、あるいは前記2次元材料の両面に設けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の膜または方法。

請求項6

基体をさらに具える、請求項1〜5のいずれか一項に記載の膜または方法。

請求項7

前記イオノマーおよび基体が単一要素として設けられる、請求項6に記載の方法または請求項1〜6のいずれか一項に記載の膜。

請求項8

モノレイヤまたは2〜5層のモノリシック2次元材料と、イオノマー被膜と、必要に応じて基体とを具えるプロトン伝導性膜の、燃料電池プロトン伝導体としての使用法

請求項9

前記燃料電池がメタノール燃料電池である、請求項8に記載の使用法。

請求項10

水素ガスの存在を検出する意図でのプロトン伝導性膜の使用法。

請求項11

前記2次元材料が、グラフェン、BN、Bi2Te3、Bi2Se3、MoS2、WS2、MoSe2、MoTe2、TaSe2、NbSe2およびNiTe2から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の膜、方法または使用法。

請求項12

前記2次元材料が触媒金属を含む、請求項11に記載の膜、方法または使用法。

請求項13

前記金属が、周期表の第8〜10族元素から選択された1つまたは複数の金属である、請求項12に記載の膜、方法または使用法。

技術分野

0001

グラフェンは、例えばJ. S. Bunch et al., "Impermeable atomic membranes from graphene sheets", Nano Lett. 8, 2458-2462 (2008)に記載されるように、すべての気体および液体に対して不浸透性であることが文献により知られている。実際、O. Leenaerts, B. Partoens, F. M. Peeters, "Graphene: a perfect nanoballoon", Appl. Phys. Lett., 93, 193107 (2008)で予想されるように、水素などの小原子は、何十億年もの長い時間尺度を経たとしてもグラフェンの高密度電子雲を貫通するとは考えられていない。

背景技術

0002

グラフェンおよびその化学的誘導体からなる膜は格別な浸透特性を示す。欠陥のない単層グラフェンは、すべての気体および液体に対し完全に不浸透性である。この興味深い特性により、グラフェン系膜は、バリア用途および保護被膜用途の理想的な候補と考えられる。さらに、グラフェンの機械的強度光学透過性、低毒性および高い化学熱安定性は、他のバリア材料に対して優位である。

発明が解決しようとする課題

0003

グラフェンの不浸透性の性質に関する膨大な文献が存在するにもかかわらず、今回、驚くことに熱プロトン、すなわち周囲条件下における水素イオンに対し浸透性である、グラフェンおよび六方晶窒化ホウ素(hBN)のモノレイヤ(以下単層とも称す)の生成に至った。本発明の原子レベルの薄さのプロトン伝導体は、水素燃料電池薄膜作製シェールガスまたは天然ガスなどのガス源からの水素の分離などの多くの水素利用技術ならびに検知/検出器/測定の用途に用いられる可能性がある。本発明のこれらの膜も、グラフェンのすべての極めて優れた機械的特性の恩恵を受け、強度および弾力性が高く、またこのために、機械的強度が有用な特質とされる多様な用途に適している。

0004

近年、グラフェンは、新たな分離技術の開発に使用しうる究極的に薄い膜として注目を集めている。例えば、一学術研究では(Nair et al., Science, 2012, 335, 442-444)が、驚くことに、孔質アルミナ担持させた、厚さ1μm前後のグラフェン酸化物で構成される酸化グラフェン膜が、ヘリウムに対しては不浸透性であるにもかかわらず、水に対し浸透性を有することが示された。これらの酸化グラフェンシートは、Heよりも1010倍速く水をスムーズに透過させる。グラフェンのバリア特性については、V. Berry, "Impermeability of graphene and its applications", Carbon 62, 1-10 (2013)で再考察されている。

0005

非常に薄い材料内でのプロトン伝導性に関する先行研究は、グラフェンを主成分とした積層体または複合体を用いて行われてきた。これらの材料は、数百万のミクロンサイズの個々のグラフェン片からなる。これらの複合材料では、プロトンは、グラフェン片の内部に存在する微細空孔/欠陥による何らかのわずかな寄与によって個々の薄片間を移動する。実際、プロトンはエネルギー障壁のため、それ自体が個々の薄片を貫通し、通り抜けることはできず、個々の薄片を避けてその周囲を移動することにより材料を通る進路をとる。これに対し、本発明の2次元材料の場合、プロトンは、材料自体の主要部を通って、すなわちその結晶構造を通って移動する。これは、グラフェンおよび他の2次元材料の不浸透性の性質を考察する文献に鑑みると、全く予想外の結果である。

0006

しかしながら、グラフェンの不浸透性の性質に関係無く、グラフェンの極度のバリア特性は、グラフェンシートの適切な機械的処理により活用することができる。原子レベルまたはナノメーターレベルの正確な精度でシート穿孔して空孔を設ける場合、グラフェンは気体、液体、イオンなどの超高速かつ高度に選択的なふるい分けを可能とし、サイズ排除漉し器として効果的に機能し得る。これは、初期状態ではグラフェンシートが熱エネルギーで移動するすべての原子および分子に対し絶対的に不浸透性であり、そのためにいずれの材料も、意図的に導入した空孔を介す以外に通過することがないためである。

0007

穿孔した単層グラフェンを原子が貫通するのに必要とされる運動エネルギーEの論理推定値は、採用モデルにより大幅に左右される。しかし、水素原子についての2.4eVの最小文献値でも一般的なkBT(kBはボルツマン定数、Tは温度)よりも100倍大きく、これにより実質的に貫通不可能な障壁が確保される。したがって、加速原子のみが一原子厚の結晶を貫通することができる十分なエネルギーを有する。本明細書中ではグラフェンのみについて考察するが、他の2次元(2D)結晶にも同じ効果が予想される。

0008

プロトンは、一方の、原子レベルで薄い障壁を比較的容易にトンネルすることができる電子などの小粒子と、他方の、グラフェンなどの材料の単原子層でさえ透過することができない小原子との中間の例と考えられる。透過に必要とされるエネルギーEは、水素が電子を失う場合、最大2倍減少すると計算されているが、これは熱プロトンの顕著な輸送を可能とするには極めて困難な高いエネルギー障壁を示している。このため、1.2eVのE値では、約109秒となお遅い透過速度となる。

課題を解決するための手段

0009

今回我々は、単層または数層のグラフェン、hBN、二硫化モリブデン(MoS2)および二硫化タングステン(WS2)で形成される単結晶膜を通して、プロトンまたはデュテロンを容易に浸透させる方法を発見した。デューテロンは、重水素として知られる水素の同位体形態の荷電イオンである。事実上、プロトンまたはデューテロンは、グラフェン膜を通過する電荷キャリアである。これは、気体水素の通過と対比することができる。水素は、荷電していない二原子の気体種である。つまり、通常のバリア特性を考慮すれば気体は分子形態であるが、本発明の場合、膜を通って輸送される種は、単原子を含む荷電イオンである。

0010

以下に記載する本発明のすべての態様において、用語「伝導性(率)」は導電率を指し、用語「浸透性(透過性)」または「輸送」は、イオン化原子種が膜を通過することを指す。

0011

本発明の第1の態様によれば、
2次元材料のモノレイヤと、
2次元材料の少なくとも片面に設けられたイオノマー被膜と、
必要に応じて基体とを具えるプロトン伝導膜が提供される。

0012

本発明の膜は、プロトンおよびその同位体を伝導し得る。この膜は単一のモノレイヤであってもよく、2〜5層を含んでもよい。いずれの場合も、材料はモノリシックである。

0013

したがって、一実施形態において、本発明は、
モノレイヤまたは2〜5層のモノリシックな2次元材料と、
2次元材料の少なくとも片面に設けられたイオノマー被膜と、
必要に応じて基体とを具えるプロトン伝導膜に関する。

0014

この種の膜は、メタノール燃料電池などの燃料電池に用いることができる。本発明の膜の大きな利点の1つは、従来の膜よりも大幅に薄い形状で形成することができるということである。厚い膜は電気抵抗がより大きく、そのため本発明の膜は、効率が改善された燃料電池をもたらす。従来より、膜の全体の厚さの低減に関する1つの問題は、水素およびメタノールの両方が、燃料電池としての電池の機能に必要なプロトンを実際に構成することなく、膜を通って拡散する傾向があるということである。非常に薄い形状で形成することができるにもかかわらず、本発明の膜は、水もしくはメタノールのいずれかまたは当然他の種も拡散させることなく、周囲条件下でプロトンを透過させることができる。これは、既存の膜技術に対し、著しく優位であるといえる。

0015

上述のとおり、膜はプロトンの同位体、すなわちデューテロンも伝導する。本発明の第2の態様では、
2次元材料のモノレイヤと、
2次元材料の少なくとも片面に設けられたイオノマー被膜と、
必要に応じて基体とを具えるデューテロン伝導膜が提供される。

0016

本発明第1および第2の態様の膜は、同一となり得る。つまり、同じグラフェン膜が、プロトンおよびデューテロンを通過させる場合がある。

0017

本発明の様々な態様の2次元材料は単体の材料である。そのため、モノリシックであると表現することができる。本発明の文脈では、モノリシックとは、2次元材料が単体または結晶で形成されることを意味する。つまり、材料には接合部や繋ぎ目が存在しない。

0018

実施形態によっては、2次元材料の少なくとも片面をイオノマーで直接被覆する。実施形態によっては、その両面を2次元材料で直接被覆する。しかしながら、通常、片面をイオノマーで被覆し、他方の面は基体に接する。

0019

電極は、プロトンおよび/または重水素を伝導する膜の片面または両面に機械的に付着させてもよい。電極は、原則として任意の電極材料を用いることができるが、白金またはパラジウムなどの金属で形成してもよい。白金のほうが好ましい。あるいは、蒸着技術によって電極、例えばPtを膜の片面または両面に成膜してもよい。ある実施形態では、本発明の膜は、膜とイオノマーの集合体に電流を通過させるために、膜と直接電気的に接触するよう一対の電極を膜の各面に1つずつ具える。別の実施形態では、膜は、膜の「出力」側、すなわち使用時にプロトンおよび/またはデューテロン(プロトン/デューテロンとも呼ぶ)が放出される膜の面に電極を具える。第2の電極は、膜の他方の「入力」側に直接接してもよく、あるいは電極は、膜の「入力」側とそれ自体が接する溶液と接していてもよい。この場合、電極は膜と電気的に接触してはいるが、直接膜に固着してはいない。この溶液は、プロトン源および/またはデューテロン源をもたらす。別の実施形態では、電極は膜構造を全く構成せず、それぞれが、膜の2面のそれぞれに接する溶液に接する。膜の各面に接する溶液の双方により電気的接続成立する。

0020

本発明の第1の態様で上述されたプロトン伝導膜の作製方法は、
2次元材料のモノレイヤを設ける工程と、
2次元材料の少なくとも片面をイオノマーで被覆して該イオノマーの片面が2次元材料と接触し、他方の面が露出するようにする工程、またはイオノマーおよび非導電性構成成分を含む材料の層を2次元材料の片面に塗布する工程のいずれかと、
必要に応じて、少なくとも1つのイオノマー被膜の露出面に接して基体を設ける工程とを備える。

0021

同様の方法を用いてデューテロンの通過を可能にする膜を作製することができる。

0022

本発明の第2の態様で上述されたデューテロン伝導膜の作製方法は、
2次元材料のモノレイヤを設ける工程と、
2次元材料の少なくとも片面をイオノマーで被覆して該イオノマーの片面が2次元材料と接触し、他方の面が露出するようにする工程、またはイオノマーおよび非導電性構成成分を含む材料の層を2次元材料の片面に塗布する工程のいずれかと、
必要に応じて、少なくとも1つのイオノマー被膜の露出面に接して基体を設ける工程とを備える。

0023

ある実施形態では、この方法が、電極を膜に設ける工程をさらに備える。さらなる実施形態では、この方法が、一対の電極を膜の各面に一つずつ設ける工程を備える。この手順は、本発明によるすべての膜について同様である。電極は、金属の層を膜に機械的に付着させるか蒸着させることにより設けることができる。

0024

イオノマーおよび非導電性構成成分を含む材料の層は、イオノマー被膜自体が単体で有し得るよりも高い強度を有することが意図される。非導電性の構成成分はそれ自体が多孔性材料であるか、あるいはそれ自体が本質的に多孔性でない場合には、液体を通過させる細孔を備えるよう準備しておく必要がある。

0025

本発明のこの態様では、イオノマーはプロトン伝導性ポリマーである。適切なプロトン伝導性ポリマーは当業者に公知であり、本発明の他の態様のすべてに適用可能な実施形態で、以下にも詳しく説明する。Nafion(ナフィオン登録商標)系ポリマーが特に適している。

0026

イオノマーを、適宜、2次元材料の片面または両面に設けてもよい。基体は必ずしも存在する必要はないが、多孔性基体を用いてイオノマーを2次元材料の片面または両面に支持してもよい。この構成では、膜の外部からイオノマーおよび2次元材料との流体連通が可能になるよう、基体が多孔性であることが重要である。これは、プロトンをイオノマーおよび2次元材料に到達させるために必要である。

0027

2次元材料の片面にイオノマー被膜を直接塗布する。ある実施形態では、第2のイオノマー被膜をさらに設ける。これは、2次元材料の他方の面に直接設けてもよい。しかし、これらは2次元材料と第2のイオノマー被膜との間の介在層である可能性もある。基体は、2次元材料の片面のみがイオノマーで被覆されるように、第2のイオノマー被膜と2次元材料との間に存在する可能性がある。

0028

これに代わる実施形態では、イオノマーおよび基体を単一要素として効果的に設けてもよい。言い換えれば、単一要素は単一の構造体である。この場合、基体は、プロトンまたはデューテロンを伝導する膜が組み込まれたポリマーメッシュの形をとり得る。例えば、構造強化をもたらすように、Nafion系の公知のプロトン伝導膜に、ポリマーなどの別の非導電性材料を染み込ませてもよい。したがって、NafionをPTFメッシュなどのポリマーメッシュに染み込ませてもよい。イオノマーを2次元材料の両面に設ける場合、各イオノマーは同じでも異なっていてもよい。イオノマー層片方または両方が、基体と結合し、かつ/あるいは、単一の要素でイオノマーおよび基体の機能を兼ね備えた単一の構造体の形で設けられる可能性もある。実施形態によっては、イオノマー、例えばNafionは2次元材料を十分に支持してそれ自体で十分である場合もあり、したがってイオノマーと2次元材料の組合せがその形で直接メタノール燃料電池に採用される可能性もある。

0029

本発明のこの態様では、基体は2次元材料に強度および支持をもたらす役割を果たし、基体の性質は、この要求を確実にかなえる上で重要である。ただし、基体は、プロトンおよびプロトンを抽出し得る流体(デューテロンについても同様)を2次元材料と連通させるために、浸透性である必要がある。

0030

基体は、プロトンおよび/またはデューテロンが膜構造を通過することを可能とする材料である。基体材料自体は本質的にプロトンおよびデューテロンに対し不浸透性であってもよいが、プロトンおよび/またはデューテロンが通過し得る孔部または他の開口を設けておく。基体は膜に構造的完全性をもたらす役割を果たす。基体は、金属または非金属で形成し得る。非金属のほうが好ましい。適切な基体として、プラスチック材料(ポリマー、例えばPTFEなど)、ガラスおよび他のセラミックスが挙げられる。窒化シリコンなどの材料が特に適している。

0031

本発明の第3の態様では、2次元材料のモノレイヤをプロトン伝導体として用いる方法が提示される。本発明の2次元プロトン伝導体は、燃料電池の電極の作製または水素の分離・検出装置をはじめとした様々な目的に用いることができる。

0032

2次元材料は、他の層を設けることなくそれ自体で利用してもよく、あるいは、2次元材料の少なくとも片面に設けられるイオノマーの層と併せて設けてもよい。

0033

本発明のこの態様では、2次元材料は、プロトンのみに原子層を通過させ、メタノール、水およびガスなどの他の材料の通過を妨げる選択的障壁をもたらす。

0034

本発明の第4の態様では、プロトン/デューテロン伝導膜の生成に適した集合体であって、
2次元材料のモノレイヤであって、除去可能な層の片面に配置され、その層の不連続部に位置関係を合わせたモノレイヤと、
除去可能な層の他方の面に設けられたエッチング可能な基体とを具える集合体が提供される。

0035

本出願の文脈では、用語「位置関係を合わせて」は、不連続部に位置合わせされ、これと部分的に重なることを意味する。

0036

実施形態では、基体の2表面がそれぞれ除去可能な層で覆われている。

0037

基体はエッチング可能であってもよい。これは、パターンを有する光線またはプラズマを集合体に照射して、そのパターンを集合体およびその下に位置する基体上に再現するようにし、その後、集合体をエッチングして同じパターンを基体に再現させる場合があることを意味する。

0038

この集合体は、本発明の2次元プロトン伝導膜の一種の前駆体(precursor)であると効果的である。

0039

本発明の第5の態様によれば、
除去可能な基体であって、その2表面がそれぞれ不連続の除去可能な層に覆われた、基体と、
2次元材料のモノレイヤであって、除去可能な層のうちの1つの上に配置され、その層およびその下に位置する基体の不連続部に位置関係を合わせたモノレイヤと、
基体の各面に設けられたイオノマー被膜と、
各イオノマー被膜と接する電極とを具え、
各電極をそれぞれの下に位置する除去可能な層および次元材料から離隔させるよう、除去可能な層のそれぞれおよび2次元材料がそれぞれのイオノマー被膜に覆われた、プロトン/デューテロン伝導膜デバイスが提供される。

0040

本発明の第6の態様では、プロトンが通過する媒体として2次元材料のモノレイヤを組み入れたプロトン/デューテロン伝導デバイスの形成に適した集合体を作製する方法が提供される。このプロトン/デューテロン伝導デバイスは、上記第4の態様に記載した種類のプロトン伝導デバイスであってもよい。

0041

この方法は、
エッチング可能な基体を含み、2表面が除去可能な層で覆われた集合体の1表面を部分的にマスキングして、除去可能な層の少なくとも一部を露出させたままとするマスキング工程と、
下に位置する基体が露出された領域に現れるパターンを形成するために、マスキングされた表面に光線またはプラズマを照射する工程と、
マスクを除去する工程と、
パターンに対応する領域から基体をエッチングする工程と、
他方の除去可能な層の表面に不連続部を導入する工程とを備える。

0042

本発明の第7の態様では、プロトン/デューテロン伝導体を作製する方法が提供される。この方法は、上述の本発明の第5の態様の工程を採用する。したがって、他方の除去可能な層の表面に不連続部を導入した後に、
周期表の第8〜10族から選択された1つまたは複数の遷移金属から形成された不連続膜で装飾された、グラフェンおよびhBNから選択された2次元材料のモノレイヤまたはグラフェン、hBN、MoS2およびWS2から選択された2次元材料のモノレイヤを不連続部が導入された除去可能な層上に不連続部に位置関係を合わせて設ける工程と、
除去可能な層を担持する基体の両面のそれぞれをイオノマーで被覆する工程と、
各イオノマー層と接する電極を設ける工程とが行われる。

0043

本発明の様々な態様の特定の実施形態では、パターンは通常孔部である。

0044

特定の実施形態では、エッチング可能な基体は、化学的にエッチングすることができる材料である。一般的な化学剤として、無機酸および無機塩基ならびにフッ化物供与剤が挙げられる。基体は、シリコンゲルマニウムまたはこれらの混合物から形成してもよい。基体は、(周期表の第13族または第15族から選択された元素を)ドープしてもよく、非ドープとしてもよいが、通常は非ドープである。シリコンが好ましい基体材料である。シリコンの場合、水酸化カリウムでエッチングすることができる。基体とエッチングの他の組み合わせは当該技術分野、特に半導体トポグラフィを製造する分野において既知であり、これらの基体は本発明の意図する範囲内にある。基体はウェハまたはシートの形態であり、すなわち、その長さおよび幅はその厚さよりも大幅に大きい。

0045

ある実施形態では、除去可能な層は光除去可能である。これは、化学線、例えば紫外光線可視光線または赤外光線、または(プラズマ化学反応を用いた)反応性イオンエッチングを用いて実現することができる。好ましい実施形態では、反応性イオンエッチングが用いられる。

0046

除去可能な層は通常、基体の2つの対向する表面に設けられる。一般的に、基体が2つの除去可能な層の間に挟まれた薄層を構成する積層構造を示すように、基体はウェハまたはシートの形態であり、選ばれた2つの表面は、2つの最大の表面である。基体の対向面以外の2つの表面が除去可能な層で被覆されることは考えられず、そのような状況では、2つのイオノマー被膜間にプロトン輸送の通路が残ってしまうであろう。ただし、このような構成を実現可能とするためには2つのイオノマー被膜が物理的および電気的に分離されていることが必要とされる。

0047

除去可能な層は、化学線照射または反応性イオンエッチングにより除去することができる、任意の従来材料で形成してもよい。窒化ケイ素(SiN)は、除去可能な層の一方または両方を形成するのに適した材料であり、反応性イオンエッチングにより容易に除去することができる。

0048

除去可能な層内に不連続部を形成する方法では、パターンを有するフォトレジスト、すなわちマスクを除去可能な層に塗布し、その後、非露出領域から材料を除去するために、マスキングされた除去可能な層を光線源またはプラズマ源暴露する。したがって、基体を覆う除去可能な層は、不連続であり、1つまたは複数の領域で基体を露出させる。通常、単一の領域を露出させる。

0049

暴露およびこれに続くマスクの除去の後、除去可能な層の基体の片面側の部分を、パターンにより指定されたとおりに除去しておく。このため、下に位置する基体材料を、後に化学的手段により除去することができる。ただし、機械的手段またはプラズマエッチングによりこれらの領域から基体も除去される可能性があるとは考えられない。

0050

したがって、他の除去可能な表面に、1つまたは複数の不連続部を設けることが必要である。このため、第2の除去可能な層のための除去可能な材料は不連続部を設けるために部分的に除去することができる材料でありさえすればよい。したがって、光除去可能または反応性イオンエッチングにより除去可能な材料は、原則としてこの第2の層に用いることができる。このような場合、層に開口を設けるために、機械的手段によって不連続部を設けてもよい。不連続部は、通常空孔の形態であるが、層内の一連の空孔または他のパターンとしてもよいであろう。

0051

上述のとおり、本発明のすべての態様において、用語「伝導性」は導電性バルク材料気体浸透性ではない)を指す。したがって、本発明は、バルク材料にプロトンおよび/またはデューテロンを透過させることに関する。

0052

膜は、先に説明したように本発明による任意の膜であればよい。電位差を加えることにより、電流が横切って、すなわち膜を通って流れる。電荷はプロトンおよび/またはデューテロンにより運ばれる。水素同位体がイオン化できることが重要である。言い換えると、水素同位体を含む材料は、電荷輸送種に対し電離可能でなければならない。荷電種は、膜の第2の面上の電極から電子を回収する。この電極は、膜の第2の面上にあり、あるいは媒体、例えば第2の面と電気的に接触する溶液内に存在する。この電極は、膜の入力側にある第1の電極と対照しやすいように、第2の電極と呼ぶことができる。

0053

第1の電極は、初期溶液中に存在する。通常、この溶液はプロトン/デューテロン含有分子を含む。電位差を与えると、溶液中の水素および/または重水素が、膜の入力側の溶液中に存在する水素含有材料および/または重水素含有材料からイオン化する。

0054

膜の第1の面は膜の「入力」表面もしくは「入力」面であり、第2の面は膜の「出力」表面または「出力」面である。

0055

以下に説明する本発明の実施形態は、概して、上述した本発明の各態様に適用可能である。

0056

本発明による任意の2次元材料を用いることができる。2次元材料は単体の材料である。2次元型の材料は、同じ構成層内の原子間の強い結合相互作用(通常は共有結合)および隣接する層内の原子の間のより弱い(通常は非共有)結合がある、層状材料である。グラファイト、これに由来する究極のモノレイヤ生成物であるグラフェン、遷移金属ダイカルコゲナイド遷移金属酸化物および特定の他の二元化合物をはじめ多くの材料が知られている。例として、グラフェン、BN、Bi2Te3、Bi2Se3、MoS2、WS2、MoSe2、MoTe2、TaSe2、NbSe2およびNiTe2が挙げられる。グラフェンおよびhBNは、天然構造、すなわち非修飾構造でプロトン伝導体としてよく機能する。他の2次元材料のモノレイヤは、プロトン伝導を可能にするのに十分に熱障壁を低下させるために、周期表の第8〜10族から選択された触媒金属の存在を必要とする場合がある。これは、2次元材料上の非連続被膜または「装飾」として存在する。

0057

本発明は、触媒金属の被膜が、本発明の様々な態様に関して記載された2次元材料のいずれにも適用され得ることを想定する。いずれの場合でも、被膜は不連続である。

0058

好ましくは、2次元材料は、周期表の第8〜10族から選択された1つまたは複数の遷移金属から形成された不連続膜で装飾された、グラフェンもしくはhBNのモノレイヤまたはグラフェン、hBN、MoS2およびWS2から選択された2次元材料のモノレイヤから選択される。

0059

用語「モノレイヤ」は、すべての2次元材料の場合において、材料の単一の原子層を指す。hBNの特殊な場合においては、複数の層、すなわち2層、3層、さらには4層が、本発明によるプロトン輸送を生じさせる可能性がある。この特別な場合は、それ以外では、グラフェンなど、単一の原子層のみを有する本発明の2次元材料のすべてに適用される用語「モノレイヤ」が2層、3層および4層のhBNを包含することを意味する。同様に、グラフェンの場合、2原子層厚のシートのグラフェンが、特定の状況下で、グラフェンモノレイヤのプロトン伝導性ほど良好ではないものの、プロトン伝導を生じさせる可能性もある。そのため、この特殊な状況において、用語「モノレイヤ」は2層グラフェンにも該当する。

0060

2次元材料は、格子内に意図的に空孔または他の空隙を導入することにより穿孔されないという意味で、連続的な構造であることが重要である。一般的に、2次元材料は、欠陥をほとんど含まないか全く欠陥がないという意味で、「初期」状態であることが好ましい。理想的には、材料中の欠陥は、10%未満、より好ましくは5%未満、さらに好ましくは1%未満でなければならない。0.2%未満の欠陥の比率が最も好ましい。欠陥が最小限の数であれば、膜がプロトン透過のみを受容し、その他を受容しない効果的な選択的障壁として確実に作用する。以下の記載から分かるように、プロトンが原子層を直接通って透過し、欠陥を通って輸送されないことを実証してきた。同様に、原子層によって他の材料が効果的に遮蔽され、存在し得る欠陥を通過しないことを証明してきた。

0061

イオノマー被膜は導電性ポリマーである。導電性ポリマーは、プロトン伝導ポリマーである。適切なポリマーは以下に説明され、スルホン化ポリマーなどを含む。

0062

一方の金属電極から2次元材料の片面の導電性ポリマーを通り、その後2次元材料自体を通った後、2次元材料の他方の面の他の導電性ポリマーを通って第2の金属電極への効果的なプロトン輸送を確実にするように、それ自体は基体の2つの表面に設けられた除去可能な層の上に設けられた2つのイオノマー被膜は、通常物理的および電気的に分離されている。

0063

電極は金属電極であり、プロトン注入電極として機能する。一般的に、この電極は遷移金属の水素化物を主成分とする。

0064

疑義を避けるため、本発明によれば、熱プロトンは、電位を印加せずとも本発明の2次元材料原子層を通過することができることを強調しておく。したがって、特定の状況では、プロトンの通過の原動力は、2次元材料の異なる面間に存在する濃度勾配である可能性がある。

0065

他の場合では、そのプロセスを進めるために、電位を印加することができる。本発明の材料から得られる燃料電池は、2次元材料から形成される本発明の膜材料と、本発明によれば、プロトン伝導膜により第2の電極(通常多孔性である)から隔てられるイオノマーとを具えることができる。このような電極アセンブリを具えた電池に流体を供給することにより、その後生じ得る従来の電気化学プロセスにより2つの電極から電流を取り出すことができる。

0066

我々は、熱プロトン、すなわち周囲条件下における水素イオンに対し浸透性である、グラフェンおよび六方晶窒化ホウ素(hBN)のモノレイヤを発見した。これに対し、二硫化モリブデンのモノレイヤ、2層グラフェンまたは多層hBNではプロトン輸送が見られなかった。常温において、モノレイヤhBNは、約0.3eVの低活性化エネルギーで最高のプロトン伝導性を示す。高温では、グラフェンは、250℃より高い温度でプロトン流に対する抵抗率平方センチメートル当たり10−3オームを下回ることが予想されるような、より良好な導体となる。

0067

我々はまた、2次元構造体を通るプロトン透過に対する障壁は、2次元化合物のモノレイヤを、遷移金属を主成分とする触媒ナノ粒子で装飾することによりさらに低下させることができることを発見した。

0068

グラフェンを含む既存の先行技術の膜とその他の膜との重要な差異は、先行技術の膜は、酸化物などの多数の個々の薄片から形成される複合材料であるということである。本発明では、単体の2次元材料を用いる。

0069

単体のグラフェンまたはhBNが好ましい。グラフェンが最も好ましい。材料はモノレイヤである(グラフェンおよびhBNでは一原子層を意味し、MoS2など、他の2次元材料では、結晶構造のために実際は3つの原子層を有する一分子層を意味する)。ただし、特定の場合、数層、すなわち2〜5層の2次元材料が許容される。したがって、場合によっては、上述の各態様の膜は2〜5層の2次元材料を有してもよい。この場合もまた、2次元材料はモノリシックである。

0070

以下に示すように、大型の結晶シートのグラフェンおよびhBNモノレイヤはプロトン輸送の制御に用いられる。これらは脆いため、結晶シートはNafionその他の膜などの既存のプロトン伝導材料と組合せでのみ使用すべきである。

0071

したがって、本発明の膜は、2次元材料がモノレイヤのみであるか、または特定の場合は2〜5層厚であるという事実にもかかわらず、不要な種の通過を阻止するのに非常に効果的である。

0072

本発明の手法の1つの利点は、可能な限り薄い膜を用いても他の種の浸透を止めることにより、既存のプロトン膜の厚さを低減できる(現在は非常に困難な問題)可能性をもたらすことである。したがって、本発明では、軽量で費用効率の高い膜を作製することができる。これらの膜は、プロトンの通過を可能にしつつ、優れたバリア特性を示す。

0073

本発明のプロトン伝導膜は熱プロトンに対し透過性であり、常温、50℃までの温度範囲、または100℃までの温度で容易に機能することができる。膜はまたこれらの温度よりも高い高温でも用いることができるが、常温または常温付近でプロトン輸送を実現できるということが重要な長所の一つである。

0074

1つの重要な用途は、現在燃料電池での使用に関係するが、用途はこれよりも非常に広い。一般に、この材料は、原子レベルで薄いプロトン伝導体を必要とするあらゆる用途に用いることができる。別の重要な用途はプロトン、デューテロンおよびトリトン同位体濃縮に関係する。

0075

2次元結晶は、機械的劈開またはCVDなどの任意の従来の方法によって得ることができる。機械的劈開が好ましい。

0076

2次元結晶は、Si/SiNxウェハにエッチングにより形成されたマイクロメートルサイズの空孔に懸濁し、基体の各面に設けられ、その各面に付着されたシリコンウェハ、(窒化ケイ素などの)光除去可能な層などのエッチング可能な基体と、光除去可能な層上に配置される2次元材料とを具えるプレ膜集合体を形成する。その後、得られたプレ膜集合体は、両面がイオノマー、例えばスルホン化ポリマーなどの導電性ポリマーで被覆される。このような材料の一般的な例は、スルホン化テトラフルオロエチレンフルオロポリマー共重合体であるNafionである。

0077

実施形態によっては、電極は金属または水素化物などの金属化合物であってもよい。その後、実施形態によっては、第8族、9族、または10族遷移金属水素化物、通常パラジウムまたは白金の水素化物から形成されたプロトン注入電極を、被覆された集合体の両面に付着させる。第8族、9、または10族遷移金属は、鉄、ルテニウムオスミウム、銅、ロジウムイリジウムニッケル、パラジウムおよび白金を含む触媒金属として知られている。電極は、上記遷移金属のうちの1つまたは複数の水素化物から形成する場合がある。これらのうち、ニッケル、パラジウムおよび白金の水素化物がより好ましく、パラジウムまたは白金の水素化物が最も好ましい。

0078

各面に付着された電極は、それぞれの面で導電性ポリマーと電気的に接触し、電源に接続される場合、ポリマーを通し、2次元材料を通して電流を流すことができる。膜を通過して電荷を運ぶ種はプロトンである。

0079

作製順序の詳細を以下にさらに詳しく説明する。

0080

スルホン化ポリマーは、スルホン化フルオロポリマーであってもよい。ある実施形態では、スルホン化フルオロポリマーはパーフルオロスルホン酸である。

0081

ある実施形態では、スルホン化フルオロポリマーは以下の構造を有する。




式中、x=5、y=1000、z=3(Nafionの場合)である。同様の適切な材料は、Schultz et al, Chemical engineering and technology, 24(12), p1223-1233 (2001)に記載されており、同論文開示内容を、特に適切な導電性ポリマーに関連して本明細書に組み込む。

0082

ある実施形態では、スルホン化フルオロポリマーは以下の構造を有する。




式中、x=6、y=1、z=1(Nafionの場合)、x=3−10、y=0.1、z=0−3(AGCのFlemion:フレミオン(登録商標)の場合)、またはx=2〜14、y=0.3、z=1〜2(Aciplex−S:アシプレックス(登録商標)の場合)である。この場合もまた、同様の適切な材料は、T.S Zhao, Micro fuel cells, principles and applications, p10 (2009)に記載されており、同論文の開示内容を、特に適切な導電性ポリマーに関連して本明細書に組み込む。

0083

ある実施形態では、パーフルオロスルホン酸は、Nafion(デュポン社)、Dow膜(ダウケミカル社)、Flemion膜(旭硝子ガラス社)、Aciplex膜(旭化成社)、BAM(Ballarde社)、Solvay社のHyflonおよびGore−select:ゴアセレクト(登録商標)膜(ゴア社)からなる群から選択された市販のポリマーである。好適な実施形態では、スルホン化フルオロポリマープロトン交換膜はNafion膜である。

0084

ある実施形態では、パーフルオロスルホン酸ポリマーは、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(sPEEK)、スルホン化ポリスルホン(sPSU)、スルホン化ポリ酢酸ビニル(sPVA)、スルホン化ポリエーテルイミド(sPEI)およびポリベンゾイミダゾールPBI)からなる群から選択される。

0085

ある実施形態では、集合体の両面のスルホン化フルオロポリマー被膜は、厚さが1μm〜200μmである。ある実施形態では、スルホン化フルオロポリマープロトン交換膜は、厚さが80μm〜170μmである。ある実施形態では、スルホン化フルオロポリマープロトン交換膜は、厚さが80μm未満である。

0086

歴史的に見て、無欠陥大面積グラフェン成長させることが難しいことから、グラフェン系被膜の実用化は限定されている。今回は、機械的に劈開されたか、またはCVD源によるグラフェンまたはhBNを用いて本発明による、熱プロトンのみを透過させる十分に良好な障壁を生成することが可能であると考えられる。

0087

浸透性特性は通常、種内の構造欠陥およびクラックの存在に極めて左右されやすい。経験上、メタノールまたは水などの低分子は粒界または結晶欠陥を通ることができないと考えられる。これは、非プロトン輸送を可能にするには、サイズが1nmを超えるピンホール(結果として、近傍の炭素原子を必然的に失うことになる)を必要とするためである。高品質CVD(破断のない)ではピンホールがあってはならない。

0088

現在、CVD成長により大面積グラフェンシートを得ることが可能である。燃料電池に用いられる触媒コストに鑑みると、それらは適度に安価である。CVD成長グラフェンは、単結晶試料ほど完全ではないが、基本的に、欠陥部位ではなくバルクを通ってプロトン伝導が生じる傾向にあると考えられるほどには十分に良好である。機械的劈開に代えて、hBNのCVD成長を採用してもよい。本発明のプロトン輸送デバイスに用いることができる他の2次元材料として、MoS2およびWS2が挙げられる。グラフェンが好ましい2次元材料である。

0089

2次元材料をエッチングおよび成膜してプレ膜集合体を形成した後、得られた自立プレ膜集合体を、下記のとおりピンホールおよび欠陥が無いか確認し、両面からNafionをスピンコートした。Nafionは、高プロトン伝導性およびごくわずかな電子導電性を示すポリマーである。最後に、ウェハの両面から2つのプロトン注入PdHx電極をNafionに形成して本発明の2次元プロトン伝導膜を完成させた。

0090

本発明の2次元プロトン伝導膜およびこれに関する特性を以下の図に示す。

図面の簡単な説明

0091

2次元結晶を通るプロトン輸送を示す図である。図1aは、hBN、グラファイトおよびMoS2のモノレイヤについてのI−V特性の実施例を示している。上の挿入図は実験回路図を示す。中央の挿入図は、Nafionを成膜する前の一般的なグラフェン膜の電子顕微鏡写真である。スケールバーは1μmである。走査電子顕微鏡では、2次元結晶は、均質暗視野を生じ、汚染、欠陥、またはクラックが存在する場合にのみ目視できる。MoS2膜デバイスで観察された少量(pA)の電流(下部挿入図)は、寄生並列コンダクタンスによるものである。図1bは、検出可能なプロトン伝導率を示す2次元結晶のヒストグラムを示す。各バーは、2μm直径膜を有する異なる試料を表す。左右の挿入図は、グラフェンおよびモノレイヤhBNのそれぞれに直角な方向に積分された電荷密度平方オングストローム当たりの電子数)を示す。白い部分は六角形中心部の最低値であり、最大値は、C、BおよびN原子の位置に対応する。
プロトン障壁の高さおよび触媒によるその低下を示す図である。図2aは、2次元結晶についてのプロトン伝導率の温度(T)依存性を示す。挿入図は、Tの逆関数としての対数(σ)を示す。記号は、実験データであり、実線曲線活性依存性に対する最良適合曲線である。Tの範囲は、Nafion中の水の凝固により限定され、通常、異なる熱膨張係数による偶発的な損傷を防止するために、60℃を超えるTを避けている。図2bは、2次元結晶が触媒ナノ粒子で装飾される場合、プロトン伝導率が極端に向上することを示している。各バーは異なるデバイスである。網掛け部分は、空孔がほぼ存在しない(低密度空孔)デバイスで見られた伝導率の範囲を示す(Nafion/Pt/Nafion:集合体内に2次元結晶は存在しないが、公正な比較のため、同量のPtを蒸着した)。挿入図は、Ptを具えたグラフェンについてのアレニウス挙動を示し、E=0.24±0.03eVを生じる。Ptを具えたモノレイヤhBNは、弱い温度依存性のみしか示さず、障壁がkBTと同程度になったことが示唆される。
電流により制御したプロトン流量を示す。上の挿入図は本発明の実験例の回路図である。上述したように、Ptナノ粒子で装飾された単層グラフェンにより真空チャンバが同じH2/H2O条件下で設置されたNafion/PdHx電極から離隔される。プロトンは膜に浸透し、反対側の面で、急速に再結合して水素分子となる。水素流は、質量分析器(InficonUL200)で検出する。異なる記号は異なるデバイスを指し、それらの1つについてエラーバーが示され、赤線は論理的に予測される流量である。下部の挿入図は、デバイスのうちの1つの光学像を示す。点線輪郭が示されたグラフェンは、直径50μmの円形の開口を封止する。グラフェン膜の下にNafionがある。
微細加工プロセスの工程を示す図である。右下は、最終デバイスの光学画像である。スケールバーは1cmである。
懸濁2次元膜のSEM画像である。図5aは何らかの偶発的な汚染を含む単層グラフェンを示す。端部から離れた粒子の1つが白円で示されている。図5bは、集束電子ビームにより故意に誘発させた炭化水素汚染のピラーを含む懸濁グラフェンを示す。挿入図は膜中のクラックを示し、スケールバーは100nmである。
異なる開口を設けた、低密度空孔デバイスを示す図である。それらのコンダクタンスは、その形状から予想されるように、開口の直径(D)に対し線形依存性を示す。挿入図はこのようなデバイスの模式図を示す。
異なるサイズのモノレイヤhBN膜中のプロトンコンダクタンスを示す図である。コンダクタンスはDに対し二次関数的に、すなわち、2次元膜面積(A)に対し直線的に増減する。挿入図は、異なるDを有するデバイスについてのI−V特性を示す。
Nafionにより制限されるプロトン輸送を示す図である。低密度空孔デバイス、Nafion/Pt/Nafionデバイス、触媒により活性化されたモノレイヤhBNを用いた膜デバイスについての温度依存性を示す。公称伝導率は、測定されたコンダクタンスSを開口面積Aで除することにより計算される。
グラフェン膜中の原子スケール欠陥を調べるための、マイクロバルーン収縮を示す図である。図9aは、一般的なグラフェン膜の、異なる時間における高さプロファイルを示す。図9bは、時間の関数として最大高さを示す。挿入図は、加圧されたグラフェン微小空洞の一般的なAFM像を示す(カラースケール:0nm〜130nm)。すべて同じ収縮速度の6つのグラフェン膜について、それぞれPtが上に成膜されたかどうかを調べた。hBNモノレイヤについて同様の挙動を観察した。
水素流検出を示す図である。図10aは、質量分析測定のための本発明のデバイスの模式図を示す。図10bは、時間の関数としての観察された水素流量およびグラフェン膜に対して段階的に印加した異なる負のバイアスに対する測定された電流の例を示す。
2次元結晶の電子雲を示す図である。グラフェン、モノレイヤhBN(窒素が青い球で、ホウ素がピンクで示される)およびモノレイヤMoS2(Sが黄色、Moが)についての積分された電荷密度が示される。
CI−NEBシミュレーションを示す図である。グラフェンおよびhBN(それぞれ図12a、図12b)の六方晶リングの中心へのプロトンの距離の関数としてのエネルギープロファイルが示される。炭素原子はシアン色の球体で示され、窒素を青、ホウ素をピンク、プロトン(H+)を白で示している。
Ptを具えたグラフェン中のプロトン障壁のAIMDシミュレーションを示す図である。炭素原子はシアンで示され、Ptはオークル、H+は白で示される。図13aはグラフェンシートから4Å離れた距離に4つのPt原子を配置することにより再現された実験状況を示す。図13bは、初期運動エネルギーE=0.7eVのプロトンの軌跡を示す図である(他の2つのPt原子は視点の関係で見えない)。曲がる軌跡は、プロトンとPtの相互作用により障壁が低下したことを示している。
液体中の2次元結晶を通るプロトン輸送を示す図である。図14aは、直径2μmの開口を被覆する単層、2層、および3層hBNについてのI−V特性の例を示す。挿入図は液体電池の模式図を示す。3層hBNの場合、電流は、寄生並列抵抗により決まる範囲内である。図14bは、液体電池構造内で明らかなプロトン流を示した2次元結晶のヒストグラムを示す。各バーは、直径2μmの膜を具えた異なる試料を表す。網掛け部分は、リーク電流により定まる検出限界を示す。

0092

図1aの左の挿入図に示されるように、2次元結晶は、2つのNafion空間の間の原子レベルで薄い障壁として効果的に機能する。電気測定では、試料を湿度100%の水素−アルゴン雰囲気中に配置して、Nafion膜の高伝導率を確保した。グラフェン、hBNおよびMoS2のモノレイヤを組み入れたデバイスについて測定されたI−V特性を図1aに示す。この挙動は、図1bの多数の異なる膜についての統計結果に示されるように、非常に再現性が高い。測定されたプロトン流IはバイアスVに対し直線的に変動し、コンダクタンスS=l/Vは膜面積Aに比例することが分かる(図6〜8参照)。同じ方法で用意されるが、2次元膜を具えない(『低密度空孔(空孔がほとんど存在しない)』)デバイスでは、モノレイヤhBNが存在する場合よりもSが約50倍高かった(図6)。これにより、測定された面伝導率σ=S/Aが2次元結晶の影響を受け、Nafionが相対的に小さい直列抵抗のみを生じることが確実になる。厚い障壁(例えば、Nafion空間の間に蒸着された数nm厚のグラファイトまたは厚い金属膜または誘電体膜)の逆の限界では、高湿度でのSiNx表面に沿ったリーク電流に由来する可能性のある約10pSの寄生並列コンダクタンスが見られる。この精度では、モノレイヤMoS2、2層グラフェン、4層hBNまたはより厚い2次元結晶を通るプロトン流を検出することはできなかった。

0093

異なる2次元結晶を通る浸透性の差は、プロトンを通過させることにより対処すべき電子雲を考慮すると、定性的に理解することができる。図1b挿入図に見られるように、モノレイヤhBNはグラフェンよりもさらに『多孔性』であり、これは窒素原子の周囲に集中した価電子により窒化ホウ素結合が強力に分極されると言う事実を反映している。MoS2では、より大きな原子が含まれるため、の密度が大幅に高くなる(図11)。二原子層グラフェンにおいて検出可能なσが存在しないことは、一方の層の電子雲内の『空孔』が、他方の層内の密度極大により塞がれるAB積層に起因する可能性がある。これに対し、hBN結晶はAA’積層を示すため、層数の増加にしたがい積分電子密度が上昇するが、多層hBN膜でさえも雲内の中央の空孔が残ってしまう。

0094

2次元結晶を通るプロトンと電子の輸送には相関がないことを重点を置くことが有益である。実際、hBNは最高のプロトン伝導率を示すが、トンネル障壁が最高のワイドギャップ絶縁体である。対照的に、認識可能なプロトン浸透が見られないモノレイヤMoS2は導電性を具えた高濃度ドープ半導体である。さらに、透過顕微鏡法およびトンネル顕微鏡法ならびに他の技術を用いた多くの研究は、現在まで、本研究で用いられるのと同じ劈開技術を用いて生成されたグラフェンおよびhBNにおける個別のピンホール(原子スケール欠陥)すら発見できていない。その一方、MoS2モノレイヤは高密度の硫黄空孔を含むにもかかわらず、プロトン伝導性をほとんど示さない。これらの観察結果を異なるデバイスについての本発明の測定の高い再現性と組み合わせると、Aに対する線形増減および層数の増加に対し一貫性のある挙動により、報告されているσが研究対象の膜の固有のプロトン特性を表すことが確かめられる。

0095

グラフェンおよびhBNが示す障壁高さEを求めるために、σの温度依存度を求めたところ(図2a)、exp(−E/kBT)のアレニウス挙動を示すことが分かった。なお、Nafionの伝導率は、Sの全体的な値にほとんど寄与しないだけでなく、同じ温度範囲で約1.5倍しか変化しない(図8)。グラフェン、2層hBNおよびモノレイヤhBNのそれぞれにつき、活性化挙動によりE=0.78±0.03eV、0.61±0.04eVおよび0.3±0.02eVが生じる。グラフェンに対するプロトン障壁は、第一原理分子動力学シミュレーションおよびClimbingImageNudgedElasticBand(CI−NEB)法を用いて発見された1.2eV〜2.2eVの値よりも著しく低い。グラフェンについてそれらの計算を再現し、以下に説明するようにモノレイヤhBNに拡大して適用した。その結果、グラフェンではE=1.25〜1.40、モノレイヤhBNではE≒0.7eVを生じた。Eの絶対値についての実験と理論の不一致は、可能性のある経路の複雑な性質および擬ポテンシャルに対する計算の感度交換相関汎関数などに鑑みれば驚くべきことではないかもしれない。あるいは、その差は、Nafion/水中のプロトンが、これまで理論で想定してきた真空中ではなく水素結合に沿って移動するという事実により生じ得る。

0096

特定の用途では、可能な限り高いプロトン伝導率を実現することが望ましい。例えば、水素燃料電池は1S/cm2を超える膜を必要とする。この条件は、それぞれ80℃および110℃を超える温度のhBNおよびグラフェンのモノレイヤにより満たされる(図2aの挿入図)。さらに、グラフェンは酸素および最高400℃の高湿雰囲気中で安定した状態を保ち、本実験結果を『非常に安全な』250℃に外挿することにより、極めて高いσ>103S/cm2が得られる。さらに、白金族金属が水素に対し高い親和性を有することに注目し、それによる2次元結晶を通るプロトン輸送への影響を調べた。この目的のために、PtまたはPdの不連続層(名目上、1nm〜2nm厚)を2次元結晶の表面の1つに蒸着した。図2bは、触媒層を設けることによりσが大幅に増加することを示す。モノレイヤhBNでは、測定されたSが、比較対象である『低密度空孔』デバイスのそれと区別がつかなくなる(図2b)。これは、この測定結果がNafionの直列抵抗により制限され、Ptにより活性化されるモノレイヤhBNがもはやプロトン透過の障害ではないことを示す。一方で、Ptにより活性化されるグラフェンおよび2層hBNでは、直列抵抗は相対的に小さいままであり、測定結果はなおその固有の特性を反映する。σ(T)を分析することにより、Ptが活性化エネルギーEを約0.5eV〜約0.24eVも低下させることを発見した(図2b)。触媒効果の我々のシミュレーションは、実験と定性的に一致して、約0.65eVのEの低下を生じる。この障壁低下の背景にあるメカニズムは、通過するプロトンのPtへの引力に由来する可能性がある(図10)。なお、図2bの測定結果は、触媒により活性化されたモノレイヤhBNの常温伝導率の下限値≒3S/cm2のみを設定しており、この膜がグラフェンで観察されたのと定性的に同様のEの低下を受けた場合、実質的に無障壁のプロトン輸送が予想される。これには、触媒により活性化されたhBNの固有のσを求めるために、はるかに大きい面積の膜を必要とし得る。

0097

最後に、観察された電流が、2次元膜を通るプロトン流によるものであることを直接実証する。このために、図3の挿入図に示したようなデバイスを用意した。ここで、Nafion/PdHx電極の1つが除去され、Ptで装飾したグラフェン表面は、質量分析器を具えた真空チャンバに対向する。グラフェンと残存するPdHx電極の間にバイアスを印加しない場合、水素と真空チャンバの間にガス漏れ(Heを含む)は見つからなかった。同様に、グラフェンに正バイアスを印加した場合も、ガス流を検出することはできなかった。しかし、負のバイアスを印加することにより、真空チャンバへの一定のH2流が測定された。その値は、膜を通過するプロトンの毎秒当たりの数I/eにより求められる。理想気体の法則を用いて、F=kBT(I/2e)の関係を容易に導くことができ、ここで、流量Fは水素分子に最適化された質量分析器によって測定された値である。後者の依存性は、図3に赤い実線で示され、実験と優れた一致が見られる。

0098

上記から分かるように、グラフェン、hBNおよび同様の2次元材料のモノレイヤは、適切な条件下で新種のプロトン伝導体を構成することができる。この導電性は制御することができる。本発明の2次元プロトン伝導体は、様々な水素技術に用いられるであろう。例えば、2次元結晶は燃料電池用のプロトン膜として検討することができる。それらはプロトンに対する伝導性が高く、化学的および熱的に安定しており、同時に、H2、水またはメタノールに対し非浸透性である。これは、既存の燃料電池における燃料クロスオーバーおよび毒性の問題を解決するために活用し得る。説明した電流制御された水素源も少なくともその単純さのために魅力的であり、大面積グラフェンおよびhBN膜が商業的に入手可能になりつつあるため、その機構ガス混合物または空気から水素を採取するのに用い得る。

0099

(2次元プロトン伝導体の生成)
図4微細加工工程を説明する。まず、両面が500nmのSiNxで被覆された市販のSiウェハから自立窒化ケイ素(SiNx)膜を用意する。エッチングマスクフォトリソグラフィにより作製する。SiNx層の1つから1×1mm2の部分を反応性イオンエッチング(RIE)を用いて除去する(図4の工程1および2)。下に位置するSiウェハは、ウェハをKOH溶液に暴露することによってSiをエッチング除去して典型的にサイズ300×300μm2の自立SiNx膜を残す湿式化学によってエッチング除去される(工程3)。工程4の間、工程1および2と同じ手順を用いたRIEによって、SiNx膜に貫通する円形の穴を設ける。次に、2次元結晶(グラフェン、hBNまたはMoS2)を標準的な微細(micro)機械的剥離法により生成し、湿式または乾式のいずれかの技術を用いて膜上に転写してSiNxの開口を被覆する(工程5)。

0100

工程5の後、走査電子顕微鏡(SEM)で懸濁膜を完全性および質検査する場合もある。初期状態の2次元結晶ではSEMコントラストがほとんど示さないため、空孔上の2次元膜を認識するためには何らかの汚染を必要とする。汚染は、図5aの場合のように偶発的なものであるか、または電子ビームにより誘発させた(図5b)ものである場合がある。クラックや破断が存在する場合、より暗い部分として明確に視認される(図5bの挿入図)。

0101

電気測定用のデバイスの作製は、プロトン伝導ポリマー層の成膜に続く。Nafion117溶液(5%)を懸濁2次元膜の両面にドロップキャストまたはスピンコートする(図4の工程6)。最後に、水素化パラジウム(PdHx)電極をNafion層に機械的に付着させる。このような電極を作製するために、D W Murphy et al, "Chem Mater", 5, 767-769 (1993)で報告された製法にしたがって25μm厚のPd箔を飽和水素供与溶液中で一晩放置する。これにより水素原子がPdの結晶格子に吸収されてPdHxとなる。得られたデバイスを130℃の水飽和環境に配置して、ポリマーを架橋結合させるとともに電気的接触を改善させる。

0102

上述の実験設計は以下の考察を踏まえて最適化される。まず、Nafion内の電流は、不動性のスルホン基間でホップする(飛び跳ねる)プロトンのみによって運ばれ、Nafionは電子に対し伝導性ではない。これは例えば、Nafion伝導体にわたって金膜を挿入すると電気接続性が損なわれることから端的に証明することができる。したがって、プロトンは、遷移金属水素化物、例えばPdHx電極間を通過することができる唯一可動種である。PdHxは、PdHx−>Pd+xH++xe−の過程により電子流をプロトン流に変換するプロトン注入材料として用いられる。膜面積Aに対して大きい面積の本発明の電極とこの特性を合わせると、NafionとPdHxの間の接触抵抗がほとんどなくなるため、実験例の回路コンダクタンスは2次元結晶、または2次元結晶が存在しない場合には直径DのNafion収縮のいずれかにより制限される。

0103

触媒により活性化された測定では、1nm〜2nmのPtを電子ビーム蒸着により懸濁膜に直接蒸着して、Nafionによる被覆の前に不連続膜を形成した。より厚い連続膜は、電流を流した後にPtの下に出現する多数の水素泡として目視される可能性のあるプロトン流を阻止することが分かった。典型的には、このPt膜は約80%の面積を被覆するため、プロトン輸送の有効面積が減少したが、このことは2次元膜を設けずにこのような膜をNafion空間の間に成膜することにより発見されたとおりである(下記参照)。Pd膜遮蔽性が高くなく、最大10nmの厚さの連続膜はプロトン流を大きく妨げなかった。そうでない場合、Pd膜とPt膜の両方で、2次元結晶を通るプロトン輸送が同様に向上した。

0104

(2次元プロトン伝導体の電気測定)
上述のデバイスを、フォーミングガスアルゴン中10%H2)が充填され、100%相対湿度を得るよう液体水を含むチャンバ内に配置した。I−V曲線をDC測定を用いて記録した。最大0.5V/minの掃引速度で、典型的に1Vまでの範囲で電圧を変化させた。これらの条件下で、曲線はヒステリシスがなく、再現性が高かった。デバイスは乾燥させなければ、何週間にもわたり安定した状態を保った。

0105

本実験例の構成の特性を明らかにするために、まず、プロトン伝導経路不在の状態でリーク電流を測定した。このため、未使用のSi/SiNxウェハ1つの対向する表面に2つの金属端子を配置し、同じ湿度条件下でI−V特性を測定した。約5pS程度のコンダクタンスが正常に記録された。さらに、完全に加工されたデバイス用い、その後Nafion膜および電極を機械的に除去した。後者の場合、寄生コンダクタンスはわずかに(2倍)高かったが、これは、処理中にSiNx表面に残った残渣によるものであると考えられる。原理的には、例えばSiウェハの各面において個別のチャンバを使用することによりリーク電流を減少させることが可能であるであろうが、観察された寄生コンダクタンスは本研究の目的に対して十分に小さいと見なされた。

0106

参考のために、本発明の膜デバイスと全く同じ方法で作製されたが、2次元結晶を成膜して開口を被覆しなかった(図4の工程5が省略された)『低密度空孔』デバイスの伝導率を調べた。図6は、このようなデバイスのコンダクタンスをその直径Dの関数として示す。実験のばらつきの範囲内で、コンダクタンスSは、マクスウェルの式S=σNDと一致して、Dに対し直線的に増加する。後者は、伝導率σを有し、開口の長さdよりも大幅に大きいDを有する空孔により接続された2つの半空間についてラプラスの式を解くことにより得られる。本発明の場合、d=500nmであり、この条件は、最も小さい可能性のある、図6のD=2μmの膜を除いて無理なく満たされる。

0107

図6に示される依存性から、本発明のNafion膜の伝導率は1mS/cmであると推定することができる。上記のように、Nafionの伝導率は、触媒により活性化されたモノレイヤhBNの場合を除き、2次元結晶を通るプロトン輸送の本発明の実験結果を制限しなかった。それにもかかわらず、得られたσNが最高品質のNafionで達成可能な値よりも2桁小さいことに留意する。これには2つの理由がある。第1に、溶液キャストNafionは伝導率が一般的に1桁落ちることが知られている。第2に、Nafionは、通常H2O2およびH2SO4中で数時間ボイルすることにより前処理を施される。後者の方法を用いた場合、本発明のNafion膜は実際に伝導率が10倍増加し、溶液キャストNafionの標準値である約10mS/cmに届いた。残念ながら、この過酷な処理は、SiNxからNafion膜が剥離して破壊されてしまう本発明の膜デバイスに適用することはできなかった。

0108

一貫性を保つために、本文中で報告される2次元膜のほとんどを、直径で2μmで形成した。しかし、1μm〜50μmの範囲の直径の他の多くの膜についても調査した。それらのコンダクタンスは、開口面積Aに対して直線的に増減することが分かった。図7は、このことを、Dが1μm〜4μmの10個のモノレイヤhBNデバイスについて示している。同じDのデバイスについて、通常の実験のばらつきの範囲内で、コンダクタンスは、一般的な予想と一致して、2次元膜の面積Aに対し直線的に増加する。グラフェン膜についても同じ増減が観察された。

0109

上述のとおり、触媒により活性化されたモノレイヤhBNのプロトン伝導率が高いため、今回の測定結果ではNafionの直列抵抗が限定要因となる。これはさらに、Nafionが限定要因となった異なるデバイスの温度依存性を比較することによっても証明される。これには『低密度空孔』デバイス(Nafionのみ)、Ptを具えた、『低密度空孔』デバイス(Nafion/Pt/Nafion)およびPtにより活性化されたモノレイヤhBN膜が含まれる。

0110

図8は、それらのコンダクタンスの典型的な挙動をTの関数として示す。Nafion内のプロトン輸送では活性化エネルギーが低い(<0.02eV)ことと整合して、上記のすべてのデバイスにおける温度効果全温度範囲で小さいことが分かった(図8参照)。Pt層を具えたデバイスでの非単調なT依存性(図8)は、なお理解すべきことが残されているが、Nafionは多くの場合、図8の範囲を超える高い温度で、同様の非単調な挙動を示すことに注目する。Pt活性化によりこのピークが低いTに移動することが推測される。本実験例では、Nafion収縮における局所的な伝導率に対するPtナノ粒子の影響がhBN膜の有無にかかわらずほぼ同じであることが重要である。これはさらに、Ptにより活性化されたhBNのプロトン伝導率が高いために、今回の実験構成では測定不能となることを示しているが、現在入手可能なhBN結晶のサイズが限られていることが基本的な原因である。

0111

(2次元プロトン伝導体中の原子スケール欠陥の不在)
SEMでの膜の目視検査により、10nm未満までのサイズの空孔およびクラックを確実に排除することができる(図5b参照)。SEMを用いて検査された本発明の2次元プロトン伝導体では、これらの種類の欠陥のいずれも観察されなかった。図5bに示すような時折生じるクラックは、故意に導入されるか、処理工程中に重大な失敗を犯した場合のみに観察され得る。

0112

グラフェン中の原子スケール欠陥に対して非常に感度が高いと知られているため、ラマン分光法を用いて本発明の2次元プロトン伝導体の完全性を確認した。Dピークの強度により、空孔またはより大きな孔だけでなく、ピンホールを生じない吸着原子の場合もあるような欠陥の濃度を正確に推定することができる。本発明のグラフェン膜ではDピークは認められなかった。これにより、原子欠陥密度に約108cm−2または1μm2当たり1つの欠陥の上限が設定される。

0113

さらに、グラフェンにおけるこのような低密度の欠陥は、機械的に劈開されたMoS2に見られる高密度(約1013cm−2)の硫黄空孔と全く対照的である。この事実にもかかわらず、本発明のMoS2膜ではプロトン流が検出されなかった。各空孔がサイズ約1Åの孔をもたらすと仮定すると、本発明の典型的なMoS2膜に存在すると予想されるおよそ105個の空孔は、直径約30nmの有効開口をもたらし得る。図6の結果を用いて、これによりコンダクタンスが約3nS、すなわちモノレイヤMoS2中のプロトンコンダクタンスの測定結果により設定された限界値の100倍よりも大きくなると予測される。したがって、個々の空孔が、従来の典型的な直径が示すよりも実際に大幅に低いプロトン伝導率をもたらすことを示す。

0114

上の議論補強するために、本発明のプロトン伝導(グラフェンおよびhBN)膜から、個々の空孔さえも排除することを試みた。ピンホールを検出するとして知られる最も感度の高い技術は、ほぼ間違いなく、小規模加圧容積からのガス漏れを測定することである。この目的のため、エッチングにより、Si/SiO2ウェハ内に典型的に約1μm3のサイズの微小空洞を設け、グラフェンまたはhBNで封止し、その後加圧した。微小空洞内の圧力が外部よりも高い場合、膜は上向きに膨らみ、低い場合は下向きに膨らむ。圧力の変化は原子間力顕微鏡法(AFM)を用いて、時間の関数として膨らみの高さを測定することにより観測することができる。膜内に空孔が存在しない場合、ガスは酸化膜を通って緩やかに漏れ、一般的に、微小空間の内部および外部の圧力が等しくなるには長い時間がかかる。しかし、原子が流出できるたった1つの原子スケールホールが存在するだけで、圧力は一秒未満で等しくなる。Si/SiO2ウェハ内に微小空洞を設け、単層グラフェンで封止した。微小空洞は、Arを充填されたチャンバ内に、200kPaで、典型的には4日間配置され、徐々に加圧した。デバイスを取り出した後、膜は上向きに膨らんでいるのが見つかった。

0115

図9は、時間経過に伴うこのような微小バルーンの収縮を示す。Ar漏出速度は、一秒当たり約103原子であることが分かった。原子スケールホールが、例えば紫外線化学エッチングにより導入される場合、漏出速度は何桁も増加し、事実上一瞬で収縮する。さらに、Ptを蒸着した膜としていない膜に、収縮速度の差は見られなかった。原則として、Arの動力学的直径(kinetic diameter)(0.34nm)よりも小さいピンホールまたはPtナノ粒子によって阻止されるピンホールが存在する膜は検出可能な漏出を示さないと言えるだろう。しかしながら、ナノメートル以下のサイズのピンホールを含むモノレイヤ膜は、やや機械的に不安定となることが知られているが、これは、加えられた圧力に対し有意な値である約1%に達する歪み下で欠陥が拡大する傾向があるためである。我々のマイクロバルーンは安定したままであり、何度も加圧することができた。この挙動により、本発明の2次元プロトン伝導体を用意する際に、機械的劈開により得られたグラフェンおよびモノレイヤhBN内に個々のピンホールが存在しないことが確認された。これにより、プロトン伝導が欠陥を通って通過することにより進行するわけではないことが確認される。

0116

質量分析による、2次元プロトン伝導体内のプロトン流の検出)
本発明の2次元プロトン伝導体を通る電流がプロトンにより運ばれることを端的に示すために、図10aに詳しく示された装置を用いた。グラフェン内を移動するプロトンは、それらが再結合して水素分子を形成する(2H++2e−>H2)Pt触媒層捕集される。その後、水素流を、質量分析器で測定する。電流Iは、グラフェン膜を通過するプロトンの数によって決まるため、水素流Fは通過電流Iに直接関係する。

0117

この特定の実験では、本発明の2次元プロトン伝導膜を可能な限り大きく(直径50μm)形成して、質量分析器(Inficon UL200)で検出可能な値まで水素流を増加させた。電流をグラフェン膜で収集するために、SiNx開口に隣接して金属端子(100nmAu/5nmCr)を作製した。この作製はグラフェンを上に転写して開口および端子を被覆する前に行った。その後、Siウェハのこの面(上にグラフェンを具えた)を、1nm〜2nmのPtで装飾して、プロトン流を増加させ、これを容易に水素に変換できるようにした。グラフェン膜の他方の面をNafionで覆い、先に記載したのと同じ方法でPdHx電極に接続させた。

0118

Siウェハ上に得られたデバイスを、2つのOリングの間で個別の2つのチャンバに固定された、穿孔されたCu箔エポキシ接着させた。チャンバの一方にはガスが充填され、他方は質量分析器に接続させた。この構造を、大気圧で、ガスチャンバをヘリウムで満たすことによりチェックした。約10−8barcm3/sにおいて、分光計バックグラウンド指示値を上回るHe漏出は検出されなかった。その後、チャンバに我々の標準的なガス混合物(アルゴン中10%H2、1bar、湿度100%)を充填した。負バイアスをグラフェンに印加せずには、水素流は検出されなかった。

0119

しかしながら、このようなバイアスを印加することにより、約10−5barcm3/sのレベルで、制御可能なH2の流れが容易に検出された(図10b参照)。この図は、本発明の一態様による、0Vから20Vまでの負バイアスを用いたデバイスについての水素流量Fを時間の関数として示す。20Vから0Vまで戻るサイクルで印加を行うと、曲線はそれ自体を遡り、測定中膜が損傷しなかったことを示す。これは、水素燃料電池での用途などに重要となり得る特徴である。

0120

水素原子はその分子形態に対して非常に不安定であり、水素分子への変換は、真空チャンバ内ではなくPtの表面で生じる可能性が高い。したがって、Pt層は、水素を逃がすよう不連続でなければならない。連続的被覆では(>5nmのPt)では、回路を通過した電荷の増加にしたがい成長する小水素泡が観察された。最大の気泡は最終的に破裂した。

0121

上記のデバイスの上に蒸着された不連続Au膜の場合について言及することも有益である(すでに不連続Pt層を含む)。このようなデバイスに印加されるバイアスにより、グラフェンと金属膜の間の界面にさらに気泡が形成されることが分かった。気泡は破裂し、膜を損傷させることすらあり得る。このため、質量分析法実験に不連続金属膜を用いることはできなかった。同じバブリング効果はhBNを絶縁するための電気回路導通をもたらすPt膜で被覆されたhBN膜でも観察された。

0122

これらの観察により、グラフェンおよびhBN膜を通るプロトン移動がさらに示唆される。その一方で、プロトンに対し、また不浸透性を示すより厚い2次元結晶では、気泡は観察されなかった。

0123

(2次元結晶を通るプロトン輸送の理論的解析
異なる2次元結晶により生じる電子雲を考慮することにより本実験結果を理解することが可能である。これらの電子雲は、2次元膜を通るプロトンの通過を妨げる。図1bのグラフェンおよびhBNのモノレイヤについての電子密度のグラフに加え、図11は、グラフェンおよびhBNの結晶格子のボールアンドスティックモデルを用いて、C、BおよびNの原子と重畳する位置におけるこれらの雲についての同様のグラフを示す。さらに図11は、モノレイヤMoS2についての電子密度をグラフ化している。後者の雲がhBNおよびグラフェンのモノレイヤの雲よりも大幅に密度が高いことが一目瞭然であり、これはMoS2モノレイヤを通るプロトン輸送がないことを示している。
定量分折について、以前より、第一原理分子動力学シミュレーション(AIMED)およびClimbingImageNudgedElasticBand(CI−NEB)法の両方を用いてグラフェンを通るプロトンの浸透について研究がなされてきたことをまず指摘する(S. P. Koenig, L. Wang, J. Pellegrino, J. S. Bunch,"Selective molecular sieving through porous graphene", Nat. Nanotechnol, 7, 728-732 (2012)、W. L. Wang, E. Kaxiras, "Graphene hydrate: Theoretical prediction of a new insulating form of graphene", New J. Phys. 12, 125012 (2010)および M. Miao, M. B. Nardelli, Q. Wang, Y. Liu, "First principles study of the permeability of graphene to hydrogen atoms", Phys. Chem. Chem. Phys., 15,16132-16137 (2013)参照)。これらの研究は、グラフェン中プロトン輸送障壁Eが約1.17eV〜2.21eVの範囲であると想定している。グラフェンについてのこれらの結果を再現し、モノレイヤhBNに拡大適用した。

0124

すべてのシミュレーションは、文献法(L. Tsetserisa, S. T. Pantelides, "Graphene: An impermeable or selectively permeable membrane for atomic species", Carbon, 67, 58-63 (2014)およびJ. VandeVondele, M. Krack, F. Mohamed, M. Parrinello, T. Chassaing, J. Hutter, "Quickstep: Fast and accurate density functional calculations using a mixed Gaussian and plane waves approach", Comput. Phys. Commun. 167, 103-128 (2005)参照)に基づいて、Pade交換相関エネルギー汎関数形式を導入したCP2Kパッケージを用いて行った。障壁は、プロトン移動に必要とされる最小運動エネルギーとして推定される。シミュレーションにより、1.30eV〜1.40eVの間のグラフェンEが生成された。

0125

プロトンと2次元膜の間の異なる距離に対応する様々な構成(通常『イメージ』と称される)についてエネルギーを計算し、膜に接近するプロトンの一連のイメージを生成した。その後、エネルギーを得られたイメージに対し最小化し、2次元結晶への距離の関数としてグラフ化した。エネルギープロファイルの微分高さを用いて障壁Eを推定した。図12は、グラフェンおよびモノレイヤhBNについてのこのようなエネルギープロファイルの例を示す。グラフェンおよびモノレイヤhBNのそれぞれにつき、プロトン障壁は1.26eVおよび0.68eVであると推定した。

0126

プロトン輸送に対するPtの効果も同じ方法でモデル化した。Pt原子を加えると、グラフェンの障壁が約0.6eVへ、すなわち、2倍と大幅に減少した。障壁高さの減少の絶対値は実験の観察結果とよく一致する。

0127

(液体中の2次元結晶を通るプロトン輸送)
本研究では、安定性および扱いの利便性によりNafionを材料として選択したが、本研究の結果の一般性を示すために、水溶液に浸漬させた2次元結晶のプロトン伝導率について調査した。これによっても、本発明のデバイスが、ある種の燃料電池および電気化学セルにみられるような液体環境でも動作することが示された。

0128

これらの実験では、デバイスを、先に記載したのと同じ方法で作製したが、2次元結晶はNafionで覆う代わりに、液体電解質(HCl溶液)を含む2つのリザーバを隔離した。ポリジメチルシロキサン封止剤を用いて、2次元結晶と基体の界面に沿った漏洩最低限に抑えた(図14挿入図:黄)。Ag/AgCl電極を各リザーバに配置して膜にバイアスを印加し、イオン電流を測定した(図14)。

0129

単層、2層、3層hBNの典型的なI−Vプロファイルを図14aに示す。この挙動は図14bの統計結果により証明されるように、非常に再現性が高かった。同じ方法で用意されるが、2次元膜を具えないデバイスでは、モノレイヤhBNが存在する場合よりも伝導率Sが104倍超高く、2次元結晶が確実にプロトン流を制限した。Nafionの場合のように、寄生的並列コンダクタンスが見られたが、液体セル構造の場合の方が幾分高かった(約20pS)。この精度では、モノレイヤMoS2、2層グラフェン、3層hBNまたはより厚い2次元結晶を通るプロトン流を検出することはできなかった。最も重要なことに、電解質を用いて測定された伝導率は、Nafionをプロトン伝導膜として用いた場合に見られた値と極めてよく一致する。

実施例

0130

2次元プロトン伝導膜を、熱プロトンに対する浸透性が予想外に高いグラフェンおよび六方晶窒化ホウ素(hBN)のモノレイヤから製造することができることを示してきた。また、グラフェンおよびhBNを含むがこれらに限定されない2次元材料のモノレイヤを触媒ナノ粒子装飾することにより、プロトン障壁をさらに低下させることができることを示してきた。こうして、触媒金属で適切に処理することにより、本発明にしたがって他の2次元材料をプロトン伝導性にすることもできる。本発明の原子レベルで薄いプロトン伝導体は、多くの水素利用技術において興味深いものとなると予想される。

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